JP6504655B2 - 船舶用プロペラ - Google Patents
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特許文献1〜3に開示されたセレーションは、三角形状の山部と、逆三角形状の谷部と、が交互に配置された構成とされている。
山部は、羽根の一方の面から他方の面に向かう方向に傾斜した傾斜面を有している。谷部の底に対応する部分は、羽根の厚さ方向に対して、略平行とされた直線或いは幅の狭い面とされている。
そこで、船舶用プロペラから発生する音や振動を小さくする観点から、特許文献1〜3に開示されたセレーションを船舶用プロペラの翼に設けることが考えられる。
なお、プロペラ鳴音は、特許文献1〜3に開示されたセレーションが低減可能な音とは、異なる種類の音である。
これにより、谷部の一方の面側に形成されるカルマン渦と、谷部の他方の面側に形成されるカルマン渦と、の位相をずらすことが困難となる。このため、谷部では、プロペラ鳴音を低減することができないという問題が発生してしまう。
また、谷部に設けられた第2の傾斜面により、谷部の一方の面側(負圧面側または正圧面側)に形成されるカルマン渦と、谷部の他方の面側(正圧面側または負圧面側)に形成されるカルマン渦と、の位相をずらして、2つのカルマン渦が干渉することを抑制可能となる。
つまり、山部及び谷部の両方において、2つのカルマン渦が干渉することを抑制可能となる。これにより、水中で船舶用プロペラが回転した際に、セレーションから発生するプロペラ鳴音を十分に低減することができる。
上記課題を解決するため、本発明の一態様に係る船舶用プロペラは、推進軸の後端に配置されるハブと、船首側に位置する負圧面、及び該負圧面の反対側に配置され、船尾側に位置する正圧面を含み、かつ前記ハブの周方向に固定された複数の翼と、を有する船舶用プロペラであって、前記複数の翼は、翼本体と、前記翼本体の後縁部に設けられ、かつ該翼本体の後縁部の延在方向に対して、山部と、谷部と、が交互に配置されたセレーションと、を含み、前記山部は、前記負圧面から前記正圧面に向かう方向に傾斜する第1の傾斜面を有し、前記谷部は、前記負圧面から前記正圧面に向かう方向に傾斜する第2の傾斜面を有し、前記第1の傾斜面は、前記山部の突出量よりも長さが短い1つの傾斜面のみで構成され、前記山部の一部に配置置されることを特徴とする。
上記課題を解決するため、本発明の一態様に係る船舶用プロペラは、推進軸の後端に配置されるハブと、船首側に位置する負圧面、及び該負圧面の反対側に配置され、船尾側に位置する正圧面を含み、かつ前記ハブの周方向に固定された複数の翼と、を有する船舶用プロペラであって、前記複数の翼は、翼本体と、前記翼本体の後縁部に設けられ、かつ該翼本体の後縁部の延在方向に対して、山部と、谷部と、が交互に配置されたセレーションと、を含み、前記山部は、前記負圧面側に配置され、前記負圧面から前記正圧面に向かう方向に傾斜する第1の傾斜面を有し、前記谷部は、前記正圧面側に配置され、前記正圧面から前記負圧面に向かう方向に傾斜する第2の傾斜面を有することを特徴する。
また、軽量素材を含む材料よりも比重の大きい材料で構成されたウェイト部材を有することにより、翼の後縁部のモーダルマスを大きくすることが可能となる。これにより、水中で複数の翼が回転する際に発生するプロペラ鳴音以外の音や振動を十分に低減することができる。
図1は、本発明の第1の実施の形態に係る船舶用プロペラの斜視図である。図2は、図1に示す翼の平面図である。図2に示すB方向は、翼本体16の後縁部の延在方向(言い換えれば、ウェイト部材17、及びウェイト部材17の後縁部の延在方向)を示している。
図3は、図2に示す翼のA−A線方向の断面図である。図1〜図3に示す構造体において、同一構成部分には同一符号を付す。
ハブ12は、推進軸11の後端を挿入可能なリング状部材であり、推進軸11の後端に固定されている。ハブ12は、その外周部に翼14の基端が 嵌合される嵌合用溝(図示せず)を複数有する。
翼14は、負圧面14aと、正圧面14bと、翼本体16と、後述するセレーション28を有するウェイト部材17と、接着層19と、コーティング層22と、を有する。
負圧面14aは、翼14の前方側(船首側)の面である。正圧面14bは、負圧面14aの反対側に位置する面(船尾側の面)である。
翼本体16は、軽量素材(例えば、繊維強化プラスチック複合材料)を含む材料で構成されており、補強部材24と、外部材25と、を有する。
このような補強部材24の材料としては、例えば、船舶用プロペラの材料として用いられるアルミ青銅合金、ニッケルアルミ合金、青銅合金、銅合金等の合金、或いは、金属のうち、比重が5未満とされた軽金属を用いるとよい。
補強部材24の材料となる軽金属としては、例えば、は、アルミニウム(比重2.7)、チタン(比重4.5)、アルカリ金属、アルカリ土類金属等を用いることができる。
外部材25は、ウェイト部材17が接着(固定)される側の外部材25の端部からウェイト部材17の先端に向かう方向に突出する突出部25Aを有する。突出部25Aは、接着層19を介して、ウェイト部材17に設けられた後述する凹部17A内に固定される部分である。
突出部25Aの形状を上記形状とすることにより、翼本体16とウェイト部17とを接着層19で接着する際、凹部17A内に突出部25Aを容易に挿入することができる。
また、異なる種類の繊維強化プラスチックを積層させる場合には、樹脂を用いて一体化させるとよい。
また、翼本体16のうち、靱性を要求される部分には、アラミド繊維強化プラスチックの割合を、他の繊維強化プラスチックの割合よりも高くするとよい。
一般的に、ガラス繊維強化プラスチック複合材料は、強度的には少なくともアルミ合金と同等以上の強度及び剛性を有しており、必要な強度特性に応じてガラス繊維の量及び配向を調整することが可能であるため、最適な強度設計を実現できる。
また、ガラス繊維強化プラスチック複合材は、用いる樹脂を選定することによって、耐熱性、耐食性を容易に付与することができ、耐食性が求められる海水中のプロペラへの適用が容易になる。
なお、特に、強度を必要とする場合、例えば、一方向クロスや平織りクロス等を多く含むガラス繊維を用いるとよい。
また、翼本体16を軽量化することで、複数の翼14も軽量化されるため、船舶用プロペラ10を大型化させた場合でもプロペラ作動効率を向上させることができる。
つまり、先に説明した繊維強化プラスチック複合材料のみを用いて翼本体16を構成してもよい。この場合、複数の翼14のさらなる軽量化を図ることが可能となるので、さらにプロペラ作動効率を向上させることができる。
ウェイト部材17の材料となる重金属としては、例えば、鉄、金、白金、銀、銅、クロム、ニッケル、モリブデン、タングステン、錫等を用いることができる。
また、ウェイト部材17は、ウェイト部材17の後縁部に設けられ、かつウェイト部材17の後縁部の延在方向(B方向)に延在するセレーション28を有する。セレーション28は、山部31と、谷部32と、が交互に配置された構成とされている。
図5は、図4に示すウェイト部材の斜視図である。図6は、図4に示す山部のC−C線方向の断面図である。図7は、図4に示す谷部のD−D線方向の断面図である。図6及び図7に示すG1,G2は、カルマン渦(以下、「カルマン渦G1,G2」という)を示している。
平面視した際の山部31の形状として、例えば、角を丸めた略台形、三角形、角を丸めた略三角形、半円形等の形状を用いることができる。
このため、第2の傾斜面32aは、負圧面17a側に配置され、第1の傾斜面31aと等しい傾斜角度とされた傾斜面32a−1と、傾斜面32a−1とは異なる傾斜角度とされ、かつ傾斜面32a−1よりも面積の大きい傾斜面32a−2と、で構成されている。
これにより、セレーション28の谷部32において、水中で船舶用プロペラ10が回転した際に発生するプロペラ鳴音を抑制することができる。
つまり、セレーション28が上述した第1及び第2の傾斜面31a,32aを有することで、水中で船舶用プロペラ10が回転した際、セレーション28から発生するプロペラ鳴音を十分に低減することができる。
翼本体16とウェイト部材17との間に配置される接着層19の厚さは、例えば、0.5mm〜5mmの範囲内とすることができる。
具体的には、接着層19としては、例えば、ポリアミド系接着層、エポキシ系接着層、ビニルエステル樹脂系接着層等を用いることができる。
このように、翼本体16の表面、及びウェイト部材17の表面を保護するコーティング層22を有することで、翼本体16及びウェイト部材17が直接水や海水に浸漬されることが無くなるため、水中や海水中で船舶用プロペラ10が使用された際、翼本体16及びウェイト部材17を確実に水及び海水から保護することができる。
これにより、セレーション28の山部31及び谷部32において、水中で船舶用プロペラ10が回転した際に発生するプロペラ鳴音を十分に抑制することができる。
例えば、第2の傾斜面32aに替えて、図8に示すように、負圧面17a側、及び正圧面17b側の角部を丸めることで構成される両端が湾曲した第2の傾斜面32bを用いてもよい。
上述した図8〜図10に示す第2の傾斜面32b〜32dを用いた場合も、第2の傾斜面32aを用いた場合と同様な効果を得ることができる。
図11は、第2の実施の形態のセレーションを拡大した平面図である。図12は、図11に示すセレーションの斜視図である。図11及び図12では、第1の実施の形態で説明した図4及び図5に示すウェイト部材17と同一構成部分には、同一符号を付す。
図11及び図12では、第1の傾斜面41aの長さFが、山部41の突出量Eよりも小さい場合のセレーション40を模式的に図示している。
図13は、図11に示す山部のG−G線方向の断面図である。図14は、図11に示す谷部のH−H線方向の断面図である。
図13及び図14において、図6、図7、図11、及び図12と同一構成部分には、同一符号を付す。
平面視した状態において、山部41は、図4及び図5に示す山部31と同様な形状とされている。山部41は、ウェイト部材17の負圧面17a側に配置され、かつ負圧面17aから正圧面17bに向かう方向に傾斜した第1の傾斜面41aを有する。
第1の傾斜面41aは、第1の実施の形態で説明した第1の傾斜面31aよりも長さが短い傾斜面であり、山部41の一部に配置されている。第1の傾斜面41aは、1つの傾斜面のみで構成されている。
これにより、セレーション40の山部41において、水中で船舶用プロペラが回転した際に発生するプロペラ鳴音を抑制することができる。
これにより、セレーション40の谷部42において、水中で船舶用プロペラが回転した際に発生するプロペラ鳴音を抑制することができる。
また、第2の実施の形態で説明した第2の傾斜面42aに替えて、第1の実施の形態で説明した図8〜図10に示す第2の傾斜面32b,32c,32dのうちのいずれかを用いてもよい。
図15は、第3の実施の形態のセレーションを拡大した平面図である。図16は、図15に示すセレーションの斜視図である。図15及び図16では、図4及び図5に示す第2の実施の形態のセレーション40と同一構成部分には、同一符号を付す。
図15及び図16では、第1の傾斜面41aの長さFが、山部41の突出量Eよりも小さい場合のセレーション50を模式的に図示している。
図17は、図15に示す山部のI−I線方向の断面図である。図18は、図15に示す谷部のJ−J線方向の断面図である。
図17及び図18において、図13、図14、図15、及び図16と同一構成部分には、同一符号を付す。
このような構成とされた第3の実施の形態のセレーションにおいても、図17及び図18に示すように、第1及び第2の傾斜面41a,51aにより、負圧面17a側に形成されるカルマン渦G1と、正圧面17b側に形成されるカルマン渦G2と、の位相をずらして2つのカルマン渦G1,G2が干渉することを抑制可能となる。これにより、水中で船舶用プロペラが回転した際に発生するプロペラ鳴音を十分に抑制することができる。
また、第3の実施の形態で説明した第2の傾斜面51aに替えて、第1の実施の形態で説明した図8〜図10に示す第2の傾斜面32b,32c,32dのうちのいずれか1つを用いてもよい。
図19は、第4の実施の形態のセレーションを拡大した平面図である。図20は、図19に示すセレーションの斜視図である。
図19及び図20では、第1の実施の形態で説明した図4及び図5に示す構造体と同様に、第1の傾斜面31aの長さFが、山部31の突出量Eよりも小さい場合を模式的に図示している。
図21は、図19に示す山部のK−K線方向の断面図である。図22は、図19に示す谷部のL−L線方向の断面図である。
図19〜図22において、図4〜図7に示す構造体と同一構成部分には、同一符号を付す。
また、山部31及び谷部32の形状は、第1及び第2の傾斜面31a,32aを有することが可能な形状であればよく、図19〜図22に示す形状に限定されない。
また、第2の傾斜面32aに替えて、第1の実施の形態で説明した図8〜図10に示す第2の傾斜面32b,32c,32dのうちのいずれか1つを用いてもよい。
図23は、第5の実施の形態のセレーションを拡大した平面図である。図24は、図23に示すセレーションの斜視図である。
図23及び図24では、第3の実施の形態で説明した図15及び図16に示す構造体と同様に、第1の傾斜面41aの長さFが、山部31の突出量Eよりも小さい場合を模式的に図示している。
図25は、図23に示す山部のM−M線方向の断面図である。図26は、図23に示す谷部のN−N線方向の断面図である。
図23〜図26において、図15〜図18に示す構造体と同一構成部分には、同一符号を付す。
また、山部41及び谷部51の形状は、第1及び第2の傾斜面41a,51aを有することが可能な形状であればよく、図23〜図26に示す形状に限定されない。
また、第2の傾斜面51aに替えて、第1の実施の形態で説明した図8〜図10に示す第2の傾斜面32b,32c,32dのうちのいずれか1つを用いてもよい。
Claims (8)
- 推進軸の後端に配置されるハブと、船首側に位置する負圧面、及び該負圧面の反対側に配置され、船尾側に位置する正圧面を含み、かつ前ハブの周方向に固定された複数の翼と、を有する船舶用プロペラであって、
前記複数の翼は、翼本体と、
前記翼本体の後縁部に設けられ、かつ該翼本体の後縁部の延在方向に対して、山部と、谷部と、が交互に配置されたセレーションと、
を含み、
前記山部は、前記負圧面から前記正圧面に向かう方向に傾斜、または前記正圧面から前記負圧面に向かう方向に傾斜する第1の傾斜面を有し、
前記谷部は、前記負圧面から前記正圧面に向かう方向に傾斜、または前記正圧面から前記負圧面に向かう方向に傾斜する第2の傾斜面を有し、
前記山部が突出する方向における前記第1の傾斜面の長さは、前記山部の突出量よりも長く、
前記第1の傾斜面は、前記山部の基端側から離間する方向にも形成されており、
前記第2の傾斜面は、前記谷部の基端側に配置され、前記第1の傾斜面と等しい傾斜角度とされた第1の面と、前記谷部の先端側に配置され、前記第1の面とは異なる傾斜角度とされ、かつ前記第1の面よりも面積の大きい第2の面と、を含むことを特徴とする船舶用プロペラ。 - 推進軸の後端に配置されるハブと、船首側に位置する負圧面、及び該負圧面の反対側に配置され、船尾側に位置する正圧面を含み、かつ前記ハブの周方向に固定された複数の翼と、を有する船舶用プロペラであって、
前記複数の翼は、翼本体と、
前記翼本体の後縁部に設けられ、かつ該翼本体の後縁部の延在方向に対して、山部と、谷部と、が交互に配置されたセレーションと、
を含み、
前記山部は、前記負圧面から前記正圧面に向かう方向に傾斜する第1の傾斜面を有し、
前記谷部は、前記負圧面から前記正圧面に向かう方向に傾斜する第2の傾斜面を有し、
前記第1の傾斜面は、前記山部の突出量よりも長さが短い1つの傾斜面のみで構成され、前記山部の一部に配置されることを特徴とする船舶用プロペラ。 - 推進軸の後端に配置されるハブと、船首側に位置する負圧面、及び該負圧面の反対側に配置され、船尾側に位置する正圧面を含み、かつ前記ハブの周方向に固定された複数の翼と、を有する船舶用プロペラであって、
前記複数の翼は、翼本体と、
前記翼本体の後縁部に設けられ、かつ該翼本体の後縁部の延在方向に対して、山部と、谷部と、が交互に配置されたセレーションと、
を含み、
前記山部は、前記負圧面側に配置され、前記負圧面から前記正圧面に向かう方向に傾斜する第1の傾斜面を有し、
前記谷部は、前記正圧面側に配置され、前記正圧面から前記負圧面に向かう方向に傾斜する第2の傾斜面を有することを特徴する船舶用プロペラ。 - 前記翼本体は、軽量素材を含む材料で構成されており、
前記複数の翼は、前記翼本体の後縁部の延在方向に沿うように、前記翼本体の後縁部に設けられ、前記軽量素材を含む材料よりも比重の大きい材料で構成されたウェイト部材を有し、
前記セレーションは、前記ウェイト部材に設けることを特徴とする請求項1記載の船舶用プロペラ。 - 前記軽量素材は、繊維強化プラスチック複合材料であることを特徴とする請求項4記載の船舶用プロペラ。
- 前記翼本体の表面、及び前記ウェイト部材の表面を保護するコーティング層を有することを特徴とする請求項4または5記載の船舶用プロペラ。
- 前記コーティング層は、耐水性及び耐食性を有する層であることを特徴とする請求項6記載の船舶用プロペラ。
- 前記翼本体は、補強部材と、該補強部材を被覆する外部材と、を有しており、
前記補強部材は、前記翼本体の強度を確保可能で、かつ軽量な材料で構成されており、
前記外部材は、前記繊維強化プラスチック複合材料で構成されていることを特徴とする請求項5記載の船舶用プロペラ。
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