JP6474767B2 - 防音壁用防音装置 - Google Patents
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Description
このため、従来から、防音壁の頂部に防音装置を取り付けて、回折音を軽減して減音効果を得るようにしている。この防音装置は、嵩が小さくても減音効果が得られるため、自動車の見通しの悪化や近隣住民の日照権を侵害する等の問題も軽減し得る。
これらの防音装置は、前後壁板等で囲まれるスペース(空間)に上記回折音を取り込み、そのスペース内で音を干渉させてそのエネルギーを減少させる音響管方式を採用したり、ヘルムホルツ共鳴によって同エネルギーを減少させるヘルムホルツ共鳴器式を採用したりしている。
この発明は、以上の実状の下、さらなる防音(減音)効果の向上を図ることを課題とする。
このため、図6(a)に示すように、同図(b)に示す単純防音壁(遮音壁)B’の頂部を防音装置Aに置き換え(以下、その置き換えた防音壁をBx(x:0、1、2・・・)とする。)、床面や防音壁Bの表面は全て完全反射面とし、その防音壁B(Bx)、音源(騒音発進源)、受音点の位置関係は同図のとおりの試験装置とした。その受音点の間隔はx軸方向、y軸方向ともに10cmとし、受音点数は37×37=1369点とした。防音壁B’は、幅:95mm、高さ:4mとしたため、図6(a)に図示の防音壁Bは「4m−防音装置Aの高さ」となる。
また、このA特性補正値とは別に、騒音の種類が変わると、周波数特性スペクトルも変わる。道路交通騒音の場合は、日本音響学会が表1に示す周波数特性を規定しており、道路用防音壁の性能を計算する場合は、この補正を加算する必要がある(道路交通騒音の予測モデル”ASJ RTN-Model 2013” 日本音響学会誌 70巻 4号(2014) p.208参照)。なお、表1の周波数特性は、A特性及び道路交通騒音特性をともに加味したものである。
防音装置A(A0、A1、A2・・)は、図1、図2等に示すように、並列する上下方向真っ直ぐな前後壁板1、2と、その前後壁板1、2の下面を塞ぐ水平方向の底板3とからなり、この構成の防音装置Aを基本構成とする。この防音装置Aは、上面開放の断面長方形状の、前後壁板1、2等で囲まれる空間に上記騒音の回折音を取り込み、その空間内で音を干渉させてそのエネルギーを減少させる音響管方式である。すなわち、前後壁板1、2、底板3とからなる空間(スペース)Sが音響管を形成する(図1(a)参照)。このとき、そのスペースSの両側面(図において表裏面)は適宜な板で閉塞されてその間隔は任意の長さとする。
なお、図1及び図2の防音装置A0〜A6は前後壁板1、2が同一高さh(=h’)である。
その各防音装置A1〜A3を防音壁Bの頂部に置き換えて設置した防音壁B1、B2、B3において、周波数条件:63〜4000Hzの1/3オクターブバンド中心周波数とし、各周波数、各受音点ごとに音圧レベルを計算した。音圧レベルの単位はdBである。
その各算出値において、図6(b)に示す防音壁B’に対し、同図(a)に示す各防音壁B0、B1、B2、B3における、人間が感知する音圧レベルの差を求めることにより、各受音点における減音効果を算出した。このとき、全受音点の減音効果を平均化した値で、構造の違いによる影響を評価した。
その高さhを一定(=45.5cm)とし、前後壁板1、2の間隔wを変化させた防音壁B0、B2(防音壁Bの頂部を防音装置A0、A2に置き換え)の評価を下記表2に示し、防音壁B1、B3(同防音装置A1、A3に置き換え)の評価を下記表3に示す。
さらに、防音装置の高さについては、現在では、60cm前後が要求されているとともに減音対象の周波数(63Hz〜4000Hz)から、前後壁板1、2の高さ(底板3に対する最下端から最上端まで)h、h’≦60cm程度が好ましいが、1m以下(h、h’≦1m)であれば良い。
また、以上の解析は、前後壁板1、2の間で音響管Sを形成しており、各音響管において採用し得ることが考えられるため、後述する前後壁板1、2の間に、並列する任意の数(1以上)の上下方向の直板状中間板7を設ける場合においても、幅w、高さh等の値は同様に考慮すれば良いことが理解出来る。このとき、上記10cm≦h≦1mから、中間板の有無に拘わらず、前記各音響管Sの最下端から最上端までの高さは1m以下とする。
このため、図7の記載から、減音効果を高めるためには、多くの周波数の音波を反射させてやればよく、そのためには、減音作用を行う前後壁板1、2間の寸法が変化する個所を多くすれば良いことが推測される。
その立証のため、図2(a)に示す、図1(a)に示す防音壁B0において、前壁板1の高さ方向途中に凹部(凸部)5を形成した防音装置A4に置き換えた防音壁B4について同様の評価を行い、その評価結果を表4に示す。
なお、このように、中間板7を設けて幅方向に複数の異なる構造を形成し、それぞれの構造(音響管S)によって異なる周波数の音を減音させるものとすれば、それらの組み合わせにより減音効果を高めることができる。この複数の構造の解析例61は、前方(図3(a)において左側)は単純な構造(断面形状が長方形)、後方は断面が長方形ではない(ほぼ台形)構造であり、前方の構造は、底部から開口部までの長さ調整により減音効果が高くなる周波数を調整できる。この前方構造では315Hzで減音効果のピークが発生した。後方の構造は断面形状を複雑化しているため、多重反射による減音を得ることができる。多重反射は周波数が主に高い領域でも有効であり、この後方構造において、道路交通騒音の代表周波数である1kHzで一定の効果があった。
その散乱板8の長さや傾斜角度αは、その効果を解析して適宜に決定する。また、中間板7の高さh1を30cmとすると、400Hzにおいて解析例61より減音効果が高くなった。さらに、底板3の下縁は前壁板1の下縁に接続せずに、下方の所要位置に位置するようにすることもできる。
この防音装置においては、h:455mm、h’:200mm、h1:380mm、h3:505mm、h4:20mm、w:480mm、w1:155mm、w2:320mmとした場合、高さ:4m、幅95mmの防音壁B0に対する解析減音効果ΔLは6.5dBであった。
このとき、前後壁板間等の幅(間隔)が一定であると、各板の高さh(h’)が高く(長く)なると、低周波数の音を有効に減音し、逆に低く(短く)なると、高周波数の音を有効に減音する。このため、減音しようとする音の周波数に応じて、各板の高さh、同幅w(wn)を決定すれば良いが、ある周波数の波長は決まっているから、自ずと、高さh、幅wは決定され、多重反射による減音には、高い周波数は高さhを短くし、低い周波数は高さhを長くするのが好ましい。
さらに、後壁板の上部は前壁板に向かって上向き傾斜面とすれば、その傾斜面をなす傾斜板によってその下方の空間における多重反射がより行われるとともに、その傾斜面に沿って風が流れるため、後壁板に風圧が直角にかからず、後壁板に負担がかからない(図5参照)。
この発明は、吸音材を使用することなく、板材によって減音効果を発揮するため、その板材を透光性のものとすることができて、上記見通しが良くなり、防音壁の見た目の高さを低くすることができるとともに、日照権問題の生じないものとすることができる。
前後壁板11、12、底板13、中間板14は、アクリル、ポリカーボネート等の透光性樹脂材からなる樹脂成型品とした。
この防音装置Aは、図8Aから図8Bに示すように、従来と同様に、側板18の上下方向の嵌合溝18aを介し支柱Hに嵌めて防音壁Bの頂部に設置する。
傾斜片14aは中間板14の強度を高めるとともに、前壁板11と中間板14とで形成する空間Sと中間板14と後壁板12とで形成する空間Sとを区画して両空間S、Sにおける多重反射を円滑に行うためであり、その先端は前壁板11に極力近づける(間隙を小さくする)ことが好ましいが、排水を考慮してその間隙は10mm程度とする。また、傾斜片14aは底板13と平行とならないようにして有効な乱反射がなされるようにする。このため、傾斜片14aの位置(h1)及び傾斜角度は、その空間Sによって減音しようとする周波数Hzに応じて実験などによって適宜に設定する。
側板18’の上記支柱Hが嵌る部分(開口18b以外)の内面には吸音材20を貼付している。図中、21は前壁板11の上縁に嵌められたアルミニウム製補強枠、22は支柱Hへの嵌合材である。
中間板14の高さh1は補強枠19の取り付け代を確保する必要から、h1≧10cm以上とする。
図10においては、道路Rの長さ方向に連結された各防音装置A’は、前記長さ方向全長に亘って閉塞壁の無い態様となっているが、その最両側面をなす側板(枠)18’は閉塞された側板18とすることもできる。
この凸部5の数、大きさ、高さ、位置は、最良の減音効果が得られるように実験等によって適宜に決定する。また、凸部5は各板11、12、14の長さ方向全長の凸条としたり、同間欠的としたりし得る。
なお、この実施形態の防音壁の防音装置A、A’の構成は、特許請求の範囲の請求項2に規定する「高さh、h’、h1、h4や各板の間隔の規定」に拘束されない。
さらに、側板18の内面にグラスウール等の吸音材を設けることができ、両側板18、18の間に前後壁板11、12と底板13で囲まれた空間の仕切板(補強枠19を閉塞した板)を設けて長さ方向に区画された音響管Sを形成し、かつ、その仕切板を、前記空間の長さ(前後壁板の長さ)に対する減音仕様とする騒音の固有周波数の半波長の整数倍と成らない位置とすることもできる。
また、防音装置Aの頂部における開口部にゴミなどが入り込むのを防止するために、頂部にその開口部を被う網状のもの、例えば、エキスパンドメタルなどを設置することもできる。エキスパンドメタルの開孔率は、防音効果を低下させない程度であればよい。
このように、今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。この発明の範囲は、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
B、Bx、B0、B1、B2、B3、B4、B5、B6、B7、B8、B9 防音壁
H 溝形鋼からなる支柱(縦樋)
S 隣接する板で形成された音響管(スペース)
h 前壁板の高さ(長さ)
h’後壁板の高さ(長さ)
h1 中間板の高さ(長さ)
h4 中間板下端から底板上面までの長さ(高さ)
w 前後壁板の間隔
w1 前壁板と中間板との間隔(幅)
w2 後壁板と中間板との間隔(幅)
w3 後壁板上部の傾斜面の前壁板に向かう水平長さ
1、11 防音装置の前壁板
2、12 同後壁板
2a、12a 傾斜面
3、13 防音装置の底板
5 凸部(凹部)
6、16 突片
7、14 防音装置の中間板
14a 傾斜片
18 防音装置の側板
18’ 枠状側板
18b 側板の開口
19 補強枠
20 吸音材
21 補強枠
22 支柱用嵌合材
Claims (4)
- 道路(R)の長さ方向に沿って並列する上下方向の直板状前後壁板(11、12)と、その前後壁板間の下面を塞ぐ底板(13)と、前記前後壁板(11、12)の間に、同様に並列する1以上の直板状中間板(14n、n:1、2、3・・・)とを有して、その前後壁板(11、12)とその隣接する中間板(14n)間又は隣接する中間板(14n)間で上面開口の音響管(S)が形成された、道路用防音壁(B)の頂部に取付けられる防音装置(A)であって、
上記底板(13)は、後壁板(12)から前壁板(11)に向かって下り傾斜とし、上記中間板(14n)の下端は前記底板(13)に至らずに前壁板(11)に向かって傾斜する傾斜片(14a)を有して、この防音装置(A)の上面は上記音響管(S)の上面開口のみによって構成されて、前記防音装置(A)は前記底板(13)及び前後壁板(11、12)によって前記上面開口以外が外部から閉塞されており、入射音は、上記音響管(S)内にその上面開口から入り込み、前後壁板(11、12)及び中間板(14n)の表面への衝突を繰り返し干渉しあって、徐々にエネルギーを消滅させて減音される、入射音の多重反射によって減音効果を得るようにしたことを特徴とする防音装置。 - 上記底板(13)は、後壁板(12)から前壁板(11)に向かって下り傾斜とし、上記中間板(14n)の下端は前記底板(13)に至らずに前壁板(11)に向かって傾斜する傾斜片(14a)を有するとともに、上記前壁板(11)及び中間板(14)の上端縁を内側に向かい水平のみに屈曲させて突片(16)とし、上記音響管(S)内において入射音の多重反射によって減音効果を得るようにしたことを特徴とする請求項1に記載の防音装置。
- 上記前壁板(11)の突片(16)がその前壁板(11)の上端に嵌められた補強枠(21)からなることを特徴とする請求項2に記載の防音装置。
- 上記前後壁板(11、12)及び中間板(14)が透光性であり、かつ前記中間板(14)が一枚であり、さらに、前記前壁板(11)と前記中間板(14)の間及び前記後壁板(12)と前記中間板(14)との間に前後方向の補強枠(19)をそれぞれ設けたことを特徴とする請求項1乃至3の何れか一つに記載の防音装置。
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