JP7219664B2 - 船舶舵フィン装置 - Google Patents

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本発明は、プロペラ後流を利用して推進方向の力を発生させる船舶舵フィン装置に関する。
船舶のプロペラ後方に配設される舵には、推進効率を向上させるために、翼形状のフィンが設けられることがある。フィンは、プロペラ後流(回転流)を受けて揚力と抗力とを発生し、この揚力と抗力との合力における前方成分(推進方向成分)が、船舶の推進効率を向上させる。プロペラ回転流のエネルギー回収効率を向上させるために、フィンの形状や取付位置等に種々の工夫が行われている(例えば、特許文献1~4を参照)。
特開2010-95181号公報 特開2006-123849号公報 特許第6203349号公報 特開平11-139395号公報
上記の特許文献で示されているようなフィンを舵に装着する場合、フィンの取付位置等の取付条件によっては推進効率がむしろ低下することがある。このため、個々の船体における航行時のプロペラ後流の状態に応じて、フィンの取付条件を調整する必要がある。
しかし、フィンの取付条件は、最も適切な条件を探すのが困難である。例えば、船尾から船首に向かう方向に見て前進時にプロペラが右回りに回転する場合、舵の左舷側における舵側面近傍では、プロペラの回転流に、航行時に船体から生じる渦流(ビルジ渦)が加わることにより、後方に向かって斜め上向きの流れと斜め下向きの流れとが混在する遅い流れ場が形成される。このような流れ場にフィンがあると、抗力の影響が支配的となって舵抵抗が増加し、全体として推進効率が低下する虞がある。なお、船尾から船首に向かう方向に見て前進時にプロペラが左回りに回転する場合は、後方に向かって斜め上向きの流れと斜め下向きの流れとが混在する遅い流れ場が、右回りにプロペラが回転する場合とは逆に、舵の右舷側における舵側面近傍に形成され、このような流れ場にフィンがあると、上記と同様に、全体として推進効率が低下する虞がある。
本発明は、上記の課題に鑑みてなされたものであり、舵抵抗の増加を招くことなく推力を増加させることができ、これによって船舶の推進効率を向上させることができる船舶舵フィン装置を提供することを目的とする。
上記課題を解決するための本発明に係る船舶舵フィン装置の特徴構成は、
プロペラの後方の流れ場に位置するように舵に付設された翼形状の複数のフィンを備え、前記フィンに働く前方成分の力によって推力を得るようにした船舶舵フィン装置であって、
前記フィンは、
前記舵の両側に張り出すように配設される右舷側フォアフィン、及び左舷側フォアフィンと、
船尾から船首に向かう方向に見て、前進時に前記プロペラが右回りに回転する場合に前記右舷側フォアフィンの後方に配設される右舷側アフトフィン、又は前進時に前記プロペラが左回りに回転する場合に前記左舷側フォアフィンの後方に配設される左舷側アフトフィンと、
を備えることにある。
本構成の船舶舵フィン装置によれば、舵の両側に張り出すように右舷側フォアフィン、及び左舷側フォアフィンが配設されるので、プロペラ直後の強い回転流を右舷側フォアフィン、及び左舷側フォアフィンが受けて推力を発生させることができる。また、船尾から船首に向かう方向に見て、前進時にプロペラが右回りに回転する場合には、右舷側フォアフィンの後方に右舷側アフトフィンが配設され、前進時にプロペラが左回りに回転する場合には、左舷側フォアフィンの後方に左舷側アフトフィンが配設されるので、プロペラ直後の強い回転流よりは弱いが後方に向かって斜め下向きの安定したプロペラ後流を右舷側アフトフィン、又は左舷側アフトフィンが受けて推力を発生させることができる。また、後方に向かって斜め上向きの流れと斜め下向きの流れとが混在する遅い流れ場には、アフトフィンが配設されないので、舵抵抗の増加を未然に防ぐことができる。従って、舵抵抗の増加を招くことなく推力を増加させることができ、これによって船舶の推進効率を向上させることができる。
本発明に係る船舶舵フィン装置において、
前記右舷側フォアフィン、及び/又は前記左舷側フォアフィンは、前進翼形状であるであることが好ましい。
本構成の船舶舵フィン装置によれば、右舷側フォアフィン、及び/又は左舷側フォアフィンが前進翼形状であるので、右舷側フォアフィン、及び/又は左舷側フォアフィンがプロペラにより近い位置に配されることになり、プロペラ直後の強い回転流をより多く受けることができて、推力をより増加させることができる。
本発明に係る船舶舵フィン装置において、
前記右舷側アフトフィン、又は前記左舷側アフトフィンは、後退翼形状であることが好ましい。
本構成の船舶舵フィン装置によれば、右舷側アフトフィン、又は左舷側アフトフィンが後退翼形状であるので、プロペラ後流をより多く受けることができて、推力をより増加させることができる。
本発明に係る船舶舵フィン装置において、
船尾から船首に向かう方向に見て、前進時に前記プロペラが右回りに回転する場合、前記右舷側フォアフィンを前方に向かって上向きに傾斜配置するとともに、前記左舷側フォアフィンを前方に向かって下向きに傾斜配置し、且つ前記右舷側アフトフィンを所定の迎角で配置し、
船尾から船首に向かう方向に見て、前進時に前記プロペラが左回りに回転する場合、前記右舷側フォアフィンを前方に向かって下向きに傾斜配置するとともに、前記左舷側フォアフィンを前方に向かって上向きに傾斜配置し、且つ前記左舷側アフトフィンを所定の迎角で配置することが好ましい。
本構成の船舶舵フィン装置によれば、船尾から船首に向かう方向に見て、前進時にプロペラが右回りに回転する場合には、右舷側フォアフィンが前方に向かって上向きに傾斜配置されるとともに、左舷側フォアフィンが前方に向かって下向きに傾斜配置されるので、プロペラ直後における右舷側において後方に向かって斜め下向きに流れる強い回転流を、前方に向かって上向きに傾斜配置された右舷側フォアフィンが受けることになるとともに、プロペラ直後における左舷側において後方に向かって斜め上向きに流れる強い回転流を、前方に向かって下向きに傾斜配置された左舷側フォアフィンが受けることになり、右舷側フォアフィン、及び左舷側フォアフィンのそれぞれに働く前方成分の力を推力としてより効果的に作用させることができ、船舶の推進効率をより向上させることができる。また、本構成の船舶舵フィン装置によれば、右舷側アフトフィン、又は左舷側アフトフィンが所定の迎角で配置されるので、右舷側アフトフィン、又は左舷側アフトフィンのそれぞれに働く前方成分の力も推力としてより効果的に作用させることができ、船舶の推進効率を更に向上させることができる。
また、船尾から船首に向かう方向に見て、前進時にプロペラが左回りに回転する場合には、右舷側フォアフィンが前方に向かって下向きに傾斜配置されるとともに、左舷側フォアフィンが前方に向かって上向きに傾斜配置されるので、プロペラ直後における右舷側において後方に向かって斜め上向きに流れる強い回転流を、前方に向かって下向きに傾斜配置された右舷側フォアフィンが受けることになるとともに、プロペラ直後における左舷側において後方に向かって斜め下向きに流れる強い回転流を、前方に向かって上向きに傾斜配置された左舷側フォアフィンが受けることになり、右舷側フォアフィン、及び左舷側フォアフィンのそれぞれ働く前方成分の力を推力としてより効果的に作用させることができ、船舶の推進効率をより向上させることができる。
本発明に係る船舶舵フィン装置において、
前記舵は、本体部分を構成する舵本体と、前記プロペラの回転中心部と対向するように前記舵本体の前部に設けられる舵バルブとを備えてなり、
前記右舷側フォアフィン、及び前記左舷側フォアフィンは、前記舵バルブ付近に取り付けられていることが好ましい。
本構成の船舶舵フィン装置によれば、プロペラの回転中心部と対向するように舵本体の前部に設けられる舵バルブ付近に、右舷側フォアフィン、及び左舷側フォアフィンが取り付けられているので、舵バルブによる推進効率向上と、左右両舷側のフォアフィンによる推力の増加との相乗効果により、船舶の推進効率を更に向上させることができる。
図1は、本発明の一実施形態に係る船舶舵フィン装置が装備された船舶の船尾周辺を示す右側面図である。 図2は、本発明の一実施形態に係る船舶舵フィン装置が装備された船舶の船尾周辺を示す左側面図である。 図3は、図1のX-X線断面図である。 図4は、本発明の一実施形態に係る船舶舵フィン装置の前方から見た斜視図である。 図5は、本発明の一実施形態に係る船舶舵フィン装置の模型を用いたCFD計算結果に基づくプロペラ後方の流体流れの様子を表す図である。 図6は、本発明の一実施形態に係る船舶舵フィン装置の効果を確認するための比較対象の説明図である。
以下、本発明について、図面を参照しながら説明する。ただし、本発明は、以下に説明する実施形態や図面に記載される構成に限定されることは意図しない。
図1には、本発明の一実施形態に係る船舶舵フィン装置が装備された船舶の船尾周辺を示す右側面図が示され、図2には、同船舶の船尾周辺を示す左側面図が示されている。
<船舶の全体構成>
図1に示される船舶1は、例えば、一軸船の船尾構造を有する肥大船型船舶であって、船体中央部から船幅が狭くなる船尾2に配設される舵3と、舵3と対向する船尾部(船尾ボス部)4に支承されるプロペラ5とを備えている。なお、本実施形態では、船尾2から船首に向かう方向に見て、前進時に右回りに回転するプロペラ5が用いられる例を示すが、これに限定されるものではなく、船尾2から船首に向かう方向に見て、前進時に左回りに回転するプロペラが用いられる場合もあり得る。
<舵の構造>
舵3は、マリナー型の舵を例に説明すると、船尾2に垂設されるラダーホーン6に、舵3の本体部分を構成する舵本体(舵板)7が左右方向に揺動自在に枢着され、プロペラ5の回転中心部と対向するように舵バルブ8が舵本体7の前部に一体的に取り付けられてなるものである。
<舵バルブ>
舵バルブ8は、プロペラ5の回転中心軸と同軸を成すように舵本体7の前縁からプロペラ5のハブに向けて突設される半球状の前側バルブ部8aと、前側バルブ部8aから後方に連続するように半紡錘状に形成される後側バルブ部8bとを有している。このように、プロペラ5のハブの後方に舵バルブ8を設けることにより、プロペラ5の回転時にプロペラ5のハブの後方に発生するハブ渦を拡散することができ、エネルギー効率の低下を抑制することができる。
<船舶舵フィン装置>
次に、船舶1に装備される船舶舵フィン装置20について、主に図3、及び図4を用い、適宜に図1、及び図2を参照しつつ説明する。船舶舵フィン装置20は、プロペラ5の後方の流れ場に位置するように舵3に付設された翼形状の右舷側フォアフィン21、左舷側フォアフィン22、及び右舷側アフトフィン23を備えてなり、これらフィン21,22,23に働く前方成分の力によって推力を得ることができるように構成されている。
<右舷側フォアフィン>
右舷側フォアフィン21は、舵本体7の右側に張り出すように舵バルブ8の右側部から舵本体7の前後方向中央部近傍に亘る部分に取り付けられている。右舷側フォアフィン21は、当該右舷側フォアフィン21の前縁全域がプロペラ5の回転軸線の高さにおいて、舵本体7の前縁よりも前側に位置するような前進角(フィン前縁から翼弦長の1/4の点を連ねる線が,舵前後方向中心軸に垂直な左右軸となす角)を持たせた下凸キャンバー(図1参照)を有する前進翼形状に形成されている。このように、右舷側フォアフィン21を前進翼形状に形成することにより、右舷側フォアフィン21がプロペラ5により近い位置に配されることになり、プロペラ直後の回転流をより多く受けることができるので、推力をより増加させることができる。
右舷側フォアフィン21においては、当該右舷側フォアフィン21の前縁全域を、プロペラ5の回転軸線の高さ位置とほぼ同じ高さ位置に配し、当該右舷側フォアフィン21の後縁全域を、プロペラ5の回転軸線の高さ位置よりも低い高さ位置に配して、前方に向かって上向きに所定の傾斜角度で傾斜配置されている(図1参照)。この場合の水平方向に対する右舷側フォアフィン21の傾斜角度としては、右舷側フォアフィン21の前縁が上向きの場合をプラス角とすると、好ましくは+4°~+28°である。
<左舷側フォアフィン>
左舷側フォアフィン22は、舵本体7の左側に張り出すように舵バルブ8の左側部から舵本体7の前後方向中央部近傍に亘る部分に取り付けられている。左舷側フォアフィン22は、当該左舷側フォアフィン22の前縁全域がプロペラ5の回転軸線の高さにおいて、舵本体7の前縁よりも前側に位置するような前進角を持たせた上凸キャンバー(図2参照)を有する前進翼形状に形成されている。このように、左舷側フォアフィン22を前進翼形状に形成することにより、左舷側フォアフィン22がプロペラ5により近い位置に配されることになり、プロペラ直後の回転流をより多く受けることができるので、推力をより増加させることができる。
左舷側フォアフィン22においては、当該左舷側フォアフィン22の前縁全域を、プロペラ5の回転軸線の高さ位置と同じ高さ位置に配し、当該左舷側フォアフィン22の後縁全域を、プロペラ5の回転軸線の高さ位置よりも高い高さ位置に配して、前方に向かって下向きに所定の傾斜角度で傾斜配置されている(図2参照)。この場合の水平方向に対する左舷側フォアフィン22の傾斜角度としては、左舷側フォアフィン22の前縁が下向きの場合をマイナス角とすると、好ましくは-4°~-32°である。
<右舷側アフトフィン>
右舷側アフトフィン23は、舵本体7の前後方向中央部において舵本体7の右側に張り出すように舵本体7の右舷側側面に取り付けられている。右舷側アフトフィン23は、翼根から翼端に向かって前縁全域が後方に傾斜するような後退角(フィン前縁から翼弦長の1/4の点を連ねる線が,舵前後方向中心軸に垂直な左右軸となす角)を持たせた下凸キャンバー(図1参照)を有する後退翼形状に形成されている。このように、右舷側アフトフィン23を後退翼形状に形成することにより、プロペラ後流をより多く受けることができて、推力をより増加させることができる。
右舷側アフトフィン23においては、当該右舷側アフトフィン23の前縁の高さ位置をプロペラ5の回転軸線の高さ位置とほぼ同じ高さ位置として、水平配置、又は傾斜配置され、右舷側アフトフィン23の前縁が上向きの場合をプラス角とすると、-10°~+20°となるように定められている。
図1に示されるように、本実施形態においては、右舷側フォアフィン21の後縁の全域が、プロペラ5の回転軸線の高さ位置よりも低い高さ位置に配される一方で、右舷側アフトフィン23の前縁の全域が、プロペラ5の回転軸線の高さ位置とほぼ同じ高さ位置に配されている。すなわち、右舷側フォアフィン21の後縁は、右舷側アフトフィン23の前縁よりも全体的に低い高さ位置に配され、右舷側フォアフィン21の後縁と右舷側アフトフィン23の前縁との高さ位置が全域に亘って異なるようにされている。これにより、右舷側フォアフィン21の後縁と右舷側アフトフィン23の前縁との間を通ってプロペラ後流が右舷側アフトフィン23の後方へとよりスムーズに流れることになり、右舷側アフトフィン23において発生させる推力をより高めることができる。
<作動説明>
以上に述べたように構成される船舶舵フィン装置20が配されるプロペラ後方の流れ場には、プロペラ5の回転流に、航行時に船体から生じる渦流(ビルジ渦)が加わる。その結果、プロペラ直後の右舷側においては、後方に向かって斜め下向きに強い回転流が流れる(図5中記号「A」を付した白抜き矢印を参照)。一方、プロペラ直後の左舷側においては、後方に向かって斜め上向きに強い回転流が流れる(図5中記号「B」を付した白抜き矢印を参照)。また、舵本体7の右舷側前後方向中央部には、プロペラ直後の強い回転流よりも弱いが後方に向かって斜め下向きの安定したプロペラ後流が流れる(図5中記号「C」を付した白抜き矢印を参照)。一方、舵本体7の左舷側前後方向中央部では、後方に向かって斜め上向きの流れと斜め下向きの流れとが混在する(図5中記号「D」、及び「E」を付したそれぞれの白抜き矢印を参照)。
図1に示されるように、プロペラ直後の右舷側には、右舷側フォアフィン21が前方に向かって上向きに傾斜配置されている。右舷側フォアフィン21は、プロペラ直後の右舷側における後方に向かって斜め下向きに流れる強い回転流を受けて、当該右舷側フォアフィン21の翼面に働く揚力と抗力との合力における前方成分(推進方向成分)の力を推力としてより効果的に作用させる。
また、図2に示されるように、プロペラ直後の左舷側には、左舷側フォアフィン22が前方に向かって下向きに傾斜配置されている。左舷側フォアフィン22は、プロペラ直後の左舷側における後方に向かって斜め上向きに流れる強い回転流を受けて、当該左舷側フォアフィン22の翼面に働く揚力と抗力との合力における前方成分(推進方向成分)の力を推力としてより効果的に作用させる。
さらに、図1に示されるように、右舷側フォアフィン21の後方には、右舷側アフトフィン23が所定の迎角を成すように配置されている。右舷側アフトフィン23は、プロペラ直後の強い回転流よりは弱いが後方に向かって斜め下向きの安定したプロペラ後流を受けて、当該右舷側アフトフィン23の翼面に働く揚力と抗力との合力における前方成分(推進方向成分)の力を推力としてより効果的に作用させる。
一方、舵本体7の左舷側側面近傍の流れ場、すなわち後方に向かって斜め上向きの流れと斜め下向きの流れとが混在する遅い流れ場には、アフトフィンが配置されずに舵抵抗の増加を未然に防ぐようにされている。
こうして、右舷側フォアフィン21、左舷側フォアフィン22、及び右舷側アフトフィン23が、各フィン21,22,23の翼面に働く揚力と抗力との合力における前方成分の力を推力としてより効果的に作用させる一方で、後方に向かって斜め上向きの流れと斜め下向きの流れとが混在する遅い流れ場には舵抵抗の増加を招くようなアフトフィンを配設しないようにされている。従って、舵抵抗の増加を招くことなく推力をより増加させることができ、これによって船舶の推進効率をより向上させることができる。
<CFD計算結果>
以上に述べた本実施形態の船舶舵フィン装置20の計算モデルを作成し、船尾2から船首に向かう方向に見て前進時にプロペラ5が右回りに回転する場合におけるプロペラ後方の流体運動に関し、CFD(Computational Fluid Dynamics)計算を行った。このCFD計算結果に基づく流体流れの様子が図5に示されている。
図5中記号「A」を付した白抜き矢印で示されるように、プロペラ直後の舵バルブ8の右舷側においては、後方に向かって斜め下向きに強い回転流が流れる。このため、図1に示されるように、前方に向かって上向きに傾斜された右舷側フォアフィン21を舵バルブ8の右側部に取り付けることにより、右舷側フォアフィン21の翼面に働く揚力と抗力との合力における前方成分の力を推力としてより効果的に作用させることができることが分かる。
図5中記号「B」を付した白抜き矢印で示されるように、プロペラ直後の舵バルブ8の左舷側においては、後方に向かって斜め上向きに強い回転流が流れる。このため、図2に示されるように、前方に向かって下向きに傾斜された左舷側フォアフィン22を舵バルブ8の左側部に取り付けることにより、左舷側フォアフィン22の翼面に働く揚力と抗力との合力における前方成分の力を推力としてより効果的に作用させることができることが分かる。
図5中記号「C」を付した白抜き矢印で示されるように、舵本体7の右舷側側面近傍においては、プロペラ直後の強い回転流よりは弱いが後方に向かって斜め下向きの安定したプロペラ後流が流れる。このため、図1に示されるように、水平状態に配置された右舷側アフトフィン23を舵本体7の右舷側側面に取り付けることにより、プロペラ後流に対し右舷側アフトフィン23が所定の迎角を成すように配されて右舷側アフトフィン23の翼面に働く揚力と抗力との合力における前方成分の力を推力としてより効果的に作用させることができることが分かる。
図5中記号「D」を付した白抜き矢印、及び記号「E」を付した白抜き矢印で示されるように、舵本体7の左舷側側面近傍においては、後方に向かって斜め上向きの流れと斜め下向きの流れとが混在する遅い流れ場が形成される。このような流れ場にフィンがあると、抗力の影響が支配的となって舵抵抗が増加し、全体として推進効率が低下するため、舵本体7の左舷側側面には、フィンを取り付けない方が良いことが分かる。
本実施形態に係る船舶舵フィン装置20の推進効率の向上効果を確認するために、フィンを設けることによる推力の増加と、舵全体の抵抗(舵バルブ、フィンを含む)とに関するCFD計算を行った。その結果が表1に示されている。
Figure 0007219664000001
表1において、実施例は、右舷側フォアフィン21、左舷側フォアフィン22、及び右舷側アフトフィン23のみを備えた本実施形態の船舶舵フィン装置20に係るシミュレーション結果に基づくものである。これに対し、比較例1は、図6(a)に示されるように、舵3にフィンが全く設けられていない場合のシミュレーション結果であり、舵全体の抵抗の基準(100%)となるものである。比較例2は、図6(b)に示されるように、舵3に右舷側アフトフィン23のみを設けた場合、比較例3は、図6(c)に示されるように、舵3に右舷側フォアフィン21、及び左舷側フォアフィン22のみを設けた場合、比較例4は、図6(d)に示されるように、右舷側フォアフィン21、左舷側フォアフィン22、右舷側アフトフィン23、及び左舷側アフトフィン24を設けた場合のシミュレーション結果に基づくものである。なお、比較例4における左舷側アフトフィン24は、舵本体7の前後方向中央部において舵本体7の左側に張り出すように舵本体7の左舷側側面に取り付けられ、翼根から翼端に向かって前縁の全域が後方に傾斜するような後退角を持たせた上凸キャンバーを有する後退翼形状に形成されている。
表1に示されるように、実施例の推力増加分(10.2%)は、右舷側フォアフィン21、及び左舷側フォアフィン22のみの比較例3での推力増加分(5.7%)と、右舷側アフトフィン23のみの比較例2での推力増加分(3.1%)との合計(8.8%)よりも大きい。これは、本実施形態で述べたように配設される右舷側フォアフィン21、左舷側フォアフィン22、及び右舷側アフトフィン23の相乗効果によるものと考えられる。また、右舷側フォアフィン21、左舷側フォアフィン22、及び右舷側アフトフィン23を設けることによる相乗効果により、実施例の舵全体の抵抗は、比較例1~4と比べて最も小さくなる。従って、実施例のものは、比較例1~4のものと比べて、舵全体の抵抗を低減しつつ、推力を増加させることができるので、船舶の推進効率を向上させることができると言える。
なお、比較例3のものでは、右舷側フォアフィン21、及び左舷側フォアフィン22により推力が増加した分だけ、舵全体の抵抗値の改善(95.5%)が見られるが、実施例の舵全体の抵抗値(93.1%)よりは大きく、また、実施例のものと比べて推力の増加分が少なく(実施例:10.2%増、比較例3:5.7%増)ため、推進効率の向上効果が十分であるとは言えない。
また、比較例4のものでは、左舷側アフトフィン24の追加により、実施例のものと比べて推力の増加分が多いが(実施例:10.2%増、比較例4:13.1%増)、それを打ち消して余りあるほどに、舵全体の抵抗が基準となる比較例1よりも増えるため(比較例1:100%、比較例4:104.7%)、推進効率の向上効果が十分であるとは言えない。
以上、本発明の船舶舵フィン装置について、一実施形態、及び実施例に基づいて説明したが、本発明は上記実施形態、及び実施例に記載した構成に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲において適宜その構成を変更することができるものである。
上記実施形態、及び実施例では、船尾から船首に向かう方向に見て、前進時にプロペラが右回りに回転する場合について述べたが、船尾から船首に向かう方向に見て、前進時にプロペラが左回りに回転する場合は、プロペラ後流の流れ場の状態がプロペラ右回りの場合と左右で逆になり、船舶舵フィン装置におけるフィンの配置も左右で逆になり、また、各フィンのキャンバーの凸側が向く方向が左右で上下逆になる。
本発明の船舶舵フィン装置は、船舶の推進効率向上の用途において利用可能である。
1 船舶
3 舵
5 プロペラ
7 舵本体
8 舵バルブ
20 船舶舵フィン装置
21 右舷側フォアフィン
22 左舷側フォアフィン
23 右舷側アフトフィン

Claims (5)

  1. プロペラの後方の流れ場に位置するように舵に付設された翼形状の複数のフィンを備え、前記フィンに働く前方成分の力によって推力を得るようにした船舶舵フィン装置であって、
    前記フィンは、
    前記舵の両側に張り出すように配設される右舷側フォアフィン、及び左舷側フォアフィンと、
    船尾から船首に向かう方向に見て、前進時に前記プロペラが右回りに回転する場合に前記舵の右舷側のみに設けられ、且つ前記右舷側フォアフィンの後方に配設される右舷側アフトフィン、又は前進時に前記プロペラが左回りに回転する場合に前記舵の左舷側のみに設けられ、且つ前記左舷側フォアフィンの後方に配設される左舷側アフトフィンと、
    を備える船舶舵フィン装置。
  2. 前記右舷側フォアフィン、及び/又は前記左舷側フォアフィンは、前進翼形状である請求項1に記載の船舶舵フィン装置。
  3. 前記右舷側アフトフィン、又は前記左舷側アフトフィンは、後退翼形状である請求項1又は2に記載の船舶舵フィン装置。
  4. 船尾から船首に向かう方向に見て、前進時に前記プロペラが右回りに回転する場合、前記右舷側フォアフィンを前方に向かって上向きに傾斜配置するとともに、前記左舷側フォアフィンを前方に向かって下向きに傾斜配置し、且つ前記右舷側アフトフィンを所定の迎角で配置し、
    船尾から船首に向かう方向に見て、前進時に前記プロペラが左回りに回転する場合、前記右舷側フォアフィンを前方に向かって下向きに傾斜配置するとともに、前記左舷側フォアフィンを前方に向かって上向きに傾斜配置し、且つ前記左舷側アフトフィンを所定の迎角で配置する請求項1~3の何れか一項に記載の船舶舵フィン装置。
  5. 前記舵は、本体部分を構成する舵本体と、前記プロペラの回転中心部と対向するように前記舵本体の前部に設けられる舵バルブとを備えてなり、
    前記右舷側フォアフィン、及び前記左舷側フォアフィンは、少なくとも前記舵バルブに取り付けられている請求項1~4の何れか一項に記載の船舶舵フィン装置。
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