以下、本発明の実施の形態を、図面を参照しながら詳細に説明する。図1は、本発明の第1の実施の形態に係るシート給送装置を備えた画像形成装置の概略構成を示す図である。
図1に示すように、画像形成装置100の画像形成装置本体(以下、装置本体という)100Aの上部にはプラテンガラスに載置された原稿に光を照射し、反射光をデジタル信号に変換するイメージセンサ等を有する画像読取部41が設けられている。なお、画像を読み取るための原稿は、自動原稿給送装置41aによりプラテンガラス上に搬送される。また、装置本体100Aには、画像形成部55と、画像形成部55にシートSを給送するシート給送装置51,52と、シートSを反転させて画像形成部55へ搬送するシート反転部59が設けられている。
画像形成部55は、露光ユニット42と、イエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)及びブラック(Bk)の4色のトナー画像を形成する4個のプロセスカートリッジ43(43y,43m,43c,43k)を備えている。また、画像形成部55は、プロセスカートリッジ43の上方に配された中間転写ユニット44、2次転写部56、定着部57を備えている。
ここで、プロセスカートリッジ43は、感光体ドラム21(21y,21m,21c,21k)と、帯電ローラ22(22y,22m,22c,22k)と、現像ローラ23(23y,23m,23c,23k)を備えている。また、プロセスカートリッジ43はドラムクリーニングブレード24(24y,24m,24c,24k)を備えている。
中間転写ユニット44は、ベルト駆動ローラ26、2次転写内ローラ56a等に張架されている中間転写ベルト25と、感光体ドラム21に対向した位置で中間転写ベルト25に当接する1次転写ローラ27(27y,27m,27c,27k)を備えている。そして、後述するように、中間転写ベルト25に1次転写ローラ27によって正極性の転写バイアスを印加することにより、感光体ドラム21上の負極性を持つトナー像が順次中間転写ベルト25に多重転写される。これにより、中間転写ベルト25上にはフルカラー画像が形成される。
2次転写部56は、2次転写内ローラ56aと、2次転写内ローラ56aと中間転写ベルト25を介して接する2次転写外ローラ56bとにより構成される。そして、後述するように2次転写外ローラ56bに正極性の二次転写バイアスを印加することによって中間転写ベルト25上に形成されたフルカラー画像をシートSに転写する。
定着部57は、定着ローラ57aと定着バックアップローラ57bを備えている。そして、定着ローラ57aと定着バックアップローラ57bとの間をシートSが挟持搬送されることにより、シートS上のトナー像は加圧、加熱されてシートSに定着される。シート給送装置51,52は、それぞれシートSを収納する収納手段であるカセット51a,52a及びカセット51a,52aに収納されたシートSを静電気により吸着しながら1枚ずつ給送する機能を有するシート吸着分離給送部51b,52bを備えている。
なお、装置本体100Aには、カセット51a,52aから給送されたシートSを2次転写部56まで搬送する2次転写前搬送パス103と、2次転写部56まで搬送されたシートSを定着部57まで搬送する定着前搬送パス104が設けられている。また、装置本体100Aには、定着部57まで搬送されたシートSを切換部材61まで搬送する定着後搬送パス105、切換部材61まで搬送されたシートSを排紙部58まで搬送する排紙パス106が設けられている。さらに、装置本体100Aには、画像形成部55により片面に画像が形成されたシートSの裏面に画像を形成するため、シート反転部59により反転されたシートSを再び画像形成部55へ搬送する再搬送パス107が設けられている。
次に、このような構成の画像形成装置100の画像形成動作について説明する。画像形成動作が開始されると、まず不図示のパソコン等からの画像情報に基づき露光ユニット42は感光体ドラム21の表面に向けてレーザー光を照射する。このとき、感光体ドラム21の表面は、帯電ローラ22によって所定の極性・電位に一様に帯電されており、レーザー光を照射すると、レーザー光が照射された部位の電荷が減衰することによって感光体ドラム表面に静電潜像が形成される。
この後、静電潜像を現像ローラ23からそれぞれ供給されたイエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)及びブラック(Bk)のトナーにより現像し、静電潜像をトナー像として顕像化する。そして、この各色トナー像を1次転写ローラ27にそれぞれ印加した1次転写バイアスにより、順次中間転写ベルト25に転写することにより、中間転写ベルト25上にフルカラートナー画像が形成される。
一方で、このトナー画像形成動作に並行して、シート給送装置51,52は、シート吸着分離給送部51b,52bによりカセット51a,52aから1枚のシートSのみを分離給送する。この後、シートSは引き抜きローラ対51c,51d,52c,52dに到達する。さらに、引き抜きローラ対51c,51d,52c,52dに挟持されたシートSは、後述するシート厚検出手段53によるシート厚検出を経て2次転写前搬送パス103に送り込まれる。そして、停止しているレジストレーションローラ対62a,62bに当接し、このレジストレーションローラ対62a,62bにより、シート給送方向下流端である先端の位置が調整される。
次に、2次転写部56において、中間転写ベルト上のフルカラートナー像とシートSの位置とを一致させるタイミングでレジストレーションローラ対62a,62bが駆動される。これにより、シートSは2次転写部56まで搬送され、2次転写部56にて、2次転写外ローラ56bに印加した2次転写バイアスにより、フルカラートナー像がシートS上に一括して転写される。
フルカラートナー像が転写されたシートSは、定着部57に搬送され、この定着部57において熱及び圧力を受けて各色のトナーが溶融混色し、シートSにフルカラーの画像として定着される。この後、画像が定着されたシートSは、定着部57の下流に設けられた排紙部58によって排紙される。なお、シートの両面に画像を形成する際は、シートSの搬送方向を切換部材61によりシート反転部59へ切り替えて反転させ、シートSを再び画像形成部55へ搬送する。
次に、図2を用いて本実施の形態に係るシート給送装置51の構成について説明する。図2はシート給送装置51近傍の断面形状を表した模式図である。シート給送装置51は、既述したように、カセット51aに収納されたシートSを静電気により吸着しながら1枚ずつ分離搬送するシート吸着分離給送部51bと、引き抜きローラ対51c,51dを備えている。また、シート給送装置51は、シート吸着分離給送部51bから1枚ずつ分離搬送されてきたシートSを、シート吸着分離給送部51bの斜め上方に位置する引き抜きローラ対51c,51dに案内する搬送ガイド51eを備えている。なお、シート給送装置51から2次転写部56に至る2次転写前搬送パス103の間にはシート厚検出手段53が配置されている。
シートが積載される積載手段であるカセット51aは、シートSが積載される昇降可能な中板301aを昇降させる昇降手段301と、中板301aに積載されたシートSの上面位置を検知するシート面高さ検出手段302を備えている。昇降手段301は、中板301aの下方に回動可能に設けられたリフタ301bを備えており、リフタ301bの回動角度によって、中板301a及び中板301a上に積載された最上位シートSaの位置を変更する。
シート面高さ検出手段302は、中板301aの上方に配置されると共に、センサフラグ302aとフォトセンサ302bによって構成されている。センサフラグ302aは不図示の支持部に回転可能に支持されており、一端は最上位シートSaの上面と接触可能な位置に、他端はフォトセンサ302bを遮光可能な位置に配置されている。
ここで、最上位シートSaの上面が所定の高さに位置すると、センサフラグ302aが回転し、フォトセンサ302bが遮光される。なお、後述する図5に示す制御部70は、フォトセンサ302bの遮光状態を検出することにより、最上位シートSaの上面位置を検出する。そして、制御部70は、最上位シートSaの上面がシート面高さ検出手段302によって常に検出されるように昇降手段301の動作を制御し、中板301aの位置を最上位シートSaの上面高さが略一定となる位置に保つ。この結果、第1挟持搬送ローラ対201及び第2挟持搬送ローラ対202と、最上位シートSaの上面との空隙Lr1,Lr2も略一定に保たれる。なお、本実施の形態においては、Lr1>Lr2としている。
シート吸着分離給送部51bは、第1挟持搬送ローラ対201と、第2挟持搬送ローラ対202と、それら第1挟持搬送ローラ対201及び第2挟持搬送ローラ対202を支持する給送部フレーム206を備えている。また、シート吸着分離給送部51bは、第1挟持搬送ローラ対201及び第2挟持搬送ローラ対202により挟持搬送される可撓性を有する無端状の吸着部材200を備えている。さらに、第1挟持搬送ローラ対201に駆動力を発生させる第1駆動部(第2駆動手段)203と、第2挟持搬送ローラ対202に駆動力を発生させる第2駆動部(第1駆動手段)204を備えている。なお、シート給送装置52に設けられたシート吸着分離給送部52bも、シート給送装置51のシート吸着分離給送部51bと同様の構成であるため、説明は省略する。
第1挟持搬送ローラ対201は、第2挟持搬送ローラ対202に対してシート給送方向下流側に配置されると共に第1挟持搬送内ローラ201aと、第1挟持搬送外ローラ201bから構成されている。第1挟持搬送内ローラ201aは、吸着部材200の内側に配置されると共に配置位置が固定の不図示の軸支持部材により回転自在に軸支され、かつ第1挟持搬送内ローラ201aには第1駆動部203からの駆動が不図示の駆動伝達手段を介して伝達される。また、第1挟持搬送内ローラ201aは、最上位シートSaの上面に対して空隙Lr1を介して配置されている。
従動回転部材である第1挟持搬送外ローラ201bは、無端状のベルト形状の吸着部材200を挟んで第1挟持搬送内ローラ201aの外側に配置され、不図示の軸支持部材によって回転自在に軸支されている。なお、不図示の軸支部には第1押圧バネ201cが接続されており、第1挟持搬送外ローラ201bは、この第1押圧バネ201cによって第1挟持搬送内ローラ201aの軸中心方向に付勢されて第1挟持搬送内ローラ201aと共に吸着部材200を挟持する。
第2挟持搬送ローラ対202は、第2挟持搬送内ローラ202aと、第2挟持搬送外ローラ202bから構成されている。第2挟持搬送内ローラ202aは、第1挟持搬送内ローラ201aと同様に吸着部材200の内側に配置され、配置位置が固定の不図示の軸支持部材によって回転自在に軸支される。さらに、第2挟持搬送内ローラ202aには、第2駆動部204から不図示の駆動伝達手段を介して駆動力が伝達される。また、第2挟持搬送内ローラ202aは、最上位シートSaの上面に対して空隙Lr2を介して配置されている。
従動回転部材である第2挟持搬送外ローラ202bは、第1挟持搬送外ローラ201bと同様に吸着部材200を挟んで第2挟持搬送内ローラ202aの外側に配置され、不図示の軸支持部材によって回転自在に軸支されている。なお、不図示の軸支持部材には第2押圧バネ202cが接続されている。そして、第2挟持搬送外ローラ202bは第2押圧バネ202cにより、第2挟持搬送内ローラ202aの軸中心方向に付勢されて第2挟持搬送内ローラ202aと共に吸着部材200を挟持する。このように、吸着部材200は、第1の回転体である第2挟持搬送内ローラ202aと第2の回転体である第1挟持搬送内ローラ201aに内面が支持されている。
なお、本実施の形態では、既述したように第1挟持搬送内ローラ201aと最上位シートSaの上面の空隙Lr1及び第2挟持搬送内ローラ202aと最上位シートSaの上面の空隙Lr2を、Lr1>Lr2としている。このため、シート吸着分離給送部51bは、シートSに対して配設角度θuをもって配置されている。このようにシート吸着分離給送部51bを配置することにより、シートSをめくり上げるように吸着分離できるため、後述するシートSに対する分離力を効果的に発生させることができる。なお、シートSをめくり上げるように吸着分離できるならば、Lr1とLr2の関係は、Lr1>Lr2に限定されるものでは無い。
無端形状の吸着部材200は、本実施の形態においては、第1挟持搬送内ローラ201a及び第2挟持搬送内ローラ202aに内面が支持されている。そして、この吸着部材200の周長は、[第1挟持搬送内ローラ201a及び第2挟持搬送内ローラ202aの回転中心間距離の2倍+各ローラ201a,202aの円周面の長さの半分]よりも長い長さを有している。即ち、吸着部材200の周長はシート吸着分離給送部51bの巻架最短周長よりも余裕をもって(弛みをもって)、吸着分離に必要なシート吸着力が得られる後述する図6の(d)に示すシート接触面積Mnが確保されるように設定されている。
このような長さを有することにより、吸着部材200は、第1挟持搬送内ローラ201a及び第2挟持搬送内ローラ202aの回転により回転(移動)しながら下方に撓むことができる。これにより、第1挟持搬送内ローラ201a及び第2挟持搬送内ローラ202aと、中板301aに積載されたシートSの最上位のシートSaの間には、それぞれ空隙Lr1及び空隙Lr2が存在するものの、吸着部材200は最上位シートSaと接触可能となる。
ここで、本実施の形態においては、吸着部材200にシートを吸着して搬送する際、シート同士が摺擦しないように、吸着部材200にシートを静電気により吸着した後、吸着部材200を弾性変形させながら上方に引き上げるようにしている。そして、このように吸着部材200を弾性変形させながら上方に引き上げることにより、シートを他のシートから分離する。
吸着部材200には、正の電圧が供給される正電圧供給手段205a及び負の電圧が供給される負電圧供給手段205bが電気的に接続されている。そして、この第1電源である正電圧供給手段205a及び第2電源である負電圧供給手段205bから供給される正及び負の電圧によって吸着部材200にはシートSを引き付ける静電的な吸着力が発生する。
第1駆動部203及び第2駆動部204は、それぞれ後述する図5に示す制御部70に内蔵されているシート分離制御部210が接続されている。そして、第1駆動部203及び第2駆動部204は、第1挟持搬送内ローラ201a及び第2挟持搬送内ローラ202aに駆動力を伝達する。ここで、第1駆動部203及び第2駆動部204は、それぞれシート分離制御部210から送信された個別の速度指令パルス列を受信することによって協調動作を行い、給送されるシートSの種別に応じた最適なシートSの分離動作が行なわれる。この動作の詳細に関しては後述する。
次に、図3を用いて吸着部材200の詳細構成及び吸着部材200がシートSを吸着する吸着力の発生原理を説明する。なお、図3の(a)は吸着部材200表面を示す図、図3の(b)は吸着部材200の斜視図、図3の(c)は吸着部材200の給電部断面を示す図、図3の(d)は吸着部材200とシートSとの間に働く静電吸着力の概念を示す図である。
図3に示すように、吸着部材200は、基層200c、第1電極である正電極200a及び第2電極である負電極200bを備えている。正電極200a及び負電極200bは、それぞれ櫛歯形状を有すると共に、基層200cの内部に交互に配置されている。なお、本実施の形態においては、基層200cは体積抵抗108Ωcm以上の誘電体であるポリイミドであり、層厚は100μm程度である。また、正電極200a及び負電極200bは体積抵抗106Ωcm以下の導電体であり、層厚10μm程度の銅を用いている。
また、本実施の形態では、後述するようにシートSに吸着部材200が接近する際、吸着部材200が下方に撓んで樽型形状になるように吸着部材200の材質及び厚み等を調節して適度な弾性を持たせている。吸着部材200の第1挟持搬送内ローラ201a及び第2挟持搬送内ローラ202aに臨む内周面には、正電極200a及び負電極200bが露出している露出領域200d,200eが設けられている。そして、正電極200aの露出領域200dには、正電圧供給手段205aと接続された正接点206aが、負電極200bの露出領域200eには、負電圧供給手段205bと接続された負接点206bがそれぞれ接触している。
なお、本実施の形態では、正電極200aには、+1kV程度の正電圧が印加され、負電極200bには−1kV程度の負電圧が印加されている。また、正接点206a及び負接点206bは、それぞれ弾性を有する金属板材の先端にカーボンブラシをかしめた構造となっており、カーボンブラシが正電極200a及び負電極200bの露出領域200d,200eと接触している。なお、正接点206a及び負接点206bは弾性を有しているため、断面形状が時々刻々変化する吸着部材200に追従して接触することができ、安定した給電が可能である。
ここで、図3の(d)に示すように正電極200a及び負電極200bに正及び負の電圧が印加されると、電圧が印加された正電極200a及び負電極200bによって、吸着部材200の表面近傍には不平等電界が形成される。そして、このような不平等電界が形成された吸着部材200をシートSに接近させると、誘電体であるシート表層には誘電分極が生じ、Maxwellの応力によって、吸着部材200とシートSとの間に静電吸着力が生じる。
なお、本実施の形態では、既述したように吸着部材200内部に電極を設け、電極に対して電圧を印加することによって吸着部材200とシートSとの間に静電吸着力を発生する構成となっている。しかし、本発明は、この構成に限定されるものではなく、静電吸着力が発生するものであれば別の手段を用いても良い。例えば、絶縁性の吸着部材表層の、シートSとの吸着部より搬送上流側の位置において帯電ローラを当接させ、帯電ローラに電圧を印加することによって吸着部材表層を外部から帯電させることによっても、シートSの吸着力を得ることができる。その際に帯電ローラに接続する電源は交流電源であってもよいし、直流電源でもよい。
次に、図4を用いてシート厚検出手段53の構成及びシート厚検出原理を説明する。ここで、本実施の形態において、シート厚検出手段53は、超音波を用いてシート厚を検出してシートの剛性を検知するものである。この剛性検知手段であるシート厚検出手段53は、送波用超音波素子部53a、受波用超音波素子部53b及びそれらと接続された位相差演算回路53cを備えている。
送波用超音波素子部53aからは、シートS表面へ向けて超音波USW1が送波される。超音波USW1はシートS表面に到達すると、シートSを透過する超音波成分USW2とシートSに反射される成分USW3に分割され、反射された超音波USW3は受波用超音波素子部53bによって受波される。一方で、透過した超音波成分USW2はさらにシートSの裏面に反射され、その反射超音波はUSW4として受波用超音波素子部53bに受波される。
超音波USW3及び超音波USW4それぞれの送波用超音波素子部53aから受波用超音波素子部53bに到達するまでの伝搬経路長は異なるため、受波用超音波素子部53bによって受波されるタイミングには位相差Δtが生じる。具体的には、シートSの厚みStの略2倍距離だけ経路長が異なるため、位相差演算回路53cにおいて位相差Δtを計測することによって、シートSの厚みStを検出できる(音速cとすると、St=c×Δt/2)。
なお、本実施の形態では、シート厚検出手段53として超音波を利用したシート厚検出手法を採用しているが、これに限定するものではない。例えば、シートSに光を照射し、その透過光量を検出することでシート厚Stを検出する手法を用いてもよい。また、従来において目的は異なるものの、シートSの種類に応じて2次転写条件もしくは画像定着条件を変更するために、シートSの表面性や厚みを検出、もしくは設定する手段を設けている場合がある。その場合は、それら検出、もしくは設定手段の情報で代用しても良い。例えば、センサ類を配置せずに、印刷ジョブ投入時にユーザーによって設定されるシート種類情報を用いてもよい。
次に、図5を用いてシート給送装置51の制御部構成を説明する。図5は、本実施の形態に係るシート給送装置51の制御ブロック図である。図5に示すように制御部70には、既述した昇降手段301、正電圧供給手段205a、負電圧供給手段205b、シート面高さ検出手段302、シート厚検出手段53の他、タイマ71、カセット開閉検知センサ74等が接続される。
また、制御部70にはサブシステムとしてシート分離制御部210が内蔵されており、このシート分離制御部210には、第1駆動部203、第2駆動部204が接続されている。ここで、このシート分離制御部210は、不図示の内蔵記憶領域を有している。この内蔵記憶領域には、シート厚検出手段53によって検出されたシート厚Stに基づき後述するシート分離条件を決定するテーブルMt1及び搬送位置を決定するテーブルMt2が記憶されている。
そして、シート分離制御部210は、検出されたシート厚StとテーブルMt1,Mt2によりシート分離条件及び搬送条件を決定し、決定したシート分離条件及び搬送条件に応じて第1駆動部203及び第2駆動部204に対して速度指令パルス列を送信する。シート分離制御部210の制御方法の詳細に関しては後述する。
次に、図6を用いてシート吸着分離給送部51bのシート分離給送動作について説明する。なお、図6は、シート吸着分離給送部51bによってシートSが給送される動作を時系列に表現した模式図である。シートSの分離給送動作は、時系列順に、図6の(a)〜(h)に示す初期動作、接近動作、接触面積増大動作、吸着動作、分離動作、再接近動作、搬送動作、待機動作の8つの工程によって構成されている。以下、これらを順に説明する。なお、本実施の形態では、上記それぞれの動作工程おいて、吸着部材200には正電圧供給手段205a及び負電圧供給手段205bが接続され、常に吸着力が発生している。
図6の(a)に示す初期動作は、吸着部材200を給送動作初期位置(待機位置)で待機させる動作である。本実施の形態では、この初期動作のとき、シート分離制御部210は、最上位シートSaに対して吸着部材200を所定の空隙Lnを以て離間させている。
図6の(b)に示す接近動作は、吸着部材200を下方に撓ませることにより、すなわち撓んだ部分を下方に移動させることにより、樽型形状に変形させ、吸着部材200の吸着面側を最上位シートSaに接近させる動作である。この動作のとき、シート分離制御部210は、第2駆動部204によって第2挟持搬送ローラ対202を矢印方向へ回転速度Uで回転させる。また同時に、第1挟持搬送ローラ対201を停止、又は第1駆動部203によって第1挟持搬送ローラ対201を回転速度Uよりも遅く回転させることにより、吸着部材200を矢印Ad方向へ搬送し、吸着部材200を樽型形状に変形させる。そして、このように吸着部材200が樽型形状に変形することにより、吸着部材200の表面と最上位シートSaとが接触する。
図6の(c)に示す接触面積増大動作は、このような接近動作を継続させることにより、シートを吸着する位置(吸着位置)に移動(変位)した吸着部材200の表面と最上位シートSaとの接触面積Mcを増大させる動作である。この動作のとき、シート分離制御部210は、接近動作と同様に、第2駆動部204によって第2挟持搬送ローラ対202を矢印方向へ回転速度Uで回転させる。また同時に、第1挟持搬送ローラ対201を停止、又は第1駆動部203によって第1挟持搬送ローラ対201を回転速度Uよりも遅く回転させることにより、吸着部材200を矢印Ad方向へ搬送させ、接触面積Mcを増大させる。
そして、シート分離制御部210は、この接触面積増大動作を接触面積Mcが所定のシート接触面積Mnと等しくなるまで継続してから、第1駆動部203及び第2駆動部204を停止させる。ここで、シート接触面積Mcの大きさを直接検出する検出手段を設けても良いが、本実施の形態では、シート接触面積Mcの大きさをタイマ71による計時に基づく第1及び第2挟持搬送ローラ対201,202の搬送量の差によって代替的に検出している。
図6の(d)に示す吸着動作は、最上位シートSaの上面と吸着部材200の表面とが所定のシート接触面積Mnをもって面接触する位置(吸着位置)で、最上位シートSaを吸着部材200に吸着させる動作である。ここで、最上位シートSaと吸着部材200とが接触すると、既述したように、吸着部材200には正及び負電圧供給手段205a,205bを介して電圧が印加されているため、吸着部材200とシートSとの間には静電吸着力が働く。そして、吸着部材200が最上位シートSaと所定のシート接触面積Mnにて面接触した状態で吸着部材200に最上位シートSaが吸着される。
図6の(e)に示す分離動作は、吸着部材200に吸着された最上位シートSaを吸着部材200により上方に屈曲させながら次給送シートである下位シートSbから分離させる動作である。この動作のとき、シート分離制御部210は、第1駆動部203によって第1挟持搬送ローラ対201を矢印方向に回転速度Uで回転させる。また同時に、第2挟持搬送ローラ対202を停止、又は第2駆動部204によって第2挟持搬送ローラ対202を回転速度Uよりも遅く回転させることにより、撓みを減少させ、吸着部材200を矢印Au方向へ搬送させる。
つまり、この分離動作により、吸着部材200は、最上位シートSaをシートSaの先端から後述する図8に示す曲げ根本Pbまでの距離Lb、及びシートSaの積載時の先端から上方へ引き上げられた際の先端までの距離Lhだけ変形させる。これにより、最上位シートSaは下位シートSbから分離する位置(分離位置)に移動する。なお、本実施の形態では、シート分離制御部210は、この分離位置をシート厚検出手段53によって検出されたシート厚みに応じて変更している。詳細は後述する。
図6の(f)に示す再接近動作は、搬送動作の前に、吸着部材200を下方に撓ませることにより樽型形状に変形させ、分離動作により上方へ屈曲させられた最上位シートSaの屈曲角度を縮小させる動作である。この動作のとき、シート分離制御部210は、第1駆動部203によって第1挟持搬送ローラ対201を矢印方向に回転速度Uで回転させる。また同時に、第2駆動部204によって第2挟持搬送ローラ対202を矢印方向へ回転速度Uよりも速い回転速度2Uで回転させることにより、吸着部材200を矢印Ad方向へ搬送し、吸着部材200を樽型形状に変形させる。なお、本実施の形態では、シート分離制御部210は、この吸着部材200の変形量(移動量)をシート厚検出手段53によって検出されたシート厚みに応じて変更している。詳細は後述する。
図6の(g)に示す搬送動作は、再接近動作により撓んだ吸着部材200に吸着された最上位シートSaをシート給送下流のシート搬送手段である引き抜きローラ対51c,51dまで吸着給送させる動作である。この搬送動作の際、吸着部材200が樽型形状に変形しているので、吸着部材200により屈曲させられた最上位シートSaの屈曲角度θsは分離動作の時より縮小した状態となる。なお、このような位置(搬送位置)にあるときの最上位シートSaの状態は、屈曲角度θsが0で、且つ、吸着部材200に吸着された範囲で最上位シートSaが下位シートSbと接触しない状態が最も望ましい。
また、この動作のとき、シート分離制御部210は、第1挟持搬送ローラ対201及び第2挟持搬送ローラ対202をそれぞれ矢印方向に回転速度Uで回転させる。これにより、シートSaを吸着した吸着部材200は、吸着面側の形状を維持したまま搬送される。この結果、吸着部材200に吸着された最上位シートSaは、屈曲角度θsがほぼ0で、且つ、吸着部材200に吸着された範囲で下位シートSbと接触しない状態を保ちながら矢印A方向へ搬送される。もちろん、屈曲角度θsが0ではなく、また、吸着部材200に吸着されていない範囲で最上位シートSaが下位シートSbに接触した状態でも、後述するシート搬送時の騒音を低減させるという本発明の効果を得ることは可能である。
この後、最上位シートSaの先端が、第1挟持搬送内ローラ201aによって形成される吸着部材200の曲率部近傍に差し掛かると、最上位シートSaの先端が吸着部材200から剥離する。この剥離は、吸着部材200の曲率部によってシートSaに発生する曲げ反力が、吸着部材200に発生する静電吸着力よりも大きくなるために生ずる。言いかえれば、本実施の形態において、吸着部材200に発生する静電吸着力の大きさよりも、吸着部材200の曲率部によってシートSaに発生する曲げ反力が大きくなるように設定されている。つまり、この搬送動作により、吸着部材200は、最上位シートSaが離間する位置(離間位置)に移動する。
なお、このように先端が吸着部材200から剥離した後、最上位シートSaは、先端から剥離が拡大していくものの、シートSaのシート給送方向上流領域である後端領域は吸着部材200によって吸着されている。これにより、シートSaは、引き続き吸着部材200により搬送され、搬送ガイド51eに当接し、この後、搬送ガイド51eに沿って屈曲しながら移動し、引き抜きローラ対51c,51dに引き渡される。
この時、吸着部材200は、分離位置のときよりも、下方に撓んで樽型形状に変形しているので、吸着部材200と搬送ガイド51eによるシートSaの屈曲角度θgが縮小している。屈曲角度θgが小さいことは、吸着部材200からシートSaの後端領域が剥離することを防止するのに有効である。ただし、搬送位置でもシートSaの後端領域が屈曲により吸着部材200から剥離するような構成の場合には、吸着部材200と搬送ガイド51eによりシートSaが屈曲される前に、吸着部材200を搬送位置よりもさらに下方に弛ませても良い。
図6の(h)に示す待機動作は、吸着部材200を初期動作の位置に戻す動作である。この動作のとき、シート分離制御部210は、第1駆動部203によって第1挟持搬送ローラ対201を矢印方向に回転速度Uで回転させる。また同時に、第2挟持搬送ローラ対202を停止、又は第2駆動部204によって第2挟持搬送ローラ対202を回転速度Uよりも遅く回転させることにより、撓みを減少させ、吸着部材200を矢印Au方向へ搬送させる。以上の8つの工程によって、カセット51aに積載された複数のシートSから最上位シートSaが1枚だけ給送される。そして、この8つの工程を繰り返し行うことにより、シートSを1枚ずつ、連続して給送することが可能となる。
図7は、図6に示す初期動作、接近動作、接触面積増大動作、吸着動作、分離動作、再接近動作、搬送動作、待機動作のタイミングチャートである。なお、図7において、bは吸着部材200の弛み量、u1は第1挟持搬送ローラ対201の搬送速度、u2は第2挟持搬送ローラ対202の搬送速度である。また、vpは正電圧供給手段205aから供給される正電圧、vnは負電圧供給手段205bから供給される負電圧である。
図7において、(a)で示す時刻T0からT1までの区間は初期動作区間であり、このとき搬送速度u1及び搬送速度u2は0、供給電圧vpは+V、供給電圧vnは−Vに設定されている。また、吸着部材200の弛み量bは最少のB1となっている。なお、本実施の形態では、供給電圧vp、供給電圧vnは、シートSのすべての給送動作において+V、−Vであり、変化しない。
また、(b)で示す時刻T1からT2までの区間は接近動作区間である。このとき、搬送速度u1は0、搬送速度u2は速度Uに設定されており、この搬送速度差により、弛み量bは増大する。なお、速度Uは画像形成装置の生産性等を元にして決定される速度であり、本実施の形態ではU=200mm/sとしている。(c)で示す時刻T2からT3までの区間は接触面積増大動作区間であり、時刻T1から継続して搬送速度u1は0、搬送速度u2は速度Uに設定されており、この搬送速度差により弛み量bは増大し、最多のB3となる。(d)で示す時刻T3からT4までの区間は吸着動作区間であり、搬送速度u1及び搬送速度u2は0に設定されており、この場合、搬送速度差は発生しないので弛み量bもB3のまま一定である。
(e)で示す時刻T4からT5までの区間は分離動作区間であり、搬送速度u1はU、搬送速度u2は0に設定されており、この搬送速度差により弛み量bは減少し、B1となる。(f)で示す時刻T5からT6までの区間は再接近動作区間であり、搬送速度u1は速度U、搬送速度u2は速度2Uに設定されており、この搬送速度差により弛み量bは再度増大し、B2(B1<B2<B3)となる。なお、速度2Uも速度Uと同様、画像形成装置の生産性等を基にして決定される速度であり、本実施の形態では2U=400mm/sとしている。
(g)で示す時刻T6からT7までの区間は搬送動作区間であり、搬送速度u1及び搬送速度u2はUに設定され、弛み量bはB2のまま一定である。(h)で示す時刻T7からT8までの区間は待機動作区間であり、搬送速度u1は速度U、搬送速度u2は0に設定されており、この搬送速度差により弛み量bが減少し、B1となる。なお、(a)で示す時刻T8からT9までは再び初期動作区間であり、次のシートSの給送に備える。この後、上記動作を繰り返すことにより、連続したシート給送が行われる。
なお、本実施の形態では、初期動作では、第1駆動部203及び第2駆動部204を停止させているが、両者を同一速度で駆動させて、シートSに対して吸着部材200を所定の空隙を以て離間させていても良い。また、接近動作及び接触面積増大動作では、第2挟持搬送ローラ対202と第1挟持搬送ローラ対201との搬送速度差によって、シートSに対して吸着部材200を接近させ、接触面積を増大させている。しかし、第1駆動部203を逆回転動作、第2駆動部204を停止させることでシートSに対して吸着部材200を接近させ、接触面積を増大させても良い。
また、吸着動作では、第1駆動部203及び第2駆動部204を停止させているが、最上位シートと吸着部材200とが所定のシート接触面積Mnで面接触していれば、第1駆動部203及び第2駆動部204は動作していても良い。また、本実施の形態では、上記それぞれの動作工程において、吸着部材200には正電圧供給手段205a及び負電圧供給手段205bが接続され、常に吸着力を発生させていたが、これに限定するものではない。例えば、吸着動作、分離動作及び搬送動作の3工程のみ、正電圧供給手段205a及び負電圧供給手段205bを接続させて吸着力を発生させても良い。
次に、図8を用いて、本発明に係るシートSの分離のメカニズムについて説明する。図8はシート給送装置51の分離位置におけるシートSa,Sbに働く力を表した模式図である。既述したように、本実施の形態のシート給送装置51においては、シート同士の分離の際に吸着部材200にシートSaを静電気により吸着した後、吸着部材200を弾性変形させながら上方に引き上げるようにしている。
ここで、最上位のシートSaは静電吸着力Feによって上方に引き上げられるが、分離対象である積載次位のシートSbにも端部バリやシート帯電等に起因する積載最上位シートSaとの付着力Fa及びシートSb自体のコシ(剛度)による分離力Fdが働く。本実施の形態においては、積載次位のシートSbが積載最上位のシートSaと共に上方に引き上げられない条件、すなわちシート同士の分離が成立する条件は、下記の式(1)で表される。
Fd>Fa (1)
また、シートSbの分離力Fdは単純梁モデルで近似化すれば下記の式(2)で表現される。ただし、EはシートSbのヤング率、Iは断面二次モーメントである。
Fd=3EI/Lb3×Lh (2)
式(1)を成立させるためには、すなわち最上位のシートSaを次位のシートSbから分離させるためには、Lb(曲げ長さ)、Lh(曲げ高さ)を適切に設定し、シートSbの分離力Fdが、想定される付着力Faを超えるように調整すれば良い。しかし、吸着部材200に吸着されているとき、シートSbの分離力Fdと同等の力が最上位シートSaにも働いている。分離力Fdは静電吸着力Feに抗する力であるため、分離力Fdを過大に調整した場合には最上位シートSaが吸着部材200から剥離する吸着剥がれが発生し、ミスフィードが発生する可能性がある。
発明者の研究によれば、給送対象であるシートSが用紙である場合、ヤング率Eと断面二次モーメントIの積に相当する剛度は、用紙厚もしくは坪量の3乗に略比例することがわかった。よって、式(2)によれば、シートSbの分離力Fdも用紙厚もしくは坪量の3乗に略比例することになる。ここで、本実施の形態では、給送対象のシートSとして60〜160g/m2の坪量の用紙を想定している。そして、このような用紙を給送する場合、シートSbの分離力Fdの最大最小比は、用紙坪量起因のみで20倍程度と大きい値となっている。
そこで、本発明では、様々な坪量(剛性)のシートSにおいて想定される付着力Faを超えつつ、吸着剥がれを防止するように、シートSの厚みに応じてLb又はLhを変更し、分離力Fdをシートの分離が可能な略一定の大きさに保つようにしている。具体的には、シート厚検出手段53によってシートSの厚みを検出した後、シート分離制御部210は、吸着部材200によりシートを分離する分離位置を、シートSの厚みに応じた所望の分離位置に変更するようにしている。
なお、静電吸着力Feが十分に大きい場合、すなわち静電吸着力Feが、想定される付着力Faを超えて設定され、なおかつ給送対象としているシートSの坪量範囲において変化する分離力Fdを上回る大きさで設定可能な場合がある。この場合においても、シートSの吸着剥がれを防止することはできるが、一般的に静電吸着力Feを大きくすることは安全性や装置サイズの観点から容易ではなく、その点で本発明の構成は優位である。
次に、図9〜図11を用いて、本発明に係るシート分離制御部210による吸着部材200の分離位置変更方法を説明する。図9はシート分離制御部210のフローチャート、図10は分離動作時の駆動手段のタイミングチャート、図11は吸着部材200の分離位置が変更された場合の模式図である。
既述した図5に示すように、制御部70のサブシステムとしてシート分離制御部210には、制御部70の内部にてシート厚検出手段53、第1駆動部203及び第2駆動部204が電気的に接続されている。そして、シート分離制御部210が分離位置の変更を行う際には、まず図9に示すようにシート厚検出手段53からシートSの厚みStを取得する(S101)。次に、シート分離制御部210の記憶領域に記憶されたテーブルMt1を用いて、図10の(e’)に示す斜線部面積である、分離動作区間における第1駆動部203と第2駆動部204との搬送量差設定量Uadiffを算出する。なお、分離位置の変更に伴い、テーブルMt2を用いて図10の(f’)に示す斜線部面積である、再接近動作区間における第1駆動部203と第2駆動部204との搬送量差設定量Ubdiffを算出する(S102)。
次に、シート分離制御部210は、算出された搬送量差設定量Uadiffの値に基づいて第1駆動部203の回転速度Ua1、第2駆動部204の回転速度Ua2及び分離動作区間長ΔTa(=T5−T4)を決定する。また、算出された搬送量差設定量Ubdiffの値に基づいて第1駆動部203の回転速度Ub1、第2駆動部204の回転速度Ub2及び再接近動作区間長ΔTb(=T6−T5)を決定する(S103)。そして、ステップS103にて決定された値に基づいて第1駆動部203及び第2駆動部204に対して速度指令パルス列を出力する(S104)。
以上の工程を経ることによって、分離動作区間における吸着部材200の弛み形状、すなわち吸着部材200の弛み量が搬送量差設定量Uadiffに対応して変化し、このように吸着部材200の弛み形状が変化することにより分離位置が変更される。また、このように分離位置が変更された場合も、搬送量差設定量Ubdiffを変化した分離位置に対応させることにより、分離位置によらず、搬送位置を一定にすることができる。
ここで、搬送量差設定量Uadiffは、既述した図6の(d)で示す吸着部材200の吸着位置から図6の(e)で示す吸着部材200の分離位置までの、撓み減少量に相当する値である。そして、搬送量差設定量Uadiffを大きく設定した場合、分離動作の際、吸着部材200の撓み減少量が大きくなり、これに伴い吸着部材200の吸着面側は図11に示すP5−nのように略直線状に変形する。なお、この場合の曲げ高さはLhとなる。
また、搬送量差設定量Uadiffを小さく設定した場合は吸着部材200の撓み減少量が小さくなり、吸着部材200の吸着面側はAu方向へ変形されるものの、P5−hのように樽型形状に維持される。なお、この曲げ高さは、それまでの曲げ高さLhよりも低いLh’となる。
このように、吸着部材200の分離位置を変更させるため搬送量差設定量Uadiffの設定量を変化させた場合、曲げ高さLhが変化する。そして、シートSの厚みStが厚いほど、すなわちシートSのコシが強いほど、搬送量差設定量Uadiffを小さく設定して曲げ高さLhを低くするようにすれば、分離位置を変更した場合でも既述した図8に示す分離力Fdを略一定に保つことが可能となる。
一方、搬送量差設定量Ubdiffは、既述した図6の(e)に示す吸着部材200の分離位置から、既述した図6の(g)に示す吸着部材200の搬送位置までの、撓み増加量に相当する値である。そして、この搬送量差設定量Ubdiffは、分離位置にある吸着部材200が図6の(f)に示すように下位シートSbに接近し、且つ最上位シートSaの吸着部材200に吸着された部分が下位シートSbと接触しないように設定する必要がある。また、搬送量差設定量Ubdiffは、分離位置によらず搬送位置が一定となるように設定する必要がある。このため、本実施の形態において、搬送量差設定量Ubdiffは、Uadiff>Ubdiff>0の範囲で、Uadiff−Ubdiffが一定となるように設定されている。
次に、図12を用いてシートSの厚みStから駆動手段の搬送量差設定量Uadiffを求める方法を説明する。図12はシート分離制御部210の記憶領域に記憶されたテーブルMt1を表した模式図である。本実施の形態では、テーブルMt1として搬送量差設定量UadiffをシートSの厚みStの関数として表現した関数式を記憶している。なお、シートSの厚みStから駆動手段の搬送量差設定量Ubdiffを求める場合も、搬送量差設定量Uadiffを求める場合と同様、シートSの厚みStの関数として表現した関数式を記憶したテーブルMt2を用いる。
関数式を求める手順としては、まず、種々のシートSの厚みStを事前に測定する。またそれらシートSを用いた際に、分離力Fdが所望の値になるような搬送量差設定量Uadiffも事前にそれぞれ測定する。シートSの厚みSt、及び搬送量差設定量Uadiffの両者の関係を多項式で最小二乗近似し、関数化している。筆者らの研究によれば、搬送量差設定量UadiffをシートSの厚みStの3乗に逆比例する関数で表現すると実験値とほぼ一致することが分かっており、本実施の形態においてもこのような関数を採用している。
しかし、本発明はこれに限定されるものではなく、例えば、種々の制約により簡素化された関数式を用いた場合でも本発明の趣旨を阻害するものではない。また、テーブルMt1の形態として必ずしも関数式でなくともよい。例えば、事前にシートSの厚みStとそれに対応する搬送量差設定量Uadiffとの組を複数記憶してリスト化しておく。検出したシートSの厚みStとリストを照合して、記憶された最近傍のシートSの厚みStに対応する搬送量差設定量Uadiffを読み出すことで代用しても良い。
次に、図13を用いてシート分離制御部210によって吸着部材200の分離位置が変更されるタイミングを説明する。図13は印字ジョブが投入されてからシート分離制御部210が動作するまでに至るフローチャートを示している。
まず、シート分離制御部210は、印字ジョブが投入されると(S201)、前回の印字ジョブの後にカセット51aの開閉が行われたかを、カセット51aの近傍に配置されたカセット開閉検出センサ(不図示)にて検出する(S202)。開閉検出の結果、カセット51aの開閉が行われていた場合は(S202のY)、搬送量差設定量Uadiffを工場出荷値に設定した状態で、すなわち分離位置を標準分離位置に設定した状態で1枚目のシートSの給送を行う(S203)。なお、本実施の形態では工場出荷値として、対応する最厚のシートSでも剥がれが発生せずに給送を行うことが可能な最小の搬送量差設定量Uadiff_minを設定している。
ステップS203の後、給送されたシートSがシート厚検出手段53の検出領域に到達すると、シート厚検出手段53によってシートSの厚みStが検出される(S204)。シートSの厚みStが検出されると、既述したようにシート分離制御部210によって吸着部材200の分離位置及び搬送位置がシートの厚さに応じて変更される。なお、この際の変更パラメータUa1,Ub1,Ua2,Ub2、ΔTa、ΔTbをシート分離制御部210に内蔵された不図示の記憶領域に保存する(S205)。そして、ジョブの2枚目以降の給送の際、すなわち以降のジョブを、S205で保存されたパラメータに基づき更新した分離位置及び搬送位置にて実行する(S206)。
なお、カセット開閉検出センサの開閉検出の結果、カセット51aの開閉が行われていなかった場合は(S202のN)、シート分離制御部210は分離位置情報及び搬送位置情報(Ua1,Ub1,Ua2,Ub2,ΔTa,ΔTb)を読み出す(S207)。そして、読み出された分離位置情報及び搬送位置情報に基づき、以降のジョブを、更新した分離位置及び搬送位置にて実行する(S208)。
以上説明したように、本実施の形態では、吸着されたシートを搬送する際、吸着部材200を、吸着部材200が分離位置に位置しているときよりも最上位シートが次給送シートに接近した状態で搬送する搬送位置に移動させるようにしている。そして、このように構成することにより、吸着されたシートの吸着部分と次給送シートとが接触せず、且つ吸着されたシートの屈曲が縮小して吸着されたシートの後端と次給送シートとの接触圧が低下する。これにより、シートを搬送する際の摺擦音を大幅に低減することができ、低騒音でシートを分離搬送することができる。
なお、本実施の形態では、既述したような構成にて吸着部材200とシートSとの間に静電吸着力を生じさせたが、本実施の形態はこれに限定されるものではない。例えば、正電極200a及び負電極200bは櫛歯形状で無くとも良く、シートSとの間に電界が形成され、シートSを誘電分極させることができる一様電極のような形状でも良い。
ところで、これまでは連続してシート給送を行なう際、シートの搬送が完了した後、初期動作を行なう場合について説明したが、本発明は、これに限らず、シートの搬送が完了した後に、初期動作を行なわずに接近動作を行なうようにしても良い。
次に、このような本発明の第2の実施の形態について説明する。図14は、本実施の形態に係るシート給送装置に設けられたシート吸着分離給送部のシート分離給送時のタイミングチャートである。ここで、図14において、(a)から(g)で示す時刻T0からT7の区間は、既述した図7で示す区間と同一であり、動作も同一である。(h)で示す時刻T7からT8までの区間は、接近動作、接触面積増大動作区間であり、この時搬送速度u1は0、搬送速度u2はUに設定される。この時、弛み量bは増大し、B3となる。なお、(d’)で示す時刻T8からT9までは再吸着動作区間であり、次のシートSの給送に備える。この後、上記動作を繰り返すことにより、連続したシート分離給送が行なわれる。
このように、本実施の形態では、図14の(a)〜(g)に示す初期動作、接近動作、接触面積増大動作、吸着動作、分離動作、再接近動作、搬送動作を行なった後、(h)に示す接近動作及び接触面積増大動作を行ない、次のシートの分離給送動作を開始する。つまり、連続してシート給送を行なう場合には、搬送動作でシートの搬送が完了した後に、待機動作及び初期動作を行なうことなく、接近動作及び接触面積増大動作を行なうようにしている。そして、このように初期動作及び待機動作の2工程を削減することにより、生産性を向上させることができる。
ところで、これまで説明した第1及び第2実施の形態では、吸着部材200そのものの弾性変形によってシートSの吸着分離を行うシート給送装置について説明したが、本発明は、これに限らない。例えば、吸着部材を昇降させてシートを吸着させる構成のシート給送装置にも適用することができる。
次に、このような吸着部材を昇降させてシートを吸着させる構成の本発明の第3の実施の形態について説明する。図15は、本実施の形態に係るシート給送装置の構成を説明する図である。なお、図15において、既述した図2と同一符号は、同一又は相当部分を示している。
本実施の形態において、図15に示すように、無端形状の吸着部材221は、第1の回転体である第2搬送ローラ223及び第2の回転体である第1搬送ローラ222に巻き掛けられている。この吸着部材221の周長は、概ね[第1搬送ローラ222及び第2搬送ローラ223の回転中心間距離の2倍+各ローラ222,223の円周面の長さの半分]となっている。
ここで、第2搬送ローラ223は第2駆動部204により駆動される。また、第2搬送ローラ223は、第2搬送ローラ223の回転軸223aに回動可能に軸支された給送部フレーム224に回転可能に支持されている。なお、第1搬送ローラ222の不図示の軸支持部材には張力バネ227が接続されており、この張力バネ227により、第1搬送ローラ222は第2搬送ローラ223から離間する方向に付勢される。これにより、第1搬送ローラ222及び第2搬送ローラ223に巻き掛けられている吸着部材221には、張力バネ227により張力が付与される。
給送部フレーム224の上面には第2搬送ローラ223の回転軸223aを中心とするギア部224aが設けられており、このギア部224aにはシート給送装置本体側に設けられ、第3駆動部226により回転するギア225と噛み合っている。なお、この第3駆動部226は正逆転可能となっている。そして、第3駆動部226の正逆転によりギア225が回転すると、第2搬送ローラ223の回転軸223aを中心として給送部フレーム224が上下方向に回動する。このように、本実施の形態においては、昇降手段である第3駆動部226によって給送部フレーム224を上下方向に回動させることにより、カセット51aに収納されたシートSに対して、吸着部材221を接離させている。
なお、カセット51aの側方には、給送部フレーム224が下方回動した際、吸着部材221がカセット51aに収納されたシートSの最上位のシートSaの吸着が可能な吸着位置に達したことを検知するための吸着位置検知手段228が設けられている。なお、本実施の形態において、この吸着位置検知手段228は、圧力が付与されると電気抵抗値が変化するような圧電素子であり、吸着位置検知手段228は吸着部材221が接触すると、検知信号を出力する。また、本実施の形態において、引き抜きローラ対51c,51dは、シート吸着分離給送部51bのシート搬送方向下流に配置されている。
次に、図16を用いてシート給送装置51の制御部の構成を説明する。図16は、本実施の形態に係るシート給送装置51の制御ブロック図である。なお、図16において、既述した図5と同一符号は、同一又は相当部分を示している。制御部75には、既述した昇降手段301、正電圧供給手段205a、負電圧供給手段205b、シート面高さ検出手段302、タイマ71等が接続される。
また、制御部75にはサブシステムとしてシート分離制御部215が内蔵されており、このシート分離制御部215には、第2駆動部204、第3駆動部226及び吸着位置検知手段228が接続されている。そして、このシート分離制御部215は、吸着位置検知手段228からの検知信号に基づいて第2駆動部204及び第3駆動部226に対して、駆動指令パルス列を送信する。シート分離制御部215の制御の詳細に関しては後述する。
次に、図17を用いてシート吸着分離給送部51bのシート分離給送動作について説明する。なお、図17は、シート吸着分離給送部51bによってシートSが給送される動作を時系列に表現した模式図である。シートSの給送動作は、時系列順に、図17の(a)〜(g)に示す初期動作、接近動作、吸着動作、分離動作、再接近動作、搬送動作、待機動作の7つの工程によって構成されている。以下、これらを順に説明する。なお、本実施の形態では、上記それぞれの動作工程おいて、吸着部材221には正電圧供給手段205a及び負電圧供給手段205bが接続され、常に吸着力が発生している。
図17の(a)に示す初期動作は、吸着部材221を給送動作初期位置(待機位置)で待機させる動作である。本実施の形態では、この初期動作のとき、シート分離制御部215は、最上位シートSaに対して第1搬送ローラ222の高さhがH3となるようにして離間させ、第2駆動部204及び第3駆動部226を停止させる。
図17の(b)に示す接近動作は、吸着部材221を下方に移動させることにより、吸着部材221を最上位シートSaに接近させる動作である。この動作のとき、シート分離制御部215は、第2駆動部204を停止させたまま第3駆動部226によってギア225を矢印x方向へ角速度Ωで回転させる。そして、吸着部材221と最上位シートSaとが接触し、吸着位置検知手段228が吸着部材221を検知したら、第3駆動部226を停止させる。
図17の(c)に示す吸着動作は、最上位シートSaの上面と吸着部材221の表面とが面接触した状態(吸着位置)で、最上位シートSaを吸着部材221に吸着させる動作である。このとき、第1搬送ローラ222の高さhは、最上位シートSaよりも低いH1となっている。ここで、最上位シートSaと吸着部材221とが接触すると、既述したように、吸着部材221には正及び負電圧供給手段205a,205bを介して電圧が印加されているため、吸着部材221とシートSとの間には静電吸着力が働く。そして、吸着部材221に最上位シートSaが吸着される。
図17の(d)に示す分離動作は、吸着部材221に吸着された最上位シートSaを吸着部材221により上方に屈曲させながら下位シートSbから分離させる動作である。この動作のとき、シート分離制御部215は、第2駆動部204を停止させたまま、第3駆動部226を逆転させてギア225を矢印y方向に角速度Ωで回転させる。この結果、第1搬送ローラ222が上昇し、吸着部材221も上昇する。そして、吸着部材221を上昇させることにより、最上位シートSaをシートSaの先端から既述した図8に示す曲げ根本Pbまでの距離Lb(曲げ長さ)、シートSaの積載時先端から上方へ引き上げられた際の先端までの距離Lh(曲げ高さ)だけ変形させる。これにより、最上位シートSaは下位シートSbから分離する位置(分離位置)に移動する。なお、このとき、第1搬送ローラ222の高さhは、待機位置のときの高さhと同じH3となっている。
図17の(e)に示す再接近動作は、接近動作と同様にして、吸着部材221を下方に移動させることで、分離動作により上方へ屈曲させられた最上位シートSaの屈曲角度を縮小させる動作である。この動作のとき、シート分離制御部215は、第3の駆動部226を正転させてギア225を矢印x方向へ角速度Ωで回転させる。そして、この再接近動作により、吸着部材221は、吸着した最上位シートSaを引き抜きローラ対51c,51dのニップ部に確実に搬送できる位置に移動する。
図17の(f)に示す搬送動作は、吸着部材221に吸着された最上位シートSaを引き抜きローラ対51c,51dまで吸着給送させる動作である。この搬送動作の際、吸着部材221により屈曲されられた最上位シートSaの屈曲角度は分離動作の時より縮小した状態となる。なお、このような位置(搬送位置)にあるとき、第1搬送ローラ222の高さhはH2(H1<H2<H3)となっている。また、この時、屈曲角度θsは0で、且つ、吸着部材200に吸着された範囲で最上位シートSaが下位シートSbと接触しない状態が最も望ましい。
そして、この動作のとき、シート分離制御部215は、第3駆動部226を停止させたまま、第2駆動部204を駆動し、第2搬送ローラ223を矢印方向に回転速度Uで回転させる。これにより、吸着部材221に吸着された最上位シートSaは、屈曲角度θsがほぼ0で、且つ、吸着部材221に吸着された範囲で下位シートSbと接触しない状態を保ちながら矢印A方向へ搬送される。もちろん、屈曲角度θsが0ではなく、また、吸着部材221に吸着されていない範囲で最上位シートSaが下位シートに接触した状態でも、本発明の効果を得ることは可能である。
図17の(g)に示す待機動作は、吸着部材221を初期動作の位置に戻す動作である。この動作のとき、シート分離制御部215は、第2駆動部204を停止させたまま、第3駆動部226を逆転させてギア225を矢印y方向に角速度Ωで回転させる。以上の7つの工程によって、カセット51aに積載された複数のシートSから最上位シートSaが1枚だけ給送される。そして、この7つの工程を繰り返し行うことにより、シートSを1枚ずつ、連続して給送することが可能となる。
図18は、図17に示す初期動作、接近動作、吸着動作、分離動作、再接近動作、搬送動作、待機動作のタイミングチャートである。なお、図18において、hは最上位シートSaに対する第1搬送ローラ222の高さ、u2は第2搬送ローラ223の搬送速度、ω1は給送部フレーム224の第2搬送ローラ223の回転軸周りの角速度である。また、vpは正電圧供給手段205aから供給される正電圧、vnは負電圧供給手段205bから供給される負電圧である。
図18において、(a)で示す時刻T0からT1までの区間は初期動作区間であり、このとき搬送速度u2及び角速度ω1は0、供給電圧vpは+V、供給電圧vnは−Vに設定されている。この時、高さhはH3となっている。なお、本実施の形態では、供給電圧vp、供給電圧vnは、シートSのすべての給送動作において+V、−Vであり、変化しない。
また、(b)で示す時刻T1からT2までの区間は接近動作区間であり、このとき搬送速度u2は0、角速度ω1はΩに設定されており、これにより高さhは減少する。なお、角速度Ωは画像形成装置の生産性等を元にして決定される速度であり、本実施の形態ではΩ=2πrad/sとしている。(c)で示す時刻T2からT3までの区間は吸着動作区間であり、搬送速度u2及び角速度ω1は0に設定され、高さhはH1である。
(d)で示す時刻T3からT4までの区間は分離動作区間であり、搬送速度u2は0、角速度ω1は−Ωに設定されており、これにより高さhは増大し、高さhはH3となる。(e)で示す時刻T4からT5までの区間は再接近動作区間であり、搬送速度u2はU、角速度ω1はΩに設定されており、これにより高さhは減少する。(f)で示す時刻T5からT6までの区間は搬送動作区間であり、搬送速度u2はU、角速度ω1は0に設定されており、高さhはH2となる。なお、速度Uは画像形成装置の生産性等を元にして決定される速度であり、本実施の形態ではU=200mm/sとしている。
(g)で示す時刻T6からT7までの区間は待機動作区間であり、搬送速度u2は0、角速度ω1は−Ωに設定されており、これにより高さhは増大し、H3となる。この後、上記動作を繰り返すことにより、連続したシート給送が行われる。
以上が、本実施の形態に係るシート給送装置51の、引き抜きローラ対51c,51dがシート吸着分離給送部51bのシート搬送方向下流に配置されている場合のシート給送動作である。ところで、本実施の形態に係るシート給送装置51において、引き抜きローラ対51c,51dを、既述した図15において破線で示すようにシート吸着分離給送部51bの斜め上方に設けるように構成しても良い。この構成の場合、既述した第1及び第2の実施の形態と同様、分離したシートは搬送ガイド51eに当接した後、搬送ガイド51eに沿って屈曲しながら引き抜きローラ対51c,51dに引き渡される。
なお、吸着したシートを搬送する前に、既述したように第1搬送ローラ222を下降させて吸着部材221を、シートの吸着部分が次給送シートに対して分離位置よりも接近した状態で搬送する搬送位置に移動させる。ここで、この再接近動作の際、シート分離制御部215は、シートの剛性に応じた第1搬送ローラ222の下降量を求めるためのテーブルと、シートの剛性に基づき、角速度Ω及び駆動時間を決定し、第1搬送ローラ222の下降量を設定する。
これにより、吸着されたシートの吸着部分と次給送シートとが接触せず、且つ吸着されたシートの屈曲が縮小して吸着されたシートの後端と次給送シートとの接触圧が低下する。この結果、シートの剛性にかかわらず、シートを搬送する際の摺擦音を大幅に低減することができ、低騒音でシートを分離搬送することができる。
なお、既述した第1、第2の実施の形態及び引き抜きローラ対をシート吸着分離給送部の斜め上方に設けるように構成した第3の実施の形態では、同じ剛性のシートを連続して搬送する場合について説明した。しかし、これら各実施の形態に係るシート給送装置において、カセットに異なる剛性のシートが収納され、この異なる剛性のシートを連続して搬送する場合がある。この場合には、第1の剛性を有するシートを第1の搬送位置で搬送し、第2の剛性を有するシートを搬送する場合は、第2の搬送位置でシートを搬送するようにすることにより、異なる剛性を有するシートを連続して搬送することができる。つまり、第1の剛性を有するシートを搬送する場合は、吸着部材を第1の搬送位置、第2の剛性を有するシートを搬送する場合は、吸着部材を第2の搬送位置に移動させるようにすることにより、異なる剛性を有するシートを連続して搬送することができる。