以下に、図面を参照しながら開示技術を実施するための複数の形態を説明する。各形態において先行する形態で説明した事項に対応する部分には同一の参照符号を付して重複する説明を省略する場合がある。各形態において構成の一部のみを説明している場合は、構成の他の部分については先行して説明した形態と同様とする。実施の各形態で具体的に説明している部分の組合せばかりではなく、特に組合せに支障が生じなければ、実施の形態同士を部分的に組み合せることも可能である。
(第1実施形態)
開示技術を適用した第1実施形態について、図1〜図4を参照して説明する。図1に示す貯湯式の給湯装置1は、貯湯タンク10と、浴槽用熱交換器30と、ヒートポンプユニット50と、を備えて構成される。以下、ヒートポンプユニットをHPユニットと表記する場合がある。
貯湯タンク10は、耐食性に優れた金属製、例えばステンレス製の容器で構成される。貯湯タンク10は中空円柱状で、その軸方向が鉛直方向に延びる縦長形状に形成されている。貯湯タンク10は、外表面を断熱材で覆う断熱構造または二重タンクによる真空断熱構造等を有しているため、高温の給湯水を長時間保温することができる。貯湯タンク10は、HPユニット50によって加熱された給湯水を貯湯する。
貯湯タンク10には、タンク水温サーミスタ71が設けられている。タンク水温サーミスタ71は、貯湯タンク10の高さ方向に複数個分散されて設けられている。タンク水温サーミスタ71は、貯湯タンク10に貯められた給湯水の貯湯量および貯湯温度を検出するためのタンク温度検出器である。タンク水温サーミスタ71は貯湯タンク10内のそれぞれの高さレベルでの温度信号を図2に示す制御装置80に出力する。
貯湯タンク10の下部には、下方開口部10aが設けられる。下方開口部10aは貯湯タンク10の下方側の給湯水を流出させる流出口である。また下方開口部10aは貯湯タンク10内へ水道水を流入させる流入口である。貯湯タンク10へ流入する水道水は、給水配管11によって供給される。
入口側給湯水配管21aは、下方開口部10aから流出した貯湯タンク10下方側の給湯水または給水配管11によって供給される水道水をHPユニット50へと導く。入口側給湯水配管21aにはバイパス配管21cが接続されている。バイパス配管21cは、下方開口部10aから流出した貯湯タンク10下方側の給湯水または給水配管11によって供給される水道水を、HPユニット50を迂回して三方弁52へと導くことを可能とする。
HPユニット50は、冷媒として臨界温度の低い二酸化炭素を使用する超臨界のヒートポンプサイクルと、ヒートポンプサイクルに水を圧送する沸上用水ポンプ51と、を有して構成されている。超臨界のヒートポンプサイクルによれば、一般的なヒートポンプサイクルよりも高温、例えば85℃〜90℃の湯を貯湯タンク10内に貯えることができる。
沸上用水ポンプ51は、入口側給湯水配管21aに配置される電動式の水ポンプである。沸上用水ポンプ51は、貯湯タンク10の下方側の給湯水あるいは給水配管11によって供給される水道水を水冷媒熱交換器の水通路へ圧送する。沸上用水ポンプ51は、制御装置80によって制御される。
ヒートポンプサイクルは、複数の冷凍サイクル機能部品を備える。複数の冷凍サイクル機能部品とは、少なくとも電動式の圧縮機、水冷媒熱交換器、電気式の膨張弁、空気熱交換器、およびアキュムレータである。これら冷凍サイクル機能部品は、冷媒が流通する通路により接続されている。空気熱交換器の近傍には、空気熱交換器に対して空気を送風する送風機が設けられている。
膨張弁は、水冷媒熱交換器から流出する高圧の冷媒を減圧する減圧手段であり、制御装置80によってその弁開度が電気的に制御される。空気熱交換器は、膨張弁で減圧された冷媒を送風機によって送風される室外空気との熱交換によって蒸発気化させ、圧縮機にガス冷媒を供給する。送風機は、空気熱交換器の熱交換性能を確保するように制御装置80によってその回転数が制御される。アキュムレータは、空気熱交換器から流出する冷媒を気液分離して、気相冷媒のみ圧縮機に吸引させるとともに、サイクル中の余剰冷媒を貯える。
水冷媒熱交換器は、圧縮機の吐出口より吐出された高温高圧の冷媒によって、沸上用水ポンプ51により圧送された給湯水または水道水を加熱する加熱用熱交換器である。水冷媒熱交換器は、冷媒を流通させる冷媒通路と給湯水を流通させる水通路とを有している。水冷媒熱交換器は、例えば、冷媒通路の表面と水通路の表面とが熱交換可能に密着するように配置された二層構造となっている。水通路の入口側には、入口側給湯水配管21aを介して下方開口部10aが接続されている。また、水通路の出口側には、出口側給湯水配管21bを介して、第1継手22の流入出口の1つが接続されている。第1継手22は、3つの流入出口を有する三方継手である。
第1継手22の別の流入出口には、浴槽用熱交換器30の給湯水側通路30aの入口側が接続されている。第1継手22のさらに別の流入出口には、三方弁52の1つの流入出口が接続されている。三方弁52の別の流入出口には、貯湯タンク10の上方側に設けられた第1上方開口部10bが接続されている。三方弁52のさらに別の流入出口には、バイパス配管21cの出口側が接続されている。
三方弁52は、給湯水の流路を切り替える切替弁である。三方弁52は、下方開口部10aと第1継手22とをバイパス配管21cを介して連通する流路と、下方開口部10aと第1上方開口部10bとを出口側給湯水配管21bを介して連通する流路とを切り替える。三方弁52は、制御装置80によって制御される。
水冷媒熱交換器によって加熱された給湯水は、第1継手22および三方弁52を介して、貯湯タンク10の第1上方開口部10bから貯湯タンク10内へ流入する。したがって、貯湯タンク10内の給湯水は、上方側から下方側へ向かって温度が徐々に低下する温度分布が生じやすい。HPユニット50は、貯湯タンク10内の下部の水を加熱して沸き上げ、高温水として貯湯タンク10の上部から貯えることができる。HPユニット50は、本実施形態における沸き上げ装置に相当する。
第2上方開口部10cは、貯湯タンク10の上部に設けられ、貯湯タンク10内の給湯水のうち上方側の高温の給湯水を流出させる流出口である。第2上方開口部10cには、中温用混合弁53の一方の流入口が接続されている。
貯湯タンク10の中間部には、第1中間開口部10dが設けられている。第1中間開口部10dは、貯湯タンク10内に貯湯された給湯水のうち上下方向中間部位の中間温度の給湯水を流出させる流出口である。第1中間開口部10dには中温用混合弁53の他方の流入口が接続されている。なお、中間温度の給湯水は中温水と言い換えることができる。貯湯タンク10の中間部には、さらに第2中間開口部10eが設けられている。第2中間開口部10eは、浴槽用熱交換器30の給湯水側通路30aを通過した湯水が流入する開口部である。
中温用混合弁53は、第2上方開口部10cから流出した給湯水と第1中間開口部10dから流出した給湯水との混合比率を調整して、下流側に流出させる給湯水の温度を調整する温度調整弁である。中温用混合弁53は、例えば第2上方開口部10cからの給湯水が流れる通路の断面積と、第1中間開口部10dからの給湯水が流れる通路の断面積とを同時に変化させる弁体およびこの弁体を変位させる電動アクチュエータを有する式の流量調整弁で構成される。中温用混合弁53は、制御装置80によって制御される。
中温用混合弁53の出口側には、浴槽用混合弁54の一方の流入口が接続されている。浴槽用混合弁54の他方の流入口には、給水配管11が接続されている。浴槽用混合弁54は、中温用混合弁53から流出する給湯水と給水配管11から供給される水道水との混合比率を調整して、下流側に流出させる給湯水の温度を調整する温度調整弁である。浴槽用混合弁54は、制御装置80によって制御される。
浴槽用混合弁54の出口側には、浴槽用開閉弁55を介して、浴槽用水循環回路44aに配置された第2継手43のひとつの流入出口が接続されている。第2継手43は、3つの流入出口を有する三方継手である。浴槽用開閉弁55は、浴槽用混合弁54の出口側と浴槽用水循環回路44aとを接続する浴槽用配管44bを開閉するものであって、制御装置80から出力される制御信号によってその作動が制御される電磁弁である。浴槽用混合弁54から流出した給湯水は、浴槽用開閉弁55、第2継手43を介して浴槽60内へ供給される。
浴槽用水循環回路44aは、浴槽60内と浴槽用熱交換器30の浴槽用湯通路30bとの間で、浴槽60から流出した浴槽60内の湯水を循環させる水循環回路である。なお、浴槽60から流出した浴槽60内の湯水は、浴槽用湯水又は浴水と言い換えることができる。浴槽用水循環回路44aには、浴槽用水ポンプ57と、水位センサ73とが配置されている。浴槽用水ポンプ57は、浴槽60の上下方向中間位置に設けられた浴槽用湯吸入口から浴槽用湯水を吸入して浴槽用湯通路30bへ圧送する電動式の水ポンプである。浴槽用水ポンプ57は、制御装置80によって制御される。水位センサ73は、浴槽用湯吸入口近傍に設けられ、検出された水圧の変化等によって浴槽60内の湯水の量を検出するセンサである。水位センサ73は、検出した水位情報を制御装置80へと出力する。
浴槽用水ポンプ57の吐出口側には、第2継手43の別の流入出口が接続されており、第2継手43のさらに別の流入出口には、浴槽用湯通路30bの入口側が接続されている。浴槽用湯通路30bの出口側には、浴槽60の下方側に配置された浴槽用湯吐出口が接続されている。
浴槽用熱交換器30は、第1継手22から流出した給湯水を流通させる給湯水側通路30aと、浴槽用水循環回路44aを循環する浴槽用湯水を流通させる浴槽用湯通路30bとを有する。浴槽用熱交換器30は、給湯水側通路30aを流通する給湯水と浴槽用湯通路30bを流通する浴槽用湯水とを熱交換させる熱交換器である。これにより、浴槽用熱交換器30はHPユニット50によって加熱された給湯水または貯湯タンク10内の給湯水と浴槽60内の湯水とを熱交換し追い焚き運転や風呂熱回収運転等を実現する。
給湯水側通路30aの出口側には、給湯水側通路30aから流出した給湯水を第2中間開口部10eへ圧送する給湯水ポンプ56が配置されている。給湯水ポンプ56は、制御装置80によってその作動を制御される電動式の水ポンプである。
貯湯タンク10内の下部の水と浴槽60内の浴水とを浴槽用熱交換器30で熱交換して風呂熱回収運転が実現されると、浴槽60の浴水が有する熱が貯湯タンク10の下部の水に移動され、浴水の温度が低下される。風呂熱回収運転が行なわれるとき、浴槽用熱交換器30、バイパス配管21c、給湯水ポンプ56、浴槽用水循環回路44a、浴槽用水ポンプ57等からなる熱移動のための構成は、浴水温低下装置3と呼ぶことができる。浴水温低下装置3は、浴槽用熱交換器30において貯湯タンク10の下方開口部10aから流出し第2中間開口部10eへ流れる水と浴槽用水循環回路44aを流れる浴水との熱交換を行なう熱交換装置である。浴水温低下装置3は、浴槽60の浴水から貯湯タンク10の下部の水への熱を移動させる。
図2に示すように、本実施形態の給湯装置1の制御システムは、制御装置80と、コントローラ90とを備える。制御装置80は、コンピュータによって読み取り可能な記憶媒体を備えるマイクロコンピュータを主なハードウェア要素として備える。記憶媒体は、コンピュータによって読み取り可能な所定のプログラムを非一時的に記憶する非遷移的実体的記憶媒体である。記憶媒体は、半導体メモリまたは磁気ディスクなどによって提供されうる。
制御装置80は、上述の各制御対象機器と各種センサとが接続されるインターフェイス部と、各種判定処理を行う処理部と、プログラムや検出した各種データを記憶する記憶部と、を備える。
インターフェンス部には、HPユニット50を構成する機器、三方弁52、浴槽用水ポンプ57、給湯水ポンプ56、中温用混合弁53、浴槽用混合弁54、浴槽用開閉弁55等が接続される。インターフェイス部は、これらの各制御対象機器に対して出力を行う。さらにインターフェイス部には、赤外線センサ74、水位センサ73、タンク水温サーミスタ71、浴槽用湯温センサ72、コントローラ90等が接続される。インターフェイス部は、各種信号を制御装置80へと入力する。
赤外線センサ74は、浴室内の浴槽60近傍に設けられる。赤外線センサ74は、使用者の入浴状況を検知するためのセンサである。赤外線センサ74は、検出される赤外線量の変化に応じて、使用者が浴槽60内へ入浴したこと及び浴槽60から出たことを検知する。浴槽用湯温センサ72は、浴槽60に設けられ、浴槽60内の湯水の温度を検出する温度センサである。以下、浴槽60内の湯水の温度を浴槽温度又は浴水温度と表記する場合がある。
コントローラ90は、使用者による操作が可能なスイッチ部と、運転状態等が表示される表示部91とを備える。コントローラ90は、所謂リモコンである。コントローラ90は、複数設けることができる。複数のコントローラの一つは、浴室の壁に設けられる浴室内コントローラである。複数のコントローラの別の一つは、浴室以外の部屋の壁、例えばキッチンやリビングの壁に設けられる浴室外コントローラである。なお、コントローラ90、浴槽60以外の給湯装置1の各部は、例えば屋外等の適所に設置される。
コントローラ90は、操作スイッチとして、作動スイッチ92、湯張りスイッチ93、自動保温スイッチ94、浴槽用温度設定スイッチ95、冷水確保沸き上げ運転スイッチ96等を有する。作動スイッチ92は、給湯装置1の作動を要求する作動要求信号及び停止を要求する停止要求信号を出力するためのものである。湯張りスイッチ93は、浴槽60内への湯張りを要求する信号を出力するためのものである。自動保温スイッチ94は、浴槽60内に貯められた浴水を所望の温度にする自動保温運転の実行を要求する信号を出力するためのものである。浴槽用温度設定スイッチ95は、浴槽60内の浴水の目標温度を設定ためのものである。冷水確保沸き上げ運転スイッチ96は、貯湯タンク10内へ湯水の沸き上げを行なう際に、貯湯タンク10の下部に所定量の冷水を残すように沸き上げる運転を要求する信号を出力するためのものである。
コントローラ90には、上記したスイッチ92〜96以外に、足し湯スイッチ、風呂ぬるめスイッチ、追い焚きスイッチ、風呂熱回収スイッチ、給湯温度設定スイッチ等を設けることができる。給湯温度設定スイッチは、カランやシャワー等の各給湯端末から出湯される給湯水の目標出湯温度を設定するものである。
コントローラ90の表示部91は、設定状態表示部91a及び運転状態表示部91bを有する。設定状態表示部91aは、給湯装置1の運転に関する設定状態を表示する。運転状態表示部91bは、実行中の運転モードに関する運転状態を表示する。表示部91は、例えば文字表示することで設定状態や運転状態を使用者に対して視覚情報として報知する。表示部91は、文字表示するものに限定されない。表示部91は、例えば、記号表示するものであってもよい。また、例えば、設定状態や運転状態を各種スイッチ等に対応して点灯表示するものであってもよい。
設定状態表示部91aは、冷水確保沸き上げ運転スイッチ96が操作されて貯湯タンク10内に冷水を残す沸き上げ運転を行うか否かを含む設定状態を表示する。運転状態表示部91bは、貯湯タンク10内に冷水を残す沸き上げ運転が行なわれているか否かを含む運転状態を表示する。
制御装置80は、機能ブロックとして、湯張り運転部、沸き上げ運転部81、自動保温運転部84、水量設定部85及び残湯検出部86等を備える。湯張り運転部は、浴槽60内に湯を張る湯張り運転を行う。自動保温運転部84は、浴槽60内に溜められた浴水を設定温度に保温する自動保温運転を行う。沸き上げ運転部81は、貯湯タンク10内の湯水をHPユニット50で沸き上げる沸き上げ運転を行う。
沸き上げ運転部81は、通常沸き上げ運転部82と、冷水確保沸き上げ運転部83とを有する。通常沸き上げ運転部82は、貯湯タンク10内の全容量の湯水に対して沸き上げ運転を行う。冷水確保沸き上げ運転部83は、貯湯タンク10内の一部に冷水を残すように貯湯タンク10内の残りの湯水に対して沸き上げ運転を行う。水量設定部85は、冷水確保沸き上げ運転部83が沸き上げ運転をする際に貯湯タンク10内に残す水量を予め設定する。残湯検出部86は、浴槽60内に所定量以上の浴水が残っているか否かを検出する。
次に、上記構成に基づき給湯装置1の作動について説明する。給湯装置1に外部電源から電力が供給された状態で、コントローラ90の作動スイッチ92が投入されると、制御装置80が予め記憶媒体に記憶している制御処理を実行する。制御装置80は、上述した各種センサの検出信号及びコントローラ90の操作信号に基づいて、湯張り運転、自動保温運転部84による自動保温運転、沸き上げ運転部81による沸き上げ運転等を実行する。
湯張り運転は、例えば、貯湯タンク10内に湯張り用の熱量が貯えられている状態で、コントローラ90の湯張りスイッチ93が投入されると実行される。湯張り運転では、制御装置80が、浴槽用開閉弁55を開くとともに、中温用混合弁53及び浴槽用混合弁54の作動を制御する。中温用混合弁53については、中温用混合弁53から流出する給湯水がコントローラ90にて設定された最高出湯温度となうように、その作動が制御される。ここで、最高出湯温度は、例えば60℃である。浴槽用混合弁54については、浴槽60内へ流入する湯が、浴槽用温度設定スイッチ95によって設定された目標温度となるように、その動作が制御される。
湯張り運転では、水道水の水圧によって貯湯タンク10の第2上方開口部10cから流出した高温の給湯水と、第1中間開口部10dから流出した中間温度の給湯水とが、中温用混合弁53にて混合される。さらに、中温用混合弁53から流出した給湯水と水道水とが、浴槽用混合弁54にて混合される。そして、浴槽用混合弁54から流出した給湯水が、第2継手43を介して、浴槽用水循環回路44aへ流入する。浴槽用水循環回路44aへ流入した給湯水は、浴槽用熱交換器30の浴槽用湯通路30bを介して、浴槽60内に溜められる。
このとき、給湯水ポンプ56は停止しているので、浴槽用湯通路30bを流通する給湯水が浴槽用熱交換器30にて加熱あるいは冷却されることはない。なお、浴槽用水ポンプ57も停止しているので、浴槽用水ポンプ57が設けられた経路からも浴槽60内へ給湯水を湯張りすることができる。湯張り運転は、水位センサ73によって検出された浴槽60内の浴水の量が、予め定めた基準湯量となるまで継続される。
自動保温運転は、湯張り運転が完了している状態で実行される。自動保温運転について、図3を参照して説明する。制御装置80の自動保温運転部84は、図3に示す処理を定期的に実施する。
自動保温運転部84は、まず、ステップ100で、自動保温スイッチ94が投入されているか否かを判断する。ステップ100において自動保温スイッチ94が投入されていないと判断した場合には、本処理を終了する。ステップ100において自動保温スイッチ94が投入されていると判断した場合には、ステップ102へ進み、所定条件が成立したか否かを判断する。本実施形態では、入浴者が出浴したことが検知された場合、所定条件が成立したものとなっている。
入浴者が出浴したか否かについては、赤外線センサ74を用いて検知することができる。例えば、赤外線センサ74により入浴者が検知されている状態から入浴者が検知されていない状態となった場合に、入浴者が出浴したと検知することができる。ここで、例えば赤外線センサ74により入浴者が検知されている場合には、ステップ102の判断はNOとなり、本処理を終了する。
また、例えば、入浴者が浴槽60内から出て、赤外線センサ74により入浴者が検知されている状態から入浴者が検知されない状態になった場合、ステップ102の判断はYESとなり、ステップ104へ進む。ステップ104では、現在湯温を取得する。ステップ104では、浴槽用湯温センサ72により、浴槽60内に貯められた浴水の温度を現在湯温として取得する。
ステップ104を実行したら、ステップ106へ進み、目標湯温が現在湯温よりも低いか否かを判断する。本実施形態では、目標湯温は浴槽用温度設定スイッチ95の操作により設定された温度となっている。目標湯温が現在湯温よりも低くなっている場合、ステップ106の判断はYESとなり、ステップ108へ進む。ステップ108では、現在湯温と目標湯温との差が第1の閾値αよりも大きいか否か判断する。すなわち、現在湯温と目標湯温との差の大きさが、所定値以上であるか否かを判断する。
現在湯温と目標湯温との差が第1の閾値αよりも大きい場合、ステップ108の判断はYESとなり、ステップ110へ進む。ステップ110では、風呂熱回収運転を実施する。ここで、風呂熱回収運転について説明する。
風呂熱回収運転は、浴槽60内の湯水の熱を貯湯タンク10内の給湯水へ回収するために実行される。風呂熱回収運転は、例えばコントローラ90の風呂熱回収スイッチが操作された場合にも実行される。風呂熱回収運転では、制御装置80が、給湯水ポンプ56と浴槽用水ポンプ57を作動させ、三方弁52を下方開口部10aと第1継手22とがバイパス配管21cを介して接続されるように制御する。風呂熱回収運転では、沸上用水ポンプ51は停止しており、浴槽用開閉弁55は閉じている。
したがって、下方開口部10aから流出した貯湯タンク10下部の低温の給湯水は、バイパス配管21c、三方弁52および第1継手22を介して給湯水側通路30aへ流入する。一方、浴槽60から浴槽用水ポンプ57によって圧送された浴槽用湯水は、浴槽用湯通路30bへと流入する。浴槽用熱交換器30では、給湯水側通路30aを通過する低温の給湯水と、浴槽用湯通路30bを通過する浴槽用湯水と、が熱交換し、給湯水の温度が上昇し浴槽用湯水の温度が低下する。給湯水側通路30aを流出した給湯水は、給湯水ポンプ56によって第2中間開口部10eから貯湯タンク10へと回収される。一方、浴槽用湯通路30bを流出した浴槽用湯水は、浴槽60内へと戻される。これにより、浴槽60内の湯水の熱を貯湯タンク10内の湯水へと回収することができる。浴水温低下装置3の運転により、浴槽60内の浴水の熱を貯湯タンク10内の下部の水へと回収することができる。
ステップ110を実行したら、ステップ112へ進み、現在湯温が目標湯温に到達したか否か判断する。ステップ112において現在湯温が目標湯温に到達していないと判断した場合、ステップ110へ戻り、風呂熱回収運転を継続する。現在湯温が目標湯温に到達すると、ステップ112の判断はYESとなり、風呂熱回収運転を停止して、本処理を終了する。
また、ステップ108において現在湯温と目標湯温との差が第1の閾値α以下となっている場合は、ステップ108の判断はNOとなり、風呂熱回収運転を実施することなく、本処理を終了する。
ステップ106において目標湯温が現在湯温以上であると判断した場合、ステップ106の判断はNOとなり、ステップ114へ進む。ステップ114では、現在湯温と目標湯温との差が第2の閾値βよりも大きいか否か判断する。すなわち、現在湯温と目標湯温との差の大きさが、所定値以上であるか否かを判断する。
現在湯温と目標湯温との差が第2の閾値βよりも大きい場合、ステップ114の判断はYESとなり、ステップ116へ進む。ステップ116では、追い焚き運転を実施する。ここで、追い焚き運転について説明する。
追い焚き運転は、貯湯タンク10内の湯水の熱によって浴槽60内の湯水を加熱するために実行される。追い焚き運転は、例えばコントローラ90の追い焚きスイッチが操作された場合にも実行される。追い焚き運転では、制御装置80が、給湯水ポンプ56と浴槽用水ポンプ57を作動させ、三方弁52を第1上方開口部10bと第2中間開口部10eとが接続されるように制御する。追い焚き運転では、沸上用水ポンプ51は停止しており、浴槽用開閉弁55は閉じている。
したがって、第1上方開口部10bから流出した高温の給湯水は、三方弁52および第1継手22を介して給湯水側通路30aへ流入する。一方、浴槽60から浴槽用水ポンプ57によって圧送された浴槽60内の湯水は、浴槽用湯通路30bへと流入する。浴槽用熱交換器30では、給湯水側通路30aを通過する高温の給湯水と、浴槽用湯通路30bを通過する浴槽用湯水と、が熱交換し、給湯水の温度が低下し浴槽用湯水の温度が上昇する。給湯水側通路30aを流出した給湯水は、給湯水ポンプによって第2中間開口部10eから貯湯タンク10へと回収される。一方、浴槽用湯通路30bを流出した浴槽用湯水は、浴槽60内へと戻される。これにより、貯湯タンク10内の湯水の熱によって浴槽60内の湯水を加熱することができる。
ステップ116を実行したら、ステップ120へ進み、現在湯温が目標湯温に到達したか否か判断する。ステップ120において現在湯温が目標湯温に到達していないと判断した場合、ステップ116へ戻り、追い焚き運転を継続する。現在湯温が目標湯温に到達すると、ステップ120の判断はYESとなり、追い焚き運転を停止して、本処理を終了する。
また、ステップ114において現在湯温と目標湯温との差が第2の閾値β以下となっている場合は、ステップ114の判断はNOとなり、追い焚き運転を実施することなく、本処理を終了する。
図3に示す制御フローによれば、所定の条件が成立したと判断した場合、予め設定された目標湯温と浴槽60内の浴水の現在温度とに基づいて、追い焚き運転と風呂熱回収運転とを選択的に行なって浴槽60内の浴水の温度を調整できる。なお、ステップ102における所定条件とは、入浴者の出浴に限定されるものではない。例えば、入浴者の入浴であってもよい。また、例えば、入浴者の入浴又は出浴から所定時間の経過を検知するものであってもよい。また、例えば、コントローラ90の浴槽用温度設定スイッチ95を操作することによる設定温度の変更であってもよい。
また、図3に示すフローでは説明しなかったが、浴槽60内の浴水量も調整することができる。浴槽60内の現在水位が目標水位よりも低い場合には、水を補って目標水位に到達させ、この水位調整と合わせて、風呂熱回収運転又は追い焚き運転を行うものであってもよい。また、差し水運転や足し湯運転により、水位調整及び浴水温調整を行うものであってもよい。
差し水運転は、水道水を浴槽60内に供給することで浴槽温度を低下させるために実行される。差し水運転は、例えばコントローラ90の風呂ぬるめスイッチが操作された場合にも実行される。差し水運転では、制御装置80が、水道水を浴槽用配管44bへと流入させるように浴槽用混合弁54を制御する。したがって、水道水は浴槽用混合弁54、浴槽用開閉弁55、浴槽用配管44bを通過して浴槽60へと流入する。
足し湯運転は、高温の給湯水によって浴槽温度を上昇するために実行される。足し湯運転は、例えばコントローラ90の足し湯スイッチが操作された場合にも実行される。足し湯運転では、制御装置80は、中温用混合弁53と浴槽用混合弁54と浴槽用開閉弁55を制御し、第2上方開口部10cと浴槽用配管44bとを連通させる。したがって、第2上方開口部10cから流出した高温の給湯水は、中温用混合弁53、浴槽用混合弁54、浴槽用開閉弁55を通過し、浴槽60内へと供給される。これにより、高温の給湯水を浴槽60内に加え、浴槽温度を上昇することができる。
沸き上げ運転は、制御装置80の沸き上げ運転部81により実施される。制御装置80は、主に料金設定の安価な例えば深夜時間帯に深夜電力を利用し沸き上げ運転を実行する。すなわち、電力供給元との契約に基づく電力コストが比較的安価な所定時間帯に沸き上げ運転を実施する。これにより、貯湯タンク10に貯める給湯水を沸き上げるために必要な電力コストを抑制することが可能となる。また、制御装置80は、深夜時間帯以外の時間帯においても、貯湯タンク10内の貯湯熱量が不足したと判定した場合には沸き上げ運転を実行する。
沸き上げ運転の制御動作について、図4を参照して説明する。制御装置80は、まず、ステップ130で、冷水確保沸き上げ運転が設定されているか否かを判断する。ステップ130では、例えば、コントローラ90の冷水確保沸き上げ運転スイッチ96がオンされているか否かを判断する。ステップ130において冷水確保沸き上げ運転が設定されていると判断した場合には、ステップ135へ進む。
ステップ135では、浴槽60内に所定量以上の浴水が残っているか否かを判断する。ステップ135では、例えば、水位センサ73からの入力信号に基づいて残湯検出部86が検出する所定量以上の浴水の有無の検出結果から判断する。ステップ135において浴槽60内に所定量以上の浴水が残っていると判断した場合には、ステップ145へ進む。
ステップ130において冷水確保沸き上げ運転が設定されていないと判断した場合、及び、ステップ135において浴槽60内に所定量以上の浴水が残っていないと判断した場合には、ステップ140へ進む。ステップ140では、通常沸き上げ運転を実施する。通常沸き上げ運転は、制御装置80の通常沸き上げ運転部82により実施される。
本実施形態における通常沸き上げ運転とは、例えば、過去の所定期間の熱量使用実績に基づいて目標貯湯熱量を求め、この目標貯湯熱量を貯湯タンク10の全容量の湯水を用いて貯えるように目標沸き上げ温度を温度決定部82aで決定する。温度決定部82aは、通常沸き上げ温度決定部に相当する。
通常沸き上げ運転部82は、温度決定部82aで決定した沸き上げ温度となるようにHPユニット50を運転し、貯湯タンク10内の湯水を沸き上げる。ここで、目標貯湯熱量は、例えば直近の1週間における1日当たり熱量使用実績の最大値とすることができる。また、例えば直近の1週間における1日当たり熱量使用実績の平均値としてもよい。
すなわち、通常沸き上げ運転部82は、ユーザが使用すると予測される熱量を貯湯タンク10一杯で賄うことを前提に温度決定部82aで沸き上げ温度を算出し、算出した沸き上げ温度で貯湯タンク10内を湯水を沸き上げる。ステップ140を実行し、貯湯タンク10内に目標貯湯熱量を貯えたら、通常沸き上げ運転を停止して本処理を終了する。
ステップ135において浴槽60内に所定量以上の浴水が残っていると判断した場合には、ステップ145において、過去の所定期間に浴水温低下装置3の運転実績があるか否か判断する。ここで、過去の所定期間とは、例えば、直近の1週間とすることができる。
ステップ145において過去の所定期間に浴水温低下装置3の運転実績があると判断した場合には、ステップ150へ進む。ステップ150では、過去の所定期間の浴水温低下装置3の運転実績に基づいて、水量設定部85で受熱用水量を算出する。受熱用水量の算出に用いる浴水温低下装置3の運転実績値は、例えば、浴水温低下装置3により貯湯タンク10内へ回収した熱量とすることができる。また、運転実績値として浴水温低下装置3の運転回数を用いてもよい。
ここで、受熱用水量とは、浴水温低下装置3を運転する際に浴水が有する熱を受け取るために貯湯タンク10の下部に貯えておくことが必要な水量である。ステップ150では、水量設定部85により、浴水温低下装置3を運転して浴槽60内の浴水温を低下させるために必要な冷水量である受熱用水量を、過去の所定期間の浴水温低下装置3の運転実績から算出して設定する。
ステップ145において過去の所定期間に浴水温低下装置3の運転実績がないと判断した場合には、ステップ155へ進む。ステップ155では、水量設定部85が受熱用水量を予め決められた所定量に設定する。ステップ150及びステップ155のいずれかを実行したら、ステップ160へ進む。
ステップ160では、貯湯タンク10内の湯水を沸き上げる際の沸き上げ容量を設定する。ステップ160では、貯湯タンク10の容量からステップ150又はステップ155で設定した受熱用水量を減算して、沸き上げ容量とする。ステップ160を実行したら、ステップ165へ進む。ステップ165では、ステップ160で設定した沸き上げ容量の湯水の沸き上げ温度を決定する。ステップ165では、冷水確保沸き上げ運転部83の温度決定部83aで、貯湯タンク10容量から受熱用水量を減算した量の湯水に対して、過去の所定期間の熱量使用実績に基づいて定めた目標貯湯熱量を貯めるように、目標沸き上げ温度を決定する。
ステップ165を実行したら、ステップ170へ進む。ステップ170では、HPユニット50を沸き上げ装置として、貯湯タンク10内の湯水の沸き上げ運転を行う。沸き上げ運転は、貯湯タンク10内に加熱された給湯水を貯めるために実行される。
沸き上げ運転では、制御装置80が、HPユニット50を作動させ、三方弁52を第1継手22と第1上方開口部10bとを接続するように制御する。したがって、下方開口部10aから流出した給湯水あるいは給水配管11によって供給された水道水は、沸上用水ポンプ51によって水冷媒熱交換器の水通路へ圧送され、高温高圧冷媒と熱交換することで加熱される。水通路から流出した高温の給湯水は、第1継手22および三方弁52を介して、第1上方開口部10bから流入する。すなわち、沸き上げ運転では、貯湯タンク10内の下部の水が、HPユニット50により加熱して沸き上げられ、高温水として貯湯タンク10の上部から貯えられる。
ステップ170は、ステップ175による監視を行いつつ実行される。ステップ175では、沸き上げられた湯の容量が、ステップ160で設定された目標沸き上げ容量に到達したか否かを監視する。ステップ175において沸き上げ容量が目標沸き上げ容量に到達していないと判断した場合には、ステップ170へ戻り、沸き上げ運転を継続する。ステップ175において沸き上げ容量が目標沸き上げ容量に到達した場合には、沸き上げ運転を停止して、本処理を終了する。
ステップ170による沸き上げ運転は、タンク水温サーミスタ71によって検出される貯湯タンク10の所定高さの給湯水の温度が、ステップ165で決定された目標沸き上げ温度となるまで実行される。ここで、貯湯タンク10の所定高さは、目標沸き上げ容量に対応した高さである。図4において一点鎖線で囲んだステップ群170Aからなる冷水確保沸き上げ運転は、制御装置80の冷水確保沸き上げ運転部83により実行される。冷水確保沸き上げ運転部83により冷水確保沸き上げ運転が行なわれているとき、コントローラ90の運転状態表示部91bには、冷水確保沸き上げ運転が行なわれている旨が表示される。
ここで、制御装置80の冷水確保沸き上げ運転部83は、本実施形態における水確保運転部に相当する。また、ステップ群170Aが、水確保運転部に相当すると言うこともできる。冷水確保沸き上げ運転部83の温度決定部83aは、本実施形態における水確保沸き上げ温度決定部に相当する。また、ステップ165が、水確保沸き上げ温度決定部に相当すると言うこともできる。
冷水確保沸き上げ運転スイッチ96は、本実施形態における水確保運転設定部に相当する。そして、設定状態表示部91aは、水確保運転設定部において設定された水確保運転部による沸き上げ装置の運転を行うか否かを含む設定状態を表示する表示部である。また、運転状態表示部91bは、水確保運転部による沸き上げ装置の運転が行なわれているか否かの運転状態を表示する表示部である。
上述の構成及び作動によれば、以下に述べる効果を得ることができる。
給湯装置1は、貯湯タンク10と、沸き上げ装置であるHPユニット50と、浴水温低下装置3と、制御装置80と、を備える。貯湯タンク10は、内部に湯水を貯える。沸き上げ装置は、貯湯タンク10内の下部の水を加熱して沸き上げ、高温水として貯湯タンク10の上部から貯える。浴水温低下装置3は、浴槽60の浴水が有する熱を熱交換により貯湯タンク10の下部の水に移動させて浴水の温度を低下させる。制御装置80は、沸き上げ装置及び浴水温低下装置3の運転を制御する。
制御装置80は、水量設定部85と、沸き上げ運転部81と、を有する。水量設定部85は、浴水温低下装置3を運転する際に浴水が有する熱を受ける貯湯タンク10の下部の水の量を受熱用水量として予め設定する。沸き上げ運転部81は、沸き上げ装置を運転する。沸き上げ運転部81は、水量設定部85が設定した受熱用水量の水を貯湯タンク10の下部に残すように沸き上げ装置を運転する水確保運転部である冷水確保沸き上げ運転部83を具備する。
これによると、制御装置80の沸き上げ運転部81が、冷水確保沸き上げ運転部83により沸き上げ装置を運転して貯湯タンク10内の湯水を沸き上げる場合には、水量設定部85が予め設定した受熱用水量の水を貯湯タンク10の下部に残すことができる。したがって、制御装置80が浴水温低下装置3を運転するときには、浴槽60の浴水が有する熱を熱交換により貯湯タンク10の下部に残された水に移動することができる。このようにして、貯湯タンク10内の湯水との熱交換により浴水の温度を確実に低下させることができる。使用者は、貯湯タンク10内に給湯に必要な熱量を確保した上で、入浴時に所望する浴水温低下を行なうことができる。
また、水量設定部85は、所定期間の浴水温低下装置3の運転実績に基づいて、予め設定する受熱用水量を変更する。
これによると、水量設定部85は、所定期間の浴水温低下装置3の運転実績に応じて受熱用水量を変更することができる。したがって、水確保運転部である冷水確保沸き上げ運転部83は、浴水の温度低下に必要と予測される水を残すように貯湯タンク10内の湯水を沸き上げることができる。これにより、浴水の温度低下が充分に行えなかったり、浴水温の低下後に貯湯タンク10内に多量の水が残ってしまったりすることを抑制することができる。この結果、浴水の温度を確実に低下させることが可能な範囲で、沸き上げ運転時に比較的多量の湯水を沸き上げることができる。
また、水確保運転部である冷水確保沸き上げ運転部83は、水確保沸き上げ温度決定部である温度決定部83aを有する。温度決定部83aは、貯湯タンク10の容量から水量設定部85が設定した受熱用水量を減算した量の湯水が目標貯湯熱量を貯えるように沸き上げ温度を決定する。冷水確保沸き上げ運転部83は、温度決定部83aが決定した沸き上げ温度で、貯湯タンク10容量から受熱用水量を減算した量の湯水を沸き上げるように、HPユニット50を運転する。
これによると、貯湯タンク10の下部に受熱用水量の水を確保することを前提として、目標貯湯熱量を貯えるように貯湯タンク10内の湯水を沸き上げることができる。したがって、一度の沸き上げ運転で目標貯湯熱量を確保することが可能である。例えば、深夜時間帯等の電力コストに応じて定まる所定時間帯に、目標貯湯熱量の沸き上げを完了することが可能である。
また、給湯装置1は、水確保運転部である冷水確保沸き上げ運転部83による沸き上げ装置であるHPユニット50の運転を行うか否かを、使用者が選択的に設定可能な水確保運転設定部である冷水確保沸き上げ運転スイッチ96を備える。
これによると、使用者が浴水温低下装置3による浴水温の低下を予定しているときには、冷水確保沸き上げ運転スイッチ96で冷水確保沸き上げ運転部83による沸き上げ運転を設定して、沸き上げ運転時に貯湯タンク10の下部に受熱用の水を残すことができる。したがって、使用者が浴水温低下装置3による浴水温の低下を希望するときには、貯湯タンク10内の湯水との熱交換により浴水の温度を確実に低下させることができる。
また、給湯装置1は、水確保運転設定部である冷水確保沸き上げ運転スイッチ96において設定された、冷水確保沸き上げ運転部83による沸き上げ装置の運転を行うか否かの設定状態を表示する設定状態表示部91aを備えている。
これによると、水確保運転設定部における沸き上げ運転の設定状態を設定状態表示部91aに表示することができる。したがって、浴水温低下装置3による浴水温の低下が可能となる貯湯タンク10下部に水を確保する沸き上げ運転が行なわれる設定状態であるか否かを、使用者が容易に把握することができる。
また、給湯装置1は、浴槽60に所定量以上の浴水があるか否かを検出する残湯検出部86を備えている。そして、沸き上げ運転部81は、残湯検出部86が所定量以上の浴水がないことを検出した場合には、水確保運転部である冷水確保沸き上げ運転部83による沸き上げ装置の運転を禁止する。
これによると、浴槽60に所定量以上の浴水がないことを残湯検出部86が検出した場合には、水確保運転部による貯湯タンク10下部に水を確保する沸き上げ運転を行わない。浴槽60に所定量以上の浴水がない場合には、浴槽60への湯張りに伴い貯湯タンク10下部に受熱用の水が確保される。そのため、水確保運転部による沸き上げ装置の運転を行わなくても、湯張りに伴い貯湯タンク10下部に確保される水に浴水の有する熱を移動させて、浴水の温度を低下させることができる。
また、給湯装置1は、水確保運転部による沸き上げ装置の運転が行なわれているか否かの運転状態を表示する運転状態表示部91bを備えている。これによると、水確保運転部による沸き上げ装置の運転を実施しているか否かの運転状態を運転状態表示部に表示することができる。したがって、浴水温低下装置3による浴水温の低下が可能となる貯湯タンク10下部に水を確保する沸き上げ運転が行なわれているか否かを、使用者が容易に把握することができる。
(第2の実施形態)
次に、第2の実施形態について図5に基づいて説明する。
第2の実施形態は、前述の第1の実施形態と比較して、貯湯タンク10の下部に受熱用の水を残す沸き上げ運転の制御動作が異なる。なお、第1の実施形態と同様の部分については、同一の符号をつけ、その説明を省略する。第1の実施形態に係る図面と同一符号を付した構成部品、第2の実施形態において説明しない他の構成は、第1の実施形態と同様であり、また同様の作用効果を奏するものである。
本実施形態の貯湯式の給湯装置では、制御装置80の沸き上げ運転部81に、第1実施形態で説明した冷水確保沸き上げ運転部83を設けていない。
図6に示すように、本実施形態の制御装置80は、ステップ160を実行したら、ステップ270へ進み、ステップ140と同様の通常沸き上げ運転を実行する。すなわち、過去の所定期間の熱量使用実績に基づいて目標貯湯熱量を求め、この目標貯湯熱量を貯湯タンク10の全容量の湯水を用いて貯えるように目標沸き上げ温度を温度決定部82aで決定する。温度決定部82aは、通常沸き上げ温度決定部に相当する。通常沸き上げ運転部82は、温度決定部82aで決定した沸き上げ温度となるようにHPユニット50を運転し、貯湯タンク10内の湯水を沸き上げる。
本実施形態では、ステップ270を、ステップ175による監視を行いつつ実行する。ステップ175では、沸き上げられた湯の容量が、ステップ160で設定された目標沸き上げ容量に到達したか否かを監視する。ステップ175において沸き上げ容量が目標沸き上げ容量に到達していないと判断した場合には、ステップ270へ戻り、通常沸き上げ運転を継続する。ステップ175において沸き上げ容量が目標沸き上げ容量に到達したと判断した場合には、沸き上げ運転を停止して、本処理を終了する。
すなわち、ステップ270による通常沸き上げ運転は、タンク水温サーミスタ71によって検出される貯湯タンク10の所定高さの給湯水の温度が、ステップ270で決定された目標沸き上げ温度となるまで実行される。ここで、貯湯タンク10の所定高さは、ステップ160で設定された目標沸き上げ容量に対応した高さである。
制御装置80により、図6において一点鎖線で囲んだステップ群270Aが実行されて冷水確保沸き上げ運転が行なわれているとき、コントローラ90の運転状態表示部91bには、冷水確保沸き上げ運転が行なわれている旨の表示をすることができる。ステップ140が実行されて通常沸き上げ運転が行なわれているときには、運転状態表示部91bには、通常の沸き上げ運転が行なわれている旨の表示をすることができる。
ここで、図6に示すステップ群270Aは、本実施形態における水確保運転部に相当する。また、通常沸き上げ運転部82の温度決定部82aは、本実施形態における通常沸き上げ温度決定部に相当する。
本実施形態の給湯装置では、水確保運転部は、貯湯タンク10の容量の湯水が目標貯湯熱量を貯えるように沸き上げ温度を決定する通常沸き上げ温度決定部である温度決定部82aを有していると言える。制御装置80は、通常沸き上げ温度決定部が決定した沸き上げ温度で沸き上げ装置を運転し、貯湯タンク10の容量から水量設定部85が設定した受熱用水量を減算した量の湯水を沸き上げた時点で、沸き上げ装置の運転を中止する。
これによると、貯湯タンク10の全容量の湯水に目標貯湯熱量を貯えるように設定された通常沸き上げ温度で貯湯タンク10内の湯水を沸き上げていき、受熱用水量を除く量の湯水が沸き上がった時点で沸き上げ運転を中止することができる。したがって、比較的低い沸き上げ温度で沸き上げ運転を行うことができ、沸き上げ装置の運転効率を高めて省エネルギ性を確保することができる。
(他の実施形態)
この明細書に開示される技術は、その開示技術を実施するための実施形態に何ら制限されることなく、種々変形して実施することが可能である。開示される技術は、実施形態において示された組み合わせに限定されることなく、種々の組み合わせによって実施可能である。実施形態は追加的な部分をもつことができる。実施形態の部分は、省略される場合がある。実施形態の部分は、他の実施形態の部分と置き換え、または組み合わせることも可能である。実施形態の構造、作用、効果は、あくまで例示である。開示技術の技術的範囲は、実施形態の記載に限定されない。開示技術のいくつかの技術的範囲は、特許請求の範囲の記載によって示され、さらに特許請求の範囲の記載と均等の意味及び範囲内での全ての変更を含むものと解されるべきである。
上記実施形態では、浴槽60内に所定量以上の浴水が残っているか否かを検出して、浴槽60内に所定量以上の浴水が残っていない場合には冷水確保沸き上げを行なわないものであったが、これに限定されるものではない。例えば、残湯検出を行なわず、ステップ135の判定ステップを実施しないものであってもよい。
また、上記実施形態では、HPユニット50が冷水を確保する沸き上げ運転を行うか否かを、使用者が選択的に設定可能な水確保運転設定部として冷水確保沸き上げ運転スイッチ96を備えていたが、これに限定されるものではない。例えば、水確保運転設定部を有さず、ステップ130の判定ステップを実施しないものであってもよい。
また、上記実施形態では、ステップ145において所定期間に浴水温低下装置3の運転実績がないと判断した場合には、受熱用水量を予め決められた所定量に設定して冷水を確保する沸き上げ運転を行うものであったが、これに限定されるものではない。例えば図6に示すように、所定期間に浴水温低下装置3の運転実績がないと判断した場合には、通常沸き上げ運転を行うものであってもよい。
また、上記実施形態では、ステップ145において所定期間に浴水温低下装置3の運転実績があると判断した場合には、この実績に基づいて、貯湯タンク10の下部に残す受熱用水量を変更するものであったが、これに限定されるものではない。例えば、沸き上げ運転を行う際には、常に一定量の受熱用の冷水を残すように貯湯タンク10内の湯水を沸き上げるものであってもよい。
また、上記実施形態では、HPユニット50を沸き上げ装置としていたが、これに限定されるものではなく、例えば、電気ヒータ等であってもかまわない。