JP6492636B2 - 発泡樹脂成形品 - Google Patents

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Description

本発明は、少なくとも一方の外表面に表皮材を一体に貼着した発泡樹脂成形品に関する。
表皮付きブロー成形品について開示された技術文献として例えば特許文献1(WO2006/043703号公報)がある。
特許文献1は、表皮付きブロー成形品の板状本体を平均粒子径が300μm以下の気泡セルからなる発泡状態にすることが開示されている。これにより、軽量かつ高い曲げ剛性を有する表皮付きブロー成形品を得ることを可能にしている。
WO2006/043703号公報
しかし、上述した表皮付きブロー成形品を成形した際に、表皮材が成形品から剥がれてしまう場合があることが判明した。例えば、表皮材にラテックスを用いた場合に、表皮材が成形品から剥がれやすくなってしまうことが判明した。また、突部を有する複雑な形状の成形品を成形した場合に、表皮材が成形品から剥がれやすくなってしまうことが判明した。
このため、上述した問題を解消し、表皮材が剥がれにくい発泡樹脂成形品を得る必要がある。
本発明の目的は、表皮材が剥がれにくい発泡樹脂成形品を得ることである。
本発明にかかる発泡樹脂成形品は、
発泡樹脂からなる板状本体と、前記板状本体の少なくとも一方の面に貼着された表皮材と、を有し、前記表皮材は、繊維で構成する表皮材本体と、前記繊維を固定するラテックス材層と、で構成し、前記ラテックス材層が前記板状本体に貼着されており、
前記板状本体を構成する前記発泡樹脂は、前記板状本体の厚さ方向の平均気泡径が150μm以下の気泡を有する発泡状態である、ことを特徴とする。
本発明にかかる発泡樹脂成形品は、
発泡樹脂からなる板状本体と、前記板状本体の少なくとも一方の面に貼着された表皮材と、を有する発泡樹脂成形品であって、
溶融状態の発泡樹脂の引き伸ばし率が200%未満の形状で構成した突部を有し、
前記引き伸ばし率は、溶融状態の発泡樹脂に一定の距離の番線を引いて所定幅の正方形のセルを構成し、前記発泡樹脂成形品を成形した際に各セル内の発泡樹脂が引き伸ばされた割合である、ことを特徴とする。
本発明によれば、表皮材が剥がれにくい発泡樹脂成形品を得ることができる。
本実施形態の発泡樹脂成形品1の構成例を示す図である。 図1のA−A断面図である。 板状本体4の拡大構成例を示す図である。 本実施形態の発泡樹脂成形品1の成形方法例を示す図である。 分割金型12a,12bを型締めする前の状態を示す図である。 分割金型12a,12bを型締めした後の状態を示す図である。 バリ20の部分を示す図である。 窒素ガスを用いて成形した板状本体4の拡大構成例を示す図である。 炭酸ガスを用いて成形した板状本体4の拡大構成例を示す図である。 実施例、比較例の試験結果を示す図である。 表皮材6が剥がれ易い突部Rの形状を説明するための第1の図である。 表皮材6が剥がれ易い突部Rの形状を説明するための第2の図である。 表皮材6が剥がれ難い突部Rの形状を説明するための第1の図である。 表皮材6が剥がれ難い突部Rの形状を説明するための第2の図である。
<発泡樹脂成形品1の構成例>
まず、図1、図2を参照しながら、本実施形態の発泡樹脂成形品1の構成例について説明する。図1は、本実施形態の発泡樹脂成形品1の外観構成例を示し、図2は、図1のA−A断面の構成例を示す。
本実施形態の発泡樹脂成形品1は、円弧状に突出した突部Rと、フランジ部Fと、を有して構成している。フランジ部Fは、突部Rの左右に連接されている。
本実施形態の発泡樹脂成形品1は、表壁2、裏壁3からなる板状本体4を有し、表壁2の外表面に表皮材6を一体に貼着したものである。表皮材6は、表皮材本体61とラテックス材層62とで構成し、表皮材6を構成するラテックス材層62側が表壁2の外表面に貼着している。
表壁2、裏壁3からなる板状本体4は、発泡倍率が2.5〜4.0倍の範囲で複数の気泡を有する独立気泡構造で構成している。例えば、独立気泡率が70%以上で構成する。発泡倍率は、後述する本実施形態の成形方法で用いた発泡樹脂の密度を、本実施形態の成形方法により得られた発泡樹脂成形品1の板状本体4を構成する発泡樹脂における見かけ密度で割った値である。板状本体4の平均肉厚は、1.0〜3.5mmであり、板状本体4の厚さ方向Tの気泡の平均気泡径が50μm〜150μmとなるように構成している。
本実施形態において平均肉厚は、発泡樹脂成形品1の中空延伸方向に約100mmの等間隔で測定した肉厚の平均値を意味する。但し、測定位置に、上述したフランジ部Fなどを含まないようにしている。
図3は、図2に示す発泡樹脂成形品1の一部41の板状本体4の部分のみを拡大した模式図であり、板状本体4の厚さ方向Tを示す図である。具体的には、図1に示す発泡樹脂成形品1の流路進行方向に対する発泡樹脂成形品1の垂直断面の一部41の板状本体4のみを拡大した図である。垂直断面は、図2として示す断面を意味する。流路進行方向とは、発泡樹脂成形品1の厚さ方向及び周方向と直交する方向である。
本実施形態において厚さ方向Tの気泡aの平均気泡径αは、以下の方法で算出した値である。
本実施形態の発泡樹脂成形品1の流路進行方向に対する発泡樹脂成形品1の垂直断面の板状本体4の一部を拡大投影し、投影画像上に、発泡樹脂成形品1の板状本体4の厚さ方向Tと平行な直線Lを引く。
次に、板状本体4の厚さ方向Tと平行な直線Lと交差する気泡aの数を数え、板状本体4の実際の厚みを、上記数えた気泡数で割った値を板状本体4の厚さ方向Tにおける気泡径αとする。例えば、板状本体4の実際の厚みがTμmであり、気泡aの数が8個の場合は、板状本体4の厚さ方向Tにおける気泡径αは、T/8μmとなる。この操作を図1に示す発泡樹脂成形品1の流路進行方向の中央部、及び、両端部付近について計3つの垂直断面において行うとし、さらに、各垂直断面において等間隔に5箇所測定を行い、合計15箇所の気泡径αを測定する。そして、15箇所の気泡径αの内、最大及び最小の値を除く13箇所の気泡径αの算術平均値を、板状本体4の厚さ方向Tの気泡aの平均気泡径αとする。但し、測定箇所としては、気泡が大きく変形していない部分(気泡が潰された部分や気泡が大きく引き伸ばされたところが殆どない部分を意味する)としている。なお、測定箇所は、発泡樹脂成形品1の形状に応じて任意に設定変更することが好ましい。
板状本体4を構成する発泡樹脂はポリオレフィン系樹脂で構成している。ポリオレフィン系樹脂としては、ポリプロピレン樹脂またはポリエチレン樹脂が用いられる。特に、メルトフローレートの異なる長鎖分岐構造を有するプロピレン単独重合体と直鎖構造を有するプロピレン単独重合体のブレンドを用いることが好適である。その際、ブレンドされたポリオレフィン系樹脂のうち50wt%以上より詳しくは50〜80wt%の範囲で直鎖構造のプロピレン単独重合体とするのが好ましい。さらに、直鎖構造のプロピレン単独重合体は引張弾性率(JIS K7161)が1100MPa以上、さらに詳しくは1500MPa以上、230℃におけるメルトフローレート(JIS K7210)が1.5g/10分以下、さらに詳しくは0.5g/10分以下のものを用いる。これにより、ブレンドされたポリオレフィン系樹脂の230℃におけるメルトフローレート(JIS K7210)は1.8g/10分以下に調整され、発泡樹脂成形品1を成形する際に表皮材6を一体に貼着するのに充分な温度で発泡樹脂を溶融状態とした場合であっても気泡セルの破泡を低減することができ、曲げ強度の高い発泡樹脂成形品1を得ることができる。
なお、長鎖分岐構造を有するプロピレン単独重合体には190℃におけるメルトフローレートが1.5g/10分以下、好ましくは0.3g/10分以下のポリエチレン樹脂を50wt%以上含有する場合にも同様の効果が期待できる。
また、板状本体4を構成する発泡樹脂としてポリオレフィン系樹脂にSBS樹脂(スチレン−ブタジエン−スチレン共重合体)、SEBS樹脂(スチレン−エチレン−ブタジエン−スチレン共重合体)またはこれらの混合物を3〜10wt%配合することにより、耐衝撃性を向上することができ、発泡状態の板状本体4を用いて発泡樹脂成形品1を構成した場合であっても、特にカーゴフロアパネル(自動車荷室の蓋パネルまたはラゲージボード)またはリアパーセルシェルフなどの自動車用内装品として好適に使用することが可能である。また、自動車用内装品として用いられる場合にあっては気泡セルを有することにより特に、エンジン音等の騒音に対する防音性及び直射日光による荷室、ラゲージボックス内の昇温に対する断熱性を得ることができ好適である。
発泡樹脂成形品1を成形する際に表皮材6を一体に貼着するのに充分な板状本体4を形成する筒状のパリソン、複数の樹脂シートまたは予備成形した樹脂シートを溶融押し出しまたは加熱溶融する際の温度とは、分割金型間に配置された表皮材6に溶融状態の発泡樹脂である筒状のパリソンまたは複数の樹脂シートが接触し一体に固着するために必要な発泡樹脂の温度である。発泡樹脂の温度が低いと発泡樹脂の流動性は低下し、表皮材6との固着強度が低下してしまうことになる。ここで、発泡樹脂成形品1を成形する際に表皮材6を一体に貼着するのに充分な温度として、ポリオレフィン系樹脂においては一般に溶融状態として押し出す際の温度または予備成形した樹脂シートを過熱溶融させる際の温度を185℃以上、好ましくは190℃以上とする必要がある。
表皮材6は、表皮材本体61と、ラテックス材層62と、で構成し、ラテックス材層62側が板状本体4を形成する発泡樹脂と貼着することになる。
表皮材本体61は、綿、麻、羊毛、絹などの天然繊維、ビスコースレーヨン、銅アンモニアレーヨンなどの再生繊維、アセテート、レーヨンなどの半合成繊維、ナイロン、ポリエステル、PET、アクリル、ビニロン、ポリプロピレン、ポリウレタンなどの合成繊維、及びこれらのブレンド繊維を加工して得られる編物、織物、不織布等の繊維シートであり、布の広がり方向に対して垂直な外方に向けて起毛状態の毛羽を有する起毛した布地や剪毛した布地とすることが意匠的に好適である。さらに、表皮材本体61は、塩化ビニル、PET、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリウレタンなどの熱可塑性樹脂製の繊維シートとすることもできる。表皮材本体61は、目付重量が150〜330g/m2であることが軽量性、通気性、成形性の観点から特に好ましい。
ラテックス材層62は、樹脂やゴムのエマルジョンによって形成された樹脂層であり、表皮材本体61の繊維を固定するものである。本実施形態の表皮材6は、表皮材本体61の裏面にラテックス材層62を形成して構成している。ラテックスを用いて表皮材6を構成することで、表皮材6を後述するバリから剥がし易くなり、バリを再利用可能にし、リサイクル性を向上することができる。ラテックス材層62に用いる樹脂やゴムとしては、SBR(スチレン・ブタジエンゴム)樹脂、NBR(アクリロニトリルブタジエンゴム)樹脂、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂があげられる。ラテックス材層62における樹脂の目付重量が30〜80g/m2であることが軽量性、通気性、成形性の観点から特に好ましい。また、ラテックス材層62を構成する樹脂は、板状本体4を構成する発泡樹脂の融点よりも低いことが好ましい。これにより、板状本体4を構成する発泡樹脂が固まったとしてもラテックス材層62が軟化しているため、発泡樹脂成形品1を成形した際に発生するバリから表皮材6を剥がし易くすることができる。
<発泡樹脂成形品1の成形方法例>
次に、図4〜図6を参照しながら、本実施形態の発泡樹脂成形品1の成形方法例について説明する。図4は、本実施形態の発泡樹脂成形品1を成形する成形装置の構成例を示し、図5は、分割金型12a,12bを型締めする前の状態を示し、図6は、分割金型12a,12bを型締めした後の状態を示す。本実施形態の成形装置は、図1、図2に示す突部Rを有する発泡樹脂成形品1を成形するため、一方の分割金型12aが窪んでおり、他方の分割金型12bが突出しており、双方の分割金型12a,12bを型締めすることで、図1、図2に示す突部Rを有する発泡樹脂成形品1の形状を成形することが可能な形状になっている。
まず、押出ヘッド10からポリプロピレン樹脂またはポリエチレン樹脂等のポリオレフィン系樹脂に窒素ガス等の物理発泡剤または各種公知の化学発泡剤などの発泡剤を添加、混練して、単層からなる筒状の発泡状態のパリソン11を185℃以上、好ましくは190℃以上の高温で溶融押し出し、分割金型12a,12b間に表皮材6とともに配置する。これにより、図4、図5に示すように、分割金型12a,12b間に表皮材6とパリソン11とが配置される。
次に、図6に示すように、分割金型12a,12bを型締めし、表皮材6とパリソン11とを分割金型12a,12bで挟み込んでコンプレッションする。これにより、表皮材6のラテックス材層62側が板状本体4の表壁2を構成するパリソン11と貼着することになる。
次に、分割金型12a,12bで型締めした状態でパリソン11を自然固化する。
これにより、筒状のパリソン11で表壁2、裏壁3からなる発泡状態の板状本体4を成形するとともに板状本体4の表壁2の外表面に表皮材6が一体に貼着された発泡樹脂成形品1を得ることができる。発泡状態のパリソン11は185℃以上、好ましくは190℃以上の高温にて溶融押し出しされて加圧流体を導入することにより分割金型12a,12bのキャビティ形状に沿って引き伸ばされるが、気泡が破れることによる急激な発泡倍率の低下を招くことなく、2.5〜4.0倍の所望の発泡倍率からなる板状本体4を形成することができる。また、本実施形態の板状本体4を構成する発泡樹脂の気泡は、平均気泡径が150μm以下であるため、表皮材6を板状本体4に強固に溶着することができる。板状本体4を構成する発泡樹脂の気泡が粗いと表皮材6を板状本体4に強固に溶着し難いが、本実施形態では、板状本体4を構成する発泡樹脂の気泡の平均気泡径を150μm以下と細かくしているため、表皮材6を板状本体4に強固に溶着することができる。例えば、板状本体4を構成する発泡樹脂の気泡の平均気泡径が150μmよりも大きく粗いと、板状本体4と表皮材6とをコンプレッションした際に、板状本体4を構成する発泡樹脂の気泡が扁平し易く、クッション性を発揮するため、板状本体4と表皮材6とを強固にコンプレッションし難くなり、表皮材6を板状本体4に強固に溶着することが難しくなる。この問題は、発泡倍率が高くなるほど板状本体4と表皮材6とを強固にコンプレッションし難くなるため、表皮材6を板状本体4に強固に溶着することがより難しくなる。このため、本実施形態の板状本体4を構成する発泡樹脂の気泡の平均気泡径を150μm以下と細かくしている。板状本体4を構成する発泡樹脂の気泡の平均気泡径を150μm以下にすると、板状本体4と表皮材6とをコンプレッションした際に、板状本体4を構成する発泡樹脂の気泡が扁平し難く、クッション性を発揮し難くなるため、板状本体4と表皮材6とを強固にコンプレッションし易くなり、表皮材6を板状本体4に強固に溶着することがし易くなる。その結果、板状本体4の発泡倍率が高く、板状本体4と表皮材6とを強固にコンプレッションし難くても、表皮材6を板状本体4に強固に溶着することができる。なお、気泡の平均気泡径が小さい程、気泡が扁平し難く、板状本体4と表皮材6とを強固にコンプレッションし易く、表皮材6を板状本体4に強固に溶着することがし易くなる。しかし、気泡の平均気泡径が50未満となると、発泡倍率が上がり難くなる問題が発生する。このため、本実施形態の板状本体4を構成する発泡樹脂の気泡の平均気泡径が50〜150μmの範囲で構成することが好ましい。これにより、表皮材6が剥がれ難く、且つ、発泡倍率の高い発泡樹脂成形品1を得ることができる。
次に、分割金型12a,12bから取り出した発泡樹脂成形品1の周囲に形成されるバリ等の不要な部分を除去する。これにより、図1に示す形状の発泡樹脂成形品1を得ることができる。発泡樹脂成形品1とバリとの間にはピンチオフ13により形成した薄肉部分が存在し、その薄肉部分でバリを切除することになる。バリは、表皮材6とパリソン11とを分割金型12a,12bで型締めしてコンプレッションして発泡樹脂成形品1を成形した際に、図7に示すように、発泡樹脂成形品1の周囲に発生する部分20を意味し、分割金型12a,12bでコンプレッションされていない部分である。発泡樹脂成形品1の周囲に発生するバリ20は、ピンチオフ13により形成した薄肉部分で切除することになる。図7は、発泡樹脂成形品1の周囲に発生するバリ20を示す図であり、図7の手前から奧に向かってパリソン11、表皮材6、分割金型12の順に位置した状態を示している。本実施形態では、表皮材6は、表皮材本体61とラテックス材層62とで構成し、ラテックス材層62がパリソン11と貼り付くようにしている。ラテックス材層62は、パリソン11よりも融点の低い材料で構成しているため、パリソン11から表皮材6を剥がし易くなっている。このため、バリ20から表皮材6を剥がすことができ、表皮材6を剥がしたバリをパリソン11として再利用することができる。その結果、資源を有効活用することができるとともに、発泡樹脂成形品1のコストを低減することができる。
なお、本実施形態の発泡樹脂成形品1は、突部Rを有して構成するため、突部Rを形成する部分のパリソン11が引き伸ばされることになる。また、突部Rを形成する部分のパリソン11が表皮材6に先に接することになり、その突部Rを形成する先当たり部分のパリソン11が表皮材6により優先的に冷えてしまうことになる。
パリソン11の中で表皮材6に先当たりする部分が存在すると、その部分は、ブロー圧やコンプレッションによる表皮材6へのパリソン11の圧着力が十分に働く前に、冷えた表皮材6に接触することになる。その結果、型締め途中で表皮材6に接触したパリソン11の部分が冷えてしまい、溶着不良が発生し易くなってしまう。特に、パリソン11の引き伸ばし率が200%以上となる箇所が発生すると、上述した溶着不良の問題が顕著に発生する。このため、突部Rは、パリソン11の引き伸ばし率が200%未満となる形状で構成するようにする。これにより、突部Rを有する発泡樹脂成形品1を成形した場合であっても、溶着不良の問題が発生せず、表皮材6が剥がれ難い発泡樹脂成形品1を得ることができる。なお、溶着不良の問題は、発泡樹脂成形品1の凹凸形状が複雑であるほど顕著に発生する。このため、凹凸形状が複雑な表皮付きの発泡樹脂成形品1を成形する場合には、突部Rを形成する部分のパリソン11の引き伸ばし率が200%未満となる形状で成形することが好ましい。特に、目付重量が250g/m2の表皮材本体61と目付重量が50g/m2のラテックス材層62とで構成する目付の高い仕様の表皮材6を用いる場合は、パリソン11の引き伸ばし率が140%未満となる形状の突部Rを形成することが好ましい。
次に、上述した実施形態を適用した具体的な一実施例について、図8〜図10を参照して説明する。但し、以下に説明する実施例は一例であり、以下の実施例に限定するものではない。図8は、発泡剤として窒素ガスを用いて成形した板状本体4の拡大写真であり、図9は、発泡剤として炭酸ガスを用いて成形した板状本体4の拡大写真を示す。図10は、後述する実施例1〜6、比較例1〜12の試験結果を示す。
(実施例1)
実施例1では、発泡倍率3.2倍、厚み1.15mm(一対のパリソン11の合計厚み2.3mm)のポリエチレン樹脂のパリソン11と、目付重量が150g/m2の表皮材本体61、目付重量が30〜80g/m2のラテックス材層62で構成した表皮材6と、を用いて上述した図4〜図6に示す本実施形態の成形方法において発泡剤として窒素ガスを用い、成形後の発泡樹脂成形品1の板状本体4の発泡倍率が2.8倍であり、平均肉厚が2.0mmである発泡樹脂成形品1を成形した。ラテックス材層62は、SBR(スチレン・ブタジエンゴム)樹脂とアクリル樹脂とのブレンド樹脂で構成したものを使用した。
成形された発泡樹脂成形品1の板状本体4の厚さ方向Tにおける平均気泡径αは、96μmであった。
平均気泡径αは、ミクロトーム(LEICA社製 RM2145)で発泡樹脂成形品1の板状本体4を切断し、その切断した垂直断面をCCDカメラ(キーエンスVH−6300)で撮影して図8に示す写真のような画像を取得し、その取得した図8に示す板状本体4の画像を基に、上記実施形態で説明した平均気泡径αの測定方法と同じ測定方法で測定して算出した。
実施例1の発泡樹脂成形品1のリサイクル性、表皮材6の溶着強度を試験した。
リサイクル性の試験は、成形後のバリ20から表皮材6を剥がしてバリを再利用することができるかを試験した。成形後のバリ20から表皮材6を剥がしてバリを再利用することができる場合は、リサイクル性が良好(OK)であるとし、成形後のバリ20から表皮材6を剥がせずバリを再利用することができない場合は、リサイクル性が不良(NG)であるとした。成形後のバリ20から表皮材6を剥がすことができたバリは、そのバリを粉砕して粉砕材を形成し、粉砕材90%と、バージン材10%と、の混合原料を用いてパリソン11を形成した際に、溶融状態のパリソン11を連続成形することができた。成形後のバリ20から表皮材6を剥がすことができなかったバリは、そのバリを粉砕して粉砕材を形成し、粉砕材90%と、バージン材10%と、の混合原料を用いてパリソン11を形成した際に、溶融状態のパリソン11を連続成形することができなかった。
表皮材6の溶着強度の試験は、成形後の発泡樹脂成形品1の中央部の平面を切り出し、その切り出した発泡樹脂成形品1から表皮材6を素手にて引き剥がして、板状本体4と、表皮材6と、に分離して引き剥がせるか試験した。発泡樹脂成形品1から表皮材6を引き剥がすことができない場合は、溶着強度が良好(OK)であるとし、発泡樹脂成形品1から表皮材6を引き剥がすことができる場合は、溶着強度が不良(NG)であるとした。
実施例1の発泡樹脂成形品1は、リサイクル性、表皮材6の溶着強度が何れも良好(OK)であった。
(実施例2)
実施例2では、発泡倍率3.2倍、厚み1.15mm(一対のパリソン11の合計厚み2.3mm)のポリエチレン樹脂のパリソン11と、目付重量が330g/m2の表皮材本体61、目付重量が30〜80g/m2のラテックス材層62で構成した表皮材6と、を用いて上述した図4〜図6に示す本実施形態の成形方法において発泡剤として窒素ガスを用い、成形後の発泡樹脂成形品1の板状本体4の発泡倍率が2.8倍であり、平均肉厚が2.0mmである発泡樹脂成形品1を成形した。
成形された発泡樹脂成形品1の板状本体4の厚さ方向Tにおける平均気泡径αは、73μmであった。
実施例2の発泡樹脂成形品1は、リサイクル性、表皮材6の溶着強度が何れも良好(OK)であった。
(実施例3)
実施例3では、発泡倍率3.2倍、厚み1.15mm(一対のパリソン11の合計厚み2.3mm)のポリプロピレン樹脂のパリソン11と、目付重量が150g/m2の表皮材本体61、目付重量が30〜80g/m2のラテックス材層62で構成した表皮材6と、を用いて上述した図4〜図6に示す本実施形態の成形方法において発泡剤として窒素ガスを用い、成形後の発泡樹脂成形品1の板状本体4の発泡倍率が2.8倍であり、平均肉厚が2.0mmである発泡樹脂成形品1を成形した。
成形された発泡樹脂成形品1の板状本体4の厚さ方向Tにおける平均気泡径αは、104μmであった。
実施例3の発泡樹脂成形品1は、リサイクル性、表皮材6の溶着強度が何れも良好(OK)であった。
(実施例4)
実施例4では、発泡倍率3.2倍、厚み1.15mm(一対のパリソン11の合計厚み2.3mm)のポリプロピレン樹脂のパリソン11と、目付重量が330g/m2の表皮材本体61、目付重量が30〜80g/m2のラテックス材層62で構成した表皮材6と、を用いて上述した図4〜図6に示す本実施形態の成形方法において発泡剤として窒素ガスを用い、成形後の発泡樹脂成形品1の板状本体4の発泡倍率が2.8倍であり、平均肉厚が2.0mmである発泡樹脂成形品1を成形した。
成形された発泡樹脂成形品1の板状本体4の厚さ方向Tにおける平均気泡径αは、78μmであった。
実施例4の発泡樹脂成形品1は、リサイクル性、表皮材6の溶着強度が何れも良好(OK)であった。
(実施例5)
実施例5では、発泡倍率5.0倍、厚み1.2mm(一対のパリソン11の合計厚み2.4mm)のポリプロピレン樹脂のパリソン11と、目付重量が150g/m2の表皮材本体61、目付重量が30〜80g/m2のラテックス材層62で構成した表皮材6と、を用いて上述した図4〜図6に示す本実施形態の成形方法において発泡剤として窒素ガスを用い、成形後の発泡樹脂成形品1の板状本体4の発泡倍率が4倍であり、平均肉厚が2.0mmである発泡樹脂成形品1を成形した。
成形された発泡樹脂成形品1の板状本体4の厚さ方向Tにおける平均気泡径αは、112μmであった。
実施例5の発泡樹脂成形品1は、リサイクル性、表皮材6の溶着強度が何れも良好(OK)であった。
(実施例6)
実施例6では、発泡倍率5.0倍、厚み1.2mm(一対のパリソン11の合計厚み2.4mm)のポリプロピレン樹脂のパリソン11と、目付重量が330g/m2の表皮材本体61、目付重量が30〜80g/m2のラテックス材層62で構成した表皮材6と、を用いて上述した図4〜図6に示す本実施形態の成形方法において発泡剤として窒素ガスを用い、成形後の発泡樹脂成形品1の板状本体4の発泡倍率が4倍であり、平均肉厚が2.0mmである発泡樹脂成形品1を成形した。
成形された発泡樹脂成形品1の板状本体4の厚さ方向Tにおける平均気泡径αは、83μmであった。
実施例6の発泡樹脂成形品1は、リサイクル性、表皮材6の溶着強度が何れも良好(OK)であった。
(比較例1)
比較例1では、発泡倍率3.2倍、厚み1.15mm(一対のパリソン11の合計厚み2.3mm)のポリエチレン樹脂のパリソン11と、目付重量が150g/m2の表皮材本体61のみで構成した表皮材6と、を用いて上述した図4〜図6に示す本実施形態の成形方法において発泡剤として窒素ガスを用い、成形後の発泡樹脂成形品1の板状本体4の発泡倍率が2.8倍であり、平均肉厚が2.0mmである発泡樹脂成形品1を成形した。
成形された発泡樹脂成形品1の板状本体4の厚さ方向Tにおける平均気泡径αは、100μmであった。
比較例1の発泡樹脂成形品1は、リサイクル性が不良(NG)であり、表皮材6の溶着強度が良好(OK)であった。
(比較例2)
比較例2では、発泡倍率3.2倍、厚み1.15mm(一対のパリソン11の合計厚み2.3mm)のポリエチレン樹脂のパリソン11と、目付重量が330g/m2の表皮材本体61のみで構成した表皮材6と、を用いて上述した図4〜図6に示す本実施形態の成形方法において発泡剤として窒素ガスを用い、成形後の発泡樹脂成形品1の板状本体4の発泡倍率が2.8倍であり、平均肉厚が2.0mmである発泡樹脂成形品1を成形した。
成形された発泡樹脂成形品1の板状本体4の厚さ方向Tにおける平均気泡径αは、76μmであった。
比較例2の発泡樹脂成形品1は、リサイクル性が不良(NG)であり、表皮材6の溶着強度が良好(OK)であった。
(比較例3)
比較例3では、発泡倍率3.2倍、厚み1.15mm(一対のパリソン11の合計厚み2.3mm)のポリプロピレン樹脂のパリソン11と、目付重量が150g/m2の表皮材本体61のみで構成した表皮材6と、を用いて上述した図4〜図6に示す本実施形態の成形方法において発泡剤として窒素ガスを用い、成形後の発泡樹脂成形品1の板状本体4の発泡倍率が2.8倍であり、平均肉厚が2.0mmである発泡樹脂成形品1を成形した。
成形された発泡樹脂成形品1の板状本体4の厚さ方向Tにおける平均気泡径αは、109μmであった。
比較例3の発泡樹脂成形品1は、リサイクル性が不良(NG)であり、表皮材6の溶着強度が良好(OK)であった。
(比較例4)
比較例4では、発泡倍率3.2倍、厚み1.15mm(一対のパリソン11の合計厚み2.3mm)のポリプロピレン樹脂のパリソン11と、目付重量が330g/m2の表皮材本体61のみで構成した表皮材6と、を用いて上述した図4〜図6に示す本実施形態の成形方法において発泡剤として窒素ガスを用い、成形後の発泡樹脂成形品1の板状本体4の発泡倍率が2.8倍であり、平均肉厚が2.0mmである発泡樹脂成形品1を成形した。
成形された発泡樹脂成形品1の板状本体4の厚さ方向Tにおける平均気泡径αは、81μmであった。
比較例4の発泡樹脂成形品1は、リサイクル性が不良(NG)であり、表皮材6の溶着強度が良好(OK)であった。
(比較例5)
比較例5では、発泡倍率5.0倍、厚み1.2mm(一対のパリソン11の合計厚み2.4mm)のポリプロピレン樹脂のパリソン11と、目付重量が150g/m2の表皮材本体61のみで構成した表皮材6と、を用いて上述した図4〜図6に示す本実施形態の成形方法において発泡剤として窒素ガスを用い、成形後の発泡樹脂成形品1の板状本体4の発泡倍率が4倍であり、平均肉厚が2.0mmである発泡樹脂成形品1を成形した。
成形された発泡樹脂成形品1の板状本体4の厚さ方向Tにおける平均気泡径αは、117μmであった。
比較例5の発泡樹脂成形品1は、リサイクル性が不良(NG)であり、表皮材6の溶着強度が良好(OK)であった。
(比較例6)
比較例6では、発泡倍率5.0倍、厚み1.2mm(一対のパリソン11の合計厚み2.4mm)のポリプロピレン樹脂のパリソン11と、目付重量が330g/m2の表皮材本体61のみで構成した表皮材6と、を用いて上述した図4〜図6に示す本実施形態の成形方法において発泡剤として窒素ガスを用い、成形後の発泡樹脂成形品1の板状本体4の発泡倍率が4倍であり、平均肉厚が2.0mmである発泡樹脂成形品1を成形した。
成形された発泡樹脂成形品1の板状本体4の厚さ方向Tにおける平均気泡径αは、88μmであった。
比較例6の発泡樹脂成形品1は、リサイクル性が不良(NG)であり、表皮材6の溶着強度が良好(OK)であった。
(比較例7)
比較例7では、発泡倍率3.2倍、厚み1.15mm(一対のパリソン11の合計厚み2.3mm)のポリエチレン樹脂のパリソン11と、目付重量が150g/m2の表皮材本体61、目付重量が30〜80g/m2のラテックス材層62で構成した表皮材6と、を用いて上述した図4〜図6に示す本実施形態の成形方法において発泡剤として炭酸ガスを用い、成形後の発泡樹脂成形品1の板状本体4の発泡倍率が2.8倍であり、平均肉厚が2.0mmである発泡樹脂成形品1を成形した。
成形された発泡樹脂成形品1の板状本体4の厚さ方向Tにおける平均気泡径αは、162μmであった。
比較例7の発泡樹脂成形品1は、リサイクル性が良好(OK)であり、表皮材6の溶着強度が不良(NG)であった。
(比較例8)
比較例8では、発泡倍率3.2倍、厚み1.15mm(一対のパリソン11の合計厚み2.3mm)のポリエチレン樹脂のパリソン11と、目付重量が330g/m2の表皮材本体61、目付重量が30〜80g/m2のラテックス材層62で構成した表皮材6と、を用いて上述した図4〜図6に示す本実施形態の成形方法において発泡剤として炭酸ガスを用い、成形後の発泡樹脂成形品1の板状本体4の発泡倍率が2.8倍であり、平均肉厚が2.0mmである発泡樹脂成形品1を成形した。
成形された発泡樹脂成形品1の板状本体4の厚さ方向Tにおける平均気泡径αは、155μmであった。
比較例8の発泡樹脂成形品1は、リサイクル性が良好(OK)であり、表皮材6の溶着強度が不良(NG)であった。
(比較例9)
比較例9では、発泡倍率3.2倍、厚み1.15mm(一対のパリソン11の合計厚み2.3mm)のポリプロピレン樹脂のパリソン11と、目付重量が150g/m2の表皮材本体61、目付重量が30〜80g/m2のラテックス材層62で構成した表皮材6と、を用いて上述した図4〜図6に示す本実施形態の成形方法において発泡剤として炭酸ガスを用い、成形後の発泡樹脂成形品1の板状本体4の発泡倍率が2.8倍であり、平均肉厚が2.0mmである発泡樹脂成形品1を成形した。
成形された発泡樹脂成形品1の板状本体4の厚さ方向Tにおける平均気泡径αは、165μmであった。
比較例9の発泡樹脂成形品1は、リサイクル性が良好(OK)であり、表皮材6の溶着強度が不良(NG)であった。
(比較例10)
比較例10では、発泡倍率3.2倍、厚み1.15mm(一対のパリソン11の合計厚み2.3mm)のポリプロピレン樹脂のパリソン11と、目付重量が330g/m2の表皮材本体61、目付重量が30〜80g/m2のラテックス材層62で構成した表皮材6と、を用いて上述した図4〜図6に示す本実施形態の成形方法において発泡剤として炭酸ガスを用い、成形後の発泡樹脂成形品1の板状本体4の発泡倍率が2.8倍であり、平均肉厚が2.0mmである発泡樹脂成形品1を成形した。
成形された発泡樹脂成形品1の板状本体4の厚さ方向Tにおける平均気泡径αは、157μmであった。
比較例10の発泡樹脂成形品1は、リサイクル性が良好(OK)であり、表皮材6の溶着強度が不良(NG)であった。
(比較例11)
比較例11では、発泡倍率5.0倍、厚み1.2mm(一対のパリソン11の合計厚み2.4mm)のポリプロピレン樹脂のパリソン11と、目付重量が150g/m2の表皮材本体61、目付重量が30〜80g/m2のラテックス材層62で構成した表皮材6と、を用いて上述した図4〜図6に示す本実施形態の成形方法において発泡剤として炭酸ガスを用い、成形後の発泡樹脂成形品1の板状本体4の発泡倍率が4倍であり、平均肉厚が2.0mmである発泡樹脂成形品1を成形した。
成形された発泡樹脂成形品1の板状本体4の厚さ方向Tにおける平均気泡径αは、174μmであった。
比較例11の発泡樹脂成形品1は、リサイクル性が良好(OK)であり、表皮材6の溶着強度が不良(NG)であった。
(比較例12)
比較例12では、発泡倍率5.0倍、厚み1.2mm(一対のパリソン11の合計厚み2.4mm)のポリプロピレン樹脂のパリソン11と、目付重量が330g/m2の表皮材本体61、目付重量が30〜80g/m2のラテックス材層62で構成した表皮材6と、を用いて上述した図4〜図6に示す本実施形態の成形方法において発泡剤として炭酸ガスを用い、成形後の発泡樹脂成形品1の板状本体4の発泡倍率が4倍であり、平均肉厚が2.0mmである発泡樹脂成形品1を成形した。
成形された発泡樹脂成形品1の板状本体4の厚さ方向Tにおける平均気泡径αは、165μmであった。
比較例12の発泡樹脂成形品1は、リサイクル性が良好(OK)であり、表皮材6の溶着強度が不良(NG)であった。
実施例1〜6、比較例1〜12の試験結果を図10に示す。なお、実施例1〜6、比較例1〜6のように発泡剤として窒素ガスを用いることで図8に示すように気泡径が小さい気泡で構成された発泡樹脂成形品1が得られることが判明した。また、比較例7〜12のように発泡剤として炭酸ガスを用いることで図9に示すように気泡径が大きい気泡で構成された発泡樹脂成形品1が得られることが判明した。また、図10に示す試験結果から明らかなように、表皮材6にラテックスを用い、且つ、発泡剤として窒素ガスを用いて平均気泡径αを150μm以下にすることで、リサイクル性、表皮材6の溶着強度が何れも良好な発泡樹脂成形品1を得ることが判明した。発泡樹脂成形品1の発泡倍率を高くすると、クッション性が高まり、表皮材6とパリソン11とを分割金型12a,12bで型締めしてコンプレッションしても表皮材6がパリソン11に貼り付き難くなるが、平均気泡径αを150μm以下にすることで、表皮材6がパリソン11に貼り付き易くなり、表皮材6の溶着強度が良好な発泡樹脂成形品1を得ることができることが判明した。従って、平均気泡径αを150μm以下にすることで、発泡倍率が高くても、表皮材6が剥がれにくい発泡樹脂成形品1を得ることができることが判明した。
次に、図11〜図14に示すように、突部Rの形状が異なる発泡樹脂成形品1を成形した。図11、図12は、突部Rを形成する部分のパリソン11が200%以上引き伸ばされる箇所を有する発泡樹脂成形品1の構成例を示し、図13、図14は、突部Rを形成する部分のパリソン11が200%以上引き伸ばされる箇所を有しない発泡樹脂成形品1の構成例を示す。
図11、図13において正方形の枠内に記載された値は、パリソン11の引き伸ばし率を示している。引き伸ばし率は、パリソン11に一定の距離(図では、10mm×10mm)の番線を引いて所定幅の正方形のセルを構成し、所定形状の発泡樹脂成形品1を成形した際に各セル内のパリソン11が引き伸ばされた割合を示している。例えば、正方形の枠内に記載された値が100の場合は、パリソン11が引き伸ばされていないことを意味し、正方形の枠内に記載された値が100以上の場合は、パリソン11が引き伸ばされたことを意味し、値が高くなるに従いパリソン11が多く引き伸ばされたことを意味する。図11、図12に示す発泡樹脂成形品1は、パリソン11の引き伸ばし率が200%以上の箇所が存在する突部Rを有しており、パリソン11の引き伸ばし率が200%以上の箇所では、表皮材6の溶着不良が発生していた。図12に示す符号rの箇所が表皮材6の溶着不良が発生していた箇所を示し、その箇所rは、図11に示すようにパリソン11の引き伸ばし率が200%以上の箇所であった。これに対し、図13、図14に示す発泡樹脂成形品1は、パリソン11の引き伸ばし率が200%以上の箇所が存在しない突部Rを有しており、表皮材6の溶着不良が発生していなかった。このため、表皮材6付きの発泡樹脂成形品1を成形する際には、パリソン11の引き伸ばし率が200%未満の形状で構成した突部Rを有する発泡樹脂成形品1を成形することで、表皮材6の溶着不良が発生しない発泡樹脂成形品1を得ることができることが判明した。
<本実施形態の発泡樹脂成形品1の作用・効果>
このように、本実施形態の発泡樹脂成形品1は、発泡樹脂成形品1を構成する板状本体4が、板状本体4の厚さ方向の平均気泡径αが150μm以下の気泡で構成する発泡樹脂で構成している。また、本実施形態の発泡樹脂成形品1は、溶融状態の発泡樹脂の引き伸ばし率が200%未満の形状で構成した突部Rを有して構成している。これにより、表皮材6が剥がれ難い発泡樹脂成形品1を得ることができる。
通常、発泡樹脂成形品1を成形する際は、多くのバリが発生する。バリとは、発泡樹脂成形品1の周囲に形成される部分である。発泡樹脂成形品1の周囲に発生するバリは、環境保護や、製品の低コスト化を図るべく、再利用されることが多く、発泡樹脂成形品1を成形する際に発生するバリを粉砕した粉砕材を用いて発泡樹脂成形品1を成形している。
しかし、本実施形態のように表皮材6付きの発泡樹脂成形品1を成形した際は、図7に示すように、バリ20に表皮材6が貼着した部分も存在し、バリ20から表皮材6を剥がさなければバリを再利用することができない。本実施形態では、バリ20から表皮材6を剥がし易くするために、表皮材6を表皮材本体61とラテックス材層62とで構成し、ラテックス材層62側を板状本体4に貼着するようにしている。ラテックス材層62は、樹脂やゴムのエマルジョンによって形成された樹脂層であり、表皮材本体61の裏面にラテックス材層62を形成して表皮材6を構成している。ラテックスを用いて表皮材6を構成することで、バリ20から表皮材6を剥がし易くなり、バリを再利用可能にし、リサイクル性を向上することを可能にしている。しかし、ラテックスを用いて表皮材6を構成しているため、逆に、発泡樹脂成形品1から表皮材6が剥がれやすくなってしまうことになる。このため、本実施形態では、板状本体4を構成する発泡樹脂の気泡の平均気泡径αを150μm以下にしている。板状本体4を構成する発泡樹脂の気泡の平均気泡径を150μm以下にすると、板状本体4と表皮材6とをコンプレッションした際に、板状本体4を構成する発泡樹脂の気泡が扁平し難く、クッション性を発揮しないため、板状本体4と表皮材6とを強固にコンプレッションし易く、表皮材6を板状本体4に強固に溶着することがし易くなる。これにより、ラテックスを用いて表皮材6を構成しても、発泡樹脂成形品1から表皮材6が剥がれ難くすることができる。その結果、本実施形態の発泡樹脂成形品1は、リサイクル性に優れ、且つ、表皮材6を剥がれ難くすることができる。なお、気泡の平均気泡径が50未満となると、発泡倍率が上がり難くなる問題が発生する。このため、本実施形態の板状本体4を構成する発泡樹脂の気泡は平均気泡径が50〜150μmの範囲で構成することが好ましい。これにより、表皮材が剥がれ難く、且つ、発泡倍率の高い発泡樹脂成形品1を得ることができる。
また、発泡樹脂成形品1は、複雑な形状で構成し、突部Rを有して構成する場合もある。突部Rを有する発泡樹脂成形品1は、突部Rを形成する部分のパリソン11を引き伸ばして成形することになる。また、突部Rを形成する部分のパリソン11が表皮材6に先に接することになり、突部Rを形成する先当たり部分のパリソン11が表皮材6により冷えてしまうことになる。
パリソン11の中で表皮材6に先当たりする部分が存在すると、その部分は、ブロー圧やコンプレッションによる表皮材6へのパリソン11の圧着力が十分に働く前に、冷えた表皮材6に接触することになる。その結果、型締め途中で表皮材6に接触したパリソン11の部分が冷えてしまい、溶着不良が発生し易くなってしまう。特に、パリソン11の引き伸ばし率が200%以上となる箇所が発生すると、上述した溶着不良の問題が顕著に発生する。このため、突部Rは、パリソン11の引き伸ばし率が200%未満となる形状で構成するようにする。これにより、突部Rを有する発泡樹脂成形品1を成形した場合であっても、溶着不良の問題が発生せず、表皮材6が剥がれ難い発泡樹脂成形品1を得ることができる。
なお、上述した実施形態は本発明の好適な実施形態であり、本発明はこれに限定されることなく、本発明の技術的思想に基づいて種々変形して実施することが可能である。
上述した発泡樹脂成形品1は、板状本体4を構成する表壁2の外表面に表皮材6を貼着している。しかし、表壁2及び裏壁3の双方に表皮材6を貼着し、板状本体4が露出することがないように全面にわたって表皮材6で覆うことも可能である。
また、上述した発泡樹脂成形品1は、自動車用内装トリム(トランクサイドトリムなど)、カーゴフロアパネル(自動車荷室の蓋パネルまたはラゲージボード)またはリアパーセルシェルフなどの自動車用内装品または内装壁パーティション、扉などのパネル状の建築用品などにも適用可能である。また、ダクト等にも適用可能である。また、燃料タンクの外側に配置される断熱部材としても適用可能である。
1 発泡樹脂成形品
R 突部
F フランジ部
2 表壁
3 裏壁
4 板状本体
6 表皮材
61 表皮材本体
62 ラテックス材層
10 押出ヘッド
11 パリソン
12a,12b 分割金型
13 ピンチオフ
20 バリ

Claims (6)

  1. 発泡樹脂からなる板状本体と、前記板状本体の少なくとも一方の面に貼着された表皮材と、を有し、前記表皮材は、繊維で構成する表皮材本体と、前記繊維を固定するラテックス材層と、で構成し、前記ラテックス材層が前記板状本体に貼着されており、
    前記板状本体を構成する前記発泡樹脂の気泡は、前記板状本体の厚さ方向の平均気泡径が150μm以下であり、
    前記ラテックス材層は、前記発泡樹脂よりも融点の低い樹脂で構成されている、ことを特徴とする発泡樹脂成形品。
  2. 発泡樹脂からなる板状本体と、前記板状本体の少なくとも一方の面に貼着された表皮材と、を有する発泡樹脂成形品であって、
    溶融状態の発泡樹脂の引き伸ばし率が200%未満の形状で構成した突部を有し、
    前記引き伸ばし率は、溶融状態の発泡樹脂に一定の距離の番線を引いて所定幅の正方形のセルを構成し、前記発泡樹脂成形品を成形した際に各セル内の発泡樹脂が引き伸ばされた割合である、ことを特徴とする発泡樹脂成形品。
  3. 前記表皮材は、繊維で構成する表皮材本体と、前記繊維を固定するラテックス材層と、で構成し、前記ラテックス材層が前記板状本体に貼着されており、
    前記板状本体を構成する前記発泡樹脂の気泡は、前記板状本体の厚さ方向の平均気泡径が150μm以下である、ことを特徴とする請求項2記載の発泡樹脂成形品。
  4. 前記ラテックス材層は、前記発泡樹脂よりも融点の低い樹脂で構成されている、ことを特徴とする請求項3記載の発泡樹脂成形品。
  5. 前記板状本体は、発泡倍率が2.5〜4.0倍であり、平均肉厚は、1.0〜3.5mmであり、
    前記表皮材本体は、目付重量が150〜330g/m2であり、
    前記ラテックス材層は、目付重量が30〜80g/m2である、ことを特徴とする請求項1、3、4の何れか1項に記載の発泡樹脂成形品。
  6. 発泡樹脂からなる板状本体と、前記板状本体の少なくとも一方の面に貼着された表皮材と、を有し、前記表皮材は、繊維で構成する表皮材本体と、前記繊維を固定するラテックス材層と、で構成し、前記ラテックス材層が前記板状本体に貼着されており、
    前記板状本体を構成する前記発泡樹脂の気泡は、前記板状本体の厚さ方向の平均気泡径が150μm以下であり、
    前記板状本体は、発泡倍率が2.5〜4.0倍であり、平均肉厚は、1.0〜3.5mmであり、
    前記表皮材本体は、目付重量が150〜330g/m 2 であり、
    前記ラテックス材層は、目付重量が30〜80g/m 2 である、ことを特徴とする発泡樹脂成形品。
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