以下、図面を参照して本発明の実施の形態について説明する。本実施の形態による貨幣入金機は、硬貨や紙幣等の貨幣の入金処理や計数処理を行うものである。このような貨幣入金機はスーパーマーケットやショッピングモール等の商業施設における出納室に設置されたり、自動販売機のメンテナンス会社の営業所に設置されたりして、係員が商業施設の売場(レジ)や自動販売機から回収してきた売上金を入金するようになっている。このような本実施の形態による貨幣入金機について図1乃至図7を用いて説明する。
まず、本実施の形態による貨幣入金機1の構成について説明する。図1は、本実施の形態による貨幣入金機1の外観を示す斜視図である。図1に示すように、本実施の形態による貨幣入金機1は略直方体形状の筐体1aを有している。また、貨幣入金機1の筐体1aを手前側から見て当該貨幣入金機1の左側部分には硬貨の入金処理や計数処理を行う硬貨入金装置10が設けられており、一方、貨幣入金機1の筐体1aを手前側から見て当該貨幣入金機1の右側部分には紙幣の入金処理や計数処理を行う紙幣入金装置50が設けられている。また、図1に示すように、貨幣入金機1の筐体1aの上部には上部カバー2が設けられており、この上部カバー2を上方に開くことにより操作者は硬貨入金装置10や紙幣入金装置50の内部にアクセスすることができるようになっている。より詳細には、上部カバー2は水平方向に延びる軸2pを中心として図1に示す状態から上方に回転することができるようになっている。ここで、貨幣入金機1の上部カバー2には、硬貨入金装置10の硬貨投入部12(後述)における硬貨投入口およびシャッタ12a、ならびに紙幣入金装置50の紙幣投入部52(後述)における紙幣投入口およびシャッタ52aが設けられており、一方、硬貨入金装置10の硬貨繰出機構13(後述)や紙幣入金装置50の紙幣繰出機構54(後述)は貨幣入金機1の内部ユニット側に設けられている。また、後述する操作表示部86、88や操作キー89は上部カバー2とは別に設けられており、上部カバー2を上方に開いても操作表示部86、88や操作キー89の位置は変化しないようになっている。
また、本実施の形態の貨幣入金機1には、上部カバー2が上方に開かれたときにこのことを検知する上部カバー開閉検知センサ(図示せず)が設けられている。また、本実施の形態の貨幣入金機1には、上部カバー2を閉状態でロックするためのロック部(図示せず)が設けられており、貨幣入金機1において硬貨や紙幣の入金処理や計数処理が行われているときにはロック部により上部カバー2が閉状態にロックされて当該上部カバー2を上方に開くことができないようになっている。
次に、本実施の形態の貨幣入金機1における硬貨入金装置10の構成について図2乃至図5を用いて説明する。図2は、硬貨入金装置10の内部を側方から見たときの構成を示す側面図であり、図3は、図2に示す硬貨入金装置10の内部における上部領域を上方から見たときの構成を示す上面図である。また、図4は、図2に示す硬貨入金装置の内部における上部領域の構成を示す斜視図であり、図5は、図2に示す硬貨入金装置の内部における上部領域の分岐部近傍の構成を示す縦断面図である。
図2乃至図4に示すように、硬貨入金装置10は、筐体1aの外部から内部に硬貨を投入するための硬貨投入部12と、硬貨投入部12により筐体1aの内部に投入された硬貨を搬送するための搬送部14と、搬送部14により搬送される硬貨の金種、真偽、正損等の識別を行う識別部16とを備えている。
より詳細には、図2乃至図4に示すように、硬貨投入部12には、当該硬貨投入部12に投入された硬貨を筐体1aの内部に繰り出すための硬貨繰出機構13が設けられている。硬貨繰出機構13は、水平状態となるよう配置され、筐体1aの外部から投入された硬貨が集積される円盤形状の回転盤13aを有しており、回転盤13aが図3における反時計回りの方向である正方向に回転することにより、筐体1aの外部から投入されこの回転盤13aの上に集積された硬貨が1枚ずつ当該回転盤13aから搬送部14に繰り出されるようになっている。また、図1に示すように、筐体1aの上面には硬貨投入口の開閉を行うシャッタ12aが設けられており、当該シャッタ12aが開かれたときに操作者は筐体1aの外部から硬貨投入部12に硬貨を投入することができるようになっている。このようなシャッタ12aは操作者が手動で開閉を行うことができるようになっている。また、硬貨投入部12には、筐体1aの外部から投入され硬貨繰出機構13の回転盤13aの上に集積された硬貨を検知するための投入硬貨検知センサ(図示せず)が設けられている。
また、搬送部14は、図3において矢印で示す方向に循環移動を行う無端状の搬送ベルト14aと、当該搬送ベルト14aが張架される複数のプーリ14b、14cとを有しており、複数のプーリ14b、14cのうちある一つのプーリ14cには当該プーリ14cを回転駆動させる駆動モータ(図示せず)が設けられている。また、無端状の搬送ベルト14aには、当該搬送ベルト14aの長手方向に沿って複数の突起14p(図5参照)が間隔を空けて設けられており、各突起14pにより硬貨が1枚ずつ押動されて搬送されるようになっている。図5において、搬送ベルト14aの各突起14pにより押動されて搬送される硬貨を参照符号Cで示す。このような搬送部14において、駆動モータがプーリ14cを回転駆動させることにより無端状の搬送ベルト14aが図3において矢印で示す方向に循環移動し、このことにより硬貨繰出機構13によって筐体1aの内部に繰り出された硬貨が1枚ずつ搬送ベルト14aにより搬送されるようになる。
本実施の形態では、図3に示すように、搬送部14において硬貨が搬送される搬送路はいわゆるU字形状となっている。すなわち、搬送部14において硬貨が搬送される搬送路は、図3における右方向に硬貨が搬送される第1搬送路14sおよび図3における左方向に硬貨が搬送される第2搬送路14tを有しており、これらの第1搬送路14sおよび第2搬送路14tの間には、硬貨の搬送方向を反転させる湾曲搬送路14uが形成されている。なお、第1搬送路14sでは、硬貨入金装置10の筐体の奥側への方向に硬貨が搬送され、また、第2搬送路14tでは、硬貨入金装置10の筐体の手前側への方向に硬貨が搬送されるようになっている。そして、硬貨繰出機構13によって筐体の内部に繰り出された硬貨は、まず搬送部14の第1搬送路14sに沿って硬貨入金装置10の筐体の奥側に向かって搬送され、後述する分岐機構18によって搬送部14から分岐されなかった硬貨は湾曲搬送路14uにより搬送方向が反転させられた後、第2搬送路14tに沿って硬貨入金装置10の筐体の手前側に向かって搬送されるようになる。
また、図4に示すように、硬貨入金装置10の内部における上部領域には、搬送部14の一部を覆うための上面ガイド19が設けられている。この上面ガイド19は軸19pを中心として回転自在となっており、このことにより上面ガイド19は搬送部14の一部を閉じる位置と搬送部14を開く位置との間で移動することができるようになっている。なお、図4は、上面ガイド19が搬送部14を開いているときの状態を示している。一方、上面ガイド19が搬送部14の一部を閉じたときには、後述する分岐機構18の分岐部18a近傍の箇所が上面ガイド19により覆われるようになる。このような上面ガイド19により覆われる搬送部14の一部の箇所を図3において二点鎖線で示す。
また、搬送部14の第1搬送路14sには、当該搬送部14により搬送される硬貨を分岐させる分岐機構18が設けられている。具体的には、分岐機構18は、識別部16により正常な硬貨であると識別された硬貨を当該搬送部14の第1搬送路14sから分岐させて後述する一時保留部26に送るようになっている。より詳細に説明すると、搬送部14の第1搬送路14sにおいて硬貨が搬送される搬送面14d(図5参照)には開口15が設けられており、分岐機構18は、この開口15を選択的に塞ぐよう水平方向に延びる軸18bを中心として回転自在となっている分岐爪等からなる分岐部18aを有している。ここで、分岐部18aは、図5において実線で示すような開口15を塞ぐ閉止位置と、図5において二点鎖線で示すような開口15を開く開口位置との間で移動するようになっている。また、本実施の形態では、分岐部18aを上記の閉止位置と開口位置との間で移動させるソレノイド等の駆動部18c(図7参照)が設けられている。そして、搬送部14の第1搬送路14sに沿って搬送される硬貨を分岐部18aにより一時保留部26に分岐させる場合には、分岐部18aが図5において二点鎖線で示すような開口位置に移動することにより、搬送部14の搬送ベルト14aにより搬送される硬貨が開口15を介して搬送部14から下方に落下して一時保留部26に送られるようになる。一方、搬送部14の第1搬送路14sに沿って搬送される硬貨を一時保留部26に分岐させない場合には、分岐部18aが図5において実線で示すような閉止位置に移動することにより、搬送部14の搬送ベルト14aにより搬送される硬貨は分岐部18aの上面に沿って搬送され、開口15から落下せずに引き続き搬送部14の搬送ベルト14aにより搬送され、第2搬送路14tに送られるようになる。
また、図5に示すように、上面ガイド19の下面には、搬送部14の搬送ベルト14aにより搬送される硬貨を搬送面14dに向かって押圧するための錘19aがスプリング19bにより取り付けられている。このような錘19aは、分岐機構18の分岐部18aにより選択的に塞がれる開口15よりも硬貨の搬送方向における上流側の箇所に設けられている。このような錘19aおよびスプリング19bからなる押圧部材が設けられていることにより、分岐機構18により硬貨を一時保留部26に分岐させるにあたり、搬送部14の第1搬送路14sに沿って搬送される硬貨が搬送ベルト14aの突起14pから搬送方向前方に離間している状態となっていても、このような硬貨が錘19aに接触したときに当該錘19aが抵抗となって硬貨が搬送方向前方に動かなくなるため、循環移動を行う搬送ベルト14aの突起14pがこの硬貨に接触するようになる。そして、この硬貨は搬送ベルト14aの突起14pにより後ろから押動されながら搬送面14d上で搬送されるようになり、この際に当該硬貨は錘19aの下をくぐるようになる。このように、錘19aおよびスプリング19bからなる押圧部材により、搬送部14の第1搬送路14sに沿って搬送される硬貨が搬送ベルト14aの突起14pに寄せられるようになるため、当該硬貨の位置が特定されるようになり、よって分岐機構18により硬貨を一時保留部26に分岐させる際に分岐部18aの切り替えが間に合わなくなってしまうことを防止することができるようになる。
なお、図3に示すように、上面ガイド19は主に搬送部14の第1搬送路14sを覆っているが、搬送部14の第2搬送路14tや湾曲搬送路14uは覆っていない。後述するように、搬送部14の第2搬送路14tや湾曲搬送路14uは、識別部16により正常な硬貨ではないと識別された硬貨や識別部16により識別することができなかった硬貨のみが通過するようになっており、これらの硬貨は開口20に入ってリジェクト部28に送られるが、開口20に硬貨を入れるための分岐機構が設けられていないため、押圧部材により硬貨を搬送面14dに向かって押圧する必要がない。このため、搬送部14の第2搬送路14tや湾曲搬送路14uを覆う上面ガイドの設置を省略することができ、よってこれらの第2搬送路14tや湾曲搬送路14uで硬貨が詰まったときのエラー解除時の視認性や操作性を向上させることができる。また、搬送部14の第2搬送路14tや湾曲搬送路14uを覆う必要がないため上面ガイド19の小型化を図ることができ、よって硬貨入金装置10の製造コストを低減することができるようになる。
また、図3に示すように、搬送部14において硬貨の搬送方向における開口15の下流側には硬貨の通過を検知する通過センサ17が設けられている。分岐部18aが図5において実線で示すような閉止位置に位置することによって搬送部14により搬送される硬貨が当該分岐部18aにより一時保留部26に分岐されなかった場合には、当該硬貨が通過センサ17を通過したときにこのことが通過センサ17により検知されるようになる。
また、図3に示すように、搬送部14の下流側端部の近傍には開口20が設けられており、分岐機構18により搬送部14の第1搬送路14sから分岐されなかった硬貨、すなわち識別部16により正常な硬貨ではないと識別された硬貨や識別部16により識別することができなかった硬貨がリジェクト硬貨として当該開口20から下方に落下し、後述するリジェクト部28に送られるようになっている。また、クリップ等の異物が硬貨投入部12から筐体の内部に繰り出されて搬送部14により搬送される場合でも、このような異物を開口20に入れてリジェクト部28に送ることができるようになる。ここで、図1に示すようにリジェクト部28は筐体1aの前面側に設けられているのに対し、開口20は、硬貨入金装置10の筐体の手前側に向かって硬貨が搬送される第2搬送路14tの下流側端部に設けられているため、この開口20に入る前の硬貨の搬送方向および開口20に入った硬貨が後述するリジェクト用シュート24により案内される方向は、筐体1aの奥行き方向に関して略同一の方向となる。言い換えると、第2搬送路14tにおいて硬貨入金装置10の筐体の手前側に向かって搬送される硬貨が開口20に入った後に引き続き硬貨入金装置10の筐体の手前側に向かってリジェクト用シュート24により斜め下方に案内されるようになる。このことにより、搬送部14の第2搬送路14tから開口20に入った硬貨をスムーズにリジェクト部28に送ることができるようになる。
本実施の形態の硬貨入金装置10では、搬送部14における分岐機構18よりも上流側の搬送路14mの材料は、搬送部14における分岐機構18よりも下流側の搬送路14nの材料よりも耐摩耗性が大きなものとなっている。具体的には、搬送部14における分岐機構18よりも上流側の搬送路14mの材料は例えば金属となっているのに対し、搬送部14における分岐機構18よりも下流側の搬送路14nの材料は例えば樹脂となっている。ここで、上述したように、搬送部14における分岐機構18よりも下流側の搬送路14nは、識別部16により正常な硬貨ではないと識別された硬貨や識別部16により識別することができなかった硬貨のみが搬送されるため、この搬送路14nを通過する硬貨の枚数は、搬送部14における分岐機構18よりも上流側の搬送路14mを通過する硬貨の枚数よりも大幅に少なくなる。このため、上流側の搬送路14mについては耐摩耗性を有するようにするために当該搬送路14mの材料を金属とし、一方、下流側の搬送路14nについては耐摩耗性を考慮する必要がないため当該搬送路14nの材料を樹脂とすることによって、搬送部14の搬送路の材料を全て金属とする場合と比較して当該搬送部14の軽量化を図ることができるようになる。
図2に示すように、硬貨入金装置10において搬送部14の下方には一時保留部26およびリジェクト部28がそれぞれ設けられている。ここで、一時保留部26は、硬貨入金装置10の奥行き方向(すなわち、図2における左右方向)において移動可能となっており、図2において実線や二点鎖線で示される3箇所の位置に移動することができるようになっている。また、一時保留部26は、その頂部および底部に開口が設けられた略直方体形状の枠体を有しており、一時保留部26が中央位置にある状態では、位置固定で設けられる底板部材(図示せず)によってこの枠体の底面が塞がれて一時保留空間が形成されるようになる。また、図2における中央位置にある一時保留部26と、搬送部14の途中箇所に設けられた開口15との間には一時保留用シュート22が設けられており、分岐機構18により搬送部14から分岐させられて開口15に入れられた硬貨は一時保留用シュート22を通って一時保留部26に送られるようになっている。また、リジェクト部28と、搬送部14の下流側端部の近傍に設けられた開口20との間にはリジェクト用シュート24が設けられており、開口20から落下したリジェクト硬貨はリジェクト用シュート24を通ってリジェクト部28に送られるようになっている。
図1に示すように、リジェクト部28は貨幣入金機1の筐体1aの前面側から操作者がアクセスすることができるようになっており、このリジェクト部28にリジェクト硬貨が送られると、操作者はリジェクト部28からリジェクト硬貨を取り出すことができるようになっている。
なお、図2に示すように、リジェクト用シュート24は硬貨入金装置10の筐体の手前側に向かって斜め下方に傾斜するようになっているが、当該リジェクト用シュート24内に硬貨が残留してしまうことを防止するために、このリジェクト用シュート24を水平面に対して所定の角度以上に傾斜させる必要がある。ここで、もし仮に硬貨入金装置10の筐体の奥側に向かって硬貨が搬送される第1搬送路14sからリジェクト用シュート24に硬貨を送るようにすると、この第1搬送路14sから硬貨を分岐させた後に硬貨の搬送方向を硬貨入金装置10の筐体の奥側への向きから手前側への向きに反転させる必要があり、リジェクト用シュート24の形状をこのような硬貨の搬送方向の反転に対応するような逆「くの字」形状に折れ曲がったものとしなければならない。このため、この場合にはリジェクト部28の位置を下げてリジェクト用シュート24の設置スペースを確保しなければならず、リジェクト部28の位置が下がることにより当該リジェクト部28からのリジェクト硬貨の取り出しに係る作業性が悪くなってしまうという問題がある。これに対し、本実施の形態では、硬貨入金装置10の筐体の手前側に向かって硬貨が搬送される第2搬送路14tから開口20を介してリジェクト用シュート24に硬貨を送るようにしているため、上述したように第2搬送路14tにおいて硬貨入金装置10の筐体の手前側に向かって搬送される硬貨が開口20に入った後に引き続き硬貨入金装置10の筐体の手前側に向かってリジェクト用シュート24により案内されるようになり、リジェクト用シュート24の形状を図2に示すような直線状のものとすることができるため、リジェクト部28の位置を下げる必要がなくなる。
また、硬貨入金装置10の奥行き方向において手前側に位置する一時保留部26(すなわち、図2において左側に位置する一時保留部26)の下方には硬貨返却箱30が設けられており、一時保留部26が図2における中央の位置から左側の位置に移動すると、当該一時保留部26に一時的に保留されている硬貨がこの一時保留部26から自重により落下して硬貨返却箱30に送られるようになっている。このような硬貨返却箱30は筐体1aから手前側に引き出し可能となっている。具体的には、硬貨返却箱30を筐体1aの内部にロックするためのロック部31(図7参照)が設けられており、当該ロック部31によるロック状態が解除されると、硬貨返却箱30を筐体1aから手前側に引き出すことができるようになる。また、図1に示すように、硬貨返却箱30の前面には、操作者が把持するための把持部分30aが設けられており、ロック部31によるロック状態が解除された後、操作者が把持部分30aを把持して硬貨返却箱30を筐体1aから手前側に引き出すことにより、硬貨返却箱30に収納されている硬貨を筐体1aの外部に返却することができるようになる。
また、硬貨入金装置10の内部における下部領域には硬貨収納カセット40が収容されており、硬貨入金装置10の奥行き方向において奥側に位置する一時保留部26(すなわち、図2において右側に位置する一時保留部26)と、硬貨収納カセット40との間には収納用シュート32が設けられている。このことにより、一時保留部26が図2における中央の位置から右側の位置に移動すると、当該一時保留部26に一時的に保留されている硬貨がこの一時保留部26から自重により落下して、収納用シュート32を介して硬貨収納カセット40に送られ、当該硬貨収納カセット40に収納されるようになる。なお、硬貨収納カセット40は筐体1aの外部に取り出すことができるようになっている。具体的には、図1に示すように貨幣入金機1の筐体1aの前面における下部領域には、警送会社の警備員等の所定の権限を有する者しか開くことができない扉1bが設けられており、この扉1bを開くことにより硬貨収納カセット40を筐体1aの外部に取り出すことができるようになる。警送会社の警備員等により筐体1aの外部に取り出された硬貨収納カセット40は、警送会社の管理本部や現金処理センターに運搬され、硬貨収納カセット40から取り出された硬貨が管理本部等で管理されるようになる。
次に、本実施の形態の貨幣入金機1における紙幣入金装置50の構成について図6を用いて説明する。上述したように、図6は、紙幣入金装置50の内部を側方から見たときの構成を示す側面図である。図6に示すように、紙幣入金装置50は、筐体1aの外部から紙幣が束状態で投入される紙幣投入部52と、紙幣投入部52に投入された紙幣を1枚ずつ筐体1aの内部に繰り出すための紙幣繰出機構54と、紙幣繰出機構54により筐体1aの内部に繰り出された紙幣を搬送するための搬送部56と、搬送部56により搬送される紙幣の金種、真偽、正損等の識別を行う識別部58とを備えている。また、図1に示すように、筐体1aの上面には紙幣投入口の開閉を行うシャッタ52aが設けられており、当該シャッタ52aが開かれたときに操作者は筐体1aの外部から紙幣投入部52に紙幣の束を投入することができるようになっている。このようなシャッタ52aは操作者が手動で開閉を行うことができるようになっている。また、紙幣投入部52には、筐体1aの外部から当該紙幣投入部52に投入された紙幣を検知するための投入紙幣検知センサ(図示せず)が設けられている。
また、搬送部56における識別部58よりも下流側の箇所には、識別部58により識別された紙幣をリジェクト部62および一時保留部64のうちいずれか一方に振り分ける分岐部60が設けられている。具体的には、分岐部60において、識別部58により正常な紙幣であると識別された紙幣は一時保留部64に送られるよう振り分けられ、一方、識別部58により正常な紙幣ではないと識別された紙幣や識別部58により識別することができなかった紙幣はリジェクト紙幣としてリジェクト部62に送られるよう振り分けられるようになっている。
図1に示すように、リジェクト部62は貨幣入金機1の筐体1aの前面側から操作者がアクセスすることができるようになっており、このリジェクト部62にリジェクト紙幣が送られると、操作者はリジェクト部62からリジェクト紙幣を取り出すことができるようになっている。
また、図6に示すように、紙幣入金装置50の内部における下部領域において一時保留部64の真下の位置には紙幣収納カセット70が収容されている。そして、一時保留部64に紙幣が一時的に保留された後、入金確定の指令が貨幣入金機1の本体制御部80(後述)に与えられると、一時保留部64から紙幣収納カセット70に紙幣が一括して送られ、この紙幣収納カセット70に収納されるようになっている。なお、紙幣収納カセット70は筐体1aの外部に取り出すことができるようになっている。具体的には、上述したように、貨幣入金機1の筐体1aの前面における下部領域には扉1bが設けられており、この扉1bを開くことにより紙幣収納カセット70を筐体1aの外部に取り出すことができるようになる。警送会社の警備員等により筐体1aの外部に取り出された紙幣収納カセット70は、警送会社の管理本部や現金処理センターに運搬され、紙幣収納カセット70から取り出された紙幣が管理本部等で管理されるようになる。
また、図1に示すように、貨幣入金機1の筐体1aの前面における一時保留部64の手前側の位置には扉1cが設けられているとともに、当該扉1cを閉状態にロックするための扉ロック部65(図7参照)が設けられている。そして、当該扉ロック部65による扉1cのロック状態が解除されると、操作者は扉1cを手前右側に開いて一時保留部64の内部にアクセスすることができるようになる。このようにして、一時保留部64に紙幣が一時的に保留された後、返却の指令が貨幣入金機1の本体制御部80(後述)に与えられると、扉ロック部65による扉1cのロック状態が解除され、操作者は扉1cを開くことにより一時保留部64の内部から紙幣を取り出すことができるようになり、よって筐体1aの外部に紙幣が返却されるようになる。そして、操作者が手動で扉1cを閉じると、扉ロック部65により扉1cが再び閉状態にロックされるようになる。なお、一時保留部64に一時的に保留された紙幣を紙幣収納カセット70に収納させる際には、扉ロック部65による扉1cの閉状態のロックが維持されたままとなる。
次に、本実施の形態による貨幣入金機1の制御系の構成について図7を用いて説明する。図7に示すように、本実施の形態による貨幣入金機1には、当該貨幣入金機1の各構成部材の制御を行う本体制御部80が設けられている。また、硬貨入金装置10には当該硬貨入金装置10の各構成部材(具体的には、硬貨繰出機構13、搬送部14、識別部16、通過センサ17、分岐機構18の駆動部18c、一時保留部26、ロック部31等)に接続された硬貨制御部81が設けられており、当該硬貨制御部81により硬貨入金装置10の各構成部材が制御されるようになっている。また、紙幣入金装置50には当該紙幣入金装置50の各構成部材(具体的には、紙幣繰出機構54、搬送部56、識別部58、分岐部60、一時保留部64、扉ロック部65等)に接続された紙幣制御部82が設けられており、当該紙幣制御部82により紙幣入金装置50の各構成部材が制御されるようになっている。図7に示すように、硬貨入金装置10に設けられた硬貨制御部81や紙幣入金装置50に設けられた紙幣制御部82はそれぞれ本体制御部80に接続されている。
また、図1に示すように、貨幣入金機1の筐体1aの上面には、プリンタ等の印字部84、2つの操作表示部86、88、操作キー89および操作者が携帯するIDカード等の記録媒体92に記憶された情報(具体的には、IDカードのID情報等)を読み取るための磁気カードリーダ等の読取部90がそれぞれ設けられており、これらの印字部84、操作表示部86、88、操作キー89、読取部90はそれぞれ本体制御部80に接続されている。
印字部84は、貨幣入金機1における貨幣の入金処理や計数処理の結果に係る情報や、硬貨収納カセット40や紙幣収納カセット70に収納されている硬貨や紙幣の金種毎の枚数や合計金額に係る情報(在高情報)をレシートに印字するようになっている。
また、2つの操作表示部86、88のうち左側の操作表示部86は例えばモニタからなり、貨幣入金機1における貨幣の入金処理や計数処理の結果に係る情報や、硬貨収納カセット40や紙幣収納カセット70に収納されている硬貨や紙幣の金種毎の枚数や合計金額に係る情報(在高情報)等の様々な情報の少なくとも一部が当該操作表示部86に表示されるようになっている。また、2つの操作表示部86、88のうち右側の操作表示部88は例えばタッチパネルからなり、当該操作表示部88には貨幣入金機1における貨幣の入金処理や計数処理の結果に係る情報等の様々な情報の少なくとも一部が表示されるとともに、操作者は操作表示部88を操作することにより本体制御部80に様々な指示を与えることができるようになっている。ここで、本実施の形態では、2つの操作表示部86、88は並列に配置されており、また、これらの2つの操作表示部86、88は同一の形状および大きさとなっている。なお、左側の操作表示部86も例えばタッチパネルから構成されており、右側の操作表示部88に加えて左側の操作表示部86により操作者は本体制御部80に様々な指令を与えることができるようになっていてもよい。また、操作キー89は、例えば貨幣入金機1において入金処理が行われる際に確定待ち状態となったときに図示しないLED等によって光が照射されることにより光るようになっており、操作者が当該操作キー89を押下することにより入金確定の指令が本体制御部80に与えられるようになっている。
また、本実施の形態の貨幣入金機1では、図1等に示すように、操作表示部86、88や操作キー89を支持するための支持部4が設けられており、この支持部4を筐体1aの手前側に開くことができるようになっている。より詳細には、操作表示部86、88や操作キー89を支持するための支持部4は、上部カバー2が上方に開かれた状態においてのみ、筐体1aの手前側に開くことができるようになっている。すなわち、上部カバー2が閉じているときには、支持部4の上端部分が図示しない係合部材によって上部カバー2に係合することにより、当該支持部4を筐体1aの手前側に開くことができないようになっている。
また、図7に示すように、操作者が携帯するIDカード等の記録媒体92には、IDカードのID情報等の様々な情報を記憶する記憶部92aが設けられており、この記録媒体92を磁気カードリーダ等の読取部90に通すと、当該記憶部92aに記憶された情報が読取部90により読み取られるようになっている。具体的には、操作者が記録媒体92を読取部90に通すことにより、当該操作者の権限を認証することができるようになり、所定の権限を有する操作者のみが貨幣入金機1において貨幣の入金処理や計数処理、回収処理を行うことができるようになる。
また、図7に示すように、本体制御部80には記憶部94が接続されている。このような記憶部94は貨幣入金機1の筐体1aの内部に設けられており、当該記憶部94には、貨幣入金機1における貨幣の入金処理や計数処理の結果に係る情報や、硬貨収納カセット40や紙幣収納カセット70に収納されている硬貨や紙幣の金種毎の枚数や合計金額に係る情報(在高情報)が記憶されるようになっている。
また、本体制御部80には通信インターフェース部98が接続されており、本体制御部80は、この通信インターフェース部98により、貨幣入金機1の外部に設けられた上位端末等の外部装置と信号の送受信を行うことができるようになっている。
次に、このような構成からなる本実施の形態の貨幣入金機1の動作について説明する。なお、以下に示す貨幣入金機1の動作は、本体制御部80が当該貨幣入金機1の各構成部材を制御することにより、あるいは本体制御部80が硬貨制御部81や紙幣制御部82を経由して硬貨入金装置10や紙幣入金装置50の各構成部材を制御することにより行われるようになっている。
本実施の形態の貨幣入金機1において硬貨や紙幣の入金処理が行われるときの動作について以下に説明する。貨幣入金機1が待機状態にあるときに、操作者が自己のIDカード等の記録媒体92を読取部90に通すことにより、当該操作者の権限が認証されると、操作表示部86、88には、操作者に対して硬貨入金装置10の硬貨投入部12や紙幣入金装置50の紙幣投入部52に硬貨や紙幣を投入することを促す旨のガイダンス画面が表示されるようになる。そして、操作者が貨幣入金機1の筐体1aの上面に設けられたシャッタ12aやシャッタ52aを手動で開くことにより筐体1aの外部から硬貨や紙幣を硬貨投入部12や紙幣投入部52に投入した後、操作表示部88に表示されているスタートボタンを押下すると、硬貨投入部12や紙幣投入部52に投入された硬貨や紙幣は筐体1aの内部に繰り出されるようになる。具体的には、硬貨投入部12に投入された硬貨は硬貨繰出機構13により1枚ずつ筐体1aの内部に繰り出され、搬送部14により搬送される。この際に、識別部16により硬貨の金種、真偽、正損等の識別が行われる。識別部16により正常な硬貨であると識別された硬貨は分岐機構18の分岐部18aにより搬送部14から分岐させられ、一時保留用シュート22を介して一時保留部26に送られ、この一時保留部26に一時的に保留される。この際に、一時保留部26は図2における中央の位置に維持される。また、識別部16により正常な硬貨ではないと識別された硬貨や識別部16により識別することができなかった硬貨はリジェクト硬貨として開口20から落下し、リジェクト用シュート24を介してリジェクト部28に送られる。上述したように、貨幣入金機1の筐体1aの前面側から操作者がリジェクト部28にアクセスすることができるようになっているため、リジェクト部28にリジェクト硬貨が送られると、操作者はリジェクト部28からリジェクト硬貨を取り出して硬貨投入部12に再投入等することができるようになる。
また、紙幣投入部52に紙幣が投入された後、操作表示部88に表示されているスタートボタンが押下されると、紙幣投入部52に投入された紙幣は紙幣繰出機構54によって1枚ずつ筐体1aの内部に繰り出され、搬送部56により搬送される。この際に、識別部58により紙幣の金種、真偽、正損等の識別が行われる。識別部58により正常な紙幣であると識別された硬貨は分岐部60により一時保留部64に送られ、この一時保留部64に一時的に保留される。また、識別部58により正常な紙幣ではないと識別された紙幣や識別部58により識別することができなかった紙幣はリジェクト紙幣としてリジェクト部62に送られる。上述したように、貨幣入金機1の筐体1aの前面側から操作者がリジェクト部62にアクセスすることができるようになっているため、リジェクト部62にリジェクト紙幣が送られると、操作者はリジェクト部62からリジェクト紙幣を取り出して紙幣投入部52に再投入等することができるようになる。
硬貨投入部12に投入された硬貨が全て硬貨繰出機構13により筐体1aの内部に繰り出されて一時保留部26またはリジェクト部28に送られるとともに、紙幣投入部52に投入された紙幣が全て紙幣繰出機構54により筐体1aの内部に繰り出されて一時保留部64またはリジェクト部62に送られると、操作表示部88には、操作者に対して入金確定の承認を求めるガイダンス画面が表示される。また、操作表示部86には取引中における硬貨や紙幣の計数結果に係る情報が表示される。具体的には、操作表示部86において、取引中における硬貨入金装置10や紙幣入金装置50による硬貨や紙幣の計数金額がカウントアップ方式により表示される。また、この際に、操作キー89が光るようになり、当該操作キー89が確定キーであることが示されるようになる。そして、操作者が操作キー89を押下することにより入金確定の指令を本体制御部80に入力すると、一時保留部26は図2における中央の位置から右側の位置に移動し、この一時保留部26に一時的に保留されている硬貨が当該一時保留部26から自重により落下し、収納用シュート32を介して硬貨収納カセット40に送られ、この硬貨収納カセット40に収納されるようになる。また、入金確定の指令が本体制御部80に入力されると、一時保留部64に一時的に保留された紙幣が当該一時保留部64から紙幣収納カセット70に送り込まれ、この紙幣収納カセット70に収納されるようになる。
一方、操作者に対して入金確定の承認を求めるガイダンス画面が操作表示部88に表示されているときに、操作者が操作キー89を押下する代わりに操作表示部88に表示されている返却ボタンを押下することにより返却の指令を本体制御部80に入力すると、一時保留部26は図2における中央の位置から左側の位置に移動し、この一時保留部26に一時的に保留された硬貨が当該一時保留部26から自重により落下して硬貨返却箱30に送られるようになる。続いて、ロック部31によるロック状態が解除され、硬貨返却箱30は筐体1aから手前側に引き出し可能となる。その後、操作者が把持部分30aを把持して硬貨返却箱30を筐体1aから手前側に引き出すことにより、硬貨返却箱30に収納されている硬貨が筐体1aの外部に返却される。また、返却の指令が本体制御部80に入力されると、扉ロック部65による扉1cのロック状態が解除され、操作者は扉1cを開くことにより一時保留部64から紙幣を取り出すことができるようになる。このようにして、一時保留部64に収納されている紙幣が筐体1aの外部に返却される。
本実施の形態の貨幣入金機1では、上述したように、硬貨の入金処理および紙幣の入金処理は同時並行的に行われ、単一の入金確定の指令あるいは返却の指令によって硬貨および紙幣の両方の収納動作または返却動作が行われるようになっている。
以上のような構成からなる本実施の形態の硬貨入金装置10によれば、搬送部14は、互いに異なる方向に延びる第1搬送路14sおよび第2搬送路14tから構成されており、第1搬送路14sには、識別部16により正常な硬貨であると識別された硬貨を搬送部14から分岐させる分岐機構18が設けられている。また、識別部16により正常な硬貨であると識別された硬貨以外の硬貨がリジェクト硬貨として第2搬送路14tからリジェクト部28に送られるようになっている。このように、分岐機構18が設けられた第1搬送路14sおよびリジェクト部28に送られるべき硬貨が搬送される第2搬送路14tは互いに異なる向きに延びているため、硬貨の搬送路において識別部16および各選別部(分岐機構)を一直線上に配置する場合と比較して筐体の奥行き方向の長さを小さくすることができ、よって設置スペースの省スペース化を図ることができるようになる。
より詳細に説明すると、従来技術の硬貨入金装置では、入金硬貨の搬送路において識別部および各選別部(リジェクト選別部を含む)が一直線上に配置されていた。しかしながら、このような従来技術の硬貨入金装置では、筐体の奥行き方向の長さが大きくなってしまい、硬貨入金装置の設置スペースに制約ができてしまうという問題があった。また、搬送部における循環ベルトの全長に対して当該循環ベルトにおける硬貨の搬送路上にある部分の長さは半分以下となっており、循環ベルトが設置される領域に無駄な領域(すなわち、硬貨を搬送しない領域)が多いという問題があった。また、識別部により正常な硬貨であると識別された硬貨以外の硬貨をリジェクト硬貨として搬送部から分岐させるためのリジェクト分岐部を硬貨の搬送方向における各選別部よりも上流側に設けた場合には、リジェクト分岐部の機能を各選別部の機能と同等のものにしなければならないが、このような硬貨入金装置では、製造コストが増加したりリジェクト分岐部で詰まり等のエラーが発生しやすくなってしまったりするという問題があった。これに対し、本実施の形態の硬貨入金装置10では、識別部16により正常な硬貨であると識別された硬貨を搬送部14から分岐させる分岐機構18を第1搬送路14sに設けるとともに、識別部16により正常な硬貨であると識別された硬貨以外の硬貨をリジェクト硬貨として第2搬送路14tからリジェクト部28に送るようにしており、また、第1搬送路14sおよび第2搬送路14tは互いに異なる向きに延びているため、上述した従来技術の硬貨入金装置の問題を解消することができるようになる。
また、本実施の形態の硬貨入金装置10においては、上述したように、搬送部14における第2搬送路14tには、当該第2搬送路14tに沿って搬送されるリジェクト硬貨を排出するための排出口として開口20が設けられており、この開口20により第2搬送路14tから排出されたリジェクト硬貨がリジェクト部28に送られるようになっている。
また、本実施の形態の硬貨入金装置10においては、上述したように、搬送部14の第1搬送路14sが延びる方向(第1の方向)は、硬貨入金装置10の筐体の奥側への方向であり、また、搬送部14の第2搬送路14tが延びる方向(第2の方向)は、硬貨入金装置10の筐体の手前側への方向である。ここで、搬送部14の第2搬送路14tが硬貨入金装置10の筐体の手前側に向かって延びることにより、第2搬送路14tにおいて硬貨入金装置10の筐体の手前側に向かって搬送される硬貨が開口20に入った後に引き続き硬貨入金装置10の筐体の手前側に向かってリジェクト用シュート24により案内されるようになる。このことにより、搬送部14の第2搬送路14tから開口20に入った硬貨をスムーズにリジェクト部28に送ることができるようになる。また、リジェクト用シュート24の形状を図2に示すような直線状のものとすることができるため、リジェクト部28の位置を下げる必要がなくなり、リジェクト部28からのリジェクト硬貨の取り出しに係る作業性を向上させることができる。
また、本実施の形態の硬貨入金装置10においては、上述したように、搬送部14における第1搬送路14sには開閉可能な上面ガイド19が設けられており、この上面ガイド19には、第1搬送路14sに沿って搬送される硬貨を当該第1搬送路14sにおける硬貨の搬送面14dに押圧する押圧部材(具体的には、錘19aおよびスプリング19b)が設けられている。このような押圧部材が設けられていることにより、分岐機構18により硬貨を一時保留部26に分岐させるにあたり、搬送部14の第1搬送路14sに沿って搬送される硬貨が搬送ベルト14aの突起14pから搬送方向前方に離間している状態となっていても、このような硬貨が押圧部材(具体的には、錘19a)に接触したときに当該押圧部材が抵抗となって硬貨が搬送方向前方に動かなくなるため、循環移動を行う搬送ベルト14aの突起14pがこの硬貨に接触するようになる。そして、この硬貨は搬送ベルト14aの突起14pにより後ろから押動されながら搬送面14d上で搬送されるようになり、この際に当該硬貨は押圧部材の下をくぐるようになる。このように、押圧部材によって搬送部14の第1搬送路14sに沿って搬送される硬貨が搬送ベルト14aの突起14pに寄せられるようになるため、当該硬貨の位置が特定されるようになり、よって分岐機構18により硬貨を一時保留部26に分岐させる際に分岐部18aの切り替えが間に合わなくなってしまうことを防止することができるようになる。
また、本実施の形態の硬貨入金装置10においては、上述したように、搬送部14における分岐機構18よりも上流側の搬送路14mの材料は分岐機構18よりも下流側の搬送路14nの材料よりも耐摩耗性が大きなものとなっている。この場合には、搬送部14における分岐機構18よりも下流側の搬送路14nについて耐摩耗性を考慮する必要がなく樹脂等の比較的軽量の材料から形成することができるため、搬送部14の搬送路の材料を全て例えば金属とする場合と比較して当該搬送部14の軽量化を図ることができるようになる。
なお、本実施の形態による硬貨入金装置は、上述したような態様に限定されることはなく、様々な変更を加えることができる。
例えば、分岐機構18により搬送部14から分岐される硬貨は、識別部16により正常な硬貨ではないと識別された硬貨や識別部16により識別することができなかった硬貨に限定されることはない。変形例に係る硬貨入金装置において、識別部16により所定の硬貨であると識別された硬貨を搬送部14の第1搬送路14sから分岐機構18により分岐させ、識別部16により所定の硬貨であると識別された硬貨以外の硬貨が非所定の硬貨として第2搬送路14tから所定の硬貨受入部(図示せず)に送られるようになっていてもよい。ここで、所定の硬貨受入部としては、例えばリジェクト部28が用いられる。より詳細には、例えば、所定の硬貨として予め指定された特定金種の硬貨(例えば、100円硬貨)が設定されている場合には、識別部16により識別された硬貨のうちこの特定金種の硬貨のみが搬送部14の第1搬送路14sから分岐機構18により分岐させられ、一方、識別部16により正常な硬貨ではないと識別された硬貨に加えて、正常な硬貨ではあるが予め指定された特定金種ではない硬貨(すなわち、100円以外の金種の硬貨)は全て非所定の硬貨として第1搬送路14sから分岐させられることなく第2搬送路14tに送られ、この第2搬送路14tから所定の硬貨受入部に送られるようになる。
このような変形例に係る硬貨入金装置によれば、搬送部14は、互いに異なる方向に延びる第1搬送路14sおよび第2搬送路14tから構成されており、第1搬送路14sには、識別部16により所定の硬貨であると識別された硬貨を搬送部14から分岐させる所定硬貨分岐部(具体的には、分岐機構18)が設けられている。また、識別部16により所定の硬貨であると識別された硬貨以外の硬貨が非所定の硬貨として第2搬送路14tから非所定硬貨受入部(具体的には、リジェクト部28)に送られるようになっている。このような変形例に係る硬貨入金装置でも、分岐機構18が設けられた第1搬送路14sおよび非所定硬貨受入部に送られるべき硬貨が搬送される第2搬送路14tは互いに異なる向きに延びているため、硬貨の搬送路において識別部16および各選別部(分岐機構)を一直線上に配置する場合と比較して筐体の奥行き方向の長さを小さくすることができ、よって設置スペースの省スペース化を図ることができるようになる。
また、硬貨入金装置10において硬貨投入部12に投入された硬貨を筐体1aの内部に繰り出すための硬貨繰出機構は、水平状態となるよう配置された円盤形状の回転盤13aを有するものに限定されることはない。硬貨投入部12に投入された硬貨を筐体1aの内部に繰り出すための硬貨繰出機構の他の構成例として、硬貨投入部12の底部近傍に設けられた循環ベルトからなる繰出ベルトを有するものが用いられるようになっていてもよい。具体的には、硬貨投入部12に投入された硬貨は繰出ベルト上に集積されるようになる。また、繰出ベルトの上方には硬貨1枚分の厚みよりもわずかに大きな隙間を隔てて逆転ローラが設けられており、繰出ベルトが駆動されたときに、この繰出ベルトと逆転ローラとの間の隙間を通過した硬貨が一層一列状態で筐体の内部に繰り出されるようになる。このような繰出ベルト等からなる硬貨繰出機構が設けられた硬貨入金装置でも本発明の原理を適用することができる。
また、搬送部は、複数の突起14pが設けられた無端状の搬送ベルト14aを有するものに限定されることはない。搬送部として、突起が設けられておらずベルト本体で硬貨を搬送面14dに押しつけながら搬送するものが用いられてもよい。別の構成の搬送部として、複数のベルト搬送機構を組み合わせたものが用いられてもよく、この場合、突起が設けられたベルトと、突起が設けられていない丸ベルトとを組み合わせたものが用いられてもよい。
また、上述したように、搬送部14において硬貨の搬送方向における開口15の下流側には硬貨の通過を検知する通過センサ17が設けられているが、硬貨が通過センサ17を通過する際にこの通過センサ17のレンズ面に硬貨が接触する場合には、通過センサ17を通過する硬貨によってこの通過センサ17のレンズ面のクリーニングを行うことができるようになる。具体的には、通過センサ17のレンズ面に付着した塵等の異物を、この通過センサ17を通過する硬貨によって除去することができるようになる。しかしながら、識別部16により正常な硬貨ではないと識別された硬貨や識別部16により識別することができなかった硬貨のみを分岐機構18により搬送部14から分岐させなかった場合には、通過センサ17を通過する硬貨の枚数が少なくなってしまい、この通過センサ17のレンズ面のクリーニングを行う頻度が少なくなってしまう。このため、変形例に係る硬貨入金装置において、識別部16による硬貨の識別結果に関係なく、搬送部14の第1搬送路14sに沿って搬送される硬貨を一定の割合(例えば、一万枚に一枚の割合)で分岐機構18により搬送部14から分岐させずに開口15の下流側に送るようにしてもよい。この場合には、分岐機構18により搬送部14から分岐されずに開口15の下流側に送られた硬貨によって通過センサ17のレンズ面のクリーニングを定期的に行うことができるようになる。
また、別の変形例に係る硬貨入金装置として、図8に示すような構成のものが用いられてもよい。図8に示す硬貨入金装置10aでは、搬送部14の第1搬送路14sに2つの開口15a、15bが設けられているとともに、各開口15a、15bに対応するよう2つの分岐機構18p、18qが設けられている。このような硬貨入金装置10aの構成の詳細について以下に説明する。なお、図8に示す硬貨入金装置10aの各分岐機構18p、18qの構成は、図1乃至図7に示す硬貨入金装置10の分岐機構18の構成と略同一となっている。また、図8に示す硬貨入金装置10aの各構成部材について、図1乃至図7に示す硬貨入金装置10と同一の構成部材については同一の参照符号を付してその説明を省略する。
図8に示す硬貨入金装置10aでは、図1乃至図7に示す硬貨入金装置10と同様に、搬送部14は、互いに異なる方向に延びる第1搬送路14sおよび第2搬送路14tから構成されている。また、第1搬送路14sには、識別部16により正常な硬貨であると識別された硬貨を搬送部14から分岐させて各開口15a、15bに入れるための複数(具体的には、2つ)の分岐機構18p、18qが設けられている。ここで、各分岐機構18p、18qに対応して設けられた開口15a、15bにはそれぞれ一時保留用シュートが接続されている。また、各開口15a、15bに対応するよう2つの一時保留部が搬送部14の下方に設けられており、これらの2つの一時保留部に対応するよう2つの硬貨収納カセットが硬貨入金装置10aの筐体の内部における下部領域に設けられている。また、識別部16により正常な硬貨であると識別された硬貨以外の硬貨がリジェクト硬貨として第2搬送路14tから開口20に送られ、この開口20からリジェクト部28(図8では図示せず)に送られるようになっている。このような図8に示す硬貨入金装置10aでも、各分岐機構18p、18qが設けられた第1搬送路14sおよびリジェクト部28に送られるべき硬貨が搬送される第2搬送路14tは互いに異なる向きに延びているため、硬貨の搬送路において識別部16および各選別部(分岐機構)を一直線上に配置する場合と比較して筐体の奥行き方向の長さを小さくすることができ、よって設置スペースの省スペース化を図ることができるようになる。
また、図8に示す硬貨入金装置10aでは、2つの分岐機構18p、18qにより、搬送部14から硬貨を金種別に分岐させて各開口15a、15bに異なる金種の硬貨を入れることにより各硬貨収納カセットに収納される硬貨の金種を互いに異なるものとすることができる。また、図8に示す硬貨入金装置10aにおける別の運用方法では、釣銭として用いられる店舗用の硬貨を一方の分岐機構18pにより搬送部14から分岐させて開口15aに入れるようにし、一方、硬貨入金装置10aから回収されるべき警送会社用の硬貨を他方の分岐機構18qにより搬送部14から分岐させて開口15bに入れるようにすることによって、店舗用の硬貨および警送会社用の硬貨を別々の硬貨収納カセットに収納させるようにしてもよい。
また、本発明では、少なくとも硬貨を入金可能な硬貨入金装置が単体で用いられるようになっていてもよい。すなわち、図1等に示す貨幣入金機1において紙幣入金装置50の設置が省略されるようになっていてもよい。