本発明に係る電動車両は、バッテリ(蓄電池)や燃料電池等の電池を有し電動モータを動力源とした車両であって、特に自律走行に好適な車両である。無論、本発明は、上部に座席を設け、無線コントローラなどで運転させるような電動車両にも適用できる。また、バッテリとしては、リチウムイオン二次電池やニッケル水素電池をはじめとする様々な種類のものが適用できる。以下、図面を参照しながら、本発明の様々な実施形態について詳細に説明する。以下では、電池の例としてバッテリを例に挙げて説明するが、燃料電池等の電池であっても同様に適用できる。
(第1の実施形態)
本発明の第1の実施形態に係る電動車両について、図1A〜図2Bを参照しながら説明する。図1Aは、本実施形態に係る電動車両の一構成例を示す斜視図、図1Bは、図1Aの電動車両の側面図、図1Cは、図1Bの電動車両の矢視C−C方向から見た様子を示す図である。また、図2Aは、図1Aの電動車両の重心及び各部品の重量比の一例を示す図、図2Bは、図2Aの電動車両の矢視B−B方向から見た様子を示す図である。
図1A〜図1Cで例示する電動車両1は、例えばカメラ等を搭載した自律走行ロボットの走行部として機能できる。また、電動車両1には例えばCPU(Central Processing Unit)ボード等の制御部(図示せず)が内蔵されており、この制御部が、外部からの信号やカメラの検知結果に基づいて、後述する電動モータの回転速度や回転方向、前後輪のブレーキ量やタイミングを制御する。
そして、この電動車両1は、4つの車輪(右の前輪21と後輪22及び左の前輪31と後輪32)と、それらの車輪を駆動するための動力源となる電動モータ41L,41Rと、電動モータ41L,41Rに電力を供給するバッテリ40と、を備える。ここでは4つの車輪を設けた例を挙げているが、3つ以上の車輪を設けておけばよい。また、車輪は、後述の下部ユニット10の側面に設けた例を挙げているが、下部ユニット10により覆われるように設けることもできる。なお、図1B,図2Bでは、車輪21,22,31,32を鎖線で示している。
また、電動モータ41L,41Rは、電動車両1に設けられた車輪(3つ以上の車輪)の一部又は全部を駆動するための動力源となる電動モータの一例である。例示する電動モータ41Rは、右の前輪21を駆動し、右の後輪22も間接的に(従動させるように)駆動している。同様に、例示する電動モータ41Lは、左の前輪31を駆動し、左の後輪32も間接的に駆動している。また、このような間接的な駆動のために、電動車両1は前輪とその対として設けられた後輪と間に動力を伝達する動力伝達部材を具備しておけばよい。なお、電動車両1には、他の車輪の駆動による電動車両1の前進や後進によって回転するだけの車輪、つまり電動モータに直接又は間接的に接続されていない車輪を設けることもできる。
本発明の主たる特徴の1つとして、電動車両1は、電動モータ41L,41R及びバッテリ40を含む下部ユニット10と、下部ユニット10の上部に設けられた上部ユニット11と、を有する。上部ユニット11には部品が収納されているものとする。なお、収納方法はネジ等による取り付けをはじめ、どのような方法であってもよい。よって、上部ユニット11は単なる蓋ではない。上部ユニット11の形状は図示する矩形状に限ったものではなく、またその内部には制御部を構成する種々の電子基板やその他の部品を含めることができる。これらの内部部品は、例えば1つのサブユニット13(又は複数のサブユニット)として上部ユニット11から取り出し可能な状態で搭載しておいてもよい。
そして、電動車両1は、電動車両1の後方側において下部ユニット10及び上部ユニット11に設けたヒンジ部12を中心に、下部ユニット10に対して上部ユニット11を直角以下の所定の角度まで開くことが可能なクラムシェル型の構造をもつ。ヒンジ部12が電動車両1の後方側に設けられた例を挙げるが、前方側に設けられていてもよい。前方側に設けられる場合、電動車両1の後方から上部ユニット11を開けることになる。
また、図1Bでは下部ユニット10に対して上部ユニット11を開いた際の角度をθとして図示している。無論、開状態では上部ユニット11の降下を防止する必要があり、そのために下部ユニット10に対して上部ユニット11を支えるための支持部(図示せず)などを設けておくとよい。この支持部にはガスダンパ等のダンパをもたせることが好ましい。これにより手動での開閉時に手を挟むようなことも防ぐことができる。
上述のような構造を採用することで、単なる蓋状のボディやボンネットのようなものを設けた従来の車両に比べ、開状態において下部ユニット10の上側から見える部品だけでなく上部ユニット11の下側から見える部品も加わり、表面に見えている内部部品を約2倍にすることができる。換言すれば、上記従来の車両に比べ、内部部品の取り出し性を確保しながら部品密度を向上させることができる。よって、このような構造により、多くの内部部品が容易に取り出せ、メンテナンスが容易になる。なお、車輪等の外部に設けられた部品のメンテナンスは側面から実施すればよい。
ここで、下部ユニット10について説明する。下部ユニット10は、図示するように矩形状に形成されている。無論、矩形状に限ったものではない。本構成例における下部ユニット10は、矢印で示す進行方向に対向する前面14F及び後面14Bと、進行方向に交わる方向に対向する右側面14R及び左側面14Lと、を有している。上述のように電動車両1は4輪であり、右側面14Rから突出した位置に右側の前輪21及び後輪22を、また、左側面14Lから突出した位置に左側の前輪31及び後輪32を有している。
なお、右側面14Rと左側面14Lの長さ(下部ユニット10の全長)は例えば1m程度、前面14Fや後面14Bの長さ(下部ユニット10の幅ともいう)は例えば0.8〜0.9m程度として、電動車両1を構成することができる。また、右側の前輪21と後輪22或いは左側の前輪31と後輪32の軸間距離(ホイールベースともいう)は例えば0.8m程度のように短く設定しておくことで、電動車両1は、狭い場所でも旋回できる機動性を備えることができる。また、前輪21,31及び後輪22,32の外径は例えばいずれも同じ0.4m程度である。無論、電動車両1の寸法はここで例示したものに限ったものではない。
また、下部ユニット10の各側面14R,14Lには帯状のカバー18が設置され、下部ユニット10の前後方向に沿って延びている。カバー18の下側には、前輪21,31及び後輪22,32をそれぞれ回転支持する車軸21a,31a及び車軸22a,32aが設けられている。なお、各車軸21a,31a,22a,32aは、動力伝達部材によって結合しない場合、独立して回転可能となっている。
本構成例における動力伝達部材としては、右側の前輪21の車軸21aにはスプロケット21bが設けられると共に、後輪22の車軸22aにはスプロケット22bが設けられており、前輪のスプロケット21bと後輪のスプロケット22bとの間には、例えばスプロケットと歯合する突起を内面側に設けたベルト23が掛け回されている。同様に、左側の前輪31の車軸31aにはスプロケット31bが設けられると共に、後輪32の車軸32aにはスプロケット32bが設けられており、前輪のスプロケット31bと後輪のスプロケット32bとの間には、ベルト23と同様のベルト33が掛け回されている。
このような構成により、左右のそれぞれ一対の前輪と後輪とは一方の車輪を駆動輪とした場合に、他方の車輪が動力伝達部材であるベルトによってスリップすることなく駆動される従動輪として機能する。左右それぞれ一対の前輪と後輪とを結ぶ動力伝達部材としては、スプロケットとこのスプロケットに歯合する突起を設けたベルトを用いるほか、例えば、スプロケットとこのスプロケットに歯合するチェーンを用いてもよい。さらに、スリップが許容できる場合は、摩擦の大きなプーリーとベルトを動力伝達部材として用いてもよい。但し、動力伝達部材は上記駆動輪と上記従動輪の回転数が同じとなるように構成される必要がある。
なお、本構成例では、動力伝達部材である右側のスプロケット21b,22b及びベルト23は、右側面14Rの外側であってカバー18の下側に配置しており、左側のスプロケット31b,32b及びベルト33は、左側面14Lの外側であってカバー18の下側に配置しているが、カバー18を省略して、動力伝達部材を下部ユニット10の内部に配置してもよい。
電動モータ41R及び電動モータ41Lは、下部ユニット10の底面15の前輪21,31側に設けられている。このように進行方向の前方側に電動モータを配置することで、この電動モータの発熱が大きくても容易に十分な空冷を行うことができる。そして、右側の電動モータ41Rのモータ軸42Rと右側の前輪21の車軸21aとの間には、動力伝達機構の一部としてギアボックス43Rが設けられている。同様に、左側の電動モータ41Lのモータ軸42Lと左側の前輪31の車軸31aとの間には、動力伝達機構の一部としてギアボックス43Lが設けられている。本構成例では、2つの電動モータ41R,41Lは電動車両1の進行方向の中心線に対して左右対称となるように並列配置されており、ギアボックス43R,43Lもそれぞれ電動モータ41R,41Lの左右外側に配設されている。
ギアボックス43R,43Lは、複数の歯車や軸などから構成され、電動モータからの動力をトルクや回転数、回転方向を変えて出力軸である車軸に伝達する組立部品であり、動力の伝達と遮断を切替えるクラッチを含んでいてもよい。なお、左右の後輪22,32はそれぞれ軸受44R,44Lによって軸支されており、軸受44R,44Lはそれぞれ下部ユニット10の底面15の右側面14R、左側面14Lに近接させて配設されている。
本構成例では、このようにして進行方向右側の一対の前後輪21,22と左側の前後輪31,32とを独立して駆動させることが可能になっている。すなわち、右側の電動モータ41Rの動力はモータ軸42Rを介してギアボックス43Rに伝わり、ギアボックス43Rによって回転数、トルク或いは回転方向が変更されて車軸21aに伝達される。そして、車軸21aの回転によって車輪21が回転すると共に、車軸21aの回転は、スプロケット21b、ベルト23、及びスプロケット22bを介して車軸22aに伝わり、後輪22を回転させることになる。左側の電動モータ41Lからの前輪31及び後輪32への動力の伝達については上述した右側と同様であるので、その説明を省略する。
また、本構成例における電動車両1の駆動系の構成は、進行方向の中心線に対して左右の構成は同じであるため、バランスの良い車両となっている。また、電動モータ41R,41Lからの駆動力は全ての車輪に伝わる4輪駆動となっているため、不整地などの悪路での走行にも支障がない。
そして、2つの電動モータ41R,41Lの回転数が同じである場合、各ギアボックス43R,43Lのギア比(減速比)を同じにすれば、電動車両1は前進或いは後進を行うことになる。電動車両1の速度を変更する場合は、各ギアボックス43R,43Lのギア比を同じ値を維持しつつ変化させればよい。また、進行方向を変える場合は、各ギアボックス43R,43Lのギア比を変更して、右側の前輪21及び後輪22の回転数と左側の前輪31及び後輪32の回転数とに回転差を持たせることで可能となる。さらに、各ギアボックス43R,43Lからの出力の回転方向を変えることにより、左右の車輪の回転方向を反対にすることで電動車両1の中央部を中心とした定置旋回が可能になる。
電動車両1には、遠隔操作やその場での操作で前後の車輪の角度を可変にするステアリング機構、若しくは左右の車輪を互いに反対方向に回転させるスキッドステア方式の機構を設けてもよい。しかし、本構成例ではこのような機構が設けられていない。よって、電動車両1を定置旋回させる場合は、ホイールベースが大きいほど、車輪にかかる抵抗が大きくなり、旋回のために大きな駆動トルクが必要となる。しかし、本構成例のように各ギアボックス43R,43L内のギア比を可変にすることで、旋回時の車輪の回転数を下げれば車輪に大きなトルクを与えることができる。
例えば、ギアボックス43R内のギア比として、モータ軸42R側のギアの歯数を10、中間ギアの歯数を20、車軸21b側のギアの歯数を40とした場合、車軸21bの回転数はモータ軸42Rの1/4の回転数となるが、4倍のトルクが得られる。そして、更に回転数が小さくなるようなギア比を選択することによって、より大きなトルクを得ることができるため、不整地や砂地などの車輪に係る抵抗が大きな路面であっても旋回が可能となる。
また、本構成例では、モータ軸42R,42Lと車軸21a,31aとの間にギアボックス43R,43Lを設けているため、車輪21,31からの振動が直接モータ軸に伝わることがない。さらに、ギアボックス43R,43Lに動力の伝達と切り離し(遮断)を行うクラッチを設けておき、電動モータ41R,41Lの非通電時には、電動モータ41R,41L側と駆動軸となる車軸21a,31aとの間の動力伝達を遮断しておくことが望ましい。これにより、仮に停止時に下部ユニット10に力が加わり車輪が回転しても、電動モータ41R,41Lには回転が伝わらないため、電動モータ41R,41Lに逆起電力が発生することはなく、電動モータ41R,41Lの回路を損傷するおそれもない。
このように、本構成例では、左右のそれぞれ前後一対の前輪と後輪を動力伝達部材で連結し、前輪側に配置した2つの電動モータで駆動可能するようにして4輪を駆動しているため、後輪専用の電動モータ、さらに、この電動モータと後輪との間に必要な後輪専用のギアボックスを設ける必要がなく、後輪専用の電動モータやギアボックスのための設置スペースを削減することができる。そして、先述したように、下部ユニット10の底面15の前輪21,31側には2つの電動モータ41R,41Lを進行方向左右に配置し、さらに各電動モータ41R,41Lのそれぞれの左右側方にギアボックス43R,43Lを配置しているが、底面15の後輪22、32側には軸受44R,44Lを配置しているだけであるため、下部ユニット10の底面15には、その中央位置から例えば後面14Bの端までにわたって広い収容スペース16が確保できる。
そして、この収容スペース16にバッテリ40を設置することができる。バッテリ40は、例えばリチウムイオン電池などが挙げられ、例えば直方体の外形をなし、図1Cに示すように、底面15の後方側から中央にかけた載置を行うことが可能である。これにより、長時間走行を実現させるための大容量のバッテリ40を下部ユニット10の収容スペース16に搭載可能になる。
また、下部ユニット10に対して上部ユニット11を開けることで、バッテリ40を取り出し可能に構成することはできるが、下部ユニット10の後面14Bに別途、開閉機構及びスライド機構(図示せず)を設け、収容スペース16へのバッテリ40の出し入れをより容易にすることが好ましい。これにより、バッテリ40の交換、充電、点検などの作業は、後面14Bから容易に実施可能になる。
上述のように、電動車両1はクラムシェル型の構造を採用しているが、そのため、特にバッテリ40を取り外した状態での上部ユニット11の開閉(或いは開状態でのバッテリ40の取り外し)に伴う重心の移動により転倒の危険性が生じ得、さらに斜面での作業時や不安定な足場などにおいてはその危険性が増すことになる。よって、メンテナンス作業中の電動車両1の転倒の危険性を下げる必要がある。実際、電動モータ41L,41Rは下部ユニット10から取り外すことが困難なように取り付けられていることが多いが、バッテリ40は本構成例のように取り外しが容易に取り付けられていることが多い。よって、転倒の危険性を下げることは有益と言える。
そのため、本発明の主たる特徴の1つとして次のような配置関係を採用する。すなわち、電動車両1の後方側又は前方側のうち、ヒンジ部12が設けられていない側に電動モータ41L,41Rが配置され、ヒンジ部12が設けられている側にバッテリ40が配置されている。無論、電動モータ41L,41Rはバッテリ40と鉛直方向に重ならないように配置している。
このような配置関係の効果について説明する。電動車両1の重心の水平方向位置は、上部ユニット11を開けた状態では閉じた状態に比べてヒンジ部12側に移動する。バッテリ40が取り付けられた状態であれば、上部ユニット11の重量が下部ユニット10の重量を多少上回るような場合でも転倒しないように設計することは容易である。しかし、取り外された状態まで考慮すると、電動車両1の重心の水平方向位置が、バッテリ40が取り外された場合、取り外し前に比べてヒンジ部12側とは反対側に移動するため、そのような設計は困難である。
しかし、本発明では上述のような配置関係を採用し、バッテリ40の他に重たい部品である電動モータ41L,41Rをヒンジ部12とは反対側に設けているため、バッテリ40が取り外された状態且つ上部ユニット11を開けた状態にした場合、それぞれの状態による電動車両1の重心の移動が相殺される方向にある。従って、本発明によれば、電動車両1の転倒の危険性を下げ、メンテナンス作業中の安全を確保することができ、そのような設計も容易になる。特に、上部ユニット11の重量が大きい電動車両や、ホイールベースが短い電動車両、例えば車輪と車輪の間には車輪の直径の2倍や1.5倍以下の距離しかないような電動車両では、このような重心を意識した配置関係が特に有益になる。
また、このようにして、電動車両1内の全部品のうち大きな比重を占めるバッテリ40の位置と反対側に電動モータ41L,41R(及びその他、ギアボックス43R,43L等の重たい部品)を配置することで、上部ユニット11を閉じた状態において、電動車両1の重心の水平方向位置を中央付近にもっていくことができ、走行性を確保することもできる。無論、バッテリ40が取り付けられた状態で上部ユニット11を開けた時についても、このような配置により電動車両1の重心が極力ヒンジ部12側に寄ってしまわない。
次に、図2A,図2Bを参照して電動車両1の重心について、より好ましい例を説明する。図2A,図2Bでは、電動車両1に占める各部品の重量の比率の一例を色づけして示しており、濃い色の方が比率が高いことを示している。
まず、電動車両1の重心Gの水平方向位置は、下部ユニット10に対して上部ユニット11が閉じられた状態で電動車両1の中央付近(電動車両1を水平面に投影した領域の中央付近)にあることが走行上、好ましい。
また、電動車両1では、電動車両1の重心Gの鉛直方向位置は、下部ユニット10と上部ユニット11の開閉状態に拘わらず下部ユニット10側にあることが好ましい。このように重心Gを低く保つためには、例えば、下部ユニット10に重量部品(ギヤ、電動モータ、ベアリングなどの駆動部品)を集め、上部ユニット11に電子基板等を配置するとよい。
また、本構成例のように電動モータ41L,41R及びバッテリ40は下部ユニット10の底面部に収容されていることが、下部ユニット10の重心を低くでき、これにより電動車両1の重心Gも低くでき、且つ安定した走行が可能な電動車両を得ることができるため、好ましいと言える。
また、設けられた車輪のうち電動車両1の前側にある車輪(つまり前輪21,31)と後ろ側にある車輪(つまり後輪22,32)とを近接配置させることが好ましい。このようにホイルベースを短くすることで、上述したように機動性を向上させることができ、また、上記配置関係によりバッテリ40を取り外して上部ユニット11を開けた状態でも倒れることは無くなる。つまり、ホイルベースを短くした車両は元々転倒し易い構造であるため、上記配置関係による転倒防止効果がより有益となる。さらに、本構成例のように、全ての車輪を同径で形成することでより安定性を増すことができる。
なお、本構成例では、前後一対の前輪及び後輪をスプロケットとベルトによって連結し、電動モータからの動力が前後の車輪に伝わるように構成したが、それぞれの車輪(前輪21,31、後輪22,32)と車軸21a,31a,22a,32aとの結合部に、例えば、動力伝達部材として電磁クラッチを設けて、前輪21,31のみ、或いは、後輪22,32のみを駆動したり、さらに、1つの車輪のみを駆動できるようにしてもよい。この場合、四輪の独立した回転制御が可能になり、電磁クラッチによって動力の伝達、遮断を高速で切換えることにより、凍結路面やぬかるみのような路面との摩擦係数が小さい状態であってもそれぞれの車輪の回転を制御することで安定した走行方向を保つことが可能となる。また、電磁クラッチに設けた回転ディスクを固定部材で保持することによってブレーキとして使用することも可能となる。
また、本構成例では、電動モータ41R,41Lからの動力をギアボックス43R,43Lを介して駆動輪の車軸まで伝達し、ギアボックス43R,43Lによって、電動モータ41R,41Lからの動力をトルクや回転数、回転方向を変えることによって、電動車両1の加減速、方向転換、旋回を行うようにした。この代替構成として、電動モータ41R,41Lからの動力は単に固定比(所定の一定比)のギアを介するのみで駆動輪の車軸まで伝達し、電動モータへの駆動電圧の大きさや周波数を変更することによって、左右の駆動軸の回転方向と速度を変更してもよい。これにより、複雑な機械機構であるギアボックス(トランスミッション)を設ける必要がなく、単にギアを介するだけであるので、機械的な故障やメンテナンスの負担が軽減されると共に、ギアボックスを不要としたことによる電動車両の軽量化を図ることができる。
(第2の実施形態)
本発明の第2の実施形態について、再度、図2Aを参照しながら、第1の実施形態との相違点を中心に説明するが、第1の実施形態の様々な応用例が同様に適用できる。
本実施形態に係る電動車両1では、上部ユニット11の重心Guの水平方向位置が、電動車両1の前方側又は後方側のうちヒンジ部12が設けられていない側にあるものとする。図2A等の例では、ヒンジ部12が後方側に設けられているため、上部ユニット11の重心Guの水平方向位置は電動車両1の前方側にあることになる。なお、ここでは、開閉状態は特に関係ない。開角度が直角以下であるため、上部ユニット11を閉じた状態であろうと開いた状態であろうと、前側に重心Guをもたせておけば重心Guの水平方向位置は上部ユニット11の前側にくることになる。
このように、上部ユニット11の重心Guの水平方向位置をヒンジ部12と反対側に寄せることで、下部ユニット10に対して上部ユニット11が開けられた状態で電動車両1の重心Gが過度に後方に移動しないようにすることができ、上部ユニット11の開閉による転倒を防ぐことができる。本実施形態でも、特にバッテリ40を取り外した状態での効果が顕著と言える。
(第3の実施形態)
本発明の第3の実施形態に係る電動車両について、図3A〜図3Cを参照しながら説明する。図3Aは、本実施形態に係る電動車両に設けられるロック機構の一構成例を示す図、図3Bは、図3Aのロック機構によるロック時の様子を示す図、図3Cは、図3Aのロック機構によるアンロック時の様子を示す図である。本実施形態について、第1の実施形態との相違点を中心に説明するが、第1,第2の実施形態の様々な応用例が同様に適用できる。
本実施形態に係る電動車両1は、メンテナンス時の移動防止のために、下部ユニット10に対して上部ユニット11が開かれた際に車輪の少なくとも1つの回転をロックするためのロック機構を設ける。無論、より多い数の車輪にロック機構を設けることが安全上、より好ましいと言える。
図3Aで例示するロック機構は、開閉に連動したタイヤロック機構であり、上部ユニット11の開閉を機械的に検知し、前輪21,31をロックする(タイヤの回転止めをする)。なお、駆動輪である前輪21や前輪31に対するロック機構について図示しているが、後輪22,32に対しても設けてもよい。
具体的に説明すると、前輪21,31には車軸21a,31aを中心とする円弧状の穴51が設けられている。なお、この穴51は前輪21,31の内側に設けたディスクに穿っておいてもよい。以下、代表して前輪21のロック機構について説明する。このロック機構は、固定回転軸54aを中心に回転する腕部54と、腕部54の一端に回転軸54bで回転可能に取り付けられた腕部55と、腕部54の他端に回転軸54cで回転可能に取り付けられた腕部53と、ピン部52と、を備える。
腕部55の回転軸54bとは逆側の端部にはヒンジ部12の回転軸55aが取り付けられており、上部ユニット11の開閉によるヒンジ部12の稼働により腕部55が矢視の方向に回転するようになっている。そして、この回転は腕部54を介して腕部53に平行運動として伝わる。腕部54の車輪21側は図3Bで例示するように傾斜部を有している。ピン部52は、図3B,図3Cで例示するように、上記傾斜部に当接するように配置されたシリンダ状のピン本体52a、下部ユニット10に取り付けられた支柱52b、及びバネ52cを有する。
このような構成により、上部ユニット11が開けられた場合、ヒンジ部12の稼働に伴って腕部53が車輪21側に平行移動し、図3Bに示すように、その傾斜部がピン本体52aの表面を押圧して、ピン本体52aが支柱52bに対して車輪21側に移動して穴51に嵌り、車輪21がロックされる。一方で、上部ユニット11が閉められた場合、ヒンジ部12の稼働に伴って腕部53が車輪21から離れるように平行移動し、図3Cに示すように、その傾斜部がピン本体52aの表面に当接しながら上に移動し、ピン本体52aが支柱52bに対して車輪21から離れるように移動して穴51から抜け、車輪21がアンロックされる。なお、ヒンジ部12に近い後輪22,32に設けた場合、後述の腕部の長さを前輪21,31に設けた場合に比べて短くできる。
本実施形態では、このようなロック機構により、メンテナンス作業中に電動車両1が動くことがなくなるため、作業中の事故を防ぐことができる。この効果は、バッテリ40が取り外された状態且つ上部ユニット11を開けた状態で特に顕著になる。なお、本構成例では自動ロック機構の一例について説明したが、上記ディスクを挟むようなブレーキによるロック機構など、自動/手動に限らず他のロック機構を設けてもよい。
(第4の実施形態)
本発明の第4の実施形態に係る電動車両について、図4を参照しながら説明する。図4は、本実施形態に係る電動車両の一構成例を示す断面図である。本実施形態について、第1の実施形態との相違点を中心に説明するが、第1〜第3の実施形態の様々な応用例が同様に適用できる。
図4で例示するように、本実施形態における上部ユニット11は、取り外し可能な複数のサブユニット(この例では3つのサブユニット13a,13b,13c)を有する。そして、本実施形態の主たる特徴として、メンテナンスの頻度が高いサブユニットほど、電動車両1の前方側又は後方側のうちヒンジ部12が設けられていない側に配置されるものとする。
サブユニット13aとしては、例えばオプション用の基板が装着され、用途に応じて頻繁に取り換えが行われる。また、サブユニット13bとしては、例えば自律走行車両を制御するCPUボード等の制御部が挙げられ、不具合発生時にはその基板を新規なものに差し替えて確認することになり、メンテナンスの程度は中程度と言える。サブユニット13cとしては、例えば、バッテリ40等に近いことから一般的に重量が大きい一次側の回路部品、冷却用のファン、ヒートシンクなどが配置される。1次側の回路部品としては、例えばトランスやチョークコイル、フェライト等が含まれる。これらの部品は、故障時には修理ではなく交換となるようなもの、つまり、交換時以外は部品取り外しの必要がないものであり、メンテナンス頻度は低いと言える。
なお、各サブユニット13a,13b,13cの分類は、例えば制御対象毎にグループ分けするようにしてもよく、これにより頻度毎のサブユニット化が容易になる。また、サブユニットは図示したように前後方向に配列されていてもよいし、左右方向にも複数のサブユニットが配置されていてもよい。
このような構成により、例えばサブユニット13aだけメンテナンスしたい場合には、図示したようにサブユニット13aだけを取り出してメンテナンスすればよく、且つ、メンテナンス頻度が高いサブユニット程、前面14Fから見て手前側に設けられているため、作業性を向上できると言える。
さらに、下部ユニット10に対して上部ユニット11を支えるための支持部(図示せず)を設け、その支持部が角度θを段階的に固定できる機構(及びダンパ)をもたせることが好ましい。これにより、サブユニット13a,13b,13cのそれぞれについてメンテナンス時に段階的に角度θを変えることができる。つまり、メンテナンス頻度が多い部品については小さな開閉角度θでメンテナンス可能で、頻度が少ない部品については大きく開けてメンテナンスすることができる。このように開閉角度θにいくつかの段階を設け、極力大きく開ける必要が無いようにすることにより、上部ユニット11の開閉に伴う重心位置の移動による転倒をより防ぐことができる。
ここで、本実施形態に第2の実施形態を適用する例を挙げる。上述の例においてサブユニット13cとして重量が大きい部品を挙げたことからも分かるように、実際には、メンテナンス頻度が高いものほど重量が大きいとは言えない。よって、このような適用を行う場合には、メンテナンス頻度と重量を変数とする所定の関数に基づき、各サブユニットの配置を決定することが好ましい。
(その他)
本発明に係る電動車両として、主に四輪車両を例に挙げて説明したが、補足的に、3つの車輪など奇数個の車輪を設ける場合について説明する。例えば3つの車輪を設ける場合、電動モータの配置のし易さの点では、前輪として左右の車輪を設け且つ後輪として左右方向の中心に1つの車輪を設けることが好ましいと言える。但し、3つの車輪を設ける場合、後輪として左右の車輪を設け且つ前輪として左右方向の中心に1つの車輪を設けてもよい。また、車輪を幾つ設けるかに拘わらず、本発明に係る電動車両は、少なくともそのうち1つの車輪を駆動すればよい。