JP2017010832A - 超電導線材及びそれを用いた超電導コイル - Google Patents

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Abstract

【課題】常電導転移発生時に超電導線材の損傷を抑制しつつ、超電導線材間の結合を抑えて超電導特性を良好に発揮することができる超電導線材及びそれを用いた超電導コイルを提供する。【解決手段】テープ状の超電導線材11は、基板12上に中間層を介して希土類系酸化物の超電導体による超電導層14を形成し、その上に保護層を形成するとともに、その上に安定化層16を、超電導線材11の外周部を被覆するように形成して構成されている。超電導線材11の幅方向端部における安定化層16aの電気抵抗を、それ以外の側部における安定化層16bの電気抵抗よりも高く設定する。その方法としては、安定化層16aの厚さを、安定化層16bの厚さよりも薄く形成して電気抵抗を高くする方法と、安定化層16aを銅よりも電気抵抗率の高い材料で形成し、安定化層16bを銅で形成して電気抵抗を高くする方法が挙げられる。【選択図】図1

Description

本発明は、基板上に中間層を介して希土類系酸化物の超電導体による超電導層、その上に保護層及び安定化層を設けたテープ状の超電導線材及びその超電導線材をコイル状に巻回して形成された超電導コイルに関する。
この種の超電導コイルにおいては、使用時に常電導転移が発生しても容易に拡大しないことから、クエンチの検出を行うことが難しく、クエンチの検出までに局部的に高温部分が生じて超電導線材が損傷を受ける。前記安定化層は銅等により形成され、常電導転移が発生したとき、隣接する超電導線材の安定化層に電流を流すことにより発熱を抑え、超電導線材の損傷を防止することができる。
この種の超電導線材及びそれを用いた超電導コイルが、例えば特許文献1に示されている。すなわち、この超電導線材は、基板上に中間層を介して超電導層が形成され、該超電導層上に保護層を介して銅よりなる安定化層が形成され、その安定化層上には銅よりも柔らかい金属で形成された金属層が設けられている。
このため、超電導コイルに常電導転移が発生したとき、電流は超電導層から保護層及び安定化層を介して金属層へ流れ、さらに隣接する超電導線材の金属層へと流入する。従って、常電導転移が引き起こされた超電導層から電流を超電導コイルの全周に拡散させることができ、超電導コイルの電圧上昇を抑制し、超電導線材の局部的な発熱を回避でき、超電導線材の損傷を抑制することができる。
特開2015−28912号公報
前述した特許文献1に記載されている従来構成の超電導コイルにおいては、超電導線材の安定化層上に金属層が設けられていることから接触抵抗が小さくなり、超電導線材間にはその金属層を介して電流が一層流れやすくなっている。このため、超電導コイルの通電時において誘導電圧が発生したとき、超電導線材間には電流が流れる。このとき、超電導線材間には結合が生じ、その結合によって超電導コイルの特性が発揮できなくなるおそれがある。
そこで、本発明の目的とするところは、常電導転移発生時に超電導線材の損傷を抑制しつつ、超電導線材間の結合を抑えて超電導特性を良好に発揮することができる超電導線材及びそれを用いた超電導コイルを提供することにある。
上記の目的を達成するために、本発明の超電導線材は、基板上に中間層を介して希土類系酸化物の超電導体による超電導層を形成し、該超電導層上に保護層を形成するとともに、その保護層上に安定化層を、超電導線材の外周部を被覆するように形成したテープ状の超電導線材であって、前記超電導線材の幅方向端部における安定化層の電気抵抗を、それ以外の側部における安定化層の電気抵抗よりも高く設定したことを特徴とする。
前記幅方向端部における安定化層の厚さを、それ以外の側部の安定化層の厚さよりも薄く形成して電気抵抗を高くすることが好ましい。
前記幅方向端部における安定化層を銅よりも電気抵抗率の高い材料で形成し、それ以外の側部の安定化層を銅で形成して電気抵抗を高くすることが好ましい。
前記銅よりも電気抵抗率の高い材料は、スズ・ビスマス合金、銅とスズ・ビスマス合金との混合物、ステンレス鋼、鉛・スズ合金又は銅・ニッケル・クロム合金であることが好ましい。
前記幅方向端部における安定化層の電気抵抗率は、1×10−5Ω・cm〜1×10−3Ω・cmであることが好ましい。
超電導コイルは、超電導線材がコイル状に巻回されて形成され、隣り合う超電導線材の安定化層間が電気的に導通されて構成された超電導コイルであって、前記超電導線材は、前述した超電導線材であることを特徴とする。
前記超電導線材の幅方向端部における安定化層の電気抵抗は、超電導コイルの径方向における電気抵抗から超電導線材間の接触部における電気抵抗を差し引いたものであることが好ましい。
本発明の超電導線材によれば、常電導転移発生時に超電導線材の損傷を抑制しつつ、超電導線材間の結合を抑えて超電導特性を良好に発揮することができるという効果を奏する。
(a)は実施形態における超電導コイルとしてのシングルパンケーキコイルを示す斜視図、(b)は超電導コイルの一部を示す断面図。 超電導線材を拡大して示す断面図。 超電導コイルとしてのシングルパンケーキコイルの電気的構成を示す等価回路。 2つの超電導線材の超電導層側の面同士を重ね合せて接触部を形成した状態を示す説明図。 2つの超電導線材の超電導層側の面とその反対側の面とを重ね合せて接触部を形成した状態を示す説明図。 比較例1等における通電時間(秒)とコイルの中心磁場(T)との関係を示すグラフ。 実施例1〜3等における通電時間(秒)とコイルの中心磁場(T)との関係を示すグラフ。 実施例4〜6等における通電時間(秒)とコイルの中心磁場(T)との関係を示すグラフ。
以下、本発明の実施形態を図1及び図2に基づいて詳細に説明する。
図2に示すように、本実施形態の超電導線材11は、基板12上に超電導層14等の複数の層を積層してテープ状に形成されている。すなわち、基板12上には電気絶縁性の中間層13を介して希土類系酸化物の超電導体による超電導層14が形成されている。その超電導層14上には保護層15が形成され、該保護層15上には安定化層16が超電導線材11の外周部を被覆するように形成されている。
前記基板12は、ニッケル合金(ハステロイ)、銀、銀合金等の金属により形成される。中間層13は、ガドリニウム・ジルコニウム酸化物(Gd・Zr酸化物)、酸化マグネシウム(MgO)、イットリウム安定化ジルコニウム(YSZ)、バリウム・ジルコニウム酸化物(Ba・Zr酸化物)、酸化セリウム(CeO)等の化合物により形成される。
超電導層14は、希土類系酸化物超電導体のCVD法(化学蒸着法)により形成される。希土類元素としては、ランタン(La)、ネオジム(Nd)、サマリウム(Sm)、ユウロピウム(Eu)、ガドリニウム(Gd)、ジスプロシウム(Dy)、ホルミウム(Ho)、エルビウム(Er)、イットリウム(Y)、イッテルビウム(Yb)等が挙げられる。希土類系酸化物としては、RE・Ba・Cu・O等が挙げられる。前記REは希土類元素を表す。この超電導層14として具体的には、イットリウム・バリウム・銅酸化物(Y・Ba・Cu酸化物)、ランタン・バリウム・銅酸化物(La・Ba・Cu酸化物)等が挙げられる。
保護層15は、銀等の金属のスパッタリング等により形成される。安定化層16は、銅等の金属のメッキ等により形成される。超電導層14上に保護層15や安定化層16を形成することにより、超電導層14を保護できるとともに、過電流を超電導層14から保護層15や安定化層16に流すことができる。前記超電導線材11の幅は、実用的な観点から1〜12mm程度が好ましい。
前記超電導線材11の幅方向(x方向)の端部(両端部)における安定化層16aの電気抵抗は、それ以外の側部における安定化層16bの電気抵抗よりも高くなるように設定される。
図1(b)に示すように、該超電導線材11を用いて超電導コイル20を作製する場合には、超電導線材11間の接触部17を電気的に絶縁することなく、超電導線材11を巻回して製造し、無絶縁コイルとする。このような無絶縁コイルは、常電導転移の発生時に超電導線材11間すなわち安定化層16間に電流が流れて発熱が抑えられ、超電導コイル20の損傷を抑制することができる。
しかしながら、無絶縁コイルでは通電時において誘導電圧が発生したとき安定化層16間に電流が流れることから、超電導線材11間に結合が生じて超電導コイル20の特性が発揮できなくなる。すなわち、超電導コイル20に通電して励磁したときコイル電流の変化によって誘導電圧が発生し、超電導コイル20の中心磁場の立ち上がりが遅れ、所定磁場に到達するまでに時間を要し、言い換えれば励磁速度を増大させることができなくなる。
このような欠点を解消するために、前述のように超電導線材11の幅方向端部における安定化層16aの電気抵抗は、それ以外の側部(接触部17側の部分)における安定化層16bの電気抵抗よりも高くなるように設定される。このように構成すれば、超電導線材11の安定化層16間に流れる電流を抑えることができ、前記の弊害を抑制することができる。
超電導線材11の幅方向端部における安定化層16aの電気抵抗を、それ以外の側部における安定化層16bの電気抵抗よりも高く設定する方法としては、例えば当該安定化層16aの厚さを変更する方法と、安定化層16aの材質を変更する方法とがある。
前者の方法は、安定化層16aの厚さを、安定化層16bの厚さよりも薄く形成するものである。安定化層16aの厚さを薄くすることにより、安定化層16aの電気抵抗を高めることができ、そこを流れる電流を抑制することができる。安定化層16aの厚さを調整することにより、安定化層16aの電気抵抗を所望の値に変化させることができる。
後者の方法は、安定化層16aを銅よりも電気抵抗率の高い材料で形成し、安定化層16bを銅で形成するものである。前記銅よりも電気抵抗率の高い材料としては、例えばスズ・ビスマス合金、銅とスズ・ビスマス合金との混合物、ステンレス鋼、鉛・スズ合金又は銅・ニッケル・クロム合金が好ましい。この場合にも、幅方向端部における安定化層16aの電気抵抗を高めることができ、そこを流れる電流を抑えることができる。安定化層16aの電気抵抗は、前記材料の中から所望の材料を選択することにより調整することができる。
前記安定化層16aの電気抵抗率は、1×10−5Ω・cm〜1×10−3Ω・cmであることが好ましい。本実施形態の超電導線材11において、幅方向端部に流すことができる電流は、超電導コイル20の使用条件によって変わるが、77Kでは40A程度、30Kでは200A程度であるとともに、銅の電気抵抗率は77Kで0.25×10−8Ω・mである。このため、安定化層16aの厚さが5〜20μmのときには、安定化層16aの電気抵抗率はほぼ1×10−5Ω・cmとなる。
一方、超電導層14が希土類系酸化物の超電導体で形成された超電導線材11であって、使用温度が90K以下の場合には、1×10−7Ω・cm程度である。また、安定化層16を超電導線材11の外周部に被覆するためには、安定化層16の厚さを少なくとも0.5μmにする必要がある。そのため、安定化層16aの電気抵抗率の上限はほぼ1×10−3Ω・cmとなる。従って、安定化層16aの電気抵抗率は、1×10−5Ω・cm〜1×10−3Ω・cmの範囲が好ましい。
図1(a)、(b)に示すように、超電導コイル20としてのシングルパンケーキコイルは、前記超電導線材11がコイル状(渦巻き状)に巻回されて形成され、隣り合う超電導線材11の安定化層16間が電気的に導通されて構成されている。超電導線材11の両端部には、通電用の電極21,22が接続されている。この超電導コイル20においては、超電導線材11の幅方向端部における安定化層16aの電気抵抗は、それ以外の側部における安定化層16bの電気抵抗よりも高く設定されていることから、安定化層16が超電導線材11の外周部全体に均一に形成されている場合に比べ、超電導コイル20の径方向の電気抵抗を高くすることができる。
図1(b)の矢印に示すように、超電導線材11の超電導層14を流れない電流は、超電導線材11間の接触部17で隣接する超電導線材11の超電導層14が形成されていない側へ流れ、この電流は基板12や中間層13を流れることはできないため、安定化層16bを通って超電導線材11の幅方向端部へ流れ込む。その電流は、超電導線材11の幅方向端部の安定化層16aを経て超電導線材11の超電導層14のある側へ到達し、さらに電流は接触部17を介して隣りの超電導線材11へ流れていく。前記接触部17は超電導線材11の幅全体にわたっていることから電気抵抗の制御が難しいが、超電導線材11の幅方向端部の安定化層16aは超電導線材11の幅方向の一部であって断面積が小さいため電気抵抗の制御が容易である。具体的には、安定化層16aの厚さや材質を変更することにより、超電導コイル20の径方向の電気抵抗を制御することができる。
なお、保護層15にも前記電流が流れるため安定化層16に代えて保護層15の電気抵抗を制御することも考えられるが、安定化層16は保護層15よりも厚く形成されるとともに、超電導線材11の外周部全体に形成されることから、安定化層16の方が保護層15よりも電気抵抗の制御を容易に行うことができる。
前記超電導線材11の幅方向端部における安定化層16aの電気抵抗は、超電導コイル20の径方向における電気抵抗から超電導線材11間の接触部17における電気抵抗を差し引いたものである。従って、前記接触部17における電気抵抗に対する安定化層16aの電気抵抗の割合を決定することができ、その割合を基準として安定化層16aの電気抵抗の制御を容易に行うことができる。
次に、本実施形態の超電導線材11及び超電導コイル20につき作用を説明する。
さて、超電導コイル20に常電導転移が生じたとき、電流は接触部17において隣接する超電導線材11の安定化層16へ流れ込む。このため、超電導コイル20を構成する超電導線材11は局部的に発熱する事態が回避され、超電導線材11の損傷が抑えられる。
図1(b)に示すように、超電導コイル20に通電して誘導電圧が発生したときには、超電導層14を流れない電流が超電導線材11間の接触部17で隣接する超電導線材11の超電導層14が形成されていない側へ流れ、その電流は安定化層16bを通って超電導線材11の幅方向端部へ流れ込む。その電流は、超電導線材11の幅方向端部の安定化層16aを経て超電導線材11の超電導層14のある側へ到達し、さらに電流は接触部17を介して隣りの超電導線材11へと流れる。
このとき、本実施形態の超電導線材11では、その幅方向端部における安定化層16aの電気抵抗がそれ以外の側部の安定化層16bの電気抵抗より高く形成されている。このため、超電導線材11内の安定化層16aの側部を通って流れる電流が抑制される。すなわち、隣接する超電導線材11へ流れる電流が減少し、その結果隣接する超電導線材11間の接触部17における結合が抑えられ、超電導コイル20の超電導特性が維持される。
以上詳述した実施形態によって得られる効果を以下にまとめて記載する。
(1)この実施形態の超電導線材11では、その幅方向端部における安定化層16aの電気抵抗を、それ以外の側部における安定化層16bの電気抵抗よりも高く設定した。このため、超電導コイル20において、その幅方向端部の安定化層16aを流れる電流を制限することができ、超電導線材11間の結合を防止することができる。その結果、超電導線材11は発熱が抑えられ、超電導特性の低下を回避することができる。
従って、この実施形態の超電導線材11によれば、常電導転移発生時に超電導線材11の損傷を抑制しつつ、超電導線材11間の結合を抑えて超電導特性を良好に発揮することができる。
(2)前記幅方向端部における安定化層16aの厚さを、それ以外の側部の厚さよりも薄く形成して電気抵抗を高くした。このため、幅方向端部における安定化層16aの厚さのみを変更するだけで、超電導線材11の超電導特性を簡単に保持することができる。
(3)前記幅方向端部における安定化層16aを銅よりも電気抵抗率の高い材料で形成し、それ以外の側部の安定化層16bを銅で形成した。そのため、幅方向端部における安定化層16aの材質を変更することにより、超電導線材11の超電導特性を容易に維持することができる。
(4)前記銅よりも電気抵抗率の高い材料は、スズ・ビスマス合金、銅とスズ・ビスマス合金との混合物、ステンレス鋼、鉛・スズ合金又は銅・ニッケル・クロム合金である。この場合には、幅方向端部における安定化層16aの材質を選択して使用することにより、安定化層16aの電気抵抗を調整することができる。
(5)前記幅方向端部における安定化層16aの電気抵抗率は、1×10−5Ω・cm〜1×10−3Ω・cmである。このため、実用に供される超電導線材11について、常電導転移発生時における損傷を抑制できるとともに、超電導特性を有効に発現することができる。
(6)超電導コイル20は、前記超電導線材11がコイル状に巻回されて形成され、隣り合う超電導線材11の安定化層16間が電気的に導通されて構成されている。そのため、常電導転移発生時には超電導線材11間に電流が流れ、超電導線材11の損傷を抑制できるとともに、超電導線材11の幅方向端部を流れる電流を抑え、超電導線材11間の結合を抑制し、超電導特性を良好に発揮することができる。
(7)前記安定化層16aの電気抵抗は、超電導コイル20の径方向における電気抵抗から超電導線材11間の接触部17における電気抵抗を差し引いたものである。このため、超電導線材11の幅が一定範囲内であれば、幅方向端部における安定化層16aの電気抵抗を超電導線材11の接触部17における電気抵抗に基づいて設定することができる。
以下に、参考例、実施例及び比較例を挙げて前記実施形態をさらに具体的に説明する。
(参考例1〜5)
図4に示すように、下記に示す超電導線材11を一対使用し、各超電導線材11の超電導層14側の面を重ねてハンダ付けし、第1の接触部17aとした。図5に示すように、下記に示す超電導線材11を一対使用し、一方の超電導線材11の超電導層14側の面と他方の超電導線材11の超電導層14と反対側の面とを重ねてハンダ付けし、第2の接触部17bとした。各超電導線材11の幅は4mmであり、第1の接触部17a及び第2の接触部17bの長さは各々20cmである。また、各超電導線材11の端部には電極21、22を接続した。
(超電導線材)
超電導線材11の基板12として、ニッケル合金(ハステロイ)により厚さ50μmのものを用いた。その基板12上には、酸化マグネシウム(MgO)により厚さ80nmの中間層13を形成した。中間層13上には、イットリウム・バリウム・銅酸化物(Y・Ba・Cu酸化物)により厚さ1.2μmの超電導層14を形成した。超電導層14上には、銀(Ag)により厚さ8μmの保護層15を形成した。保護層15上には、表1の参考例1〜5に示す材質及び厚さの安定化層16を、超電導線材11の外周部を覆うように形成した。
そして、参考例1〜5の超電導線材11について、液体窒素の温度(77K)で第1の接触部17aと第2の接触部17bの電気抵抗をそれぞれ直流四端子法にて測定した。得られた第1の接触部17aの電気抵抗と第2の接触部17bの電気抵抗との差から、超電導線材11の幅方向端部の電気抵抗(μΩ)を求め、その値から第1の接触部17a又は第2の接触部17bの単位長さ当たりの電気抵抗率(μΩ・cm)を求めた。それらの結果を表1に併せて示した。
表1に示したように、安定化層16の材質が銅(Cu)である参考例1及び2の場合には、厚さの薄い参考例2が参考例1よりも電気抵抗率が高くなった。安定化層16の材質が銅とスズ・ビスマス合金(Sn・Bi)との混合物よりなる参考例3及び4の場合には、銅及びスズ・ビスマス合金の厚さの薄い参考例4の方が電気抵抗率が高くなった。さらに、スズ・ビスマス合金で厚さが10μmの参考例5の場合には、電気抵抗率が最も高い値を示した。
(比較例1〜3)
前記参考例1の超電導線材11を常法に従ってコイル状に60ターン巻回し、内径60mm、外径71mmの超電導コイル20としてのシングルパンケーキコイルを作製した。該シングルパンケーキコイルでは、安定化層16全体が銅で均一に形成され、ターン間が電気的に導通されている。このシングルパンケーキコイルを液体窒素の温度に冷却し、50A/2秒の掃引速度で50Aまで通電し、その状態を保持した。そして、通電時間(秒)とシングルパンケーキコイルの中心磁場(T)の変化をホール素子により測定した。その結果を図6に示した。
図6において、実線は比較例1を示し、破線は等価回路を用いてシングルパンケーキコイルのターン間の接触抵抗(径方向の電気抵抗率)を100μΩ・cmとしたとき(比較例2)の中心磁場の変化を示したものである。また、一点鎖線は、シングルパンケーキコイルのターン間を電気的に絶縁した場合(比較例3)における中心磁場の変化を示したものである。
ここで、前記等価回路について説明する。図3に示すように、この等価回路においては、安定化層16における電気抵抗(R2)と超電導線材11の通電特性に由来する電気抵抗(R3)とが並列接続されている。その並列接続に対して超電導コイル20の自己インダクタンス(L)が直列接続されている。さらに、それらに対して超電導線材11の径方向の電気抵抗(R1)が並列接続されている。
そして、入力電流(I)は自己インダクタンス(L)へ流れる電流(I)と、電気抵抗(R1)へ流れる電流(I)とに分岐される。前記電流(I)は、さらに電気抵抗(R3)を流れる電流(I)と電気抵抗(R2)を流れる電流(I)とに分岐される。
この等価回路においては、以下の関係式(1)〜(3)が成立する。
L(dI/dt)+R2×I=R1(I−I) ・・・(1)
R2×I=V×(I/I ・・・(2)
+I=I ・・・(3)
上記Iは臨界電流、Vは臨界電圧を表す。
但し、前記自己インダクタンス(L)の値は次式で算出される。
L=(μhN2/2π)log(b/a)
上記μは透磁率、hは超電導コイル20の高さ、Nは超電導コイル20の巻き数、aは超電導コイル20の内半径、bは超電導コイル20の外半径を示す。
この図6の結果より、比較例1の場合には等価回路を用いた場合とほぼ同様の挙動を示したが、ターン間を絶縁した場合に比べると、中心磁場の変化が通電電流の変化に対して遅れた。すなわち、実施例1では、中心磁場が0.057Tに到達するまでに8秒程度要した。これは、シングルパンケーキコイルのターン間(超電導線材11間)に電流が流れ、電気的な結合が生じているためと考えられる。
(実施例1〜3)
前記等価回路において、シングルパンケーキコイルのターン間の電気抵抗R1は、シングルパンケーキコイルの径方向の電気抵抗であり、超電導線材11間の接触抵抗と超電導線材11の幅方向端部の電気抵抗との和である。このため、実施例1では、超電導線材11の幅方向端部以外の側部を前記参考例1の材質及び厚さとし、幅方向端部を参考例2の材質及び厚さとした。実施例2では、超電導線材11の幅方向端部以外の側部を前記参考例1の材質及び厚さとし、幅方向端部を参考例4の材質及び厚さとした。また、実施例3では、超電導線材の幅方向端部以外の側部を前記参考例1の材質及び厚さとし、幅方向端部を参考例5の材質及び厚さとした。
各シングルパンケーキコイルを液体窒素の温度に冷却し、50A/2秒の掃引速度で50Aまで通電し、その状態を保持した。そして、通電時間(秒)とシングルパンケーキコイルの中心磁場(T)の変化をホール素子により測定した。その結果を図7に示した。
図7において、実線は比較例1、破線は実施例1、一点鎖線は実施例2及び二点鎖線は実施例3を示す。
この図7の結果より、シングルパンケーキコイルの幅方向端部の電気抵抗率が高くなるほど所定の中心磁場へ到達するまでの時間を短縮することができた。すなわち、比較例1より実施例1、実施例1より実施例2、実施例2より実施例3の方が所定の中心磁場へ到達するまでの時間が短縮された。
(実施例4〜6及び比較例4)
実施例4〜6では、前記実施例1〜3において、超電導線材11の幅を10mmとした以外はそれぞれ実施例1〜3と同様に実施した。すなわち、実施例4では、超電導線材11の幅方向端部以外の側部を前記参考例1の材質及び厚さとし、幅方向端部を参考例2の材質及び厚さとした。実施例5では、超電導線材11の幅方向端部以外の側部を前記参考例1の材質及び厚さとし、幅方向端部を参考例4の材質及び厚さとした。また、実施例6では、超電導線材11の幅方向端部以外の側部を前記参考例1の材質及び厚さとし、幅方向端部を参考例5の材質及び厚さとした。また、比較例4では、シングルパンケーキコイルのターン間を電気的に絶縁した。
各シングルパンケーキコイルを液体窒素の温度に冷却し、50A/2秒の掃引速度で125Aまで通電し、その状態を保持した。そして、通電時間(秒)とシングルパンケーキコイルの中心磁場(T)の変化をホール素子により測定した。その結果を図8に示した。
図8において、実線は比較例1、破線は実施例4、一点鎖線は実施例5、二点鎖線は実施例6及び太線は比較例4を示す。
この図8の結果より、シングルパンケーキコイルの幅方向端部の電気抵抗が高くなるほど所定の中心磁場へ到達するまでの時間を短縮することができた。すなわち、比較例1より実施例4、実施例4より実施例5、実施例5より実施例6の方が所定の中心磁場へ到達するまでの時間が短縮された。
また、実施例4〜6の場合には、それぞれ実施例1〜3の場合に比べて所定の中心磁場へ到達するまでの時間が長くなった。これは、超電導線材11の幅が4mmから10mmまで2.5倍になったため、超電導線材11間の接触抵抗は2.5分の1になり、径方向の電気抵抗R1が小さくなったからである。従って、実施例4〜6では、励磁速度が実施例1〜3より低下した。
なお、前記実施形態を次のように変更して具体化することも可能である。
・前記超電導線材11の幅方向におけるいずれか一方の端部に位置する安定化層16aの電気抵抗のみを、それ以外の側部の安定化層16bの電気抵抗より高くなるように設定してもよい。
・前記超電導線材11の幅方向端部における安定化層16aの材質を銅よりも電気抵抗率の高い材料で形成し、かつその安定化層16aの厚さをそれ以外の側部の安定化層16bの厚さより薄く形成してもよい。
・前記超電導線材11の幅方向端部の安定化層16aの電気抵抗に加えて、幅方向端部の保護層15の電気抵抗を、各々それ以外の側部の安定化層16b及び保護層15の電気抵抗より高くなるように設定してもよい。
・前記超電導コイル20は、ダブルパンケーキコイルやソレノイドコイルであってもよい。
11…超電導線材、12…基板、13…中間層、14…超電導層、15…保護層、16…安定化層、16a…幅方向端部における安定化層、16b…幅方向端部以外の側部における安定化層、17…接触部、17a…第1の接触部、17b…第2の接触部、20…超電導コイル、x…幅方向。

Claims (7)

  1. 基板上に中間層を介して希土類系酸化物の超電導体による超電導層を形成し、該超電導層上に保護層を形成するとともに、その保護層上に安定化層を、超電導線材の外周部を被覆するように形成したテープ状の超電導線材であって、
    前記超電導線材の幅方向端部における安定化層の電気抵抗を、それ以外の側部における安定化層の電気抵抗よりも高く設定したことを特徴とする超電導線材。
  2. 前記幅方向端部における安定化層の厚さを、それ以外の側部の安定化層の厚さよりも薄く形成して電気抵抗を高くした請求項1に記載の超電導線材。
  3. 前記幅方向端部における安定化層を銅よりも電気抵抗率の高い材料で形成し、それ以外の側部の安定化層を銅で形成して電気抵抗を高くした請求項1又は請求項2に記載の超電導線材。
  4. 前記銅よりも電気抵抗率の高い材料は、スズ・ビスマス合金、銅とスズ・ビスマス合金との混合物、ステンレス鋼、鉛・スズ合金又は銅・ニッケル・クロム合金である請求項3に記載の超電導線材。
  5. 前記幅方向端部における安定化層の電気抵抗率は、1×10−5Ω・cm〜1×10−3Ω・cmである請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の超電導線材。
  6. 超電導線材がコイル状に巻回されて形成され、隣り合う超電導線材の安定化層間が電気的に導通されて構成された超電導コイルであって、
    前記超電導線材は、請求項1から請求項5のいずれか一項に記載された超電導線材であることを特徴とする超電導コイル。
  7. 前記超電導線材の幅方向端部における安定化層の電気抵抗は、超電導コイルの径方向における電気抵抗から超電導線材間の接触部における電気抵抗を差し引いたものである請求項6に記載の超電導コイル。
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