JP6477872B2 - 浸漬型中空糸膜モジュール、および、それを用いる正浸透水処理方法 - Google Patents

浸漬型中空糸膜モジュール、および、それを用いる正浸透水処理方法 Download PDF

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Description

本発明は、浸漬型中空糸膜モジュール、および、それを用いる正浸透水処理方法に関する。
正浸透(FO:forward osmosis)とは、半透膜を介して、低濃度(低浸透圧)の処理対象水(フィード溶液)側の水が高濃度(高浸透圧)の溶液(ドロー溶液)に向かって移動する現象のことである。一方、水処理分野においては、逆浸透(RO:reverse osmosis)を用いる水処理方法が従来から知られている。逆浸透とは、処理対象水に人為的に高い圧力を加えることにより、正浸透とは逆に、高濃度の処理対象水から半透膜を介して低濃度の溶液側に水が移動する現象である。
しかし、逆浸透は高い圧力を必要とするため、エネルギー消費量が極めて多く、エネルギー効率が低い。そこで、近年、水処理のエネルギー効率を高めるために、人為的に圧力を加える必要のない正浸透現象を利用した正浸透水処理システムが提案されている(例えば、国際公開第2013/118859号(特許文献1)など)。また、正浸透水処理システムに用いられるドロー溶液としては種々のものが知られているが、例えば、特表2014−512951号公報(特許文献2)には、ドロー溶液としてポリグリコール共重合体などの高粘度溶液を用いることが開示されている。
国際公開第2013/118859号 特表2014−512951号公報 特表2013−509298号公報
特許文献1に記載されるような既存の正浸透用の中空糸型半透膜(内径50〜250μm)に、高粘度のドロー溶液を流す場合、圧力損失が大きいため、中空糸型半透膜の内外での十分な有効浸透圧差を維持するために必要な流量を確保し難く、正浸透水処理の効率が低下し易い。このため、中空糸型半透膜の中空部内に高粘度のドロー溶液を流す場合は、正浸透水処理の効率低下を抑制するために、内径が従来よりも大きい(例えば、内径が250μm超700μm以下である)中空糸型半透膜を用いることが望ましいと考えられる。
一方、スケール成分を多く含む(ファウリングが発生し易い)処理対象水に対して、ハウジング内に中空糸膜エレメントが収容された密閉型の中空糸膜モジュールを用いると、中空糸型半透膜が目詰まりを起こし易いため、正浸透処理による水の回収効率が低下し易い。このため、膜分離活性汚泥法(MBR)で使用されているような中空糸膜エレメント(中空糸型半透膜)が露出した開放型の中空糸膜モジュール(浸漬型中空糸膜モジュール)を水槽(処理槽)内の処理対象水に浸漬する方法を用いる必要性がある。これにより、密閉型の中空糸膜モジュールのように、ハウジング内の一部で処理対象水の流れに滞留が生じることにより、その部分において集中的に中空糸型半透膜の表面にスケール成分が付着することが抑制されるため、スケール成分を多く含む処理対象水に対して、中空糸型半透膜の目詰まりを抑制することができるからである。
ここで、中空糸膜モジュールとしては、いわゆるストレート型とクロスワインド型のものが存在するが、密閉型の中空糸膜モジュールを用いる通常の正浸透処理では、クロスワインド型の中空糸膜モジュールが多く用いられている。密閉型の中空糸膜モジュールにおいて、中空糸膜エレメント(中空糸型半透膜の束)の径方向の中心に配置された芯管(多数の孔を有する有孔分配管)から径方向の外側に向かって処理対象水を流す場合には、ストレート型よりもクロスワインド型の中空糸膜モジュールの方が、モジュール内で処理対象水が全体に均一に拡散され易く、有効膜面積の増大により処理効率が向上するためである。
しかしながら、開放型の中空糸膜モジュールを用いる浸漬型正浸透法では、このようなクロスワインド型の中空糸膜モジュールでは、水槽内の処理対象水が、中空糸膜エレメントの径方向の外側から中心側まで浸透し難く、有効膜面積の減少により処理効率が低下してしまうという問題があった。特に、内径の大きい中空糸型半透膜を用いる場合、有効膜面積を大きくして所望の処理効率を得るためには、中空糸膜エレメントの外径を大きくする必要があり、この場合、中空糸膜エレメントの径方向の中心側への処理対象水の浸透がさらに難しくなるため、このような問題が顕著になる。
本発明は、上記の課題に鑑み、中空糸型半透膜の外側に接するスケール成分を多く含む処理対象水に対して、中空糸型半透膜の中空部内に高粘度のドロー溶液を流すことにより正浸透水処理を実施する場合において、中空糸型半透膜の目詰まりを抑制しつつ、正浸透水処理の効率を向上させることのできる浸漬型中空糸膜モジュール、および、それを用いた浸漬型の正浸透水処理方法を提供することを目的とする。
[1]
中空部を有する直線状の複数の中空糸型半透膜を並列的に所定の間隔を開けて配置してなる中空糸膜エレメントと、
前記中空糸膜エレメントの両端において、前記複数の中空糸型半透膜を所定の間隔を開けて固定するための固定樹脂と、
前記中空糸膜エレメントの一端において前記複数の中空糸型半透膜の前記中空部に連通する流入口と、前記中空糸膜エレメントの他端において前記複数の中空糸型半透膜の前記中空部に連通する流出口と、を備え、
前記複数の中空糸型半透膜は露出しており、
前記中空糸型半透膜の素材が、セルロース系樹脂およびスルホン化ポリスルホン系樹脂の少なくともいずれかを含む材料である、正浸透用の浸漬型中空糸膜モジュール。
[2]
前記中空糸型半透膜の内径が250μm超700μm以下である、[1]に記載の浸漬型中空糸膜モジュール。
[3]
前記中空糸膜エレメントの外径が5cm以上60cm以下である、[1]または[2]に記載の浸漬型中空糸膜モジュール。
[4]
前記中空糸膜エレメントの外周が形成する円の面積に対する前記中空糸型半透膜の外径の横断面積の合計の比率である端部充填率が、40%以上70%以下である、[1]〜[3]のいずれかに記載の浸漬型中空糸膜モジュール。
[5]
[1]に記載の浸漬型中空糸膜モジュールを用いる正浸透水処理方法であって、
前記浸漬型中空糸膜モジュールを、処理槽内の水と水以外の成分とを含む処理対象水の中に浸漬して、前記中空糸型半透膜の外周面に前記処理対象水を接触させると共に、前記中空糸型半透膜の中空部内にドロー溶質を含むドロー溶液を流すことで、前記処理対象水中に含まれる水を前記中空糸型半透膜を通して前記外周面側から前記中空部内に移動させる正浸透工程を含む、正浸透水処理方法。
本発明によれば、中空糸型半透膜の外側に接するスケール成分を多く含む処理対象水に対して、中空糸型半透膜の中空部内に高粘度のドロー溶液を流すことにより正浸透水処理を実施する場合において、中空糸型半透膜の目詰まりを抑制しつつ、正浸透水処理の効率を向上させることのできる浸漬型中空糸膜モジュール、および、それを用いた浸漬型の正浸透水処理方法を提供することのできる浸漬型中空糸膜モジュール、および、それを用いた浸漬型の正浸透水処理方法を提供することができる。
本発明の実施形態における浸漬型中空糸膜モジュールの構成を概略的に示す部分透過斜視図である。 本発明の実施形態における正浸透処理方法を説明するための模式図である。
(中空糸型半透膜)
図1を参照して、本実施形態の浸漬型中空糸膜モジュール100に用いられる中空糸型半透膜1は、中空部を有する糸状の半透過膜である。なお、中空部内にドロー溶液を流すために、本実施形態に用いられる中空糸型半透膜1は、両端に中空部と連通する開口を有する両端開口型の中空糸型半透膜であることが好ましい。
中空糸型半透膜1の内径(中空部の横断面の直径)は、好ましくは250μm超700μm以下であり、より好ましくは250μm超650μm以下、さらに好ましくは250μm超600μm以下、最も好ましくは250μm超500μm以下である。
一般に、中空糸型半透膜1の中空部内を流れるドロー溶液の流量が少なくなると、ドロー溶液が中空部内を流れる間にドロー溶液側へ透過する水の量が多くなる。これにより、中空部内を流れるドロー溶液の全体的な浸透圧が低下し、ドロー溶液と処理対象水(フィード溶液)との間の浸透圧差が小さくなるため、水の回収効率が低下してしまう。
これに対して、本実施形態においては、中空糸型半透膜1の内径を従来の通常の内径より大きい250μm超700μm以下の範囲にすることで、中空糸型半透膜1による圧力損失が低下するため、中空部内を流れるドロー溶液の流量を多くすることができる。これにより、中空糸型半透膜1の内外での十分な有効浸透圧差を維持するために必要な流量を確保でき、中空糸型半透膜1の中空部内に高粘度のドロー溶液を流す場合でも、正浸透水処理の効率が低下することを抑制できる。
中空糸型半透膜1を構成する材料としては、特に限定されないが、例えば、セルロース系樹脂、スルホン化ポリスルホン系樹脂、ポリアミド系樹脂などが挙げられる。中空糸型半透膜1は、セルロース系樹脂およびスルホン化ポリスルホン系樹脂の少なくともいずれかを含む材料から構成されることが好ましい。
セルロース系樹脂は、好ましくは酢酸セルロース系樹脂である。酢酸セルロース系樹脂は、殺菌剤である塩素に対する耐性があり、微生物の増殖を抑制できる特徴を有している。酢酸セルロース系樹脂は、好ましくは酢酸セルロースであり、耐久性の点から、より好ましくは三酢酸セルロースである。
スルホン化ポリスルホン系樹脂は、好ましくはスルホン化ポリエーテルスルホン系樹脂である。
具体的な中空糸型半透膜の一例としては、全体がセルロース系樹脂、もしくはスルホン化ポリスルホン系樹脂から構成されている単層構造の膜が挙げられる。ただし、ここでいう単層構造とは、層全体が均一な膜である必要はなく、例えば、特許文献1に開示されるように、外周表面近傍に緻密層を有し、この緻密層が実質的に中空糸型半透膜の孔径を規定する分離活性層となっていることが好ましい。
具体的な中空糸型半透膜の別の例としては、限外ろ過膜程度の孔径を有する支持膜の外周表面に分離活性層を有する2層構造の膜が挙げられる。支持膜を構成する材料としては特に限定されないが、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリフェニレンオキサイド、ポリフッ化ビニリデン、ポリエーテルケトン、ポリイミド、ポリベンズイミダゾール、ポリエステル等が挙げられる。分離活性層を構成する材料としては、特に限定されないが、スルホン化ポリスルホン系樹脂、ポリアミド系樹脂、セルロース系樹脂、ポリビニルアルコール系樹脂が挙げられる。
上記の緻密層(分離活性層)の厚みは、好ましくは0.05〜5μmである。緻密層の厚みは薄い方が、透水抵抗が小さくなるため好ましい。このため、緻密層の厚みは、3μm以下がより好ましく、1μm以下がさらに好ましい。ただし、緻密層が薄すぎると、潜在的な膜構造の欠陥が顕在化しやすくなり、例えば、1価イオンの漏出を抑えることが困難になったり、膜の耐久性が低下になったりするなどの問題が発生し易くなる。このため、緻密層の厚みは、0.1μm以上がより好ましく、0.3μm以上がさらに好ましい。
なお、中空糸型半透膜の外径は、好ましくは300〜1000μmであり、より好ましくは400〜950μmである。また、中空糸型半透膜の膜全体の厚みは、好ましくは50〜200μmであり、より好ましくは60〜170μmである。なお、膜厚は(外径−内径)/2で算出できる。
また、中空糸型半透膜の中空率〔(内径/外径)×100(%)〕は、好ましくは24〜51%である。なお、中空率は、中空糸型半透膜の横断面における中空部の面積の割合である。中空率が24%未満である場合、中空糸型半透膜の透水抵抗が大きくなることから、所望の処理効率が得られないといった問題が生じる可能性がある。中空率が51%超である場合、中空糸型半透膜の強度が不足して中空糸型半透膜の破れ等が生じる可能性がある。
中空糸型半透膜の有効長は、特に限定されないが、好ましくは0.3〜3.0mであり、より好ましくは0.5〜2.0mである。なお、有効長とは、固定樹脂部を除いた部分である半透膜としての機能を有する中空糸型半透膜束の長さである。
中空糸型半透膜が有する複数の微細の孔の径(孔径)は、2nm以下であることが好ましい。このような中空糸型半透膜としては、例えば、逆浸透膜(RO膜:Reverse Osmosis Membrane)、正浸透膜(FO膜:Forward Osmosis Membrane)、ナノろ過膜(NF膜:Nanofiltration Membrane)、と呼ばれているものが挙げられる。
通常、RO膜およびFO膜の孔径は約2nm以下である。NF膜は、RO膜のうちイオンや塩類の阻止率が比較的低いものであり、通常、NF膜の孔径は約1〜2nmである。
(中空糸膜エレメント)
本実施形態の中空糸膜エレメント10は、(クロスワインド型に対して)ストレート型などと呼ばれる中空糸膜エレメントであり、中空部を有する複数の直線状の中空糸型半透膜1を並列的に所定の間隔を開けて配置してなる、中空糸型半透膜1の束である。
なお、ここでいう「直線状」とは、意図的に巻回されたり、屈曲、湾曲等が形成されたものを除く意味であり、数学的な直線性は必要とされない。すなわち、例えば、中空糸型半透膜1を緩んだ状態で配置してもよく、その場合、中空糸型半透膜1は若干の湾曲を有していてもよい。
また、「所定の間隔を開けて」とは、少なくとも中空糸型半透膜1の両端において、複数の中空糸型半透膜1が互いに接していなければよい。例えば、中空糸型半透膜1を緩んだ状態で配置する場合は、中空糸型半透膜1の両端以外の部分において、一部の中空糸型半透膜1同士が接触していてもよい。なお、このような状態であっても、処理槽内の処理対象水に浸漬された状態では、処理槽内の流れ等によって、複数の中空糸型半透膜1の間を処理対象水が流れることができるため、中空糸型半透膜の有効膜面積は減少しない。
なお、浸漬型の正浸透水処理方法において、クロスワインド型の中空糸膜モジュールを用いた場合は、水槽内の処理対象水が、中空糸膜エレメントの径方向の外側から中心側まで浸透し難く、有効膜面積の減少により処理効率が低下し易い。特に、内径の大きい中空糸型半透膜を用いる場合、有効膜面積を大きくして所望の処理効率を得るためには、中空糸膜エレメントの外径を大きくする必要があり、この場合、中空糸膜エレメントの径方向の中心側への浸透がさらに難しくなる。
これに対して、本実施形態では、浸漬型の正浸透水処理方法において、ストレート型の中空糸膜モジュールを用いることで、水槽内の処理対象水が、中空糸膜エレメント10の径方向の中心側まで行き渡り易く、処理効率が高くなる。
中空糸膜エレメント10の外径は、好ましくは5cm以上60cm以下である。中空糸膜エレメント10の外径がこのような範囲にある、比較的外径の大きい中空糸膜エレメントを用いる場合、特に、中空糸膜エレメント10の径方向の中心側への処理対象水の浸透が難しくなるため、正浸透処理の効率を高めるためには、本実施形態のようなストレート型の中空糸膜エレメントを用いることが有効である。
また、中空糸膜エレメント10(中空糸型半透膜束)の外周が形成する円の面積(固定樹脂端面積)に対する中空糸型半透膜1の外径の横断面積の合計の比率を端部充填率としたとき、端部充填率は、好ましくは40%以上70%以下である。中空糸膜エレメント10の端部充填率がこのような範囲にある、比較的狭い間隔で複数の中空糸型半透膜1が配置された中空糸膜エレメントを用いる場合、特に、中空糸膜エレメント10の径方向の中心側への処理対象水の浸透が難しくなるため、正浸透処理の効率を高めるためには、本実施形態のようなストレート型の中空糸膜エレメントを用いることが有効である。
なお、固定樹脂端面積は、固定樹脂端面において中空糸型半透膜束(中空糸膜エレメント)の最も外周に位置する複数の中空糸型半透膜に外接する円の直径を、ノギスを用いて5点(極大、大、中、小、極小)測定する。このとき、中空糸型半透膜が極端に円周部より外れているようなものは除く。この直径の平均値を用いて、固定樹脂端面積(中空糸膜エレメントの外周が形成する円の面積)を算出する。
一方、1本当たりの中空糸型半透膜の外径基準の断面積を算出する。これに固定樹脂端面中に含有される糸(中空糸型半透膜)の本数を乗じて、中空糸型半透膜部面積を求める(下式参照)。
中空糸型半透膜部面積=π×(中空糸型半透膜の外径/2)×中空糸型半透膜本数
そして、上記の固定樹脂端面積に対する中空糸型半透膜部面積の割合である端部充填率(%)を次式:
端部充填率(%)=中空糸型半透膜部面積/固定樹脂端面積×100
から求める。
(浸漬型中空糸膜モジュール)
図1を参照して、浸漬型中空糸膜モジュール100は、上記のストレート型の中空糸膜エレメント10(中空糸型半透膜1の束)を備えている。また、浸漬型中空糸膜モジュール100は、中空糸膜エレメント10の両端において、複数の中空糸型半透膜1を所定の間隔を開けて固定するための固定樹脂21,22を備えている。なお、浸漬型中空糸膜モジュール100の全体形状を維持するために、2つの固定樹脂21,22は、図示しない支持体によって相互に連結されていてもよい。
固定樹脂21は、中空糸型半透膜1の一端の開口を介して、複数の中空糸型半透膜1の中空部に連通する内部空間を有する分配室21aに接続されている。分配室21aは、その内部空間に連通する流入口21bを有している。したがって、流入口21bは、中空糸膜エレメント10の一端において複数の中空糸型半透膜1の中空部に連通している。
また、固定樹脂22は、中空糸型半透膜1の他端の開口を介して、複数の中空糸型半透膜1の中空部に連通する内部空間を有する集合室22aに接続されている。集合室22aは、その内部空間に連通する流出口22bを有している。したがって、流出口22bは、中空糸膜エレメント10の他端において複数の中空糸型半透膜1の中空部に連通している。
図1に示されるように、本実施形態の浸漬型中空糸膜モジュール100において、複数の中空糸型半透膜1は露出している。なお、複数の中空糸型半透膜1は少なくともその一部の外表面が露出していればよく、図1では、固定樹脂21,22内に描かれた中空糸型半透膜1の一部は樹脂で覆われており露出していないが、中空糸型半透膜1の他の部分が露出している。なお、図1において、固定樹脂21,22、分配室21a、および、集合室22aを透過させて描いているが、実際に透明である必要はない。
このようなストレート型の浸漬型中空糸膜モジュールは、従来公知の方法を用いて製造することができ、例えば、特開平10−192661号公報に開示されるような方法により製造することができる。
(正浸透水処理方法)
本実施形態の正浸透水処理方法は、処理対象水から上記の浸漬型中空糸膜モジュールを用いた正浸透により、処理対象水から水を分離および回収する方法である。
なお、処理対象水とは、水と水以外の成分を含む液体である。処理対象水としては、例えば、海水などの塩水、および、河川水、湖沼水、工業廃水などが挙げられる。なお、処理対象水が、高濃度の塩水である場合、処理対象水の蒸発残留物濃度(TDS)は、好ましくは20質量%以下であり、より好ましくは15質量%以下である。
図2を参照して、本実施形態の正浸透水処理方法において、浸漬型中空糸膜モジュール100は、処理槽3内に供給された処理対象水(FS)の中に浸漬される。これにより、複数の中空糸型半透膜1の外周面に処理対象水を接触させる。この状態で、ポンプ4によって、中空糸型半透膜1の中空部内にドロー溶質を含むドロー溶液(DS)を流すことで、処理対象水中に含まれる水を中空糸型半透膜1を通して外周面側から中空部内(ドロー溶液側)に移動させる。
上記の正浸透工程により中空糸型半透膜1の中空部内において希釈されたドロー溶液は、ポンプ4によって再濃縮工程に送られる。再濃縮工程では、ドロー溶液から一部の水が回収され、それにより濃縮されたドロー溶液は、中空糸型半透膜1へ送られ、再度、正浸透工程に供される。
なお、本実施形態の正浸透処理方法においては、図2に示されるように、処理槽3の底壁の上部に設けられたエア吹出し口(図示せず)により、処理対象水中に気泡5を発生させてもよい。これにより、気泡5が複数の中空糸型半透膜1に接触することで、中空糸型半透膜1の外表面にスケールが付着することを抑制し、中空糸型半透膜1の目詰まりを防止することができる。
ドロー溶液の粘度は、好ましくは0.10Pa・s以上であり、より好ましくは0.15Pa・s以上である。ドロー溶液として、このような高粘度の溶液を用いる場合において、特に正浸透処理の効率が低下しやすいため、従来よりも内径が大きい本実施形態の中空糸型半透膜を用いることが有効である。
ドロー溶液の浸透圧は、溶質の分子量等にもよるが、0.5〜20MPaが好ましい。
ドロー溶質としては、例えば、糖類、タンパク質、合成高分子などが挙げられるが、回収および再生のしやすさといった点から、刺激応答性高分子が好ましい。刺激応答性高分子としては、温度応答性高分子、pH応答性高分子、光応答性高分子、磁気応答性高分子などが挙げられる。
温度応答性高分子とは、所定の温度を臨界点として親水性が変化する特性(温度応答性)を有する高分子である。温度応答性とは、言い換えれば、温度に応じて親水性になったり疎水性になったりする特性である。ここで、親水性の変化は可逆的であることが好ましい。この場合、温度応答性高分子は、温度を調整することで、水に溶解させたり、水と相分離させたりすることができる。
温度応答性高分子は、モノマーに由来する複数の構造単位からなるポリマーであり、側鎖に親水性基を有していることが好ましい。
温度応答性高分子には、下限臨界共溶温度(LCST)タイプと上限臨界共溶温度(UCST)タイプがある。LCSTタイプでは、低温の水に溶解している高分子が、高分子に固有の温度(LCST)以上の温度になると、水と相分離する。逆に、UCSTタイプでは、高温の水に溶解している高分子が、高分子に固有の温度(UCST)以下になると、水と相分離する(杉原ら、「環境応答性高分子の組織体への展開」、SEN’I GAKKAISHI(繊維と工業)、Vol.62,No.8,2006参照)。半透過膜は、高温で劣化し易い素材を用いる場合においては、低温の水に溶解している温度応答性高分子が半透膜に接触している方が望ましいため、本発明に用いる温度応答性高分子はLCSTタイプであることが好ましい。また、高温で劣化しにくい素材で構成された半透過膜を用いる場合は、LCSTタイプの他,UCSTタイプも用いることができる。
親水性基としては、例えば、水酸基、カルボキシル基、アセチル基、アルデヒド基、エーテル結合、エステル結合が挙げられる。親水性基は、これらから選択される少なくとも1種類であることが好ましい。
温度応答性高分子は、少なくとも一部または全部の構造単位において少なくとも1つの親水性基を有することが好ましい。また、温度応答性高分子は、親水性基を有しつつ、一部の構造単位において疎水性基を有していてもよい。なお、温度応答性高分子が、温度応答性を有するためには、分子中に含まれる親水性基と疎水性基のバランスが重要であると考えられている。
具体的な温度応答性高分子としては、例えば、ポリビニルエーテル系ポリマー、ポリ酢酸ビニル系ポリマー、(メタ)アクリル酸系ポリマーなどが挙げられる。
本実施形態の正浸透水処理方法のように、中空糸型半透膜を正浸透膜として用いる場合、中空糸型半透膜の耐圧性や、高圧ポンプを必要としないといった観点から、中空糸型半透膜の中空部内に流す流体の圧力は0.5MPa以下にすることが望ましい。したがって、正浸透工程において、ドロー溶液を流す圧力は、好ましくは0.5MPa以下であり、より好ましくは0.2MPa以下である。一方、中空糸型半透膜の内外での十分な有効浸透圧差を維持するために必要な流量を確保する観点からは、ドロー溶液を流す圧力は、好ましくは0.01MPa以上であり、より好ましくは0.05MPa以上である。
上記の再濃縮工程において、例えば、ドロー溶質が温度応答性高分子である場合、ドロー溶液の温度を変化させることで、ドロー溶液に含まれるドロー溶質を水と分離させることができる。この場合、ドロー溶液の温度を変化させるだけで、ドロー溶質(温度応答性高分子)を容易に水から分離させ、回収することができる。また、このようにして水を回収することにより濃縮されたドロー溶液は、元のドロー溶液と同じ成分の溶液であるため、温度を元に戻し、必要に応じて濃度調整することで、再度、ドロー溶液として正浸透工程に使用することが可能である。
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて請求の範囲によって示され、請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
1 中空糸型半透膜、10 中空糸膜エレメント、100 浸漬型中空糸膜モジュール、21,22 固定樹脂、21a 分配室、21b 流入口、22a 集合室、22b 排出口、3 処理槽、4 ポンプ、5 気泡。

Claims (5)

  1. 中空部を有する直線状の複数の中空糸型半透膜を並列的に所定の間隔を開けて配置してなる中空糸膜エレメントと、
    前記中空糸膜エレメントの両端において、前記複数の中空糸型半透膜を所定の間隔を開けて固定するための固定樹脂と、
    前記中空糸膜エレメントの一端において前記複数の中空糸型半透膜の前記中空部に連通する流入口と、前記中空糸膜エレメントの端において前記複数の中空糸型半透膜の前記中空部に連通する流出口と、を備え、
    前記複数の中空糸型半透膜は露出しており、
    前記中空糸型半透膜の素材が、セルロース系樹脂およびスルホン化ポリスルホン系樹脂の少なくともいずれかを含む材料であり、
    前記中空糸型半透膜の内径が250μm超700μm以下であり、
    前記中空糸型半透膜は外周表面に厚み0.05〜5μmの緻密層を有する、正浸透用の浸漬型中空糸膜モジュール。
  2. 前記中空糸型半透膜の細孔径が2nm以下である、請求項1に記載の浸漬型中空糸膜モジュール。
  3. 前記中空糸膜エレメントの外径が5cm以上60cm以下である、請求項1または2に記載の浸漬型中空糸膜モジュール。
  4. 前記中空糸膜エレメントの外周が形成する円の面積に対する前記中空糸型半透膜の外径の横断面積の合計の比率である端部充填率が、40%以上70%以下である、請求項1〜3のいずれか1項に記載の浸漬型中空糸膜モジュール。
  5. 請求項1に記載の浸漬型中空糸膜モジュールを用いる正浸透水処理方法であって、
    前記浸漬型中空糸膜モジュールを、処理槽内の水と水以外の成分とを含む処理対象水の中に浸漬して、前記中空糸型半透膜の外周面に前記処理対象水を接触させると共に、前記中空糸型半透膜の中空部内にドロー溶質を含むドロー溶液を流すことで、前記処理対象水中に含まれる水を前記中空糸型半透膜を通して前記外周面側から前記中空部内に移動させる正浸透工程を含む、正浸透水処理方法。
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