この発明の一実施形態を、以下図面を用いて説明する。
図1(a)は圧着端子10と導体先端部510Tの斜視図であり、図1(b)は図1(a)中のA−A線で切断した切断面を示す一部拡大図であり、図2は端子連結帯300の端子金具10A、及びその近傍の平面図を示している。
図3(a)は底上げ加工において、押上げ型212でトランジション部40を押し上げる前の状態を示す連結帯300の端子金具10A、及びその近傍の縦断面図であり、図3(b)は底上げ加工において、押上げ型212でトランジション部40を押し上げている状態を示す連結帯300の展開形状の圧着端子部分の縦断面図を示している。
図4(a)は底上げ加工前のトランジション部40の横端面図であり、図3(a)中のB1−B1線における端面図を示し、図4(d)は底上げ加工前のボックス部20の横端面図であり、図3(a)中のC1−C1線における端面図を示し、図4(b)は底上げ加工後のトランジション部40の横端面図であり、図3(a)中のB2−B2線における端面図を示し、図4(e)は底上げ加工後のボックス部20の横端面図であり、図3(a)中のC2−C2線における端面図を示し、図4(c)は第2立ち上げ工程後のトランジション部40の横端面図を示している。
図5(a)は圧縮プレス工程において圧縮プレス型220によりプレスする前の様子を断面で示した説明図であり、図5(b)は図5(a)中の領域X1の拡大図を示し、図6(a)は圧縮プレス工程において圧縮プレス型220によりプレスしている最中の様子を断面で示した説明図であり、図6(b)は図6(a)中の領域X2の拡大図を示している。
図7(a)は整形プレス工程において整形プレス型230によりトランジション部40をプレスする前の様子を断面で示した説明図であり、図7(b)は整形プレス工程において整形プレス型230によりトランジション部40をプレスしている最中の様子を断面で示した説明図であり、図7(c)は図7(b)中の領域X3の拡大図を示している。
図8(a)は溶接工程を行っている様子を示す斜視図であり、図8(b)はトランジション部40において突合せ端部同士42t,42tの境界部分に対して溶接工程を行っている様子を横断面で示した説明図である。
但し、図中矢印Lは圧着端子10(端子金具10A)の端子軸方向を示し、矢印Wは圧着端子10の幅方向を示し、矢印Hは圧着端子10の高さ方向(厚み方向)を示すものとする。なお、端子軸方向Lの前方である先端側をLf、後方である基端側をLbとする。また、矢印Wtは端子連結帯300におけるキャリア長手方向を示し、矢印Wcは端子連結帯300におけるキャリア幅方向を示す。また、以下の説明において圧着端子10の幅方向Wの中央を切断した断面(端面)を縦断面(縦端面)とし、圧着端子10の端子軸方向Lを該端子軸方向Lに直交する直交面で切断した断面(端面)を横断面(横端面)とする。
まず、本願発明の圧着端子の製造方法により製造する圧着端子10の構成について図1乃至図5を用いて説明する。
圧着端子10は、図2に示すように、金属条として例えば、表面が錫メッキ(Snメッキ)された黄銅等の銅合金条(図示せず)を打ち抜いた端子連結帯300におけるキャリア長手方向において所定間隔ごとに配設され、キャリア幅方向Wcの一端側から、図2乃至図5に示す繋ぎ部310を介して、キャリア幅方向の外側へ向けて突出した複数の端子金具10Aに対して後述する各種加工を行い、最終的に、キャリア320から分断して形成される。
圧着端子10は、図1(a)に示すように、雌型圧着端子であるとともに、先端が封止された筒状の圧着部60を備えたいわゆるクローズドバレル型であり、端子軸方向Lの先端側Lfから基端側Lbに向かって、図示省略する雄型圧着端子における挿入タブの挿入を許容するボックス部20と、ボックス部20に対して直列に配置された圧着部60と、ボックス部20と圧着部60とを連結するトランジション部40(首部)とで一体に構成している。
ボックス部20は、図1(a)に示すように、倒位の中空四角柱体で構成され、内部に、端子軸方向Lの後方に向かって折り返され、挿入される雄型コネクタの挿入タブ(図示省略)に接触する弾性接触片25を備えている。
また、中空四角柱体であるボックス部20は、底面部21と、幅方向Wの両側において該底面部21と連設する側面部22(22a,22b)、及び上面部23とを備え、左右両側面部22a,22b、及び上面部23と底面部21とが対向するようにそれぞれの境界部を折り曲げて端子軸方向Lへ細長い直方体形状に構成している(図1(a)参照)。
ボックス部20は、曲げ加工前の展開形状において、すなわち、圧着端子10が端子金具10Aである状態において、図2に示すように、右側面部22aと一方側上面部230とが連設されるとともに、左側面部22bと他方側上面部231とが連設されている。
一方側上面部230と他方側上面部231とは、ボックス部20を構成する各面部間を周方向に折り曲げて直方体形状に構成した際に、互いに重合し、上面部23を構成する。
また、トランジション部40には、図1(a)、(b)に示すように、圧着部60の先端部分を封止した封止部50が形成されている。
封止部50は、図1(b)に示すように、端子軸方向Lに対する直交断面が、前方から視て上下方向(厚み方向H)に対して幅方向Wが広く、且つ下方へ向けて凸の横断面略U字状に形成している。
トランジション部40は、展開形状において、図2に示すように、幅方向Wの中央部分に有するトランジション底面部41と、トランジション底面部41に対して幅方向Wの両側に、幅方向Wの外側へ向けて突出したトランジションバレル片42とで形成している。
なお、図2に示すように、ボックス部20とトランジション部40との境界部分には、曲げ加工の際に該境界部分に応力が集中しないように幅方向Wの両外側を切欠いた切欠き部70を形成している。
また、封止部50は、トランジションバレル片42を上方且つ幅方向Wの内側に曲げ返して、曲げ返していないトランジション底面部41に厚み方向(厚み方向H)に重合させて形成している(図1(b)参照)。
圧着部60は、図1(a)に示すように、被覆電線500における少なくとも先端側の電線先端部500Tを挿入可能な円筒状に形成するとともに、周方向全体において連続する連続形状で一体に形成しており、電線先端部500Tを挿入した状態でかしめて圧着することで、圧着部60を介して、圧着端子10と該電線先端部500Tと電気的に接続した接続構造体を形成することができる。
ここで、被覆電線500は、図1(a)に示すように、アルミニウムやアルミニウム合金などで形成するアルミニウム素線510aを複数束ねた導体510を、絶縁樹脂で構成する絶縁被覆520で被覆して構成している。
電線先端部500Tは、図1(a)中に示すように、被覆電線500の先端側における、先端側の絶縁被覆520を剥離して導体510を露出させた導体先端部510Tと、被覆電線500の先端側における導体先端部510Tよりも後方であって絶縁被覆520部分の先端側の被覆先端部520Tとで構成している。
圧着部60は、被覆先端部520Tに相当する内径で形成した被覆圧着部60Bと、導体先端部510Tに相当する内径で形成した導体圧着部60Aとを端子軸方向Lの基端側Lbから先端側Lfにこの順に配設するとともに、図1(a)に示すように、被覆圧着部60Bを導体圧着部60Aよりも若干大きな外径とした段付形状で形成している。
なお、圧着部60は、電線先端部500Tにおける少なくとも後述する導体先端部510Tを挿入可能な内部空間を備えていれば特にその深さは限定しない。
圧着部60は、展開形状において、図2に示すように、圧着底面部61と、該圧着底面部61に対して幅方向Wの両側に、幅方向Wの外側へ向けて突出した圧着バレル片62とで形成している。
また、図1(a)に示すように、圧着部60とトランジション部40に形成した封止部50とは端子軸方向Lに沿って連続して一体に形成している。
具体的には、圧着端子10が展開形状において、図2に示すように、圧着底面部61とトランジション底面部41とは、端子軸方向Lに沿って連続するように一体に形成するとともに、圧着バレル片62とトランジションバレル片42とは、端子軸方向Lに沿って連続するように一体に形成している。
圧着部60、及び封止部50には、圧着部60の幅方向Wの両側の圧着バレル片同士62,62が突き合わさった突合せ端部同士62t,62tの境界部分と、封止部50の幅方向Wの両側のトランジションバレル片同士42,42の端面42ta,42taが突き合わさった突合せ端部同士42t,42tの境界部分とを溶接する溶接部80を端子軸方向Lに沿って形成している(図1(b)、図8参照)。
なお、封止部50の端子軸方向Lの所定箇所には、図示しないが、端子軸方向Lに沿って形成した溶接部80に交差する方向に溶接した端子軸方向交差溶接部を形成してもよい。
このような圧着端子10は、上述したように、端子連結帯300における帯状のキャリア320をキャリア長手方向Wtに沿って送りながら端子金具10Aに対して段階的に所定の曲げ加工、及び溶接工程を行った後、端子金具10Aをキャリア320から分断して作成される。
そして、端子金具10Aに対して段階的に所定の曲げ加工や溶接工程を行う際に、加工前の圧着部60に対して行う圧着部形成工程、加工前のボックス部20に対して行うボックス部形成工程、加工前のトランジション部40に対して行うトランジション部形成工程のそれぞれを並行して行うが、以下の説明では特に示す場合を除いて、トランジション部形成工程に着目して説明する。
トランジション部形成工程は、封止部50を備えたトランジション部40を形成する工程であり、端子金具10Aにおけるトランジション部40に対して、プリプレス工程、圧縮プレス工程、整形プレス工程、及び溶接工程をこの順に行う。
プリプレス工程では、平板状のトランジション部40(図2参照)を圧縮プレス工程を行うための横端面略三角形状(図4(c)参照)に曲げ加工する工程であり、トランジションバレル片42に対して第1立ち上げ工程と第2立ち上げ工程と曲げ返し工程とをこの順で行う。
第1立ち上げ工程では、図示しないプレス型や芯棒等の適宜の治具を用いて、幅方向Wに沿って平坦な平板状の加工前のトランジション部40(図4(a)中の仮想線参照)に対して、図4(a)、図3(a)に示すように、トランジションバレル片42がトランジション底面部41に対して30度程度立ち上がった形状に曲げ加工する。
なお、この第1立ち上げ工程を行う際には、ボックス部20、及び圧着部60のそれぞれに対しても同時に適宜、曲げ加工が行われ、この曲げ加工後の端子金具10Aの縦断面形状は、図3(a)に示すような縦断面形状となり、このときの圧着部60は圧着バレル片62の端部のみが若干、立ち上がった形状(図3(a)参照)になるのに対して、ボックス部20は図4(d)に示すような横断面形状となる。
具体的には、ボックス部20は、底面部21、及び側面部22に対して幅方向Wの両側の上面部23(一方側上面部230、及び他方側上面部231)が45度程度立ち上がった形状となる。
第2立ち上げ工程では、図示しないプレス型や芯棒等の適宜の治具を用いて、図4(b)に示すように、第1曲げ工程後のトランジション部40に対して、トランジションバレル片42がトランジション底面部41に対して略垂直となるまで立ち上がった形状に曲げ加工する。
それと同時に第2立ち上げ工程では、トランジション底面部41を底上げする底上げ加工(嵩上げ加工)も行う。
底上げ加工は、ボックス部20の底面部21、及び圧着部60の圧着底面部61の高さに対してトランジション底面部41を段状に底上げする加工であり、図3(a)に示すように、第2立ち上げ工程を行うための凸状の押上げ型212と該押上げ型212の凸状に対応する凹状の押上受け型211とで構成したトランジション押上げ型210を備えた圧着端子の製造装置200を用いて行う。
なお、第2立ち上げ工程を行う際には、図3(a)に示すように、圧着端子の製造装置200のトランジション押上げ型210に備えた押上受け型211と押上げ型212とは、トランジション部40に対して上下各側に、対向配置される。
そして、第2立ち上げ工程の際には、上述したトランジションバレル片42の立ち上げ加工を行うために別途、備えた図示しない適宜の型等の治具を用いてトランジションバレル片42が上述したように、垂直に立ち上がる形状に曲げ加工すると同時に、図3(b)に示すように、押上受け型211をトランジション底面部41に上側から配置した状態で、押上げ型212によってトランジション底面部41を下側から押圧することで、トランジション底面部41を、ボックス部20、及び圧着部60の各底面部21,61に対して底上げする底上げ加工を行う。
これにより、トランジション底面部41は、図4(b)に示すように、トランジションバレル片42が略垂直に立ち上がるとともに、トランジション底面部41がボックス部20、及び圧着部60の底面部21,61に対して上げ底となる。
続いて行う曲げ返し工程において、第2立ち上げ工程を行ったトランジション部40の幅方向Wの両側に有するトランジションバレル片42をトランジション底面部41の上方側から該トランジション底面部41の側へさらに折り返す。すなわち、図4(c)に示すように、トランジションバレル片42を、それぞれの端部同士がトランジション底面部41の上方で対向するようにトランジション底面部41に対して約135度程度の角度になるまで折り曲げる。
上述したプリプレス工程によって図4(c)に示すようなトランジション部40を形成することができる。続いて行う圧縮プレス工程では、図4(c)に示す形状のトランジション部40をプレスして幅方向Wの両側のトランジションバレル片同士42,42が幅方向Wにおいて互いに突き合わさるようにプレスするが、トランジション部40をプレスする際に、トランジション部40におけるトランジション底面部41側へ曲げ返したトランジションバレル片42が突き合わさる突合せ端部42tを除いてプレスする。
突合せ端部42tは、トランジションバレル片42における幅方向Wの端部に形成された端子軸方向Lに長い帯状の領域であり、本実施例において、突合せ端部42tはトランジションバレル片42を構成する銅合金条の板厚程度の幅で形成された端子軸方向Lに長い帯状の領域であり、その端面を42taとし、後述する突合せ状態において、突合せ状態で当接する当接下角部を42tbとして図示している。
具体的に、圧縮プレス工程では、圧着端子の製造装置200に備えた、図5(a)に示すような圧縮プレス型220を用いてトランジション部40をプレスする。
圧縮プレス型220は、トランジション部40に対して上側に配置した上側圧縮プレス型222と、トランジション部40に対して下側に配置した下側圧縮プレス型221との一対を備えて構成している。
上側圧縮プレス型222と下側圧縮プレス型221とは、いずれも少なくともトランジション部40の端子軸方向Lの長さに相当する厚み(奥行き方向の長さ)に形成している。
上側圧縮プレス型222の下面は、曲げ返したトランジションバレル片42をプレスする上側圧縮プレス面222Aを備え、該上側圧縮プレス面222Aは、横断面形状が、幅方向Wの中央が外側に対して下方に略孤状に突出する凸状に形成している(図5(a)参照)。
上側圧縮プレス面222Aには、図5(b)に示すように、トランジション部40における突合せ端部42tと対向する対向部分、すなわち、横断面凸状の上側圧縮プレス面222Aの幅方向Wの中央の最も下方に突出する部分に、該突合せ端部42tに対して凹状に窪んだ逃げ部223が形成されている。
逃げ部223は、上述するトランジションバレル片42の突合せ端部42tに対応し、トランジションバレル片42を構成する板材の伸びの影響がなくなる程度の幅であり、具体的には突合せ端部42tの2つ分程度の幅方向Wの長さPw、且つ、圧縮プレス工程のプレスによって突合せ端部42tが完全に圧縮されない深さであり、具体的には突合せ端部42tの板厚相当の深さPtで形成し、上側圧縮プレス面222Aにおいて、滑らかに連続するように、形成している。
一方、下側圧縮プレス型221は、上述した曲げ工程において曲げ返していないトランジション底面部41をプレスする側の圧縮プレス型であり、下側圧縮プレス型221の上面には、図5(a)に示すように、トランジション底面部41をプレスする下側圧縮プレス面221Aと、下側圧縮プレス面221Aの両側方において、上側圧縮プレス型222に向かって突出する側壁部221Bとを備えている。なお、上述の上側圧縮プレス型222の上側圧縮プレス面222Aは、プレス状態において、両側壁部221Bの間に挿入されるような態様でプレスすることになる。
両側壁部221Bの間に形成された下側圧縮プレス面221Aは、上側圧縮プレス型222の下方へ向けて凸状の上側圧縮プレス面222Aに対応するように、幅方向Wの中央が外側に対して下方に孤状に窪んだ凹状の横断面形状で形成している(図5(a)参照)。なお、下側圧縮プレス面221Aは、上側圧縮プレス面222Aのように逃げ部223を形成せずに幅方向Wの全体を滑らかな孤状に窪んだ凹形状で形成している。また、滑らかな孤状に窪んだ凹形状で形成している下側圧縮プレス面221Aの幅方向Wの長さ、つまり両側壁部221Bの幅方向Wの内側間隔は、トランジション部40の幅方向Wの長さに対応する長さで形成している。
圧縮プレス工程では、まず、プリプレス工程後のトランジション部40を、上下各側で対向配置させた上側圧縮プレス型222と下側圧縮プレス型221との間に配置する(図5(a)参照)。
具体的には、両側壁部221Bの間に形成された下側圧縮プレス面221Aに、プリプレス工程後のトランジション部40をトランジション底面部41が対向するように配置し、例えば、上側圧縮プレス型222を下側圧縮プレス型221の側へ降下させ、上側圧縮プレス面222Aを両側壁部221Bの間に挿入して、トランジション部40を上下両側からカシめるようにプレスする。
このように、トランジションバレル片42,42を上側圧縮プレス型222によって上側からプレスするとともに、トランジション底面部41を下側圧縮プレス型221によって下側から支持することにより、つまり、上側圧縮プレス型222と下側圧縮プレス型221とでトランジションバレル片42を上下方向に挟み込むようにプレスすることにより、トランジション部40は、図6(a)に示すように、トランジションバレル片42の突合せ端部42t,42tの端面同士42ta,42taが突き合わさるとともに、トランジションバレル片42とトランジション底面部41とが厚み方向Hに重合し、トランジション底面部41がトランジションバレル片42よりも径外側に位置する凹状(U字状)の横断面形状に形成される。
ここで上述したように、上側圧縮プレス面222Aによるトランジションバレル片42のプレスについて着目すると、図6(a)に示すように、圧縮プレス型220によってトランジション部40をプレスした際に、トランジション部40は、両側壁部221Bによって幅方向の位置が規制された状態で、トランジションバレル片42における突合せ端部42t,42t以外の部分については上側圧縮プレス面222Aによってプレスされるが、上側圧縮プレス面222Aには突合せ端部42tに対して凹状に窪んだ逃げ部223が形成されているため、突合せ端部42t,42tについては上側圧縮プレス面222Aによってプレスされない。なお、このとき、両側壁部221Bによって、トランジションバレル片42の幅方向Wの伸びは規制されている。
このため、図6(b)に示すように、トランジション部40をプレスした際に、両側壁部221Bによって幅方向の位置が規制されているため、トランジション部40は幅方向Wに広がらず、トランジションバレル片42の突合せ端部42t,42tは、端面42taの一部である当接下角部42tb(例えば、板厚方向の下端部)が互いに突き合わされる。しかし、突合せ端部42tの端面42taは、幅方向Wにおいて面接触状態に突き合わされず、すなわち、端面42taの全体が互いに密着した状態で突き合わされず、且つトランジション底面部41と厚み方向Hに重合せずにトランジション底面部41に対して反り上がるように浮き上がった状態となる。
これは、曲げ返しするトランジション部40の厚み方向の一方の面46と他方の面45との板厚に起因する伸び量の差が大きくなるとともに、突合せ端部42t,42tが逃げ部223によってプレスされないため、上述のように、トランジション底面部41に対してプレスされるトランジションバレル片42に対して、跳ね上がったようになる。
続いて行う整形プレス工程では、トランジション部40における少なくとも突合せ端部42tをプレスする。
具体的には、整形プレス工程では、図7(a)に示すように、圧着端子の製造装置200に備えた、整形プレス型230を用いてトランジション部40をプレスする。
整形プレス型230は、トランジション部40に対して上側に配置した上側整形プレス型232と、トランジション部40に対して下側に配置した下側整形プレス型231との一対を備えて構成している。
上側整形プレス型232と下側整形プレス型231とは、いずれも少なくともトランジション部40の端子軸方向Lの長さに相当する厚み(奥行き方向の長さ)に形成している。
上側整形プレス型232の下面は、トランジションバレル片42をプレスする上側整形プレス面232Aを備え、該上側整形プレス面232Aは、横断面形状が幅方向Wの中央が外側に対して下方に略孤状に突出する凸状に形成している。
なお、上側整形プレス面232Aには、上側圧縮プレス面222Aのように逃げ部223を形成せずに幅方向Wの全体を滑らかな孤状に突出する凸形状で形成している。
一方、下側整形プレス型231は、トランジション底面部41をプレスする側の圧縮プレス型であり、下側整形プレス型231の上面におけるトランジション部40との対向部分には、トランジション底面部41をプレスする下側整形プレス面231Aと、下側整形プレス面231Aの両側方において、上側整形プレス型232に向かって突出する側壁部231Bとを備えている。なお、上述の上側整形プレス型232の上側整形プレス面232Aは、プレス状態において、両側壁部231Bの間に挿入されるような態様でプレスすることになる。
両側壁部231Bの間に形成された下側整形プレス面231Aは、上側整形プレス面232Aに対応するように、幅方向Wの中央が外側に対して下方に孤状に凹んだ凹状の横断面形状で形成している。また、滑らかな孤状に窪んだ凹形状で形成している下側整形プレス面231Aの幅方向Wの長さ、つまり両側壁部231Bの幅方向Wの内側間隔は、トランジション部40の幅方向Wの長さに対応する長さで形成している。
整形プレス工程では、まず、Uの字形状のトランジション部40を、上下各側で対向配置させた上側整形プレス型232と下側整形プレス型231との間に配置する。
具体的には、図7(a)に示すように、両側壁部231Bの間に形成された下側整形プレス面231Aに、圧縮プレス工程後のトランジション部40をトランジション底面部41が対向するように配置し、図7(b)に示すように、例えば、上側整形プレス型232を下側整形プレス面231Aの側へ降下させ、上側整形プレス面232Aを両側壁部231Bの間に挿入して、トランジション部40を上下両側からカシめるようにプレスする。
このように、トランジションバレル片42,42を上側整形プレス型232によって上側からプレスするとともに、トランジション底面部41を下側整形プレス型231によって下側からプレスすることにより、図7(c)に示すように、両側壁部231Bによって幅方向の位置が規制された状態のトランジション部40における突合せ端部42tを含めてプレスことができるため、幅方向Wに広がることなくトランジション底面部41に対して浮き上がった形状の突合せ端部42tをトランジション底面部41に重合させることができるとともに、該突合せ端部42t,42tの端面同士42ta,42taを幅方向Wにおいて面接触状態に整形することができる。
上述したトランジション部形成工程により、図1(a),(b)に示すように、端子軸方向Lの先端側から見て幅方向Wに広い横断面略U字状の封止部50を備えたトランジション部40を形成することができる。
上述した圧着端子の製造方法において、トランジション部形成工程とともに圧着部形成工程、ボックス部形成工程も段階的に同時並行で行われるため、端子金具10Aは、整形プレス工程完了の時点において、図1中の圧着端子10に示すような端子形状に曲げ加工される。
続いて行う溶接工程では、圧着部60、及び封止部50に対してレーザ溶接する。
溶接工程では、図8(a),(b)に示すように、ファイバーレーザー溶接装置Fwを圧着部60、及び封止部50におけるそれぞれのバレル片の突合せ端部同士62t,62t、及び42t,42tの境界部分に対して、例えば、圧着端子10の基端側(キャリア320側)から先端側へ(ボックス部20側)スライドさせながら一対の突合せ端部同士62t,62t、及び42t,42tを溶接することで溶接部80を形成する。
なお、ファイバーレーザー溶接装置Fwを圧着端子10の端子軸方向Lに沿ってスライドさせる際に、ファイバーレーザー溶接装置Fwのレーザー出力部Fw1と、突合せ端部同士62t,62t、及び42t,42tの境界部分におけるレーザーの照射箇所までの間隔が一定になるように、該間隔に応じて適宜、レーザー出力部Fw1を上下動させながら突合せ端部同士62t,62t、及び42t,42tを溶接することで端子軸方向Lにおけるレーザーの照射箇所に対してのレーザーの焦点を一定に保つことができる。
上述した工程を経て形成した圧着端子10は、図示しないが端子連結帯300における繋ぎ部310においてキャリア320に対して切断して形成することができる。
上述した圧着端子の製造装置200、及び製造方法が奏する作用効果について説明する。
上述したように、本実施形態の圧着端子の製造方法は、端子軸方向Lの各側に備えたボックス部20と圧着部60とを連結するトランジション部40において、該トランジション部40に備えたトランジションバレル片同士42,42を幅方向Wに突き合わさるように曲げ返して幅方向Wの中央部分に有するトランジション底面部41と重合させる圧着端子の製造方法において、トランジションバレル片42が突き合わさる突合せ端部42tを除く部分をプレスする圧縮プレス工程と、トランジション部40における少なくとも突合せ端部42tをプレスする整形プレス工程とをこの順で行うため、トランジション部40に封止部50を形成する際に、プレス工程により板状の曲げ加工前の該トランジション部40を曲げ加工した場合であっても、曲げ返したトランジションバレル片42の突合せ端部同士42t,42tが隙間なく、幅方向Wにおいて端面42ta,42taが面接触した状態に曲げ加工することができる。
従って、溶接工程において、突合せ端部同士42t,42tをレーザー溶接する際に、該突合せ端部同士42t,42tの境界部分において、図8(b)に示すように、内部にピンホール等の溶接不良が生じることがなく、突合せ端部同士42t,42tを確実に溶接することができる。
詳しくは、上述した圧縮プレス工程において、封止部50は、トランジション部40に対して曲げを伴うプレスにより、トランジションバレル片42をトランジション底面部41の側へ曲げ返して端部同士を幅方向Wにおいて突き合わせるとともに、該トランジション底面部41と重合させて形成するが、その際、図10(a),(b)に例示される従来のプレス加工のように、トランジションバレル片420の幅方向W全体をプレスした場合、曲げ加工するトランジション部400の厚み方向の一方の面460と他方の面450との板厚に起因する伸び量の差が大きくなり、トランジションバレル片420,420の端面420ta,420taが、図10(d)に示すように、互いに面接触した状態で突き合わさらず、端面同士420ta,420taの間に略三角形状の隙間Sが生じ易くなる。
このように、端面同士420ta,420taの間に略三角形状の隙間Sが生じると、図10(e)に示すようなその後に行う溶接工程において、境界部分の突合せ端部同士420t,420tを溶接した場合、内部にピンホール等の溶接不良が生じるおそれがある。
なお、図10(a)は従来の端子金具100Aに対して従来の曲げ加工を施す様子を断面で示した説明図であり、図10(b)は従来の端子金具100Aを用いて従来の曲げ加工を施したトランジション部400を断面で示した説明図であり、図10(c)は図10(a)の領域X6の拡大図であり、図10(d)は図10(b)の領域X7の拡大図であり、図10(e)は従来のプレス型によりプレスして形成したトランジション部400に対してして溶接工程をしている様子を断面で示した説明図である。
これに対して、本実施形態においては、まず、圧縮プレス工程において、曲げ加工前のトランジション部40に対してプレスする際に、トランジションバレル片42における突合せ端部42tを除いた部分をプレスすることにより(図6(a),(b)参照)、突合せ端部42tには、トランジション部40の厚み方向の一方の面46と他方の面45との板厚に起因する伸びの影響がおよびにくくすることができる。
そして、このように、トランジション部40における突合せ端部42t以外を除いてプレスすることにより、突合せ端部42tにおいては、トランジション部40のプレスによる板厚に起因する伸びの影響を緩和させることができる一方で、突合せ端部42tの当接下角部42tb,42tb同士が対向して接触するが、端面同士42ta,42taが面接触せず、トランジション底面部41に対して跳ね上がったように変形しても、その後に行う整形プレス工程において、トランジション部40における少なくとも突合せ端部42tに対してプレスすることで、圧縮プレス工程により意に反した形状に変形した突合せ端部42tを整形することができる(図7(a),(b)参照)。
このとき、突合せ端部42tは、圧縮プレス工程によるトランジション部40の板厚に起因する伸びの影響を緩和しているため、整形プレス工程によって突合せ端部同士42t,42tを幅方向Wに突き合わせたとき、該突合せ端部42t,42tの端面同士42ta,42taを面接触した状態で突き合わせることができる。
そして、このように、突合せ端部同士42t,42tは、幅方向Wにおいて隙間なく端面同士42ta,42taが面接触した状態で突き合わせることができることから(図7(b),(c)参照)、その後の溶接工程において、端面同士42ta,42taが面接触状態に突き合わさった突合せ端部同士42t,42tを溶接することによって(図8(c)参照)、該突合せ端部同士42t,42tの境界部分の内部にピンホール等の溶接不良が生じることがなく、突合せ端部同士42t,42tを確実に溶接することができる。
また、上述した圧着端子の製造装置200は、端子軸方向Lの各側に備えたボックス部20と圧着部60とを連結するトランジション部40に、該トランジション部40に備えたトランジションバレル片42,42の端面同士42ta,42taが幅方向Wに突き合わさるように曲げ返して幅方向Wの中央部分に有するトランジション底面部41と重合するように厚み方向Hの両側からプレスする圧着端子の製造装置であり、圧縮プレス型220と整形プレス型230を一対ずつ備え、一対の圧縮プレス型220のうち、トランジションバレル片42をプレスする側の上側圧縮プレス型222には、トランジションバレル片42が突き合わさる突合せ端部42tと対向する対向部分に、該突合せ端部42tに対して凹状となる逃げ部223が形成された上側圧縮プレス面222Aを構成し(図5(a),図6(a)参照)、一対の整形プレス型230のうち、トランジションバレル片42をプレスする側の上側整形プレス型232には、少なくとも突合せ端部42tをプレスする上側整形プレス面232Aを構成するものである(図7(a),(b)参照)。
上記構成によれば、一対の圧縮プレス型220のうち、上側圧縮プレス面222Aにおける突合せ端部42tと対向する対向部分には、該突合せ端部42tに対して凹状となる逃げ部223を備えているため(図5(b)参照)、トランジション部40を一対の圧縮プレス型220によりプレスした際に、該トランジション部40における突合せ端部42tを除いた部分をプレスすることにより、突合せ端部42tには、トランジション部40の厚み方向の一方の面46と他方の面45との板厚に起因する伸びの影響を緩和することができる。
そして、一対の整形プレス型230のうち、上側整形プレス型232により、トランジション部40における少なくとも突合せ端部42tをプレスすることで、圧縮プレス型220により、トランジション底面部41に対して跳ね上がるように変形した突合せ端部42tを整形するため、突合せ端部42tは、幅方向Wにおいて隙間なく、端面同士42ta,42taが面接触した状態で突き合わさり、面接触状態に突き合わさった突合せ端部同士42t,42tの境界部分に対して溶接するため、該突合せ端部同士42t,42tの境界部分の内部にピンホール等の溶接不良が生じることがなく、突合せ端部同士42t,42tを確実に溶接することができ、優れた止水性、強度を確保することができる。
さらにまた、圧縮プレス型220の下側圧縮プレス型221に側壁部221Bを備えるとともに、整形プレス型230の下側整形プレス型231に側壁部231Bを備えているため、確実に、突合せ端部同士42t,42tが幅方向Wに面接触するとともに、トランジション部40の幅方向の中央部分と重合するように曲げ加工することができる。
詳述すると、プレスされるトランジション部40を幅方向Wに規制する側壁部221B(側壁部231B)を設けることによって、トランジション部40を容易にプレスされる位置に位置合わせすることができる。
また、プレスされるトランジション部40を幅方向Wに規制する側壁部221B(側壁部231B)を圧縮プレス型220(整形プレス型230)に設けることによって、側壁部221B(側壁部231B)によってプレスされるトランジション部40が幅方向Wに広がることを規制できるとともに、トランジション部40を構成する板材の幅方向Wの伸びも規制でき、トランジション部40の突合せ端部同士42t,42tが幅方向Wに確実に面接触した状態を構成することができる。
なお、圧縮プレス型220(整形プレス型230)に設けた側壁部221B(側壁部231B)は、圧縮プレス型220(整形プレス型230)における下側圧縮プレス型221(下側整形プレス型231)に設けたが、上側圧縮プレス型222(上側整形プレス型232)における上側圧縮プレス面222A(上側整形プレス面232A)より側方を下側圧縮プレス型221(下側整形プレス型231)側に突出させて側壁部を構成してもよい。
さらには、幅方向Wの両側に備えた側壁部221B(側壁部231B)における一方を下側圧縮プレス型221(下側整形プレス型231)に備え、他方を上側圧縮プレス型222(上側整形プレス型232)に備え、下側圧縮プレス型221(下側整形プレス型231)と上側圧縮プレス型222(上側整形プレス型232)とが嵌合した状態でトランジション部40を幅方向Wに規制するように構成してもよい。
また、封止部50は、例えば、横断面U字状、横断面倒位の弓状(三日月形状)などの横断面凹状で形成するだけでなく、横断面偏平状など、トランジションバレル片42がトランジション底面部41へ曲げ返して突合せ端部同士42t,42tを幅方向Wにおいて突き合わせるとともに、トランジション底面部41と重合するものであれば、これに限らず様々な断面形状で形成することができる。
但し、封止部50を特に、横断面略U字状に形成することにより(図1(b)参照)、例えば、幅方向Wに沿って略平坦な断面偏平状に形成した場合と比較して断面係数が向上し、圧着端子10の強度を確保することができる。
その結果、封止部50は、圧着部60の先端側から水分が浸入することを防止できるとともに、中折れ等に耐え得る強度を有した強度とすることができる。
その一方で、このように封止部50が凹状である場合、例えば、偏平状である場合と比較して、特に、曲げ加工による厚み方向の一方の面46と他方の面45との板厚に起因する伸びの差の影響がより顕著になり、上述したように、突合せ端部同士42t,42tを確実に溶接できないという課題が生じ易くなるが、本実施形態のように、逃げ部223を形成した上側圧縮プレス型222を用いた圧縮プレス工程と、少なくとも突合せ端部42tをプレスする整形工程との2段階のプレス工程を行うことにより、突合せ端部42t,42tの端面同士42ta,42taが幅方向Wに面接触して突き合わさった状態で確実に溶接することができる。
また、図8(a),(b)に示すように、上述した端子金具10Aに対して、幅方向Wの両側のトランジションバレル片42,42の端面同士42ta,42taが面接触した状態で突き合わさる突合せ端部同士42t,42tに、該突合せ端部同士42t,42tを溶接した溶接部80を形成することにより、図1(a),(b)に示すように、優れた止水性、強度を確保した封止部50を備えた圧着端子10を構成することができる。
さらに、図示しないが、被覆電線500の先端側の導体先端部510Tを、上述した圧着端子10における圧着部60に挿入して圧着接続した接続構造体を構成してもよく、さらにまた、該接続構造体と、該接続構造体における圧着端子10を収容可能なコネクタハウジングを備え、圧着端子10を該コネクタハウジング内に配置するとともに、接続構造体を複数束ねたワイヤハーネスを構成することにより、優れた止水性、強度を確保した接続構造体を備えたワイヤハーネスとすることができる。
また、上述した第2立ち上げ工程の際にトランジション部40を底上げする底上げ加工をすることにより(図3(a),(b)、図4(b)参照)、端子金具10Aを曲げ加工する際に、ボックス部20と圧着部60とのそれぞれの曲げ加工の加工率の違いに起因する応力が、これらボックス部20と圧着部60との連結部分であるトランジション部40に集中してトランジション部40が破断することなく、端子金具10Aの曲げ加工を確実に行うことができる。
具体的には、この第2立ち上げ工程を行う際には、圧着部60に対しては、略曲げ加工が行われないのに対して(図3(b)参照)、ボックス部20に対しては、図4(e)に示すように、底面部21に対して幅方向Wの両側の側面部22が略45度程度立ち上がるとともに、底面部21に対して幅方向Wの両側の上面部23(一方側上面部230、及び他方側上面部231)が略60度程度立ち上がった形状となるまで曲げ加工が行われる。
このように、圧着部60に対して、ボックス部20を大きな曲げ加工率で曲げ加工した場合、これら加工率の違いが大きくなる、ボックス部20と圧着部60との連結部分に相当するトランジション部40には、過大な応力が集中し、破断するおそれがあった。
これに対して、第2立ち上げ工程の際にトランジション部40を底上げする底上げ加工をすることにより、トランジション部40に、部分的に無理な変形を強いることにより作用する応力を緩和させるとともに、トランジション部40の強度を高めることができ、トランジション部40が破断することなく、所望の形状に加工することができる。
上述の説明では、逃げ部223を有する上側圧縮プレス型222を用いた圧縮プレスすることで突合せ端部42t,42tの端面42ta,42taを面接触させてから溶接したが、図9(a)、図9(c)に示すように、圧着端子10を展開した形状の他の実施形態の端子金具10APにおいて、トランジション部40Pの幅方向Wの少なくとも一方の端部形状を、トランジション部40Pの厚み方向の一方の面46Pよりもトランジション部40Pの厚み方向の他方の面45Pが幅方向Wの外側へ突き出した形状で形成したものを用いてもよい。
なお、トランジション部40Pの厚み方向の一方の面46Pよりも厚み方向の他方の面45Pが幅方向Wの外側へ突き出した端部形状における突出量tは、突合せ端部42tの板厚に対して2/3程度の突出量で形成している。
なお、図9(a)は他の実施形態における端子金具10APを用いて曲げ加工後の圧着端子10Pのトランジション部40Pにおける横断面図であり、図9(c)は図9(a)の領域X4の拡大図である。
これにより、逃げ部223を備えていない上側圧縮プレス型222を用いて圧縮プレスしても、突合せ端部同士42Pt,42Ptを幅方向Wにおいて面接触した状態で溶接することができるため、突合せ端部同士42Pt,42Ptの境界部分の内部にピンホール等の溶接不良が生じることがなく、突合せ端部同士42Pt,42Ptを確実に溶接した圧着端子10を形成することができる。
具体的には、図10(a)に示すように、トランジション部400の厚み方向の両側の面450,460を同じ幅で形成し、図10(c)に示すように、幅方向Wの端部420tが厚み方向の一方の面460に対して厚み方向の他方の面450が突き出さない一般的な端部形状であり、このようなトランジション部400を、図10(b)に示すように、プレスにより曲げ加工した場合、トランジション部400の厚み方向の一方の面46と他方の面450との板厚に起因する伸びの差の影響により、突合せ端部同士420t,420tは、幅方向Wにおいて面接触状態に突き合わせることができず、突合せ端部同士420t,420tの境界部分の内部には隙間Sが生じ易かった(図10(d)参照)。
このような場合、突合せ端部同士420t,420tを溶接した際に、該突合せ端部同士420t,420tの境界部分の内部にピンホール等の溶接不良が生じ易く、突合せ端部同士420t,420tを確実に溶接することができないという課題が生じていた。
これに対して、トランジション部40Pに対して行う曲げ加工を伴うプレスによる、トランジション部40Pの厚み方向の一方の面46P(下側の面であり、曲げ加工における曲げ内側の面)と他方の面45P(上側の面であり、曲げ加工における曲げ外側の面)との曲げによる板厚に起因する伸びの差の影響を考慮して、トランジション部40Pの厚み方向の一方の面46Pよりも厚み方向の他方の面45Pが幅方向Wの外側へ突出量tで突き出した端部形状とすることで(図9(a),(b)参照)、厚み方向の一方の面46Pがプレスにより曲げ加工によって板厚が伸び易い外面に位置し、厚み方向の他方の面45Pが外面よりも板厚が伸び難い内面に位置するようにトランジション部40Pをプレスにより曲げ加工することにより(図9(b)参照)、逃げ部223を備えていない上側圧縮プレス型222を用いて圧縮プレスしても、突合せ端部42Pt,42Ptの端面42ta,42taを幅方向Wにおいて面接触状態で突き合わせることができる(図9(d)参照)。
なお、図9(b)は他の実施形態における端子金具10APを用いて曲げ加工後の圧着端子10Pのトランジション部における横断面図であり、図9(d)は図9(b)の領域X5の拡大図である。
これにより、突合せ端部42t,42tの端面42ta,42taが幅方向Wにおいて面接触した状態で、突合せ端部同士42t,42tを溶接することができるため、突合せ端部同士42t,42tの境界部分の内部にピンホール等の溶接不良が生じることがなく、突合せ端部同士42t,42tを確実に溶接した圧着端子10Pを形成することができる。
また、上述したように、トランジション部40Pの幅方向Wの両外側の端部形状を、トランジション部40Pの厚み方向の一方の面46Pよりも厚み方向の他方の面45Pが幅方向Wの外側へ突き出した形状で形成した端子金具10AP(図9(a)参照)を用いて圧着端子10P(図9(b)参照)を製造する際には、従来のように、プレス面に逃げ部を有しないプレス型により1回だけプレスして圧着端子を製造してもよく、もちろん、上述した逃げ部223を有する上側圧縮プレス型222を用いた圧縮プレス工程と、少なくとも突合せ端部同士42t,42tをプレスする整形プレス工程との2段階のプレス工程を行って製造せしてもよい。
このように、図9(a)に示すトランジション部40Pは、予めプレスによる伸びの影響を考慮した端部形状としているため、従来のように、プレス面に逃げ部223を有しないプレス型でプレスしても、突合せ端部同士42Pt,42Ptが面接触した状態の封止部50を形成することが期待できる。
また、上述した厚み方向の一方の面46Pよりも厚み方向の他方の面45Pが幅方向Wの外側へ突き出した端部形状は、ボックス部20と圧着部60を含めた端子金具10APの端子軸方向L全長に形成するだけでなく、接続部、トランジション部40、及び圧着部60のうち、少なくともトランジション部40に形成したものであれば特に限定しない。
この発明の構成と、上述の実施例との対応において、この発明の接続部は、この実施形態のボックス部20に対応し、以下同様に、
幅方向の中央部分はトランジション底面部41に対応し、
バレル片はトランジションバレル片42,42Pに対応し、
バレル片をプレスする側の圧縮プレス型は上側圧縮プレス型222に対応し、
突合せ端部に対して凹状となる逃げ部が形成されたプレス面は上側圧縮プレス面222Aに対応し、
バレル片をプレスする側の整形プレス型は上側整形プレス型232に対応し、
規制部は側壁部221B,231Bに対応し、
少なくとも前記突合せ端部をプレスするプレス面は整形プレス面に対応するも、この発明は、上述した実施形態に限らず、その他にも様々な実施形態で形成することができる。
例えば、上述の説明では、トランジションバレル片42の突合せ端部42tに対応し、突合せ端部42tの2つ分の幅方向Wの長さPw、且つ、突合せ端部42tの板厚相当の深さPtで形成し、上側圧縮プレス面222Aにおいて、滑らかに連続するように、逃げ部223を形成したが、これに限定されず、圧縮プレスによって、突合せ端部42tの当接下角部42tb,42tbが当接し、端面42ta,42taが面接触しない形状となれば、突合せ端部42tの2つ分でない幅方向Wの長さPw、且つ板厚より薄い深さPtで形成してもよい。
また、トランジション部40Pの厚み方向の一方の面46Pよりも厚み方向の他方の面45Pが幅方向Wの外側へ突き出した端部形状における突出量tは、突合せ端部42tの板厚に対して2/3程度の突出量で形成したが、曲げ加工における板厚に起因する伸び量に対応する突出量で形成すればよい。