JP6492340B2 - 非常用防護装置 - Google Patents
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こうした越水防止装置(非常用防護装置)は、水位変動する河川流からフレームが浮力を受けてデッキを起立させるように作用することで洪水時の越水を防止することができるもので、この方式を海岸線の防波堤には適用して津波からの越水を防止するようにすることも可能であるが、この方式は津波流の襲来を待ってその浮力を利用してデッキを起立させるものであるので、例えば、津波流とともに流れ来る船舶やコンテナ、家屋などの大型漂流物が浮上前のデッキ上に先に乗り掛かってしまうと押さえ込みにより起立作動をしにくくするおそれがあり、津波襲来に対応できないおそれがある。
そこで、こうしたデッキを洪水や津波流などによる浮力のみで作動させる方式でなく油圧シリンダなどの直動式シリンダによって前以って起立させるようにすることで非常時の対応ができるように構成することが考えられる。しかし、直動式シリンダを利用する方式にしておくと、津波襲来前に常に正常作動が保障される訳ではなく、津波前の地震の影響を受けて駆動源や配管系統が断たれたときにシリンダが始動しなくなってデッキの起立が阻止され、その結果、越水を許してしまうおそれがある。
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載のものにおいて、起立安全誘導手段は、直動式シリンダ内の起立時背圧側の流体を防護堰に作用する押し上げ力によりリリーフ可能な回路として構成されている。
請求項3に記載の発明は、請求項1に記載のものにおいて、起立安全誘導手段は、防護堰および直動式シリンダの一方に設けられたローラーと、防護堰および直動式シリンダの他方に設けられていて防護堰が倒伏姿勢にあるときに前記ローラーが嵌め入れられる一方防護堰が津波・高潮・洪水などの襲来により押し上げられた際に離脱するローラー受とを備えてなっている。
尚、前記流体圧式とは、油圧、水圧、空気圧などを含む。
図1ないし図3は本発明の一実施形態で、海岸線より少し沖合に離れたところに設置される防潮堤あるいは防波堤などの堤防aに付設されて津波(押し波X・引き波Y)や高潮などの襲来に対するものとして構成された非常用防護装置についてのものである。これらの図において堤防aの左が内湾側で海岸堤防や砂浜などがある海岸線側、右が沖合側である。堤防aとしては、図2に仮想線として付記される沿岸道路bに沿った形で設けられる海岸線の堤防や船舶類が接岸可能な岸壁のような臨海構造物を含むとともに河川岸の堤防をも対象とすることもある。堤防aは新設と既設のいずれでもよい。
3は金属(スチールやSUSなど)あるいは樹脂製などの防護堰で、上下に離間した壁板と前斜板および半丸状の後板ならびに左右幅方向の対向板などにより、前後が3m、左右幅が15m前後の横長状矩形でかつ厚みが30cm前後の中空型で浮上可能な構造になっている。この防護堰3は、その先端内部に発泡スチロールのような浮上装填材4を装備するとともに、基部両端には支点軸5が突設されて合体式の軸受体1により堤防a上に回転自在に支持されている。
尚、防護堰3の前端面3aは斜め下向き面とされて津波流Xによる下方からの持ち上げ力を先頭に立って受けやすくするものになっているが、垂直な面とされていてもよい。
防護堰3の後端部3bは少なくとも下回りの部分が丸くなって起立時の回転に支障がないようになっている。
さらに、防護堰3の尾端上には、回転ストッパ8が突設されており、この回転ストッパ8は、図2の左欄取出図のように、防護堰3が90度起き上がったところで堤防a上に当接することにより防護堰3を起立姿勢で止めるようになっている。
防護堰3の前端上部には、防護堰3の左右幅全体に亘るように長い前ガード9が突設されており、この前ガード9は前上がり状をなして設けられることで図2のような漂流物cが津波流Xとともに流れてきても図2のようにその前上がり部分で受け止めるようになっている。このように受け止めておくとあとで防護堰3上に漂流物cが乗り掛からないので防護堰3の浮上・起立運動に支障を与えないようにすることができる。前ガード9は、複数の支柱9aとそれらの間を横架バー9bによって上下段をなすように横架連結したものになっているが、防護堰3と同じような中空体状をなすものにしてもよい。
防護堰3の上面には、金属面あるいはメッキ面でなく堤防aと同様なモルタル施工の外装面10を施して防護堰3を含む堤防a全体がコンクリート仕上げで統一されて違和感のないものとして見られるようにしてもよい。
また、これら複数の防護堰3は、堤防aの長手方向に少しの間隔を置いて1列に並ぶように軸受体1で回転自在に固定配備してあり、そして、前記少しの間隔には、各防護堰3の左右両側辺に備えた側部シール材12が互いに密接するようにしてなっている。こうした防護堰3…は、前アンカー13により堤防aに固定されたブラケット11をもって中間トラニオン式に堤防aの前面に支持された直動式シリンダ14により倒伏と起立との間で昇降駆動されるようになっている。シリンダ14は、本体15とピストン16およびロッド17とを備えるとともにロッドエンド18にロッド軸19を通して防護堰3側底面に固定の底ブラケット20に連結されている。
特に、前記シリンダ14から起立作動時に切替弁26に戻される経路となる配管上には図3に示すようにカウンタバランス弁(起立安全誘導手段)28が装備されている。
前ガード9は図2に仮想線で示すように防護堰3の上端から陸側へ向けて伸びることになるので漂流物cがここに引っ掛かって陸側へ越えるおそれがなくなり、特に前ガード9が横架バー式や多孔式などの通水方式にしておけば漂流物cが越えようとしても底から水が抜けるため越えにくくなる。一方、引き波Yに伴って漂流物が防護堰3を越えようとしてもその前に前ガード9で引っ掛かり沖合に流出されてしまうのを防止することができる。
このカウンタバランス弁28による防護堰3の起立安全誘導機能は、津波前に起きる地震によって駆動ユニット22が損害を受けることによりシリンダ14が作動不能に陥った際にも発揮される。起立安全誘導機能は、作動流体リリーフ制御方式とされる。
尚、図1の右欄および図2内に示すように、堤防a上に堤防aよりも高い突堤部29を一体形成しておき、それらの複数個所間に昇降可能な防護堰3を配備するようにしてもよい。防護堰3の側端部には側部シール材12を設け、突堤部29の背部に支点軸5の中間部を固定するようにする。
シリンダ14が地震などの事情で始動しない事態を招きその後の津波流Xにより引き上げ力Uを受けることになった場合とかシリンダ14が津波警報により作動は開始したがその途上で津波流Xが襲ってきて持ち上げ力Uが掛ったような場合、防護堰3は前記制御により浮力も手伝ってすぐに軽い力で持ち上げられることになって起立姿勢を得ることができるようになる。その結果、津波流Xおよび漂流物の越流が防止される。
尚、破線のようにロッド17は複ロッドタイプとしておけば、d側とe側の断面積が同一になるのでe側のオイルがd側に流れやすくなってロッド17が作動しやすくなり、防護堰3も途中で停止したりせず起立しやすくなる。
また、シリンダ14は、単動式にして試験時にはやや前傾姿勢で停止される防護堰3に作用する重量回転力などにより復帰するようにしてあるが、図4の左欄に示すように、単動式でバネ34を内蔵する強制復帰タイプのものにしてもよい。
さらに、図4のロッド軸19は一定の持ち上げ力Uにより切断するシェアーピンタイプとしておけば、例えば、ピストン16が非常時に作動不良を起こした場合でもロッド軸19の切断により防護堰3は力Uにより単独で持ち上げられ起立させられることになる。
尚、前記防護堰3上にはパネル受枠41を設置してソーラーパネル42を設置するようにしてもよい。この場合、パネル枠41内には蓄電制御装置を内装したりパネル受枠40に防護堰3が起立した際のストッパとしての機能を持たせたものにしてもよい。
尚、48はロックスタンド、49はロック溝体であり、防護堰3が起立した姿勢を保つことから図9の左側から引き波が襲来してきても防護堰3が前倒れすることがなく防護機能を果たすものである。
尚、防護堰3の前端には同堰3と同様の中空型をした前ガード54を立ち上げて強く浮力を発生しやすいガードとしたものである。この前ガード54は中空状ではあるが防護堰3とは別体で取付型をしたものにしてもよい。57は起立時ストッパである。
図11も他の実施形態を示す。同実施形態の防護堰3とシリンダ14側とがマグネット式脱着具56で連結しておくことで津波流による持ち上げ力が働くことで防護堰3が離脱して起立するようにしたものである。
尚、防護堰3の前端部には一体あるいは別体式で前下がり状に張り出す防護部3aが設けられ、この防護部3aが設けられていることにより津波流Xを抱え込みやすくしかも早い段階で浮力が作用しやすいようになる。
尚、この実施形態では、駆動ユニット62とシリンダ14とを連絡する配管63がフレキシブルで前記抜脱時に引っ張り破損したりしないようにしたものである。
図12の右欄に示すように、シリンダ14側のローラー64に対し防護堰3側のローラー受65を嵌め合わせて離脱可能に構成してより安全性を高めるようにすることもできる。
図14は機械式離脱方式とした起立安全誘導手段についての他の実施形態を示す。同実施形態は、前部に前ガード54を有し後部に起立時ストッパ57を備えた防護堰3を堤防a上面に前方張り出し状をなして回転自在に設置して底部ブラケット59に連結したシリンダ14により昇降駆動可能にしたものにおいて、シリンダ14を堤防a側に支持する方式としてブラケット68とシリンダピン69により構成し、特に防護堰3へ加わる津波時の浮上力によってシリンダピン69がブラケット68から抜脱して防護堰3の起立を許し防護に備えるように構成したものである。従って、シリンダ14の作動系統が地震により作動しなくなったときでも防護堰3に浮上力が働けば自動で起立させるようにする。尚、図5から図14までに示す実施形態のように防護堰3が自動でシリンダ側から離脱し起立するようなタイプにおいては、起立後に襲来してくる津波流によるガレキなどが防護堰3の前方に堆積することから引き波襲来時に防護堰3が起立状態を維持して防護機能を発揮することが想定される。図14の右欄に示すように、シリンダ14側のローラー64に対し防護堰3側のローラー受65を嵌め合わせて離脱可能に構成してより安全性を高めるようにすることもできる。
尚、ここでシリンダ77は図3あるいは図4のようなリリーフ制御可能に構成したり、シリンダ77の自動離脱方式としては図5ないし図14に示す各例を採用することができる。
Claims (3)
- 津波が襲来してくる前面と水平な上面とを有し河川や海洋に設置される堤防の上面前後間には、基部の支点軸回りに回動可能な中空型で浮上可能な防護堰が設置され、この防護堰は、堤防との間に設けられた流体圧式の直動式シリンダの作動により平時は前記上面上に倒伏した倒伏姿勢にまた津波・高潮・洪水などが襲来する非常時には起立姿勢となるように構成された非常用防護装置であって、前記防護堰は、平時において堤防上面より津波襲来側の前方へと張り出し状とされて津波・高潮・洪水などの襲来によって押し上げ力が作用するように設定され、前記防護堰と直動式シリンダおよび流体圧回路には、直動式シリンダの作動系統の動きが起立態勢にあるか否かに関係なく前記非常時に前記張り出し状の部分に作用する押し上げ力によって防護堰に独自に起立運動を許容させる起立安全誘導手段が構成されていることを特徴とする非常用防護装置。
- 請求項1に記載のものにおいて、起立安全誘導手段は、直動式シリンダ内の起立時背圧側の流体を防護堰に作用する押し上げ力によりリリーフ可能な回路として構成されている非常用防護装置。
- 請求項1に記載のものにおいて、起立安全誘導手段は、防護堰および直動式シリンダの一方に設けられたローラーと、防護堰および直動式シリンダの他方に設けられていて防護堰が倒伏姿勢にあるときに前記ローラーが嵌め入れられる一方防護堰が津波・高潮・洪水などの襲来により押し上げられた際に離脱するローラー受とを備えてなっている非常用防護装置。
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