以下に、図面を参照しつつ、本発明を実施するための形態について詳述する。図1は本実施形態に係る作業車両の一例としてのトラクタ10に、作業装置の一例としてのロータリ耕耘装置30が装着された形態が示された側面図である。なお、以下では、説明の便宜上、トラクタ10の進行方向である図1における左側を前方向とし、進行方向に対して直交して、かつ水平方向である図1における手前側と奥側とに延びる方向を左右方向とする。
図1に例示されたトラクタ10は、ボンネット11の内部に、エンジンEや、バッテリBT、排気処理装置の一例としてのDPF100、ここでは図示せぬラジエータ、エアクリーナ、図示せぬ冷却ファン、発電機等を備えている。トラクタ10は、例えばボンネット11の後ろ側の上部に左右方向を支点とした開閉軸を備えている。そして、ボンネット11は、開閉軸を支点として、機体に対して開閉自在に構成される。エンジンE、バッテリBT、発電機、ラジエータはシャーシ12の上に載置される。エンジンEには例えば、電子制御式のコモンレールディーゼルエンジンが用いられている。コモンレールは蓄圧式とも称される。発電機は、エンジンEを動力として稼働するようにエンジンEの出力部に連結される。バッテリBTは発電機と接続される。そして、トラクタ10は、発電機によって発生した電気がバッテリBTに蓄電されるように構成される。
トラクタ10は、機体の進行方向に当たる前部の左右のそれぞれに前輪13,13を備え、後部の左右のそれぞれには後輪14,14を備える。すなわち、トラクタ10は、走行機体が車輪によって、走行自在に支持される。左右の後輪14,14をそれぞれ上方、及びトラクタ10の内方から覆うようにフェンダー15,15が設けられている。なお、トラクタ10は、走行装置にクローラが用いられる構成であっても構わない。
トラクタ10は、ボンネット11の後方に運転部を備える。より具体的に、ボンネット11の後方には、図示せぬエアカットプレートを介してダッシュボード16が設けられている。ダッシュボード16には、速度や、燃料残量等を表示する表示部としての計器パネル40が設けられている。ダッシュボード16の後方にはステアリングコラムカバー17が隣接して設けられている。ステアリングコラムカバー17の上端にはステアリング18が突出して設けられている。
ステアリングコラムカバー17の後方には所定の距離を隔てて運転席20が設けられている。運転席20は、左右それぞれのフェンダー15,15の間に配置されている。運転席20や、ステアリング18等はキャビン19に覆われている。すなわち、上述された運転部はキャビン19によって構成されている。
なお、トラクタ10は、キャビン19を有する構成に限らず、左右それぞれのフェンダー15,15の後端に、ROPS(Roll-Over Protective Structures)が上方向に突出して設けられる構成であっても構わない。
エンジンEに燃料を供給する燃料タンク21がキャビン19の下側に設けられている。なお、燃料タンク21の位置は限定されるものではなく、例えば、キャビン19の側面や、運転席20の後方等であっても構わない。燃料タンク21からエンジンEまでの図示せぬ燃料の供給路は、燃料フィルタを介して燃料ポンプ、コモンレール、及びコモンレールに接続された複数のインジェクタそれぞれの燃料噴射バルブを通じてエンジンEが有する複数の気筒のそれぞれに接続されている。燃料を供給するための燃料ポンプは燃料タンク21の燃料をコモンレールに圧送するように構成される。コモンレールは高圧の燃料が蓄えられるように構成される。電磁開閉制御型の燃料噴射バルブは開閉制御されることによって、コモンレール内の高圧の燃料が、インジェクタからエンジンEの各気筒に噴射されるように構成される。
運転席20の下方には、トラクタ10の走行速度を例えば無段で変速する図示せぬ変速機構としてのトランスミッションを内蔵するトランスミッションケースTMが配置されている。トランスミッションケースTMはシャーシ12の後部に固定されている。トランスミッションは、エンジンEの動力を後輪14,14に伝達する機能を有する。なお、トラクタ10は、エンジンEの動力が前輪13,13に伝達されるように構成されていても良い。
トランスミッションケースTMの後部上面には、作業装置として装着されるロータリ耕耘装置30を昇降するための例えば油圧式の作業装置昇降機構22が取り付けられている。なお、作業装置昇降機構22は油圧式に限定されるものではなく、作業装置を昇降させることができれば良く、例えば、ギヤが用いられた機械式であっても良い。
ロータリ耕耘装置30は、トラクタ10のトランスミッションケースTMの後方に、一対の左右ロワーリンク23,23、及びトップリンク24からなる3点リンク機構を介して連結される。左右ロワーリンク23,23のそれぞれの前端側は、トランスミッションケースTMの後部の左右側面にそれぞれ回動可能に連結されている。トップリンク24の前端側は、作業装置昇降機構22の後部に回動可能に連結されている。エンジンEの駆動力を伝達するためのPTO(Power Take-Off)軸25は、エンジンEに連動連結され、トランスミッションケースTMの後面に後ろ向きに突出している。そして、PTO軸25は、ロータリ耕耘装置30の入力軸と連動連結されている。
作業装置昇降機構22は、図示せぬ昇降油圧シリンダにて回動する1対の左右リフトアーム26,26を有する。左右リフトアーム26,26のそれぞれは、左右リフトロッド27,27を介して左右ロワーリンク23,23にそれぞれ連結されている。左右リフトアーム26,26のそれぞれは、回動することで、左右リフトロッド27,27のそれぞれ、及び左右ロワーリンク23,23のそれぞれを介してロータリ耕耘装置30が昇降するように構成されている。
次に、運転席20とその周辺の構造について詳述する。図2は、キャビン19(図1参照)の内部、及びその周辺の概略が例示された平面図である。上述されたように、ダッシュボード16には計器パネル40が設けられ、ステアリングコラムカバー17の上端には平面視で略丸型のステアリング18が設けられている。
ステアリングコラムカバー17の右側には、エンジンEの出力回転数(回転速度)を設定保持するためのアクセルレバー50が設けられている。ステアリングコラムカバー17の左側には、トラクタ10の走行方向を前進と、後進とに切り替え操作するためのリバーサレバー51(前後進切り替えレバー)が設けられている。ステアリングコラムカバー17の下方右側には、図示せぬ左右のブレーキ装置を入り切りしてトラクタ10の制動操作をする左右一対のブレーキペダル装置を構成する左右ブレーキペダル52,52が設けられている。走行中のトラクタ10を制動するためのブレーキは走行ブレーキと称される。ステアリングコラムカバー17の下方左側には、エンジンEからの動力伝達継断用の図示せぬメインクラッチを操作するためのクラッチペダル53が設けられている。
運転席20の前方におけるフロア54の上面は略全体が平坦面に形成されている。ステアリングコラムカバー17の右側におけるフロア54の上には、エンジンEの回転数を調節するためのアクセルペダル55が設けられている。
運転席20の左右両側には、運転席20に着座した作業者が腕や、肘を載せるためのアームレスト56が設けられている。アームレスト56の位置は前後上下に調節自在に構成されている。運転席20の左側下方には、トランスミッションケースTM(図1参照)内のPTO変速機構に接続されPTO軸25の回転数を切り替え操作するためのPTO変速レバー57が設けられている。
運転席20の右側前方には、トランスミッションケースTM(図1参照)内の変速機構に接続され、トラクタ10の走行速度を無段で加減速させるための主変速レバー58が設けられている。更に、主変速レバー58に隣接して、トランスミッションケースTM(図1参照)内の走行副変速ギヤ機構の変速比を例えば高速、低速の二段に切り替えるための副変速レバー59が設けられている。
副変速レバー59の隣には、図示せぬPTOクラッチに接続され、PTOの駆動の際に用いられるPTO駆動スイッチ60が設けられている。PTO駆動スイッチ60は、PTOクラッチを継断操作し、PTO軸25を作動状態と、非作動状態とに切り替えるように構成されている。すなわち、PTO軸25の作動状態ではPTOクラッチがつながれ、PTO変速レバー57で選択された回転数でPTO軸25が回転する。一方で、PTO軸25の非作動状態ではPTO軸25が停止する。なお、PTO駆動スイッチ60は、押しながら左右のいずれかに回すと作動状態になり、作動状態において1回押すと非作動状態になるように構成されており、簡単な動作で瞬時にPTO軸25を停止することができて操作性が良い。
なお、本実施形態では、クラッチペダル53が踏み込まれると、PTO軸25の回転と、トラクタ10の走行とが同時に停止するように構成されている。しかしながら、クラッチペダル53が踏み込まれてもPTO軸25の回転は停止しない動作に切り替える図示せぬ切り替えスイッチが設けられても良い。
アームレスト56の右側には操作パネル61が設けられている。操作パネル61は、ロータリ耕耘装置30の動作を調節するためのスイッチ類が集中的に配置されたものである。操作パネル61は例えば、深さ設定ダイヤルや、傾き設定ダイヤル等を備える。
更に、アームレスト56の右側には、トラクタ10の制動状態を維持するためのサイドブレーキレバー62が設けられている。このような、トラクタ10の制動状態を維持するためのブレーキは駐車ブレーキと称される。
次に、ボンネット11の内部の構成について詳述する。図3は、ボンネット11の内部における構成の概略が例示された側面図である。なお、図3では、一部の構成が省略されている。
ボンネット11はその前面下部に、格子状のフロントグリル70を一体的に備える。一方で、エンジンEの前方において、トラクタ10の前後方向を軸として回転する冷却ファンを取り囲むようにシュラウド71が設けられている。シュラウド71の前方にはラジエータ72が設けられている。そして、上述されたDPF100はエンジンEの上に設けられている。このように、ボンネット11の内部は、フロントグリル70から取り入れられた外気(空気)が、ラジエータ72の冷却水との間で熱交換をし、冷却ファンによって後方のエンジンE、及びDPF100の周辺へと送られるように構成される。そして、ボンネット11はその空気が、ボンネット11と、エアカットプレートとの間等から排出されるように構成される。
シュラウド71の上部には、空気を取り込むための開口をトラクタ10の前側に有して
シュラウド71の前後方向に延びる吸気管73が設けられている。シュラウド71の上部は、吸気管73が配置される部分が切り欠かれて構成され、シュラウド71の上部と、吸気管73の上部とが略面一に形成されている。吸気管73には、エアクリーナ74が接続されている。そして、エアクリーナ74を通過した空気がエンジンEの吸気口から導入されるように構成される。一方で、エンジンEの排気口には上述のDPF100が接続される。
ボンネット11の後端の上部には、上述されたトラクタ10の開閉軸を支点として回動するヒンジ75が取り付けられている。そして、ボンネット11は、その後部の開閉軸を支点として前側が上方に大きく開放されるように構成されている。なお、ボンネット11は前側が開く構成に限らず、後ろ側が開く構成であったり、天板と分離可能な左右の側板がそれぞれ側方に開く構成であったりしても構わない。
ボンネット11の上部の後ろ寄りには機体との間に連結される例えば、2本のガススプリング76,76が取り付けられている。ガススプリング76,76はその内部に、高圧空気例えば窒素ガスが封入されている。ガススプリング76,76はガス反力によって、重いボンネット11の開閉を補助したり、所定の位置でのボンネット11の開放状態を維持したり、ボンネット11の全開時や、全閉時の衝撃を減衰したりするための部材である。ガススプリング76,76は、トラクタ10が大型になるほどその効果がより発揮される。ガススプリング76,76には、どの位置においても停止する種類のものが用いられることが好ましい。
次に、ボンネット11のロック機構について詳述する。図4は、ボンネット11のロック機構80の一例が示された斜視図である。
ロック機構80は、機体(シャーシ12の上)に載置されたエンジンE等を収納した状態にボンネット11を保持する機能を有する。ロック機構80は、ボンネット11の内部において機体の前後方向の一方に有する。本実施形態においては、ボンネット11は前側が開放するため、ロック機構80も前側に位置している。そして、ロック機構80は、ロックバー81と、嵌合部材82と、ロックキャッチ83と、弾性部材としてのポップアップばね84,84とを備える。そして、ロック機構80から離れた位置でその操作を行うために動力伝達部材としてのワイヤ85がロック機構80に接続される。なお、ワイヤ85は、金属製で線状に延びるインナーワイヤの外周をらせん状に形成された鋼線やビニール等によって構成される円筒中空状のアウターワイヤによって覆われて構成される。
ロックバー81は、機体と、ボンネット11とのいずれか一側に取り付けられれば良い。図4の例示においてロックバー81はボンネット11の側に取り付けられている。棒状のロックバー81は側面視で、略U字状に折り曲げられて構成され、前後方向に延びる両端の部分がボンネット11に溶接等によって固定されている。そして、ボンネット11が閉じられている状態においては折り曲げられたU字の下端の部分が前後方向に略水平に延びている。
嵌合部材82は、機体と、ボンネット11との他側に取り付けられれば良い。図4の例示において嵌合部材82は機体の側に取り付けられている。嵌合部材82は例えば、上述されたラジエータ72を背面側に取り付けるための正面視で略門型の前部フレーム86の上部にボルト等によって固定されている。
嵌合部材82は正面視で略M字状の平板である。平板状に上下方向に延びる嵌合部材82は、前後方向に略水平に延びるロックバー81と直交する。そして、嵌合部材82は、ロックバー81との嵌合部としての切り欠き87を有する(後述の図5参照)。より具体的に、嵌合部材82には、正面視で略M字状(左右方向)の中央の部分から下方に向かって略U字状の切り欠き87が形成されている。正面視において、切り欠き87の幅はロックバー81の直径以上の寸法で形成される。嵌合部材82は更に、切り欠き87の下端より下方にばね取り付け部88を有する。図4に例示されたばね取り付け部88は、左端(正面視においては右端)から前方に突出し、左右方向に孔が形成されている。
ロックキャッチ83は、機体と、ボンネット11との他側に取り付けられれば良い。図4の例示においてロックキャッチ83は機体の側に取り付けられている。ロックキャッチ83は嵌合部材82の例えば前面の側に重なる平板である。図4の例示では、ロックキャッチ83は正面視で山型を横に90度倒したような形状をしているものの、これに限定されない。
図5は、ロック機構80のロックキャッチ83が揺動していない状態の一例が示された正面図である。一方で、図6は、ロック機構80のロックキャッチ83が揺動している状態の一例が示された正面図である。ロックキャッチ83はその背面が、嵌合部材82の前面に対して摺動する方向に揺動自在に設けられる。このため、嵌合部材82、及びロックキャッチ83のそれぞれの下部に貫通孔が形成され、例えば回動ピン89によって、ロックキャッチ83が嵌合部材82に揺動自在に取り付けられている。
ロックキャッチ83は、嵌合部材82のばね取り付け部88とは左右で反対方向にワイヤ85が取り付けられる。そして、ワイヤ85が引っ張られることによってロックキャッチ83は回動ピン89を軸に揺動自在に構成される(図6参照)。より具体的に、図4等に例示されたロックキャッチ83には右端(正面視においては左端)に孔が形成されている。そして、ロックキャッチ83のその孔、及びリング状に形成されたワイヤ85の先端部(ワイヤターミナル)の孔にヒンジピン90が差し込まれ、割りピン91で抜け止めされている。
ロックキャッチ83は更に、嵌合部材82のばね取り付け部88とは左右で反対方向に、かつ上下方向で略同じ位置にばね取り付け部92を有する。図4等に例示されたばね取り付け部92は、右端(正面視においては左端)から前方に突出し、左右方向に孔が形成されている。そして、ばね取り付け部88の孔と、ばね取り付け部92の孔との間にはばね93が取り付けられる。ばね93は、ワイヤ85を引っ張る方向にロックキャッチ83を付勢する。ばね93は、ロックキャッチ83を付勢することができれば種類は問わないものの、図4等の例示では引張コイルばねが用いられている。
ロックキャッチ83は左右に水平方向に、ワイヤ85が取り付けられる側に向かって略C字状の切り欠き94を有する。切り欠き94の下端は嵌合部材82の切り欠き87の下端と略同じかやや下の位置とされる。すなわち、切り欠き94は、切り欠き87に対応して、正面視で、嵌合部材82のロックバー81との嵌合部に合わせて形成される。正面視において、切り欠き94の幅はロックバー81の直径より大の寸法で形成される。
ロックキャッチ83は、ワイヤ85の動きに応じて揺動するフック部95を有する。より具体的に、切り欠き94の上には、ワイヤ85が取り付けられる側から左右で反対方向に延びるフック部95が形成されている。ばね93の付勢力によってワイヤ85が最も引っ張られた際に、嵌合部材82の切り欠き87と、ロックキャッチ83の切り欠き94とによって正面視で貫通する孔が形成される。ロックバー81は、この貫通孔に入り込む位置とされる。そして、貫通孔に入り込んだロックバー81はフック部95によってロックされるように構成される(図5参照)。
一方で、フック部95は、ロックバー81が上から押し込まれた際に、ばね93の付勢力に抗して自身が揺動するように構成される。このため、フック部95はその上側が正面視で、突出端に向かって下向きに傾斜するように構成されている。したがって、フック部95は下側が、略水平方向に伸び、上側が、突出端に向かって下向きに傾斜するように構成されると良い。更に、フック部95はロックバー81が滑らかに摺動するように上側と、下側とを結ぶ突出端が面取りされていることが好ましい。
ポップアップばね84,84は、機体と、ボンネット11との間に取り付けられ、ボンネット11を開く方向に付勢する。ポップアップばね84,84は、フック部95によってロックされていない状態のロックバー81がフック部95よりも上に持ち上がる付勢力を少なくとも有していれば良い。ポップアップばね84,84は、機体、及びボンネット11のどちらに取り付けられても構わないものの、図4等の例示においては機体の側に取り付けられている。
ポップアップばね84,84は例えば、前部フレーム86の上端に、左右方向に2つ並んだ状態で取り付けられている。ポップアップばね84,84は、例えば圧縮コイルばねによって構成され、上下方向に付勢するように配置されている。ポップアップばね84,84は左右で対称に配置されることがボンネット11の開閉時のバランスや、ボンネット11のがたつきを抑える点から好ましい。なお、ポップアップばね84,84が左右方向の中央に配置できる場合にはその数が奇数であっても良い。
このようなロック機構80を有することによってボンネット11が閉じられる際にはまず、ロックバー81がフック部95に当たる前にボンネット11と、ポップアップばね84,84とが当たって衝撃が緩衝される。更に、ボンネット11が、ポップアップばね84,84の付勢力に抗して閉じられると、ロックバー81が下側に向かって押し込まれて、フック部95の上側の傾斜面によってばね93の付勢力に抗してフック部95が揺動する。そして、フック部95を通り抜けたロックバー81が嵌合部材82との嵌合部に達し、フック部95によってロックされる(図5参照)。
一方で、その状態からボンネット11が開かれる際にはワイヤ85の動きに応じてフック部95が、ばね93の付勢力に抗して揺動すると、ポップアップばね84,84の付勢力によってロックバー81が、フック部95より上側に持ち上がる(図6参照)。これによって、ボンネット11も上側に所定量例えば、作業員の手が機体と、ボンネット11と間に入り込める間隙分持ち上がる。この状態から作業員によってボンネット11は開かれる。この際に、機体と、ボンネット11との間には、ガススプリング76,76(図3参照)が取り付けられているため、軽い力でボンネット11の開閉ができるとともに任意の開き角度でボンネット11を停止することができる。
このように、トラクタ10のロック機構80は、ポップアップばね84,84の付勢力に抗してボンネット11が閉じられてフック部95の下方にロックバー81が位置する際にはボンネット11がロックされるように構成される。そして、トラクタ10のロック機構80は、フック部95の上方にロックバー81が位置する際にはボンネット11を開くことが可能となるように構成される。したがって、作業性により優れたボンネット11のロック機構80を備えるトラクタ10を提供することができる。
次に、ボンネット11に収納される排気処理装置としてのDPF100について詳述する。エンジンEの排気口からの排気通路にはDPF100が接続される。そして、エンジンEの各気筒からの排出ガスはDPF100を経由して外部に放出されるように構成される。DPF100は、排出ガスに含まれるすす(炭化水素)等の粒子状物質(Particulate Matter、PM)をろ過して捕集し、酸化触媒を用いて、捕集した粒子状物質を燃焼除去することによって排出ガスを浄化するものである。
DPF100は耐熱金属を材料とした略円筒状である。そして、DPF100は、ガラスウール等の断熱材を介して収容された略円筒状のフィルタケースに排出ガスの流れ方向の上流側から順に、例えば白金等のディーゼル酸化触媒と、スートフィルタとが直列に並べられて構成される。ディーゼル酸化触媒は排出ガスの温度が、再生可能温度(例えば約300度)を超えているときに、排出ガスに含まれる一酸化窒素(NO)を不安定な二酸化窒素(NO2)に酸化する作用を有する。スートフィルタは、粒子状物質をろ過可能な多孔質な隔壁によって区画された多数のセルを有するハニカム構造である。なお、DPF100は、スートフィルタ自体に酸化触媒を担持させた構成であっても良い。
DPF100への排気ガスの通過が続くとスートフィルタに粒子状物質が堆積する。なお、粒子状物質の堆積の状態は、スートフィルタの上流と下流との間の差圧によって検出することができる。そして、スートフィルタに堆積した粒子状物質が上述の不安定なNO2で酸化除去されることによってスートフィルタが再生し、スートフィルタにおける粒子状物質の捕集能力が回復することとなる。したがって、DPF100は、スートフィルタを再生するために、高温の排出ガスが導入されたり、スートフィルタ自体が加熱されたりして非常に高温となる。更に、スートフィルタに堆積した粒子状物質が急激に燃焼した場合にもDPF100は高温となる場合がある。
図7は、ボンネット11の内部における構成の概略が例示された平面図である。上述されたように、特に高温となって熱源となるDPF100は、エンジンEの上であって、機体の左右方向のいずれか寄りでボンネット11に収納される。図7に例示のDPF100はトラクタ10の左側に、略円筒状の軸が前後方向に延びるように配置されている。
一方で、トラクタ10の右側には、吸気管73や、エアクリーナ74が、トラクタ10の左右方向の中央を避ける形で配置されている。更に、上述されたように、吸気管73の上部は、シュラウド71の上部と略面一に形成されている。トラクタ10は、これらの配置によって小さな空間、特に小さな左右方向の幅で効率よく各部材が収納されるとともに、左右方向の中央においてボンネット11の形状が上方向に突出することが防止される。したがって、運転席20からの特に地面方向の視界が広く、運転時の操作性が良い。
ボンネット11の領域において、上述されたロック機構80のロックキャッチ83に接続されたワイヤ85はDPF100とは機体の左右で反対側に設置される。図7の例示では、ボンネット11の領域において、左側に配置されるDPF100とは左右で反対側の右側にワイヤ85が配置されている。
ワイヤ85は、ボンネット11の前部に位置するロックキャッチ83から前部フレーム86に沿ってボンネット11の領域の右端まで張り渡される。そのままワイヤ85は、ボンネット11の領域の右端に沿ってボンネット11の領域の後端まで張り渡される。シュラウド71の右端の上部には前後方向の貫通孔が形成されその貫通孔をワイヤ85が通過すれば良い。
このように、ワイヤ85は、ボンネット11の領域において、機体の左側に設置されたDPF100から可及的に離隔するように右端に沿って張り渡されるので、非常に高熱を発するDPF100の影響を受けにくく、その耐久性を不必要に低下させることがない。なお、ワイヤ85は、ボンネット11の領域の後端から、キャビン19の中におけるブレーキペダル装置の付近に導入される。
次に、ブレーキペダル装置の接続構造について詳述する。図8は、ブレーキペダル装置110の接続構造の概略が示された側面図である。ブレーキペダル装置110は後輪14,14(図1参照)の車軸を制動操作するためのものである。トラクタ10は、ブレーキペダル装置110が操作されることによって図示せぬリアアクスルケースの内部のブレーキ装置が作動するように構成される。ブレーキペダル装置110を構成する左右ブレーキペダル52,52は左右のブレーキ装置にそれぞれ連係する。なお、左右ブレーキペダル52,52における左側と、右側とでは側面視において接続構造が同様であるため、ここでは、左右まとめて、ブレーキペダル装置110の接続構造として詳述する。
トラクタ10は、キャビン19の前側におけるダッシュボード16の下方にブレーキ装置を入り切りするブレーキペダル装置110を備える。ブレーキペダル装置110は、ダッシュボード16の下方に向けて機体の後方に屈曲するように延びて機体に対して揺動するアーム(ブレーキアーム111)を有する。ブレーキアーム111はその一端が、ダッシュボード16の領域内において左右方向に延びる回動軸112に取り付けられ、回動軸112を支点として機体の前後方向に揺動自在に構成される。一方で、ブレーキアーム111の他端には、作業員が踏み込むためのブレーキペダル52が設けられる。そして、トラクタ10は、ブレーキペダル52が踏み込まれることによってブレーキアーム111が揺動するように構成される。
ブレーキアーム111の一端には、機体の前側に延びるプレート113が固定される。そして、プレート113は、ブレーキアーム111の揺動に合わせて揺動するように構成される。プレート113の前端は、キャビン19の床面を貫通してその下方まで上下方向に延びる縦連結棒114の上端に揺動自在に連結される。プレート113と、縦連結棒114との連結構造はブレーキアーム111の前後方向の揺動を上下方向に変換するものである。
縦連結棒114の下端には、L字状に屈曲するL字リンク115の一端が揺動自在に連結される。キャビン19の底面には、L字リンク115の中間部をリンク揺動軸116として揺動自在に支持するL字リンク支持部117が固定される。L字リンク115の他端は、前後方向に延びる横連結棒118の前端に揺動自在に連結される。このように、縦連結棒114と、L字リンク115と、横連結棒118との連結構造は縦連結棒114の上下方向の動きを前後方向に変換するものである。
横連結棒118の後端には、ブレーキ操作レバー119の先端が揺動自在に連結される。ブレーキ操作レバー119はトランスミッションケースTMに備えられ、揺動することで、ブレーキ装置が入り切りされるように構成される。以上のような接続構造によってトラクタ10は、ブレーキペダル52が踏み込まれるとブレーキ装置が作動するように構成される。
次に、ボンネット11からキャビン19の中に導入されたワイヤ85の取り付け構造について詳述する。図9はブレーキペダル装置110の一例が示された正面図であり、図10はブレーキペダル装置110の一例が示された側面図である。なお、ここでは、運転席20(図2等参照)の側からの視点を正面と称する。
上述されたように、先端に、ブレーキペダル52が取り付けられたブレーキアーム111は回動軸112を支点として前後(図9の奥側、及び手前側)方向に揺動自在に構成される。左右のブレーキアーム111,111のそれぞれの中途部には左右方向に貫通する孔が形成されており、その孔に、左右のブレーキアーム111,111を連結する連結部材としての連結棒120が抜き差し自在に設けられる。連結棒120は例えば、走行時には差し込まれた状態とされ、作業時には抜かれた状態とされる。図9等に例示の連結棒120は一端側が、右のブレーキアーム111の側から左のブレーキアーム111に差し込まれ、他端側が、運転席20(図2等参照)のある後ろ側(図9の手前側)、かつ下側に屈曲している。このように、連結棒120の他端側の屈曲している部分が把持部となって操作性を良好とすることができる。
右のブレーキアーム111には、連結棒120が差し込まれる位置より上方、及び下方を基点として左のブレーキアーム111の側に略C字状のばね収納支柱121が取り付けられる。連結棒120によって、左右のブレーキアーム111,111が連結された状態で右のブレーキアーム111と、ばね収納支柱121との間の部分における連結棒120の外周には圧縮コイルばね122が取り付けられる。この状態で、連結棒120は、圧縮コイルばね122によって、左のブレーキアーム111の側に付勢されるように構成される。
一方で、右のブレーキアーム111の右側には連結棒ガイドプレート123が取り付けられる。連結棒ガイドプレート123には、正面視で略J字状のガイド溝124が形成される。連結棒120には、ガイド溝124に差し込まれるガイドピン125が取り付けられる。以上の構成によって、連結棒120が右側に引き出された状態で、把持部を上側(図9の手前側)に回すと、左右のブレーキペダル装置110が連結され、把持部を下側(図9の奥側)に回すと、左右のブレーキペダル装置110の連結が解除されるように構成される。
回動軸112の上方には、左右方向に延びるばね取り付け支柱126が設けられる。ばね取り付け支柱126と、左右のブレーキアーム111,111の各々との間には左右のブレーキアーム111,111をそれぞれ後ろ側(図9の手前側)に付勢する引張コイルばね127,127が取り付けられる。これによって、作業員がブレーキペダル52の踏み込みを中止すると、ブレーキアーム111が後ろ側に揺動する(戻る)ように構成される。
左のブレーキアーム111の中途部には左側に延びるブレーキ固定支柱128が取り付けられる。一方で、ブレーキ固定支柱128とかみ合うブレーキアーム停止部材129がブレーキ固定支柱128の揺動する軌跡に沿って設けられる。ブレーキアーム停止部材129は、左のブレーキアーム111が予め定められた角度以上揺動した際にブレーキ固定支柱128と合わさる位置に鋸歯状に複数の凹凸を備える。
したがって、ブレーキペダル装置110は、左のブレーキペダル52が所定量踏み込まれると、ブレーキ固定支柱128と、ブレーキアーム停止部材129の凹凸とがかみ合って左のブレーキペダル52が踏み込まれた状態が維持されるように構成される。すなわち、ブレーキペダル装置110は、ブレーキ固定支柱128と、ブレーキアーム停止部材129とによってトラクタ10を制動状態に維持する駐車ブレーキが入りの状態となるように構成される。
ブレーキアーム停止部材129は、駐車ブレーキが機能した状態から更に、左のブレーキペダル52が踏み込まれた際にブレーキ固定支柱128と合わさる位置には凹凸を備えていない。したがって、ブレーキペダル装置110は、駐車ブレーキが機能した状態から左のブレーキペダル52が再度踏み込まれると、ブレーキ固定支柱128と、ブレーキアーム停止部材129の凹凸とのかみ合いが解除されるように構成される。
そして、上述されたように、左のブレーキアーム111には引張コイルばね127が取り付けられている。そして、ブレーキペダル装置110は、駐車ブレーキが機能した状態から左のブレーキペダル52が再度踏み込まれると、ブレーキアーム111が後ろ側(図9の手前側)に揺動して駐車ブレーキが解除されるように構成される。
このように、トラクタ10は、左右一対のブレーキペダル装置110の内で一方のブレーキペダル装置110が踏み込み操作されることによって駐車ブレーキが入りの状態に保持されるように構成される。図9等の例示では、左のブレーキペダル52の側に、駐車ブレーキが入り切りされる構成が設けられている。更に、上述されたように、トラクタ10は、連結棒120によって、左右のブレーキペダル装置110が連結自在に構成されている。したがって、左右のブレーキペダル装置110が連結されている状態では、左のブレーキペダル52だけでなく、右のブレーキペダル52が踏み込み操作されることによっても駐車ブレーキが入りの状態に保持されるように構成される。
左右のブレーキアーム111,111の後方(図9の手前)には左右方向に延びるブレーキ検出スイッチ取り付け支柱130が設けられる。ブレーキ検出スイッチ取り付け支柱130は側面視において、後ろ側(図9の手前側)に揺動したブレーキアーム111と平行に延びる。左右のブレーキアーム111,111と、ブレーキ検出スイッチ取り付け支柱130との間には側面視で間隙を有する。そして、ブレーキ検出スイッチ取り付け支柱130にはその間隙に、左右のブレーキアーム111,111のそれぞれとの接触を検知する左右のブレーキ検出スイッチ131,131が取り付けられる。このように、左右のブレーキ検出スイッチ131,131は、それぞれ左右ブレーキペダル52,52が踏み込まれているか否かが検出されるように構成される。
ブレーキ検出スイッチ取り付け支柱130には正面視において、左右のブレーキアーム111,111とは重ならない位置に切り欠き132が形成される。図9の例示での切り欠き132は正面視において、左右のブレーキ検出スイッチ131,131よりも右方、かつ下方に位置している。そして、ブレーキ検出スイッチ取り付け支柱130の下端から上方に向けて略逆U字状の切り欠き132が形成されている。
キャビン19の中における適宜箇所例えば、切り欠き132には、ロック機構80のロックを解除する操作部を構成する操作レバー140が取り付けられる。すなわち、トラクタ10は、ロック機構80と、操作レバー140との間において、操作レバー140による操作がワイヤ85によってロック機構80に伝達されるように構成される。
より詳細には、図9等に例示されるように切り欠き132には、ボンネット11の領域の後端からキャビン19の中に導入されたワイヤ85のアウターワイヤ141が固定される。なお、ワイヤ85のインナーワイヤは操作レバー140に接続されている。操作レバー140は、ブレーキ検出スイッチ取り付け支柱130から後ろ側に延びるように取り付けられる(図10参照)。そして、操作レバー140は、後ろ側に引っ張ることができる。なお、操作レバー140の取り付け箇所は、他の作業の妨げとならず、かつその操作性の良い箇所であることが好ましい。
次に、ボンネット11のロック機構80の解除方法について詳述する。まず、作業員によって、操作レバー140が後ろ側に引っ張られる。操作レバー140による操作がワイヤ85によって、ロック機構80のロックキャッチ83に伝達される。操作レバー140がばね93に抗して引っ張られることによってロックキャッチ83が揺動し、フック部95によってロックされていたロックバー81が、ポップアップばね84,84の付勢力によってフック部95より上側に持ち上がる。すなわち、この操作によってボンネット11が浮き上がる。なお、この手元での操作レバー140による操作ではボンネット11がフルオープンはされない。その後に、作業員の手によってボンネット11が開かれる。
図11は、ワイヤ85の配置の一例が示されたトラクタ10の斜視図である。図11では、ボンネット11や、キャビン19の記載が省略されている。
図11にも示されるように、本実施形態に係るトラクタ10では、ボンネット11のロック機構80を操作する操作レバー140がキャビン19の中に配置される。この構成によって、ヨーロッパでのホモロゲーションを取得するための規則に対応することができる。すなわち、トラクタ10は、操作レバー140に対して、鍵や、別の工具を必要とした更なる解除機構としての覆いを不要とすることができる。更に、トラクタ10は部品数を削減することができる。更に、トラクタ10は、ロック機構80の解除がワンタッチで操作することが可能であり、操作性が良い。
更に、本実施形態に係るトラクタ10では、ロック機構80と、操作レバー140とをつなぐワイヤ85が高熱源であるDPF100とは反対側に配置される。この構成によって、ワイヤ85に対する熱の影響を少なくすることができる。なお、ボンネット11の内部においてワイヤ85は、エンジンEの右側に、燃料ホースや、エアーコンディショナのホースを固定する側面視で長方形の固定プレート142にクランプ143等で固定すれば良い。
図12は、トラクタ10の変形例に係るボンネット11の内部における構成の概略が示された平面図である。変形例に係るトラクタ10ではDPF100が、ボンネット11の内部において右側に配置されている。
このような構成の場合にはワイヤ85は左側に配置されれば良い。そして、ワイヤ85は、ボンネット11の領域の後端から、キャビン19の中におけるクラッチペダル53の付近に導入される。そして、詳細な図示は省略するものの、クラッチ検出スイッチ取り付け支柱に上述の実施形態と同様に取り付けられれば良い。
以上のように、本実施形態によれば、機体に対して開閉自在に構成され、機体の左右方向のいずれかにDPF100を収納して覆うボンネット11と、ボンネット11の後方にキャビン19とを備えるトラクタ10において、ボンネット11をロックするロック機構80と、ロック機構80のロックを解除する操作レバー140と、ロック機構80と操作レバー140との間で、操作レバー140による操作をロック機構80に伝達するワイヤ85とを備え、ロック機構80は、ボンネット11の機体の前後方向の一方に有するとともに、キャビン19に操作レバー140は有し、ワイヤ85は、DPF100とは機体の左右で反対側に設置されるので、熱の影響を受けにくく、かつ作業性に優れたボンネット11のロック機構80を備えるトラクタ10を提供することができる。
次に、別の実施形態に係るトラクタ10について詳述する。図13は、別の実施形態に係るブレーキペダル装置210の一例が示された側面図である。別の実施形態に係るトラクタ10では、操作レバー140の取り付け位置が異なる。なお、上述の実施形態と同様の構成については同一の符号が付された上でその説明は適宜省略される。
ブレーキペダル装置210における右のブレーキアーム111の中途部には右側に延びる操作レバー取り付け支柱211が取り付けられる。そして、図13の例示では、操作レバー取り付け支柱211の右端から左方に向けて切り欠き212が形成されている。別の実施形態に係るトラクタ10ではこの切り欠き212に、ロック機構80のロックを解除する操作部を構成する操作レバー140が取り付けられる。このような構成によれば、右のブレーキアーム111の揺動に伴って、右のブレーキアーム111に取り付けられた操作レバー140も揺動することとなる。
上述されたように、ブレーキペダル装置210は、左右のブレーキ装置にそれぞれ連係された左右一対のブレーキペダル装置210,210によって構成され、左右一対のブレーキペダル装置210,210を一体に連結する連結棒120を更に備える(図9等参照)。トラクタ10は、連結棒120によって、左右一対のブレーキペダル装置210,210が一体に連結された上でブレーキペダル装置210の踏み込み操作が行われることによって駐車ブレーキが入りの状態とされる。そして、別の実施形態に係るトラクタ10は、ブレーキ装置が操作され、駐車ブレーキが入りの状態の際には、操作レバー140が操作可能状態とされ、駐車ブレーキが切りの状態の際には、操作レバー140が操作不可能状態とされるように構成される。
これは、例えば、駐車ブレーキが切りの状態の際には、ダッシュボード16に操作レバー140が近接して操作レバー140の操作域が消失し、駐車ブレーキが入りの状態の際には、ダッシュボード16から操作レバー140が離隔して操作レバー140の操作域が確保されることを意味する。
図14は、別の実施形態に係るブレーキペダル装置210の揺動した状態が例示された側面図である。図14には、駐車ブレーキが入りの状態におけるブレーキアーム111の位置が示される。図14には更に、運転席20の側(後ろ側)におけるダッシュボード16のライン220、及び221が示される。上方から下方に向けて前方に傾斜する直線状のライン220ではダッシュボード16によって前後方向が仕切られている。一方で、ライン220の下側で前方かつ上方に凸の形状のライン221は、ダッシュボード16によって左右方向が仕切られており、ライン221の上下方向は開放されている。
図13に示されるように、駐車ブレーキが切りの状態における操作レバー140はダッシュボード16のライン221の上側に位置する。そして、操作レバー140と、ダッシュボード16のライン220とは近接している。したがって、操作レバー140を引っ張ろうとしても、ライン220に位置するダッシュボード16が邪魔になって操作することができない。すなわち、駐車ブレーキが切りの状態では、操作レバー140の操作域が消失し、操作不可能状態となる。
一方で、図14に示されるように、駐車ブレーキが入りの状態における操作レバー140はダッシュボード16のライン221の下側に位置する。それだけでなく、操作レバー140と、ダッシュボード16のライン220とは離隔している。したがって、操作レバー140が引っ張られる際に、ライン220に位置するダッシュボード16が操作の邪魔にはならない。すなわち、駐車ブレーキが入りの状態では、操作レバー140の操作域が確保され、操作可能状態となる。以上のような構成によれば、操作レバー140の操作可能状態と、操作不可能状態とを物理的に切り替えることが可能となって、誤操作を防止することができる。したがって、ロックの解除が必要な状況において、その作業性により優れたボンネット11のロック機構80を備えるトラクタ10を提供することができる。
操作可能状態、及び操作不可能状態とは、別の観点において例えば、操作レバー140が、駐車ブレーキが切りの状態の際には、ダッシュボード16に遮蔽される位置とされ、駐車ブレーキが入りの状態の際には、ダッシュボード16から露出した位置とされることを意味する。
上述されたように、駐車ブレーキが切りの状態における操作レバー140はダッシュボード16のライン221の上側に位置する(図13参照)。そして、運転席20の側から見て、ダッシュボード16のライン220の奥側に操作レバー140が位置する。したがって、操作レバー140が運転席20からは死角に位置する。すなわち、駐車ブレーキが切りの状態では、操作レバー140が、ダッシュボード16に遮蔽される位置とされ、操作不可能状態となる。
一方で、駐車ブレーキが入りの状態における操作レバー140はダッシュボード16のライン221の下側に位置する(図14参照)。そして、運転席20の側から見て、ダッシュボード16のライン220の奥側に操作レバー140が位置する。したがって、駐車ブレーキが入りの状態では、操作レバー140が、ダッシュボード16から露出した位置とされ、操作可能状態となる。以上のような構成によれば、操作レバー140の操作可能状態と、操作不可能状態とを視覚的に切り替えることが可能となって、誤操作を防止することができる。したがって、ロックの解除が必要な状況において、その作業性により優れたボンネット11のロック機構80を備えるトラクタ10を提供することができる。
なお、別の実施形態に係るトラクタ10は、左右一対のブレーキペダル装置210,210の内で一方、例えば左のブレーキペダル装置210が踏み込み操作されることによって駐車ブレーキが入りの状態に保持されるように構成される。更に、操作レバー140は、他方、例えば右のブレーキペダル装置210のブレーキアーム111に取り付けられるように構成される。したがって、左右のブレーキペダル装置210,210が連結されていない状態では、左のブレーキペダル装置210が踏み込み操作されて駐車ブレーキが入りの状態になっても右のブレーキペダル装置210に取り付けられた操作レバー140は動かない。
このように構成されることで、左右のブレーキペダル装置210,210が連結されていない状態では操作レバー140が操作可能状態となることが防止されて、誤操作を防止することができる。すなわち、トラクタ10が完全に停止して駐車ブレーキが左右とも効いている状態でないと操作レバー140が操作可能状態とはならない。そして、トラクタ10の走行中には、ロックバー81がフック部95より上側に持ち上がることがない。したがって、ロックの解除が必要な状況において、その作業性により優れたボンネット11のロック機構80を備えるトラクタ10を提供することができる。
以上のように、別の実施形態によれば、機体に対して開閉自在に構成されたボンネット11と、ボンネット11の後方にキャビン19とを備えるトラクタ10において、ボンネット11をロックするロック機構80と、ロック機構80のロックを解除する操作レバー140と、ロック機構80と操作レバー140との間で、操作レバー140による操作をロック機構80に伝達するワイヤ85とを備え、ロック機構80は、ボンネット11の機体の前後方向の一方に有するとともに、キャビン19に操作レバー140は有し、キャビン19の前側にダッシュボード16と、ダッシュボード16の下方に、ブレーキ装置を入り切りするブレーキペダル装置210とを備え、ブレーキ装置が操作され、駐車ブレーキが入りの状態の際には、操作レバー140が操作可能状態とされ、駐車ブレーキが切りの状態の際には、操作レバー140が操作不可能状態とされるように構成されるので、誤操作を防止することができる。したがって、ロックの解除が必要な状況において、その作業性に優れたボンネット11のロック機構80を備えるトラクタ10を提供することができる。
なお、操作レバー140は、ブレーキペダル装置210には取り付けられず、例えばダッシュボード16に取り付けられて駐車ブレーキが入りの状態の際に操作可能状態とされるように構成されても良い。
次に、別の実施形態に係るトラクタ10の変形例について詳述する。図15は、別の実施形態に係るブレーキ装置の変形例が示された側面図である。別の実施形態に係るトラクタ10の変形例では、ブレーキペダル装置310とサイドブレーキ装置300との間に別の動力伝達部材を更に備える。
サイドブレーキ装置300を構成するサイドブレーキレバー62は、アームレスト56の右側において前後方向に延びる棒状に形成される(図2参照)。サイドブレーキレバー62はその後ろ側を軸として上下方向に揺動自在に設けられる。サイドブレーキレバー62は、上方向に引っ張られることで持ち上げられ、サイドブレーキレバー62の前端にあるボタン301が押された上で下方向に押し込まれることで押し下げられるように構成される。
トラクタ10は、サイドブレーキレバー62の操作が、ワイヤ等のリンク機構302によって別のブレーキ装置に伝達されるように構成される。リンク機構302には、左右のサイドブレーキ操作レバー303,303の先端が揺動自在に連結される。サイドブレーキ操作レバー303,303は、揺動することで、別のブレーキ装置が入り切りされるように構成される。以上のような接続構造によってトラクタ10は、サイドブレーキレバー62が持ち上げられると駐車ブレーキが入りの状態とされ、サイドブレーキレバー62が押し下げられると、駐車ブレーキが切りの状態とされるように構成される。
別の実施形態に係るトラクタ10の変形例では、ブレーキペダル装置310と、サイドブレーキ装置300を構成するサイドブレーキ操作レバー303との間に別の動力伝達部材としてのワイヤ311が設けられる。なお、ブレーキペダル装置310は機体の右側に位置するため、右側のサイドブレーキ操作レバー303と、ブレーキペダル装置310との間にワイヤ311が設けられることが好ましい。
図15に例示されるように、右側のサイドブレーキ操作レバー303の前方に、切り欠きの形成された車軸側ワイヤ取り付け支柱312が設けられ、ワイヤ311のアウターワイヤ313の一端313aが固定される。右側のサイドブレーキ操作レバー303には、ワイヤ311のインナーワイヤ314の一端314aが固定される。
一方で、図15に例示されるように、ブレーキペダル装置310の右のブレーキアーム111の前方に、切り欠きの形成されたペダル側ワイヤ取り付け支柱315が設けられ、ワイヤ311のアウターワイヤ313の他端313bが固定される。ブレーキペダル装置310を構成する操作レバー取り付け支柱316には、上述された切り欠き212(図13参照)とは別の切り欠き317が形成される。そして、この別の切り欠き317には、ワイヤ311のインナーワイヤ314の他端314bが固定される。
以上のような接続構造によって、別の実施形態に係るトラクタ10の変形例は、サイドブレーキレバー62が持ち上げられることで、駐車ブレーキが入りの状態となるとともに、ブレーキペダル装置310の右のブレーキアーム111が揺動するように構成される。すなわち、別の実施形態に係るトラクタ10の変形例は、サイドブレーキレバー62によって別のブレーキ装置を入り切りする操作に対してブレーキペダル装置310が連動するように構成される。したがって、別の実施形態に係るトラクタ10の変形例においても、ブレーキ装置が操作され、駐車ブレーキが入りの状態の際には、操作レバー140が操作可能状態とされ、駐車ブレーキが切りの状態の際には、操作レバー140が操作不可能状態とされるように構成される。
以上のような構成によれば、ブレーキペダル装置310と、サイドブレーキ装置300との2系統のブレーキによって操作レバー140の操作可能状態と、操作不可能状態とを切り替えることが可能となって、更に、誤操作を防止することができる。したがって、ロックの解除が必要な状況において、その作業性により優れたボンネット11のロック機構80を備えるトラクタ10を提供することができる。