JP6490270B2 - 併用療法 - Google Patents

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Description

本発明は、癌を含む、非機能的P2X7受容体発現と関連する疾患を治療するかまたは緩和する方法に関する。
プリン(P2X)受容体は、ATP開口型陽イオン選択的チャネルである。それぞれの受容体は、3つのタンパク質サブユニットまたは単量体から構成される。現在までに、P2X単量体をコードする7つの別個の遺伝子:P2X1、P2X2、P2X3、P2X4、P2X5、P2X6、P2X7が同定されている。
P2X7受容体は、これらの受容体の発現が、胸腺細胞、樹状細胞、リンパ球、マクロファージ、および単球などのような、プログラム細胞死を受ける可能性を有する細胞に限られることが理解されているので、特に興味深い。P2X7受容体のいくらかの発現は、赤血球上および他の細胞型、たとえば皮膚においてなど、一般的に低いレベルで、通常のホメオスタシスでも存在する。
興味深いことには、Pro210(配列番号1に従う)にシス異性化を有する単量体を含有し、1つまたは複数の影響を受けた部位においてATP結合機能が損なわれたP2X7受容体が、新生物発生前の細胞および新生物細胞などのような、プログラム細胞死を行うことができないと理解されている細胞上に見つけられている。受容体のこのアイソフォームは、「非機能的」受容体と呼ばれており、この受容体における、作動性非選択的カルシウムチャネルをアポトーシス孔に拡張できない形態を説明する。
Pro210を含むペプチドを用いる免疫化から生成された抗体は、隣接する単量体の間に形成される改変ATP結合部位(複数可)において非機能的P2X7受容体に結合する。しかしながら、それらは、利用可能な3つの部位のいずれにおいても、ATPに結合することができるP2X7受容体に結合しない。したがって、これらの抗体は、癌腫および造血性癌の多くの形態の選択的検出ならびにこれらの状態のうちのいくつかの治療に有用である。
WO02/057306A1およびWO03/020762A1は、モノクローナル抗体の形態にある、機能的P2X7受容体と非機能的P2X7受容体とを識別するためのプローブについて議論している。この機能的P2X7受容体は、非選択的Ca/Naチャネルを形成することができる受容体として定義され、この非選択的Ca/Naチャネルは、さらに、ATPの拡張結合上のアポトーシス孔を形成することができる。この非機能的P2X7受容体は、非選択的チャネルを形成することができるが、チャネルの開口をアポトーシス孔に拡張することはできない受容体として定義される。
WO2009/033233は、機能的受容体ではなく、非機能的受容体上に露出しているエピトープおよびそれに結合するための抗体について議論している。
WO02/057306A1 WO03/020762A1 WO2009/033233 PCT/AU2002/000061 PCT/AU2002/001204 PCT/AU2007/001540 PCT/AU2007/001541 PCT/AU2008/001364 PCT/AU2008/001365 PCT/AU2009/000869 PCT/AU2010/001070 米国特許第5,500,161号
Remington's Pharmaceutical Sciences、Mack Publishing Co.、第16版(1980年) Allison(1998年、Dev. Biol. Stand.、92:3〜11頁) Unkelessら(1998年、Annu. Rev. Immunol.、 6:251〜281頁) Phillipsら(1992年、Vaccine、10:151〜158頁) Baylorら、Vaccine、20:S18頁、2002年 Ribiら、1986年、Immunology and Immunopharmacology of bacterial endotoxins、Plenum Publ. Corp., NY、407頁、1986年 Ghochikyanら、Vaccine、24:2275頁、2006年 Cooperら、Vaccine、22:3136頁、2004年 Payneら、Vaccine、16:92頁、1998年 Caoら、Vaccine、10:238頁、1992年 Katzら、Vaccine、18:2177頁、2000年 Mbwuikeら、Vaccine、8:347頁、1990年 Kreuterら、J. Pharm. ScL、70:367頁、1981年
非機能的P2X7受容体発現によって引き起こされるかまたはこれと関連する疾患、たとえば癌の、代替治療または改善された治療に対する必要性が存在する。
明細書中の何らかの先行技術に対する言及は、この先行技術が豪州もしくは任意の他の法域における共通の一般的知識の一部を形成すること、またはこの先行技術が、当業者によって関連性があると確認され、理解され、そしてみなされると合理的に予測され得ることを認めるものでも、もしくは何らかの形で示唆するものでもなく、そのように理解されるべきではない。
ある実施形態では、癌の治療のための非自己抗原結合部位を受けた個体において癌の進行を最小化するための方法であって、
-癌の治療のための非自己抗原結合部位を受けた個体を提供する工程;
-上記個体においてP2X7受容体に対する免疫応答を形成する工程
を含み、それによって、上記個体における癌の進行を最小化する、方法が提供される。
上述の方法の1つの形態において、上記個体は、この個体において上記免疫応答が形成された時点で、循環中に検出可能な非自己抗原結合部位を有しない場合がある。
さらに、上記個体は、この個体において上記免疫応答が形成された時点で、検出可能な癌を有しない場合がある、たとえば、上記個体に対する抗原結合部位の投与の結果として、上記免疫応答が、特に非機能的P2X7受容体または癌関連P2X7受容体に対して、上記個体において形成された時点で、上記癌のサイズ、質量または他の物理的測定値が実質的に縮小している場合がある。
免疫応答は、免疫原によって形成され得る。免疫原は、P2X7受容体または個体においてP2X7受容体に対する免疫応答を誘導することができるP2X7受容体の断片の形態で提供され得る。
免疫原は、主要組織適合複合体クラスII分子上に提示され得る、および/またはT細胞受容体もしくはB細胞受容体もしくはB細胞膜結合免疫グロブリンと相互作用できる、少なくとも1つの配列を含み得る。
本発明に従うと、この個体は、ヒトであり、ここで、上記免疫原は、ヒトP2X7受容体またはP2X7受容体に対する免疫応答を誘導することができるその断片の形態で提供される。
典型的には、個体において形成される免疫応答は、非機能的P2X7受容体に特異的であり、非機能的P2X7受容体(すなわち、ATPに結合不能な1つまたは複数の部位を有する)と反応性であるが、機能的P2X7受容体(すなわち、ATP結合受容体)とは反応性でない抗体または細胞成分が、個体において形成される。
好ましい形態において、免疫原は、個体に対する初回投与において提供され、それによって、IgM産生を含む応答を形成する。
さらなる好ましい形態において、個体に対する初回投与において提供され、それによって、IgM産生を含む応答を形成する免疫原は、後の時点で、初回投与に対するさらなる投与において投与され、それによって、IgG産生を含む応答を形成する。この実施形態では、典型的に、免疫原のこのさらなる投与は、上記個体における循環中IgMのレベルが実質的に検出不能になったときに起こる。
免疫応答は、体液性応答であっても、および/または細胞性応答であってもよい。
体液性応答は、抗体を分泌する血漿細胞へのB細胞の形質転換、Th2活性化およびサイトカイン産生、胚中心形成およびアイソタイプスイッチ、B細胞の親和性成熟および/またはメモリー細胞生成を含み得る。
細胞性応答は、抗原特異的細胞毒性Tリンパ球の活性化、マクロファージおよびナチュラルキラー細胞の活性化および/または細胞を刺激してサイトカインを分泌させることを含み得る。
個体において形成される体液性および/または細胞性の応答は、個体において癌を治療もしくは緩和し得るか、または個体において癌の進行を最小化し得る。
上述の実施形態では、個体によって受けられた抗原結合部位は、癌と関連する任意のバイオマーカーと反応性であり得る。例としては、P2X7、特に非機能的P2X7に対する抗原結合部位、VEGF、特にVEGF A、CまたはD、Her-2、CD20などに対する抗原結合部位が挙げられる。典型的には、個体によって受けられた抗原結合部位は、P2X7受容体、特に非機能的P2X7受容体と反応性である。
別の実施形態では、癌の治療のための抗P2X7受容体抗原結合部位を受けた個体における癌の治療のためまたは癌の進行の阻害のための医薬の製造における、P2X7受容体またはその断片の使用が提供される。
別の実施形態では、ヒトにおいて癌を治療するため、または癌の進行を阻害するための、P2X7受容体またはその断片を含む組成物が提供される。好ましくは、この組成物は、さらに、キャリヤー、賦形剤または希釈剤を含む。好ましくは、この組成物は、さらにアジュバントを含む。
別の実施形態では、ヒトにおける癌の治療における使用、または癌の進行の阻害における使用のための、P2X7受容体またはその断片を含む組成物が提供される。好ましくは、この組成物は、さらに、生理学的に許容されるキャリヤー、賦形剤または希釈剤を含む。好ましくは、この組成物は、さらにアジュバントを含む。
別の実施形態では、本発明の方法において使用される組成物が提供される。
好ましい形態において、この組成物は、個体に対する免疫原の初回投与の際の一次免疫応答(IgM産生を含む)、およびこの初回投与に対するさらなる免疫原の投与の際の二次免疫応答(IgG産生を含む)の形成を可能にする。
他の実施形態では、ヒトにおける癌の治療または癌の進行の阻害のための、キットまたは組成物が提供され、このキットは、以下を含む:
-ヒトに対して投与された際に、ヒトP2X7受容体に対する免疫応答の形成を引き起こすことができる免疫原;
-癌と関連するバイオマーカーに結合する抗原結合部位;および
-上述の方法における使用のための文書による指示。
1つの好ましい形態において、このキットにおいて提供される抗原結合部位は、P2X7受容体、好ましくは非機能的P2X7受容体と反応性である。
何らかの理論または作用様式に縛られないが、内因性免疫成分、たとえば免疫化から生じる抗体および抗原特異的細胞は、抗原結合部位の投与が完了し、非自己抗P2X7抗原結合部位の循環レベルが検出不能になった後、細胞表面P2X7受容体に対し、より長くそしてより大きな曝露を有するという理由で、本発明は、代替のおよび/または改善された治療レジメンを提供すると考えられる。
さらに、P2X7受容体密集は、高濃度の非自己または外来性抗体が個体において提供される際に生じ、抗癌免疫応答を提供する主要なP2X7エピトープに対する特異的抗体結合のレベルを最小化し、それによって、免疫療法の効力を限定すると考えられる。本発明者らは、本明細書で記載される本発明に従う免疫原による個体の免疫化から生じる抗体応答は、受容体密集を起こさない抗体の量、力価または濃度を提供し、それによって、特に個体における癌が実質的に検出不能であり得る時点での、免疫療法の効力を改善することを見出した。
一実施形態では、癌の療法のための抗癌抗原抗体を受けた個体において癌関連P2X7受容体に対する体液性免疫応答を形成するための方法であって、
-個体において癌関連P2X7受容体またはその断片の形態の免疫原に対する免疫応答を形成する工程
を含み、ここで、上記免疫応答は、癌の治療のために投与された抗癌抗原抗体が上記個体において実質的に検出不能なレベルまたは濃度になる時点で上記個体において形成される、および/または
癌関連P2X7受容体に対する上記体液性免疫応答は、上記個体において形成された癌関連P2X7受容体に対する抗体の量が約0.1〜25mg/kg個体になる免疫化スケジュールに従って形成される、方法が提供される。
別の実施形態では、癌の療法のための抗癌抗原抗体を受けた個体における癌関連P2X7受容体に対する体液性免疫応答の形成における使用のための組成物が提供され、前記組成物は、癌関連P2X7受容体またはその断片の形態の免疫原を含む。好ましくは、免疫応答は、癌の治療のために投与された抗癌抗原抗体が個体において実質的に検出不能なレベルまたは濃度になる時点で個体において形成される;および/または癌関連P2X7受容体に対する体液性免疫応答は、個体において形成された癌関連P2X7受容体に対する抗体の量が約0.1〜25mg/kg個体になる免疫化スケジュールに従って形成される。
本発明のさらなる態様および以前の段落に記載された態様のさらなる実施形態は、例として示された以下の説明から、ならびに添付の図面を参照して、明らかになる。
アジュバントの存在下でKLHキャリヤーに結合したペプチドGHNYTTRNILPGLNITCによって免疫化した、中程度の腫瘍量を有する患者を示す図である。ELISAプレートは、このペプチドを保有し、このペプチドに対する抗体の存在を検出するために、血清は連続希釈される。事前免疫血清(青)、4週目のブースト直前に得た血清(赤)および13週目の血清(ブースト9週間後、緑)。初回免疫化の4週間後に採取したブースト前の血清において、抗体は検出されなかった。これは、免疫化から生じた抗体に結合する既存の腫瘍塊の結果であると考えられる。13週目の試料は、腫瘍量が減少したことから、低レベルの循環抗nfP2X7抗体応答を示す。5週目〜12週目にとられた中間測定値は、循環抗体が血清中にほとんど存在しないことを示した。 アジュバントの存在下でKLHキャリヤーに結合したペプチドGHNYTTRNILPGLNITCによって免疫化した、非常に小さな残留腫瘍量を有する患者を示す図である。ELISAプレートは、このペプチドを保有し、このペプチドに対する抗体の存在を検出するために、血清は連続希釈される。事前免疫血清(青)、4週目のブースト直前に得た血清(赤)および5週目の血清(ブースト1週間後、緑)。患者は、循環抗体のため残留腫瘍シンクをほとんど有しないか、または全く残留腫瘍シンクを有さなかったため、5週目に検出されたレベルは、既に、中程度の腫瘍塊を有する患者におけるレベルよりもずっと高かった。
ここで、本発明のある実施形態について詳細に言及することとする。本発明を実施形態に関連して記載することとするが、本発明は、本発明をそれらの実施形態に限定するものではないことが理解されるであろう。それどころか、本発明は、代替物、変形、および等価物をすべて包含するように意図され、これらは、請求項によって定義される本発明の範囲内に含まれてもよい。
当業者は、本発明の実施において使用することができる、本明細書において記載されるものに類似するまたは等価である多くの方法および材料を認識するであろう。本発明は、記載される方法および材料に全く限定されない。
本明細書において開示され、定義される本発明は、述べられるまたは本文もしくは図面から明らかである、個々の特徴のうちの2つ以上のすべての代替の組み合わせまで及ぶことが理解されるであろう。これらの様々な組み合わせはすべて、本発明の様々な代替の態様を構成する。
本明細書において使用されるように、文脈上、他の意味に解すべき場合を除き、用語「含む(comprise)」ならびに「含む(comprising)」、「含む(comprises)」、および「含まれる(comprised)」などのような用語の変化形は、さらなる付加物、成分、整数、または工程を除外するようには意図されない。
本明細書で言及されるすべての特許および刊行物は、その全体が参照により組み込まれる。
本明細書を解釈する目的のために、以下の定義が、一般に適用されるであろう、また適切であれば、単数形で使用される用語はまた、複数形をも含み、その逆も成立するであろう。記載されるいかなる定義も、参照によって本明細書において組み込まれるいかなる文献とであれ、矛盾する場合、下記に記載される定義が優先されるものとする。
「プリン受容体」は、一般に、リガンドとしてプリン(ATPなど)を使用する受容体を指す。
「P2X7受容体」は、一般に、3つのタンパク質サブユニットまたは単量体から形成されるプリン受容体を指し、単量体の少なくとも1つは、配列番号1において示されるアミノ酸配列を実質的に有する。P2X7受容体が3つの単量体から形成される限り、これは、「三量体(trimer)」または「三量体(trimeric)」である。「P2X7受容体」は、下記に記載されるように、機能的または非機能的受容体であってもよい。「P2X7受容体」は、P2X7受容体の天然に存在する変異体を包含する、たとえば、P2X7単量体は、P2X7受容体を形成する単量体の天然に存在する切断型または分泌型形態(たとえば、それの細胞外ドメイン配列または切断型形態から成る形態)、天然に存在する変異形態(たとえば選択的スプライス形態(alternatively spliced form))、および天然に存在する対立遺伝子変異体を含む、スプライス変異体、対立遺伝子変異体、およびアイソフォームである。本発明のある実施形態では、本明細書において開示される天然配列P2X7単量体ポリペプチドは、配列番号1において示される完全長アミノ酸配列を含む、成熟したまたは完全長の天然配列ポリペプチドである。ある実施形態では、P2X7受容体は、修飾されたアミノ酸配列を有していてもよく、たとえば、配列番号1において示される配列におけるいくつかのアミノ酸は、置換されてもよく、欠失させてもよく、または残基が挿入されてもよい。
「機能的P2X7受容体」は、一般に、ATPに結合するための結合部位またはくぼみを有するP2X7受容体の形態を指す。ATPに結合した場合、受容体は、非選択的ナトリウム/カルシウムチャネルを形成し、これは、サイトゾルの中へのカルシウムイオンの進入を可能にする、細孔状の構造に変わり、これらのうちのある結果は、プログラム細胞死となり得る。通常のホメオスタシスでは、機能的P2X7受容体の発現は、一般に、胸腺細胞、樹状細胞、リンパ球、マクロファージ、および単球などのような、プログラム細胞死を受ける細胞に限られる。赤血球および他の細胞型上の機能的P2X7受容体のいくらかの発現もあり得る。
「非機能的P2X7受容体」は、一般に、受容体がアポトーシス孔を形成できないが、隣接する単量体の間に位置する単一の機能的ATP結合部位の維持を通して非選択的チャネルとしてなお作動し得るコンホメーションを有する、P2X7受容体の形態を指す。1つまたは複数の単量体が、Pro210(配列番号1による)にシス異性化を有する一例が、挙げられる。異性化は、たとえば、単量体一次配列の突然変異または異常な翻訳後プロセシングを含む、単量体のミスフォールディングに至るあらゆる分子的事象から生じてもよい。異性化のある結果は、三量体上の1つまたは2つのATP結合部位において受容体がATPに結合することができず、その結果、チャネルの開口を拡張できないことである。このような状況下では、受容体は、細孔を形成することができず、これは、カルシウムイオンがサイトゾルに入り得る程度を制限する。非機能的P2X7受容体は、広範囲の上皮癌および造血性癌上で発現する。
「癌関連P2X7受容体」は、一般に、癌細胞(新生物発生前の細胞、新生物細胞、悪性細胞、良性細胞または転移性細胞を含む)上で見出されるが、非癌細胞または正常細胞において見出されないP2X7受容体である。
「E200エピトープ」は、一般に、非機能的P2X7受容体上に曝されるエピトープを指す。ヒトにおいて、配列は、GHNYTTRNILPGLNITC(配列番号2)である。
「E300エピトープ」は、一般に、非機能的P2X7受容体上に曝されるエピトープを指す。ヒトにおいて、配列は、KYYKENNVEKRTLIKVF(配列番号3)である。
「複合エピトープ」は、一般に、E200エピトープおよびE300エピトープまたはこれらのエピトープの一部の並立から形成されるエピトープを指す。
「抗体」または「免疫グロブリン」または「Ig」は、抗原に結合するように免疫系において機能し、したがって異物を同定し、かつ/または中和する、血液または脊椎動物の他の体液中に見つけられるガンマグロブリンタンパク質である。
抗体は、一般に、2つの同一の軽(L)鎖および2つの同一の重(H)鎖から構成されるヘテロ四量体糖タンパク質である。それぞれのL鎖は、1つの共有結合性のジスルフィド結合によってH鎖に連結される。2つのH鎖は、H鎖アイソタイプに依存して、1つまたは複数のジスルフィド結合によって互いに連結される。それぞれのH鎖およびL鎖はまた、規則的に間隔を置いた鎖内ジスルフィド架橋をも有する。
H鎖およびL鎖は、特異的なIgドメインを特徴づける。特に、それぞれのH鎖は、N末端に、可変ドメイン(VH)を有し、α鎖およびγ鎖のそれぞれについては3つの定常ドメイン(CH)ならびにμアイソタイプおよびεアイソタイプについては4つのCHドメインが後続する。それぞれのL鎖は、N末端に、可変ドメイン(VL)を有し、その他方の末端に定常ドメイン(CL)が後続する。VLは、VHと整列し、CLは、重鎖(CH1)の第1の定常ドメインと整列する。
抗体は、様々なクラスまたはアイソタイプに割り当てることができる。5つのクラスの免疫グロブリンがある:それぞれα、δ、ε、γ、およびμと呼ばれる重鎖を有するIgA、IgD、IgE、IgG、およびIgM。γクラスおよびαクラスは、CHの配列および機能における比較的小さな差異に基づいて、サブクラスにさらに分けられ、たとえば、ヒトは、以下のサブクラスを発現する:IgG1、IgG2、IgG3、IgG4、IgA1、およびIgA2。あらゆる脊椎動物種由来のL鎖は、それらの定常ドメインのアミノ酸配列に基づいて、カッパおよびラムダと呼ばれる2つの明らかに異なるタイプのうちの1つに割り当てることができる。
定常ドメインは、ジスルフィドによって相互に保持された両方のH鎖のカルボキシ末端部分を含むFc部分を含む。ADCCなどのような抗体のエフェクター機能は、Fc領域における配列によって決定され、この領域はまた、ある種のタイプの細胞上に見つけられるFc受容体(FcR)によって認識される部分である。
VHおよびVLの対形成は、相互に、抗体の重鎖または軽鎖のアミノ末端ドメインを含む「可変領域」または「可変ドメイン」を形成する。重鎖の可変ドメインは、「VH」と呼ばれてもよい。軽鎖の可変ドメインは、「VL」と呼ばれてもよい。Vドメインは、抗原結合に影響し、かつその特定の抗原に対する特定の抗体の特異性を特徴づける「抗原結合部位」を含有する。V領域は、約110のアミノ酸残基にわたり、それぞれ一般に9〜12アミノ酸長である「超可変領域」(一般に約3つ)と呼ばれる非常に可変性のより短い領域によって分離される15〜30のアミノ酸のフレームワーク領域(FR)(一般に約4つ)と呼ばれる比較的不変のストレッチから成る。FRは、主として、β-シート立体配置をとり、超可変領域は、β-シート構造をつなぐ、いくつかの場合ではβ-シート構造の一部を形成するループを形成する。
「超可変領域」は、配列において超可変性であるおよび/または構造上特徴づけられるループを形成する、抗体可変ドメインの領域を指す。一般に、抗体は、6つの超可変領域を含む;VH中の3つ(H1、H2、H3)およびVL中の3つ(L1、L2、L3)。
「フレームワーク」または「FR」残基は、本明細書において定義される超可変領域残基以外の可変ドメイン残基である。
「抗原結合部位」は、一般に、少なくとも、Vドメインに抗原結合機能を付与するために必要とされる超可変領域およびフレームワーク領域を含む分子を指す。抗原結合部位は、本明細書で記載される方法において、抗体または抗体断片(たとえば、dAb、Fab、Fd、Fv、F(ab')2またはscFv)の形態であってもよい。
「未変化の(intact)」または「完全な(whole)」抗体は、抗原結合部位ならびにCLならびに少なくとも重鎖定常ドメインCH1、CH2、およびCH3を含む抗体である。定常ドメインは、天然配列定常ドメイン(たとえばヒト天然配列定常ドメイン)またはそのアミノ酸配列変異体であってもよい。
「可変ドメインを含む完全な抗体の断片」は、Fab、Fab'、F(ab')2、およびFv断片;二重特異性抗体;直鎖状抗体、単鎖抗体分子;ならびに抗体断片から形成される多特異性抗体を含む。
Fab断片は、H鎖の可変領域ドメイン(VH)および一方の重鎖の第1の定常ドメイン(CH1)と共に、全L鎖から成る。それぞれのFab断片は、抗原結合に関して一価である、つまり、それは、単一の抗原結合部位を有する。
Fab'断片は、抗体ヒンジ領域由来の1つまたは複数のシステインを含む、CH1ドメインのカルボキシ末端のさらなる少数の残基を有することによってFab断片と異なる。Fab'-SHは、定常ドメインのシステイン残基が遊離チオール基を運ぶFab'についての本明細書における名称である。
F(ab')2断片は、大ざっぱに言って、二価抗原結合活性を有する2つのジスルフィド結合されたFab断片に相当し、依然として、抗原に架橋結合することができる。
「Fv」は、全部の抗原認識部位および抗原結合部位を含有する最小の抗体断片である。この断片は、しっかりと非共有結合した、1つの重鎖可変領域ドメインおよび1つの軽鎖可変領域ドメインの二量体から成る。
単鎖Fv(scFv)化学種では、二本鎖Fv化学種におけるものと類似した「二量体」構造で軽鎖および重鎖が結合できるように、1つの重鎖可変ドメインおよび1つの軽鎖可変ドメインが可動性ペプチドリンカーによって共有結合できる。アミノ酸残基の抗原結合に寄与し、抗原結合特異性を抗体に付与する6つの超可変性ループ(それぞれH鎖およびL鎖由来の3つのループ)がこれらの2つのドメインのフォールディングから生ずる。
「sFv」または「scFv」としても略される「単鎖Fv」は、単一のポリペプチド鎖を形成するようにつながれたVHおよびVL抗体ドメインを含む抗体断片である。好ましくは、scFvポリペプチドは、scFvが抗原結合のための所望の構造を形成するのを可能にする、VHおよびVLドメインの間のポリペプチドリンカーをさらに含む。
「単一可変ドメイン」は、全結合部位よりも低い親和性であるが、抗原を認識し、かつ結合するための能力を有する、Fvを半分にしたものである(抗原に特異的なわずか3つのCDRしか含まない)。
「二重特異性抗体(Diabodies)」は、断片が、同じポリペプチド鎖(VH-VL)中で軽鎖可変ドメイン(VL)につながれた重鎖可変ドメイン(VH)を含む、2つの抗原結合部位を有する抗体断片を指す。小さな抗体断片は、Vドメインの鎖内ではなく鎖間対形成が達成され、二価の断片、つまり、2つの抗原結合部位を有する断片をもたらすように、VHおよびVLドメインの間に短いリンカー(約5〜10の残基)を有するsFv断片(前節を参照されたい)を構築することによって調製される。
二重特異性抗体は、二価または二特異性であってもよい。二特異性の二重特異性抗体は、2つの抗体のVHおよびVLドメインが異なるポリペプチド鎖上に存在する、2つの「交差」sFv断片のヘテロ二量体である。三重特異性抗体(Triabodies)および四重特異性抗体(tetrabodies)もまた、一般に、当技術分野において知られている。
「単離抗体」は、その既存の環境の成分から同定され、かつ分離されたおよび/または回収されたものである。混入成分は、抗体についての治療上の使用に干渉するであろう、また、酵素、ホルモン、および他のタンパク質性のまたは非タンパク質性の溶質を含んでいてもよい物質である。
「ヒト抗体」は、ヒトによって生成される抗体のアミノ酸配列に相当するアミノ酸配列を有する抗体を指す。ヒト抗体のこの定義は、非ヒト抗原結合残基を含むヒト化抗体を特に除外する。ヒト抗体は、ファージディスプレイライブラリーを含む技術において知られている様々な技術を使用して生成することができる。ヒト抗体は、抗原投与に応じてそのような抗体を生成するように修飾されているが、内因性の座が無能にされたトランスジェニック動物に抗原を投与することによって調製することができる。
非ヒト(たとえばげっ歯動物)抗体の「ヒト化」形態は、非ヒト抗体に由来する最小限の配列を含有するキメラ抗体である。大部分については、ヒト化抗体は、レシピエントの超可変領域由来の残基が、所望の抗体特異性、親和性、および能力を有する、マウス、ラット、ウサギ、または非ヒト霊長動物などのような非ヒト化学種(ドナー抗体)の超可変領域由来の残基と交換されるヒト免疫グロブリン(レシピエント抗体)である。いくつかの場合では、ヒト免疫グロブリンのフレームワーク領域(FR)残基は、相当する非ヒト残基と交換される。さらに、ヒト化抗体は、レシピエント抗体またはドナー抗体中に見つけられない残基を含んでいてもよい。これらの修飾は、抗体性能を改良するためにさらに成される。一般に、ヒト化抗体は、すべてのまたは実質的にすべての超可変性ループが非ヒト免疫グロブリンのものに相当し、かつすべてまたは実質的にすべてのFRがヒト免疫グロブリン配列のものである、実質的にすべての少なくとも1つの、典型的に2つの可変ドメインを含む。ヒト化抗体はまた、任意選択で、免疫グロブリン定常領域(Fc)、典型的には、ヒト免疫グロブリンの免疫グロブリン定常領域の少なくとも1つの部分を含むであろう。
「モノクローナル抗体」は、実質的に均質の抗体の集団から得られる抗体を指す、つまり、集団を構成する個々の抗体は、少量で存在し得る、可能性として考えられる天然に存在する突然変異を除いて、同一である。モノクローナル抗体は、高度に特異的であり、抗原上の単一の抗原部位または抗原決定基に向けられる。それらの特異性に加えて、モノクローナル抗体は、他の抗体が混入せずにそれらが合成され得るという点で有利である。モノクローナル抗体は、ハイブリドーマ法によって調製されてもよい。「モノクローナル抗体」はまた、この技術を用いて、ファージ抗体ライブラリーから単離されてもよい。
用語「抗P2X7受容体抗体」または「P2X7受容体に結合する抗体」は、抗体が、P2X7受容体、典型的には非機能的P2X7受容体を標的とする際に、診断用および/または治療用作用物質として有用となるように、十分な親和性によりP2X7受容体に結合することができる抗体を指す。好ましくは、たとえばラジオイムノアッセイ(RIA)、酵素結合免疫吸着アッセイ(ELISA)、Biacoreまたはフローサイトメトリーによって測定されるように、P2X7受容体抗体が関連しないタンパク質に結合する程度は、この抗体のP2X7受容体に対する結合の約10%未満である。ある実施形態では、P2X7受容体に結合する抗体は、<1μM、<100nM、<10nM、<1nM、または<0.1nMの解離定数(Kd)を有する。抗非機能的P2X7受容体抗体は、一般に、これらの血清学的特徴のいくつかまたはすべてを有し、かつ機能的P2X7受容体ではなく非機能的P2X7受容体に結合する抗体である。
「親和性成熟」抗体は、それらの改変を有していない親抗体と比較して、抗原に対する抗体の親和性における改善をもたらす、その1つまたは複数の超可変領域中に1つまたは複数の改変を有する抗体である。好ましい親和性成熟抗体は、標的抗原に対してナノモルまたはピコモルの親和性を有するであろう。親和性成熟抗体は、当技術分野において知られている手順によって生成される。
「ブロッキング」抗体」または「アンタゴニスト」抗体は、それが結合する抗原の生物学的活性を阻害するまたは低下させる抗体である。好ましいブロッキング抗体またはアンタゴニスト抗体は、抗原の生物学的活性を実質的にまたは完全に阻害する。
本明細書において使用される「アゴニスト抗体」は、興味のあるポリペプチドの少なくとも1つの機能的な活性を模倣する抗体である。
「結合親和性」は、一般に、分子(たとえば抗体)の単一の結合部位およびその結合パートナー(たとえば抗原)の間の非共有結合性の相互作用の合計の強度を指す。他に示されない限り、本明細書において使用される「結合親和性」は、結合するペアのメンバー(たとえば抗体および抗原)の間の1:1の相互作用を反映する固有の結合親和性を指す。分子XのそのパートナーYに対する親和性は、一般に、解離定数(Kd)によって表すことができる。親和性は、本明細書において記載されるものを含む、当技術分野において知られている一般的な方法によって測定することができる。低親和性抗体は、一般に、ゆっくりと抗原に結合し、容易に解離する傾向があるのに対して、高親和性抗体は、一般に、より速く抗原に結合し、より長く、結合したままである傾向がある。結合親和性を測定するための様々な方法は、当技術分野において知られており、これらのいずれも、本発明の目的に使用することができる。
「エピトープ」は、一般に、抗体の抗原結合部位によって結合される抗原の部分を指す。エピトープは、抗原結合部位を形成する抗体CDRの超可変ループが、一次タンパク質構造にある通りのアミノ酸配列に結合するという意味で、「直鎖状」であってもよい。ある実施形態では、エピトープは、「コンホメーションエピトープ」、すなわち、CDRの超可変ループが、三次もしくは四次タンパク質構造で提示される残基に結合するエピトープである。
「治療」は、一般に、療法的治療および予防的(prophylactic)または防止的(preventative)手段の両方を指す。
治療を必要とする対象は、既に良性、前癌性もしくは非転移性の腫瘍を有する対象、ならびに癌の発症もしくは再発を防ぐべき対象を含む。
治療の目的または成果は、癌細胞の数を減らすこと;原発性腫瘍サイズを縮小すること;癌細胞の周辺器官への浸潤を阻害すること(すなわち、ある程度減速させ、好ましくは止めること);腫瘍転移を阻害すること(すなわち、ある程度減速させ、好ましくは止めること);ある程度腫瘍成長を阻害すること;および/または障害と関連する1つもしくは複数の症状をある程度軽減することであってもよい。
治療の効力は、生存期間、疾患進行までの時間、応答速度(RR)、応答持続期間、および/または生活の質の評価によって測定され得る。
一実施形態では、この方法は、疾患進行を遅延させるために、特に有用である。
一実施形態では、この方法は、全生存および無増悪生存を含むヒトの生存を延長するために、特に有用である。
一実施形態では、この方法は、治療に応答して癌のすべての症候が消えている、療法に対して完全な応答を提供するために、特に有用である。このことは、必ずしも癌が癒えたことを意味しない。
一実施形態では、この方法は、治療に応答して、1つもしくは複数の腫瘍もしくは病変のサイズまたは体内の癌の範囲が縮小している、療法に対して部分的な応答を提供するために、特に有用である。
「前癌性」または「新生物発生前」は、一般に、典型的に癌に進行するかまたは癌に発展する状態または成長を指す。「前癌性」成長は、異常な細胞周期調節、増殖または分化によって特徴づけられる細胞を有し得、これは、細胞周期のマーカーによって決定され得る。
一実施形態では、癌は、前癌性または新生物発生前である。
一実施形態では、癌は、二次癌または転移である。二次癌は、任意の器官または組織に局在し得、詳細には、これらの器官または組織は、肺、肝臓、腎臓、膵臓、腸および脳など、比較的高い血液動態圧を有する。
他の癌の例としては、芽細胞腫(髄芽細胞腫および網膜芽細胞腫を含む)、肉腫(脂肪肉腫および滑膜細胞肉腫を含む)、神経内分泌腫瘍(カルチノイド腫瘍、ガストリノーマおよび膵島細胞癌を含む)、中皮腫、神経鞘腫(聴神経腫を含む)、髄膜腫、腺癌、黒色腫、白血病またはリンパ性悪性腫瘍、肺小細胞癌(SGLG)、肺非小細胞癌(NSGLG)、肺の腺癌および肺の扁平上皮癌を含む肺癌、腹膜の癌、肝細胞癌、胃癌(gastric cancer)または胃腸癌を含む胃癌(stomach cancer)、膵臓癌、神経膠芽細胞腫、子宮頸癌、卵巣癌、肝臓癌、膀胱癌、肝癌、乳癌(転移性乳癌を含む)、結腸癌、直腸癌、結腸直腸癌、子宮内膜癌腫もしくは子宮癌腫、唾液腺癌腫、腎臓癌(kidney cancer)もしくは腎臓癌(renal cancer)、前立腺癌、外陰癌、甲状腺癌、肝臓癌腫、肛門癌腫、陰茎癌腫、精巣癌、食道癌、胆道の腫瘍ならびに頭頸部癌が挙げられる。
(癌に)「関連する状態または症状」は、癌の結果として生じるか、癌に先行して生じるか、または癌から進行する、任意の病状であり得る。たとえば、癌が皮膚癌である場合、状態または関連する症状は、微生物感染であり得る。癌が二次腫瘍である場合、状態または症状は、腫瘍転移を有する関連する器官の器官不全に関し得る。一実施形態では、本明細書で記載される治療の方法は、個体における癌と関連する個体における状態または症状の最小化または治療のためのものである。
「非自己」分子、たとえば、「非自己」抗原結合部位または「非自己」抗体は、一般に、この分子が、たとえば治療のために提供される身体の外部で産生されている、またはこの身体に対し外来性である分子を指す。例として、合成または組換えの分子は、「非自己」である。さらに、一個体において生成され、別の個体に治療のために投与される分子は、「非自己」である。「非自己」抗原結合部位および抗体は、たとえば抗体注入において生じるような免疫の養子移入のために、本発明に従って使用され得る。対照的に、個体の内部で生成される分子(この個体は、この分子によって治療される)は、一般に、「自己」分子または「内因性」分子である。「自己」分子の一例は、免疫原に対する獲得免疫応答から生成されるかまたは生じる、抗原結合部位または抗体である。
個体における「循環中の非自己抗原結合部位のレベル」は、一般に、体液中の、好ましくは末梢血液中の、抗原結合部位の濃度を指す。
「循環中の非自己抗原結合部位の実質的に検出不能なレベル」は、一般に、外来性抗原結合部位(すなわち、養子移入によって投与されているもの)の濃度を指し、抗原結合部位の投与時点の循環中の抗原結合部位の濃度の少なくとも半分であり、好ましくは、前記濃度の25%、または10%、または5%または1%であるか、さもなければ個体の0.001mg/kg未満である。この句はまた、癌免疫療法の目的で与えられた抗原結合部位を、全く検出することができない状況をも指し得る。
「実質的に検出不能である」癌は、一般に、療法が、癌のサイズ、容量または他の物理的測定値を枯渇させたことにより、関連する標準的検出技術、たとえばin vivo画像化を使用した場合に、癌が、療法の結果として、明らかに検出可能ではない状況を指す。この句はまた、癌を全く検出することができない状況をも指す。
「免疫応答を形成する」は、一般に、獲得免疫系を介して抗原特異的免疫を呼び起こすかまたは誘導することを指す。当技術分野で一般的に理解されるように、抗原特異的免疫の誘導は、免疫の養子移入とは識別され、外来性または非自己の抗体の投与による標準的癌免疫療法は、後者の一例である。
治療のために選択された個体
一般に、上述の方法に従って治療のために選択された個体は、癌の治療のための抗体免疫療法を受けたか、または受け続けている個体である。抗体免疫療法は、一般に、抗体の養子移入の場合のように、治療を必要とする個体に対する外来性(さもなければ、「非自己」として知られる)抗体の投与を意味する。たとえば、個体は、腫瘍学に関連する適応症に対して規制上の承認を受けた任意の1つの治療抗体を受けていてもよい。アバスチン、ハーセプチン、リツキサンが、例である。典型的に、個体は、抗P2X7受容体抗体を受けたか、受け続けている。
一実施形態では、個体は、検出不能な腫瘍塊をもたらす免疫療法を受けていてもよく、免疫化の時点で、検出可能な循環する外来性抗体をもはや有しない。
さらに、上述の方法に従う治療のために選択された個体は、治療の時点で検出可能な癌を有しても有さなくてもよい。個体が、検出可能な癌を有しない場合、一次または二次体液性応答は、より容易に検出される。何故なら、癌が実質的に検出不能な量で存在するため、体液からIgMまたはIgGを除去する非機能的P2X7受容体は、非常に僅かしか存在しないからである。この点は、図1および図2において実証される。
上述の方法に従う治療の目的は、個体における非機能的P2X7受容体に対する免疫応答の誘導または形成によって、癌の進行を少なくとも最小化することである。したがって、治療のために選択された個体は、この目的をかなえるために十分な免疫応答を生成できなければならない。一般的に、所望の免疫応答は、癌の再発におけるように個体が癌によって攻撃された際に、循環するIgMおよびIgGのいずれかまたは両方を産生する能力を含む。一実施形態では、非機能的P2X7受容体に対する免疫応答の存在は、個体が検出可能な癌を有しない場合に、測定または評価される。これらの状況において、腫瘍の形態で質量を吸収する抗P2X7受容体抗体の不在が、抗P2X7受容体抗体の全身的なより高い力価が存在する可能性を高くすると考えられる。
本明細書で記載される免疫応答を生成する能力を有する個体は、免疫不全の検出のための当技術分野で周知の種々の方法によって選択され得るかまたはスクリーニングされ得る。典型的には、治療のために選択された個体は、正常なパラメータ内の少なくとも1つの白血球成分数を有する個体である。たとえば、参入のための個体は、一般に、4.0〜11.0×109/Lの間の白血球数を有するか、または1.0〜4.4×109/Lの間のリンパ球数を有する個体である。好中球数は、1.9〜7.8×109/Lの間であり得;単球数は、0.2〜1.0×109/Lの間であり得、好酸球は、約5.0×109/L未満であり得、好塩基球は、約0.2×109/L未満であり得る。
ある実施形態では、これらの血球成分の任意の1種についての細胞数は、特に、個体が血液癌の形態、たとえばCML、CLLなどを有する状況において、これらの言及された範囲外であり得ることが理解されるであろう。
一般に、重要な因子は、リンパ球数および/または単球数である。より詳細には、これらの数のいずれかまたは両方が、これらの成分の言及された範囲を有意に下回る場合、個体は、免疫原の投与に応答する可能性がより低い可能性がある。
別の実施形態では、療法のための個体の選択は、この個体が非機能的P2X7受容体発現についてホモ接合性であるか否かのスクリーニングのための、スクリーニング工程を含み得る。より詳細には、白人集団のうち僅かな百分率が、非癌細胞、たとえば特定の胸腺細胞、樹状細胞、リンパ球、マクロファージ、単球および赤血球において、非機能的P2X7受容体発現を有すると理解される。他の個体は、この発現についてヘテロ接合性であり得る。一実施形態では、治療のためのスクリーニングを行い、非機能的P2X7受容体発現についてホモ接合性である個体は、治療から除外され、治療に含められる個体は、非癌細胞において非機能的P2X7受容体を発現しないか、またはさもなければヘテロ接合性発現を有する場合である。
個体が抗体免疫療法を受け続けている場合、一実施形態では、抗体免疫療法は、所望の臨床的エンドポイントまで続けることが許容される。典型的には、所望の臨床的エンドポイントは、実質的に検出不能なレベルまでの癌の縮小である。免疫療法の間、または免疫療法の完了時に、個体がP2X7受容体に対する免疫応答を形成するかまたは生成する能力が、評価される。この評価が、この個体が、P2X7免疫原による免疫化からの利益を得る可能性が高いことを明らかにする場合、この個体は、免疫原を投与される。
本発明の好ましい形態において、抗体免疫療法から生じた個体における循環中の非自己または外来性の抗原結合部位のレベルは、この個体において免疫応答が形成された時点で、実質的に検出不能である。重要なことに、非自己抗原結合部位が非機能的P2X7受容体または癌関連P2X7受容体に結合する場合、本発明者の重要な知見は、特に癌細胞が非常に低コピー数である場合、またはさもなければ実質的に検出不能である場合、抗体治療の効力は、抗原結合部位のより高い循環濃度において、低下するということである。これは、標準的抗体免疫療法において生じる高濃度の抗原結合部位に対して、癌細胞上で低コピー数のP2X7受容体の機能であると考えられる。具体的には、本明細書の実施例において、本発明者は、抗原特異的結合部位の循環レベルが上昇し、そして癌細胞の数が減少する場合、抗原結合部位によるP2X7受容体の密集がずっと起こりやすく、受容体の抗原特異的結合が遮断されることを見出している。この遮断は、抗原結合部位による抗原特異的結合の意図される細胞毒性効果、アポトーシス効果または他の効果が不可能になる可能性が増大する。循環中の外来性抗原結合部位のレベルを、液体中の抗体を検出可能な任意の標準的血清学技術によって決定でき、1つの好ましい例は、抗原結合部位を捕獲する抗体を用いるELISAである。
上記からさらに、仮説に縛られることを望まないが、本発明者らは、注入した抗体が存在する時点での免疫化の投与は、注入した抗体が免疫原に結合し、免疫複合体形成およびクリアランスをもたらすことによって、抗原提示および抗原特異的免疫の誘導を妨げるかもしれない危険性を増大すると考える。したがって、ある実施形態では、非自己または外来性抗原結合部位のレベルが、免疫原に対する抗原特異的免疫応答の誘導前に循環からクリアランスされるまで待つことが、特に有用である。
注入した抗体が免疫原に結合できない(すなわち、この抗体がこの免疫原に対して特異的でないため、たとえば、抗体が免疫原に関連しないバイオマーカーに結合する)実施形態では、免疫原による免疫化は、検出可能な注入した抗体が存在するときか、または抗体注入を行う前に起きてもよい。
抗原結合部位および投与
本明細書で記載される方法に従って治療される個体は、腫瘍学のために示された治療抗体のいずれか1つを受けたか、または受ける個体であってもよい。好ましくは、個体は、抗P2X7受容体抗体を受けたか、または受け続けている。
典型的には、抗原結合部位は、機能的P2X7受容体と非機能的P2X7受容体とを識別し、それによって非機能的受容体に結合するが、機能的受容体には結合しない部位である。これらの抗原結合部位の例は、E200エピトープ、E300エピトープまたは複合エピトープ、たとえば、PCT/AU2002/000061、PCT/AU2002/001204、PCT/AU2007/001540、PCT/AU2007/001541、PCT/AU2008/001364、PCT/AU2008/001365、PCT/AU2009/000869およびPCT/AU2010/001070(これらのすべては、参照により組み込まれる)におけるエピトープに結合するものである。
特異性(すなわち、P2X7受容体特異的であるか否か)にかかわらず、抗原結合部位は、抗体全体、または抗体全体の断片(たとえばFab、Fab'、F(ab')2およびFv、一本鎖Fvまたは単一の可変ドメイン)の形態をとり得る。
抗原結合部位は、同系(syngeneic)であっても、同種異系(allogeneic)であっても、または異種(xenogeneic)であってもよい。
典型的には、抗原結合部位は、非自己または外来性であり、これは、本発明の方法に従って治療される個体の外で見出されたか、または単離されたことを意味する。
抗原結合部位は、親和性成熟され得る。
抗原結合部位は、多重特異性または多結合価を有し得る。
抗原結合部位は、選択された方法による投与に適合するように、適応させ得る。
この抗体は、任意のアイソタイプの全体抗体であってもよい。この抗体は、モノクローナルまたはポリクローナルの抗血清から得られる抗体であってもよい。この抗体は、ハイブリドーマによってか、もしくは組換え発現によって産生され得るか、またはたとえば哺乳動物、特にヒトもしくはマウスから得られ得る血清から得られ得る。抗体は、また、トリからも得られ得る。
抗体は、キメラ抗体、すなわちヒト可変ドメインおよび非ヒト定常ドメインを含む抗体であってもよい。その代わりに、これは、ヒト化抗体、すなわち、ヒト抗体フレームワーク上に非ヒトCDRをグラフトすることによって形成される抗体であってもよい。さらに、抗体は、完全なヒト抗体であってもよい。
抗体は、たとえば、癌の治療において抗体の有効性を増強するように、エフェクター機能に関して修飾され得る。
抗体が抗体断片である場合、この抗体断片は、dAb、Fab、Fd、Fv、F(ab')2、scFvおよびCDRから成る群から選択される。
投薬量、投薬頻度、投与経路などが、以下に詳細に記載される。
抗体を調製し、そしてそれを必要とする対象に投与する方法は、当業者に周知であるか、または、当業者によって容易に決定される。投与経路は、たとえば、経口経路、非経口(たとえば、静脈内、動脈内、腹腔内、筋肉内、皮下、皮内、直腸内または膣内)経路であっても、吸入または局所によってもよい。投与のための1つの形態は、注射用の、特に静脈内もしくは動脈内注射または点滴注入用の、緩衝剤(たとえば酢酸、リン酸、またはクエン酸緩衝剤)、界面活性剤(たとえばポリソルベート)、任意選択で安定剤(たとえばヒトアルブミン)などを含む、液剤となるであろう。他の方法において、抗体は、直接的に疾患の部位に送達されて、疾患細胞または疾患組織の抗体への曝露を増大し得る。
非経口投与用の調製物は、滅菌水性水剤(水性のキャリヤーは、生理食塩水および緩衝培地を含む、水、アルコール性/水性水剤、乳剤、または懸濁剤を含む)または非水性水剤(非水性溶媒は、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、オリーブオイルなどのような植物油、およびオレイン酸エチルなどのような注射用有機酸エステルである)、懸濁剤、および乳剤を含む。薬学的に許容されるキャリヤーは、0.01〜0.1M、好ましくは0.05Mリン酸緩衝剤または0.9%生理食塩水を含む。他の一般的な非経口ビヒクルは、リン酸ナトリウム溶液、リンゲルデキストロース、デキストロースおよび塩化ナトリウム、乳酸リンゲル、または不揮発性油を含む。静脈内ビヒクルは、体液および栄養素の補充物、リンゲルデキストロースをベースとするものなどのような電解質補充物、ならびにその他同種のものを含む。たとえば抗菌剤、酸化防止剤、キレート剤、および不活性ガスならびにその他同種のものなどのような保存剤ならびに他の添加剤も存在してもよい。
特に、注射用の使用に適した医薬組成物は、滅菌注射用溶液または分散液の即時の調製のために、滅菌水性溶液(水溶性の場合)または分散液および滅菌粉末剤を含み、そのような場合、組成物は、滅菌されていなければならず、容易な注射性能(syringability)が存在する程度まで流動性であるべきである。それは、製造および保管の条件下で安定しているべきであり、好ましくは、細菌および菌類などのような微生物の混入作用に対して保護されるであろう。キャリヤーは、たとえば水、エタノール、ポリオール(たとえばグリセロール、プロピレングリコール、および液体ポリエチレングリコールならびにその他同種のもの)、ならびにその適した混合物を含有する溶媒または分散媒とすることができる。適切な流動性は、たとえば、レシチンなどのようなコーティングの使用によって、分散液の場合に必要とされる粒径の維持によって、および界面活性剤の使用によって、維持することができる。本明細書において開示される治療用の方法における使用のための適した製剤は、Remington's Pharmaceutical Sciences、Mack Publishing Co.、第16版(1980年)において記載される。
微生物の作用の予防は、様々な抗菌剤および抗真菌剤、たとえばパラベン、クロロブタノール、フェノール、アスコルビン酸、チメロサール、ならびにその他同種のものによって達成することができる。多くの場合では、組成物中に、等張剤、たとえば糖、マンニトール、ソルビトールなどのような多価アルコールまたは塩化ナトリウムを含むことは好ましいであろう。注射用組成物の吸収の延長は、組成物中に吸収を遅らせる作用物質、たとえばモノステアリン酸アルミニウムおよびゼラチンを含むことによって、もたらすことができる。
いずれの場合も、滅菌注射用溶液は、必要に応じて、本明細書において列挙される成分の1つまたはその組み合わせを有する適切な溶媒中に、必要とされる量の活性化合物(たとえば抗原結合部位)を組み込み、その後にろ過滅菌を続けることによって、調製することができる。一般に、分散液は、基本的な分散媒および上記に列挙されるものからの必要とされる他の成分を含有する滅菌ビヒクルの中に活性化合物を組み込むことによって調製される。滅菌注射用溶液の調製のための滅菌粉末剤の場合には、調製のための好ましい方法は、真空乾燥、凍結乾燥および噴霧乾燥であり、これにより、先に滅菌ろ過された溶液から活性成分および任意のさらなる所望の成分の粉末剤がもたらされる。注射用の調製物は、処理され、アンプル、バッグ、ボトル、注射器、またはバイアルなどのような容器の中に充填され、当技術分野において知られている方法によって無菌条件下で密閉される。さらに、調製物は、キットの形態でパッケージされ、売られてもよい。そのような製品は、好ましくは、関連する組成物が、障害に罹患しているまたはそれにかかかりやすい対象を治療するのに有用であることを示す標識または添付文書を有するであろう。
本明細書において記載される障害の治療のための、本発明の組成物の有効な用量は、投与の手段、標的部位、患者の生理的な状態、患者がヒトであるか動物であるかどうか、投与される他の医薬品、および治療が予防的なものか治療用のものかどうかを含む様々な因子に依存して異なる。治療投薬量は、安全性および効能を最適化するために、当業者らに知られているルーチン的な方法を使用して用量設定されてもよい。
抗体を用いるある種の障害の治療のために、投薬量は、たとえば、宿主体重の約0.0001〜100mg/kg、より普通では、0.01〜5mg/kg(たとえば0.02mg/kg、0.25mg/kg、0.5mg/kg、0.75mg/kg、1mg/kg、2mg/kgなど)の範囲とすることができる。たとえば、投薬量は、1mg/kg体重または10mg/kg体重または1〜10mg/kgの範囲内、好ましくは少なくとも1mg/kgとすることができる。上記の範囲における中間の用量もまた、本発明の範囲内であることが意図される。対象は、そのような用量を、毎日、二日に1回、毎週、または実験による分析によって決定される任意の他のスケジュールに従って投与することができる。例示的な治療は、長期間にわたる、たとえば少なくとも6カ月の複数回の投薬量の投与を要する。さらなる例示的な治療プログラムは、2週間ごとに一度または月に一度または3〜6カ月ごとに一度、投与を要する。例示的な投薬スケジュールは、連日で1〜10mg/kgもしくは15mg/kg、隔日で30mg/kg、または毎週60mg/kgを含む。いくつかの方法では、異なる結合特異性を有する2つ以上の抗原結合部位が、同時に投与され、この場合には、投与されるそれぞれの抗原結合部位の投薬量は、示される範囲内にある。
細胞上で発現される非機能的P2X7受容体に結合する抗体は、複数回投与することができる。1回の投薬量の間の間隔は、毎週、毎月、または毎年とすることができる。間隔はまた、患者における標的ポリペプチドまたは標的分子の血液レベルの測定によって示されるように、不規則とすることができる。いくつかの方法では、投薬量は、1〜1000μg/mL、いくつかの方法では25〜300μg/mLの血漿ポリペプチド濃度を達成するために調節される。その代わりに、抗体は、徐放性製剤として投与することができ、この場合には、それほど頻繁ではない投与が必要とされる。投薬量および頻度は、患者における抗体の半減期に依存して異なる。抗体の半減期はまた、安定したポリペプチドまたは成分、たとえばアルブミンまたはPEGへの融合を介して延長することができる。一般に、ヒト化抗体は、最長の半減期を示し、キメラ抗体および非ヒト抗体が後に続く。一実施形態では、抗体は、非コンジュゲート形態で投与することができる。別の実施形態では、抗体は、コンジュゲート形態で複数回投与することができる。特定の治療用途において、比較的短い間隔での比較的高い投薬量(たとえば、用量当たりの400mg/kgまでの抗P2X7結合分子、たとえば抗体)は、疾患の進行が低下するかまたは終結するまで、好ましくは患者が疾患の症状の部分的または完全な緩和を示すまで、時に必要とされる。この量は、抗体が放射性同位体または細胞毒性薬物とコンジュゲートされた場合、数桁(several logs)低く(すなわち、2〜3桁(2 to 3 logs)低く)なってもよい。
治療剤は、予防的および/または治療的治療のために、非経口、局所的、静脈内、経口、皮下、動脈内、頭蓋内、腹腔内、鼻腔内、または筋肉内の手段によって投与することができ、いくつかの方法では、作用物質は、非機能的P2X7受容体細胞が蓄積している特定の組織の中に直接注射される、たとえば、頭蓋内注射される。筋肉内注射または静脈内注入が、抗体の投与のために好ましい。
抗体は、任意選択で、治療(たとえば、予防的または治療的)の必要がある障害または状態を治療するのに有効な他の作用物質と組み合せて投与することができる。例は、腫瘍学において、化学療法または放射線療法のために一般に使用される作用物質である。さらに、またはその代わりに、この抗体または作用物質は、腫瘍または組織の切除または除去のための外科的介入の前、その間、またはその後に投与され得る。
免疫原および免疫応答の形成
本明細書で記載される本発明の方法は、治療される個体におけるP2X7受容体、特に非機能的P2X7受容体に対する免疫応答の形成を必要とする。一般に、この目的のために使用される免疫原は、非機能的P2X7受容体に対する免疫応答を惹起するが、機能的P2X7受容体に対する応答は惹起しない免疫原である。
免疫原は、P2X7受容体の配列を含むペプチドを含むか、またはこのペプチドから成るものでもよい。このペプチドは、主要組織適合複合体クラスII分子上に提示され得るか、またはB細胞受容体もしくはB細胞膜結合免疫グロブリンと相互作用できる、少なくとも1つの配列を含み得る。典型的には、このペプチドは、ヒトP2X7受容体またはその断片の配列を含む。
ペプチド免疫原の範囲は、公知であり、PCT/AU2002/000061、PCT/AU2002/000061、PCT/AU2008/001364およびPCT/AU2009/000869において議論されており、これらの内容は、その全体が組み込まれる。
非機能的P2X7受容体に対する免疫応答を生成するためのエピトープを含むこれらの明細書内の例示的ペプチド免疫原は、以下に記載される。
これらは、本明細書で記載される本発明の方法に従う免疫応答を形成するために有用である潜在的免疫原の単なる例にすぎないことが理解されるであろう。さらに、本発明は、これらの出願において記載されるように、非機能的P2X7受容体に対する免疫応答を形成するために有用な他のペプチドの使用を含む。
典型的に、免疫化レジメンは、2回以上の免疫化を含む。第1の免疫化において、目的は、免疫化に対するIgM応答を発生させることであり得る。第2の免疫化は、IgG応答を発生させるためであり得る。さらなる免疫化は、さらに以下に議論されるように、IgG応答をブーストするためであり得る。
免疫原がペプチドである場合、このペプチドは、投与当たり約0.1〜1mg、好ましくは約0.25〜0.75mg、好ましくは約0.5mgの量で提供され得る。
約0.3mgのペプチドのさらなる投与が、ブーストとして適用され得る。
一実施形態では、第1の免疫化は、抗体免疫療法のために投与された抗原結合部位の循環レベルが実質的に検出不能であるときに実施される。言い換えると、関連する癌バイオマーカーに対する循環抗体は、末梢血液中に検出することができない。次いで、IgM産生のレベルが、以後数週間にわたってモニターされる。第1の免疫化の約4〜5週間後、IgM抗体のレベルは、おそらく無視できる循環レベルにまで下がっている。この時点で、第2の免疫化が次いで実施され、IgG産生のレベルが、以後数週間にわたってモニターされる。
ブーストの後、産生された抗体のレベルは、0.1〜25mg/kg、たとえば0.1〜10mg/kg、好ましくは5mg/kg、または10〜25mg/kg、好ましくは15mg/kgおよび10mg/kgを超えてもよい。この量が循環中に検出されるか否かは、既存の腫瘍塊が存在するか否かに依存する。体液性応答によって形成された抗体に対して結合可能な既存の腫瘍塊が存在する場合、循環中に検出された抗体のレベルは、この範囲の下限であるか、この範囲の下限を実際に外れる(すなわち、0.1mg/kg未満である)か、さもなければ実質的に検出不能であり得る。検出可能な腫瘍塊が存在しない場合、体液性応答から形成された抗体のレベルは、この範囲の上限であってもよいが、ある実施形態では、このような状況において、約5mg/kgの量の抗体が十分であり得る。以後数カ月/数年にわたって免疫のさらなる試験が実施されてもよく、免疫化のブーストが、必要な場合に提供されてもよい。
ブーストの程度または回数は、患者の状態および応答に依存し得る。スキャンまたは遊離循環抗体の欠如が、現存する腫瘍量の指標である場合、ブーストは、免疫系の十分な反応を保証するために、理想的には毎月行われ得る。血清中の抗体の遊離レベルが上がった場合、ブーストを減らしてもよく、おそらく、毎月6〜12カ月の臨床観察が適用される。
上で議論されたように、免疫応答は、抗体免疫療法によって標的化されているバイオマーカーとは異なるバイオマーカーを標的化し得る。たとえば、抗CD20抗体が、抗体免疫療法のために使用され、非機能的P2X7免疫原が、免疫応答を生成するために使用されてもよい。
別の実施形態では、単一のバイオマーカーが、抗体免疫療法および免疫化によって標的化される。たとえば、P2X7受容体上の1つのエピトープ(たとえば、E300エピトープ)に向けられたモノクローナル抗体が、抗体免疫療法のために使用されてもよく、P2X7上の異なるエピトープ(たとえば、E200エピトープ)を標的化する免疫応答を形成するための免疫原が、免疫化のために使用されてもよい。
本明細書の本発明の方法における使用のためのペプチド免疫原は、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25または26残基長を有し得る。
一実施形態では、本発明の方法に従う免疫応答を形成するための免疫原は、Pro210をシスコンホメーションで有しても有さなくてもよいP2X7受容体の配列を有するペプチドである。
免疫原は、P2X7細胞外ドメインまたはP2X7アイソフォームの任意の1つもしくは複数の形態であってもよい。免疫原は、可溶性形態で、または細胞膜、ビーズもしくは他の表面などの固相と一緒に、投与のために提供され得る。
本明細書の本発明の方法に従って免疫応答を形成するための免疫原として使用され得るペプチドをスクリーニングするための方法が、本明細書で開示される。一例としては、ロゼット形成アッセイにおける赤血球の使用が挙げられる。このアッセイにおいて、機能的受容体に結合する抗体が、ロゼットが観察される陽性対照として使用される。試験抗体は、ロゼットを形成しない場合に、機能的受容体に結合しないと決定される。本明細書で議論されるものを含めて非機能的受容体発現細胞株に結合することが観察された場合、非機能的受容体に結合することが決定される。
本発明のペプチドは、固相合成および組換えDNA技術を含む、当技術分野で公知のあらゆる技術によって、作製され得る。
当技術分野で公知であるように、キャリヤーは、ペプチドエピトープにコンジュゲートして、それによって免疫原性を増強し得る物質である。いくつかのキャリヤーは、多数のペプチドに結合することによってこれを行い、宿主に対し増加した分子量の抗原を提供して、ここで、免疫応答が発生させられる。
好ましいキャリヤーとしては、細菌性毒素またはトキソイドが挙げられる。他の好適なキャリヤーとしては、髄膜炎菌(N. meningitides)外膜タンパク質、ウシ血清アルブミンなどのアルブミン、合成ペプチド、熱ショックタンパク質、KLH、百日咳タンパク質、インフルエンザ菌(H. influenza)由来のタンパク質DおよびC.ディフィシル(C. difficile)由来の毒素A、BまたはCが挙げられる。
キャリヤーが細菌性毒素またはトキソイドである場合、ジフテリアトキソイドまたは破傷風トキソイドが、好ましい。
好ましくは、キャリヤーは、本発明のペプチドと反応し得る官能基を含むか、またはこのペプチドと反応できるように修飾されていてもよい。
免疫原は、皮下に、皮内に、および/または筋肉内に投与され得る。
アジュバント
好ましい形態において、本明細書で記載される本発明の方法における使用のための、P2X7受容体に対する免疫応答を形成するための組成物は、免疫応答を強化するためのアジュバントまたは化合物を含む。
多数のアジュバントが、公知である;Allison(1998年、Dev. Biol. Stand.、92:3〜11頁;参照により本明細書に組み込まれる)、Unkelessら(1998年、Annu. Rev. Immunol.、 6:251〜281頁)およびPhillipsら(1992年、Vaccine、10:151〜158頁)も参照されたい。本発明に従って利用され得る例示的なアジュバントとしては、以下が挙げられるが、これらに限定されない:サイトカイン、アルミニウム塩(たとえば、水酸化アルミニウム、リン酸アルミニウムなど;Baylorら、Vaccine、20:S18頁2002年)、ゲルタイプアジュバント(たとえば、リン酸カルシウムなど);微生物アジュバント(たとえば、CpGモチーフを含む免疫調整DNA配列;モノホスホリル脂質Aなどの内毒素(Ribiら、1986年、Immunology and Immunopharmacology of bacterial endotoxins、Plenum Publ. Corp., NY、407頁、1986年);コレラ毒素、大腸菌(E. coli)熱不安定性毒素および百日咳毒素などの外毒素;ムラミルジペプチドなど);油乳剤および乳化剤ベースのアジュバント(たとえば、フロイントアジュバント、MF59 [Novartis]、SAFなど);微粒子アジュバント(たとえば、リポソーム、生分解性ミクロスフィアなど);合成アジュバント(たとえば、非イオン性ブロックコポリマー、ムラミルペプチドアナログ、ポリホスファゼン、合成ポリヌクレオチドなど);および/またはこれらの組み合わせ。他の例示的なアジュバントとしては、以下が挙げられる:いくつかのポリマー(たとえば、ポリホスファゼン;米国特許第5,500,161号に記載される)、Q57、サポニン(たとえば、QS21、Ghochikyanら、Vaccine、24:2275頁、2006年)、スクアレン、テトラクロロデカオキシド、CPG 7909(Cooperら、Vaccine、22:3136頁、2004年)、ポリ[ジ(カルボキシラトフェノキシ)ホスファゼン](PCCP;Payneら、Vaccine、16:92頁、1998年)、インターフェロン-γ(Caoら、Vaccine、10:238頁、1992年)、ブロックコポリマーP1205(CRL1005;Katzら、Vaccine、18:2177頁、2000年)、インターロイキン-2(IL-2;Mbwuikeら、Vaccine、8:347頁、1990年)、ポリメチルメタクリレート(PMMA;Kreuterら、J. Pharm. ScL、70:367頁、1981年)など。
一実施形態では、P2X7受容体の配列を含むペプチド免疫原が、本明細書で記載される本発明の方法に従う個体の免疫化のためのバクテリオファージの表面上に提示される。
癌およびそれと関連する状態
新生物発生前、新生物および転移疾患は、本発明の方法が適用されてもよい特定の例である。広範囲の例として、乳房腫瘍、直腸結腸腫瘍、腺癌、中皮腫、膀胱腫瘍、前立腺腫瘍、胚細胞腫瘍、肝癌/胆管、癌腫、神経内分泌腫瘍、下垂体新生物、小円形細胞腫瘍、扁平上皮癌、黒色腫、非定型的線維黄色腫、セミノーマ、非セミノーマ、間質ライディッヒ細胞腫(stromal leydig cell tumor)、セルトリ細胞腫、皮膚腫瘍、腎腫瘍、精巣腫瘍、脳腫瘍、卵巣腫瘍、胃腫瘍、口腔腫瘍、膀胱腫瘍、骨腫瘍、頸部腫瘍、食道腫瘍、喉頭の腫瘍、肝臓腫瘍、肺腫瘍、腟腫瘍、およびウィルムス腫瘍を含む。
特定の癌の例は、腺癌、腺腫、腺線維腫、腺リンパ腫、歯牙腫、AIDS関連癌、聴神経腫、急性リンパ性白血病、急性骨髄性白血病、腺嚢癌腫、副腎皮質癌、特発性骨髄化生、脱毛、胞状軟部肉種、アダマンチノーム、被角血管腫、好酸球増多随伴性血管類リンパ組織増殖症、硬化性血管腫(angioma sclerosing)、血管腫症、アプドーマ、肛門癌、血管肉腫、再生不良性貧血、星細胞腫、毛細血管拡張性運動失調、基底細胞癌(皮膚)、膀胱癌、骨癌、腸癌、脳幹神経膠腫、脳およびCNSの腫瘍、乳癌、鰓腫、CNS腫瘍、カルチノイド腫瘍、子宮頸癌、小児脳腫瘍、小児癌、小児白血病、小児軟部組織肉腫、軟骨肉腫、絨毛膜癌、慢性リンパ性白血病、慢性骨髄性白血病、結腸直腸癌、皮膚T細胞リンパ腫、癌腫(たとえばウォーカー、基底細胞、基底扁平細胞、ブラウン-ピアース、腺管、エールリッヒ腫瘍、クレブス2、メルケル細胞、粘液性、非小細胞肺、燕麦細胞、乳頭、硬性、細気管支、気管支原性、扁平上皮細胞、および移行細胞)、癌肉腫、子宮頚部形成異常、葉状嚢肉腫、セメント質腫、脊索腫、分離腫、軟骨肉腫、軟骨芽細胞腫、頭蓋咽頭腫、胆管腫、真珠腫、円柱腫、嚢胞腺癌、嚢腺腫、隆起性皮膚線維肉腫、線維形成性小円形細胞腫瘍、腺管癌、未分化胚細胞腫、内分泌がん、子宮内膜癌、脳室上衣細胞腫、食道癌、ユーイング肉腫、肝外胆管癌、眼癌、眼:黒色腫、網膜芽細胞腫、卵管癌、ファンコニー貧血、線維腫、線維肉腫、胆嚢癌、胃癌、胃腸癌、消化管カルチノイド腫瘍、尿生殖器癌、胚細胞腫瘍、妊娠性絨毛疾患、神経膠腫、婦人科医学の癌、巨細胞腫、神経節腫、神経膠腫、グロームス血管腫、顆粒膜細胞腫、男女性胚細胞腫、血液学的悪性疾患、ヘアリーセル白血病、頭頸部癌、肝細胞癌、遺伝性乳癌、組織球症、ホジキン病、ヒトパピローマウイルス、胞状奇胎、高カルシウム血症、下咽頭癌、過誤腫、血管内皮細胞腫、血管腫、血管周囲細胞腫、血管肉腫、血管肉腫、組織球の障害、組織球症の悪性腫瘍、組織球腫、肝癌、汗腺腫、軟骨肉腫、免疫増殖性小、オポマ(opoma)、眼球内黒色腫、膵島細胞癌、カポジ肉腫、腎臓癌、ランゲルハンス細胞組織球症、喉頭癌、平滑筋肉腫、白血病、リー-フラウメニ症候群、口唇癌、脂肪肉腫、肝臓癌、肺癌、リンパ浮腫、リンパ腫、ホジキンリンパ腫、非ホジキンリンパ腫、平滑筋肉腫、白血病(たとえばb-細胞、混合細胞、ヌル細胞、t-細胞、t-細胞慢性、htlv-ii関連、リンパ管肉腫、リンパ球急性、リンパ球慢性、肥満細胞、および骨髄性)、白血肉腫、ライディッヒ細胞腫、脂肪肉腫、平滑筋腫、平滑筋肉腫、リンパ管腫、リンパ管細胞腫(lymphangiocytoma)、リンパ管腫、リンパ管筋腫、リンパ管肉腫、男性乳房癌、腎臓の悪性ラブドイド腫瘍、髄芽細胞腫、黒色腫、メルケル細胞癌、中皮腫、転移癌、口腔癌、多発性内分泌新生物、菌状息肉腫、骨髄異形成症候群、骨髄腫、骨髄増殖性障害、悪性カルチノイド症候群カルチノイド心疾患、髄芽細胞腫、髄膜腫、黒色腫、間葉細胞腫、中腎腫、中皮腫、横紋筋芽細胞腫、筋腫、筋肉腫、粘液腫、粘液肉腫、鼻腔癌、上咽頭癌、腎芽細胞腫、神経芽腫、神経線維腫症、ナイミーヘン染色体不安定症候群、非黒色腫皮膚癌、肺非小細胞癌-(nsclc)、神経鞘腫、神経芽腫、神経上皮腫、神経線維腫症、神経線維腫、神経腫、新生物(たとえば骨、乳房、消化器系、結腸直腸、肝臓)、眼癌、食道癌、口腔癌、口腔咽頭癌、骨肉腫、オストミー卵巣癌(ostomy ovarian cancer)、膵癌、副鼻腔癌、副甲状腺癌、耳下腺癌、陰茎癌、末梢性神経外胚葉性腫瘍、下垂体癌、真性赤血球増加症、前立腺癌、骨腫、骨肉腫、卵巣癌、乳頭腫、パラガングリオーマ、非クロム親和性パラガングリオーマ、松果体腫、形質細胞腫、プロト癌遺伝子、まれな癌および関連する障害、腎細胞癌、網膜芽細胞腫、横紋筋肉腫、ロートムンド-トムソン症候群、網内症、横紋筋腫、唾液腺癌、肉腫、シュワン細胞腫、セザリー症候群、皮膚癌、肺小細胞癌(sclc)、小腸癌、軟部組織肉腫、脊髄腫瘍、扁平上皮癌-(皮膚)、胃癌、滑膜肉腫、肉腫(たとえばユーイング実験肉腫、カポジ、および肥満細胞肉腫)、セルトリ細胞腫、滑液膜腫、精巣癌、胸腺癌、甲状腺癌、移行細胞癌-(膀胱)、移行細胞癌(腎盤-/-尿管)、栄養膜癌、奇形腫、卵胞膜細胞腫、胸腺腫、栄養膜腫瘍、尿道癌、尿路系癌、ウロプラキン、子宮肉腫、子宮癌、膣癌、外陰癌、ヴァルデンストレームマクログロブリン血症、およびヴィルムス腫瘍を含むが、これらに限定されない。
キット
別の実施形態では、以下を含むキットまたは製品が提供される:
-P2X7受容体、好ましくは非機能的P2X7受容体と反応性である免疫グロブリン可変ドメイン、抗体、dAb、Fab、Fd、Fv、F(ab')2、scFvまたはCDRの形態である抗原結合部位;
-非機能的P2X7受容体に対する免疫応答を生成するための免疫原;および
-本明細書で記載される方法における使用のための指示を有するラベルまたはパッケージ挿入物。
(実施例)
(実施例1)
CML患者における免疫応答の誘導
材料および方法
ペプチド
ペプチド免疫原は、GHNYTTRNILPGLNITCの形態で高純度に合成され、これに、架橋剤マレイミドカプロイル-N-ヒドロキシスクシンイミド(MCS)が、C末端Cys残基において加えられた。このペプチドは、キャリヤータンパク質、キーホールリンペットヘモシアニン(KLH)に架橋され、その結果、ペプチドの総ペプチド-タンパク質コンジュゲートに対する平均百分率は、40%であった。同様にKLHにコンジュゲートされたこのペプチドまたは代替のペプチドGHNYTTRNILPGAGAKYYKENNVEKC(配列番号6)が、一次および複合の選択的エピトープ標的を構成し、それらは、それぞれ、ネイティブの受容体から作製されるnfP2X7受容体の区別を可能にした。
アジュバント
ヒト免疫化において一般に使用される許可されたアジュバントであるImject Alum(水酸化アルミニウムおよび水酸化マグネシウムならびに不活性安定化剤のゲル状水性処方物から成る)が、使用された。ペプチド-タンパク質コンジュゲートを、2.5mg/mLコンジュゲート(1mg/mLペプチド)の濃度で、十分に混合しながら、アジュバント中に滴下して、0.5mLに等しい量コンジュゲートを加え、0.5mgの標的ペプチドエピトープを含有する0.75mLアジュバントにした。
免疫化
免疫化スケジュールは、総量で0.5mgペプチドの初回接種(2回の皮下注射および2回の筋肉内注射)およびその1カ月後の同じ方法で0.3mgペプチドにより適用されたブーストから成った。血清試料を、注射直前および注射1週間後に採取した。接種は、理想的には、抗nfP2X7抗体の最終注入後1カ月以上あけて投与されて、残留の特異的抗nfP2X7抗体注入剤による免疫原の滞留がないことを確実にする。
ELISA
特異的抗nfP2X7抗体応答を、ELISAによって測定した。簡潔には、ELISAプレートを、上記抗体応答がそれに対して産生されたペプチド以外の裸であるかまたはキャリヤーにコンジュゲートしたかのいずれかの特異的標的ペプチドエピトープによってコートし、この上に、患者血清を、低くなっていく濃度で添加する。洗浄後、適切な二次抗ヒト抗体(抗IgMまたは抗IgG型)を添加して、患者血清中にIgMまたはIgGの形態で存在する特異的ヒト抗nfP2X7抗体の濃度を検出し、そして決定した。
接種後、検出可能なIgGはないが、少量のIgMが検出される。ブーストの後、IgM濃度は0基線に戻り、一方で、IgGは、nfP2X7受容体シンクが現存する腫瘍上に存在しなければ、元のIgMより高い濃度で産生される。抗nfP2X7免疫療法または代替の療法によって元の腫瘍がクリアランスされた患者において、このようなシンクの不在下で、特異的内因性抗nfP2X7抗体の明らかな集団が、血清中に、5mg/kgのオーダーで検出される。
本明細書において、開示されそして定義された本発明は、言及されたかまたは文章もしくは図面から明白である個々の特徴の2つ以上のすべての代替の組み合わせまで拡大されることが理解されるであろう。これらの異なる組み合わせのすべては、本発明の種々の代替的態様を構成する。

Claims (11)

  1. 個体において癌の進行を最小化するための医薬の製造における、アポトーシス孔を形成することができないP2X7受容体またはその単量体または断片の使用であって、前記個体における前記癌が、前記医薬の投与の前に、サイズ、質量または他の物理的測定値において低減されている、使用。
  2. 前記個体は、循環中に検出可能な非自己抗体またはその抗原結合断片を有しない、請求項1に記載の使用。
  3. 前記個体は、検出可能な癌を有しない、請求項1または2に記載の使用。
  4. P2X7受容体または前記個体においてP2X7受容体に対する免疫応答を誘導することができるP2X7受容体の断片の形態で免疫原を前記個体内に提供することによって、免疫応答が形成される、請求項1から3のいずれか一項に記載の使用。
  5. 前記P2X7受容体の断片が、配列番号2、3および4からなる群から選択されるアミノ酸配列を有する、請求項4に記載の使用。
  6. 前記免疫原は、前記個体に対する初回投与において提供され、それによって、前記個体におけるIgM産生を含む応答を形成する、請求項4または5に記載の使用。
  7. 前記免疫原は、前記個体に対する初回投与において提供され、それによって、IgM産生を含む応答を形成し、後の時点で、前記初回投与に対するさらなる投与において提供され、それによって、IgG産生を含む応答を形成する、請求項4または5に記載の使用。
  8. 癌に対する療法を受けた個体において癌関連P2X7受容体に対する体液性および/または細胞性免疫応答を形成するための医薬の製造における癌関連P2X7受容体またはその断片の形態の免疫原の使用であって、
    癌関連P2X7受容体に対する前記体液性免疫応答は、癌関連P2X7受容体に対して前記個体において形成される抗体の量が約0.1〜25mg/kg個体である免疫化スケジュールに従って、形成され、
    前記個体における前記癌が、前記医薬の投与の前に、サイズ、質量または他の物理的測定値において低減されている、使用。
  9. 前記P2X7受容体の断片が、配列番号2、3および4からなる群から選択されるアミノ酸配列を有する、請求項8に記載の使用。
  10. 前記癌が、腺癌、腺腫、腺線維腫、腺リンパ腫、歯牙腫、AIDS関連癌、聴神経腫、急性リンパ性白血病、急性骨髄性白血病、腺嚢癌腫、副腎皮質癌、胞状軟部肉種、エナメル上皮腫、被角血管腫、好酸球増多随伴性血管類リンパ組織増殖症、硬化性血管腫(angioma sclerosing)、血管腫症、アプドーマ、肛門癌、血管肉腫、星細胞腫、基底細胞癌(皮膚)、膀胱癌、骨癌、腸癌、脳幹神経膠腫、脳およびCNSの腫瘍、乳癌、鰓腫、CNS腫瘍、カルチノイド腫瘍、子宮頸癌、小児脳腫瘍、小児癌、小児白血病、小児軟部組織肉腫、軟骨肉腫、絨毛膜癌、慢性リンパ性白血病、慢性骨髄性白血病、結腸直腸癌、皮膚T細胞リンパ腫、癌腫(たとえばウォーカー、基底細胞、基底扁平細胞、ブラウン-ピアース、腺管、エールリッヒ腫瘍、クレブス2、メルケル細胞、粘液性、非小細胞肺、燕麦細胞、乳頭、硬性、細気管支、気管支原性、扁平上皮細胞、および移行細胞)、癌肉腫、葉状嚢肉腫、セメント質腫、脊索腫、分離腫、軟骨肉腫、軟骨芽細胞腫、頭蓋咽頭腫、胆管腫、真珠腫、円柱腫、嚢胞腺癌、嚢腺腫、隆起性皮膚線維肉腫、線維形成性小円形細胞腫瘍、腺管癌、未分化胚細胞腫、内分泌がん、子宮内膜癌、脳室上衣細胞腫、食道癌、ユーイング肉腫、肝外胆管癌、眼癌、眼:黒色腫、網膜芽細胞腫、卵管癌、線維腫、線維肉腫、胆嚢癌、胃癌、胃腸癌、消化管カルチノイド腫瘍、尿生殖器癌、胚細胞腫瘍、妊娠性絨毛疾患、神経膠腫、婦人科医学の癌、巨細胞腫、神経節腫、神経膠腫、グロームス血管腫、顆粒膜細胞腫、男女性胚細胞腫、血液学的悪性疾患、ヘアリーセル白血病、頭頸部癌、肝細胞癌、遺伝性乳癌、組織球症、ホジキン病、ヒトパピローマウイルス、胞状奇胎、高カルシウム血症、下咽頭癌、過誤腫、血管内皮細胞腫、血管腫、血管周囲細胞腫、血管肉腫、血管肉腫、組織球の障害、組織球症の悪性腫瘍、組織球腫、肝癌、汗腺腫、軟骨肉腫、眼球内黒色腫、膵島細胞癌、カポジ肉腫、腎臓癌、ランゲルハンス細胞組織球症、喉頭癌、平滑筋肉腫、白血病、リー-フラウメニ症候群、口唇癌、脂肪肉腫、肝臓癌、肺癌、リンパ浮腫、リンパ腫、ホジキンリンパ腫、非ホジキンリンパ腫、平滑筋肉腫、白血病(たとえばb-細胞、混合細胞、ヌル細胞、t-細胞、t-細胞慢性、htlv-ii関連、リンパ管肉腫、リンパ球急性、リンパ球慢性、肥満細胞、および
    骨髄性)、白血肉腫、ライディッヒ細胞腫、脂肪肉腫、平滑筋腫、平滑筋肉腫、リンパ管腫、リンパ管細胞腫(lymphangiocytoma)、リンパ管腫、リンパ管筋腫、リンパ管肉腫、男性乳房癌、腎臓の悪性ラブドイド腫瘍、髄芽細胞腫、黒色腫、メルケル細胞癌、中皮腫、転移癌、口腔癌、多発性内分泌新生物、菌状息肉腫、骨髄異形成症候群、骨髄腫、骨髄増殖性障害、悪性カルチノイド症候群カルチノイド心疾患、髄芽細胞腫、髄膜腫、黒色腫、間葉細胞腫、中腎腫、中皮腫、横紋筋芽細胞腫、筋腫、筋肉腫、粘液腫、粘液肉腫、鼻腔癌、上咽頭癌、腎芽細胞腫、神経芽腫、神経線維腫症、非黒色腫皮膚癌、肺非小細胞癌-(nsclc)、神経鞘腫、神経芽腫、神経上皮腫、神経線維腫症、神経線維腫、神経腫、新生物(たとえば骨、乳房、消化器系、結腸直腸、肝臓)、眼癌、食道癌、口腔癌、口腔咽頭癌、骨肉腫、オストミー卵巣癌(ostomy ovarian cancer)、膵癌、副鼻腔癌、副甲状腺癌、耳下腺癌、陰茎癌、末梢性神経外胚葉性腫瘍、下垂体癌、前立腺癌、骨腫、骨肉腫、卵巣癌、乳頭腫、パラガングリオーマ、非クロム親和性パラガングリオーマ、松果体腫、形質細胞腫、まれな癌および関連する障害、腎細胞癌、網膜芽細胞腫、横紋筋肉腫、横紋筋腫、唾液腺癌、肉腫、シュワン細胞腫、セザリー症候群、皮膚癌、肺小細胞癌(sclc)、小腸癌、軟部組織肉腫、脊髄腫瘍、扁平上皮癌-(皮膚)、胃癌、滑膜肉腫、肉腫(たとえばユーイング実験肉腫、カポジ、および肥満細胞肉腫)、セルトリ細胞腫、滑液膜腫、精巣癌、胸腺癌、甲状腺癌、移行細胞癌-(膀胱)、移行細胞癌(腎盤-/-尿管)、栄養膜癌、奇形腫、卵胞膜細胞腫、胸腺腫、栄養膜腫瘍、尿道癌、尿路系癌、子宮肉腫、子宮癌、膣癌、外陰癌、ヴァルデンストレームマクログロブリン血症、およびヴィルムス腫瘍からなる群から選択される、請求項1から9のいずれか一項に記載の使用。
  11. サイズ、質量または他の物理的測定値において低減されている癌を有する個体における癌関連P2X7受容体に対する体液性免疫応答の形成における使用のための組成物であって、前記組成物が、癌関連P2X7受容体またはその断片の形態の免疫原を含む、組成物。
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