JP6487284B2 - 赤外線センサ素子及びその製造方法 - Google Patents
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Description
図1(a)に示すように、このNDIR方式のガスセンサは、ガスセル910と、ガスの固有の吸収波長帯に対応した波長の赤外線を放射する光源920と、その波長帯の光の強度を検知することができる赤外線センサ930とを備えている。光源920と赤外線センサ930は、ガスセル910内に設けられている。NDIR方式のガスセンサは、ガスセル910内に測定したい気体を流し、或いは滞留させ、ガスセル内の光源920と赤外線センサ930との間の空間で吸収された赤外線量から測定したい気体の濃度を求めるものである。
ここで、第2の従来例に係るようなNDIR方式のガスセンサを用いてCO2ガス濃度を測定する場合、赤外線を含む光を放射する光源と赤外線センサの間の空間にCO2ガスを注入する。CO2ガスは4.3μm付近の波長の赤外線を吸収するため、検出用センサは4.3μm付近の波長帯に感度を持つ必要がある。また参照用センサには、使用される光源との関係から、CO2ガスによる吸収がない3.9μm付近の波長帯に感度を持つ赤外線センサが用いられる。高精度のNDIR方式のガスセンサを実現するには、高感度の参照用センサが必要となる。
本発明は、このような問題に鑑みてなされたもので、その目的とするところは、高感度でありながら温度特性の影響が小さい赤外線センサ素子及びその製造方法を提供することにある。
本発明の第1の態様は、CO 2 ガスセンサ用の赤外線センサ素子であって、基板と、前記基板上のn型化合物半導体層と、前記n型化合物半導体層上のIn(1−x)AlxSb(x>0)からなる活性層と、前記活性層上のp型In(1−y)AlySb層と、前記p型In(1−x)AlxSb層上のp型化合物半導体層と、を備え、前記p型In(1−y)AlySb層の組成比yは、前記活性層の組成比xと比較して、0.17≦y−x≦0.235であり、前記活性層の組成比xは、0.005≦x≦0.05であり、温度0℃において波長3.9μmの赤外線を受光したときの光電流の値に対する温度50℃における同光電流の変化率は、前記組成比x及びyの関係(y−x)が0.13である素子における同変化率よりも小さい赤外線センサ素子である。
<実施形態>
(赤外線センサ素子)
本実施形態に係る赤外線センサ素子は、基板と、基板上のn型化合物半導体層と、n型化合物半導体層上のn型化合物半導体層上の、In(1−x)AlxSb(x>0)からなる活性層と、活性層上のp型In(1−y)AlySb層と、p型In(1−x)AlxSb層上のp型化合物半導体層と、を備え、p型In(1−y)AlySb層の組成比yは、活性層の組成比xと比較して、0.17≦y−x≦0.235である。
本発明の赤外線センサ素子において、基板は、その上に所望の半導体積層部を形成することが可能なものであれば特に制限されない。一例としては、Si,GaAs,GaP,InP基板への結晶成長が挙げられるがこの限りではない。結晶面は、(100)、(111)、(110)方向等がある。半導体積層部の材料としてInSb、AlInSbを用いる場合、基板としてはGaAsが好ましい。
n型化合物半導体層は、赤外線センサに適したものであれば特に制限されない。一例としては、InSb,InAlSb,InAsSbなどが挙げられるがこの限りではない。ここで、n型とは、n型となるドーパントが添加されていることを意味する。n型化合物半導体層の材料としてInSbを用いる場合、n型ドーパントとしては、Si、Te、Sn、S、Se等を用いることができるがこれに制限されない。n電極との導電性の観点から、ドーピング濃度としては、6×1018原子/cm3以上が好ましく、より好ましくは8×1018原子/cm3以上である。また、結晶性の観点からドーピング濃度としては、2×1019以下とすることが好ましい。
また、基板上に成長するn型化合物半導体層の結晶性を上げるために、基板とn型化合物半導体層との間に、格子不整合を緩和させるバッファ層を用いることも好ましい。バッファ層の具体的な材料としては、InSb,InAlSb,InGaSb等が挙げられる。これらのバッファ層はシート抵抗を低減する観点からn型にドーピングされていることが好ましく、またn型化合物半導体層とバッファ層の膜厚比は任意に決定して良い。また、バッファ層としては連続的にまたは段階的に格子定数が増減するグレーデットバッファ層であってもよい。
また、n型化合物半導体は、活性層の結晶性の向上の観点から、活性層と同様の材料・組成のIn(1−x)AlxSbからなってもよい。
また、n型化合物半導体層は、n層のコンタクト抵抗・シート抵抗を下げ、低抵抗素子として利用できるという観点から、InSbからなることが好ましい。
本実施形態に係る赤外線センサ素子は、n型化合物半導体層とi型In(1−x)AlxSb層との間に、n型In(1−y)AlySb層をさらに備えてもよい。n型In(1−y)AlySb層は、活性層よりもAl組成が大きく、バンドギャップが広くなるため、正孔による暗電流や拡散電流に対する障壁になる。従って暗電流や拡散電流を抑制することができる。これは、活性層が、窒化ガリウム(GaN)やガリウム砒素(GaAs)の様な元来バンドギャップが大きく熱励起キャリアの影響が無視でき、拡散電流が元々小さいような化合物半導体である場合はあまり意味を成さないが、In(1−x)AlxSbのようにバンドギャップが小さい半導体であるが故に得られる効果である。Al組成yは正孔による漏れ電流(暗電流や拡散電流など)を抑制するために大きいほうがよいが、特に温度による赤外線センサ素子の出力の変動を抑えるためにy−x≧0.17とすることが望ましい。
活性層は、In(1−x)AlxSb(x>0)からなり、赤外線を受光する活性層として機能する。活性層にはn型ドーパントやp型ドーパントとなる不純物をドーピングしてもよく、またはノンドープでもよい。活性層のAl組成xは、赤外線センサ素子の用途に応じて適宜選択することができる。CO2ガスセンサの参照用センサとして用いる場合には、3.9〜4.3μmに感度を持つようにすることが好ましい。
また、活性層は、厚いほど大きな光電流を発生させることが可能であるが、成膜・プロセスの観点と合わせると0.5〜5μm、さらには1〜3μm程度とすることが好ましいが、本発明の効果はこの範囲に限らない。
p型In(1−y)AlySb層のAl組成yは、赤外線センサに適したものであれば特に制限されない。ここでp型とは、p型となるドーパントが添加されていることを意味する。p型ドーパントとしては、Be、Zn、Cd、C、Mg、Ge、Cr等を用いることができる。ドーピング濃度としては、6×1017原子/cm3以上が好ましく、より好ましくは8×1017原子/cm3以上である。
p型化合物半導体層は、赤外線センサに適したものであれば特に制限されない。一例としては、InSb,InAlSb,InAsSbなどが挙げられるがこの限りではない。
ここでp型とは、p型となるドーパントが添加されていることを意味する。p型ドーパントとしては、Be、Zn、Cd、C、Mg、Ge、Cr等を用いることができる。ドーピング濃度としては、6×1017原子/cm3以上が好ましく、より好ましくは8×1017原子/cm3以上である。
また、p型化合物半導体層の材料をIn(1−z)AlzSbとした場合に、不要な光吸収を抑えるため、そのAl組成zは、活性層のIn(1−x)AlxSbのAl組成と比較してz≧xであることが好ましい。
上述した化合物半導体膜構造にプロセスを施して得られるダイオード構造のS/N(信号/ノイズ)は、主にダイオード面積に比例する光電流Ip、ダイオード抵抗R0(0バイアス付近の内部抵抗)により決定される。一般に光電流におけるS/Nは(Ip×√R0)に比例することが知られており、ダイオード形状は、円形、五角形等の多角形が考えられるが、十分なS/Nが得られる素子形状であれば特に形状は制限されない。また、ノイズ抑制の観点から、大きなR0を得るために素子同士を配線により直列接続しても良い。
図2は、本発明に係る赤外線センサ素子の実施形態を説明するための構成図である。本実施形態の赤外線センサ素子100は、基板10と、この基板10上のn型化合物半導体層11と、このn型化合物半導体層11上のIn(1−x)AlxSb(x>0)からなる活性層13と、この活性層13上のp型In(1−y)AlySb層14と、このp型In(1−x)AlxSb層14上のp型化合物半導体層15と、を備え、p型In(1−y)AlySb層14の組成比yは、活性層13の組成比xと比較して、0.17≦y−x≦0.235である。さらに、活性層13の組成比xが、0.005≦x≦0.05であることが好ましい。
また、n型化合物半導体層11は、In及びSbを少なくとも含み、2層以上の異なる組成の例えば第1層及び第21層11a,11bを有することが好ましい。さらに、n型化合物半導体層11が、InSbからなることが好ましい。
また、メサ型化合物半導体積層部20の頂部21上の第1の保護層41及び第2の保護層42の一部と、底部22上の一部とをそれぞれ開口して各々露出部を備えている。さらに、各露出部に第1の電極部51及び第2の電極部52を設けている。
p型In1−yAlySb層14のAl組成yは、活性層13のAl組成xよりも大きいため、バンドギャップも大きくなる。このとき、p型InAlSb層14は電子ブロック層として働く。活性層13でのキャリア閉じ込め効果を十分に得るために、活性層13とp型In1−yAlySb層14のAl組成差は、y−x≧0.17であることが好ましい。また、Al組成差が大きくなると、膜成長時に活性層13との格子定数差に従って格子緩和が発生し、電子ブロック層としての効果が薄れるため、y−x≦0.235であることが好ましい。
図3乃至図7は、本実施例に係る赤外線センサ素子の製造方法を説明するための工程図である。この赤外線センサ素子の素子構造は、MBE法により作製される。
まず、図3乃至図4に示すように、基板10上に、バッファ層としてn型半導体である第1のIn(1−n)AlnSb層11aを形成する。次に、第1のIn(1−n)AlnSb層11a上に、第1のIn(1−n)AlnSb層11aと異なる組成のn型半導体である第2のIn(1−x)AlxSb層11bを形成する。
次に、活性層13上にp型In(1−y)AlySb層を第2のバリア層14として形成する。次に、第2のバリア層14上にp型化合物半導体層15を形成する。ここで、温度による赤外線センサ素子の出力の変動を抑える観点から、p型In(1−y)AlySb層14の組成比yは、活性層13の組成比xと比較して、0.17≦y−x≦0.235であることが好ましい。
また、第1及び第2の電極部を形成する前に以下の工程を必要とする。つまり、図4に示すように、基板10上に形成された各層からなり、頂部21と底部22とを有するメサ構造のメサ型化合物半導体積層部20を形成する。
次に、メサ型化合物半導体積層部20の頂部21上の第1の保護層41及び第2の保護層42の一部と、底部22上の一部とをそれぞれ開口して露出部を形成する。このようにして、図6に示すように、露出部に第1の電極部51及び第2の電極部52を形成することになる。
GaAs基板上に、バッファ層としてSnを濃度1×1019[cm−3]ドーピングしたn型半導体であるInSb層を0.5μm形成した。その上にSnを濃度1×1019[cm−3]ドーピングしたn型半導体であるAl0.05In0.95Sb層を0.5μm形成した。さらに、その上にZnを濃度1×1019[cm−3]ドーピングしたAl0.18In0.82Sbバリア層を20nm形成した。その上にi型半導体Al0.05In0.95Sb層を2μm形成した。
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明の技術的範囲は、上述した実施形態に記載の技術的範囲には限定されない。上述した実施形態に、多様な変更又は改良を加えることも可能であり、そのような変更又は改良を加えた形態も本発明の技術的範囲に含まれ得ることが、特許請求の範囲の記載から明らかである。
11 n型化合物半導体層
13 活性層
14 p型In(1−y)AlySb層
15 p型化合物半導体層
12 n型In(1−y)AlySb層
11a n型化合物半導体層11の第1層
11b n型化合物半導体層11の第2層
41 第1の保護層
42 第2の保護層
51 第1の電極部
52 第2の電極部
61 TiO2膜
100 赤外線センサ素子
920 光源
930 赤外線センサ
931 参照用センサ
932 検出用センサ
Claims (11)
- CO 2 ガスセンサ用の赤外線センサ素子であって、
基板と、
前記基板上のn型化合物半導体層と、
前記n型化合物半導体層上のIn(1−x)AlxSb(x>0)からなる活性層と、
前記活性層上のp型In(1−y)AlySb層と、
前記p型In(1−y)Al y Sb層上のp型化合物半導体層と、を備え、
前記p型In(1−y)AlySb層の組成比yは、前記活性層の組成比xと比較して、0.17≦y−x≦0.235であり、前記活性層の組成比xは、0.005≦x≦0.05であり、温度0℃において波長3.9μmの赤外線を受光したときの光電流の値に対する温度50℃における同光電流の変化率は、前記組成比x及びyの関係(y−x)が0.13である素子における同変化率よりも小さい赤外線センサ素子。 - 前記n型化合物半導体層と前記活性層との間にn型In(1−y)AlySb層をさらに備える請求項1に記載の赤外線センサ素子。
- 前記n型化合物半導体層は、In(1−x)AlxSbからなる請求項1又は2に記載の赤外線センサ素子。
- 前記n型化合物半導体層は、In及びSbを少なくとも含み、2層以上の異なる組成の層を有する請求項1から3のいずれか一項に記載の赤外線センサ素子。
- 前記n型化合物半導体層が、InSbからなる請求項1又は2に記載の赤外線センサ素子。
- 前記基板上に形成された前記各層からなり、頂部と底部とを有するメサ構造のメサ型化合物半導体積層部を備える請求項1から5のいずれか一項に記載の赤外線センサ素子。
- 前記メサ型化合物半導体積層部の全面に第1の保護層と、前記第1の保護層上に第2の保護層を備える請求項6に記載の赤外線センサ素子。
- 前記メサ型化合物半導体積層部の前記頂部上の前記第1の保護層及び前記第2の保護層の一部と、前記底部上の一部とをそれぞれ開口して各々露出部を備える請求項7に記載の赤外線センサ素子。
- 前記各露出部に第1の電極部及び第2の電極部を設ける請求項8に記載の赤外線センサ素子。
- CO 2 ガスセンサ用の赤外線センサ素子の製造方法であって、
基板上に、バッファ層としてn型半導体である第1のIn(1−n)AlnSb層を形成する工程と、
前記第1のIn(1−n)AlnSb層上に、前記第1のIn(1−n)AlnSb層と異なる組成のn型半導体である第2のIn(1−x)AlxSb層を形成する工程と、
前記第2のIn(1−x)AlxSb層上にn型In(1−y)AlySb層を第1のバリア層として形成する工程と、
前記第1のバリア層上にIn(1−x)AlxSb(x>0)層を活性層として形成する工程と、
前記活性層上にp型In(1−y)AlySb層を第2のバリア層として形成する工程と、
前記第2のバリア層上にp型化合物半導体層を形成する工程と、
前記p型化合物半導体層上に第1の電極部を形成するとともに、前記In (1−x) Al x Sb層上に第2の電極部を形成する工程と、
を有し、
前記p型In(1−y)AlySb層の組成比yは、前記活性層の組成比xと比較して、0.17≦y−x≦0.235であり、前記活性層の組成比xは、0.005≦x≦0.05であり、温度0℃において波長3.9μmの赤外線を受光したときの光電流の値に対する温度50℃における同光電流の変化率は、前記組成比x及びyの関係(y−x)が0.13である素子における同変化率よりも小さい赤外線センサ素子の製造方法。 - 前記基板上に形成された各層からなり、頂部と底部とを有するメサ構造のメサ型化合物半導体積層部を形成する工程と、
前記メサ型化合物半導体積層部の全面に第1の保護層と、前記第1の保護層上に第2の保護層を形成する工程と、
前記メサ型化合物半導体積層部の前記頂部上の前記第1の保護層及び前記第2の保護層の一部と、前記底部上の一部とをそれぞれ開口して露出部を形成する工程と、を有し、
前記露出部に前記第1の電極部及び前記第2の電極部を形成する請求項10に記載の赤外線センサ素子の製造方法。
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