JP6482999B2 - モータ駆動装置及びモータ駆動装置の制御方法 - Google Patents
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Description
同様に、インバータの下アームの全てがオンに制御され上アームの全てがオフに制御されている状態は、電流検出器の電流検出値が零になる条件であるが、上アームを構成するスイッチング素子にショート故障が発生していると、誤った零点補正を行うことになってしまう。
図1は、3相ブラシレスモータ1及びモータ駆動装置2の一例を示す回路図である。
図1の3相ブラシレスモータ1は、例えば、車両の電動パワーステアリング装置において操舵のアシストトルクを発生する電動アクチュエータや、車両の各種ポンプを駆動する電動アクチュエータとして用いられる。
3相ブラシレスモータ1を駆動するモータ駆動装置2は、駆動回路212と制御部213とを備える。
3相ブラシレスモータ1は、スター結線されるU相、V相及びW相の3相巻線215u、215v、215wを図示省略した円筒状の固定子に備え、該固定子の中央部に形成した空間に永久磁石回転子(ロータ)216を回転可能に備える、3相DCブラシレスモータである。
但し、3相ブラシレスモータ1に磁極位置センサを備え、制御部213は、係る磁極位置センサの出力に基づきロータの角度(磁極位置)を検出して3相ブラシレスモータ1を駆動制御することができる。
インバータ212aのスイッチング素子217a〜217fは例えばFETで構成され、スイッチング素子217a〜217fの各制御端子(ゲート端子)は制御部213の出力ポートに接続される。そして、スイッチング素子217a〜217fのオン/オフは制御部213によって制御される。
三角波比較方式のPWM制御においては、三角波(キャリア)と、指令デューティ比(指令電圧)に応じて設定されるPWMタイマとを比較することで、各スイッチング素子217a〜217fをオン/オフさせるタイミング、換言すれば、各相のスイッチング素子の制御信号であるPWMパルスの立ち上げ及び立ち下げのタイミングを検出する。
つまり、1つの相の上アームのオン/オフを制御するPWMパルスが論理レベルでハイのとき、同じ相の下アームのオン/オフを制御するPWMパルスは論理レベルでローとなり、全相の上アームがオンのときに全相の下アームがオフに、全相の下アームがオンのときに全相の上アームがオフになる。
電流検出器220は、各相の下アームと電源回路219の接地側との間に直列に接続したシャント抵抗220aと、オペアンプなどを含む検出回路220bとから構成される。検出回路220bは、シャント抵抗220aの抵抗分で発生する電流に比例した電圧を検出し、係る電圧のアナログ信号を出力する。
制御部213は、例えば、回転子位置と指令トルクとに基づくベクトル制御方式によって3相指令電圧Vu、Vv、Vwを決定し、この指令電圧に基づきインバータ212aをPWM制御する。
電流検出器220は、インバータ212aの直流母線電流を検出するが、各相のPWMパルスの組み合わせによって電流検出器220の出力が1つの相の相電流を検出する状態になることを利用して、制御部213は、各相の相電流を電流検出器220の出力から検出する。
つまり、各相の上アームのうちの1つがオンで他の2つがオフであるPWMパルスの組み合わせ状態において、電流検出器220は、上アームがオン制御されている1つの相の相電流を検出することになる。
つまり、各相の上アームのうちの2つがオンで他の1つがオフであるPWMパルスの組み合わせ状態において、電流検出器220は、上アームがオフ制御されている1つの相の相電流を検出することになる。
そこで、制御部213は、係る特性を利用して電流検出器220の出力から各相の電流を検出し、検出した相電流値をPWM制御に用いる。
図2において、相電流検出部501(相電流検出手段)は、検出回路220bの出力のA/D変換値、換言すればインバータ212aの直流母線電流の検出値に基づき、各相の相電流Iu、Iv、Iwを検出する。
そして、相電流検出部501は、相電流検出区間内に相電流検出タイミング(検出回路220bの出力のA/D変換値のサンプリングタイミング)を設定し、この相電流検出タイミングで電流検出器220の出力をサンプリングし、サンプリング値から求めた電流値をそのときに検出対象として特定されている相の相電流検出値とする。
ここで、制御部213がセンサレス駆動方式で3相ブラシレスモータ1をPWM制御する場合、角度・角速度演算部502は、モータの逆起電力に基づき回転子位置を推定し、推定した回転子位置に基づき角速度を演算する。
また、3相−2軸変換器503は、相電流検出部501による相電流検出値Iu、Iv、Iwを、そのときのモータ角度(磁極位置)θに基づいて2軸の回転座標系(d−q座標系)の実電流Id,Iqに変換する。
そして、ベクトル制御部504は、d軸,q軸指令電流、角速度、及び実電流Id,Iqに基づきd−q座標系の指令電圧Vq,Vdを決定し、決定した指令電圧Vq,Vdを2軸−3相変換器505に出力する。
なお、2軸−3相変換器505は、指令電圧Vu、Vv、Vwを補正することにより、三角波キャリアの谷を中心として生成されるPWMパルスを前後にシフトさせるパルスシフト処理機能を有する。上記のパルスシフト処理は、相電流の検出区間を生成するために実施される処理であり、後に詳細に説明する。
同様にして、PWM変調部506は、V相の上下アームを駆動するためのスイッチングゲート波形、及び、W相の上下アームを駆動するためのスイッチングゲート波形を生成する。
インバータ212aの直流母線電流に基づき各相の相電流を検出する場合、2相の相電流を電流検出器220の出力から検出できれば、残りの1相の電流は相電流の総和が零になることを用いて演算により求めることができる。
例えば、PWMパルスの位相を進角させる場合、2軸−3相変換器505は、キャリアの谷よりも前の半周期で指令電圧を増大補正し、キャリアの谷よりも後の半周期で指令電圧を減少補正する。また、PWMパルスの位相を遅角させる場合、2軸−3相変換器505は、キャリアの谷よりも前の半周期で指令電圧を減少補正し、キャリアの谷よりも後の半周期で指令電圧を増大補正する。
そして、ベクトル制御部504は、指令電圧Vq,Vdの演算処理を、電流検出器220の出力から検出した2相の相電流検出値と、これらに基づき演算した残る1相の相電流値とを用いて行う。
係るパルスシフトによって、キャリアの谷よりも前の期間で、U相の上アーム及びV相の上アームがオンでW相の上アームがオフである電流検出期間が生成され、係る電流検出期間(時刻t2)で電流検出器220はW相の相電流Iwを検出する。
そこで、相電流検出部501は、キャリアの谷よりも前のU相の上アーム及びV相の上アームがオンでW相の上アームがオフである電流検出期間で電流検出器220の出力をサンプリングすることでW相の相電流Iwを検出し、キャリアの谷よりも後のU相の上アーム及びW相の上アームがオンでV相の上アームがオフである電流検出期間で電流検出器220の出力をサンプリングすることでV相の相電流Ivを検出する。
また、制御部213は、電流検出器220のオフセット誤差(零点誤差)を補正するオフセット補正部(零点補正手段)507を備える。
オフセット補正部507は、前記零点出力値に基づき、電流検出器220の出力をオフセット補正するための補正値を設定したり、電流検出器220の出力を変換して求めた電流検出値をオフセット補正するための補正値を設定したり、電流検出器220の出力を電流検出値に変換する変換特性を補正したりする。
したがって、オフセット補正部507は、各相の上アームが全てオンに制御されている状態若しくは各相の下アームが全てオンに制御されている状態での電流検出器220の出力(零点出力値)から、電流検出器220のオフセット誤差(零点誤差)を検知することができる。
そこで、オフセット補正部507は、上アーム又は下アームのショート故障に対処する手段、つまり、ショート故障の発生時にオフセット誤差(零点誤差)の検知をキャンセルする手段を備えている。
そこで、制御部213は、第1電流検出値と第2電流検出値とを求め、これらの偏差の絶対値と閾値とを比較し、偏差の絶対値が閾値以下であるとき、換言すれば、インバータ212aのスイッチング素子のショート故障がないときに、第1電流検出値と第2電流検出値との少なくとも一方に基づきオフセット補正値の更新(学習)を実施する。
なお、前記閾値は、偏差がばらつき範囲内の値であるか、偏差がばらつき範囲を超えていて何らかの回路異常がインバータ212aに発生している状態を示す値であるかを区別するための値であり、予め実験やシミュレーションに基づき適合され、制御部213のメモリに格納されている。
そこで、制御部213は、インバータ212aの動作を、電源リレーや各相の通電ラインにそれぞれ設けた相リレーのオフ制御、PWM制御出力の停止などによって停止させる。
図4のフローチャートにおいて、制御部213は、ステップS101で、各相の上アーム(スイッチング素子217a,217c,217e)が全てオンに制御され、各相の下アーム(スイッチング素子217b,217d,217f)が全てオフに制御されている状態での電流検出器220による電流検出値を、第1電流検出値としてサンプリングして記憶する処理を実施する。
ここで、第1電流検出値と第2電流検出値との偏差の絶対値が閾値以下である場合、制御部213は、オフセット補正値の更新設定を行うためのステップS104以降に進む。
そこで、制御部213は、第1電流検出値と第2電流検出値との偏差の絶対値が閾値以下であることを条件に、第1電流検出値、第2電流検出値に基づくオフセット補正値の設定処理を実施する。
そして、第1電流検出値よりも第2電流検出値が小さい場合(第1電流検出値>第2電流検出値)、制御部213は、ステップS105に進み、電流検出器220が第2電流検出値に相当する出力を発生するときにオフセット補正値で補正した電流検出値が零になるように、電流検出値のオフセット補正値を設定する。
また、第1電流検出値よりも第2電流検出値が小さくない場合(第1電流検出値≦第2電流検出値)、制御部213は、ステップS106に進み、電流検出器220が第1電流検出値に相当する出力を発生するときにオフセット補正値で補正した電流検出値が零になるように、電流検出値のオフセット補正値を設定する。
第1電流検出値と第2電流検出値とのうちの低い方を選択する構成とすれば、オフセット補正値の変動を抑制し、安定した電流検出が行える。
例えば、制御部213は、第1電流検出値と第2電流検出値との平均値に基づいてオフセット補正値を設定したり、オフセット補正値の設定に用いる電流検出値を第1電流検出値と第2電流検出値とのいずれか一方に予め固定したりすることができる。
更に、制御部213は、オフセット補正値(オフセット補正値の設定に用いる電流検出値)の前回値と今回値との加重平均演算を行い、加重平均値を最終的なオフセット補正値に設定することができる。
そこで、制御部213は、第1電流検出値と第2電流検出値との偏差の絶対値が閾値よりも大きいこと、換言すれば、インバータ212aの回路異常が発生していることを検知すると、ステップS107に進み、インバータ212aの動作(インバータ212aによる3相ブラシレスモータ1への電力供給)を、リレーのオフ制御やPWM出力の停止などによって停止させる。
例えば、制御部213は、第1電流検出値及び第2電流検出値のサンプリング、及び、サンプリング値に基づくオフセット補正値の設定をPWM周期毎に毎回実施する必要はなく、PWM周期の複数周期毎に1回実施したり、所定時間周期毎に実施したり、3相ブラシレスモータ1の起動時に実施したりすることができる。
Claims (6)
- 3相ブラシレスモータに交流電力を供給するインバータと、前記インバータの直流母線電流を検出する電流検出器と、前記電流検出器の出力を入力し前記インバータをPWM制御する制御部と、を含むモータ駆動装置であって、
前記制御部は、前記インバータの全相の上アームがオン制御状態であるときの前記電流検出器の第1電流検出値と前記インバータの全相の下アームがオン制御状態であるときの前記電流検出器の第2電流検出値との偏差が閾値以下であるときに、前記第1電流検出値と前記第2電流検出値との少なくとも一方に基づき前記電流検出器の零点補正を行う、モータ駆動装置。 - 前記制御部は、前記偏差が前記閾値を超えるときに前記インバータの動作を停止させる、請求項1記載のモータ駆動装置。
- 前記制御部は、前記第1電流検出値と前記第2電流検出値とのうちのより低い方を前記電流検出器の零点とする、請求項1又は請求項2記載のモータ駆動装置。
- 前記制御部は、前記第1電流検出値と前記第2電流検出値との平均値を前記電流検出器の零点とする、請求項1又は請求項2記載のモータ駆動装置。
- 3相ブラシレスモータに交流電力を供給するインバータと前記インバータの直流母線電流を検出する電流検出器とを含むモータ駆動装置の制御方法であって、
前記インバータの全相の上アームがオン制御状態であるときに前記電流検出器による第1電流検出値を求めるステップと、
前記インバータの全相の下アームがオン制御状態であるときの前記電流検出器による第2電流検出値を求めるステップと、
前記第1電流検出値と前記第2電流検出値との偏差を算出するステップと、
前記偏差が閾値以下であるときに前記第1電流検出値と前記第2電流検出値との少なくとも一方に基づき前記電流検出器の零点補正を行うステップと、
零点補正された前記電流検出器の電流検出値に基づき前記インバータをPWM制御するステップと、
を含む、モータ駆動装置の制御方法。 - 前記偏差が前記閾値を超えるときに前記インバータの動作を停止するステップを更に含む、請求項5記載のモータ駆動装置の制御方法。
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