JP6488459B2 - フィクスチャー、インプラント - Google Patents
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Description
この歯科用インプラントは、歯槽骨に固定されるフィクスチャー(人工歯根)と、フィクスチャーに連結されるアバットメント(支台)とで構成される。アバットメントには、インプラントクラウン(人工歯冠)が装着される。
歯科用インプラント(フィクスチャー、アバットメント)は、チタンやチタン合金等の金属の他、アルミナやジルコニア等のセラミックスにより形成される。
この期間にフィクスチャーに過度な力が加わると、周囲の骨や粘膜組織に損傷を与えたり、結合が遅れたり、結合されづらくなる虞がある。このため、フィクスチャーの骨結合期間の短縮が求められている。
しかしながら、フィクスチャーには、小形化、小径化も要請されている。特に、上前歯用のインプラントでは、上顎骨(歯槽突起)の厚みが非常に薄いため、フィクスチャーの小形化、小径化が求められている。
このため、従来の手法のみでは、骨に直接触れる面(面積)をさらに拡大させることは困難である。
図1は、本発明の実施形態に係る歯科用インプラント1を示す縦断面図である。
歯科用インプラント1は、歯槽骨Hに固定されるフィクスチャー10と、フィクスチャー10に連結されるアバットメント40と、を備える。
アバットメント40には、インプラントクラウン6が装着される。インプラントクラウン6よりも根端側は、歯茎Sに覆われる。
Z方向のうち、インプラントクラウン6側を−Z方向または先端側と言う。−Z方向の端部を先端(第一端)と言う。Z方向のうち、フィクスチャー10側を+Z方向または根端側と言う。+Z方向の端部を根端(第二端)と言う。
−Z方向から見たときを上面図、+Z方向から見たときを下面図と言う。
Z方向に直行する方向を横または半径方向と言う。中心軸C周りの方向を周方向と言う。
図2と図3は、本発明の実施形態に係るフィクスチャー10を示す斜視分解図であって、図2は下面図、図3は上面図である。
図4は、フィクスチャー10を示す図であり、(a)正面図、(b)下面図、(c)IVc-IVc断面図である。
図5は、フィクスチャー10を示す図であり、(a)Va-Va断面図、(b)Vb-Vb断面図、(c)Vc-Vc断面図である。
図6は、外筒15を示す図であり、(a)上面図、(b)VIb-VIb断面図である。
図7は、内筒21(半筒形部材21L)を示す図であり、(a)正面図、(b)下面図、(c)側面図である。
図8は、蓋体31を示す図であり、(a)正面図、(b)下面図、(c)VIIIc-VIIIc断面図、(d)VIIId-VIIId断面図である。
フィクスチャー10の先端面10aには中心穴11が開口して、中心軸Cに沿って掘り込まれる。中心穴11の底面には、雌ネジ33が設けられる。
筒体13は、フィクスチャー10の外周面10cの大部分をなす円筒形部材であり、ジルコニア等のセラミックス材料により形成される。
筒体13は、円形の貫通孔14を有する。筒体13は、外径が約3.8mm、内径が約2.2mm、全長が約9.0mmである。
貫通孔14の根端には、蓋体31が配置(嵌入)される。これにより、貫通孔14の根端側が埋まり、先端側が中心穴11になる。蓋体31の先端面32aが中心穴11の底面になる。
外筒15は、円筒形部材であり、外径が約3.8mm、内径が約3.0mm、全長が約7.5mmである。
外筒15の外周面15cには、埋入用スレッドは設けられない。外筒15の外周面15cや内周面15dには、突起や溝は設けられない。
フランジ22の外周面22cは、外筒15の外周面15cと一体となって、外周面10cになる。フランジ22の先端面21aは、先端面10aになる。
本体部23の根端面21bは、外筒15の根端面15bと一体となって、根端面10bになる。
テーパー穴部(第一穴部)24は、先端側に配置されて、開口から根端側に向かって徐々に縮径する。テーパー穴部24は、テーパー角が約6°、長さ(深さ)が約1.68mmである。
ストレート穴部(第二穴部)25は、テーパー穴部24よりも根端側に配置されて、均一径に形成される。ストレート穴部25は、内径が約2.2mm、長さ(深さ)が約7.32mmである。
内周面21d(ストレート穴部25)の根端には、4つの角溝部27が設けられる。角溝部27は、横方向に向けて矩形状に掘り込まれる。4つの角溝部27は、内筒21の周方向において均等配置される。
拡径部26と角溝部27は、内筒21の周方向の同一箇所に配置される。
これにより、外筒15と内筒21の間に円筒形の内部空間P1が形成される。この内部空間P1は、筒体13の根端面(根端面15b,21b)の4箇所に開口して、フランジ22まで延びる。内筒21の根端において、拡径部26同士の間(円弧形の空間)が内部空間P1の開口P1kになる。
内部空間P1は、先端側が円筒形(環状)の空間であり、先端側が中心軸Cに対して同心配置される。内部空間P1は、根端側が4つの半筒形(樋形)の空間であり、周方向において均等配置される。内部空間P1は、縦方向の長さが約7.5mmであり、隙間(半径方向の距離)が約100μmである。隙間は、10μm以上、500μm以下が好ましい。
軸部32の先端面32aには、雌ネジ33が根端側に向かって掘り込まれる。雌ネジ33のサイズは、例えばM1.6P0.5である。先端面32aは、中心穴11の底面となり、雌ネジ33にアバットメント40が螺合する。
各爪部34の付け根(先端側)には、係止突部35がそれぞれ設けられる。係止突部35は、軸部32から横方向に向けて矩形状に突出する。4つの係止突部35は、軸部32の周方向において均等配置される。
4つの縦溝36は、蓋体31の周方向において均等配置される。縦溝36は、爪部34同士(係止突部35同士)の間に配置される。言い換えれば、縦溝36同士の間に、爪部34と係止突部35が配置される。
対向配置された縦溝36同士の距離(蓋体31の最小径)は、約1.9mmであり、ストレート穴部25の内径(約2.2mm)よりも小さい。
軸部32は、筒体13の縦方向の略中央まで至る。これにより、フィクスチャー10に不貫通の中心穴11が形成される。
係止突部35は、内筒21の角溝部27に嵌り込み、蓋体31が内筒21に対して回転不能になる。
爪部34は、筒体13の根端面に当接して拡径部26を覆い隠す。そして、爪部34同士の間に、内部空間P1の開口P1kが露出する。
内部空間P2は、4つの長棒形の空間と、円環形の空間とからなる。4つの長棒形の空間は、周方向において均等配置される。円環形の空間は、4つの長棒形の空間を結ぶように連通する。
内部空間P2は、縦方向の長さが約4.0mmであり、隙間(半径方向の距離)が約100μmである。隙間は、10μm以上、500μm以下が好ましい。
図1に示すように、アバットメント40は、軸形部材であり、ジルコニア等のセラミックス材料により形成される。
アバットメント40は、本体部41、軸部42、雄ネジ45を有する。
軸部42は、フィクスチャー10の中心穴11に嵌め込まれ、本体部41は、フィクスチャー10から露出する。本体部41に対してインプラントクラウン6が装着される。
軸部42は、テーパー軸部43、縮径軸部44、雄ネジ45を有する。
テーパー軸部43は、本体部41から+Z方向に延出する部位であり、根端側に向かって徐々に縮径する。テーパー軸部43は、外径が約2.3mm、テーパー角が約6°、長さが約2.0mmである。つまり、テーパー穴部24と略同一である。
縮径軸部44は、テーパー軸部43から+Z方向に延出する部位であり、外径が約1.9mm、長さが約2.5mmである。縮径軸部44の外径は、ストレート穴部25の内径(約2.2mm)よりも小さい。
雄ネジ45は、縮径軸部44から+Z方向に延出する。雄ネジ45のサイズは、例えばM1.6P0.5である。つまり、雌ネジ33と同一サイズである。
これにより、縮径軸部44とストレート穴部25の間に円筒形の内部空間P3が形成される。この内部空間P3は、円筒形(環状)の空間であり、中心軸Cに対して同心配置される。内部空間P3は、中心穴11の底面(先端面32a)からテーパー穴部24の根端(フランジ22の近傍)まで延びる。
内部空間P3は、4つの縦溝36が連通する。つまり、内部空間P3は、内部空間P2を介して筒体13の根端面に開口する。
内部空間P3は、縦方向の長さが約3.0mmであり、隙間(半径方向の距離)が約100μmである。隙間は、10μm以上、500μm以下が好ましい。
図9は、マウント部材80を連結したフィクスチャー10を示す縦断面図である。
図10は、カバー部材90を連結したフィクスチャー10を示す縦断面図である。
マウント部材80は、フィクスチャー10の組立時から歯槽骨Hへの埋入時までの間に用いられる。カバー部材(連結部材)90は、フィクスチャー10の歯槽骨Hへの埋入時からアバットメント40の装着時までの間に用いられる。
フランジ81は、フィクスチャー10の先端面10aに当接する部位である。
グリップ83は、不図示の治具により把持される部位である。グリップ83の形状は、任意である。このグリップ83を専用治具(不図示)で把持することにより、フィクスチャー10を歯槽骨Hに形成した穴に埋入できる。また、マウント部材80に回転力を付与できる。
フランジ91は、フィクスチャー10の先端面10aに当接する部位である。
六角穴93に専用治具(不図示)を挿入することにより、カバー部材90に回転力を付与できる。
図11および図12は、生体組織密着面51をSEMで撮影した写真であって、(a)拡大率200倍、(b)拡大率500倍、(c)拡大率2000倍、(d)拡大率5000倍、(e)拡大率10000倍である。
図13は、小腸の微絨毛を示す参考写真である。
図14は、従来のフィクスチャーの外表面をSEM(拡大率2000倍)で撮影した写真であって、(a)A社製品、(b)B社製品、(c)C社製品、(d)D社製品である。
生体組織密着面50は、フィクスチャー10の外表面10Hに形成される。フィクスチャー10の外表面10Hは、外周面10c、先端面10a、根端面10bである。外周面10cは、外周面15c、外周面22cからなる。先端面10aは、先端面21aからなる。根端面10bは、根端面15b、根端面21b、蓋外面31bからなる。
つまり、生体組織密着面50は、外周面15c、根端面15b、外周面22c、先端面21a、根端面21b、蓋外面31bに、それぞれ形成される。
フィクスチャー10は、歯槽骨Hのみならず、歯槽骨Hの周囲の粘膜組織(軟部組織)にも密着する。具体的には、先端面10a(先端面21a)が歯茎Sに密着する。
このため、フィクスチャー10は、軟部組織との癒着性(親和性)も重要になる。フィクスチャー10は、歯茎Sとの癒着が低いと、歯茎Sに炎症が発生して歯茎Sが退縮したり、歯槽骨Hが減少(骨吸収:bone resorption)したりする。したがって、フィクスチャー10と歯茎Sの癒着性(軟部組織癒着性)を高めて、細菌の侵入を阻止(封鎖)する必要がある。
生体組織密着面51には、指頭形状を有する絨毛体55が多数形成される。指頭形状とは、指先の様に、先端が丸い形状(半球形状)を意味する。つまり、絨毛体55は、先端が球状の突起を有する。
絨毛体55は、先端の外径(直径)がナノメートルサイズ(ナノメートルオーダー、ナノメートルスケール、ナノメートルクラスと呼ばれることもある。)に形成される。つまり、絨毛体55の先端径は、1nm以上、1000nm未満である。
絨毛体55の先端径は、例えば50nm以上、500nm未満である。さらには、例えば100nm以上、300nm未満である。
図13に示すように、小腸には、絨毛の表面にさらに多数の微絨毛(microvillus)が存在する。絨毛および微絨毛は、指頭形状を有する。微絨毛の先端径は、1μm未満である。絨毛・微絨毛によって表面積が著しく増大し、吸収や結合などが効率的、効果的に行われている。
これらの外表面には、細孔が多数形成され、さらにこの細孔の周囲に先端が尖った形状を有する突起が多数形成されている。従来のフィクスチャーの外表面は、三次元粗さSaが2μm以上である。
しかし、従来のフィクスチャーの外表面のいずれにも、先端が丸い形状を有する突起(指頭形状の絨毛体)は見当たらない。
大溝(第二溝)70は、幅が10μm以上、500μm以下であり、並列に配置される。大溝70は、幅が例えば20μm以上、100μm以下である。さらには、例えば30μm以上、50μm以下である。
大溝70は、深さが5μm以上、500μm以下である。大溝70は、深さが例えば10μm以上、100μm以下である。
図15および図16は、生体組織密着面52をSEMで撮影した写真であって、(a)拡大率200倍、(b)拡大率500倍、(c)拡大率2000倍、(d)拡大率5000倍、(e)拡大率10000倍である。
この生体組織密着面52には、生体組織密着面51と同様に、指頭形状を有する絨毛体55が多数形成される。生体組織密着面52の三次元粗さSaと界面の展開面積比Sdrは、生体組織密着面51と同一である。
交差する大溝70同士は、交差角度が60°以上であり、例えば直角である。
図17は、生体組織密着面53をSEMで撮影した写真であって、(a)拡大率200倍、(b)拡大率500倍(c)拡大率10000倍である。
この生体組織密着面53には、生体組織密着面51,52と同様に、指頭形状を有する絨毛体55が多数形成される。生体組織密着面53の三次元粗さSaと界面の展開面積比Sdrは、生体組織密着面51,52と同一である。
小溝60と大溝70は、交差角度が60°以上であり、例えば直角である。
小溝60は、深さが1μm以上、20μm以下である。小溝60は、深さが例えば2μm以上、5μm以下である。
図18は、生体組織密着面54をSEMで撮影した写真であって、(a)拡大率500倍、(b)拡大率10000倍である。
この生体組織密着面53には、生体組織密着面51〜53と同様に、指頭形状を有する絨毛体55が多数形成される。生体組織密着面54の三次元粗さSaと界面の展開面積比Sdrは、生体組織密着面51〜53と同一である。
小溝60と大溝70は、例えば平行である。小溝60と大溝70は、交差角度が30°以下であってもよい。
小溝60は、深さが1μm以上、20μm以下である。小溝60は、深さが例えば2μm以上、5μm以下である。
フィクスチャー10とアバットメント40は、ジルコニア(酸化ジルコニウム)を主成分とする生体適合性セラミックスにより形成(成形)される。
フィクスチャー10の製造工程は、成形工程、焼結工程、粗面化工程(生体組織密着面の形成工程)を有する。さらに、洗浄工程、組立工程、γ線殺菌工程、加熱工程を有する。
アバットメント40の製造工程は、フィクスチャー10の製造工程と同一であるため、説明を省略する。
次に、焼結工程では、このジルコニア成形体に対して予備焼結処理と本焼結処理を施して、ジルコニア焼結体(セラミックス焼結体)を得る。つまり、外筒15、内筒21(半筒形部材21L,21R)、蓋体31の焼結体を得る。
ジルコニア焼結体の外表面は、フィクスチャー10の外表面10Hと内表面10Nになる。つまり、外周面10c(外周面15c、外周面22c)、先端面10a(先端面21a)、根端面10b(根端面15b、根端面21b、蓋外面31b)、外周面23c、内周面21d、蓋内面31dに、生体組織密着面50が形成される。
極短パルスレーザは、パルス幅(時間幅)が数ピコ秒から数フェムト秒の非常に短いパルスのレーザである。数ピコ秒レーザは、パルス幅が1兆分の1秒のレーザである。フェムト秒レーザは、パルス幅が1000兆分の1秒のレーザである。
非熱加工とは、大気圧下(水分を含む空気中)でレーザ光を照射して、瞬時に溶融、蒸発、飛散させる加工である。溶融した箇所が瞬時に蒸発、飛散して除去されるため、加工部周辺への熱影響(熱損傷)が極めて少ない。非熱加工には、レーザ光の出力(ピークパワーやエネルギー密度)が大きいパルスレーザが用いられる。
ジルコニア焼結体の外表面をレーザ光で非熱加工すると、多数の絨毛体55を有する生体組織密着面50が形成される。レーザ光の出力等を調整することにより、絨毛体55の大きさ等を変更できる。
小溝60同士、大溝70同士、または小溝60と大溝70を格子状に配置する場合には、レーザ光を交差(直行)する二方向走査する。このときの走査の交差角度が、小溝60同士、大溝70同士、または小溝60と大溝70の交差角度になる。
組立工程では、まず、半筒形部材21L,21Rを向い合せて密着させて、筒状(内筒21)にする。そして、内筒21の外側に外筒15を配置して、筒体13を組み立てる。
次いで、筒体13の根端(貫通孔14)に蓋体31を装着(嵌入)する。
最後に、マウント部材80を中心穴11に挿入して蓋体31に螺合する。
γ線殺菌工程を経ると、外筒15等は濃茶色化してしまう。このため、加熱工程において、100℃〜300℃の温度で再加熱して、外筒15等を色戻し(白色化)する。
なお、フィクスチャー10を本焼結処理した後に、粗面化工程(生体組織密着面50の形成)を行う場合に限らない。ジルコニア成形体を予備焼結処理した後に、ジルコニア焼結体に粗面化工程を行ってもよい。この場合には、その後に本焼結処理を行う。この本焼結処理により、ジルコニア焼結体が収縮して、絨毛体55、小溝60、大溝70も縮小する。そこで、ジルコニア焼結体の収縮を見込んで、生体組織密着面50を大きく形成しておく。これにより、本焼結処理後に形成した場合と同一形状のフィクスチャー10(生体組織密着面50)が得られる。
患者への歯科用インプラント1の装着は、以下の手順に従って行われる。
最初に、フィクスチャー10を患者の歯槽骨Hに埋入する。マウント部材80を専用治具で把持して、フィクスチャー10を歯槽骨Hに形成した穴に嵌め込む(挿入する)。
次に、マウント部材80を取り外して、カバー部材90をフィクスチャー10に装着する。つまり、カバー部材90を中心穴11に挿入して蓋体31に螺合する。
患者の歯槽骨Hに埋入したフィクスチャー10に対して、アバットメント40を挿入する。歯茎Sを切開してフィクスチャー10からカバー部材90を取り外した後に、フィクスチャー10にアバットメント40を装着する。
軸部92と軸部42は同一形状であるため、カバー部材90をアバットメント40に交換しても、内部空間P3は維持される。
その後、歯茎Sとアバットメント40を2週間程度かけて癒着させる。
フィクスチャー10は、Z方向(埋め込み方向)に延びる内部空間Pを備える。この内部空間Pには、骨形成を担う細胞を含む血液が浸潤する。つまり、内部空間Pに前骨芽細胞が入り込む。前骨芽細胞は、内部空間Pに定着して、骨芽細胞(osteoblast)に分化する。そして、類骨(Osteoid)を形成し、さらに石灰化して骨を形成する。
このように、フィクスチャー10は、外表面10Hのみならず、内部空間Pにも骨が形成されて、歯槽骨Hと結合する。
特に、内部空間Pは、Z方向に延びるため、内表面を拡大できる。したがって、フィクスチャー10および歯科用インプラント1は、歯槽骨Hに対して高い骨結合を得ることができる。
内部空間Pは、10μm以上、500μm以下の隙間に形成される。骨芽細胞は、20〜30μm程度の立方体状の形状を有するので、内部空間Pに入り込むことができる。
また、内部空間P1の先端側空間、内部空間P2の円環形空間(縦溝36が形成する空間)は、中心軸C周りに均等配置される。内部空間P1の根端側空間、内部空間P2の長棒形空間(横溝37が形成する空間)、内部空間P3は、中心軸Cに対して同心配置された環状に形成される。
したがって、縦方向および周方向において、高い骨結合を得ることができる。
内部空間Pを形成する内表面10Nが粗面である。外表面10Hが粗面である。このため、骨結合期間を短縮することができる。
中心穴11は、テーパー穴部24とストレート穴部25とを有するので、アバットメント40との連結力を確保しつつ、内部空間P3を確保できる。
フィクスチャー10は、外筒15に内筒21を挿入することにより、内部空間P1を形成することができる。内筒21は、一対の半筒形部材21L,21Rを向い合せてなるので、全面を粗面化しやすい。
フィクスチャー10は、機械的強度の異方性を有する部材を組み合わせているので、機械的強度の方向性が分散する。つまり、外筒15、内筒21、蓋体31の異方性が打ち消されて、等方性に近づく。したがって、フィクスチャー10は、従来のフィクスチャーに比べて機械的強度が高い。
前骨芽細胞や骨芽細胞の繁殖を促進して骨結合期間の短縮化を図るためである。生体組織密着面50により、血液に接触する面(面積)が確実に拡大して、前骨芽細胞や骨芽細胞が侵入しやすくなり、高い骨結合が得られる。
特に、生体組織密着面50は、スケールサイズが異なる複数の凹凸(ups and downs)を備える。つまり、ナノメートルサイズ(絨毛体55)、シングルミクロンサイズ(小溝60)、これらよりも大きなスケールサイズ(大溝70)の凹凸を備える。これにより、前骨芽細胞に対して効果的に力学的な刺激を与えることができる。
したがって、フィクスチャー10と歯槽骨Hとの結合が従来に比べて強固になる。
カバー部材90は、フィクスチャー10を歯槽骨Hに埋入したときに用いる部材であり、歯槽骨Hと結合しない熱可塑性樹脂からなる。このため、カバー部材90には、骨は形成されない。また、軸部92と軸部42は同一形状であるため、カバー部材90をアバットメント40に交換しても、内部空間P3に形成された骨を維持できる。
外周面44cを粗面化して、内部空間P3に形成された骨と結合させる。歯肉マージン41cを粗面化して、歯茎Sの癒着性を高めて、細菌の侵入を阻止する。
外表面10Hや内表面10Nのほぼ全面に生体組織密着面50を形成してもよい。外筒15の内周面15dに生体組織密着面50等の粗面を形成してもよい。
歯槽骨Hに密着する領域全面に亘って粗面化してもよい。歯茎Sに密着する領域(先端面10a)は、全面に亘って粗面化してもよい。
先端面10a(先端面21a)は、表面性状(表面粗さ)が異なっていてもよい。先端面10aには歯茎Sを癒着させるためである。
歯肉マージン41cには歯茎Sを癒着させるため、先端面10aと同一の表面性状(表面粗さ)に形成する。
小溝60と大溝70のそれぞれは、長手方向にわたって均一な幅にしてもよいし、異なる幅にしてもよい。長手方向にわたって均一な深さにしてもよいし、それぞれ異なる深さにしてもよい。複数の小溝60、大溝70は、均一な幅にしてもよいし、それぞれ異なる幅にしてもよい。均一な深さにしてもよいし、異なる深さにしてもよい。
小溝60と大溝70の数は任意である。小溝60と大溝70は、直線に限らず、曲線であってもよい。隣接する小溝60同士、大溝70同士は、できるだけ隙間なく配置されることが好ましい。小溝60と大溝70の延在方向は、フィクスチャー10の縦方向に対して任意の角度である。
生体組織密着面50は、フィクスチャー10のみに形成する場合であってもよい。
本発明のインプラントおよびフィクスチャーは、人工骨や骨補填材であってもよい。人工骨や骨補填材は、骨折や腫瘍の切除などで生じた骨の欠損した部分又は腰椎手術で取り除いた軟骨などを補うために用いられる。
本発明のインプラントおよびフィクスチャーは、人工関節の部材、骨折部位の固定に使用する骨接合材料、脊椎の固定器具等であってもよい。
生体適合性セラミックス材料として、アルミナ(酸化アルミニウム)や酸化イットリウム、酸化ハフニウム、酸化シリコーン、酸化マグネシウム、酸化セリウム等を採用してもよい。
本発明のインプラントとフィクスチャーは、金属や合金により構成されてもよい。金属や合金は、銅、チタン、チタン合金等である。
本発明のインプラントとフィクスチャーは、樹脂、シリコン、複合素材等により構成されてもよい。
Claims (16)
- 連結部材が挿入される中心穴を有する内筒と、
前記内筒の外側に配置される外筒と、
前記内筒と前記外筒の根端を支持して前記連結部材に連結する蓋体と、
を備え、
前記内筒と前記外筒の間に血液が浸潤する内部空間が設けられるフィクスチャー。 - 前記内筒は、前記外筒の先端を支持するフランジを有する請求項1に記載のフィクスチャー。
- 前記内筒は、一対の半筒形部材を向い合せてなる請求項1または2に記載のフィクスチャー。
- 前記内部空間は、10μm以上、500μm以下の隙間である請求項1から3のうちいずれか一項に記載のフィクスチャー。
- 前記内筒と前記連結部材の間に前記内部空間が設けられる請求項1から4のうちいずれか一項に記載のフィクスチャー。
- 前記中心穴は、
先端側に配置されて前記連結部材が密着する第一穴部と、
根端側に配置されて前記内部空間を形成する第二穴部と、
を有する請求項5に記載のフィクスチャー。 - 前記蓋体は、前記内筒に嵌合する軸部を有し、
前記内筒と前記軸部の間に前記内部空間が設けられる請求項1から6のうちいずれか一項に記載のフィクスチャー。 - 前記軸部は、前記内部空間を形成する縦溝を有する請求項7に記載のフィクスチャー。
- 前記内筒、前記外筒および前記蓋体は、生体適合性材料からなる請求項1から8のうちいずれか一項に記載のフィクスチャー。
- 前記外筒の外表面または前記内部空間に臨む面は、粗面を有する請求項1から9のうちいずれか一項に記載のフィクスチャー。
- 前記粗面は、三次元表面粗さSaが1nm以上、1000nm未満である請求項10に記載のフィクスチャー。
- 前記外筒の外表面または前記内部空間に臨む面は、幅が10μm以上、500μm以下の大溝を有し、
前記大溝の内面に前記粗面が配置される請求項10または11に記載のフィクスチャー。 - 前記外筒の外表面または前記内部空間に臨む面は、幅が1μm以上、50μm以下の小溝を有し、
前記大溝の内面に前記小溝が配置され、前記小溝の内面に前記粗面が配置される請求項12に記載のフィクスチャー。 - 前記外筒は、その外表面に埋入用スレッドを有しない請求項1から13のうちいずれか一項に記載のフィクスチャー。
- 前記連結部材は、骨に埋入したときに用いられるカバー部材であり、骨と結合しない材料からなる請求項1から14のうちいずれか一項に記載のフィクスチャー。
- 請求項1から15のうちいずれか一項に記載のフィクスチャーと、
前記連結部材として前記フィクスチャーに連結するアバットメントと、
を備えるインプラント。
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