以下、本発明を実施するための形態(以下、「本実施形態」という)について、詳細に説明する。以下の本実施形態は、本発明を説明するための例示であり、本発明を以下の内容に限定するものではない。本発明は、その要旨の範囲内で種々変形して実施できる。なお、本明細書において「〜」を用いて記載される数値範囲は、その前後に記載される数値を含むものである。
《改質アスファルト組成物》
本実施形態において、改質アスファルト組成物は、アスファルト(X)100質量部と、ビニル芳香族単量体単位を主体とする重合体ブロック(A1)、共役ジエン単量体単位及びビニル芳香族単量体単位を含む共重合体ブロック(B)、並びに、ビニル芳香族単量体単位を主体とする重合体ブロック(A2)を有し、下記式(1)で表される、前記重合体ブロック(A1)及び前記重合体ブロック(A2)の分子量分布が1.10以上1.46以下であるブロック共重合体(Y)0.5〜8質量部と、を含む改質アスファルト組成物であって、前記改質アスファルト組成物は、下記式(2)で表されるG*/sinδ比が、5.0以上6.5未満である。
本実施形態の改質アスファルト組成物は、引張後の回復性及び貯蔵時の耐熱老化性に優れる。また、本実施形態の改質アスファルト組成物は、その組成に応じて従来の改質アスファルト組成物と同等以上に高い軟化点や、優れた施工性を発揮できる。また、本実施形態の改質アスファルト組成物を骨材と組み合わせることで、従来の改質アスファルト混合物よりも耐流動性、及び耐骨材剥離性に優れた改質アスファルト混合物を提供することができる。改質アスファルト組成物の引張後の回復性が高いと、改質アスファルト混合物の耐ひび割れ性を向上させることができる。また、本実施形態の改質アスファルト組成物は、貯蔵時の熱劣化による分子の切断(粘度低下)及びゲル化(粘度上昇)が少なく、貯蔵時の耐熱老化性に優れる。
式(1):分子量分布=(前記重合体ブロック(A1)及び前記重合体ブロック(A2)のピーク分子量の半値全幅時の高分子量側の分子量)/(前記重合体ブロック(A1)及び前記重合体ブロック(A2)のピーク分子量の半値全幅時の低分子量側の分子量)
式(2):G*/sinδ比=(G*/sinδ(60℃))/(G*/sinδ(80℃))
〔式中、G*/sinδはその後に続く括弧内の温度におけるG*/sinδを示す。〕
式(2)において、“G*/sinδ”は、改質アスファルト組成物の粘度を表す指標であり、G*/sinδの値が大きいほど粘度が高いといえる。本明細書においては式(2)に示すように、60℃で測定したアスファルト組成物のG*/sinδ〔G*/sinδ(60℃)〕と、80℃で測定したアスファルト組成物のG*/sinδ〔G*/sinδ(80℃)〕との比〔(G*/sinδ(60℃))/(G*/sinδ(80℃))〕を、「G*/sinδ比」と定義する。本実施形態の改質アスファルト組成物によれば、改質アスファルト組成物のG*/sinδ比を5.0以上6.5未満に調整し、これを改質アスファルト混合物に用いることで、耐流動性及び耐骨材剥離性に優れる改質アスファルト混合物が得られることができる。
G*/sinδ比の上限値は、改質アスファルト混合物の耐流動性及び耐骨材剥離性の点で6.5未満であればよく、6.3以下であることが好ましく、6.2以下であることがより好ましく、6.0以下であることが更に好ましい。また、G*/sinδ比の下限値は、改質アスファルト混合物の耐流動性及び耐骨材剥離性の点で、5.0以上であればよく、5.2以上であることが好ましく、5.3以上であることがより好ましく、5.4以上であることが更に好ましい。
改質アスファルト組成物の製造工程において、ブロック共重合体(Y)の添加回数、混合機の回転数、混合温度、混合時間等を制御することにより、改質アスファルト組成物のG*/sinδ比の値を5.0以上6.5未満とすることができる。
〈アスファルト(X)〉
本実施形態において、改質アスファルト組成物はアスファルト(X)を含む。アスファルト(X)としては、特に限定されるものではなく公知のアスファルトを適宜選定して用いることができる。このような公知のアスファルトとしては、例えば、石油精製の際の副産物(石油アスファルト)、又は天然の産出物(天然アスファルト)として得られるもの、或いは、これらと石油類とを混合したもの等が挙げられる。これらアスファルトの主成分は瀝青(ビチューメン)と呼ばれるものが一般的である。
また、アスファルト(X)としては、特に限定されるものではないが、例えば、ストレートアスファルト、セミブローンアスファルト、ブローンアスファルト、溶剤脱瀝アスファルト、タール、ピッチ、オイルを添加したカットバックアスファルト、アスファルト乳剤等が挙げられる。入手性の観点から、本実施形態に用いられるアスファルト(X)は、ストレートアスファルトであることが好ましい。アスファルト(X)は、アスファルト一種を単独で使用してもよく、二種以上を混合して使用してもよい。また、アスファルト(X)として用いられる各種アスファルトには、石油系溶剤抽出油、アロマ系炭化水素系プロセスオイル又はエキストラクト等の芳香族系重質鉱油等を添加してもよい。
アスファルト(X)は、針入度(JIS−K2207によって測定)が30以上300以下であることが好ましく、より好ましくは50以上250以下、さらに好ましくは60以上200以下である。
改質アスファルト組成物中におけるアスファルト(X)の含有量は、当該組成物に含まれるブロック共重合体(Y)等との関係を満足するものであれば特に限定されるものではなく、当該組成物に含まれる成分に応じて適宜決定することができる。例えば、粘度と針入度との点から、改質アスファルト組成物の全固形分に対するアスファルト(X)の含有量は、80質量%以上が好ましく、90質量%以上がより好ましく、95質量%以上が更に好ましい。
〈ブロック共重合体(Y)〉
本実施形態において、改質アスファルト組成物はブロック共重合体(Y)を含む。改質アスファルト組成物中、ブロック共重合体(Y)は、アスファルト(X)100質量部に対して0.5〜8質量部含まれる。アスファルト(X)100質量部に対するブロック共重合体(Y)の含有量の下限値は、改質アスファルト混合物の耐流動性及び耐骨材剥離性の点で、0.5質量部以上であればよく、1質量部以上が好ましく、2質量部以上がより好ましい。また、アスファルト(X)100質量部に対するブロック共重合体(Y)の含有量の上限値は、改質アスファルト組成物の相容性及び道路用途の点で、8質量部以下であればよく、7質量部以下が好ましく、6質量部以下がより好ましい。
本実施形態において、ブロック共重合体(Y)は、少なくとも、ビニル芳香族単量体単位を主体とする重合体ブロック(A1)と、共役ジエン単量体単位とビニル芳香族単量体単位とを含む共重合体ブロック(B)と、ビニル芳香族単量体単位を主体とする重合体ブロック(A2)とを有する。尚、ブロック共重合体(Y)は、いわゆるABA型トリブロック共重合体の一種であり、重合体ブロック(A1)と重合体ブロック(A2)とは特に区別されるものではなく、同様の構成を有する重合体ブロックであってもよいし、互いに異なる構成を有する重合体ブロックであってもよい。
共役ジエン単量体単位としては、特に限定されないが、例えば、1,3−ブタジエン、2−メチル−1,3−ブタジエン(イソプレン)、2,3−ジメチル−1,3−ブタジエン、1,3−ペンタジエン、2−メチル−1,3−ペンタジエン、及び1,3−ヘキサジエン等の1対の共役二重結合を有するジオレフィンに由来する共役ジエン単量体単位が挙げられる。このなかでも、共役ジエン単量体単位として、好ましくは、1,3−ブタジエン、及びイソプレンに由来する共役ジエン単量体単位が挙げられる。また、機械的強度の観点から、共役ジエン単量体単位としては、1,3−ブタジエンに由来する共役ジエン単量体単位がより好ましい。共役ジエン単量体単位は、1種を単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
ビニル芳香族単量体単位としては、特に限定されないが、例えば、スチレン、α−メチルスチレン、p−メチルスチレン、ジビニルベンゼン、1,1−ジフェニルエチレン、N,N−ジメチル−p−アミノエチルスチレン、及びN,N−ジエチル−p−アミノエチルスチレン等のビニル芳香族化合物に由来するビニル芳香族単量体単位が挙げられる。このなかでも経済性の観点から、スチレンに由来するビニル芳香族単量体単位が好ましい。ビニル芳香族単量体単位は、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
ブロック共重合体(Y)は、上述の共役ジエン単量体単位及びビニル芳香族単量体単位の他、共役ジエン単量体及びビニル芳香族単量体と共重合可能な他の単量体に基づく単量体単位を有してもよい。
本実施形態において、下記式(1)で表される、ビニル芳香族単量体単位を主体とする重合体ブロック(A1)及び重合体ブロック(A2)の分子量分布(以下、単に「重合体ブロック(A1)及び(A2)の分子量分布」と称することがある。)は、1.10以上1.46以下である。
式(1):分子量分布=(重合体ブロック(A1)及び重合体ブロック(A2)のピーク分子量の半値全幅時の高分子量側の分子量)/(重合体ブロック(A1)及び重合体ブロック(A2)のピーク分子量の半値全幅時の低分子量側の分子量)
重合体ブロック(A1)及び(A2)の分子量分布の上限値は、改質アスファルト組成物の高い軟化点及び改質アスファルト混合物の耐流動性の点で、1.46以下であればよく、1.44以下がより好ましく、1.42以下がさらに好ましく、1.40以下が更に好ましい。また、重合体ブロック(A1)及び(A2)の分子量分布の下限値は、改質アスファルト組成物の引張後の回復性の点から、1.10以上であればよく、1.12以上がより好ましく、1.14以上がさらに好ましく、1.16以上が特に好ましい。
重合体ブロック(A1)及び(A2)の分子量分布は、ブロック共重合体(Y)の重合において、比エネルギー、各単量体の添加濃度、及び/又は反応温度等を制御することによって調整することができる。例えば、ブロック共重合体(Y)の重合反応によって合成する際、比エネルギー、各単量体の添加濃度、及び/又は反応温度等を制御することによって、重合体ブロック(A1)及び(A2)の分子量分布の値を1.10以上1.46以下にすることができる。ここで、「比エネルギー」とは、重合反応溶液の単位体積(m3)あたりに消費される反応器の電力値(kw)をいう。比エネルギーは、下記式により算出される。
比エネルギー(kw/m3)=反応器の電力値(kw)/重合反応溶液の体積(m3)
ブロック共重合体(Y)は、下記の式(i)〜(iii)からなる群より選ばれる少なくとも一つのブロック共重合体を含有することが好ましい。
式(i) : (A1−B−A2)n
式(ii) : A1−(B−A2)n
式(iii): A2−(B−A1)n
前記式(i)〜(vi)中、“A1”及び“A2”は、上述のビニル芳香族単量体単位を主体とする重合体ブロック(A1)又は(A2)を表す。“A1”及び“A2”は、特に限定されるものではないが、例えば、逐次重合によってブロック共重合体(Y)を合成する場合において、最初に重合されるブロックを“A1”、後に重合されるブロックを“A2”とすることができる。前記式(i)〜(iii)中、“B”は、上述のビニル芳香族単量体単位と共役ジエン単量体単位とを含む共重合体ブロック(B)を表す。前記式(i)〜(iii)中、nは1以上の整数を表し、好ましくは1〜5の整数を表す。ブロック共重合体(Y)中に重合体ブロック(A1)、(A2)、及び(B)が複数存在している場合には、各々の分子量や組成等の構造は同一であってもよいし、異なっていてもよい。各重合体ブロックの境界や最端部は必ずしも明瞭に区別される必要はない。
本実施形態において、共役ジエン単量体単位中の二重結合は、水素添加されていてもよいし、されていなくてもよい。改質アスファルト組成物の相容性の点で、ブロック共重合体(Y)における共役ジエン単量体単位中の二重結合の水素添加率の上限値は、95mol%以下であることが好ましく、90mol%以下であることがより好ましく、85mol%以下であることが更に好ましく、80mol%以下であることが特に好ましい。また、改質アスファルト組成物の貯蔵時の耐熱老化性又は改質アスファルト混合物の耐流動性の点で、共役ジエン単量体単位中の二重結合の水素添加率の下限値は、0mol%超であることが好ましく、1mol%以上であることがより好ましく、10mol%以上であることが更に好ましく、30mol%以上であることが特に好ましく、40mol%以上であることが最も好ましい。
本実施形態のブロック共重合体(Y)において、共役ジエン単量体単位中の二重結合の水素添加率に分布があってもよい。ここで、「水素添加率の分布」は、以下のようにして求めることができる。ブロック共重合体(Y)のオゾン分解法により得られる分子量分布(MD1)と、オスミウム酸分解法により得られる分子量分布(MD2)に基づいて{(MD1)−(MD2)}を行い、分子量分布(MD3)を得る。得られた分子量分布(MD3)の、分子量200以上1000000以下の領域における総面積を1としたときの、最大ピーク高さをHとする。Hの値は、水素添加率の分布の指標であり、Hの値が小さいほど水素添加率の分布が広いことを示す。改質アスファルト組成物の相容性、及び貯蔵時の耐熱老化性、改質アスファルト混合物の耐流動性、及び耐骨材剥離性の点から、Hの値は0.001〜0.007であることが好ましく、0.001〜0.0055であることがより好ましく、0.001〜0.004であることが更に好ましい。
本実施形態において、ブロック共重合体(Y)中に含まれるビニル芳香族単量体単位の含有量(TS:質量%)は、ブロック共重合体(Y)の全質量に対して30〜50質量%であることが好ましい。改質アスファルト組成物の優れた相容性や、高い軟化点、改質アスファルト組成物の貯蔵時の耐熱老化性、及び耐骨材剥離性の点で、ブロック共重合体(Y)中のビニル芳香族単量体単位の含有量の下限値は、ブロック共重合体(Y)の全質量に対して30質量%以上が好ましく、33質量%以上がより好ましく、36質量%以上が更に好ましく、40質量%以上が特に好ましい。また、ブロック共重合体(Y)中のビニル芳香族単量体単位の含有量の上限値は、改質アスファルト組成物の相容性、改質アスファルト組成物の低い粘度、改質アスファルト組成物の施工性の点で、ブロック共重合体(Y)の全質量に対して50質量%以下が好ましく、45質量%以下がより好ましく、40質量%以下が更に好ましく、35質量%以下が特に好ましい。
ブロック共重合体(Y)全質量に対するブロック共重合体(Y)中のビニル芳香族単量体単位を主体とする重合体ブロック(A1)及び(A2)の合計含有量(BS:質量%)の下限値は、改質アスファルト組成物の軟化点を高める点で、10質量%以上が好ましく、15質量%以上がより好ましく、17質量%以上がさらに好ましい。また、ブロック共重合体(Y)全質量に対するブロック共重合体(Y)中のビニル芳香族単量体単位を主体とする重合体ブロック(A1)及び(A2)の合計含有量(BS)の上限値は、アスファルトとの高い相容性、又は、改質アスファルト組成物の施工性の点で、40質量%以下が好ましく、35質量%以下がより好ましく、28質量%以下がさらに好ましく、25質量%以下が最も好ましい。
本実施形態において、共役ジエン単量体単位とビニル芳香族単量体単位とを含む共重合体ブロック(B)中のビニル芳香族単量体単位の含有量(RS:質量%)の下限値は、改質アスファルト組成物の貯蔵時の耐熱老化性、又は、引張後の回復性の点で、共重合体ブロック(B)の全質量に対して5質量%以上が好ましく、20質量%以上がより好ましく、25質量%以上がさらに好ましい。また、共重合体ブロック(B)中のビニル芳香族単量体単位の含有量(RS)の上限値は、アスファルトに添加するブロック共重合体の添加量の低減、改質アスファルト組成物の施工性、又は、耐骨材剥離性の点で、共重合体ブロック(B)の全質量に対して50質量%以下が好ましく、35質量%以下がさらに好ましく、30質量%以下が最も好ましい。
なお、共重合体ブロック(B)中のビニル芳香族単量体単位の含有量(RS)は、ブロック共重合体(Y)中のビニル芳香族単量体単位の含有量(TS)から、前記ビニル芳香族単量体単位を主体とする重合体ブロック(A1)及び(A2)中のビニル芳香族単量体単位の含有量(BS)を除した値(TS−BS)の割合(質量%)である。具体的には、下記式で求めることができる。
RS(質量%)=(TS(質量%)−BS(質量%))/(100−BS(質量%))×100
ビニル芳香族単量体単位を主体とする重合体ブロック(A1)及び(A2)中や、ビニル芳香族単量体単位と共役ジエン単量体単位とを含む共重合体ブロック(B)中のビニル芳香族単量体単位の分布は、特に限定されず、均一に分布していても、テーパー状、階段状、凸状、又は凹状に分布していてもよい。また、各重合体ブロック中には、結晶部が存在していてもよい。また、各重合体ブロック中には結晶部が複数個共存してもよい。ビニル芳香族単量体単位を主体とする重合体ブロック中に、ビニル芳香族単量体単位の含有量の異なるセグメントが複数個共存してもよい。
共重合体ブロック(B)の重合開始時から重合終了時までの反応時間を三等分して、順に前段、中段、及び後段とし、前段終了時の共重合体ブロック(B)中のビニル芳香族単量体単位の含有量を“S1(質量%)”、中段終了時の共重合体ブロック(B)中のビニル芳香族単量体単位の含有量を“S2(質量%)”、後段終了時の共重合体ブロック(B)中のビニル芳香族単量体単位の含有量を“S3(質量%)”としたとき、アスファルトとの相容性の点で、共重合体ブロック(B)は、〔S2/S1>1、且つ、S3/S2>1〕の関係が成り立つ構造がより好ましい。なお、共重合体ブロック(B)の「重合開始時」とは、共重合体ブロック(B)の原料モノマーを反応器に投入した時とし、共重合体ブロック(B)の「重合終了時」とは、重合体ブロック(A2)の原料モノマーを反応器に投入する直前とする。ビニル芳香族単量体単位の含有量S1〜S3は、前段終了時、中段終了時、及び後段終了時の各時点における重合体溶液をサンプリングして測定することができる。
本実施形態における共重合体ブロック(B)中の短連鎖ビニル芳香族単量体重合部分の含有量は、50質量%以上であることが好ましい。共重合体ブロック(B)中の短連鎖ビニル芳香族単量体重合部分の含有量が前記範囲内にあることによって、ブロック共重合体(Y)とアスファルトとの相容性が高くなるとともに、改質アスファルト組成物の引張後の回復性、耐熱老化性、耐骨材剥離性が向上する傾向にある。共重合体ブロック(B)中の短連鎖ビニル芳香族単量体重合部分の含有量は、70質量%以上であることがより好ましく、さらに好ましくは80質量%以上、特に好ましくは90質量%以上である。前記短連鎖ビニル芳香族単量体重合部分の含有量の上限は特に制限はないが、99質量%以下であることが好ましい。
ここで、「短連鎖ビニル芳香族単量体重合部分」とは、共重合体ブロック(B)中、ビニル芳香族単量体単位が2〜6個連続する部分である。そして、短連鎖ビニル芳香族単量体重合部分の含有量は、共重合体ブロック(B)中のビニル芳香族単量体単位の含有量(RS)を100質量%とし、その中で2〜6個連続したビニル芳香族単量体単位の含有量として求められる。2〜6個連続したビニル芳香族単量体単位の含有量の測定方法は、後述する実施例に記載する。
共重合体ブロック(B)中、ビニル芳香族単量体単位が2個連続した短連鎖ビニル芳香族単量体重合部分の含有量は、10質量%以上45質量%以下であることが好ましく、さらに好ましくは13質量%以上42質量%以下であり、よりさらに好ましくは19質量%以上36質量%以下である。2個連続したビニル芳香族単量体単位の含有量の測定方法は、後述する実施例に記載する。
共重合体ブロック(B)中、ビニル芳香族単量体単位が3個連続した短連鎖ビニル芳香族単量体重合部分の含有量は、45質量%以上80質量%以下であることが好ましく、さらに好ましくは45質量%以上75質量%以下であり、特に好ましくは45質量%以上65質量%以下である。3個連続したビニル芳香族単量体単位の含有量の測定方法は、後述する実施例に記載する。
ブロック共重合体(Y)の共役ジエン単量体単位中のビニル含有量は、45mol%未満であることが好ましい。ブロック共重合体(Y)の共役ジエン単量体単位中のビニル含有量は、より好ましくは15mol%以上45mol%未満であり、更に好ましくは18mol%以上40mol%以下であり、特に好ましくは21mol%以上35mol%以下であり、最も好ましくは24mol%以上32mol%以下である。共役ジエン単量体単位中のビニル含有量が15mol%以上であることにより、アスファルトに添加するブロック共重合体(Y)の添加量がより低くなる傾向にある。また、共役ジエン単量体単位中のビニル含有量が45mol%未満であることにより、改質アスファルト組成物の耐熱老化性や耐候性が高くなる傾向にある。ここで、「ビニル含有量」とは、1,2−結合、3,4−結合、及び1,4−結合の結合様式で組み込まれている共役ジエン単量体単位の総mol量に対し、1,2−結合及び3,4−結合で組み込まれている共役ジエン単量体単位の割合(mol%)である。また、ブロック共重合体(Y)が水素添加されている場合、「ビニル含有量」とは、水素添加前のブロック共重合体(Y)における、共役ジエン単量体単位中のビニル含有量(mol%)を意味する。なお、ビニル含有量は、核磁気共鳴(Nuclear Magnetic Resonance;以下「NMR」と称する。)により測定でき、具体的には後述する実施例に記載の方法により測定できる。
本実施形態において、特に限定されるものではないが、共役ジエン単量体単位とビニル芳香族単量体単位とを含む共重合体ブロック(B)内において、ビニル含有量に分布があってもよい。ブロック共重合体(Y)の共役ジエン単量体単位とビニル芳香族単量体単位とを含む共重合体ブロック(B)中のビニル含有量の高低の差(以下、「Δビニル含有量」ともいう)の下限値は、アスファルト組成物の低温伸度の点で、5mol%以上が好ましく、8mol%以上がより好ましく、15mol%以上がさらに好ましく、20mol%以上が特に好ましい。また、改質アスファルト組成物の相容性の点で、Δビニル含有量の上限値は、30mol%以下が好ましく、25mol%以下がより好ましく、20mol%以下がさらに好ましく、17mol%以下が特に好ましい。
共役ジエン単量体単位とビニル芳香族単量体単位とを含む共重合体ブロック(B)内において、重合開始末端側から順に等質量となるよう第1領域〜第6領域とし、第1領域〜第6領域の水素添加前のビニル含有量を、それぞれV1〜V6としたとき、ビニル含有量の分布は、特に限定されず、一定でもよく、テーパー状、凸状、或いは凹状に分布していてもよい。
ここで、テーパー状の分布とは、ビニル含有量の関係が、V6>V5>V4>V3>V2>V1、若しくはV6<V5<V4<V3<V2<V1を満たす分布をいう。凸状の分布とは、ビニル含有量の関係が、V6及びV1がV5及びV2よりも小さく、かつ、V5及びV2がV4及びV3よりも小さくなる分布をいう。凹状の分布とは、V6及びV1がV5及びV2よりも大きく、V5及びV2がV4及びV3よりも大きくなる分布をいう。
本実施形態において、ブロック共重合体(Y)の重量平均分子量(Mw)の下限値は、アスファルト組成物の引張後の回復性、耐骨材剥離性の点で、10万以上が好ましく、15万以上がより好ましく、17万以上が更に好ましい。また、ブロック共重合体(Y)の重量平均分子量(Mw)の上限値は、ブロック共重合体(Y)の製造性の点で、50万以下が好ましく、40万以下がより好ましく、30万以下がさらに好ましく、27万以下が特に好ましい。本実施形態において、例えば、ブロック共重合体(Y)の重量平均分子量(Mw)は、10万〜50万とすることができる。
本実施形態において、ブロック共重合体(Y)の分子量分布(Mw/Mn)(重量平均分子量(Mw)の数平均分子量(Mn)に対する比)の下限値は、アスファルト(X)に添加するブロック共重合体(Y)の添加量を削減する点で、1.03以上が好ましく、1.05以上がより好ましく、1.11以上がさらに好ましく、1.20以上が特に好ましい。また、ブロック共重合体(Y)の分子量分布(Mw/Mn)の上限値は、ブロック共重合体(Y)の製造性や、アスファルト(X)に添加するブロック共重合体(Y)の添加量を削減する点で、2.0以下が好ましく、1.7以下がより好ましく、1.4以下がさらに好ましく、1.3以下が特に好ましい。ブロック共重合体(Y)の重量平均分子量(Mw)及び分子量分布(Mw/Mn)は、後述する実施例記載の方法により求めることができる。
本実施形態において、ブロック共重合体(Y)の動的粘弾性測定による損失正接(tanδ)のピーク温度の下限値は、アスファルトとの高い相容性や改質アスファルト組成物の短い製造時間の点で、−50℃以上であることが好ましく、−47℃以上がより好ましく、−44℃以上がさらに好ましい。また、改質アスファルト組成物の製造時間の短縮、及び柔軟性の点で、損失正接(tanδ)のピーク温度の上限値は、−5℃以下であることが好ましく、−10℃以下がより好ましく、−15℃以下がさらに好ましく、−25℃以下が特に好ましい。本実施形態において、例えば、動的粘弾性測定による損失正接(tanδ)のピーク温度は、−50℃以上−5℃以下とすることができる。動的粘弾性測定による損失正接(tanδ)のピーク温度は、ブロック共重合体(Y)の重合において、例えば、ブロック共重合体(Y)に含まれる共役ジエン単量体単位とビニル芳香族単量体単位との質量比、ビニル含有量及び水素添加率等を適宜制御することにより、−50℃以上−5℃以下の範囲に調整することができる。
ブロック共重合体(Y)の動的粘弾性測定による−50℃以上−5℃以下の範囲における損失正接(tanδ)のピーク高さは、改質アスファルト組成物の製造時間の短縮、高い引張後の回復性、改質アスファルト組成物の貯蔵時の耐熱老化性の点で、0.7を超えて1.6以下であることが好ましく、0.8以上1.8以下がより好ましく、0.9以上1.6以下がさらに好ましく、1.0以上1.5以下が特に好ましい。
動的粘弾性測定による損失正接(tanδ)のピーク温度は、ブロック共重合体(Y)の重合において、例えば、反応温度、各単量体の添加時間及び/又は添加回数等を制御することにより、−50℃以上−5℃以下の範囲におけるピークトップの値を0.7以上1.8以下に調整することができる。
本実施形態において、改質アスファルト組成物の相容性、改質アスファルト組成物の貯蔵時の耐熱老化性、改質アスファルト組成物や改質アスファルト混合物の機械的強度の点で、ブロック共重合体(Y)が、水酸基、酸無水物基、エポキシ基、アミノ基、アミド基、シラノール基、及びアルコキシシラン基からなる群から選択される少なくとも一つの官能基を有することが好ましい。この中でも、ブロック共重合体(Y)が、アミノ基、及びアミド基からなる群から選択される少なくとも一つの官能基を有することがより好ましく、アミノ基を有することがさらに好ましい。ブロック共重合体(Y)は、その分子1molに対して、アミノ基、及びアミド基からなる群から選択される少なくとも一つの官能基を2mol以上含有することがより好ましい。
ブロック共重合体(Y)のメルトフローレート(Melt Flow Rate(以下、「MFR」と称する。)、200℃、5kgf)の下限値は、改質アスファルト組成物の短い製造時間の点で、0.1g/10min以上が好ましく、1g/10min以上がより好ましく、2g/10min以上がさらに好ましい。また、ブロック共重合体(Y)のメルトフローレート(MFR、200℃、5kgf)の上限値は、アスファルトに添加するブロック共重合体(Y)の添加量が少なくなることや、改質アスファルト組成物の引張後の回復性の点で、50g/10min以下が好ましく、10g/10min以下がさらに好ましい。
〈ブロック共重合体(Y)の製造方法〉
ブロック共重合体(Y)は、例えば、各重合体ブロックを有するブロック共重合体を得る重合工程と、当該重合工程によって得られたブロック共重合体を含む重合体溶液を脱溶剤する脱溶剤工程と、を行うことによって製造することができる。例えば、重合工程においては、炭化水素溶媒中、リチウム化合物を重合開始剤として、少なくとも共役ジエン単量体とビニル芳香族単量体とを重合させて、ビニル芳香族単量体単位を主体とする重合体ブロック(A1)と、共役ジエン単量体単位とビニル芳香族単量体単位とを含む共重合体ブロック(B)と、ビニル芳香族単量体単位を主体とする重合体ブロック(A2)と、を有するブロック共重合体を得るえることができる。また、ブロック共重合体(Y)を水素添加する場合、重合工程の後、得られたブロック共重合体の共役ジエン単量体単位中の二重結合の一部又は全部に水素を添加する水素添加工程を行い、その後、得られた水添ブロック共重合体を含む重合体溶液を脱溶剤する脱溶剤工程を行うことにより、製造することができる。
重合工程において、比エネルギー、各単量体の添加濃度及び/又は反応温度等を制御することにより、重合体ブロック(A1)及び(A2)の分子量分布の値を1.10以上1.46以下にすることができる。また、特に限定されるものではないが、ブロック共重合体(Y)の重合工程において比エネルギーを0.1〜0.3kw/m3にすることが好ましい。各単量体の添加濃度は、それぞれ10〜14質量%にすることが好ましい。各単量体の反応温度(反応器内温)は56〜85℃に設定することが好ましい。重合工程における各条件をこのように設定することによって、重合体ブロック(A1)及び(A2)の分子量分布を1.10以上1.46以下に調整することがより容易となる。
重合工程において、反応温度、各単量体の添加時間及び/又は添加回数等を制御することにより、動的粘弾性測定による損失正接(tanδ)の−50℃以上−5℃以下の範囲におけるピーク高さの値を0.7以上1.8以下に調整することができる。特に限定されるものではないが、反応温度(反応器内温)は、60〜85℃の範囲内にすることが好ましい。反応器内圧は、0.1MPa〜0.50MPaの範囲内にすることが好ましい。また、共役ジエン単量体とビニル芳香族単量体との添加時間を、10分間〜60分間の範囲内で一定速度で添加するか、又は、添加回数を3回以上とすることが好ましい。重合工程における各条件をこのように設定することによって、動的粘弾性測定による損失正接(tanδ)の−50℃以上−5℃以下の範囲におけるピーク高さの値を0.7以上1.8以下に調整することがより容易となる。
重合工程において用いられる炭化水素溶媒としては、特に限定はされないが、例えば、ブタン、ペンタン、ヘキサン、イソペンタン、ヘプタン、オクタン等の脂肪族炭化水素;シクロペンタン、メチルシクロペンタン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、エチルシクロヘキサン等の脂環式炭化水素;ベンゼン、トルエン、エチルベンゼン、キシレン等の芳香族炭化水素等が挙げられる。炭化水素溶媒は、1種のみを単独で使用してもよく、2種以上を混合して使用してもよい。
重合工程において重合開始剤として用いるリチウム化合物としては、特に限定されないが、例えば、有機モノリチウム化合物、有機ジリチウム化合物、有機ポリリチウム化合物等の分子中に一個以上のリチウム原子を結合した化合物が挙げられる。このような有機リチウム化合物としては、特に限定されないが、例えば、エチルリチウム、n−プロピルリチウム、イソプロピルリチウム、n−ブチルリチウム、sec−ブチルリチウム、tert−ブチルリチウム、ヘキサメチレンジリチウム、ブタジエニルジリチウム、イソプレニルジリチウム等が挙げられる。リチウム化合物は、1種のみを単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
重合工程おける共役ジエン単量体及びビニル芳香族単量体としては、上述のものを適宜選定して用いることができる。
共役ジエン単量体としては、特に限定されないが、例えば、1,3−ブタジエン、2−メチル−1,3−ブタジエン(イソプレン)、2,3−ジメチル−1,3−ブタジエン、1,3−ペンタジエン、2−メチル−1,3−ペンタジエン、1,3−ヘキサジエン等の一対の共役二重結合を有するジオレフィンが挙げられる。このなかでも、共役ジエン単量体として好ましくは、1,3−ブタジエン、イソプレンが挙げられる。また、機械的強度の観点から、共役ジエン単量体としては1,3−ブタジエンがより好ましい。共役ジエン単量体は、1種を単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
ビニル芳香族単量体としては、特に限定されないが、例えば、スチレン、α−メチルスチレン、p−メチルスチレン、ジビニルベンゼン、1,1−ジフェニルエチレン、N,N−ジメチル−p−アミノエチルスチレン、N,N−ジエチル−p−アミノエチルスチレン等のビニル芳香族化合物が挙げられる。このなかでもビニル芳香族単量体としては、経済性の観点からスチレンが好ましい。ビニル芳香族単量体は、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
上述のように、重合工程においては前記共役ジエン単量体及びビニル芳香族単量体の他、共役ジエン単量体及びビニル芳香族単量体と共重合可能な他の単量体を用いることもできる。
重合工程においては、重合速度の調整、重合した共役ジエン単量体単位のミクロ構造(シス、トランス、及びビニルの比率)の調整、共役ジエン単量体とビニル芳香族単量体との反応比率の調整等を目的として、極性化合物やランダム化剤を使用してもよい。
極性化合物やランダム化剤としては、特に限定されないが、例えば、テトラヒドロフラン、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジブチルエーテル等のエーテル類;トリエチルアミン、N,N,N’,N’−テトラメチルエチレンジアミン(以下、「TMEDA」ともいう)等のアミン類;チオエーテル類、ホスフィン類、ホスホルアミド類、アルキルベンゼンスルホン酸塩、カリウムやナトリウムのアルコキシド等が挙げられる。極性化合物やランダム化剤は、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
ブロック共重合体(Y)の重合工程で実施する重合方法としては、特に限定されず、公知の方法を適用できる。公知の方法としては、例えば、特公昭36−19286号公報、特公昭43−17979号公報、特公昭46−32415号公報、特公昭49−36957号公報、特公昭48−2423号公報、特公昭48−4106号公報、特公昭56−28925号公報、特開昭59−166518号公報、特開昭60−186577号公報等に記載された方法が挙げられる。
重合工程の後に、ブロック共重合体(Y)の活性末端を失活する失活工程を行うことが好ましい。活性水素を有する化合物とブロック共重合体(Y)の活性末端とを反応させることで、ブロック共重合体(Y)の活性末端を失活させることができる。活性水素を有する化合物としては、特に限定されないが、経済性の点で、アルコール、及び水等を挙げることができる。
ブロック共重合体(Y)を水素添加する場合、重合工程で得られたブロック共重合体(Y)の共役ジエン単量体単位中の二重結合の一部に水素を添加する水素添加工程を行うことができる。水素添加工程に使用される水素添加触媒としては、特に限定されないが、例えば、Ni、Pt、Pd、Ru等の金属を、カーボン、シリカ、アルミナ、ケイソウ土等の担体に担持させた、担持型不均一系触媒;Ni、Co、Fe、Cr等の有機塩又はアセチルアセトン塩と有機Al等の還元剤とを用いる、いわゆるチーグラー型触媒;Ru、Rh等の有機金属化合物等のいわゆる有機錯触媒;及びチタノセン化合物に還元剤として有機Li、有機Al、有機Mg等を用いる均一触媒等が挙げられる。このなかでも、経済性、重合体の着色性の観点から、チタノセン化合物に還元剤として有機Li、有機Al、有機Mg等を用いる均一触媒系が好ましい。
水素添加工程の方法としては、特に限定されないが、例えば、特公昭42−8704号公報、特公昭43−6636号公報に記載された方法や、好ましくは特公昭63−4841号公報及び特公昭63−5401号公報に記載された方法が挙げられる。具体的には、不活性溶媒中で水素添加触媒の存在下に水素添加反応を行い、部分水添ブロック共重合体溶液を得ることができる。水素添加工程は、高い水添活性の観点から、失活工程の後に行うことが好ましい。水素添加工程は、バッチプロセス、連続プロセス、或いはそれらの組み合わせのいずれでも行うことができる。
水素添加工程において、ビニル芳香族単量体単位中の共役結合が水素添加されてもよい。全ビニル芳香族単量体単位中の共役結合の水素添加率の上限値は、ビニル芳香族単量体単位中の不飽和基全量を基準として、30mol%以下であることが好ましく、10mol%以下であることがより好ましく、3mol%以下であることが更に好ましい。ビニル芳香族単量体単位中の共役結合の水素添加率の下限値は、例えば0.1mol%以上とすることができ、又は0mol%であってもよい。
重合開始剤、単量体、停止剤として、特に限定されないが、例えば、水酸基、酸無水物基、エポキシ基、アミノ基、アミド基、シラノール基、及びアルコキシシラン基からなる群から選択される少なくとも一つの官能基を有する化合物を用いて、得られるブロック共重合体(Y)に、水酸基、酸無水物基、エポキシ基、アミノ基、アミド基、シラノール基、及びアルコキシシラン基からなる群から選択される少なくとも一つの官能基を付加することが好ましい。
官能基を有する重合開始剤としては、窒素含有基を有する重合開始剤が好ましい。窒素含有基を有する重合開始剤としては、特に限定されないが、例えば、ジオクチルアミノリチウム、ジ−2−エチルヘキシルアミノリチウム、エチルベンジルアミノリチウム、(3−(ジブチルアミノ)−プロピル)リチウム、及びピペリジノリチウム等が挙げられる。官能基を有する重合開始剤は、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
官能基を有する単量体としては、窒素含有基を有する単量体が好ましい。窒素含有基を有する単量体としては、特に限定されないが、例えば、N,N−ジメチルビニルベンジルアミン、N,N−ジエチルビニルベンジルアミン、N,N−ジプロピルビニルベンジルアミン、N,N−ジブチルビニルベンジルアミン、N,N−ジフェニルビニルベンジルアミン、2−ジメチルアミノエチルスチレン、2−ジエチルアミノエチルスチレン、2−ビス(トリメチルシリル)アミノエチルスチレン、1−(4−N,N−ジメチルアミノフェニル)−1−フェニルエチレン、N,N−ジメチル−2−(4−ビニルベンジロキシ)エチルアミン、4−(2−ピロリジノエチル)スチレン、4−(2−ピペリジノエチル)スチレン、4−(2−ヘキサメチレンイミノエチル)スチレン、4−(2−モルホリノエチル)スチレン、4−(2−チアジノエチル)スチレン、4−(2−N−メチルピペラジノエチル)スチレン、1−((4−ビニルフェノキシ)メチル)ピロリジン、及び1−(4−ビニルベンジロキシメチル)ピロリジン等が挙げられる。官能基を有する単量体は、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
官能基を有する停止剤としては、窒素含有基又は酸素含有基を有する停止剤が好ましい。窒素含有基又は酸素含有基を有する停止剤としては、特に限定されないが、例えば、テトラグリシジルメタキシレンジアミン、テトラグリシジル−1,3−ビスアミノメチルシクロヘキサン、テトラグリシジル−p−フェニレンジアミン、テトラグリシジルジアミノジフェニルメタン、ジグリシジルアニリン、γ−カプロラクトン、γ−グリシドキシエチルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリフェノキシシラン、γ−グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルジエチルエトキシシラン、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン、1,3−ジエチル−2−イミダゾリジノン、N,N’−ジメチルプロピレンウレア、及びN−メチルピロリドン等が挙げられる。官能基を有する停止剤は、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
脱溶剤工程では、ブロック共重合体(Y)を含む重合体溶液の溶媒を脱溶剤する。脱溶剤の方法としては、特に限定されないが、スチームストリッピング法、及び直接脱溶媒法が挙げられる。
脱溶剤工程により得られるブロック共重合体(Y)中の残存溶媒量は、少なければ少ないほど好ましく、2質量%以下とすることができ、0.5質量%以下であることが好ましく、0.2質量%以下であることがより好ましく、0.05質量%以下であることが更に好ましく、0.01質量%以下であることが特に好ましく、最も好ましくは0質量%である。経済性の観点から、通常、ブロック共重合体(Y)中の残存溶媒量は、0.01質量%〜0.1質量%の範囲である。
ブロック共重合体(Y)の着色防止や機械的強度向上の観点から、脱溶剤工程の前に、ブロック共重合体を含む溶液中の金属を除去する脱灰工程、ブロック共重合体を含む溶液のpHを調整する中和工程を行ってもよく、例えば、酸の添加、及び/又は炭酸ガスの添加を行ってもよい。
〈その他の成分〉
本実施形態において、改質アスファルト組成物の製造時間短縮、改質アスファルト組成物の相容性、及び改質アスファルト混合物の耐骨材剥離性を改良する観点から、改質アスファルト組成物は粘着付与樹脂を含むことが好ましい。本願明細書において、「粘着付与樹脂」とは、改質アスファルト組成物に粘着性を付与することができる、数平均分子量100〜1万未満の樹脂(オリゴマー)をいう。粘着付与樹脂の数平均分子量は、後述する実施例に記載の数平均分子量の測定方法と同様の方法で測定することができる。
粘着付与樹脂としては、例えば、ロジン系樹脂、水添ロジン系樹脂、テルペン系樹脂、クマロン系樹脂、フェノール系樹脂、テルペン−フェノール系樹脂、芳香族炭化水素樹脂、及び脂肪族炭化水素樹脂等が挙げられる。
粘着付与樹脂は、単独で使用してもよく、2種類以上組み合わせて使用してもよい。粘着付与樹脂の具体例としては、「ゴム・プラスチック配合薬品」(ラバーダイジェスト社編)に記載されたものが使用できる。改質アスファルト組成物の高い相容性や、耐骨材剥離性改良の点で、芳香族炭化水素樹脂が好ましい。
改質アスファルト組成物中における粘着付与樹脂の含有量は、上述したブロック共重合体(Y)を100質量部としたとき、0質量部より多く200質量部以下であることが好ましく、3質量部〜100質量部であることがより好ましい。前記範囲の含有量とすることにより、改質アスファルト組成物の相容性、及び改質アスファルト混合物の耐骨材剥離性の改良効果をより確実に得ることができる。
改質アスファルト組成物の低粘度化や、相容性を高める観点から、改質アスファルト組成物はオイルを含むことが好ましい。オイルとしては、特に限定されないが、例えば、鉱物油系軟化剤、又は合成樹脂系軟化剤のいずれも使用できる。鉱物油系軟化剤としては、一般に、パラフィン系オイル、ナフテン系オイル、芳香族系オイル等が挙げられる。オイルは、一種を単独で使用してもよく、二種以上を組み合わせて使用してもよい。
なお、一般的に、パラフィン系炭化水素の炭素原子数が、オイルに含まれる全炭素原子中の50%以上を占めるものが「パラフィン系オイル」と呼ばれ、ナフテン系炭化水素の炭素原子数が30%以上〜45%以下のものが「ナフテン系オイル」と呼ばれ、また、芳香族炭化水素の炭素原子数が35%以上を占めるものが「芳香族系オイル」と呼ばれている。
鉱物油系軟化剤を含有させることにより、改質アスファルト組成物の施工性の改良が図られる。鉱物油系軟化剤としては、改質アスファルト組成物の低粘度化や、低温性能の観点から、パラフィン系オイルが好ましく、改質アスファルト組成物の低粘度化や、相容性を高める観点から、ナフテン系オイルが好ましい。
また、合成樹脂系軟化剤としては、特に限定されないが、例えば、ポリブテン、低分子量ポリブタジエン等が好ましい。
改質アスファルト組成物中のオイルの含有量は、オイルのブリード抑制や、改質アスファルト組成物の実用上十分な機械的強度を確保する観点から、上述したブロック共重合体(Y)を100質量部としたとき、0超〜100質量部であることが好ましく、0超〜50質量部の範囲がより好ましく、2〜30質量部の範囲がさらに好ましい。
改質アスファルト組成物の軟化点を高め、相容性及び貯蔵時の耐熱老化性を改良する観点から、改質アスファルト組成物は架橋剤を含むことが好ましい。架橋剤としては、特に限定されないが、例えば、硫黄、硫黄化合物、硫黄以外の無機加硫剤、オキシム類、ニトロソ化合物、ポリアミン、有機過酸化物、樹脂架橋剤、イソシアネート化合物、ポリリン酸、及び架橋助剤が挙げられる。
改質アスファルト組成物の高い軟化点、相容性、及び貯蔵時の耐熱老化性の点で、架橋剤としては、硫黄、硫黄化合物、及びポリリン酸が好ましい。架橋剤は、1種を単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
改質アスファルト組成物中の架橋剤の添加量の下限値は、共役ジエン共重合体(Y)とアスファルトとの高い相容性、及び改質アスファルト混合物の油付着時の高い耐質量損失や高い耐強度低下の点で、改質アスファルト組成物の全質量を基準として0.02質量%以上が好ましく、0.04質量%以上がより好ましく、0.06質量%以上がさらに好ましい。また、改質アスファルト組成物中の架橋剤の添加量は、高い針入度の改質アスファルト組成物を得るという点から、特表2013−520543号公報に記載のように、改質アスファルト組成物の全質量を基準として約20〜60質量%を用いてもよい。改質アスファルト組成物中の架橋剤の添加量の上限値は、高い針入度の改質アスファルト組成物を得る点や経済性の点で、改質アスファルト組成物の全質量を基準として1.0質量%以下が好ましく、0.4質量%以下がより好ましく、0.2質量%以下がさらに好ましい。
架橋剤を十分に反応させる観点から、改質アスファルト組成物に架橋剤を添加した後の混合時間を20分間以上にすることが好ましく、40分間以上がより好ましく、60分間以上がさらに好ましく、90分間以上が最も好ましい。また、共役ジエン共重合体(Y)の熱劣化抑制の点で、改質アスファルト組成物に架橋剤を添加した後の混合時間は、5時間以下が好ましく、3時間以内がより好ましい。
改質アスファルト組成物の粘度を低下させる観点、及び改質アスファルト組成物の製造時間をより短縮する観点から、改質アスファルト製造時は発泡剤を含んでもよい。
発泡剤としては、特に限定されないが、例えば、炭酸水素ナトリウム、炭酸アンモニウム、ジアゾアミノベンゼン、N,N’−ジニトロソペンタメチレンテトラミン、2,2’−アゾビス(イソブチロニトリル)等が挙げられる。改質アスファルトとの相容性の点で、ジアゾアミノベンゼン、N,N’−ジニトロソペンタメチレンテトラミン、2,2’−アゾビス(イソブチロニトリル)が好ましい。発泡剤は、1種のみを単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
改質アスファルト組成物中の発泡剤の添加量の下限値は、改質アスファルト組成物の低い粘度や短い製造時間の点で、改質アスファルト組成物の全質量を基準として0.1質量%以上が好ましく、0.3質量%以上がより好ましい。また、改質アスファルト組成物中の発泡剤の添加量の上限値は、経済性の点で、改質アスファルト組成物の全質量を基準として3質量%以下が好ましく、2質量%以下がより好ましく、1質量%以下がさらに好ましい。
改質アスファルト組成物は、熱可塑性樹脂やゴム状重合体の配合に一般的に用いられる他の添加剤を含んでもよい。他の添加剤としては、特に限定されないが、例えば、無機充填剤、滑剤、離型剤、可塑剤、酸化防止剤、安定剤、難燃剤、帯電防止剤、有機繊維、ガラス繊維、炭素繊維、金属ウィスカ等の補強剤、着色剤、顔料、粘度調整剤、剥離防止剤、及び顔料分散剤等が挙げられる。他の添加剤の含有量は特に限定されず、アスファルト(X)100質量部に対して、通常、50質量部以下である。
無機充填剤としては、特に限定されないが、例えば、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、水酸化マグネシウム、硫酸カルシウム、硫酸バリウム、シリカ、クレー、タルク、マイカ、ウォラストナイト、モンモリロナイト、ゼオライト、アルミナ、酸化チタン、酸化マグネシウム、酸化亜鉛、スラッグウール、及びガラス繊維等が挙げられる。無機充填剤は、1種のみを単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
滑剤及び離型剤としては、特に限定されないが、例えば、カーボンブラック、酸化鉄等の顔料、ステアリン酸、ベヘニン酸、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸マグネシウム、及びエチレンビスステアロアミド等が挙げられる。滑剤及び離型剤は、1種のみを単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
安定剤としては、特に限定されないが、例えば、酸化防止剤、及び光安定剤等の各種安定剤が挙げられる。
酸化防止剤としては、特に限定されないが、例えば、ラジカル補捉剤等のフェノール系酸化防止剤、過酸化物分解剤等のリン系酸化防止剤、及びイオウ系酸化防止剤等が挙げられる。また、両性能を併せ持つ酸化防止剤を使用してもよい。酸化防止剤は、一種を単独で用いてもよく、二種以上を併用してもよい。このなかでも、ブロック共重合体の耐熱老化性やゲル化抑制の観点から、フェノール系酸化防止剤が好ましい。酸化防止剤としては、特に限定されないが、例えば、2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェノール、n−オクタデシル−3−(4'−ヒドロキシ−3',5'−ジ−t−ブチルフェニル)プロピオネート、2,2'−メチレンビス(4−メチル−6−t−ブチルフェノール)、2,2'−メチレンビス(4−エチル−6−t−ブチルフェノール)、2,4−ビス[(オクチルチオ)メチル]−o−クレゾール、2−t−ブチル−6−(3−t−ブチル−2−ヒドロキシ−5−メチルべンジル)−4−メチルフェニルアクリレート、2,4−ジ−t−アミル−6−[1−(3,5−ジ−t−アミル−2−ヒドロキシフェニル)エチル]フェニルアクリレート、2−[1−(2−ヒドロキシ−3,5−ジ−tert−ペンチルフェニル)]アクリレート等のヒンダードフェノール系酸化防止剤;ジラウリルチオジプロピオネート、ラウリルステアリルチオジプロピオネートペンタエリスリトール−テトラキス(β−ラウリルチオプロピオネート)等のイオウ系酸化防止剤;トリス(ノニルフェニル)ホスファイト、トリス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)ホスファイト等のリン系酸化防止剤等が挙げられる。
光安定剤としては、特に限定されないが、例えば、2−(2'−ヒドロキシ−5'−メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2'−ヒドロキシ−3',5'−t−ブチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2'−ヒドロキシ−3',5'−ジ−t−ブチルフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール等のベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤;2−ヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン等のベンゾフェノン系紫外線吸収剤;ヒンダードアミン系光安定剤等が挙げられる。光安定剤は、1種のみを単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
剥離防止剤は、改質アスファルトを骨材と混合したときのアスファルト組成物と骨材との剥離を防止することができる。剥離防止剤としては、特に限定されないが、例えば、樹脂酸が好適であり、カルボキシル基を有する炭素数20の多環式ジテルペンであって、アビエチン酸、デヒドロアビエチン酸、ネオアビエチン酸、ピマール酸、イソピマール酸、パラストリン酸のうち何れか1種以上を含有するロジンが挙げられる。また、脂肪酸又は脂肪酸アミドは、剥離防止剤及び滑剤として機能することができる。剥離防止剤は、1種のみを単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
アスファルト組成物は、ブロック共重合体(Y)以外のゴム成分(以下、単に「ゴム成分」ともいう。)を含有してもよい。ブロック共重合体(Y)以外のゴム成分としては、特に限定されないが、例えば、天然ゴム、及び合成ゴムが挙げられる。合成ゴムとしては、特に限定されないが、例えば、ポリイソプレンゴム、ポリブタジエンゴム(BR)、スチレンブタジエンゴム(SBR)、変性スチレンブタジエンゴム(変性SBR)、スチレン−ブタジエン−スチレンブロック共重合体(SBS)、スチレン−エチレン−ブチレン−スチレンブロック共重合体(SEBS)、スチレン−ブチレン−ブタジエン−スチレン共重合体(SBBS)、エチレン−プロピレン共重合体(EPDM)等のオレフィン系エラストマー;クロロプレンゴム、アクリルゴム、エチレン−酢酸ビニル共重合体(EVA)、エチレン−エチルアクリレート共重合体(EEA)、ニトリルブタジエンゴム(NBR)等が挙げられる。ブロック共重合体(Y)以外のゴム成分は、1種のみを単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
ブロック共重合体(Y)以外のゴム成分としては、改質アスファルト組成物の高い相容性や、耐骨材剥離性を改良する点で、ポリイソプレンゴム、ポリブタジエンゴム、スチレンブタジエンゴム、スチレン−ブタジエン−スチレンブロック共重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体が好ましく、ポリブタジエンゴム、スチレン−ブタジエン−スチレンブロック共重合体がより好ましい。
ブロック共重合体(Y)以外のゴム成分は官能基を有していてもよい。改質アスファルト組成物の耐流動性を改良する点で、ブロック共重合体(Y)以外のゴム成分としては、オレフィン系エラストマー、又は官能基を有するオレフィン系エラストマーを使用することが好ましい。
ブロック共重合体(Y)以外のゴム成分が官能基を有する場合、官能基としては、水酸基、酸無水物基、エポキシ基、アミノ基、アミド基、シラノール基、及びアルコキシシラン基からなる群から選択される少なくとも一つの官能基を有することが好ましい。ブロック共重合体(Y)以外のゴム成分は、単独で使用してもよく、2つ以上を組み合わせて使用してもよい。
改質アスファルト組成物中における、ブロック共重合体(Y)以外のゴム成分の含有量は、上述したブロック共重合体(Y)を100質量部としたとき、0.5〜400質量部であることが好ましく、0.5〜300質量部であることがより好ましく、1〜200質量部であることが更に好ましく、5〜150質量部であることが最も好ましい。ブロック共重合体(Y)以外のゴム成分の含有量を前記範囲とすることにより、改質アスファルト組成物の相容性と耐骨材剥離性との改良効果がより向上させることができる。
改質アスファルト組成物は、ブロック共重合体(Y)以外の樹脂成分を含有してもよい。ブロック共重合体(Y)以外の樹脂成分としては、特に限定されないが、例えばポリエチレン(PE)、低密度ポリエチレン(低密度PE)、ポリ塩化ビニル(PVC)、ポリアミド(PA)、ポリスチレン(PS)、アクリル樹脂、ポリカーボネート(PC)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、テフロン(登録商標)(PTFE)、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリフェニレンスルフィド(PPS)、ポリイミド(PI)、ポリアミドイミド(PAI)等の熱可塑性樹脂が挙げられる。
ブロック共重合体(Y)以外の樹脂成分としては、改質アスファルト組成物の高い相容性や、耐骨材剥離性を改良する点で、ポリエチレン(PE)、低密度ポリエチレン(低密度PE)、ポリ塩化ビニル(PVC)、ポリアミド(PA)がより好ましい。
本実施形態における改質アスファルト組成物は、ブロック共重合体(Y)以外の樹脂成分として、重量平均分子量(Mw)が5,000〜30,000のビニル芳香族単量体単位を主体とする重合体(以下、「低分子量ビニル芳香族重合体」ともいう)を含んでもよい。低分子量ビニル芳香族重合体としては、本実施形態における重合体ブロック(A1)又は(A2)に含まれるビニル芳香族単量体単位を主体とすることが好ましく、ポリスチレンに由来する単量体単位を主体とすることがより好ましい。
本実施形態におけるブロック共重合体(Y)100質量部に対して、低分子量ビニル芳香族重合体の含有量は、改質アスファルト組成物の低粘度化の点で、0.5質量部以上が好ましく、1.0質量部以上がより好ましく、2.0質量部以上がさらに好ましく、3.0質量部以上が特に好ましい。また、改質アスファルト組成物の軟化点を高くする点で、5.0質量部以下が好ましく、4.0質量部以下がより好ましく、3.0質量部以下がさらに好ましく、2.0質量部以下が特に好ましい。
本実施形態において、低分子量ビニル芳香族重合体は、本実施形態のブロック共重合体(Y)と予め混合した後に、アスファルト(X)と混合することが好ましい。低分子量ビニル芳香族重合体は、単独で調製してブロック共重合体(Y)と混合してもよいし、ブロック共重合体(Y)を製造する際に同時に調製してもよい。
本実施形態のブロック共重合体(Y)を製造する際に同時に低分子量ビニル芳香族重合体を調製する方法としては、例えば、ビニル芳香族単量体単位を主体とする重合体ブロック(A1)及び(A2)と、共役ジエン単量体単位を含む重合体ブロック(B)とを有するリビングブロック共重合体を製造する際、用いるビニル芳香族単量体の一部を、重量平均分子量(Mw)が5,000〜30,000のビニル芳香族単量体単位を主体とするリビング重合体として残存させ、そして、リビングブロック共重合体、及び残存するリビング重合体を失活させることにより、ビニル芳香族単量体単位を主体とする重合体ブロック(A1)及び(A2)と、共役ジエン単量体単位を含む重合体ブロック(B)と、を有するブロック共重合体(Y)、及び低分子量ビニル芳香族重合体を同時に調整する方法が挙げられる。
ビニル芳香族単量体の一部を、重量平均分子量(Mw)が5,000〜30,000のビニル芳香族単量体単位を主体とするリビング重合体として残存させる方法としては、重合工程で添加する単量体の量、重合開始剤の量、反応温度、及び反応時間等を制御することが挙げられる。低分子量ビニル芳香族重合体の分子量及び含有量を制御する観点から、重合体ブロック(A1)及び(A2)を重合する際の反応開始温度を55℃以上65℃以下とすることが好ましい。重合体ブロック(A)を重合する際の反応時間としては、重合反応により温度が上昇し、温度が最高値を示してから2分間以上、5分30秒以下であることが好ましい。
ブロック共重合体(Y)を製造する際に低分子量ビニル芳香族重合体を同時に調製する方法としては、特に限定されないが、次の方法も用いることができる。例えば、ビニル芳香族単量体単位を重合させてビニル芳香族単量体単位を主体とする重合体ブロック(A1)及び(A2)を調製する際に、リビング重合体ブロック(A1)及び(A2)の一部をメタノール等の活性水素化合物を添加して失活せることにより、低分子量ビニル芳香族重合体を生成することができる。その後、失活せずに残ったリビング重合体ブロック(A1)及び(A2)に、共役ジエン単量体単位を含有する共重合体ブロック(B)を重合し、ブロック共重合体(Y)を調製することができる。これによって、ブロック共重合体(Y)を調整する際に、同時に低分子量ビニル芳香族重合体を調製することができる。
上述のようにブロック共重合体(Y)を製造する際に同時に調整した低分子量ビニル芳香族重合体は、ブロック共重合体(Y)の重量平均分子量(Mw)を測定する際に、低分子成分として検出されるので、その際に低分子量ビニル芳香族重合体の存在を確認することができ、また、その重量平均分子量(Mw)、及び分子量分布(Mw/Mn)を測定することができる。
また、改質アスファルト組成物に低分子量ビニル芳香族重合体を用いる場合には、市販の低分子量ビニル芳香族重合体をブロック共重合体(Y)と混合してもよい。
ブロック共重合体(Y)以外の樹脂成分は、単独で使用してもよく、2つ以上を組み合わせて使用してもよい。
ブロック共重合体(Y)以外の樹脂成分は官能基を有していてもよい。ブロック共重合体(Y)以外の樹脂成分が官能基を有する場合、官能基としては、特に限定されないが、例えば、水酸基、酸無水物基、エポキシ基、アミノ基、アミド基、シラノール基、及びアルコキシシラン基からなる群から選択される少なくとも一つの官能基を有することが好ましい。
改質アスファルト組成物中における、ブロック共重合体(Y)以外の樹脂成分の含有量は、上述したブロック共重合体(Y)を100質量部としたとき、0.5〜400質量部であることが好ましく、0.5〜300質量部であることがより好ましく、1〜200質量部であることが更に好ましく、5〜150質量部であることが最も好ましい。ブロック共重合体(Y)以外の樹脂成分の含有量を前記範囲とすることにより、改質アスファルト組成物の相容性と耐骨材剥離性との改良効果をより向上させることができる。
〈改質アスファルト組成物の製造方法〉
本実施形態の改質アスファルト組成物の製造方法は、アスファルト(X)100質量部に対し、上述のブロック共重合体(Y)(即ち、重合体ブロック(A1)と共重合体ブロック(B)と重合体ブロック(A2)とを有するブロック共重合体であって、上述の式(1)で表される、前記重合体ブロック(A1)及び(A2)の分子量分布が1.10以上1.46以下である、ブロック共重合体)0.5〜8質量部を混合して、上述の式(2)で表される改質アスファルト組成物のG*/sinδ比を、5.0以上6.5未満にすることを含む。
改質アスファルト組成物の製造工程において、ブロック共重合体(Y)の添加回数、混合機の回転数、混合温度、混合時間等を制御することによって、改質アスファルト組成物のG*/sinδ比の値を5.0以上6.5未満にすることができる。また、特に限定されるものではないが、改質アスファルト組成物の製造時における、ブロック共重合体(Y)の添加回数は、3回以上とすることが好ましい。ブロック共重合体(Y)の添加時間は5分間以上かけて少量ずつ添加することが好ましい。また、混合機の回転数は2000rpm〜4500rpmとすることが好ましい。混合温度は、150℃以上165℃以下の低温での混合と、165℃より高く185℃以下の高温での混合との2段階に分けることが好ましい。混合時間は、低温での混合に30分間〜50分間、高温での混合に30分間〜50分間かけることが好ましい。これによって、改質アスファルト組成物のG*/sinδ比の値を5.0以上6.5未満に設定することが容易となる。
アスファルト(X)とブロック共重合体(Y)との混合方法は特に限定されず、任意の混合機を用いて行うことができる。混合機としては、例えば、押出機、ニーダー、バンバリーミキサーなどの溶融混練機、垂直インペラ、サイドアーム型インペラ等の攪拌機、乳化機を含めたホモジナイザー、及びポンプ等が挙げられる。
《改質アスファルト混合物》
本実施形態において、改質アスファルト混合物は、本実施形態の改質アスファルト組成物と、骨材と、を含む。
骨材としては限定されず、例えば、社団法人日本道路協会発行の「アスファルト舗装要綱」に記載されている舗装用の骨材であればどのようなものでも使用できる。骨材としては、具体的には、砕石、玉石、砂利、鉄鋼スラグ等である。また、これらの骨材にアスファルトを被覆したアスファルト被覆骨材及び再生骨材なども使用できる。その他、これに類似する粒状材料、人工焼成骨材、焼成発泡骨材、人工軽量骨材、陶磁器粒、ルクソバイト、アルミニウム粒、プラスチック粒、セラミックス、エメリー、建設廃材、繊維等も使用することができる。
また、骨材は、一般に、粗骨材、細骨材、及びフィラーに大別される。
粗骨材とは、2.36mmふるいに留まる骨材であって、一般には粒径範囲2.5mm〜5mmの7号砕石、粒径範囲5mm〜13mmの6号砕石、粒径範囲13mm〜20mmの5号砕石、更には、粒径範囲20mm〜30mmの4号砕石などの種類がある。本実施形態の改質アスファルト混合物においては、これら種々の粒径範囲の粗骨材の1種又は2種以上を混合した骨材、或いは、合成された骨材などを使用することができる。これらの粗骨材には、骨材に対して0.3〜1質量%程度のストレートアスファルトを被覆しておいてもよい。
細骨材とは、2.36mmふるいを通過し、かつ、0.075mmふるいに止まる骨材をいい、特に限定されないが、例えば、川砂、丘砂、山砂、海砂、スクリーニングス、砕石ダスト、シリカサンド、人工砂、ガラスカレット、鋳物砂、再生骨材破砕砂などが挙げられる。
フィラーとは、0.075mmふるいを通過する骨材であって、特に限定されないが、例えば、スクリーニングスのフィラー分、石粉、消石灰、セメント、焼却炉灰、クレー、タルク、フライアッシュ、カーボンブラックなどが挙げられる。このほか、フィラーとしては、特に限定されないが、例えば、ゴム粉粒、コルク粉粒、木質粉粒、樹脂粉粒、繊維粉粒、パルプ、人工骨材等であっても、0.075mmふるいを通過するものであれば使用することができる。
粗骨材、細骨材、又はフィラーは、単独で用いてもよく、一般的には、2種以上を混合して用いられる。
本実施形態の改質アスファルト混合物は、少なくとも、本実施形態の改質アスファルト組成物と骨材とを混合することにより製造することができる。改質アスファルト組成物と骨材との混合方法は特に限定されない。
改質アスファルト組成物と骨材との混合温度は、通常、120℃以上200℃以下の範囲とすることができる。
改質アスファルト混合物中の骨材の含有量は、油付着時の高い耐質量損失や高い耐強度低下を有するアスファルト混合物を得るという観点から、85質量%以上98質量%以下の範囲が好ましく、90質量%以上97質量%以下がより好ましい。
また、改質アスファルト混合物を製造する方法としては、アスファルトと骨材とを混合する際に、直接本実施形態におけるブロック共重合体(Y)を混合してアスファルトを改質する、いわゆるプラントミックス方式を使用することもできる。
《改質アスファルト組成物及び改質アスファルト混合物の利用方法》
本実施形態の改質アスファルト混合物は、D.Whiteoakによって編集され、Shell Bitumen U.K.によって英国で1990年に発行されたThe Shell Bitumen Handbookに記載されている様々な用途に使用できる。また、他の用途としては、防水シート、屋根のコーティング、防水シート用のプライマー接着剤、舗装用封止結合剤、再利用アスファルト舗装における接着剤、低温調製アスファルトコンクリート(cold prepared asphaltic concrete)用の結合剤、ファイバーグラスマット結合剤、コンクリート用のスリップコート、コンクリート用の保護コート、パイプライン及び鉄製部品のクラックの封着等が含まれる。
本実施形態の改質アスファルト混合物を用いる舗装形態としては、特に限定されるものではないが、密粒度舗装、排水性舗装、透水性舗装、密粒度ギャップアスファルト舗装、砕石マスチックアスファルト舗装、カラー舗装、半たわみ性舗装、保水性舗装、薄層舗装が挙げられる。
また、各舗装形態を得る為の製造方法としては、特に限定されないが、例えば、熱工法、中温化工法、常温工法などが挙げられる。
耐流動性、滑り抵抗性の改善の観点から、密粒度舗装に用いられる改質アスファルト混合物は、骨材の合計量を100質量部として、粗骨材40〜55質量部、細骨材40〜55質量部、フィラー3〜10質量部を含有することが好ましい。密粒度舗装に用いられる改質アスファルト混合物は、骨材の合計量100質量部に対して、アスファルト(X)が5〜7質量部であり、アスファルト(X)100質量部に対して、本実施形態におけるブロック共重合体(Y)が3〜5.5質量部であることが好ましい。
排水性、視認性、騒音性の改善の観点から、排水性舗装に用いられる改質アスファルト混合物は、骨材合計量を100質量部として、粗骨材60〜85質量部、細骨材5〜20質量部、フィラー3〜20質量部を含有することが好ましい。排水性舗装に用いられる改質アスファルト混合物は、骨材の合計量100質量部に対して、アスファルト(X)が4〜6質量部であり、アスファルト(X)100質量部に対して、本実施形態におけるブロック共重合体(Y)が5〜8質量部であることが好ましい。
透水性の改善の観点から、透水性舗装に用いられる改質アスファルト混合物は、骨材の合計量を100質量部として、粗骨材60〜85質量部、細骨材5〜20質量部、フィラー3〜20質量部を含有することが好ましい。透水性舗装に用いられる改質アスファルト混合物は、骨材の合計量100質量部に対して、アスファルト(X)が4〜6質量部であり、アスファルト(X)100質量部に対して、本実施形態におけるブロック共重合体(Y)が0.5〜6質量部であることが好ましい。
摩耗性、耐流動性、耐久性、滑り抵抗性の改善の観点から、密粒度ギャップ舗装に用いられる改質アスファルト混合物は、骨材の合計量を100質量部として、粗骨材50〜60質量部、細骨材30〜40質量部、フィラー3〜10質量部を含有することが好ましい。密粒度ギャップ舗装に用いられる改質アスファルト混合物は、骨材の合計量100質量部に対して、アスファルト(X)が4.5〜6質量部であり、アスファルト(X)100質量部に対して、本実施形態におけるブロック共重合体(Y)が5〜8質量部であることが好ましい。
摩耗性、不透水性、応力緩和性、耐流動性、騒音性の観点から、砕石マスチックアスファルト舗装に用いられる改質アスファルト混合物は、骨材の合計量を100質量部として、粗骨材55〜70質量部、細骨材15〜30質量部、フィラー5〜15質量部を含有することが好ましい。砕石マスチックアスファルト舗装に用いられる改質アスファルト混合物は、骨材の合計量100質量部に対して、アスファルト(X)が5.5〜8質量部であり、アスファルト(X)100質量部に対して、本実施形態のブロック共重合体(Y)が4〜8質量部であることが好ましい。
景観、視認性の改善の観点から、カラー舗装に用いられる改質アスファルト混合物は、骨材の合計量を100質量部として、粗骨材(有色骨材)40〜55質量部、細骨材(有色骨材)40〜50質量部、フィラー(顔料)3〜10質量部を含有することが好ましい。カラー舗装に用いられる改質アスファルト混合物は、骨材の合計量100質量部に対して、石油樹脂が5〜7質量部であり、石油樹脂100質量部に対して、本実施形態におけるブロック共重合体(Y)が4〜8質量部であることが好ましい。
視認性、耐油性、耐流動性の観点から、半たわみ性舗装に用いられる改質アスファルト混合物は、骨材の合計量を100質量部として、粗骨材60〜85質量部、細骨材5〜20質量部、フィラー3〜20質量部を含有することが好ましい。半たわみ性舗装に用いられる改質アスファルト混合物は、骨材の合計量100質量部に対して、アスファルト(X)が4〜6質量部であり、アスファルト(X)100質量部に対して、本実施形態におけるブロック共重合体(Y)が4〜8質量部であることが好ましい。また、半たわみ性舗装に用いられる改質アスファルト混合物は、空隙率が15〜20%程度で、空隙にセメント系モルタルが充填されていることが好ましい。
舗装温度上昇の抑制、保水性の改善の観点から、保水性舗装に用いられる改質アスファルト混合物は、骨材の合計量を100質量部として、粗骨材60〜85質量部、細骨材5〜20質量部、フィラー3〜20質量部を含有することが好ましい。保水性舗装に用いられる改質アスファルト混合物は、骨材の合計量100質量部に対して、アスファルト(X)が4〜6質量部であり、アスファルト(X)100質量部に対して、本実施形態におけるブロック共重合体(Y)が4〜8質量部であることが好ましい。保水性舗装に用いられる改質アスファルト混合物は、空隙率が15〜20%程度で、空隙にセメント系や石膏系などの保水材が充填されていることが好ましい。
経済性、工期短縮、施工性の観点から、薄層舗装に用いられる改質アスファルト混合物は、骨材の合計量を100質量部として、粗骨材60〜85質量部、細骨材5〜20質量部、フィラー3〜20質量部を含有することが好ましい。薄層舗装に用いられる改質アスファルト混合物は、骨材の合計量100質量部に対して、アスファルト(X)が4〜6.5質量部であり、アスファルト100質量部に対して、本実施形態におけるブロック共重合体(Y)が4〜8質量部であることが好ましい。薄層舗装に用いられる改質アスファルト混合物は、粗骨材が粒径範囲2.5mm〜5mmの7号砕石であることが好ましい。
以下、実施例により本実施形態を具体的に説明するが、本実施形態はこれらの実施例に何ら限定されるものではない。実施例及び比較例で使用したブロック共重合体に関する測定方法は、以下のとおりである。
《測定方法》
〈ブロック共重合体中のビニル芳香族単量体単位を主体とする重合体ブロックの合計含有量(BS)〉
水素添加前のブロック共重合体を使用し、I.M.Koithoff,et al.,J.Polym.Sci.1,p.429(1946)に記載の四酸化オスミウム酸法で、ブロック共重合体中のビニル芳香族単量体単位を主体とする重合体ブロック含有量(質量%)を測定した。ブロック共重合体の分解にはオスミウム酸0.1g/125mL第3級ブタノール溶液を用いた。
〈ブロック共重合体中のビニル含有量、共役ジエン単量体単位中の二重結合の水素添加率、及びビニル芳香族単量体単位の含有量(TS)〉
ブロック共重合体中のビニル含有量(mol%)、共役ジエン単量体単位中の二重結合の水素添加率(mol%)、及びビニル芳香族単量体単位の含有量(TS)(質量%)を、核磁気共鳴スペクトル解析(NMR)により、下記の条件で測定した。測定にあたり、水添反応後の反応液を、大量のメタノール中に投入することで、ブロック共重合体を沈殿させて回収した。次いで、ブロック共重合体をアセトンで抽出し、抽出液を真空乾燥し、1H−NMR測定のサンプルとして用いた。1H−NMR測定の条件を以下に記す。
(測定条件)
測定機器 :JNM−LA400(JEOL製)
溶媒 :重水素化クロロホルム
測定サンプル :ポリマーを水素添加する前後の抜き取り品
サンプル濃度 :50mg/mL
観測周波数 :400MHz
化学シフト基準:TMS(テトラメチルシラン)
パルスディレイ:2.904秒
スキャン回数 :64回
パルス幅 :45°
測定温度 :26℃
〈ブロック共重合体の重量平均分子量(Mw)、及び分子量分布(Mw/Mn)〉
ブロック共重合体の重量平均分子量(Mw)は、ゲル浸透クロマトグラフィー(以下、「GPC」ともいう。)装置は、ウォーターズ社製2487で測定した。使用したカラムは、SuperHZM−Nであった。当該GPC測定において、溶媒にはテトラヒドロフランを用い、温度を35℃とした。クロマトグラムのピークの分子量を、市販の標準ポリスチレンの測定から求めた検量線(標準ポリスチレンのピーク分子量を使用して作製)を使用して求めた、ポリスチレン換算重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)の比から、ブロック共重合体の分子量分布(Mw/Mn)を求めた。
〈重合体ブロック(A1)及び(A2)の分子量分布〉
上述の「〈ブロック共重合体中のビニル芳香族単量体単位を主体とする重合体ブロック含有量〉」の測定で得られたGPC曲線から、ピーク分子量の半値全幅時の高分子量側の分子量と、ピーク分子量の半値全幅時の低分子量側の分子量と、を求めた。下式(1)から、重合体ブロック(A1)及び(A2)の分子量分布を算出した。
式(1):分子量分布=(重合体ブロック(A1)及び(A2)のピーク分子量の半値全幅時の高分子量側の分子量)/(重合体ブロック(A1)及び(A2)のピーク分子量の半値全幅時の低分子量側の分子量)
〈ブロック共重合体の損失正接(tanδ)のピーク温度及びピーク高さ〉
ブロック共重合体の動的粘弾性スペクトルを下記の条件により測定し、損失正接(tanδ)のピーク温度及びピーク高さを求めた。装置ARES(ティーエイインスツルメントー株式会社製、商品名)のトーションタイプのジオメトリーを使用した。サンプル形状は、厚み2mm、幅10mm、長さ20mmであった。測定条件は、ひずみ(初期歪み)0.5%、周波数1Hz、測定温度範囲−100℃から100℃まで、昇温速度3℃/分の条件により測定した。
〈改質アスファルト組成物のG*/sinδ比〉
上述の「〈ブロック共重合体の損失正接(tanδ)のピーク温度及びピーク高さ〉」の測定で用いたものと同様の動的粘弾性測定器を用いて、改質アスファルト組成物の動的粘弾性スペクトルを測定した。サンプル形状は、厚み2mm、直径20mmの円柱形であった。測定条件は、ひずみ1.0%、周波数10rad/s、測定温度範囲60℃から80℃まで、昇温速度10℃/分で測定した。測定は、60℃及び80℃の各温度において、10rad/s条件で測定して、その温度におけるG*/sinδとした。改質アスファルト組成物のG*/sinδ比を、下記式(2)により求めた。
式(2):G*/sinδ比=(G*/sinδ(60℃))/(G*/sinδ(80℃))
〈短連鎖ビニル芳香族単量体重合部分の含有量〉
ブロック共重合体のジクロロメタン溶液に、オゾン(O3)濃度1.5%の酸素を150mL/分で通過させて酸化分解し、得られたオゾニドを、水素化アルミニウムリチウムを混合したジエチルエーテル中に滴下して還元した。つぎに、純水を滴下して加水分解し、炭酸カリウムを添加して塩析し、得られた析出物を濾過することにより、ビニル芳香族炭化水素成分を得た。このビニル芳香族炭化水素成分をGPCにより測定した。ここで得られたピークの面積比(短連鎖ビニル芳香族単量体重合部分に相当するピーク面積/ピークの総面積)を算出することにより、ブロック共重合体中の短連鎖ビニル芳香族単量体重合部分の含有量を求めた。なお、オゾン発生機は日本オゾン(株)製OT−31R−2型を用いた。GPC測定は、ウォーターズ社製の2487を用い、カラムはShodex社製カラム−K803Lを2本接続して測定を行った。測定条件は、クロロホルムを溶媒として、流量1.0mL/分、カラムオーブン温度35℃であった。
《ブロック共重合体の製造例》
〈水素添加触媒の調整例〉
窒素置換した反応容器に、乾燥及び精製したシクロヘキサン1Lを入れ、ビス(シクロペンタジエニル)チタニウムジクロリド100mmolを添加し、十分に攪拌しながらトリメチルアルミニウム200mmolを含むn−ヘキサン溶液を添加して、室温にて約3日間反応させ、水素添加触媒を得た。
〈ブロック共重合体(Y−1)〉
内容積10Lの攪拌装置及びジャケット付き槽型反応器を用いて、重合反応を以下の方法で行った。シクロヘキサン20質量部を反応器に入れ、温度を70℃に調整した後、n−ブチルリチウムを全モノマー(反応器に投入したブタジエンモノマー及びスチレンモノマーの総量)の100質量部に対して0.068質量部と、TMEDAをn−ブチルリチウム1モルに対して0.35モルとを添加した。
第1ステップとして、モノマーとしてスチレン8質量部を含有するシクロヘキサン溶液(スチレンモノマー濃度13質量%)を約3分間かけて添加し、反応器内温を約80℃に調整しながら30分間反応させ、重合体ブロック(A1)を重合した。重合の間、比エネルギーは0.1〜0.3kw/m3になるよう調整した。
第2ステップとして、ブタジエン49質量部を含有するシクロヘキサン溶液(ブタジエンモノマー濃度13質量%)と、スチレン35質量部を含有するシクロヘキサン溶液(スチレンモノマー濃度13質量%)とを、それぞれ20分間及び10分間かけて一定速度で連続的に反応器に供給し、その後、30分間反応させ、共重合体ブロック(B)を重合した。この間、反応器内温は約80℃になるように調整した。また、重合の間、比エネルギーは0.1〜0.3kw/m3になるよう調整した。
第3ステップとして、モノマーとしてスチレン8質量部を含有するシクロヘキサン溶液(スチレンモノマー濃度13質量%)を約3分間かけて添加し、反応器内温を約80℃、反応器内圧を0.30MPaに調整しながら30分間反応させ、重合体ブロック(A2)を重合して、ブロック共重合体を得た。重合の間、比エネルギーは0.1〜0.3kw/m3に調整した。
第3ステップで得られたブロック共重合体に、メタノールを添加して活性末端を失活させた後、前記水素添加触媒を用いて水添反応を行い、ブロック共重合体(Y−1)を得た。次に安定剤としてオクタデシル−3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネートを、ブロック共重合体(Y−1)の質量に対して0.3質量%添加した。
ブロック共重合体(Y−1)中のスチレン含有量、すなわち、ビニル芳香族単量体単位の含有量(TS)は51質量%、スチレンブロック含有量、すなわち、ビニル芳香族単量体単位を主体とするブロックの含有量(すなわち、ブロック共重合体(Y)の全質量に対する(A1)及び(A2)の合計含有量;BS)は16質量%、ビニル含有量は30mol%、重合体ブロック(A1)及び(A2)の分子量分布は1.42、共役ジエン単量体単位中の二重結合の水素添加率は99mol%、重量平均分子量(Mw)は15万、動的粘弾性測定による損失正接(tanδ)ピーク温度は−12℃、そのピーク高さは1.7であった。
〈ブロック共重合体(Y−2)〉
上述のブロック共重合体(Y−1)の製造において、n−ブチルリチウムの添加量を0.050質量部、第1ステップのスチレンモノマーの添加量を9質量部、第2ステップのブタジエンモノマーの添加量を59質量部、スチレンモノマーの添加量を23質量部、第3ステップのスチレンモノマーの添加量を9質量部、反応器の内温を70℃とし、水素添加率を変更した。前記以外はブロック共重合体(Y−1)と同様に重合し、ブロック共重合体(Y−2)を作製した。
ブロック共重合体(Y−2)のビニル芳香族単量体単位の含有量(TS)は41質量%、ビニル芳香族単量体単位を主体とするブロックの含有量(BS)は18質量%、ビニル含有量は31mol%、重合体ブロック(A1)及び(A2)の分子量分布は1.40、共役ジエン単量体単位中の二重結合の水素添加率は89mol%、重量平均分子量(Mw)は22万、動的粘弾性測定による損失正接(tanδ)ピーク温度は−33℃、そのピーク高さは1.2であった。
〈ブロック共重合体(Y−3)〉
上述のブロック共重合体(Y−1)の製造において、n−ブチルリチウムの添加量を0.053質量部、第1ステップのスチレンモノマーの添加量を9質量部、第2ステップのブタジエンモノマーの添加量を60質量部、スチレンモノマーの添加量を22質量部、第3ステップのスチレンモノマーの添加量を9質量部、反応器の内温を70℃、水素添加率を変更した。前記以外はブロック共重合体(Y−1)と同様に重合し、ブロック共重合体(Y−3)を作製した。
ブロック共重合体(Y−3)のビニル芳香族単量体単位の含有量(TS)は40質量%、ビニル芳香族単量体単位を主体とするブロックの含有量(BS)は18質量%、ビニル含有量は30mol%、重合体ブロック(A1)及び(A2)の分子量分布は1.44、共役ジエン単量体単位中の二重結合の水素添加率は71mol%、重量平均分子量(Mw)は21万、動的粘弾性測定による損失正接(tanδ)ピーク温度は−35℃、そのピーク高さは1.2であった。
〈ブロック共重合体(Y−4)〉
上述のブロック共重合体(Y−1)の製造において、n−ブチルリチウムの添加量を0.048質量部、第1ステップのスチレンモノマーの添加量を10質量部、第2ステップのブタジエンモノマーの添加量を58質量部、スチレンモノマーの添加量を23質量部、第3ステップのスチレンモノマーの添加量を9質量部、反応器の内温を70℃、水素添加率を変更した。前記以外はブロック共重合体(Y−1)と同様に重合し、ブロック共重合体(Y−4)を作製した。
ブロック共重合体(Y−4)のビニル芳香族単量体単位の含有量(TS)は42質量%、ビニル芳香族単量体単位を主体とするブロックの含有量(BS)は19質量%、ビニル含有量は30mol%、重合体ブロック(A1)及び(A2)の分子量分布は1.38、共役ジエン単量体単位中の二重結合の水素添加率は29mol%、重量平均分子量(Mw)は23万、動的粘弾性測定による損失正接(tanδ)ピーク温度は−36℃、そのピーク高さは1.1であった。
〈ブロック共重合体(Y−5)〉
上述のブロック共重合体(Y−1)の製造において、n−ブチルリチウムの添加量を0.050質量部、第1ステップのスチレンモノマーの添加量を11質量部、第2ステップのブタジエンモノマーの添加量を49質量部、スチレンモノマーの添加量を30質量部、第3ステップのスチレンモノマーの添加量を10質量部、反応器の内温を70℃とし、水素添加率を変更した。前記以外はブロック共重合体(Y−1)と同様に重合し、ブロック共重合体(Y−5)を作製した。
ブロック共重合体(Y−5)のビニル芳香族単量体単位の含有量(TS)は51質量%、ビニル芳香族単量体単位を主体とするブロックの含有量(BS)は21質量%、ビニル含有量は31mol%、重合体ブロック(A1)及び(A2)の分子量分布は1.40、共役ジエン単量体単位中の二重結合の水素添加率は84mol%、重量平均分子量(Mw)は22万、動的粘弾性測定による損失正接(tanδ)ピーク温度は−23℃、そのピーク高さは1.2であった。
〈ブロック共重合体(Y−6)〉
上述のブロック共重合体(Y−1)の製造において、n−ブチルリチウムの添加量を0.063質量部、第1ステップのスチレンモノマーの添加量を11質量部、第2ステップのブタジエンモノマーの添加量を61質量部、スチレンモノマーの添加量を18質量部、第3ステップのスチレンモノマーの添加量を10質量部、反応器の内温を70℃、水素添加率を変更した。前記以外はブロック共重合体(Y−1)と同様に重合し、ブロック共重合体(Y−6)を作製した。
ブロック共重合体(Y−6)のビニル芳香族単量体単位の含有量(TS)は39質量%、ビニル芳香族単量体単位を主体とするブロックの含有量(BS)は21質量%、ビニル含有量は29mol%、重合体ブロック(A1)及び(A2)の分子量分布は1.45、共役ジエン単量体単位中の二重結合の水素添加率は85mol%、重量平均分子量(Mw)は17万、動的粘弾性測定による損失正接(tanδ)ピーク温度は−34℃、そのピーク高さは1.1であった。
〈ブロック共重合体(Y−7)〉
上述のブロック共重合体(Y−1)の製造において、n−ブチルリチウムの添加量を0.050質量部、第1ステップのスチレンモノマーの添加量を11質量部、第2ステップのブタジエンモノマーの添加量を60質量部、スチレンモノマーの添加量を18質量部、第3ステップのスチレンモノマーの添加量を11質量部、反応器の内温を70℃、水素添加率を変更した。前記以外はブロック共重合体(Y−1)と同様に重合し、ブロック共重合体(Y−7)を作製した。
ブロック共重合体(Y−7)のビニル芳香族単量体単位の含有量(TS)は40質量%、ビニル芳香族単量体単位を主体とするブロックの含有量(BS)は22質量%、ビニル含有量は29mol%、重合体ブロック(A1)及び(A2)の分子量分布は1.43、共役ジエン単量体単位中の二重結合の水素添加率は98mol%、重量平均分子量(Mw)は22万、動的粘弾性測定による損失正接(tanδ)ピーク温度は−32℃、そのピーク高さは1.1であった。
〈ブロック共重合体(Y−8)〉
上述のブロック共重合体(Y−1)の製造において、n−ブチルリチウムの添加量を0.050質量部、第1ステップのスチレンモノマーの添加量を10質量部、第2ステップのブタジエンモノマーの添加量を62質量部、スチレンモノマーの添加量を19質量部、第3ステップのスチレンモノマーの添加量を9質量部、反応器の内温を70℃とした。第3ステップ後に、変性剤として1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノンをn−ブチルリチウム1molに対して0.70molとなるように添加し、25分間反応させた。また、水素添加率を変更した。前記以外はブロック共重合体(Y−1)と同様に重合し、ブロック共重合体(Y−8)を作製した。
ブロック共重合体(Y−8)のビニル芳香族単量体単位の含有量(TS)は38質量%、ビニル芳香族単量体単位を主体とするブロックの含有量(BS)は19質量%、ビニル含有量は29mol%、重合体ブロック(A1)及び(A2)の分子量分布は1.40、共役ジエン単量体単位中の二重結合の水素添加率は65mol%、重量平均分子量(Mw)は22万、動的粘弾性測定による損失正接(tanδ)ピーク温度は−32℃、そのピーク高さは1.2であった。
〈ブロック共重合体(Y−9)〉
上述のブロック共重合体(Y−1)の製造において、n−ブチルリチウムの添加量を0.053質量部、第1ステップのスチレンモノマーの添加量を14質量部、第2ステップのブタジエンモノマーの添加量を56質量部、スチレンモノマーの添加量を17質量部、第3ステップのスチレンモノマーの添加量を13質量部、反応器の内温を70℃、水素添加率を変更した。前記以外はブロック共重合体(Y−1)と同様に重合し、ブロック共重合体(Y−9)を作製した。
ブロック共重合体(Y−9)のビニル芳香族単量体単位の含有量(TS)は44質量%、ビニル芳香族単量体単位を主体とするブロックの含有量(BS)は27質量%、ビニル含有量は31mol%、重合体ブロック(A1)及び(A2)の分子量分布は1.39、共役ジエン単量体単位中の二重結合の水素添加率は80mol%、重量平均分子量(Mw)は21万、動的粘弾性測定による損失正接(tanδ)ピーク温度は−35℃、そのピーク高さは1.2であった。
〈ブロック共重合体(Y−10)〉
上述のブロック共重合体(Y−1)の製造において、n−ブチルリチウムの添加量を0.058質量部、第1ステップのスチレンモノマーの添加量を10質量部、第2ステップのブタジエンモノマーの添加量を60質量部、スチレンモノマーの添加量を21質量部、第3ステップのスチレンモノマーの添加量を9質量部、反応器の内温を60℃、水素添加率を変更した。前記以外はブロック共重合体(Y−1)と同様に重合し、ブロック共重合体(Y−10)を作製した。
ブロック共重合体(Y−10)のビニル芳香族単量体単位の含有量(TS)は40質量%、ビニル芳香族単量体単位を主体とするブロックの含有量(BS)は19質量%、ビニル含有量は27mol%、重合体ブロック(A1)及び(A2)の分子量分布は1.40、共役ジエン単量体単位中の二重結合の水素添加率は98mol%、重量平均分子量(Mw)は19万、動的粘弾性測定による損失正接(tanδ)ピーク温度は−30℃、そのピーク高さは0.7であった。
〈ブロック共重合体(Y−11)〉
上述のブロック共重合体(Y−1)の製造において、n−ブチルリチウムの添加量を0.053質量部、第1ステップのスチレンモノマーの添加量を9質量部、第2ステップのブタジエンモノマーの添加量を60質量部、スチレンモノマーの添加量を23質量部、第3ステップのスチレンモノマーの添加量を8質量部、反応器の内温を70℃、各ステップのモノマー濃度を16質量部、水素添加率を86mol%に変更した。前記以外はブロック共重合体(Y−1)と同様に重合し、ブロック共重合体(Y−11)を作製した。
ブロック共重合体(Y−11)のビニル芳香族単量体単位の含有量(TS)は40質量%、ビニル芳香族単量体単位を主体とするブロックの含有量(BS)は17質量%、ビニル含有量は26mol%、重合体ブロック(A1)及び(A2)の分子量分布は1.48、共役ジエン単量体単位中の二重結合の水素添加率は86mol%、重量平均分子量(Mw)は21万、動的粘弾性測定による損失正接(tanδ)ピーク温度は−33℃、そのピーク高さは1.1であった。
〈ブロック共重合体(Y−12)〉
上述のブロック共重合体(Y−1)の製造において、n−ブチルリチウムの添加量を0.050質量部、TMEDAの添加量を0.50モル、第1ステップのスチレンモノマーの添加量を11質量部、第2ステップのブタジエンモノマーの添加量を59質量部、スチレンモノマーの添加量を19質量部、第3ステップのスチレンモノマーの添加量を11質量部、反応器の内温を70℃、各ステップのモノマー濃度を20質量部、水素添加率を変更した。前記以外はブロック共重合体(Y−1)と同様に重合し、ブロック共重合体(Y−12)を作製した。
ブロック共重合体(Y−12)のビニル芳香族単量体単位の含有量(TS)は41質量%、ビニル芳香族単量体単位を主体とするブロックの含有量(BS)は22質量%、ビニル含有量は49mol%、重合体ブロック(A1)及び(A2)の分子量分布は1.50、共役ジエン単量体単位中の二重結合の水素添加率は88mol%、重量平均分子量(Mw)は22万、動的粘弾性測定による損失正接(tanδ)ピーク温度は−32℃、そのピーク高さは1.0であった。
〈ブロック共重合体(Y−13)〉
上述のブロック共重合体(Y−1)の製造において、n−ブチルリチウムの添加量を0.053質量部、TMEDAの添加量を0.50モル、第1ステップのスチレンモノマーの添加量を10質量部、第2ステップのブタジエンモノマーの添加量を60質量部、スチレンモノマーの添加量を21質量部、第3ステップのスチレンモノマーの添加量を9質量部、反応器の内温を70℃、各ステップのモノマー濃度を20質量部、水素添加率を変更した。前記以外はブロック共重合体(Y−1)と同様に重合し、ブロック共重合体(Y−13)を作製した。
ブロック共重合体(Y−13)のビニル芳香族単量体単位の含有量(TS)は40質量%、ビニル芳香族単量体単位を主体とするブロックの含有量(BS)は19質量%、ビニル含有量は48mol%、重合体ブロック(A1)及び(A2)の分子量分布は1.50、共役ジエン単量体単位中の二重結合の水素添加率は84mol%、重量平均分子量(Mw)は21万、動的粘弾性測定による損失正接(tanδ)ピーク温度は−33℃、そのピーク高さは1.1であった。
〈ブロック共重合体(Y−14)〉
上述のブロック共重合体(Y−1)の製造において、n−ブチルリチウムの添加量を0.055質量部、第1ステップのスチレンモノマーの添加量を9質量部、第2ステップのブタジエンモノマーの添加量を62質量部、スチレンモノマーの添加量を20質量部、第3ステップのスチレンモノマーの添加量を9質量部、反応器の内温を70℃、水素添加率を変更した。前記以外はブロック共重合体(Y−1)と同様に重合し、ブロック共重合体(Y−14)を作製した。
ブロック共重合体(Y−14)のビニル芳香族単量体単位の含有量(TS)は38質量%、ビニル芳香族単量体単位を主体とするブロックの含有量(BS)は18質量%、ビニル含有量は29mol%、重合体ブロック(A1)及び(A2)の分子量分布は1.42、共役ジエン単量体単位中の二重結合の水素添加率は86mol%、重量平均分子量(Mw)は20万、動的粘弾性測定による損失正接(tanδ)ピーク温度は−33℃、そのピーク高さは1.1であった。
〈ブロック共重合体(Y−15)〉
上述のブロック共重合体(Y−1)の製造において、n−ブチルリチウムの添加量を0.058質量部、第1ステップのスチレンモノマーの添加量を10質量部、第2ステップのブタジエンモノマーの添加量を59質量部、スチレンモノマーの添加量を21質量部、第3ステップのスチレンモノマーの添加量を10質量部、反応器の内温を70℃、各ステップのモノマー濃度を20質量部、水素添加率を変更した。前記以外はブロック共重合体(Y−1)と同様に重合し、ブロック共重合体(Y−15)を作製した。
ブロック共重合体(Y−15)のビニル芳香族単量体単位の含有量(TS)は41質量%、ビニル芳香族単量体単位を主体とするブロックの含有量(BS)は20質量%、ビニル含有量は27mol%、重合体ブロック(A1)及び(A2)の分子量分布は1.49、共役ジエン単量体単位中の二重結合の水素添加率は88mol%、重量平均分子量(Mw)は19万、動的粘弾性測定による損失正接(tanδ)ピーク温度は−32℃、そのピーク高さは1.2であった。
〈ブロック共重合体(I)〉
ブロック共重合体(I)として、スチレン−ブタジエン−スチレンブロック共重合体(Kraton社製、D1101)を使用した。ブロック共重合体(I)のビニル芳香族単量体単位の含有量(TS)は30質量%、ビニル芳香族単量体単位を主体とするブロックの含有量(BS)は30質量%、ビニル含有量は13mol%、スチレンブロックの分子量分布は1.39、共役ジエン単量体単位中の二重結合の水素添加率は0mol%、重量平均分子量(Mw)は15万、動的粘弾性測定による損失正接(tanδ)ピーク温度は−75℃、そのピーク高さは1.0であった。
ブロック共重合体(Y−1)〜(Y−15)、及び(I)の分析結果を下記表1にまとめる。
《改質アスファルト組成物の製造例》
〈アスファルト(X)〉
アスファルト(X)として、下記の2種のアスファルト(X−1)、及び(X−2)を用いた。各アスファルトの組成は、石油学会の石油類試験関係規格のJPI−5S−70−10に準拠した測定法で分析した。
アスファルト(X−1):針入度が80〜100であり、アスファルト組成が飽和分8.5質量%、芳香族分47.4質量%、レジン分20.8質量%、アスファルテン分23.3質量%である、ストレートアスファルト
アスファルト(X−2):針入度が60〜80であり、アスファルト組成が飽和分7.6質量%、芳香族分53.6質量%、レジン分20.0質量%、アスファルテン分18.8質量%である、ストレートアスファルト
〔実施例1〜10、14〜19、及び比較例1〜3、6、9〕
表3及び4に示すアスファルト400gを750mlの容器に入れ、容器を160℃のオイルバスに浸漬し、アスファルトを完全に溶融させた。
次に、回転速度3000rpmでアスファルトをホモジナイザー(LART(SILVERSON社製、商品名))で撹拌しながら、上述のようにして得られたブロック共重合体を、表3及び4に示す組成比で、5分間かけて少量ずつ添加した。添加が終了したら、添加開始から45分間は160℃に調整しながら撹拌を実施した。その後、180℃に昇温し、180℃に到達してからさらに45分間撹拌を行い、実施例1〜10、14〜19、及び比較例1〜3、6、9の改質アスファルト組成物を得た。得られた各改質アスファルト組成物の物性を表3及び4に示す。
〔実施例11〜13、及び比較例7〕
表3及び4に示すアスファルト400gを750mlの容器に入れ、容器を160℃のオイルバスに浸漬し、アスファルトを完全に溶融させた。
次に、回転速度3000rpmでアスファルトをホモジナイザー(LART(SILVERSON社製、商品名))で撹拌しながら、上述のようにして得られたブロック共重合体を、表3及び4に示す組成比で、5分間かけて少量ずつ添加した。添加が終了したら、添加開始から45分間は160℃に調整しながら撹拌を実施した。その後、180℃に昇温し、180℃に到達してから硫黄を添加し、さらに45分間撹拌を行い、実施例11〜13、及び比較例7の改質アスファルト組成物を得た。得られた各改質アスファルト組成物の物性を表3及び4に示す。
〔比較例4、5、8、10、及び11〕
表3及び4に示すアスファルト400gを750mlの容器に入れ、容器を180℃のオイルバスに浸漬し、アスファルトを完全に溶融させた。
次に、回転速度4500rpmでアスファルトをホモジナイザー(LART(SILVERSON社製、商品名))で撹拌しながら、上述のようにして得られたブロック共重合体を、表3及び4に示す組成比で、5分間かけて少量ずつ添加した。添加が終了したら、添加開始から45分間、160℃に調整しながら撹拌を実施した。その後、(比較例8の場合は硫黄を添加し)、160℃に調整しながらさらに45分間撹拌を行い、比較例4、5、8、10、及び11の改質アスファルト組成物を得た。得られた各改質アスファルト組成物の物性を表3及び4に示す。
《改質アスファルト混合物の製造例》
加熱装置を備える容量27リットルの混合機に、下記表2に示す所定粒度の密粒度型の骨材94.5質量部を投入し、25秒間空練りを行った。次いで、上述の方法により製造した各実施例及び比較例の改質アスファルト組成物5.5質量部を前記混合機に投入し、50秒間本練りを行い、実施例及び比較例の改質アスファルト混合物を得た。得られた改質アスファルト混合物は、密粒度型の改質アスファルト混合物であった。なお、改質アスファルト混合物の総量は10kgとなるようにし、空練り、本練りとも混合温度は177℃に調整した。使用した骨材は、栃木県下都賀郡岩舟町から産出された砕石及び砕砂、千葉県印旛郡栄町から産出された細砂、並びに栃木県佐野市山菅町から産出された石粉の混合物であった。改質アスファルト混合物の製造に使用した骨材の粒度分布を下記表2に示す。
《改質アスファルト組成物及び改質アスファルト混合物の評価方法》
改質アスファルト組成物及び改質アスファルト混合物に関する評価方法は、以下のとおりである。
〈改質アスファルト組成物の軟化点(リング&ボール法)〉
JIS−K2207に準じて、改質アスファルト組成物の軟化点を測定した。規定の環に試料を充填し、グリセリン液中に水平に支え、試料の中央に3.5gの球を置き、液温を5℃/minの速度で上昇させたとき、球の重さで試料が環台の底板に触れた時の温度を測定した。軟化点が60℃となるときのブロック共重合体の添加量を測定し、当該重合体の添加量が少ない方がブロック共重合体の添加効果が大きく、経済性に優れることを示す。評価の優れた順からA、B、C、Dと評価した。
[評価基準]
A:2.5質量%未満
B:2.5質量%以上3.0質量%未満
C:3.0質量%以上3.3質量%未満
D:3.3質量%以上
〈改質アスファルト組成物の溶融粘度〉
ブルックフィールド型粘度計(BROOKFIELD ENGINEERING LAB
ORATORYIES、INC.製)により、160℃における改質アスファルト組成物の溶融粘度を測定した。改質アスファルト組成物の溶融粘度は低い方が施工性に優れることを示す。評価の優れた順からA、B、C、Dとした。
[評価基準]
A:450未満
B:450以上、600未満
C:600以上、800未満
D:800以上
〈改質アスファルト組成物の針入度〉
JIS−K2207に準じ、恒温水浴槽で25℃に保った試料に、規定の針が5秒間に進入する長さを測定した。改質アスファルト組成物の針入度は大きい方が施工性に優れることを示す。評価の優れた順からA、B、C、Dとした。
[評価基準]
A:50以上
B:45以上、50未満
C:40以上、45未満
D:40未満
〈改質アスファルト組成物の引張後の回復性〉
改質アスファルト組成物の引張後の回復性は、英国規格(British Standards)、BS EN 13398:2008/BS 2000−516:2010に記載の方法に準じて測定した。上述の「《改質アスファルト組成物の製造例》」で作製した改質アスファルト組成物を治具に流し込んで、両端に把持部を有するダンベル状の供試体を作製した。両端の把持部を除く供試体の寸法は、厚み1cm、幅1cm、長さ3cmであった。供試体の把持部を引張試験機のチャックにセットし、25℃の水槽の中で、チャック間距離3cmの状態から5cm/分の速度で引っ張り、初期の長さから20cm伸ばした時点で停止させた。供試体をチャックに挟持したまま、25℃の水槽中に5分間静置した後に、供試体を中央で切断した。その後、60分間25℃の水槽の中で放置し、供試体が、20cm伸ばされた状態から元の長さに向かって戻った回復量(cm)を測定し、その割合を引張後の回復性(%)とした。引張後の回復性(%)は下記式により算出した。
引張後の回復性(%)={回復量(cm)/20(cm)}×100
引張後の回復性が高い方が耐ひび割れ性に優れることを示す。評価の優れた順からA、B、C、Dとした。
[評価基準]
A:80%以上
B:75%以上80%未満
C:70%以上75%未満
D:70%未満
〈改質アスファルト組成物の貯蔵時の耐熱老化性〉
上述の「《改質アスファルト組成物の製造例》」により製造した改質アスファルト組成物を試験体とし、180℃に設定したギアオーブン内に7日間静置した。ギアオーブン内で静置する前後における、140℃でのブルックフィールド型溶融粘度を測定し、その変化割合(ギアオーブンで静置後の140℃溶融粘度/ギアオーブンで静置前の140℃溶融粘度)を求めた。ブルックフィールド型溶融粘度の変化幅が小さいほど、貯蔵時の熱劣化による分子の切断(粘度低下)及びゲル化(粘度上昇)が少なく、貯蔵時の耐熱老化性に優れることを示す。評価の優れた順からA、B、C、Dとした。
〔評価基準〕
A:0.9〜1.3以下
B:0.8〜0.9未満、又は1.3を超えて〜1.4以下
C:0.7〜0.8未満、又は1.4を超えて〜1.5以下
D:0.7未満、又は1.5を超える
〈改質アスファルト混合物の耐流動性〉
上述の「《改質アスファルト混合物の製造例》」により製造した改質アスファルト混合物を試験体とし、試験法便覧B003に準じて、下記評価基準に従って耐流動性を評価した。所定の寸法の試験体上に、載荷した小型のゴム車輪を規定温度、規定時間、規定速度で繰り返し往復走行させ、単位時間あたりの変形量から動的安定度(回/mm)を求めた。動的安定度が高いほど耐流動性に優れることを示す。評価の優れた順からA、B、C、Dとした。
〔評価基準〕
A:20000回/mm以上
B:20000回/mm未満15000回/mm以上
C:15000回/mm未満8000回/mm以上
D:8000回/mm未満
〈改質アスファルト混合物の60℃及び80℃における耐骨材剥離性〉
上述の「《改質アスファルト混合物の製造例》」の表2に示した骨材のうち、13.2mmのふるい目を通過し、かつ4.75mmのふるい目を通過しない成分と、上述の「《改質アスファルト組成物の製造例》」により製造した改質アスファルト組成物とを、180℃に温めた金属容器内で、ヘラを用いて混合した。この混合物を60℃、若しくは80℃のウォーターバス内に180分間浸漬し、その後、大気中に取り出して、骨材に対する改質アスファルト組成物の被膜状況を目視で観察し、下記評価基準に従って評価した。ウォーターバスに浸漬する前の改質アスファルト組成物の被膜面積を100%としたとき、浸漬後の被膜面積が多い方が耐骨材剥離性に優れることを示す。評価の優れた順からA、B、C、Dとした。
[評価基準]
A:被膜面積が約100%(目視で剥離が観察されない)
B:被膜面積が約80%以上100%未満
C:被膜面積が約50%以上80%未満
D:被膜面積が約50%未満
各実施例及び比較例の改質アスファルト組成物の組成、並びに、改質アスファルト組成物及び改質アスファルト混合物の評価結果を、下記表3及び4に示す。
実施例の改質アスファルト組成物は、従来と同程度又はそれ以上の高い軟化点及び溶融粘度並びに針入度を有しながら、引張後の回復性及び耐熱老化性が良好であった。また、実施例の改質アスファルト組成物は、骨材と合わせて改質アスファルト混合物とした際に、耐流動性及び耐骨材剥離性が良好であった。
一方、重合体ブロック(A1)及び(A2)の分子量分布が1.46超、G*/sinδ比が5.0以上6.5未満の範囲にない比較例、又は、共重合体ブロック(B)を有さないブロック共重合体(I)を用いた比較例の改質アスファルト組成物及び混合物は、特に、耐流動性に劣るものであり、組成物の引張後の回復性と混合物の耐骨材剥離性との両立を図ることができなかった。