JP6478697B2 - 高結晶化速度を有する微生物ポリエステル共重合体及びその製造法 - Google Patents

高結晶化速度を有する微生物ポリエステル共重合体及びその製造法 Download PDF

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Description

本発明は、3-ヒドロキシブタン酸単位と3-ヒドロキシ-2-メチルブタン酸単位とから実質的に成るポリヒドロキシアルカン酸共重合体、及びその製造法に関する。
ポリヒドロキシアルカン酸(PHA)は微生物が細胞内に蓄積するバイオポリエステルである。近年では、生分解性プラスチック素材としてのみならず、バイオマス由来のプラスチック素材として注目されている。
ポリエステルの加工工程において、ポリエステルの結晶化速度の高さは加工時間の短縮につながるため、非常に重要である。
最も一般的なPHAである、(R)-3-ヒドロキシブタン酸(3HB)を構成単位とするホモポリマー(以下、「P(3HB)」)は、高結晶性であるために硬くて脆く、実用性に乏しい。また、溶融温度(180℃)と熱分解温度(約200℃)とが近いために、溶融時にポリマーが低分子量化してしまうなど成型加工時の劣化が問題となり、工業生産には向いていない。この物性を改善する手段の一つとして、3HBと他のモノマーとの共重合体化が提案されている。
これまでに、3HBと様々なモノマーとを組み合わせたPHAについて検討されてきた。例えば、3HBと(R)-3-ヒドロキシヘキサン酸(3HHx)とからなる共重合体(以下、「P(3HB-co-3HHx)」)は、近年、工業生産が検討されている(非特許文献1)。しかしながら、P(3HB-co-3HHx)は、3HHx分率の増加に伴い溶融温度が低下するものの、これに伴って結晶化度及び結晶化速度も低下し、成形加工時における生産性が低い(非特許文献2)。また、3HBと4-ヒドロキシブタン酸(4HB)との共重合体(以下、「P(3HB-co-4HB)」)、β-3HBとβ-3-ヒドロキシ吉草酸(3HV)との共重合体(以下、「P(3HB-co-3HV)」)も、それぞれ、第2成分である4HB、3HVの分率の増加に伴い、結晶化速度が低下することが報告されている(非特許文献3又は4)。
このように、3HBと組み合わせるモノマーが、β位側鎖を延長させたヒドロキシアルカン酸である場合には、そのβ位側鎖長が伸びるに従い、得られる共重合体の結晶化度及び結晶化速度が低下する傾向が見られた。
一方、α位に側鎖を持つ3-ヒドロキシ-2-メチルブタン酸(3H2MB)単位を含む共重合体も報告されているが、これは、活性汚泥に酢酸、プロピオン酸等を添加することによって得られたものであり、3H2MB、3HB、3HV、3H2MV(3-ヒドロキシ-2-メチル吉草酸)及び3HHxとからなる多元共重合体である(非特許文献5)。
Macromol. Biosci., 2004, 4, 238-242 Polymer 51 (2010) 4408-4418 J Mater Sci (2011) 46: 1281-1288 Journal of Material Science Letters 12 (1993) 1120-1121 Journal of Biotechnology, 147 (2010) 172-179
従って、本発明は、高い結晶化速度を有しながら低い温度で溶融する、いわゆる溶融加工性に優れた、新規なポリヒドロキシアルカン酸共重合体、及びその製造法を提供することを目的とする。以下、ポリヒドロキシアルカン酸を「PHA」、ポリヒドロキシアルカン酸共重合体を「PHA共重合体」と言うことがある。
本発明者らは、斯かる実状に鑑み鋭意検討した結果、炭素源と、3-ヒドロキシ-2-メチルブタン酸の前駆物質との存在下に、ポリヒドロキシアルカン酸重合酵素遺伝子が特定の微生物に導入された形質転換体を培養することにより、所望の性質を有する新規な共重合体である、3-ヒドロキシブタン酸(3HB)単位と3-ヒドロキシ-2-メチルブタン酸(3H2MB)単位とから成るポリヒドロキシアルカン酸共重合体(以下、「P(3HB-co-3H2MB)」)が効率よく得られることを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち、(1)本発明は、3-ヒドロキシブタン酸単位と3-ヒドロキシ-2-メチルブタン酸単位とから成るポリヒドロキシアルカン酸共重合体を提供する。
(2)本発明は、3-ヒドロキシブタン酸単位と3-ヒドロキシ-2-メチルブタン酸単位とから実質的に成る、(1)に記載のポリヒドロキシアルカン酸共重合体を提供する。
(3)本発明は、3-ヒドロキシ-2-メチルブタン酸単位のモル分率が、1モル%〜40モル%である、(1)に記載のポリヒドロキシアルカン酸共重合体を提供する。
(4)本発明は、3-ヒドロキシ-2-メチルブタン酸単位のモル分率が、1モル%〜37モル%未満である、(1)に記載のポリヒドロキシアルカン酸共重合体を提供する。
(5)本発明は、70℃での等温結晶化における半結晶化時間が1分未満であり、及び/又は、20℃/分の昇温速度での冷結晶化温度とガラス転移温度との差が54℃以下である、(1)〜(4)のいずれか1に記載のポリヒドロキシアルカン酸共重合体を提供する。
(6)本発明は、炭素源と、3-ヒドロキシ-2-メチルブタン酸の前駆物質との存在下に、大腸菌、ラルストニア属菌及びシュードモナス属菌から選ばれる微生物にポリヒドロキシアルカン酸重合酵素遺伝子が導入された形質転換体を培養し、得られた培養物から3-ヒドロキシブタン酸単位と3-ヒドロキシ-2-メチルブタン酸単位とから成るポリヒドロキシアルカン酸共重合体を採取することを特徴とする、ポリヒドロキシアルカン酸共重合体の製造法を提供する。
(7)本発明は、前記前駆物質が、チグリン酸、アンゲリカ酸、2-メチルブタン酸、3-ヒドロキシ-2-メチルブタン酸、イソロイシン、及びこれらの混合物から成る群より選ばれる、(6)に記載の製造法を提供する。
(8)本発明は、前記前駆物質がチグリン酸である、(6)に記載の製造法を提供する。
(9)本発明は、前記ポリヒドロキシアルカン酸重合酵素遺伝子が、シュードモナス・エスピー(Pseudomonas sp.)61-3株、シュードモナス・スツッツェリ(Pseudomonas stutzeri)、シュードモナス・エスピー A33、アロクロマティウム・ビノサム(Allochromatium vinosum)、バシルス・メガテリウム(Bacillus megaterium)、バシルス・セレウス(Bacillus cereus)、バシルス・エスピー(Bacillus sp.)INT005、ランプロシスティス・ロゼオペルシシナ(Lamprocystis roseopersicina)、ノカルディア・コラリナ(Nocardia corallina)、ロドバクター・シャエロイデス(Rhodobactor shaeroides)、ラルストニア・ユートロファ(Ralstonnia eutropha)、ロドコッカス・エスピー(Rhodococcus sp.)NCIMB 40126、チオカプサ・フェニギー(Thiocapsa pfennigii)、アエロモナス・キャビエ(Aeromonas caviae)、及びアエロモナス・ハイドロフィラ(Aeromonas hydrophila)から成る群より選ばれる微生物に由来する、(6)〜(8)のいずれか1に記載の製造法を提供する。
(10)本発明は、前記ポリヒドロキシ重合酵素遺伝子が、シュードモナス・エスピー(Pseudomonas sp.)61-3株、又はアエロモナス・キャビエ(Aeromonas caviae)に由来する、(9)に記載の製造法を提供する。
(11)本発明は、前記ポリヒドロキシアルカン酸重合酵素が、アエロモナス属微生物由来のポリヒドロキシアルカン酸結合タンパク質の、N末端から4番目のアスパラギン酸のアスパラギンへの置換を含む、(6)〜(10)のいずれか1に記載の製造法を提供する。
(12)本発明は、前記ポリヒドロキシアルカン酸重合酵素が、アエロモナス属微生物由来のポリヒドロキシアルカン酸重合酵素のN末端から149番目のアスパラギンのセリンへの置換、及び/又は171番目のアスパラギン酸のグリシンへの置換を含む、(6)〜(11)のいずれか1に記載の製造法を提供する。
(13)本発明は、前記炭素源が単糖類である、(6)〜(12)のいずれか1に記載の製造法を提供する。
本発明の製造法によれば、高い結晶化速度を有しながらも低い温度で溶融する、新規なポリヒドロキシアルカン酸共重合体が効率良く製造できる。
図1は、P(3HB-co-3H2MB)の生合成経路の代表例を示す図である。 図2は、3H2MB分率を7〜37モル%に変化させたP(3HB-co-3H2MB)の1H-NMRスペクトルである。 図3は、3H2MB分率を7〜37モル%に変化させたP(3HB-co-3H2MB)の13C-NMRスペクトルである。 図4の(A)は、本発明のP(3HB-co-3H2MB)中の3H2MB分率を7〜37モル%に変化させたP(3HB-co-3H2MB)のサーモグラム、及びP(3HB)(3HBのホモポリマー)のサーモグラムを示す。Macromol. Biosci. 2004, 4, 238-242に記載の、3HHx分率を0〜5.1モル%に変化させたP(3HB-co-3HHx)のサーモグラム(B)を比較として示す。(B)において、「WT」はラルストニア・ユートロファ(Ralstonia eutropha)由来のPHA合成酵素遺伝子欠損変異株(PHB-4株)に、アエロモナス・キャビエ(Aeromonas caviae)由来の野生型PHA重合酵素(PhaC)を組み込んだ組換え株を示し、「T1-40」、「E2-22」及び「E2-50」は、アエロモナス・キャビエ由来の変異型PhaCを組み込んだ組換え株を示す。各々のアミノ酸置換は、「T1-40」:D94V、「E2-22」:E365G、「E2-50」:N149Sである。
本発明の新規なポリヒドロキシアルカン酸共重合体は、3-ヒドロキシブタン酸単位と3-ヒドロキシ-2-メチルブタン酸単位とから成る共重合体(P(3HB-co-3H2MB))である。
Figure 0006478697
(但し、x及びyは繰り返し数であり、各々1〜20,000の整数を示す。)
3-ヒドロキシブタン酸及び3-ヒドロキシ-2-メチルブタン酸には不斉炭素(3HBのβ位炭素、3H2MBのα、β位炭素)が存在するが、本発明の共重合体は、各々のモノマー単位の異性体を任意に組み合わせた共重合体を含む。本発明の共重合体は、好ましくは、3-ヒドロキシブタン酸単位と3-ヒドロキシ-2-メチルブタン酸単位とから実質的に成る。本発明の共重合体中の3-ヒドロキシ-2-メチルブタン酸単位の割合は、好ましくは、下限値が例えば1、2、3、4、5、6、7モル%であり、上限値が例えば27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40モル%であり、これらの値を任意に組み合わせた範囲も好ましい。具体的には、本発明の共重合体中の3-ヒドロキシ-2-メチルブタン酸単位の割合は、1モル%〜40モル%であることが好ましく、1モル%〜37モル%未満であることがより好ましく、5モル%〜37モル%未満であることがより好ましく、7モル%〜37モル%未満であることがさらに好ましく、7モル%〜27モル%、7モル%〜28モル%、7モル%〜29モル%、7モル%〜30モル%、7モル%〜31モル%、7モル%〜32モル%、7モル%〜33モル%、7モル%〜34モル%、7モル%〜35モル%、又は7モル%〜36モル%であることが特に好ましい。3-ヒドロキシ-2-メチルブタン酸単位の割合が1モル%未満では、一般的に溶融温度が高くなりすぎ、そのため加工中に共重合体の分解を招き、一方、40モル%を超えると一般的に結晶化速度が低下する。
本発明の共重合体(P(3HB-co-3H2MB))は、ポリヒドロキシアルカン酸重合酵素遺伝子が特定の微生物に導入された形質転換体を、炭素源と、3-ヒドロキシ-2-メチルブタン酸の前駆物質との存在下に培養することにより製造できる。
図1に、本発明の共重合体の生合成経路の代表例を示す。後述するように、グルコースは炭素源の一例であり、チグリン酸は3H2MB前駆物質の一例である。グルコースはピルビン酸、次いでアセチル-CoAに変換された後、このアセチル-CoAはβ-ケトチオラーゼ(PhaA)により2量化(PhaA)され、アセトアセチルCoAレダクターゼ(PhaB)によって還元されて、3HB-CoAに変換される。一方、チグリン酸はチグリル-CoAに変換され、チグリル-CoAは、エノイルCoAヒドラターゼ(PhaJ)により3H2MB-CoAに変換される。各々の経路で供給されたモノマーはPHA重合酵素(PhaC)の基質として利用され、P(3HB-co-3H2MB)が合成される。
本発明の製造法に用いるポリヒドロキシアルカン酸重合酵素遺伝子が導入された形質転換体は、宿主中で目的の遺伝子を発現するための広宿主域ベクターに、ポリヒドロキシアルカン酸重合酵素遺伝子及び公知のモノマー供給遺伝子を挿入して得られるプラスミドを宿主細胞に導入することによって得られる。さらに、PHA重合酵素遺伝子の上流には、フェイシン(phasin)と呼ばれるタンパク質をコードする遺伝子が導入される(例えば、特開2013−42697号参照)。フェイシンは、細菌の細胞内でPHA顆粒に共局在することが知られており、PHA顆粒の形成、安定化などに関わると考えられている。
宿主中で目的の遺伝子を発現するための広宿主域ベクターとしては、プロモーター、リボゾーム結合部位、遺伝子クローニング部位、ターミネーター等を有する公知のベクターを用いることができる。例えば、移動能を有するmob領域を持つベクターpBBR1MCS-2、pJRD215及びpLA2917が挙げられる。
ポリヒドロキシアルカン酸重合酵素遺伝子としては、例えば、シュードモナス・エスピー(Pseudomonas sp.)61-3株、シュードモナス・スツッツェリ(Pseudomonas stutzeri)、シュードモナス・エスピー A33、アロクロマティウム・ビノサム(Allochromatium vinosum)、バシルス・メガテリウム(Bacillus megaterium)、バシルス・セレウス(Bacillus cereus)、バシルス・エスピー(Bacillus sp.)INT005、ランプロシスティス・ロゼオペルシシナ(Lamprocystis roseopersicina)、ノカルディア・コラリナ(Nocardia corallina)、ロドバクター・シャエロイデス(Rhodobactor shaeroides)、ラルストニア・ユートロファ(Ralstonnia eutropha)、ロドコッカス・エスピー(Rhodococcus sp.)NCIMB 40126、チオカプサ・フェニギー(Thiocapsa pfennigii)、アエロモナス・キャビエ(Aeromonas caviae)、及びアエロモナス・ハイドロフィラ(Aeromonas hydrophila)から選ばれる微生物に由来するものが挙げられる。これらの中で、Pseudomonas sp.61-3由来のポリヒドロキシアルカン酸重合酵素は、細胞内に共重合体P(3HB-co-3HA)(3HA:C4〜C12の(R)-3-ヒドロキシアルカン酸)を蓄積する能力を有し、Aeromonas caviae由来のポリヒドロキシアルカン酸重合酵素は、共重合体P(3HB-co-3HA)(3HA:C4〜C6の(R)-3-ヒドロキシアルカン酸)を蓄積する能力を有する点で、特に好ましい。
また、ポリヒドロキシアルカン酸重合酵素遺伝子としては、上記のPHA重合酵素の変異体をコードする遺伝子でもよい。このような変異体は、野生型のPHA重合酵素のアミノ酸配列において、1以上のアミノ酸が欠失、置換又は付加されてなるアミノ酸配列からなり、かつPHA重合活性を有するタンパク質である。かかる変異体を用いることにより、PHAの生産量が増加する。例えば、本発明に用いられるPHA重合酵素変異体としては、微生物由来のPHA重合酵素(PhaC)のN末端から149番目のアスパラギンからセリンへの置換、及び/又はPhaCの171番目のアスパラギン酸からグリシンへの置換を含む変異体が挙げられる。
フェイシンは、N末端から20番目までのアミノ酸領域において1以上のアミノ酸が欠失、置換又は付加されてなるアミノ酸配列を有する変異体も好ましく用いられる。例えば、フェイシンのN末端から4番目のアスパラギン酸をアスパラギンに置換してなる変異体が挙げられる(例えば、特開2013−42697号参照)。フェイシンの変異体は、同様にPHA生産性を向上させ、さらに、3H2MBの組成比を向上させる。
上記のPhaCの149番目のアミノ酸の置換、同酵素の171番目のアミノ酸の置換、及びフェイシンの4番目のアミノ酸の置換、のすべてを含む変異体も好ましい。
PHA重合酵素及びフェイシンが由来する微生物は、例えばアエロモナス属微生物であり、具体的にはアエロモナス・キャビエ(Aeromonas caviae)が挙げられる。
以下、PhaPの4番目のアスパラギン酸がアスパラギンに置換されてなるPHA結合タンパク質を「PhaPAc D4N」、PhaCの149番目のアスパラギンがセリンに、かつPhaCの171番目のアスパラギン酸がグリシンに置換されてなるPHA重合酵素の二重変異体を「PhaCAc NSDG」と表記することがある。
PhaPAc D4Nの製造法は、例えば、特開2013−42697号に開示され、PhaCAc NSDGの製造法は、例えば、Tsuge T, et al., FEMS Microbial Lett 277 (2007) 217-222に詳述されている。
公知のモノマー供給遺伝子としては、例えば、Ralstonia eutropha由来のphbA、phbB、phaB、phaB(Peoples, O.P. and Sinskey, A.J., J. Biol. Chem. 264: 15293-15297 (1989))、Aeromonas caviae由来のphaJ(Fukui, T. and Doi, Y., J. Bacteriol. 179: 4821-4830 (1997))等が挙げられる。
宿主としては、糖類や油脂類を炭素源として使用した場合の増殖性が良好で、菌株の安全性が高く、菌体と培養液との分離が比較的容易である点から、例えば、大腸菌、ラルストニア属菌、シュードモナス属菌等の微生物細胞が挙げられる。
3H2MBの前駆物質としては、脂肪酸又はその誘導体であればよく、例えば、チグリン酸、アンゲリカ酸、2-メチルブタン酸、3-ヒドロキシ-2-メチルブタン酸、イソロイシン、又はこれらの混合物が挙げられる。3H2MBの前駆物質の添加量は、約0.1〜約5.0g/Lの範囲が好ましく、約0.5〜約2.0g/Lの範囲がより好ましい。
炭素源としては、例えば、糖類、カルボン酸、油脂類等を用いることができる。糖類としては、グルコース、フルクトース、ガクトース、キシロース、アラビノース、サッカロース、マルトース、でんぷん、でんぷん加水分解物等が挙げられる。カルボン酸としては、酢酸、乳酸等が挙げられる。油脂類としては、植物油が好ましく、例えば大豆油、コーン油、綿実油、落花生油、ヤシ油、パーム油、パーム核油、又はこられの分別油、例えばパームWオレイン油(パーム油を2回無溶媒分別した低沸点画分)、パーム核油オレイン(パーム核油を1回無溶媒分別した低沸点画分)、又はこれらの油脂やその画分を化学的もしくは生化学的に処理した合成油、あるいはこれらの混合油が挙げられる。
培養温度は、菌の生育可能な温度、好ましくは15〜40℃、特に好ましくは20〜40℃、更に好ましくは28〜34℃である。培養時間は、特に限定されないが、例えばバッチ培養では1〜7日間が好ましく、また連続培養も可能である。培養培地は、本発明の宿主が利用できるものである限り特に限定されない。炭素源に加えて、窒素源、無機塩類、その他の有機栄養源等を含有する培地を使用することができる。
窒素源としては、例えばアンモニア、塩化アンモニウム、硫酸アンモニウム、リン酸水素二アンモニウム等のアンモニウム塩、ペプトン、肉エキス、酵母エキス等が挙げられる。
無機塩類としては、例えばリン酸第一カリウム、リン酸第二カリウム、リン酸水素マグネシウム、硫酸マグネシウム、塩化ナトリウム等が挙げられる。
その他の有機栄養源としては、例えばグリシン、アラニン、セリン、スレオニン、プロリン等のアミノ酸類;ビタミンB1、ビタミンB12、ビオチン、ニコチン酸アミド、パントテン酸、ビタミンC等のビタミン類などが挙げられる。
本発明のPHA共重合体の菌体からの回収は、例えば、次の方法によって行うことができる。培養終了後、遠心分離器等で培養液から菌体を分離し、その菌体を蒸留水、メタノール等により洗浄した後、乾燥させた後、この乾燥菌体から、クロロホルム等の有機溶媒を用いて共重合体を抽出する。次いで、この共重合体を含む有機溶媒溶液から、濾過等によって菌体成分を除去し、その濾液にメタノール、へキサン等の貧溶媒を加えて共重合体を沈殿させる。沈殿した共重合体から、濾過や遠心分離によって上澄み液を除去し、乾燥させ、共重合体を回収することができる。得られた共重合体の分析は、例えば、ガスクロマトグラフ法、核磁気共鳴法等により行うことができる。
従来のP(3HB-co-3HV)(Wang, Y. et al., Biomacromolecules 2001, 2, 1315)、P(3HB-co-3HHx)(Macromol. Biosci. 2004, 4, 238-242)などに代表されるPHA共重合体では、第2モノマーである3HV、3HHxの組成比の増加に伴い、冷結晶化温度(Tc)が高くなる傾向があったものの、本発明のP(3HB-co-3H2MB)は、第2モノマーである3H2MBの組成比が増加しても、冷結晶化温度が低下するという従来の共重合体とは異なる性質を有する。本発明のP(3HB-co-3H2MB)では、20℃/分の昇温速度での冷結晶化温度とガラス転移温度(Tg)との差([Tc−Tg]:結晶化指数)は、ホモポリマーP(3HB)の結晶化指数である54℃以下である。この事実から、3H2MBのα位のメチル基が結晶形成に影響を及ぼしていることが推測される。結晶化指数は、一般に、結晶を作りやすいか否かの指標であり、結晶化指数が小さいことは、結晶化能の向上を意味するが、結晶化速度のより直接的な指標は、半結晶化時間(T1/2)である。本発明のP(3HB-co-3H2MB)では、等温結晶化(70℃)における半結晶化時間は、P(3HB)とほぼ同等の1分以内である。
高い結晶化速度は、プラスチック材料としての加工時における大きな利点であり、本発明の共重合体が溶融加工性に優れていることを示すものである。
なお、従来の共重合体合成においては、第2モノマー組成比の増加に伴う結晶化速度の低下を補うために結晶核剤を添加するのが一般的であるが、本発明の方法では、結晶核剤の添加を必要としないか、又は結晶核剤を添加することにより更に結晶化速度を高くすることができる。
次に実施例を挙げて本発明を詳細に説明するが、本発明はこれら実施例に何ら限定されるものではない。
[材料及び調製方法]
(1)微生物
Escherichia coli LS5218(Spratt, S. et al., J. Bacteriol. 1981, 146, 1166)
(2)培地
(a)Lysogeny Broth(LB)培地
Bacto trypton 10 g、酵母エキス 5g、NaCl 10 gを脱イオン水1Lに溶かして、121℃で20分間オートクレーブして調製した。また、寒天培地は、上記成分に寒天 1.5〜2 %(vol/vol)となるよう加えオートクレーブ処理して調製した。抗生物質(カナマイシン:終濃度 50 μg/mL)は、液体培地、寒天培地ともにオートクレーブ処理後に添加した。
(b)M9培地
Na2HPO4・12H2O 17.1 g、KH2PO4 3 g、NH4Cl 0.5 g、NaCl 0.5 g、1M MgSO4 2 mL、1M CaCl2 0.1 mL、カナマイシン 50 mgを脱イオン水1Lに溶かして、121℃で20分間オートクレーブして調製した。
(3)プラスミド
(a)pBBR1phaPCJAc
プラスミドpBBR1phaPCJAcは、文献(Watanabe Y. et al., J. Biosci. Bioeng., 2012, 113, 286)に記載の方法によって作製したpBBR1phaPCJAcABReを制限酵素FseIで消化して得た10 kbの断片を、Mighty Cloning Reagent Set(Blunt End)(タカラバイオ株式会社製)で処理することによって得た。
(b)pBBREE32d13dPB P(D4N) NSDG
pBBREE32d13dPB P(D4N) NSDGは、pBBR1phaP(D4N)CJAcABRe D171Lを制限酵素KpnIとSgfIにより消化して得た1.2 kbの断片を、文献(Tsuge T. et al., FEMS Microbiol. Lett., 2007, 277, 217)に記載の方法によって、同酵素で消化することによって得たpBBREE32d13dPB NSDGベクターに挿入することにより作製した。
(c)pBBR1phaP(D4N)CJAcABRe NSDG、及びpBBR1phaP(D4N)CJAc NSDG
pBBR1phaP(D4N)CJAcABRe NSDG、及びpBBR1phaP(D4N)CJAc NSDGは、pBBREE32d13dPB P(D4N) NSDGを制限酵素KpnIとScaIで消化した際に生じた断片を、同酵素で消化して得たpBBR1phaPCJAcABRe、又はpBBR1phaPCJAcベクターに挿入することにより作製した。
(4)PHA共重合体の構造及び物性の分析法
(a)ガスクロマトグラフィー(GC)
菌体内のPHA共重合体含有率とその組成は、ガスクロマトグラフィーで決定した(Braunegg et al., 1978)。まず、得られた乾燥菌体を耐圧ガラス管に10〜15 mL秤量し、ここに硫酸メタノール溶液(硫酸:メタノール=15 vol%:85 vol%)2 mL及びクロロホルム2mLを加えて密栓し、100℃、140分間ヒートブロックで加熱しメタノール分解した。加熱中は約30分ごとにサンプルを撹拌した。その後、室温まで冷却し、純水1 mLを加えて激しく撹拌した。静置後、二層に分離した下層(クロロホルム層)をパスツールピペットで吸引し、0.45 μm径のMillex-FH PVDFフィルター(ミリポア社製)でろ過した。ろ過後のクロロホルム層500 μLに内部標準物質である0.1 vol%カプリル酸メチル500 μLを加え混合したものをサンプルとした。GC装置は島津製作所製のガスクロマトグラフGC14Bを用い、カラムにはGLサイエンス社製NEUTRA-BOND-1(内径30 m×0.25 mm、膜厚0.4 μm)を用いた。キャリアガスとしてHe及びN2を用い、成分の検出には水素炎イオン化検出器を用いた。
(b)PHA共重合体の抽出及び精製
PHA共重合体を蓄積させた乾燥菌体を100 mLの蓋付ガラス瓶に移し、100 mLのクロロホルムを加えスターラーで72時間攪拌した。撹拌後の溶液をNo.1濾紙(アドバンテック社製)でろ過し、ナス型フラスコに移し変えた。その後、ロータリーエバポレーターで完全に濾液を揮発させ、共重合体を析出させた。
ついで、析出したPHA共重合体を少量のメタノールで洗い取り、約20 mLのクロロホルムに完全に溶解させた後、400 mLのメタノールに少量ずつ滴下しながら撹拌を行い精製した。精製した共重合体をNo.1濾紙で回収し、48時間ドラフト中で乾燥させた。
(c)示差走査熱量(DSC)
DSCサンプルは、精製したPHA共重合体を約10 mg秤り取り、5 mL容のサンプルバイアルに入れ、約1〜2 mLのクロロホルムに完全に溶解した。これをドラフト中で約3週間乾燥させることによりキャストフィルムを作製した。このキャストフィルムから約3 mgを秤量し、専用アルミニウムパンに入れたものをDSC測定サンプルとした。測定には、パーキンエルマー社製のPyris 1 DSCを使用した。測定は20 mL/分の窒素雰囲気下で行った。対照には試料の入っていないアルミニウムパンを用いた。測定の条件として、初めに25℃〜200℃まで20℃/分の昇温速度で加熱し、200℃で1分間保持した後、-500℃/分で-120℃まで急冷した。次に、-120℃で1分間保持した後、20℃/分の昇温速度で200℃に加熱した。なお、キャストフィルムは3週間以上室温下に置き、結晶形成を進行させたものを使用した。また、等温結晶化実験は、まずサンプルを190℃で1分間溶融させ、-500℃/分で70℃に降温し、その後70℃で保持して結晶化の挙動を調べた。解析には、パーキンエルマー社製の解析ソフトData Analysisを用いた。測定した試料の融点Tm及び融解エンタルピーΔHmは、最初に昇温した時のサーモグラムより決定した。ガラス転移温度Tgは二回目に昇温した際の熱容量変化の中点とし、冷結晶化温度Tcはピークトップの温度とした。
(d)ガスクロマトグラフィー/マススペクトロメトリー(GC/MS)
PHA共重合体に含まれるモノマーの確認は、GC/MSにより行った。
<装置>
ガスクロマトグラフ質量分析計:GCMC-QC2010(島津製作所)
非極性キャピラリーカラム:InertCap 1, 30 m×0.25 mm(GLサイエンス)
検出器:質量分析計(MS)
イオン化源:電子衝撃イオン化法(EI)
分析ソフト:GC MS Solution(島津製作所)
<サンプル調製>
・メチルエステル化
ネジ口耐圧試験管にPHAを所定量秤量し、硫酸メタノール溶液2 mL及びクロロホルム2 mLを加え、100℃で140分間、数回攪拌しながら加熱した。反応終了後、室温まで冷却し超純水1 mLを加え激しく撹拌し、静置後下層をサンプルとした。
・トリメチルシリル化
メチルエステル化サンプル200 μLにジメチルホルムアミド300 μL、ビス(トリメチルシリル)トリフルオロアセトアミド100 μLを加え、70℃で30分間、数回攪拌しながら加熱した。反応終了後、室温まで冷却し超純水1 mL、ヘキサン1 mLを加え激しく撹拌し、静置後上層をサンプルとした。
<測定条件>
MSの質量数較正にはパーフルオロトリブチルアミンを用いた。
キャリアガスとしてヘリウムを用い、入り口圧は120 kPaした。
各装置の分析ラインの温度条件 GC:試料気化温度 280℃;カラム初期温度 100℃;カラム最終温度 280℃;カラム昇温速度 8℃/分;注入モード スプリット、GC-MS:イオン源温度 230℃;インターフェース温度 250℃;溶媒溶出時間 1.7分;検出器ゲイン 0.8kV。
(d)GPC(ゲル浸透クロマトグラフィー)
菌体から精製したPHA共重合体の数平均分子量(Mn)及び分子量分布(Mw/Mn)(Mw:重量平均分子量)をGPC測定によって求めた。標準物質としてポリスチレンを使用しているため、本発明で求めた分子量はポリスチレン換算相対分子量である。用いた5種類のポリスチレンの分子量は、3,790、30,300、219,000、756,000及び4,230,000である。
GPCサンプルは、精製したPHA共重合体を約1mg/mLとなるようにクロロホルムに溶解し、孔径0.45 μmのMillex-FH PVDFフィルター(ミリポア社製)を取り付けたシリンジでろ過して調製した。
GPC測定には島津製作所社製のLC-VPシリーズ(システムコントローラー:SCL-10AVP、オートインジェクター:SIL-10A VP、送液ユニット:LC-10AD VP、カラムオーブン:CTO-10A、ディテクター:RID-10A)を使用し、カラムにはShodex社製のK-806M及びK-802を用いた。移動層にはクロロホルムを用い、総液流量は0.8 mL/分、カラム温度は40℃に設定し、サンプル注入量は50 μLとした。データの解析にはCLASS-VP用GPC(島津製作所社製)を用いた。ポリスチレンスタンダードから検量線を引き、これとサンプルデータとを照合することによりポリスチレン換算分子量及び分子量分布を算出した。
(e)1H-NMR及び13C-NMR
PHA共重合体20 mgを1 mLのCDCl3に溶解し、測定サンプルとした。核磁気共鳴分光装置(日本分光LA500)を使用し、23℃で測定を行った。
実施例1
(1)P(3HB-co-3H2MB)の製造
P(3HB-co-3H2MB)は2段階培養によって製造した。LB寒天培地上に形成された組換え大腸菌E. coli LS5218の単一コロニーを、500 mL振とうフラスコに入った100 mLのLysogeny Broth(LB)培地に植菌し、37℃、130ストローク/分で、4時間培養した。この培養液を10分の遠心分離(5960 ×g、30℃)を行って上清を捨て、滅菌水で懸濁して、再度、同条件で遠心分離を行うことにより培地を除いた。菌体ペレットを滅菌水1 mLで懸濁し、これを10 g/Lのグルコースを含む100 mLの窒素制限M9培地に植菌し、500 mLの振とうフラスコで37℃、130ストローク/分で、72時間培養した。培養開始後0、24、48時間にチグリン酸を0.5又は1 g/Lずつ添加した。培養後、10分の遠心分離(5960 ×g、30℃)を行って菌体を回収し、水で洗浄後、凍結乾燥させた。乾燥菌体をクロロホルム中で72時間撹拌することにより、P(3HB-co-3H2MB)を溶出させた。溶出液をメタノールに再沈殿させた後に再びクロロホルムに溶解し、ヘキサンに再沈殿させることにより、精製P(3HB-co-3H2MB)を得た。
(2)結果
(i)GC
培養により得られた菌体についてGC測定を行った結果を表1に示す。結果は、3つ独立した培養物からの平均及び標準偏差である。
Figure 0006478697
この結果から、導入したプラスミドから3HB供給系遺伝子phaA及びphaBを削除することにより、ポリマー中の3H2MB分率が増加することがわかった。また、チグリン酸量の増加によっても、ポリマー中の3H2MB分率が上昇することが判明した。一方、3H2MB分率が増加するほど、乾燥菌体中のPHA分率が低下する傾向にあることも明らかとなった。
(ii)NMR
NMR測定の結果得られた1H NMRスペクトルを図2に、13C NMRスペクトルを図3に示す。
図2より、3HB由来のピーク及び3H2MB由来のピークを以下のように同定した。
3HB由来のピーク:
500 MHz 1H NMR (ppm, CDCl3): δ 1.3 (d, 3H), 2.4 (dd, 1H), 2.6 (dd, 1H), 5.3 (m, 1H)、125 MHz 13C NMR (ppm, CDCl3): 19.7 (CH3), 40.8 (CH2), 67.6 (CH), 169.1 (C)。
3H2MB由来のピーク:
500 MHz 1H NMR (ppm, CDCl3): δ 1.1 (d, 3H), 1.2 (d, 3H), 2.7 (m, 1H), 5.1 (m, 1H)、125 MHz 13C NMR (ppm, CDCl3): 12.2 (CH3), 16.4 (CH3), 44.3 (CH2), 71.3 (CH), 172.2 (C)。
1.7、0.9 ppmのピークは3-ヒドロキシアルカン酸(3HA)に由来すると考えられる。3HB、3H2MB、3HAの組成比をピーク(b)、(e)、(h)から算出した結果、表1のサンプル番号7は、3HB: 3H2MB: 3HAが92: 7: 1、サンプル番号5は、75: 23: 2、サンプル番号4は、60: 37: 3であった。
(iii)分子量
各サンプルの物性測定結果を表2に示す。Tg:ガラス転移点;Tc:冷結晶化温度;Tm:融点;ΔHm:結晶融解エンタルピー;T1/2:等温結晶化(70℃)における半結晶化時間;Mn:数平均分子量;Mw:重量平均分子量;Mw/Mn:多分散度。
Figure 0006478697
サンプル番号7、5及び4のサンプルでは、数平均分子量(Mn)と多分散度(Mw/ Mn)は、それぞれ、1300,000と3.1、96,000と6.4、90,000と4.5であった。サンプル番号7のサンプルは、他のサンプルと比較して分子量が大きく、サンプル番号5のサンプルとサンプル番号4のサンプルとでは分子量にほとんど差が見られなかったことから、3H2MB分率に従って変化するのではなく、モノマー供給酵素の構成がサンプル番号7のサンプルとその他のサンプルとで異なることが分子量の差に影響したものと考えられる。
(iv)熱物性
DSCによる熱分析の結果を表2及び図4の(A)に示した。
P(3HB-co-3H2MB)においては、3H2MB分率の増加(0 mol%から37 mol%)に伴い、融点(Tm)、ガラス転移温度(Tg)、融解エンタルピー(ΔHm)は、178℃から138℃、4℃から-1℃、97 J/gから17 J/gと、それぞれ降下又は減少することがわかった。一方、定速昇温(20℃/分)における冷結晶化温度(Tc)は3H2MB分率が7 mol%から23 mol%に増加すると、46℃から39℃へと降下したが、さらに37 mol%に増加すると、57℃まで上昇することが分かった。従来のP(3HB-co-3HV)共重合体やP(3HB-co-3HHx)共重合体においては、第二モノマー分率の上昇に伴い、融点(Tm)と結晶融解エンタルピー(ΔHm)が共に大きく降下又は減少する傾向にあった。例えば、P(3HB-co-35 mol% 3HV)においては、Tm、ΔHmがそれぞれ90℃、45 J/gとなる(Wang, Y. et a., Biomacromolecules 2001, 2, 1315)。しかし、P(3HB-co-3H2MB)では、融点(Tm)は比較的高く維持されている反面、結晶融解エンタルピー(ΔHm)は大きく減少しており、これらの傾向とは異なっていた。
また、従来の共重合体では第2モノマー分率の増加に伴い、冷結晶化温度(Tc)が高くなるところ(例えば、図4の(B))、本発明の共重合体では、3H2MB分率が23 mol%に増加しても冷結晶化温度が低下し、表2に示すように、冷結晶化温度とガラス転移温度との差は40℃であった。
さらに、表2に示すように、70℃での等温結晶化における半結晶化時間(T1/2)は、P(3HB)の0.83分とほぼ同等であり(0.88〜0.95分)、このポリマーの結晶化がP(3HB)と同等に速く進行することが分かった。P(3HB-co-3HV)の半結晶化時間と比較すると、3HVが18 mol%では、約16分となる(Avella, M. et al., Journal of Material Science Letters 1993, 12, 1120)。このことから、P(3HB-co-3H2MB)は、他の共重合体と比較して、高い結晶化速度を有すると言える。
このように、本発明のP(3HB-co-3H2MB)では、3H2MB分率の増加により、TmとΔHmを減少させつつも、半結晶化時間をほぼ維持できることがわかった。第2モノマーである3H2MBの導入により、これまでのPHA共重合体とは異なる新たな熱物性の傾向が示された。
本発明によれば、結晶化速度が低下することなく低い温度で溶融するPHA共重合体が効率良く製造でき、このようなPHA共重合体は優れた溶融加工性が期待でき、プラスチック材料等への応用が可能である。

Claims (11)

  1. 3-ヒドロキシブタン酸単位と3-ヒドロキシ-2-メチルブタン酸単位とから成るポリヒドロキシアルカン酸共重合体であって、3-ヒドロキシ-2-メチルブタン酸単位のモル分率が7モル%〜37モル%未満である、ポリヒドロキシアルカン酸共重合体
  2. 3-ヒドロキシブタン酸単位と3-ヒドロキシ-2-メチルブタン酸単位とから実質的に成るポリヒドロキシアルカン酸共重合体であって、3-ヒドロキシ-2-メチルブタン酸単位のモル分率が7モル%〜37モル%未満である、ポリヒドロキシアルカン酸共重合体
  3. 70℃での等温結晶化における半結晶化時間が1分未満であり、及び/又は、20℃/分の昇温速度での冷結晶化温度とガラス転移温度との差が54℃以下である、請求項1又は2に記載のポリヒドロキシアルカン酸共重合体。
  4. 炭素源と、3-ヒドロキシ-2-メチルブタン酸の前駆物質との存在下に、大腸菌、ラルストニア属菌及びシュードモナス属菌から選ばれる微生物にポリヒドロキシアルカン酸重合酵素遺伝子が導入された形質転換体を培養し、得られた培養物から3-ヒドロキシブタン酸単位と3-ヒドロキシ-2-メチルブタン酸単位とから成るポリヒドロキシアルカン酸共重合体を採取することを特徴とする、ポリヒドロキシアルカン酸共重合体の製造法。
  5. 前記前駆物質が、チグリン酸、アンゲリカ酸、2-メチルブタン酸、3-ヒドロキシ-2-メチルブタン酸、イソロイシン、及びこれらの混合物から成る群より選ばれる、請求項に記載の製造法。
  6. 前記前駆物質がチグリン酸である、請求項に記載の製造法。
  7. 前記ポリヒドロキシアルカン酸重合酵素遺伝子が、シュードモナス・エスピー(Pseudo
    monas sp.)61-3株、シュードモナス・スツッツェリ(Pseudomonas stutzeri)、シュードモナス・エスピー A33、アロクロマティウム・ビノサム(Allochromatium vinosum)、
    バシルス・メガテリウム(Bacillus megaterium)、バシルス・セレウス(Bacillus cere
    us)、バシルス・エスピー(Bacillus sp.)INT005、ランプロシスティス・ロゼオペルシシナ(Lamprocystis roseopersicina)、ノカルディア・コラリナ(Nocardia corallina
    )、ロドバクター・シャエロイデス(Rhodobactor shaeroides)、ラルストニア・ユートロファ(Ralstonnia eutropha)、ロドコッカス・エスピー(Rhodococcus sp.)NCIMB 40
    126、チオカプサ・フェニギー(Thiocapsa pfennigii)、アエロモナス・キャビエ(Aero
    monas caviae)、及びアエロモナス・ハイドロフィラ(Aeromonas hydrophila)から成る群より選ばれる微生物に由来する、請求項のいずれか1項に記載の製造法。
  8. 前記ポリヒドロキシアルカン酸重合酵素遺伝子が、シュードモナス・エスピー(Pseudomonas sp.)61-3株、又はアエロモナス・キャビエ(Aeromonas caviae)に由来する、請求項に記載の製造法。
  9. 前記ポリヒドロキシアルカン酸重合酵素が、アエロモナス属微生物由来のポリヒドロキシアルカン酸結合タンパク質の、N末端から4番目のアスパラギン酸のアスパラギンへの置換を含む、請求項のいずれか1項に記載の製造法。
  10. 前記ポリヒドロキシアルカン酸重合酵素が、アエロモナス属微生物由来のポリヒドロキシアルカン酸重合酵素のN末端から149番目のアスパラギンのセリンへの置換、及び/又は171番目のアスパラギン酸のグリシンへの置換を含む、請求項のいずれか1項に記載の製造法。
  11. 前記炭素源が単糖類である、請求項10のいずれか1項に記載の製造法。
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