JP5852310B2 - 車両用吸音構造体の製造方法 - Google Patents

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Description

本発明は、車両用吸音構造体に関し、更に詳しくは、軽量でありながら、吸音材の経時的な剥離を防止することができる車両用吸音構造体に関する。
車両用吸音構造体は、例えば、エンジンの下方に配置され、エンジンから発せられる音を吸音すると共に、地面から跳ね上げられた汚れがエンジンに付着しないように保護する機能を果たす。
近年、車両用吸音構造体は、燃費等の経済性の観点から、軽量なものが求められている。
例えば、パネル形状のカバー(基材)の表面に、格子状に仕切壁で区画された凹部を設け、凹部の開放面を塞ぐように吸音材をカバーの表面にクリップで接合させたエンジンカバー(車両用吸音構造体)が知られている(例えば、特許文献1参照)。
かかるエンジンカバーにおいては、カバー及び吸音材の接続のための特別な補強部材を用いないので、その分だけ軽量化が図れる。
また、吸音材とカバー本体(基材)とからなり、カバー本体の補強板部に突設された係合部を、吸音材の貫通孔に挿通し、カバー本体の係合孔に係合することにより、吸音材がカバー本体に取り付けられた車両用アンダーカバーが知られている(例えば、特許文献2参照)。
かかる車両用アンダーカバーは、部品点数が更に削減されるため、より軽量化が図れる。
特開2007−262904号公報 特開2009−160959号公報
しかしながら、上記特許文献1及び2に記載の車両用吸音構造体は、どれも基材と吸音材との結合性が十分とはいえない。すなわち、これらの車両用吸音構造体は、吸音材をクリップや係合部で留めたり嵌め込んだりしているだけなので、車両の振動等により経時的に緩み、その結果、吸音材が基材から剥離してしまう場合がある。
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、軽量であり、且つ吸音材の経時的な剥離を極力防止することができる車両用吸音構造体を提供することを目的とする。
本発明者らは、上記課題を解決するため鋭意検討したところ、基材の周縁端部と吸音材とを融着一体化させることにより、上記課題を解決できることを見出し、本発明を完成させるに至った。
本発明は、(第1金型と第2金型とからなる分割金型により、熱可塑性樹脂からなる成形体と不織布からなる吸音材とを融着一体化して、車両用吸音構造体を製造する方法であって、第1金型には、前記成形体の周縁端部及び凸部を形成するための複数の突起と、該複数の突起の間で吸音材に接しない突起部を形成するための前記突起より低い突起と、ピンチオフ用の刃形部が設けられ、第2金型には、引掛け部が設けられているものにおいて、熱可塑性樹脂を分割金型の間に下向きに押出して、押出シートとする押出工程と、引掛け部に吸音材の上端部を引掛けて、第2金型に沿って吸音材を垂下し配置させる配置工程と、押出シートの一面を第1金型に付着させ、吸引することにより、押出シートを所定の形状に成形し、成形体とする成形工程と、該成形工程後、第1金型と第2金型とを互いの方向に移動して型締めして成形体と吸音材とを仮付着させた後、凸部と吸音材との接触部分を押圧融着一体化させ、これら全ての押圧融着一体化部分の肉厚を吸音材の肉厚より薄くして、融着一体化を強固にする融着工程とを遂行する車両用吸音構造体の製造方法に存する。
本発明は、()押出シートが、熱可塑性樹脂を発泡させて形成されたものである上記()記載の車両用吸音構造体の製造方法に存する。
本発明の車両用吸音構造体によれば、該車両用吸音構造体が熱可塑性樹脂材からなる基材と、熱可塑性樹脂材又は不織布からなる吸音材とによって構成され、基材の周縁端部と吸音材の融着部とを直接融着一体化させているので、基材と吸音材とを接続させるための部品等が一切不要であり、十分な軽量化が図れる。
また、基材の周縁端部と吸音材の融着部とを融着一体化させているので、物理的に留めた場合のように、経時的に緩むことがなく、基材からの吸音材の経時的な剥離を確実に防止することができる。
上記車両用吸音構造体においては、基材が、底部に立設された凸部を更に有し、凸部の頂面と吸音材の融着部とが融着一体化されている場合、基材と吸音材とがより多くの箇所や面積で融着一体化されることになるので、基材からの吸音材の経時的な剥離をより確実に防止することができる。
ここで、融着部の厚みが、融着部以外の吸音材の厚みよりも薄肉になっており、且つ融着部が押圧されて形成されたものであることが好ましい。この場合、基材と吸音材の融着部との融着がより密になるので、基材の一部が吸音材の組織内部に進入することになり、基材からの吸音材の経時的な剥離をより一層確実に防止することができる。
上記車両用吸音構造体においては、基材が吸音材に接しない突起部を更に有する場合、吸音効果がより向上する。
また、吸音材がカーボンブラックを含んだスパンボンド不織布である場合、吸音効果が更に向上する。
本発明の車両用吸音構造体の製造方法によれば、軽量でありながら、吸音材の経時的な剥離を防止することができる車両用吸音構造体を製造することができる。
また、工程が少ないため、低コストで車両用吸音構造体を製造することができる。
図1は、本発明に係る車両用吸音構造体の配置箇所の一例を説明するための概略図である。 図2は、本実施形態に係る車両用吸音構造体を取り付けた車両のカバー材を示す概略上面図である。 図3は、図2に示す車両用吸音構造体をA−A線で切断した断面図である。 図4は、本実施形態に係る車両用吸音構造体の製造方法を示すフローチャートである。 図5は、本実施形態に係る車両用吸音構造体の製造方法における押出工程を説明するための概略断面図である。 図6は、本実施形態に係る車両用吸音構造体の製造方法で用いられる押出装置を示す概略図である。 図7の(a)及び(b)は、本実施形態に係る車両用吸音構造体の製造方法における成形工程を説明するための概略断面図である。 図8の(a)及び(b)は、本実施形態に係る車両用吸音構造体の製造方法における融着工程を説明するための概略断面図である。 図9は、他の実施形態に係る車両用吸音構造体を示す断面図である。 図10は、他の実施形態に係る車両用吸音構造体の製造方法に用いられる第1金型を示す概略断面図である。
以下、必要に応じて図面を参照しつつ、本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。なお、図面中、同一要素には同一符号を付すこととし、重複する説明は省略する。また、図面の寸法比率は図示の比率に限られるものではない。
図1は、本発明に係る車両用吸音構造体の配置箇所の一例を説明するための概略図である。
図1に示すように、本発明に係る車両用吸音構造体100は、例えば、車両のエンジンルーム101のエンジン102やラジエーター103の下方にエンジンアンダーカバーとして配置される。
図2は、本実施形態に係る車両用吸音構造体を取り付けた車両のカバー材を示す概略上面図である。
図2に示すように、カバー材200は、枠体110に本実施形態に係る車両用吸音構造体100が取り付けられた構造となっている。
かかる車両用吸音構造体100により、エンジンから発せられる音を吸音すると共に、地面から跳ね上げられた汚れがエンジンに付着しないように保護される。
図3は、図2に示す車両用吸音構造体をA−A線で切断した断面図である。
図3に示すように、車両用吸音構造体100は、底部1、該底部1の周縁に立設された周縁端部2、及び、内方に設けられた凸部3、を有する基材10と、周縁端部2及び凸部3の頂面に融着される融着部11を有する吸音材20と、を備える。
また、車両用吸音構造体100においては、基材10の周縁端部2と、吸音材20の融着部11とが融着一体化され、更に、基材10の凸部3の頂面と吸音材20の融着部11とが融着一体化されている。
ここで、融着部11は、車両用吸音構造体100の製造時に押圧されて形成される。すなわち、車両用吸音構造体100において、基材10と吸音材20との融着は、後述するように、吸音材20を溶融状態の基材10に押圧することにより形成される。
このとき、基材10と吸音材20とが同材質(例えば、PP等)であれば、吸音材20に溶融状態の基材10が入り込んで両者は一体に融着することになり、異材料(例えば、基材がPP、吸音材がポリエステル等)であれば、吸音材20に溶融状態の基材10が入り込んで投錨効果が発揮されて、融着することになる。
また、車両用吸音構造体100においては、融着部11の厚みが、該融着部11以外の吸音材20の厚みよりも薄肉になっている。これにより、基材10と吸音材20の融着部11との融着がより密になるので、基材10の一部が吸音材20内部に進入する投錨効果により、基材10からの吸音材20の経時的な剥離をより一層確実に防止することができる。
車両用吸音構造体100において、温度25℃における吸音材20の基材10に対する剥離強度が50N/25mm幅以上であり、好ましくは、80N/25mm幅以上である。なお、上記剥離強度の値は、JIS−K−7113に準拠して測定したものである。
本実施形態に係る車両用吸音構造体100によれば、基材10と吸音材20とが直接融着一体化させているので、基材10と吸音材20とを接続させるための部品等が不要であり、十分な軽量化が図れる。
また、基材10の周縁端部2及び凸部3の頂面と、吸音材20とをそれぞれ融着一体化させているので、留め具等を用いて留められた場合のように、経時的に緩むことがなく、基材からの吸音材の経時的な剥離を確実に防止することができる。
車両用吸音構造体100においては、基材10の底部1と吸音材20との間に空隙部21が形成され、かかる空隙部21は、凸部3によって区画されている。
ここで、車両用吸音構造体100においては、後述するように基材10が不織布からなっているのでエンジン音を吸収し、更に、空隙部21が形成されているので、エンジン音を減衰させて吸音性を向上させることができる。
上記基材10は、熱可塑性樹脂材からなる。なお、熱可塑性樹脂材とは、熱可塑性樹脂の成形体、例えば、プラスチックや樹脂シート等を意味するものである。
かかる熱可塑性樹脂としては、エチレン、プロピレン、ブテン、イソプレンペンテン、メチルペンテン等のオレフィン類の単独重合体あるいは共重合体であるポリオレフィン、ポリアミド、ポリスチレン、ポリ塩化ビニル、ポリアクリロニトリル、エチレン−エチルアクリレート共重合体等のアクリル誘導体、ポリカーボネート、エチレン−酢酸ビニル共重合体等の酢酸ビニル共重合体、アイオノマー、エチレン−プロピレン−ジエン類等のターポリマー、ABS樹脂、ポリオレフィンオキサイド、ポリアセタール等が挙げられる。なお、これらは一種類を単独で用いても、二種類以上を混合して用いてもよい。
これらの中でも、熱可塑性樹脂は、プロピレン単位を有するものであることが好ましく、具体的には、プロピレン単独重合体、エチレン−プロピレンブロック共重合体、エチレン−プロピレンランダム共重合体であることが好ましい。
さらに、基材10を発泡状態にて形成する場合には、熱可塑性樹脂は、長鎖分岐構造を有するプロピレン単独重合体であることが特に好ましい。この場合、溶融張力が高くなるので、基材を製造する際の発泡が起こりやすくなり、気泡セルもより均一化される。
長鎖分岐構造を有するプロピレン単独重合体は、0.9以下の重量平均分岐指数を有するプロピレン単独重合体であることが好ましい。また、重量平均分岐指数g’は、V1/V2で表され、V1が分岐ポリオレフィンの極限粘度数、V2が分岐ポリオレフィンと同じ重量平均分子量を有する線状ポリオレフィンの極限粘度数である。
吸音材20は、不織布からなる。
かかる不織布としては、基材10と融着可能であれば特に限定されないが、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリエステル、ポリウレタン等からなる不織布が挙げられる。なお、これらは一種類を単独で用いても、二種類以上を混合して不織布としてもよい。また、複数枚の不織布を重ね合わせて用いることも可能である。
これらの中でも、不織布は、ポリプロピレン不織布又はポリエステル不織布であることがより好ましい。この場合、不織布自体が熱可塑性であるので、剥離回収後、加熱して変形させることによって、別の用途に用いることも可能となる。
不織布の目付けは、立体形状再現性及び成形性の観点から、100〜500g/mであることが好ましく、150〜500g/mであることがより好ましい。
不織布の引張強度は、立体形状再現性及び成形性の観点から、15kg/cm以上であることが好ましく、伸度は、30%以上であることが好ましい。なお、かかる引張強度及び伸度の値は、温度20℃にて、JIS−K−7113に準拠して測定したものである。
押圧されて形成された融着部11の厚みは、5mm以下であることが好ましく、1〜3mmであることがより好ましい。融着部11の厚みが5mmを超えると、厚みが上記範囲内にある場合と比較して、十分な投錨効果が得られない場合がある。
また、基材10と融着一体化されていない部分の不織布の厚みは、5mmより厚いことが好ましく、10〜30mmであることがより好ましい。厚みが5mm以下であると、厚みが上記範囲内にある場合と比較して、吸音効果が十分に得られない場合がある。
車両用吸音構造体100において、吸音材20は、カーボンブラックを含んた不織布であることが好ましく、カーボンブラックを含んだスパンボンド不織布であることがより好ましい。カーボンブラックを含んでいると、悪臭が極力吸着除去されると共に、吸音効果が更に向上する。
車両用吸音構造体100は、自動車のエンジンを保護するために該エンジンの下面に配置されるエンジンアンダーカバーとして好適に用いられる。
次に、本実施形態に係る車両用吸音構造体の製造方法について説明する。
図4は、本実施形態に係る車両用吸音構造体の製造方法を示すフローチャートである。
図4に示すように、本実施形態に係る車両用吸音構造体の製造方法は、熱可塑性樹脂材を、分割金型の間に押出して、押出シートとする押出工程S1と、該押出シートの一面を分割金型の一方側の第1金型に付着させ、押出シートを所定の形状に成形し、成形体とする成形工程S2と、分割金型の他方側の第2金型に配置された吸音材を、第1金型と、第2金型とで成形体を挟み込むことにより、成形体の他面に仮付着させ、成形体と吸音材との接触部分を融着一体化させる融着工程S3と、を備える。すなわち、押出工程S1、成形工程S2、融着工程S3がこの順序で施されることとなる。
(押出工程)
押出工程S1は、溶融した成形前の熱可塑性樹脂材を、分割金型の間に押出して、シート状の押出シートとする工程である。
図5は、本実施形態に係る車両用吸音構造体の製造方法における押出工程を説明するための概略断面図である。
図5に示すように、押出工程S1においては、押出装置にて熱可塑性樹脂を溶融混練し、Tダイ36より溶融状態の押出シートPとして分割金型40の間に垂下される。
ここで、押出装置について説明する。
図6は、本実施形態に係る車両用吸音構造体の製造方法で用いられる押出装置を示す概略図である。
図6に示すように、押出装置30は、ホッパー31が付設されたシリンダー32と、シリンダー32内に設けられた図示しないスクリューと、スクリューに連結された油圧モーター33と、シリンダー32と内部が連通したアキュムレータ34と、アキュムレータ34内に設けられたプランジャー35と、アキュムレータ34と内部が連通したTダイ36と、Tダイの先端に設けられた押出スリット37とを備える。
押出装置30においては、ホッパー31から投入された材料がシリンダー32内で油圧モーター33によるスクリューの回転により溶融、混練され、溶融状態の熱可塑性樹脂がアキュムレータ34室に移送されて一定量貯留され、プランジャー35の駆動によりTダイ36に向けて熱可塑性樹脂が移送されることになる。
押出工程S1において、熱可塑性樹脂は、230℃におけるメルトテンションが30〜350mNの範囲内のポリプロピレン樹脂を用いることが好ましい。ここで、メルトテンションとは、溶融張力を意味する。メルトテンションが上記範囲内であると、発泡用ポリプロピレン系樹脂は歪み硬化性を示し、高い発泡倍率を得ることができる。
また、熱可塑性樹脂は、230℃におけるメルトフローレイト(MFR)が1〜10であることが好ましい。ここで、MFRとは、JIS K−7210に準じて測定した値である。
MFRが1未満であると、MFRが上記範囲内にある場合と比較して、押出速度を上げることが困難となる傾向にあり、MFRが10を超えると、MFRが上記範囲内にある場合と比較して、ドローダウン等の発生によりブロー成形が困難となる傾向にある。
なお、熱可塑性樹脂材には、スチレン系エラストマー、低密度のポリエチレン、シリカ、マイカ、タルク、炭酸カルシウム、ガラス繊維、カーボン繊維等の無機フィラー、核剤、着色剤、可塑剤、安定剤、帯電防止剤、難燃剤、発泡剤等が添加されていてもよい。
(成形工程)
成形工程S2は、押出工程S1で得られた押出シートPの一面P1を分割金型40の一方側の第1金型40aに付着させ、吸引することにより、押出シートPを所定の形状に成形し、成形体とする工程である。
ここで、分割金型について説明する。
図5に戻り、分割金型40は、一方側の第1金型40aと他方側の第2金型40bとからなる。
第1金型40aの上部には第1上型枠44a1が設けられ、下部には第1下型枠44a2が設けられている。同様に、第2金型40bの上部には第2上型枠44b1が設けられ、下部には第2下型枠44b2が設けられている。なお、第1上型枠44a1と第2上型枠44b1とで押出シートPを挟持可能となっており、第1下型枠44a2と第2下型枠44b2とで押出シートPを挟持可能となっている。
また、分割金型40においては、第1上型枠44a1及び第1下型枠44a2に対して、第1金型40aがスライド可能となっており、第2上型枠44b1及び第2下型枠44b2に対して、第2金型40bがスライド可能となっている。
第1金型40aは、本体部45と、該本体部45に設けられ所定の表面形状を有するキャビティ43と、該キャビティ43に設けられた複数の吸引穴41と、キャビティ43及び本体部45の間に設けられた真空吸引室42と、本体部45の内側面に設けられた刃形部46と、を備える。なお、図5に示すキャビティ43の表面形状は、製造方法を説明するために概略化したものであり、例えば、図2に示すような車両用吸音構造体100を製造する際には、さらに複雑な構造となる。
図5に示すように、分割金型40において、第1金型40aと第2金型40bとの間には、押出シートPが垂下されており、また、第2金型40bの押出シートPを挟み込む側の面48の上部に引掛け部47が設けられており、該引掛け部47に不織布Qの端を引掛けることにより、不織布Qが面48に沿って垂下されている。
図7の(a)及び(b)は、本実施形態に係る車両用吸音構造体の製造方法における成形工程を説明するための概略断面図である。
図7の(a)に示すように、成形工程S2においては、まず、押出シートPが、第1上型枠44a1及び第2上型枠(図示しない)と、第1下型枠44a2及び第2下型枠(図示しない)とで挟持される。これにより、キャビティ43と押出シートPとの間に密閉空間Tが形成される。
そして、図7の(b)に示すように、真空吸引室42を減圧することにより、吸引穴41を介して密閉空間Tの空気が吸引され、押出シートPは、気泡が成長して体積が増加すると共に、キャビティ43側に移行し、結果として押出シートPの一面P1がキャビティ43に付着される。
これにより、キャビティ43の外表面に沿った形状に賦形された押出シート(以下「成形体R」ともいう。)となる。すなわち、上述した車両用吸音構造体100の底部、周縁端部及び凸部を有する基材の形状に成形されることになる。
(融着工程)
融着工程S3は、成形工程S2で成形した成形体Rを第1金型40aと、分割金型の他方側の第2金型40bとで成形体R(押出シート)を挟み込むことにより、第2金型40bに配置された不織布Q(吸音材)を、成形体Rの他面に仮付着させ、成形体Rと吸音材との接触部分を融着一体化させる工程である。
図8の(a)及び(b)は、本実施形態に係る車両用吸音構造体の製造方法における融着工程を説明するための概略断面図である。
図8の(a)に示すように、融着工程S3は、第1金型40aと第2金型40bとを閉じる型締めにより、不織布Qと成形体Rとの接触部分が押圧され密着される。
このとき、成形体Rは、熱可塑性樹脂材が溶融状態となっているので、該熱可塑性樹脂材が不織布の表面から内方に侵入し、上述したような投錨効果が発揮される。なお、このことにより、車両用吸音構造体の融着部の厚みは、該融着部以外の吸音材の厚みよりも薄肉になる。
また、上述したように第1金型40aの本体部45の内側面には、上下一対の刃形部46が設けられている。したがって、型締めにより、第1金型40aが第2金型40bに押し付けられると、成形体R(押出シート)及び不織布Qにピンチオフが施される。これにより、図8の(b)に示すように、上下の刃形部46間に挟まれた部分が後に車両用吸音構造体となる。また、融着部においては、成形体Rと不織布Qとが厚みが小さくなるように一体化されており、不織布Qには熱可塑性樹脂が入り込んだ状態で押し固められるため成形時のバリを融着部に沿ってカッター等で容易に切除することができる。
そして、冷却固化させることにより、本実施形態に係る車両用吸音構造体が得られる。
本実施形態に係る車両用吸音構造体の製造方法によれば、軽量でありながら、吸音材の経時的な剥離を防止することができる車両用吸音構造体を製造することができ、また、工程が少ないため、低コストで車両用吸音構造体を製造することができる。
以上、本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではない。
例えば、本実施形態に係る車両用吸音構造体においては、吸音材20として、不織布を用いているが、これに限定されず、上述した熱可塑性樹脂材からなるものであってもよく、繊維質材料又は発泡樹脂材料等の多孔質材料であってもよい。
本実施形態に係る車両用吸音構造体においては、基材10が2つの凸部3を有しているが、凸部3の数は2つに限定されない。すなわち、凸部3と吸音材20との融着箇所は2つ以上あってもよく、2つ未満であってもよい。
本実施形態に係る車両用吸音構造体は、底部に突起部を備えていてもよい。
図9は、他の実施形態に係る車両用吸音構造体を示す断面図である。
図9に示すように、他の実施形態に係る車両用吸音構造体120は、底部51、該底部51の周縁に立設された周縁端部52、内方に設けられた凸部53、及び、底部51に立設され且つ吸音材20に接しない突起部55、を有する基材60と、周縁端部52及び凸部53に融着される融着部11を有する吸音材20と、を備える。すなわち、基材60が、底部51に立設され且つ吸音材20に接しない突起部55を更に有する点で、本実施形態に係る車両用吸音構造体100と異なる。
車両用吸音構造体120においては、基材60が吸音材20に接しない突起部55を更に有するので、吸音効果がより向上する。
本実施形態に係る車両用吸音構造体の製造方法の押出工程S1においては、熱可塑性樹脂を溶融混練し、押し出たものを押出シートPとしているが、熱可塑性樹脂と発泡剤とを溶融混練し、押し出して発泡させたものを押出シートPとしてもよい。
この場合は、押出装置内において発泡剤を熱可塑性樹脂と共に混練し押出スリット37を通じて、一対のローラー38によって狭圧されながら、連続的に下方へ向かって押し出される。このときの熱可塑性樹脂の押出速度は、700kg/時以上であることが好ましい。この場合、より表面の平滑性が高い基材が得られる。
そして、押し出された熱可塑性樹脂及び発泡剤は、シート状の押出シートPとなり、分割金型40の間に垂下される。
この場合の押出シートPは、複数の気泡セルを複数含んだ独立気泡構造となっている。ここで、独立気泡構造とは、複数の気泡セル有する構造であり、少なくとも独立気泡率が50%以上のものを意味する。したがって、表面平滑性が優れ、防音性も良い。
また、気泡セルは、平均気泡径が1000μm未満であることが好ましく、500μm未満であることがより好ましい。ここで、平均気泡径とは、沢山ある気泡の最大直径の平均値を意味する。
平均気泡径が1000μm以上であると、平均気泡径が上記範囲内にある場合と比較して、表面粗さが大きくなり表面の平滑性が劣る傾向にある。
さらに、押出シートPは、高発泡の成形体であって、発泡倍率が3.0〜20倍である。ここで、発泡倍率とは、熱可塑性樹脂の密度を基材の見かけ密度で割った値である。
上記発泡剤としては、空気、炭酸ガス、窒素ガス、水等の無機系発泡剤、又は、ブタン、ペンタン、ヘキサン、ジクロロメタン、ジクロロエタン等の有機系発泡剤が挙げられる。
これらの中でも、発泡剤は、超臨界状態の二酸化炭素または窒素を用いることが好ましい。この場合、有機物の混入がなく、耐久性等の低下がない。
また、発泡方法としては、上述したように熱可塑性樹脂材を密閉空間で超臨界流体とした発泡剤と混練し、それを大気中に開放することにより行われる。この場合、均一且つ確実に発泡することができる。なお、窒素の超臨界流体は、窒素を臨界温度−149.1℃、臨界圧力3.4MPa以上とすることにより得られ、二酸化炭素の超臨界流体は、二酸化炭素を臨界温度31℃、臨界圧力7.4MPa以上とすることにより得られる。
次に、他の実施形態に係る車両用吸音構造体120の製造方法について説明する。
他の実施形態に係る車両用吸音構造体120の製造方法は、用いる第1金型の形状が異なること以外は、上述した車両用吸音構造体100の製造方法と同様である。
図10は、他の実施形態に係る車両用吸音構造体の製造方法に用いられる第1金型を示す概略断面図である。
図10に示すように、第1金型60aは、キャビティに突起61が設けられている。したがって、成形工程において、押出シートを、該第1金型60aに付着させることにより、突起部55が形成されることになる。
本発明に係る車両用吸音構造体は、車両のエンジンルームのエンジンの下方(下面)に配置され、エンジンの消音又は保護のためのエンジンアンダーカバー等として好適に用いられる。本発明に係る車両用吸音構造体によれば、軽量であり、且つ吸音材の経時的な剥離を防止することができる。
1,51・・・底部
2,52・・・周縁端部
3,53・・・凸部
10,60・・・基材
11・・・融着部
20・・・吸音材
21・・・空隙部
30・・・押出装置
31・・・ホッパー
32・・・シリンダー
33・・・油圧モーター
34・・・アキュムレータ
35・・・プランジャー
36・・・Tダイ
37・・・押出スリット
38・・・ローラー
40・・・分割金型
40a,60a・・・第1金型
40b・・・第2金型
41・・・吸引穴
42・・・真空吸引室
43・・・キャビティ
44a1・・・第1上型枠
44a2・・・第1下型枠
44b1・・・第2上型枠
44b2・・・第2下型枠
45・・・本体部
46・・・刃形部
47・・・引掛け部
48・・・面
55・・・突起部
61・・・突起
100,120・・・車両用吸音構造体
101・・・エンジンルーム
102・・・エンジン
103・・・ラジエーター
110・・・枠体
200・・・カバー材
P・・・押出シート
P1・・・一面
Q・・・不織布
R・・・成形体
S1・・・押出工程
S2・・・成形工程
S3・・・融着工程
T・・・密閉空間

Claims (2)

  1. 第1金型と第2金型とからなる分割金型により、熱可塑性樹脂からなる成形体と不織布からなる吸音材とを融着一体化して、車両用吸音構造体を製造する方法であって、
    前記第1金型には、前記成形体の周縁端部及び凸部を形成するための複数の突起と、該複数の突起の間で前記吸音材に接しない突起部を形成するための前記突起より低い突起と、ピンチオフ用の刃形部が設けられ、前記第2金型には、引掛け部が設けられているものにおいて、
    熱可塑性樹脂を分割金型の間に下向きに押出して、押出シートとする押出工程と、
    前記引掛け部に吸音材の上端部を引掛けて、第2金型に沿って吸音材を垂下し配置させる配置工程と、
    前記押出シートの一面を第1金型に付着させ、吸引することにより、前記押出シートを所定の形状に成形し、成形体とする成形工程と、
    該成形工程後、前記第1金型と第2金型とを互いの方向に移動して型締めして成形体と吸音材とを仮付着させた後、前記凸部と前記吸音材との接触部分を押圧融着一体化させ、これら全ての押圧融着一体化部分の肉厚を前記吸音材の肉厚より薄くして、融着一体化を強固にする融着工程と
    を遂行することを特徴とする車両用吸音構造体の製造方法。
  2. 前記押出シートが、熱可塑性樹脂を発泡させて形成されたものであることを特徴とする、請求項1記載の車両用吸音構造体の製造方法。
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