次に本発明の実施の形態を図面を参照して説明する。まず図1を参照して、電子機器組立装置1の全体構成を説明する。電子機器組立装置1は携帯端末などの電子機器4(図3、図4参照)を作業対象として、機能モジュールをフレキシブルプリント基板などの帯状のケーブルによって相互に接続する。すなわち電子機器組立装置1は一端部(第1端部)が電子回路に予め接続された帯状のケーブルの他端部(第2端部)に形成された被装着部を回路基板のコネクタに自動的に装着する機能を有している。
図1において、基台2の上面2aには作業ステージ3が設けられており、作業ステージ3は作業対象の電子機器4を位置決めして保持する。ここで図3、図4を参照して、作業対象の電子機器4について説明する。なお図3は、ケーブルをコネクタに装着する前の状態を、また図4はケーブルをコネクタに装着した状態を示している。
図3において、電子機器4は表示装置を備えた車載用の電子機器であり、電子機器4の主体となる回路基板12はハンドリング用の基板キャリア11に保持された状態で作業ステージ3に搬入される。回路基板12は矩形の形状を有しており、回路基板12の上面には複数の電子部品12aが実装されている。回路基板12の一方の辺には、一端部15aが回路基板12に設けられた電子回路(図示省略)に接続された状態の帯状のケーブル15が、他端部15bを上方に向けた姿勢で装着されている。
回路基板12の実装面においてケーブル15が接続された辺に臨む位置には、コネクタ13が設けられている。コネクタ13には、ケーブル15の一端部15aの反対側の他端部15bに形成された被装着部15c(図12参照)が装着される。コネクタ13において、被装着部15cが装着される装着部13aの底面の端子面13b(図11参照)には接続用の端子列が形成されており、被装着部15cをコネクタ13に挿入して装着した状態では、被装着部15cに形成された配線パターン15d(図12参照)がこれらの端子列に接触する。
コネクタ13は、装着された被装着部15cの脱落を防止するためロック機構を構成するスイング部14(図11も参照)を備えている。スイング部14はコネクタ13に対して揺動して開閉自在に設けられており、被装着部15cをコネクタ13に装着する前に電子機器4が作業ステージ3に搬入された状態では、図3に示すように、スイング部14は押し倒されてロックが有効な状態にある。
被装着部15cをコネクタ13に装着する際には、スイング部14を起立させてロックを解除した状態でコネクタ装着作業を行う。そして図4に示すように、被装着部15cをコネクタ13に装着した後には、再びロックを有効にする。すなわちスイング部14を押し倒して閉状態とし、被装着部15cをスイング部14によって押さえ込んで脱落を防止する。
図1において作業ステージ3は昇降動作および水平面内での回転動作が可能となっており、電子機器4を作業対象とするケーブル15の装着作業においては、作業ステージ3を昇降させることにより、電子機器4を所定の作業高さに位置させる。また作業ステージ3を回転させることにより、電子機器4において作業対象となるケーブル15が設けられた辺を、以下に説明するロボット部5による所定の作業位置に位置合わせする。
基台2の上面2aのコーナ部にはコーナポスト2bが立設されており、コーナポスト2bの上端部には水平な架台2cが架設されている。架台2cの側面にはタッチパネルを備えた操作パネル10が配置されている。ロボット部5を対象とした操作や動作指示のための指示入力は、操作パネル10を介してのタッチ操作入力によって実行される。操作パネル10は表示機能を有しており、電子機器組立装置1によるケーブル装着動作において異常や不具合が発生した場合の報知は、操作パネル10に表示される。なお、電子機器組立装置1の座標系については、電子機器組立装置の正面からみて左右に水平な方向をX軸、X軸に前後方向に直交する軸をY軸、X軸、Y軸に上下方向に直行する軸をZ軸とする。
架台2cの下面には、以下に説明するロボット部5の駆動機構を内蔵した固定ベース部6が配設されている。固定ベース部6には個別に動作する6つのサーボ駆動機構が内蔵されており、それぞれのサーボ駆動機構は固定ベース部6から下方に延出した6本のリンク部材7を個別に駆動する。リンク部材7の下端部はベース部8に結合されている。上記構成において、固定ベース部6、リンク部材7、ベース部8はロボット部5を構成する。
ここでロボット部5は個別に動作する6本のリンク部材7を有する6自由度タイプのパラレルリンクロボットであり、固定ベース部6から下方に延出した6本のリンク部材7の下端部は、ケーブル15をコネクタ13に装着する装着作業を実行する作業ユニットであるヘッド部9のベース部8に結合されている。図2に示すように、リンク部材7はユニバーサルジョイント7aを介してベース部8に結合されており、この構成により、ロボット部5によってベース部8に6自由度の移動動作を行わせることが可能となっている。
ロボット部5によって移動するベース部8には、ケーブル保持ツール20とコネクタロックツール30とが装着され、さらに撮像部40および照明46を備えている。ケーブル保持ツール20は、コネクタ13へ装着される対象となるケーブル15を保持する機能を有しており、コネクタロックツール30はコネクタ13が備えたロック機構を解除または有効にするために使用される。
ロボット部5によってベース部8を移動させることにより、作業ステージ3に保持された電子機器4に対してケーブル保持ツール20とコネクタロックツール30とを相対的に移動させることができる。ケーブル15の被装着部15cをコネクタ13に装着する装着作業においては、ロボット部5、ケーブル保持ツール20、コネクタロックツール30を、制御部51(図9参照)によって作動させる。
すなわち制御部51は、ロボット部5を作動させることによりケーブル15の被装着部15cをコネクタ13に装着する作業を実行する。このコネクタ装着作業においては、制御部51によってロボット部5を作動させることにより、コネクタロックツール30によってコネクタ13のロックを解除または有効にする作業と、ケーブル保持ツール20で保持されたケーブル15をロックが解除されたコネクタ13に装着する作業を実行する。
ロボット部5およびケーブル保持ツール20は、ケーブル15を保持してコネクタ13に装着するケーブル装着機構を構成する。またロボット部5およびコネクタロックツール30は、コネクタ13のロックを解除または有効にするロック作動機構を構成する。なお本実施の形態においては、共通のロボット部5によってケーブル保持ツール20およびコネクタロックツール30を移動させる構成を示したが、ケーブル保持ツール20およびコネクタロックツール30を個別の駆動機構によって移動させる構成であってもよい。
ケーブル保持ツール20の詳細構成を説明する。図2に示すベース部8において、複数のユニバーサルジョイント7aの中心位置を示す駆動中心には開口部8aが設けられている。開口部8aから右方向に隔てた側端部近傍の下面には、屈曲形状の止め具26によってL字形状のブラケット25が結合されている。ブラケット25において水平方向に延出した固定部材25aの下面には、ケーブル保持ツール20が保持されている。ケーブル保持ツール20は、アクチュエータ24によって開閉動作を行う1対のチャック23およびアクチュエータ24の下面に結合されたケーブル吸着部21を備えている。
図5(a)に示すように、アクチュエータ24は固定部材25aの下面に結合されており、これにより、ケーブル保持ツール20はベース部8の下面側に固定保持される。アクチュエータ24から横方向に延出した1対の移動アーム24aには、それぞれチャック23が装着されている。アクチュエータ24を駆動することにより、移動アーム24aはチャック23とともに開閉方向(矢印a方向)に移動する。
1対のチャック23の間には、ケーブル吸着部21から延出する連結部21aの先端に設けられた接触部22が位置している。接触部22が、ケーブル15の片面(上面)に接触する(図12参照)ことにより、ケーブル保持ツール20によってケーブル15を保持することができる。また図5(b)に示すように、アクチュエータ24を駆動することにより、チャック23は接触部22から離隔する方向へ移動する(矢印b)。
図6、図7を参照して、接触部22およびチャック23の詳細形状を説明する。図6(a)、図7(a)に示すように、接触部22の下面はケーブル15の片面に接触する接触面22aとなっており、接触面22aには真空吸引孔22cと連通した吸着開口部22bが開口している。真空吸引孔22cはケーブル吸着部21の内部に設けられた吸引路を介して真空吸引源(図示省略)に接続されており、接触面22aにケーブル15を接触させた状態で真空吸引孔22cを介して吸着開口部22b内を真空吸引することにより、接触部22はケーブル15を真空吸着により保持する。
したがって真空吸引孔22cと連通した吸着開口部22bは、接触部22に接触するケーブル15の片面を真空吸引して保持する吸引部となっている。そしてこの吸引部は、接触部22の接触面22aに形成されており、1対のチャック23は、接触部22を挟む位置に配置された構成となっている。このようにケーブル15を幅方向から挟み込むチャック23の間に接触面22aを配置することにより、ケーブル15を安定して保持することができる。
接触部22の両側面22dとチャック23の内側面23cとは接離自在となっており、内側面23cの下端部には内側方向に突出した3角形断面の突部23bが設けられている。アクチュエータ24を駆動して、図6(b)に示すように、1対のチャック23を閉じる方向に動作させることにより、図7(a)に示すように、チャック23の内側面23cと接触部22の両側面22dとは所定の微細隙間を隔てて接近もしくは直接に当接した状態となる。
そしてこの状態では、1対のチャック23の内側面23cは接触面22aに接触して吸着保持されたケーブル15の両側端面に当接して、ケーブル15を幅方向に挟む。これにより、ケーブル15の吸着開口部22bに対する幅方向の位置が規制される。すなわち、ケーブル15を幅方向に挟む1対のチャック23は、接触部22の接触面22aに接触するケーブル15の吸着開口部22b(吸引部)に対する幅方向の位置を規制する幅方向規制部となっている。この構成において1対のチャック23はアクチュエータ24によって開閉動作可能となっており、図6(b)、図7(a)に示すように、閉じる方向に動作して1対のチャック23の相互の距離が接近しているときに、ケーブル15の幅方向の位置を規制するようになっている。
この状態においては、図7(b)に示すように、チャック23の下面23aが接触部22の接触面22aから所定の突出寸法dだけ下方に突出するようになっており、この突出部分によってケーブル15の両側端部を挟み込む。ここで、1対のチャック23の接触部22からの突出寸法dは、ケーブル15の厚さtの1倍〜3倍の範囲で適宜設定される。そしてこのようにチャック23の突出部分によってケーブル15を挟み込む構成において、下面23aには内側面23cから接触部22側に突出した突部23bが形成されていることから、1対のチャック23によって挟み込まれた状態のケーブル15が下方に脱落するのを防止することができる。
なお図6、図7に示すチャック23では、内側面23cの下端部に下面23aを接触部22側に突出させた突部23bを形成した例を示したが、このような突部23bは必ずしも必須ではない。すなわち図8に示すチャック23Aのように、内側面23cの下端部を平滑形状としてもよい。この例においても、チャック23Aの下面23aが接触部22の接触面22aから所定の突出寸法dだけ下方に突出するようになっており、この突出部分によってケーブル15の両側端部を挟み込む。ここで、1対のチャック23の接触部22からの突出寸法dは、図6、図7に示す例と同様に、ケーブル15の厚さtの1倍〜3倍の範囲で適宜設定される。
次にコネクタロックツール30の構成を説明する。図2において、ベース部8の左端部側の下面には、外側方向の斜め下方に延出する軸部33が、止め具34を介して固着されている。軸部33の先端には矩形ブロック形状の先端部31が装着されており、先端部31の両側端部には爪32が突設されている。軸部33、先端部31、爪32はコネクタ13のロックを解除または有効にするために使用するコネクタロックツール30を構成する。
前述のようにコネクタ13が備えたロック機構は、コネクタ13に起倒自在に設けられたスイング部14をコネクタロックツール30を用いて開閉することによって、被装着部15cのコネクタ13への固定および固定解除を行うようになっている。コネクタ13においてスイング部14が押し倒されてロックが有効な状態のコネクタ13のロックを解除するには、ロボット部5を作動させて、押し倒されて閉状態のスイング部14の下面とコネクタ13との間の隙間に爪32を差し込み、この状態で軸部33を移動させて爪32によってスイング部14を起立させる(図10(b)参照)。
またロックを解除した後に再びロックを有効にするには、起立した状態のスイング部14に対して上面側から先端部31を当接させ、先端部31によってスイング部14を押し倒す(図13(d)参照)。すなわちコネクタロックツール30は、スイング部14を押し倒す先端部31と、スイング部14を起こすために使用する爪32を有しており、本実施の形態では複数の爪32を先端部31に設けた構成となっている。
ベース部8の上面において開口部8aの近傍に立設されたブラケット41には、光学レンズ部42およびカメラ43より成る撮像部40が、撮像光軸43aを駆動中心に合わせて下向き姿勢で配設されている。ロボット部5を作動させて、ヘッド部9を作業ステージ3に保持された電子機器4の上方に位置させた状態で、撮像部40により撮像することにより、ケーブル保持ツール20に保持されたケーブル15の被装着部15cの画像および回路基板12に実装されたコネクタ13の画像を取得することができる。
ベース部8の下面側には開口部8aを囲む配置で支持部材44が下方に立設されている。支持部材44の下端部には、電子機器4の外形形状に対応した照明保持板45が保持されており、照明保持板45の下面にはLEDなどの発光体よりなる照明46が装着されている。撮像部40による撮像に際しては、照明46を点灯させて撮像対象のケーブル15、コネクタ13を照明する。すなわち電子機器組立装置1は、ヘッド部9のベース部8に、ケーブル15の被装着部15cを検出する撮像部40と照明46とを備えた構成となっている。
そしてケーブル保持ツール20とコネクタロックツール30は、撮像部40のカメラ43の撮像光軸43aを挟んで対向した配置となっている。このような配置により、共通の撮像部40によってケーブル保持ツール20に保持されたケーブル15とコネクタロックツール30によってロックの対象となるコネクタ13の双方を撮像することが可能となっている。
次に図9を参照して、電子機器組立装置1の制御系の構成を説明する。図9において、制御部51は、ロボット部5、作業ステージ3、撮像部40(カメラ)、照明46、アクチュエータ24(ケーブル保持ツール20)、操作パネル10、報知部55と接続されている。
制御部51がロボット部5、作業ステージ3、ケーブル保持ツール20のアクチュエータ24を制御することにより、図10〜図14に示すケーブル装着動作が実行される。すなわち上述の制御処理において、制御部51は、ロボット部5を作動させることによりコネクタロックツール30によってコネクタ13のロックを解除または有効にする作業と、ケーブル保持ツール20で保持されたケーブル15をロックが解除されたコネクタ13に装着する作業を実行する。
この作業の実行過程においては、制御部51は撮像部40および照明46を制御して、ケーブル15の被装着部15cおよびコネクタ13の位置検出のための撮像処理を実行させる。これらの処理の実行のための操作指令は操作パネル10を介して入力され、これにより制御部51は所定の制御処理を実行する。報知部55は、電子機器組立装置1によるケーブル装着動作の実行過程において異常や不具合が発生した場合の報知を、操作パネル10に表示させる処理を行う。
また制御部51は内部制御処理機能としてのケーブル位置検出部52、コネクタ位置検出部53、コネクタ状態確認部54を備えている。撮像部40およびケーブル位置検出部52、コネクタ位置検出部53、コネクタ状態確認部54は、電子機器組立装置1が備える画像認識システムを構成し、以下に説明する機能を有している。
ケーブル位置検出部52は、ケーブル保持ツール20に保持された状態のケーブル15の被装着部15cを撮像部40によって撮像した認識画面に基づいて、被装着部15cの位置を検出する。コネクタ位置検出部53は同様に装着対象となるコネクタ13を撮像部40によって撮像した認識画面に基づいて、コネクタ13の位置を検出する。被装着部15cをコネクタ13に装着するケーブル装着動作においては、制御部51は被装着部15cおよびコネクタ13の位置検出結果に基づいて、ロボット部5によるケーブル保持ツール20の移動を制御する。コネクタ状態確認部54は、撮像部40によってコネクタ13を撮像した画像に基づいて、コネクタ13が備えたロック機構の状態を確認する処理を行う。
そしてコネクタ状態確認部54はケーブル15の被装着部15cが装着される前のコネクタ13のロックの状態を確認し、確認の結果、ロックが有効もしくは被装着部15cを装着する作業を妨げている状態であると判断した場合には、制御部51は当該コネクタ13に対するケーブル15の被装着部15cの装着作業を中止するとともに、報知部55によってオペレータにその旨を報知するようにしている。さらにコネクタ状態確認部54は、ケーブル15の被装着部15cが装着されたコネクタ13のロックの状態を確認し、確認の結果、ロックが有効に機能している状態ではないと判断した場合には、制御部51は報知部55によってオペレータにその旨を報知する。
上記説明したように、本実施の形態に示す電子機器組立装置1は、帯状のケーブル15の被装着部15cを作業ステージ3に保持された電子機器4のコネクタ13に装着する機能を有するものであり、ケーブル15を保持するケーブル保持ツール20と、作業ステージ3に保持された電子機器4に対してケーブル保持ツール20を相対的に移動させるロボット部5と、ロボット部5を作動させることによりケーブル15の被装着部15cをコネクタ13に装着する制御部51とを備えた構成となっている。
そして上記構成において、ケーブル保持ツール20は、ケーブル15の片面に接触する接触部22と、接触部22に接触するケーブル15の片面を真空吸引して保持する吸引部としての吸着開口部22bと、接触部22に接触するケーブル15の吸引部に対する幅方向の位置を規制する幅方向規制部としての1対のチャック23を有する構成となっている。このような構成により、剛性が低く撓みやすいケーブル15を高い位置精度で安定して保持することができる。したがってこのような特性を有するケーブル15を対象とする場合にあっても、コネクタ13への接続作業を簡便な構成の設備によって自動化し、作業効率を向上させることができる。
次に図10〜図14を参照して、前述構成の電子機器組立装置1によるケーブル装着作業について説明する。このケーブル装着作業は、一端部15aが電子回路に接続されその一端部15aに近い根元部が上方に立っている帯状のケーブル15の他端部15bに設けられた被装着部15cを、電子機器4のコネクタ13に自動的に装着する電子機器組立方法に相当する。
図10(a)は、ケーブル装着作業を実行する前の電子機器4の状態を示している。すなわちケーブル装着作業の対象となるケーブル15は、その一端部15aが電子機器4において回路基板12に形成された電子回路(図示省略)に接続された状態であり、その一端部15aに近い根元部15*が回路基板12の縁部から上方に立って、他端部15bを上に向けた姿勢となっている。なおこのとき、ケーブル15の変形の度合いに応じて回路基板12から立ち上がった状態のケーブル15の姿勢は一定では無く、図10(a)に示すように、空中でのケーブル15の姿勢や位置にはばらつきが存在する。
図10(b)は、ケーブル装着作業の開始に際して実行されるコネクタ13におけるロックの解除を示している。すなわち電子機器組立装置1において作業ステージ3上に搬入された状態の電子機器4においては、コネクタ13はスイング部14が倒されてロックが有効となった状態にある。このためケーブル装着作業の開始に際しては、コネクタロックツール30を用いてコネクタ13において倒された状態のスイング部14を起立させてロックを解除する作業を行う。
このロックの解除に際しては、まずロボット部5を作動させてベース部8に固定されたコネクタロックツール30を移動させ(矢印d)、先端部31をロックの解除の対象となるコネクタ13の側方に位置させる。このとき、図10(b)に示すように、まずコネクタ13においてスイング部14が揺動する際の開放側の端部に先端部31を位置させる(破線で示す先端部31参照)。次いで爪32をスイング部14の下面とコネクタ13との間の隙間に進入させた状態で、軸部33を斜め上方に移動させる(矢印e)。これにより、スイング部14は軸部33とともに移動する爪32によって、開放側の端部が起立するように揺動し、コネクタ13のロックが解除される。
次いでこのようにしてロックが解除された状態のコネクタ13に、ケーブル15の被装着部15cを装着するケーブル装着作業が実行される。ここではまずロボット部5を作動させて、図11(a)に示すようにケーブル保持ツール20を移動させ(矢印f)、立ち姿勢のケーブル15の根元部15*に対してケーブル保持ツール20の接触部22(図5、図6参照)およびチャック23を接近させる。このとき、ケーブル保持ツール20が備えた1対のチャック23は開いた状態にあり、根元部15*を1対のチャック23の間に導くことが可能となっている。
次いで図11(b)に示すように、ケーブル保持ツール20の接触部22をケーブル15の根元部15*に接触させてケーブル15の中間部分を保持する。そしてさらにケーブル保持ツール20をコネクタ13へ接近させて、ケーブル15をコネクタ13側に押し倒す(矢印g)。この過程においてケーブル15は1対のチャック23の間に誘い込まれ、接触部22の接触面22aに倣う。すなわち図12(a)に示すように、開いた状態の1対のチャック23の間にケーブル15を導き、接触部22の接触面22a(図6参照)にケーブル15の上面を接触させて倣わせる。
次いでアクチュエータ24を駆動して、図12(b)に示すように、1対のチャック23を閉じる方向に移動させ(矢印i)、ケーブル15の両側端部をチャック23によって挟み込んで幅方向の位置を規制する。これとともに、接触部22の下面23aに形成された吸着開口部22bによってケーブル15を真空吸引して保持する。このとき、ケーブル15は他端部15bがチャック23から第1の突出長さL1だけ突出した状態となっている。この第1の突出長さL1は、図11に示す状態におけるケーブル15の変形の程度によって個別に変動する。
そして図11(b)にて押し倒したケーブル15をケーブル保持ツール20が備えた接触面22aの吸着開口部22bによって吸引保持し、図11(c)に示すように、この状態でケーブル保持ツール20をコネクタ13に対して相対的に移動させる(矢印h)。このとき、ケーブル15の他端部15bはチャック23から上述の第1の突出長さL1だけ突出した状態となっている。
次に、図13(a)に示すように、ケーブル保持ツール20をコネクタ13に対して移動させて(矢印k)、ケーブル15の他端部15bをコネクタ13に対して仮位置決めする。この仮位置決めは、ケーブル15の他端部15bがコネクタ13と同時にカメラ43による撮像が可能な撮像範囲に位置するように、ケーブル保持ツール20の位置を調整しながら行われる。
ここでは他端部15bが上述の撮像範囲に位置するような突出長さL2およびケーブル保持ツール20の停止位置が予め設定されている。この仮位置決めに際しては、図12(c)に示すように、このような突出長さL2が実現されるように、接触面22aによるケーブル15の吸引保持面をスライドさせながらケーブル保持ツール20を移動させる(矢印j)。すなわち、ケーブル保持ツール20でケーブル15を保持したままケーブル保持ツール20をケーブル15に対して相対的にスライドさせて、ケーブル保持ツール20をケーブル15の他端部15bへ接近させる。
次いでこの状態で、コネクタ13と他端部15bとを位置合わせするための認識処理が行われる。すなわちコネクタ13と仮位置決めされたケーブル15の他端部15bを、電子機器組立装置1が備える画像認識システムのカメラ43で撮像する。これにより、図14に示す認識画像40aが取得される。この認識画像40aには、ロック機構を構成するスイング部14が開状態となったケーブル装着前のコネクタ13の画像とともに、このコネクタ13に装着されるケーブル15を保持したケーブル保持ツール20のチャック23の先端部を平面視した画像が現れている。認識画像40aにおいては、撮像部40とケーブル保持ツール20との位置関係は固定されていることから、チャック23は常に画像枠方向と一致した固定位置で現れる。
これに対し、チャック23によって保持されたケーブル15の被装着部15cは、保持動作における位置誤差などに起因して、幾分の位置ずれを示す。さらに、コネクタ13についても、作業ステージ3における電子機器4の位置保持誤差、電子機器4におけるコネクタ13の位置誤差などに起因して位置ずれ状態にある。すなわち、コネクタ13およびコネクタ13に装着される被装着部15cとの相対的な位置関係は、装着作業対象となるコネクタ13毎にばらついている。
このため、被装着部15cをコネクタ13の装着部13aに挿入して装着するに際しては、図14に示す認識画像40aを画像認識システムを構成するケーブル位置検出部52、コネクタ位置検出部53によって認識処理することにより、このような相対的な位置関係のばらつきを補正するための位置補正データを取得する。
すなわち、上述の画像認識システムが撮像したコネクタ13とケーブル15の画像に基づいて、両者の相対的な位置関係を求める。具体的には、被装着部15cの位置を検出するための認識点R1、R2の位置を求め、認識点R1、R2の中点を被装着部15cの位置を示す代表点PM1とする。さらにコネクタ13の位置を検出するための認識点R3、R4、R5の位置を求め、認識点R4、R5の中点をコネクタ13の位置を示す代表点PM2とする。
この後ケーブル15のコネクタ13への装着を行う。すなわち上述の認識処理により求められた位置関係に基づいて、ケーブル保持ツール20をコネクタ13に対して相対的に移動させて、他端部15bの被装着部15cをコネクタ13に装着する。この装着動作においては、それぞれの代表点PM1,PM2が適正な位置関係となるよう、ケーブル15を保持したケーブル保持ツール20を位置合わせする。すなわち図13(b)に示すように、ケーブル保持ツール20を移動させて(矢印m)、ケーブル15の被装着部15cを電子機器4のコネクタ13の装着部13aに幾分斜め方向から挿入する。このとき、スイング部14は起立した開状態にあり、被装着部15cの挿入を妨げない。
次いで図13(c)に示すように、ケーブル保持ツール20の姿勢を調整して(矢印n)、被装着部15cを水平姿勢にしてコネクタ13の端子面13b(図11(a)参照)に、被装着部15cに形成された配線パターン15d(図12(a)参照)を接触させる。このようにしてコネクタ13にケーブル15を装着した後には、コネクタ13におけるケーブル15のロックを有効にする操作が行われる。
すなわち図13(d)に示すように、ロック操作の対象となるコネクタ13にコネクタロックツール30を接近させる(矢印o)。そしてコネクタロックツール30の先端部31を、起立状態のスイング部14に上方から当接させてスイング部14を押し倒す。これにより装着部13aに装着された被装着部15cは、スイング部14によって押さえ込まれ、コネクタ13からのケーブル15の脱落が防止される。
なお上述の電子機器組立方法においては、ケーブル保持ツール20に保持されたケーブル15をコネクタ13に装着するに際し、ケーブル保持ツール20をコネクタ13に対して相対的に移動させてケーブル15の他端部15bをコネクタ13に対して仮位置決めし、コネクタ13と仮位置決めされたケーブル15の他端部15bを画像認識システムで撮像した画像に基づいて両者の相対的な位置関係を求め、この位置関係に基づいてケーブル保持ツール20をコネクタ13に対して移動させるようにしているが、これらの作業操作は必ずしも必須ではなく、作業対象となるケーブル15やコネクタ13の位置精度、許容される位置誤差の程度などの作業条件によってはこれらを省略することも可能である。
また、上述の実施例においては、作業対象となるケーブル15として一端部15aに近い根元部15*が上方に立っている状態の帯状のケーブル15を対象としているが、この条件も必ずしも必須では無く、ケーブル15の中間部分をケーブル保持ツール20によって保持する形態であればよい。
このように上記説明した電子機器組立方法は、前述構成の電子機器組立装置1によってケーブル15の被装着部15cを電子機器4のコネクタ13に装着する電子機器組立方法において、電子機器組立装置1に搬入された電子機器4を対象として、まずコネクタロックツール30を使用してコネクタ13のロックを解除し、次いでケーブル15をケーブル保持ツール20で保持し、ケーブル保持ツール20を移動させてケーブル15の被装着部15cを電子機器4のコネクタ13に装着し、コネクタロックツール30によりコネクタ13のロックを有効にするようにしている。
そして上記構成の電子機器組立装置1においては、ケーブル保持ツール20とコネクタロックツール30は、ロボット部5によって移動するベース部8に装着されており、上述の電子機器組立方法では、コネクタ13のロックを解除してから有効にするまでの動作はロボット部5によって実行されるようになっている。このような構成により、ロック機構付きのコネクタ13を有する電子機器4の組み立てを自動化して、作業効率を向上させることができる。
また図5〜図8に示す実施例では、接触部22に接触するケーブル15の幅方向の位置を規制する幅方向規制部の構成として、接触部22を挟んで配置された1対のチャック23をアクチュエータ24によって開閉させる構成例を示したが、図15、図16に示す変形例のように、開閉動作を行うチャック23を用いずに幅方向規制部を構成するようにしてもよい。
図15(a)に示す接触部27は、図5における接触部22と同様の機能を有するものである。すなわち接触部27の下面には、ケーブル保持ツール20によるケーブル装着動作においてケーブル15の片面に接触して保持する接触面27aが設けられており、接触面27aには真空吸引孔27cと連通した吸着開口部27bが開口している。接触面27aにケーブル15を接触させた状態で真空吸引孔27cを介して吸着開口部27b内を真空吸引することにより、接触部27はケーブル15を真空吸着により保持する。したがって真空吸引孔27cと連通した吸着開口部27bは、接触部27に接触するケーブル15の片面を真空吸引して保持する吸引部となっている。そしてこの吸引部は、接触部27の接触面27aに形成されている。
図15(a)に示すように、接触面27aの側端部には、接触面27aから下方に突出した1対の突出部27dが設けられている。突出部27dのそれぞれの内側の側面27eは平行に設けられており、図16(a)に示す側面27eの間の距離b1は、保持する対象となるケーブル15の幅方向の寸法に基づいて決められており、これにより、図15(b)に示すように、保持対象のケーブル15の両側端面の位置を側面27eによって規制することができる。
すなわちここに示す実施例では、接触面27aから突出した1対の突出部27dが接触部22に接触するケーブル15の幅方向の位置を規制する幅方向規制部となっている。なお、1対の突出部27dのそれぞれの側面27eは、少なくとも一部が一方向(ケーブル15の長手方向)に平行になっていればよく、必ずしも接触面27aの全範囲に亘って平行に設ける必要はない。
接触部27において真空吸引孔27cの一方側の端部には、端面における側面27eの間の寸法を距離b1よりも大きい開口寸法b2で設けたテーパ面27fが形成されている。テーパ面27fは接触部27によってケーブル15を保持する際に、ケーブル15を保持位置までガイドする導入部としての機能を有している。
すなわち接触部27によってケーブル15を保持する際には、まず接触面27aにおいてテーパ面27fが形成された導入部をケーブル15の片面(吸着保持面)に接近させ、テーパ面27fによってケーブル15の側端面をガイドしながら接触面27aの全範囲にケーブル15を接触させる。なおこの場合においても、図16(b)に示すように、一対の突出部27dの接触部27の接触面27aからの突出寸法dは、ケーブル15の厚さtの1倍〜3倍の範囲から選択して設定する。このような構成の接触部27を用いる場合にあっても、薄くて撓みやすいケーブル15を位置精度よく安定して保持することができ、図5〜図8に示す実施例と同様の効果を得る。