JP2016097839A - 電動パワーステアリング装置 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】センサレス処理部60は、レゾルバによって検出される回転角度θmを用いることなくセンサレス制御を実行する。この際、αβ変換部102では、電流iu,iv,iwに基づき、αβ軸上の電流iα,iβを算出し、電流ベクトル角算出部104では、電流iα,iβに基づき電流ベクトル角θe2を算出する。電流ベクトル角θe2は、モータの回転速度の周期で変動して且つ、モータの回転方向に応じて増減するパラメータである。電流ベクトル角速度算出部106では、電流ベクトル角θe2に基づき電流ベクトル角速度ωe2を算出する。異常判断処理部108では、電流ベクトル角速度ωe2と操舵角Trqとに基づき、センサレス制御の異常の有無を判断する。
【選択図】図2
Description
本発明は、そうした実情に鑑みてなされたものであり、その目的は、センサレス制御時に断線以外の異常についてもこれを検出することが可能な電動パワーステアリング装置を提供することにある。
1.電動パワーステアリング装置は、ステアリングを介して入力される操舵トルクの検出値に基づき同期電動機から出力されるアシストトルクを制御するために該同期電動機の各端子に電圧を印加する電力変換回路を操作する電動パワーステアリング装置であって、前記同期電動機の回転角度の検出値を用いることなく前記アシストトルクを制御するために前記電力変換回路を操作するセンサレス処理部と、前記センサレス処理部によってセンサレス制御がなされているときに、前記同期電動機の少なくとも2個の端子を流れる電流の検出値を入力とし、前記同期電動機の回転速度を推定する速度推定処理部と、該推定した回転速度と前記操舵トルクとの関係に基づき、前記センサレス制御に異常があるか否かを判断する異常判断処理部とを備える。
一方、同期電動機の1の端子を流れる電流のみからは、同期電動機の回転方向の情報を抽出することはできない。しかし、互いに異なる端子を流れる電流同士の位相差は、回転方向に応じて異なるものとなるため、互いに異なる端子を流れる電流の位相差から回転方向の情報を抽出することができる。こうして回転速度の絶対値の情報と回転方向の情報とを抽出することで、同抽出された絶対値および方向を有するベクトル量としての電流ベクトル角速度を算出することができる。
図1に示すように、本実施形態の電動パワーステアリング装置(EPS10)において、ステアリング12が固定されたステアリングシャフト14は、ラックアンドピニオン機構16を介してラック軸18と連結されている。そして、ステアリング操作に伴うステアリングシャフト14の回転は、ラックアンドピニオン機構16によりラック軸18の往復直線運動に変換される。なお、本実施形態のステアリングシャフト14は、コラムシャフト14a、インターミディエイトシャフト14b、およびピニオンシャフト14cを連結してなる。そして、ステアリングシャフト14の回転に伴うラック軸18の往復直線運動が、同ラック軸18の両端に連結されたタイロッド20を介して図示しないナックルに伝達されることにより、転舵輪22の転舵角が変更される。
図2に示すように、ECU40の制御ブロックは、レゾルバ制御部50と、セレクタ52と、センサレス処理部60と、速度推定処理部100と、異常判断処理部108とを備えている。以下、これらについて順に説明する。
1.レゾルバ制御部50
レゾルバ制御部50は、レゾルバ38によって検出される回転角度θmや、電流センサ48によって検出される電流i¥、車速センサ46によって検出される車速V、トルクセンサ42によって検出される操舵トルクTrq、操舵角センサ44によって検出される操舵角θsを入力とし、アシストトルクを制御するための操作信号g¥#を生成する。
2.セレクタ52
センサレス処理部60は、レゾルバ38に異常が生じた場合に、レゾルバ38による回転角度θmを用いることなく、アシストトルクを制御するものである。このため、レゾルバ制御部50の出力する操作信号g¥#とセンサレス処理部60の出力する操作信号g¥#とのいずれかがインバータINVに出力されることを記載すべく、セレクタ52を記載している。ただし、実際には、レゾルバ38に異常が生じる前には、センサレス処理部60が操作信号g¥#を算出する処理を実行しておらず、また、レゾルバ38に異常が生じた後には、レゾルバ制御部50が操作信号g¥#を算出する処理を実行しない。
3.センサレス処理部60
目標操舵トルク設定部62は、トルクセンサ42によって検出される操舵トルクTrqに基づき目標操舵トルクTrq*を設定する。γδ変換部64は、3相固定座標系の電流iu,iv,iwを、回転座標系であるγδ座標系におけるγ軸の電流iγとδ軸の電流iδとに変換する。ここで、γδ変換部64が座標変換に利用する所定の回転角度は、後述する制御角θcである。
こうした構成によれば、操舵トルクTrqを目標操舵トルクTrq*にフィードバック制御するために、γδ変換部64やαβ変換部76が座標変換する際に用いる所定の回転角度(制御角θc)が操作される。このため、操舵トルクTrqを目標操舵トルクTrq*にフィードバック制御するために、d軸に対するγ軸の回転量が操作される。このため、たとえばγ軸の指令電流iγ*を負で絶対値がゼロよりも大きい値に設定して且つ、δ軸の指令電流iδ*をゼロに設定する場合、制御角θcによってd軸とγ軸とが一致する場合には、モータ32に無効電流のみが流れ、モータ32にトルクが生じない。これに対し、d軸に対してγ軸が正方向に所定量(<90°)回転する場合、q軸の負方向に電流が流れてモータ32にトルクが生じる。また、d軸に対してγ軸が負方向に所定量(<90°)回転する場合、q軸の正方向に電流が流れてモータ32にトルクが生じる。
4.速度推定処理部100
速度推定処理部100は、センサレス処理部60の生成する操作信号g¥#によってインバータINVが操作されるときに、モータ32の回転速度を推定する。ここで、推定速度ωe1を用いないのは、第1に、センサレス処理部60との独立性を保つためである。第2に、モータ32は、ステアリング12の操作に応じた動作をするものであるため、回転速度が極低速となることがあり、この場合、誘起電圧が過度に小さくなり、誘起電圧に基づく回転速度の推定精度が低下するためである。
iu=cos(θe+Δ) …(c1)
iv=cos(θe+120+Δ) …(c2)
iw=cos(θe+240+Δ) …(c3)
この場合、αβ軸の電流iα,iβは、以下の式(c4),(c5)にて表現される。
iα=cos(θe+Δ) …(c4)
iβ=sin(θe+Δ) …(c5)
上記電流ベクトル角θe2は、「θe+Δ」に対応することとなり、電気角θeとは相違する。ただし、電流ベクトル角θe2は、電流ベクトル角速度ωe2を算出するための中間変数に過ぎない。そして、電流ベクトル角θe2は、電気角θeに対して位相がずれているものの、周期は電気角θeと一致するため、位相Δの変化速度が小さい限り、電流ベクトル角速度ωe2の絶対値と実際の電気角速度の絶対値とのずれは小さくなる。また、電流ベクトル角θe2は、モータ32の回転方向に応じて増減する量であるため、電流ベクトル角速度ωe2の符号は、実際の電気角速度の符号と等しくなる。
5.異常判断処理部108
異常判断処理部108は、センサレス処理部60によってインバータINVが操作されている期間、電流ベクトル角速度ωe2と操舵トルクTrqとに基づき、センサレス処理部60によるセンサレス制御に異常があるか否かを判断する処理を実行する。
図4に示す一連の処理において、異常判断処理部108は、まず、第1異常状態が所定時間以上継続したか否かを判断する(S10)。この処理は、異常がある旨判断するか否かを決定するためのものである。ここで、所定時間は、ステアリング12を右に切っていた状態から急に左に切る等、操舵トルクTrqの急変に伴う過渡現象やノイズ等によって第1異常状態であると誤判断がなされることを抑制する値に設定される。ちなみに、操舵トルクTrqの急変時には、アシストトルクの応答遅れによって、操舵トルクTrqの符号とモータ32の回転方向とが逆となる過渡現象が生じうる。
ここで、本実施形態の作用を説明する。
(1)電流ベクトル角速度ωe2と操舵トルクTrqとの関係を用いることで、センサレス制御に異常があるか否かを判断することができる。しかも、ここで異常と判断される現象は、モータ32およびインバータINV間の断線に限らないため、センサレス制御時に断線以外の異常についてもこれを検出することができる。
なお、上記実施形態は、以下のように変更して実施してもよい。
・「第1異常状態、第2異常状態、および第3異常状態について」
第1異常状態、第2異常状態、および第3異常状態の区別の仕方は上記実施形態において例示したものに限らない。たとえば、操舵トルクTrqが低トルク閾値TLp未満であって且つゼロよりも大きく、電流ベクトル角速度ωe2が負でありその絶対値が高速度閾値ωHnの絶対値以上である領域を、第1異常状態に含めてもよい。
第1異常状態、第2異常状態、および第3異常状態の全てを検出するものに限らず、それらのうちの少なくとも1つを検出するものであればよい。
電流iu,iv,iwの検出値を用いるものに限らず、たとえばそれらのうちの2個の検出値を用いて、残りの1個はキルヒホッフの法則から推定してもよい。
たとえば、更新量算出部94の入力を、目標操舵トルクTrq*から操舵トルクTrqを減算した値とする代わりに、操舵トルクTrqから目標操舵トルクTrq*を減算した値とし、制御角θcの更新処理を前回の制御角θcから更新量Δθcを減算する処理としてもよい。
変換処理部を、γδ変換部64およびαβ変換部76とするものに限らない。たとえば、センサレス処理部60に、速度推定処理部100とは独立に、速度推定処理部100と同様のロジックを備えて、電流ベクトル角速度を算出し、電流ベクトル角速度の速度で変化する推定角度を、γδ変換部64およびαβ変換部76に入力してもよい。この場合、更新量Δθcにて指令電流設定部によって設定される指令電流iγ*,iδ*を座標変換したものを偏差算出部68,70に入力すればよく、この場合、この座標変換をするものが、変換処理部となる。
3相同期電動機としては、ステータコイルがY結線されたものに限らず、たとえばΔ結線されたものであってもよい。3相同期電動機に限らず、たとえば5相同期電動機であってもよい。また、SPMSMに限らず、たとえばIPMSMであってもよい。
直流電圧源(バッテリ39)の正極および負極のそれぞれと同期電動機の各端子との間を開閉するスイッチング素子S¥#を備えるものに限らない。たとえば、3レベルインバータであってもよい。またこれに限らず、同期電動機の各端子毎に周知のDCDCコンバータと同様の回路構成の回路を接続したものであってもよい。この場合であっても、それらコンバータの出力電圧を高速で変化させることで、各コンバータの出力電圧を指令電圧v¥#とすることができるため、上記実施形態に準じた効果を得ることができる。
モータ32の回転角度を検出するハードウェア(回転角度検出装置)としてはレゾルバに限らない。また、レゾルバ制御部50を備えること自体必須ではない。電動パワーステアリング装置としては、コラム型のものに限らず、たとえばピニオン型のものやラックアシスト型のものであってもよい。
Claims (10)
- ステアリングを介して入力される操舵トルクの検出値に基づき同期電動機から出力されるアシストトルクを制御するために該同期電動機の各端子に電圧を印加する電力変換回路を操作する電動パワーステアリング装置であって、
前記同期電動機の回転角度の検出値を用いることなく前記アシストトルクを制御するために前記電力変換回路を操作するセンサレス処理部と、
前記センサレス処理部によってセンサレス制御がなされているときに、前記同期電動機の少なくとも2個の端子を流れる電流の検出値を入力とし、前記同期電動機の回転速度を推定する速度推定処理部と、
該推定した回転速度と前記操舵トルクとの関係に基づき、前記センサレス制御に異常があるか否かを判断する異常判断処理部とを備える電動パワーステアリング装置。 - 前記速度推定処理部は、前記電流の検出値に基づき前記同期電動機を流れる電流の変動周期から前記回転速度の絶対値の情報を抽出して且つ、前記同期電動機の互いに異なる端子を流れる電流の位相差から回転方向の情報を抽出することで、前記回転速度の推定値としての電流ベクトル角速度を算出する請求項1記載の電動パワーステアリング装置。
- 前記速度推定処理部は、前記少なくとも2個の端子を流れる電流の検出値を固定2相座標系の成分に変換し、該変換した一対の成分同士の比に基づき、前記電流ベクトル角速度を算出する請求項2記載の電動パワーステアリング装置。
- 前記センサレス処理部は、前記電力変換回路の操作信号を生成するための演算パラメータを所定の回転角度で座標変換する変換処理部を備え、前記変換処理部の入力となる前記所定の回転角度を、前記操舵トルクを目標操舵トルクにフィードバック制御するために操作する請求項2または3記載の電動パワーステアリング装置。
- 前記異常判断処理部は、前記推定した回転速度の符号が前記操舵トルクの符号と逆である第1異常状態となることを条件に、前記センサレス制御に異常があると判断する請求項1〜4のいずれか1項に記載の電動パワーステアリング装置。
- 前記異常判断処理部は、前記推定した回転速度の絶対値が規定値以下であって且つ前記操舵トルクの絶対値が規定値以上である第2異常状態となることを条件に、前記センサレス制御に異常があると判断する請求項1〜5のいずれか1項に記載の電動パワーステアリング装置。
- 前記異常判断処理部は、前記操舵トルクの絶対値が所定値以下であって且つ前記推定した回転速度の絶対値が所定値以上である第3異常状態であることを条件に、前記センサレス制御に異常があると判断する請求項1〜6のいずれか1項に記載の電動パワーステアリング装置。
- 前記異常判断処理部は、前記推定した回転速度の符号が前記操舵トルクの符号と逆である第1異常状態、前記推定した回転速度の絶対値が規定値以下であって且つ前記操舵トルクの絶対値が規定値以上である第2異常状態、および前記操舵トルクの絶対値が所定値以下であって且つ前記推定した回転速度の絶対値が所定値以上である第3異常状態のいずれかが所定時間継続する場合、前記センサレス制御に異常があると判断する請求項1〜4のいずれか1項に記載の電動パワーステアリング装置。
- 前記センサレス処理部は、前記同期電動機を流れる電流と前記電力変換回路によって前記同期電動機の各端子に印加される電圧とに基づき誘起電圧を推定し、該推定される誘起電圧に基づき回転速度を推定する機能を備え、前記所定の回転角度の操作に際し、前記誘起電圧に基づき推定された回転速度を参照するものである請求項4記載の電動パワーステアリング装置。
- 回転角度検出装置を備え、
前記センサレス処理部によるセンサレス制御は、前記回転角度検出装置に異常がある場合に実行される請求項1〜9のいずれか1項に記載の電動パワーステアリング装置。
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