JP6487688B2 - 液状組成物の製造方法 - Google Patents

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Description

本発明は、液状組成物の製造方法に関する。具体的には、本発明は、ジケトピペラジン及びプリン体を含有する液状組成物から、プリン体の含有量を選択的に低減させたジケトピペラジン含有液状組成物を製造する方法、当該方法により製造されるジケトピペラジン含有液状組成物、及びジケトピペラジン、プリン体及び色素を含有する液状組成物からプリン体及び色素夾雑物の含有量を低減する方法に関する。
アミノ酸が二つ結合した「ジペプチド」が機能性物質として注目されている。ジペプチドは単体アミノ酸にない物理的性質や新たな機能を付加することが可能であり、アミノ酸以上の応用範囲を有するものとして期待されている。特に、環状ジペプチドであるジケトピペラジンは、抗菌作用や抗酸化作用(非特許文献1,2)、学習意欲改善作用(特許文献1)などの様々な生理活性を持つことが知られており、医療・薬理分野において需要が拡大することが予想されている。
通常、ジケトピペラジンは、当該分野で公知の方法に従って調製することができる。例えば、化学合成法(非特許文献3)や酵素法(非特許文献2,4)などで製造されている。また、直鎖ペプチドを超臨界領域又は亜臨界領域にある高温高圧水で脱水・環化反応させることにより、任意のアミノ酸配列を持った環状ペプチドを合成する方法(特許文献2)、直鎖ジペプチド又は直鎖トリペプチドを水溶媒中で加熱処理して環状ジペプチドを製造する方法(特許文献3,4)も提案されている。また、非特許文献5には、タンパク質やペプチドの加熱処理及び/又は酵素処理によりジケトピペラジンが生成すること、及びカゼインや大豆タンパク質の部分加水分解物中にジケトピペラジンが含まれることが開示されている。
タンパク質を多量に含む動植物由来原料からジケトピペラジン含有液状組成物を製造する場合、その製造過程でプリン体や色素夾雑物などの夾雑物がジケトピペラジン含有液状組成物中に混入する場合がある。特に、プリン体は食品の旨味成分として知られており、肉類、魚介類、野菜・穀物などの動植物製品に多く含まれている。このプリン体は肝臓で代謝されて尿酸となるが、血液中の尿酸値が一定値以上となると高尿酸血症になり、さらに結晶化した尿酸が関節に蓄積すると痛風になる。そのため、様々な生理活性を有するジケトピペラジンを含みつつ、プリン体量が抑えられた飲食品に対する消費者の期待が高まっている。
特表2012−517998号公報 特開2003−252896号公報 韓国公開特許10−2011−0120051 特許5456876号公報
Peptides, 16(1), 151-164 (1995) バイオサイエンスとインダストリー, 60(7), 454-457 (2002) J. Comb, Chem., 3, 453-460 (2001) Chemistry Biology, 8, 997-1010 (2001) Neuropeptides, 19(1), 17-21 (1991)
プリン体は過剰摂取により高尿酸血症や痛風の発症の可能性が高まることが知られているため、プリン体量が抑えられた飲食品が求められている。ところが、環状ジペプチドであるジケトピペラジンを含有する液状組成物について、ジケトピペラジン含有量の低下を抑えつつ、プリン体を選択的に除去する技術については未だ知られていない。
本発明の課題は、ジケトピペラジン及びプリン体を含有する液状組成物から、プリン体の含有量の少ないジケトピペラジン含有液状組成物を製造する方法を提供することにある。
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意検討を行った結果、ジケトピペラジン及びプリン体を含有する液状組成物を陽イオン交換樹脂と接触させ、その後、ジケトピペラジン含有液を回収することで、液状組成物中のジケトピペラジン含有量の低下は抑えられる一方、プリン体の含有量が低減されたジケトピペラジン含有液状組成物を得ることができることを見出し、本発明を完成するに至った。
即ち、本発明は、以下に関する。
1).ジケトピペラジン及びプリン体を含有する液状組成物と陽イオン交換樹脂とを接触させる接触工程、及び
前記接触工程後にジケトピペラジン含有液を回収する回収工程を含み、
前記接触工程における陽イオン交換樹脂と前記液状組成物との容積比率(陽イオン交換樹脂の容積:前記液状組成物の容積)が1:0.5〜1:10であり、
前記接触工程において用いるジケトピペラジン及びプリン体を含有する液状組成物のpHが2.0〜6.0である、
ジケトピペラジン含有液状組成物の製造方法。
2).陽イオン交換樹脂と前記液状組成物との容積比率(陽イオン交換樹脂の容積:前記液状組成物の容積)が1:1〜1:5である、1)に記載の製造方法。
3).前記接触工程において用いるジケトピペラジン及びプリン体を含有する液状組成物のpHが3.5〜5.8である、1)又は2)に記載の製造方法。
4).前記接触工程において用いるジケトピペラジン及びプリン体を含有する液状組成物が色素を含む、1)〜3)のいずれかに記載の製造方法。
5).前記接触工程において用いるジケトピペラジン及びプリン体を含有する前記液状組成物中に含まれるジケトピペラジンが、シクロセリルチロシン〔Cyclo(Ser-Tyr)〕、シクロアスパラギニルチロシン〔Cyclo(Asn-Tyr)〕、シクロチロシルグリシン〔Cyclo(Tyr-Gly)〕、シクロチロシルチロシン〔Cyclo(Tyr-Tyr)〕、シクロロイシルチロシン〔Cyclo(Leu-Tyr)〕、シクロバリルチロシン〔Cyclo(Val-Tyr)〕、シクロイソロイシルチロシン〔Cyclo(Ile-Tyr)〕、及びシクロフェニルアラニルチロシン〔Cyclo(Phe-Tyr)〕からなる群から選択される1つ又は2つ以上を含むものである、1)〜4)のいずれかに記載の製造方法。
6).前記接触工程において用いるジケトピペラジン及びプリン体を含有する前記液状組成物が、動植物由来原料を100〜170℃の液体中で30分〜数時間加熱したものである、1)〜5)のいずれかに記載の製造方法。
7).前記動植物由来原料が、大豆エキス、茶エキス、麦芽エキス、及びコラーゲンペプチドからなる群から選択される、6)に記載の製造方法。
8).前記接触工程の前に、ジケトピペラジン及びプリン体を含有する液状組成物と水とを混合する混合工程を含む、1)〜7)のいずれかに記載の製造方法。
9).1)〜8)のいずれかに記載の製造方法により得られるジケトピペラジン含有液状組成物であって、
Brixあたりのジケトピペラジンの総量が、1000μg/100g/Brix以上である、前記ジケトピペラジン含有液状組成物。
10).プリン体の総量に対するジケトピペラジンの総量の比率(ジケトピペラジンの総量/プリン体の総量)が、3.5以上である、9)に記載のジケトピペラジン含有液状組成物。
11).ジケトピペラジン、プリン体及び色素を含有する液状組成物からプリン体及び色素夾雑物の含有量を低減する方法であって、
前記液状組成物と陽イオン交換樹脂とを接触させる接触工程、及び
接触工程後にジケトピペラジン含有液を回収する回収工程を含み、
前記接触工程における陽イオン交換樹脂と前記液状組成物との容積比率(陽イオン交換樹脂の容積:原料エキスの容積)が1:0.5〜1:10であり、
前記接触工程において用いるジケトピペラジン及びプリン体を含有する液状組成物のpHが2.0〜6.0である、
前記方法。
本発明は、医療・薬理分野において需要が拡大することが予想される機能性物質であるジケトピペラジンを高濃度に含有しつつも、プリン体の含有量の少ないジケトピペラジン含有液状組成物を提供できるという優れた効果を奏する。
図1には、樹脂処理後の大豆液状組成物中のチロシン含有ジケトピペラジン(Tyr-DKPs)量(Tyr-DKPs/Brix)を示す。樹脂は、陽イオン交換樹脂としてアンバーライトIR 120B H AG(IR120B)、アンバーライトIR 124H H AG(IR124H)、アンバーライト200CT H AG(200CHT)、アンバーライトIRC76 AG(IRC76)、及びアンバーライトFPC3500(FPC3500);陰イオン交換樹脂としてアンバーライトIRA400 OH AG(IRA400)及びアンバーライトXE583(XE583);活性炭としてホクエツCL-K(CL)を用いた。未処理群としては、大豆ペプチド(ハイニュートAM)の高温高圧処理物をpH3.5に調製し、樹脂に接触させていないものを用いた。尚、図2の樹脂も同様である。 図2には、樹脂処理後の大豆液状組成物中のプリン体量(プリン体/Brix)を示す。 図3には、pH5.8の条件下での樹脂処理後の大豆液状組成物中のTyr-DKPs量(Tyr-DKPs/Brix)を示す。樹脂は、陽イオン交換樹脂としてアンバーライトIR 120B H AG(IR120B)、アンバーライトIR 124H H AG(IR124H)、アンバーライト200CT H AG(200CHT)、アンバーライト252NA(252NA);陰イオン交換樹脂としてアンバーライトXE583(XE583);活性炭としてホクエツCL-K(CL)を用いた。尚、図4〜10の樹脂も同様である。 図4には、pH3.5の条件下での樹脂処理後の大豆液状組成物中のTyr-DKPs量(Tyr-DKPs/Brix)を示す。 図5には、pH3.0の条件下での樹脂処理後の大豆液状組成物中のTyr-DKPs量(Tyr-DKPs/Brix)を示す。 図6には、pH2.5の条件下での樹脂処理後の大豆液状組成物中のTyr-DKPs量(Tyr-DKPs/Brix)を示す。 図7には、pH5.8の条件下での樹脂処理後の大豆液状組成物中のプリン体量(プリン体/Brix)を示す。 図8には、pH3.5の条件下での樹脂処理後の大豆液状組成物中のプリン体量(プリン体/Brix)を示す。 図9には、pH3.0の条件下での樹脂処理後の大豆液状組成物中のプリン体量(プリン体/Brix)を示す。 図10には、pH2.5の条件下での樹脂処理後の大豆液状組成物中のプリン体量(プリン体/Brix)を示す。 図11には、樹脂と大豆液状組成物の比率(樹脂:大豆液状組成物)が1:1の条件下での樹脂処理後の大豆液状組成物中のTyr-DKPs量(Tyr-DKPs/Brix)を示す。樹脂は、陽イオン交換樹脂としてアンバーライトIR 120B H AG(IR120B)、アンバーライトIR 124H H AG(IR124H)、アンバーライト200CT H AG(200CHT)、アンバーライト252NA(252NA)、及びアンバーライトFPC3500(FPC3500);活性炭としてホクエツCL-K(CL)を用いた。尚、図12〜16の樹脂も同様である。 図12には、樹脂と大豆液状組成物の比率(樹脂:大豆液状組成物)が1:2の条件下での樹脂処理後の大豆液状組成物中のTyr-DKPs量(Tyr-DKPs/Brix)を示す。 図13には、樹脂と大豆液状組成物の比率(樹脂:大豆液状組成物)が1:5の条件下での樹脂処理後の大豆液状組成物中のTyr-DKPs量(Tyr-DKPs/Brix)を示す。 図14には、樹脂と大豆液状組成物の比率(樹脂:大豆液状組成物)が1:1の条件下での樹脂処理後の大豆液状組成物中のプリン体量(プリン体/Brix)を示す。 図15には、樹脂と大豆液状組成物の比率(樹脂:大豆液状組成物)が1:2の条件下での樹脂処理後の大豆液状組成物中のプリン体量(プリン体/Brix)を示す。 図16には、樹脂と大豆液状組成物の比率(樹脂:大豆液状組成物)が1:5の条件下での樹脂処理後の大豆液状組成物中のプリン体量(プリン体/Brix)を示す。 図17には、樹脂と大豆液状組成物の比率(樹脂:大豆液状組成物)が1:5の条件下での樹脂処理後の大豆液状組成物中のTyr-DKPs/プリン体比率を示す。樹脂は、陽イオン交換樹脂としてアンバーライトIR 120B H AG(IR120B)、アンバーライトIR 124H H AG(IR124H)、アンバーライト200CT H AG(200CHT)、アンバーライト252NA(252NA)、及びアンバーライトFPC3500(FPC3500);陰イオン交換樹脂としてアンバーライトXE583(XE583);活性炭としてホクエツCL-K(CL)を用いた。 図18には、樹脂と大豆液状組成物の比率(樹脂:大豆液状組成物)が大豆液状組成物中の色素夾雑物の低減効果に及ぼす影響を色調変化(490nm)で評価した結果を示す。樹脂は、陽イオン交換樹脂としてアンバーライトFPC3500(FPC3500);陰イオン交換樹脂としてアンバーライトXE583(XE583);活性炭としてホクエツCL-K(CL)を用いた。尚、図19の樹脂も同様である。 図19には、樹脂と大豆液状組成物の比率(樹脂:大豆液状組成物)が大豆液状組成物中の色素夾雑物の低減効果に及ぼす影響を色調変化(490nm/Brix)で評価した結果を示す。
本発明の一態様は、ジケトピペラジンを含有しつつも、プリン体の含有量の少ない液状組成物を製造する方法である。具体的には、一定範囲のpH条件下でジケトピペラジン及びプリン体を含有する液状組成物を陽イオン交換樹脂と一定範囲の容積比率で接触させ、その後、ジケトピペラジン含有液を回収することで、プリン体の含有量が低減されたジケトピペラジン含有液状組成物を製造する方法である。また、液状組成物と陽イオン交換樹脂とを接触させる前に、動植物由来原料を一定範囲の温度かつ一定範囲の時間で加熱処理し、ジケトピペラジン及びプリン体を含有する液状組成物を調製する工程を含んでいてもよく、さらに調製された液状組成物を陽イオン交換樹脂と接触させる前に水と混合する工程を含んでいてもよい。なお、本明細書において、ジケトピペラジン又はその塩をまとめて、単に、ジケトピペラジンと称する場合がある。
1.ジケトピペラジン及びプリン体を含有する液状組成物
本明細書において「ジケトピペラジン及びプリン体を含有する液状組成物」とは、少なくともジケトピペラジン、プリン体及び水とを含む組成物をいう。ジケトピペラジン、プリン体及び水を含む場合、水にジケトピペラジンとプリン体を混合させたものでも、あるいはジケトピペラジン、プリン体及び水を含む各種の液状組成物でも、あるいは、動植物由来原料に分解(一例として酵素処理及び/又は加熱処理)・抽出処理等を施した結果得られた処理物であってもよい。混合比や、エキスの種類、動植物由来原料の種類によって、液状組成物中のジケトピペラジンの組成及び含有量は異なる。本発明で使用される、ジケトピペラジン及びプリン体を含有する液状組成物の製造方法は特に限定されるものではない。また、後述する接触工程の前に、さらに水と混合する工程を含み、濃度調整を行ってもよい。
1−1.ジケトピペラジン
本明細書でいうジケトピペラジンとは、アミノ酸のアミノ基とカルボキシル基とが脱水縮合することにより生成した環状有機化合物のことをいう。尚、本明細書において、ジケトピペラジンのアミノ酸の構成が同じであれば、それらの記載順序はいずれが先でも構わなく、例えば、〔Cyclo(Pro-Hyp)〕と〔Cyclo(Hyp-Pro)〕は同じジケトピペラジンを表すものである。
本発明で使用される液状組成物中に含まれるジケトピペラジンは特に限定されるものではない。例えば、本発明で使用される液状組成物中に含まれるジケトピペラジンとしては、チロシン含有ジケトピペラジン(Tyr-DKPs)が挙げられる。Tyr-DKPsとしては、シクロセリルチロシン〔Cyclo(Ser-Tyr)〕、シクロアスパラギニルチロシン〔Cyclo(Asn-Tyr)〕、シクロチロシルグリシン〔Cyclo(Tyr-Gly)〕、シクロチロシルチロシン〔Cyclo(Tyr-Tyr)〕、シクロロイシルチロシン〔Cyclo(Leu-Tyr)〕、シクロバリルチロシン〔Cyclo(Val-Tyr)〕、シクロイソロイシルチロシン〔Cyclo(Ile-Tyr)〕、シクロフェニルアラニルチロシン〔Cyclo(Phe-Tyr)〕などが例示されるが、こられに限定されるものではない。
1−2.プリン体
本明細書において「プリン体」とは、プリン環を基本骨格とする生体物質で、核酸又はアルカロイドの塩基性物質である。核酸中に多く含まれるため細胞数の多い組織、細胞分裂の盛んな組織に多く存在する。食品中では旨味の成分として知られており、肉類、魚介類、野菜・穀物などの動植物製品に多く含まれている。プリン体は肝臓で代謝されて尿酸となるが、血液中の尿酸値が一定値以上となると高尿酸血症になり、さらに結晶化した尿酸が関節に蓄積すると痛風になる。そのため、従来のビール等が有する旨味等を保持した、低糖・低カロリー発酵麦芽飲料に加えて、低プリン体発酵麦芽飲料に対する消費者の期待が高まっている。プリン体には、遊離プリン塩基、プリンヌクレオチド、プリンヌクレオシド及び高分子核酸が含まれる。遊離プリン塩基には、プリン、アデニン、グアニン、ヒポキサンチン、キサンチン、テオブロミン、カフェイン、尿酸、イソグアニン等が含まれる。また、プリンヌクレオチドとは、プリンヌクレオシドの糖部分がリン酸とエステルを作っている化合物の総称であり、アデニル酸、イノシン酸、グアニル酸等が含まれる。さらに、プリンヌクレオシドとは、プリン塩基と糖の還元基とがN−グリコシド結合した配糖体化合物の総称であり、アデノシン、イノシン、グアノシン等が含まれる。本発明において低減されるプリン体は特に限定されるものではないが、好ましくは液状組成物中のプリン、アデニン、グアニン、ヒポキサンチン、キサンチン、テオブロミン、カフェイン、尿酸、及びイソグアニンの含有量が低減され、より好ましくはアデニン、グアニン、ヒポキサンチン、及びキサンチンの含有量が低減される。
本発明で使用されるジケトピペラジン及びプリン体を含有する液状組成物中に含まれるジケトピペラジンの総量に限定はないが、好ましくは、1μg/100g/Brix以上、より好ましくは10μg/100g/Brix以上、さらにより好ましくは100μg/100g/Brix以上、最も好ましくは1000μg/100g/Brix以上である。
本発明で使用されるジケトピペラジン及びプリン体を含有する液状組成物中に含まれるチロシン含有ジケトピペラジン(Tyr-DKPs)の総量に限定はないが、好ましくは1μg/100g/Brix以上、より好ましくは10μg/100g/Brix以上、さらにより好ましくは20μg/100g/Brix以上、最も好ましくは100μg/100g/Brix以上である。
さらに、本発明で使用されるジケトピペラジン及びプリン体を含有する液状組成物に含まれるシクロセリルチロシン〔Cyclo(Ser-Tyr)〕、シクロアスパラギニルチロシン〔Cyclo(Asn-Tyr)〕、シクロチロシルグリシン〔Cyclo(Tyr-Gly)〕、シクロチロシルチロシン〔Cyclo(Tyr-Tyr)〕、シクロロイシルチロシン〔Cyclo(Leu-Tyr)〕、シクロバリルチロシン〔Cyclo(Val-Tyr)〕、シクロイソロイシルチロシン〔Cyclo(Ile-Tyr)〕、及びシクロフェニルアラニルチロシン〔Cyclo(Phe-Tyr)〕の総量に限定はないが、好ましくは1μg/100g/Brix以上、より好ましくは10μg/100g/Brix以上、さらにより好ましくは20μg/100g/Brix以上、最も好ましくは80μg/100g/Brix以上である。
本発明で使用されるジケトピペラジン及びプリン体を含有する液状組成物としては、特に限定はないが、動植物由来原料を処理して得られる液状組成物が好ましく、動植物由来原料として大豆エキス、茶エキス、麦芽エキス、コラーゲンペプチドが特に好ましい。以下、これら動植物由来原料について詳述する。これらの動植物由来原料は複数の原料を混合して用いてもよい。
1−3.大豆エキス
本明細書でいう「大豆エキス」とは、大豆を抽出処理又はミリング処理して得られる液体をいう。原料となる大豆(学名:Glycine max)は品種や産地などの制限なく用いることができ、粉砕品などの加工品段階のものを用いることもできる。また、本明細書でいう大豆エキスには、大豆タンパク分解物に加水して得られる液体も便宜上含まれるものとする。
大豆中のタンパク質は、約3割を占めると言われている。大豆タンパク質は、茶タンパク質のように水不溶性タンパク質が多くはないため、水溶性タンパク質を除去する前処理は必須ではなく、必要に応じて行えばよい。水溶性タンパク質を除去する前処理がない場合、ワンポット(One-Pot)反応で、より簡便にジケトピペラジンを高濃度に含有する大豆由来ジケトピペラジン含有液状組成物を製造することができる。
1−4.茶エキス
本明細書でいう「茶エキス」とは、茶葉を抽出処理して得られる茶抽出物をいう。抽出原料となる茶葉としては、茶樹(学名:Camellia sinensis)を用いて製造された茶葉の葉、茎など、抽出して飲用可能な部位を使用することができる。また、その形態も大葉、粉状など制限されない。茶葉の収穫期についても、所望する香味に合わせて適宜選択できる。
本発明で使用される茶エキスは、発酵過程を経ずに製造され、副生成物の含有量が少なく、香味のよいものが好ましい。この香味の観点から、茶エキスの原料となる茶葉は、煎茶、番茶、ほうじ茶、玉露、かぶせ茶、甜茶等の蒸し製の不発酵茶(緑茶)や、嬉野茶、青柳茶、各種中国茶等の釜炒茶等の不発酵茶を用いることが好ましい。
1−5.麦芽エキス
本明細書でいう「麦芽エキス」とは、麦芽又はその粉砕物に抽出処理して得られる抽出物をいう。原料となる麦芽大豆(malt)は、品種や産地などの制限なく用いることができるが、特に大麦の種子を発芽させた大麦麦芽が好適に用いられる。大麦麦芽は、皮部を除去してタンパク質含量の高い画分を分離して用いるのが実用的かつ効率的である。例えば、タンパク質含量の高い画分は、麦芽を表面から徐々に削り、穀皮を除去し、その後、アリューロン層及び胚乳といったタンパク質が多く含まれる画分を削りとる方法が挙げられる。
1−6.コラーゲンペプチド
本明細書でいう「コラーゲンペプチド」とは、コラーゲン又はその粉砕物に分解・抽出処理を施して得られる組成物をいう。コラーゲンは動物の結合組織の主要なタンパク質であり、ヒトを含めた哺乳類の身体に最も大量に含まれるタンパク質である。本明細書においてコラーゲンペプチドは特に限定されるものではないが、例えば、コラーゲン又はコラーゲンの酵素処理や熱処理によって得られるものが挙げられる。
1−7.動植物由来原料の処理物
本発明で使用されるジケトピペラジン及びプリン体を含有する液状組成物は、例えば、動植物由来原料又は動植物原料由来ペプチドを液体中で高温高圧処理することにより得られる。高温高圧処理中の溶媒としては純水(換言すれば、蒸留水)を好適に用いることができるが、これにエタノール等有機溶媒を適宜含有させることもできる。また、抽出溶媒にミネラル分を添加することにより適宜硬度を調整することもできる。加熱処理に供する液体のブリックス(Brix)値は、0.1〜50程度になるように必要に応じて濃縮又は希釈しておくことが好ましい。
本明細書でいう高温高圧とは、100℃以上の温度かつ大気圧を越える圧力を意味する。高温高圧抽出装置としては、耐圧性抽出装置や圧力鍋、オートクレーブなどを条件に合わせて用いることができる。
高温高圧処理の温度は、100〜170℃が好ましく、110〜150℃がより好ましく、120〜140℃が特に好ましい。尚、この温度は、加熱装置として耐圧性抽出装置を用いた場合には抽出カラムの出口温度を測定した値を示し、加熱装置としてオートクレーブを用いた場合には、圧力容器内の中心温度の温度を測定した値を示す。また、圧力は、0.101〜0.79MPaが好ましく、0.101〜0.48MPaがより好ましい。さらに、加熱時間は30分〜数時間、好ましくは30分〜500分、より好ましくは60分〜300分程度である。液体中での高温高圧処理の後、必要に応じて固液分離を行って液部を回収して、ジケトピペラジンを含有する原料エキスが得られる。固液分離には、濾過及び/又は遠心分離手段が用いられる。
1−8.ペプチド
本明細書において「ペプチド」とは、動植物由来のタンパク質又はその分解処理物に高温高圧処理、酸又はアルカリ処理、又は酵素処理等を施して低分子化(オリゴペプチド)することで得られる、アミノ酸が数個〜数百個連結したペプチドをいう。
本発明で使用されるペプチドは、特に限定されないが、例えば、大豆ペプチド、大麦ペプチド、小麦ペプチド、小麦胚芽ペプチド、エンドウペプチド、コメペプチド、コラーゲンペプチドである。また、動植物原料からペプチドを製造して用いてもよいが、市販品を用いてもよい。市販のペプチドとしては、例えばハイニュートAM、ハイニュートDC、ハイニュートHK(以上、不二精油社製)などの大豆ペプチド、オリザペプチドP60(オリザ油化社製)などのコメペプチド、グルタミンペプチドGP−1N、グルタミンペプチドGP−N(以上、日清ファルマ社製)などの小麦ペプチド、ゴマペプチドKM−20(KISCO社製)などのゴマペプチド、ニッピペプチド(ニッピ社製)などのコラーゲンペプチドを例示できる。
本発明で使用されるペプチドは、タンパク質を含む動植物由来原料に分解処理を施すことで得られるが、この分解処理はオリゴペプチドが生成される条件下で行う。具体的には、分子量5000以下のペプチド、好ましくは分子量3000以下のペプチド、より好ましくは分子量1000以下のペプチドの割合が高くなるように、分解処理を行う。
分解処理は、目的とするオリゴペプチドの生成速度や生成効率等の観点から、高温高圧条件下での分解処理や酵素による分解処理が好適に用いられる。
高温高圧条件下での分解処理を行う場合、タンパク質の焦げを防止するため、溶媒中で行う。溶媒としては、水、エタノール、又はこれらの混合物等を用いるのが好ましく、特に水を用いるのが好ましい。加熱条件は、ペプチドが生成される条件であれば特に限定されない。加熱条件として100℃以上、さらに125℃以上の温度で、30分〜数時間、好ましくは2時間〜7時間程度の加熱を例示できる。加熱処理装置としては、圧力鍋、オートクレーブなどを条件に合わせて用いることができる。尚、この加熱処理は、液状組成物の製造と同時に行うことができる。
2.ジケトピペラジン及びプリン体を含有する液状組成物と陽イオン交換樹脂とを接触させる接触工程
本発明の一態様においては、ジケトピペラジン及びプリン体を含有する液状組成物を陽イオン交換樹脂と、一定範囲のpH条件下、かつ一定範囲の容積比率で接触させる。以下、ジケトピペラジン、プリン体、イオン交換樹脂、pH及び容積比率について詳述する。
2−1.イオン交換樹脂
本明細書において「イオン交換樹脂」とは、三次元的な網目構造を持った高分子に官能基(イオン交換基)を導入した合成樹脂であり、イオン交換樹脂中の固定イオンと様々な溶液中の対立イオンとの吸着の差を利用することによって、溶液に含まれた各イオンを分離するものである。イオン交換樹脂の高分子基剤としては、スチレン系とアクリル系が一般的で、官能基が酸性を示す陽イオン交換樹脂と、塩基性を示す陰イオン交換樹脂に大別される。さらに導入されるイオン交換基の種類によって、強酸性陽イオン交換樹脂、弱酸性陽イオン交換樹脂、強塩基性陰イオン交換樹脂、弱塩基性陰イオン交換樹脂、重金属イオン等に選択的吸着性を有するキレート樹脂等に分けられる。
本発明で使用される陽イオン交換樹脂は、官能基が酸性であり溶媒中の陽イオンを吸着できるものであれば、特に限定されず、強酸性陽イオン交換樹脂及び弱酸性陽イオン交換樹脂を好適に使用することができる。このような陽イオン交換樹脂としては、アンバーライトIR120B H AG(強陽イオン交換樹脂)、アンバーライトIR 124H H AG(強陽イオン交換樹脂)、アンバーライト200CT H AG(強陽イオン交換樹脂)、アンバーライト252NA(強陽イオン交換樹脂)、アンバーライトIRC76AG(弱陽イオン交換樹脂)、アンバーライトFPC3500(弱陽イオン交換樹脂)、ダイヤイオンSK104(強陽イオン交換樹脂)、ダイヤイオンSK1B(強陽イオン交換樹脂)、ダイヤイオンSK110(強陽イオン交換樹脂)、ダイヤイオンUBK08(陽イオン交換樹脂)、ダイヤイオンUBK10(陽イオン交換樹脂)、及びダイヤイオンUBK12(陽イオン交換樹脂)などが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
ジケトピペラジン及びプリン体を含有する液状組成物と陽イオン交換樹脂との接触工程の態様は、液状組成物と陽イオン交換樹脂とを接触させることができれば特に限定されるものではない。例えば、ジケトピペラジン及びプリン体を含有する液状組成物に陽イオン交換樹脂を添加・混合することで、液状組成物を陽イオン交換樹脂と接触させることができる。また、陽イオン交換樹脂でカラムを充填し、当該カラムにジケトピペラジン及びプリン体を含有する液状組成物を添加することで、液状組成物を陽イオン交換樹脂と接触させてもよい。
2−2.pH
本発明において、陽イオン交換樹脂と接触させる液状組成物のpHは、本発明の効果を確実かつ効率的に得る観点から、好ましくはpH2.0以上、より好ましくはpH2.5以上、さらにより好ましくはpH3.0、最も好ましくはpH3.5以上であり、好ましくはpH7.0以下、より好ましくはpH6.0以下、さらにより好ましくはpH5.8以下である。また、陽イオン交換樹脂と接触させる液状組成物のpHの範囲は、好ましくはpH2.0〜6.0、pH2.5〜6.0、pH3.0〜6.0、pH3.5〜6.0であり、より好ましくはpH3.5〜5.8である。
2−3.陽イオン交換樹脂と液状組成物の容積比率
本発明において、陽イオン交換樹脂と接触させる液状組成物の容積比率は、本発明の効果を確実かつ効率的に得る観点から、陽イオン交換樹脂に対する液状組成物の容積比率(陽イオン交換樹脂:液状組成物)が1:0.5〜1:10であることが好ましく、1:1〜1:5、1:1〜1:2、1:2〜1:5であることがより好ましい。
よって、本発明の製法では、pHを調整し、かつ、陽イオン交換樹脂と液状組成物の容積比率を調整することにより、ジケトピペラジン及びプリン体を含有する液状組成物から選択的にプリン体の含量が選択的に低減された液状組成物を得ることができる。
2−4.色素夾雑物の低減
本発明の一態様においては、プリン体のみならず、色素夾雑物も選択的に低減することができる。本明細書において「色素夾雑物」とは、タンパク質の分解工程や、ペプチドの高温高圧処理工程において生じる有色副産物などをいい、また、工程中で各種の原料から混入したものも含まれる。本発明において低減される色素夾雑物は特に限定されるものではないが、特に褐色色素成分、タンパク質と糖分が反応したメイラード化合物群などが好適に低減される。
3.ジケトピペラジン含有液を回収する回収工程
本発明では、接触工程の後、陽イオン交換樹脂からジケトピペラジン液状組成物を回収することで、液状組成物中のジケトピペラジン含有量の低下は抑えられる一方、液状組成物中のプリン体の含有量が低減されたジケトピペラジン含有液状組成物を得ることができる。接触工程後に、陽イオン交換樹脂から液状組成物を回収する態様は特に限定されるものではない。例えば、液状組成物と陽イオン交換樹脂との混合溶液を遠心分離又は濾過することにより、陽イオン交換樹脂から液状組成物を回収することができる。遠心分離の条件は特に限定されないが、例えば回転数は500〜10000rpm、好ましくは1000〜8000rpm、より好ましくは2000〜5000rpm、さらにより好ましくは3000〜4000rpmであり、遠心分離温度は1〜50℃、好ましくは10〜30℃、より好ましくは20〜25℃、さらにより好ましくは室温であり、遠心分離時間は1〜60分、好ましくは5〜30分、より好ましくは10〜20分である。また、陽イオン交換樹脂を充填したカラムにジケトピペラジン及びプリン体を含有する液状組成物を添加することで、液状組成物と陽イオン交換樹脂とを接触させた場合には、カラムからの漏出液中のジケトピペラジン含有画分を回収することで、ジケトピペラジン含有液状組成物を得ることができる。本発明で使用されるジケトピペラジン及びプリン体を含有する液状組成物では、プリン体はプリン塩基の状態で存在する。本発明は、液状組成物中のプリン塩基中の窒素原子の正電荷を利用し、プリン塩基を陽イオン交換樹脂に吸着させて分離するものである。とりわけ、本発明で使用されるジケトピペラジン及びプリン体を含有する液状組成物が、動植物由来原料又は動植物由来原料由来ペプチドから製造された高温高圧加工物等である場合、前記液状組成物中の核酸の構造を積極的に崩壊させていることから、確実にプリン体プリン体塩基の状態にして分離することが可能である。
3−1.ジケトピペラジン含有液状組成物
一般に、Brix値が高い液状組成物は、原料由来の様々な物質(例えば、苦味成分)が高濃度で含まれることを意味する。Brix値が高い液状組成物は、香味や舌触りなどへの影響から飲料等への添加に適さない。従って、飲料等への添加を考えた場合、Brix値は低い方が好ましい。本発明では、ジケトピペラジンの含有量を維持したまま、プリン体や色素夾雑物の含有量を低減させた液状組成物、即ち、液状組成物のBrix値に対するジケトピペラジン含有量が高い液状組成物を得ることができる。
本発明により得られる、プリン体や色素夾雑物の含有量を低減したジケトピペラジン含有液状組成物は、香味がよく、沈殿や濁り等もなく外観にも優れるので、特別な後処理を施さなくても、エキス、調味料、飲料等にそのまま利用することができる。また、本発明で得られるジケトピペラジン含有液状組成物は、ジケトピペラジンの含有量が高いにも関わらず、Brix値が相対的に低いため、飲食物(特に、飲料)への配合量が少なくてよく、飲食物の設計の自由度が増すという利点もある。特に、茶飲料、コーヒー飲料、大豆飲料、果汁飲料等の植物の抽出液又は搾汁液等を主成分として配合して得られる飲料や、フレーバードウォーター、ミネラル飲料、炭酸飲料、ビール飲料、アルコール飲料などの様々な飲料に、そのまま配合することができる。例えば、本発明で製造される、プリン体や色素夾雑物の含有量を低減したジケトピペラジン含有液状組成物を飲料に配合すると、ジケトピペラジンの総量が1μg/100g以上、好ましくは10μg/100g以上、より好ましくは40μg/100g以上、さらに好ましくは60μg/100g以上となるような飲料で、かつ苦味を呈しない風味良好な飲料を得ることができる。
本発明により得られるジケトピペラジン含有液状組成物は、添加する飲食物の態様に合わせて、清澄化処理等を行うこともできる。この場合、油分がないこと、繊維質が存在すること等の理由から、清澄化処理を容易に行うことができるという利点もある。
本発明においては、プリン体及び色素夾雑物の含有量は、HPLCやガスクロマトグラフィー、質量分析等の公知の方法で測定することができる。一例として、プリン体含有量の測定は、特に限定されないが、BOJC 2012年度活動報告書 P11 「プリン体-HPLC-UV法によるビール、発泡酒、新ジャンルの総プリン体定量」(http://www.brewers.or.jp/bcoj/pdf/2012_report_Japanese.pdf)に記載の方法やK.Kanekoらの方法(Nucleosides, Nucleotides and Nucleic Acids, 2014, 33: 439-444)に準じて行う。
本発明の別の一態様は、一定範囲のpH条件下でジケトピペラジン及びプリン体を含有する液状組成物と陽イオン交換樹脂とを一定範囲の容積比率で接触させ、その後ジケトピペラジン含有液を回収することで、色素夾雑物の含有量が低減された液状組成物を製造する方法でもある。
本発明は、さらに別の一態様として、プリン体及び色素夾雑物の含有量が低減された液状組成物を提供する。プリン体及び色素夾雑物の含有量が低減された液状組成物中に含まれるジケトピペラジンの総量に限定はないが、好ましくは、1μg/100g/Brix以上、より好ましくは10μg/100g/Brix以上、さらにより好ましくは100μg/100g/Brix以上、最も好ましくは1000μg/100g/Brix以上である。
本発明で使用されるジケトピペラジン及びプリン体を含有する液状組成物中に含まれるジケトピペラジンの総量に限定はないが、好ましくは、1μg/100g/Brix以上、より好ましくは10μg/100g/Brix以上、さらにより好ましくは100μg/100g/Brix以上、最も好ましくは1000μg/100g/Brix以上である。
本発明で提供される、プリン体及び色素夾雑物の含有量が低減された液状組成物中に含まれるプリン体の総量に対するジケトピペラジンの総量の比率(ジケトピペラジンの総量/プリン体の総量)に限定はないが、好ましくは3.5以上、より好ましくは4.0以上、さらにより好ましくは5.0以上である。
本発明の方法により製造された、プリン体及び色素夾雑物の含有量が低減された液状組成物は、香味がよく、沈殿や濁り等もなく外観にも優れるため、特別な後処理を施すことなく、エキス、調味料、飲料等の飲食品や加工品に好適に用いることができる。尚、その際の配合量は一概には決定されず、飲食品や加工品の種類に応じて適宜調整される。
4.飲食品の製造方法
本発明は一態様として、飲食品を製造する方法である。具体的には、ジケトピペラジン及びプリン体を含有する液状組成物と陽イオン交換樹脂とを接触させる工程、ジケトピペラジン含有液を回収する工程、及び、ジケトピペラジン含有液を回収して得られた液状組成物を飲食品に添加する工程を含み、接触工程において、陽イオン交換樹脂とジケトピペラジン及びプリン体を含有する液状組成物との容積比率(陽イオン交換樹脂の容積:ジケトピペラジン及びプリン体を含有する液状組成物の容積)が1:0.5〜1:10であり、陽イオン交換樹脂に接触させるジケトピペラジン及びプリン体を含有する液状組成物のpHが2.0〜6.0である、飲食品を製造する方法である。製造される飲食品は特に限定されないが、例えば、インスタント食品、健康食品、サプリメントなどが挙げられる。
本発明における飲食品の製造方法は、本明細書の記載及び当業者に知られる通常の方法に基づいて行うことができる。例えば、健康食品の製造方法においては、プリン体及び色素夾雑物の含有量が低減された液状組成物を配合し、さらに必要に応じて希釈剤、担体、結合剤、崩壊剤、滑沢剤、矯味矯臭剤、溶解補助剤、懸濁剤、コーティング剤等の健康食品分野において通常使用する公知の添加剤及び/又は補助剤を添加することができる。剤型としては、錠剤、カプセル剤、ソフトカプセル剤等を挙げることができ、特に限定されるものではない。
本発明の一態様として、ビール等の麦芽使用飲料を製造する方法が挙げられる。麦芽使用飲料としては、ビール、発泡酒などのアルコール飲料、ノンアルコール飲料が挙げられるが、これに限定されるものではない。
本発明における麦芽使用のアルコール飲料の製造方法は、当業者に知られる通常の方法を好適に追加して行うことができる。例えば、炭素源と、必要に応じて、追加の窒素源と、苦味料、又は着色料などの原料を、仕込釜又は仕込槽に投入し、必要に応じてアミラーゼなどの酵素を添加し、糊化、糖化を行なわせ、濾過し、必要に応じてホップなどを加えて煮沸し、清澄タンクにて凝固タンパクなどの固形分を取り除いて麦汁とする。糖化工程、煮沸工程、固形分除去工程などにおける条件は、知られている条件を用いればよい。次いで酵母を添加して発酵を行なわせ、濾過機などで酵母を取り除いて製造することができる。酵母は、発酵後に取り除かずに飲料中に残すこともできる。発酵条件は、知られている条件を用いればよい。更に、貯酒、必要により炭酸添加、濾過、殺菌の工程を経て、麦芽使用飲料を得ることができる。また、本発明における麦芽使用のノンアルコール飲料の製造方法も、当業者に知られる通常の方法を好適に追加して行うことができる。例えば、アルコール飲料における麦汁のエキス分量を調整し、甘味料、香料、酵母エキス、カラメル色素等の着色料、コーンや大豆などの植物タンパク質及びペプチド含有物等のタンパク質系物質、食物繊維やアミノ酸などの調味料、アスコルビン酸等の酸化防止剤、各種酸味料を、本発明の効果を妨げない範囲で必要に応じて添加し、貯蔵、炭酸ガス添加、濾過、容器詰め、必要により殺菌の工程を経て、麦芽使用のノンアルコール飲料を得ることができる。
本発明の方法にあるジケトピペラジン及びプリン体を含有する液状組成物を陽イオンに接触させる工程は、上記製造工程のいずれの段階で行ってもよい。例えば、あらかじめジケトピペラジン及びプリン体を含有する液状組成物を麦汁(ホップを含んでもよい。)に混合したものを陽イオン交換樹脂に接触させてもよい。あるいは、水に浸漬した麦芽(副原料を含んでもよい)にジケトピペラジン及びプリン体を含有する液状組成物及び/又は動植物由来原料(麦芽エキスなど)を加えた混合物を高温高圧処理して得られる糖化もろみから麦汁を製造し、これを陽イオン交換樹脂に接触させてもよい。あるいはまた、あらかじめジケトピペラジン及びプリン体を含有する液状組成物を陽イオン交換樹脂に接触させ回収したジケトピペラジン含有組成物を、麦汁に混合し、その後の工程に用いることもできる。
本発明のビール飲料は、容器詰めとすることができる。容器の形態は何ら制限されず、ビン、缶、樽、またはペットボトル等の密封容器に充填して、容器入り飲料とすることができる。
本発明では、飲食品に通常配合する添加剤、例えば、香料、ビタミン類、色素類、酸化防止剤、乳化剤、保存料、調味料、エキス類、pH調整剤、糖類、酸味料、品質安定剤等を添加する工程を含むこともできる。
5.プリン体及び色素夾雑物の含有量低減方法
本発明の一態様は、液状組成物に含まれるプリン体及び色素夾雑物の含有量を低減する方法である。具体的には、一定範囲のpH条件下でジケトピペラジン及びプリン体を含有する液状組成物と陽イオン交換樹脂とを一定範囲の比率で接触させ、その後ジケトピペラジンを回収することで、液状組成物中のプリン体及び色素夾雑物の含有量を低減する方法である。ジケトピペラジン及びプリン体を含有する液状組成物及びその他の条件は前記方法と同様である。
以下、実施例に基づいて本発明を説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。また、本明細書において特記しない限り、濃度等は重量基準であり、数値範囲はその端点を含むものとして記載される。
(実験材料)
1.イオン交換樹脂
Column PD-10, Empty(GE Healthcare製)にイオン交換樹脂5ccを移した後、蒸留水50mLで洗浄し、使用まで4℃で保管した。陽イオン交換樹脂には、アンバーライトIR 120B H AG(オルガノ社)、アンバーライトIR 124H H AG(オルガノ社)、アンバーライト200CT H AG(オルガノ社)、アンバーライト252NA(オルガノ社)、アンバーライトIRC76 AG(オルガノ社)、及びアンバーライトFPC3500(オルガノ社)を用いた。陰イオン交換樹脂にはアンバーライトXE583(オルガノ社)及びアンバーライトIRA400 OH AG(オルガノ社)を用いた。
2.活性炭
Column PD-10, Empty(GE Healthcare製)に活性炭5ccを移した後、蒸留水10mLで洗浄した。次いで、5%NaOH 10mLで洗浄し、熱水10mLで洗浄し、1%HCl 10mLで洗浄し、蒸留水25mLで洗浄し、洗浄液が中性であることを確認し、使用まで4℃で保管した。活性炭には、ホクエツCL-K(味の素ファインテクノ社)を用いた。
3.大豆エキス由来液状組成物(大豆液状組成物)の調製
ハイニュートAMを200mg/mLになるように蒸留水に溶解し、132℃で3時間高温高圧処理し、大豆液状組成物を調製した。pHを酸性に調整する場合(pH3.5, pH3.0, pH2.5)はリン酸(食品添加物:和光純薬工業製)を添加してpHを調整し、生じた沈殿を、3500rpm、室温、10分間遠心し、得られた上清を実験に用いた。
実施例1:樹脂処理による大豆液状組成物からのプリン体の低減効果
1.樹脂処理による大豆液状組成物中のプリン体の低減
大豆液状組成物をpH3.5に調整した溶液25mLを50mLのファルコンチューブに分注した。その後、前処理した樹脂5ccを添加し、10分毎にチューブを転倒混和し、60分間バッチ法で、大豆液状組成物を樹脂に接触させた。60分経過後、チューブを3500rpm、室温、10分間遠心し、得られた上清を、精製大豆エキス由来液状組成物(精製大豆液状組成物)とした。また、大豆液状組成物及び精製大豆液状組成物のBrix値は、デジタル屈折計RX-5000α(ATAGO)を用いて測定した。
2.大豆液状組成物及び精製大豆液状組成物中のTyr-DKPsの定量
(1)大豆液状組成物及び精製大豆液状組成物の固相抽出
大豆液状組成物又は精製大豆液状組成物を、Brix値が1となるように蒸留水で希釈したものを10mL調製した。大豆液状組成物又は精製大豆液状組成物を固相カートリッジに添加する前に、固相カートリッジOASIS HLB Plus(waters製)のコンディショニングを行なった。即ち、OASIS HLB Plusにアセトニトリル5mLを添加し、次いで蒸留水5mLを添加した。
コンディショニング後の固相カートリッジOASIS HLB Plusに対し、Brix値を1に調製した大豆液状組成物又は精製大豆液状組成物を10mL添加し、次いで蒸留水5mLを添加した。その後、アセトニトリル3mLを添加し、溶出物を試験管に移し減圧濃縮した。その後減圧濃縮試料をジメチルスルホキシド1mLで溶解し、HPLC用試料とした。
(2)Tyr-DKPsの定量
HPLC:LC-2010 CHT(SHIMADZU製)
カラム:Devolesil C30 UG-5 (4.6mm x 150mm)(野村化学製)
移動相:バッファーA:0.1%ギ酸を含んだ蒸留水
バッファーB:0.1%ギ酸を含んだ80%アセトニトリル蒸留水
グラジエントプログラム:
5%バッファーB/95%バッファーA →20%バッファーB/80%バッファーA
(リニアグラジエント:60分)
流速:1mL/min
検出波長:215nm
サンプル量:10μL/injection
標準品:Cyclo(Ser-Tyr), Cyclo(Asn-Tyr), Cyclo(Tyr-Gly), Cyclo(Tyr-Tyr),
Cyclo(Leu-Tyr), Cyclo(Val-Tyr), Cyclo(Ile-Tyr), Cyclo(Phe-Tyr)
上記条件で、HPLC用試料中のTyr-DKPsを測定し、大豆液状組成物及び精製大豆液状組成物中のTyr-DKPs量を求めた。結果を図1に示す。
3.大豆液状組成物及び精製大豆液状組成物中のプリン体量の定量
(1)大豆液状組成物及び精製大豆液状組成物の過塩素酸分解
大豆液状組成物又は精製大豆液状組成物4.5mLを蓋付き試験管にとり、70%過塩素酸0.5mLと混合し、ブロックヒーターを用いて95℃、60分間加熱して、加水分解させた。次いで、試験管を氷中に移し、8M 水酸化カリウム水溶液1mLを加え混合し、中和した。中和物を遠心チューブに移し、3500rpm、室温、10分間遠心し、得られた上清を、HPLC用試料とした。
(2)プリン体量のHPLC法での定量
HPLC:LC-2010 CHT(SHIMADZU製)
カラム:Shodex Asahi GS-320 HQ (7.5mm x 300mm)(昭和電工製)
移動相:150mM リン酸ナトリウムバッファー(pH2.5)
グラジエントプログラム:アイソクラティック
流速:0.5mL/min
検出波長:260nm
サンプル量:10μL/injection
標準品:アデニン、グアニン、ヒポキサンチン、キサンチン
上記条件で、HPLC用試料中のプリン体を測定し、大豆液状組成物及び精製大豆液状組成物中のプリン体量を求めた。結果を図2に示す。
大豆液状組成物を、陽イオン交換樹脂と接触させた結果、単位BrixあたりのTyr-DKPs量は未処理群と同程度もしくはそれ以上に濃縮されるが、単位Brixあたりのプリン体量は未処理群と比べて減少することが示された。一方で、陰イオン交換樹脂や活性炭と接触させた場合、単位Brixあたりのプリン体量と共に、単位BrixあたりのTyr-DKPs量も未処理群と比べて減少することが示された。
実施例2:樹脂処理による大豆液状組成物からのプリン体の低減効果に及ぼすpHの影響
1.樹脂処理による大豆液状組成物からのプリン体の低減
大豆液状組成物をpH2.5, pH3.0, pH3.5, pH未調整(pH5.8)に調整した溶液25mLを50mLのファルコンチューブに分注した。その後、前処理した樹脂5ccを添加し、10分毎にチューブを転倒混和し、60分間バッチ法で、大豆液状組成物を樹脂に接触させた。60分経過後、チューブを3500rpm、室温、10分間遠心し、得られた上清を、精製大豆液状組成物とした。大豆液状組成物及び精製大豆液状組成物のBrix値は、デジタル屈折計RX-5000α(ATAGO)を用いて測定した。
2.大豆液状組成物及び精製大豆液状組成物中のTyr-DKPsの定量
(1)大豆液状組成物及び精製大豆液状組成物の固相抽出
大豆液状組成物及び精製大豆液状組成物を、Brix値が1になるように蒸留水で希釈したものを10mL調製した。大豆液状組成物及び精製大豆液状組成物を固相カートリッジに添加する前に、固相カートリッジOASIS HLB Plus(waters製)のコンディショニングを行なった。即ち、OASIS HLB Plusにアセトニトリル5mLを添加し、次いで蒸留水5mLを添加した。
コンディショニング後の固相カートリッジOASIS HLB Plusに対し、Brix値を1に調製した大豆液状組成物又は精製大豆液状組成物を10mL添加し、次いで蒸留水5mLを添加した。その後、アセトニトリル3mLを添加し、溶出物を試験管に移し減圧濃縮した。その後減圧濃縮試料をジメチルスルホキシド1mLで溶解し、HPLC用試料とした。
(2)Tyr-DKPsの定量
HPLC:LC-2010 CHT(SHIMADZU製)
カラム:Devolesil C30 UG-5 (4.6mm x 150mm)(野村化学製)
移動相:バッファーA:0.1%ギ酸を含んだ蒸留水、
バッファーB:0.1%ギ酸を含んだ80%アセトニトリル蒸留水
グラジエントプログラム:
5%バッファーB/95%バッファーA →20%バッファーB/80%バッファーA
(リニアグラジエント:60分)
流速:1mL/min
検出波長:215nm
サンプル量:10μL/injection
標準品:cyclo (Ser-Tyr), cyclo (Asn-Tyr), cyclo (Tyr-Gly), cyclo (Tyr-Tyr),
cyclo (Leu-Tyr), cyclo (Val-Tyr), cyclo (Ile-Tyr), cyclo (Phe-Tyr)
上記条件で、HPLC用試料中のTyr-DKPsを測定し、大豆液状組成物及び精製大豆液状組成物中のTyr-DKPs量を求めた。結果を図3〜6に示す。
3.大豆液状組成物及び精製大豆液状組成物中のプリン体量のHPLC法での定量
(1)大豆液状組成物及び精製大豆液状組成物の過塩素酸分解
大豆液状組成物又は精製大豆液状組成物4.5mLを蓋付き試験管にとり、70%過塩素酸 0.5mlと混合させ、ブロックヒーターを用いて95℃、60分間加熱して、加水分解させた。次いで、試験管を氷中に移し、8M 水酸化カリウム水溶液1mLを加え混合し、中和した。中和物を遠心チューブに移し、3500rpm、室温、10分間遠心し、得られた上清を、HPLC用試料とした。
(2)プリン体のHPLC法での定量
HPLC:LC-2010 CHT(SHIMADZU製)
カラム:Shodex Asahi GS-320 HQ (7.5mm x 300mm)(昭和電工製)
移動相:150mM リン酸ナトリウムバッファー(pH2.5)
グラジエントプログラム:アイソクラティック
流速:0.5mL/min
検出波長:260nm
サンプル量:10μL/injection
標準品:アデニン、グアニン、ヒポキサンチン、キサンチン
上記条件で、HPLC用試料中のプリン体を測定し、大豆液状組成物及び精製大豆液状組成物中のプリン体量を求めた。結果を図7〜10に示す。
図3〜10の結果から、大豆液状組成物のpHを2.5, 3.0, 3.5, 及び5.8に調整して陽イオン交換樹脂と接触させた場合、陰イオン交換樹脂や活性炭と接触させた場合に比べて単位BrixあたりのTyr-DKPs量の減少が抑えられた。一方で、単位Brixあたりのプリン体量は未処理群と比べて減少することが示された。また、陽イオン交換樹脂と接触させる大豆液状組成物のpHがpH3.5又はpH5.8の場合、pH2.5又は3.0である場合と比較して、未処理群に対する単位BrixあたりのTyr-DKPs量の低下の程度が小さい傾向にあることが示唆された。
尚、活性炭を用いた場合には、pHにかかわらず、単位Brixあたりのプリン体量と単位BrixあたりのTyr-DKPs量共に未処理群と比べて大きく減少していた。
実施例3:樹脂処理による大豆液状組成物からのプリン体の低減効果に及ぼす樹脂:大豆液状組成物比の影響
1.樹脂処理による大豆液状組成物からのプリン体の低減
(樹脂:大豆液状組成物=1:5)
大豆液状組成物をpH3.5に調整した溶液25mLを50mLのファルコンチューブに分注した。その後、前処理した樹脂5ccを添加し、10分毎にチューブを転倒混和し、60分間バッチ法で、大豆液状組成物を樹脂と接触させた。
(樹脂:大豆液状組成物=1:2又は1:1)
大豆液状組成物をpH3.5に調整した溶液10mLを50mLのファルコンチューブに分注した。その後、前処理した樹脂5cc(1:2)又は10cc(1:1)を添加し、10分毎にチューブを転倒混和し、60分間バッチ法で、大豆液状組成物を樹脂と接触させた。
尚、60分経過後、チューブを3500rpm、室温、10分間遠心し、得られた上清を、精製大豆液状組成物とした。大豆液状組成物及び精製大豆液状組成物のBrix値は、デジタル屈折計RX-5000α(ATAGO)を用いて測定した。
2.大豆液状組成物及び精製大豆液状組成物中のTyr-DKPsの定量
(1)大豆液状組成物及び精製大豆液状組成物の固相抽出
大豆液状組成物又は精製大豆液状組成物を、Brix値が1になるように蒸留水で希釈したものを10mL調製した。大豆液状組成物又は精製大豆液状組成物を固相カートリッジに添加する前に、固相カートリッジOASIS HLB Plus(waters製)のコンディショニングを行なった。具体的には、OASIS HLB Plusにアセトニトリル5mLを添加し、次いで蒸留水5mLを添加した。
コンディショニング後の固相カートリッジOASIS HLB Plusに対し、Brix値を1に調製した大豆液状組成物又は精製大豆液状組成物を10mL添加し、次いで蒸留水5mLを添加した。その後、アセトニトリル3mLを添加し、溶出物を試験管に移し減圧濃縮した。その後減圧濃縮試料をジメチルスルホキシド1mLで溶解し、HPLC用試料とした。
(2)Tyr-DKPsのHPLC法での定量
HPLC:LC-2010 CHT(SHIMADZU製)
カラム:Devolesil C30 UG-5 (4.6mm x 150mm)(野村化学製)
移動相:バッファーA:0.1%ギ酸を含んだ蒸留水、
バッファーB:0.1%ギ酸を含んだ80%アセトニトリル蒸留水
グラジエントプログラム:
5%バッファーB/95%バッファーA →20%バッファーB/80%バッファーA
(リニアグラジエント:60分)
流速:1mL/min
検出波長:215nm
サンプル量:10μL/injection
標準品:cyclo (Ser-Tyr), cyclo (Asn-Tyr), cyclo (Tyr-Gly), cyclo (Tyr-Tyr),
cyclo (Leu-Tyr), cyclo (Val-Tyr), cyclo (Ile-Tyr), cyclo (Phe-Tyr)
上記条件で、HPLC用試料中のTyr-DKPsを測定し、大豆液状組成物及び精製大豆液状組成物中のTyr-DKPs量を求めた。結果を図11〜13に示す。
3.大豆液状組成物及び精製大豆液状組成物中のプリン体量の定量
(1)大豆液状組成物及び精製大豆液状組成物の過塩素酸分解
大豆液状組成物又は精製大豆液状組成物4.5mLを蓋付き試験管にとり、70%過塩素酸0.5mLと混合させ、ブロックヒーターを用いて95℃、60分間加熱して、加水分解させた。次いで、試験管を氷中に移し、8M 水酸化カリウム水溶液1mLを加え混合し、中和した。中和物を遠心チューブに移し、3500rpm、室温、10分間遠心し、得られた上清を、HPLC用試料とした。
(2)プリン体のHPLC法での定量
HPLC:LC-2010 CHT(SHIMADZU製)
カラム:Shodex Asahi GS-320 HQ (7.5mm x 300mm)(昭和電工製)
移動相:150mM リン酸ナトリウムバッファー(pH2.5)
グラジエントプログラム:アイソクラティック
流速:0.5mL/min
検出波長:260nm
サンプル量:10μL/injection
標準品:アデニン、グアニン、ヒポキサンチン、キサンチン
上記条件で、HPLC用試料中のプリン体量を測定し、大豆液状組成物及び精製大豆液状組成物中のプリン体量を求めた。結果を図14〜16に示す。
樹脂:大豆液状組成物=1:1で精製した場合、全ての陽イオン交換樹脂で、単位Brixあたりのプリン体量の減少が確認された。また、単位BrixあたりのTyr-DKPs量の減少はほとんど認められず、アンバーライト200CT H AG、アンバーライト252NA及びアンバーライトFPC3500を用いた場合には、未処理群と比較して単位BrixあたりのTyr-DKPs量が増加しており、プリン体などの共雑物が除かれ、Tyr-DKPsの純度が増すことが示された。一方で、活性炭を用いて精製した場合は、単位Brixあたりのプリン体量及びTyr-DKPs量が著しく減少した。
樹脂:大豆液状組成物=1:2で精製した場合、4種類の陽イオン交換樹脂で、単位Brixあたりのプリン体の減少が確認された。また、アンバーライト200CT H AG及びアンバーライトFPC3500を用いた場合には、未処理群と比較して単位BrixあたりのTyr-DKPs量が増加しており、プリン体などの共雑物が除かれ、Tyr-DKPsの純度が増すことが示された。一方で、活性炭を用いて精製した場合は、単位BrixあたりのTyr-DKPsが30%程度減少し、単位Brixあたりのプリン体の減少率を越える結果となった。
樹脂:大豆液状組成物=1:5で精製した場合、全ての陽イオン交換樹脂で、単位Brixあたりのプリン体の減少が確認された。
また、図17には大豆液状組成物の精製効率の指標として、陽イオン交換樹脂:大豆液状組成物比率を1:5として精製した場合のTyr-DKPs量/プリン体量比率を示した。
陽イオン交換樹脂を用いて精製した場合は、未処理群、陽イオン交換樹脂処理群及び活性炭処理群と比べ、Tyr-DKP量/プリン体量の比率が増加しており、陽イオン交換樹脂は大豆液状組成物の精製に有効であることが実証された。
実施例4:陽イオン交換樹脂処理による大豆液状組成物及び精製大豆液状組成物の色調変化
陽イオン交換樹脂処理により、褐色色素成分群が除去されたことを、マイクロプレートリーダーを用いて定量した。具体的には、96穴マイクロプレートに、水200μLと大豆液状組成物又は精製大豆液状組成物40μLを分注し混合後、490nmの吸光度を測定した。大豆液状組成物及び精製大豆液状組成物のBrix値は、デジタル屈折計RX-5000α(ATAGO)を用いて測定した。結果を図18及び19に示す。
陽イオン交換樹脂を用いることにより、陰イオン交換樹脂を用いる場合よりも大豆液状組成物中の褐色成分を効率的に除去できることが示された。
本発明は、ジケトピペラジン及びプリン体を含有する液状組成物を陽イオン交換樹脂と接触させ、その後、ジケトピペラジン含有液を回収することで、液状組成物中のジケトピペラジン含有量の低下は抑えられる一方、プリン体や色素夾雑物の含有量を低減することができる。従って、本発明では、ジケトピペラジン含有量が高く、プリン体や色素夾雑物の含有量が低い液状組成物を簡便な方法で提供できるため、産業上の利用可能性が高い。

Claims (9)

  1. プリン体の総量に対するジケトピペラジンの総量の比率(ジケトピペラジンの総量/プリン体の総量)が3.5以上であるジケトピペラジン含有液状組成物の製造方法であって、
    ジケトピペラジン及びプリン体を含有する液状組成物と陽イオン交換樹脂とを接触させる接触工程、
    前記接触工程後にジケトピペラジン含有液を回収する回収工程、及び
    前記回収工程で得られたジケトピペラジン含有液に含まれるプリン体の総量に対するジケトピペラジンの総量の比率(ジケトピペラジンの総量/プリン体の総量)が3.5以上であるかを確認する工程
    を含み、
    前記接触工程における陽イオン交換樹脂と前記液状組成物との容積比率(陽イオン交換樹脂の容積:前記液状組成物の容積)が1:0.5〜1:10であり、
    前記接触工程において用いるジケトピペラジン及びプリン体を含有する液状組成物のpHが2.0〜6.0である、
    前記ジケトピペラジン含有液状組成物の製造方法。
  2. 陽イオン交換樹脂と前記液状組成物との容積比率(陽イオン交換樹脂の容積:前記液状組成物の容積)が1:1〜1:5である、請求項1に記載の製造方法。
  3. 前記接触工程において用いるジケトピペラジン及びプリン体を含有する液状組成物のpHが3.5〜5.8である、請求項1又は2に記載の製造方法。
  4. 前記接触工程において用いるジケトピペラジン及びプリン体を含有する液状組成物が色素を含む、請求項1〜3のいずれか一項に記載の製造方法。
  5. 前記接触工程において用いるジケトピペラジン及びプリン体を含有する前記液状組成物中に含まれるジケトピペラジンが、シクロセリルチロシン〔Cyclo(Ser-Tyr)〕、シクロアスパラギニルチロシン〔Cyclo(Asn-Tyr)〕、シクロチロシルグリシン〔Cyclo(Tyr-Gly)〕、シクロチロシルチロシン〔Cyclo(Tyr-Tyr)〕、シクロロイシルチロシン〔Cyclo(Leu-Tyr)〕、シクロバリルチロシン〔Cyclo(Val-Tyr)〕、シクロイソロイシルチロシン〔Cyclo(Ile-Tyr)〕、及びシクロフェニルアラニルチロシン〔Cyclo(Phe-Tyr)〕からなる群から選択される1つ又は2つ以上を含むものである、請求項1〜4のいずれか一項に記載の製造方法。
  6. 前記接触工程において用いるジケトピペラジン及びプリン体を含有する前記液状組成物が、動植物由来原料を100〜170℃の液体中で30分〜数時間加熱したものである、請求項1〜5のいずれか一項に記載の製造方法。
  7. 前記動植物由来原料が、大豆エキス、茶エキス、麦芽エキス、及びコラーゲンペプチドからなる群から選択される、請求項6に記載の製造方法。
  8. 前記接触工程の前に、ジケトピペラジン及びプリン体を含有する液状組成物と水とを混合する混合工程を含む、請求項1〜7のいずれか一項に記載の製造方法。
  9. ジケトピペラジン、プリン体及び色素を含有する液状組成物からプリン体及び色素夾雑物の含有量を低減する方法であって、
    前記液状組成物と陽イオン交換樹脂とを接触させる接触工程、及び
    接触工程後にジケトピペラジン含有液を回収する回収工程を含み、
    前記接触工程における陽イオン交換樹脂と前記液状組成物との容積比率(陽イオン交換樹脂の容積:原料エキスの容積)が1:0.5〜1:10であり、
    前記接触工程において用いるジケトピペラジン及びプリン体を含有する液状組成物のpHが2.0〜6.0である、
    前記方法。
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