JP6481374B2 - エネルギー吸収ステアリングコラム - Google Patents

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本発明は、車両のステアリングシャフトに印加されるエネルギーを吸収するエネルギー吸収ステアリングコラムに係る。
車両に搭載されるエネルギー吸収ステアリングコラムは、ステアリングコラムに対しエネルギーを吸収する特性を付与しておき、ステアリングホイールに対する衝撃を緩和する手段として広く知られており、種々の構造のものが採用されている。例えば、下記の特許文献1には、「車両のステアリングシャフトを収容し軸を中心に回転可能に支持する第1筒状部材と、該第1筒状部材を収容し常時は当該第1筒状部材を所定位置に保持する第2筒状部材と、前記ステアリングシャフトに対し所定値以上の荷重が印加されたときには前記第2筒状部材に対する前記第1筒状部材の軸方向相対移動を許容するように構成されたエネルギー吸収ステアリングコラムにおいて、前記第2筒状部材が、車両後方開口端から軸方向に所定距離離隔した位置の内面に形成された第1の保持部を有すると共に、前記第1筒状部材が、車両前方開口端近傍が拡径された第1の拡径部を有し、且つ、前記第2筒状部材が、車両後方開口端近傍の内面に形成された第2の保持部を有すると共に、前記第1筒状部材が、車両前方開口端から軸方向に所定距離離隔した部分が拡径された第2の拡径部と、該第2の拡径部が前記第2の保持部に保持される位置から前記第1筒状部材の車両後方開口端近傍までの間に、周方向の一部が連続して縮径された縮径部と、該縮径部の外周面の一部が切除された平面部を有して成り、前記第1の拡径部と前記第1の保持部との間に介装し径方向に弾性力を付与する弾性ブッシュと、前記平面部に固定し車両後方開口端方向に延出する板状部材と、該板状部材に装着し相対的な移動時には摩擦力を付与しながら案内する摩擦係合部を有するエネルギー吸収ブロックとを備える」ことが提案されている(特許文献1の段落〔0007〕に記載)。
特開2010−188901号公報
上記の特許文献1における「第1筒状部材」は実施形態に記載のインナチューブに対応し、「第2筒状部材」は実施形態に記載のアウタチューブに対応しているが、本願においては、上記のインナチューブに対応するアッパチューブ、及び上記のアウタチューブに対応に対応するロアチューブを用いることとする。
上記特許文献1に記載のステアリングコラムにおいては、アッパチューブ(特許文献1ではインナチューブ)内に収容されたアッパシャフトが、アッパチューブの後端部に軸受を介して回転可能に支持されているが、アッパシャフトとアッパチューブとの間の軸方向相対移動は規制されており、アッパシャフトとアッパチューブは一体となって軸方向移動し得るように構成されている(特許文献1の段落〔0013〕に記載)。従って、アッパシャフトに衝撃荷重が加えられて車両前方に移動するときのストロークが、そのままアッパチューブの移動ストロークになるので、ステアリングコラムの軸方向長さはアッパチューブの移動ストローク及びこれを収容するロアチューブの軸方向長さを考慮して設定する必要がある。小型化の要請に応えるには、ステアリングコラムの軸方向長さは出来る限り短くする必要があり、アッパチューブとロアチューブとの間の関係を調整して軸方向長さを短縮する手段は種々講じられているが、アッパシャフトとアッパチューブとの間は、上記のように軸方向相対移動が規制される構成が前提とされているため、これらの間の距離に対する短縮化は考慮されていなかった。
そこで、本発明は、アッパチューブに対しアッパシャフトを移動可能とし、ステアリングコラムの軸方向長さの短縮化を可能とするエネルギー吸収ステアリングコラムを提供することを課題とする。
上記の課題を達成するため、本発明は、車両のステアリングシャフトを収容し軸を中心に回転可能に支持するアッパチューブと、該アッパチューブに対して車両前方側に配置され、当該アッパチューブを収容し常時は当該アッパチューブを所定位置に保持するロアチューブを備え、前記ステアリングシャフトに対し所定値以上の荷重が印加されたときには前記ロアチューブに対する前記アッパチューブの軸方向相対移動を許容するように構成されたエネルギー吸収ステアリングコラムにおいて、前記アッパチューブ内に支持される軸受を備え、前記ステアリングシャフトが、前記軸受に一体的に保持され、前記軸受を介して前記アッパチューブ内で回転可能に支持されるアッパシャフトと、該アッパシャフトに対し相対移動可能に支持されるロアシャフトを具備し、前記アッパシャフトが前記軸受と共に、前記アッパチューブに対し車両前方側に所定距離移動可能に支持され、前記アッパチューブの車両後方側端部の内面に、車両前方側から前記軸受を圧入可能な圧入溝が形成されると共に、該圧入溝の車両後方側に段部が形成され、該段部によって前記軸受の車両後方側への移動が阻止されるように構成されたものである。
また、上記のエネルギー吸収ステアリングコラムにおいて、前記アッパチューブは、前記軸受の車両前方側への所定距離移動後の前記アッパチューブに対する移動を阻止する係止部を有するものとするとよい。前記係止部は、例えば、前記アッパチューブに形成されたカシメ部で構成することができる。
本発明は上述のように構成されているので以下の効果を奏する。即ち、本発明のエネルギー吸収ステアリングコラムにおいては、アッパチューブ内に支持される軸受を備え、ステアリングシャフトが、軸受に一体的に保持され、この軸受を介してアッパチューブ内で回転可能に支持されるアッパシャフトと、アッパシャフトに対し相対移動可能に支持されるロアシャフトを具備し、アッパシャフトが軸受と共に、アッパチューブに対し車両前方側に所定距離移動可能に支持され、アッパチューブの車両後方側端部の内面に、車両前方側から軸受を圧入可能な圧入溝が形成されると共に、圧入溝の車両後方側に段部が形成され、この段部によって軸受の車両後方側への移動が阻止されるように構成されているので、ステアリングコラムの軸方向長さを短縮することができると共に、軸受を容易にアッパチューブに組み付け、保持することができ、アッパチューブに対しアッパシャフトを車両前方側に所定距離移動可能に構成することができる
上記のエネルギー吸収ステアリングコラムにおいて、アッパチューブは、軸受の車両前方側への所定距離移動後のアッパチューブに対する移動を阻止する係止部を有するものとすれば、簡単な構成で、所定距離移動後のアッパシャフトのアッパチューブに対する移動を確実に阻止することができる。そして、上記係止部は、アッパチューブに形成されたカシメ部で構成することができ、容易且つ簡単に係止部を設けることができる。尚、カシメ部に代えて、ピンやボルトを用いることとしてもよい。
本発明の一実施形態に係るエネルギー吸収ステアリングコラムの通常時の状態を示す断面図である。 本発明の一実施形態に係るエネルギー吸収ステアリングコラムの通常時の状態を示す側面図である。 本発明の一実施形態に供されるアッパチューブとアッパシャフトの接合部を拡大して示す断面図である。 本発明の一実施形態に係るエネルギー吸収ステアリングコラムの衝撃吸収後の状態を示す断面図である。 従来のエネルギー吸収ステアリングコラムの通常時の状態を示す断面図である。 従来のエネルギー吸収ステアリングコラムの衝撃吸収後の状態を示す断面図である。
以下、本発明の望ましい実施形態について図面を参照して説明する。図1及び図2は本発明の一実施形態に係るエネルギー吸収ステアリングコラムを含むステアリング装置を示すもので、図3に図1の一部を拡大して示す。先ず、本実施形態のステアリング装置の構成について説明すると、図1及び図2において、ステアリングシャフト1は、後端部にステアリングホイールW(図1及び図2に二点鎖線で示す)が接続される筒状のアッパシャフト1aと、このアッパシャフト1aの内筒面とスプライン結合されるロアシャフト1bから成る。即ち、アッパシャフト1aとロアシャフト1bがスプライン結合されて軸方向に相対移動可能で相対回転不能に連結されており、ロアシャフト1bの前端部が操舵機構(図示せず)に接続されている。
上記のステアリングシャフト1は金属製のアッパチューブ10内に収容され、軸を中心に回転可能に支持されている。即ち、アッパチューブ10内に収容されたアッパシャフト1aが、ボールベアリングで構成された軸受3を介してアッパチューブ10の後端部に回転可能に支持されている。この構造については図3を参照して後述する。
更に、アッパチューブ10を収容し常時はこれを所定位置に保持する金属製のロアチューブ20が設けられ、メインハウジング2内に摺動自在に保持され、軸方向移動可能に支持されている。また、ロアチューブ20は、その車両後方の開口端近傍の内面に環状凸部21が形成されており、アッパチューブ10の外周面を圧接するように構成されると共に、アッパチューブ10の車両前方の開口端近傍に、径方向外側に膨出した拡径部11が形成され、ロアチューブ20の内周面を圧接するように構成されている。而して、アッパチューブ10に対し所定値以上の荷重が印加されたときには、ロアチューブ20に対するアッパチューブ10の軸方向相対移動(ひいてはアッパシャフト1aの軸方向移動)を許容するように構成されている。
上記のメインハウジング2(及び、これに収容される部材)は、図2に示すように、固定ブラケット6を構成する一対の保持部(符合省略)の間に保持され、固定ブラケット6は図2の上方で車体に固定されている。更に、保持部とメインハウジング2との間に夫々押圧機構(図示せず)が介装され、これらによってメインハウジング2が摺動自在に押圧支持されている。本実施形態においては、上記のメインハウジング2(及び、これに収容される部材)は、車体(図示せず)に対し揺動可能に支持されており、チルト機構5が構成されているが、本発明とは直接関係しないので説明を省略する。尚、図1に二点鎖線で示すBは、車両用ブラケットで、これにステアリングホイールWが当接するとステアリングホイールWの前進が阻止される。
前述のように、アッパチューブ10内には軸受3が支持されており、この軸受3にステアリングシャフト1が一体的に保持される。このステアリングシャフト1は、軸受3を介してアッパチューブ10内で回転可能に支持されるアッパシャフト1aと、アッパシャフト1aに対し相対移動可能に支持されるロアシャフト1bを具備しており、図3を参照して以下に説明するように、アッパシャフト1aは軸受3と共に、アッパチューブ10に対し車両前方側に所定距離(図1にL1で示す)移動可能に支持されている。
図3に示すように、アッパチューブ10の車両後方側端部の内面に、車両前方側から軸受3を圧入可能な圧入溝10aが形成され、この圧入溝10aの車両後方側に段部10bが形成されており、段部10bによって、軸受3の車両後方側への移動が阻止されるように構成されている。而して、アッパチューブ10に対し車両前方側から軸受3が挿入され、その外輪3aが圧入溝10aに圧入され、段部10bで係止される。次に、アッパチューブ10には、車両前方側への所定距離移動後の軸受3の移動を阻止する係止部として、カシメ部10cが形成される。尚、カシメ部10cに代えて、ピンやボルト(図示せず)を用いるように構成してもよい。そして、アッパシャフト1aの車両後方側端部が軸受3の内輪3bに嵌合され、例えばC字状の止め輪3cによって保持される。
上記の構成になる本実施形態において、図1に示す通常時の状態でアッパシャフト1aに衝撃荷重が印加されると、軸受3はアッパチューブ10の圧入溝10aから離脱し、軸受3と共にアッパシャフト1aが車両前方(図1の左方)に移動する。アッパチューブ10の係止部であるカシメ部10cから軸受3までの軸方向距離をL1とすると、この軸方向距離L1だけアッパシャフト1aが前方にストローク可能となる。但し、この軸方向距離L1は、ステアリングホイールWから車両用ブラケットBに当接するまでにストローク可能な軸方向距離L2より短く(L1<L2)設定されている。
更に大きな衝撃荷重がアッパシャフト1aに加わり、軸受3がカシメ部10cに当接し、これらを介してアッパチューブ10に対し前述の所定値以上の荷重が印加されると、アッパチューブ10がロアチューブ20内を車両前方に移動する。これに伴い、アッパシャフト1aは(軸受3及びアッパチューブ10と共に)車両前方に移動し、アッパチューブ10の車両前方端部からメインハウジング2の車両前方端部までの軸方向距離L3未満の所定距離をストロークして図4に示す状態となり、この間にアッパシャフト1aに印加された衝撃荷重が吸収される。尚、上記の軸方向距離L3未満の所定距離は、車両用ブラケットBからロアチューブ20の車両後方端部までの軸方向距離L4より小に設定されている。
一方、特許文献1に記載の従来装置においては、図5に示すように、アッパチューブ10xに対し車両後方側から軸受3xが圧入され、車両前方側の段部10bxで軸受3xの車両前方への移動が阻止されるように構成されている。即ち、軸受3xによってアッパチューブ10xに対するアッパシャフト1axの軸方向相対移動が規制されている。従って、アッパシャフト1axとアッパチューブ10xは一体となって軸方向移動し、両者間の相対移動は阻止されている。尚、図5において、1xはステアリングシャフト、1bxはロアシャフト、2xはメインハウジングを示し、二点鎖線で示すW及びBは図1と同様、夫々、ステアリングホイール及び車両用ブラケットを示す。
図5において、アッパチューブ10xの車両前方端部からメインハウジング2xの車両前方端部までの軸方向距離をL5とし、車両用ブラケットBからロアチューブ20xの車両後方端部までの軸方向距離をL6とすると、前述の軸方向距離L3及びL4の関係と同様、衝撃吸収時のストロークは軸方向距離L5及びL6の短い方の長さを基準とする必要がある。そして、衝撃吸収に必要なアッパシャフト1axのストロークが長くなる程、軸方向距離L5及びL6が長くなり、必要とするステアリングコラムの全長が長くなる。然しながら、上記のようにアッパシャフト1axとアッパチューブ10xとの間は相対移動が阻止された状態が前提とされているため、この間の距離が縮小されることはなく、(図4と対比し得る)衝撃吸収後の状態は図6に示す状態となる。
これに対し、本実施形態においては、図1に示す状態でアッパシャフト1aに衝撃荷重が印加されると、軸受3がアッパチューブ10の圧入溝10aから離脱し、アッパシャフト1aが車両前方に軸方向距離L1をストロークし、軸受3はカシメ部10cに当接する。更に、アッパシャフト1aが(アッパチューブ10と共に)軸方向距離L3未満の所定距離をストロークすると、図4に示す状態となる。このとき、アッパシャフト1aは軸方向距離L1だけストロークしているので、図5に示す軸方向距離L5及びL6と比較すると、軸方向距離L3は(L5−L1)に設定し、軸方向距離L4も(L6−L1)に設定すれば、従来装置と同等の衝撃吸収ストロークを確保することができる。従って、本実施形態においては、従来装置に比し、ステアリングコラムの全長を軸方向距離L1短縮することができ、小型軽量化が可能となる。
1、1x ステアリングシャフト
1a、1ax アッパシャフト
1b、1bx ロアシャフト
2、2x メインハウジング
3、3x 軸受
10、10x アッパチューブ
10a 圧入溝
10b、10bx 段部
10c カシメ部(係止部)
20、20x ロアチューブ
B 車両用ブラケット
W ステアリングホイール

Claims (3)

  1. 車両のステアリングシャフトを収容し軸を中心に回転可能に支持するアッパチューブと、該アッパチューブに対して車両前方側に配置され、当該アッパチューブを収容し常時は当該アッパチューブを所定位置に保持するロアチューブを備え、前記ステアリングシャフトに対し所定値以上の荷重が印加されたときには前記ロアチューブに対する前記アッパチューブの軸方向相対移動を許容するように構成されたエネルギー吸収ステアリングコラムにおいて、前記アッパチューブ内に支持される軸受を備え、前記ステアリングシャフトが、前記軸受に一体的に保持され、前記軸受を介して前記アッパチューブ内で回転可能に支持されるアッパシャフトと、該アッパシャフトに対し相対移動可能に支持されるロアシャフトを具備し、前記アッパシャフトが前記軸受と共に、前記アッパチューブに対し車両前方側に所定距離移動可能に支持され、前記アッパチューブの車両後方側端部の内面に、車両前方側から前記軸受を圧入可能な圧入溝が形成されると共に、該圧入溝の車両後方側に段部が形成され、該段部によって前記軸受の車両後方側への移動が阻止されるように構成されていることを特徴とするエネルギー吸収ステアリングコラム。
  2. 前記アッパチューブは、前記軸受の車両前方側への所定距離移動後の前記アッパチューブに対する移動を阻止する係止部を有することを特徴とする請求項記載のエネルギー吸収ステアリングコラム。
  3. 前記係止部は、前記アッパチューブに形成されたカシメ部で構成されることを特徴とする請求項記載のエネルギー吸収ステアリングコラム。
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