JP6475436B2 - 3翼式舵及び3翼式舵付き船舶 - Google Patents
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Description
船の設計において、舵101の深さ方向(喫水方向、上下方向)の寸法(以下、スパンと呼ぶ)は、図10に示すように船の喫水とプロペラ102まわりの形状によって制限されるので、大きな面積の舵101が必要な場合には、船の長さ方向の寸法(以下、コード長と呼ぶ)を大きくする必要がある。
Loa=Lra+Lpp+Lbb・・・(式1)
ここで、Lraは、舵101のコード長のうち舵軸103より後ろの長さで、コード長にほぼ比例する。Lppは、舵軸103から喫水線の前端までの長さで、主機の大きさや貨物量で決まる。Lbbは、バルバスバウの長さで、航海速度や船の長さ・幅・太り具合などにより決まる。
(1)図9(a)に示すように、同じ揚力を出すのに大きな迎角(船の場合は舵角)を取らなければならない。
(2)図9(b)に示すように、同じ揚力(船の場合は舵力)を出すのに抵抗が大きくなる。
なお、図9(a)は迎角と揚力係数との関係を示す特性図、図9(b)は抗力係数と揚力係数との関係を示す特性図であり、いずれもアスペクト比1〜7の場合を示している。
舵101も翼の一種であるから、一般に喫水でスパンが制限されている船舶において、針路安定性を確保するためにコード長を伸ばすと、アスペクト比が小さくなり、同じ舵角での揚力(舵力)が小さくなるとともに同じ揚力(舵力)を得ようとすると抵抗が大きくなる。このためコード長を伸ばした舵は、面積の割には旋回性能が良くないばかりでなく、通常航海で用いられる当て舵(あてかじ)程度の小舵角でも抵抗増加すなわち馬力増加に繋がり、省エネ上好ましくない。
図12に2翼式舵の例を示すが、2翼式舵では次のような欠点がある。
(1)船体中心線の位置で2つの舵101A、101Bを一体化して回す場合
規則により、舵101A、101Bは左右に各35度まで回すことができるように求められているが、2つの舵101A、101Bを連結して、船体中心線の位置で舵101A、101Bを一体で回す場合には、前方に装備されているプロペラ102に、それぞれの舵101A、101Bが接触する可能性がある。プロペラ102の位置を前にずらせば解決するが、それではプロペラ102周りの寸法を拡大せずに性能の良い舵を装備するという目的を達することができない。
(2)2つの舵101A、101Bをそれぞれの中心位置で回す場合
上記(1)の不具合はなくなるが、操舵機104を2台装備するか、あるいは1台の操舵機104で2つの舵101A、101Bを回転させる機構が必要になる。いずれの場合にも舵柱105や舵軸103は2セット(2式)必要で、図示していないが軸受けや水密装置も2セット必要になり、重量やコストが増加する。
特許文献2には、舵の後縁付近の両側に、縦横比の大きな任意翼型の補助翼を舵面と平行に配置し、補助翼自身の発生する揚力を利用して小舵角で高揚力を得るとともに、補助翼の整流作用によって舵面からの流線の剥離を抑えることが開示されている。
特許文献1や特許文献2のように、3翼式舵については、既に知られている。
すなわち、特許文献1では、主舵の翼面積をAcとし、2枚の補助舵の合計の副翼面積をAsとしたとき、主舵と補助舵との翼面積比(As/Ac)は0.2程度に過ぎず、補助舵の装備によって主舵のコード長を減じて、船の長さを減じ、又は船の主要部分の長さを増加させるには不十分である。
また、特許文献2で開示されている補助翼は、舵面からの流線の剥離を抑えるために、舵の後縁付近の両側に配置している。
すなわち、特許文献2では、主舵の舵軸よりも前部の翼前方面積をAcfとし、主舵の舵軸よりも後部の翼後方面積をAcaとし、舵軸よりも前部の2枚の補助翼の合計の副翼前方面積をAsfとし、舵軸よりも後部の2枚の補助翼の合計の副翼後方面積をAsaとしたとき、主舵と補助舵との翼前方面積(Acf+Asf)と、主舵と補助舵との翼後方面積(Aca+Asa)との比(Acf+Asf:Aca+Asa)は17対83程度となる。従来型の通常舵より長さが短く、通常舵と同程度の操舵性能を従来型と同程度の重量、配置、及びコストで実現するためには、翼前方面積(Acf+Asf)と翼後方面積(Aca+Asa)とのバランスが重要であり、従来型の通常舵と同程度の操舵トルクに抑える必要がある。
図1は本発明の一実施形態による3翼式舵付き船舶の要部構成図であり、図1(a)は平面視した状態での要部構成図、図1(b)は側面視した状態での要部構成図である。
プロペラ12の後方には、舵柱20が設けられ、舵柱20には、中央翼30が取り付けられている。船舶には操舵機(駆動手段)21が設けられ、中央翼30は操舵機21と舵軸22で連結されている。
操舵機21の駆動によって舵軸22が回動し、舵軸22の回動によって中央翼30は所定角度回動する。中央翼30の回動によって船体10は旋回動作し、進路を変更することができる。
2つの副翼40A、40Bと中央翼30とは、舵連結構造50により互いに固定されており、中央翼30に装備した舵軸22を介して1台の操舵機21により一体で回動し操舵する。
舵連結構造50は、副翼40A、40Bの上部に有する上部舵連結部50A、副翼40A、40Bの下部に有する下部舵連結部50B、及び副翼40A、40Bの中央部に有する中央部舵連結部50Cからなる。副翼40A、40Bの中央部に有した中央舵連結構造50Cによってプロペラ12の後流の回転エネルギーを回収できるとともに、副翼40A、40Bの上部及び下部に有した上部舵連結構造50A、下部舵連結構造50Bによって翼端板効果で舵力が増加するとともに連結強度を確保することができる。
なお、舵連結構造50は、上部舵連結部50A、下部舵連結部50B、中央部舵連結部50Cから成る3本での構成以外に、1本、2本での構成、また4本以上での構成等を適宜選択することが可能である。
また、中央翼30のコード長さをLc、片側の副翼40A、40Bのコード長さをLsとすると、片側の副翼40A、40Bの中央翼30に対するコード長さ比(Ls/Lc)は0.25以上とする。副翼40A、40Bを設けることで中央翼30のコード長を減じ、船体10の後端の長さを減じ、船体10の主要部分の長さを確保するためには、副翼40A、40Bの中央翼30に対するコード長さ比(Ls/Lc)は0.25以上必要である。
従来型の通常舵より長さが短く、通常舵と同程度の操舵機21で同様の操舵性能を実現するためには、前後面積のバランスが重要であり、前後面積比(Acf+Asf:Aca+Asa)は、20対80から40対60の範囲が適している。更には、25対75から35対65がより適しており、30対70程度が最適である。
なお、副翼40A、40Bの前後面積比(Asf:Asa)ではなく、中央翼30及び2つの副翼40A、40Bの合計の前後面積比(Acf+Asf:Aca+Asa)としているのは、舵軸22の位置を前後方向に変更しても適正な操舵トルクを保つためである。
また、後方面積は舵軸22の軸心22aよりも後部側に位置する面積であり、前方面積は舵軸22の軸心よりも前部側に位置する面積である。
また、面積は側面視した状態での投影面積とするが、表面面積としてもよい。
なお、副翼40A、40Bの上端40Hについても、中央翼30の上端30Hと略同一レベルに揃えることが好ましい。
図2では、上部及び下部をバチ状とした副翼40A、40Bを示している。
翼で発生する力は、流速の2乗に比例するので、プロペラ12の後流に掛っている部分ほど大きな力を出し、逆にプロペラ12の後流の外側では発生する力が小さい。そこで、副翼40A、40Bの長さ方向の寸法(コード長)Lsを流速の遅いプロペラ12の後流の外側で大きくすることで、副翼40A、40Bで発生する力を増大することができる。また、縦横比の小さい副翼40A、40Bとすることで、流速の小さい範囲に起きやすい流れの剥離を抑える効果もある。
図2に示すように、副翼40A、40Bの上下のコード長Lsを伸ばすことが有効である。なお、中央翼30上部には、舵軸22とともに旋回しない舵柱20があるため、上部の特に前部は副翼40A、40Bのコード長Lsを伸ばすことができない場合もある。この場合には副翼40A、40Bの下部の前後と上部の後部のみ、副翼40A、40Bのコード長Lsを伸ばすことで副翼40A、40Bが発生する力を増大することができる。
以上のように、副翼40A、40Bの形状を、少なくとも下部が広がったバチ状に形成することで、副翼40A、40Bによって発生する力を増大させることができる。
大舵角時に揚力側となる副翼40A、40Bが中央翼30の剥離を防止し揚力の減少を防ぐことができる。
従って、縮流中では、図4(a)に示すような内側に凸型を成す半対称翼や図3(b)に示すような内側に凸型を成すキャンバー翼を副翼40A、40Bとして用いることで、プロペラ12の軸心の後方に発生する縮流の収縮率を少なくでき、推進効率を向上させることができる。
図5(a)は、一対の副翼40A、40Bの前縁40fを開いた構成であり、中央翼30周りの流線に沿う形態となり、中央翼30と副翼40A、40Bとの相互の干渉が減少し直進中の抵抗を抑えることができる。
図5(b)は、一対の副翼40A、40Bの後縁40aを開いた構成であり、プロペラ12の軸心の後方に発生する縮流の収縮率を少なくでき、推進効率を向上させることができる。
図6(b)に示す実施形態は、側面視した状態での中央部に有した連結構造50cの翼断面の首尾線50xが水平面に対し角度を有したものである。また、この角度は副翼40A、40B側で異なっていて、それぞれプロペラ後流の回転エネルギーを有効に利用できる角度となっている。
図6(a)又は図6(b)に示す実施形態によれば、プロペラ後流の回転エネルギーを効率よく回収できる。
中央翼30の形状をリアクション舵型に形成することで、プロペラ後流の回転エネルギーを回収し、船舶の推進方向に揚力を発生させることができる。
図8(a)に示す実施形態は、舵付加物60としてバルブ61を中央翼30に設けたものである。バルブ61は、プロペラ12の軸の後方に配置されるように、中央翼30の前縁30f付近に設けている。
図8(b)に示す実施形態は、舵付加物60としてフィン62を中央翼30に設けたものである。フィン62は、プロペラ12の軸の後方に配置されるように、中央翼30の側面に設けている。
このように、副翼40A、40B又は中央翼30にバルブ61、フィン62、又はダクト(図示せず)を含む省エネ装置としての舵付加物60を適用することができ、更に効率を高めることができる。
既に説明した本実施形態において、側面視した状態での副翼40A、40B又は中央翼30の横寸法に対する縦寸法の比(アスペクト比)は、3以上9以下とすることが好ましい。
側面視した状態での副翼40A、40B又は中央翼30の横寸法に対する縦寸法の比(アスペクト比)を、3以上9以下とすることで、抵抗を増加させることなく、同じ舵角での揚力(舵力)を大きくできる。
21 操舵機(駆動手段)
22 舵軸
30 中央翼
40A、40B 副翼
50A 上部舵連結部
50B 下部舵連結部
50C 中央部舵連結部
11 船尾部
12 プロペラ
30L 下端
40L 下端
30a 後縁
40a 後縁
30f 前縁
40f 前縁
40x 首尾線
Claims (15)
- 船体の船尾部に取り付けられたプロペラの後方に設置する3翼式舵であって、舵軸を介して駆動手段により駆動される中央翼と、前記中央翼の左右に配置した2つの副翼と、前記中央翼と2つの前記副翼とをそれぞれ連結する舵連結構造とを備え、前記副翼を前記舵軸の前後にわたって配置するとともに、前記中央翼は片側の前記副翼よりも面積が大きく、前記中央翼と2つの前記副翼との合計した前記舵軸の前方面積と後方面積の前後面積比を前記駆動手段の操舵トルクの保てる範囲に前記前方面積のほうを小さく設定し、前記副翼の下端を前記中央翼の下端と略同一レベルに揃え、前記副翼の上端を前記中央翼の上端と略同一レベルに揃え、前記副翼の後縁を前記中央翼の後縁よりも前方に配置したことを特徴とする3翼式舵。
- 前記副翼の前記舵軸よりも前方の寸法を後方の寸法よりも小さく設定したことを特徴とする請求項1に記載の3翼式舵。
- 前記舵軸が35度回転しても前記副翼の前縁が前記プロペラに接触しないように前記副翼の前記前縁を前記中央翼の前縁よりも後退させたことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の3翼式舵。
- 側面視した状態での前記副翼又は前記中央翼の横寸法に対する縦寸法の比(アスペクト比)を3以上9以下としたことを特徴とする請求項1から請求項3のうちの1項に記載の3翼式舵。
- 前記副翼の形状を下部が広がったバチ状に形成したことを特徴とする請求項1から請求項4のうちの1項に記載の3翼式舵。
- 平面視した状態での前記中央翼の断面形状を対称翼型に形成したことを特徴とする請求項1から請求項5のうちの1項に記載の3翼式舵。
- 平面視した状態での前記副翼の断面形状を対称翼型に形成したことを特徴とする請求項1から請求項6のうちの1項に記載の3翼式舵。
- 平面視した状態での前記副翼の断面形状を外側に凸型を成すキャンバー翼型に形成したことを特徴とする請求項1から請求項6のうちの1項に記載の3翼式舵。
- 平面視した状態での前記副翼の断面形状を内側に凸型を成すキャンバー翼型に形成したことを特徴とする請求項1から請求項6のうちの1項に記載の3翼式舵。
- 前記副翼の前縁と後縁を結ぶ首尾線が前記中央翼の中心線に対し角度を有したことを特徴とする請求項1から請求項9のうちの1項に記載の3翼式舵。
- 前記舵連結構造を、前記副翼の上部、下部、及び中央部に有したことを特徴とする請求項1から請求項10のうちの1項に記載の3翼式舵。
- 前記中央部に有した前記舵連結構造の断面形状を前記プロペラの回転流の向きに凸型を成すキャンバー翼型に形成、又は側面視した状態での前記連結構造の翼断面の首尾線が水平面に対し角度を有したことを特徴とする請求項11に記載の3翼式舵。
- 前記中央翼の形状をリアクション舵型に形成したことを特徴とする請求項1から請求項5のうちの1項、又は請求項6を引用しない請求項7から請求項12のうちの1項に記載の3翼式舵。
- 前記副翼又は前記中央翼にバルブ、フィン、又はダクトを含む舵付加物を有したことを特徴とする請求項1から請求項13のうちの1項に記載の3翼式舵。
- 請求項1から請求項14のうちの1項に記載の3翼式舵を船尾部に備えたことを特徴とする3翼式舵付き船舶。
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