本発明の一実施形態による運転特性診断システムについて以下に説明する。図1は、本発明の一実施形態に係る運転特性診断システムの構成図である。
まず、本システムの構成要素を説明する。本システムは、テレマティクスセンタ100および車載端末200により構成される。テレマティクスセンタ100と車載端末200は、インターネットや携帯電話通信網などによって構成されるネットワーク300を介して接続されている。
テレマティクスセンタ100は、本発明の一実施形態に係る運転特性診断装置として機能する。テレマティクスセンタ100は、演算処理装置120、記憶装置130および通信部140から構成される。演算処理装置120は、サーバ等のコンピュータに搭載されたCPUなどによって実現され、各種の演算処理を実行する。演算処理装置120は、プローブ情報取得部121、動画情報取得部122、環境情報取得部123、プローブ情報前処理部124、危険運転検出処理部125、原因推定処理部126、過失度合算出部127、運転特性診断処理部128および診断結果出力部129を機能的に備える。記憶装置130は、ハードディスクドライブなどの記録媒体を用いたストレージである。記憶装置130には、ユーザ情報131、プローブ情報132、動画情報133、診断結果情報134、地図情報135などの情報が蓄積される。
ユーザ情報131は、図1の運転特性診断システムを利用する各ユーザを互いに識別するための情報である。ユーザ情報131には、たとえば各ユーザのID番号やユーザ名などの情報が含まれる。なお、説明を簡略化するため、図1では1つの車載端末200のみを図示しているが、実際には、運転特性診断システムを利用する複数のユーザに対応して、複数の車載端末200がネットワーク300を介してテレマティクスセンタ100に接続される。
プローブ情報132は、車載端末200を搭載した各車両の運転状態に関する情報である。プローブ情報132には、たとえば車載端末200に搭載された各種センサの計測データなどが含まれる。
動画情報133は、車載端末200を搭載した各車両において撮影された動画の情報である。動画情報133には、たとえば走行中の各車両の周囲風景を撮影して得られた動画データや、車両を運転している各ユーザを撮影して得られた動画データなどの情報が含まれる。
診断結果情報134は、各ユーザに対する運転特性の診断結果を示す情報である。診断結果情報134は、運転特性診断処理部128により生成される。
地図情報135は、各道路の位置、方向、形状、接続関係、交通規則などを示す情報である。
プローブ情報取得部121は、車載端末200から送信されて通信部140により受信されたプローブ情報232を取得し、プローブ情報132として記憶装置130に蓄積する。このときプローブ情報取得部121は、プローブ情報232と共に送信されるユーザ情報231に基づいて、プローブ情報132をユーザごとに分類して記憶装置130に蓄積する。
動画情報取得部122は、車載端末200から送信されて通信部140により受信された動画情報233を取得し、動画情報133として記憶装置130に蓄積する。このとき動画情報取得部122は、動画情報233と共に送信されるユーザ情報231に基づいて、動画情報133をユーザごとに分類して記憶装置130に蓄積する。
環境情報取得部123は、記憶装置130に蓄積されたプローブ情報132に含まれるユーザの走行経路を示す位置情報に基づいて、車両走行時の周囲環境に関する情報(環境情報)を取得する。環境情報は、走行経路における制限速度などの法令に関する情報や、車両の走行位置に対応する気象情報、日照情報、道路交通情報(渋滞情報、事故情報等)などを含む。環境情報取得部123は、これらの環境情報を、不図示の情報提供者からネットワーク300を介して取得することができる。
テレマティクスセンタ100は、プローブ情報取得部121、動画情報取得部122、環境情報取得部123を用いて、以上説明したような情報をそれぞれ取得する。これにより、テレマティクスセンタ100は、車両の運転状態に関する情報として、プローブ情報132、動画情報133および各種の環境情報を取得することができる。
プローブ情報前処理部124は、記憶装置130に蓄積されたプローブ情報132に対して、危険運転検出処理部125、原因推定処理部126および過失度合算出部127での処理に利用するための前処理を行う。この前処理には、たとえば、プローブ情報132に含まれる加速度データ等のセンサ計測データから、振動などによるノイズ成分を除去する処理や、交差点付近のプローブ情報を抽出する処理や、走行経路の道路種別を判定する処理などが含まれる。なお、上述した前処理を全て行う必要はない。また、必要に応じて、たとえばセンサ計測データをフーリエ変換するなど、各種のデータ成形処理等を行うことも可能である。
危険運転検出処理部125は、プローブ情報132に基づいて、車両におけるユーザの危険運転を検出する。危険運転検出処理部125が危険運転を検出する処理方法の詳細は後述する。
原因推定処理部126は、危険運転検出処理部125で検出された危険運転の原因を推定する。原因推定処理部126が危険運転の原因を推定する処理方法の詳細は後述する。
過失度合算出部127は、原因推定処理部126で推定された危険運転の原因を基に、危険運転検出処理部125で検出された危険運転に対するユーザの過失度合を算出する。過失度合算出部127がユーザの過失度合を算出する処理方法の詳細は後述する。
運転特性診断処理部128は、上記の危険運転検出処理部125、原因推定処理部126および過失度合算出部127の処理結果に基づいて、ユーザに対する運転特性の診断を行い、その診断結果を示す診断結果情報134を記憶装置130に蓄積する。診断結果情報134は、危険運転検出処理部125により検出された危険運転について、原因推定処理部126で推定された原因を示す情報と、過失度合算出部127で算出されたユーザの過失度合を示す情報とを含む。
診断結果出力部129は、車載端末200から送信されたユーザによる運転特性の診断結果の要求に応じて、当該ユーザに対する運転特性の診断結果を通信部140に出力する。診断結果出力部129は、記憶装置130に蓄積されている診断結果情報134のうち、当該ユーザに対応する情報を読み出して、運転特性の診断結果として出力する。この際、ユーザの要求に応じて、指定された時刻、走行経路、走行位置等に対応する運転特性の診断結果を送信することも可能である。通信部140は、診断結果出力部129から出力された運転特性の診断結果を、ネットワーク300を介して車載端末200に送信する。
車載端末200は、入出力装置201、加速度計測装置202、角速度計測装置203、地磁気計測装置204、位置測位装置205、カメラ206、マイク207、車間距離計測装置208、周辺近接計測装置209、車両情報取得装置210、視線計測装置211、生体情報計測装置212、通信部240、演算処理装置220および記憶装置230を備える。演算処理装置220は、CPUやGPUなどによって実現され、各種の演算処理を実行する。演算処理装置220は、加速度変換処理部221、プローブ情報蓄積処理部222、プローブ情報出力部223、動画撮影処理部224、動画出力部225、診断結果取得部226および診断結果表示処理部227を備える。記憶装置230は、ハードディスクドライブ、ソリッドステートドライブ、SDカードなどの記録媒体を用いたストレージである。記憶装置230には、ユーザ情報231、プローブ情報232、動画情報233、診断結果情報234、地図情報235などの情報が蓄積される。
車載端末200は、ユーザが運転する車両(以下、「自車両」と称する)に搭載されている。なお、車載端末200には、スマートフォン、カーナビゲーションシステム、TCU(Telematics Control Unit)等の端末装置を利用することができる。さらに、これらの端末装置に、ステレオカメラ、車内撮影用カメラ、自車両周辺を撮影するオーバービューカメラ、車間距離を計測するためのレーザレーダやミリ波レーダ、生体情報計測装置などを組み合わせることで、車載端末200としてもよい。
ユーザ情報231は、車載端末200を使用しているユーザに関する情報である。ネットワーク300を介してテレマティクスセンタ100に接続される複数の車載端末200には、それぞれ別々の内容を示すユーザ情報231が記録されている。
プローブ情報232は、車載端末200において取得された自車両の運転状態に関する情報である。プローブ情報232は、プローブ情報出力部223により所定のタイミングで記憶装置230から読み出され、通信部240により、ネットワーク300を介してテレマティクスセンタ100に送信される。
動画情報233は、車載端末200において撮影された動画の情報である。動画情報233は、動画出力部225により所定のタイミングで記憶装置230から読み出され、通信部240により、ネットワーク300を介してテレマティクスセンタ100に送信される。
診断結果情報234は、車載端末200を利用しているユーザに対する運転特性の診断結果を示す情報である。診断結果情報234は、ユーザの要求に応じてテレマティクスセンタ100から取得され、記憶装置230に蓄積される。
地図情報235は、各道路の位置、方向、形状、接続関係、交通規則などを示す情報である。
入出力装置201は、ユーザの操作入力を受け付けるための入力装置と、各種の情報を出力するための出力装置によって構成される。入力装置としては、たとえば操作ボタン等のハードウェアスイッチやタッチパネルなどが考えられる。また、ユーザが行った特定のジェスチャーを検出してそのジェスチャーに対応する処理を行うジェスチャー入力や、ユーザの音声を認識して処理を行う音声入力などを利用して、入力装置を実現してもよい。出力装置としては、たとえば画面表示を行うLCD等のディスプレイ装置、音声を出力するスピーカ、LED等の発光装置、バイブレータなどが考えられる。なお、入出力装置201において、入力装置と出力装置を別々の端末装置で構成してもよい。たとえば、スマートフォンのタッチパネルを入力装置として利用し、自車両に搭載されたカーナビゲーションシステムの表示装置やスピーカを出力装置として利用することができる。
加速度計測装置202は、自車両の挙動に応じた各方向の加速度を計測する。加速度計測装置202には、たとえば加速度センサが用いられる。
角速度計測装置203は、自車両の挙動に応じた各方向の回転角速度を計測する。角速度計測装置203には、たとえば角速度センサが用いられる。
地磁気計測装置204は、自車両の進行方位に応じた各方向の地磁気を計測する。地磁気計測装置204には、たとえば地磁気センサが用いられる。
位置測位装置205は、自車両の走行位置を計測する。位置測位装置205には、たとえばGPSセンサが用いられる。また、ネットワーク300内で車載端末200が接続されている基地局の情報に基づいて、自車両の走行位置を計測してもよい。
カメラ206は、自車両の前方や自車両を運転しているユーザを撮影する。カメラ206で撮影された映像は、動画撮影処理部224に出力される。
マイク207は、ユーザが発声した音声を検出して音声信号に変換する。
車間距離計測装置208は、自車両と前方の他車両との車間距離を計測する。車間距離計測装置208には、たとえばレーザレーダ、ミリ波レーダ、赤外線センサ、ステレオカメラ、モノラルカメラなどを用いることができる。また、カメラ206を車間距離計測装置208として用いてもよい。なお、加速度計測装置202によって計測された加速度の周波数成分などに基づいて、自車両と前方の他車両との車間距離を推定してもよい。
周辺近接計測装置209は、自車両周辺に存在する他車両、自転車やバイク等の二輪車、歩行者など、自車両以外の他者(以下、単に「他者」と称する)を検出し、自車両から他者までの距離や、自車両に対する他者の相対位置などを計測する。周辺近接計測装置209には、たとえばレーザレーダ、ミリ波レーダ、赤外線センサ、ステレオカメラ、モノラルカメラなどを用いることができる。なお、必ずしも単一種類の機器で周辺近接計測装置209を構成する必要はなく、複数種類の機器を組み合わせて構成してもよい。また、カメラ206を周辺近接計測装置209として用いてもよい。さらに、車間距離計測装置208と周辺近接計測装置209を共通化してもよい。
車両情報取得装置210は、自車両の状態に関する車両情報を自車両から取得する。車両情報取得装置210は、たとえば自車両に設置されているOBD2(On−Board Diagnostics 2nd Generation)ポートなどを介して、CAN(Controller Area Network)情報などを車両情報として取得する。車両情報取得装置210が取得する車両情報には、速度情報、ステアリング操作情報、アクセル操作情報、ブレーキ操作情報、ウィンカ操作情報、エンジン回転数情報などが含まれる。
視線計測装置211は、自車両を運転中のユーザの視線に関するデータを計測する。視線計測装置211は、たとえば車内撮影用カメラや赤外線センサなどを用いて、ユーザの顔の向き、視線方向、まぶたの開閉情報などを、ユーザの視線に関するデータとして計測する。なお、視線計測装置211として、メガネ型デバイスなどを用いることも可能である。また、カメラ206を視線計測装置211として用いてもよい。
生体情報計測装置212は、自車両を運転中のユーザの生体情報を計測する。生体情報計測装置212は、たとえばユーザの脳波、心拍数、血圧、体温、筋電、発汗などのデータを生体情報として検出する。
加速度変換処理部221は、加速度計測装置202により計測された各方向の加速度を、自車両の進行方向(前後方向)の加速度と、自車両の左右方向、すなわち進行方向に水平に直交する方向の加速度と、自車両の鉛直方向の加速度とに分解する。加速度変換処理部221は、車載端末200が自車両に搭載された状態での加速度計測装置202の向きを示す情報を記憶している。この情報に基づいて、加速度変換処理部221は、加速度計測装置202により計測された各方向の加速度を、自車両の進行方向、左右方向、鉛直方向にそれぞれ変換する。
プローブ情報蓄積処理部222は、車載端末200が取得した各種情報に基づいてプローブ情報232を生成し、記憶装置230に蓄積する。プローブ情報蓄積処理部222は、前述の入出力装置201、加速度計測装置202、角速度計測装置203、地磁気計測装置204、位置測位装置205、カメラ206、マイク207、車間距離計測装置208、周辺近接計測装置209、車両情報取得装置210、視線計測装置211および生体情報計測装置212でそれぞれ計測または取得されたデータや情報のうち任意のものを用いて、プローブ情報232を生成することができる。
プローブ情報出力部223は、記憶装置230に蓄積されたユーザ情報231およびプローブ情報232を読み出し、通信部240に出力する。通信部240は、プローブ情報出力部223から出力されたユーザ情報231およびプローブ情報232を、ネットワーク300を介してテレマティクスセンタ100に送信する。このとき、送信済みのプローブ情報232が再び送信されないようにするため、送信済みのプローブ情報232を記憶装置230から消去してもよい。プローブ情報出力部223は、プローブ情報232を一定期間ごとに、または自車両の走行終了時点など所定のタイミングごとに、通信部240に出力することができる。なお、記憶装置230に蓄積されたプローブ情報232の全てを必ずしも同時に送信する必要はなく、プローブ情報232の内容ごとに別々のタイミングで送信してもよい。
動画撮影処理部224は、カメラ206で撮影された映像に基づいて動画情報233を作成し、記憶装置230に蓄積する。動画撮影処理部224は、たとえば一定期間ごとの映像や、ユーザが危険運転を行った前後の所定期間(たとえば数秒間)の映像を抽出することで、動画情報233を作成する。なお、ユーザの要求に応じて動画情報233を作成するか否かを選択できるようにしてもよい。
動画出力部225は、記憶装置230に蓄積されたユーザ情報231および動画情報233を読み出し、通信部240に出力する。通信部240は、動画出力部225から出力されたユーザ情報231および動画情報233を、ネットワーク300を介してテレマティクスセンタ100に送信する。このとき、送信済みの動画情報233が再び送信されないようにするため、送信済みの動画情報233を記憶装置230から消去してもよい。動画出力部225は、動画情報233を一定期間ごとに、またはユーザの危険運転が検出された後など所定のタイミングごとに、通信部240に出力することができる。
診断結果取得部226は、テレマティクスセンタ100から送信されて通信部240により受信されたユーザの運転特性の診断結果を取得し、診断結果情報234として記憶装置230に蓄積する。ユーザから運転特性の診断結果を要求する旨の指示が入出力装置201に入力されると、これに応じて、診断結果取得部226は、通信部240を用いて、当該ユーザに対する運転特性の診断結果の要求をテレマティクスセンタ100に送信する。このときユーザは、任意の時間範囲や場所などを指定することで、要求する運転特性の診断結果の条件を指定することができる。この要求がテレマティクスセンタ100において受信されることで、前述のようにして、診断結果出力部129から当該ユーザに対する運転特性の診断結果が出力され、通信部140により車載端末200に送信される。これを通信部240により受信することで、診断結果取得部226はユーザの運転特性の診断結果を取得することができる。
診断結果表示処理部227は、記憶装置230に蓄積された診断結果情報234に基づいて所定の表示制御処理を行うことにより、運転診断結果の表示画面データを生成し、入出力装置201に出力する。この表示画面データに基づいて、入出力装置201は、後述のようなユーザの運転診断結果を示す画面を表示することができる。なお、診断結果表示処理部227は、ユーザからの要求に応じて、入出力装置201に表示される画面の内容を適宜切り替えるための処理を行うことが好ましい。
本発明の一実施形態に係る運転特性診断システムは、以上説明したような構成を基本的に有している。なお、図1に示した構成要素を必ずしも全て備える必要はない。後述する危険運転の検出処理や、危険運転の原因推定処理、危険運転に対するユーザの過失度合算出処理の内容に応じて、テレマティクスセンタ100や車載端末200における構成要素の一部を適宜省略してもよい。また、記憶装置130や記憶装置230に蓄積される情報の一部を適宜省略してもよい。
続いて、本システムにおいて行われる運転特性診断処理について説明する。図2は、本発明の一実施形態に係る運転特性診断システムにおける運転特性診断処理の流れを示すフローチャートである。
車載端末200は、所定の運転開始条件が満たされると、ステップS2001において自車両の運転開始を検出する。このとき車載端末200は、たとえばユーザが入出力装置201を用いて所定の操作を行ったときや、自車両のイグニッションスイッチを操作して自車両を起動したときに、運転開始条件が満たされたと判断することができる。また、車載端末200は、自車両の移動距離が所定の閾値(たとえば50m)を超えたときや、自車両の走行速度が所定の閾値(たとえば時速15km)を超えたときに、運転開始条件が満たされたと判断してもよい。
車載端末200は、ステップS2002において、プローブ情報232および動画情報233を生成する。このとき車載端末200は、入出力装置201、加速度計測装置202、角速度計測装置203、地磁気計測装置204、位置測位装置205、カメラ206、マイク207、車間距離計測装置208、周辺近接計測装置209、車両情報取得装置210、視線計測装置211および生体情報計測装置212により、自車両の運転状態に関する様々な情報を検出する。そして、プローブ情報蓄積処理部222により、検出した情報に基づいてプローブ情報232を生成し、記憶装置230に蓄積する。また、車載端末200は、カメラ206で撮影された映像に基づいて、動画撮影処理部224により動画情報233を生成し、記憶装置230に蓄積する。
車載端末200は、ステップS2003において、ステップS2002で記憶装置230に蓄積されたプローブ情報232および動画情報233をテレマティクスセンタ100へ送信する。このとき車載端末200は、プローブ情報出力部223により、記憶装置230からプローブ情報232を読み出して通信部240に出力すると共に、動画出力部225により、記憶装置230から動画情報233を読み出して通信部240に出力する。通信部240は、プローブ情報出力部223と動画出力部225からそれぞれ入力されたプローブ情報232および動画情報233を、ネットワーク300を介してテレマティクスセンタ100に送信する。なお、プローブ情報232および動画情報233の送信は、前述のように一定時間ごとに行ってもよいし、所定のタイミングごとに行ってもよい。また、ステップS2002でプローブ情報232および動画情報233を生成したら、車載端末200は、これらを記憶装置230に蓄積せずに、そのまま通信部240に出力してテレマティクスセンタ100へ送信してもよい。
車載端末200は、ステップS2004において、自車両の運転が継続中であるか否かを判定する。このとき車載端末200は、ステップS2001で用いたのと同様の運転開始条件に基づいて、ステップS2004の判定を行うことができる。その結果、自車両の運転が継続中であれば、車載端末200は、ステップS2002へ戻って上記の処理を繰り返す。一方、自車両の運転が継続中でなければ、車載端末200は、ステップS2005に進んで運転終了と判断し、図2の処理フローを終了する。
テレマティクスセンタ100は、ステップS2101において、ステップS2003で車載端末200から送信されたプローブ情報232および動画情報233を、通信部140により受信する。受信したプローブ情報232と動画情報233は、プローブ情報取得部121と動画情報取得部122により、プローブ情報132、動画情報133として記憶装置130にそれぞれ蓄積される。
テレマティクスセンタ100は、ステップS2102において、ステップS2101で車載端末200から受信して記憶装置130に蓄積されたプローブ情報132に対して、プローブ情報前処理部124により、所定の前処理を行う。このときプローブ情報前処理部124は、前述のように、振動などによるノイズ成分の除去や、交差点付近のプローブ情報の抽出、走行経路の道路種別の判定などの処理を、前処理として行うこと。たとえば、ローパスフィルタや離散ウェーブレット変換等の手法を用いて、プローブ情報132に含まれる加速度情報や他の情報から、振動によるノイズ成分を除去することができる。また、プローブ情報132の中から、自車両が走行経路において交差点付近を通過した際の情報を抽出したり、走行経路における道路種別を考慮して、プローブ情報132に道路種別情報を付与したりすることも考えられる。なお、プローブ情報132だけでなく、動画情報233に対しても、必要に応じて前処理を行ってもよい。また、ステップS2101でプローブ情報132や動画情報233を受信したら、これらを記憶装置130に蓄積する前に、ステップS2102において前処理を実行してもよい。
さらに、ステップS2102で行う前処理では、記憶装置130に蓄積されたプローブ情報132や動画情報133のうち、不要な情報を削除(除外)してもよい。たとえば、自車両が停車中であるときに取得されたプローブ情報は、危険運転の検出や運転特性の診断においては不要である。そのため、プローブ情報前処理部124は、プローブ情報132のうち、自車両が停車中であると判断された期間に対応する情報については削除して、以降の処理対象から除外する。このとき、プローブ情報前処理部124は、たとえばプローブ情報132に基づいて自車両の位置を一定時間毎に特定し、その2地点間の距離を算出することで、自車両の移動距離を算出する。この移動距離が所定の閾値未満であれば、自車両が停車中であると判定することができる。これ以外にも、プローブ情報前処理部124は、様々な方法により、プローブ情報132や動画情報133から不要な情報を抽出して除外することができる。
テレマティクスセンタ100は、ステップS2103において、危険運転検出処理部125により、ユーザの危険運転を検出するための危険運転検出処理を行う。このとき危険運転検出処理部125が行う具体的な処理の内容は、図4のフローチャートを参照して後述する。なお、危険運転検出処理部125は、ステップS2101でプローブ情報232および動画情報233を受信すると、それに応じてリアルタイムで危険運転検出処理を実行してよい。あるいは、たとえば自車両の運転終了後など、所定のタイミングで危険運転検出処理を実行してもよい。さらに、後述する図3のステップS3101で車載端末200から運転特性の診断結果要求を受信すると、それに応じて危険運転検出処理を実行してもよい。
テレマティクスセンタ100は、ステップS2104において、ステップS2103で危険運転検出処理を行った結果に基づいて、危険運転検出処理部125が危険運転を検出したか否かを判定する。危険運転検出処理において、ユーザによる自車両の危険運転が検出された場合はステップS2105へ進み、検出されなかった場合はステップS2107に進む。
テレマティクスセンタ100は、ステップS2105において、原因推定処理部126により、ステップS2103で検出した危険運転の原因を推定するための原因推定処理を行う。このとき原因推定処理部126が行う具体的な処理の内容は、図5、6のフローチャートを参照して後述する。
テレマティクスセンタ100は、ステップS2106において、過失度合算出部127により、ステップS2103で検出した危険運転に対するユーザの過失度合を算出するための過失度合算出処理を行う。このとき過失度合算出部127が行う具体的な処理の内容は、図7のフローチャートを参照して後述する。
テレマティクスセンタ100は、ステップS2107において、運転特性診断処理部128により、ユーザに対する運転特性の診断結果を算出する。このとき運転特性診断処理部128は、ステップS2103による危険運転の検出結果と、ステップS2105で推定した危険運転の原因と、ステップS2106で算出した危険運転に対するユーザの過失度合とに基づいて、車載端末200を所有する各ユーザについて、運転特性の診断結果を算出する。なお、ステップS2104で危険運転を検出したと判定された場合にのみ、ステップS2107を実行して運転特性の診断結果を算出してもよい。
テレマティクスセンタ100は、ステップS2108において、運転特性診断処理部128により、ステップS2107で算出した運転特性の診断結果を記憶装置130に蓄積する。このとき運転特性診断処理部128は、運転特性の診断結果を示す情報を、診断結果情報134として記憶装置130に蓄積する。ステップS2108の処理を実行したら、テレマティクスセンタ100は、図2の処理フローを終了する。
なお、以上説明した図2のフローチャートにおいて、テレマティクスセンタ100は、ステップS2106の過失度合算出処理を実行しなくてもよい。その場合、テレマティクスセンタ100は、ステップS2107において、ステップS2105で推定された危険運転の原因について、その原因に対する推定確率を算出し、算出した推定確率をステップS2108で記憶装置130に蓄積してもよい。あるいは、危険運転の原因のみを推定し、推定確率を算出しなくてもよい。
続いて、本システムにおいて行われる診断結果提供処理について説明する。図3は、本発明の一実施形態に係る運転特性診断システムにおける診断結果提供処理の流れを示すフローチャートである。
車載端末200は、所定の要求開始条件が満たされると、ステップS3001において運転特性の診断結果に対するユーザからの要求開始を検出する。このとき車載端末200は、たとえばユーザが入出力装置201を用いて所定の操作を行ったときや、自車両の運転が終了したときに、要求開始条件が満たされたと判断することができる。
車載端末200は、ステップS3002において、運転特性の診断結果に対する表示要求をテレマティクスセンタ100へ送信する。このとき車載端末200は、診断結果取得部226および通信部240により、ユーザに対する運転特性の診断結果の要求として、所定の要求信号をテレマティクスセンタ100へ送信する。この要求信号には、ユーザが運転特性の診断結果に対して指定した要求条件や、ユーザを特定するための情報などが含まれる。
テレマティクスセンタ100は、ステップS3101において、ステップS3002で車載端末200から送信された要求信号を、通信部140により受信する。受信した要求信号は、通信部140から診断結果出力部129に出力される。
テレマティクスセンタ100は、ステップS3102において、診断結果出力部129により、ステップS3001で運転特性の診断結果を要求したユーザに対応する診断結果を記憶装置130から取り出す。このときテレマティクスセンタ100は、ステップS3101で受信した要求信号に基づいてユーザを特定する。そして、記憶装置130に蓄積されている診断結果情報134のうちで当該ユーザに対応する情報を、当該ユーザが指定された要求条件に従って抽出する。
テレマティクスセンタ100は、ステップS3103において、ステップS3102で取り出した診断結果を車載端末200へ送信する。このときテレマティクスセンタ100は、取り出した診断結果の情報を診断結果出力部129から通信部140に出力して、通信部140により送信する。ステップS3103の処理を実行したら、テレマティクスセンタ100は、図3の処理フローを終了する。
車載端末200は、ステップS3003において、テレマティクスセンタ100から運転特性の診断結果を通信部240により受信し、入出力装置201に表示する。このとき車載端末200は、受信した診断結果の情報に基づいて、診断結果表示処理部227により所定の表示制御処理を行い、入出力装置201の表示画面を制御する。これにより、ステップS3001でユーザが行った要求に応じて、運転特性の診断結果がユーザに提示される。なお、このときの入出力装置201における運転特性の診断結果の具体的な表示方法については、後で説明する。ステップS3003の処理を実行したら、車載端末200は、図3の処理フローを終了する。
なお、以上説明した図3の診断結果提供処理のフローにおいて、車載端末200は、ステップS3001でユーザからの要求開始を検出しなくても、ステップS3002を実行して、運転特性の診断結果に対する表示要求をテレマティクスセンタ100へ送信してもよい。たとえば、一日、一週間、一か月等の所定期間ごとに、車載端末200からテレマティクスセンタ100へ運転特性の診断結果に対する表示要求を行うようにする。このようにすれば、当該期間内で蓄積されたユーザの運転状態に関する情報に基づいて、ユーザに対する運転特性の診断をテレマティクスセンタ100において行い、その結果をテレマティクスセンタ100から車載端末200へ送信して、ユーザに提供することができる。さらに、車載端末200から要求信号の送信がなくても、テレマティクスセンタ100が危険運転を検出した場合に、テレマティクスセンタ100から車載端末200へ運転特性の診断結果を送信するようにしてもよい。
また、図3の処理フローに示したステップS3001〜S3003の処理を実行する車載端末200と、図2の処理フローにおいてステップS2001〜S2005の処理を実行する車載端末200とは、同一の機器でなくてもよい。たとえば、ネットワーク300に接続されているテレビ、ノートPC、タブレットPC、スマートフォンなど、図2の処理で使用したのとは別の機器を用いても、図3の処理を実行することができる。さらに、ステップS3002でテレマティクスセンタ100へ要求信号を送信する車載端末200と、ステップS3003でテレマティクスセンタ100から運転特性の診断結果を受信して表示する車載端末200についても、同一の機器でなくてもよい。たとえばユーザは、自車両に搭載されたカーナビゲーション等の車載端末200から要求信号を送信した後に、自宅に設置されたテレビやPC等を車載端末200として用いて、運転特性の診断結果を受信および表示することができる。この場合、運転特性の診断結果の受信および表示に使用する車載端末200は、自車両に搭載されていなくても構わない。
次に、図2のステップS2103で行われる危険運転検出処理について説明する。図4は、危険運転検出処理の流れを示すフローチャートである。
危険運転検出処理部125は、ステップS4001において、プローブ情報132に含まれる自車両の加速度データに基づいて、自車両の前後方向の加速度が所定の閾値(たとえば0.5m/s2)を負方向に超過しているか否かを判定する。超過している場合、すなわち自車両の加速度が後方に向けて所定の閾値以上である場合は、ユーザが自車両を急減速または急停止させたと判定してステップS4004に進み、そうでない場合はステップS4002に進む。
危険運転検出処理部125は、ステップS4002において、プローブ情報132に含まれる自車両の加速度データに基づいて、自車両の左右方向の加速度が所定の閾値(たとえば0.5m/s2)を超過しているか否かを判定する。超過している場合、すなわち自車両の加速度が左または右方向に所定の閾値以上である場合は、ユーザが自車両に対して急ハンドル操作を行ったと判定してステップS4004に進み、そうでない場合はステップS4003に進む。
危険運転検出処理部125は、ステップS4003において、自車両におけるユーザの安全運転を検出する。このときテレマティクスセンタ100は、ユーザが急減速、急停止、急ハンドル操作などの危険運転を行っておらず、安全運転をしていると判断する。ステップS4003を実行したら、危険運転検出処理部125は、安全運転を検出したことを示す検出結果を出力し、図2のステップS2104に進む。なお、安全運転ではなく、危険運転が未検出であることを示す検出結果を出力してもよい。
危険運転検出処理部125は、ステップS4004において、自車両におけるユーザの危険運転を検出する。このときテレマティクスセンタ100は、ユーザが急減速、急停止、急ハンドル操作などの危険運転を行ったと判断する。ステップS4004を実行したら、危険運転検出処理部125は、危険運転を検出したことを示す検出結果を出力し、図2のステップS2104に進む。なお、危険運転を検出したことに加えて、危険運転の種類を示す情報を検出結果に含めてもよい。
なお、図4に示した危険運転検出処理は、テレマティクスセンタ100の危険運転検出処理部125ではなく、車載端末200で行うことも可能である。この場合、車載端末200は、加速度変換処理部221において求められた自車両の進行方向および左右方向の加速度に基づいて、ステップS4001やS4002の判定を行い、その判定結果を示す情報をプローブ情報232に含めて送信する。テレマティクスセンタ100は、車載端末200から受信したプローブ情報232を基に記憶装置130に蓄積されたプローブ情報132に基づいて、車載端末200での判定結果を取得する。これにより、ユーザが安全運転または危険運転のどちらを行っていたかを判断することができる。
次に、図2のステップS2105で行われる原因推定処理について説明する。図5および図6は、原因推定処理の流れを示すフローチャートである。
原因推定処理部126は、ステップS5001およびS5201において、ユーザが漫然運転を行っていたか否かを判定するための処理を行う。具体的には、原因推定処理部126は、ステップS5001において、プローブ情報132に含まれるユーザの視線方向データに基づいて、一定時間(たとえば3秒間)における視線方向角の分散が所定の閾値(たとえば0.3)以下であるか否かを判定する。その結果、分散が閾値以下の場合は、ユーザが漫然運転を行っていたものと判断し、ステップS5201において漫然運転を検出した後に、ステップS5002へ進む。一方、分散が閾値よりも大きい場合は、ステップS5201を実行せずにステップS5002に進む。なお、視線方向角の分散に替えて、標準偏差などを用いて、ステップS5001の判定を行ってもよい。
原因推定処理部126は、ステップS5002およびS5202において、ユーザが脇見運転を行っていたか否かを判定するための処理を行う。具体的には、原因推定処理部126は、ステップS5002において、プローブ情報132に含まれるユーザの視線方向データに基づいて、視線方向角が所定の閾値(たとえば50°)以上である期間が一定時間(たとえば3秒間)以上継続したか否かを判定する。その結果、視線方向角が閾値以上である期間が一定時間以上継続した場合は、ユーザが脇見運転を行っていたものと判断し、ステップS5202において脇見運転を検出した後に、ステップS5003へ進む。一方、このような条件を満たさない場合は、ステップS5202を実行せずにステップS5003に進む。なお、視線方向ではなく、カメラ206で撮影されたユーザの顔の向きなどを用いて、ステップS5002の判定を行ってもよい。また、一定時間における視線方向角の平均値が閾値を超えたときに、ユーザが脇見運転を行ったと判断してもよい。ここで、自車両が停車中のときには、ステップS5002の判定条件を満たした場合であっても、脇見運転を検出しないことが好ましい。
原因推定処理部126は、ステップS5003およびS5203において、自車両と前方の他車両との車間距離が適切であったか否かを判定するための処理を行う。具体的には、原因推定処理部126は、ステップS5003において、プローブ情報132に含まれる車間距離の計測データに基づいて、自車両と前方の他車両との車間距離が所定の閾値(たとえば10m)以下であるか否かを判定する。その結果、車間距離が閾値以下である場合は、車間距離が適切ではなかったと判断し、ステップS5203において車間距離不保持を検出した後に、ステップS5004へ進む。一方、車間距離が閾値よりも大きい場合は、車間距離が適切であったと判断し、ステップS5203を実行せずにステップS5004に進む。このとき、図4で説明した危険運転検出処理において危険運転が検出された時点またはその直前の時点での車間距離の計測データを用いて、ステップS5003の判定を行ってもよい。また、一定時間(たとえば3秒間)における車間距離の平均値が閾値以下となったときに、車間距離が適切ではなかったと判断してもよい。
原因推定処理部126は、ステップS5004およびS5204において、ユーザが会話しながら運転していたか否かを判定するための処理を行う。具体的には、原因推定処理部126は、ステップS5004において、プローブ情報132に含まれるマイク207による音声の音圧計測データに基づいて、ユーザが発した音声の音圧が所定の閾値(たとえば50デシベル)以上であるか否かを判定する。その結果、音圧が閾値以上である場合は、ユーザが運転中に会話を行っていたと判断し、ステップS5204において会話運転を検出した後に、ステップS5005へ進む。一方、音圧が閾値よりも小さい場合は、ユーザが運転中に会話を行っていなかったと判断し、ステップS5204を実行せずにステップS5005に進む。なお、マイク207で音声の音圧を計測する際には、音声以外の音を除外する処理を行うことが好ましい。また、一定時間(たとえば5秒間)に計測した音声の音圧が閾値以上となったときに、ユーザが運転中に会話を行っていたと判断してもよい。
原因推定処理部126は、ステップS5005およびS5205において、ユーザが自車両内の機器を操作しながら運転していたか否かを判定するための処理を行う。具体的には、原因推定処理部126は、ステップS5005において、プローブ情報132に含まれる入出力装置201の操作情報や車両情報に基づいて、ユーザが一定時間(たとえば5秒間)以内に、所定の閾値(たとえば5回)以上の回数で、自車両に搭載されているボタン等の機器操作を行ったか否かを判定する。その結果、操作回数が閾値以上である場合は、ユーザが運転中には危険な機器操作を自車両内で行っていたと判断し、ステップS5205において機器操作を検出した後に、ステップS5006へ進む。一方、機器の操作回数が閾値よりも少ない場合は、ユーザが運転中には危険な機器操作を行っていなかったと判断し、ステップS5205を実行せずにステップS5006に進む。
原因推定処理部126は、ステップS5006およびS5206において、ユーザが自車両を急に車線変更させたか否かを判定するための処理を行う。具体的には、原因推定処理部126は、ステップS5006において、プローブ情報132に含まれる車両情報が表すステアリング操作情報やウィンカ操作情報に基づいて、ユーザが方向指示を行ってから車線変更までの所要時間が所定の閾値(たとえば3秒)以下であるか否かを判定する。その結果、所要時間が閾値以下である場合は、ユーザが自車両を急に車線変更させたと判断し、ステップS5206において急な車線変更を検出した後に、ステップS5007へ進む。一方、所要時間が閾値よりも大きい場合は、急な車線変更ではないと判断し、ステップS5206を実行せずにステップS5007に進む。このとき、ステアリング操作情報が示すステアリング角や、カメラ206で撮影された自車両前方の撮影画像から検出された道路標示線の位置、プローブ情報132に含まれる自車両の加速度データなどに基づいて、自車両が車線変更を行ったか否かを判断してもよい。
原因推定処理部126は、ステップS5007およびS5207において、ユーザが長時間運転を行っていたか否かを判定するための処理を行う。具体的には、原因推定処理部126は、ステップS5007において、ユーザの運転継続時間が所定の閾値(たとえば2時間)以上であるか否かを判定する。その結果、運転継続時間が閾値以上である場合は、ユーザが長時間運転を行っていたと判断し、ステップS5207において長時間運転を検出した後に、ステップS5008へ進む。一方、運転継続時間が閾値よりも小さい場合は、ユーザが長時間運転を行っていないと判断し、ステップS5207を実行せずにステップS5008に進む。なお、車載端末200は、図2のステップS2001で運転開始を検出した時点を示す情報や、運転開始からの経過時間を示す情報を、プローブ情報132に含めて送信することが好ましい。この情報に基づいて、原因推定処理部126は、運転継続時間を求めることができる。
原因推定処理部126は、ステップS5008およびS5208において、ユーザが急ぎ運転を行っていたか否かを判定するための処理を行う。具体的には、原因推定処理部126は、ステップS5008において、プローブ情報132に含まれる自車両の加速度データに基づいて、一定時間(たとえば3秒間)における自車両の前後方向の加速度の分散が、所定の閾値(たとえば0.3)未満の状態が続いた後に閾値を超えると、自車両が停止状態から発進したと判断する。そして、このときの加速度が所定の閾値(たとえば0.7m/s2)以上であるか否かを判定する。その結果、前後方向の加速度が閾値以上である場合は、ユーザが急ぎ運転を行っていたと判断し、ステップS5208において急ぎ運転を検出した後に、ステップS5009へ進む。一方、発進時でない場合や、発進時の前後方向の加速度が閾値よりも小さい場合は、ユーザが急ぎ運転を行っていないと判断し、ステップS5208を実行せずにステップS5009に進む。
原因推定処理部126は、ステップS5009およびS5209において、ユーザが不注意運転を行っていたか否かを判定するための処理を行う。具体的には、原因推定処理部126は、ステップS5009において、プローブ情報132に含まれる脳波や筋電位等の生体情報の計測データに基づいて、ユーザが考え事をしているか否かを判断し、ユーザが考え事をしている場合は、その時間が所定の閾値(たとえば30秒)以上であるか否かを判定する。その結果、ユーザが考え事をしている時間が閾値以上である場合は、ユーザの運転に対する集中力が低下してユーザが不注意運転を行っていたと判断し、ステップS5209において不注意運転を検出した後に、ステップS5010へ進む。一方、ユーザが考え事をしていない場合や、考え事をしている時間が閾値よりも小さい場合は、ユーザが不注意運転を行っていないと判断し、ステップS5209を実行せずにステップS5010に進む。なお、生体情報は個人差が大きいため、ユーザが考え事をしているか否かを判断する際には、事前に測定された様々な状態でのユーザの生体情報に基づいて設定された閾値を用いることが好ましい。または、機械学習等の手法を用いて、ユーザが考え事をしているか否かを推定してもよい。
原因推定処理部126は、ステップS5010およびS5210において、ユーザが疲労していたか否かを判定するための処理を行う。具体的には、原因推定処理部126は、ステップS5010において、プローブ情報132に含まれる脳波、脈拍、表面筋電位等の生体情報の計測データや、まぶたの開閉情報、視線情報から求めたユーザの活性度合などに基づいて、ユーザの疲労指数を求め、その値が所定の閾値以上であるか否かを判定する。その結果、ユーザの疲労指数が閾値以上である場合は、ユーザの疲労が激しいと判断し、ステップS5210において疲労運転を検出した後に、図6のステップS5011へ進む。一方、ユーザの疲労指数が閾値よりも小さい場合は、ユーザの疲労が許容範囲内であると判断し、ステップS5210を実行せずに図6のステップS5011に進む。なお、ステップS5009と同様に、生体情報は個人差が大きいため、ユーザの疲労指数を求める際には、事前に調べられた生体情報の値と疲労指数との対応関係を用いることが好ましい。または、機械学習等の手法を用いて、ユーザの疲労指数を求めてもよい。
原因推定処理部126は、ステップS5011およびS5211において、ユーザが居眠り運転を行っていたか否かを判定するための処理を行う。具体的には、原因推定処理部126は、ステップS5011において、プローブ情報132に含まれるまぶたの開閉情報や、視線情報から求めたユーザの活性度合などに基づいて、ユーザの眠気指数を求め、その値が所定の閾値以上であるか否かを判定する。その結果、ユーザの眠気指数が閾値以上である場合は、ユーザが居眠り運転を行っているか、または居眠り運転に至る直前の状態にあると判断し、ステップS5211において居眠り運転を検出した後に、ステップS5012へ進む。一方、ユーザの眠気指数が閾値よりも小さい場合は、ユーザが居眠り運転を行っていないと判断し、ステップS5211を実行せずにステップS5012に進む。なお、脳波などの生体情報や、カメラ206の撮影画像から検出されたユーザの顔などに基づいて、ユーザの眠気指数を求めてもよい。
原因推定処理部126は、ステップS5012およびS5212において、自車両の前方に他車両の無理な割り込みがあったか否かを判定するための処理を行う。具体的には、原因推定処理部126は、ステップS5012において、プローブ情報132に含まれる周辺近接計測装置209による他車両の検出結果や、カメラ206で撮影された自車両前方の撮影画像などに基づいて、自車両の前方に割り込んだ他車両の有無を判断する。その結果、自車両の前方に他車両の割り込みがあった場合は、他車両の方向指示から割り込みまでの所要時間を求め、その値が所定の閾値(たとえば1秒)以下であるか否かを判定する。その結果、割り込みまでの所要時間が閾値以下である場合は、他車両の無理な割り込みがあったと判断し、ステップS5212において他車両の割り込みを検出した後に、ステップS5013へ進む。一方、自車両の前方に他車両の割り込みがない場合や、割り込みまでの所要時間が閾値よりも大きい場合は、他車両の無理な割り込みがなかったと判断し、ステップS5212を実行せずにステップS5013に進む。なお、自車両から他車両までの車間距離等に基づいて、自車両と他車両との近接状況を判断し、その判断結果に応じて、ステップS5012の判定に用いる閾値を変化させてもよい。
原因推定処理部126は、ステップS5013およびS5213において、自車両の前方の他車両が急減速を行ったか否かを判定するための処理を行う。具体的には、原因推定処理部126は、ステップS5013において、プローブ情報132に含まれる車間距離の計測データや、カメラ206で撮影された自車両前方の撮影画像、自車両の位置情報から求めた走行速度などに基づいて、自車両の前方を走行している他車両(前方車両)の減速度を求め、その値が所定の閾値(たとえば0.5m/s2)以上であるか否かを判定する。その結果、前方車両の減速度が閾値以上である場合は、前方車両が急減速したと判断し、ステップS5213において前方車両の急減速を検出した後に、ステップS5014へ進む。一方、前方車両の減速度が閾値よりも小さい場合は、前方車両が急減速しなかったと判断し、ステップS5213を実行せずにステップS5014に進む。なお、自車両から前方車両までの車間距離等に応じて、ステップS5013の判定に用いる閾値を変化させてもよい。
原因推定処理部126は、ステップS5014およびS5214において、自車両の前方に他者の飛び出しがあったか否かを判定するための処理を行う。具体的には、原因推定処理部126は、ステップS5014において、プローブ情報132に含まれる周辺近接計測装置209による他者の検出結果や、カメラ206で撮影された自車両前方の撮影画像などに基づいて、自車両の前方における他者の進入の有無を判断する。その結果、自車両の前方に他者の進入があった場合は、他者が認識されてから自車両前方に進入するまでの所要時間を求め、その値が所定の閾値(たとえば3秒)以下であるか否かを判定する。その結果、進入までの所要時間が閾値以下である場合は、自車両の前方に他者の危険な飛び出しがあったと判断し、ステップS5214において他者の飛び出しを検出した後に、ステップS5015へ進む。一方、自車両の前方に他者の進入がない場合や、進入までの所要時間が閾値よりも大きい場合は、他者の飛び出しがなかったと判断し、ステップS5214を実行せずにステップS5015に進む。なお、他者の移動速度を求め、その移動速度に基づいてステップS5014の判定を行ってもよい。
原因推定処理部126は、ステップS5015およびS5215において、自車両の前方が視界不良であったか否かを判定するための処理を行う。具体的には、原因推定処理部126は、ステップS5015において、プローブ情報132に含まれる自車両の走行位置の計測データや、環境情報取得部123により取得した環境情報などに基づいて、自車両の走行地点付近の地域に対して気象警報や注意報が発令中であるか否かを判定する。その結果、気象警報や注意報が発令中である場合は、自車両の前方が視界不良であったと判断し、ステップS5215において視界不良を検出した後に、ステップS5016へ進む。一方、気象警報や注意報が発令中でない場合は、自車両の前方の視界は良好であったと判断し、ステップS5215を実行せずにステップS5016に進む。なお、プローブ情報132に含まれる周辺近接計測装置209での検出結果や、カメラ206で撮影された自車両前方の撮影画像などに基づいて、自車両の前方が視界不良であったか否かを判定してもよい。
原因推定処理部126は、ステップS5016およびS5216において、ユーザが交通違反をしたか否かを判定するための処理を行う。具体的には、原因推定処理部126は、ステップS5016において、プローブ情報132に含まれる自車両の走行位置の計測データや、環境情報取得部123により取得した環境情報、地図情報135などに基づいて、自車両の走行経路における制限速度や一方通行などの交通規制情報を取得し、これに基づいて、自車両の走行状態が交通規制に従ったものであったか否かを判定する。その結果、交通規制に従っていなかった場合は、ユーザが交通違反を行ったと判断し、ステップS5216において交通違反を検出した後に、ステップS5017へ進む。一方、交通規制に従っていた場合は、交通違反がなかったと判断し、ステップS5216を実行せずにステップS5017に進む。
原因推定処理部126は、ステップS5017およびS5217において、自車両の走行地点に渋滞が発生していたか否かを判定するための処理を行う。具体的には、原因推定処理部126は、ステップS5017において、プローブ情報132に含まれる自車両の走行位置の計測データや、環境情報取得部123により取得した環境情報などに基づいて、自車両の走行経路における渋滞情報を取得し、これに基づいて、自車両の走行地点における渋滞の有無を判定する。その結果、自車両の走行地点に渋滞があった場合は、ステップS5217において渋滞を検出した後に、ステップS5018へ進む。一方、自車両の走行地点に渋滞がなかった場合は、ステップS5217を実行せずにステップS5018に進む。なお、カメラ206で撮影された自車両前方の撮影画像や、地図情報135が表す自車両の走行経路の制限速度と走行速度との比較結果などに基づいて、自車両の走行地点における渋滞の有無を判定してもよい。
原因推定処理部126は、ステップS5018およびS5218において、ユーザが意図せずに自車両が車線を逸脱したか否かを判定するための処理を行う。具体的には、原因推定処理部126は、ステップS5018において、プローブ情報132に含まれる車両情報が表すウィンカ操作情報や、カメラ206で撮影された自車両前方の撮影画像などに基づいて、方向指示なしで自車両が車線を逸脱したか否かを判定する。その結果、方向指示なしで自車両が車線を逸脱した場合は、ユーザが意図せずに自車両が車線を逸脱したと判断し、ステップS5218において車線逸脱を検出した後に、ステップS5019へ進む。一方、自車両が車線を逸脱していない場合や、方向指示ありで自車両が車線を逸脱した場合は、ステップS5218を実行せずにステップS5019に進む。
原因推定処理部126は、ステップS5019およびS5219において、ユーザが巻き込み確認を行ったか否かを判定するための処理を行う。具体的には、原因推定処理部126は、ステップS5019において、プローブ情報132に含まれる自車両の走行位置の計測データやユーザの視線情報に基づいて、自車両が交差点を曲がったときのユーザの視線方向角を求め、これが所定の閾値(たとえば50°)以下であるか否かを判定する。その結果、視線方向角が閾値以下である場合は、自車両が交差点を曲がったときにユーザが正しく巻き込み確認を行っていないと判断し、ステップS5219において巻き込み不確認を検出した後に、ステップS5020へ進む。一方、視線方向角が閾値よりも大きい場合は、自車両が交差点を曲がったときにユーザが正しく巻き込み確認を行ったと判断し、ステップS5219を実行せずにステップS5020に進む。なお、交差点を曲がる前に視線方向角が閾値以上である状態が所定時間(たとえば2秒間)以下であったか否かを判定することで、ステップS5019の判定を行ってもよい。また、ユーザが巻き込み確認をする際には、自車両のバックミラー、サイドミラーおよび自車両側面の死角部分を注視することが考えられる。そのため、これらをユーザが注視したか否かを判断することで、ステップS5019の判定を行うこともできる。この場合、機械学習や統計的な手法などを用いて、ユーザが注視したか否かを判断してもよい。
原因推定処理部126は、以上説明したステップS5001〜S5019およびS5201〜S5219の各処理を実行することで、危険運転の原因となる様々な危険運転要素を検出することができる。なお、ステップS5001〜S5011、S5016、S5018およびS5019の各処理と、これらにそれぞれ対応するステップS5201〜S5211、S5216、S5218およびS5219の各処理とは、ユーザに起因する危険運転要素の有無を判定するための判定処理である。一方、ステップS5012〜S5015およびS5017の各処理と、これらにそれぞれ対応するステップS5212〜S5215およびS5217の各処理とは、ユーザ以外の外的要因に起因する危険運転要素の有無を判定するための判定処理である。
原因推定処理部126は、ステップS5020において、ステップS5201〜S5219での各検出結果に基づいて、危険運転の推定原因を算出する。すなわち、ステップS5201〜S5219のうちで実行された処理に応じて検出された各危険運転要素を、危険運転の推定原因として求める。ステップS5020を実行したら、原因推定処理部126は、算出した危険運転の推定原因を出力し、図2のステップS2106に進む。
なお、上記ステップS5001〜S5019およびS5201〜S5219の各処理は、テレマティクスセンタ100の原因推定処理部126ではなく、車載端末200で行うことも可能である。たとえば、車載端末200は、カメラ206で撮影された自車両前方の撮影画像に基づいて車線逸脱を検出することで、ステップS5018およびS5218の処理を行い、その結果を示す情報をプローブ情報232に含めて送信する。テレマティクスセンタ100は、車載端末200から受信したプローブ情報232を基に記憶装置130に蓄積されたプローブ情報132に基づいて、車載端末200での判定結果を取得する。これにより、ユーザが意図せずに自車両が車線を逸脱したか否かを判断することができる。また、車載端末200は、カメラ206で撮影された自車両前方の撮影画像に基づいて、自車両が交差点を曲がった時のユーザの視線方向角を検出することで、ステップS5019およびS5219の処理を行い、その結果を示す情報をプローブ情報232に含めて送信する。テレマティクスセンタ100は、車載端末200から受信したプローブ情報232を基に記憶装置130に蓄積されたプローブ情報132に基づいて、車載端末200での判定結果を取得する。これにより、ユーザが巻き込み確認を行ったか否かを判断することができる。これ以外にも、車載端末200において、ステップS5001〜S5019およびS5201〜S5219のうち任意の処理を行うことができる。
また、原因推定処理部126は、図5および図6で説明したもの以外にも、危険運転の原因となる様々な危険運転要素を検出することができる。原因推定処理部126は、任意の危険運転要素を追加して原因推定処理を行うことにより、危険運転の原因推定の精度を向上させることができる。さらに、図5および図6で説明した各危険運転要素は、必ずしも全て検出する必要はない。原因推定処理部126は、車載端末200に搭載されているセンサの種類や、要求される運転特性診断の精度に応じて、任意の危険運転要素を検出して原因推定処理を行うことができる。
次に、図2のステップS2106で行われる過失度合算出処理について説明する。図7は、過失度合算出処理の流れを示すフローチャートである。
過失度合算出部127は、ステップS7000において、前述の原因推定処理において検出された危険運転要素のうち、ユーザに起因する各危険運転要素について、ユーザの過失度合を算出する。具体的には、危険運転要素U1、U2、Unについて、ステップS7001、S7002、S7003の処理をそれぞれ行うことで、各危険運転要素に対するユーザの過失度合を算出する。ここで、U1、U2およびUnは、ユーザに起因する各危険運転要素、すなわち図5のステップS5201〜S5210と、図6のステップS5211、S5216、S5218およびS5219とでそれぞれ検出対象とされる危険運転要素のうち、任意のものを表している。また、nは任意の自然数を表しており、ステップS7000での処理対象とされるユーザに起因する危険運転要素の数に応じて設定される。なお、過失度合算出部127は、ステップS7000の処理において、原因推定処理部126で検出されなかった危険運転要素については、ユーザの過失度合を0として算出する。ステップS7001〜S7003で行われる処理の具体例については、後で図8を参照して説明する。
過失度合算出部127は、ステップS7010において、前述の原因推定処理において検出された危険運転要素のうち、ユーザ以外の外的要因に起因する各危険運転要素について、その要因ごとの影響度合を算出する。具体的には、危険運転要素O1、O2、Omについて、ステップS7011、S7012、S7013の処理をそれぞれ行うことで、各危険運転要素に対する外的要因ごとの影響度合を算出する。ここで、O1、O2およびOmは、外的要因に起因する各危険運転要素、すなわち図6のステップS5212〜S5215およびS5217でそれぞれ検出対象とされる危険運転要素のうち、任意のものを表している。また、mは任意の自然数を表しており、ステップS7010での処理対象とされる外的要因に起因する危険運転要素の数に応じて設定される。なお、過失度合算出部127は、ステップS7010の処理において、原因推定処理部126で検出されなかった危険運転要素については、影響度合を0として算出する。
図7では、原因推定処理において原因推定処理部126が検出対象とする各危険運転要素を、危険運転要素U1〜UnおよびO1〜Omとしてそれぞれ表している。このうち、ユーザに起因する危険運転要素U1、U2およびUnに対して過失度合算出部127が行うユーザの過失度合の算出処理を、ステップS7000での処理の具体的な代表例として、ステップS7001、S7002およびS7003にそれぞれ示している。これ以外の危険運転要素U3〜Un−1に対して過失度合算出部127が行うユーザの過失度合の算出処理については、図7において図示を省略している。また、ユーザ以外の外的要因に起因する危険運転要素O1、O2およびOmに対して過失度合算出部127が行う外的要因ごとの影響度合の算出処理を、ステップS7010での処理の具体的な代表例として、ステップS7011、S7012およびS7013にそれぞれ示している。これ以外の危険運転要素O3〜Om−1に対して過失度合算出部127が行う外的要因の影響度合の算出処理については、図7において図示を省略している。なお、ステップS7001〜S7003およびS7011〜S7013の各処理は、図7に示すように並列に行ってもよいし、あるいは時系列的に行ってもよい。
過失度合算出部127は、ステップS7020において、ステップS7000で危険運転要素ごとに算出したユーザの過失度合と、ステップS7010で危険運転要素ごとに算出した外的要因の影響度合とに基づいて、ユーザの総合的な過失度合を算出する。具体的には、ユーザに起因する各危険運転要素のうち、ステップS7000で算出したユーザの過失度合が最大のものを、ユーザの過失による危険運転の主要因として特定する。さらに、主要因との過失度合の差が所定値(たとえば5%)以内のものを、ユーザの過失による危険運転の副次要因として特定する。また、外的要因に起因する各危険運転要素のうち、ステップS7010で算出した影響度合が最大のものを、ユーザの過失によらない危険運転の主要因として特定する。さらに、主要因との影響度合の差が所定値(たとえば5%)以内のものを、ユーザの過失によらない危険運転の副次要因として特定する。
なお、ステップS7020における主要因と副次要因の決定には、上記で説明したもの以外にも、様々な方法を用いることができる。たとえば、各種センサ情報に基づいて、ニューラルネットワーク、遺伝的アルゴリズム、ベイズ推定、相関分析、主成分分析などの機械学習手法や統計手法を用いて、危険運転の要因を推定してもよい。
以上説明したようにして、ユーザの過失による危険運転の主要因および副次要因と、ユーザの過失によらない危険運転の主要因および副次要因とを特定したら、過失度合算出部127は、これらの各要因に対してステップS7000、S7010でそれぞれ算出されたユーザの過失度合および外部要因の影響度合に基づいて、ユーザの総合的な過失度合を算出する。たとえば、ユーザの過失による危険運転の主要因に対するユーザの過失度合と、ユーザの過失によらない危険運転の主要因に対する外部要因の影響度合との差分を求めることで、ユーザの総合的な過失度合を算出することができる。このとき、副次要因に対するユーザの過失度合や外部要因の影響度合を考慮して、ユーザの総合的な過失度合を算出してもよい。ステップS7020の処理を実行したら、過失度合算出部127は、ステップS7000、S7010でそれぞれ算出した各危険運転要素に対するユーザの過失度合および外的要因の影響度合と、ステップS7020で算出したユーザの総合的な過失度合とを出力し、図2のステップS2107に進む。
次に、図7のステップS7001〜S7003で行われる処理の具体例について説明する。図8は、危険運転要素に対するユーザの過失度合を算出するために用いられるデータの例を示したグラフである。
図8(a)は、ユーザの脇見時間と過失度合の関係を示したグラフである。このグラフにより示されるデータは、図5のステップS5002、S5202の処理に対応する危険運転要素である脇見運転に対するユーザの過失度合を算出するために用いられる。
一般に、自車両を運転中のユーザにとって、スピードメータ等の確認やエアコン等の機器操作のために前方から視線を外しても運転への悪影響が少ない時間は、0.8秒〜1.5秒程度と言われている。1.5秒以上の脇見は、運転への危険度合が高まると考えられる。そのため、脇見運転に対するユーザの過失度合は、たとえば図8(a)のグラフのように表すことができる。このグラフは、以下の式(1)によって算出される。この場合、式(1)において、xは脇見時間を表し、Rはユーザの過失度合を表す。なお、式(1)の定数aとbには、任意の数値を設定できる。具体的には、a=6、b=12を設定する場合などが考えられる。また、式(1)とは別の関数を用いて、脇見運転に対するユーザの過失度合を算出してもよい。
図8(b)は、自車両に対する前方車両の車間時間とユーザの過失度合の関係を示したグラフである。このグラフにより示されるデータは、図5のステップS5003、S5203の処理に対応する危険運転要素である車間距離不保持に対するユーザの過失度合を算出するために用いられる。なお、車間時間とは、前方車両の通過した地点を自車両が何秒後に通過するかを示す時間であり、自車両と前方車両の車間距離および自車両の車速によって求められる。保持すべき車間距離は自車両の車速に応じて変化するため、車間距離不保持に対するユーザの過失度合は、車間時間によって表現することが好ましい。
一般に、前方車両に追従して自車両を運転中のユーザは、車間時間が1.5秒から1.8秒程度になると危険を感じ始めると言われている。また、安全運転のための車間時間として、2秒以上の車間時間を確保することが推奨されている。そのため、車間距離不保持に対するユーザの過失度合は、たとえば図8(b)のグラフのように表すことができる。このグラフは、以下の式(2)によって算出される。この場合、式(2)において、xは車間時間を表し、Rはユーザの過失度合を表す。なお、式(2)の定数cとdには、任意の数値を設定できる。具体的には、c=10、d=17を設定する場合などが考えられる。また、式(2)とは別の関数を用いて、車間距離不保持に対するユーザの過失度合を算出してもよい。
図8(c)は、ユーザの会話における声の大きさとユーザの過失度合の関係を示したグラフである。このグラフにより示されるデータは、図5のステップS5004、S5204の処理に対応する危険運転要素である会話運転に対するユーザの過失度合を算出するために用いられる。
一般に、走行中の車両内において測定される音の大きさは70デシベル程度であるとされている。そのため、会話における声の大きさが70デシベル以上の状態が継続している場合は、ユーザが会話に集中しており、運転に集中できずに危険な状態にあると考えられる。したがって、会話運転に対するユーザの過失度合は、たとえば図8(c)のグラフのように表すことができる。このグラフは、図8(a)と同様に、前述の式(1)によって算出される。この場合、式(1)において、xは声の大きさを表し、Rはユーザの過失度合を表す。なお、式(1)の定数aとbには、任意の数値を設定できる。具体的には、a=0.2、b=18を設定する場合などが考えられる。また、式(1)とは別の関数を用いて、会話運転に対するユーザの過失度合を算出してもよい。
次に、図3のステップS3003で車載端末200の入出力装置201に表示される画面について説明する。以下で説明する図9〜図18は、入出力装置201における運転特性の診断結果の表示画面例を示す図である。ユーザは、入出力装置201を用いて、図9〜18に示すような画面を自由に切り替えることができる。なお、運転特性の診断結果をユーザに提示する方法としては、図9〜18に示すような表示画面を用いた以外の方法も使用可能である。また、図9〜18に示すような複数の表示画面を切り替えることで、運転特性の診断結果を示す複数種類の情報をユーザに提示するのではなく、単一の画面に複数種類の情報をまとめて表示するような方法も考えられる。
図9(a)は、自車両の運転開始前に表示される画面の一例である。図9(a)の画面において、ユーザが運転開始ボタン901を画面上で押下すると、車載端末200は、図2のステップS2001において、自車両の運転開始を検出する。また、ユーザが運転診断ボタン902を画面上で押下すると、車載端末200は、図3のステップS3001において、運転特性の診断結果に対するユーザからの要求開始を検出する。プレビュー画面920には、カメラ206で撮影された自車両周囲の撮影画像などが表示される。
図9(b)は、自車両の運転中に表示される画面の一例である。図9(b)の画面において、運転診断ボタン902は押下が禁止されており、運転中は操作できない旨の説明が表示されている。また、図9(a)の運転開始ボタン901に替えて、運転終了ボタン911が表示されている。ユーザが運転終了ボタン911を画面上で押下すると、車載端末200は、図2のステップS2004において、自車両の運転が継続中でないと判定し、ステップS2005に進んで運転終了を検出する。
図9(c)は、自車両の危険運転が検出されることでテレマティクスセンタ100から運転特性の診断結果を受信したときに表示される画面の一例である。図9(c)の画面には、検出された危険運転に対するユーザの過失度合を表す通知メッセージ931が表示されている。また、危険運転の原因推定処理において検出された車間距離不保持に対するユーザへの運転アドバイスとして、前方車両との車間距離をもっと広くすべき旨を表す通知メッセージ932が表示されている。なお、運転中のユーザに通知メッセージ931、932を気づかせるために、音声や振動を出力したり、不図示の発光部材を明滅させたりしてもよい。
次に、図10(a)〜(c)を参照して、地図を用いた運転特性の診断結果の表示画面について説明する。
図10(a)は、テレマティクスセンタ100から受信した運転特性の診断結果を地図上に示した画面の一例である。図10(a)の画面には、自車両の危険運転が検出された地点を示すための吹き出しマーク1001〜1003が地図上に表示されている。
図10(b)は、図10(a)の画面においてユーザが吹き出しマーク1001を選択したときに表示される画面の一例である。図10(b)の画面には、吹き出しマーク1001が示す地点で検出された自車両の危険運転について、その詳細情報1004が表示されている。詳細情報1004は、日時1005、場所1006、危険運転動作1007、危険運転の推定原因1008、ユーザの過失度合1009、運転アドバイス1010などを含む。危険運転の推定原因1008には、たとえば、図7のステップS7020で特定された危険運転の主要因などが表示される。なお、危険運転の推定原因1008において、危険運転の主要因に加えて、その要因が危険運転を引き起こしたと推定される確率(可能性)などを併記してもよい。
図10(c)は、図10(b)に示した画面の具体例である。図10(c)の画面には、日時1005、場所1006、危険運転動作1007、危険運転の推定原因1008、ユーザの過失度合1009、運転アドバイス1010について、その具体的な内容を示す文章がそれぞれ表示されている。
なお、図10(b)、(c)に示した詳細情報1004は、上記の日時1005、場所1006、危険運転動作1007、危険運転の推定原因1008、ユーザの過失度合1009、運転アドバイス1010の情報要素の全てを含まなくてもよい。たとえば、運転アドバイス1010を省略することなどが考えられる。任意の情報要素の表示を省略することで、ユーザが詳細情報1004の内容を確認する負荷を軽減することができる。この場合、どの情報要素を表示対象とするかは、ユーザが適宜選択できるようにしてもよいし、ユーザの負荷等に応じて車載端末200が自動的に選択してもよい。
以上説明したように、車載端末200は、ユーザが車両の危険運転を行った場合に、その危険運転が行われた日時および場所と、その危険運転の内容と、その危険運転の原因と、その危険運転に対するユーザの過失度合と、その危険運転に対するユーザへの運転アドバイスと、のいずれか少なくとも一つを含む、図10(b)、(c)のような画面を、入出力装置201に表示することができる。テレマティクスセンタ100の診断結果出力部129は、図3のステップS3103において、このような画面を車載端末200に表示させるための情報を、運転特性の診断結果として通信部140に出力する。この情報は、通信部140により、テレマティクスセンタ100から車載端末200に送信され、車載端末200において受信される。
図11は、危険運転の推定原因を円グラフを用いて示した画面の一例である。図11の画面には、推定された危険運転の主要因1101と、各要因の推定確率を示す円グラフ1102とが表示されている。円グラフ1102は、図7のステップS7020で特定された危険運転の主要因および副次要因と、これらの各要因が危険運転を引き起こしたと推定される確率とを示している。円グラフ1102における各要因の確率は、図7のステップS7000、S7010で各要因に対して求められたユーザの過失度合または外部要因の影響度合に基づいて決定することができる。なお、円グラフ1102に替えて、たとえば棒グラフなど別形式のグラフ表示を使用してもよい。
図12は、所定の評価対象期間におけるユーザの運転評価を示した画面の一例である。図12の画面には、推定された危険運転の主要因12001と、ユーザの運転評価を示すレーダーチャート12010とが表示されている。レーダーチャート12010は、車間距離12011、急発進12012、急ブレーキ12013、急ハンドル12014、速度超過12015などの運転要素毎に、ユーザの運転に対する評価点数を表している。
レーダーチャート12010における各運転要素の評価点数は、評価対象期間における危険運転検出処理部125や原因推定処理部126での処理結果に基づいて算出することができる。すなわち、図4に示した危険運転検出処理における急減速および急ハンドルの検出頻度や、図5、図6に示した原因推定処理における各危険運転要素の検出頻度に基づいて、各運転要素の評価点数を算出可能である。具体的には、車間距離12011に対する評価点数は、評価対象期間内に図5のステップS5203で車間距離不保持が検出された頻度に基づいて求められる。急発進12012に対する評価点数は、評価対象期間内に図5のステップS5208で急ぎ運転が検出された頻度に基づいて求められる。急ブレーキ12013に対する評価点数は、評価対象期間内に図4のステップS4001で急減速が検出された頻度に基づいて求められる。急ハンドル12014に対する評価点数は、評価対象期間内に図4のステップS4002で急ハンドルが検出された頻度に基づいて求められる。速度超過12015に対する評価点数は、評価対象期間内に図6のステップS5216で交通違反として速度違反が検出された頻度に基づいて求められる。なお、以上説明した以外の方法で各運転要素の評価点数を算出してもよい。
図12の画面例のように、ユーザの運転評価をレーダーチャート形式で表示することにより、複数の運転要素に対する評価を同時に表すことができる。また、図12の画面例では、診断時の運転評価12021と、普段の運転評価12022とを、同時に表示することができる。そのため、ユーザにとっては、自身の運転に対する総合的な評価や、診断時の運転が普段の運転と比較して何が悪かったのかなどの相対的な評価を把握しやすくなるという利点がある。さらに、全てのユーザの平均的な運転評価を合わせて表示してもよい。このようにすれば、ユーザが一般ドライバと比較してどのような運転傾向にあるのかを把握して、客観的な評価を得ることができる。
図13は、映像を用いた運転特性の診断結果の表示画面の一例である。図13の画面には、推定された危険運転の主要因1301、映像1302、日時1303、危険運転動作1304、センサ情報1305が表示されている。映像1302は、危険運転が検出された時点の前後の数秒間にカメラ206で撮影された自車両前方の映像を示している。なお、カメラ206で撮影された映像に替えて、たとえばセンサ情報等に基づいて推定された自車両の周辺状況を示すアニメーション画像や、危険運転の種類ごとに予め記憶された典型例の映像などを、映像1302として表示してもよい。また、ユーザが危険運転の状況を客観的に把握できるようにするため、鳥瞰視点から眺めた映像などを表示してもよい。
図14(a)は、危険運転の原因推定過程をフローチャート形式で示した画面の一例である。図14(a)の画面には、検出された危険運転動作1401と、危険運転動作1401に対して危険運転要素ごとに推定された各要因1408〜1413と、各要因の推定確率1402〜1407とが表示されている。推定確率1402〜1407は、図7のステップS7000、S7010で各要因1408〜1413に対して求められたユーザの過失度合または外部要因の影響度合に基づいて決定することができる。このような画面により、ユーザは、どの危険運転要素が危険運転の原因として推定されていたのかを把握することができる。
図14(b)は、図14(a)のうち危険運転動作1401の主要因1411の部分を拡大表示した場合の例を示している。このような拡大表示によって、ユーザは、主要因1411の詳細として、危険運転動作1401が検出されたときの自車両の走行状態や周囲状況を確認することができる。なお、主要因1411の詳細として表示される内容は、自車両に搭載されているセンサの種類などに応じて変更することができる。
図15(a)は、推定された危険運転の主要因に対するユーザの過失度合の算出過程を示した画面の一例である。図15(a)の画面には、危険運転として検出された急ブレーキの主要因1501と、主要因1501に対する自車両の車間時間とユーザの過失割合の関係を示すグラフ1502と、日時1504、危険運転の検出結果1505および危険運転直前の車間時間1506とが表示されている。グラフ1502には、危険運転検出時のユーザの運転状況に対応する点1503が示されている。これにより、ユーザは、主要因1501に対する過失度合がどのようにして算出されたかを視覚的に把握することができる。そのため、危険運転を避けるためには運転をどのように改善すればよいかを直観的に理解することができる。なお、図15(a)の画面例では、危険運転の主要因1501が車間距離不保持であるため、これに対応する自車両の車間時間とユーザの過失度合の関係をグラフ1502として示している。他の危険運転要素が危険運転の主要因として推定された場合は、それに応じてグラフ1502の内容を変更することが好ましい。また、危険運転の主要因に限らず、副次要因についても、図15(a)のような画面を表示可能としてもよい。
図15(b)は、推定された危険運転の主要因に対するユーザの時系列的な運転状況を示した画面の一例である。図15(b)の画面には、危険運転として検出された急ブレーキの主要因1501と、主要因1501に対するユーザの時系列的な運転状況を示すグラフ1515とが表示されている。グラフ1515は、主要因1501に対するユーザの時系列的な運転状況として、急ブレーキが検出される直前の自車両の車間時間の推移を示している。これにより、ユーザは、危険運転が検出されたときの自身の運転状況を客観的に把握することができる。なお、図15(b)の画面例では、危険運転の主要因1501が車間距離不保持であるため、これに対応する自車両の車間時間の推移をグラフ1515として示している。他の危険運転要素が危険運転の主要因として推定された場合は、それに応じてグラフ1515の内容を変更することが好ましい。また、危険運転の主要因に限らず、副次要因についても、図15(b)のような画面を表示可能としてもよい。
図16は、自車両を運転中のユーザに対する過失度合の時系列的な推移を示した画面の一例である。図16(a)の画面には、ユーザの過失度合の推移を時系列的に示すグラフ1602と、危険運転を検出した時刻およびその内容や、運転終了時刻などを示すイベント表示1603、1604および1605と、グラフ1602における過失度合の凡例1606とが表示されている。これにより、ユーザは、過失度合の高い運転、すなわち危険度合の高い運転をどの程度行っているかを俯瞰的に把握することができる。なお、グラフ1602には、危険運転の検出場所などの情報をイベント表示として表示してもよい。また、イベント表示1603、1604を最初は表示せず、ユーザの操作に応じて適宜表示するようにしてもよい。さらに、グラフ1602では、図16に示したような色の濃淡以外の表示形態を使用してもよい。たとえば、時系列順に所定のマーカを表示してその移動速度により過失度合を表現したり、折れ線グラフを用いて過失度合を時系列的に表現したりすることなどが考えられる。
図17は、推定された危険運転の主要因に対するユーザの過失度合と外的要因の影響度合との関係を示した画面の一例である。図17の画面には、危険運転として検出された急ブレーキの主要因に対するユーザの過失度合が、外的要因による影響度合よりも大きいことを示す不等号17003と、検出した危険運転に対する詳細情報とが表示されている。詳細情報は、日時17005、場所17006、危険運転動作17007、センサ情報17008、推定原因17009、運転アドバイス17010などを含む。これにより、他車両の危険運転などの外的要因に対する回避動作が危険運転として検出された場合にも、ユーザにとって信頼性や納得性が高い運転特性の診断結果を提供することができる。なお、図17の画面において詳細情報として表示する内容は、適宜追加、削除、変更等することも可能である。
図18(a)は、危険運転の検出履歴と自動車保険料との関係を示した画面の一例である。図18(a)の画面には、ユーザに対する危険運転の検出履歴を示すグラフ1801と、次回更新時の自動車保険料1802とが表示されている。グラフ1801は、所定期間(たとえば、自動車保険の前回更新日から現在までの期間)内に検出された危険運転の回数と、各危険運転に対するユーザの過失度合とを示している。次回更新時の自動車保険料1802は、ユーザが現在契約中の自動車保険を次回の契約更新で更新する場合に適用される保険料金額の目安を表している。この金額は、グラフ1801が示す危険運転の検出履歴におけるユーザの過失度合に応じて決定される。
図18(b)は、ユーザの過失度合と自動車保険料との関係を示した画面の一例である。図18(b)の画面には、ユーザの過失度合と自動車保険料との関係を示すグラフ1803が表示されている。グラフ1803の横軸の値は、所定の契約期間内に検出された危険運転に対するユーザの総合的な過失度合を表しており、グラフ1803の縦軸の値は、ユーザが現在契約中の自動車保険を次回の契約更新で更新する場合に適用される保険料金額の目安を表している。グラフ1803には、現在までのユーザの運転状態がグラフ1803上でどの位置に対応するかを示す点1804が表示されている。なお、危険運転の検出回数や検出頻度などに応じて、グラフ1803の傾きや縦軸の値を変更することで、ユーザの過失度合と自動車保険料との関係を変化させてもよい。
なお、図9〜図18で説明したような運転特性の診断結果の表示画面は、ユーザの危険運転が検出された直後や、危険運転が検出された後でユーザによる自車両の運転が再開されたときなどに、車載端末200において入出力装置201に自動的に表示されるようにしてもよい。この場合、テレマティクスセンタ100において診断結果出力部129は、危険運転検出処理部125がユーザの危険運転を検出したときや、その後に自車両の運転が再開されたと判断したときに、図3のステップS3102、S3103の処理を自動的に実行することが好ましい。このとき、自車両の運転が再開されたか否かの判断は、車載端末200からテレマティクスセンタ100へのプローブ情報232の送信タイミングに基づいて行うことができる。または、テレマティクスセンタ100において記憶装置130に蓄積されているプローブ情報132に含まれる自車両の速度、加速度、走行位置等の計測結果に基づいて、自車両の運転が再開されたか否かを判断してもよい。これにより、運転特性の診断結果を所望のタイミングでテレマティクスセンタ100から車載端末200に送信して、入出力装置201に表示させることができる。そのため、危険運転を行ったユーザに対して、同様の危険運転を防止するための注意喚起を効果的に行うことができる。さらに、検出された危険運転に対するユーザの過失度合が所定値以上である場合にのみ、上記のような処理を行ってもよい。このようにすれば、ユーザの過失度合が低く、そのため特に注意喚起が必要ない場合には、不要な画面表示が行われるのを抑止することができる。
以上説明した本発明の一実施形態によれば、以下の作用効果を奏する。
(1)テレマティクスセンタ100は、車両の運転状態に関するプローブ情報132を車載端末200から取得するプローブ情報取得部121と、プローブ情報取得部121に基づいて車両におけるユーザの危険運転を検出する危険運転検出処理部125と、危険運転の原因を推定する原因推定処理部126と、危険運転検出処理部125による危険運転の検出結果と、原因推定処理部126により推定された危険運転の原因とに基づいて、ユーザに対する運転特性の診断を行う運転特性診断処理部128と、運転特性診断処理部128により診断された運転特性の診断結果を出力する診断結果出力部129と、を備える。このようにしたので、外的要因の影響を考慮して、ユーザの納得性が高い運転特性診断や情報出力を行うことができる。
(2)診断結果出力部129から出力される運転特性の診断結果は、図10(b)、(c)の画面例で示したように、危険運転が検出された日時および場所を示す情報と、危険運転の内容を示す情報と、危険運転の原因を示す情報とを含むことが好ましい。このようにすれば、ユーザにとって運転特性の診断結果を分かりやすく提示することができる。
(3)診断結果出力部129から出力される運転特性の診断結果は、図10(b)、(c)の画面例で示したように、危険運転に対するユーザへの運転アドバイスを示す情報をさらに含むこととしてもよい。このようにすれば、ユーザが行った危険運転に対して、どのような点を改善すべきかを分かりやすく提示することができる。
(4)原因推定処理部126は、図5および図6に示した原因推定処理において、車両において取得されたプローブ情報132と、環境情報取得部123により取得された車両の走行位置に対応する気象情報と、車両の走行位置に対応する地図情報と、車両の走行位置に対応する道路交通情報とのいずれか少なくとも一つに基づいて、危険運転の原因を推定する。具体的には、原因推定処理部126は、プローブ情報132に基づいて、図5のステップS5001〜S5010およびS5201〜S5210の処理と、図6のステップS5011〜S5019およびS5211〜S5219の処理とを行うことで、危険運転の原因を推定する。また、気象情報に基づいて図6のステップS5015およびS5215の処理を行い、地図情報に基づいて図6のステップS5016およびS5216の処理を行い、道路交通情報に基づいて図6のステップS5017およびS5217の処理を行うことで、危険運転の原因を推定する。このようにしたので、様々な危険運転の原因を正確に推定することができる。
(5)原因推定処理部126は、図5および図6に示した原因推定処理において、ユーザに起因する危険運転要素の有無を判定するための第一の判定処理と、ユーザ以外の外的要因に起因する危険運転要素の有無を判定するための第二の判定処理とを行うことにより、危険運転の原因を推定する。具体的には、原因推定処理部126は、第一の判定処理として、図5のステップS5001〜S5010、図6のステップS5011、S5016、S5018およびS5019の各処理と、これらにそれぞれ対応する図5のステップS5201〜S5210、図6のS5211、S5216、S5218およびS5219の各処理とのうち、いずれか少なくとも一つを含む処理を行う。また、第二の判定処理として、図6のステップS5012〜S5015およびS5017の各処理と、これらにそれぞれ対応する図6のステップS5212〜S5215およびS5217の各処理とのうち、いずれか少なくとも一つを含む処理を行う。このようにしたので、ユーザに起因する危険運転要素のみならず、ユーザ以外の外的要因に起因する危険運転要素についても、危険運転の原因として推定することができる。
(6)テレマティクスセンタ100は、危険運転に対するユーザの過失度合を算出する過失度合算出部127をさらに備える。診断結果出力部129から出力される運転特性の診断結果は、図10(b)、(c)の画面例で示したように、過失度合算出部127により算出されたユーザの過失度合の情報をさらに含むことが好ましい。このようにすれば、ユーザにとって納得性の高い運転特性の診断結果を提供することができる。
(7)原因推定処理部126は、図5のステップS5001〜S5010およびS5201〜S5210と、図6のステップS5011〜S5019およびS5211〜S5219において、危険運転要素ごとに設定された所定の条件に基づいて、危険運転の原因をそれぞれ推定する。過失度合算出部127は、図7のS7000およびS7010において、この危険運転要素ごとにユーザの過失度合または外的要因の影響度合を算出し、算出した各過失度合および各影響度合に基づいて、ステップS7020においてユーザの総合的な過失度合を算出する。このようにしたので、ユーザに起因する危険運転要素やユーザ以外の外的要因に起因する危険運転要素などの様々な危険運転要素について、ユーザの総合的な過失度合を正確に算出することができる。
(8)テレマティクスセンタ100は、車両の運転状態に関するプローブ情報132を車載端末200から取得するプローブ情報取得部121と、プローブ情報取得部121に基づいて車両におけるユーザの危険運転を検出する危険運転検出処理部125と、危険運転に対するユーザの過失度合を算出する過失度合算出部127と、危険運転検出処理部125による危険運転の検出結果と、過失度合算出部127により算出されたユーザの過失度合とに基づいて、ユーザに対する運転特性の診断を行う運転特性診断処理部128と、運転特性診断処理部128により診断された運転特性の診断結果を出力する診断結果出力部129と、を備える。このようにしたので、外的要因の影響を考慮して、ユーザの納得性が高い運転特性診断や情報出力を行うことができる。
(9)テレマティクスセンタ100は、図5のステップS5001〜S5010およびS5201〜S5210の各処理と、図6のステップS5011〜S5019およびS5211〜S5219の各処理とを実行することにより、危険運転要素ごとに設定された所定の条件に基づいて危険運転の原因を推定する原因推定処理部126をさらに備える。過失度合算出部127は、図7のステップS7000およびS7010において、この危険運転要素ごとにユーザの過失度合または外的要因の影響度合を算出し、算出した各過失度合および各影響度合に基づいて、ステップS7020においてユーザの総合的な過失度合を算出する。このようにしたので、ユーザに起因する危険運転要素やユーザ以外の外的要因に起因する危険運転要素などの様々な危険運転要素について、ユーザの総合的な過失度合を正確に算出することができる。
(10)原因推定処理部126は、図5および図6に示した原因推定処理において、ユーザに起因する危険運転要素の有無を判定するための第一の判定処理と、ユーザ以外の外的要因に起因する危険運転要素の有無を判定するための第二の判定処理とを行うことにより、危険運転の原因を推定する。具体的には、原因推定処理部126は、第一の判定処理として、図5のステップS5001〜S5010、図6のステップS5011、S5016、S5018およびS5019の各処理と、これらにそれぞれ対応する図5のステップS5201〜S5210、図6のS5211、S5216、S5218およびS5219の各処理とのうち、いずれか少なくとも一つを含む処理を行う。また、第二の判定処理として、図6のステップS5012〜S5015およびS5017の各処理と、これらにそれぞれ対応する図6のステップS5212〜S5215およびS5217の各処理とのうち、いずれか少なくとも一つを含む処理を行う。過失度合算出部127は、図7のステップS7000では、上記の第一の判定処理で判定された各危険運転要素に対するユーザの過失度合を算出し、ステップS7020では、上記の第二の判定処理で判定された各危険運転要素に対する外的要因の影響度合を算出する。このようにしたので、ユーザに起因する各危険運転要素と、ユーザ以外の外的要因に起因する各危険運転要素とについて、それぞれの要因に適した評価値として、ユーザの過失度合または外的要因の影響度合を算出することができる。
(11)診断結果出力部129から出力される運転特性の診断結果は、図10(b)、(c)の画面例で示したように、危険運転が検出された日時および場所を示す情報と、危険運転の内容を示す情報と、ユーザの過失度合を示す情報とを含むことが好ましい。また、図18(a)、(b)の画面例で示したように、危険運転の検出履歴とユーザの過失度合とに応じた自動車保険料の情報を含むようにしてもよい。このようにすれば、ユーザにとって運転特性の診断結果を分かりやすく提示することができる。
(12)診断結果出力部129は、危険運転が検出された直後に、または危険運転が検出された後で車両の運転が再開されたときに、図3のステップS3102、S3103の処理を実行して、運転特性の診断結果を出力するようにしてもよい。このようにすれば、ユーザが危険運転を行った場合に、ユーザに対する注意喚起を適切なタイミングで効果的に行うことができる。
(13)本発明の一実施形態による運転特性診断システムは、上記のテレマティクスセンタ100と、テレマティクスセンタ100と接続される車載端末200とを有する。テレマティクスセンタ100は、図2のステップS2101において、車両の運転状態に関するプローブ情報232を車載端末200から受信すると共に、図3のステップS3103において、診断結果出力部129から出力されたユーザに対する運転特性の診断結果を車載端末200に送信する。一方、車載端末200は、車両の運転状態に関するプローブ情報232をテレマティクスセンタ100へ送信すると共に、ユーザに対する運転特性の診断結果をテレマティクスセンタ100から受信する通信部140と、通信部140により受信された運転特性の診断結果を表示するための表示処理を行う診断結果表示処理部227と、を備える。このようにしたので、ユーザが車載端末200を用いることで、車両の運転状態に関する情報をプローブ情報232として確実にテレマティクスセンタ100に送信することができる。また、運転特性の診断結果を車載端末200に表示して、ユーザに分かりやすく提示することができる。
(変形例1)
なお、以上説明した実施形態では、図5および図6に示した原因推定処理と、図7に示した過失度合算出処理とを、それぞれ別個の処理として行う例を説明したが、これらの処理を合わせて一つの処理として行ってもよい。図19は、原因推定処理と過失度合算出処理を合わせて行う場合の処理の流れを示すフローチャートである。
図19のフローチャートにおいて、原因推定処理部126および過失度合算出部127は、ステップS1801〜S1819に示す処理を協働して行う。これらの処理結果に基づいて、過失度合算出部127は、ステップS7020においてユーザの総合的な過失度合を算出する。なお、図19のステップS1801〜S1819の各処理は、図5のステップS5001〜S5010および図6のステップS5011〜S5019の各処理、および図5のステップS5201〜S5210および図6のステップS5211〜S5219の各処理に対応している。さらに、図19のステップS1801〜S1811、S1816、S1818およびS1819の各処理は、図7のステップS7000に対応しており、図19のステップS1812〜S1815およびS1817の各処理は、図7のステップS7010にそれぞれ対応している。
(変形例2)
また、本発明による運転特性診断システムでは、図1に示したテレマティクスセンタ100や車載端末200の構成要素にさらに別の構成要素を追加したり、あるいは、図1に示したテレマティクスセンタ100や車載端末200の構成要素から任意のものを削除したりしてもよい。たとえば、スマートフォンを車載端末200として用いた場合に、車間距離計測装置208、周辺近接計測装置209、車両情報取得装置210、視線計測装置211、生体情報計測装置212などを構成要素から除外することができる。この場合、車間距離計測装置208、周辺近接計測装置209、視線計測装置211などについては、カメラ206を代用してもよい。
なお、車載端末200を上記のような構成とした場合、車載端末200がプローブ情報232として取得できる情報の種類は、前述の実施形態と比べて限定される。たとえば、自車両に搭載された機器の操作情報や、ユーザの生体情報については、車載端末200において取得することができない。したがって、テレマティクスセンタ100では、これらの情報に基づく図5のステップS5005およびS5205の処理や、ステップS5009およびS5209の処理、ステップS5010およびS5210の処理については、行うことができない。しかし、それ以外の危険運転要素に対する各処理については実行できるため、それらの処理結果に基づいてユーザの運転特性の診断を行うことができる。
以上説明した実施形態や各種の変化例はあくまで一例であり、発明の特徴が損なわれない限り、本発明はこれらの内容に限定されない。本発明は上述した実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。