JP6469560B2 - 制震ダンパ - Google Patents

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本発明は、耐久性に優れる制震ダンパに関するものである。
従来、柱と梁を有する門型の構造物の耐震性を高める為、ブレースや方杖等が用いられているが、構造物の制震を行うため、これらの一部に制震ダンパを設ける場合がある。制震ダンパには、流体抵抗を利用した油圧ダンパ、摩擦抵抗を利用した摩擦ダンパ、部材の弾塑性変形を利用した弾塑性ダンパ等がある。特に弾塑性ダンパは、コストや取り扱いやすさに優れている。
このような弾塑性ダンパとしては、ブロック(板材)に孔を形成し、孔によって形成される柱部を変形させることで、構造物の制震を行う方法がある(例えば特許文献1)。
特開平11−081738号公報
図8は、形状を単純化した制震ダンパ100を示す図である。制震ダンパ100は、例えば軟鋼製の部材からなる。本体101は、ブレース等と取り付けるための取り付け部と、それらの間に設けられる孔103とを具備する。孔103によって、取り付け部同士の間に柱部105が形成される。
制震ダンパ100は、構造物のブレース等に接合される。地震等が発生した際には、柱部105が弾塑性変形し、これによりエネルギーを吸収し、構造物に減衰力を与える。
ここで、弾塑性変形する柱部105には、被膜107が設けられる。被膜107は、たとえば樹脂系の塗料であって、柱部105を被覆するものである。被膜107は、柱部に水が付着して腐食することを防止するものである。
特許文献1のように、従来の制震ダンパに用いられる塗料の性質として、伸縮性が要求されている。制震ダンパ100のように、降伏点を超えるような大きな塑性変形を繰り返す場合には、被膜107に伸縮性がないと、柱部105の変形時に、被膜107が変形に追従できずに、破損するおそれがあるためである。
図9(a)は、従来の塗装、溶融亜鉛めっき、電解亜鉛めっきなどによって形成された被膜107の断面を示す概念図である。柱部105の防錆を行うためには、被膜107は確実に柱部105を被覆する必要がある。この際、被膜107は、柱部105の変形領域において、十分な伸縮性を有する。
しかし、発明者らは、被膜107に伸縮性を付与したのみでは、制震ダンパ100の防錆手段としては十分でないことを見出した。図9(b)は、地震等が発生して、柱部105が弾塑性変形し、これによりエネルギーを吸収した後の柱部105の断面を示す概念図である。発明者らは、弾塑性変形を繰り返した柱部105を数多く観察したところ、その一部に被膜107に破損があることを発見した。被膜107が十分な伸縮性を有するにもかかわらず、このようなひび割れが生じた原因として、以下のように考えられる。
まず、第1に、柱部105が大きな塑性変形を起こすと、柱部105は変形に伴う熱を発生する。この結果、この熱によって被膜107が劣化し、十分な伸縮性を確保することができなくなり、被膜107のひび割れなどを生じたと考えられる。
また、第2に、柱部105の金属素材中には、水素や酸素などのガス原子が溶け込んでいるが、柱部105の大きな繰り返し変形に伴い、このガス成分が放出され(図中矢印T)、これが、被膜107と柱部105の基材との界面に凝集して、被膜107を膨らませ、これによって被膜107にひび割れが生じたと考えられる。
このように、柱部105が一度弾塑性変形を起こすと、十分な伸縮性を有する被膜107であっても、ひび割れなどが生じ、防錆効果が著しく低下するおそれがある。このため、このような場合には、再塗装などの必要が生じる。
本発明は、このような問題に鑑みてなされたもので、柱部の弾塑性変形によっても、防錆効果が損なわれることがなく、耐久性に優れた制震ダンパを提供することを目的とする。
前述した目的を達成するため、本発明は、構造物に取り付けられて、振動エネルギーを吸収する制震ダンパであって、鋼製の板状の本体は、構造物に取り付けられる一対の取り付け部と、前記取り付け部同士を連結する柱部と、を具備し、少なくとも前記柱部の表面には、多数の亜鉛粒子からなる常温亜鉛めっき被膜が形成されることを特徴とする制震ダンパである。
前記亜鉛粒子は、互いに接触していることが望ましい。
前記亜鉛粒子は、相対的に大きな大粒子と、前記大粒子よりも小さい小粒子と、を具備し、一部の前記大粒子同士の隙間に一部の前記小粒子が入り込むことで、前記亜鉛粒子同士の接触面積を増加可能であることが望ましい。
前記本体の面内方向における前記柱部の危険断面位置と、前記面内方向に垂直な方向の面外方向における前記柱部の危険断面位置と、が異なり、前記面外方向の危険断面位置は、前記柱部の基部であり、前記面内方向の危険断面位置は、前記柱部の基部から、前記柱部の中央部側にずれた位置となり、前記柱部の外形は、前記柱部の中央と基部との間の所定の範囲に、前記柱部の中央方向に凸となる二次曲線からなる曲線部と、前記曲線部と前記柱部の基部とをつなぐ柱端部とからなってもよい。
前記柱部の高さHに対して、前記面内方向の危険断面位置は、前記柱部の基部から、H/20以上離れた位置であってもよい。
前記曲線部と前記柱端部とがなだらかに接続され、前記柱端部は、前記柱部の基部に設けられた円弧部と、前記曲線部と前記円弧部とをつなぐ直線部と、を具備し、前記柱端部が、前記曲線部の二次曲線の延長線よりも外側に形成されてもよい。
本発明によれば、柱部の表面に、常温亜鉛めっきが施されるため、亜鉛の自己犠牲防食によって、防錆効果を得ることができる。また、常温亜鉛めっきが、多数の亜鉛粒子からなるため、柱部の変形にも容易に追従し、柱部の変形と同様に被膜も変形することで、被膜の破損を防止することができる。さらに、常温亜鉛めっきは、金属粒子からなるため、柱部の変形に伴う発熱によって劣化することがなく、耐久性が高い。
また、多数の亜鉛粒子からなる被膜には、微細な連続空孔が形成されるため、柱部の基材からガスが放出されても、ガスが被膜を透過して外部に放出される。このため、ガスによる膨れが生じることがない。
なお、従来の防錆被膜は、たとえ溶融亜鉛めっきや電解亜鉛めっきなどのめっきで被膜を形成する場合でも、柱部を完全に覆うことが前提となっていた。これに対し、亜鉛粒子間に隙間が存在する常温亜鉛めっきは、隙間に水分が浸入しても、犠牲防食によって柱部が腐食することが防がれるとともに、この隙間によってガスの放出を可能としたものである。
このように、塑性変形が繰り返される制震ダンパに対して、常温亜鉛めっきを適用すれば、本来、常温亜鉛めっきが有する防錆効果に加え、変形に伴う発熱に対しても十分な耐久性を得ることができ、さらに、従来の常温亜鉛めっきでは考慮されることがなかった、ガス透過性という機能によって、ガス膨れに伴うひび割れの発生という新たな課題を解決しえたものである。
なお、亜鉛粒子同士が互いに接触することで、犠牲防食の効果を確実に得ることができる。
また、亜鉛粒子が、相対的に大きな大粒子と、大粒子よりも小さい小粒子と、からなることで、大粒子同士の隙間に一部の小粒子が入り込み、亜鉛粒子同士の接触面積を増加することができる。この結果、より高い防錆効果を得ることができる。
また、面内方向の変形に対する危険断面位置と、面外方向の変形に対する危険断面位置と、が異なれば、意図せずに面外方向の変形が生じた場合でも、面内方向の累積変形能力を損なうことを抑制することができる。特に、柱部の一部に二次曲線からなる曲線部が形成されることで、柱部の降伏せん断力を過剰に高くすることなく、効率よく累積変形能力を確保することができる。
特に、柱部の高さHに対して、面内方向の危険断面位置が、柱部の基部から、H/20以上離れた位置であれば、その効果を確実に得ることができる。さらに面内方向の危険断面位置を、柱部の基部から、H/10以上離れた位置とすれば、より確実にその効果を確実に得ることができる。
この場合、柱端部を、円弧部と直線部として、曲線部と柱端部とをなだらかに接続し、柱端部を、曲線部の二次曲線の延長線よりも外側に形成することで、応力集中部などが生じにくく、確実に、面内方向の変形に対する危険断面位置を柱部の中央部側にずらすことができる。
本発明によれば、柱部の弾塑性変形によっても、防錆効果が損なわれることがなく、耐久性に優れた制震ダンパことができる。
制震構造1を示す図。 (a)は、制震ダンパ9を示す図、(b)は、柱部15の部分拡大図。 被膜17の拡大断面概念図。 (a)は、制震ダンパ9の面内方向の変形を示す図、(b)は、制震ダンパ9の面外方向の変形を示す図。 柱部15の形状における、面内方向および面外方向のそれぞれの塑性断面係数と、降伏せん断力とを示す図。 理想状態の塑性断面係数と、降伏せん断力とを示す図。 従来の柱部105の形状における、面内方向および面外方向のそれぞれの塑性断面係数と、降伏せん断力とを示す図。 制震ダンパ100を示す図。 (a)は被膜107の拡大断面概念図、(b)は繰り返し変形後の被膜107の拡大断面概念図。
以下、本発明の実施の形態にかかる制震構造1について説明する。図1は、制震構造1を示す図である。構造物の柱3、梁5の合流部から、上下いずれかの方向の梁5までV型のブレース7が接合される。ブレース7の端部と梁5との間には、制震ダンパ9が接合される。すなわち、制震構造1においては、構造物のV型(横向き、逆向きに設置されるものを含む。以下同じ)のブレース7へ制震ダンパ9が設けられる。なお、制震ダンパ9の取り付け位置やブレース7等の態様については図示した例には限られない。
地震などにより構造物が振動し、ブレース7と梁5とが相対的に変位すると、制震ダンパ9は弾塑性変形する。すなわち、制震ダンパ9は、その一部が弾塑性変形することで、振動エネルギーを吸収する。
次に、制震ダンパ9について詳細に説明する。図2(a)は、制震ダンパ9の正面図である。制震ダンパ9は、軟鋼などの鋼材からなる板状の部材である。すなわち、制震ダンパ9の厚みは略一定である。
制震ダンパ9の本体11の上下には、前述した構造物への取り付け部11aが設けられる。取り付け部11aには、例えばボルトなどを挿通可能な複数の孔が設けられる。
本体11の取り付け部11a同士の間には、本体11を貫通する複数の孔13が形成される。また、孔13によって、複数の柱部15が形成される。すなわち、柱部15は、上下の取り付け部11a同士を連結する部位となる。なお、柱部15の本数は、図示した例には限られず、1本であってもよい。この場合には、柱部15の両側には孔13が形成されるのではなく切欠きが形成される。なお、以下の説明では、孔13によって、複数の柱部15が形成される例について説明するが、柱部15が1本の場合には、孔13に代えて、切欠きであるものとする。
図2(b)は、柱部15の部分拡大図である。柱部15は、中央部がくびれた形状である。柱部15の中央部から基部(取り付け部11aとの境界近傍)との間の所定の範囲には、曲線部(図中L)が設けられる。曲線部Lは、柱部15の中央方向に凸となるような二次曲線(図中E)からなる。
曲線部Lと柱部15の基部との間には、直線部(図中M)と、円弧部(図中N)が連続する。なお、曲線部Lと柱部15の基部との間を柱端部と称する。すなわち、柱端部は、柱部15基部に設けられた円弧部Nと、曲線部Lと円弧部Nとをつなぐ直線部Mとからなる。曲線部Lと直線部Mとはなだらかに接続される。また、直線部Mと円弧部Nとはなだらかに接続される。このようにすることで、各部の境界に応力集中などが生じることがない。
ここで、柱端部(円弧部Nと直線部M)は、曲線部Lの二次曲線Eの延長線よりも外側にはみ出すように形成される。すなわち、柱端部(円弧部Nと直線部M)の部位では、二次曲線Eの延長線の幅よりも柱部15の幅が大きい。
柱部15には、被膜17が設けられる。なお、被膜17は、少なくとも、弾塑性変形を繰り返す柱部15の表面に形成されればよく、取り付け部11aには、被膜17を設けなくてもよい。
図3は、被膜17の拡大断面の概念図である。被膜17は、常温亜鉛めっきである。常温亜鉛めっきは、多数の亜鉛粒子が、樹脂などによる接着剤成分(図示省略)とともに塗布されて形成される。例えば、亜鉛含有率が95%程度、接着剤含有率が5%程度のものが使用可能である。被膜17の厚みは、例えば76μm以上であれば防食性を確保できる。なお、このような常温亜鉛めっきとしては、ZRCジャパン製の「Z.R.C」(登録商標)が適用可能である。
被膜17を構成する亜鉛粒子同士は互いに接触する。このように亜鉛粒子同士を接触させることで、高い犠牲防食効果を確保することができる。
被膜17は、相対的にサイズの大きな大粒子である亜鉛粒子19aと、亜鉛粒子19aよりも相対的にサイズの小さな小粒子である亜鉛粒子19bで構成される。一部の亜鉛粒子19a同士の隙間に一部の亜鉛粒子19bが入り込むことで、亜鉛粒子同士の接触面積が増加する。この結果、より高い防錆効果を得ることができる。
次に、制震ダンパ9の変形について説明する。図4(a)は、制震ダンパ9の上下の取り付け部11aが相対的に変位した状態を示す図である。図4(a)に示す例では、本体の孔13が形成される面に平行な方向(図中矢印F方向)の変形である。したがって、変形後においても、上下の取り付け部11aが同一平面上に位置する。この方向の変形を面内方向の変形と称する。
これに対し、図4(b)は、面内方向の変形に垂直な方向(図中矢印G方向)の変形を示す。すなわち、変形後において、上下の取り付け部11aが、互いに平行に異なる面上に位置する。この方向の変形を面外方向の変形と称する。
このように、制震ダンパ9は、地震等の振動によって、柱部15が塑性変形を繰り返すことで減衰力を発生させる。ここで、柱部15が繰り返し塑性変形を行うと、熱が発生する。しかし、被膜17は、金属製であるため、この塑性変形に容易に追従することができる。
また、前述した様に、被膜17は、多数の亜鉛粒子19a、19bからなる。このため、従来の樹脂塗装、溶融亜鉛めっき、電解亜鉛めっきなどのように、完全に柱部15の表面を隙間なく覆うものではない。すなわち、被膜17には、微小な隙間が形成される。
このため、柱部15の塑性変形に伴い、柱部15内部から放出されるガス成分は被膜17を透過して、外部に放出させることができる(図3の矢印I)。このため、被膜17と柱部15との境界部にガス成分が貯留して膨れなどが生じることがなく、被膜17の破損を防止することができる。なお、隙間に浸入する水分に対しては、亜鉛粒子の犠牲防食効果によって、柱部15の腐食を抑制することができる。
このように、本実施形態によれば、制震ダンパ9に対し、従来課題とされていなかった、耐熱性やガス透過性を考慮し、従来の使用方法ではその効果について意図されていない常温亜鉛めっきを組み合わせることで、塑性変形部における被膜17の破損を防止可能であるという従来に無い制震ダンパ9を得ることができる。
次に、制震ダンパ9の形状について、より詳細に説明する。制震ダンパ9は、面内方向の変形を意図して設計される。したがって、制震ダンパ9は、面内方向の変形に対して必要な減衰力を発生し、所定の累積変形能力を確保できるように設計される。しかし、実際の地震等の振動は、面内方向の振動に加えて、面外方向の振動も生じることとなる。このため、制震ダンパ9は、面内方向の変形に加えて、面外方向の変形も考慮する必要がある。
図5は、柱部15の面内方向および面外方向のそれぞれの塑性断面係数と、降伏せん断力とを示す図である。柱部15の高さXにおける幅をB、厚みをDとする。図5の(a)は、高さ方向Xにおける、面内方向(幅方向)の変形に対する塑性断面係数Zp0を示し、図5の(b)は、高さ方向Xにおける、面内方向(幅方向)の変形に対する降伏せん断力Qp0を示す。
塑性断面係数Zp0は、BD/4で表される。したがって、図5の(a)に示すように、塑性断面係数Zp0は、位置によって変化する。この場合、降伏せん断力Qp0は、(b)に示すように、柱部15の基部から、中央部にずれた位置で最も小さく(図中P)、中央で最も大きくなる。すなわち、面内方向(幅方向)の変形に対して、柱部15は基部から中央部にずれた位置で最も降伏せん断力が小さくなるため、繰り返しの変形において、危険断面位置は、柱部15の基部から中央にずれた位置となる。
同様に、図5の(c)は、高さ方向Xにおける、面外方向(厚み方向)の変形に対する塑性断面係数Zp90を示し、図5の(d)は、高さ方向Xにおける、面外方向(厚み方向)の変形に対する降伏せん断力Qp90を示す。
塑性断面係数Zp90は、BD/4で表される。したがって、図5の(a)に示すように、塑性断面係数Zp0は、位置によって変化する。この場合、降伏せん断力Qp0は、(d)に示すように、柱部15のX方向の端部近傍において最も小さく(図中Q)、中央で最も大きくなる。すなわち、面外方向(厚み方向)の変形に対して、柱部15は基部近傍において最も降伏せん断力が小さくなるため、繰り返しの変形において、危険断面位置は、柱部15の基部近傍となる。
このように、本実施形態では、面外方向の変形における危険断面位置(柱部15の基部近傍)に対して、面内方向の変形における危険断面位置が、柱部15の中央方向にずれた位置とすることが望ましい。
ここで、図6の(a)は、理想状態の塑性断面係数Zp0を示す図である。柱部の形状を完全な2次曲線で構成し、中央部で凸同士が接するような形状であれば、図6の(b)に示すように、降伏せん断力は、部位によらず一定となる。すなわち、危険断面位置が柱部の1点(上下2点)のみに形成されず、全体が均一な降伏せん断力であるため、無駄がなく、必要以上に高い降伏せん断力を有する部位がない。このため、制震ダンパを軽量化し、材料コストも削減することができる。
そこで、本実施形態では、柱部15の基部から所定の距離離れた部位に、曲線部Lを形成する。曲線部Lの二次曲線を適切に設定することで、曲線部Lにおける降伏せん断力を略一定にすることができる。このため、危険断面位置が1点(上下2点)とならず、過剰な降伏せん断力を得るために柱部15の幅を必要以上に大きくする必要がない。
ここで、前述した様に、柱端部の部位では、二次曲線E(図2(b))の延長線の幅よりも柱部15の幅が大きい。このため、柱端部においては、曲線部Lにおける降伏せん断力よりも大きくなる。この結果、危険断面位置は、柱部15の基部から柱部15の中央方向にずれた位置となる。
なお、面内方向の変形における危険断面位置は、柱部15の全高をHとした際に、柱部15の基部(面外方向の変形における危険断面位置)から、H/20以上離れた位置とすることが望ましく、さらに好ましくは、H/10以上離れた位置とすることが望ましい。面内方向の変形における危険断面位置と面外方向の変形における危険断面位置とが近すぎると、その効果が小さくなるためである。
なお、面内方向の変形における危険断面位置が1点(上下2点)ではなく、所定の範囲に形成される場合には、面内方向の変形における危険断面位置の内、柱部15の基部に最も近い点と、面外方向の変形における危険断面位置とを、H/20以上(さらにはH/10以上)離すことが望ましい。
一方し、図7は、従来の柱部105(図8)の変形時の塑性断面係数と降伏せん断力の関係を示す図である。柱部105は、簡単のため、完全な直方体とし、幅をB、厚みをDとした。図7の(a)は、高さ方向Xにおける、面内方向(幅方向)の変形に対する塑性断面係数Zp0を示し、図7の(b)は、高さ方向Xにおける、面内方向(幅方向)の変形に対する降伏せん断力Qp0を示す。
塑性断面係数Zp0は、BD/4で表される。柱部105は、Xに対して幅Bと厚みDが一定であるため、(a)に示すように、Xの位置によらず、塑性断面係数Zp0は一定となる。この場合、降伏せん断力Qp0は、(b)に示すように、柱部105のX方向の端部において最も小さく(図中R)、中央で最も大きくなる。すなわち、面内方向(幅方向)の変形に対して、柱部105は基部において最も降伏せん断力が小さくなるため、繰り返しの変形において、最も早く損傷する部位(以下、危険断面位置)は、柱部105の基部となる。
同様に、図7の(c)は、高さ方向Xにおける、面内方向に垂直な面外方向(厚み方向)の変形に対する塑性断面係数Zp90を示し、図7の(d)は、高さ方向Xにおける、面外方向(厚み方向)の変形に対する降伏せん断力Qp90を示す。
塑性断面係数Zp90は、BD/4で表される。柱部105は、Xに対して幅Bと厚みDが一定であるため、(c)に示すように、Xの位置によらず、塑性断面係数Zp90は一定となる。この場合、降伏せん断力Qp90は、(d)に示すように、柱部105のX方向の端部において最も小さく(図中S)、中央で最も大きくなる。すなわち、面外方向(厚み方向)の変形に対しても、柱部105は基部において最も降伏せん断力が小さくなるため、繰り返しの変形において、危険断面位置は、柱部105の基部となる。
このように、危険断面位置を考慮せずに設計を行うと、面内方向および面外方向のいずれに対しても、危険断面位置が柱部105の基部近傍となる。通常、制震ダンパ100は、面内方向の制震を目的に用いられるため、面内方向の累積変形能力(損傷するまでに繰り返し弾塑性変形可能な能力)が重要である。しかし、意図しない面外方向の変形が起こった際、危険断面位置が一致してしまうと、柱部105の基部における累積変形能力が損なわれる恐れがある。
このように、本実施形態のように、面内方向の変形に対する危険断面位置と、面外方向の変形に対する危険断面位置とを異なるようにすれば、面外方向の変形が生じた場合でも、面内方向の累積変形能力を損なうことを抑制することができる。
以上、本実施の形態によれば、被膜17が、常温亜鉛めっきによって、多数の亜鉛粒子19a、19bで構成される。このため、制震ダンパ9の柱部15を被覆する被膜17に必要な、伸縮性、耐熱性、およびガス透過性の機能を発揮させることができ、耐久性に優れる制震ダンパ9を得ることができる。
また、亜鉛粒子19a、19b同士が接触することで、高い防錆効果を得ることができる。特に、サイズの異なる亜鉛粒子19a、19bを用いることで、亜鉛粒子同士の接触面積を増加させることができる。
また、柱部15の一部に、二次曲線からなる曲線部Lを形成することで、柱部15の降伏せん断力を過剰に高くすることなく、効率よく累積変形能力を確保することができる。
また、面内方向の変形に対する危険断面位置と、面外方向の変形に対する危険断面位置とを異なるようにすることで、面外方向の変形が生じた場合でも、面内方向の累積変形能力を損なうことを抑制することができる。
また、柱部15の高さHに対して、面内方向の危険断面位置が、柱部15の基部から、H/20以上離れた位置(さらにH/10以上離れた位置)とすることで、面内方向の変形が面外方向の変形によって影響を受けることをより確実に抑制することができる。なお、曲線部Lを形成する場合には、曲線部Lを柱部15の基部からH/20以上離れた位置(さらにH/10以上離れた位置)から柱部15の中央部までの所定範囲に形成すればよい。
以上、添付図を参照しながら、本発明の実施の形態を説明したが、本発明の技術的範囲は、前述した実施の形態に左右されない。当業者であれば、特許請求の範囲に記載された技術的思想の範疇内において各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
例えば、柱部15の形状は、図示した例には限られない。被膜17による効果は、いずれの柱部15の形状に対しても適用可能であり、従来の柱部105に対しても適用可能である。さらに、面内方向の変形に対する危険断面位置と、面外方向の変形に対する危険断面位置とを異なる位置にすることができれば、制震ダンパ9の耐久性をさらに向上させることができる。また、前述した曲線部Lは必ずしも設けなくてもよく、柱端部の形状も、直線部と円弧部以外の形状としてもよい。
1………制震構造
3………柱
5………梁
7………ブレース
9………制震ダンパ
11………本体
11a………取り付け部
13………孔
15………柱部
17………被膜
19a、19b………亜鉛粒子
100………制震ダンパ
101………本体
103………孔
105………柱部
107………被膜

Claims (6)

  1. 構造物に取り付けられて、振動エネルギーを吸収する制震ダンパであって、
    鋼製の板状の本体は、構造物に取り付けられる一対の取り付け部と、前記取り付け部同士を連結する柱部と、を具備し、
    少なくとも前記柱部の表面には、多数の亜鉛粒子からなる常温亜鉛めっき被膜が形成されることを特徴とする制震ダンパ。
  2. 前記亜鉛粒子は、互いに接触していることを特徴とする請求項1記載の制震ダンパ。
  3. 前記亜鉛粒子は、相対的に大きな大粒子と、前記大粒子よりも小さい小粒子と、を具備し、
    一部の前記大粒子同士の隙間に一部の前記小粒子が入り込むことで、前記亜鉛粒子同士の接触面積を増加可能であることを特徴とする請求項2記載の制震ダンパ。
  4. 前記本体の面内方向における前記柱部の危険断面位置と、
    前記面内方向に垂直な方向の面外方向における前記柱部の危険断面位置と、が異なり、
    前記面外方向の危険断面位置は、前記柱部の基部であり、
    前記面内方向の危険断面位置は、前記柱部の基部から、前記柱部の中央部側にずれた位置となり、
    前記柱部の外形は、前記柱部の中央と基部との間の所定の範囲に、前記柱部の中央方向に凸となる二次曲線からなる曲線部と、前記曲線部と前記柱部の基部とをつなぐ柱端部とからなることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれかに記載の制震ダンパ。
  5. 前記柱部の高さHに対して、前記面内方向の危険断面位置は、前記柱部の基部から、H/20以上離れた位置であることを特徴とする請求項4記載の制震ダンパ。
  6. 前記曲線部と前記柱端部とがなだらかに接続され、
    前記柱端部は、前記柱部の基部に設けられた円弧部と、前記曲線部と前記円弧部とをつなぐ直線部と、を具備し、
    前記柱端部が、前記曲線部の二次曲線の延長線よりも外側に形成されることを特徴とする請求項4または請求項5に記載の制震ダンパ。
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