図1は、本発明の1実施例構成図を示す。
図1において、電子ビームコラム1は、電子ビーム2を発生する鏡筒であって、図示外の電子ビーム2を発生する電子銃、電子銃で発生された電子ビーム2を集束する集束レンズ、集束レンズで集束した電子ビーム2を細く絞ってフォトマスク(試料)9に照射しつつ図示外の2段偏向器でXY走査させる対物レンズ4、およびフォトマスク9で発生した2次電子を検出する検出器などから構成される公知のものである。典型的な電子ビームコラム1は直径が10cm程度、長さが数十センチ程度である。
振動モード解析上では、電子ビームコラム1の色々な屈曲運動が算出されるが、剛性が非常に大きい、あるいは電子レンズの特性によって画像上には100分の1以下に縮小投影されるため電子ビームコラム1自身の屈曲振動が画像揺れに与える影響は無視できるほど小さく、電子ビームコラム1の振動は、事実上電子ビームコラム1が設置されている天板の振動とほぼ同じと見なせることが判明している。
電子ビーム2は、電子ビームコラム1を構成する図示外の電子銃で発生された電子ビームである。
対物レンズ3は、電子ビームコラム1を構成するものであって、電子ビーム2を細く絞ってフォトマスク(試料)9に照射するものである。照射された細く絞られた電子ビーム2は図示外の2段偏向器でXY走査される。
真空チャンバー4は、真空に図示外の真空排気系で排気される容器であって、底板、天板を有する真空容器であり、図示のように、XYステージ6、マスクパレット7、フォトマスク9などを真空中に収納する容器である。真空チャンバー4の上部の天板には電子ビーム2を照射するための電子ビームコラム1が配置されている。真空チャンバー4は純鉄など磁気シールド効果がある材料で出来ており、その厚みは大凡3cm、天板の厚みは6cm程度ある。
XYステージ6は、底板上に固定され、上部に搭載されたマスクパレット7、フォトマスク9などをXY方向に精密に移動させるものである。XY方向の移動は、図示外のレーザー干渉計によりリアルタイムにX、Y方向の位置を測定しつつ所望の位置(指定された位置)に移動制御する。
マスクパレット7は、フォトマスク9を保持するものであって、アルミなどの金属や低熱膨張セラミックなどで出来ており、電子ビーム2が近傍を通過するため、非磁性材料が使用されている。
天板は、真空チャンバー(試料室)4の上側の頑丈な天板であって、対物レンズ3と剛性接続(固定)されたものである。通常は、磁気シールドを行うために、純鉄などが利用される。
底板は、真空チャンバー(試料室)4の下側の頑丈な底板である。
次に、構成および動作を説明する。
(1)フォトマスク9を装着したマスクパレット7を、図示外の試料交換ロボットにより図示の位置に搬送して固定する。
(2)XYステージ6を図示外のレーザー干渉計でリアルタイムに計測しつつ移動制御し、指定された位置に対物レンズ3により細く絞られてXY走査される電子ビーム2が照射される位置に移動させる。これにより、フォトマスク9上の所望の場所(測長場所)に、電子ビーム2がXY走査する位置に対応づけられたこととなる。
(3)次に、電子ビーム2を対物レンズ3で細く絞った状態でXY走査し、そのときに放出された2次電子を図示外の検出器で検出・増幅し、画像を記録する。この際、同期してセンサ(2)8、(3)8によってフォトマスク9の振動検出して記録すると共にセンサ(1)5によって対物レンズ3(あるいは天板)の振動検出して記録する。
(4)ここでは、振動測定あるいは位置測定を行うためにセンサ5,8として加速度センサを利用する。加速度センサは、フォトマスク8の側と、電子ビームコラム1の側(対物レンズ3の磁極あるいはその近傍)にそれぞれ配置する。
(5)(3)で記録したフォトマスク9の振動信号(第1の信号)、あるいは該振動信号と対物レンズ3(あるいは天板)の振動信号との差分の振動信号(第2の信号)を算出し、(3)で記録したフォトマスク9の画像について、第1の信号あるいは第2の信号をもとに画素あるいは所定連続画素あるいは1ライン画素あるいは複数ライン画素を当該第1の信号あるいは第2の信号に相当する距離だけシフト(X方向およびY方向の両者にシフト)し、画像振動を補正して画像の揺れを低減する。これにより、たとえフォトマスク9が振動(例えば電源周波数の2倍の110Hz,100Hzで振動)しても当該フォトマスク9の振動を直接検出して該振動分に相当する距離だけ画像中の該当する画素あるいは連続画素あるいは1ライン分の画素あるいは複数ライン分の画素をシフトし、当該画像の振動を低減することができる。
(6)尚、画像信号を取得しつつ、かつ第1の信号あるいは第2の信号をリアルタイムに検出して第1の信号あるいは第2の信号を算出し、画像信号中の該当画素の部分をシフト(X方向およびY方向にシフト)して振動を除去するようにしてもよい。ここでは、画像信号中の該当画素の部分をシフトしたが、これに限らず、電子ビームを該当画素の部分でシフトして振動を低減するようにしてもよい(図13など参照)。
次に、図2の説明図をもとに図1の構成の動作を詳細に説明する。
図2は、本発明の動作説明図(画像振動低減)を示す。ここでは、図1で、マスクパレット7に加速度センサ8を搭載してフォトマスク9の振動を検出(更に加速度センサ5を搭載して対物レンズ3の極などの振動を検出)し、その検出値(あるいは差分の検出値)を用いて、画像の振動の除去について説明する。
加速度センサ8は、例えば、現在では、MEMS技術の発展により、重さが1gよりも小さく、1cmよりも小さい高精度高感度半導体加速度センサが入手できる。一般に入手可能な半導体センサは100μg以下の加速度を検出することが可能である。開発レベルでは1μgが測定できるものもある。このような高感度センサを利用すると、共振によるフォトマスク9の揺れなどを検出することが可能で、X方向、Y方向に成分に分離された信号を2重積分することでマスクのXY変位量を知ることが出来る。
加速度センサが1軸の場合は、マスクパレット7に複数置くことで、その差分計測からX,Y,X-rot, Y-rotを独立に知ることが出来る。多軸センサ(X,Y,X-rot,Y-rot一体型等)を使用する場合は、マスクパレット7に1つセンサを配置することでX、Y軸変位量を抽出するために必要な振動情報を検出できる。
図2において、S1は、同期信号を発生する。これは、図1の対物レンズ4側のセンサ(1)5、フォトマスク9側のセンサ(2)8に供給する同期信号、および画像を取得する同期信号を発生する。
S2からS5は、振動センサ(X1)、(X2)、(Y1)、(Y2)が同期信号に同期してフォトマスク9の側および対物レンズ3の側の振動を検出する。ここで、振動センサ(X1)、(Y1)は対物レンズ4の側の振動を検出し、振動センサ(X2)、(Y2)はフォトマスク8の側の振動を検出する。
S6は、XY位置差を計算する。これは、フォトマスク9側の振動センサ(X2)、(Y2)で検出した振動信号と、対物レンズ4側の振動センサ(X1)、(Y1)で検出した振動信号との差分の位置差を計算する。
S7は、倍率調整する。これは、S6で計算した位置差が、現在取得した画像上の倍率に対応する距離となるように当該倍率に応じた調整を行う。
S8は、同期信号に同期して画像を取得する。これは、対物レンズ4で細く絞った電子ビーム2をフォトマスク9に照射しつつX方向およびY方向に平面走査し、その時に放出された2次電子を検出器で検出・増幅し、画像を取得する。
S9は、画像ピクセル逓倍する。これは、S8で取得した画像について、画像振動に相当する分だけシフトするために、画素数をメモリ上で逓倍(例えば10倍)する。
S10は、取得画像を位置シフトし、重ね合わせる。これは、S9で画像逓倍した画像上で、S7で倍率調整した後の画像振動に相当する位置差だけ、該当画素、該当連続画素、該当1ライン分の画素、あるいは該当複数ライン分の画素をシフト(X方向およびY方向にシフト)し、画像振動を除去する。即ち、振動センサ(X1)、(X2)、(Y1)、(Y2)で算出した画像振動の位置差に相当する部分の画像上の画素(1画素、連続画素、1ライン分の画素あるいは複数ライン分の画素)を、当該位置差に相当する方向(X方向およびY方向)にシフトし、重ね合わせ、画像振動(フォトマスク9の振動)を低減することが可能となる。重ね合わせ後に、画素数を元の画像と同じに戻す。
S11は、振動低減画像を出力する。
以上によって、図1のセンサ(X2)、(Y2)8で検出したフォトマスク9の振動と、センサ(X1)、(Y1)5で検出した対物レンズ3の振動との差分(XY位置差)をもとに、同期して取得した画像中の該当画素(あるいは該当連続画素、該当1ライン分の画素、該当複数ライン分の画素)を位置シフトして画像振動を低減することが可能となる。尚、差分の代わりに、フォトマスク9の振動のみで画像振動の低減を行ってもよい。
(1)尚、本実施例では、信号を同時刻に取得するための同期信号(S1)がある。その同期信号に同期して振動センサの信号および画像信号が取得される。これにより、画像が取得された時の位置あるいは振動が既知の状態となる。
(2)この情報を用いることで、振動が無いときの対物レンズ3の位置と測定対象のフォトマスク9の位置との関係からのずれを算出し、元の位置に戻すための補正を行うことできる。センサの出力と実際の画像揺れ量の間に比例関係が存在するので、適当な倍率補正を行って、センサの出力値を画像上の揺れ量に対応させる(S7)。
(3)デジタル画像は、最少単位が1ピクセルなので、そのままでは、サブピクセル振動を表現できない。そこで、画像を重ね合わせる前に、ピクセルを必要なだけ逓倍してサブピクセルが表現できるようにしたうえで(S9)、振動量を加味して重ね合わせる(S10)。重ね合わせた後に、元のピクセル数に戻すように圧縮処理を行うことで、振動の無い画像を得ることが出来る(S11)。
図3は、本発明の説明図(その1)を示す。
図3の(a)はフローチャートを示し、図3の(b)は補正前と補正後の画像を模式的に示す。
図3の(a)において、S21は、マスク、対物レンズ(天板)の振動を同時測定、およびSEM画像を同時取得する。これは、図1、図2で、センサ(2)8でフォトマスク9、センサ(1)5で対物レンズ(天板)3の振動を同時測定、および対物レンズ3で細く絞った電子ビーム2をフォトマスク3に照射しつつ平面走査したときに放出された2次電子を図示外の検出器で検出して画像を同時取得する。
S22は、加速度センサの信号を積分して位置の差を計算する。これは、S21で取得したフォトマスク9に固定したセンサ(2)8の振動信号および対物レンズ(天板)3に固定したセンサ(1)5の振動信号を、二重積分して位置の差をそれぞれ計算する。例えば、ある時間にフォトマスク9のセンサ(2)8および対物レンズ(天板)3のセンサ(1)5を二重積分した後の位置がそれぞれa,bである場合、差分はa−bと評価する。これはある瞬間にフォトマスク9と対物レンズ(天板)3とが振動でa−bだけ位置がずれていることを意味している。この際、画像情報の取り込む速度は、位置測定の誤差が生じない程度に高速に行う。
S23は、倍率調整する。これは、S22で計算した位置差信号について、S21で取得した画像の倍率に対応した距離に調整する。
S24は、差分が0になるようにSEM画像位置を移動する。これは、S21で取得した画像について画素数を逓倍した後、S23で倍率調整後の位置差信号をもとに、該当部分の画素(1画素、複数画素、1ライン分の画素、あるいは複数ライン分の画素)を移動(X方向およびY方向にシフト)し、画像振動を除去する。
S25は、前のSEM画像に重ね合わせる。これは、S24で該当画素の画像振動を除去した後、これを前のSEM画像に重ね合わせる。
ここで、画像取得するための電子ビーム走査方向は必ずしも、振動方向とは一致しないので、得られた位置情報を画像上のX、Y軸に平行な成分に計算して分離出力する。取得した画像(ここでは1ライン)を必要なだけ逓倍してピクセル数を増やす(例えば元画像が512ピクセルであれば、1024あるいは2048ピクセル等に直線近似、バイリニア、バイキュービック、ニアレストネイバーなどの近似補間関数を用いて変換)。そして、センサから得られたX、Y軸に沿った画像ずれ量を加味して、前の画像に加算する。これを必要回数繰り返し、1つの画像フレームを完成させる。
S26は、画像取得が完了か判別する。YESの場合には、S27に進む。NOの場合には、S21以降を繰り返す。
S27は、SEM画像を出力する。これは、S26のYESで画像が全て取得完了したと判明したので、必要に応じて画素数をもとの画像の画素数に戻し、SEM画像を出力する。
以上のようにS21からS27を実行することにより、位置の差が0となるようにSEM画像を移動し、最後にピクセル圧縮を行って、元の画像サイズに戻し、振動補正後のSEM画像を出力することが可能となる。
図3の(b)は、図3の(a)の模式説明図を示す。左側が補正前、右側が補正後を示す。
図3の(b−1)は補正前の画像が右側にシフト(振動でシフト)した例を模式的に示す。図4の(b−2)は補正後の画像の例を模式的に示す。この(b−2)は、(b−1)の補正前はbだけ右シフトしたと判明したので(S22の位置の差)、その位置の差のbだけ左側に補正して差を0にした状態(ろうそくが中央の位置)に戻す補正したものである。
同様に、図3の(b−3)は補正前の画像が左にシフト(振動でシフト)した例を模式的に示す。図3の(b−4)は補正後の画像の例を模式的に示す。この(b−4)は、(b−3)の補正前はbだけ左シフトしたと判明したので(S22の差)、その差のbだけ右側に補正して差を0にした状態(ろうそくが中央の位置)に戻す補正したものである。
図3の(b−5)は補正前の振動による位置の差を左にb,右にbだけずれた画像を重ねたものであって、図示のように「ぼけ有」となる。
図3の(b−6)は補正後の振動による位置の差をそれぞれ補正した後の画像を重ねたものであって、図示のように「ぼけ無」となる。
尚、bの位置の補正は、取得画像の1ライン毎(あるいは1ライン内で位置が所定範囲よりも大きく変動している場合には1画素毎あるいは位置変動が閾値範囲内の所定画素毎)に行う。
尚2、bの位置の補正は、図3の(b)では説明を簡単にするために、左右方向(X方向)のみ行ったが、実際の位置の補正は更に上下方向(Y方向)にも同様にして行う。
図4は、本発明の動作説明フローチャート(その1)を示す。
図4において、S31は、画素を逓倍する。これは、例えば既述した図3の(a)のS21でフォトマスク9の画像を取得し、当該取得した画像の画素数を逓倍(例えば10倍などに逓倍)し、元画像の1画素以下のシフト補正が可能な状態にする。
S32は、位置の差分を単位ごとにまとめてシフトする。これは、既述した図3の(a)のS22で計算したフォトマスク9の位置と、対物レンズ(天板)3との位置の差(差分)が同じ画素をまとめてシフトする。
S33は、抜け部分にスムージング処理を行う。これは、S32でフォトマスク9と対物レンズ(天板)3との位置の差に相当する分だけ、画像中の該当画素をシフトしたため、元の位置に画素がなくなって抜け部分が存在するので、当該抜け部分についてスムージング処理(例えばガウシャン、メディアンブロックノイズ除去など)を行い、抜け部分の画素を補間する。
以上によって、取得画像中のフォトマスク9と対物レンズ(天板)3との位置の差がある該当画素についてシフト補正およびスムージング処理を行い、画像振動を低減することが可能となる。
図5は、本発明の説明図(その2)を示す。これは、既述した図1、図2のセンサ(1)5、センサ(2)8で検出した加速度α1、α2、およびこれら加速度α1、α2を2重積分して算出した位置(X1、Y1)、(X2、Y2)とその位置の差分(X1、Y1)−(X2、Y2)を示す。
以上のように、
(1)図1の対物レンズ3側のセンサ(1)5とフォトマスク9側のセンサ(2)8でそれぞれ加速度α1、α2を検出してテーブルに設定する。
(2)(1)でテーブルに設定した加速度α1、α2をそれぞれ二重積分して位置(X1、Y1)、(X2、Y2)をそれぞれ算出し、テーブルに設定する。
(3)(2)でテーブルに設定した位置(X1、Y1)、(X2,Y2)の差分を算出してテーブルに設定し、画像の振動を検出することが可能となる。
(4)(3)で設定した位置の差分(X1、Y1)−(X2、Y2)だけ、同期して取得した画像(SEM画像)をシフト補正することにより、取得画像から画像振動を低減することが可能となる。尚、フォトマスク9側のセンサ(2)8のみを用い、取得画像から画像振動を低減してもよい。
図6および図7は、図1のフォトマスク9の周辺に2つのセンサを固定して電子ビーム2の照射位置における振動を算出する説明図およびそのフローチャートを示す。以下詳細に説明する。
図6は、本発明の説明図(その3)を示す。
図6において、センサ(11)、センサ(12)は、図1のフォトマスク9の周辺に固定した例えば図示のセンサ(2)8、センサ(3)8に対応する。
位置(X11、Y11)、位置(X12、Y12)は、センサ(11)(例えば図1のセンサ(2)8)、センサ(12)(例えば図1のセンサ(3)8)によって検出したフォトマスク9の加速度を二重積分して算出したそれぞれの位置(振動位置)である。
電子ビーム照射位置(X1、Y1)は、センサ(11)、センサ(12)によって検出した加速度を二重積分したそれぞれの位置(X11、Y11)、位置(X12、Y12)について、電子ビーム照射位置における振動の位置を示す。
ここで、X1=(L1(X11)+L2(X12))/(L1+L2)・・・(式1)
Y1=(L1(Y11)+L2(Y12))/(L1+L2)・・・(式2)
L1はセンサ(12)から電子ビーム照射位置までの距離、L2はセンサ(11)から電子ビーム照射位置までの距離を表す。
図7は、本発明の動作説明フローチャート(その2)を示す。
図7において、S41は、センサ(11)、(12)の位置を算出する。これは、上述したように、センサ(11)、(12)として例えば図1のセンサ(2)8、センサ(3)8のように固定した場合、これら2つのセンサ(11)、(12)で加速度を検出して二重積分して位置(X11、Y11)、(X12、Y12)をそれぞれ算出する。
S42は、電子ビーム照射位置における振動の位置を算出する。これは、S41で固定した2つのセンサ(11)、(12)で検出した加速度を2重積分して算出したそれぞれの位置(X11、Y11)、(X12、Y12)について、電子ビーム照射位置における振動の位置(X1、Y1)を上述した(式1)、(式2)で、右側に記載したように算出する。
以上によって、フォトマスク9の電子ビーム照射位置における振動の位置を当該フォトマスク9の外側に固定した2つのセンサ(11)、(12)によって検出・算出することが可能となる。
図8は、本発明の1実施例構成図(その2)を示す。この図8は、振動あるいは位置を検出するために、超高精度のレーザー干渉式位置測定装置を利用する例を示す。当該図8は、ミラー(1)51、ミラー(2)51と距離測定装置(1)10、およびミラー(3)81、ミラー(4)81と距離測定装置(2)10により、対物レンズ3の振動する位置およびマスクパレット7(フォトマスク9)の振動する位置をそれぞれ検出し、これら検出結果をもとに補正を行う例を示す。
図8において、ミラー(1)51、ミラー(2)51および距離測定装置(1)10は、ミラー(1)51、ミラー(2)51を対物レンズ3のポールピースの孔の外周部分(あるいは天板)にそれぞれ固定し、距離測定装置(1)10、例えばレーザー干渉計で該ミラー(1)51、ミラー(2)51の位置、ここでは、振動する位置情報をリアルタイムにそれぞれ検出するものである。
ミラー(3)81、ミラー(4)81および距離測定装置(2)10は、ミラー(3)81、ミラー(4)81をマスクパレット7(あるいはフォトマスク9)の周辺部分にそれぞれ固定し、距離測定装置(2)10、例えばレーザー干渉計で該ミラー(3)81、ミラー(4)81の位置、ここでは、振動する位置情報をリアルタイムにそれぞれ検出するものである。
次に、構成および動作を説明する。
(1)図8ではレーザー干渉計等の極めて精密かつリアルタイム検出可能な装置を用い、フォトマスク9に生じている振動(位置変化)と、電子ビームコラム1を構成する対物レンズ3(あるいは天板)に生じている振動(位置変化)とをリアルタイムに検出し、画像取得と、同時測定した2つの振動(位置変化)とをもとに、両者の振動(位置変化)の差だけ(あるいはフォトマスク9の振動(位置変化)だけ)、取得画像をシフトする画像処理を行い画像上に現れる振動を除去する。
(2)そのため、マスクパレット7の上に干渉測定用のミラー(3)81、ミラー(4)81をX軸、Y軸用にそれぞれ配置、および電子ビームコラム1の対物レンズ3のポール―ピースの周辺(あるいは天板)にミラー(1)51、ミラー(2)51をX軸、Y軸用にそれぞれ配置する。距離測定装置(1)10および距離測定装置(2)10を構成するそれぞれのレーザー干渉計によってそれぞれの位置を連続的に測定し、その位置の差分を算出(必要に応じて取得画像と、連続的に測定した差分の位置とを同期して記録)する。位置の差分は、2つのミラー(3)81の振動の位置とミラー(4)81の振動の位置とをもとにフォトマスク9上の電子ビーム照射位置における振動の位置を算出し(既述した(式1)、(式2)参照)、更に、2つのミラー(1)51の振動の位置とミラー(2)51の振動の位置とをもとに対物レンズ3の軸上の振動位置を算出し(既述した(式1)、(式2)参照)、両者の振動位置の差分を算出(必要に応じて取得画像と、連続的に測定した差分の位置とを同期して記録)する。算出した位置の差分(あるいはそれぞれ1つのミラーの差分)に対応して、取得した画像を補正し(後述する図10以降参照)、画像振動を低減する(後述する図10以降参照)。
(3)例えば、画像振動の原因と成る機械振動の周波数範囲は0から大凡2KHz程度であり、主成分は100/120Hz(電源周波数の2倍)近傍に多いことが知られている。また、XYステージ6などの特定の場所が共振して起こることが多いため、単一の周波数で構成されることも多い。このように振動現象は1msecよりも長い応答時間を持ち、比較的ゆっくりした現象である。この時間よりも十分に短い時間で振動の位置を検出すれば、振動の位置あるいは位相を正確に測定可能である。
(4)一方、現在、レーザー干渉位置測定装置は0.03nm以上の測定分解能を持ち、100nsec以上の速度で位置測定が出来るものが入手可能である。従って、レーザー干渉計はサブナノメートル振動する対物レンズ3(あるいは天板)やフォトマスク9の振動による位置変動を実時間で測定することが可能である。
(5)一方、電子ビーム走査による画像取得は通常数十MHz以上のピクセルクロックを利用して実施される。例えば、ピクセルクロックが10MHzの場合、1000ピクセルで構成される1本のライン走査は、100μ秒、1000×1000ピクセルで構成される1フレームの画像取得時間は100m秒である。従って、少なくとも1ラインを走査する度に、振動の位置を測定すれば、画像補正をするために必要なサブナノメートル精度で位置情報を知ることが出来る。
図9は上面図を示す。レーザー干渉式位置測定装置はX、Y軸それぞれに対して設ける。必要によっては、回転を測定するために、さらに多軸を測定しても良い。そのようにすれば正確にX軸、Y軸のみの振動成分を測定できる。
図9において、距離測定装置(X)10は、ここでは、フォトパレット7上にX方向に3つのミラー(X1)81、ミラー(X2)81、ミラー(X3)81を設け、これらの振動の位置をリアルタイムに超高精度に検出するものである。尚、ミラーはいずれか1つでもよい。複数のミラーの場合には、電子ビームが照射するフォトマスク9の位置の振動の位置を既述した(式1)、(式2)のようにして算出する。
距離測定装置(Y)10は、同様に、ここでは、フォトパレット7上にY方向に3つのミラー(Y1)81、ミラー(Y2)81、ミラー(Y3)81を設け、これらの振動の位置をリアルタイムに超高精度に検出するものである。尚、ミラーはいずれか1つでもよい。複数のミラーの場合には、電子ビームが照射するフォトマスク9の位置の振動の位置を既述した(式1)、(式2)のようにして算出する。
図10は、本発明の動作説明図(画像振動低減)を示す。
図10において、S51は、同期信号をS56の画像取得およびS52の距離測定装置(X)、S53の距離測定装置(Y)に通知する。これは、図8において、図示外のPC(パソコン)から同期信号として画像取得開始信号をS56の画像取得手段に通知、および同期信号として測定開始信号をS52の距離測定装置(X)10、S53の距離測定装置(Y)10にそれぞれ通知する。
S56は、画像取得する。細く絞った電子ビーム2をフォトマスク9に照射しつつXY走査させ、そのときに放出された2次電子を2次電子検出器で検出・増幅し、検出・増幅された信号をもとに画像(2次電子画像)を取得する。
S57は、画像ピクセル逓倍する。S56で取得した画像のままのピクセルの細かさでは、ここで対象とするサブナノメートル分解能の差を表現できないので、取得した画像のピクセル数を逓倍して増やし、該対象とするサブナノメートルを表現できるようにする。この状態で、後述する画像(1ライン分の画素あるいは1ラインの所定数分の1の画素など)をずらしながら重ね合わせ、1枚のフレーム画像に補正できるようにする。
S52、S53は、距離測定装置(X)、(Y)が同期信号(位置測定開始信号)をもとに、図8のミラー(3)、(4)、ミラー(1)、(2)に向けて放射したレーザー光線と反射したレーザー光線とをもとに公知の手法でリアルタイムに位置情報をそれぞれ取得する。
S54は、差分評価する。これは、S52、S53でそれぞれ取得したリアルタイムの位置情報の差分(リアルタイムの位置の差分)をX方向およびY方向について算出する。
S55は、倍率調整する。これは、画像取得したときの倍率に対応して画像上の位置の変化が変わるので該倍率でその調整(補正)を行う(倍率で規格化する)。
S58は、取得画像の位置シフトし、重ね合わせる。これは、S55の規格化後の振動の差をもとに、S56、S57で取得した画像ピクセル逓倍した後の画像について当該振動の差に対応するだけシフトして補正し振動の差分をキャンセルする(図11を用いて後述する)。
S59は、振動除去画像を出力する。
以上によって、細く絞った電子ビーム2をフォトマスク9に照射しつつ平面走査してそのときに放出された2次電子を検出・増幅して生成した取得画像と(S51、S56、S57)、ミラー(3)、(4)と、ミラー(1)、(2)との位置の変化(振動)をリアルタイムに測定した信号の差分とをもとに(S52からS57)、取得画像を位置シフトして重ね合わせる補正を行い(S58)、振動除去した画像を生成することが可能となる。
次に、図11を用いて画像振動除去について詳細に説明する。
図11の(a)はフローチャートを示し、図11の(b)はその模式説明図を示す。
図11の(a)において、S61は、マスク、対物レンズ(天板)3の位置を同時測定、およびSEM画像を同時取得する。これらは、図10のS51、S56、S57、およびS52、S53で既述したように、フォトマスク9(マスクパレット7)の位置をミラー(3)81、ミラー(4)81と距離測定装置(2)10で、対物レンズ3(あるいは天板)の位置をミラー(1)51、ミラー(2)51と距離測定装置(1)10で位置を同時測定、およびフォトマスク9に細く絞った電子ビーム2を照射しつつXY走査してそのときに放出された2次電子を検出・増幅してSEM画像を同時取得する。
S62は、位置の差を計算する。これは、S61で同時測定した距離測定装置(2)と(1)とで計測した位置の差を計算する。例えば、ある時間にミラー(3)、ミラー(4)とミラー(1)、ミラー(2)の位置(ミラーが1つの場合には当該1つのミラーの振動の位置、ミラーが2つの場合には(式1)、(式2)で算出した振動の位置)がそれぞれa,bである場合、差分はa−bと評価する。これはある瞬間に対物レンズ3(あるいは天板)とフォトマスク9とが振動でa−bだけ位置がずれていることを意味している。この際、画像情報の取り込む速度は、位置測定の誤差が生じない程度に高速に行う。
S63は、倍率調整を行う。これは、既述した図10のS55の倍率調整を行う。
S64は、差が0になるようにSEM画像位置を移動する。これは、S62で算出した位置の差が0となるように、取得画像の位置を移動し、振動の差分を補正する。この際、取得画像は所望の位置分解能が表現できるようにピクセル逓倍をS63で補間方法など利用して行う。そして、取得画像の位置座標を、コンピュータ上でa−bだけずらして、基準位置に対して差分が0の画像を生成する。位置座標は取得画像の倍率に依存するので、それを係数として考慮してシフトするピクセル量を算出する。
S65は、前のSEM画像に重ね合わせる。これを必要回数繰り返して1枚の蓄積画像を完成させる。
S66は、画像取得が完了か判別する。これは、1枚の画像取得が完了したか判別する。YESの場合にはS67に進む。NOの場合には、S61以降を繰り返す。 S67は、SEM画像を出力する。これは、振動補正後のSEM画像を出力する。
図11の(b)は、図11の(a)の模式説明図を示す。左側が補正前、右側が補正後を示す。
図11の(b−1)は補正前の画像が右側にシフト(振動でシフト)した例を模式的に示す。図11の(b−2)は補正後の画像の例を模式的に示す。この(b−2)は、(b−1)の補正前はbだけ右シフトしたと判明したので(S62の差)、その差のbだけ左側に補正して差を0にした状態(ろうそくが中央の位置)に戻す補正したものである。
同様に、図11の(b−3)は補正前の画像が左にシフト(振動でシフト)した例を模式的に示す。図11の(b−4)は補正後の画像の例を模式的に示す。この(b−4)は、(b−3)の補正前はbだけ左シフトしたと判明したので(S62の差)、その差のbだけ右側に補正して差を0にした状態(ろうそくが中央の位置)に戻す補正したものである。
図11の(b−5)は補正前の振動による位置の差を左にb,右にbだけずれた画像を重ねたものであって、図示のように「ぼけ有」となる。
図11の(b−6)は補正後の振動による位置の差をそれぞれ補正した後の画像を重ねたものであって、図示のように「ぼけ無」となる。
尚、bの位置の補正は、取得画像の1ライン毎(あるいは1ライン内で位置が所定範囲よりも大きく変動している場合には1画素毎あるいは位置変動が閾値範囲内の所定画素毎)に行う。
尚2、bの位置の補正は、図11の(b)では説明を簡単にするために、左右方向(X方向)のみ行ったが、実際の位置の補正は更に上下方向(Y方向)にも同様にして行う。
図12は、本発明の1実施例構成図(その3)を示す。図12は、図8が取得画像を移動して振動補正を行う代わりに、フォトマスク9上を照射する電子ビーム2の位置を、電子ビーム偏向器11で移動して振動補正するものである。図12における電子ビーム偏向器11、補正用コイル12以外は、図1、図8の番号のものと同一であるので説明を省略する。
図12において、電子ビーム偏向器11は、対物レンズ3で細く絞った電子ビーム2をフォトマスク9上に照射しつつXY走査する位置を、X、Yの任意の方向にダイナミック(リアルタイム)に高速移動させる偏向器である。XY走査用の偏向器と兼用してもよいし、独立に設けてもよい。
補正用コイル12は、対物レンズ3で細く絞った電子ビーム2をフォトマスク9上に照射しつつXY走査する位置を、X、Yの任意の方向にダイナミック(リアルタイム)に高速移動させる偏向器であって、空芯のコイルあるいは静電偏向板である。
以下構成および動作を順次説明する。
(1)図12の構成は、画像取得を行う際に、直接に画像振動を除去(キャンセル)するものであって、実時間に距離測定装置(1)、(2)10で測定した対物レンズ3(あるいは天板など)の位置と、フォトマスク9(マスクパレット7)の位置との差をサブナノメートル分解能で計測し、その差(あるいはフォトマスク9の位置)に相当する分だけ電子ビーム2の偏向を余計に行うことで見かけ上、フォトマスク9が振動していないように振動補正するものである。つまり、フォトマスク9の振動の方向(X、Y方向)に追従して細く絞った電子ビーム2を偏向し、見かけ上、フォトマスク9が振動しないように振動補正するものである。
(2)そのため、図12の構成に用いる電子ビーム走査装置(スキャン偏向器)のピクセル分解能は通常のピクセル走査よりも細かい分解能(振動補正対象とする最小分解能)で電子ビーム2を走査可能なように出来ている。例えば、通常の画像取得では視野3ミクロンを1000ピクセル程度で表現する。この場合、ピクセル分解能は3nmである。図12の電子ビーム走査装置は例えばその10分の1以下の0.3nm分解能で電子ビーム走査を行う能力を有したものを用いる。
(3)例えば、右方向(X方向)に0.3nm移動するような画像振動が加わった場合、距離測定装置(1)10、(2)10は対物レンズ3(あるいは天板)と、フォトマスク9との間に0.3nmの誤差があることを検出する。この検出された信号を電子ビーム偏向器11(あるいは補正用コイル12)の走査信号に加えて入力する(あるいは単独に入力する)。そうすると、電子ビーム2のフォトマスク9上の着地点は0.3nmだけ右に寄った場所になり(追従し)、振動が無い場合に電子ビーム2が照射すべき場所と一致させることが出来る。このようにして画像上に現れる振動を取り除くことが出来る。この方式では、ピクセル数は増えないので、高速のコンピュータで画像処理する必要がない。
(4)電子ビーム偏向器11(あるいは補正用コイル12)は、MHzよりも十分高速に動作できるため(静電偏向器や空芯コイルなど)、現在のフォトマスク9の位置を特定(距離測定装置(2)で位置を特定)し、基準となる位置を特定(距離測定装置(1)で天板41(対物レンズのポールピース)の位置を特定)し、基準となる位置からのフォトマスク9の位置までの差を算出し、この算出した差で補正するように電子ビーム2を電子ビーム偏向器11で偏向することで、フォトマスク9が基準位置に対して振動した場合にその振動に追従して電子ビーム2の位置を電子ビーム偏向器11で偏向することをリアルタイムに行い、画像に現れる振動を除去することが出来る。除去すべき振動周波数が既知の場合は、その周波数に重みを大きくして、他の周波数への応答量を意図的に小さくするように電子ビーム偏向器11へのフィードバックを行うことが出来る。このようにすると、フィードバック誤差が減り、画像揺れ補正がより正確に出来る。
(5)尚、振動の位置の差分をもとに電子ビーム2の位置を電子ビーム偏向器11で偏向して厳密に補正したが、これに限られず、マスクパレット7などに固定した1つのミラー81のみで検出した振動の位置をもとに、電子ビーム偏向器11で電子ビーム2の位置を偏向補正してもよい。
次に、図13を用いて図12の構成の動作を説明する。
図13は、本発明の説明図(画像振動低減、その3)を示す。
図13において、S71は、同期信号をS75の電子ビーム走査装置およびS72の距離測定装置(X)、S73の距離測定装置(Y)に通知する。これは、図12において、図示外のPC(パソコン)から同期信号として画像取得開始信号をS75の電子ビーム走査装置に通知、および同期信号として測定開始信号をS72の距離測定装置(X)10、S73の距離測定装置(Y)10にそれぞれ通知する。
S75は、電子ビーム走査装置は電子ビーム走査信号を出力する。これは、S71から通知を受けた同期信号に同期し、電子ビーム走査装置が電子ビーム走査信号を図12の電子ビーム偏向器11(あるいは補正用コイル12)に出力する。
S72、S73は、距離測定装置(X)、(Y)が同期信号(位置測定開始信号)をもとに、図12のミラー(3)、(4)と、ミラー(1)、(2)に向けて放射したレーザー光線と反射したレーザー光線とをもとに公知の手法でリアルタイムに位置情報を取得する。
S74は、差分評価する。これは、S72、S73でそれぞれ取得したリアルタイムの位置情報の差分(リアルタイムの位置の差分)を評価(算出)する。
S76は、加算する。
S77は、加算した信号(XY走査信号)で電子ビームを偏向する。これらS76、S77は、S75からの電子ビーム走査信号に、S74で算出した差分(天板41(対物レンズ3のポールピース)の位置(基準位置)に対するフォトマスク9の振動による位置の移動した差分)に相当する信号を加算し、電子ビーム2を、フォトマスク9の振動に追従偏向させる。これらにより、フォトマスク9が振動して位置が移動しても、電子ビーム2は追従して同じ位置を照射するように追従偏向される。
S78は、振動除去画像を出力する。
以上によって、図12の構成のもとで、距離測定装置(1)10で基準位置(天板、対物レンズ3のポールッピースの位置)をリアルタイム測定し、距離測定装置(2)でフォトマスク9の位置をリアルタイム測定し、基準位置に対するフォトマスク9の位置の差分を算出し、この差分に対応する信号を電子ビーム走査信号に加算して電子ビーム2をXY方向に走査することにより、フォトマスク9が振動によりその位置が移動しても追従して電子ビーム2が偏向され、画像振動を除去できる。
図14は、本発明の動作説明フローチャート(その3)を示す。
図14において、S81は、マスク、対物レンズ(あるいは天板)の位置を同時測定する。これは、図13のS71、S72、S73で既述したように、フォトマスク9(マスクパレット7)の位置をミラー(3)、(4)と距離測定装置(2)10で、対物レンズ2(あるいは天板)の位置をミラー(1)、(2)と距離測定装置(1)10で位置を同時測定する。
S82は、差分を計算する。これは、S81で同時測定した距離測定装置(2)と(1)とで計測した位置の差分を計算する。
S83は、電子ビーム照射位置を差分が0に成るようにシフトする。これは、S82で計算した位置の差分が0となるような信号を、図12の電子ビーム偏向器11(あるいは補正用コイル12)に入力する信号に加算し、電子ビーム2の照射位置をフォトマスク9上でシフトさせ、該フォトマスク9の振動による位置の移動に追従して電子ビーム2の照射位置を追従偏向させる。
S84は、画像取得する。これは、S83でフォトマスク9の振動による位置の移動に追従して電子ビーム2の位置を追従偏向することをリアルタイムに実行している状態で、電子ビーム2をXY走査して画像を取得する。
S85は、画像取得が完了か判別する。YESの場合には、S86に進む。NOの場合には、S81以降を繰り返す。
S86は、SEM画像を出力する。
以上によって、基準位置(天板、対物レンズ3のポールピースなどの位置)に対するフォトマスク9の位置をリアルタイムに検出してその位置の差分を算出し、算出した位置の差分をもとに電子ビーム2のフォトマスク9の照射位置を追従偏向させることにより、フォトマスク9がたとえ振動しても電子ビーム2も追従偏向されるのでみかけ上、フォトマスク9の振動がなくなり、画像上の振動を除去できる。
尚、図1から図14において、第1の信号あるいは差分の第2の信号をもとに、画像をシフトあるいは電子ビームをシフトし、画像振動を低減したが、これに限られずあるいはこれに加えて更に、第1の信号あるいは差分の第2の信号が所定閾値以上となった場合にその画素を削除し、ランダムに大きく振動する画素などを画像中から削除するようにしてもよい。削除した場所の画素(ピクセル)は周辺の画素等を用いて平均化した輝度を持つ画素に置き換えてもよい。
図15は、本発明の他の実施例構成図を示す。図15では、加振装置13で加振して周波数マスクを予め作成し、フォトマスク9の振動をセンサ(2)8で検出および対物レンズ3の振動をセンサ(1)5で振動を検出し、両者の振動の差分が所定閾値以上の取得画像の領域について予め作成した周波数マスクを掛けて、取得画像から振動画像を除去して振動成分を低減するものである。以下順次詳細に説明する。
図15において、センサ(1)5は、対物レンズ3の振動を検出するものである。
センサ(2)8は、フォトマスク9の振動を検出するものである。
加振手段13は、XYステージ6などを加振(例えばホワイのノイズ、所定周波数など)し、周波数マスクを作成するためのものである。
周波数マスク設定手段14は、加振装置13に加振振動を入力して装置の周波数特性(周波数に対する振幅の変化)を測定して適切な周波数マスクを算出し、FFTフィルタ装置16に設定するものである。
画像形成装置15は、対物レンズ3で細く絞った電子ビーム2をフォトマスク9上に照射しつつXY方向に平面走査し、そのときに放出された2次電子信号を検出器で検出・増幅して画像を取得するものである。
FFTフィルタ装置16は、画像形成装置15で取得した取得画像に、設定された周波数マスクを乗算し、振動成分を除去した画像を生成するものである(図17参照)。その他は、既述した図1などと同じであるので、説明を省略する。
次に、図15の構成の動作を説明する。
(1)図15の構成は、電子ビーム装置自身の伝達関数を測定し、装置固有の共振周波数を自動特定する手段を有することに特徴がある。装置は装置固有の機械的共振周波数を有している。画像振動に現れる振動振幅は、外来振動がそのまま表れることは少なく、外来信号をエネルギー源として装置固有の共振現象が引き起こされることによって何百倍にも増幅されるためにもたらされることが多い。
(2)そのため、本実施例では、加振装置13で装置に加える振動を意図的に制御しながら取得された複数の画像を用いて分析をおこない、画像劣化の元となる空間周波数成分を特定する。特定された空間周波数成分のみを画像処理技術を用いて、リアルタイムで取得される画像信号あるいは画像を蓄積して蓄積画像から取り除く周波数マスクを作成し、取得画像から周波数マスクを用いて振動を除去するものである。
(3)通常、一枚の画像は多くの空間周波数成分からなる。測定精度を決定付けるエッジを構成する空間周波数は画像振動の空間周波数よりもずっと周波数が高いため、画像揺れに対応する周波数の情報を取り除いても、エッジ画像品質劣化をほとんど起こさずに、不要な振動だけ除去することが出来る。これにより画像上のエッジ間の距離は安定化され、より高い測長再現性や高分解能観察が可能になる。
次に、図16のフローチャートの順番に従い、図15の構成の動作を詳細に説明する。
図16において、S71は、振動を与えながら、画像を取得する。これは、例えば、図15の加振装置13で強制的にホワイトノイズ振動などをXYステージ13などに与えて画像(a)(図18の(a))を取得する。同時に、センサ(2)8の信号あるいは更にセンサ(1)5で装置に存在する振動を取得する。従って、取得された画像には、センサ(2)8の信号(あるいはセンサ(2)8とセンサ(1)5との差分の信号)に対応する振動成分が含まれこととなる。
S72は、二次元FFT実行する。これは、S71で取得した画像(例えば図18の(a)の画像)には、XYステージ6が共振したことによる画像揺れが観察される。この画像のFFT解析を行うと、図18の(b)が得られ、100Hz近傍の低周波数領域にXYステージ共振に対応する特有のパターンが現れる。ここで、センサの信号(2)8(あるいはセンサ(2)8とセンサ(1)5との差の信号)にも100Hzが含まている。
S73は、無振動で、画像を取得する。これは、例えば図15の加振装置13で加振しない状態で画像を取得する。
S74は、二次元FFT実行する。
S75は、2つのFFT結果の差を、FFTフィルタのマスクとする。これは、S71とS72で振動を加えた場合の二次元FFT結果と、S73とS74で振動を加えない場合の二次元FFT結果との差をもとめ、これからFFTフィルタの周波数マスクを作成し、設定する。
S76は、画像を取得する。これは、新たに測定対象画像を取得する。
S77は、振動を測定する。これは、図15のマスクパレット7に固定したセンサ(2)8および対物レンズ(天板)3に固定したセンサ(1)5によってそれぞれ振動(位置)を測定し、両者の振動位置の差を算出する。
S78は、閾値以上であれば、画像信号にFFTフィルタを掛ける。これは、S77で測定した差分の振動信号が予め設定した閾値以上であれば、取得画像にFFTフィルタをかけて振動画像を除去する。例えば取得画像に、後述する図18の(c)の周波数マスクを掛けて画像振動を除去する。
S79は、振動除去した画像出力する。S78で振動除去した画像を出力する。
尚、装置によって共振周波数は僅かに異なるため、装置ごとに周波数解析を行い、周波数マスクを調整する。マスクすべき場所(取得画像中のマスクすべき画素)は、上述した差分の振動が閾値以上の場所、あるいはその他に振動を含む画像のFFT画像と振動を含まないFFT画像との差として求めることも可能である。
ここで、マスクすべき周波数は単一ではない場合があるが、画像に現れる主要な周波数に絞ってマスクを掛けることが実用上大事である。マスク範囲は、エッジ情報を損なわないように最適化する。機械振動の周波数は揺らぎがあるため、マスクには少し周波数の幅を持たせた方が良い場合もある。
尚2、新規に画像を取得し、FFT解析を行い、前記マスクを適用して不要周波数を取り除いた後に、逆FFTを掛け実空間画像に戻す。このようにすることで、任意の測定画像に含まれるXYステージ振動等の機械振動を画像から除去することが出来る。電源周波数(50Hz,60Hz等)の様に周波数が最初から明らかなものは、その周波数のマスクを作って機械振動と同様に除去することが出来る。電源周波数のように時間軸変化を起こすものについては、検出された二次電子信号(画像)に直接、50Hz,60Hzの通常の電気的回路で用いられるノッチフィルタを入れることもできる。
尚3、この画像処理は二次元フーリエ変換なので、その計算を実時間で行うために、CPUやDSPあるいはGPUやFPGAで実装された高速画像処理ボードを用いることが望ましい。もちろん、メモリー等に蓄積された画像に対して二次元空間フィルターを掛けても良い。
尚3、正確にマスク周波数を知る方法としては、取得された画像のFFT解析の他に、既述したセンサであるレーザー位置測定装置や加速度センサの出力信号が示す共振周波数を用いても良い。それを二次電子画像取得時のピクセルクロックを勘案して二次元のFFT空間で表せば周波数マスクとして用いることが出来る。
図17は、本発明の動作説明フローチャート(FFTフィルタの手順)を示す。
図17において、手順1は、センサに含まれる振動が存在する画像を取得する(a)。これは、例えば図15の加振装置13で加振した状態の画像(例えば図18の(a)の画像)を取得する。尚、自然状態で大きな振動が検出できる場合にはそのときの画像でもよい。この自然状態の画像にはセンサ(2)8(あるいはセンサ(2)8とセンサ(1)5との差分)の信号に含まれる振動成分が含まれている。
手順2は、二次元FFTを行う。
手順3は、スポット状に現れるあるいはライン状になど現れる、センサの信号に含まれる振動に対応する画像振動成分を抽出する(b)。これは、例えば手順1で取得した図18の(a)の画像を二次元FFT解析すると図18の(b)の結果が得られ、スポット状あるいはライン状に現れる共振点の画像振動成分を抽出する。
手順4は、上記スポットあるいはラインをマスクに設定する(c)。これは、手順3でスポット状あるいはライン状などに現れる共振点の画像振動成分に、例えば図18の(c)に示すように、当該スポット(必要に応じてライン)を囲むマスク(周波数マスク)を設定する。
手順5は、実測定の実時間あるいは蓄積画像を取得する。これは、測定対象の画像(実時間に取得した画像あるいはメモリから読み出した画像)を取得する。
手順6は、二次元FFTを行う。
手順7は、手順3の周波数成分を画像から除去する。これら手順6、手順7は、手順5で取得した画像に、周波数マスクを設定したFFTフィルタを掛けて、手順3で設定したスポット状あるいはライン状などに現れる振動成分を除去する。尚、周波数マスクを掛ける場所(取得画像中の周波数数マスクを掛ける画像中の場所)は、既述したように、XYステージ6と対物レンズ(天板)3との振動をそれぞれ検出してXYステージの信号あるいはその差分の信号が所定閾値以上の場所について周波数マスクを掛けて振動成分を除去するようにしてもよい。
手順8は、逆二次元FFTを行い、画像回復を行う。これにより、図18の(d)に示す逆FFTによる画像復元した画像を生成することが可能となる。
図18は、本発明の説明図(FFTフィルタ)を示す。
図18の(a)は、振動を加えた画像の例を示す。図中でXYステージ6の共振振動が存在することがわかる。
図18の(b)は、振動を加えた画像のFFT解析結果の例を示す。これは、図18の(a)のFFT解析結果の例である。
図18の(c)は、振動周波数マスクの例を示す。ここでは、図18の(b)のスポット状の共振点の振動周波数を囲むように周波数マスクを設定した例を示す。
図18の(d)は、逆FFTによる画像復元の例を示す。これは、新たに取得した画像に、図18の(c)の周波数マスクを掛け、その結果に対して逆FFTを行い、画像を復元した例を示す。
尚、図15から図18の他の実施例では、XYステージ6などを加振して取得した画像から生成した周波数マスクを用い、新たな取得画像から周波数マスクで該当周波数成分を削除し、画像振動を低減しているため、画像がXYステージ6の共振などで大きく振動している場合に特に有効に画像振動を低減できる。
図19は、本発明の他の動作説明フローチャート(その2)を示す。図19は、図15の装置に加振装置13で強制振動を加えて、装置の伝達関数を測定し、測定した伝達関数に基づいて、周波数マスクを作成する例を示す。
図19において、S81は、装置に振動を与えながらセンサの信号を取得する。これは、図15の加振装置13に振動信号を入力して当該図15の装置に強制振動(例えばホワイトノイズ)を与える。周辺環境に大きな自然振動が存在する場合には、強制振動を与えることなく、これを用いてもよい。そして、図15の装置を強制振動(自然振動)の状態で、センサ(2)8およびセンサ(1)5である既述した加速度センサあるいはレーザー干渉位置センサを用いて、信号を取得する。
S82は、伝達関数を取得する。これは、S81で取得した加速度センサあるいはレーザー干渉位置センサからの信号をもとに周波数スペクトラム(伝達関数)を取得する。例えば後述する図20に示すような周波数スペクトラムを取得する。
S83は、機械共振周波数の特定を行う。これは、S82で取得した図15の装置の周波数スペクトラム(例えば後述する図20参照)から、装置の共振周波数の部分を特定する。例えば図20の周波数スペクトラムでは、ピークがXYステージ6を含む系の共振成分を表しており、これが画像上に振動となっていると特定(推定)される(既述した図18の(a)、(b)の共振点の100Hz(電源周波数の2倍))に相当すると特定(推定)される)。
S84は、時間軸周波数を空間周波数に換算し、FFTフィルタの周波数マスクとする。これは、
(1)例えば図20のように、主ピーク周波数が100Hzと得られた場合、画像上にセンサの信号に含まれるこの周波数成分に対応する振動が現れるので、これを取り除けばよい。
(2)画像はXYの2次元の広がりをもつデータの集まりである。電子ビーム2を用いた画像取得装置では、例えばX軸方向に高速に水平走査を行いながら、順次1ピクセルずつY軸に沿ってラインをずらすように走査を行うことにより、電子ビーム画像を取得する。従って、高速に走査するX軸方向には低い周波数の機械振動の影響が載りにくく、ゆっくり走査されるY軸方向に振動が載りやすい性質がある。センサを用いて時間軸上で測定された振動周波数と画像上に現れる空間周波数とは異なるため、走査に用いる周波数やピクセル数を考慮して画像上に現れる空間周波数に変換する。
(3)例えば、ピクセルクロックが10MHzの場合、X軸方向が1000ピクセルからなる画像を取得するために必要な、X軸方向走査時間は0.1msである。100Hzの機械振動は、10msの周期なので、画像上ではY軸方向に100本の走査線を周期として振動が現れる。この空間周波数に対応した周波数をマスクとしてFFTフィルタを構成する。このFFTフィルタに実時間あるいは蓄積された電子ビーム画像を入力することによって、画像上の振動が除去できる。尚、機械振動のピークは緩やかで広がりを持つので、それを考量してFFTマスクにも少し広がりを持たせることが望ましい。
S85は、測定対象画像を取得する。そして、S84で作成した周波数マスクを、取得した画像に掛けて、振動成分を除去する。
図20は、本発明の伝達関数例を示す。横軸は周波数を表し、縦軸は変位量/mmを表す。図20は、既述した図15の加振装置13で強制振動(例えばホワイトノイズ)を与えた状態でセンサ(2)8の信号あるいはセンサ(2)8とセンサ(1)5との差の信号から、図15の装置(XYステージ6)の周波数スペクトラムを求めたものである。主ピーク周波数は、ここでは、電源周波数の2倍となっていることが判明する。