JP6477968B2 - セラミックス積層体、セラミックス絶縁基板、及びセラミックス積層体の製造方法 - Google Patents

セラミックス積層体、セラミックス絶縁基板、及びセラミックス積層体の製造方法 Download PDF

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Description

この発明は、優れた強度、破壊靭性、耐摩耗性、熱伝導性、放熱性、絶縁性を有するアルミナ-ジルコニア(Al2O3-ZrO2)でなる複合セラミックス層が基材層と接合されたセラミックス積層体及びその製造方法に関する。特に比較的高い電流、電圧を扱うパワー半導体デバイスに使用されるセラミックス絶縁基板、表面に耐摩耗性等の高い機械特性が必要になる搬送ロールに関する。
優れた強度、破壊靭性、耐摩耗性、熱伝導性、放熱性、絶縁性を具備させるために基材にセラミックスを被覆、あるいは接合したセラミックス積層体は、圧延、搬送ロール、炉壁等の構造材やセラミックス絶縁回路基板等の機能材として様々な分野で利用されている。使用されるセラミックスは用途によって様々であるが、それぞれの用途で高い特性を得るため、特に純度、成分管理基準を高めたアルミナ(Al2O3)、窒化アルミニウム(AlN)、窒化珪素(Si3N4)、ジルコニア(ZrO2)等のファインセラミックスが使用される。
この中でアルミナやジルコニア等の酸化物は比較的安価で良く使用されるが、アルミナは強度の面で窒化珪素に劣り、ジルコニアは上記の4種のセラミックスの中で最も熱伝導率が劣る。これらの欠点を補うために、アルミナとジルコニアを混合して2相構造としたセラミックスがある。このセラミックスはアルミナ相とジルコニア相のうち体積率の高い第1相内に体積率の低い第2相粒子が分散している組織構造をとり、アルミナ分散ジルコニア、ジルコニア分散アルミナ、ジルコニア強化アルミナ、アルミナ強化ジルコニアと呼ばれる。本発明は、これら材料を総称してアルミナ-ジルコニアセラミックス、あるいは単に複合セラミックスと呼称し、複合セラミックス(アルミナ-ジルコニアセラミックス)で形成された層を複合セラミックス層と呼称する。
アルミナ-ジルコニアセラミックスの強靭化機構の一つは2つの相が混在することによる応力場によってクラックの進展が妨げる機構がある。結晶構造を制御したジルコニア相は、強度や破壊靭性がアルミナ相より高く、ジルコニア相が応力誘起変態することによってクラック先端のエネルギーを吸収する機構を実現し得る。またジルコニア相を第2相粒子とした場合には、第2相粒子に発生した微小なクラックが、応力によって進展してきた大きなクラック先端部においてクラック進展方向を分散させることができる。これらの機構によりアルミナ-ジルコニアセラミックスの機械的な性質はアルミナ、ジルコニア単相のセラミックスより優れた機械的特性が得られるとされている。したがって、アルミナ-ジルコニアセラミックスにおいては、空隙率や空隙の大きさ、残留応力場、第1相の組織状態に加えて、特に第2相粒子の粒径、形態、分散状態に大きく影響され、これらの制御は重要となる。
アルミナ-ジルコニアセラミックスの一般的な製造方法はそれぞれの粉末を混合し焼結する方法がとられる。焼結法は原料粒子が結合、成長することによって緻密化するプロセスであるため、焼結後のセラミックスの結晶粒径や、形態は原料粒子サイズの制約を受け、それより微細になることはない。アルミナ-ジルコニアセラミックスでは焼結による緻密化を促進するためにシリカ(SiO2)、マグネシア(MgO)等の焼結助剤を添加することがある。これらは焼結体の中でアルミナ相、ジルコニア相以外の相を形成してしまい、機械的特性や耐食性を損なう場合がある。
焼結法以外の一定の厚さを有するセラミックスの形成方法には、溶射法やエアロゾルデポジション法が挙げられる。溶射法はセラミックスが溶融状態になるため、微細な組織を得ることは難しい。
一方、エアロゾルデポジション法は固体微粉末原料を気体と混合してエアロゾル化し、減圧チャンバー内で基材に向けて噴射、堆積する方法であり、常温でセラミックス層が形成できるのが特徴である(特許文献1、2)。原料粉末として異なる物質で成る混合粉末を使用することで複合膜が得られることが期待されているが、それぞれの粉末で成膜に適した条件が異なる等の理由により、緻密で厚い複合膜の形成は容易ではなく、アルミナ-ジルコニアセラミックスの成膜成功例は知られておらず、複合セラミックスとしての組織構造、及びそれに反映される機械的特性、電気的特性はわかっていない。
アルミナ-ジルコニアセラミックスの応用の一つに金属層と接合して使用するセラミックス絶縁基板がある。ここでセラミックス絶縁基板とは、セラミックスによって電気的な絶縁を持たせる基板であり、セラミックス絶縁回路基板、ヒートシンク、ヒートスプレッダー等の様々な機能、形態を持たせたものがある。
セラミックス絶縁基板のうち、シリコン、炭化ケイ素、窒化ガリウム等の半導体を搭載するなどして、電気的な回路を形成するための基板はセラミックス絶縁回路基板あるいは単にセラミックス基板と呼ばれる。セラミックス絶縁回路基板は、絶縁体である薄板状のセラミックス層の片側、あるいは両側に電気や熱を良く伝える銅やアルミニウムが接合された形態を有する。両側に金属を接合する場合、片側が半導体チップを実装する回路面となり、反対側は、熱を放散するためのヒートシンクとの接合面になる場合が多い。
セラミックス絶縁基板に使用されるセラミックスの典型的な厚さは0.2mmから0.6mmであり、ドクターブレード法やロールコンパクション法によってシート状に形成されたセラミックス素地を1300℃以上で焼成して得られる焼結体が使用される。
セラミックス材料としては、絶縁性に優れ、強度が強く、熱伝導率にも優れるアルミナや、アルミナに対してさらに熱伝導率が優れる窒化アルミニウム、アルミナに対してさらに強度が強い窒化珪素などの焼結体基板が通常使用されている。アルミナ-ジルコニアセラミックスも高強度、高靭性セラミックスとして一部利用されている。
セラミックス層と金属層の接合は、Ag-Cu-Ti合金等の活性金属ろうやMo-Mnメタライズ層を介して接合するろう付法や、セラミックス層と銅層の界面にCu−Cu2O共晶体を生成せしめ、その後冷却することによって直接銅層と接合する直接接合法(DCB法)が主流である。
これらの接合方法は、800℃〜1080℃の間の温度で接合するため、セラミックス層と金属層との熱膨張率差に起因する熱応力が発生し、この残留応力にセラミックス絶縁基板に対して半導体や周辺機器を組み込む工程や、使用時の繰り返しの熱サイクルに起因する熱応力が加わり、セラミックス層が破壊に至る問題がある。特に金属層とセラミックス層との接合面近傍で金属回路端部セラミックス側に、接合時に発生する残留引張応力と使用時に受ける熱的、機械的応力が重畳して破壊に至る場合が多い(非特許文献1、2)。非特許文献1によるとDCB法で作製したセラミックス絶縁基板(Cu/Al2O3)の接合面銅層端部に発生する引張残留応力は最大105MPaであり、これに熱サイクルが加わると最大360MPaの引張応力に達すると算出されている。
一方、溶射法もセラミックスが溶融する温度まで加熱することから、熱応力の問題は避けられない。
今後、車載用途や炭化珪素半導体の使用が増え、使用温度も高くなり、かつ使用温度範囲も大きくなることが予想される。パワー半導体では投入電力量も大きくなり、放熱性を上げる必要性から、銅層の厚さは厚く、セラミックス層の厚さは薄くすることが求められているが、熱膨張係数の差に起因する熱応力による反りの問題により、セラミックス層に対する銅層の厚さはセラミックス層と同程度にするしかできないのが現状である。
以上のように、今後大きくなる熱応力に耐えうる高強度で強靭なセラミックス層が求められる。そこで窒化珪素と並んで期待されるのがアルミナ-ジルコニアセラミックスであるが、上述したように焼結法によるアルミナ-ジルコニアセラミックスの粒径、形態、分散状態、結晶構造の制御は制約があり、強靭化には限界がある。一方、エアロゾルデポジション法による作製方法は確立されておらず、特性については全く分かっていない。エアロゾルデポジション法による一般的なセラミックス層は焼結セラミックス板に比較して厚くするのが困難であり、放熱性の点では有利であるが、機械的な特性の点では、一層の特性向上が必要である。
特許第3784341号公報 特許第4784150号公報
日本機械学会2011年度年次大会論文集、J031044 「モジュール化工程におけるセラミックス基板の応力解析」 セラミックス 48巻、2013年、No.10 「ファインセラミックス基板の熱疲労試験方法に関する標準化」
本発明は、優れた耐熱疲労性や、熱伝導性、絶縁性を有する複合セラミックス層の機械的特性を高め、優れた耐久性及び放熱性を有したセラミックス積層体、セラミックス絶縁基板、及び、セラミック積層体の製造方法を提供することを目的とする。
本発明は、下記の手段をとるものである。
(1)基材層の一部、あるいは全面に、アルミナ相とジルコニア相とを含んでなる複合セラミックス層が被覆されたセラミックス積層体であって、前記複合セラミックス層と前記基材層との接合面に対して直交する任意の断面において、前記アルミナ相又は前記ジルコニア相のうちいずれかでなる第1相内に、該第1相よりも総面積率が小さい他方の前記ジルコニア相又は前記アルミナ相でなる第2相粒子が分散した組織を有し、前記断面内において円相当径が0.01μm以上の前記第2相粒子と空隙を計測した時、前記第2相粒子の円相当径の最大値が5μm以下であり、前記第2相粒子の円相当径の平均値が、0.02μm以上、0.3μm以下でなり、かつ前記第2相粒子を楕円と見立てたときの相当楕円の長径を短径で除した値の平均値が、2以上、10以下であり、空隙の面積率が5%以下であることを特徴とするセラミックス積層体。
(2)前記第2相粒子の重心に最も距離が近い前記接合面の面方向と、前記第2相粒子の相当楕円長径の方向とのなす角が、−90°から90°の角度で表され、その角度の絶対値を前記第2相粒子の配向角としたとき、任意の前記断面では、60%以上の数の前記第2相粒子が30°以下の前記配向角を有しており、かつ前記配向角の総和を前記第2相粒子の総粒子数で除した平均配向角が5°以上35°以下であることを特徴とする(1)に記載のセラミックス積層体。
(3)前記基材層は銅、又はアルミニウムを主体とし、前記複合セラミックス層は、前記基材層と垂直方向の厚さが、5μm以上、200μm以下であることを特徴とする(1)又は(2)に記載のセラミックス積層体。
(4)前記第1相がアルミナ相であり、前記第2相がジルコニア相であることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか1項に記載のセラミックス積層体。
(5)前記ジルコニア相が少なくとも正方晶を含有し、イットリウムの含有量が0.1質量%以下であることを特徴とする(1)から(4)のいずれか1項に記載のセラミックス積層体。
(6)(1)から(5)のいずれかに記載のセラミックス積層体からなることを特徴とするセラミックス絶縁基板。
(7)該基材層が銅、又はアルミニウムであって、該複合セラミックス層を挟んで反対面に銅、又はアルミニウム回路が形成されている(6)に記載のセラミックス絶縁基板。
(8)該基材層の厚さが0.5mm超であり、該回路の厚さの2倍以上である(7)に記載の絶縁基板。
(9)アルミナ原料粒子とジルコニア原料粒子を気体と混合し、前記アルミナ原料粒子と前記ジルコニア原料粒子とを前記気体と共に基材層の表面に向けて噴射して衝突させることで、前記基材層の表面に複合セラミックス層を積層することを特徴とするセラミックス積層体の製造方法。
(10)前記アルミナ原料粒子と前記気体とを混合して一のエアロゾルを生成し、前記ジルコニア原料粒子と前記気体とを混合して他のエアロゾルを生成し、前記一のエアロゾルと前記他のエアロゾルとを前記基材層の表面に向けて噴射することを特徴とする(9)に記載のセラミックス積層体の製造方法。
(11)前記アルミナ原料粒子及び前記ジルコニア原料粒子を混合した混合原料粉に、前記気体を混合させてエアロゾルを生成し、前記エアロゾルを前記基材層の表面に向けて噴射することを特徴とする(9)に記載のセラミックス積層体の製造方法。
(12)前記ジルコニア原料が電融粉である(9)〜(11)のいずれか1項に記載のセラミックス積層体の製造方法。
本発明の組織形態をとらせしめることによって、優れた耐熱疲労性や、熱伝導性、絶縁性を有する複合セラミックス層の破壊靭性値、絶縁破壊電界値が増大し、機械的、熱的、電気的耐久性が高く、基材層と一体となったセラミックス積層体を実現できる。
複合セラミックス層と熱膨張係数が大きく異なる銅やアルミニウムでなる基材層と一体化させる場合が多いセラミックス絶縁基板では、複合セラミックス層の機械的特性の向上によって、繰り返しの熱サイクルによる熱応力に対する耐久性を高める効果が得られる。
更に、本発明のような複合セラミックス層の組織形態により、優れた機械的特性、絶縁破壊電界値が得られることから、複合セラミックス層の厚さを薄くしても必要な絶縁破壊電圧、機械的破壊抵抗が得られ、放熱性が向上する効果がある。
また、エアロゾルデポジション法で基材層に常温で複合セラミックス層を接合したことにより、複合セラミックス層と熱膨張係数が大きい基材層であっても、従来の複合セラミックス層と基材層とを高い熱を使って接合する方法よりも、複合セラミック層と基材層との接合面での残留熱応力は小さくて済む。更に複合セラミックス層内に発生する圧縮応力場は、従来のセラミックス絶縁回路基板で問題となっている接合時に発生する残留引張応力と、使用時に受ける熱的、機械的応力とが重畳して、基材層と複合セラミックス層の接合面近傍で金属回路端部セラミックス側に生じる破壊を抑制する効果がある。
更に、接合熱応力が小さいことにより、熱応力による基材層の厚さの制限がなく、基材層を厚くすることによって、基材層自体にヒートシンク、ヒートスプレッダーの機能を持たせることも可能である。例えば、本発明のセラミックス積層体を絶縁回路基板に使用したとき、基材層をヒートシンク、ヒートスプレッダーとして、基材層と複合セラミックス層を挟んで反対面に設ける導電回路の厚さを自由に設定できる。
電界放射型走査電子顕微鏡で観察された第2相粒子を示す反射電子像である。 第2相粒子を楕円と見立てて相当楕円を示す概略図である。 配向角の説明に供する概略図である。 実施例1で作製した本発明のセラミックス積層体において、複合セラミックス層と基材との接合面に対して直交する任意の断面を、電界放射型走査電子顕微鏡で観察したときの反射電子像である。 実施例3で作製した本発明のセラミックス積層体において、複合セラミックス層と基材との接合面に対して直交する任意の断面を、電界放射型走査電子顕微鏡で観察したときの2次電子像である。
(用語の定義)
本発明においてのアルミナ-ジルコニアセラミックスでなる複合セラミックス層の組織を評価、規定する観察面は、基材層と複合セラミックス層との接合面に垂直な断面とする。搬送、圧延ロール等の円柱、円筒形状の構造体でなる基材層の周面に、複合セラミックス層が形成されたセラミックス積層体の場合、複合セラミックス層の組織を評価、規定する、基材層と複合セラミックス層との接合面に垂直な断面は、円柱、円筒の中心軸を通る平面上にある任意の断面である。この場合、円柱、円筒の中心軸を通る平面上にある本発明の観察面である断面において、断面と接合面が交わる線は直線となる。
本発明において、複合セラミックス層内にある第2相粒子の大きさは、第2相粒子と同じ面積を有する円の直径、すなわち円相当径で表す。第2相粒子が多数分散した組織について、本発明の第2相粒子の平均径として定義される平均粒径は、分離された第2相粒子のそれぞれの面積から算出したそれぞれの第2相粒子の直径の総和を第2相粒子の総粒子数(合計粒子数)で割った平均値である。
図1は、第1相2内に、この第1相2よりも総面積率が小さい粒子状の第2相粒子3が
分散した組織を有した複合セラミックス層1について、電界放射型走査電子顕微鏡で観察したときの2次電子像である。本発明のセラミックス積層体は、図示しない基材層の一部、あるいは全面に、アルミナ相とジルコニア相とで構成される複合セラミックス層1が被覆された構成を有する。
本発明が規定する第2相粒子3は、基材層及び複合セラミックス層間の接合面と直交する断面(垂直な断面)では扁平した形態をしているので、一つの第2相粒子3の形態を相当楕円に置き換えて解析する。ここで相当楕円とは、対象とする第2相粒子断面と0次、1次、2次モーメントが一致する楕円をいう。すなわち、相当楕円とは、対象とした第2相粒子の断面と同じ面積、重心を持ち、長軸、短軸の方向、アスペクト比を定量化する近似形態である。
例えば、図1中の領域ER1内にある第2相粒子3に着目した場合、図2に示すように、第2相粒子3は、表面に大小の凹凸があり、不規則な外形を有した粒子状に形成されている。このような第2相粒子3を楕円と見立てた相当楕円E1は、第2相粒子3と同じ面積及び重心を持ち、相当楕円E1の長軸の方向が、第2相粒子3の長軸の方向と定義し、かつ相当楕円E1の短軸の方向が、第2相粒子3の短軸の方向と定義するものであって、さらに相当楕円E1のアスペクト比を第2相粒子3のアスペクト比として定義する。
本発明の第2相粒子3のアスペクト比を表す第2相粒子3の長径、短径の比の平均とは、それぞれの第2相粒子3の相当楕円E1の長径(以下、相当楕円長径とも呼ぶ)と短径(以下、相当楕円短径とも呼ぶ)との比を総和した値を、第2相粒子3の総粒子数で割った平均値である。
本発明では、複合セラミックス層と基材層との接合面に対する相当楕円E1の向きを表すために配向角を用いる。配向角とは、図3に示すように、第2相粒子3の重心C1に最も距離が近い接合面7の点bにおける当該接合面7の面方向x1と、第2相粒子3の相当楕円長径の方向(以下、相当楕円長径方向とも呼ぶ)a1とのなす角θが、−90°から90°の角度で表したとき、その角度の絶対値を第2相粒子3の配向角とする。より具体的に、面方向x1とは、第2相粒子3の重心C1に最も距離が近い接合面7上の点bと、第2相粒子3の重心C1とを結ぶ直線y1に対して、接合面7の点bにおいて直交する接合面7の面方向をいう。なお、図3中のa2は、相当楕円長径方向a1と直交する相当楕円短径の方向(以下、相当楕円短径方向とも呼ぶ)を示す。
第2相粒子3の重心C1と最も距離が近い接合面7の点bから延びる面方向x1と、相当楕円長径方向a1とのなす角θは、360°表記ではなく、0°を中心として±180°表記とし、相当楕円E1の対称性から±90°の値を取る。本発明では、この角度の絶対値を第2相粒子の配向角と定義する。すなわち、本発明の定義する断面において、複合セラミックス層と基材層との接合面にある直線に対して、第2相粒子を表す相当楕円が寝ていれば平均配向角は0°以上、45°未満となり、第2相粒子が立っていれば、45°超、90°以下の値をとる。
平均配向角は、任意の断面内にある個々の第2相粒子3の配向角の総和を、当該断面内にある第2相粒子3の総粒子数で除した平均値である。アスペクト比が1より大きな第2相粒子3が完全にランダムな方向を向いていた場合は、平均配向角は45°の値を取る。
(本発明のセラミックス積層体に関して)
本発明は、基材層の一部、あるいは全面に、アルミナ相とジルコニア相で構成される、特定の組織を有する複合セラミックス層が被覆されたセラミック積層体である。アルミナ相中にジルコニア相、もしくはジルコニア相中にアルミナ相が分散した組織であり、両者の比率は問わない。本発明では、任意の断面において、総面積率の大きな相を第1相とし、第1相よりも総面積率が小さく、粒子状に形成された相を第2相粒子とする。アルミナ-ジルコニアセラミックス(複合セラミックス)でなる複合セラミックス層の主たる強靭化機構は2つの相(第1相及び第2相粒子)が混在することによる応力場の空間分布によってクラックの進展を妨げる機構である。この応力場は2つの粒子の弾性率や熱膨張係数の違いによって、複合セラミックス層を形成する時の内部応力、熱応力によって生じる。
第2相粒子の必要な割合はその粒径や分布度合によって異なるが、任意の断面での面積比で1%以上あれば良い。また、複合セラミック層における第1相および第2相粒子の面積比としては、3%以上であれば、クラックの進展抑制効果が大きくなり、10%以上であれば更に望ましい。理論的にはマトリックス内に分散する粒子の面積がマトリックスの面積より大きくなることはあり得るが、実際は分散する粒子の面積はマトリックスの面積より小さく、複合セラミック層における第1相および第2相粒子の面積比は、上限が40%以下であることが望ましく、33%以下又であることが更に望ましい。
また、アルミナ相とは、主としてアルミナから構成された相を指し、本明細書においては、アルミナ含有率が90質量%以上、または92質量%以上、または94質量%以上、または96質量%以上、または98質量%以上のものであってもよい。ジルコニア相とは、主としてジルコニアから構成された相を指し、本明細書においては、ジルコニア含有率が90質量%以上、または92質量%以上、または94質量%以上、または96質量%以上、または98質量%以上のものであってもよい。
本発明は、アルミナ-ジルコニアセラミックスに優れた機械的特性を持たせるため、一
般的に製造されるアルミナ-ジルコニアセラミックス焼結体に比べて、第2相粒子の粒径
が小さく、第2相粒子の形態も大きく異なる。本発明の複合セラミックス層では、基材層と直交する任意の断面において、アルミナ相とジルコニア相のうち、第1相よりも総面積率が小さい一方を第2相粒子とし、第2相粒子の円相当径が、0.01μm以上、1μm以下の粒子が第2相粒子の面積率の殆どを占め、円相当径が0.01μm以上の第2相粒子を計測した時、第2相粒子の平均径が、0.02μm以上、0.3μm以下であり、かつ第2相粒子の相当楕円の長径を短径で除した長短軸比の平均値が2以上、10以下であることを要件とする。(以下、特に断りのない限り、第2相粒子の円相当径とは、円相当径が0.01μm以上の第2相粒子を計測したものである。)この組織形態を取ることによって、強度と破壊靭性値を向上させ、絶縁破壊電界値を向上させることができる。特に基材層と複合セラミックス層の接合面と垂直方向、すなわち複合セラミックス層の膜厚方向に進むクラックの進展を阻害し、絶縁破壊電界値を向上させる効果が大きくなる。これにより、例えば、搬送、圧延ロール等の円柱、円筒形状の構造体でなる基材層の周面に、複合セラミックス層が形成されたセラミックス積層体とした場合には、耐摩耗性の優れた搬送ロールが構築できる。セラミックス絶縁基板に応用する場合は、耐熱サイクル性を向上でき、また絶縁膜厚を小さくできることから、放熱性の優れたセラミックス絶縁基板を構築することができる。
アルミナ-ジルコニアセラミックスでなる本発明の複合セラミックス層は、第2相粒子
の粒径が、一般的なアルミナ-ジルコニアセラミックス焼結体に比較して1桁程度小さく、平均粒径を0.3μm以下とすることにより、第2相粒子の周囲に生じる応力場発生領域の数が増え、クラックが進展したときに当該クラックが第2相粒子を迂回する機会が増し、クラック進展を阻害できる。第2相粒子の大きさは、数μmまでクラックの進展を抑え
る作用があるが、最大径が5μmを超えるとその周囲の第1相に比較的大きなクラック、又は空隙が生じる場合が大きくなり、機械的特性は劣化してしまう。そのため、第2相粒子の最大径は5μm以下が望ましく、さらには1.5μm以下であることが望ましく、1μm未満だと更に望ましい。一方、本発明のセラミックス積層体における複合セラミックス層において、円相当径で0.01μm以下の粒子を含有していてもかまわないが、第2相粒子の平均径が0.02μmより小さい場合には、クラックの進展を阻害する作用が小さくなる。特に、第2相粒子の平均径は0.02μm以上、0.2μm以下が望ましく、この場合、複合セラミックス層の機械的な特性が一段と高まる。
第1相の結晶粒径は問わないが、第2相粒子と同等かそれ以上に微細化すれば、機械的特性は更に向上し、全体としての絶縁破壊電界値も高まる。よって、第1相の結晶粒径は、第2相粒子内の結晶粒子と同等かそれ以上に微細化していることが望ましい。
本発明の複合セラミックス層は、第2相粒子が扁平に形成されており、第2相粒子の相当楕円の短径を基準にした時の長径、短径の比の平均値が2以上、10以下であることで、結晶粒界を進展するクラックに対しては、第2層の短径方向へのクラックの進展を阻害する。本発明の複合セラミックス粒子は概ね膜厚方向が短径方向になることから、膜厚方向に高い強度と破壊靱性を得ることができる。また、本発明の複合セラミックス相の第2相は、膜の面内方向に完全に長径方向が平行になっていないため、面内方向にも結晶粒界に沿って進展するクラックの進行を妨げる効果がある。したがって、複合セラミックス層のあらゆる方向に、強度や破壊靭性値を向上させることができる。
また、第2相粒子自体が正方晶ジルコニアである場合、特に相当楕円長径方向にはクラック先端が進展するエネルギーを吸収する作用が大きく働くため、強度や破壊靭性値を向上させることができる。
さらに、結晶粒が膜厚方向に扁平している場合には、セラミックス積層体の絶縁特性を決める、複合セラミックス層の膜厚方向の絶縁破壊電界値を向上することができる。
本発明のセラミックス積層体における複合セラミックス層において、空隙も機械的な特性や電気的な特性に影響を与える。空隙は、破壊靭性の点では適度にあった方が望ましい場合もあるが、強度や絶縁性の点では少ない方が望ましい。本発明では、本発明の規定する断面において、空隙の面積率は5%以下であることを要件とし、望ましくは3%以下、更に望ましくは0.7%以下であることが望ましい。
(組織の計測方法)
本発明のセラミックス積層体は、基材層に、アルミナ相とジルコニア相で構成された特定の組織を有する複合セラミックス層が被覆された構成を有しており、上述したように基材層と複合セラミックス層との接合面に対してアルミナ-ジルコニアセラミックス(複合
セラミックス)の組織が異方性を有する。このため、本発明のアルミナ-ジルコニアセラ
ミックスでなる複合セラミックス層の組織を評価、規定する観察面は、基材層と複合セラミックス層との接合面に垂直な断面とする。すなわち、搬送、圧延ロール等の円柱、円筒形状の構造体でなる基材層の周面に、複合セラミックス層が形成されたセラミックス積層体である場合、複合セラミックス層の組織を評価、規定する観察面(基材層と複合セラミックス層との接合面に垂直な断面)は、円柱、円筒の中心軸を通る平面上にある任意の断面である。この場合、接合面に垂直な本発明の観察面である断面において、接合面は曲線ではなく直線となる。
本発明の複合セラミックス層の第2相粒子の形態の評価方法は問わないが、本発明の組織を構成する第2相粒子は従来の焼結体内の粒子に比較して小さいため、円相当径で0.01μm以上の粒子を検知できる評価方法である必要がある。また、本発明のセラミックス積層体における複合セラミックス層の機械的、電気的特性は0.01μm以上の粒子によって向上することから、円相当径で0.01μm以上の粒子を検知できる評価方法であればよい。これを満たす方法の一つは、普及しつつある電界放射型走査電子顕微鏡(FE−SEM)の反射電子像や2次電子像を画像解析する方法があり、本発明の組織の標準的な評価方法となる。
アルミナとジルコニアは質量数が大きく異なるため、これらの相は走査電子顕微鏡の反射電子や2次電子像のコントラストの差として、比較的容易に分離できる。FE-SEM
を使用して、加速電圧を5kV、倍率を20000倍程度まで上げれば、0.01μm程度の分解能は容易に得られる。加速電圧が大きい場合、表面に露出したものだけでなく、内部の相もコントラストとして拾う可能性がある。したがって、本発明の複合セラミックス層の評価は加速電圧が5kV以下で取得した画像を用いることが望ましい。
以上のような条件で得られた画像を2値化して形態解析を行えばよい。ただし、本発明の複合セラミックス層の観察面では長径が1μmを超える粒子も含まれる場合もあるので、20000倍の視野では材料の平均的な情報を得るのに1視野では狭すぎる場合がある。目安として第2相粒子が1000個以上になるように重ならない視野で複数の像を取得して形態解析を行う必要がある。
第2相粒子の面積は、上述した電界放射型走査電子顕微鏡(FE−SEM)の反射電子像や2次電子像により、複合セラミックス層の断面画像を得、この断面画像を基に第2相粒子の断面領域を目視で抽出してゆき、抽出した領域内の面積を、画像解析ソフトを用いて算出することにより特定できる。本発明では、観察面とした複合セラミックス層の断面画像から第2相粒子のそれぞれの面積と形態を特定し、これを用いて第2相粒子の平均径や、第2相粒子の相当楕円長径、相当楕円短径、アスペクト比等を特定し得る。
また、本発明の複合セラミックスの場合、空隙も走査型電子顕微鏡で容易にコントラストとして、識別できるので第2相粒子の評価に使用した画像を用いて、空隙のみを2値化して面積率や大きさを評価することができる。
(第2相粒子の配向角について)
本発明では、「平均で2以上のアスペクト比を有する第2相粒子」の基材層に対する分布に特徴があり、これによりセラミックス積層体の絶縁抵抗値や、破壊靭性値が向上し得る。本発明のセラミックス積層体では、基材層と複合セラミックス層との接合面が、搬送ロールの周面に被覆させる場合のように、平板状である必要はないが、本発明の第2相粒子の向きは下記のような特徴を有することが望ましい。本発明のセラミックス積層体は、基材層と複合セラミックス層との接合面に対し垂直な断面において、第2相粒子の個々の重心に最も距離が近い当該接合面の点bでの面方向x1に対して、第2相粒子の相当楕円長径の方向a1がなす角度θと、第2相粒子の相当楕円短径の方向a2がなす角度θの余角である角度とを比較すると、相当楕円長径の方向a1がなす角度θのほうが、相当楕円短径の方向a2がなす角度よりも小さい。
すなわち、セラミックス積層体が平板である場合には、基材層と複合セラミックス層との接合面に対して垂直方向において第2相粒子の粒径が小さく、当該接合面に対して平行方向において粒径が大きい扁平化した第2相粒子が形成されている。具体的には、第2相粒子の重心に最も距離が近い接合面の点bでの面方向x1と、個々の第2相粒子の相当楕円長径の方向a1とのなす角θが、−90°から90°の角度で表され、その角度の絶対値を第2相粒子の配向角としたとき、60%以上の数の第2相粒子が30°以下の配向角を有していることが望ましい。本発明のセラミックス積層体は、このような特徴的な組織を有していることにより、基材層と複合セラミックス層との接合面に対して垂直方向の絶縁抵抗値が向上し、強度、破壊靭性値が向上する。このような配向角の物性値は、セラミックス絶縁基板の熱的、機械的、電気的特性に強く影響し、優れた耐熱サイクル特性、破壊電圧を得るために効果がある。
一方、基材層と複合セラミックス層との接合面に平行な面に対しては、本発明の場合、第2相粒子が扁平しており、第2相粒子そのものによりクラックの進展を阻害する作用があるため、第1相単独の場合より機械的特性は向上する。一方で、第2相粒子の相当楕円長径方向a1と、接合面とが揃い、極端には相当楕円長径方向a1と接合面とのなす角θが0°である場合、セラミックス積層体の接合面と平行方向の結晶粒界の連続性が高まり、特に結晶粒界を伝わるクラックに対しては、進展に対する抑制効果は小さくなる。
本発明の第2相粒子は、基材層と複合セラミックス層との接合面に垂直な断面において、相当楕円長径方向a1と、相当楕円短径方向a2とが、接合面と平行方向及び垂直方向に対して一定程度ずれていることが望ましく、配向角の総和を第2相粒子の総粒子数で除した平均配向角が5°以上35°以下であることが望ましく、更に様々な角度で分布し、揺らいでいることが望ましい。
FE−SEMによる2次電子や反射電子像と画像処理とによって抽出された個々の第2相粒子は、0°から90°の間の異なる配向角で分布、揺らいでおり、かつ配向角の総和を、第2相粒子の総粒子数で除することによって得られる、第2相粒子の接合面との平均配向角が5°以上35°以下であることによって、接合面と略平行な面を進展する結晶粒界に沿ったクラックの進展が、第2相粒子によって方向を曲げられ抑制される。同じ論理から、第1相の結晶粒も第2相粒子と同様な形態で分布していることが望ましい。
(セラミックス絶縁基板に関して)
本発明のセラミックス積層体は、扁平した微細な第2相粒子の作用により機械的な特性が優れており、例えば平板状の基材層の板面に、本発明で規定する複合セラミックス層を成膜し、基材層に複合セラミックス層が接合した構成となることで、特に基材層に対して垂直方向に進展するクラックを抑制する効果が強くなり、接合面と平行な面内方向の引張応力に対して極めて強い耐性を有する。また、第1相の結晶粒、及び第2相粒子が微細であることから、絶縁破壊電界も高い。したがって、本発明では、複合セラミックス層の厚さを薄くすることが出来、基材層と垂直方向の熱伝導率を高く設計できる。
このような特性はセラミックス絶縁基板として有用であることから、本発明のセラミックス積層体はセラミックス絶縁基板として特に適している。特にこれまで−40℃〜125℃の熱サイクル試験温度範囲よりも低温側、もしくは高温側に広い熱サイクルに対する耐熱サイクル特性は、従来のセラミックス絶縁基板では達成困難なレベルであったが、本発明によるセラミックス積層体は、当該熱サイクルに対して耐熱サイクル特性を有する。従って、本発明のセラミックス積層体は、厳しい温度環境下で使用される次世代車載用のセラミックス絶縁基板としても用いることができる。
セラミックス絶縁基板とは、セラミックス層によって電気的な絶縁を持たせる基板である。本発明のセラミックス絶縁基板は、絶縁層が、上述した特徴的な組織からなるアルミナ-ジルコニアセラミックスでなる複合セラミックス層であり、基材層としては熱や電気
を伝える銅、又はアルミニウムを主体とすることが望ましい。なお、ここで主体とは、基材層を構成する組成物全体の質量を基準として、銅又はアルミニウムを50質量%以上含有するものをいう。すなわち、熱伝導や電気伝導の点から、銅又はアルミニウムは不純物の少ない純銅や純アルミニウムが望ましいが、強度面、又はその他の理由から基材層は、銅やアルミニウムを主体とし、熱伝導や電気伝導が著しく損なわれない範囲で、残部に銅及びアルミニウム以外の他の金属が含有されていても良い。ただし、ダイヤモンドはセラミックス層との接合力が小さいので、セラミックス層を形成させる面には露出していない方が望ましい。
本発明のセラミックス絶縁基板は、複合セラミックス層の厚さが薄く、基材層の厚さに制限がないため、回路基板や、ヒートシンク、ヒートスプレッダーとして優れた放熱機能を有する。従来のセラミックス絶縁回路基板は、ドクターブレード法やロールコンパクション法によってシート状に形成されたセラミックス素地を1300℃以上で焼成して得られる厚さ0.2mmから0.6mmの焼結体が使用されるが、本発明のセラミックス絶縁基板では、複合セラミックス層の厚さが、焼結体の厚さよりも薄くすることが出来る。ここで、従来の焼結体(セラミックス絶縁回路基板)より優れた熱伝導性を持たせるため、本発明の優れた機械特性、絶縁特性を有する複合セラミックス層は、基材層と垂直方向の厚さが200μm以下、望ましくは100μm以下であることが望ましい。また、複合セラミックス層は、絶縁性を確保する点や、さらに本発明の第2相粒子の最大径の値から、基材層と垂直方向の厚さが5μm以上であることが望ましい。
本発明のセラミックス絶縁基板において、一方の片側に半導体チップを搭載する電気回路を設け、他方の反対側に放熱を目的とするヒートシンクや、ヒートスプレッダーを設ける場合、本発明の基材層は、従来の方法に比較して厚さや、形態の制限がないため、ヒートシンクや、ヒートスプレッダーが配置される側にすることが望ましく、また後述するように基材層をそのままヒートシンクやヒートスプレッダーとすることもできる。さらに、電気回路は、複合セラミックス層を形成した後に銅、又はアルミニウム層を形成したものである方が本発明の効果が発揮されやすい。
本発明のセラミックス積層体を形成した後、上記回路のように別な面に膜を形成する方法は問わないが、後述する「エアロゾルデポジション法(AD法)やコールスプレー法」のようなカイネティックデポジション法、衝撃固化法で分類される方法の他、めっき法、溶射法、またはこれらを組み合わせた方法が挙げられる。
従来のセラミックス絶縁回路基板では、基材層とセラミックス層との接合時に発生する銅とセラミックスの熱膨張差から生じる熱応力が極めて大きくなる。そのため、従来では、銅でなる基材層の厚さには制限があり、例えばセラミックス層の板厚が0.2mmから0.6mmである場合、0.5mm以上の基材層に対してセラミックス層を接合させることが困難であった。したがって、基材層の銅面側をヒートシンクやヒートスプレッダーとして大きな熱量を発散させる場合、低融点金属ろう等で更に高熱伝導、高放熱性を有する構造体を複合セラミックス積層体の基材層に更に接合する必要がある。これに対して、本発明のセラミックス絶縁基板では、銅を始めとする金属板を基材層として用いた場合、当該基材層の厚さを、例えば10mmのように厚くすることが可能である。なお、この場合でも、放熱性を上げるため、基材層の表面を別な物質で修飾しても良く、また、基材層の表面に凹凸を付しても良いし、基材層の表面をフィン形状としても良い。
従来のセラミックス絶縁回路基板では、基材層とセラミックス層との接合時に発生する銅とセラミックスの熱膨張差から生じる熱応力が極めて大きくなる。そのため、従来では、絶縁セラミックス板の厚さやバランスに制限があった。例えば絶縁セラミックス板の板厚が0.2mmから0.6mmである場合、片側だけに金属板を接合すると熱応力で反りが生じてしまう。したがって、絶縁セラミックス板の両側にほぼ同じ厚さの金属を接合してバランスをとる必要があった。例えば、絶縁放熱回路基板を形成する場合、ヒートシンクとして0.3mmの銅を接合した場合、回路側にも0.3mm程度の銅回路を形成する必要があった。これに対して本発明のセラミックス積層体を使用することによって、0.5mmを越える銅を基材層として用い、絶縁セラミックス側に基材層の1/2以下の銅回路を形成することも可能であり、例えばヒートシンク側になる基材層の厚さを1mm以上に厚く、回路側の厚さを0.5mm以下に薄くし、両側の銅板厚の差を0.2mm以上とする構成も可能である。もちろん、回路に通電する電流量によって回路側の厚さを厚くしてもかまわない。この場合、本発明のセラミックス積層体に設ける金属回路の形成方法は、大きな熱が加わらない方法が望ましく、エアロゾルデポジション法が適している。更に厚さを増すためにコールドスプレーやめっき法を組み合わせても良い。
熱膨張係数は、アルミナ、ジルコニア、銅、アルミニウムの順に大きくなる。そのため、基材層を純銅や、純アルミニウムで形成して絶縁放熱基板とした場合には、複合セラミックス層を、アルミナ相中にジルコニア相が分散した形態とすることにより、複合セラミックス層の巨視的な熱膨張率を、銅やアルミニウムの熱膨張率に近づけることができる。よって、このようなセラミックス絶縁基板(セラミックス積層体)は、繰り返しの熱サイクルに対して熱歪み、熱応力がアルミナ単相のセラミックスよりも小さくなり、かつ機械特性に優れるため、疲労破壊が起こりにくくなる。また、ジルコニア相中にアルミナ相が分散した複合セラミックス層である場合、熱伝導率はジルコニア相よりアルミナ相の方が優れるため、ジルコニア単相のセラミックスよりも放熱性が向上する。
(製造方法)
基材層の一部、あるいは全面に、アルミナ相とジルコニア相で構成される複合セラミックス層が被覆された本発明のセラミックス積層体の製造方法は限定するものではないが、例えば、アルミナ原料粒子とジルコニア原料粒子とを気体と混合し、アルミナ原料粒子とジルコニア原料粒子とを気体と共に基材層の表面に向けて噴射して衝突させ、基材層の表面に複合セラミックス層を積層するエアロゾルデポジション法(AD法)を用いることが望ましい。その際、原料粉体(アルミナ原料粒子及びジルコニア原料粒子からなる粉体)とプロセス条件を制御することによって、本発明のセラミックス積層体を得ることが出来る。
AD法を用いる場合のプロセス要件としては、アルミナ原料粒子とジルコニア原料粒子とでなる原料粉体におけるアルミナ及びジルコニアの混合組成に近い組成で、基材層の表面に緻密に成膜できることが必要である。このために特定の1条件と限定させるものではないが、上記の要件を得るための条件は鋭意検討する必要がある。例えば、アルミナ原料粒子でなる粉体(アルミナ原料粉とも呼ぶ)と、ジルコニア原料粒子でなる粉体(ジルコニア原料粉とも呼ぶ)の両方が良好に堆積していかなければ緻密に分散した複合セラミックス層は得られない。また、成膜組成と混合組成が大きく異なると、複合セラミックス層の組成が変わったり、原料粉末中の一方の成分だけが抜けていったりするなどして長時間の安定した成膜が出来ないため、大面積で膜厚が大きい複合セラミックス層が得られない。このような点から、AD法で単相の膜を形成するときよりも格段に困難であり、良好な複合セラミックス層を得るためには、セラミックス積層体の構成相やその組み合わせによって、原料粉体の形態などを個別に検討しなければならない。
なお、本発明のセラミック積層体の製造方法としては、アルミナ原料粒子が気体に混合したエアロゾルと、ジルコニア原料粒子が気体に混合したエアロゾルとを個別に形成し、2つのエアロゾルがそれぞれ別のノズルから同時に噴射して基材層の表面に各エアロゾルを衝突させ、基材層の表面に複合セラミックス層を積層させる製造方法であっても良い。また、その他の製造方法としては、アルミナ原料粒子とジルコニア原料粒子とをあらかじめ所定の組成で混合した混合原料粉に対して気体を混合して当該混合原料粉のエアロゾルを生成し、1つのノズルから混合原料粉のエアロゾルを基材層の表面に向けて噴射して衝突させ、基材層の表面に複合セラミックス層を積層する製造方法であっても良い。
後者の製造方法の場合には、アルミナよりジルコニアの比重が大きいにもかかわらず、アルミナ原料粒子の粒径よりも、ジルコニア原料粒子の粒径の方が大きいものを使用することが望ましい。アルミナ原料粒子としてはメディアン径で1μm以下のものを使用することが望ましい。ジルコニア粉末は、加水分解プロセスを用いて化学的な手法で製造する方法と、電融体を粉砕して製造する方法があり、前者の方が微細で均一な一次粒子が得られやすいが、本発明のアルミナ-ジルコニア層を形成する場合、後者を原料とする方が、本発明の望ましい組織が得られやすく、緻密度も優れたものが得やすいため望ましい。これらアルミナ原料粒子及びジルコニア原料粒子を均一に混合するためにボールミル等で混合するが、このときの粉砕も考慮して、アルミナ原料粒子及びジルコニア原料粒子の粒度や混合条件を決める必要がある。
エアロゾルを形成する気体としては窒素ガスやヘリウム、アルゴン等の不活性ガスが挙げられる。ヘリウムガスは軽いためエアロゾルの噴射速さを上げられるため、アルミナ原料粒子及びジルコニア原料粒子の成膜可能な粒径の範囲等のプロセスウインドウは広がるが、コストの点を考慮すると窒素ガスの使用が望ましい。
最適な成膜条件は、原料の大きさによる。特に限定されるものではないが、原料粒子の大きさが、0.1μmから10μmの範囲のアルミナ-ジルコニア混合粉末である場合、噴射ノズルの入口と出口の差圧が、20kPa以上であり、ノズルを通過するガスの流速が50〜800m/s、成膜室の圧力が50Paから500Paの範囲に成膜ガス流量を調整すると、本発明の第2相粒子の平均径(0.02μm以上、0.3μm以下)の規定を満たす結果が得られる。このアルミナ‐ジルコニア混合粉末の原料粒子の大きさの範囲の中では、エアロゾルを形成するガスとして、窒素ガスを用いたときは下限(50m/s)側の流速とすることが望ましく、一方、ヘリウムガスを用いたときには上限(800m/s)側の流速とすることが望ましい。ノズルを通過するガスの流速が小さすぎると粒子の運動エネルギーが小さく成膜しない。一方、ノズルを通過するガスの流速が大きすぎると原料粒子が基材層を破壊してしまい、成膜しない。また、ノズルを通過するガスの流速が成膜範囲にあっても膜の密度や、平均配向角は変わる。平均配向角は、エアロゾル中の粒子の速さが大きいほど小さくなる傾向があるので、緻密な成膜ができる範囲で、成膜ガス流量は小さくし、成膜室の圧力は大きくした方が本発明の望ましい範囲(5°以上35°以下)の平均配向角が得られる。また、原料粒子のアスペクト比が小さいと平均配向角は小さくなる傾向がある。
エアロゾルデポジション法で平面に複合セラミックス層を成膜する場合、(i)成膜幅
と同じノズル幅のノズルを用いて、基材層の成膜面に沿ってノズル幅と垂直方向に、ノズル、又は基材層(ワーク)を成膜長さ分単純往復させる方法と、(ii)成膜幅よりも小さいノズル幅のノズルを用いて、ノズル又は基材層が当該基材層の成膜面に沿って往復運動する過程で、ノズル、又はワークを往復運動方向(成膜面長さ方向とも呼ぶ)と直交する横方向に送りながら成膜する方法とがある。後者の方法(ii)の場合、ワークに対して往復運動するノズルの位置が、成膜面長さ方向の初期座標位置に戻ったときの横方向への送り量(ピッチ)は、小さい方が均一な膜厚が得られ、ピッチは2mm以下である方が本発明の規定の平均配向角が得易い。
一方、円柱、円筒でなる基材層(ワーク)の周面に複合セラミックス層を成膜する場合は、ワークの中心軸を軸として回転させながら、複合セラミックス層を成膜してゆく。この際、平面に成膜する場合と同様に、(i)成膜幅と同じノズル幅のノズルを用いて、ノ
ズルを固定して成膜する方法と、(ii)成膜幅よりも小さいノズル幅のノズルを用いて、ノズルをワークの中心軸に対して平行としたまま、幅方向(軸方向)に送りながら、成膜面幅方向端部で送りを反転させて引き返らせ、周面に成膜する方法とがある。後者の方法(ii)の場合、ワークが1回転した時の送り量(ピッチ)は、小さい方が均一な膜厚が得られ、ピッチは2mm以下である方が本発明の規定の平均配向角が得易い。
(その他)
AD法で緻密な複合セラミックス層を形成した場合、第1相だけか、又は、第1相と第2相粒子との両方に圧縮場が形成される場合がある。このような圧縮場の大きさは、少なくとも面内方向には100MPa以上数GPa以下の圧縮応力となる可能性がある。アルミナとジルコニアの弾性率は異なるため、応力場が微視的に変化していることが予想され、その結果クラックの進展を阻害する効果が生じる。
従来のセラミックス絶縁回路基板では、セラミックス層と、銅や金属でなる基材層とを高温で接合するため、セラミックス層と基材層との熱膨張率差に起因する残留熱応力が発生してしまい、セラミックス層が破壊に至る問題がある。また、従来では、更にセラミックス絶縁回路基板に対して半導体や周辺機器を組み込む工程や、使用時の繰り返しの熱サイクルによって熱応力が加わり、セラミックス層が破壊に至る問題がある。
特に金属基材層とセラミックス層の接合面近傍で金属回路端部セラミックス側に、接合時に発生する残留引張応力と使用時に受ける熱的、機械的応力が重畳して、セラミックス層が破壊に至る場合が多い。セラミックス層の接合面銅板端部に発生する引張残留応力と熱サイクルによる応力とが加わると数100MPaの引張応力に達すると算出されている。本発明の複合セラミックス層に残留する面内方向での圧縮応力はこのような複合セラミックス層を破壊する応力を緩和し、使用時の繰り返しの熱サイクルに起因する熱応力による破壊を抑制することが期待できる。
ジルコニア相は室温では単斜晶が安定であり、焼結温度範囲が入る1170℃から2200℃では正方晶、更に高温では立方晶が安定である。したがって、焼結後室温まで冷却すると正方晶から単斜晶にマルテンサイト変態する。相変態に伴い大きな体積変化が生じるため、ジルコニア相内にクラックが生じてしまい、機械的強度を著しく低下させる場合がある。したがって、一般的な焼結体では、これを防止するためにイットリアやカルシアを一定量入れ、高温相を安定化する必要がある。
本発明のセラミックス積層体の製造方法では焼結工程を経ないことから、使用温度が1170℃以下である場合、ジルコニア相の結晶形は問わない。ただし、ジルコニア相が正方晶から単斜相に応力誘起変態することによってクラック先端のエネルギーを吸収する強靭化機構を活用するには、使用する温度で少なくても一部のジルコニア相は正方晶になっている必要がある。
本発明の製造方法で作製する緻密な複合セラミックス層は、原料に単斜晶ジルコニアを使用しても正方相ジルコニアを含む相が形成されることが特徴である。したがって、高温相を安定化するためのイットリア、セリア、カルシア、マグネシア等の安定化剤を含有させなくても機械的特性が優れたセラミックス積層体になる。このセラミックス層は安定化剤を含有しておらず、安定化剤の含有量は本来0%であるかまたは不可避的不純物レベルである。ただし、含有量を蛍光X線等の分析方法で確認する場合、一般的な検出限界が0.05質量%である。したがって、一般的な安定化剤として使用されるセラミック層中のイットリウムとセリウムを足し合わせた含有量は0.1質量%以下であると、規定してもよい。価格の高いイットリア、セリアを意図的に含有させなくとも良いのは、コストの面で有利である。勿論、高温で使用する用途がある等の理由により、上記の安定化材を複合セラミックス層内に混入して、正方相や機械的な強度に優れる立方晶のジルコニア相と、アルミナ相とで構成された複合セラミックス層としても構わない。この場合でも安定化剤であるイットリア、セリアの量は、焼結法に比較して少なくて済み、部分安定化するためには、原料ジルコニアに対して、通常の焼結法より少ない量、例えば5質量%以下で済む。
セラミックス膜中で正方晶ジルコニアの応力誘起変態を利用する場合、ジルコニア粒子は膜厚方向に扁平していると膜厚と垂直方向の強度、靭性を補うことが可能になり望ましい。立方晶ジルコニアはそれ自体が強度が高く、安定化剤を多く含有して立方晶ジルコニアの割合を増やすことは、強靭化に有利である。一方、安定化剤を多く入れすぎるとイオン電導性を有する立方晶ジルコニアの量が増すため、セラミックス絶縁基板として立方晶ジルコニアを第1相として使用する場合は、絶縁性に留意すべきである。
以上の構成において、本発明のセラミックス積層体では、第1相よりも総面積率が小さ
い、ジルコニア相又はアルミナ相でなる第2相粒子が第1相に分散した組織を有し、第2相粒子の円相当径の最大値が5μm以下とし、第2相粒子の平均径を、0.02μm以上、0.3μm以下とし、かつ第2相粒子を楕円と見立てたときの相当楕円の長径と短径との比の平均値を、2以上、10以下とし、空隙の面積率が5%以下とした。これにより本発明では、優れた耐熱疲労性や、熱伝導性、絶縁性を有する複合セラミックス層の破壊靭性値や、絶縁破壊電界値が増大し、複合セラミックス層の機械的特性が高く、優れた耐久性及び放熱性を有したセラミックス積層体及びセラミックス絶縁基板、更にはセラミックス絶縁回路基板を実現できる。
以下、本実施例に基づいて本発明を詳細に説明するが、これは本発明の例を示すものであり、本発明は実施例によって何ら限定されるものではない。
(実施例1)
ここでは、実施例1として、エアロゾルデポジション法を使用して、銅基材層上に、アルミナ-ジルコニアでなる複合セラミックス層を形成したセラミックス積層体を用意した。また、一般的な焼結法で製造したアルミナ-ジルコニア焼結体を比較例1として用意した。そして、上述した実施例1について、比較例1と比較することで、組織の特徴と機械的特性の特長を調べた。
吟味の結果、使用したアルミナ原料粉とジルコニア原料粉は、アルミナ原料粉が純度99.5質量%、メディアン径、0.73μm、最大径、6.7μmのα-Alであ
り、ジルコニア原料粉が純度98質量%、メディアン径、4.7μm、最大径が19.1μmの単斜晶ジルコニア電融粉である。アルミナ原料粉中の主な不純物は、酸化ナトリウム(NaO)が0.06質量%、マグネシア(MgO)が0.06質量%であり、ジルコニア原料粉中の主な不純物は、シリカ(SiO)が0.19質量%、酸化鉄(Fe)が0.12質量%、チタニア(TiO)が0.1質量%である。ここでメディアン径とは、累積個数分布図で50%の高さを与える直径であり中位径(d50)である。
これらの原料粉末をジルコニアの含有量が20質量%になるように秤量して、同じ重量で直径10mm、純度99.9質量%以上のアルミナボールと共に樹脂製ポットに入れ、更に粉体が隠れる程度のアセトンを樹脂製ポット内に入れ、湿式で6時間混練、粉砕し、乾燥させ、これをφ250μmのふるいにかけ、得られた粉末を混合原料粉とした。混合原料粉のメディアン径は0.73μm、最大径が8.2μmであった。混合原料粉中の不純物をICP発光分析で確認したところ、カルシウムが0.01質量%、イットリウムが0.02質量%、マグネシアが0.06質量%、セリウムが0.01質量%以下であり、ジルコニアの安定化成分は殆ど含まれていないことを確認した。
そして、この混合原料粉を使用して22×22×t2mmの純銅板上に複合セラミック層を形成した。具体的には、十分乾燥した混合原料粉をエアロゾル室に投入し、エアロゾル室内を振動させながら12L/min.の窒素ガスをエアロゾル室内に送ってエアロゾルを形成した。次いで、0.1kPaに減圧した成膜室に圧力差を使ってエアロゾルを移送し、開口サイズがX方向0.3mm、Y方向5mmのノズルから、水平駆動する基材層となる純銅板(銅基材層)に噴射し、純銅板の表面に成膜を行った。ノズルを通過するガスの流速は、133m/sである。
基材層の駆動速さはX方向に0.5mm/sで25mm移動させて、1層、1方向の成膜毎に駆動方向と直角方向(Y方向)に1mm成膜位置をずらすことを繰り返して(1mmピッチで)、面の成膜を行った。Y方向に30mm移動した後、Y方向の駆動を反転させて成膜を行い、ノズルが元の位置に戻り、積層回数が2になったところで、Y方向の駆動を再び反転させる。すなわち成膜領域は25x30mmになる。銅基材は成膜領域の中央に配置した。積層回数は30回とした。このようにして22x22mm角の銅基材の片側全面に複合セラミックス層が積層したセラミックス積層体を作製し、これを実施例1とした。
実施例1の成膜面についてX線解析を行ったところ、アルミナ相とジルコニア相で構成されていることが分かった。アルミナ相のピークはα-Alと一致した。一方、ジ
ルコニア相のピークは、ジルコニア原料粉と同じ単斜晶に加えて、焼結のための加熱がされておらず且つ安定化剤が含有されていないにも関わらず、高温相である正方晶も存在することが分かった。膜面の成分を蛍光X線で確認したところ、ジルコニアの安定化剤であるイットリウム、セリウム、カルシウム、マグネシウム、及びイットリウムとセリウムを除く希土類元素は検出されず、それぞれ検出限界の0.05質量%以下であることが確認された。すなわち、膜中のイットリウムとセリウムの総量は、0.1質量%以下である。
アルミナ相とジルコニア相のX線の回折ピークは歪みのない粉末に比較してやや低角側にシフトしていた。その程度はピークによって違っていたが、基材層の銅のピークとの比較等も考慮し、少なくとも面内方向に100MPaから2GPa程度の圧縮応力は入っていると推測できた。
次に銅基材層と複合セラミックス層との接合面と直交する断面を鏡面研磨し、極薄いカーボンで導電処理をして、断面を観察した。観察はFE−SEM(ULTRA55、Zeiss社製)を使用した。その結果、銅基材層の表面には、50μmの厚さの膜(複合セラミックス層)が形成されていることが分かった。複合セラミック層の組織について詳細に調べるため、加速電圧を5kV、倍率を20000倍として、反射電子像を観察した。その結果得られた像を図4に示す。図4では、紙面水平方向(反射電子像のキャプションが配列されている方向)が銅基材層と複合セラミックス層との接合面と平行方向を示し、紙面縦方向が接合面垂直方向を示す。視野の大きさは5.66×4.25μmである。
図4で示したように、複合セラミックス層1は、中間的なコントラストで最も面積率の大きな灰色の第1相2と、粒子状での明るいコントラストに見える第2相粒子3と、黒くつぶれて見える空隙4とで構成されていることが分かった。FE-SEMに付設されてい
るエネルギー分散型X線分析装置で、複合セラミックス層1を分析した結果、第1相2はアルミナ相であり、粒子状の第2相粒子3はジルコニア相であることが分かった。
第2相粒子となるジルコニア相は、おおよそ接合面と垂直方向につぶれて扁平していることが確認できた。その大きさは混合原料粉の中心径より小さかった。20000倍の倍率では画素の大きさから、理論的に直径0.002μm以上の粒子を検出でき、直径0.01μm以下の粒子も観察されたが、0.01μm以上の粒子で99%以上、殆どの面積率を占めた。一方、第1相のアルミナ相の結晶粒も、ジルコニア相の第2相粒子と同様に扁平し、結晶粒の大きさは第2相粒子より微細であった。
第1相、第2相粒子とも縦方向と横方向のアスペクト比は大きく、おおよそ接合面と平行な層状の組織を呈しているが、完全に平行ではなく、うねったように揺らいだ形態をしていた。
第2相粒子であるジルコニア相の特徴を見るために画像処理を行って形態解析を行った。比較のために、ドクターブレード法によってグリーンシートを焼結して作製した厚さ0.3mmのアルミナ-ジルコニア焼結体(比較例1)の断面観察も行った。このアルミナ-ジルコニア焼結体は、イットリアを含有させて部分安定化処理を行った。比較例1の観察した断面は板厚方向を縦方向、板面方向を横方向とした断面である。比較例1の調整方法は実施例1と同じである。
実施例1及び比較例1の2種類の試料の試料断面について、視野の位置が異なる5視野について反射電子像を撮像した。加速電圧等の観察条件はほぼ同じであるが、比較例1における第2相粒子の大きさが、AD法で作製した複合セラミックス層の第2相粒子(ジルコニア相)の大きさより1桁程度大きかったため、撮像倍率は、実施例1が図4と同じ20000倍としたのに対し、比較例1の撮像倍率は、1/10倍の2000倍とした。後者の1視野の大きさは、56.6×42.5μmである。
このようにして得た反射電子像について、画像処理ソフト(Image Pro、日本ローパー社製)を使用してジルコニア相(第2相粒子)の形態解析と空隙の面積率の算出を行った。ジルコニア相の形態解析結果を表1に示した。
表1の指標と、各指標を求めた手順とは下記のとおりである。
まず、複合セラミックス層を映した反射電子像の中から、第2相粒子となるジルコニア相のみを抽出するため、当該反射電子像の2値化を行った。そして、2値化した画像(2値化画像)内にあり、殆どの面積を占める大きさ0.01μm以上の粒子の第2相粒子(ジルコニア相)の数(総粒子数)と、総面積率とを出した。ここで、粒子の大きさとは、第2相粒子の2値化画像のピクセル数を面積に換算して円相当径を算出したものである。
同様に、第2相粒子の最大径と平均径は、個々の第2相粒子の2値化画像のピクセル数を面積に換算して円相当径を算出し、その最大値を最大径とし、平均径は、個々の第2相粒子の円相当径の合計を第2相粒子の総粒子数で除した値とした。
第2相粒子のアスペクト比や配向性の特徴は、2値化画像で得られた個々の第2相粒子を相当楕円に置き換え統計処理を行った。ここで相当楕円とは、対象とした第2相粒子の断面と0次、1次、2次モーメントが一致するする楕円をいう。すなわち、相当楕円とは対象とした第2相粒子の断面と同じ面積、重心を持ち、長軸の方向、短軸の方向、アスペクト比を定量評価するために定義した楕円である。
本発明の第2相粒子のアスペクト比を表す「第2相粒子の長径、短径の比の平均」とは、それぞれの第2相粒子を楕円と見立てたときの相当楕円長径と相当楕円短径との比を総和した値を、第2相粒子の総粒子数で割った平均値である。表1では「長短軸比」と表記する。
表1で配向角とは、個々の第2相粒子の相当楕円長径の方向と、セラミック積層体の基材層および複合セラミック層の接合面の面方向(すなわち画像水平方向)とのなす角度を±180°表記で表したときの絶対値を表したものであり、相当楕円の対称性から個々の第2相粒子の配向角は±90°の値をとる。すなわち、配向角の角度が小さいほど、相当楕円長径の方向と、接合面の面方向とのなす角は小さくなり、扁平した第2相粒子は接合面法線に近い方向につぶれていることになる。配向角が45°より小さいときは、扁平した第2相粒子が接合面に寝ており、配向角が45°より大きいときは、扁平した第2相粒子が接合面に対して立っていることを表す。表1で「配向角30°以下の粒子割合」とは、配向角30°以下で、相当楕円長径の方向が接合面の面方向に近い第2相粒子の総粒子数に対する割合を表わす。また、平均配向角とは、個々の第2相粒子の配向角の総和を、第2相粒子の総粒子数で除したときの平均値である。
実施例1と比較例1とにおける第1相に対する第2相粒子の面積率はともに14.6%と一致した。しかし、第2相粒子の形態は大きく異なることが分かった。まず、実施例1と比較例1とでは、第2相粒子の大きさが1桁近く異なっており、実施例1のほうが比較
例1よりも平均径が1/7以下と微細であった。アスペクト比は、実施例1のほうが比較例1よりも大きかった。
本実施例で使用したソフトウエアでは、第2相粒子と外接する長方形の縦(垂直フェレ径)および横(はさみ径(水平フェレ径))の長さの最大値、を解析可能であるが、垂直フェレ径および水平フェレ径で評価した長軸の長さ、短軸の長さ、並びにこれらの比と、本発明規定の相当楕円の長径、短径、長短軸比との差は10%以下であった。
比較例1は、第2相粒子のアスペクト比がほぼ1であったが、板厚と垂直方向で第2相粒子同士が連結していたことからアスペクト比が大きく出たものと考えられ、個々の第2相粒子のアスペクト比はより差がある。
配向角30°以下の第2相粒子の割合は、実施例1で80%を超えており、実施例1の第2相粒子は、扁平し、かつ基材層及び複合セラミックス層間の接合面に対し、当該接合面の法線方向につぶれて配向していることがわかった。また、実施例1において平均配向角が、0°ではなく、約20°になっているのは、第2相粒子が接合面と平行な層状の組織を呈しているが、完全に平行ではなく、うねったように揺らいだ形態をしていることを反映している。一方、アルミナ-ジルコニア焼結体である比較例1の平均配向角は40°であり、完全にランダムな方向を向いている場合の45°に近い値であった。
比較例1の板面に対して、実施例1と同様にX線広角回折を行った結果、実施例1と同様に第2相粒子となるジルコニア相は正方晶と単斜晶が混在しており、更に母相のα-Alが認められた。実施例1及び比較例1のそれぞれのX線回折ピークは、歪みのない粉末のものとほぼ一致するかやや高角側にシフトしており、面内方向にはほぼ歪みがないかやや引張応力が働いていると推察された。
ジルコニア相の画像解析と同様な方法を用いて、空隙の暗いコントラストを抽出するように2値化して空隙の面積率を測定した。その結果、実施例の材料で1視野の最大値が4.91%、平均で2.21%、比較例の材料で1視野の最大値が5.09%、平均0.72%であった。比較例で最大値が出た視野は大きな空隙が偶発的に観察視野に入ったことによるもので、平均値を算出するときは除外した。比較例の試料は、局所的に大きな空隙がある場所が存在する。
これら実施例1及び比較例1の各複合セラミックス層について、ビッカース硬度を測定した。実施例1及び比較例1の各複合セラミック層の表面を僅かに研磨した後、100gfの荷重でダイヤモンド圧子(以下、単に圧子とも呼ぶ)を押し込み15秒保持したのち、圧子を上げる操作を十分な距離をおいて繰り返し、薄くカーボン蒸着してFE−SEMで圧痕とクラックの観察を行った。
ビッカース硬度は、共に16GPa±2GPaの範囲に入っていた。一方、圧子の頂部からは実施例1及び比較例1のいずれの試料にも圧子対角線の方向にクラックの進展が認められたが、クラックの長さは比較例1より実施例1のほうが小さかった。実施例1の破壊靭性が比較例1より高いことが分かった。
一方、実施例1の接合面と垂直な断面と、比較例1の厚さ方向の断面とについても硬度測定を実施した。実施例1及び比較例1のそれぞれの試料を研磨用埋込樹脂に埋め込んでその断面を鏡面研磨し、圧子を板厚方向中央に押し込んで、測定を行った。板厚方向(実施例1では接合面と垂直方向)と、板面に対して平行な板面平行方向(実施例1では接合面と平行方向)とに荷重を70gfの荷重で圧子を押し込み15秒保持したのち、圧子を上げる操作を十分な距離をおいて繰り返した。圧子の方向は研磨面上方から見た時のおおよそ正方形の形になるビッカース圧痕の頂点を結ぶ直交する対角線が膜厚方向と垂直と平行になるようにした。その後、研磨面に薄くカーボン蒸着してFE−SEMで圧痕とクラックの観察を行った。
板面平行方向のクラックは、実施例1、比較例1とも第2相粒子界面に沿って発生していたが、実施例1のほうが比較例1よりも総じて幅が小さかった。実施例1及び比較例1のいずれの試料でも第2相粒子によってクラックの迂回は認められたが、比較例1では、クラックが第2相粒子の界面に沿って進行していたり、クラックが第2相粒子を貫通して進展する様子が認められた。一方、実施例1についてクラックと組織の関係を調べると、第2相粒子、またはその近傍でクラックの方向が曲げられ迂回している頻度が高いことが確認された。また、実施例1では、接合面と平行した平行方向のクラックを確認したところ、図4に見られる第2相粒子が湾曲して連なっているうねりに沿ってクラックが曲げられていることが観察された。
一方、板厚方向に関しては、比較例1の試料では圧子の頂部から、圧跡対角線方向、すなわち板厚方向に水平方向と同程度のクラックが進展していることが観察されたが、実施例1ではクラックは全く認められなかった。このことから、本発明の実施例1では、接合面と垂直方向に対する破壊靭性が極めて優れることが確認された。
実施例1で総じてクラックの広がりが小さかったのは、第2相粒子の面積率(体積率)が同じであっても、進展するクラック先端と、第2相粒子とが近接する確率が高かったためである。すなわち、アルミナ相(第1相)とジルコニア相(第2相粒子)が混在することによる応力場によってクラックの進展方向が変えられる機会が多かったことによる。また、実施例1は、(i)ジルコニア相の相変態温度を通過しないプロセスで製造され、かつ単斜晶原料を使用したにもかかわらず、ジルコニア相の相変態に伴う体積変化による大きなクラックの発生が防止できたこと、(ii)更にイットリア、セリア、カルシア、マグネシア等の安定化剤がなくても室温で正方晶のジルコニア相が導入できたため、応力誘起変態することによってクラック先端のエネルギーを吸収する機構を働かせることができたことも破壊靭性の向上に寄与したものと考えられる。
一方、接合面と垂直方向における破壊靭性が比較的等方的な比較例1(アルミナ-ジル
コニア焼結体)に比較して、実施例1が接合面と垂直方向における破壊靭性に極めて優れていたのは、(i)ジルコニア相の第2相粒子だけでなく、第1相のアルミナ相の結晶粒も扁平しており、接合面に対して垂直方向において結晶粒界を進展するクラックが大きく迂回される効果と、(ii)面内方向に特に強い圧縮応力を有しているため、クラック先端の引張応力がこの圧縮応力と相殺され、亀裂先端開口エネルギーが小さくなった効果とによる。
実施例の試料に対し、膜圧方向に絶縁破壊電界を測定した。JISC2110(2010)の図1(c)において、上部電極を直径12.5mmの球電極に変更した組み合わせで行った。測定は直流油中で行なった。その結果、3点の平均の絶縁破壊電界値は270×10V/mであった。一般的なアルミナ系の焼結体の絶縁破壊電界値は10〜18×10V/mであることから、その10倍以上の絶縁性能を有することがわかった。
以上のように、第2相粒子が微細で特定方向に揺らぎをもって配列された複合セラミックス層を基材層に積層した本発明のセラミックス積層体は、優れた機械特性を示すことが示された。このようなセラミックス積層体は、機械的特性が必要な搬送ロール等の構造体に活用できる他、特に基材層が銅やアルミニウムなどの熱膨張係数が大きく異なる金属と、セラミックス層とを一体化させることが多いセラミックス絶縁基板としても用いることができる。本発明のセラミック積層体をセラミック絶縁基板として用いた場合には、複合セラミックス層の機械的特性の向上によって、複合セラミックス層の厚さを従来よりも小さくしつつ、放熱性が高いセラミックス絶縁基板を実現できる。また、本発明のセラミックス積層体は、複合セラミックスの特殊な組織構造による効果と積層体製造時に発生するセラミックスに残留する引張応力が小さくなる効果によって繰り返しの熱サイクルによる引張熱応力に対する寿命を高め、優れた耐久性を有するセラミックス絶縁基板を実現できる。
(実施例2)
2種類の原料を使用して、ジルコニアを主体としたアルミナ-ジルコニアセラミックスを試作した。1つは、市販のアルミナ粉とジルコニア粉を混合した原料をエアロゾルデポジション法で成膜した材料(試料3)と市販のアルミナ-ジルコニア混合粉末を原料としてエアロゾルデポジション法で成膜した材料(試料4)である。
両方の原料ともアルミナを20質量%含むジルコニアを主体として、ジルコニアの安定化のためにイットリアを含有したものである。
試料3の原料粉末は、実施例1に使用したアルミナ粉末と部分安定化したジルコニア電融粉である。ジルコニア電融粉は部分安定化されたものであり、ジルコニアに対して5.5質量%のイットリアを含む。中心粒子径(メディアン径)は3.5μmであった。このジルコニアとアルミナをジルコニアが20質量%になるように秤量して、テフロン製のボールミルポットに入れ、直径10mmアルミナボール、エタノールと共に10時間混練した。取り出した粉末を十分乾燥した。この粉末を水分散液に分散させて粒度測定を行ったところ、メディアン径は0.9μmであった。アルミナ-ジルコニア原料粉末総量に対するイットリアの含有量は4.4質量%と計算される。
一方、試料4の原料に使用した市販のアルミナ-ジルコニア粉末は、ジルコニアとアルミナの比率は試料3の原料粉と同じで、ジルコニアは3mol%のイットリアを含有し、同様に部分安定化されているが、ジルコニアは加水分解を利用した化学的手法で製造されており、1次粒子径はおおよそ0.09μmと小さく、アスペクト比も小さい。
これらの粉末をエアロゾルデポジション法で同じ条件で成膜した。基材は50×50×5mmのCr-Mo鋼を使用した。この基板上に十分乾燥した混合原料粉をエアロゾル室に投入し、エアロゾル室内を振動させながら10L/min.の窒素ガスをエアロゾル室内に送ってエアロゾルを形成した。次いで、0.3kPaに減圧した成膜室に圧力差を使ってエアロゾルを移送し、開口サイズがX方向0.3mm、Y方向5mmのノズルから、水平駆動する基材層となるCr−Mo鋼板に噴射し成膜を行った。
基材の駆動速さはX方向に1mm/sで、30mm駆動させた後、駆動方向を逆転させ、30mm駆動し、再度駆動方向を逆転させることを繰り返し、5×30mmの領域に厚さ10μmの膜を成膜し、Cr−Mo鋼を基材とするアルミナ-ジルコニア積層体を作製した。
このようにして作製した積層体、試料3と試料4の成膜面についてX線解析とラマン分光法で構成する相の同定を行ったところ、いずれもアルミナ相とジルコニア相で構成されていることが分かった。アルミナ相のピークはα-Alと一致した。一方、ジルコニア相のピークは、いずれも正方晶、立方晶が存在することが分かった。
次に成膜領域の中央部分をY方向に膜面と垂直に切断し、樹脂に埋め込んだ後、鏡面研磨、鏡面処理をして、走査型電子顕微鏡の2次電子像により組織を観察した。加速電圧5kVで倍率20000倍の2次電子像を場所を変えて10視野測定し、最大値や平均値を算出した。本実施例の試料では第2相はアルミナであり、画像処理にて、アルミナ粒子とそれ以外のジルコニア母相、空隙を分離して、アルミナ粒子の形態解析を行った。また、同じ画像を用いて空隙とそれ以外のアルミナ粒子、ジルコニア母相を分離して空隙の面積率を算出した。アルミナ粒子は、0.01μm以下の粒子も見られたが、0.01μm以上の粒子が面積率の殆どを占めた。10視野のアルミナ粒子の総数は5000個以上になる。アルミナ粒子の形態の解析結果を表2に示した。使用した画像解析ソフト、粒子の形態を示すそれぞれの指標の定義は実施例1と同じである。
試料3におけるアルミナ粒子は大きく扁平し、長短軸比が大きく本発明の組織規定を満たしていた。一方、試料4のアルミナ粒子の大きさは本発明の規定を満たしていたが、試料3の空隙の面積率は0.69%であったのに対し、試料4の空隙の面積率は9.8%と大きかった。また、試料4は、長短軸比が規定の範囲外であった。さらに、試料4の配向角30°以下の第2相粒子割合、及び平均配向角は、好ましい範囲外であった。母相のジルコニア相の結晶粒も試料3ではアルミナ粒子と同等な大きさで扁平していたが、試料4では、個々の結晶粒の大きさは小さかったが、扁平度が小さかった。また、ジルコニア原料粒子の1次粒子が微細であったにもかかわらずジルコニア母相は空隙が多くポーラスであった。
試料4のアルミナ粒子の最大径が大きいのは、緻密な膜上では通常変形できず成膜されずに落ちてしまうエアロゾル中のアルミナ原料粒子が、膜が変形、又は破壊しやかったことにより物理的に埋め込まれる形で膜内に取り残されてしまったものと考えられる。その原因は、膜がポーラスであること、及び粒子の変形が小さく、膜を構成する粒間の結合力が小さいためである。更に単に巻き込まれた粒子とその周囲の粒子の界面での結合力が弱く、このような粒子の周囲には、変形や破壊等で大きな空隙が形成されるため、機械的な特性を低下させる要因となる。
実際、試料3と試料4の膜を上からピンセットで削るように強くこすったところ、試料3は膜内、並びに膜と基材との界面で全く剥がれることはなかったが、試料4の膜は膜内で破壊し削り取られた。試料3と試料4の違いは、上述した膜の組織形態の差に起因する。
(実施例3)
組成と結晶構造の異なるジルコニアを使用して、アルミナ−ジルコニアセラミックス積層体を作製し、機械的特性と電気的特性を評価した。
試料5の原料粉は、ジルコニアの含有量が12質量%のアルミナ−ジルコニア混合粉である。原料混合粉の混錬はボールミルを利用した。原料のアルミナは、実施例1に使用したものと同じである。また、ジルコニアは、成分、不純物量は実施例1と同じ安定化元素を含有させていない電融粉であるが、粒径はメディアン径で1.1μm、最大径で11μmの微粉砕した市販品を利用した。
これらの原料粉末をジルコニアの含有量が12質量%、アルミナの含有量が88質量%になるように秤量した。直径10mm、純度99.9質量%以上のアルミナボールと共に樹脂製ポットに入れ、更に粉体が隠れる程度のエタノールを樹脂製ポット内に入れ、湿式で20時間混練、粉砕し、乾燥させ、これをφ250μmのふるいにかけ、得られた粉末を混合原料粉とした。混合原料粉のメディアン径は0.48μm、最大径が3.8μmであった。
これらの粉末をエアロゾルデポジション法で同じ条件で成膜した。基材は40×40×1mmの無酸素銅板を使用した。この基板上に十分乾燥した混合原料粉をエアロゾル室に投入し、エアロゾル室内を振動させながら8L/min.の窒素ガスをエアロゾル室内に送ってエアロゾルを形成した。次いで、0.3kPaに減圧した成膜室に圧力差を使ってエアロゾルを移送し、開口サイズがX方向0.3mm、Y方向5mmのノズルから、水平駆動する基材層となるCu板に噴射し成膜を行った。
基材の駆動速さはX方向に0.5mm/sで、30mm駆動させた後、駆動方向を逆転させ、30mm駆動し、再度駆動方向を逆転させることを繰り返し、5×30mmの領域に厚さ80μmの膜を成膜した。
試料6の原料粉は、ジルコニアの含有量が20質量%のアルミナ−ジルコニア混合粉である。原料混合粉の混錬はボールミルを利用した。原料のアルミナは、実施例1に使用したものと同じである。また、ジルコニアは、5.5%のイットリアを含有した市販の部分安定化ジルコニアで、粒径はメディアン径で1.1μm、最大径で13μmの微細な市販品を利用した。
これらの原料粉末をジルコニアの含有量が20質量%、アルミナの含有量が80質量%になるように秤量した。これらの原料粉末を直径10mm、純度99.9質量%以上のアルミナボールと共に樹脂製ポットに入れ、更に粉体が隠れる程度のエタノールを樹脂製ポット内に入れ、湿式で20時間混練、粉砕し、乾燥させ、これをφ250μmのふるいにかけ、得られた粉末を混合原料粉とした。混合原料粉のメディアン径は0.63μm、最大径が5.4μmであった。アルミナ-ジルコニア原料粉末中のイットリアの含有量は1.1%と計算される。
この粉末をエアロゾルデポジション法で同じ条件で成膜した。基材は試料5と同じ40×40×1mmの無酸素銅板を使用した。この基板上に十分乾燥した混合原料粉をエアロゾル室に投入し、エアロゾル室内を振動させながら12L/min.の窒素ガスをエアロゾル室内に送ってエアロゾルを形成した。次いで、0.04kPaに減圧した成膜室に圧力差を使ってエアロゾルを移送し、開口サイズがX方向0.3mm、Y方向5mmのノズルから、水平駆動する基材層となるCu板に噴射し成膜を行った。
基材の駆動速さはX方向に0.5mm/sで、30mm駆動させた後、駆動方向を逆転させ、30mm駆動し、再度駆動方向を逆転させることを繰り返し、5×30mmの領域に厚さ80μmの膜を成膜した。
試料7の原料粉は、ジルコニアの含有量が50質量%のアルミナ−ジルコニア混合粉である。原料混合粉の混錬はボールミルを利用した。原料のアルミナは、実施例1に使用したものと同じである。また、ジルコニアは、8.07%のイットリアを含有した市販の安定化ジルコニアで、粒径はメディアン径で1.7μm、最大径で13μmの微細な市販品を利用した。
これら原料粉末をアルミナ、ジルコニアそれぞれの含有量が50質量%になるように秤量して、同じ重量で直径10mm、純度99.9質量%以上のアルミナボールと共に樹脂製ポットに入れ、更に粉体が隠れる程度のエタノールを樹脂製ポット内に入れ、湿式で20時間混練、粉砕し、乾燥させ、これをφ250μmのふるいにかけ、得られた粉末を混合原料粉とした。混合原料粉のメディアン径は0.72μm、最大径が5.4μmであった。アルミナ-ジルコニア原料粉末中のイットリアの含有量は4.04%と計算される。
この粉末をエアロゾルデポジション法で同じ条件で成膜した。基材は試料5と同じ40×40×1mmの無酸素銅板を使用した。この基板上に十分乾燥した混合原料粉をエアロゾル室に投入し、エアロゾル室内を振動させながら10L/min.の窒素ガスをエアロゾル室内に送ってエアロゾルを形成した。次いで、0.1kPaに減圧した成膜室に圧力差を使ってエアロゾルを移送し、開口サイズがX方向0.3mm、Y方向5mmのノズルから、水平駆動する基材層となるCu板に噴射し成膜を行った。
基材の駆動速さはX方向に0.5mm/sで、30mm駆動させた後、駆動方向を逆転させ、30mm駆動し、再度駆動方向を逆転させることを繰り返し、5×30mmの領域に厚さ80μmの膜を成膜し、銅を基材とするアルミナ-ジルコニア積層体を作製した。
以上のようにして作製した試料5〜7の試料に対して、X線回折とラマン分光法で構成する相の同定を行ったところ、いずれもアルミナ相とジルコニア相で構成されていることが分かった。アルミナ相のピークはα-Alと一致した。一方、ジルコニア相のピークは、それぞれ異なった。試料5では単斜晶と正方晶を含有した。試料6、及び試料7では正方晶、立方晶を主体としてわずかに単斜晶を含有した。
また、それぞれの試料中の膜面を蛍光X線で分析したところ、試料5ではイットリウムを含めた希土類元素は検出されず、イットリウムとセリウムの総量は基材の銅を除いて0.1質量%以下であることが確認された。
次に成膜領域の中央部分をY方向に膜面と垂直に切断し、樹脂に埋め込んだ後、鏡面研磨、鏡面処理をして、走査型電子顕微鏡の2次電子像により組織を観察した。加速電圧5kVで倍率20000倍の2次電子像を場所を変えて10視野測定し、最大値や平均値を算出した。本実施例の試料では第2相はジルコニア粒子であり、画像処理にて、ジルコニア粒子とそれ以外のアルミナ母相、空隙を分離してジルコニア粒子の形態解析を行った。また、同じ画像を用いて空隙とそれ以外のジルコニア粒子、アルミナ母相を分離して、空隙の面積率を算出した。ジルコニア粒子は、0.01μm以下の粒子も見られたが、0.01μm以上の粒子が面積率の殆どを占めた。10視野のジルコニア粒子の総数は3000個以上になる。ジルコニア粒子の形態の解析結果を表3に示した。使用した画像解析ソフト、粒子の形態を示すそれぞれの指標の定義は実施例1、実施例2と同じである。また、組織解析に使用した画像の1例として試料6の2次電子像を図5に示した。図5において上下方向(反射電子像のキャプションが配列されている方向に垂直な方向)が膜厚方向である。試料4、6もジルコニア相の面積率の違いはあるが、同様に微細な組織を呈していた。
試料5〜試料7の膜はいずれもアルミナを母相としてジルコニア相を第2相とした微細な結晶粒で構成されていた。また、反射電子像でアルミナ母相の結晶粒が判別できるが、ジルコニア粒子と同程度の結晶粒で構成され、膜厚方向に強く扁平した組織を呈していた。空隙は少なく緻密であり画像解析から算出した空隙の面積率は、試料5で0.311%、試料6で0.0564%、試料7で0.121%であった。実施例1に比較して密度が高いのは、原料粒子が微細であったためと考えられる。
試料5〜試料7において第2相であるジルコニア粒子は大きく扁平し、長短軸比が大きく本発明の組織規定を満たしていた。特に試料6のジルコニア粒子は強く変形しており、長短軸比が大きかった。一方、配向角は3つの試料で最も小さかった。この理由として、試料6の成膜条件はガス流量が大きく、かつ成膜室圧力が低かったため、エアロゾル内の原料粒子が銅基材に衝突する速さが最も高かったことによる。3つの試料の中で密度が最も高かったのもこのためと考えられる。
次にこれら3つの試料のアルミナ-ジルコニア研磨面にビッカース圧子を打って、クラックを観察して、靭性を評価した。ビッカース圧子は実施例1と全く同じ方法で行った。すなわち、圧子を板厚方向中央に70gfの力で圧子を押し込み15秒保持したのち、圧子を上げる操作を十分な間隔をおいて繰り返した。圧子の方向は研磨面上方から見た時のおおよそ正方形の形になるビッカース圧痕の頂点を結ぶ直交する対角線が膜厚方向と垂直と平行になるようにした。通常クラックはその頂点から頂点の対角線の方向、すなわちこの場合膜厚方向と基材との接合面に平行な方向に進展する。このクラックの長さによってセラミックスの靭性を評価した。
試料5〜7の試料において、膜厚方向へのクラックの発生はなかった。実施例1のセラミックス積層体試料と同様、膜厚方向には極めて高い破壊靭性を有している。これは弾性率の異なる2種類の微細な結晶が混在していること、これらが膜厚方向に強く変形していること、また圧縮応力を有していることによる。
試料5においてもう一つの対角線頂点を起点とするビッカース圧痕からは、基材との接合面におおむね平行にクラックが発生していることが認められたが、その長さは実施例1のアルミナ-ジルコニア積層体より小さかった。ジルコニアの体積率が大きく、空隙の密度が小さくより緻密であるにもかかわらず、破壊靭性が向上したのは、分散するジルコニアの大きさがより小さく、均一になったこと、またプロセス条件の違いによって、長短軸比の大きなジルコニアの配向角が大きくなり、膜厚方向に垂直な面に平行にクラックが進展するのを妨げる効果が大きくなったためである。実際、分散するジルコニアによってクラックが止められたり、迂回する様子が観察された。
試料6と試料7では更に膜厚方向に垂直なクラックの長さは小さくなった。これは、ジルコニアの含有量が大きくなったこと、及び試料6ではクラックの進展を阻害する作用の大きな正方晶ジルコニアの割合が増加したこと。また試料7では強度の優れた立方晶ジルコニアの割合が増加したことによる。
試料6に対して、絶縁性の評価を行った。評価方法は実施例と同じであるが、試料が小さいため、上部電極に直径1.5mmの電極球を使用した。その結果、絶縁破壊電界値は、510×10V/mと極めて高いことがわかった。その理由はプロセス条件の違いにより、アルミナ-ジルコニア膜がより緻密になり、膜を構成する結晶粒が膜厚方向により大きく変形していることによる。
1:複合セラミックス層
2:アルミナ相(第1相)
3:ジルコニア相(第2相粒子)
4:空隙

Claims (12)

  1. 基材層の一部、あるいは全面に、アルミナ相とジルコニア相とを含んでなる複合セラミックス層が被覆されたセラミックス積層体であって、
    前記複合セラミックス層と前記基材層との接合面に対して直交する任意の断面において、前記アルミナ相又は前記ジルコニア相のうちいずれかでなる第1相内に、該第1相よりも総面積率が小さい他方の前記ジルコニア相又は前記アルミナ相でなる第2相粒子が分散した組織を有し、
    前記断面内において円相当径が0.01μm以上の前記第2相粒子と空隙を計測した時、
    前記第2相粒子の円相当径の最大値が5μm以下であり、
    前記第2相粒子の円相当径の平均値が、0.02μm以上、0.3μm以下でなり、
    かつ前記第2相粒子を楕円と見立てたときの相当楕円の長径を短径で除した値の平均値が、2以上、10以下であり、
    空隙の面積率が5%以下である
    ことを特徴とするセラミックス積層体。
  2. 前記第2相粒子の重心に最も距離が近い前記接合面の面方向と、前記第2相粒子の相当楕円長径の方向とのなす角が、−90°から90°の角度で表され、その角度の絶対値を前記第2相粒子の配向角としたとき、
    任意の前記断面では、60%以上の数の前記第2相粒子が30°以下の前記配向角を有しており、
    かつ前記配向角の総和を前記第2相粒子の総粒子数で除した平均配向角が5°以上35°以下である
    ことを特徴とする請求項1に記載のセラミックス積層体。
  3. 前記基材層は銅、又はアルミニウムを主体とし、
    前記複合セラミックス層は、前記基材層と垂直方向の厚さが、5μm以上、200μm以下である
    ことを特徴とする請求項1又は2に記載のセラミックス積層体。
  4. 前記第1相がアルミナ相であり、前記第2相がジルコニア相であることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか1項に記載のセラミックス積層体。
  5. 前記ジルコニア相が少なくとも正方晶を含有し、イットリウムの含有量が0.1質量%以下であることを特徴とする請求項1から請求項4のいずれか1項に記載のセラミックス積層体。
  6. 請求項1から請求項5のいずれか1項に記載のセラミックス積層体からなることを特徴とするセラミックス絶縁基板。
  7. 該基材層が銅、又はアルミニウムであって、該複合セラミックス層を挟んで反対面に銅、又はアルミニウム回路が形成されている請求項6に記載のセラミックス絶縁基板。
  8. 該基材層の厚さが0.5mm超であり、該回路の厚さの2倍以上である請求項7に記載の絶縁基板。
  9. 請求項1から請求項5のいずれか1項に記載のセラミックス積層体の製造方法であって、アルミナ原料粒子とジルコニア原料粒子を気体と混合し、前記アルミナ原料粒子と前記ジルコニア原料粒子とを前記気体と共に基材層の表面に向けて噴射して衝突させることで、前記基材層の表面に複合セラミックス層を積層すること、および
    ここで、前記原料粒子の大きさが、0.1μmから10μmの範囲であり、
    噴射ノズルの入口と出口の差圧が、20kPa以上であり、
    前記ノズルを通過するガスの流速が50〜800m/sであり、
    前記積層の行われる成膜室の圧力が50Paから500Paの範囲であること、
    を特徴とするセラミックス積層体の製造方法。
  10. 前記アルミナ原料粒子と前記気体とを混合して一のエアロゾルを生成し、前記ジルコニア原料粒子と前記気体とを混合して他のエアロゾルを生成し、
    前記一のエアロゾルと前記他のエアロゾルとを前記基材層の表面に向けて噴射する
    ことを特徴とする請求項9に記載のセラミックス積層体の製造方法。
  11. 前記アルミナ原料粒子及び前記ジルコニア原料粒子を混合した混合原料粉に、前記気体を混合させてエアロゾルを生成し、前記エアロゾルを前記基材層の表面に向けて噴射することを特徴とする請求項9に記載のセラミックス積層体の製造方法。
  12. 前記ジルコニア原料が電融粉である請求項9〜請求項11のいずれか1項に記載のセラミックス積層体の製造方法。
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