JP6481665B2 - 鉄骨柱とh形梁又はi形梁の接合構造及びその接合方法 - Google Patents

鉄骨柱とh形梁又はi形梁の接合構造及びその接合方法 Download PDF

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Description

本発明は、鉄骨造建築物を構築する際の鉄骨柱とH形梁又はI形梁の接合構造及びその接合方法に関する。
鉄骨柱には、例えば角形鋼管からなる鋼管柱、形鋼からなる鉄骨柱を含み、水平断面が角形やH形に鋼板を溶接した鉄骨柱を含む。
また、H形梁又はI形梁には、形鋼からなる梁の他、梁ウェブとなる鋼板の両端に梁フランジとなる鋼板を溶接してH形又はI形にした梁を含む。
以下の説明は、H形梁を例に挙げて説明するが、I形梁についても適用できる。
鉄骨造建築物における鉄骨柱とH形梁の接合方法は、図8、図9に示すブラケット形式の接合と、例えば特許文献1に記載のある溶接とボルト接合を混用する梁端混用接合(ノンブラケット形式)(図10、図11参照)に大別される。
ブラケット形式接合構造41は、図8、図9に示すように、鉄骨柱43にH形梁(図示なし)と同形式のブラケット45を工場で溶接して、ブラケット45とH形梁を建設現場で接合する。
梁端混用接合構造47は、図10、図11に示すように、鉄骨柱43にガセットプレート49を工場で溶接し、建設現場においてH形梁51の梁ウェブ51bとガセットプレート49を高力ボルト53による摩擦接合すると共にH形梁51の上下梁フランジ51aの端部を鉄骨柱43に突合せ溶接により接続する。
ブラケット形式接合構造41の場合、H形梁と同形式のH形鋼からなるブラケット45を工場溶接しているため、ブラケット45の嵩が高く現場への輸送や取り回しが煩雑であるという問題がある。
また、建設現場におけるH形梁とブラケット45との接合は、梁フランジ部及び梁ウェブのいずれもボルト接合となるため接合部数が多いという問題もある。
この点、梁端混用接合構造47は、梁端部付近での収まりがよいこと、また梁の接合部数が少なくできることなどから現在、国内で建設されている中高層鉄骨建築物の接合部に数多く適用されている。
特開平9−195384号公報
吹田啓一郎、田中剛:角形鋼管柱に接合される梁ウェブ接合部の曲げ耐力、鋼構造論文集第7巻、第26号、pp51-58、2000.6 日本建築学会:鉄骨工事技術指針工事現場施工編、pp.354-355、2007 増田浩志、田中淳夫、銭鋼:鋼構造梁端混用接合部の力学性能に関する実験的研究、日本建築学会構造系論文集、No.509、pp.151-158、1998.7
しかし、梁端混用接合構造47は、梁フランジ51aを溶接接合し梁ウェブ51bをボルト接合するというように梁フランジ51aと梁ウェブ51bの接合方法が異なっているため、以下のような問題点が指摘されている。
(1)ブラケット形式の接合に比べて、梁ウェブ51bが接合される鉄骨柱43部分の面外曲げ変形に起因する梁ウェブ51bの曲げ耐力の低下が生じる(非特許文献1)。
(2)通常、梁ウェブ51bを接合するボルトを本締めした後に梁フランジ51aを溶接接合する施工手順となるが、梁フランジ溶接時の熱応力によりボルト接合面にずれが生じ、溶接後のボルト軸力が所定の値を確保できず、梁ウェブ51bの曲げ応力伝達能力が十分に期待できない。非特許文献2において、本締めされた高力ボルト53に対する梁フランジ溶接における熱の影響によりボルト張力が低下するという研究例が示されている。
(3)梁ウェブ51bの曲げ応力伝達能力の低下は、梁フランジ51aのスカラップ底、鋼製エンドタブのスリット底の歪集中点の歪を増加させ、H形梁51の塑性変形能力の低下につながる可能性がある。
そこで、梁ウェブ51bの曲げ応力伝達能力改善のため、梁端接合部の設計においては、この部分でも曲げ負担をできるよう、梁ウェブ51bのボルト本数を数多く配置する必要がある。非特許文献3によれば、梁ウェブ接合部分の曲げ負担を考慮した(梁ウェブ51bに配置するボルト本数を増やした)梁端混用接合部は、最大曲げ耐力が改善され、塑性変形能力の確保の面でも有効とされている。
(4)先の手順とは逆に梁フランジ51aを溶接した後に梁ウェブ51bのボルトを本締めする施工手順があるが、この場合、梁フランジ51aの溶接によりボルト孔の位置がずれて、ボルト孔に高力ボルト53を挿入できなくなるという不具合が生じる場合がある。
工程の効率化や不具合の発生を少なくするためには、施工上、上記の梁ウェブ51bのボルトを本締めした後に梁フランジ51aを溶接する施工手順を選択する傾向がある。
上記の理由により、梁端混用接合構造47は、ボルト接合部分のすべりによって梁ウェブ51bの曲げ応力伝達能力が十分に期待できないことやH形梁51の上下梁フランジ51aに歪が集中することなどから、大きな地震力や繰返し曲げ変形を受けると鉄骨梁が容易に破壊し易くなる。
現に1995年の兵庫県南部地震において、上記従来技術による接合部において、変形能力に乏しい脆性的な破壊が多数報告されている。
本発明はかかる課題を解決するためになされたものであり、上述した梁端混用接合構造47の利点を生かしつつ、梁ウェブの曲げ耐力の低下を防止、さらに施工性に優れる鉄骨柱とH形梁又はI形梁の接合構造及びその接合方法を提供することを目的としている。
(1)本発明に係る鉄骨柱とH形梁又はI形梁の接合構造は、前記鉄骨柱にH形梁又はI形梁が取り付く側に突出させてガセットプレートを設け、
前記H形梁又はI形梁の梁フランジ端部と前記鉄骨柱の柱面を突合せ溶接すると共に、前記鉄骨柱に設けたガセットプレートの上下両縁と前記H形梁又はI形梁の梁ウェブ面を溶接接合したことを特徴とするものである。
(2)また、上記(1)に記載のものにおいて、前記ガセットプレートが前記柱面に溶接接合されていることを特徴とするものである。
(3)また、上記(1)又は(2)に記載のものにおいて、前記ガセットプレートの柱面からの突出長さを前記梁の梁ウェブ高さの1/6以上に設定したことを特徴とするものである。
(4)本発明に係る鉄骨柱とH形梁又はI形梁の接合方法は、ボルト孔の形成されたガセットプレートが柱面に取り付けられた鉄骨柱と、梁ウェブにボルト孔が形成されたH形梁又はI形梁を準備する準備工程と、
ガセットプレートと梁ウェブのボルト孔にボルトを挿入して、該ボルトを仮締めすることで前記鉄骨柱と前記H形梁又はI形梁を仮接合する仮接合工程と、
前記H形梁又はI形梁の梁フランジ端部と前記鉄骨柱の柱面を突合せ溶接する第1溶接工程と、
前記ガセットプレートの上下両縁と前記H形梁又はI形梁の梁ウェブ面を溶接接合する第2溶接工程とを備えたことを特徴とするものである。
(5)また、上記(4)に記載のものにおいて、前記ガセットプレートと前記梁ウェブに形成されたボルト孔のいずれか一方または双方のボルト孔の孔径を、ボルト軸径より過大径にすることによって、仮接合工程での位置調整を可能にしたことを特徴とするものである。
(6)また、上記(4)又は(5)に記載のものにおいて、前記ガセットプレートと前記梁ウェブに設けるボルト孔数を2以上としたことを特徴とするものである。
(7)また、上記(4)乃至(6)の何れかに記載のものにおいて、前記ガセットプレートの柱面からの突出長さを前記梁の梁ウェブ高さの1/6以上に設定したことを特徴とするものである。
本発明に係る鉄骨柱とH形梁又はI形梁の接合構造おいては、鉄骨柱にH形梁又はI形梁が取り付く側に突出させてガセットプレートを設け、前記H形梁又はI形梁の梁フランジ端部と前記鉄骨柱の柱面を突合せ溶接すると共に、前記鉄骨柱に設けたガセットプレートの上下両縁と前記H形梁又はI形梁の梁ウェブ面を溶接接合したことにより、梁ウェブの耐力の低下を防止でき、鉄骨柱とH形梁又はI形梁の接合構造に大地震などによる強い曲げモーメントが作用しても梁フランジの破断を防止することができる。
実施の形態1に係る鉄骨柱とH形梁の接合構造の説明図である。 図1の矢視A−A断面図(図2(a))及び、図1の矢視B−B断面図(図2(b))である。 実施の形態2に係る鉄骨柱とH形梁の接合方法の説明図である(その1)。 実施の形態2に係る鉄骨柱とH形梁の接合方法の説明図である(その2)。 実施例において用いた試験体及び試験方法の説明図である。 実施例において用いた発明例試験体(図6(a))及び比較例試験体(図6(b))の説明図である。 実施例の試験結果を示すグラフである。 従来例のブラケット形式による鉄骨柱とH形梁の接合構造の説明図である。 図8の矢視C−C断面図である。 従来例の梁端混用接合による鉄骨柱とH形梁の接合構造の説明図である。 図10の矢視D−D断面図である。
[実施の形態1]
図1、図2に示すように、本発明の一実施の形態に係る鉄骨柱とH形梁の接合構造1は、鉄骨柱3と、梁フランジ5aと梁ウェブ5bを有するH形梁5の接合構造であって、鉄骨柱3にH形梁5が取り付く側に突出させてガセットプレート7を設け、H形梁5の梁フランジ5aの端部と鉄骨柱3に設けた通しダイアフラム9を突合せ溶接(鉄骨柱・梁フランジ溶接接合部11)すると共に、鉄骨柱3に設けたガセットプレート7の上下両縁とH形梁5の梁ウェブ面を溶接接合(ガセットプレート・梁ウェブ溶接接合部13)したものである。
以下、詳細に説明する。
<鉄骨柱>
本実施の形態の鉄骨柱3は、角形鋼管柱からなり、通しダイアフラム9が設けられている。
なお、本発明の鉄骨柱3は、角形鋼管柱に限るものではなく、鋼管柱の形状は限定されず、また例えばH形鋼等からなる形鋼柱であってもよい。
また、本実施の形態では通しダイアフラム9が設けられているため、梁フランジ5aと接合される柱面が通しダイアフラム9となっているが、内ダイアフラムの場合には、梁フランジ5aは角形鋼管柱のスキンプレートと接合されることになり、この場合、梁フランジ5aと接合される柱面はスキンプレートになる。
鉄骨柱3における柱面には、H形梁5が取り付く側に突出させてガセットプレート7が設けられている。本実施の形態のガセットプレート7は、矩形状の板材からなり、工場において予め溶接接合されている。
なお、ガセットプレート7は、溶接接合されたものに限られず、例えば断面がT字状の部材で形成し、T字の横辺部分を柱面にボルト接合したものでもよい。
いずれの場合も、ガセットプレート7は、鉄骨柱3とH形梁5を接合する前に鉄骨柱3に一体化されている。
なお、ガセットプレート7は、ガセットプレート・梁ウェブ溶接接合部13を介して梁ウェブ5b負担分のモーメントを負担するため、ガセットプレート7の柱面から突出させる寸法は、梁ウェブ5bの高さの1/6以上とし、当該長さのすみ肉溶接ができる長さを確保することが望ましい。
<H形梁>
H形梁5は、梁ウェブ5bと梁フランジ5aを有するものであり、H形鋼からなるものでも、鋼板を溶接してH形にしたものであってもよい。
H形梁5の鉄骨柱3に接合される梁フランジ5aの端部には、斜めに直線状に加工されたレ形の開先15が形成され、また梁ウェブ5bにはスカラップ17が形成されている。
<鉄骨柱・梁フランジ溶接接合部>
鉄骨柱・梁フランジ溶接接合部11は、通しダイアフラム9側を直角に、梁フランジ5aをレ形の開先15とし、裏当て金19を用いて完全溶け込みによる突き合わせ溶接されている部位である。
<ガセットプレート・梁ウェブ溶接接合部>
ガセットプレート・梁ウェブ溶接接合部13は、柱面から突出したガセットプレート7の上下両縁を梁ウェブ5bにすみ肉溶接で接合した部位である。
なお、ガセットプレート7と梁ウェブ5bとの間には高力ボルト21が取り付けられているが、この高力ボルト21は接合の途中の段階での位置決めに用いた仮接合用のものであり、溶接接合が完了した後に取り外してもよい。
以上のように、本実施の形態の鉄骨柱とH形梁の接合構造1は、従来例として挙げたブラケット45が不要であり、ガセットプレート7を用いているので、従来例で説明した梁端混用接合構造47と同様に、梁端部付近での収まりがよく、接合部数が少なくできるという利点を有しており、かつガセットプレート7と梁ウェブ5bをボルト接合ではなく、溶接接合しているので、梁ウェブ5bの耐力を向上でき、従来の梁端混用接合構造47で生じた種々の問題が生ずることがない。
[実施の形態2]
次に、上記の鉄骨柱とH形梁の接合構造1を施工する方法について、図3、図4に基づいて説明する。
本実施の形態の鉄骨柱3とH形梁5の接合方法は、準備工程と、仮接合工程と、第1溶接工程と、第2溶接工程を備えている。
以下、各工程を図3、図4に基づいて詳細に説明する。なお、図3、図4において図1、図2と同一部分には同一の符号を付してある。
<準備工程>
準備工程は、ボルト孔23の形成されたガセットプレート7が柱面に取り付けられた鉄骨柱3と、梁ウェブ5bにボルト孔24が形成されたH形梁5を準備する工程である(図3(a)参照)。
ガセットプレート7は、実施の形態1で述べたように、柱面に溶接してもよいし、あるいはボルト接合されていてもよい。
ボルト孔23、24は、H形梁5の軸線方向に長い長孔(図3(a)参照)のようにボルト軸径より過大径にするのが好ましい。ボルト孔23を長孔にすることで、H形梁5の軸線方向に誤差があっても位置決めすることができる。
なお、ボルト孔23、24は、長孔に限らず、丸孔であってもよいが、ボルト軸径の10%以上大きな過大孔にするのが望ましい。
また、本実施の形態では、ボルト孔23、24を縦方向に一列で所定の間隔を離して2個設けているが、その数は特に限定されない。もっとも、ボルト孔23、24の数を2個以上にすることで、仮接合工程での位置決めを行い易いという効果がある。
また、H形梁5の梁フランジ5aの端部には、斜めに直線状に加工されたレ形の開先15を形成し、また梁ウェブ5bにはスカラップ17を形成する。
<仮接合工程>
仮接合工程は、ガセットプレート7のボルト孔23と梁ウェブ5bのボルト孔24の位置を合わせ、ボルト孔23、24に高力ボルト21を挿入して、高力ボルト21を仮締めすることで鉄骨柱3とH形梁5を仮接合する工程である(図3(b)参照)。
前述したように、ボルト孔23、24をボルト軸径より過大にすることで、寸法誤差が有った場合でも仮接合工程を行うことができる。
<第1溶接工程>
第1溶接工程は、H形梁5の梁フランジ5aの端部と鉄骨柱3の柱面を突合せ溶接して前述した鉄骨柱・梁フランジ溶接接合部11を形成する工程である(図4(c)参照)。
第1溶接工程では、梁フランジ5aの開先15と通しダイアフラム9との当接部の下部に裏当て金19を配置して、当該部位を完全溶け込みによる突き合わせ溶接する。
第1溶接工程において、梁フランジ5aの溶接時の熱応力によりボルト接合面にずれが生じたり、熱の影響でボルト張力が低下したりしても、高力ボルト21は仮接合のためのものであり、応力伝達を期待していないので、問題がない。
<第2溶接工程>
第2溶接工程は、ガセットプレート7の上下両縁とH形梁5の梁ウェブ面をすみ肉溶接により接合する工程である(図4(d)参照)。
第2溶接工程によって、梁ウェブ5bとガセットプレート7が一体となり、梁ウェブ5bの曲げ耐力を向上させることができる。
以上のように、本実施の形態によれば、ガセットプレート7と梁ウェブ5bに設けるボルト孔径をボルト軸径よりも過大にしているので、寸法誤差が有った場合でも施工が可能であり、施工性に優れている。また、ガセットプレート7を梁ウェブ5bに溶接接合しているので、梁ウェブ5bの耐力を向上させることができる。
本発明の実施形態に係る鉄骨柱とH形梁の接合構造1の性能を確認するための試験を行ったので、これについて以下説明する。
本試験に用いた試験体25(柱梁部分架構)の概要は、図5に示すように、通しダイアフラム9を有する角形鋼管柱27に圧延によって製造されたH形鋼梁29を接合したものである。
試験方法は、H形鋼梁29の先端に取り付けたアクチュエーターを、平面内を図中の矢印のように繰返し稼動し、これによってH形鋼梁29の端部に、曲げとせん断力を作用させた。
また、試験体25の具体的な構造として、図6(a)に示す本発明例に相当する発明例試験体25Aと、図6(b)に示す従来例に相当する比較例試験体25Bを作成した。
なお、図6において、以下に特記する部品以外については、図1と同一部分には同一の符号を付してある。
発明例試験体25A及び比較例試験体25Bともに、角形鋼管柱27が、辺の長さが400mm×400mm、板厚16mm、長さ2500mmのBCR295角形鋼管であり、H形鋼梁29が、呼称寸法の高さ500mm、辺200mm、ウェブ板厚12mm、フランジ板厚25mm、長さ2500mm、SN490Bの圧延H形鋼である。
また、通しダイアフラム9はSN490Cで、幅450mm、長さ450mm、厚さ28mmである。
角形鋼管柱27にすみ肉溶接されているガセットプレートに関し、発明例試験体25Aのガセットプレート31Aは、厚さ16mmのSN490Bで、幅150mm、高さ345mmとし、梁ウェブとガセットプレート幅方向とのすみ肉溶接長85mmを確保した。また、比較例試験体25Bのガセットプレート31Bは、厚さ16mmのSN490Bで、幅200mm、高さ345mmとした。
発明例試験体25Aのガセットプレート31Aは、仮ボルト33を挿入するためのボルト孔を2つ設けた。孔径は22mmであるが、梁長さ方向に孔径が梁高さ方向よりも2mm長い長孔としている。また、ガセットプレート31Aと梁ウェブ5bを一体とするすみ肉溶接は脚長10mm、長さ75mmとした。なお、ガセットプレート31Aと梁ウェブ5bが重ね合わさる部分にはショットブラストなどの摩擦面処理は施していない。
比較例試験体25Bの梁ウェブ5bとガセットプレート31Bは高力ボルト35による摩擦接合としている。そのためガセットプレート31Bおよび梁ウェブ5bの摩擦面にはショットブラスト処理を施している。ガセットプレート31B部分には、高力ボルト35F10T-M20を12本使用しており、梁フランジ5aの溶接に先立ち、高力ボルト35に標準ボルト張力を導入し、梁ウェブ5bと一体化した。ボルト孔径は22mmである。
試験方法は、図5に示すように、H形鋼梁29の先端に取り付けたアクチュエーターを、平面内を図中の矢印のように繰返し稼動し、これによってH形鋼梁29の端部に、曲げとせん断力を作用させるというものである。
図7は、試験結果を示すグラフであって、図7(a)は発明例試験体25Aについての試験結果であり、図7(b)は比較例試験体25Bについての試験結果である。
図7は、図5におけるH形鋼梁29の先端に取り付けたアクチュエーターが水平方向(実物では垂直方向に相当)に所定の距離だけ移動し、その後、反対方向に所定の距離だけ移動して、H形鋼梁29の先端に変位を加えていく場合を示している。
図7において、横軸はアクチュエーターが取り付けられたH形鋼梁29の先端の水平方向変位量(垂直方向からの回転角θb(rad.))であり、縦軸はアクチュエーターからH形鋼梁29の柱側端部に加わる載荷荷重による梁端モーメント:Mb(tf・m)であって、図5における右矢印方向をプラス方向(右方向)としている。
発明例試験体25Aの試験結果である図7(a)を見ると、図5における右矢印方向の載荷によって、H形鋼梁29は原点から弾性変形を開始し、降伏した後、極僅かに加工硬化しながら塑性変形が進み、所定変位Cに到達している。所定変位Cに到達した後、図5における左矢印方向に向かって載荷されることで、所定変位Dに到達し、さらに図5における右方向に向かって載荷されて、所定変位Cに向かって戻っている。
さらに、図5における右矢印方向に載荷するため、H形鋼梁29の塑性変形が進んでおり、やがて、所定変位Eに到達したところで、図5における左矢印側に向かって載荷し、所定変位Fに向かって戻る。
このように、アクチュエーターが図5における右矢印方向と左矢印方向の載荷を繰返すため、図7(a)に図示するようなヒステリシス曲線が描かれている。
そして、発明例試験体25Aは梁端回転角が5/100を超え、十分な変形能力を発揮している。最終的には、梁フランジ5aの局部座屈により耐力低下を生じて破壊に至っている。
一方、比較例試験体25Bは、図7(b)に示すように、初期においては発明例試験体25Aと同様の挙動を示すものの、梁端回転角が3/100未満で梁フランジ5aが脆性的に破壊しており、変形能力が低いことを示している。
以上の試験結果より、発明例試験体25Aは比較例試験体25Bよりも繰り返し載荷回数が多く、十分なエネルギを吸収できており、本発明の鉄骨柱とH形梁の接合構造1が梁ウェブ5bの曲げ耐力の低下を防止できるものであることが実証された。
1 鉄骨柱とH形梁の接合構造
3 鉄骨柱
5 H形梁
5a 梁フランジ
5b 梁ウェブ
7 ガセットプレート
9 通しダイアフラム
11 鉄骨柱・梁フランジ溶接接合部
13 ガセットプレート・梁ウェブ溶接接合部
15 開先
17 スカラップ
19 裏当て金
21 高力ボルト
23 ボルト孔
24 ボルト孔
25 試験体
25A 発明例試験体
25B 比較例試験体
27 角形鋼管柱
29 H形鋼梁
31A ガセットプレート(発明例試験体)
31B ガセットプレート(比較例試験体)
33 仮ボルト
35 高力ボルト
41 ブラケット形式接合構造
43 鉄骨柱
45 ブラケット
47 梁端混用接合構造
49 ガセットプレート
51 H形梁
51a 梁フランジ
51b 梁ウェブ
53 高力ボルト

Claims (2)

  1. 鉄骨柱と、梁フランジと梁ウェブを有するH形梁又はI形梁の接合方法であって、
    2個のボルト孔の形成されたガセットプレートが柱面に取り付けられた鉄骨柱と、梁ウェブに2個のボルト孔が形成されたH形梁又はI形梁を準備する準備工程と、
    ガセットプレートと梁ウェブの2個のボルト孔に2本のボルトを挿入して、該ボルトを仮締めすることで前記鉄骨柱と前記H形梁又はI形梁を仮接合する仮接合工程と、
    前記H形梁又はI形梁の梁フランジ端部と前記鉄骨柱の柱面を突合せ溶接する第1溶接工程と、
    前記ガセットプレートの上下両縁と前記H形梁又はI形梁の梁ウェブ面を溶接接合する第2溶接工程とを備え、
    前記ガセットプレートと前記梁ウェブに形成されたボルト孔のいずれか一方または双方のボルト孔の孔径を、ボルト軸径より過大径にすることによって、仮接合工程での位置調整を可能にしたことを特徴とする鉄骨柱とH形梁又はI形梁の接合方法。
  2. 前記ガセットプレートの柱面からの突出長さを前記梁の梁ウェブ高さの1/6以上に設定したことを特徴とする請求項に記載の鉄骨柱とH形梁又はI形梁の接合方法。
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