JP6477968B2 - セラミックス積層体、セラミックス絶縁基板、及びセラミックス積層体の製造方法 - Google Patents
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Description
(1)基材層の一部、あるいは全面に、アルミナ相とジルコニア相とを含んでなる複合セラミックス層が被覆されたセラミックス積層体であって、前記複合セラミックス層と前記基材層との接合面に対して直交する任意の断面において、前記アルミナ相又は前記ジルコニア相のうちいずれかでなる第1相内に、該第1相よりも総面積率が小さい他方の前記ジルコニア相又は前記アルミナ相でなる第2相粒子が分散した組織を有し、前記断面内において円相当径が0.01μm以上の前記第2相粒子と空隙を計測した時、前記第2相粒子の円相当径の最大値が5μm以下であり、前記第2相粒子の円相当径の平均値が、0.02μm以上、0.3μm以下でなり、かつ前記第2相粒子を楕円と見立てたときの相当楕円の長径を短径で除した値の平均値が、2以上、10以下であり、空隙の面積率が5%以下であることを特徴とするセラミックス積層体。
(2)前記第2相粒子の重心に最も距離が近い前記接合面の面方向と、前記第2相粒子の相当楕円長径の方向とのなす角が、−90°から90°の角度で表され、その角度の絶対値を前記第2相粒子の配向角としたとき、任意の前記断面では、60%以上の数の前記第2相粒子が30°以下の前記配向角を有しており、かつ前記配向角の総和を前記第2相粒子の総粒子数で除した平均配向角が5°以上35°以下であることを特徴とする(1)に記載のセラミックス積層体。
(3)前記基材層は銅、又はアルミニウムを主体とし、前記複合セラミックス層は、前記基材層と垂直方向の厚さが、5μm以上、200μm以下であることを特徴とする(1)又は(2)に記載のセラミックス積層体。
(4)前記第1相がアルミナ相であり、前記第2相がジルコニア相であることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか1項に記載のセラミックス積層体。
(5)前記ジルコニア相が少なくとも正方晶を含有し、イットリウムの含有量が0.1質量%以下であることを特徴とする(1)から(4)のいずれか1項に記載のセラミックス積層体。
(6)(1)から(5)のいずれかに記載のセラミックス積層体からなることを特徴とするセラミックス絶縁基板。
(7)該基材層が銅、又はアルミニウムであって、該複合セラミックス層を挟んで反対面に銅、又はアルミニウム回路が形成されている(6)に記載のセラミックス絶縁基板。
(8)該基材層の厚さが0.5mm超であり、該回路の厚さの2倍以上である(7)に記載の絶縁基板。
(9)アルミナ原料粒子とジルコニア原料粒子を気体と混合し、前記アルミナ原料粒子と前記ジルコニア原料粒子とを前記気体と共に基材層の表面に向けて噴射して衝突させることで、前記基材層の表面に複合セラミックス層を積層することを特徴とするセラミックス積層体の製造方法。
(10)前記アルミナ原料粒子と前記気体とを混合して一のエアロゾルを生成し、前記ジルコニア原料粒子と前記気体とを混合して他のエアロゾルを生成し、前記一のエアロゾルと前記他のエアロゾルとを前記基材層の表面に向けて噴射することを特徴とする(9)に記載のセラミックス積層体の製造方法。
(11)前記アルミナ原料粒子及び前記ジルコニア原料粒子を混合した混合原料粉に、前記気体を混合させてエアロゾルを生成し、前記エアロゾルを前記基材層の表面に向けて噴射することを特徴とする(9)に記載のセラミックス積層体の製造方法。
(12)前記ジルコニア原料が電融粉である(9)〜(11)のいずれか1項に記載のセラミックス積層体の製造方法。
本発明においてのアルミナ-ジルコニアセラミックスでなる複合セラミックス層の組織を評価、規定する観察面は、基材層と複合セラミックス層との接合面に垂直な断面とする。搬送、圧延ロール等の円柱、円筒形状の構造体でなる基材層の周面に、複合セラミックス層が形成されたセラミックス積層体の場合、複合セラミックス層の組織を評価、規定する、基材層と複合セラミックス層との接合面に垂直な断面は、円柱、円筒の中心軸を通る平面上にある任意の断面である。この場合、円柱、円筒の中心軸を通る平面上にある本発明の観察面である断面において、断面と接合面が交わる線は直線となる。
分散した組織を有した複合セラミックス層1について、電界放射型走査電子顕微鏡で観察したときの2次電子像である。本発明のセラミックス積層体は、図示しない基材層の一部、あるいは全面に、アルミナ相とジルコニア相とで構成される複合セラミックス層1が被覆された構成を有する。
本発明は、基材層の一部、あるいは全面に、アルミナ相とジルコニア相で構成される、特定の組織を有する複合セラミックス層が被覆されたセラミック積層体である。アルミナ相中にジルコニア相、もしくはジルコニア相中にアルミナ相が分散した組織であり、両者の比率は問わない。本発明では、任意の断面において、総面積率の大きな相を第1相とし、第1相よりも総面積率が小さく、粒子状に形成された相を第2相粒子とする。アルミナ-ジルコニアセラミックス(複合セラミックス)でなる複合セラミックス層の主たる強靭化機構は2つの相(第1相及び第2相粒子)が混在することによる応力場の空間分布によってクラックの進展を妨げる機構である。この応力場は2つの粒子の弾性率や熱膨張係数の違いによって、複合セラミックス層を形成する時の内部応力、熱応力によって生じる。
第2相粒子の必要な割合はその粒径や分布度合によって異なるが、任意の断面での面積比で1%以上あれば良い。また、複合セラミック層における第1相および第2相粒子の面積比としては、3%以上であれば、クラックの進展抑制効果が大きくなり、10%以上であれば更に望ましい。理論的にはマトリックス内に分散する粒子の面積がマトリックスの面積より大きくなることはあり得るが、実際は分散する粒子の面積はマトリックスの面積より小さく、複合セラミック層における第1相および第2相粒子の面積比は、上限が40%以下であることが望ましく、33%以下又であることが更に望ましい。
また、アルミナ相とは、主としてアルミナから構成された相を指し、本明細書においては、アルミナ含有率が90質量%以上、または92質量%以上、または94質量%以上、または96質量%以上、または98質量%以上のものであってもよい。ジルコニア相とは、主としてジルコニアから構成された相を指し、本明細書においては、ジルコニア含有率が90質量%以上、または92質量%以上、または94質量%以上、または96質量%以上、または98質量%以上のものであってもよい。
般的に製造されるアルミナ-ジルコニアセラミックス焼結体に比べて、第2相粒子の粒径
が小さく、第2相粒子の形態も大きく異なる。本発明の複合セラミックス層では、基材層と直交する任意の断面において、アルミナ相とジルコニア相のうち、第1相よりも総面積率が小さい一方を第2相粒子とし、第2相粒子の円相当径が、0.01μm以上、1μm以下の粒子が第2相粒子の面積率の殆どを占め、円相当径が0.01μm以上の第2相粒子を計測した時、第2相粒子の平均径が、0.02μm以上、0.3μm以下であり、かつ第2相粒子の相当楕円の長径を短径で除した長短軸比の平均値が2以上、10以下であることを要件とする。(以下、特に断りのない限り、第2相粒子の円相当径とは、円相当径が0.01μm以上の第2相粒子を計測したものである。)この組織形態を取ることによって、強度と破壊靭性値を向上させ、絶縁破壊電界値を向上させることができる。特に基材層と複合セラミックス層の接合面と垂直方向、すなわち複合セラミックス層の膜厚方向に進むクラックの進展を阻害し、絶縁破壊電界値を向上させる効果が大きくなる。これにより、例えば、搬送、圧延ロール等の円柱、円筒形状の構造体でなる基材層の周面に、複合セラミックス層が形成されたセラミックス積層体とした場合には、耐摩耗性の優れた搬送ロールが構築できる。セラミックス絶縁基板に応用する場合は、耐熱サイクル性を向上でき、また絶縁膜厚を小さくできることから、放熱性の優れたセラミックス絶縁基板を構築することができる。
の粒径が、一般的なアルミナ-ジルコニアセラミックス焼結体に比較して1桁程度小さく、平均粒径を0.3μm以下とすることにより、第2相粒子の周囲に生じる応力場発生領域の数が増え、クラックが進展したときに当該クラックが第2相粒子を迂回する機会が増し、クラック進展を阻害できる。第2相粒子の大きさは、数μmまでクラックの進展を抑え
る作用があるが、最大径が5μmを超えるとその周囲の第1相に比較的大きなクラック、又は空隙が生じる場合が大きくなり、機械的特性は劣化してしまう。そのため、第2相粒子の最大径は5μm以下が望ましく、さらには1.5μm以下であることが望ましく、1μm未満だと更に望ましい。一方、本発明のセラミックス積層体における複合セラミックス層において、円相当径で0.01μm以下の粒子を含有していてもかまわないが、第2相粒子の平均径が0.02μmより小さい場合には、クラックの進展を阻害する作用が小さくなる。特に、第2相粒子の平均径は0.02μm以上、0.2μm以下が望ましく、この場合、複合セラミックス層の機械的な特性が一段と高まる。
また、第2相粒子自体が正方晶ジルコニアである場合、特に相当楕円長径方向にはクラック先端が進展するエネルギーを吸収する作用が大きく働くため、強度や破壊靭性値を向上させることができる。
さらに、結晶粒が膜厚方向に扁平している場合には、セラミックス積層体の絶縁特性を決める、複合セラミックス層の膜厚方向の絶縁破壊電界値を向上することができる。
本発明のセラミックス積層体は、基材層に、アルミナ相とジルコニア相で構成された特定の組織を有する複合セラミックス層が被覆された構成を有しており、上述したように基材層と複合セラミックス層との接合面に対してアルミナ-ジルコニアセラミックス(複合
セラミックス)の組織が異方性を有する。このため、本発明のアルミナ-ジルコニアセラ
ミックスでなる複合セラミックス層の組織を評価、規定する観察面は、基材層と複合セラミックス層との接合面に垂直な断面とする。すなわち、搬送、圧延ロール等の円柱、円筒形状の構造体でなる基材層の周面に、複合セラミックス層が形成されたセラミックス積層体である場合、複合セラミックス層の組織を評価、規定する観察面(基材層と複合セラミックス層との接合面に垂直な断面)は、円柱、円筒の中心軸を通る平面上にある任意の断面である。この場合、接合面に垂直な本発明の観察面である断面において、接合面は曲線ではなく直線となる。
を使用して、加速電圧を5kV、倍率を20000倍程度まで上げれば、0.01μm程度の分解能は容易に得られる。加速電圧が大きい場合、表面に露出したものだけでなく、内部の相もコントラストとして拾う可能性がある。したがって、本発明の複合セラミックス層の評価は加速電圧が5kV以下で取得した画像を用いることが望ましい。
以上のような条件で得られた画像を2値化して形態解析を行えばよい。ただし、本発明の複合セラミックス層の観察面では長径が1μmを超える粒子も含まれる場合もあるので、20000倍の視野では材料の平均的な情報を得るのに1視野では狭すぎる場合がある。目安として第2相粒子が1000個以上になるように重ならない視野で複数の像を取得して形態解析を行う必要がある。
また、本発明の複合セラミックスの場合、空隙も走査型電子顕微鏡で容易にコントラストとして、識別できるので第2相粒子の評価に使用した画像を用いて、空隙のみを2値化して面積率や大きさを評価することができる。
本発明では、「平均で2以上のアスペクト比を有する第2相粒子」の基材層に対する分布に特徴があり、これによりセラミックス積層体の絶縁抵抗値や、破壊靭性値が向上し得る。本発明のセラミックス積層体では、基材層と複合セラミックス層との接合面が、搬送ロールの周面に被覆させる場合のように、平板状である必要はないが、本発明の第2相粒子の向きは下記のような特徴を有することが望ましい。本発明のセラミックス積層体は、基材層と複合セラミックス層との接合面に対し垂直な断面において、第2相粒子の個々の重心に最も距離が近い当該接合面の点bでの面方向x1に対して、第2相粒子の相当楕円長径の方向a1がなす角度θと、第2相粒子の相当楕円短径の方向a2がなす角度θの余角である角度とを比較すると、相当楕円長径の方向a1がなす角度θのほうが、相当楕円短径の方向a2がなす角度よりも小さい。
本発明のセラミックス積層体は、扁平した微細な第2相粒子の作用により機械的な特性が優れており、例えば平板状の基材層の板面に、本発明で規定する複合セラミックス層を成膜し、基材層に複合セラミックス層が接合した構成となることで、特に基材層に対して垂直方向に進展するクラックを抑制する効果が強くなり、接合面と平行な面内方向の引張応力に対して極めて強い耐性を有する。また、第1相の結晶粒、及び第2相粒子が微細であることから、絶縁破壊電界も高い。したがって、本発明では、複合セラミックス層の厚さを薄くすることが出来、基材層と垂直方向の熱伝導率を高く設計できる。
を伝える銅、又はアルミニウムを主体とすることが望ましい。なお、ここで主体とは、基材層を構成する組成物全体の質量を基準として、銅又はアルミニウムを50質量%以上含有するものをいう。すなわち、熱伝導や電気伝導の点から、銅又はアルミニウムは不純物の少ない純銅や純アルミニウムが望ましいが、強度面、又はその他の理由から基材層は、銅やアルミニウムを主体とし、熱伝導や電気伝導が著しく損なわれない範囲で、残部に銅及びアルミニウム以外の他の金属が含有されていても良い。ただし、ダイヤモンドはセラミックス層との接合力が小さいので、セラミックス層を形成させる面には露出していない方が望ましい。
本発明のセラミックス積層体を形成した後、上記回路のように別な面に膜を形成する方法は問わないが、後述する「エアロゾルデポジション法(AD法)やコールスプレー法」のようなカイネティックデポジション法、衝撃固化法で分類される方法の他、めっき法、溶射法、またはこれらを組み合わせた方法が挙げられる。
従来のセラミックス絶縁回路基板では、基材層とセラミックス層との接合時に発生する銅とセラミックスの熱膨張差から生じる熱応力が極めて大きくなる。そのため、従来では、絶縁セラミックス板の厚さやバランスに制限があった。例えば絶縁セラミックス板の板厚が0.2mmから0.6mmである場合、片側だけに金属板を接合すると熱応力で反りが生じてしまう。したがって、絶縁セラミックス板の両側にほぼ同じ厚さの金属を接合してバランスをとる必要があった。例えば、絶縁放熱回路基板を形成する場合、ヒートシンクとして0.3mmの銅を接合した場合、回路側にも0.3mm程度の銅回路を形成する必要があった。これに対して本発明のセラミックス積層体を使用することによって、0.5mmを越える銅を基材層として用い、絶縁セラミックス側に基材層の1/2以下の銅回路を形成することも可能であり、例えばヒートシンク側になる基材層の厚さを1mm以上に厚く、回路側の厚さを0.5mm以下に薄くし、両側の銅板厚の差を0.2mm以上とする構成も可能である。もちろん、回路に通電する電流量によって回路側の厚さを厚くしてもかまわない。この場合、本発明のセラミックス積層体に設ける金属回路の形成方法は、大きな熱が加わらない方法が望ましく、エアロゾルデポジション法が適している。更に厚さを増すためにコールドスプレーやめっき法を組み合わせても良い。
基材層の一部、あるいは全面に、アルミナ相とジルコニア相で構成される複合セラミックス層が被覆された本発明のセラミックス積層体の製造方法は限定するものではないが、例えば、アルミナ原料粒子とジルコニア原料粒子とを気体と混合し、アルミナ原料粒子とジルコニア原料粒子とを気体と共に基材層の表面に向けて噴射して衝突させ、基材層の表面に複合セラミックス層を積層するエアロゾルデポジション法(AD法)を用いることが望ましい。その際、原料粉体(アルミナ原料粒子及びジルコニア原料粒子からなる粉体)とプロセス条件を制御することによって、本発明のセラミックス積層体を得ることが出来る。
と同じノズル幅のノズルを用いて、基材層の成膜面に沿ってノズル幅と垂直方向に、ノズル、又は基材層(ワーク)を成膜長さ分単純往復させる方法と、(ii)成膜幅よりも小さいノズル幅のノズルを用いて、ノズル又は基材層が当該基材層の成膜面に沿って往復運動する過程で、ノズル、又はワークを往復運動方向(成膜面長さ方向とも呼ぶ)と直交する横方向に送りながら成膜する方法とがある。後者の方法(ii)の場合、ワークに対して往復運動するノズルの位置が、成膜面長さ方向の初期座標位置に戻ったときの横方向への送り量(ピッチ)は、小さい方が均一な膜厚が得られ、ピッチは2mm以下である方が本発明の規定の平均配向角が得易い。
ズルを固定して成膜する方法と、(ii)成膜幅よりも小さいノズル幅のノズルを用いて、ノズルをワークの中心軸に対して平行としたまま、幅方向(軸方向)に送りながら、成膜面幅方向端部で送りを反転させて引き返らせ、周面に成膜する方法とがある。後者の方法(ii)の場合、ワークが1回転した時の送り量(ピッチ)は、小さい方が均一な膜厚が得られ、ピッチは2mm以下である方が本発明の規定の平均配向角が得易い。
AD法で緻密な複合セラミックス層を形成した場合、第1相だけか、又は、第1相と第2相粒子との両方に圧縮場が形成される場合がある。このような圧縮場の大きさは、少なくとも面内方向には100MPa以上数GPa以下の圧縮応力となる可能性がある。アルミナとジルコニアの弾性率は異なるため、応力場が微視的に変化していることが予想され、その結果クラックの進展を阻害する効果が生じる。
従来のセラミックス絶縁回路基板では、セラミックス層と、銅や金属でなる基材層とを高温で接合するため、セラミックス層と基材層との熱膨張率差に起因する残留熱応力が発生してしまい、セラミックス層が破壊に至る問題がある。また、従来では、更にセラミックス絶縁回路基板に対して半導体や周辺機器を組み込む工程や、使用時の繰り返しの熱サイクルによって熱応力が加わり、セラミックス層が破壊に至る問題がある。
セラミックス膜中で正方晶ジルコニアの応力誘起変態を利用する場合、ジルコニア粒子は膜厚方向に扁平していると膜厚と垂直方向の強度、靭性を補うことが可能になり望ましい。立方晶ジルコニアはそれ自体が強度が高く、安定化剤を多く含有して立方晶ジルコニアの割合を増やすことは、強靭化に有利である。一方、安定化剤を多く入れすぎるとイオン電導性を有する立方晶ジルコニアの量が増すため、セラミックス絶縁基板として立方晶ジルコニアを第1相として使用する場合は、絶縁性に留意すべきである。
い、ジルコニア相又はアルミナ相でなる第2相粒子が第1相に分散した組織を有し、第2相粒子の円相当径の最大値が5μm以下とし、第2相粒子の平均径を、0.02μm以上、0.3μm以下とし、かつ第2相粒子を楕円と見立てたときの相当楕円の長径と短径との比の平均値を、2以上、10以下とし、空隙の面積率が5%以下とした。これにより本発明では、優れた耐熱疲労性や、熱伝導性、絶縁性を有する複合セラミックス層の破壊靭性値や、絶縁破壊電界値が増大し、複合セラミックス層の機械的特性が高く、優れた耐久性及び放熱性を有したセラミックス積層体及びセラミックス絶縁基板、更にはセラミックス絶縁回路基板を実現できる。
ここでは、実施例1として、エアロゾルデポジション法を使用して、銅基材層上に、アルミナ-ジルコニアでなる複合セラミックス層を形成したセラミックス積層体を用意した。また、一般的な焼結法で製造したアルミナ-ジルコニア焼結体を比較例1として用意した。そして、上述した実施例1について、比較例1と比較することで、組織の特徴と機械的特性の特長を調べた。
り、ジルコニア原料粉が純度98質量%、メディアン径、4.7μm、最大径が19.1μmの単斜晶ジルコニア電融粉である。アルミナ原料粉中の主な不純物は、酸化ナトリウム(Na2O)が0.06質量%、マグネシア(MgO)が0.06質量%であり、ジルコニア原料粉中の主な不純物は、シリカ(SiO2)が0.19質量%、酸化鉄(Fe2O3)が0.12質量%、チタニア(TiO2)が0.1質量%である。ここでメディアン径とは、累積個数分布図で50%の高さを与える直径であり中位径(d50)である。
ルコニア相のピークは、ジルコニア原料粉と同じ単斜晶に加えて、焼結のための加熱がされておらず且つ安定化剤が含有されていないにも関わらず、高温相である正方晶も存在することが分かった。膜面の成分を蛍光X線で確認したところ、ジルコニアの安定化剤であるイットリウム、セリウム、カルシウム、マグネシウム、及びイットリウムとセリウムを除く希土類元素は検出されず、それぞれ検出限界の0.05質量%以下であることが確認された。すなわち、膜中のイットリウムとセリウムの総量は、0.1質量%以下である。
るエネルギー分散型X線分析装置で、複合セラミックス層1を分析した結果、第1相2はアルミナ相であり、粒子状の第2相粒子3はジルコニア相であることが分かった。
例1よりも平均径が1/7以下と微細であった。アスペクト比は、実施例1のほうが比較例1よりも大きかった。
ジルコニア相の画像解析と同様な方法を用いて、空隙の暗いコントラストを抽出するように2値化して空隙の面積率を測定した。その結果、実施例の材料で1視野の最大値が4.91%、平均で2.21%、比較例の材料で1視野の最大値が5.09%、平均0.72%であった。比較例で最大値が出た視野は大きな空隙が偶発的に観察視野に入ったことによるもので、平均値を算出するときは除外した。比較例の試料は、局所的に大きな空隙がある場所が存在する。
コニア焼結体)に比較して、実施例1が接合面と垂直方向における破壊靭性に極めて優れていたのは、(i)ジルコニア相の第2相粒子だけでなく、第1相のアルミナ相の結晶粒も扁平しており、接合面に対して垂直方向において結晶粒界を進展するクラックが大きく迂回される効果と、(ii)面内方向に特に強い圧縮応力を有しているため、クラック先端の引張応力がこの圧縮応力と相殺され、亀裂先端開口エネルギーが小さくなった効果とによる。
2種類の原料を使用して、ジルコニアを主体としたアルミナ-ジルコニアセラミックスを試作した。1つは、市販のアルミナ粉とジルコニア粉を混合した原料をエアロゾルデポジション法で成膜した材料(試料3)と市販のアルミナ-ジルコニア混合粉末を原料としてエアロゾルデポジション法で成膜した材料(試料4)である。
組成と結晶構造の異なるジルコニアを使用して、アルミナ−ジルコニアセラミックス積層体を作製し、機械的特性と電気的特性を評価した。
また、それぞれの試料中の膜面を蛍光X線で分析したところ、試料5ではイットリウムを含めた希土類元素は検出されず、イットリウムとセリウムの総量は基材の銅を除いて0.1質量%以下であることが確認された。
2:アルミナ相(第1相)
3:ジルコニア相(第2相粒子)
4:空隙
Claims (12)
- 基材層の一部、あるいは全面に、アルミナ相とジルコニア相とを含んでなる複合セラミックス層が被覆されたセラミックス積層体であって、
前記複合セラミックス層と前記基材層との接合面に対して直交する任意の断面において、前記アルミナ相又は前記ジルコニア相のうちいずれかでなる第1相内に、該第1相よりも総面積率が小さい他方の前記ジルコニア相又は前記アルミナ相でなる第2相粒子が分散した組織を有し、
前記断面内において円相当径が0.01μm以上の前記第2相粒子と空隙を計測した時、
前記第2相粒子の円相当径の最大値が5μm以下であり、
前記第2相粒子の円相当径の平均値が、0.02μm以上、0.3μm以下でなり、
かつ前記第2相粒子を楕円と見立てたときの相当楕円の長径を短径で除した値の平均値が、2以上、10以下であり、
空隙の面積率が5%以下である
ことを特徴とするセラミックス積層体。 - 前記第2相粒子の重心に最も距離が近い前記接合面の面方向と、前記第2相粒子の相当楕円長径の方向とのなす角が、−90°から90°の角度で表され、その角度の絶対値を前記第2相粒子の配向角としたとき、
任意の前記断面では、60%以上の数の前記第2相粒子が30°以下の前記配向角を有しており、
かつ前記配向角の総和を前記第2相粒子の総粒子数で除した平均配向角が5°以上35°以下である
ことを特徴とする請求項1に記載のセラミックス積層体。 - 前記基材層は銅、又はアルミニウムを主体とし、
前記複合セラミックス層は、前記基材層と垂直方向の厚さが、5μm以上、200μm以下である
ことを特徴とする請求項1又は2に記載のセラミックス積層体。 - 前記第1相がアルミナ相であり、前記第2相がジルコニア相であることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか1項に記載のセラミックス積層体。
- 前記ジルコニア相が少なくとも正方晶を含有し、イットリウムの含有量が0.1質量%以下であることを特徴とする請求項1から請求項4のいずれか1項に記載のセラミックス積層体。
- 請求項1から請求項5のいずれか1項に記載のセラミックス積層体からなることを特徴とするセラミックス絶縁基板。
- 該基材層が銅、又はアルミニウムであって、該複合セラミックス層を挟んで反対面に銅、又はアルミニウム回路が形成されている請求項6に記載のセラミックス絶縁基板。
- 該基材層の厚さが0.5mm超であり、該回路の厚さの2倍以上である請求項7に記載の絶縁基板。
- 請求項1から請求項5のいずれか1項に記載のセラミックス積層体の製造方法であって、アルミナ原料粒子とジルコニア原料粒子を気体と混合し、前記アルミナ原料粒子と前記ジルコニア原料粒子とを前記気体と共に基材層の表面に向けて噴射して衝突させることで、前記基材層の表面に複合セラミックス層を積層すること、および
ここで、前記原料粒子の大きさが、0.1μmから10μmの範囲であり、
噴射ノズルの入口と出口の差圧が、20kPa以上であり、
前記ノズルを通過するガスの流速が50〜800m/sであり、
前記積層の行われる成膜室の圧力が50Paから500Paの範囲であること、
を特徴とするセラミックス積層体の製造方法。 - 前記アルミナ原料粒子と前記気体とを混合して一のエアロゾルを生成し、前記ジルコニア原料粒子と前記気体とを混合して他のエアロゾルを生成し、
前記一のエアロゾルと前記他のエアロゾルとを前記基材層の表面に向けて噴射する
ことを特徴とする請求項9に記載のセラミックス積層体の製造方法。 - 前記アルミナ原料粒子及び前記ジルコニア原料粒子を混合した混合原料粉に、前記気体を混合させてエアロゾルを生成し、前記エアロゾルを前記基材層の表面に向けて噴射することを特徴とする請求項9に記載のセラミックス積層体の製造方法。
- 前記ジルコニア原料が電融粉である請求項9〜請求項11のいずれか1項に記載のセラミックス積層体の製造方法。
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