JP6486651B2 - 超電導コイルの保護方法 - Google Patents

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Description

本発明は、例えば希土類系酸化物超電導体により形成された超電導線材を巻回してなる超電導コイルの使用時にクエンチ(常電導転移)等の異常が生じたとき、十分な保護機能を発揮しつつ、運転を停止することができる超電導コイルの保護方法に関する。
一般に、希土類系酸化物超電導体による超電導線材を用いた超電導コイルにおいては、使用時にクエンチ等の異常が発生してもその異常状態が周囲に拡大し難いことから異常検出が困難で、異常検出までに局部的に高温部(ヒートスポット)が生じ、超電導コイルの特性が低下する。この超電導線材として例えば、基板上に中間層を介して希土類系酸化物超電導体による超電導層が形成され、その超電導層上に銀等の保護層を介して銅等による安定化層が形成されたものが知られている。そして、常電導転移が生じたとき、超電導層から安定化層にも電流が流れるようにすることで発熱を抑え、超電導線材の損傷を防止することが考えられる。
しかしながら、超電導コイルには電力が貯蔵されていることから、異常発生時には迅速に通電を停止するとともに、貯蔵電力を消費することが必要である。このため、超電導コイルには別途保護回路を設け、異常時にはその保護回路に電流を誘導し、保護回路中の抵抗負荷により超電導コイルの貯蔵電力を消費し、運転を停止するようになっている。
この種の超電導コイル装置が、例えば特許文献1に記載されている。この超電導コイル装置は、超電導コイルが常電導転移したときにそのエネルギー(貯蔵電力)を消費するための保護回路と、超電導コイルに並列に接続され、前記保護回路とは別個の抵抗とを備えた装置である。そして、超電導コイルが常電導転移したとき、超電導コイルのもつエネルギーを保護回路で消費するとともに、保護回路とは別個の抵抗でエネルギーを消費して常電導転移部の拡散を図るようになっている。
特開平5−67524号公報
前述した特許文献1に記載されている従来構成の超電導コイル装置においては、超電導コイルとは別に超電導コイルのもつ貯蔵電力を消費する保護回路を設けなければならず、またその保護回路には超電導コイルのインダクタンスに見合う抵抗を設定し、超電導コイルに接続しなければならない。そのため、超電導コイル装置の部品点数が多くなるとともに、構成が複雑になるという欠点があった。
さらに、この超電導コイル装置では、保護回路とは別の抵抗で発生する電圧を検出し、超電導コイルと電源との間に設けられた開閉スイッチを開いて超電導コイルへの通電を遮断するように構成されている。この抵抗に発生する電圧変動は、常電導転移による異常が微小である場合には非常に小さく、電圧変動の検出がノイズの影響を受けやすく、検出精度が低いという問題もあった。
そこで、本発明の目的とするところは、構成を簡易にでき、常電導転移時に超電導コイルを保護しながら円滑に運転を停止することができる超電導コイルの保護方法を提供することにある。
上記の目的を達成するために、請求項1に記載の発明の超電導コイルの保護方法は、超電導線材をコイル状に巻回するとともに、前記超電導線材の両端部に電極を取付け、両電極間に電源を接続して通電するようにした超電導コイルであって、前記超電導コイルは超電導線材間を絶縁することなく巻回して形成されるとともに、超電導コイルにはその内周面近傍に、周方向に間隔をおいて配置された複数の磁界変動検出素子を備え、該磁界変動検出素子が磁界変動を検出したとき電源から供給される電流を遮断する異常検出機構を備えた超電導コイルの保護装置を使用し、電源から超電導コイルに電流を供給して超電導コイルが運転状態にある場合において、磁界変動検出素子が磁界変動を検出したとき、電源から供給される電流を遮断するとともに、超電導コイルの貯蔵電力に基づく電流を、外周に位置する超電導線材に流し、その内周側に隣接する超電導線材へと流し、さらに超電導コイルの中心に向かって流し、超電導コイル全体が発熱し、超電導コイル全体で貯蔵電力を消費して運転を停止することを特徴とするものである。
請求項2に記載の発明の超電導コイルの保護方法は、請求項1に係る発明において、前記複数の磁界変動検出素子のうちいずれかの磁界変動検出素子が磁界変動を検出したとき、電源から供給される電流を遮断するものである。
請求項3に記載の発明の超電導コイルの保護方法は、請求項1又は請求項2に係る発明において、前記磁界変動検出素子はピックアップコイルである。
請求項4に記載の発明の超電導コイルの保護方法は、請求項1から請求項3のいずれか一項に係る発明において、前記超電導線材は、基板上に中間層を介して希土類系酸化物超電導体による超電導層が形成され、その超電導層上に保護層が形成され、それらの外周部に安定化層が形成されて構成されている。
本発明の超電導コイルの保護方法によれば、構成を簡易にでき、常電導転移時に超電導コイルを保護しながら円滑に運転を停止することができるという効果を奏する。
実施形態における異常検出機構を備えた超電導コイルの保護装置を模式的に示す概略図。 シングルパンケーキコイルに4つのピックアップコイルを配置した状態を示す概略斜視図。 超電導線材を示す断面図。 超電導コイルに通電した状態での電流の流れを示す概略平面図。 超電導コイルの異常検出機構が異常を検出したときの超電導コイル内の電流の流れを示す概略平面図。 時間と、コイルの磁界、コイルの電圧又はコイルの電流との関係を示すグラフ。 本発明の別例を示し、ダブルパンケーキコイルに3つのピックアップコイルを配置した状態を示す概略斜視図。 本発明のさらなる別例を示し、異形形状のシングルパンケーキコイルに2つのピックアップコイルを配置した状態を示す概略平面図。
以下、本発明の実施形態を図1〜図5に基づいて詳細に説明する。
図3に示すように、テープ状をなす超電導線材11は、基板12上に中間層13を介して超電導層14が形成され、その超電導層14上に保護層15が設けられ、それらの外周部に銅製の安定化層16が被覆されて構成されている。
前記基板12は、ニッケル合金(ハステロイ)、銀、銀合金等の金属により、例えば厚さ50〜100μm、幅4〜10mmに形成される。中間層13は、ガドリニウム・ジルコニウム酸化物(Gd・Zr酸化物)、ランタン(La)・マンガン(Mn)系酸化物、酸化マグネシウム(MgO)、イットリウム安定化ジルコニウム(YSZ)、バリウム・ジルコニウム酸化物(Ba・Zr酸化物)、酸化セリウム(CeO)等の化合物により、例えば厚さ500nmに形成される。
超電導層14は、希土類系酸化物超電導体のCVD法(化学蒸着法)により、例えば厚さ約1μmに形成される。希土類元素としては、ランタン(La)、ネオジム(Nd)、サマリウム(Sm)、ユウロピウム(Eu)、ガドリニウム(Gd)、ジスプロシウム(Dy)、ホルミウム(Ho)、エルビウム(Er)、イットリウム(Y)、イッテルビウム(Yb)等が挙げられる。希土類系酸化物としては、RE・Ba・Cu・O等が挙げられる。但し、REは希土類元素を表す。この超電導層14として具体的には、イットリウム・バリウム・銅酸化物(Y・Ba・Cu酸化物)、ランタン・バリウム・銅酸化物(La・Ba・Cu酸化物)等が挙げられる。
前記保護層15は、銀、銀合金等の金属によって形成され、超電導層14を被覆して保護するように構成されている。この保護層15は、例えば銀等の金属のスパッタリングによって2〜8μm程度の厚さに形成される。
前記安定化層16は銅により形成され、超電導状態が不安定になって抵抗が生じた場合でも、超電導層14に流れている電流を保護層15から安定化層16に迂回させて後述する超電導コイルの超電導特性を安定化させる機能を有している。安定化層16を形成する銅には銅合金も含まれる。この安定化層16の厚さは通電電流の大きさに応じて厚くなるが、実用的には5〜30μmであることが好ましい。安定化層16の厚さが5μmより薄い場合には、安定化層16を流れる電流量が低下し、安定化層16としての機能が十分に発揮できなくなって好ましくない。その一方、安定化層16の厚さが30μmより厚い場合には、超電導線材11の剛性が高くなって取扱いが難しくなる傾向にあり、超電導コイルの形成が困難になったりして好ましくない。
この安定化層16は、銅めっきによって形成されることが好ましい。銅めっきは電気めっきの常法に従って行われるが、硫酸銅等のめっき液を用い、電極間に所要の電流を流すことにより行われる。この銅めっきにより、安定化層16を容易かつ安定した状態で形成することができる。
図2に示すように、超電導コイルとしてのシングルパンケーキコイル(単にコイルともいう)17は、前述したテープ状の超電導線材11をコイル状(渦巻状)に1段で巻回して形成される。この超電導線材11をコイル状に巻回する際には、超電導線材11間に電気絶縁材料は介在されておらず、超電導線材11間が直接接触した状態つまり超電導線材11の安定化層16間が直接接触した状態で巻回される。前記コイル17の内周側における超電導線材11の端部及び外周側における超電導線材11の端部には、銅等の導電性の良い金属により形成された一対の電極18、19が接続されている。なお、図1〜図5の各図においては、コイル17は理解を容易にするため模式的に描かれ、各層の厚さや超電導線材11の厚さは実際より厚く描かれている。
図1に示すように、シングルパンケーキコイル17の両電極18、19間には電源20が接続線21により接続され、電源20からの電流がコイル17へ供給されるようになっている。前記接続線21には開閉スイッチ22が設けられ、コイル17にクエンチ、停電、冷凍機停止等による異常事態(常電導転移)が発生したとき、コイル17へ電流の供給を遮断できるようになっている。
前記シングルパンケーキコイル17の内周部近傍には、磁界変動検出素子としての4つのピックアップコイル(シングルコイル)23が周方向に間隔をおいて配置されている。これらのピックアップコイル23は、コイル17が常電導転移に基づいて磁界変動を生じたとき、その磁界変動を検出する。コイル17の内周部は外周部に比べて磁界が強いことから、ピックアップコイル23による磁界変動の検出精度を高めることができる。
前記4つのピックアップコイル23はそれぞれ入力線24により制御装置25に接続され、その制御装置25は出力線26により前記開閉スイッチ22に接続されている。そして、4つのピックアップコイル23のいずれかが磁界変動を検出したとき、その信号が入力線24を介して制御装置25に入力され、制御装置25から制御信号が出力線26を介して開閉スイッチ22に送られて開閉スイッチ22が開放され、電源20からコイル17に供給される電流を遮断するように構成されている。
異常検出機構27は、前記4つのピックアップコイル23、制御装置25、開閉スイッチ22等により構成されている。また、シングルパンケーキコイル17の保護装置10は、シングルパンケーキコイル17、両電極18、19、電源20、異常検出機構27等により構成されている。
次に、上記のように構成されたシングルパンケーキコイル17の保護装置10について作用を説明する。
さて、本実施形態のシングルパンケーキコイル17を常法に従い冷却して超電導状態とし、その超電導状態でコイル17の両電極18、19間に電源20から所定の電流を通電すると、図4の二点鎖線の矢印に示すように電流は一方の電極19から超電導線材11中の超電導層14を通って他方の電極18へと流れる。このとき、電気抵抗のない超電導状態で通電を継続することができ、高電流密度で大電流を通電でき、電力を貯蔵できるとともに、コイル17の周囲に強磁場を発生することができる。
この超電導状態において、シングルパンケーキコイル17を構成する超電導線材11の一部が何らかの理由で超電導状態を逸脱して常電導状態に移行する常電導転移が発生する場合がある。このとき、超電導層14を流れていた電流は安定化層16へ流れ、さらに超電導線材11間を流れて、コイル17の巻回数が見かけ上減少するため、コイル17から発せられる磁界は急激に低下するように変動する。この磁界変動を前記4つのピックアップコイル23のいずれかが検出する。いずれかのピックアップコイル23によって検出された磁界変動に基づく入力信号は制御装置25に送られ、制御装置25から制御信号が開閉スイッチ22に送られて直ちに開閉スイッチ22が図1の二点鎖線に示すように開放される。そのため、電源20からコイル17へ供給される電流は遮断されると同時に、図5の二点鎖線の矢印に示すようにコイル17内に貯蔵された電力による電流は、外周に位置する超電導線材11の超電導層14から安定化層16へ流れた後、その内周側に隣接する超電導線材11へと流れ、さらにコイル17の中心に向って瞬時に流れる。
すなわち、シングルパンケーキコイル17内では急激な電流変化によって誘導電圧が生じ、超電導線材11間に電流が流れてコイル17全体の安定化層16が結合した状態になり、見かけ上銅のバルクのような負荷となってコイル17全体が発熱して貯蔵電力が消費される。その結果、コイル17とは別に保護回路を設けて貯蔵電力を消費させずとも、超電導線材11の局部的な発熱を抑制でき、コイル17の損傷を回避することができる。
以上詳述した実施形態によって得られる効果を以下にまとめて記載する。
(1)本実施形態のシングルパンケーキコイル17の保護装置10において、コイル17は超電導線材11間を絶縁することなく巻回して形成されるとともに、コイル17には磁界変動検出素子を有する異常検出機構27が備えられている。そのため、この磁界変動検出素子がクエンチ等の異常発生に伴う磁界変動を検出したとき電源20から供給される電流を遮断して電源20等への過電流の流入を抑制することができるとともに、保護回路を用いることなく、コイル17内の局所的温度上昇を抑えながらコイル17の運転を停止することができる。
従って、本実施形態の保護装置10によれば、構成を簡易にでき、常電導転移時にシングルパンケーキコイル17を保護しながら円滑に運転を停止することができる。
(2)前記磁界変動検出素子はピックアップコイル23である。このため、簡易構造で汎用の検出素子により、磁界変動を精度良く検出することができる。
(3)前記ピックアップコイル23は、シングルパンケーキコイル17の内周部に配置されている。このコイル17の内周部においては、通電時に強い磁界が発生しており、磁界変動の検出精度を一層向上させることができる。
(4)前記ピックアップコイル23は複数個配置されている。そのため、複数のピックアップコイル23のいずれかが磁界変動を検出したとき、コイル17の運転を迅速に停止することができる。
(5)前記超電導線材11は、基板12上に中間層13を介して希土類系酸化物超電導体による超電導層14が形成され、その超電導層14上に保護層15が設けられ、それらの外周部に安定化層16が形成されて構成されている。このため、コイル17は、超電導特性を良好に発揮できるとともに、常電導転移時にはその運転を速やかに停止することができる。
(6)シングルパンケーキコイル17の保護方法は、シングルパンケーキコイル17が運転状態にある場合において、磁界変動検出素子が磁界変動を検出したとき、電源20から供給される電流を遮断し、巻回されている超電導線材11間に電流を流してコイル17全体で貯蔵電力を消費して運転を停止するものである。従って、常電導転移時にコイル17に損傷を与えることなく保護しながら運転を円滑に停止することができる。
次に、実施例を挙げて前記実施形態をさらに具体的に説明する。
(実施例1)
まず、この実施例1では、幅4mm、厚さ50μmのニッケル合金(ハステロイ)製の基板12上にランタン・マンガン系酸化物及び酸化マグネシウムの中間層13を介してイットリウム系の超電導物質による超電導層14を形成した。次いで、その上に銀のスパッタリングによる保護層15を形成し、その外周に銅めっきによる安定化層16を形成し、厚さ約100μmのイットリウム系の超電導線材11(液体窒素中、自己磁場での臨界電流130A)を作製した。そして、この超電導線材11を1段に30回巻回して、内径60mm、外径66mmのシングルパンケーキコイル17を製作した。
そして、得られたシングルパンケーキコイル17を液体窒素中にて、0.5A/sの速度で励磁電流(通電電流)を125Aまで通電した際のコイルの磁界(最大磁界、mT)の変化とコイルの両電極18,19間の電圧(V)の変化を測定し、その結果を図6に示した。なお、図6における実線はコイル17の磁界(mT)の変化、破線はコイル17の電流(10A)の変化及び二点鎖線はコイル17の電圧(V)の変化を示す。
図6に示した結果より、シングルパンケーキコイル17の磁界はコイル電流が臨界電流付近に到ると、増大傾向が鈍化した。さらにコイル電流を増加させると、突然磁界が減少すると同時に、コイル電圧が急上昇した。従って、超電導線材11間が絶縁されていないシングルパンケーキコイル17において、常電導転移により通電状態が崩れると、コイル17の磁界が急速に低下することを確認できた。
次いで、図1に示すように、コイル17の内周面近傍に4つのピックアップコイル23を配置し、そのピックアップコイル23が磁界変動を検出すると直ちに開閉スイッチ22を開放するようにした。ピックアップコイル23は、直径0.25mmの銅線を内径5mmで巻いて作製した。
そして、超電導状態でシングルパンケーキコイル17を運転していたところ、ピックアップコイル23によりコイル電流87.5Aで磁界が急激に低下したことが検出され、その結果開閉スイッチ22が開放されてコイル17の運転が停止した。その後、コイル17の状態を目視により確認したところ、外観に変化は見られなかった。さらに、コイル17に通電して励磁したところ、前記図6と同様に、電流の上昇に伴って磁界が上昇する結果が得られたことから、コイル17に劣化箇所は認められなかった。従って、この実施例1では、コイル17とは別に保護回路を設けることなく、コイル17の貯蔵電力に基づく発熱によるコイル17の損傷を抑えることができ、超電導特性を維持できることが判明した。
ここで、コイル17の発熱量をPEEC(Partial Element Equivalent Circuit、部分要素等価回路)解析と熱解析を連成した解析プログラムを用いて解析し、評価した。なお、PEEC解析は、積分方程式による電磁場解析の手法の1つで、電磁界と回路を結合した解析に適した三次元の全波モデル化手法であって、公知の手法であるため、その説明を省略する。
まず、コイル17の内径を60mm、超電導線材11の巻数を60とし、巻回された超電導線材11間の接触抵抗を70、350及び700μΩ・cmの3通りに設定した場合のコイル17の温度上昇について解析した。コイル17のインダクタンスは432μH、通電電流は30A、貯蔵エネルギーは194.5mJで、断熱状態であるとして温度上昇を解析した。その結果、接触抵抗の大きさにかかわらず、コイル17の温度上昇は0.017Kであった。従って、コイル17の温度上昇は僅かであり、超電導線材11間が絶縁されていないシングルパンケーキコイル17の熱的安定性が示された。
次に、コイル17の内径を60mm、超電導線材11間の接触抵抗を70μΩ・cmとし、超電導線材11の巻数を120、240及び360とした場合の温度上昇を解析した。解析条件と温度上昇を表1に示した。
表1に示した結果より、超電導線材11の巻数が増加すると、接触抵抗による消費エネルギーは一定の増加を示すが、コイル17の温度上昇は小さいものであった。従って、超電導線材11間が絶縁されていないシングルパンケーキコイル17は、常電導転移による異常事態に対して高い熱的安定性を有することが明らかになり、保護抵抗を用いることなく、コイル17を保護しつつその運転を停止することが可能となった。
なお、前記実施形態を次のように変更して具体化することも可能である。
・前記超電導コイルとしてダブルパンケーキコイルを使用してもよい。すなわち、図7に示すように、ダブルパンケーキコイル28は、テープ状の超電導線材11が図示しない内周枠の周りに巻回されて形成されたコイル28a,28bがセパレート枠29を介して上下2段に積層されて形成されている。ダブルパンケーキコイル28の内周部には、例えば3つのピックアップコイル23が配置される。
・前記磁界変動検出素子として、ホール素子、ファラデー素子等を使用してもよい。
・図8に示すように、シングルパンケーキコイル17として異形形状のものを使用してもよい。この場合には、ピックアップコイル23を、周囲と比べて強い磁界が発生し磁界変動の検出精度を高めることができるコイル17の屈曲部の内周部に配置することが好ましい。
・前記超電導線材11として、ビスマス系酸化物の超電導線材を使用してもよい。このビスマス系酸化物の超電導体としては、ビスマス(Bi)を含む酸化物により形成される超電導物質であり、例えばBi2223すなわちBiSrCaCu10−α(αは0〜0.15)、Bi2212すなわちBiSrCaCu8−α(αは0〜0.15)等が用いられる。このビスマス系酸化物の超電導体が展伸性を有する金属材料のシース層中に分散されて構成される。
10…保護装置、11…超電導線材、12…基板、13…中間層、14…超電導層、15…保護層、16…安定化層、17…超電導コイルとしてのシングルパンケーキコイル、19…電極、20…電源、23…磁界変動検出素子としてのピックアップコイル、27…異常検出機構、28…超電導コイルとしてのダブルパンケーキコイル。

Claims (4)

  1. 超電導線材をコイル状に巻回するとともに、前記超電導線材の両端部に電極を取付け、両電極間に電源を接続して通電するようにした超電導コイルであって、前記超電導コイルは超電導線材間を絶縁することなく巻回して形成されるとともに、超電導コイルにはその内周面近傍に、周方向に間隔をおいて配置された複数の磁界変動検出素子を備え、該磁界変動検出素子が磁界変動を検出したとき電源から供給される電流を遮断する異常検出機構を備えた超電導コイルの保護装置を使用し、電源から超電導コイルに電流を供給して超電導コイルが運転状態にある場合において、磁界変動検出素子が磁界変動を検出したとき、電源から供給される電流を遮断するとともに、超電導コイルの貯蔵電力に基づく電流を、外周に位置する超電導線材に流し、その内周側に隣接する超電導線材へと流し、さらに超電導コイルの中心に向かって流し、超電導コイル全体が発熱し、超電導コイル全体で貯蔵電力を消費して運転を停止することを特徴とする超電導コイルの保護方法。
  2. 前記複数の磁界変動検出素子のうちいずれかの磁界変動検出素子が磁界変動を検出したとき、電源から供給される電流を遮断する請求項1に記載の超電導コイルの保護方法。
  3. 前記磁界変動検出素子はピックアップコイルである請求項1又は請求項2に記載の超電導コイルの保護方法。
  4. 前記超電導線材は、基板上に中間層を介して希土類系酸化物超電導体による超電導層が形成され、その超電導層上に保護層が形成され、それらの外周部に安定化層が形成されて構成されている請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の超電導コイルの保護方法。
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