JP6482999B2 - モータ駆動装置及びモータ駆動装置の制御方法 - Google Patents

モータ駆動装置及びモータ駆動装置の制御方法 Download PDF

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Description

本発明は、モータ駆動装置及びモータ駆動装置の制御方法に関し、詳しくは、インバータの直流母線電流を検出する電流検出器の零点補正に関する。
特許文献1には、ブラシレスモータの動作を監視する方法として、電流測定手段を使用してモータの巻線へ流入または流出する電流を監視して電流を表示する出力信号を生成し、電流測定手段を通して流れる瞬時電流が実質的にゼロと知られる時に電流測定手段の出力を測定し、実測定出力信号値と理想出力信号値の間の何らかの差を補償する修正出力信号を生成する各ステップを含む、方法が開示されている。
特許第5653779号公報
インバータの上アームの全てがオンに制御され下アームの全てがオフに制御されている状態は、インバータの直流母線電流を検出する電流検出器の電流検出値が零になる条件であるが、下アームを構成するスイッチング素子にショート故障が発生していると、ショート故障しているスイッチング素子を介して電流検出器に電流が流れるため、このときの電流検出値に基づき零点補正すると誤った補正になり、逆に電流検出精度を低下させることになってしまう。
同様に、インバータの下アームの全てがオンに制御され上アームの全てがオフに制御されている状態は、電流検出器の電流検出値が零になる条件であるが、上アームを構成するスイッチング素子にショート故障が発生していると、誤った零点補正を行うことになってしまう。
本発明は上記問題点に鑑みなされたものであり、インバータのスイッチング素子にショート故障が発生しているときに電流検出器の零点補正が誤って行われることを抑制できる、モータ駆動装置及びモータ駆動装置の制御方法を提供することを目的とする。
そのため、本願発明に係るモータ駆動装置は、3相ブラシレスモータに交流電力を供給するインバータと、前記インバータの直流母線電流を検出する電流検出器と、前記電流検出器の出力を入力し前記インバータをPWM制御する制御部と、を含むモータ駆動装置であって、前記制御部は、前記インバータの全相の上アームがオン制御状態であるときの前記電流検出器の第1電流検出値と前記インバータの全相の下アームがオン制御状態であるときの前記電流検出器の第2電流検出値との偏差が閾値以下であるときに、前記第1電流検出値と前記第2電流検出値との少なくとも一方に基づき前記電流検出器の零点補正を行うようにした。
また、本願発明に係るモータ駆動装置の制御方法は、3相ブラシレスモータに交流電力を供給するインバータと前記インバータの直流母線電流を検出する電流検出器とを含むモータ駆動装置の制御方法であって、前記インバータの全相の上アームがオン制御状態であるときに前記電流検出器による第1電流検出値を求めるステップと、前記インバータの全相の下アームがオン制御状態であるときの前記電流検出器による第2電流検出値を求めるステップと、前記第1電流検出値と前記第2電流検出値との偏差を算出するステップと、前記偏差が閾値以下であるときに前記第1電流検出値と前記第2電流検出値との少なくとも一方に基づき前記電流検出器の零点補正を行うステップと、零点補正された前記電流検出器の電流検出値に基づき前記インバータをPWM制御するステップと、を含むようにした。
上記発明によると、インバータの上アームと下アームとのいずれか一方にショート故障が発生したときには第1電流検出値と第2電流検出値との偏差が大きくなるから、前記偏差が閾値以下であるときに零点補正を行わせることで、ショート故障の発生状態で誤った零点補正が実施されることを抑制できる。
本発明の実施形態における3相ブラシレスモータの駆動回路の一態様を示す回路図である。 本発明の実施形態における3相ブラシレスモータのPWM制御の一態様を示す機能ブロック図である。 本発明の実施形態における相電流の検出タイミングの一態様を示すタイムチャートである。 本発明の実施形態におけるオフセット補正値の設定処理の一態様を示すフローチャートである。 本発明の実施形態におけるオフセット誤差の検出タイミングの一態様を示すタイムチャートである。
以下に本発明の実施の形態を説明する。
図1は、3相ブラシレスモータ1及びモータ駆動装置2の一例を示す回路図である。
図1の3相ブラシレスモータ1は、例えば、車両の電動パワーステアリング装置において操舵のアシストトルクを発生する電動アクチュエータや、車両の各種ポンプを駆動する電動アクチュエータとして用いられる。
3相ブラシレスモータ1を駆動するモータ駆動装置2は、駆動回路212と制御部213とを備える。
制御部213は、A/D変換器213aとマイクロコンピュータ213bとを備え、マイクロコンピュータ213bは、CPU,MPUなどのマイクロプロセッサやROM、RAMなどのメモリデバイスを含んで構成される。
3相ブラシレスモータ1は、スター結線されるU相、V相及びW相の3相巻線215u、215v、215wを図示省略した円筒状の固定子に備え、該固定子の中央部に形成した空間に永久磁石回転子(ロータ)216を回転可能に備える、3相DCブラシレスモータである。
3相ブラシレスモータ1は回転子の位置情報を検出するセンサを備えず、制御部213は、3相ブラシレスモータ1の駆動制御を回転子の位置情報を検出するセンサを用いないセンサレス駆動方式によって行う。
但し、3相ブラシレスモータ1に磁極位置センサを備え、制御部213は、係る磁極位置センサの出力に基づきロータの角度(磁極位置)を検出して3相ブラシレスモータ1を駆動制御することができる。
駆動回路212は、逆並列のダイオード218a〜218fを含んでなるスイッチング素子217a〜217fを3相ブリッジ接続したインバータ212aと、直流の電源回路219とを有し、インバータ212aは3相ブラシレスモータ1に交流電力を供給する。
インバータ212aのスイッチング素子217a〜217fは例えばFETで構成され、スイッチング素子217a〜217fの各制御端子(ゲート端子)は制御部213の出力ポートに接続される。そして、スイッチング素子217a〜217fのオン/オフは制御部213によって制御される。
制御部213は、インバータ212aのスイッチング素子217a〜217fのオン/オフを三角波比較方式のPWM(Pulse Width Modulation)によって制御して、3相ブラシレスモータ1に印加する電圧を制御する。
三角波比較方式のPWM制御においては、三角波(キャリア)と、指令デューティ比(指令電圧)に応じて設定されるPWMタイマとを比較することで、各スイッチング素子217a〜217fをオン/オフさせるタイミング、換言すれば、各相のスイッチング素子の制御信号であるPWMパルスの立ち上げ及び立ち下げのタイミングを検出する。
なお、制御部213は、各相の上アームのオン/オフを制御するPWMパルスに対し、各相の下アームのオン/オフを制御するPWMパルスを逆相とする相補方式で、インバータ212aのスイッチング素子217a〜217fをPWM制御する。
つまり、1つの相の上アームのオン/オフを制御するPWMパルスが論理レベルでハイのとき、同じ相の下アームのオン/オフを制御するPWMパルスは論理レベルでローとなり、全相の上アームがオンのときに全相の下アームがオフに、全相の下アームがオンのときに全相の上アームがオフになる。
また、インバータ212aの直流母線電流を検出する電流検出器220を、各相の下アーム(スイッチング素子217b,217d,217f)と電源回路219の接地側との間に設けてある。
電流検出器220は、各相の下アームと電源回路219の接地側との間に直列に接続したシャント抵抗220aと、オペアンプなどを含む検出回路220bとから構成される。検出回路220bは、シャント抵抗220aの抵抗分で発生する電流に比例した電圧を検出し、係る電圧のアナログ信号を出力する。
検出回路220bの電圧アナログ信号(直流母線電流の検出信号)は、A/D変換器213aでA/D変換されてマイクロコンピュータ213bに読み込まれる。
制御部213は、例えば、回転子位置と指令トルクとに基づくベクトル制御方式によって3相指令電圧Vu、Vv、Vwを決定し、この指令電圧に基づきインバータ212aをPWM制御する。
制御部213は、電流検出器220の出力を入力して各相の相電流を検出し、検出した相電流を用いてベクトル制御を実施する。
電流検出器220は、インバータ212aの直流母線電流を検出するが、各相のPWMパルスの組み合わせによって電流検出器220の出力が1つの相の相電流を検出する状態になることを利用して、制御部213は、各相の相電流を電流検出器220の出力から検出する。
例えば、U相の上アーム(スイッチング素子217a)がオンで、V相及びW相の上アーム(スイッチング素子217c及びスイッチング素子217e)が共にオフである場合は、U相に流れた電流がV相及びW相に分かれて流れ、電流検出器220はU相の相電流Iuを検出することになる。
つまり、各相の上アームのうちの1つがオンで他の2つがオフであるPWMパルスの組み合わせ状態において、電流検出器220は、上アームがオン制御されている1つの相の相電流を検出することになる。
また、U相及びV相の上アーム(スイッチング素子217a及びスイッチング素子217c)が共にオンで、W相の上アーム(スイッチング素子217e)がオフである場合は、U相に流れた電流及びV相に流れた電流が合流してW相に流れることになり、電流検出器220はW相の相電流Iwを検出することになる。
つまり、各相の上アームのうちの2つがオンで他の1つがオフであるPWMパルスの組み合わせ状態において、電流検出器220は、上アームがオフ制御されている1つの相の相電流を検出することになる。
このように、各相の上アームのうちの1つ又は2つがオンであるPWMパルスの組み合わせ状態において、電流検出器220の出力は、PWMパルスの組み合わせ状態で決まる1つの相の相電流を表すことになる。
そこで、制御部213は、係る特性を利用して電流検出器220の出力から各相の電流を検出し、検出した相電流値をPWM制御に用いる。
図2は、制御部213の機能ブロック図であり、ベクトル制御方式による3相指令電圧Vu、Vv、Vwの設定処理を示す。
図2において、相電流検出部501(相電流検出手段)は、検出回路220bの出力のA/D変換値、換言すればインバータ212aの直流母線電流の検出値に基づき、各相の相電流Iu、Iv、Iwを検出する。
つまり、相電流検出部501は、各相の上アームのうちの1つ又は2つがオンであるPWMパルス区間を相電流検出区間とし、また、どの相の上アームがオンであるかに基づき前記相電流検出区間で相電流が検出される1つの相を特定する。
そして、相電流検出部501は、相電流検出区間内に相電流検出タイミング(検出回路220bの出力のA/D変換値のサンプリングタイミング)を設定し、この相電流検出タイミングで電流検出器220の出力をサンプリングし、サンプリング値から求めた電流値をそのときに検出対象として特定されている相の相電流検出値とする。
角度・角速度演算部502は、モータ角度(磁極位置)及び角速度(モータ回転数)を推定する。
ここで、制御部213がセンサレス駆動方式で3相ブラシレスモータ1をPWM制御する場合、角度・角速度演算部502は、モータの逆起電力に基づき回転子位置を推定し、推定した回転子位置に基づき角速度を演算する。
一方、3相ブラシレスモータ1が磁極位置センサを有する場合、角度・角速度演算部502は、磁極位置センサの出力から回転子位置を検出し、検出した回転子位置に基づき角速度を演算する。
また、3相−2軸変換器503は、相電流検出部501による相電流検出値Iu、Iv、Iwを、そのときのモータ角度(磁極位置)θに基づいて2軸の回転座標系(d−q座標系)の実電流Id,Iqに変換する。
ベクトル制御部504には、指令トルクに応じたd軸指令電流及びq軸指令電流、角度・角速度演算部502で算出された角速度、3相−2軸変換器503で求めたd−q座標系の実電流Id,Iqが入力される。
そして、ベクトル制御部504は、d軸,q軸指令電流、角速度、及び実電流Id,Iqに基づきd−q座標系の指令電圧Vq,Vdを決定し、決定した指令電圧Vq,Vdを2軸−3相変換器505に出力する。
2軸−3相変換器505は、ベクトル制御部504が出力する指令電圧Vq,Vdを3相指令電圧Vu、Vv、Vwに変換してPWM変調部506に出力する。
なお、2軸−3相変換器505は、指令電圧Vu、Vv、Vwを補正することにより、三角波キャリアの谷を中心として生成されるPWMパルスを前後にシフトさせるパルスシフト処理機能を有する。上記のパルスシフト処理は、相電流の検出区間を生成するために実施される処理であり、後に詳細に説明する。
そして、PWM変調部506では、各相のスイッチング素子(上アーム及び下アーム)を駆動するためのスイッチングゲート波形(PWMパルス)の立ち上げタイミング及び立ち下げタイミングを、変調波としての3相指令電圧Vu、Vv、Vwと三角波キャリアとの比較によって決定し、生成したスイッチングゲート波形(PWMパルス)をインバータ212aの各スイッチング素子217a〜217fの各制御端子に出力する。
PWM変調部506は、U相指令電圧Vuと三角波キャリアとを比較し、U相指令電圧Vuが三角波キャリアよりも大きいときに、U相の上アーム(スイッチング素子217a)を駆動するためのスイッチングゲート波形を論理レベルとしてハイレベルに設定し、U相指令電圧Vuが三角波キャリアよりも小さいときにU相の上アームを駆動するためのスイッチングゲート波形を論理レベルとしてローレベルに設定する。
更に、PWM変調部506は、U相の上アーム(スイッチング素子217a)を駆動するためのスイッチングゲート波形の反転信号を、U相の下アームを駆動するためのスイッチングゲート波形として生成する。
同様にして、PWM変調部506は、V相の上下アームを駆動するためのスイッチングゲート波形、及び、W相の上下アームを駆動するためのスイッチングゲート波形を生成する。
次に、相電流検出部501における相電流の検出処理を詳述する。
インバータ212aの直流母線電流に基づき各相の相電流を検出する場合、2相の相電流を電流検出器220の出力から検出できれば、残りの1相の電流は相電流の総和が零になることを用いて演算により求めることができる。
そこで、2軸−3相変換器505は、PWMパルスの位相を相毎に制御して2相の相電流を電流検出器220の出力から検出するためのパルスシフトを実施する。
例えば、PWMパルスの位相を進角させる場合、2軸−3相変換器505は、キャリアの谷よりも前の半周期で指令電圧を増大補正し、キャリアの谷よりも後の半周期で指令電圧を減少補正する。また、PWMパルスの位相を遅角させる場合、2軸−3相変換器505は、キャリアの谷よりも前の半周期で指令電圧を減少補正し、キャリアの谷よりも後の半周期で指令電圧を増大補正する。
ここで、相電流検出部501は、上記のパルスシフトによって生成されたPWMパルスの組み合わせが異なる2つの相電流検出区間で電流検出器220の出力をそれぞれサンプリングして2相の相電流を検出する。
そして、ベクトル制御部504は、指令電圧Vq,Vdの演算処理を、電流検出器220の出力から検出した2相の相電流検出値と、これらに基づき演算した残る1相の相電流値とを用いて行う。
なお、相電流検出部501は、上記のパルスシフト処理によって、電流検出器220の出力から3相それぞれの相電流を検出させることができる。例えば、相電流検出部501は、PWM周期毎にパルスシフト処理のパターンを切り替え、2周期で電流検出器220の出力から3相の相電流を検出することができる。
図3は、パルスシフトの一態様を示すタイムチャートであり、U相のPWMパルスはキャリアの谷を中心に生成されるが、V相のPWMパルスは位相が進角されてキャリアの谷よりも進角された位置を中心に生成され、W相のPWMパルスは位相が遅角されてキャリアの谷よりも遅角された位置を中心に生成される。
係るパルスシフトによって、キャリアの谷よりも前の期間で、U相の上アーム及びV相の上アームがオンでW相の上アームがオフである電流検出期間が生成され、係る電流検出期間(時刻t2)で電流検出器220はW相の相電流Iwを検出する。
また、キャリアの谷よりも後の期間では、U相の上アーム及びW相の上アームがオンでV相の上アームがオフである電流検出期間が生成され、係る電流検出期間(時刻t4)で電流検出器220はV相の相電流Ivを検出する。
そこで、相電流検出部501は、キャリアの谷よりも前のU相の上アーム及びV相の上アームがオンでW相の上アームがオフである電流検出期間で電流検出器220の出力をサンプリングすることでW相の相電流Iwを検出し、キャリアの谷よりも後のU相の上アーム及びW相の上アームがオンでV相の上アームがオフである電流検出期間で電流検出器220の出力をサンプリングすることでV相の相電流Ivを検出する。
更に、相電流検出部501は、各相の相電流の総和が零になることに基づき、W相の相電流検出値Iw及びV相の相電流検出値Ivから残るU相の相電流Iuを算出して3相全ての相電流を求める。
また、制御部213は、電流検出器220のオフセット誤差(零点誤差)を補正するオフセット補正部(零点補正手段)507を備える。
オフセット補正部507は、インバータ212aの直流母線電流が零になるインバータ212aの制御状態における電流検出器220の出力値を零点出力値として求め、当該零点出力値を電流検出器220が出力するときに直流母線電流を零として検出するように、電流検出器220の出力に基づく電流検出特性を補正するオフセット補正を行う。
オフセット補正部507は、前記零点出力値に基づき、電流検出器220の出力をオフセット補正するための補正値を設定したり、電流検出器220の出力を変換して求めた電流検出値をオフセット補正するための補正値を設定したり、電流検出器220の出力を電流検出値に変換する変換特性を補正したりする。
ここで、インバータ212aの直流母線電流が零になるインバータ212aの制御状態とは、各相の上アーム(スイッチング素子217a,217c,217e)が全てオンに制御され、各相の下アーム(スイッチング素子217b,217d,217f)が全てオフに制御されている状態、及び、各相の上アーム(スイッチング素子217a,217c,217e)が全てオフに制御され、各相の下アーム(スイッチング素子217b,217d,217f)が全てオンに制御されている状態である。
したがって、オフセット補正部507は、各相の上アームが全てオンに制御されている状態若しくは各相の下アームが全てオンに制御されている状態での電流検出器220の出力(零点出力値)から、電流検出器220のオフセット誤差(零点誤差)を検知することができる。
しかし、例えば、各相の下アームのいずれかにショート故障が発生している場合、各相の上アームが全てオンに制御され各相の下アームが全てオフに制御されている状態でショート故障している下アームを介して電流検出器220に電流が流れるため、オフセット補正部507は、オフセット誤差(零点誤差)を誤検知することになる。
そこで、オフセット補正部507は、上アーム又は下アームのショート故障に対処する手段、つまり、ショート故障の発生時にオフセット誤差(零点誤差)の検知をキャンセルする手段を備えている。
具体的には、オフセット補正部507は、各相の上アームが全てオンに制御されているときの電流検出器220の出力と、各相の下アームが全てオンに制御されているときの電流検出器220の出力とを比較することで、上アーム又は下アームにおけるショート故障が発生している状態で、オフセット誤差の検出、換言すれば、オフセット補正値の更新が実施されることを抑制する。
例えば、各相の下アームのうちの1つがショート故障している場合、各相の上アームが全てオフに制御され各相の下アームが全てオンに制御されたときには、ショート故障に影響されることなく電流検出器220に流れる電流は零になるが、各相の上アームが全てオンに制御され各相の下アームが全てオフに制御されたときには、ショート故障している下アームを介して電流検出器220に電流が流れて電流検出値は零でなくなる。
つまり、各相の上アームが全てオンに制御され各相の下アームが全てオフに制御されているときの電流検出器220による電流検出値(以下、第1電流検出値ともいう)と、各相の上アームが全てオフに制御され各相の下アームが全てオンに制御されているときの電流検出器220による電流検出値(以下、第2電流検出値ともいう)との間に、ばらつき範囲を超える偏差が生じている場合、制御部213は、インバータ212aにおいてスイッチング素子のショート故障などの何らかの回路異常が発生しているものと推定できる。
一方、第1電流検出値と第2電流検出値との偏差がばらつき範囲内であるときには、制御部213は、インバータ212aにおいてスイッチング素子のショート故障などの回路異常がなく、第1電流検出値及び第2電流検出値は電流検出器220のオフセット誤差(零点誤差)を示しているものと判断できる。
そこで、制御部213は、第1電流検出値と第2電流検出値とを求め、これらの偏差の絶対値と閾値とを比較し、偏差の絶対値が閾値以下であるとき、換言すれば、インバータ212aのスイッチング素子のショート故障がないときに、第1電流検出値と第2電流検出値との少なくとも一方に基づきオフセット補正値の更新(学習)を実施する。
したがって、ショート故障しているスイッチング素子を介して電流検出器220に流れた電流に基づき、オフセット補正値が設定されることを抑制でき、以って、オフセット補正値の設定精度引いては相電流の検出精度を維持でき、3相ブラシレスモータ1を高い精度で安定して制御できる。
なお、前記閾値は、偏差がばらつき範囲内の値であるか、偏差がばらつき範囲を超えていて何らかの回路異常がインバータ212aに発生している状態を示す値であるかを区別するための値であり、予め実験やシミュレーションに基づき適合され、制御部213のメモリに格納されている。
一方、第1電流検出値と第2電流検出値との偏差の絶対値が閾値を超えている場合、スイッチング素子のショート故障などのインバータ212aの異常が発生している可能性がある。
そこで、制御部213は、インバータ212aの動作を、電源リレーや各相の通電ラインにそれぞれ設けた相リレーのオフ制御、PWM制御出力の停止などによって停止させる。
図4のフローチャートは、制御部213によるオフセット補正値(零点補正値)の更新処理(学習処理)の一態様を示す。
図4のフローチャートにおいて、制御部213は、ステップS101で、各相の上アーム(スイッチング素子217a,217c,217e)が全てオンに制御され、各相の下アーム(スイッチング素子217b,217d,217f)が全てオフに制御されている状態での電流検出器220による電流検出値を、第1電流検出値としてサンプリングして記憶する処理を実施する。
各相の上アームが全てオンに制御され、各相の下アームが全てオフに制御されている状態とは、例えば、図5における時刻t2の状態であり、制御部213は、時刻t2において電流検出器220の出力から検出した電流値を、第1電流検出値として記憶する。なお、第1電流検出値の記憶値は、各相の上アームが全てオンに制御されているときの電流値が新たに検出される毎に更新されるものとする。
次いで、制御部213は、ステップS102に進み、各相の上アーム(スイッチング素子217a,217c,217e)が全てオフに制御され、各相の下アーム(スイッチング素子217b,217d,217f)が全てオンに制御されている状態での電流検出器220による電流検出値を、第2電流検出値としてサンプリングして記憶する処理を実施する。
各相の上アームが全てオフに制御され、各相の下アームが全てオンに制御されている状態とは、例えば、図5における時刻t3の状態であり、制御部213は、時刻t3において電流検出器220の出力から検出した電流値を、第2電流検出値として記憶する。なお、第2電流検出値の記憶値は、各相の下アームが全てオンに制御されているときの電流値が新たに検出される毎に更新されるものとする。
制御部213は、上記のようにして第1電流検出値及び第2電流検出値をサンプリングすると、ステップS103に進み、第1電流検出値と第2電流検出値との偏差の絶対値が閾値以下であるか否かを検出する。
ここで、第1電流検出値と第2電流検出値との偏差の絶対値が閾値以下である場合、制御部213は、オフセット補正値の更新設定を行うためのステップS104以降に進む。
つまり、第1電流検出値と第2電流検出値との偏差の絶対値が閾値以下である場合は、インバータ212aのスイッチング素子のショート故障などの回路異常がなく、第1電流検出値、第2電流検出値は電流検出器220のオフセット誤差(零点誤差)を示すと見込まれる。
そこで、制御部213は、第1電流検出値と第2電流検出値との偏差の絶対値が閾値以下であることを条件に、第1電流検出値、第2電流検出値に基づくオフセット補正値の設定処理を実施する。
ステップS104で制御部213は、第1電流検出値よりも第2電流検出値が小さいか否かを検出する。
そして、第1電流検出値よりも第2電流検出値が小さい場合(第1電流検出値>第2電流検出値)、制御部213は、ステップS105に進み、電流検出器220が第2電流検出値に相当する出力を発生するときにオフセット補正値で補正した電流検出値が零になるように、電流検出値のオフセット補正値を設定する。
第1電流検出値及び第2電流検出値は、電流検出器220によって検出される電流が零になる条件で検出された値であり、例えば第2電流検出値がX(X>0)である場合にオフセット補正値を−Xとすれば、オフセット補正値を加算された電流検出値は、実電流値が零のときに零になり、オフセット誤差分が補正されることになる。
また、第1電流検出値よりも第2電流検出値が小さくない場合(第1電流検出値≦第2電流検出値)、制御部213は、ステップS106に進み、電流検出器220が第1電流検出値に相当する出力を発生するときにオフセット補正値で補正した電流検出値が零になるように、電流検出値のオフセット補正値を設定する。
つまり、制御部213は、第1電流検出値と第2電流検出値とのうちの低い方を選択し、選択した電流検出値が電流検出器220におけるオフセット誤差を表すものとして、オフセット補正値を更新設定する。
第1電流検出値と第2電流検出値とのうちの低い方を選択する構成とすれば、オフセット補正値の変動を抑制し、安定した電流検出が行える。
但し、第1電流検出値と第2電流検出値とのうちの低い方に基づいてオフセット補正値を設定する構成に限定されない。
例えば、制御部213は、第1電流検出値と第2電流検出値との平均値に基づいてオフセット補正値を設定したり、オフセット補正値の設定に用いる電流検出値を第1電流検出値と第2電流検出値とのいずれか一方に予め固定したりすることができる。
更に、制御部213は、オフセット補正値(オフセット補正値の設定に用いる電流検出値)の前回値と今回値との加重平均演算を行い、加重平均値を最終的なオフセット補正値に設定することができる。
一方、スイッチング素子のショート故障などのインバータ212aの回路異常により、第1電流検出値をサンプリングする条件と第2電流検出値をサンプリングする条件とのいずれか一方で電流検出器220に電流が流れた場合、第1電流検出値と第2電流検出値との偏差の絶対値が閾値よりも大きくなる。
そこで、制御部213は、第1電流検出値と第2電流検出値との偏差の絶対値が閾値よりも大きいこと、換言すれば、インバータ212aの回路異常が発生していることを検知すると、ステップS107に進み、インバータ212aの動作(インバータ212aによる3相ブラシレスモータ1への電力供給)を、リレーのオフ制御やPWM出力の停止などによって停止させる。
これにより、各相への通電電流の制御が正常に行えない状態でインバータ212aの動作が継続されることが抑制され、インバータ212aなどの回路を保護し、また、3相ブラシレスモータ1引いては3相ブラシレスモータ1を動力源として用いるシステムが異常動作することを抑止できる。
以上、好ましい実施形態を参照して本発明の内容を具体的に説明したが、本発明の基本的技術思想及び教示に基づいて、当業者であれば種々の変形態様を採り得ることは自明である。
例えば、制御部213は、第1電流検出値及び第2電流検出値のサンプリング、及び、サンプリング値に基づくオフセット補正値の設定をPWM周期毎に毎回実施する必要はなく、PWM周期の複数周期毎に1回実施したり、所定時間周期毎に実施したり、3相ブラシレスモータ1の起動時に実施したりすることができる。
また、制御部213は、第1電流検出値と第2電流検出値との偏差の絶対値が閾値以下である場合であっても、オフセット補正値が限界値を超えることになる更新をキャンセルしたり、更新後のオフセット補正値が限界値を超えるときにインバータ212aの動作を停止させたりすることができる。
1…3相ブラシレスモータ、2…モータ駆動装置、212…駆動回路、212a…インバータ、213…制御部、213a…A/D変換器、213b…マイクロコンピュータ、220…電流検出器、220a…シャント抵抗、220b…検出回路

Claims (6)

  1. 3相ブラシレスモータに交流電力を供給するインバータと、前記インバータの直流母線電流を検出する電流検出器と、前記電流検出器の出力を入力し前記インバータをPWM制御する制御部と、を含むモータ駆動装置であって、
    前記制御部は、前記インバータの全相の上アームがオン制御状態であるときの前記電流検出器の第1電流検出値と前記インバータの全相の下アームがオン制御状態であるときの前記電流検出器の第2電流検出値との偏差が閾値以下であるときに、前記第1電流検出値と前記第2電流検出値との少なくとも一方に基づき前記電流検出器の零点補正を行う、モータ駆動装置。
  2. 前記制御部は、前記偏差が前記閾値を超えるときに前記インバータの動作を停止させる、請求項1記載のモータ駆動装置。
  3. 前記制御部は、前記第1電流検出値と前記第2電流検出値とのうちのより低い方を前記電流検出器の零点とする、請求項1又は請求項2記載のモータ駆動装置。
  4. 前記制御部は、前記第1電流検出値と前記第2電流検出値との平均値を前記電流検出器の零点とする、請求項1又は請求項2記載のモータ駆動装置。
  5. 3相ブラシレスモータに交流電力を供給するインバータと前記インバータの直流母線電流を検出する電流検出器とを含むモータ駆動装置の制御方法であって、
    前記インバータの全相の上アームがオン制御状態であるときに前記電流検出器による第1電流検出値を求めるステップと、
    前記インバータの全相の下アームがオン制御状態であるときの前記電流検出器による第2電流検出値を求めるステップと、
    前記第1電流検出値と前記第2電流検出値との偏差を算出するステップと、
    前記偏差が閾値以下であるときに前記第1電流検出値と前記第2電流検出値との少なくとも一方に基づき前記電流検出器の零点補正を行うステップと、
    零点補正された前記電流検出器の電流検出値に基づき前記インバータをPWM制御するステップと、
    を含む、モータ駆動装置の制御方法。
  6. 前記偏差が前記閾値を超えるときに前記インバータの動作を停止するステップを更に含む、請求項5記載のモータ駆動装置の制御方法。
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