以下、本発明の一実施形態に係るプリンタ部が採用された複合機1について説明する。複合機1は、図1に示す状態に設置されて使用される。本実施形態において、図1に矢印を付して示す3つの方向が、上下方向A1、前後方向A2、及び左右方向A3である。図1に示す3つの方向は、他の図面においても同様である。
<複合機1の概要>
図1に示すように、複合機1は、概ね薄型の直方体に形成されており、その上面に表示部及び操作ボタン91〜95などを有する。本発明の液体吐出装置の一例であるプリンタ部10が、複合機1の下部に設けられている。複合機1は、スキャナ機能及びプリント機能などの各種の機能を有している。
プリンタ部10は筐体11を有する。筐体11の前壁11aの略中央には、開口12が形成されている。給紙トレイ15及び排紙トレイ16が、上下2段に設けられている。給紙トレイ15は、開口12から前後方向A2に挿抜可能、すなわち、筐体11から着脱可能に構成されている。所望のサイズの用紙Pが給紙トレイ15に載置される。複合機1は、パーソナルコンピュータ(以下PCと称する)などの外部機器と接続可能であり、PCからの記録指令に基づいて記録動作を実行する。また、操作ボタン91〜95は、操作者によって押されることで、後述の第1〜第5信号を制御部5(後述する)に出力する。
<プリンタ部10の内部構造>
次に、プリンタ部10の内部構造について説明する。図2及び図3に示すように、プリンタ部(インクジェット記録装置)10は、給送部20と、搬送ローラ対35と、記録部40と、ホルダ17と、排紙ローラ対36と、ASF(Auto Sheet Feed)モータ20M(図12参照)と、LF(Line Feed)モータ35M(図12参照)と、メンテナンス部60と、制御部5(図12参照)とを含む。給送部20は、給紙トレイ15に載置される用紙Pを搬送路25へ給送する。搬送ローラ対35は、給送部20によって給紙された用紙Pを記録部40に搬送する。記録部40は、例えば、インクジェット記録方式の構成を有し、搬送ローラ対35によって搬送された用紙Pに画像を記録する。排紙ローラ対36は、記録部40によって記録された用紙Pを排紙トレイ16に排紙する。
ホルダ17は、図3に示すように、筐体11内の前方右側に設けられている。ホルダ17には、4つのインクカートリッジ18a〜18dが取り外し可能に装着される。4つのインクカートリッジ18a〜18dには、イエロー、シアン、マゼンタ、ブラックの、4色のインクがそれぞれ貯留されている。なお、本実施形態においては、ブラックインクには顔料系インクが採用され、カラーインクには染料系インクが採用されている。
<給送部20>
図2に示すように、給送部20が給紙トレイ15の上側に設けられている。給送部20は、給紙ローラ21とアーム22を有する。給紙ローラ21は、アーム22の先端に軸支されている。アーム22は、支軸22aに回動自在に支持され、バネなどにより付勢されて給紙ローラ21が給紙トレイ15に接触するように下側へ回動されている。また、アーム22は、給紙トレイ15の挿抜の際に上方へ退避可能に構成されている。給紙ローラ21は、伝達機構(不図示)を介してASFモータ20Mの動力が伝達されて回転し、給紙トレイ15内に積載された用紙Pが、搬送路25へ給送される。
<給紙トレイ15>
図2に示すように、給紙トレイ15は、斜壁部15aを有する。斜壁部15aは、給紙トレイ15に載置される用紙Pが給紙ローラ31によって給送されるときに、用紙Pを搬送路25に案内する。
<搬送路25>
搬送路25は、図2に示すように、所定間隔で対向する外側ガイド部材25a及び内側ガイド部材25bによって形成されている。搬送路25は、給紙トレイ15の後側の端部から上方且つプリンタ部10の前側へ曲がって構成されている。給紙トレイ15から給送された用紙Pは、搬送路25により下方から上方へUターンするように案内されて記録部40に至る。
<搬送ローラ対35、及び、排紙ローラ対36>
搬送ローラ対35は、下側に配置された搬送ローラ35aと上側に配置されたピンチローラ35bとを有する。搬送ローラ35aは、伝達機構(不図示)を介してLFモータ35Mの動力が伝達されて回転する。ピンチローラ35bは、搬送ローラ35aの回転に伴って連れ回る。搬送ローラ35aとピンチローラ35bとは、協働して用紙Pを上下方向A1から挟持し、用紙Pを記録部40へ搬送する。
排紙ローラ対36は、下側に配置された排紙ローラ36aと、上側に配置された拍車ローラ36bとを有する。排紙ローラ36aは、伝達機構(不図示)を介してLFモータ35Mの動力が伝達されて回転する。拍車ローラ36bは、排紙ローラ36aの回転に伴って連れ回る。排紙ローラ36aと拍車ローラ36bとは、協働して用紙Pを上下方向A1から挟持し、用紙Pを排紙トレイ16に搬送する。
<記録部40>
図2及び図3に示すように、記録部40は、インクジェットヘッド41と、ヘッド移動機構50と、プラテン6とを有する。ヘッド移動機構50は、キャリッジ51を含む。キャリッジ51は、走査方向(左右方向A3であって、用紙Pの搬送方向と直交する方向)へ往復移動する。インクジェットヘッド41は、キャリッジ51に支持されている。
インクジェットヘッド41は、ヘッド本体42と、4つのバッファタンク43a〜43dと、4つの排気ユニット45a〜45dとを有する。ヘッド本体42の下面は、当該インクジェットヘッド41の下方に搬送された用紙Pに対してインクを吐出する複数の吐出口41aが形成された吐出面41bである。
4つのバッファタンク43a〜43dは、走査方向に沿って並べて配置されている。また、これら4つのバッファタンク43a〜43dにはチューブジョイント44が一体的に設けられている。そして、チューブジョイント44に連結された可撓性の4本のチューブ(不図示)を介して、4つのバッファタンク43a〜43dと4つのインクカートリッジ18a〜18dとがそれぞれ接続されている。4つのバッファタンク43a〜43dは、ヘッド本体42に各色のインクを供給する。4つの排気ユニット45a〜45dは、バッファタンク43dの右側で前後方向A2に並べて配置されている。これら排気ユニット45a〜45dは、4つのバッファタンク43a〜43dとそれぞれ連通しており、バッファタンク43a〜43d内に滞留する気泡を排出するためのものである。
インクジェットヘッド41の下方には、搬送ローラ対35によって搬送される用紙Pを支持するプラテン6が配設されている。プラテン6は、キャリッジ51の往復移動範囲のうち、用紙Pが通過する部分に配設されている。プラテン6の幅は、搬送可能な用紙Pの最大幅より十分に大きいので、搬送路25を搬送される用紙Pは常にプラテン6上を通過する。このプラテン6上の領域が画像記録領域G1となっている。
ヘッド移動機構50は、図3に示すように、一対のガイドレール52、及び、ベルト伝達機構53を含む。一対のガイドレール52は、前後方向A2に離隔して配置され、左右方向A3に互いに平行に延在している。キャリッジ51は、これら一対のガイドレール52を跨ぐように配置され、当該一対のガイドレール52上を左右方向A3に沿って往復移動される。
また、ベルト伝達機構53は、2つのプーリ54,55と、無端状のタイミングベルト56と、CRモータ50Mとを含む。2つのプーリ54,55は、左右方向A3に互いに離隔して配置され、タイミングベルト56が架け渡されている。プーリ54は、CRモータ50Mの駆動軸と連結されており、CRモータ50Mが駆動されることで、タイミングベルト56が走行し、キャリッジ51とともにインクジェットヘッド41が走査方向に移動する。
インクジェットヘッド41は、記録指令に基づく制御部5の制御により、吐出口41aから各色のインクを吐出する。つまり、キャリッジ51が左右方向A3へ往復移動することにより、インクジェットヘッド41が用紙Pに対して走査されると共に、吐出口41aから、各色のインクを吐出することで、プラテン6上を搬送される用紙Pに画像が記録される。なお、プリンタ部10内には、走査方向に間隔を空けて配列された多数の透光部(スリット)を有するリニアエンコーダ(不図示)が設けられている。一方、キャリッジ51には、発光素子と受光素子とを有する透過型の位置検出センサ(不図示)が設けられている。そして、プリンタ部10は、キャリッジ51の移動中に位置検出センサが検出したリニアエンコーダの透光部の計数値から、キャリッジ51の走査方向に関する現在位置を認識できるようになっており、CRモータ50Mの回転駆動が制御される。
<メンテナンス部60>
メンテナンス部60は、ヘッド本体42の吐出口41aから強制的にインクを排出させてその吐出性能を回復させる、及び、排気ユニット45の排気口152aを介してバッファタンク43a〜43dから主に気泡を排出させるものであり、走査方向に関するキャリッジ51の移動範囲のうちの、画像記録領域G1よりも右側のメンテナンス領域G2のメンテナンス位置に配置されている。このメンテナンス部60の詳細については後ほど説明する。
次に、バッファタンク43a〜43dについて説明する。なお、4色のインクをそれぞれ貯留する4つのバッファタンク43a〜43dの構造は基本的に同一であるので、そのうちの1つのバッファタンク43(以下において符号43と記することがある)について以下説明する。
バッファタンク43は、図4に示すように、一端がチューブジョイント44と接続された流路46を有する。流路46(供給流路:内部流路の一部)は、図4に示すように、ダンパー室46aと、気泡貯留室46bとを含む。ダンパー室46aは、チューブジョイント44と接続され前後方向A2に延在している。また、ダンパー室46aの上部は、可撓性を有するフィルム47によって覆われている。これにより、流路46内のインクに生じる圧力変動がダンパー室46aで吸収される。この結果、ヘッド本体42内のヘッド流路123(内部流路の一部)のインクに圧力変動が伝わりにくくなって、インク吐出を安定させることが可能となる。
気泡貯留室(気泡貯留部)46bは、上下方向A1に延在し、上端がダンパー室46aに接続され、下端がヘッド本体42の供給口125に接続されている。バッファタンク43内のインクは、ダンパー室46aから気泡貯留室46bを通って供給口125に流れる。このようなインクの流れにより、外部から流路46に入り込んだ気泡は気泡貯留室46bの上部に集まり、貯留されていく。
次に、ヘッド本体42について説明する。ヘッド本体42は、図5及び図6に示すように、流路ユニット121と、アクチュエータユニット122とを有する。図6(b)に示すように、流路ユニット121は、5枚のプレート131〜135が積層された構造を有する。5枚のプレート131〜135のうちの最下層のプレート135は、吐出口(開口)41aを構成するノズル135aが複数形成されたノズルプレート135である。一方、上側の残り4枚のプレート131〜134には、複数のノズル135aに連通するマニホールド136や圧力室137などの孔が形成されている。
図5に示すように、複数の吐出口(開口)41aは、前後方向A2に沿って配列された吐出口列124が左右方向A3に4列形成されるように配置されている。本実施形態において、図5中最も右側の吐出口列124dに属する吐出口41aからは、ブラックインクが吐出され、他の3列の吐出口列124a,124b,124cに属する吐出口41aからは、カラーインク(イエロー、シアン、マゼンタ)が吐出される。より詳細には、図5中最も左側の吐出口列124から順に、イエロー、シアン、マゼンタのインクが吐出される。
次に、流路ユニット121の上側4枚のプレート131〜134に形成された、複数のノズル135aに連通する流路構造について説明する。まず、図5に示すように、流路ユニット121の上面の後方端部(搬送方向上流端部)には、走査方向に並ぶ4つの供給口125が形成されている。これらの供給口125には、バッファタンク43a〜43dから4色のインクが供給される。4つの供給口125は、イエローの供給口125a、シアンの供給口125b、マゼンタの供給口125c、ブラックの供給口125dである。
また、流路ユニット121の内部には、それぞれ前後方向A2に延在する4本のマニホールド136が形成されている。4本のマニホールド136は、それらの後端部において、4つの供給口125とそれぞれ接続されている。各マニホールド136においては、インクが後方から前方に流れる。つまり、搬送方向にインクが流れる。
また、流路ユニット121は、複数のノズル135aにそれぞれ対応した複数の圧力室137を有する。複数の圧力室137は、流路ユニット121の最上層に位置するプレート131に形成され、複数のノズル135aにそれぞれ対応して平面的に配置されている。図5に示すように、圧力室137は、4つの吐出口列124にそれぞれ対応して、前後方向A2に沿って配列された圧力室列が左右方向A3に4列形成されるように配置されている。以上より、図6(b)に矢印で示すように、流路ユニット121内には、各マニホールド136から分岐して、圧力室137を経てノズル135aに至る個別流路126が複数形成されている。これら4つのマニホールド136及び複数の個別流路126によって、流路ユニット121に形成されたヘッド流路123が構成される。
図5及び図6に示すように、アクチュエータユニット(エネルギー付与手段)122は、振動板141と、圧電層142,143と、複数の個別電極144と、共通電極145とを含む。振動板141は、複数の圧力室137を覆った状態で流路ユニット121の上面に接合されている。2枚の圧電層142,143は、振動板141の上面に積層されている。複数の個別電極144は、上層の圧電層143の上面において、複数の圧力室137とそれぞれ対向するように配置されている。共通電極145は、2枚の圧電層142,143の間において、複数の圧力室137に跨って配置されている。
制御部5からの信号を受けて、ドライバIC138から個別電極144に対して駆動信号が供給されると、上層の圧電層143の圧力室137と対向する部分に圧電歪が生じることで、振動板141が撓むように変形する。このとき、圧力室137の容積が変化することによって、個別流路126内のインクに圧力が付与されてノズル135a(吐出口41a)からインクが吐出される。
次に、排気ユニット45a〜45dについて説明する。排気ユニット45a〜45dは、図3に示すように、バッファタンク43dの右側に設けられている。なお、図7に示すように、4色のインク(イエロー、シアン、マゼンタ、ブラック)を貯留する4つのバッファタンク43a〜43dに対して、排気ユニット45a〜45dがそれぞれ設けられている。
4つのバッファタンク43a〜43dにそれぞれ対応する4つの排気ユニット45a〜45dの構造は基本的に同一であるので、そのうちの1つの排気ユニット45(以下において符号45と記することがある)について以下説明する。排気ユニット45は、バッファタンク43dの側面に固定されたケース151と、このケース151内において上下方向A1に延在する排気流路152と、排気流路152を開閉する開閉弁153とを有する。排気流路152は、その上端が気泡貯留室46bの上端と連通する接続流路48(図4参照)を介して接続されている。排気流路152は、ケース151の下端に形成された排気口(開口)152aまで延在している。これら排気流路152と接続流路48とによって連通路161が構成されている。
開閉弁153は、排気流路152内において上下方向A1に移動可能に配設されるとともに排気流路152を閉鎖可能な弁部材154と、この弁部材154を下方に付勢するコイルバネ155とを有する。
弁部材154は、排気流路152内において上下方向A1に移動可能な有底筒状の弁体156と、この弁体156の底部から下方へ延びる弁棒157を有する。弁体156の外径は、排気流路152の内径よりは小さくなっており、この弁体156と排気流路152の内壁面との間をインクが流れることが可能となっている。また、弁体156の下面には環状のシール材158が装着されており、弁体156は、排気流路152の途中の段部に設けられた弁座面159にシール材158を介して当接することで、排気流路152を閉鎖するように構成されている。
コイルバネ155は、ケース151の上端部と弁部材154の弁体156との間に圧縮状態で配置されており、このコイルバネ155によって弁部材154が下方へ付勢される。そして、後述する開閉部材78a〜78dにより、弁体156がコイルバネ155の付勢力に抗して上方へ駆動されたときには、弁体156が弁座面159から離間し、排気流路152が開放される。
次に、メンテナンス部60について説明する。図3、図7〜図11に示すように、メンテナンス部60は、キャップ機構61と、メンテフレーム65と、吸引ポンプ66と、切換機構67と、廃液タンク68と、ポンプモータ66M(図12参照)とを含む。
メンテフレーム65は、図8に示すように、平板から構成されている。また、メンテフレーム65は、キャップ機構61を下方から支持する。
キャップ機構61は、図7〜図9に示すように、吸引キャップ71と、排気キャップ72と、吸引キャップ71及び排気キャップ72を支持するキャップホルダ73と、キャップホルダ73を昇降させるキャップ昇降機構74と、排気ユニット45a〜45d内の開閉弁153をそれぞれ開閉させる4本の開閉部材78a〜78dと、これら開閉部材78a〜78dを移動させる移動機構79を有する。
吸引キャップ71は、上方に向かって開口する凹部71a1が形成されたキャップ71aと、上方に向かって開口する凹部71b1が形成されたキャップ71bとを有する。これら2つのキャップ71a,71bは、図8に示すように、一体的に形成されており、ゴムや合成樹脂などの可撓性を有する材料で形成されている。キャップ71aの底部には、連通孔71a2が形成されている。連通孔71a2は、チューブ71a3と接続されている。キャップ71bの底部にも連通孔71b2が形成されている。連通孔71b2は、チューブ71b3と接続されている。そして、図8中二点鎖線で示すように、メンテナンス位置にインクジェットヘッド41(キャリッジ51)が移動してきたときに、この吸引キャップ71は、吐出面41bと対向する。この状態で、キャップホルダ73がキャップ昇降機構74によって上方に移動されることにより、吸引キャップ71が吐出面41bと当接する当接位置(後述する)に配置され、複数の吐出口41a(開口)を覆う(第1状態)。このとき、吐出面41bの3色のカラーインクを吐出する吐出口41aが形成された領域がキャップ71aによって覆われ、凹部71a1内に密閉空間K1が形成される(図15(a)参照)。また、吐出面41bのブラックインクを吐出する吐出口41a形成された領域がキャップ71bによって覆われ、凹部71b1内に密閉空間K2が形成される(図15(a)参照)。
排気キャップ72は、上方に向かって開口する凹部72aを有し、ゴムや合成樹脂などの可撓性を有する材料で形成されている。排気キャップ72の底部には、連通孔72bが形成されている。連通孔72bは、図7(a)に示すように、排気キャップ72の前方端部に形成されている。また、連通孔72bはチューブ72cと接続されている。そして、図8中二点鎖線で示すように、メンテナンス位置にインクジェットヘッド41(キャリッジ51)が移動してきたときに、この排気キャップ72は、4つの排気ユニット45の下面と対向する。この状態で、キャップホルダ73がキャップ昇降機構74によって上方に移動されることにより、排気キャップ72が排気ユニット45の下面と当接する当接位置(後述する)に配置され、4つの排気口152a(開口)を覆う(第1状態)。このとき、凹部72a内に密閉空間K3が形成される(図7(b)参照)。
キャップホルダ73は、吸引キャップ71及び排気キャップ72を下方から支持する。キャップホルダ73の下面には、下方に突出した板状の突出部73aが形成されている。突出部73aの先端部には、左右方向A3に突出した一対の突起73bが形成されている。一対の突起73bは、円柱形状を有する。
キャップ昇降機構(キャップ移動機構)74は、図8及び図9に示すように、一対のスライドカム74aと、ギヤ74bと、ギヤ74bとスライドカム74aとを連結するリンク74cと、ギヤ74bを駆動するキャップ昇降モータ74M(図12参照)とを有する。一対のスライドカム74aは、板状部材から構成されており、左右方向A3に突出部73aを挟んで配置されている。また、一対のスライドカム74aは、メンテフレーム65上に立設された状態で、前後方向A2にスライド可能に支持されている。各スライドカム74aには、左右方向A3に貫通し、突起73bが配置可能なガイド孔74a1が形成されている。ガイド孔74a1は、前方部74a2と、後方部74a3と、前方部74a2と後方部74a3とを繋ぐ接続部74a4とを有する。前方部74a2と後方部74a3は、ともに前後方向A2に水平に延在する。前方部74a2は、後方部74a3よりも下方に配置されている。これより、接続部74a4が斜めに延在している。
このキャップ昇降機構74の構成において、図9(a)に示すように、スライドカム74aが後方寄りの位置にあるときに、突起73bが前方部74a2に配置され、キャップホルダ73がメンテフレーム65に最も近い位置に配置される。このとき、吸引キャップ71及び排気キャップ72は、メンテナンス位置に配置されたインクジェットヘッド41の吐出面41b及び排気ユニット45の下面と離隔する離隔位置に配置される。つまり、吸引キャップ71及び排気キャップ72は、メンテナンス位置に配置されたインクジェットヘッド41の吐出面41b及び排気ユニット45の下面と離れた第2状態となる。この離隔位置に吸引キャップ71及び排気キャップ72が配置されるときは、吸引キャップ71は吐出口41aを覆わず、排気キャップ72は排気口152aを覆わない。そして、キャップ昇降モータ74Mが駆動されてギヤ74bが図9(a)に示す位置から図9(b)に示す位置まで図中時計回りに180°回転することで、リンク74cに連結された一対のスライドカム74aが前方に移動する。このとき、突起73bが接続部74a4によって上方に案内され、後方部74a3に配置される。このようにスライドカム74aが前方寄りの位置に移動すると、突起73bが後方部74a3に配置され、キャップホルダ73がメンテフレーム65から最も離れた位置に配置される。このとき、吸引キャップ71及び排気キャップ72は、メンテナンス位置に配置されたインクジェットヘッド41の吐出面41b及び排気ユニット45の下面と当接可能な当接位置に配置される。これにより、吸引キャップ71及び排気キャップ72は、吐出口41a及び排気口152aをそれぞれ覆う第1状態となる。
このようにキャップ昇降機構74は、キャップ昇降モータ74Mによってギヤ74bが駆動されることで、吸引キャップ71及び排気キャップ72が第1状態と第2状態とを選択的にとるように、吸引キャップ71及び排気キャップ72を当接位置と離隔位置との間において移動させることができる。また、スライドカム74aの前後方向A2に関する位置は、キャップ昇降モータ74Mに接続されたロータリーエンコーダ(不図示)の出力値(回転数)に基づいて検出可能であり、これにより、スライドカム74aの前後方向A2に関する位置を制御することで、吸引キャップ71及び排気キャップ72の配置位置(離隔位置又は当接位置)を制御することができる。
4本の開閉部材78a〜78d(すべての開閉部材にも共通する事項については以下において符号78を用いることがある)はそれぞれ上下方向に延在した棒状の部材であり、図7に示すように、前後方向A2に間隔を空けて並べて配置されている。また、4本の開閉部材78は、排気キャップ72の底壁との間において気密を保った状態で貫通して配置され、排気キャップ72に対して上下に相対移動可能に構成されている。排気キャップ72は、このように4本の開閉部材78a〜78dが貫通して配置されていることで、吸引キャップ71及び排気キャップ72が吐出面41b及び排気ユニット45の下面に当接した状態において、吸引キャップ71と比して外部に対するガスバリア性が低くなる。換言すると、吸引キャップ71は、排気キャップ72よりもガスバリア性が高い。また、メンテナンス位置にインクジェットヘッド41が移動してきたときには、図7に示すように、4本の開閉部材78は、対応する排気ユニット45の下面の排気口152aの真下に位置する。
図7に示すように、4本の開閉部材78a〜78dは、これらの下端部において互いに連結され、移動機構79によって一体的に上下に移動可能となっている。移動機構79は、弁駆動モータ79M(図12参照)を有し、弁駆動モータ79Mが駆動されることで、開閉部材78a〜78dを開弁位置と閉弁位置との間において移動させる。閉弁位置は、図7(a)に示すように、開閉部材78a〜78dが開閉弁153から離隔し当該開閉弁153を閉弁させる位置である。開弁位置は、図7(b)に示すように、開閉部材78a〜78dが開閉弁153に当接し、当該開閉弁153を開弁させる位置である。
そして、図7(b)に示すように、排気キャップ72により排気ユニット45の下面の排気口152aが覆われた状態(第1状態)で、弁駆動モータ79Mを駆動して開閉部材78a〜78dを排気キャップ72に対して上方に移動させる。すると、開閉部材78a〜78dの上端部が、排気口152aから排気流路152内に挿通され、排気流路152内の弁棒157を上方に押圧する。これにより、弁棒157と一体的に弁体156が上方へ移動して弁座面159から離間し、排気流路152が開放される(開弁)。なお、開閉部材78a〜78dが下方に移動すると、開閉部材78a〜78dの上端部が弁棒157から離隔する。これにより、弁体156(シール部材158)がコイルバネ155の付勢力によって弁座面159に押圧され、排気流路152が閉鎖される。
切換機構67は、吸引ポンプ66と、カラー用のキャップ71aと、ブラック用のキャップ71bと、排気キャップ72との間における接続状態を切り換えるためのものである。なお、特に図示していないが、キャップ71aに接続されたチューブ71a3と後述のCoポート67b3とが接続されている。また、キャップ71bに接続されたチューブ71b3と後述のBkポート67b2とが接続されている。また、排気キャップ72に接続されたチューブ72cと後述の排気ポート67b4とが接続されている。キャップ71aの連通孔71a2、チューブ71a3及びCoポート67b3によって、キャップ71aと吸引ポンプ66とを接続する接続流路81(第1又は第2接続流路:図8参照)が構成される。キャップ71bの連通孔71b2、チューブ71b3及びBkポート67b2によって、キャップ71bと吸引ポンプ66とを接続する接続流路82(第1又は第2接続流路:図8参照)が構成される。排気キャップ72の連通孔72b、チューブ72c及び排気ポート67b4によって、排気キャップ72と吸引ポンプ66とを接続する接続流路83(第1又は第2接続流路:図8参照)が構成される。また、3つのチューブ71a3,71b3,72cはいずれも同じ内径、同じ長さを有する。図10及び図11に示すように、切換機構67は、切換部材67aと、切換部材67aを収容するカバー67bと、切換モータ67M(図12参照)とを有している。
切換部材67aは、ゴムなどの弾性部材により形成され、上下方向A1に沿って延在する円柱形状を有する。切換部材67aは、切換モータ67Mが駆動されることで、図11に示す回転方向A5に回転する。切換部材67aには、切換流路67cが形成されている。切換流路67cは、切換部材67aの上面の中央に形成された円形の中央溝67dと、切換部材67aの外周側面に形成された5つの垂直溝67e1〜67e5と、中央溝67dと5つの垂直溝67e1〜67e5とをそれぞれ繋ぐ5つの水平溝67f1〜67f5とを有する。5つの垂直溝67e1〜67e5は、上下方向A1に沿って延在し、回転方向A5に沿って互いに離隔して配置されている。5つの水平溝67f1〜67f5は、中央溝67dから切換部材67aの径方向に沿って水平に延在する。
カバー67bは、上端及び下端が閉塞された円筒部材から構成されており、その内部に切換部材67aが配置されている。カバー67bは、メンテフレーム65に支持されており、切換部材67aに対して相対的に回転可能に構成されている。カバー67bの上端壁には、図10に示すように、吸気ポート67b1が形成されている。吸気ポート67b1は、チューブ66a(第3接続流路:図3参照)を介して吸引ポンプ66に接続されている。吸気ポート67b1は、中央溝67dと対向する位置に配置されており、中央溝67dと連通している。カバー67bの円形の周壁には、回転方向A5に沿って互いに離隔して3つのポート67b2〜67b4が形成されている。
1つ目のポートは、キャップ71bに連通しブラックインクが排出される空間内に連通するBkポート67b2である。2つ目のポートは、キャップ71aに連通しカラーインクが排出される空間内に連通するCoポート67b3である。3つ目のポートは、排気キャップ72に連通し主にバッファタンク43a〜43d内の気泡が排出される空間内に連通する排気ポート67b4である。
切換部材67aは、切換モータ67Mの動力が伝達機構(不図示)によって伝達されることで回転し、6つの連通状態を選択的にとる。第1の連通状態では、図11(a)に示すように、吸引ポンプ66が切換流路67cを介してCoポート67b3と連通する。つまり、吸引ポンプ66とチューブ71a3(すなわち、キャップ71a)とが連通する。第2の連通状態では、図11(b)に示すように、吸引ポンプ66が切換流路67cを介してBkポート67b2と連通する。つまり、吸引ポンプ66とチューブ71b3(すなわち、キャップ71b)とが連通する。第3の連通状態では、図11(c)に示すように、吸引ポンプ66が切換流路67cを介して排気ポート67b4と連通する。つまり、吸引ポンプ66とチューブ72c(すなわち、排気キャップ72)とが連通する。第4の連通状態では、図11(d)に示すように、Bkポート67b2が切換流路67cを介して排気ポート67b4と連通する。つまり、チューブ71b3(キャップ71b)とチューブ72c(排気キャップ72)とが連通する。第5の連通状態では、図11(e)に示すように、Coポート67b3が切換流路67cを介して排気ポート67b4と連通する。つまり、チューブ71a3(キャップ71a)とチューブ72c(排気キャップ72)とが連通する。第6の連通状態では、図11(f)に示すように、Coポート67b3が切換流路67cを介してBkポート67b2と連通する。つまり、チューブ71a3(キャップ71a)とチューブ71b3(キャップ71b)とが連通する。
なお、切換部材67aのカバー67bに対する回転方向A5の位置は、切換モータ67Mに接続されたロータリーエンコーダ(不図示)の出力値に基づいて制御することで、切換機構67の第1の連通状態〜第6の連通状態を選択的にとるための制御をすることができる。
吸引ポンプ66は、公知のチューブポンプが採用されており、切換部材67aが第1の連通状態〜第3の連通状態のいずれかをとるときに、吸引ポンプ66のローターを回転させることで、吸引キャップ71及び排気キャップ72のいずれかにインクや気泡を排出させることができる。吸引ポンプ66は、ローターに接続されたポンプモータ66M(図12参照)が駆動されることで回転する。廃液タンク68は、吸引ポンプ66とチューブ68aで接続されており、吸引ポンプ66によって吸引された廃インクを貯留する。
吸引キャップ71が第1状態をとり、且つ、切換機構67が第1の連通状態をとるときに、吸引ポンプ66の吸引動作が行われたときには、密閉空間K1内の空気が吸引されて圧力が低下し、カラーインクを吐出する吐出口41aから凹部71a1内にカラーインクが排出される(第1液体パージ)。吸引キャップ71が第1状態をとり、且つ、切換機構67が第2の連通状態をとるときに、吸引ポンプ66の吸引動作が行われたときには、密閉空間K2内の空気が吸引されて圧力が低下し、ブラックインクを吐出する吐出口41aから凹部71b1内にブラックインクが排出される(第1液体パージ)。これらにより、吐出口41a内の増粘インクやインクジェットヘッド41内の気泡(主にヘッド本体42内の気泡)を、インクとともに吐出口41aから排出することが可能となっている。
さらに、本実施形態では、吸引ポンプ66に、第1液体パージの実行時よりも吸引速度の高い吸引動作を行わせること(以下、高速吸引という)も可能となっている。この高速吸引による第2液体パージは、流路46及びヘッド流路123を流れるインクの流速が第1液体パージよりも速くなるように、密閉空間K1又は密閉空間K2の圧力を急激に低下させて、ヘッド流路123を介して気泡貯留室46bの上部に滞留した気泡を吐出口41aからインクと共に排出させることを目的とするものである。
一方、排気キャップ72が第1状態をとり、且つ、切換機構67が第3の連通状態をとり、さらに開閉部材78a〜78dにより排気流路152が開放されている状態で、吸引ポンプ66の吸引動作が行われたときには、排気キャップ72と排気ユニット45a〜45dの下面によって形成される密閉空間K3内の空気が吸引されて圧力が低下する。このとき、バッファタンク43a〜43dの気泡貯留室46bの上部に滞留した気泡が、接続流路48及び排気流路152を介して排出される(排気動作)。この排気動作では、主に気泡貯留室46bに滞留した気泡が排出されるもののバッファタンク43a〜43d内のインクも排出される。しかしながら、排気動作による排出インク量は、排気動作による気泡排出量と同じ量だけ気泡を排出するために排出する第2液体パージの排出インク量よりも大幅に少ない。
図12に示すように、制御部5は、CPU(Central Processing Unit)5a、ROM(Read Only Memory)5b、RAM(Random Access Memory)5c、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)5d、及び、時間を計測する計時部5eなどを含み、これらが協働して、ASFモータ20M、LFモータ35M、CRモータ50M、インクジェットヘッド41、ポンプモータ66M、キャップ昇降モータ74M、切換モータ67M、弁駆動モータ79M等の動作を制御する。例えば、制御部5は、PCから送信された記録指令に基づいて、インクジェットヘッド41、ASFモータ20M、LFモータ35M、CRモータ50M等を制御して、用紙Pに画像等を記録させる。また、制御部5は、キャップ昇降モータ74M、切換モータ67M、ポンプモータ66M、弁駆動モータ79M等を制御して、吐出口41aからインクを排出する液体パージ、排気ユニット45の排気口152aからバッファタンク43内の気泡をインクとともに排出する排気動作、及び、インクの乾燥によって接続流路81〜83のいずれかが詰まった場合にその詰まりを回復する詰まり回復処理などのメンテナンス動作を行う。また、制御部5には、蓄電池85が接続されている。計時部5eは、複合機1の外部電源との接続が遮断される(例えば電源ケーブルがコンセントから抜かれる)と、蓄電池85に充電された電気によって駆動される。
なお、本実施形態の制御部5では、CPU5a及びASIC5dを1つずつ有しているが、制御部5は、CPU5aを1つだけ含み、この1つのCPU5aが必要な処理を一括して行うものであってもよいし、CPU5aを複数含み、これら複数のCPU5aが必要な処理を分担して行うものであってもよい。また、制御部5は、ASIC5dを1つだけ含み、この1つのASIC5dが必要な処理を一括して行うものであってもよいし、ASIC5dを複数含み、これら複数のASIC5dが必要な処理を分担して行うものであってもよい。
次に、プリンタ部10のメンテナンス動作について、図13〜図16を参照しつつ以下に説明する。制御部5は、計時部5eによって計測された時間が所定時間に達すると、第1液体パージや排気動作などを行う定期メンテナンス動作を実行する。しかし、操作者が複合機1の外部電源との接続を遮断すると、充電池85の電気が、例えば数日でなくなる。充電池85の電気がなくなると、計時部5eは時間を計測することができなくなる。このように計時部5eが時間を計測できない状態である時計失いが生じる場合は、長期間、複合機1の外部電源との接続が遮断されている可能性が高い。この場合、接続流路81〜83などに残存するインクが乾燥して固化することがある。このような場合でも本実施形態においては、詰まり回復処理で当該接続流路81〜83の詰まりを回復することができる。以下、詰まり回復処理に係るメンテナンス動作について説明する。なお、吸引キャップ71及び排気キャップ72が第1状態をとる状態で、複合機1の外部電源との接続が遮断されたとして以下に説明する。
制御部5は、複合機1の外部電源との接続がONにされると、先ず、時計失いが生じているか否かを判定する(S1)。このとき、制御部5は、充電池85の出力電圧が所定値以上の場合には、時計失いが生じていないと判定し(S1:NO)、制御フローを終了する。一方、充電池85の出力電圧が所定値よりも小さい場合には、制御部5は時計失いが生じていると判定し(S1:NO)、排気処理を実行する(S2)。排気処理は、排気動作を行った後に、第1液体パージを実行する処理である。
制御部5は、S2において、切換モータ67M、弁駆動モータ79M、ポンプモータ66Mを制御し、切換機構67を第3の連通状態とし、開閉部材78a〜78dにより排気ユニット45a〜45dの排気流路152が開放されている状態で、吸引ポンプ66を所定時間駆動する。これにより、密閉空間K3が減圧され、排気口152aからバッファタンク43a〜43dの気泡貯留室46bの気泡がインクとともに排気キャップ72に排出される(排気動作)。そして、制御部5は、弁駆動モータ79M、キャップ昇降モータ74M、ポンプモータ66Mを制御し、排気ユニット45a〜45dの排気流路152を閉塞し、吸引キャップ71及び排気キャップ72を第2状態とした状態で、吸引ポンプ66を所定時間駆動する。これにより、排気キャップ72に排出されたインクが廃液タンク68に排出される(排気用空吸引動作)。
制御部5は、キャップ昇降モータ74M、切換モータ67M、ポンプモータ66Mを制御し、吸引キャップ71及び排気キャップ72を第1状態とし、切換機構67を第1の連通状態とした状態で、吸引ポンプ66を所定時間駆動する。これにより、密閉空間K1が減圧され、吐出口41aからカラーインクが排出される(第1液体パージ)。そして、制御部5は、キャップ昇降モータ74M、ポンプモータ66Mを制御し、吸引キャップ71及び排気キャップ72を第2状態とした状態で、吸引ポンプ66を所定時間駆動する。これにより、キャップ71aに排出されたカラーインクが廃液タンク68に排出される(カラー用空吸引動作)。
制御部5は、キャップ昇降モータ74M、切換モータ67M、ポンプモータ66Mを制御し、吸引キャップ71及び排気キャップ72を第1状態とし、切換機構67を第2の連通状態とした状態で、吸引ポンプ66を所定時間駆動する。これにより、密閉空間K2が減圧され、吐出口41aからブラックインクが排出される(第1液体パージ)。そして、制御部5は、キャップ昇降モータ74M、ポンプモータ66Mを制御し、吸引キャップ71及び排気キャップ72を第2状態とした状態で、吸引ポンプ66を所定時間駆動する。これにより、キャップ71bに排出されたブラックインクが廃液タンク68に排出される(ブラック用空吸引動作)。
次に、制御部5は、テストパターン記録処理を実行する(S3)。つまり、制御部5は、インクジェットヘッド41、ASFモータ20M、LFモータ35M、CRモータ50Mを制御して、すべての吐出口41aからインクが吐出されているか否かを判定するための所定のテストパターンを用紙Pに記録させる。そして、操作者によって、用紙Pに記録されたテストパターンから、カラーインク及びブラックインクを吐出する吐出口41aのいずれからもインクが吐出されていない第1吐出不良状態と、カラーインクを吐出する少なくとも一部の吐出口41aからインクが吐出されているが、ブラックインクを吐出する吐出口41aのいずれからもインクが吐出されていない第2吐出不良状態と、ブラックインクを吐出する少なくとも一部の吐出口41aからインクが吐出されているが、カラーインクを吐出する吐出口41aのいずれからもインクが吐出されていない第3吐出不良状態と、カラーインク及びブラックインクを吐出するすべての吐出口41aからインクが吐出されている正常状態と、第2及び第3吐出不良状態及び正常状態とは異なり、カラーインクを吐出する一部の吐出口41a及びブラックインクを吐出する一部の吐出口41aからそれぞれインクが吐出されている第4吐出不良状態とのいずれに該当するかが判断される。第1吐出不良状態と判断されると、操作者によって操作ボタン91が押される。このとき、操作ボタン91から第1吐出不良状態を示す第1信号が制御部5に出力される。第2吐出不良状態と判断されると、操作者によって操作ボタン92が押される。このとき、操作ボタン92から第2吐出不良状態を示す第2信号が制御部5に出力される。第3吐出不良状態と判断されると、操作者によって操作ボタン93が押される。このとき、操作ボタン93から第3吐出不良状態を示す第3信号が制御部5に出力される。第4吐出不良状態と判断されると、操作者によって操作ボタン94が押される。このとき、操作ボタン94から第4吐出不良状態を示す第4信号が制御部5に出力される。正常状態と判断されると、操作者によって操作ボタン95が押される。このとき、操作ボタン95から正常状態を示す第5信号が制御部5に出力される。
次に、制御部5は、操作ボタン91〜95のいずれかが押されたか否かを判定する(S4)。操作ボタン91〜95が押されない場合(S4:NO)、制御部5は、S4を繰り返す。操作ボタン91〜95が押された場合(S4:YES)、制御部5は、第4信号又は第5信号を受信したか否かを判定する(S5)。
S5において、第4信号又は第5信号を受信した場合(S5:YES)、制御部5は、第5信号を受信したか否かを判定する(S6)。第5信号を受信した場合(S6:YES)、制御部5は正常状態であると判定し、フローを終了する。第5信号を受信していない(つまり、第4信号を受信している)場合(S6:NO)、制御部5は、第1液体パージ処理を実行する(S7)。
S7における第1液体パージ処理は、上述のS2で実行される、カラーインクを排出する第1液体パージ及びカラー用空吸引動作とブラックインクを排出する第1液体パージ及びブラック用空吸引動作とを順に実行する。なお、同様の処理であるため、その詳細の説明は省略する。この後、上述のS3に戻る。
S5において、第4信号及び第5信号のいずれも受信しない(つまり、第1〜第3信号を受信している)場合(S5:NO)、制御部5は、S2と同様な排気処理を実行する(S8)。第1〜第3信号を受信している場合は、バッファタンク43内の気泡の量が多く、当該気泡によってバッファタンク43から供給口125へのインク供給量が不足し、吐出口41aからインクが吐出できない状態であると考えられる。このため、S8において再度排気処理を実行する。
次に、制御部5は、S3,S4,S5と同様なS9〜S11を実行する。S11において、第4信号又は第5信号を受信した場合(S11:YES)、制御部5は、S2における気泡排出量が少なかっただけと判定して、S6に進む。一方、第4信号及び第5信号のいずれも受信しない(つまり、第1〜第3信号を受信している)場合(S11:NO)、制御部5は、接続流路81〜83のいずれかが詰まっていると判定し、詰まり回復処理を実行する(S12)。
詰まり回復処理では、制御部5は、先ず、第1信号(流路詰まりに関する信号)を受信したか否かを判定する(判定処理:SA1)。第1信号を受信した場合(SA1:YES)、制御部5は、第2液体パージ処理を実行する(SA2)。接続流路83の連通孔72b部分には、時間が経過するに連れて排気キャップ72内に残存するインクが集まりやすい。このため、連通孔72b部分に集まって留まるインクが乾燥して固化することで、接続流路83に詰まりが生じやすい。なお、本実施形態において、連通孔72b部分が接続流路83において詰まりが生じる部分として述べるが、チューブ72c内であってもよい。このように接続流路83に詰まりが生じると、排気動作を実行しても排気キャップ72内を減圧することができず、バッファタンク43a〜43dから気泡を排出することができない。このようにバッファタンク43a〜43dから気泡が排出されないと、当該気泡によってバッファタンク43a〜43dから供給口125へのインク供給量が不足し、吐出口41aのいずれからもインクが吐出できないインク吐出不良が生じる(第1吐出不良状態)。このように第1信号を受信するときは、接続流路83に固化インクによる詰まりが生じ、排気動作が正常に実行されていないと判定され、バッファタンク43a〜43d内の気泡を排出するための第2液体パージ処理が実行される。
制御部5は、SA2において、S7とほぼ同様な処理を実行する。このとき、S7の第1液体パージ処理で実行される第1液体パージに替えて第2液体パージが実行される。第2液体パージは、上述のように第1液体パージよりも密閉空間K1,K2の圧力を急激に低下させて、ヘッド流路123を介して気泡貯留室46bに滞留した気泡を吐出口41aからインクと共に排出させる動作である。要するに、第1液体パージよりも吸引ポンプの回転速度を速くすることで、第2液体パージが行われる。このため、詳細の説明は省略する。こうして、カラーインクを吐出する吐出口41a及びブラックインクを吐出する吐出口41aの両方において、第2液体パージが実行されることで、バッファタンク43a〜43d内の気泡がヘッド流路123を介して排出される。こうして、すべての吐出口41aにおけるインク吐出不良が回復される。なお、カラーインクに対応する第2液体パージの後にはカラー用空吸引動作が実行され、ブラックインクに対応する第2液体パージの後にはブラック用空吸引動作が実行される。
次に、制御部5は、第1インク充填処理と、第1減圧処理とを順に実行する第1準備処理を実行する(SA3)。つまり、制御部5は、キャップ昇降モータ74M、切換モータ67M、ポンプモータ66Mを制御し、吸引キャップ71及び排気キャップ72を第1状態とし、切換機構67を第1の連通状態とした状態で、吸引ポンプ66を所定時間駆動する。この後、制御部5は、切換モータ67Mを制御して、切換機構67を第3の連通状態とする。これにより、図15(a)に示すように、減圧された密閉空間K1及び接続流路81内に、吐出口41aからカラーインクが排出される。つまり、キャップ71a及び接続流路81内にインクが充填される(第1インク充填処理)。
本実施形態においては、3つのチューブ71a3,71b3,72cはいずれも同じ内径、同じ長さを有する。このため、接続流路81の容積と接続流路83の容積とがほぼ同じになる。したがって、接続流路81の容積とキャップ71aの内容積との合計容積は、キャップ71aの内容積分だけ大きくなる。そして、第1インク充填処理では、接続流路81のみならず、キャップ71aにもインクが充填されるように、吸引ポンプ66を制御する。このため、第1インク充填処理で充填されたインク量は、接続流路83の容積を満たす量となる。このため、後述の第1切換処理において、第1インク充填処理で充填されたインクを、固化インクに確実に接触させることができる。
制御部5は、ポンプモータ66Mを制御して、吸引ポンプ66を所定時間駆動する。これにより、接続流路83内が減圧される。本実施形態においては、吸引ポンプ66によって接続流路83内に、例えば−80Kpa〜−90Kpa程度の負圧が生じるように、ポンプモータ66Mを制御する。なお、接続流路83内の負圧は、キャップ71a及び接続流路81に充填されていたインクが、後述の第1切換処理で接続流路83の固化したインクに接触する程度のインク量が流入可能な大きさであればよい。このように第1準備処理においては、第1インク充填処理が行われてから第1減圧処理が行われている。このため、第1減圧処理の後に第1インク充填処理を実行するときと比べて、第1減圧処理後から第1切換処理が行われるまでの時間が短くなる。このため、第1減圧処理によって減圧された接続流路83の圧力が上昇するのを抑制することができる。
次に、制御部5は、第1切換処理を実行する(SA4)。制御部5は、まず、キャップ昇降モータ74M及び切換モータ67Mを制御して、吸引キャップ71及び排気キャップ72を第2状態とし、切換機構67を第5の連通状態とする。これにより、図15(b)に示すように、接続流路83の負圧によってキャップ71a及び接続流路81に充填されていたインクが切換機構67を介して接続流路83に流れる。こうして、接続流路83内に流れてきたインクが、連通孔72bの固化したインクに接触する。固化したインクは、固化していないインクと接触することで再分散し始める。また、第1切換処理において、接続流路81に繋がる吸引キャップ71を第2状態としてから、切換機構67が第5の連通状態に切り換えられる。このため、接続流路83と接続流路81とが連通したときに、カラーインクを吐出する吐出口41aからインクが排出されるのを防ぐことが可能となる。
次に、制御部5は、第1待機処理及び第1残存インク排出処理を実行する(SA5)。制御部5は、SA4で切換機構67が第5の連通状態とされた時点から固化したインクに十分な流動性が戻るまでの第1待機時間の間、待機する(第1待機処理)。第1待機時間は、吸引ポンプ66で接続流路83に−90Kpa程度の負圧をかけたときに、固化していたインクが流動性を持ち、吸引ポンプ66のローターの回転を一定速度で行った際に、連続的に接続流路83内を流れる状態を確保できる時間である。なお、第1待機時間は、予め実験によって求められ、ROM5bに記憶されている。また、制御部5は、第1待機処理が行われているときに、切換モータ67M及びポンプモータ66Mを制御して、切換機構67を第1の連通状態とした状態で、吸引ポンプ66を所定時間駆動する。これにより、第1待機処理が実行されている待ち時間を有効利用して、図15(c)に示すように、キャップ71a及び接続流路81に残存するインクを廃液タンク68に排出することが可能となる(第1残存インク排出処理)。
次に、制御部5は、第1インク排出処理を実行する(SA6)。つまり、制御部5は、第1待機時間が経過すると、切換モータ67M及びポンプモータ66Mを制御して、切換機構67を第3の連通状態とした状態で、吸引ポンプ66を所定時間駆動する。これにより、図15(d)に示すように、接続流路83内のインク(再分散した固化インクなど)を廃液タンク68に排出される。こうして、接続流路83の詰まりが回復する。
SA1において、第1信号を受信していない場合(SA1:NO)、制御部5は、第2信号(流路詰まりに関する信号)を受信したか否かを判定する(判定処理:SA7)。第2信号を受信した場合(SA7:YES)、制御部5は、第2インク充填処理と、第2減圧処理とを順に実行する第2準備処理を実行する(SA8)。接続流路82の連通孔71b2部分には、時間が経過するに連れてキャップ71b内に残存するインクが集まりやすい。このため、連通孔71b2部分に集まって留まるインクが乾燥して固化することで、接続流路82に詰まりが生じやすい。本実施形態において、連通孔71b2部分が接続流路82において詰まりが生じる部分として述べるが、チューブ71b3内であってもよい。このように接続流路82に詰まりが生じると、排気動作は正常に実行されているものの、ブラックインクを吐出する吐出口41aから増粘インクを排出させる液体パージができない。このため、ブラックインクを吐出するすべての吐出口41aからのインク吐出不良が生じる(第2吐出不良状態)。このように第2信号を受信するときは、接続流路82に詰まりが生じており、ブラックインクを吐出する吐出口41aから増粘インクを排出させる液体パージができない状態であると判定され、第2準備処理が実行される。
制御部5は、SA8において、キャップ昇降モータ74M、切換モータ67M、ポンプモータ66Mを制御し、吸引キャップ71及び排気キャップ72を第1状態とし、切換機構67を第1の連通状態とした状態で、吸引ポンプ66を所定時間駆動する。この後、制御部5は、切換モータ67Mを制御して、切換機構67を第2の連通状態とする。これにより、図16(a)に示すように、減圧された密閉空間K1及び接続流路81内に、吐出口41aからカラーインクが排出される。つまり、キャップ71a及び接続流路81内にインクが充填される(第2インク充填処理)。この第2インク充填処理においても、接続流路81のみならず、キャップ71aにもインクが充填されるように、吸引ポンプ66を制御する。このため、第2インク充填処理で充填されたインク量は、接続流路82の容積を満たす量となる。このため、後述の第2切換処理において、第2インク充填処理で充填されたインクを、固化インクに確実に接触させることができる。
制御部5は、SA3のときと同様に、ポンプモータ66Mを制御して、吸引ポンプ66を所定時間駆動する。これにより、接続流路82内がSA3における接続流路83と同様に減圧される。なお、接続流路82内の負圧は、キャップ71a及び接続流路81に充填されていたインクが、後述の第2切換処理で接続流路82の固化したインクに接触する程度のインク量が流入可能な大きさであればよい。このように第2準備処理においても、第1準備処理と同様に、第2インク充填処理が行われてから第2減圧処理が行われている。このため、第1準備処理と同様に、第2減圧処理によって減圧された接続流路82の圧力が上昇するのを抑制することができる。
次に、制御部5は、第2切換処理を実行する(SA9)。制御部5は、まず、キャップ昇降モータ74M及び切換モータ67Mを制御して、吸引キャップ71及び排気キャップ72を第2状態とし、切換機構67を第6の連通状態とする。これにより、図16(b)に示すように、接続流路82の負圧によってキャップ71a及び接続流路81に充填されていたインクが切換機構67を介して接続流路82に流れる。こうして、接続流路82内に流れてきたインクが、連通孔71b2の固化したインクに接触する。また、第2切換処理において、接続流路81に繋がるキャップ71aを第2状態としてから、切換機構67が第6の連通状態に切り換えられる。このため、接続流路82と接続流路81とが連通したときに、カラーインクを吐出する吐出口41aからインクが排出されるのを防ぐことが可能となる。
次に、制御部5は、第2待機処理及び第2残存インク排出処理を実行する(SA10)。制御部5は、SA9で切換機構67が第6の連通状態とされた時点から固化したインクに十分な流動性が戻るまでの第2待機時間の間、待機する(第2待機処理)。第2待機時間は、上述の第1待機時間と同様の時間であり、インクが連続的に接続流路82内を流れる状態を確保できる時間である。なお、第2待機時間も、予め実験によって求められ、ROM5bに記憶されている。また、制御部5は、第2待機処理が行われているときに、切換モータ67M及びポンプモータ66Mを制御して、切換機構67を第1の連通状態とした状態で、吸引ポンプ66を所定時間駆動する。これにより、第2待機処理が実行されている待ち時間を有効利用して、図16(c)に示すように、キャップ71a及び接続流路81に残存するインクを廃液タンク68に排出することが可能となる(第2残存インク排出処理)。
次に、制御部5は、第2インク排出処理を実行する(SA11)。つまり、制御部5は、第2待機時間が経過すると、切換モータ67M及びポンプモータ66Mを制御して、切換機構67を第2の連通状態とした状態で、吸引ポンプ66を所定時間駆動する。これにより、図16(d)に示すように、接続流路82内のインク(再分散した固化インクなど)を廃液タンク68に排出される。こうして、接続流路82の詰まりが回復する。
この後、制御部5は、ブラックインクパージ処理を実行する(SA12)。つまり、制御部5は、S2で実行される、ブラックインクを排出する第1液体パージ及びブラック用空吸引動作を実行する。なお、同様の処理であるため、その詳細の説明は省略する。
SA7において、第2信号を受信していない(つまり、第3信号(流路詰まりに関する信号)を受信した)場合(SA7:NO)、制御部5は、第3インク充填処理と、第3減圧処理とを順に実行する第3準備処理を実行する(SA13)。接続流路81の連通孔71a2部分には、時間が経過するに連れてキャップ71a内に残存するインクが集まりやすい。このため、連通孔71a2部分に集まって留まるインクが乾燥して固化することで、接続流路81に詰まりが生じやすい。本実施形態において、連通孔71a2部分が接続流路81において詰まりが生じる部分として述べるが、チューブ71a3内であってもよい。このように接続流路81に詰まりが生じると、排気動作は正常に実行されているものの、カラーインクを吐出する吐出口41aから増粘インクを排出させる液体パージができない。このため、カラーインクを吐出するすべての吐出口41aからのインク吐出不良が生じる(第3吐出不良状態)。このように第3信号を受信するときは、接続流路81に詰まりが生じており、カラーインクを吐出する吐出口41aから増粘インクを排出させる液体パージができない状態であると判定され、第3準備処理が実行される。
制御部5は、SA13において、キャップ昇降モータ74M、切換モータ67M、ポンプモータ66Mを制御し、吸引キャップ71及び排気キャップ72を第1状態とし、切換機構67を第2の連通状態とした状態で、吸引ポンプ66を所定時間駆動する。この後、制御部5は、切換モータ67Mを制御して、切換機構67を第1の連通状態とする。これにより、減圧された密閉空間K2及び接続流路82内に、吐出口41aからブラックインクが排出される。つまり、キャップ71b及び接続流路82内にインクが充填される(第3インク充填処理)。この第3インク充填処理においても、接続流路82のみならず、キャップ71bにもインクが充填されるように、吸引ポンプ66を制御する。このため、第3インク充填処理で充填されたインク量は、接続流路81の容積を満たす量となる。このため、後述の第3切換処理において、第3インク充填処理で充填されたインクを、固化インクに確実に接触させることができる。
また、制御部5は、SA3のときと同様に、ポンプモータ66Mを制御して、吸引ポンプ66を所定時間駆動する。これにより、接続流路81内がSA3における接続流路83と同様に減圧される。なお、接続流路81内の負圧は、キャップ71b及び接続流路82に充填されていたインクが、後述の第3切換処理で接続流路81の固化したインクに接触する程度のインク量が流入可能な大きさであればよい。このように第3準備処理においても、第2準備処理と同様に、第3インク充填処理が行われてから第3減圧処理が行われている。このため、第2準備処理と同様に、第3減圧処理によって減圧された接続流路81の圧力が上昇するのを抑制することができる。
次に、制御部5は、第3切換処理を実行する(SA14)。制御部5は、まず、キャップ昇降モータ74M及び切換モータ67Mを制御して、吸引キャップ71及び排気キャップ72を第2状態とし、切換機構67を第6の連通状態とする。これにより、接続流路81の負圧によってキャップ71b及び接続流路82に充填されていたインクが切換機構67を介して接続流路81に流れる。こうして、接続流路81内に流れてきたインクが、連通孔71a2の固化したインクに接触する。また、第3切換処理において、接続流路82に繋がるキャップ71bを第2状態としてから、切換機構67が第6の連通状態に切り換えられる。このため、接続流路81と接続流路82とが連通したときに、ブラックインクを吐出する吐出口41aからインクが排出されるのを防ぐことが可能となる。
次に、制御部5は、第3待機処理及び第3残存インク排出処理を実行する(SA15)。制御部5は、SA14で切換機構67が第6の連通状態とされた時点から固化したインクに十分な流動性が戻るまでの第3待機時間の間、待機する(第3待機処理)。第3待機時間も、上述の第2待機時間と同様の時間であり、インクが連続的に接続流路81内を流れる状態を確保できる時間である。なお、第3待機時間は、予め実験によって求められ、ROM5bに記憶されている。また、制御部5は、第3待機処理が行われているときに、切換モータ67M及びポンプモータ66Mを制御して、切換機構67を第2の連通状態とした状態で、吸引ポンプ66を所定時間駆動する。これにより、第3待機処理が実行されている待ち時間を有効利用して、キャップ71b及び接続流路82に残存するインクを廃液タンク68に排出することが可能となる(第3残存インク排出処理)。
次に、制御部5は、第3インク排出処理を実行する(SA16)。つまり、制御部5は、第3待機時間が経過すると、切換モータ67M及びポンプモータ66Mを制御して、切換機構67を第1の連通状態とした状態で、吸引ポンプ66を所定時間駆動する。これにより、接続流路81内のインク(再分散した固化インクなど)を廃液タンク68に排出される。こうして、接続流路81の詰まりが回復する。
この後、制御部5は、カラーインクパージ処理を実行する(SA17)。つまり、制御部5は、S2で実行される、カラーインクを排出する第1液体パージ及びカラー用空吸引動作を実行する。なお、同様の処理であるため、その詳細の説明は省略する。こうして、接続流路81〜83において固化インクによる詰まりが生じても、詰まりの生じた接続流路81〜83を回復させるとともに、吐出口41aのインク吐出不良も回復させ、詰まり回復処理に係るメンテナンス動作のフローが終了する。
以上に述べたように、本実施形態によるプリンタ部10によると、吸引キャップ71及び排気キャップ72に繋がる3つの接続流路81〜83のいずれかの接続流路が乾燥によって固化したインクによって詰まりが生じても、詰まりが生じていない接続流路に充填されたインクを詰まりが生じた接続流路に流すことが可能となる。このため、詰まりが生じた接続流路の固化したインクを再分散させることができる。したがって、詰まりが生じた接続流路の流路詰まりを解消することができる。
排気キャップ72は、第1状態において、吸引キャップ71と比して外部に対するガスバリア性が低い構成である。このため、3つの接続流路81〜83のうち、排気キャップ72に繋がる接続流路83は吸引キャップ71に繋がる接続流路81,82よりもインクが固化しやすく詰まりが生じやすい構成となる。
ブラックインクに顔料系インクが採用され、カラーインクに染料系インクが採用されているため、キャップ71bには顔料を含むブラックインクが排出され、キャップ71aには染料を含むカラーインクが排出される。顔料系インクは乾燥による固化が染料インクよりもしやすい。これにより、キャップ71bに繋がる接続流路82はキャップ71aに繋がる接続流路81よりもインクが固化しやすく詰まりが生じやすい構成となる。
上述の実施形態においては、S8の排気処理の後に実行されるS9のテストパターン記録処理で記録されたテストパターンから、操作者によって入力される第1〜第3信号によって接続流路81〜83のいずれが詰まっているかを判定していたが、接続流路81〜83にインクが流れるか否かを検知する光センサ211〜213を設けて、光センサ211〜213からの信号に基づいて接続流路81〜83のいずれが詰まっているかを判定してもよい。
このような変形例として、図17に示すように、チューブ71a3,71b3,72cの途中部位に透明な筒体201〜203を設け、筒体201〜203をインクが通過するか否かを検知する光センサ211〜213を設けてもよい。光センサ211〜213は、筒体201〜203を挟んで配置された発光部と受光部とをそれぞれ有する。光センサ211〜213は、排気動作及び液体パージ動作が実行されるときに、電力が供給される。接続流路81〜83において、インクが通過するまでの間は、発光部からの光を受光部が受光する。このとき、光センサ211〜213からは、インクが通過しない非通過信号が制御部5に出力され続ける。一方、筒体201〜203にインクが通過すると、発光部からの光がインクによって遮断され、光センサ211〜213からインクが通過したことを示す通過信号が制御部5に出力される。これにより、制御部5は、接続流路81〜83において、インクが流れているか否かを判定することができる。換言すると、制御部5は、光センサ211〜213からの信号(流路詰まりに関する情報)の入力により、接続流路81〜83のいずれが詰まっているかを判定することができる。以下、詰まり回復処理に係るメンテナンス動作について、図18を参照しつつ説明する。
制御部5は、先ず、上述のS1,S2と同様なF1,F2を実行する。次に、制御部5は、F2において実行される、排気動作、カラーインクの第1液体パージ及びブラックインクの第1液体パージのいずれかにおいて、光センサ211〜213から非通過信号しか受信しなかったか否かを判定する(F3)。排気動作、カラーインクの第1液体パージ及びブラックインクの第1液体パージのいずれにおいても、通過信号を受信した場合(F3:NO)、制御部5は、排気処理が正常に実行されたと判定して、フローを終了する。
排気動作、カラーインクの第1液体パージ及びブラックインクの第1液体パージのいずれかにおいて、非通過信号だけしか受信しなかった場合(F3:YES)、制御部5は、接続流路83に詰まりが生じているか否かを判定する(判定処理:F4)。このときの判定は、排気動作において、制御部5が光センサ213からの通過信号を受信したか否かで判定される。F4において、通過信号を受信しておらず接続流路83に詰まりが生じている場合(F4:YES)、制御部5は、上述のSA2〜SA6と同様のF5〜F9を実行する。
F4において、通過信号を受信しており接続流路83に詰まりが生じていない場合(F4:NO)、制御部5は、接続流路81,82に詰まりが生じているか否かを判定する(判定処理:F10)。このときの判定は、カラーインクの第1液体パージ及びブラックインクの第1液体パージにおいて、制御部5が光センサ213からの通過信号を受信したか否かで判定される。
F10において、いずれかの第1液体パージにおいて通過信号を受信し、接続流路81,82のいずれかに詰まりが生じていない場合(F10:NO)、制御部5は、接続流路82に詰まりが生じているか否かを判定する(判定処理:F11)。このときの判定は、ブラックインクの第1液体パージにおいて、制御部5が光センサ213からの通過信号を受信したか否かで判定される。F11において、通過信号を受信しておらず接続流路82に詰まりが生じている場合(F11:YES)、制御部5は、上述のSA8〜SA12と同様のF12〜F16を実行する。
F11において、通過信号を受信しており接続流路82に詰まりが生じていない場合(F11:NO)、制御部5は、接続流路81に詰まりが生じていると判定し、上述のSA13〜SA17と同様のF17〜F21を実行する。
F10において、いずれの第1液体パージにおいても通過信号を受信しておらず接続流路81,82に詰まりが生じている場合(F10:YES)、制御部5は、インク吐出処理を実行する(F22)。つまり、制御部5は、インクジェットヘッド41のドライバIC138を制御して、すべての吐出口41aからインクを吸引キャップ71に向かって吐出する。これにより、各キャップ71a,71b内に吐出されたインクが、接続流路81,82の固化インクと接触する。
次に、制御部5は、第4待機処理を実行する(F23)。制御部5は、F22にインクが吐出されてから固化したインクに十分な流動性が戻るまでの第4待機時間の間、待機する(第4待機処理)。なお、第4待機時間も、予め実験によって求められ、ROM5bに記憶されている。第4待機時間は、上述の第2待機時間及び第3時間のうちの長い方の時間と同様の時間である。
次に、制御部5は、第4インク排出処理(F24)を実行する。つまり、制御部5は、第4待機時間が経過すると、F2で実行される、カラー用空吸引動作と、ブラック用空吸引動作とを順に実行する。これにより、接続流路81,82内の再分散したインクや吸引キャップ71内のインクが廃液タンク68に排出される。こうして、接続流路81,82の詰まりが回復する。
次に、制御部5は、上述のS7と同様なF25を実行する。こうして、接続流路81〜83において固化インクによる詰まりが生じても、詰まりの生じた接続流路81〜83を回復させるとともに、吐出口41aの回復動作(第1液体パージや第2液体パージ)も実行させ、詰まり回復処理に係るメンテナンス動作のフローが終了する。
以上に述べたように、本実施形態によるプリンタ部10によると、3つの接続流路81〜83のいずれかの接続流路が乾燥によって固化したインクによって詰まりが生じても、詰まりが生じていない接続流路に充填されたインクを詰まりが生じた接続流路に流すことが可能となる。このため、詰まりが生じた接続流路の固化したインクを再分散させることができる。したがって、上述の実施形態と同様に、詰まりが生じた接続流路の流路詰まりを解消することができる。
また、接続流路81,82が詰まっているときは、吐出口41aから接続流路81,82に繋がる吸引キャップ71にインクを吐出することで、接続流路81,82の流路詰まりを解消することができる。接続流路83が詰まっているときは、接続流路81又は82に充填されたインクを接続流路83に流すことで、接続流路83の詰まりを解消することができる。
上述の変形例では、接続流路81(又は接続流路82)だけが詰まっているときに、詰まっていない接続流路82(又は接続流路81)に充填されたインクを詰まっている接続流路81(又は接続流路82)に流しているが、接続流路81,82が詰まったときは、詰まった接続流路81,82のキャップ71a,71bに吐出口41aからインクを吐出させて、詰まりを解消させてもよい。
上述の実施形態及び変形例の開閉部材78a〜78dは、排気キャップ72に残存するインクが開閉部材78a〜78d近傍で固化し、動作不可能な状態となることがある。このような開閉部材78a〜78dの動作不良を回復させる構成としては、制御部5に、弁駆動モータ79Mを駆動させたときの電流値(開閉部材78の移動負荷を示す値)を出力するモータ負荷検出回路を設ける。そして、制御部5は、モータ負荷検出回路から出力される電流値が所定値よりも大きいか否かを判定する。電流値が所定値よりも大きい場合、モータの負荷が大きく過電流が生じており、開閉部材78a〜78dに動作不良が生じている。こうして、開閉部材78a〜78dに動作不良が生じていることが判定されると、制御部5が、上述のSA3と同様の処理を実行する。そして、第2状態のままで、切換機構67を第5の連通状態とする。これにより、キャップ71a及び接続流路81に充填されたインクが、排気キャップ72内に流れ込んで開閉部材78a〜78d近傍で固化したインクに接触する。こうして、固化インクを再分散させることが可能となり、開閉部材78a〜78dの動作不良を解消することが可能となる。
以上、本発明の好適な実施の形態について説明したが、本発明は上述の実施の形態に限られるものではなく、特許請求の範囲に記載した限りにおいて様々な変更が可能なものである。例えば、上述の実施形態においては、吸引キャップ71が2つの凹部71a1,71b1を有しているが、1つの凹部だけを有していてもよい。この場合、接続流路81,82を1つだけ設ければよい。これにおいても、接続流路83が詰まった場合、吸引キャップに繋がる接続流路にインクを充填し、接続流路83を減圧した後、吸引キャップに繋がる接続流路と接続流路83とを連通させてインクを接続流路83の固化インクに接触させればよい。これにおいても上述と同様の効果を得ることができる。また、このとき、吸引キャップに繋がる接続流路が詰まった場合は、吐出口41aからインクを吐出させることで当該接続流路の詰まりを解消することができる。また、このとき、吸引キャップに繋がる接続流路及び接続流路83の両方が詰まった場合は、まず、吐出口41aからインクを吐出させることで吸引キャップに繋がる接続流路の詰まりを解消する。この後、吸引キャップに繋がる接続流路にインクを充填し、接続流路83を減圧した後、吸引キャップに繋がる接続流路と接続流路83とを連通させてインクを接続流路83の固化インクに接触させればよい。こうすることで、両方の接続流路の詰まりを解消することができる。
上述の各準備処理において、減圧処理の後にインク充填処理を実行してもよい。上級の各残存インク排出処理は、待機処理の後に行ってもよい。また、上述の各切換処理は、吸引キャップ71及び排気キャップ72を第2状態のままで行ってもよい。
上述の実施形態及び変形例において、採用されるインクが、すべて顔料系インクであってもよいし、染料系インクであってもよい。また、ブラックインクに染料系インクを採用し、カラーインクに顔料系インクを採用してもよい。また、排気キャップ72が、第1状態において、吸引キャップ71よりもガスバリア性が高くなるように構成されていてもよい。
上述の実施形態では、制御部5が、時計失いの判定のみで、排気処理の実行有無を決めていたが、これには限られない。例えば、制御部5は、時計失いの判定結果と、時計失い後から初めて外部電源との接続がONにされて所定回数の記録指令が実行されるまでに操作者から排気処理の実行指令がされたか否かの結果との両方に基づいて、排気処理の実行有無を決めてもよい。例えば、時計失いが2日間程度の場合、吐出不良が生じておらず排気処理を行う必要がない場合もある。その為、時計失い後から初めて外部電源との接続がONにされた後、操作者が用紙に記録された画像の結果を見て、排気処理が必要と判断して制御部5に排気処理の実行指令をした場合に、制御部5が排気処理を実行する。これにより、排気処理が不要に実行されず、インクの無駄な消費を抑えることができる。
上述の実施形態においては、3つのチューブ71a3,71b3,72cはいずれも同じ容積であるが、互いに異なっていてもよい。また、接続流路の容積と当該接続流路に繋がったキャップの内容積との合計容積は、いずれの接続流路の容積よりも大きくなるように構成されていなくてもよい。
また、上述の実施形態では、操作ボタン91〜95を押すことで第1〜第5信号が制御部5に入力されているが、PCなどの外部装置から第1〜第4吐出不良状態及び正常状態に対応する信号を制御部5に入力してもよい。また、上述の実施形態のS8では、排気処理を実行していたが、例えば、操作者に複合機の電源がOFFにしたOFF期間を複数の期間から選択させ、OFF期間が長くなるほど、排気動作や液体パージを強力なものにしてもよい。
また、本発明は、ライン式・シリアル式のいずれにも適用可能である。