貯水槽を含む給水系管路を施工する際には、パイプを切断して接続したり、パイプの接続部分などにシールテープを巻いたりするため、パイプの切断屑やシールテープの切れ端などの異物が貯水槽の槽本体内に入り込んでしまう場合がある。縦管状(つまり縦方向に長い縦置きタイプ)の槽本体を有する貯水槽であれば、槽本体の最下部にドレンを設けておけば、そのドレンから槽本体内の異物を流出させることができる。しかし、横管状(つまり横方向に長い横置きタイプ)の槽本体を有する貯水槽の場合には、槽本体の最下部にドレンを設けても、槽本体内に異物が残ってしまう恐れがある。
それゆえに、この発明の主たる目的は、新規な、貯水槽の洗浄方法および施工方法を提供することである。
この発明の他の目的は、横管状の槽本体を有する貯水槽であっても、特別な洗浄器具を用いることなく、槽本体内に入った異物を除去できる、貯水槽の洗浄方法および施工方法を提供することである。
第1の発明は、横管状の槽本体と、槽本体に形成されて給水管に接続される流入口と、槽本体の下部に形成されて槽本体内の水道水を給水栓に配水する配水管に接続される流出口と、槽本体の上部に設けられて排気が可能な口として機能する排気口とを備える貯水槽の洗浄方法において、排気口からの排気を停止して槽本体内に空気層を形成した状態で、流入口から槽本体内に給水圧が作用する水道水を流し込んで流出口から排出させるフラッシング洗浄を行うことを特徴とする、貯水槽の洗浄方法である。
第1の発明では、給水系管路に設けられる貯水槽の内部を洗浄する。この貯水槽は、横管状の槽本体と、槽本体に形成される流入口と、槽本体の下部に形成される流出口と、槽本体の上部に設けられて排気が可能な口として機能する排気口とを備えるものである。また、流入口には、水道管から分岐した給水管が接続され、流出口には、給水栓へとつながる配水管が接続される。そして、この第1の発明では、排気口からの排気を停止した状態で、流入口から槽本体内に給水圧が作用する水道水を流し込んで流出口から排出させるフラッシング洗浄を行う。排気口からの排気を停止した状態でフラッシング洗浄を行うことで、槽本体内に水道水が流入しても、槽本体内には空気層が形成されたままの状態となる。つまり、槽本体内が満水状態の場合と比較して、槽本体内を流れる水道水の断面積が小さくなるので、水道水の流速が上がり、異物を流出口まで搬送する能力が向上する。
第1の発明によれば、給水圧が作用する水道水を槽本体内に流し込むフラッシング洗浄を行うので、特別な洗浄器具を用いることなく、槽本体内に入った異物を簡単に除去できる。また、フラッシング洗浄時に、槽本体に設けられる排気口からの排気を停止して槽本体内に空気層を形成するので、槽本体内を流れる水道水の流速が大きくなる。したがって、異物の搬送能力が向上し、より確実に槽本体内の異物を除去できる。
第2の発明は、第1の発明に従属し、フラッシング洗浄を行う前に、槽本体内を満水にした後、槽本体から水を抜く予備洗浄を行う。
第2の発明では、フラッシング洗浄を行う前に、槽本体内を満水にした後、槽本体から水を抜く予備洗浄を行う。この予備洗浄によって、槽本体の内面上部または内面側部に付着した異物がある場合でも、その異物は、槽本体の底部に洗い落とされる。その後、フラッシング洗浄を行うことによって、槽本体の底部に残った異物が槽本体内から除去される。
第2の発明によれば、フラッシング洗浄を行う前に、槽本体内を一度満水にする予備洗浄を行うので、槽本体の内面上部などに付着した異物がある場合にも、その異物を槽本体内から確実に除去できる。
第3の発明は、横管状の槽本体と、槽本体に形成されて給水管に接続される流入口と、槽本体の下部に形成されて槽本体内の水道水を給水栓に配水する配水管に接続される流出口と、槽本体の上部に設けられて排気が可能な口として機能する排気口とを備える貯水槽の洗浄方法において、槽本体内を満水にした後、槽本体から水を抜く予備洗浄を行い、予備洗浄の後、流入口から槽本体内に給水圧が作用する水道水を流し込んで流出口から排出させるフラッシング洗浄を行うことを特徴とする、貯水槽の洗浄方法である。
第3の発明では、給水系管路に設けられる貯水槽の内部を洗浄する。この貯水槽は、横管状の槽本体と、槽本体に形成される流入口と、槽本体の下部に形成される流出口と、槽本体の上部に設けられて排気が可能な口として機能する排気口とを備えるものである。また、流入口には、水道管から分岐した給水管が接続され、流出口には、給水栓へとつながる配水管が接続される。この第3の発明では、先ず、槽本体内を満水にした後、槽本体から水を抜く予備洗浄を行う。この予備洗浄によって、槽本体の内面上部または内面側部に付着した異物がある場合には、その異物は、槽本体の底部に洗い落とされる。そして、予備洗浄の後、流入口から槽本体内に給水圧が作用する水道水を流し込んで流出口から排出させるフラッシング洗浄を行うことによって、槽本体の底部に残った異物が槽本体内から除去される。
第3の発明によれば、給水圧が作用する水道水を槽本体内に流し込むフラッシング洗浄を行うので、特別な洗浄器具を用いることなく、槽本体内に入った異物を簡単に除去できる。また、フラッシング洗浄を行う前に、槽本体内を一度満水にする予備洗浄を行うので、槽本体の内面上部などに付着した異物がある場合にも、その異物を槽本体内から確実に除去できる。
第4の発明は、第3の発明に従属し、フラッシング洗浄は、排気口からの排気を停止して槽本体内に空気層を形成した状態で行う。
第4の発明では、排気口からの排気を停止した状態でフラッシング洗浄を行う。このように排気口からの排気を停止した状態でフラッシング洗浄を行うことで、槽本体内に水道水が流入しても、槽本体内には空気層が形成されたままの状態となる。つまり、槽本体内を流れる水道水の断面積が小さくなるので、水道水の流速が上がり、異物を流出口まで搬送する能力が向上する。
第4の発明によれば、フラッシング洗浄を行う際に、槽本体に設けられる排気口からの排気を停止して槽本体内に空気層を形成するので、槽本体内を流れる水道水の流速が大きくなる。したがって、より確実に槽本体内の異物を除去できる。
第5の発明は、第1ないし第4のいずれかの発明に従属し、フラッシング洗浄時において、流入口から槽本体内に流し込む水道水は、所定の周期で流量が変動する脈動水とする。
第5の発明では、フラッシング洗浄時に槽本体内に流し込む水道水を所定の周期で流量(水圧)が変動する脈動水とする。これにより、槽本体内の異物を搬送する能力が向上する。
第6の発明は、横管状の槽本体と、槽本体に形成されて給水管に接続される流入口と、槽本体の下部に形成されて槽本体内の水道水を給水栓に配水する配水管に接続される流出口と、槽本体の上部に設けられて排気が可能な口として機能する排気口とを備える貯水槽を給水系管路に設置する貯水槽の施工方法であって、流入口に給水管を接続すると共に、流出口に配水管を接続することによって、給水系管路に槽本体を設置する配管工程、および配管工程の後、流入口から槽本体内に給水圧が作用する水道水を流し込んで流出口から排出させるフラッシング洗浄を行う洗浄工程を含む、貯水槽の施工方法である。
第6の発明では、貯水槽を給水系管路に設置する。この貯水槽は、横管状の槽本体と、槽本体に形成される流入口と、槽本体の下部に形成される流出口と、槽本体の上部に設けられて排気が可能な口として機能する排気口とを備えるものである。この第6の発明では、先ず、流入口に対して水道管から分岐させた給水管を接続すると共に、流出口に対して給水栓へとつながる配水管を接続することによって、給水系管路に槽本体を設置する。そして、この配管工程の後、流入口から槽本体内に給水圧が作用する水道水を流し込んで流出口から排出させるフラッシング洗浄を行う。
第6の発明によれば、配管工程の後に、給水圧が作用する水道水を貯水槽の槽本体内に流し込むフラッシング洗浄を行うので、配管工程において生じた切断屑などの異物が槽本体内に入った場合でも、その異物を特別な洗浄器具を用いることなく、簡単に除去できる。
この発明によれば、給水圧が作用する水道水を槽本体内に流し込むフラッシング洗浄を行うので、特別な洗浄器具を用いることなく、槽本体内に入った異物を簡単に除去できる。
このフラッシング洗浄を行うときに、槽本体に設けられる排気口からの排気を停止して槽本体内に空気層を形成しておけば、槽本体内を流れる水道水の流速が大きくなるので、より確実に槽本体内の異物を除去できる。また、フラッシング洗浄を行う前に、槽本体内を一度満水にする予備洗浄を行えば、槽本体の内面上部などに付着した異物がある場合にも、その異物を槽本体内から確実に除去できる。
この発明の上述の目的、その他の目的、特徴および利点は、図面を参照して行う後述の実施例の詳細な説明から一層明らかとなろう。
図1を参照して、この発明の一実施例である貯水槽の洗浄方法は、給水系管路に設けられる貯水槽10の内部を洗浄する方法であって、貯水槽10の槽本体20内に入り込んだ異物を除去する。
先ず、この発明に係る貯水槽の洗浄方法が適用される貯水槽10の一例について説明する。ただし、後述するように、この発明に係る貯水槽の洗浄方法は、給水系管路に設けられる貯水槽であれば、各種の貯水槽に適用することが可能である。
図1に示すように、貯水槽10は、横管状の槽本体20を備え、マンションおよび戸建などの住宅100の給水系管路に設置されて、非常時に飲料水として用いられ得る清潔な水を貯留する。この実施例では、貯水槽10は、浴室102の天井裏の空間104に設置される。そして、水道管106から分岐して水道水を宅内に供給する給水管12と、給水管12によって供給される水道水を各給水栓16a,16bに配水する複数の配水管14a,14bとを接続する。つまり、貯水槽10は、水道管106と各給水栓16a,16bとを繋ぐ給水系管路の一部に組み込まれて、清潔な水を貯留すると共に、給水ヘッダとしても機能する。
具体的には、図2および図3に示すように、貯水槽10の槽本体20は、水を貯留する部位であって、硬質塩化ビニルおよびポリエチレン等の合成樹脂によって形成される。槽本体20は、管部22およびキャップ部24,26を含み、横管状に形成される。つまり、槽本体20は、横方向に長い横置きタイプの槽である。
管部22は、両端開口の円管、つまり汎用の合成樹脂製パイプであり、その両端のそれぞれにキャップ部24,26がTS接合法などを用いて接続される。管部22の内径および長さは、貯留したい水の量によって適宜設定される。たとえば、この実施例では、内径が146mmの円管を用いて管部22を形成し、その長さを約1.1mとすることによって、槽本体20内に18リットルの水が貯留される。
管部22の一方端に設けられるキャップ部24(以下、「第1キャップ部24」と言う。)は、円筒状の側壁24aと、側壁24aの一方端を封止するドーム状の第1封止部24bとを有する。同様に、管部22の他端に設けられるキャップ部26(以下、「第2キャップ部26」と言う。)は、円筒状の側壁26aと、側壁26aの一方端を封止するドーム状の第2封止部26bとを有する。
また、図3からよく分かるように、第1キャップ部24の第1封止部24b(つまり槽本体20の一方端面)には、流入口28、第1流出口30および第2流出口32が、上下方向に並ぶように形成される。流入口28、第1流出口30および第2流出口32のそれぞれは、管部22から遠ざかる方向に突出する受口状に形成され、これら流入口28、第1流出口30および第2流出口32には、接続継手34が取り付けられる。接続継手34としては、ワンタッチ式などの適宜な方式の継手が用いられる。
流入口28は、第1封止部24bの中央部に設けられる。この流入口28には、接続継手34を介して給水管12が接続される。これにより、給水圧の作用する水道水が流入口28から槽本体20内に供給される。また、流入口28に取り付けられる接続継手34には、給水管12側に水道水が逆流しないようにするための逆止弁36が取り付けられる。ただし、逆止弁36を設ける位置は、適宜変更可能である。
また、流入口28は、管部22側(槽本体20の内部側)にも突出するように形成され、その突出部に内管38が接続される。内管38は、硬質塩化ビニルおよびポリエチレンなどの合成樹脂製の管であり、槽本体20の内部に設けられる。内管38は、流入口28から第2キャップ部26側に向かって槽本体20の管軸と平行に延びる。そして、内管38の先端部(第2キャップ部26側の端部)は、上側と下側とに分岐して、管部22内の最上部と最下部とにおいて第2キャップ部26側に向かって開口する。つまり、内管38の先端部には、2つの吐出口38aが形成され、流入口28から槽本体20内に供給された水道水は、第2キャップ部26側の端部で吐出口38aから噴出される。なお、吐出口38aと第2キャップ部26の第2封止部26bとの距離は、吐出口38aから通常の給水圧で水道水を噴出させたときに、その水道水が第2封止部26bに当たる範囲内に設定される。
第1流出口30は、第1封止部24bの最下部に形成される。第1流出口30の内面下部は、側壁24aの内面下部と滑らかに繋がり、第1流出口30の管底は、管部22の管底よりも低い位置または面一に形成される。
この第1流出口30には、接続継手34を介して配水管14a(以下、「第1配水管14a」と言う。)が接続される。第1配水管14aは、可撓性のある合成樹脂管などによって形成され、たとえば、貯水槽10よりも下位にある浴室102の給水栓16a(以下、「第1給水栓16a」と言う。)に接続される(図1参照)。第1給水栓16aは、通常時には通常の給水栓として使用されるが、地震が発生して断水したときのように、水道水に給水圧が作用しなくなる非常時には、非常用の給水栓(非常用取水栓)として使用される。ただし、非常用取水栓として兼用される第1給水栓16aは、浴室の給水栓に限定されず、洗面室または台所などに設けられる給水栓であってもよい。
第2流出口32は、第1封止部24bの最上部に形成される。第2流出口32の内面下部は、側壁24aの内面上部と滑らかに繋がり、第2流出口32の管頂は、管部22の管頂よりも高い位置または面一に形成される。
この第2流出口32には、接続継手34を介して配水管14b(以下、「第2配水管14b」と言う。)が接続される。第2配水管14bは、可撓性のある合成樹脂管などによって形成され、非常用取水栓として使用される第1給水栓16aを除く給水栓、たとえば、貯水槽10よりも上位にある洗面所108の給水栓16b(以下、「第2給水栓16b」と言う。)に接続される(図1参照)。
第2給水栓16bは、通常時には通常の給水栓として使用される。また、給水系管路に対する通水開始時、つまり槽本体20に対して貯水するときには、空気抜き用の排気口として利用される。すなわち、この実施例では、第2流出口32、第2配水管14bおよび第2給水栓16bを含む一連の管路が、槽本体20の上部に設けられる排気口として機能する。給水系管路に対する通水開始時には、第2給水栓16bを開いておくことにより、第2流出口32から槽本体20内の空気が排出されるため、槽本体20自体に排気弁を別途設けなくても、水道水はスムーズに槽本体20内に流入して、槽本体20内を満たすこととなる。
また、図3に示すように、槽本体20と逆止弁36との間には、槽本体20内に外気を吸入するための吸気弁40が設けられる。吸気弁40は、維持管理作業を簡単に行うことができるように、点検口の近くに配置される。
なお、図示は省略するが、槽本体20は、ケース内に収納した状態で設置されることが好ましい。槽本体20を収容するケースは、たとえば、保温性および難燃性を有する発泡スチロールまたはウレタン等の弾性材によって形成される。
このような貯水槽10では、日常生活において各給水栓16a,16bから水道水が使用される度に、槽本体20内の水が自動的に入れ替わるため、常に清潔な水を確保できる。そして、水道水に給水圧が作用しない非常時には、貯水槽10よりも下位にある浴室102の第1給水栓(非常用取水栓)16aを使用すると、槽本体20内の水道水(貯留水)は、第1配水管14aを通って自然流下し、第1給水栓16aから流れ出す。このとき、水道水が槽本体20から流出しても、吸気弁40から槽本体20内に空気が吸引されて、槽本体20の内部の圧力は大気圧に保たれるため、槽本体20内の水道水を給水栓16aから無駄なくかつ容易に取り出すことができる。
続いて、上述のような貯水槽10の内部を洗浄する洗浄方法について説明する。貯水槽10の洗浄は、基本的には貯水槽10の施工時に行われる。これは、貯水槽10を含む給水系管路を施工する際に生じたパイプの切断屑やシールテープの切れ端などの異物が、上流側の給水系管路から槽本体20内に入り込んでしまう場合があるからであり、施工者は、この異物を予め除去しておく必要があるからである。したがって、ここでは、貯水槽10の施工方法と合わせて、貯水槽10の洗浄方法を説明する。
図1を参照して、貯水槽10を住宅100に施工する際には、先ず、貯水槽10を含む給水系管路を配管する。この配管工程では、水道管106からの水道水を宅内に供給する給水管12、および各給水栓16a,16bに水道水を配水する複数の配水管14a,14bを配管する。そして、天井裏の空間104において、貯水槽10の槽本体20に形成された流入口28に対して給水管12の下流側端部を接続する。また、槽本体20に形成された第1流出口30に対して第1配水管14aの上流側端部を接続すると共に、槽本体20に形成された第2流出口32に対して第2配水管14bの上流側端部を接続する。これによって、給水系管路に槽本体20が設置される。
給水系管路に槽本体20を設置する配管工程が終了すると、次に、貯水槽10の槽本体20内を洗浄する。
この洗浄工程では、先ず、槽本体20内を満水にした後、槽本体20から水を抜く予備洗浄を行う。たとえば、第1給水栓16aおよび第2給水栓16bを開放した状態で、給水管12に設けられる元栓(図示せず)を開け、第1給水栓16aおよび第2給水栓16bの双方から水道水が流れ出すまで待つ。第1給水栓16aおよび第2給水栓16bの双方からの水道水の流出を確認できれば、槽本体20を含む給水系管路が水道水で満たされたこと、つまり槽本体20内が満水になったことが分かるので、給水管12に設けられる元栓を閉める。すると、槽本体20内の水道水が第1給水栓16aから自然流下によって流出するので、第1給水栓16aからの水道水の流出が停止するまで、つまり槽本体20内の水道水が全て流出するまで待つ。この予備洗浄によって、槽本体20の内面上部または内面側部に付着した異物がある場合には、その異物は、槽本体20の底部に洗い落とされ、水中を浮遊する異物(浮遊物)は、槽本体20から排出される。
予備洗浄が終わると、続いて、槽本体20内に給水圧が作用する水道水を流し込むフラッシング洗浄を行う。このフラッシング洗浄では、図4に示すように、第1給水栓16aを開放し、第2給水栓16bを閉止した状態で、給水管12に設けられる元栓を開ける。これにより、給水管12から供給される水道水50は、流入口28から槽本体20内に流入し、内管38の吐出口38aから噴出される。そして、第2キャップ部26の第2封止部26bに当たって向きを変え、第2キャップ部26側から第1キャップ部側に流れて、第1流出口30から流出される。すなわち、このフラッシング洗浄では、槽本体20に設けられる排気口(第2流出口32)からの排気を停止した状態で、流入口28から槽本体20内に給水圧が作用する水道水50を流し込んで流出口(第1流出口30)から排出させる。このフラッシング洗浄によって、特別な洗浄器具を用いることなく、槽本体20内に入った異物が除去される。
ここで、フラッシング洗浄時において、槽本体20に設けられる排気口が開放されている場合には、槽本体20内の空気は水道水が流入するに従い排出されるので、槽本体20内を流れる水道水は、その断面積(水量)が大きくなって流速が遅くなる。
これに対して、この実施例のように、槽本体20に設けられる排気口を閉じて槽本体20からの空気の逃げ道をなくしておくと、槽本体20内に水道水50が流入しても、槽本体20内には空気層52が形成されたままの状態となる。つまり、槽本体20内が満水状態の場合と比較して、槽本体20内を流れる水道水50の断面積が小さくなるので、槽本体20内を流れる水道水50の流速が上がり、異物を第1流出口30まで搬送する能力が向上する。すなわち、この実施例では、フラッシング洗浄時に槽本体20内に空気層52を形成し、この空気層52を利用して槽本体20内を流れる水道水50の流速を上げることによって、水道水50が異物を搬送する能力を向上させている。
以上のように、この実施例によれば、給水圧が作用する水道水50を槽本体20内に流し込むフラッシング洗浄を行うので、横管状の槽本体20を有する貯水槽10であっても、特別な洗浄器具を用いることなく、槽本体20内に入った異物を簡単に除去できる。
また、この実施例によれば、フラッシング洗浄時に、槽本体20に設けられる排気口からの排気を停止して槽本体20内に空気層52を形成するので、槽本体20内を流れる水道水50の流速が大きくなる。したがって、異物の搬送能力(排出能力)が向上し、より確実に槽本体20内の異物を除去できる。
さらに、この実施例によれば、フラッシング洗浄を行う前に、槽本体20内を一度満水にする予備洗浄を行うので、槽本体20の内面上部などに付着した異物がある場合にも、その異物を槽本体20内から確実に除去できる。
なお、上述の実施例では、貯水槽の洗浄方法を貯水槽10の施工時に実施するようにしているが、貯水槽の洗浄方法の実施時期は、特に限定されない。たとえば、断水が発生したときに槽本体20内に異物が入る可能性もあるので、断水から復旧したときに、この発明に係る貯水槽の洗浄方法を実施するようにしてもよい。
また、上述の実施例では、フラッシング洗浄時には、給水圧が一定の水道水を槽本体20内に流し込むようにしたが、これに限定されない。フラッシング洗浄時において、流入口28から槽本体20内に流し込む水道水は、所定の周期で流量(水圧)が変動する脈動水とすることもできる。たとえば、給水管12設けられる元栓を開閉したり、元栓の開度を変化させたりすることによって、槽本体20内に流し込む水道水を脈動水にするとよい。このように、脈動水によってフラッシング洗浄を行うことによって、異物の搬送能力がより向上する。
また、フラッシング洗浄は、必ずしも排気口からの排気を停止した状態で行う必要はないが、異物の搬送能力を向上させるためには、排気口からの排気を停止して、槽本体20内に空気層52を形成した状態でフラッシング洗浄を行うことが好ましい。
さらに、フラッシング洗浄時に水道水を流出させる流出口(第1流出口30)は、槽本体20の端部の最下部に形成されていることが好ましいが、必ずしもこれに限定される必要はなく、フラッシング洗浄時に槽本体20に形成する空気層52よりも下の位置に流出口が形成されていれば、その流出口から水中を浮遊する異物を取り除くことができる。
さらにまた、この発明に係る貯水槽の洗浄方法ないし施工方法を適用する貯水槽10の具体的構成は、適宜変更可能であり、この発明に係る貯水槽の洗浄方法ないし施工方法は、給水系管路に設けられる各種の貯水槽に適用することができる。
たとえば、流入口28および流出口30,32の形成位置および数は、適宜変更可能である。一例として、図5に示す貯水槽10のように、流入口28は、第2キャップ部26の第2封止部26bの最上部などに設けられていてもよい。また、槽本体20は、第1流出口30および第2流出口32の他に、第3流出口42などを備えていてもよい。この第3流出口42には、第1給水栓16aおよび第2給水栓16b以外の第3給水栓(図示せず)につながる第3配水管14cが接続される。図5に示す貯水槽10をフラッシング洗浄するときには、たとえば、第1給水栓16aを開放し、第2給水栓16bおよび第3給水栓を閉止した状態で、給水管12に設けられる元栓を開ける。これにより、槽本体20内に空気層52が形成された状態で、給水圧の作用する水道水50が槽本体20内に噴出される。
また、たとえば、図6に示す貯水槽10のように、排気口として機能する第2流出口32を設ける代わりに、槽本体20の頂部に排気口(吸排気弁)54を備えていてもよい。図6に示す貯水槽10をフラッシング洗浄するときには、たとえば、第1給水栓16aを開放し、排気口54に設けたバルブ(図示せず)を閉止した状態で、給水管12に設けられる元栓を開ける。これにより、槽本体20内に空気層52が形成された状態で、給水圧の作用する水道水50が槽本体20内に噴出される。
さらに、たとえば、図7に示す貯留槽10のように、流入口28および流出口30,32は、槽本体20の端面ではなく側壁(管部)に設けられていてもよい。また、第2流出口(排気口)32に接続される第2配水管14bに三方弁60を設けて、第1流出口30に接続される第1配水管14aに対して第2配水管14bを合流させるようにしてもよい。図7に示す貯水槽10をフラッシング洗浄するときには、たとえば、第1給水栓16aを開放し、三方弁60を大気開放側に切り替えてその先を閉止した状態で、給水管12に設けられる元栓を開ける。これにより、槽本体20内に空気層52が形成された状態で、給水圧の作用する水道水50が槽本体20内に噴出される。
また、貯水槽10の設置位置も、特に限定されない。たとえば、非常時に自然流下で槽本体20内の水道水を取り出す貯水槽10の場合には、少なくとも非常用取水栓として使用される第1給水栓16aよりも高い位置であって、かつ強度の高い場所であれば、貯水槽10は、住宅100内の任意の場所に設置されていて構わない。さらに、住宅100以外にも、ビル、倉庫および事務所などの各種建物の給水系管路に設けた貯水槽10に対して、この発明に係る貯水槽の洗浄方法または施工方法を適用可能である。
また、貯水槽10は、加圧ポンプで槽本体20内に空気を送り込んだり、槽本体20内の水道水を手動ポンプや電動ポンプなどにより直接汲み上げたりすることによって、非常時に槽本体20内の水道水を取り出すタイプのものでもよい。この場合には、非常用取水栓として使用される第1給水栓16aよりも低い位置、たとえば床下や地中に貯水槽10を設置することもできる。
また、槽本体20内を空気で加圧可能な貯水槽10の場合には、フラッシング洗浄時において、槽本体20内に空気を圧入するようにしてもよい。これによって、槽本体20内を流れる水道水50の断面積がより小さくなるので、槽本体20内を流れる水道水50の流速が上がり、異物を第1流出口30まで搬送する能力がより向上する。
なお、上で挙げた寸法などの具体的数値および材質などは、いずれも単なる一例であり、製品の仕様などの必要に応じて適宜変更可能である。