JP3287956B2

JP3287956B2 - 人工歯根

Info

Publication number: JP3287956B2
Application number: JP17823994A
Authority: JP
Inventors: 経裕石井
Original assignee: Kyocera Corp
Current assignee: Kyocera Corp
Priority date: 1994-07-29
Filing date: 1994-07-29
Publication date: 2002-06-04
Anticipated expiration: 2017-06-04
Also published as: JPH0838512A

Description

【発明の詳細な説明】

【０００１】

【産業上の利用分野】本発明は下部のフィクスチャーを
顎骨内に埋入し、上側に義歯を嵌着する人工歯根に関す
るものである。

【０００２】

【従来の技術】人工歯根の歴史は比較的古く、１９３０
年代より素材の開発、形状、術式の改良がなされてお
り、従来より利用されている人工歯根は、長期的安定
に、動揺なく植立維持させる為には組織学的に毒性がな
く且つ軟組織、硬組織の両方に為害性のない純チタン、
チタン合金、コバルト／クロム合金等の金属材料や、ア
ルミナ、ジルコニア、ＨＡＰ等のセラミック材料が用い
られ、形状としてはネジ型、中空型、ブレード型など、
さらに術式としては一回植立法、二回植立法があり、一
回植立法には例えば特公昭５６ー５０９７５号に示され
る１ピース型と例えば特公平３ー３１２８８号、特開平
４ー９６７４５号や特開平５ー２９３１２３号に示され
る２ピース型がある。

【０００３】上記の術式のうち、一回植立法の１ピース
型では歯冠部のポストを口腔内に露出させた状態で骨接
合を図る方法であるが、この方法ではフィクスチャーと
顎骨が充分に接合しないうちに対合歯と咬合させるた
め、動揺、脱落する危険があった。そこで、最近では一
回法２ピース、二回法インプラントのように、フィクス
チャー上面をヒーリングキャップで被い、一定期間埋設
させて骨との接合が充分達成された後にポストを装着す
る術式が一般的である。

【０００４】

【従来技術の課題】しかしながら上記従来技術には、以
下のような課題があった。すなわち、前記一回法２ピー
ス、二回法インプラントでは、ポストの回転防止とフィ
クスチャーとの安定的固定を行うために、形状、機構が
複雑になっており、強度的な観点から純チタン、チタン
合金、コバルト／クロム合金等の金属材料が使用されて
いる。しかし、これら金属材料は軟組織との親和性にお
いてセラミック材料にかなり劣り、感染などにより人工
歯根が脱落したり、抜去してしまわなければならない事
態に至ことがあった。

【０００５】また、金属の表面にアパタイトなどのセラ
ミック材をコートする方法があったが、金属とセラミッ
クの弾性率及び熱膨張率の差によるコート層の破壊を原
因とする感染などにより人工歯根が脱落したり、抜去せ
ざろう得ないという問題があった。

【０００６】さらに、これらの人工歯根ではいずれも、
ポストを固定するためフィクスチャーの上面から軸線方
向に沿って内方に内ねじを形成したポスト固定用穴が形
成され、フィクスチャーとポストを着脱自在に固定して
いたが、ねじ部分に緩みがある場合、ねじ部分に緩みが
ないようポストを作り直さなければならない他の不具合
があった。

【０００７】

【課題を解決するための手段】上記従来技術の課題を解
決するため本願発明は、フィクスチャーを主としてアル
ミナ、サファイア、ジルコニア等の高強度セラミックで
構成するとともにポスト取付用穴を内壁面の平均粗さが
Ｒａ＝０．５〜１．０μm の粗面の盲孔とし、他方ヒー
リングキャップを弾性率０．９〜１．２ＧＰａの高分子
ポリエチレンで構成するとともに上記ポスト取付用穴に
挿入する挿入部に高さ０．５〜１．０ｍｍの複数のリブ
又は小突起を形成した。

【０００８】

【実施例】以下、本発明の実施例を図を用いて説明す
る。

【０００９】図１は、本実施例による人工歯根１を示
し、この人工歯根１はフィクスチャー２が主にアルミ
ナ、サファイア、ジルコニア等の高強度セラミックで構
成されている。

【００１０】上記フィクスチャー２は、下側にセルフタ
ッピングの外ねじ３が形成され、その上方には緻密骨と
の接合力を補強するテーパー部４、さらに上面５には平
面視正六角形状でフィクチャー埋入時に埋入器具によっ
て保持され且つ埋入後には義歯を嵌着するポスト（不図
示）と係合する上端部６が形成され、またその中心部位
には軸線方向に沿って内方に内壁面の粗さをＲａ＝０．
５〜１．０μm の粗面とした盲穴のポスト取付用穴７が
形成された構造となっている。

【００１１】なお、高強度セラミックとは曲げ強度で５
０００ｋｇｆ／ｃｍ²以上の強度を有する材料であっ
て、例えば上記以外にもＳｉＣ，Ｓｉ₃Ｎ₄、ＴｉＮ，
ＴｉＣ，ＴｉＯ₂、ＮｏＣ、ＮｏＯ₂，ＷＣなどが挙げ
られる。だたし、生体との親和性の観点からは上記アル
ミナ、サファイア、ジルコニアを用いることが最も好ま
しい。また、フィクスチャー２は必ずしも一体のもので
ある必要はなく、例えばアパタイトなどのリン酸カルシ
ウム材料による外套体（不図示）を骨内埋入部位の周囲
に装着したものであっても良い。

【００１２】また、フィクスチャー２が安定的に骨固定
するまでの一定期間、上記ポスト取付用穴７を封鎖する
ヒーリングキャップ８は、弾性率０．９〜１．２ＧＰａ
の高分子ポリエチレンで構成されるとともに上記ポスト
取付用穴７に挿入する挿入部９に高さ０．５〜１．０ｍ
ｍの２〜４個のリブ１０を形成されている。なお、リブ
１０の形状としては縦長のものに限らず、図２に示すよ
うにリング状のものなどであっても良く、さらにリブ１
０の代わりに、図３に示す如く複数個の小突起１１を設
けたものであっても良い。なお、ヒーリングキャップ８
のヘッド部分の形状としては図３に示すような球面を有
したものであっても良い。

【００１３】このように構成される人工歯根１は、骨内
に埋入されるフィクスチャー２の骨と接する表面を生体
為害性のないセラミックで構成しているので感染などに
より人工歯根１が脱落、抜去してしまうという問題がな
く、かつ骨と接する表面を含む部位を別体で構成しこれ
を結合したものであっても、セラミック同士であるので
弾性率及び熱膨張率が近似し上記骨と接する表面を含む
部位が破断したり、それ以外の部位を含んで破損するこ
とがない。

【００１４】また、ポスト及びヒーリングキャップ８を
固定するポスト取付用穴７を盲穴としたことから構造が
簡単でポストの固定をセメントで行うようにしたことか
らポストの緩みの問題から解放された。

【００１５】さらに、ヒーリングキャップ８を安定的に
固定し且つ抜去時にフィクスチャー２を強く引っ張るこ
とがないようにするためにはヒーリングキャップ８の保
持力が２００ｇ〜５５０ｇ程度であることが望ましいこ
とを見出したが、上記ポスト取付用穴７の内壁面の面粗
さをＲａ＝０．５〜１．５μm とし、且つヒーリングキ
ャップ８を弾性率０．９〜１．２ＧＰａの高分子ポリエ
チレンで構成するとともに上記ポスト取付用穴７に挿入
する挿入部９に高さ０．５〜１．０ｍｍの複数個のリブ
１０又は小突起１１を形成したことにより、ヒーリング
キャップ８が安定的な固定力で固定されるとともに、ヒ
ーリングキャップ８を抜去するのに過大な力を必要とし
ないのでヒーリングキャップ８がフィクスチャー２から
離脱したり、動揺したり、あるいは生体組織を破壊して
しまうことがない。

【００１６】なお、上記面粗さがＲａ＝０．５μm より
小さい場合、ヒーリングキャップ８を構成する高分子ポ
リエチレンの弾性率０．９ＧＰａより小さい場合、或い
はリブ１０の個数が１個の場合はヒーリングキャップ８
の保持力が２００ｇ以下となり保持力が不足する。他
方、上記面粗さがＲａ＝１．５μm より大きい場合、ヒ
ーリングキャップ８を構成する高分子ポリエチレンの弾
性率１．２ＧＰａより大きい場合、或いはリブ１０の個
数が５個以上の場合はヒーリングキャップ８の保持力が
５５０ｇより大きくなり保持力が大きすぎる。

【００１７】実施例１前述図１に示す人工歯根１においてフィクスチャー２を
サファイアで構成し、ポスト取付用穴７の内壁面の粗さ
及びヒーリングキャップ８のリブ１０の個数を表１に示
すようにし、且つリブ１０の高さを０．７ｍｍとし、ヒ
ーリングキャップ８を引っ張り出すのに用する力を保持
力とし、この保持力を公知の測定機器を用いて測定し
た。結果を表１に示す。

【００１８】

【表１】

【００１９】表１から明らかなように、上記面粗さがＲ
ａ＝０．５μm より小さい場合、ヒーリングキャップ８
の保持力が２００ｇ以下となり保持力が不足し、他方、
上記面粗さがＲａ＝１．５μm より大きい場合ヒーリン
グキャップ８の保持力が５５０ｇより大きくなり保持力
が大きすぎることが判った。

【００２０】実施例２前述図１に示す人工歯根１においてフィクスチャー２を
アルミナで構成し、ヒーリングキャップ８のリブ１０の
高さを表２に示すようにし、ポスト取付用穴７の内壁面
の面粗さをＲａ＝１．０μm とし、ヒーリングキャップ
８を引っ張り出すのに用する力を保持力とし、この保持
力を公知の測定機器を用いて測定した。

【００２１】結果を表２に示す。

【００２２】

【表２】

【００２３】表２から明らかなように、上記リブ１０の
高さが０．５ｍｍより小さい場合、ヒーリングキャップ
８の保持力が２００ｇ以下となり保持力が不足し、他
方、上記リブ１０の高さが１．０ｍｍより大きい場合ヒ
ーリングキャップ８の保持力が５５０ｇより大きくなり
保持力が大きすぎることが判った。

【００２４】

【発明の効果】叙上のように、本願発明は、骨内に埋入
されるフィクチャーの骨と接する表面を生体為害性のな
いセラミックで構成しているので感染などにより人工歯
根が脱落、抜去してしまうという問題がない。

【００２５】また、ポスト及びヒーリングキャップを固
定するポスト取付用穴を内壁面を粗面とした盲穴とした
ことから構造が簡単でポストの固定をセメントで行うよ
うにしたことからポストの緩みの問題から解放された。

【００２６】さらに、上記ポスト取付用穴の内壁面の面
粗さをＲａ＝０．５〜１．０μm とし且つヒーリングキ
ャップは弾性率０．９〜１．２ＧＰａの高分子ポリエチ
レンで構成するとともに上記ポスト取付用穴に挿入する
挿入部に高さ０．５〜１．０ｍｍの複数のリブ又は小突
起を形成したことにより、ヒーリングキャップが適度な
保持力で安定的に固定されるとともに、ヒーリングキャ
ップを抜去するのに過大な力を必要としないのでヒーリ
ングキャップがフィクスチャーから離脱したり、動揺し
たり、あるいは生体組織を破壊してしまうことがないと
いう優れた効果を奏するものである。

【図面の簡単な説明】

【図１】本発明実施例の人工歯根の分解斜視図である。

【図２】本発明実施例の人工歯根を構成するヒーリング
キャップの別態様を示す斜視図である。

【図３】本発明実施例の人工歯根を構成するヒーリング
キャップの別態様を示す斜視図である。

【符号の説明】

１人工歯根２フィクスチャー３外ねじ４テーパー部５上面６上端部７ポスト取付用穴８ヒーリングキャップ９挿入部１０リブ１１小突起

Claims

(57)【特許請求の範囲】

【請求項１】顎骨内に埋入する下部のフィクスチャー
の上側に、ヒーリングキャップを一定期間被せた後、義
歯を嵌着するポストを植立する人工歯根であって、該人
工歯根は、上記フィクスチャーを主としてアルミナ、サ
ファイア、ジルコニア等の高強度セラミックで構成する
とともに上面に軸線方向内方に内壁面の平均粗さをＲａ
＝０．５〜１．０μm の粗面とした盲孔のポスト取付用
穴が形成され、他方ヒーリングキャップは弾性率０．９
〜１．２ＧＰａの高分子ポリエチレンで構成するととも
に上記ポスト取付穴に挿入する挿入部に高さ０．５〜
１．０ｍｍの複数のリブ又は小突起が形成されたことを
特徴とする人工歯根。