JP6503220B2 - 4−ヒドロキシ安息香酸長鎖エステルの精製方法 - Google Patents

4−ヒドロキシ安息香酸長鎖エステルの精製方法 Download PDF

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本発明は、4−ヒドロキシ安息香酸長鎖エステルの精製方法に関する。
4−ヒドロキシ安息香酸長鎖エステルは、水酸基と疎水基を有する構造を有し、その構造的特徴から、可塑剤、相溶化剤、界面活性剤などの用途が提案されている。
一般的に化合物のエステル化は、原料カルボン酸とアルコールとを、硫酸等のプロトン酸触媒の存在下で反応させ、得られた反応液から触媒と未反応のカルボン酸を除去し、必要により晶析や蒸留などの精製を行うことによって製造する方法が知られている(特許文献1)。
4−ヒドロキシ安息香酸のエステル化についても、同様に、触媒存在下でアルコールと反応させることにより4−ヒドロキシ安息香酸エステルを合成することが可能である。しかし、4−ヒドロキシ安息香酸を炭素原子数16以上の長鎖脂肪族アルコールと反応させて4−ヒドロキシ安息香酸長鎖エステルを製造する場合、原料である4−ヒドロキシ安息香酸や触媒等が残存するため、高純度の目的物を得るためには精製操作が必要であった。
精製は、通常目的物を含む粗結晶を溶融した後、あるいは非水溶性溶媒で希釈した後、水またはアルカリ水で抽出するのが一般的である。しかしながら、未反応のカルボン酸および触媒等の不純物を含む4−ヒドロキシ安息香酸長鎖エステルの粗組成物について、水やアルカリ水を加えて抽出しようとしても、分液性が極めて悪いため抽出が困難である。また、抽出した場合であっても収量や純度が低く、高純度の目的物が得られないという問題があった。
特開2014−108928号公報
本発明の目的は、4−ヒドロキシ安息香酸長鎖エステルを含む粗組成物(以下、粗組成物ともいう)から触媒や反応原料などの残存物を容易に除去することができ、高純度の4−ヒドロキシ安息香酸長鎖エステルが得られる精製方法を提供することにある。
本発明者らは、4−ヒドロキシ安息香酸長鎖エステルの精製方法について鋭意検討した結果、4−ヒドロキシ安息香酸長鎖エステルを含む粗組成物に酸水溶液を添加して有機層と水層に分離し、次いで有機層を抽出することによって、未反応のカルボン酸や触媒などを除去することができることを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち本発明は、式(1)で表される4−ヒドロキシ安息香酸長鎖エステルを含む粗組成物に酸水溶液を添加して有機層と水層に分離し、次いで有機層を抽出する工程を含む、4−ヒドロキシ安息香酸長鎖エステルの精製方法を提供する。
Figure 0006503220
(式中、nは15〜23の整数を示す)
本発明によれば、粗組成物に酸水溶液を添加して有機層と水層とに分離し、有機層を抽出することにより、未反応のカルボン酸や触媒などを効率よく除去することができるため、高純度の4−ヒドロキシ安息香酸長鎖エステルを得ることができる。
本発明の精製方法では、式(1)で表される4−ヒドロキシ安息香酸長鎖エステルを含む粗組成物に酸水溶液を添加して有機層と水層に分離した後、有機層を抽出する。
本発明において、式(1)で表される4−ヒドロキシ安息香酸長鎖エステルを含む粗組成物とは、目的物である式(1)で表される4−ヒドロキシ安息香酸長鎖エステル以外に、反応原料や触媒および反応副生物等の不純物を含む組成物を意味する。不純物の含有量は反応方法によっても異なるが、粗組成物中において通常1〜20重量%、好ましくは3〜10重量%である。
目的物である式(1)で表される4−ヒドロキシ安息香酸長鎖エステルとしては、4−ヒドロキシ安息香酸ヘキサデシル、4−ヒドロキシ安息香酸ヘプタデシル、4−ヒドロキシ安息香酸オクタデシル、4−ヒドロキシ安息香酸ノナデシル、4−ヒドロキシ安息香酸イコシル、4−ヒドロキシ安息香酸ヘンイコシル、4−ヒドロキシ安息香酸ドコシル、4−ヒドロキシ安息香酸トリコシルおよび4−ヒドロキシ安息香酸テトラコシルから選択される1種以上が挙げられる。これらの中でも、4−ヒドロキシ安息香酸ヘキサデシルが好ましい。
粗組成物中に含まれる不純物の例としては、原料である4−ヒドロキシ安息香酸や触媒などの残存物等が挙げられる。また、不純物には、長鎖アルコールの2量化エーテルや、長鎖アルコールとプロトン酸触媒との反応による硫酸エステル等の反応副生物も包含され得る。
粗組成物に酸水溶液を添加して有機層と水層に分離した後、有機層を抽出する工程(以下、抽出工程という)は、具体的には、粗組成物に酸水溶液を添加した後、攪拌下で加熱して粗組成物中の有機物を溶融し、攪拌を継続することによって触媒を失活させる。その後、反応系を静置して有機層と水層に分離し、有機層を回収することにより行われる。
抽出工程において酸水溶液に用いる溶媒は、水と低級アルコールとの混合物が好ましい。低級アルコールとしては、メタノール、エタノール、1−プロパノールおよび2−プロパノールからなる群から選択される1種以上が挙げられ、これらの中でも、収率および経済性に優れる点でメタノールが好ましく使用される。
水と低級アルコールの重量比(水/低級アルコール)は、用いるアルコールの種類によって変動するため特に限定されないが、5/5〜2/8、好ましくは4/6〜2/8であるのが良い。
水と低級アルコールの重量比が5/5を上回る場合、粗組成物と酸水溶液が乳化し、触媒が十分に除去できない傾向があり、水と低級アルコールの重量比が2/8を下回る場合、反応系全体が均一な溶液となるため、やはり触媒を十分に除去できない傾向がある。
酸水溶液に用いる酸は、触媒を不活性化させるものであり、具体的には、塩酸、硫酸、硝酸、リン酸、酢酸、カルボン酸およびスルホン酸からなる群から選択される1種以上が挙げられる。これらの中でも、得られる4−ヒドロキシ安息香酸長鎖エステルの色調が改善される点でリン酸が好ましい。
酸水溶液に用いる溶媒と酸の量は、溶媒に対して酸が0.1〜10重量%、好ましくは0.5〜8重量%、より好ましくは1〜5重量%であるのが良い。
酸の量が溶媒に対して0.1重量%を下回る場合、触媒を十分に除去できない傾向があり、10重量%を超える場合、酸が不純物として残存する傾向がある。
酸水溶液の量は、粗組成物の重量に対し、1倍重量以上、好ましくは2倍重量以上、より好ましくは4倍重量以上とするのが良い。酸水溶液の量が1倍重量を下回る場合、有機層と水層の分液性が悪くなり、触媒を十分に除去できない傾向がある。
抽出工程は、反応系内の有機物を溶融させるために、50℃以上、好ましくは60℃以上に加熱し、その温度下で撹拌を継続して触媒を失活させた後、有機層と水層とが十分に分離するまで反応系を静置し、分離した有機層を回収する。
次いで抽出工程において回収された有機層は、晶析工程において晶析させるのが好ましい。晶析工程では、有機層に有機溶媒を添加し、加熱して溶解させた後、冷却することによって目的物を晶析させることができる。析出した結晶を濾過等により固液分離し、洗浄、乾燥することによって、高純度の4−ヒドロキシ安息香酸長鎖エステルを得ることができる。
晶析工程で使用される有機溶媒としては、メタノール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール、エチレングリコール等のアルコール類、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等のケトン類、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸プロピル、酢酸ブチル等のエステル類、N,N’−ジメチルホルムアミド、N−メチルピロリドン、ピリジン等のアミド系化合物、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、ベンゼン、トルエン、キシレン、シクロヘキサン等の炭化水素系化合物、クロロホルム、ジクロロメタン等の有機ハロゲン、ジイソプロピルエーテル、テトラヒドロフラン、1,4−ジオキサン等のエーテル類が挙げられる。これらの中でも、入手容易性および乾燥効率などの工業的生産性に優れる点で、メタノール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸プロピル、ヘキサン、ヘプタン、トルエンおよびキシレンが好ましく、収率に優れる点から、メタノールが特に好ましい。
晶析工程で使用される有機溶媒の量は、用いる溶媒の種類によって変動するため特に限定されないが、粗組成物の重量に対し1〜20倍重量、好ましくは1.5〜10倍重量、より好ましくは2.5〜5倍重量が良い。
有機溶媒の量が1倍重量を下回る場合、晶析時に撹拌不良が生じる傾向があり、20倍重量を超える場合、収率が低下する傾向があるとともに、経済的にも不利となる。
晶析工程は、有機溶媒を添加した後、加熱して有機層中の有機物を完全に溶解させた後、撹拌を継続しながら、ゆっくりと冷却して晶析させることにより行われる。
晶析の際に過飽和現象が生じた場合は、種結晶を適宜添加して結晶化を促進させてもよい。
晶析工程によって析出した結晶は濾過等の常套手段により固液分離し、目的物である4−ヒドロキシ安息香酸長鎖エステルを回収する。固液分離に際し、適宜有機溶媒を注いで結晶を洗浄するのが好ましい。固液分離の際に用いる有機溶媒としては、晶析工程で使用される有機溶媒と同様のものが使用される。
固液分離によって回収された結晶は、減圧下、50℃以下の温度下で結晶状態のまま乾燥するか、あるいは50℃以上に加熱して結晶を溶融させた後、溶媒を留去することによって、高純度の4−ヒドロキシ安息香酸長鎖エステルを得ることができる。
本発明により精製される粗組成物としては、特に限定されない。例えば金属触媒の存在下、式(2)で表される4−ヒドロキシ安息香酸短鎖エステルと、式(3)で表される炭素原子数16〜24の脂肪族アルコールとをエステル交換反応させることにより得られたものであってよい。
Figure 0006503220
Figure 0006503220
(式中、mは1〜11の整数を示し、nは15〜23の整数を示す。)
また、例えばプロトン酸触媒等の触媒の存在下、4−ヒドロキシ安息香酸と式(3)で表される炭素原子数16〜24の脂肪族アルコールとの反応によって得られたものであってもよいし、市販の低純度の4−ヒドロキシ安息香酸長鎖エステルを含む粗組成物を用いてもよい。
プロトン酸触媒の存在下、4−ヒドロキシ安息香酸と式(3)で表される炭素原子数16〜24の脂肪族アルコールとの反応によって粗組成物を得た場合には、不純物として、上述の長鎖アルコールの2量化エーテルや、長鎖アルコールとプロトン酸触媒との反応による硫酸エステル等の反応副生物が含まれることとなる。これらの反応副生物は、目的物である4−ヒドロキシ安息香酸長鎖エステルと類似した物性であるため、晶析や蒸留によって除去することができない。このため、これらの反応副生物を含む粗組成物からは、高純度の4−ヒドロキシ安息香酸長鎖エステルを得ることが困難となる場合がある。このような観点から、本発明では、金属触媒の存在下、式(2)で表される4−ヒドロキシ安息香酸短鎖エステルと、式(3)で表される炭素原子数16〜24の脂肪族アルコールとを反応させる方法により得られた式(1)で表される4−ヒドロキシ安息香酸長鎖エステルを含む粗組成物が好ましい。
式(2)で表される4−ヒドロキシ安息香酸短鎖エステルは、4−ヒドロキシ安息香酸と、直鎖または分岐を有してもよい炭素原子数1〜11のアルコールとのエステル体である。
式(2)で表される4−ヒドロキシ安息香酸短鎖エステルの具体例としては、4−ヒドロキシ安息香酸メチル、4−ヒドロキシ安息香酸エチル、4−ヒドロキシ安息香酸プロピル、4−ヒドロキシ安息香酸イソプロピル、4−ヒドロキシ安息香酸ブチル、4−ヒドロキシ安息香酸イソブチル、4−ヒドロキシ安息香酸ペンチル、4−ヒドロキシ安息香酸ヘキシル、4−ヒドロキシ安息香酸へプチル、4−ヒドロキシ安息香酸オクチル、4−ヒドロキシ安息香酸ノナチル、4−ヒドロキシ安息香酸デシル、4−ヒドロキシ安息香酸ウンデシルおよび4−ヒドロキシ安息香酸2−エチルヘキシル等が挙げられる。これらの中でも、入手容易性および反応性に優れる点で、4−ヒドロキシ安息香酸メチル、4−ヒドロキシ安息香酸エチル、4−ヒドロキシ安息香酸プロピル、4−ヒドロキシ安息香酸イソプロピル、4−ヒドロキシ安息香酸ブチルおよび4−ヒドロキシ安息香酸イソブチルが好ましく、特に反応性に優れることから、4−ヒドロキシ安息香酸メチルがより好ましい。
式(2)で表される4−ヒドロキシ安息香酸短鎖エステルは、市販のものであってよく、4−ヒドロキシ安息香酸と炭素数1〜11の脂肪族アルコールとを、プロトン酸触媒の存在下で反応させる一般的なエステル化反応によって得られたものであってよい。
式(3)で表される炭素原子数16〜24の脂肪族アルコールとしては、ヘキサデカノール、ヘプタデカノール、オクタデカノール、ノナデカノール、イコサノール、ヘンイコサノール、ドコサノール、トリコサノールおよびテトラコサノールからなる群から選択される1種以上が挙げられる。
式(3)で表される脂肪族アルコールは、市販のものを用いてもよく、また当業者に知られた方法で製造したものを用いてもよい。
式(3)で表される脂肪族アルコールは、4−ヒドロキシ安息香酸短鎖エステル1モルに対し、0.1〜3モル、好ましくは0.5〜1.5モル、より好ましくは0.8〜1.2モル、特に好ましくは0.9〜0.98モル反応させるのがよい。
4−ヒドロキシ安息香酸短鎖エステル1モルに対し、脂肪族アルコールの量が0.1モルを下回る場合、副生反応を生じ易くなる傾向があるとともに、4−ヒドロキシ安息香酸短鎖エステルが過剰となり原料の無駄となる。脂肪族アルコールの量が3モルを上回る場合、過剰量の脂肪族アルコールが残存し、純度が低下する傾向がある。
上記金属触媒としては、チタン系触媒、スズ系触媒、アンチモン系触媒およびジルコニウム系触媒からなる群から選択される1種以上が挙げられるが、入手容易性および反応性に優れる点で、チタン系触媒が好適に使用される。
チタン系触媒の具体例としては、テトラメトキシチタン、テトラエトキシチタン、テトラn−プロポキシチタン、テトライソプロポキシチタン、テトラn−ブトキシチタン、テトライソブトキシチタン、テトラ2−エチルヘキソキシチタンおよびテトラオクタデソキシチタンが挙げられる。反応性および入手容易性に優れる点で、テトライソプロポキシチタンが好ましい。
スズ系触媒の具体例としては、モノブチルスズオキシド、ジブチルスズオキシド、ジブチルスズラウレート、ジオクチルスズラウレートおよびジブチルジイソプロポキシスズが挙げられる。反応性および入手容易性に優れる点で、モノブチルスズオキシドおよびジブチルスズオキシドが好ましい。
アンチモン系触媒の具体例としては、酢酸アンチモン、三酸化アンチモン、五酸化二アンチモン、トリメトキシアンチモン、トリエトキシアンチモン、トリn−プロポキシアンチモンおよびトリフェニルアンチモン等が挙げられる。反応性および入手容易性に優れる点で、酢酸アンチモンが好ましい。
ジルコニウム系触媒の具体例としては、テトラメトキシジルコニウム、テトラエトキシジルコニウム、テトラn−プロポキシジルコニウム、テトライソプロポキシジルコニウム、テトラn−ブトキシジルコニウム、テトライソブトキシジルコニウム、テトラ2−エチルヘキソキシジルコニウム、テトラオクタデソキシジルコニウムおよび酢酸酸化ジルコニウムが挙げられる。反応性および入手容易性に優れる点で、テトラn−ブトキシジルコニウムが好ましい。
これらの触媒は、単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
本発明に使用される金属触媒の量は、4−ヒドロキシ安息香酸短鎖エステル100重量部に対し、0.1〜10重量部、好ましくは0.5〜7重量部、より好ましくは1〜5重量部であるのが良い。
4−ヒドロキシ安息香酸短鎖エステル100重量部に対し、金属触媒の量が0.1重量部を下回る場合、反応が十分進行しない傾向がある。金属触媒の量が10重量部を上回る場合、脂肪族アルコールの2量化エーテル体等の副生物が生成する傾向があるとともに、経済的にも不利となる。
4−ヒドロキシ安息香酸短鎖エステルと、炭素原子数16〜24の脂肪族アルコールとの反応は、120〜200℃の温度下で行うのが好ましく、150〜180℃の温度下で行うのがより好ましい。反応温度が120℃を下回る場合、反応が十分に進行しない傾向があり、反応温度が200℃を上回る場合、副生物が生成する傾向があるとともに、エネルギーの損失となる。
反応時間は、反応温度等の条件によって変動するため特に限定されないが、1〜20時間、好ましくは3〜15時間、より好ましくは5〜10時間の間で適宜選択される。
本発明において、4−ヒドロキシ安息香酸短鎖エステルと、炭素原子数16〜24の脂肪族アルコールとの反応は、窒素気流下またはバブリング下、もしくは減圧条件下で行うのが好ましい。このような条件下で反応させることによって、酸素や水分による反応阻害や触媒失活を回避し、反応から副生される短鎖アルコールを容易に除去し、反応を円滑に進行させることが可能となる。
以下、実施例により本発明を詳細に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
[転化率および残存率]
脂肪族アルコールの仕込量に対する各成分の生成量のモル比を転化率とした。また、各出発物質の仕込量に対する残存量のモル比を残存率とした。
各成分の生成量および各出発物質の残存量は、以下の条件にて高速液体クロマトグラフィー(HLPC)およびガスクロマトグラフィー(GC)による定量分析により求めた。
[高速液体クロマトグラフィー(HLPC)]
装置: Waters アライアンス 2487/2996
カラム型番: L−Column
流量: 1.0mL/分
溶媒比: HO(pH2.3)/CHOH=58/42(30分)→5分→10/90(55分)、グラジエント分析
波長: 229nm/254nm
カラム温度: 40℃
[ガスクロマトグラフィー(GC)]
装置: 株式会社島津製作所製GC−2014/GC−14A
カラム型番: G−100
注入量: 1.0μL
オーブン温度: 310℃
キャリアガス: ヘリウム
検出器: FID
[粗組成物1]
撹拌機、温度センサーおよびディーンスターク装置を備えた1Lの4つ口フラスコに、ヘキサデカノール(CeOH)179gを加え、窒素気流下、70℃まで昇温し溶融させた。次いで、4−ヒドロキシ安息香酸メチル(MOB)125g、および触媒としてテトライソプロポキシチタン(TIPT)3.76gを加え、1時間かけて160℃まで昇温し、同温度で6時間反応させて粗組成物1を得た。
粗組成物1を高速液体クロマトグラフィー(HPLC)およびガスクロマトグラフィー(GC)にて定量分析を行ったところ、仕込んだCeOHからの転化率は、4−ヒドロキシ安息香酸ヘキサデシル(CEPB)96.2mol%(91.5重量%)であり、MOB8.2mol%(3.5重量%)およびCeOH2.6mol%(1.6重量%)が残存した。また、エーテル体であるジセチルエーテル(CeO)および硫酸エステルであるp−トルエンスルホン酸ヘキサデシル(PTS−Ce)の生成は確認されなかった。
[粗組成物2]
撹拌機、温度センサーおよびディーンスターク装置を備えた1Lの4つ口フラスコに、テトラコサノール(TcOH)263gを加え、窒素気流下、70℃まで昇温し溶融させた。次いで、4−ヒドロキシ安息香酸メチル(MOB)125g、および触媒としてテトライソプロポキシチタン(TIPT)3.76gを加え、1時間かけて160℃まで昇温し、同温度で6時間反応させた。
粗組成物2を高速液体クロマトグラフィー(HPLC)およびガスクロマトグラフィー(GC)にて定量分析を行ったところ、仕込んだTcOHからの転化率は、4−ヒドロキシ安息香酸テトラコシル(TCPB)94.8mol%(89.1重量%)であり、MOB9.5mol%(3.9重量%)およびTcOH3.8mol%(2.5重量%)が残存した。また、エーテル体であるジテトラコシルエーテル(TcO)および硫酸エステルであるp−トルエンスルホン酸テトラコシル(PTS−Tc)の生成は確認されなかった。
実施例1
撹拌機、温度センサーおよび冷却管を備え、底部にコック付きの排出口を設けた1Lの底抜き4つ口フラスコに、水372g、メタノール875gおよび85重量%リン酸15gの混合溶液を仕込んだ。次いで、273gの粗組成物1を110℃まで冷却した後、混合溶液に加えた。溶液を60℃まで昇温して溶融させた後、同温度で1時間撹拌し、撹拌を停止して同温度で1時間静置することにより有機層と水層に分離し、下層の有機層を底部の排出口から回収した。
回収した有機層にメタノール688gを加え、再度60℃まで昇温して溶解させた後、15℃まで冷却して晶析させた。晶析で得られた固形物を濾別によって取り出し、メタノール230gで洗浄した後、45℃、10mmHgの条件で乾燥させて、結晶236gを得た。
得られた結晶を、HPLCおよびGCにて定量分析を行ったところ、純度99.4重量%であり、CeOH0.2重量%、CE(PB)0.8重量%、チタン含有量1.2ppmであった。また、エーテル体であるジセチルエーテル(CeO)および硫酸エステルであるp−トルエンスルホン酸ヘキサデシルは検出されなかった。
比較例1
撹拌機、温度センサーおよび冷却管を備え、底部にコック付きの排出口を設けた2Lの底抜き4つ口フラスコに、水450g、メタノール1050gおよび48重量%水酸化ナトリウム4.5gの混合溶液を仕込んだ。次いで、386gの粗組成物1を110℃まで冷却した後、混合溶液に加えた。溶液を60℃まで昇温して溶解させた後、同温度で1時間撹拌し、撹拌を停止して同温度で1時間静置することにより有機層と水層に分離した。
下層の有機層を底部の排出口より回収し、回収した有機層にメタノール825g加え、再度60℃まで昇温して溶解させた後、15℃まで冷却して晶析させた。晶析で得られた固形物を濾別によって取り出し、メタノール300gで洗浄した後、45℃、10mmHgの条件で乾燥させて、結晶352gを得た。
得られた結晶を、HPLCおよびGCにて定量分析を行ったところ、純度97.5重量%であり、CeOH0.2重量%、CE(PB)1.6重量%、チタン含有量7300ppmであった。また、エーテル体であるジセチルエーテル(CeO)および硫酸エステルであるp−トルエンスルホン酸ヘキサデシルは検出されなかった。
実施例2および3
抽出に用いた水とメタノールの重量比を、表1に示す比率としたこと以外は、実施例1と同様の操作を行った。分液性を確認し、分液処理出来たものについてはCEPBを得た。結果を表1に示す。
Figure 0006503220
MOB:4−ヒドロキシ安息香酸メチル
CeOH:へキサデカノール
CEPB:4−ヒドロキシ安息香酸ヘキサデシル
CE(PB):4−ヒドロキシ安息香酸4−(ヘキサデシルオキシカルボニル)フェニルエステル
CeO:ジセチルエーテル
POB:4−ヒドロキシ安息香酸
Ti:チタン
実施例4〜7
抽出に用いた酸を、表2に示す酸に変更したこと以外は、実施例1と同様の操作を行った。結果を表2に示す。
Figure 0006503220
実施例8〜10
抽出に用いたリン酸を表3に示す量で用いたこと以外は、実施例1と同様の操作を行った。結果を表3に示す。
Figure 0006503220
実施例11
撹拌機、温度センサーおよび冷却管を備え、底部にコック付きの排出口を設けた1Lの底抜き4つ口フラスコに、水372g、メタノール875gおよび85重量%リン酸15gの混合溶液を仕込んだ。次いで、395gの粗組成物2を110℃まで冷却した後、混合溶液に加えた。溶液を60℃まで昇温して溶融させた後、同温度で1時間撹拌し、撹拌を停止して同温度で1時間静置することにより有機層と水層に分離し、下層の有機層を底部の排出口から回収した。
回収した有機層にメタノール688g加え、再度60℃まで昇温して溶解させた後、15℃まで冷却して晶析させた。晶析で得られた固形物を濾別によって取り出し、メタノール230gで洗浄した後、45℃、10mmHgの条件で乾燥させて、結晶349gを得た。
得られた結晶を、HPLCおよびGCにて定量分析を行ったところ、純度98.0重量%、TcOH0.2重量%、Tc(PB)1.5重量%、チタン含有量1.8ppmであった。また、エーテル体であるジテトラコシルエーテル(TcO)および硫酸エステルであるp−トルエンスルホン酸テトラコシル(PTS−Ce)の生成は確認されなかった。
比較例2
撹拌機、温度センサーおよび冷却管を備え、底部にコック付きの排出口を設けた2Lの底抜き4つ口フラスコに、水450g、メタノール1050gおよび48重量%水酸化ナトリウム4.5gの混合溶液を仕込んだ。次いで、474gの粗組成物2を110℃まで冷却した後、混合溶液に加えた。溶液を60℃まで昇温して溶融させた後、同温度で1時間撹拌し、撹拌を停止して同温度で1時間静置することにより有機層と水層に分離した。
下層の有機層を底部の排出口から回収し、回収した有機層にメタノール825g加え、再度60℃まで昇温して溶解させた後、15℃まで冷却して晶析させた。晶析で得られた固形物を濾別によって取り出し、メタノール300gで洗浄した後、45℃、10mmHgの条件で乾燥させて、結晶403gを得た。
得られた結晶を、HPLCおよびGCにて定量分析を行ったところ、純度97.1重量%、TcOH0.3重量%、Tc(PB)1.6重量%、チタン含有量7800ppmであった。また、エーテル体であるジテトラコシルエーテル(TcO)および硫酸エステルであるp−トルエンスルホン酸テトラコシル(PTS−Ce)の生成は確認されなかった。
このように、本発明によれば、4−ヒドロキシ安息香酸長鎖エステルを含む粗組成物に酸水溶液を添加して有機層と水層に分離し、次いで有機層を抽出することにより、高純度の4−ヒドロキシ安息香酸長鎖エステルが得ることができる。
本発明の好ましい態様は以下を包含する。
〔1〕式(1)で表される4−ヒドロキシ安息香酸長鎖エステルを含む粗組成物に酸水溶液を添加して有機層と水層に分離し、次いで有機層を抽出する工程を含む、4−ヒドロキシ安息香酸長鎖エステルの精製方法。
Figure 0006503220
(式中、nは15〜23の整数を示す。)
〔2〕前記粗組成物は、金属触媒の存在下、式(2)で表される4−ヒドロキシ安息香酸短鎖エステルと、式(3)で表される脂肪族アルコールとを反応させることにより得られたものである、〔1〕に記載の方法。
Figure 0006503220
Figure 0006503220
(式中、mは1〜11の整数を示し、nは15〜23の整数を示す。)
〔3〕抽出工程において酸水溶液に含まれる溶媒が、水と低級アルコールとの混合物である、〔1〕または〔2〕に記載の方法。
〔4〕低級アルコールが、メタノール、エタノール、1−プロパノールおよび2−プロパノールからなる群から選択される1種以上である、〔3〕に記載の方法。
〔5〕水と低級アルコールの重量比が、5/5〜2/8である、〔3〕または〔4〕に記載の方法。
〔6〕抽出工程において酸水溶液に含まれる酸が、塩酸、硫酸、硝酸、リン酸、カルボン酸およびスルホン酸からなる群から選択される1種以上である、〔1〕〜〔5〕のいずれかに記載の方法。
〔7〕酸水溶液における酸の含有量が、0.1〜10重量%である、〔1〕〜〔6〕のいずれかに記載の方法。
〔8〕抽出した有機層に有機溶媒を添加して晶析する工程を更に含む、〔1〕〜〔7〕のいずれかに記載の方法。
〔9〕有機溶媒がメタノールである、〔8〕に記載の方法。

Claims (8)

  1. 式(1)で表される4−ヒドロキシ安息香酸長鎖エステルを含む粗組成物に酸水溶液を添加して有機層と水層に分離し、次いで有機層を抽出する工程を含み、ここで、前記粗組成物は、金属触媒の存在下、式(2)で表される4−ヒドロキシ安息香酸短鎖エステルと、式(3)で表される脂肪族アルコールとを反応させることにより得られたものである、4−ヒドロキシ安息香酸長鎖エステルの精製方法。
    Figure 0006503220
    (式中、nは15〜23の整数を示す。)
    Figure 0006503220
    Figure 0006503220
    (式中、mは1〜11の整数を示し、nは15〜23の整数を示す。)
  2. 抽出工程において酸水溶液に含まれる溶媒が、水と低級アルコールとの混合物である、請求項に記載の方法。
  3. 低級アルコールが、メタノール、エタノール、1−プロパノールおよび2−プロパノールからなる群から選択される1種以上である、請求項に記載の方法。
  4. 水と低級アルコールの重量比が、5/5〜2/8である、請求項またはに記載の方法。
  5. 抽出工程において酸水溶液に含まれる酸が、塩酸、硫酸、硝酸、リン酸、カルボン酸およびスルホン酸からなる群から選択される1種以上である、請求項1〜のいずれかに記載の方法。
  6. 酸水溶液における酸の含有量が、0.1〜10重量%である、請求項1〜のいずれかに記載の方法。
  7. 抽出した有機層に有機溶媒を添加して晶析する工程を更に含む、請求項1〜のいずれかに記載の方法。
  8. 有機溶媒がメタノールである、請求項に記載の方法。
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