以下、本発明の実施形態について図面を用いて説明する。なお、以下の説明においては、作業機械の一例として、作業装置の先端に作業具(アタッチメント)としてバケットを備える油圧ショベルを例示して説明するが、バケット以外のアタッチメントを備える作業機械に本発明を適用することが可能である。また、複数の被駆動部材(アタッチメント、アーム、ブーム等)を連結して構成される多関節型の作業装置を有するものであれば、油圧ショベル以外の作業機械への適用も可能である。
また、以下の説明においては、ある形状を示す用語(例えば、目標面、設計面等)とともに用いられる「上」、「上方」又は「下方」という語の意味に関し、「上」は当該或る形状の「表面」を意味し、「上方」は当該或る形状の「表面より高い位置」を意味し、「下方」は当該或る形状の「表面より低い位置」を意味することとする。
また、以下の説明においては、同一の構成要素が複数存在する場合、符号(数字)の末尾にアルファベットを付すことがあるが、当該アルファベットを省略して当該複数の構成要素をまとめて表記することがある。
<第1の実施の形態>
図1は、本実施の形態に係る作業機械の一例である油圧ショベルの外観を模式的に示す図である。また、図2は、油圧ショベルの油圧回路システムをコントローラを含む周辺構成とともに抜き出して示す図である。
図1において、油圧ショベル1は、多関節型の作業装置1Aと、本体(機械本体)1Bで構成されている。油圧ショベル1の本体1Bは、左右の走行油圧モータ3a,3bにより走行する下部走行体11と、下部走行体11の上に取り付けられ、旋回油圧モータ4により旋回する上部旋回体12とからなる。
作業装置1Aは、垂直方向にそれぞれ回動する複数の被駆動部材(ブーム8、アーム9、及び、バケット10)を連結して構成されている。ブーム8の基端は上部旋回体12の前部においてブームピンを介して回動可能に支持されている。ブーム8の先端にはアームピンを介してアーム9が回動可能に連結されており、アーム9の先端にはバケットピンを介してバケット10が回動可能に連結されている。ブーム8はブームシリンダ5によって駆動され、アーム9はアームシリンダ6によって駆動され、バケット10はバケットシリンダ7によって駆動される。なお、以降の説明において、ブームシリンダ5、アームシリンダ6、及び、バケットシリンダ7をまとめて油圧シリンダ5,6,7や油圧アクチュエータ5,6,7と称することがある。
図8は、油圧ショベルについて設定するショベル座標系について示す図である。
図8に示すように、本実施の形態においては、油圧ショベル1に対して、ショベル座標系(ローカル座標系)を定義する。ショベル座標系は、上部旋回体12に対して相対的に固定で定義されるXY座標系であり、上部旋回体12に回動支持されているブーム8の基端を原点とし、上部旋回体12の旋回軸に沿う方向に原点を通って上方を正とするZ軸を、作業装置1Aの稼動する平面に沿う方向であってZ軸に垂直にブームの基端を通って前方を正とするX軸を有する車体座標系を設定する。
ブーム8の長さ(両端の連結部の間の直線距離)をL1、アーム9の長さ(両端の連結部の間の直線距離)をL2、バケット10の長さ(アームとの連結部と爪先の間の直線距離)をL3とし、ブーム8とX軸との成す角(長さ方向の直線とX軸との相対角度)を回動角度α、アーム9とブーム8との成す角(長さ方向の直線の相対角度)を回動角度β、バケット10とアーム9との成す角(長さ方向の直線の相対角度)を回動角度γと定義する。これにより、ショベル座標系におけるバケット爪先位置の座標および作業装置1Aの姿勢はL1,L2,L3,α,β,γで表現することができる。
油圧ショベル1の本体1Bの水平面に対する前後方向の傾きを角度θとする。また、作業装置1Aに基準となる制御点を設定し、制御点と目標面60との距離をDとする。目標面60とは、掘削作業の目標として施工現場の設計情報などに基づいて設定される目標掘削面である。なお、本実施の形態では、バケット10の爪先に制御点を設定する場合を例示して説明するが、制御点は作業装置1Aの先端であれば設定可能であり、例えば、バケット10の底面や、バケットリンク13の最外部に設定することもできる。
作業装置1Aには、ブーム8、アーム9、バケット10の回動角度α,β,γ(姿勢情報)を測定する姿勢検出装置として、ブームピンにブーム角度センサ30、アームピンにアーム角度センサ31、バケットリンク13にバケット角度センサ32がそれぞれ取付けられ、また、上部旋回体12には基準面(例えば水平面)に対する上部旋回体12(油圧ショベル1の本体1B)の傾斜角θを検出する車体傾斜角センサ33が取付けられている。なお、本実施の形態においては、作業装置1Aの姿勢に関する情報である姿勢情報を検出する姿勢検出装置としては、複数の被駆動部材8,9,10の連結部における相対角度を検出する角度センサ30,31,32を例示して説明するが、複数の被駆動部材8,9,10の基準面(例えば水平面)に対する相対角度をそれぞれ検出する慣性計測装置(IMU: Inertial Measurement Unit)を用いたり、シリンダストロークセンサによりショベルの姿勢情報を算出するように構成したりしても良い。
図1及び図2に戻る。図1及び図2において、上部旋回体12に設けられた運転室内には、右走行操作レバー23a(図1)を有し右走行油圧モータ3a(すなわち、下部走行体11)を操作するための操作装置(図示せず)と、左走行操作レバー23b(図1)を有し左走行油圧モータ3b(すなわち、下部走行体11)を操作するための操作装置(図示せず)と、右操作レバー1aを共有しブームシリンダ5(すなわち、ブーム8)及びバケットシリンダ7(すなわち、バケット10)を操作するための操作装置45a,45b,46a(図2)と、左操作レバー1bを共有しアームシリンダ6(すなわち、アーム9)及び旋回油圧モータ4(すなわち、上部旋回体12)を操作するための操作装置(図示せず)とが設置されている。なお、以下では、右走行操作レバー及び左走行操作レバーをまとめて単に走行操作レバー、右操作レバー1a及び左操作レバー1bをまとめて単に操作レバー1a,1bと総称することがある。
また、運転室内には、目標面60と作業装置1Aの位置関係が表示可能な表示装置(例えば液晶ディスプレイ)53と、マシンコントロール(以下、MCと称する)による動作制御の有効・無効(ON/OFF)を択一的に選択するためのMC制御ON/OFFスイッチ(MC制御有効無効切換装置)96と、目標面60に関する情報(各目標面の位置情報や傾斜角度情報を含む)を入力可能なインタフェースである目標面設定装置51とが配置されている(後の図4及び図5を参照)。
目標面設定装置51は、グローバル座標系(絶対座標系)上に規定された目標面の3次元データを格納した外部端末(図示せず)と接続されており、この外部端末からの情報に基づいて目標面60の設定を行う。なお、目標面設定装置51を介した目標面60の入力は、オペレータが手動で行っても良い。
図2に示すように、上部旋回体12に搭載された原動機であるエンジン18は、油圧ポンプ49とパイロットポンプ48を駆動する。油圧ポンプ49は図示しないレギュレータによって容量が制御される可変容量型ポンプであり、パイロットポンプ48は固定容量型ポンプである。油圧ポンプ49およびパイロットポンプ48は作動油タンク173より作動油を吸引する。
操作装置45,46は、油圧パイロット方式であり、パイロットポンプ48から吐出される圧油をもとに、オペレータにより操作される操作レバー1a,1bの操作量(例えば、レバーストローク)と操作方向に応じたパイロット圧(操作圧と称することがある)を油圧信号として生成する。このようにして生成されたパイロット圧(油圧信号)は、対応する流量制御弁15a,15b,15cの油圧駆動部150a,150b,151a,151b,152a,152bにパイロットライン144a,144b,145a,145b,146a,146bを介して供給され、これら流量制御弁15a,15b,15cを駆動する操作信号として利用される。
油圧ポンプ49から吐出された圧油は、流量制御弁15a,15b,15c(図2参照)を介してブームシリンダ5、アームシリンダ6、及び、バケットシリンダ7に供給されるともに、各流量制御弁15a,15b,15cを結ぶセンタバイパス管路を介して作動油タンク173に導かれる。油圧ポンプ49から流量制御弁15aを介して供給される圧油によってブームシリンダ5が、流量制御弁15bを介して供給される圧油によってアームシリンダ6が、流量制御弁15cを介して供給される圧油によってバケットシリンダ7がそれぞれ伸縮することにより、ブーム8、アーム9、及び、バケット10がそれぞれ回動されて作業装置1Aの位置及び姿勢が変化する。
ブームシリンダ5のロッド側油室と流量制御弁15aとを接続するロッド側管路176と、ブームシリンダ5のボトム側油室と流量制御弁15aとを接続するボトム側管路177との間には、流量制御弁15aを介して接続され、ブーム8を下げるブーム下げ動作時(すなわち、ブームシリンダ5の縮退時)にボトム側油室からの排出油をロッド側油室に供給する再生管路175が設けられている。ブーム8を空中で下降させる場合には作業装置1Aの重量がブームシリンダを縮める方向に作用するため、再生油路によって油圧ポンプ49からロッド側油室へ圧油を供給することなく動作を行うことができるので、エネルギー効率を向上させることができる。
油圧ポンプ49から吐出される圧油を流量制御弁15a,15b,15cに供給する供給管路49aと作動油タンク173とを接続するブリードオフ管路173aには、開口面積を変えることによってブリードオフ管路173aにおける圧油の流量を制御するブリードオフ流量制御弁170が設けられている。
ブリードオフ流量制御弁170の開口面積は、コントローラ40からの制御信号を基にパイロットポンプ48からのパイロット圧を低減してブリードオフ流量制御弁170に導く電磁比例弁171により制御される。電磁比例弁171は、非通電時には開度が最小で、コントローラ40からの制御信号である電流が増大するほど開度が大きくなる。また、ブリードオフ流量制御弁170は、電磁比例弁171からの制御圧が極小である場合(すなわち、コントローラ40から電磁比例弁への電流が最小の場合)には開度が最大であり、電磁比例弁171からの制御圧が制御圧が増大するにしたがって(すなわち、コントローラ40から電磁比例弁への電流が大きくなるにしたがって)開度が小さくなる。
<フロント制御用油圧ユニット160>
図2に示すように、フロント制御用油圧ユニット160は、ブーム8用の操作装置45aのパイロットライン144a,144bに設けられ、操作レバー1aの操作量としてパイロット圧(第1制御信号)を検出するオペレータ操作検出装置としての圧力センサ70a,70bと、一次ポート側がポンプライン148aを介してパイロットポンプ48に接続され、パイロットポンプ48からのパイロット圧を減圧して出力する電磁比例弁54aと、ブーム8用の操作装置45aのパイロットライン144aと電磁比例弁54aの二次ポート側に接続され、パイロットライン144a内のパイロット圧と電磁比例弁54aから出力される制御圧のうちの高圧側を選択し、流量制御弁15aの油圧駆動部150aに導くシャトル弁82aと、ブーム8用の操作装置45aのパイロットライン144bに設置され、コントローラ40からの制御信号を基にパイロットライン144b内のパイロット圧(第1制御信号)を低減して流量制御弁15aの油圧駆動部150bに導く電磁比例弁54bと、電磁比例弁54bで低減されて流量制御弁15aの油圧駆動部150bに導かれるブーム下げパイロット圧(第2制御信号)を検出する圧力センサ70c(流量制御弁パイロット圧検出装置)とを備えている。
また、フロント制御用油圧ユニット160は、アーム9用の操作装置45bのパイロットライン145a,145bに設置され、操作レバー1bの操作量としてパイロット圧(第1制御信号)を検出してコントローラ40に出力するオペレータ操作検出装置としての圧力センサ71a,71bと、パイロットライン145bに設置され、コントローラ40からの制御信号を基にパイロット圧(第1制御信号)を低減して流量制御弁15bの油圧駆動部151bに導く電磁比例弁55bと、パイロットライン145aに設置され、コントローラ40からの制御信号を基にパイロットライン145a内のパイロット圧(第1制御信号)を低減して流量制御弁15bの油圧駆動部151aに導く電磁比例弁55aとを備えている。
また、フロント制御用油圧ユニット160は、バケット10用の操作装置46aのパイロットライン146a,146bに設置され、操作レバー1aの操作量としてパイロット圧(第1制御信号)を検出してコントローラ40に出力するオペレータ操作検出装置としての圧力センサ72a,72bと、コントローラ40からの制御信号を基にパイロット圧(第1制御信号)を低減して出力する電磁比例弁56a,56bと、一次ポート側がパイロットポンプ48に接続されパイロットポンプ48からのパイロット圧を減圧して出力する電磁比例弁56cと、パイロットライン146aの電磁比例弁56aで低減されたパイロット圧と電磁比例弁56cから出力される制御圧の高圧側を選択し、流量制御弁15cの油圧駆動部152aに導くシャトル弁83aと、一次ポート側がパイロットポンプ48に接続されパイロットポンプ48からのパイロット圧を減圧して出力する電磁比例弁56dと、パイロットライン146bの電磁比例弁56bで低減されたパイロット圧と電磁比例弁56dから出力される制御圧の高圧側を選択し、流量制御弁15cの油圧駆動部152bに導くシャトル弁83bとを備えている。
このように、オペレータ操作検出装置としてはオペレータによる操作レバー1a、1b(操作装置45a、45b、46a)の操作によってパイロットライン144、145、146に生じる操作圧(第1制御信号)を取得する圧力センサ70a、70b、71a、71b、72a、72bが設けられており、オペレータ操作検出装置によって、作業装置1Aに係る油圧シリンダ5、6、7に対するオペレータの操作が検出される。
なお、図2においては図示の簡単のため、圧力センサ70,71,72とコントローラ40との接続線は紙面の都合上省略している。
電磁比例弁54b,55a,55b,56a,56bは、非通電時には開度が最大で、コントローラ40からの制御信号である電流が増大するほど開度が小さくなる。一方、電磁比例弁54a,56c,56dは、非通電時には開度がゼロであり、通電時にはコントローラ40からの制御信号である電流が増大するほど開度が大きくなる。すなわち、各電磁比例弁54,55,56の開度はコントローラ40からの制御信号に応じたものとなる。
以降、本実施の形態においては、流量制御弁15a~15eに対する制御信号のうち、操作装置45a,45b,46aの操作によって発生したパイロット圧を「第1制御信号」と称する。また、流量制御弁15a,15b,15cの油圧駆動部150a,150b,151a,151b,152a,152bに対する制御信号のうち、コントローラ40で電磁比例弁54b,55a,55b,56a,56bを駆動して第1制御信号を補正(低減)して生成したパイロット圧と、コントローラ40で電磁比例弁54a,56c,56dを駆動して第1制御信号とは別に新たに生成したパイロット圧を「第2制御信号」と称する。
<コントローラ40>
図3は、コントローラのハードウェア構成図である。
図3において、コントローラ40は、入力インタフェース91と、プロセッサである中央処理装置(CPU)92と、記憶装置であるリードオンリーメモリ(ROM)93及びランダムアクセスメモリ(RAM)94と、出力インタフェース95とを有している。入力インタフェース91は、姿勢検出装置(ブーム角度センサ30、アーム角度センサ31、バケット角度センサ32、車体傾斜角センサ33)からの信号、目標面設定装置51からの信号、オペレータ操作検出装置(圧力センサ70a,70b,71a,71b,72a,72b)からの信号、流量制御弁パイロット圧検出装置(圧力センサ70c)からの信号、MC制御有効無効切換装置(MC制御ON/OFFスイッチ96)からのMCの有効化・無効化(ON/OFF)の選択状態を示す信号を入力し、A/D変換を行う。ROM93は、後述するフローチャートを実行するための制御プログラムと、当該フローチャートの実行に必要な各種情報等が記憶された記録媒体であり、CPU92は、ROM93に記憶された制御プログラムに従って入力インタフェース91及びメモリ(ROM93、RAM94)から取り入れた信号に対して所定の演算処理を行う。出力インタフェース95は、CPU92での演算結果に応じた出力用の信号を作成し、その信号を表示装置53や電磁比例弁54,55,56に出力することで、作業装置1Aの油圧アクチュエータ5,6,7を駆動・制御したり、油圧ショベル1の本体1B、バケット10及び目標面60等の画像を表示装置53の表示画面上に表示させたりする。なお、図3のコントローラ40は、記憶装置(メモリ)としてROM93及びRAM94という半導体メモリを備えている場合を例示しているが、記憶機能を有する装置であれば代替可能であり、例えばハードディスクドライブ等の磁気記憶装置を備える構成としても良い。
本実施の形態におけるコントローラ40は、マシンコントロール(MC)が有効化されている場合には、MCとして、操作装置45a,45b,46aがオペレータに操作されたとき、作業装置1Aを予め定められた条件に基づいて制御する処理を実行する。本実施の形態におけるMCは、操作装置45a,45b,46aの非操作時に作業装置1Aの動作をコンピュータにより制御する「自動制御」に対して、操作装置45a,45b,46aの操作時にのみ作業装置1Aの動作をコンピュータにより制御する「半自動制御」と称することがある。
作業装置1AのMCとしては、操作装置45b,46aを介して掘削操作(具体的には、アームクラウド、バケットクラウド及びバケットダンプのうち少なくとも1つの指示)が入力された場合、目標面60と作業装置1Aに設定した制御点(本実施形態では、作業装置1Aの先端としてバケット10の爪先に制御点を設定する)の位置関係に基づいて、作業装置1Aの先端の位置が目標面60上及びその上方の領域内に保持されるように油圧アクチュエータ5,6,7のうち少なくとも1つを強制的に動作させる制御信号(例えば、ブームシリンダ5を伸ばして強制的にブーム上げ動作を行う)を該当する流量制御弁15a~15eに出力する、所謂、領域制限制御を行う。
このようなMCにより、バケット10の爪先(制御点)が目標面60の下方に侵入することが防止されるので、オペレータの技量の程度に関わらず目標面60に沿った掘削が可能となる。なお、本実施の形態では、MC時の作業装置1Aの制御点を、油圧ショベルのバケット10の爪先(作業装置1Aの先端)に設定しているが、制御点は作業装置1Aの先端部分の点であればバケット爪先以外にも変更可能である。すなわち、例えば、バケット10の底面や、バケットリンク13の最外部に制御点を設定しても良い。
フロント制御用油圧ユニット160において、コントローラ40から制御信号を出力して電磁比例弁54a,56c,56dを駆動すると、対応する操作装置45a,46aのオペレータ操作が無い場合にもパイロット圧(第2制御信号)を発生できるので、ブーム上げ動作(電磁比例弁54aが対応)、バケットクラウド動作(電磁比例弁54cが対応)、バケットダンプ動作(電磁比例弁54dが対応)を強制的に発生できる。また、これと同様にコントローラ40により電磁比例弁54b,55a,55b,56a,56bを駆動すると、操作装置45a,45b,46aのオペレータ操作により発生したパイロット圧(第1制御信号)を減じたパイロット圧(第2制御信号)を発生することができ、ブーム下げ動作(電磁比例弁54bが対応)、アームクラウド動作(電磁比例弁55aが対応)、アームダンプ動作(電磁比例弁55bが対応)、バケットクラウド動作(電磁比例弁56aが対応)、及び、バケットダンプ動作(電磁比例弁56bが対応)の速度をオペレータ操作の値からそれぞれ強制的に低減することができる。
第2制御信号は、第1制御信号によって発生される作業装置1Aの制御点の速度ベクトルが所定の条件に反するときに生成され、当該所定の条件に反しない作業装置1Aの制御点の速度ベクトルを発生させる制御信号として生成される。なお、同一の流量制御弁15a,15b,15cにおける一方の油圧駆動部に対して第1制御信号が、他方の油圧駆動部に対して第2制御信号が生成される場合は、第2制御信号を優先的に油圧駆動部に作用させるものとし、第1制御信号を電磁比例弁で遮断し、第2制御信号を当該他方の油圧駆動部に入力する。したがって、流量制御弁15a,15b,15cのうち第2制御信号が演算されたものについては第2制御信号を基に制御され、第2制御信号が演算されなかったものについては第1制御信号を基に制御され、第1及び第2制御信号の双方が発生しなかったものについては制御(駆動)されないことになる。すなわち、本実施の形態におけるMCとは、第2制御信号に基づく流量制御弁15a,15b,15cの制御ということもできる。
図4は、コントローラの処理機能を示す機能ブロック図である。また、図5は、図4におけるMC制御部の処理機能を関連構成とともに詳細に示す機能ブロック図である。
図4に示すように、コントローラ40は、MC制御部43と、電磁比例弁制御部44と、表示制御部374とを備えている。
表示制御部374は、MC制御部43から出力される作業装置姿勢及び目標面を基に表示装置53を制御する機能部である。表示制御部374には、作業装置1Aの画像及びアイコンを含む表示関連データが多数格納されている表示ROMが備えられており、表示制御部374が、入力情報に含まれるフラグに基づいて所定のプログラムを読み出すとともに、表示装置53における表示制御をする。
図5に示すように、MC制御部43は、操作量演算部43aと、姿勢演算部43bと、目標面演算部43cと、MC有効無効判定部215と、流量制御弁パイロット圧演算部217と、アクチュエータ制御部81、ブリードオフ流量制御部80aとを備えている。また、アクチュエータ制御部81は、ブーム制御部81aと、アーム制御部81bと、バケット制御部81cとを有している。
操作量演算部43aは、オペレータ操作検出装置(圧力センサ70,71,72)からの入力を基に操作装置45a,45b,46a(操作レバー1a,1b)の操作量を算出する。すなわち、操作量演算部43aでは、圧力センサ70,71,72の検出値から操作装置45a,45b,46aの操作量を算出する。なお、本実施の形態で示す圧力センサ70,71,72による操作量の算出は一例に過ぎず、例えば、各操作装置45a,45b,46aの操作装置の回転変位を検出する位置センサ(例えば、ロータリーエンコーダ)で当該操作装置の操作量を検出しても良い。
姿勢演算部43bは、姿勢検出装置(ブーム角度センサ30、アーム角度センサ31、バケット角度センサ32、車体傾斜角センサ33)からの情報に基づき、ローカル座標系における作業装置1Aの姿勢と、制御点(バケット10の爪先)の位置を演算する。
目標面演算部43cは、目標面設定装置51からの情報に基づき目標面60の位置情報を演算し、これをROM93内に記憶する。本実施の形態では、図8に示すように、3次元の目標面を作業装置1Aが移動する平面(作業装置1Aの動作平面)で切断した断面形状を目標面60(2次元の目標面)として利用する。
なお、図8では、目標面60が1つである場合を例示しているが、目標面が複数存在する場合もある。目標面が複数存在する場合には、例えば、作業装置1Aから最も近いものを目標面と設定する方法や、バケット爪先の下方に位置するものを目標面とする方法、或いは、任意に選択したものを目標面とする方法等がある。
ブーム制御部81a、アーム制御部81b、及び、バケット制御部81cは、操作装置45a,45b,46aの操作時に、予め定めた条件に従って複数の油圧アクチュエータ5,6,7のうち少なくとも1つを制御するアクチュエータ制御部81を構成する。アクチュエータ制御部81は、各油圧シリンダ5,6,7の流量制御弁15a,15b,15cの目標パイロット圧を演算し、その演算した目標パイロット圧を電磁比例弁制御部44に出力する。
ブーム制御部81aは、操作装置45a,45b,46aの操作時に、姿勢演算部43bからの演算結果(作業装置1Aの姿勢及びバケット10の爪先の位置)と、目標面演算部43cからの演算結果(目標面60の位置)と、操作装置45a,45b,46aの操作量(操作量演算部43aの演算結果)と、MC有効無効判定部215からの判定結果とに基づいて、目標面60上またはその上方にバケット10の爪先(制御点)が位置するようにブームシリンダ5(ブーム8)の動作を制御するMCを実行するための機能部である。ブーム制御部81aでは、ブームシリンダ5の流量制御弁15aの油圧駆動部150a,150bに導かれるパイロット圧の目標値(目標パイロット圧)が演算される。
アーム制御部81bは、操作装置45a,45b,46aの操作時に、姿勢演算部43bからの演算結果(作業装置1Aの姿勢及びバケット10の爪先の位置)と、目標面演算部43cからの演算結果(目標面60の位置)と、操作装置45a,45b,46aの操作量(操作量演算部43aの演算結果)と、MC有効無効判定部215からの判定結果とに基づいて、目標面60上またはその上方にバケット10の爪先(制御点)が位置するようにアームシリンダ6(アーム9)の動作を制御するMCを実行するための機能部である。アーム制御部81bでは、アームシリンダ6の流量制御弁15bの油圧駆動部151a,151bに導かれるパイロット圧の目標値(目標パイロット圧)が演算される。
バケット制御部81cは、操作装置45a,45b,46aの操作時に、MCによるバケット角度制御を実行するための機能部である。具体的には、目標面60とバケット10の爪先の距離Dが予め定めた所定値以下のとき、目標面60に対するバケット10の角度(角度θ,φから算出可能)が目標面に対して予め設定した僕票角度となるようにバケットシリンダ7(すなわち、バケット10)の動作を制御するMCが実行される。バケット制御部81cでは、バケットシリンダ7の流量制御弁15cの油圧駆動部152a,152bに導かれるパイロット圧の目標値(目標パイロット圧)が演算される。
MC有効無効判定部215は、MC制御有効無効切換装置96からの入力に基づいて、MC制御有効無効切換装置96の信号がONかOFFか、すなわち、MCの有効化が指示されているか無効化が指示されているかを判定する。
流量制御弁パイロット圧演算部217は、流量制御弁パイロット圧検出装置(圧力センサ70c)からの入力に基づいて、流量制御弁15aの油圧駆動部150bの圧力(ブーム下げパイロット圧)を算出する。
ブリードオフ流量制御部80aは、流量制御弁15aの油圧駆動部150bに導かれるパイロット圧の検出結果(圧力センサ70cの検出結果)に基づく流量制御弁パイロット圧演算部217の演算結果と、MC有効無効判定部215からの判定結果とに基づいて、MCによるブリードオフ流量制御弁170の制御を実行するための機能部である。ブリードオフ流量制御部80aでは、電磁比例弁171で生成されてブリードオフ流量制御弁170に導かれるパイロット圧の目標値(目標パイロット圧)が演算される。
電磁比例弁制御部44は、MC制御部43のアクチュエータ制御部81から出力される各流量制御弁15a,15b,15cについての目標パイロット圧に基づいて各電磁比例弁54,55,56への制御信号(電流値)を演算して出力するとともに、MC制御部43のブリードオフ流量制御部80aから出力されるブリードオフ流量制御弁170についての目標パイロット圧に基づいて電磁比例弁171への制御信号(電流値)を演算して出力する。なお、オペレータ操作に基づくパイロット圧(第1制御信号)と、アクチュエータ制御部81で算出された目標パイロット圧が一致する場合には、該当する電磁比例弁54,55,56への制御信号(電流値)はゼロとなり、該当する電磁比例弁54,55,56の動作は行われない。
<ブリードオフ流量制御弁170の開口面積制御>
ここで、ブリードオフ流量制御弁170の開口面積制御について説明する。
図6は、コントローラによるブリードオフ流量制御弁の開口面積制御の処理内容を示すフローチャートである。
コントローラ40は、まず、MC制御有効無効切換装置96からの設定信号(MC有効無効信号)を取得し(ステップS100)、MC制御の有効化が設定されているか否かを判定する(ステップS110)。
ステップS110での判定結果がYESの場合、すなわち、MC制御の有効化が設定されている場合には、流量制御弁パイロット圧検出装置(圧力センサ70c)の検出結果、すなわち、ブームシリンダ5に対応する流量制御弁15aの油圧駆動部150bに導かれるブーム下げパイロット圧を取得し(ステップS120)、ブーム下げパイロット圧が0(ゼロ)であるか否かを判定する(ステップS130)。なお、ステップS130においてはブーム下げパイロット圧が0(ゼロ)であるか否かを判定しているが、より正確には、ブーム下げ操作が行われていないか否かを判定するために予め定めた基準値よりブーム下げパイロット圧が低いか否かを判定している。
ステップS130での判定結果がNOの場合、すなわち、ブーム下げパイロット圧が基準値以上である場合、言い換えると、ブーム下げ操作が行われている場合には、ブーム下げパイロット圧(Pi_BmD)とブリードオフ流量制御弁170の目標パイロット圧(Pi_Bld)との関係を予め定めたマップに応じてブリードオフ流量制御弁170の目標パイロット圧(Pi_Bld)を算出する(ステップS131)。
続いて、ステップS131で算出した目標パイロット圧(Pi_Bld)に応じた制御信号を電磁比例弁171に出力し(ステップS140)、処理を終了する。
また、ステップS110での判定結果がNOの場合、すなわち、MC制御の無効化が設定されている場合には、ブリードオフ流量制御弁170の目標パイロット圧(Pi_Bld)に0(ゼロ)を設定し(ステップS111)、設定した目標パイロット圧(Pi_Bld)に応じた制御信号を電磁比例弁171に出力して(ステップS140)、処理を終了する。
同様に、ステップS130での判定結果がNOの場合、すなわち、ブーム下げパイロット圧が0(ゼロ)である場合、言い換えると、ブーム下げ制御が行われていない場合には、ブリードオフ流量制御弁170の目標パイロット圧(Pi_Bld)に0(ゼロ)を設定し(ステップS111)、設定した目標パイロット圧(Pi_Bld)に応じた制御信号を電磁比例弁171に出力して(ステップS140)、処理を終了する。
コントローラ40は、油圧ショベル1が稼働中には、例えば、コントローラ40の制御サイクル毎にステップS100~S140の処理を繰り返す。
<作用・効果>
以上のように構成した本実施の形態における作用効果を説明する。
図7は、水平掘削時における作業装置の動作の一例を示す図である。
図7においては、MC有効時の水平掘削において、作業装置1Aが状態S1(掘削開始姿勢)から状態S2(アーム鉛直姿勢)を介して状態S3(掘削終了姿勢)に遷移する場合を示している。また、図7には、ブームとアームの動作による制御点の移動方向及び移動速度を速度ベクトルにより示している。
水平掘削を行う場合、オペレータは、作業装置1Aが状態S1から状態2を経て状態S3に遷移するようにアーム9のクラウド操作を行う。
状態S1から状態S2に遷移する場合においては、オペレータのアームクラウド操作に対してバケット10のツメ先(制御点)が目標面60に侵入する方向に移動しようとするため、MC制御によって制御点が目標面60に侵入しないように(目標面60上を移動するように)自動的にブーム8の上げ動作が行われる。したがって、状態S1から状態S2においては、オペレータが操作レバー1aを操作しブーム下げ操作を入力したとしても、MC制御によって電磁比例弁54bの開度が0(ゼロ)に制御されることで流量制御弁15aの油圧駆動部150bにパイロット圧が加わらない。このとき、オペレータがブーム下げ操作を入力したタイミングに関わらず圧力センサ70cによって検出される流量制御弁15aの油圧駆動部150bの圧力はゼロとなり、ブリードオフ流量制御弁170の目標パイロット圧Pi_Bldが0(ゼロ)に設定される(図6のステップS111参照)。すなわち、ブリードオフ流量制御弁170の開度は最大(最大開口)となる。
状態S2から状態S3に遷移する場合においては、オペレータのアームクラウド操作に対してバケット10のツメ先は目標面60から離れる方向に動作するため、MC制御によるブーム8の上げ動作は行われない。一方で、オペレータはブーム8の下げ操作を継続的に行うが、MC制御によって電磁比例弁54bの開口が調整されて流量制御弁15aの油圧駆動部150bに作用する圧力が制御されることにより、バケット10のツメ先が目標面60に侵入しないようにブーム下げ動作の速度が制御される。このとき、ブーム下げパイロット圧に応じたブリードオフ流量制御弁170の目標パイロット圧(Pi_Bld)が演算される(図6のステップS130参照)。すなわち、ブーム下げ動作時にブリードオフ流量制御弁170が閉じることになり、ブリードオフ流量が減少またはゼロになる。また、油圧ポンプ49から吐出された油が作動油タンク173へ直接流れる流路(ブリードオフ管路173a)、すなわち、最も負荷の小さい流路が閉じることで油圧ポンプ49から吐出された油を流量制御弁15aを介してブームシリンダ5のロッド側油室に効率良く供給することが可能となる。
このように、水平掘削のようにMC制御中にブーム8の下げ動作が行われる場合(状態S2から状態S3)において、掘削中の地面からの反力等の外的要因の影響を受けやすく流量制御性悪化の原因であるブリードオフ流量を低減またはゼロとし、さらに、掘削中の地面からの反力等の外的要因の影響を受けにくい油圧ポンプ49からの吐出油をブームシリンダ5のロッド側油室に供給するように構成したので、ブーム8の下げ動作の流量制御性を向上させることができる。
なお、MC制御を無効化して、オペレータが手動操作によって油圧ショベル1の作業装置1Aを動作させる場合は、ブリードオフ流量制御弁170の目標パイロット圧(Pi_Bld)が0(ゼロ)に設定される(図6のステップS111参照)。すなわち、ブリードオフ流量制御弁170のパイロット圧は、操作レバー1a、1bの操作量に関わらず、常に0(ゼロ)となるので、ブリードオフ流量制御弁170の開口面積は常に最大開口となる。
以上のように構成した本実施の形態においては、基端を本体B1(機械本体)に回動可能に連結されたブーム8、ブーム8の先端に一端を回動可能に連結されたアーム9、及び、アーム9の他端に回動可能に連結されたバケット10(作業具)を含む複数の被駆動部材で構成された多関節型の作業装置1Aと、操作信号に基づいてブーム8を駆動するブームシリンダ5、アーム9を駆動するアームシリンダ6、及び、バケット10(作業具)を駆動するバケットシリンダ7(作業具シリンダ)を含む複数の油圧アクチュエータ5,6,7と、複数のアクチュエータ5,6,7を駆動するための圧油を吐出する少なくとも1つの油圧ポンプ49と、複数の油圧アクチュエータ5,6,7のうちオペレータの所望する油圧アクチュエータ5,6,7を操作するための操作信号を出力する操作装置45,46と、操作装置45,46からの操作信号に基づいて油圧ポンプ49から複数の油圧アクチュエータ5,6,7にそれぞれ供給される圧油の方向および流量を制御する流量制御弁15a,15b,15cと、ブームシリンダ5のロッド側油室と流量制御弁とを接続するロッド側管路176と、ブームシリンダ5のボトム側油室と流量制御弁とを接続するボトム側管路177と、ブームシリンダ5のロッド側管路176とボトム側管路177とを流量制御弁15aを介して接続し、ブーム8を下げるブーム下げ動作時にボトム側油室からロッド側油室に圧油を供給する再生管路175と、作業装置1Aによる作業対象について設定された目標面60上およびその上方の領域内で作業装置1Aが動くように、複数の油圧アクチュエータ5,6,7のうち少なくとも1つに対応する流量制御弁15a,15b,15cを制御する制御信号を出力するか、又は、操作装置45,46から複数の油圧アクチュエータ5,6,7のうち少なくとも1つに対応する流量制御弁15a,15b,15cを制御するために出力された制御信号を補正する領域制限制御を実行するコントローラ40とを備えた油圧ショベル1(作業機械)において、油圧ポンプ49から吐出される圧油を流量制御弁15a,15b,15cに供給する供給管路49aと作動油タンク173とを接続するブリードオフ管路173aに設けられ、開口面積を変えることによってブリードオフ管路173aにおける圧油の流量を制御するブリードオフ流量制御弁170と、領域制限制御の有効化と無効化とを切り換えるMC制御ON/OFFスイッチ96(領域制限制御切換装置)とを備え、コントローラ40は、MC制御ON/OFFスイッチ96(領域制限制御切換装置)によって領域制限制御が有効化されている場合に、ブーム8を下げるブーム下げを指示する操作信号に応じて、ブリードオフ流量制御弁170の開口面積を制御するように構成したので、エネルギー効率、ジャッキアップ動作、及び、ブーム下げ急操作時の応答性を確保しつつ、流量制御性を向上することにより、作業装置の挙動の安定性を向上することができる。
<第2の実施の形態>
本発明の第2の実施の形態を図9~図12を参照しつつ説明する。
本実施の形態は、ブリードオフ管路173aに設けたブリードオフ流量制御弁170に加え、再生管路175にブーム再生流量制御弁178を設け、ブーム8やアーム9に対する操作装置45,46の操作に応じてブリードオフ流量制御弁170及びブーム再生流量制御弁178の開度を制御するように構成したものである。
図9は、本実施の形態に係る油圧ショベルの油圧回路システムをコントローラを含む周辺構成とともに抜き出して示す図である。図中、第1の実施の形態と同様の部材には同じ符号を付し、説明を省略する。
図9に示すように、フロント制御用油圧ユニット160は、ブーム8用の操作装置45aのパイロットライン144a,144bに設けられ、操作レバー1aの操作量としてパイロット圧(第1制御信号)を検出するオペレータ操作検出装置としての圧力センサ70a,70bと、一次ポート側がポンプライン148aを介してパイロットポンプ48に接続され、パイロットポンプ48からのパイロット圧を減圧して出力する電磁比例弁54aと、ブーム8用の操作装置45aのパイロットライン144aと電磁比例弁54aの二次ポート側に接続され、パイロットライン144a内のパイロット圧と電磁比例弁54aから出力される制御圧のうちの高圧側を選択し、流量制御弁15aの油圧駆動部150aに導くシャトル弁82aと、ブーム8用の操作装置45aのパイロットライン144bに設置され、コントローラ40からの制御信号を基にパイロットライン144b内のパイロット圧(第1制御信号)を低減して流量制御弁15aの油圧駆動部150bに導く電磁比例弁54bと、電磁比例弁54bで低減されて流量制御弁15aの油圧駆動部150bに導かれるパイロット圧(第2制御信号)を検出する圧力センサ70c(流量制御弁パイロット圧検出装置)と、電磁比例弁55a,55bで低減されて流量制御弁15bの油圧駆動部151a,151bにそれぞれ導かれるパイロット圧(第2制御信号)を検出する圧力センサ71c,71d(流量制御弁パイロット圧検出装置)とを備えている。
また、図9に示すように、ブームシリンダ5のロッド側油室と流量制御弁15aとを接続するロッド側管路176と、ブームシリンダ5のボトム側油室と流量制御弁15aとを接続するボトム側管路177との間には、流量制御弁15aを介して接続され、ブーム8を下げるブーム下げ動作時(すなわち、ブームシリンダ5の縮退時)にボトム側油室からの排出油をロッド側油室に供給する再生管路175が設けられている。また、再生管路175には、開口面積を変えることによって再生管路175における圧油の流量を制御するブーム再生流量制御弁178が設けられている。ブーム再生流量制御弁178は、非通電時には開度が最大で、コントローラ40からの制御信号である電流が増大するほど開度が小さくなる。
図10は、本実施の形態に係るMC制御部の処理機能を関連構成とともに詳細に示す機能ブロック図である。
図10に示すように、MC制御部43は、操作量演算部43aと、姿勢演算部43bと、目標面演算部43cと、MC有効無効判定部215と、流量制御弁パイロット圧演算部217と、アクチュエータ制御部81、ブリードオフ流量制御部80aと、ブーム再生流量制御部80bとを備えている。また、アクチュエータ制御部81は、ブーム制御部81aと、アーム制御部81bと、バケット制御部81cとを有している。
ブーム再生流量制御部80bは、流量制御弁15aの油圧駆動部150bに導かれるパイロット圧の検出結果(圧力センサ70cの検出結果)に基づく流量制御弁パイロット圧演算部217の演算結果と、MC有効無効判定部215からの判定結果とに基づいて、MCによるブーム再生流量制御弁178の制御を実行するための機能部である。ブーム再生流量制御部80bでは、ブーム再生流量制御弁178の制御信号(電流値)の目標値(目標制御電流値)が演算される。
<ブリードオフ流量制御弁170の開口面積制御>
ブリードオフ流量制御弁170の開口面積制御について説明する。
図11は、コントローラによるブリードオフ流量制御弁の開口面積制御の処理内容を示すフローチャートである。
コントローラ40は、まず、MC制御有効無効切換装置96からの設定信号(MC有効無効信号)を取得し(ステップS200)、MC制御の有効化が設定されているか否かを判定する(ステップS210)。
ステップS210での判定結果がYESの場合、すなわち、MC制御の有効化が設定されている場合には、流量制御弁パイロット圧検出装置(圧力センサ70c)の検出結果、すなわち、ブームシリンダ5に対応する流量制御弁15aの油圧駆動部150bに導かれるブーム下げパイロット圧を取得し(ステップS220)、ブーム下げパイロット圧が0(ゼロ)であるか否かを判定する(ステップS230)。なお、ステップS230においてはブーム下げパイロット圧が0(ゼロ)であるか否かを判定しているが、より正確には、ブーム下げ操作が行われていないか否かを判定するために予め定めた基準値よりブーム下げパイロット圧が低いか否かを判定している。
ステップS230での判定結果がNOの場合、すなわち、ブーム下げパイロット圧が基準値以上である場合、言い換えると、ブーム下げ操作が行われている場合には、ブーム下げパイロット圧(Pi_BmD)とブリードオフ流量制御弁170の基準パイロット圧(Pi_bld)との関係を予め定めたマップに応じてブリードオフ流量制御弁170の基準パイロット圧(Pi_bld)を算出する(ステップS240)。
続いて、オペレータ操作検出装置(圧力センサ71a)の検出結果、すなわち、アームシリンダ6に対応する流量制御弁15bの油圧駆動部151aに導かれるアームクラウドパイロット圧(Pi_AmC)を取得するとともに(ステップS250)、オペレータ操作検出装置(圧力センサ71b)の検出結果、すなわち、アームシリンダ6に対応する流量制御弁15bの油圧駆動部151bに導かれるアームダンプパイロット圧(Pi_AmD)を取得し(ステップS260)、アームクラウドパイロット圧(Pi_AmC)がアームダンプパイロット圧(Pi_AmD)以上であるか否かを判定する(ステップS270)。
ステップS270での判定結果がYESの場合、すなわち、アームクラウド操作が行われている場合には、アームクラウドパイロット圧(Pi_AmC)とブリードオフ流量制御弁170の制御ゲイン(G_b)との関係を予め定めたマップに応じてブリードオフ流量制御弁170の制御ゲイン(G_b)を算出する(ステップS271)。
また、ステップS270での判定結果がNOの場合、すなわち、アームダンプ操作が行われている場合には、アームダンプパイロット圧(Pi_AmD)とブリードオフ流量制御弁170の制御ゲイン(G_b)との関係を予め定めたマップに応じてブリードオフ流量制御弁170の制御ゲイン(G_b)を算出する(ステップS272)。
ステップS271又はS272の処理によってブリードオフ流量制御弁170の制御ゲイン(G_b)が算出されると、続いて、ブリードオフ流量制御弁170の基準パイロット圧(Pi_bld)と制御ゲイン(G_b)とを掛け合わせて、ブリードオフ流量制御弁170の目標パイロット圧(Pi_Bld)を算出する(ステップS280)
続いて、ステップS280で算出した目標パイロット圧(Pi_Bld)に応じた制御信号を電磁比例弁171に出力し(ステップS290)、処理を終了する。
また、ステップS210での判定結果がNOの場合、すなわち、MC制御の無効化が設定されている場合には、ブリードオフ流量制御弁170の目標パイロット圧(Pi_Bld)に0(ゼロ)を設定し(ステップS211)、設定した目標パイロット圧(Pi_Bld)に応じた制御信号を電磁比例弁171に出力して(ステップS290)、処理を終了する。
同様に、ステップS230での判定結果がNOの場合、すなわち、ブーム下げパイロット圧が0(ゼロ)である場合、言い換えると、ブーム下げ制御が行われていない場合には、ブリードオフ流量制御弁170の目標パイロット圧(Pi_Bld)に0(ゼロ)を設定し(ステップS211)、設定した目標パイロット圧(Pi_Bld)に応じた制御信号を電磁比例弁171に出力して(ステップS290)、処理を終了する。
コントローラ40は、油圧ショベル1が稼働中には、例えば、コントローラ40の制御サイクル毎にステップS200~S290の処理を繰り返す。
<ブーム再生流量制御弁178の開口面積制御>
ブーム再生流量制御弁178の開口面積制御について説明する。
図12は、コントローラによるブーム再生流量制御弁の開口面積制御の処理内容を示すフローチャートである。
コントローラ40は、まず、MC制御有効無効切換装置96からの設定信号(MC有効無効信号)を取得し(ステップS300)、MC制御の有効化が設定されているか否かを判定する(ステップS310)。
ステップS310での判定結果がYESの場合、すなわち、MC制御の有効化が設定されている場合には、流量制御弁パイロット圧検出装置(圧力センサ70c)の検出結果、すなわち、ブームシリンダ5に対応する流量制御弁15aの油圧駆動部150bに導かれるブーム下げパイロット圧を取得し(ステップS320)、ブーム下げパイロット圧が0(ゼロ)であるか否かを判定する(ステップS330)。なお、ステップS330においてはブーム下げパイロット圧が0(ゼロ)であるか否かを判定しているが、より正確には、ブーム下げ操作が行われていないか否かを判定するために予め定めた基準値よりブーム下げパイロット圧が低いか否かを判定している。
ステップS330での判定結果がNOの場合、すなわち、ブーム下げパイロット圧が基準値以上である場合、言い換えると、ブーム下げ操作が行われている場合には、ブーム下げパイロット圧(Pi_BmD)とブーム再生流量制御弁178の基準制御電流値(Ic_reg)との関係を予め定めたマップに応じてブリードオフ流量制御弁170の基準制御電流値(Ic_reg)を算出する(ステップS340)。
続いて、オペレータ操作検出装置(圧力センサ71a)の検出結果、すなわち、アームシリンダ6に対応する流量制御弁15bの油圧駆動部151aに導かれるアームクラウドパイロット圧(Pi_AmC)を取得するとともに(ステップS350)、オペレータ操作検出装置(圧力センサ71b)の検出結果、すなわち、アームシリンダ6に対応する流量制御弁15bの油圧駆動部151bに導かれるアームダンプパイロット圧(Pi_AmD)を取得し(ステップS360)、アームクラウドパイロット圧(Pi_AmC)がアームダンプパイロット圧(Pi_AmD)以上であるか否かを判定する(ステップS370)。
ステップS370での判定結果がYESの場合、すなわち、アームクラウド操作が行われている場合には、アームクラウドパイロット圧(Pi_AmC)とブーム再生流量制御弁178の制御ゲイン(G_r)との関係を予め定めたマップに応じてブーム再生流量制御弁178の制御ゲイン(G_r)を算出する(ステップS371)。
また、ステップS370での判定結果がNOの場合、すなわち、アームダンプ操作が行われている場合には、アームダンプパイロット圧(Pi_AmD)とブーム再生流量制御弁178の制御ゲイン(G_r)との関係を予め定めたマップに応じてブーム再生流量制御弁178の制御ゲイン(G_r)を算出する(ステップS372)。
ステップS371又はS372の処理によってブーム再生流量制御弁178の制御ゲイン(G_r)が算出されると、続いて、ブーム再生流量制御弁178の基準制御電流値(Ic_reg)と制御ゲイン(G_r)とを掛け合わせて、ブーム再生流量制御弁178の目標制御電流値(Ic_Reg)を算出する(ステップS380)
続いて、ステップS380で算出した目標制御電流値(Ic_Reg)に応じた制御信号を電磁比例弁171に出力し(ステップS390)、処理を終了する。
また、ステップS310での判定結果がNOの場合、すなわち、MC制御の無効化が設定されている場合には、ブーム再生流量制御弁178の目標制御電流値(Ic_Reg)に0(ゼロ)を設定し(ステップS311)、設定した目標制御電流値(Ic_Reg)に応じた制御信号を電磁比例弁171に出力して(ステップS390)、処理を終了する。
同様に、ステップS330での判定結果がNOの場合、すなわち、ブーム下げパイロット圧が0(ゼロ)である場合、言い換えると、ブーム下げ制御が行われていない場合には、ブーム再生流量制御弁178の目標制御電流値(Ic_Reg)に0(ゼロ)を設定し(ステップS311)、設定した目標制御電流値(Ic_Reg)に応じた制御信号を電磁比例弁171に出力して(ステップS390)、処理を終了する。
コントローラ40は、油圧ショベル1が稼働中には、例えば、コントローラ40の制御サイクル毎にステップS300~S390の処理を繰り返す。
その他の構成は第1の実施の形態と同様である。
以上のように構成した本実施の形態においても第1の実施の形態と同様の効果を得ることができる。また、本実施の形態においては以下のような作用効果を得ることができる。
<作用・効果>
第1の実施の形態で図7に示したように、水平掘削を行う場合、オペレータは、作業装置1Aが状態S1から状態2を経て状態S3に遷移するようにアーム9のクラウド操作を行う。
状態S1から状態S2に遷移する場合においては、オペレータのアームクラウド操作に対してバケット10のツメ先(制御点)が目標面60に侵入する方向に移動しようとするため、MC制御によって制御点が目標面60に侵入しないように(目標面60上を移動するように)自動的にブーム8の上げ動作が行われる。したがって、状態S1から状態S2においては、オペレータが操作レバー1aを操作しブーム下げ操作を入力したとしても、MC制御によって電磁比例弁54bの開度が0(ゼロ)に制御されることで流量制御弁15aの油圧駆動部150bにパイロット圧が加わらない。
このとき、オペレータがブーム下げ操作を入力したタイミングに関わらず圧力センサ70cによって検出される流量制御弁15aの油圧駆動部150bの圧力はゼロとなり、ブリードオフ流量制御弁170の目標パイロット圧(Pi_Bld)が0(ゼロ)に設定される(図11のステップS211参照)。すなわち、ブリードオフ流量制御弁170の開度は最大(最大開口)となる。また、同様に、ブーム再生流量制御弁178の目標制御電流値(Ic_Reg)も0(ゼロ)に設定される(図12のステップS311参照)。すなわち、ブーム再生流量制御弁178の開度は最大(最大開口)となる。
状態S2から状態S3に遷移する場合においては、オペレータのアームクラウド操作に対してバケット10のツメ先は目標面60から離れる方向に動作するため、MC制御によるブーム8の上げ動作は行われない。一方で、オペレータはブーム8の下げ操作を継続的に行うが、MC制御によって電磁比例弁54bの開口が調整されて流量制御弁15aの油圧駆動部150bに作用する圧力が制御されることにより、バケット10のツメ先が目標面60に侵入しないようにブーム下げ動作の速度が制御される。
このとき、ブーム下げパイロット圧とアームクラウドパイロット圧(又は、アームダンプパイロット圧)に応じたブリードオフ流量制御弁170の目標パイロット圧(Pi_Bld)が演算される(図11のステップS280参照)。同様に、ブーム下げパイロット圧とアームクラウドパイロット圧(又は、アームダンプパイロット圧)に応じたブーム再生流量制御弁178の目標制御電流値(Ic_Reg)が演算される(図12のステップS380参照)。
ブーム下げ動作時かつアームクラウドパイロット圧またはアームダンプパイロット圧が高い場合すなわちバケット10のツメ先を目標面60に沿って動作させるためにブーム下げ動作の流量制御性がより必要となるアーム9の動作速度が速い場合にブリードオフ流量制御弁170が閉じることによりブリードオフ流量が減少またはゼロになり、ブーム再生流量制御弁178が閉じることによりブーム再生流量が減少またはゼロになる。また、油圧ポンプ49から吐出された油が作動油タンク173へ直接流れる流路すなわち最も負荷の小さい流路が閉じることで油圧ポンプ49から吐出された油を流量制御弁15aを介してブームシリンダ5のロッド側油室に供給することが可能となる。
また、水平掘削のようにMC制御中にブーム8の下げ動作が行われる場合(状態S2から状態S3)において、ブーム下げ動作の流量制御性があまり必要でないアーム9の動作速度が遅い場合に不必要にブリードオフ流量制御弁170とブーム再生流量制御弁178を閉じることなく、ブーム下げ動作の流量制御性がより必要となるアーム9の動作速度が速い場合に掘削中の地面からの反力等の外的要因の影響を受けやすく流量制御性悪化の原因であるブリードオフ流量とブーム再生流量を低減またはゼロとし、さらに掘削中の地面からの反力等の外的要因の影響を受けにくい油圧ポンプ49からの吐出油をブームシリンダ5のロッド側油室に供給することでブームシリンダ5をほぼ油圧ポンプ49からの吐出油によって動かすことができ、ブーム8の下げ動作の流量制御性を向上させることができる。
<第3の実施の形態>
本発明の第3の実施の形態を図13~図17を参照しつつ説明する。
本実施の形態は、ブリードオフ管路173aに設けたブリードオフ流量制御弁170に加え、再生管路175にブーム再生流量制御弁178を設け、ブーム8やアーム9に対する操作装置45,46の操作と、制御点と目標面との距離Dに応じてブリードオフ流量制御弁170及びブーム再生流量制御弁178の開度を制御するように構成したものである。
図13は、本実施の形態に係るMC制御部の処理機能を関連構成とともに詳細に示す機能ブロック図である。図中、第1及び第2の実施の形態と同様の部材には同じ符号を付し、説明を省略する。
図13に示すように、MC制御部43は、操作量演算部43aと、姿勢演算部43bと、目標面演算部43cと、MC有効無効判定部215と、流量制御弁パイロット圧演算部217と、アクチュエータ制御部81、ブリードオフ流量制御部80aと、ブーム再生流量制御部80bと、速度ベクトル演算部218と、距離演算部43dを備えている。また、アクチュエータ制御部81は、ブーム制御部81aと、アーム制御部81bと、バケット制御部81cとを有している。
距離演算部43dは、姿勢演算部43bの演算結果と、目標面演算部43cの演算結果とに基づいて、バケット10のツメ先(制御点)と目標面60との距離Dを演算する。
速度ベクトル演算部218は、姿勢検出装置(ブーム角度センサ30、アーム角度センサ31、バケット角度センサ32、車体傾斜角センサ33)からの情報に基づき、ローカル座標系における作業装置1Aの制御点(バケット10の爪先)の速度ベクトルを演算する。
ブリードオフ流量制御部80aは、流量制御弁15aの油圧駆動部150bに導かれるパイロット圧の検出結果(圧力センサ70cの検出結果)に基づく流量制御弁パイロット圧演算部217の演算結果と、MC有効無効判定部215からの判定結果と、距離演算部43dの演算結果と、速度ベクトル演算部218の演算結果とに基づいて、MCによるブリードオフ流量制御弁170の制御を実行するための機能部である。ブリードオフ流量制御部80aでは、電磁比例弁171で生成されてブリードオフ流量制御弁170に導かれるパイロット圧の目標値(目標パイロット圧)が演算される。
ブーム再生流量制御部80bは、流量制御弁15aの油圧駆動部150bに導かれるパイロット圧の検出結果(圧力センサ70cの検出結果)に基づく流量制御弁パイロット圧演算部217の演算結果と、MC有効無効判定部215からの判定結果と、距離演算部43dの演算結果と、速度ベクトル演算部218の演算結果とに基づいて、MCによるブーム再生流量制御弁178の制御を実行するための機能部である。ブーム再生流量制御部80bでは、ブーム再生流量制御弁178の制御信号(電流値)の目標値(目標制御電流値)が演算される。
<ブリードオフ流量制御弁170の開口面積制御>
ブリードオフ流量制御弁170の開口面積制御について説明する。
図14及び図15は、コントローラによるブリードオフ流量制御弁の開口面積制御の処理内容を示すフローチャートである。
コントローラ40は、まず、MC制御有効無効切換装置96からの設定信号(MC有効無効信号)を取得し(図14のステップS400)、MC制御の有効化が設定されているか否かを判定する(図14のステップS410)。
ステップS410での判定結果がYESの場合、すなわち、MC制御の有効化が設定されている場合には、流量制御弁パイロット圧検出装置(圧力センサ70c)の検出結果、すなわち、ブームシリンダ5に対応する流量制御弁15aの油圧駆動部150bに導かれるブーム下げパイロット圧を取得し(ステップS420)、ブーム下げパイロット圧が0(ゼロ)であるか否かを判定する(図14のステップS430)。なお、ステップS430においてはブーム下げパイロット圧が0(ゼロ)であるか否かを判定しているが、より正確には、ブーム下げ操作が行われていないか否かを判定するために予め定めた基準値よりブーム下げパイロット圧が低いか否かを判定している。
ステップS430での判定結果がNOの場合、すなわち、ブーム下げパイロット圧が基準値以上である場合、言い換えると、ブーム下げ操作が行われている場合には、姿勢検出装置30,31,32,33の検出結果、すなわち、作業装置1Aの姿勢情報と、目標面設定装置51の設定値、すなわち、目標面60の位置情報とを取得し(図14のステップS440,S450)、バケット10の爪先(制御点)と目標面60との距離Dが予め定めた第1距離以下であるか否かを判定する(図14のステップS460)。
ステップS460での判定結果がYESの場合には、続いて、姿勢検出装置30,31,32,33の検出結果からバケット10の爪先(制御点)の速度ベクトルを演算し(図14のステップS470)、速度ベクトルの向きが目標面60から離れる方向であるか否かを判定する(図14のステップS480)。
ステップS480での判定結果がYESの場合には、ブーム下げパイロット圧(Pi_BmD)とブリードオフ流量制御弁170の基準パイロット圧(Pi_bld)との関係を予め定めたマップに応じてブリードオフ流量制御弁170の基準パイロット圧(Pi_bld)を算出する(図15のステップS490)。
続いて、オペレータ操作検出装置(圧力センサ71a)の検出結果、すなわち、アームシリンダ6に対応する流量制御弁15bの油圧駆動部151aに導かれるアームクラウドパイロット圧(Pi_AmC)を取得するとともに(図15のステップS500)、オペレータ操作検出装置(圧力センサ71b)の検出結果、すなわち、アームシリンダ6に対応する流量制御弁15bの油圧駆動部151bに導かれるアームダンプパイロット圧(Pi_AmD)を取得し(図15のステップS510)、アームクラウドパイロット圧(Pi_AmC)がアームダンプパイロット圧(Pi_AmD)以上であるか否かを判定する(図15のステップS520)。
ステップS520での判定結果がYESの場合、すなわち、アームクラウド操作が行われている場合には、アームクラウドパイロット圧(Pi_AmC)とブリードオフ流量制御弁170の制御ゲイン(G_b)との関係を予め定めたマップに応じてブリードオフ流量制御弁170の制御ゲイン(G_b)を算出する(図15のステップS521)。
また、ステップS520での判定結果がNOの場合、すなわち、アームダンプ操作が行われている場合には、アームダンプパイロット圧(Pi_AmD)とブリードオフ流量制御弁170の制御ゲイン(G_b)との関係を予め定めたマップに応じてブリードオフ流量制御弁170の制御ゲイン(G_b)を算出する(図15のステップS522)。
ステップS521又はS522の処理によってブリードオフ流量制御弁170の制御ゲイン(G_b)が算出されると、続いて、ブリードオフ流量制御弁170の基準パイロット圧(Pi_bld)と制御ゲイン(G_b)とを掛け合わせて、ブリードオフ流量制御弁170の目標パイロット圧(Pi_Bld)を算出する(図15のステップS530)
続いて、ステップS530で算出した目標パイロット圧(Pi_Bld)に応じた制御信号を電磁比例弁171に出力し(図15のステップS540)、処理を終了する。
また、ステップS410(図14)での判定結果がNOの場合、すなわち、MC制御の無効化が設定されている場合には、ブリードオフ流量制御弁170の目標パイロット圧(Pi_Bld)に0(ゼロ)を設定し(図15のステップS411)、設定した目標パイロット圧(Pi_Bld)に応じた制御信号を電磁比例弁171に出力して(図15のステップS540)、処理を終了する。
同様に、ステップS430(図14)での判定結果がNOの場合、すなわち、ブーム下げパイロット圧が0(ゼロ)である場合、言い換えると、ブーム下げ制御が行われていない場合には、ブリードオフ流量制御弁170の目標パイロット圧(Pi_Bld)に0(ゼロ)を設定し(図15のステップS411)、設定した目標パイロット圧(Pi_Bld)に応じた制御信号を電磁比例弁171に出力して(図15のステップS540)、処理を終了する。
また、ステップS450(図14)での判定結果がNOの場合、すなわち、バケット10の爪先(制御点)と目標面60との距離Dが第1距離よりも大きい場合には、ブリードオフ流量制御弁170の目標パイロット圧(Pi_Bld)に0(ゼロ)を設定し(図15のステップS411)、設定した目標パイロット圧(Pi_Bld)に応じた制御信号を電磁比例弁171に出力して(図15のステップS540)、処理を終了する。
また、ステップS480(図14)での判定結果がNOの場合、すなわち、バケット10の爪先(制御点)の速度ベクトルが目標面60の方向である場合には、ブリードオフ流量制御弁170の目標パイロット圧(Pi_Bld)に0(ゼロ)を設定し(図15のステップS411)、設定した目標パイロット圧(Pi_Bld)に応じた制御信号を電磁比例弁171に出力して(図15のステップS540)、処理を終了する。
コントローラ40は、油圧ショベル1が稼働中には、例えば、コントローラ40の制御サイクル毎にステップS400~S540の処理を繰り返す。
<ブーム再生流量制御弁178の開口面積制御>
ブーム再生流量制御弁178の開口面積制御について説明する。
図16及び図17は、コントローラによるブーム再生流量制御弁の開口面積制御の処理内容を示すフローチャートである。
コントローラ40は、まず、MC制御有効無効切換装置96からの設定信号(MC有効無効信号)を取得し(図16のステップS600)、MC制御の有効化が設定されているか否かを判定する(図16のステップS610)。
ステップS610での判定結果がYESの場合、すなわち、MC制御の有効化が設定されている場合には、流量制御弁パイロット圧検出装置(圧力センサ70c)の検出結果、すなわち、ブームシリンダ5に対応する流量制御弁15aの油圧駆動部150bに導かれるブーム下げパイロット圧を取得し(ステップS420)、ブーム下げパイロット圧が0(ゼロ)であるか否かを判定する(図16のステップS630)。なお、ステップS430においてはブーム下げパイロット圧が0(ゼロ)であるか否かを判定しているが、より正確には、ブーム下げ操作が行われていないか否かを判定するために予め定めた基準値よりブーム下げパイロット圧が低いか否かを判定している。
ステップS630での判定結果がNOの場合、すなわち、ブーム下げパイロット圧が基準値以上である場合、言い換えると、ブーム下げ操作が行われている場合には、姿勢検出装置30,31,32,33の検出結果、すなわち、作業装置1Aの姿勢情報と、目標面設定装置51の設定値、すなわち、目標面60の位置情報とを取得し(図16のステップS640,S650)、バケット10の爪先(制御点)と目標面60との距離Dが予め定めた第1距離以下であるか否かを判定する(図16のステップS660)。
ステップS660での判定結果がYESの場合には、続いて、姿勢検出装置30,31,32,33の検出結果からバケット10の爪先(制御点)の速度ベクトルを演算し(図16のステップS670)、速度ベクトルの向きが目標面60から離れる方向であるか否かを判定する(図16のステップS680)。
ステップS680での判定結果がYESの場合には、ブーム下げパイロット圧(Pi_BmD)とブーム再生流量制御弁178の基準制御電流値(Ic_reg)との関係を予め定めたマップに応じてブーム再生流量制御弁178の基準制御電流値(Ic_reg)を算出する(図17のステップS690)。
続いて、オペレータ操作検出装置(圧力センサ71a)の検出結果、すなわち、アームシリンダ6に対応する流量制御弁15bの油圧駆動部151aに導かれるアームクラウドパイロット圧(Pi_AmC)を取得するとともに(図17のステップS700)、オペレータ操作検出装置(圧力センサ71b)の検出結果、すなわち、アームシリンダ6に対応する流量制御弁15bの油圧駆動部151bに導かれるアームダンプパイロット圧(Pi_AmD)を取得し(図17のステップS710)、アームクラウドパイロット圧(Pi_AmC)がアームダンプパイロット圧(Pi_AmD)以上であるか否かを判定する(図17のステップS720)。
ステップS720での判定結果がYESの場合、すなわち、アームクラウド操作が行われている場合には、アームクラウドパイロット圧(Pi_AmC)とブーム再生流量制御弁178の制御ゲイン(G_r)との関係を予め定めたマップに応じてブーム再生流量制御弁178の制御ゲイン(G_r)を算出する(図17のステップS721)。
また、ステップS720での判定結果がNOの場合、すなわち、アームダンプ操作が行われている場合には、アームダンプパイロット圧(Pi_AmD)とブーム再生流量制御弁178の制御ゲイン(G_r)との関係を予め定めたマップに応じてブーム再生流量制御弁178の制御ゲイン(G_r)を算出する(図17のステップS722)。
ステップS721又はS722の処理によってブーム再生流量制御弁178の制御ゲイン(G_r)が算出されると、続いて、ブーム再生流量制御弁178の基準制御電流値(Ic_reg)と制御ゲイン(G_r)とを掛け合わせて、ブーム再生流量制御弁178の目標制御電流値(Ic_Reg)を算出する(図17のステップS730)
続いて、ステップS730で算出した目標制御電流値(Ic_Reg)に応じた制御信号を電磁比例弁171に出力し(図17のステップS740)、処理を終了する。
また、ステップS610(図16)での判定結果がNOの場合、すなわち、MC制御の無効化が設定されている場合には、ブーム再生流量制御弁178の目標制御電流値(Ic_Reg)に0(ゼロ)を設定し(図17のステップS611)、設定した目標制御電流値(Ic_Reg)に応じた制御信号を電磁比例弁171に出力して(図17のステップS740)、処理を終了する。
同様に、ステップS630(図16)での判定結果がNOの場合、すなわち、ブーム下げパイロット圧が0(ゼロ)である場合、言い換えると、ブーム下げ制御が行われていない場合には、ブーム再生流量制御弁178の目標制御電流値(Ic_Reg)に0(ゼロ)を設定し(図17のステップS611)、設定した目標制御電流値(Ic_Reg)に応じた制御信号を電磁比例弁171に出力して(図17のステップS740)、処理を終了する。
また、ステップS650(図16)での判定結果がNOの場合、すなわち、バケット10の爪先(制御点)と目標面60との距離Dが第1距離よりも大きい場合には、ブーム再生流量制御弁178の目標制御電流値(Ic_Reg)に0(ゼロ)を設定し(図17のステップS611)、設定した目標制御電流値(Ic_Reg)に応じた制御信号を電磁比例弁171に出力して(図17のステップS740)、処理を終了する。
また、ステップS680(図14)での判定結果がNOの場合、すなわち、バケット10の爪先(制御点)の速度ベクトルが目標面60の方向である場合には、ブーム再生流量制御弁178の目標制御電流値(Ic_Reg)に0(ゼロ)を設定し(図17のステップS611)、設定した目標制御電流値(Ic_Reg)に応じた制御信号を電磁比例弁171に出力して(図17のステップS740)、処理を終了する。
コントローラ40は、油圧ショベル1が稼働中には、例えば、コントローラ40の制御サイクル毎にステップS600~S740の処理を繰り返す。
その他の構成は第1及び第2の実施の形態と同様である。
以上のように構成した本実施の形態においても第1及び第2の実施の形態と同様の効果を得ることができる。また、本実施の形態においては以下のような作用効果を得ることができる。
<作用・効果>
第1の実施の形態で図7に示したように、水平掘削を行う場合、オペレータは、作業装置1Aが状態S1から状態2を経て状態S3に遷移するようにアーム9のクラウド操作を行う。
状態S2から状態S3においてオペレータのアームクラウド操作に対してバケット10のツメ先は目標面60から離れる方向に動作するためMC制御によってブーム8の上げ動作は行われない。一方でオペレータはブーム8の下げ操作を行っているためMC制御によって電磁比例弁54bの開口が調整され流量制御弁15aの油圧駆動部150bに作用する圧力が制御される。これによってバケット10のツメ先が目標面60に侵入しないようにブーム下げ動作の速度が制御される。
この時ブーム下げ動作が行われているため、バケット10のツメ先は目標面に十分に近い距離で動作している。次に、状態S2から状態S3においてアーム9はクラウド動作が行われておりアーム9のクラウド動作に対してバケット10のツメ先の速度ベクトルは目標面60から上方向に離れる方向となる。この時、バケット10は動作していないため、アーム9とバケット10の動作によるバケット10のツメ先の速度ベクトルはアーム9の動作によって決まり目標面60から上方向に離れる方向となる。このとき、ブーム下げパイロット圧とアームクラウドパイロット圧(又は、アームダンプパイロット圧)に応じたブリードオフ流量制御弁170の目標パイロット圧(Pi_Bld)が演算される(図15のステップS530参照)。同様に、ブーム下げパイロット圧とアームクラウドパイロット圧(又は、アームダンプパイロット圧)に応じたブーム再生流量制御弁178の目標制御電流値(Ic_Reg)が演算される(図17のステップS730参照)。
ブーム下げ動作時かつアームクラウドパイロット圧またはアームダンプパイロット圧が高い場合すなわちバケット10のツメ先を目標面60に沿って動作させるためにブーム下げ動作の流量制御性がより必要となるアーム9の動作速度が速い場合かつバケット10のツメ先と目標面60との距離Dが第1距離よりも小さい場合かつアーム9とバケット10の動作によるバケット10のツメ先の速度ベクトルが目標面60から上方向に離れる方向となる場合すなわちバケット10のツメ先を目標面60に沿って動作させるためにブーム下げ動作を行う必要がある場合にブリードオフ流量制御弁170が閉じることによりブリードオフ流量が減少またはゼロになり、ブーム再生流量制御弁178が閉じることによりブーム再生流量が減少またはゼロになる。また、油圧ポンプ49から吐出された油が作動油タンク173へ直接流れる流路すなわち最も負荷の小さい流路が閉じることで油圧ポンプ49から吐出された油を流量制御弁15aを介してブームシリンダ5のロッド側油室に供給することが可能となる。
これによってMC制御中のブーム8の下げ動作が行われる状態S2から状態S3においてブーム下げ動作の流量制御性があまり必要でないアーム9の動作速度が遅い場合と、バケット10のツメ先が目標面60から離れた位置にある場合と、アーム9とバケット10の動作によるバケット10のツメ先の速度ベクトルが目標面60に近づく方向である場合と目標面60から下方向に離れる方向である場合すなわちバケット10のツメ先を目標面60に沿って動作させるためにブーム下げ動作が必要ない場合に不必要にブリードオフ流量制御弁170とブーム再生流量制御弁178を閉じることなく、ブーム下げ動作の流量制御性がより必要となるアーム9の動作速度が速い場合と、バケット10のツメ先が目標面60から近い位置にある場合と、アーム9とバケット10の動作によるバケット10のツメ先の速度ベクトルが目標面60から上方向に離れる方向である場合すなわちバケット10のツメ先を目標面60に沿って動作させるためにブーム下げ動作の流量制御性が必要である場合に掘削中の地面からの反力等の外的要因の影響を受けやすく流量制御性悪化の原因であるブリードオフ流量とブーム再生流量を低減またはゼロとし、さらに掘削中の地面からの反力等の外的要因の影響を受けにくい油圧ポンプ49からの吐出油をブームシリンダ5のロッド側油室に供給することでブームシリンダ5をほぼ油圧ポンプ49からの吐出油によって動かすことができ、ブーム8の下げ動作の流量制御性を向上させることができる。
<付記>
なお、本発明は上記の実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲内の様々な変形例や組み合わせが含まれる。また、本発明は、上記の実施の形態で説明した全ての構成を備えるものに限定されず、その構成の一部を削除したものも含まれる。
例えば、上記の実施の形態においては、油圧パイロット式の油圧ショベルを例示して説明したが、電気レバー式の油圧ショベルにも適用可能であり、例えば、電気レバーから生成される指令電流を制御するような構成としても良い。また、作業装置1Aの速度ベクトルは、オペレータ操作によるパイロット圧ではなく、ブーム8、アーム9、バケット10の角度を微分することで算出される角速度から求めても良い。
また、上記の各構成、機能等は、それらの一部又は全部を、例えば集積回路で設計する等により実現してもよい。また、上記の各構成、機能等は、プロセッサがそれぞれの機能を実現するプログラムを解釈し、実行することによりソフトウェアで実現してもよい。