JP5967615B2 - 免震装置 - Google Patents
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Description
この特許文献1の免震ダンパーは、地震時において、中間部が変形することで振動エネルギーを吸収し、振動の振幅を小さくする。
更に、この本体表面の少なくとも一部に、被膜部を形成したので、微少振幅の振動が繰り返されることによって本体表面に金属疲労による亀裂が発生し、更に本体が破断するのを防止できる。
したがって、変形することで振動エネルギーを吸収する部材に、微少振幅の振動に起因する亀裂や破断が発生することを防止できる。
しかしながら、(2)の発明によれば、本体において、微少振幅の振動に起因する亀裂や破断が発生しやすい部分である、上部フランジの近傍及び下部フランジの近傍に被膜部を形成した。これにより、変形することで振動エネルギーを吸収する部材に、微少振幅の振動に起因する亀裂や破断が発生することを防止できる。
又、更に、本発明者は、鉛の表面にワセリンを塗布すると、鉛を繰り返し変形させたときに、ワセリンを塗布しない場合と比べ、鉛の表面における亀裂の発生が極めて少ないことを発見した。
(5)の発明によれば、ワセリンを38℃から60℃に温めてから、本体に塗布することで、被膜部を形成する。これにより、ワセリンを38℃から60℃に温めることで、ワセリンを液体にしてから、本体に塗布するので、微少振幅の振動に起因する亀裂や破断の発生をより効果的に防止できる免震装置において、被膜部を形成するための作業性が向上する。
ここで、本発明における「ちょう度番号」は、JIS K2220において分類されるちょう度番号であり、グリースの外観的硬さを表示するものである。ちょう度番号00号から4号は、常温における外観的硬さの状態は、半流動状(ちょう度000号)から極めて硬(ちょう度6号)で示される範囲のうち、軟から硬の範囲である。
(7)の発明によれば、ちょう度番号が00号から4号に含まれるグリースで被膜部を形成することで、グリースを塗布しやすく、なおかつグリースが重力により下方に流れてしまうのを防止できる。
(8)の発明によれば、本体の亀裂が発生した部分に、グリースを塗布することで、被膜部を形成する。これにより、本体に亀裂が発生している免震装置において、被膜部を形成することで、亀裂が拡大していくのを防止できる。
ここで、免震装置は、建築物最下部と基礎との間に設けられる。このため、既設の免震装置の周囲において、十分な作業スペースを確保するのは困難である。
(9)の発明によれば、本体の亀裂が発生した部分に、グリースを噴霧することで、被膜部を形成するので、例えば、作業スペースが確保できず、刷毛やローラ等の塗布具が届かない部分にも、スプレー等の噴霧器でグリースを噴霧することで被膜部を形成できる。又、グリースを噴霧することで、亀裂内部にもグリースが浸透し被膜部を形成できる。
<免震ダンパー1の構成>
まず、本発明の第1実施形態に係る免震ダンパー1の構成について、図面を参照しながら説明する。
図1は、本発明の第1実施形態に係る免震ダンパー1の斜視図である。図2において、(a)は本発明の第1実施形態に係る免震ダンパー1を図1中右側から視た図であり、(b)は本発明の第1実施形態に係る免震ダンパー1を図1中後ろ側から視た図である。
免震ダンパー1は、上部構造体に接続される上部フランジ2と、下部構造体に接続される下部フランジ3と、上部フランジ2と下部フランジ3との間に配置され、これらを連結する本体10と、を備える。
被膜部20は、本体10の各部の表面において、ワセリンが160μmの厚さで塗布されて形成されている。第1実施形態において、ワセリンは、健栄製薬製の白色ワセリンを用いているが、ワセリンと称される薬品であれば任意のものを用いることができる。
次に、免震ダンパー1の作用について説明する。
構造物の上部構造体と下部構造体の間に設置され免震ダンパー1は、上部フランジ2が上部構造体に接続され、下部フランジ3が下部構造体に接続されている。
第1の作用として、免震ダンパー1は、地震に起因するような振幅が大きい振動に対しては鉛製の本体10が塑性変形して振動エネルギーを吸収する。
実施例1では、上記第1実施形態の変形例に係る免震ダンパー1Aを用いて、微少振幅の振動が繰り返された場合における、ワセリンが塗布されることにより形成された被膜部20が奏する効果を確認した。
図3は、本発明の第1実施形態の変形例に係る免震ダンパー1Aを示す図である。(a)は、変形例に係る免震ダンパー1Aの側面図である。(b)は、変形例に係る免震ダンパー1Aの背面図である。
変形例に係る免震ダンパー1Aは、被膜部20が、上部フランジ近傍部15において、上部傾斜部14に連なる部分の半周にのみ形成されている点だけが上記第1実施形態に係る免震ダンパー1と異なる。
図4において、上部フランジ近傍部の左側(Mの記載の下)は被膜部20が形成された部分であり、上部フランジ近傍部の左側(Aの記載の下)は被膜部20が形成されていない部分である。
次に、本発明の第2実施形態について説明する。
第2実施形態は、被膜部20が鉱物油を基油とするグリースを塗布することで形成されている点が第1実施形態と異なる。
第2実施形態における本体10の構成は第1実施形態と同様の構成であるので、その説明を省略する。
尚、被膜部20が形成される部分は、第1実施形態と同様であるので、その説明を省略する。
実施例2では、上記第2実施形態の変形例に係る免震ダンパー1Bを用いて、微少振幅の振動が繰り返された場合における、リチウム複合石鹸グリース(住鉱潤滑剤(株)製)を80g/m2の厚さで塗布したことにより形成した被膜部20が奏する効果を確認した。
図5は、本発明の第2実施形態の変形例に係る免震ダンパー1Bの背面図である。
変形例に係る免震ダンパー1Bは、被膜部20が、屈折部13の背面側左半分にのみ形成されている点だけが上記第2実施形態に係る免震ダンパー1と異なる。
図6において、屈折部13の左側(Nの記載の上)は被膜部20が形成された部分であり、屈折部13の右側(Mの記載の上)は被膜部20が形成されていない部分である。
又、上記実施例2おいて、リチウム複合石鹸グリース(住鉱潤滑剤(株)製)を160g/m2の厚さで塗布した被膜部20及び同リチウム複合石鹸グリースを40g/m2の厚さで塗布した被膜部20を形成した場合も、亀裂の発生がないことも確認できた。
実施例3では、上記第2実施形態の変形例に係る免震ダンパー1C(図示せず)を用いて、微少振幅の振動が繰り返された場合における、グリース塗布により形成した被膜部20が奏する効果を測定し、特に上述の微小振幅の振動の繰返しに対する破断発生等の抑制効果を確認した。
実施例3a:振幅±1mm(10Hz)
実施例3b:振幅±2mm(5Hz)
参考例:振幅±10mm(1Hz)
加振方向は全て前後方向で実施した。加振は原則8時間/日とし、破断と判断されるまで上記の一定振幅加振を継続した。
2 上部フランジ
3 下部フランジ
10 本体
11 下部フランジ近傍部
12 下部傾斜部
13 屈折部
14 上部傾斜部
15 上部フランジ近傍部
20 被膜部
Claims (8)
- 構造物の上部構造体と下部構造体の間に設置され、振動エネルギーを吸収する免震装置であって、
前記上部構造体に接続される上部フランジと、
前記下部構造体に接続される下部フランジと、
前記上部フランジと前記下部フランジとの間に配置され、これらを連結し、鉛で形成された本体と、を備え、
前記本体表面の少なくとも一部に、ワセリンが塗布されることで形成される被膜部を形成した免震装置。 - 前記被膜部は、上部フランジの近傍及び前記下部フランジの近傍に形成される請求項1に記載の免震装置。
- 前記本体は、
前記上部フランジから垂直方向の下方に延びる上部フランジ近傍部と、
前記下部フランジから垂直方向の上方に延びる下部フランジ近傍部と、
前記上部フランジと前記下部フランジとの略中間位置において、前記上部フランジ近傍部と前記下部フランジ近傍部との中心通る中心軸より水平方向に突出し、屈折する屈折部と、
前記中心軸に対し傾斜して、前記上部フランジ近傍部から前記屈折部に連なる上部傾斜部と、
前記中心軸に対し傾斜して、前記下部フランジ近傍部から前記屈折部に連なる下部傾斜部と、から形成され、
前記被膜部は、前記上部フランジ近傍部、前記下部フランジ近傍部、前記屈折部、前記上部傾斜部の前記屈折部近傍及び前記下部傾斜部の前記屈折部近傍に形成される請求項1又は請求項2に記載の免震装置。 - 請求項1から3のいずれかに記載の免震装置における前記被膜部の形成方法であって、
前記ワセリンを38℃から60℃に温めてから、前記本体に塗布することで、前記被膜部を形成する形成方法。 - 構造物の上部構造体と下部構造体の間に設置され、振動エネルギーを吸収する免震装置
であって、
前記上部構造体に接続される上部フランジと、
前記下部構造体に接続される下部フランジと、
前記上部フランジと前記下部フランジとの間に配置され、これらを連結し、弾塑性素材
で形成された本体と、を備え、
前記本体表面の少なくとも一部に、被膜部を形成し、
前記本体は、鉛で形成され、
前記被膜部は、鉱物油を基油とするグリースが塗布されることで形成される免震装置。 - 前記グリースは、ちょう度番号が00号から4号に含まれる請求項5に記載の免震装置。
- 請求項5又は6に記載の免震装置における前記被膜部の形成方法であって、
前記本体において、亀裂が発生した部分に、前記グリースを塗布することで、前記被膜部を形成する形成方法。 - 前記本体の亀裂が発生した部分に、前記グリースを噴霧することで、前記被膜部を形成する請求項7に記載の形成方法。
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