JP6468924B2 - セラミックグリーンシート製造工程用剥離フィルムおよびセラミックグリーンシート製造方法 - Google Patents

セラミックグリーンシート製造工程用剥離フィルムおよびセラミックグリーンシート製造方法 Download PDF

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Description

本発明は、セラミックグリーンシートを製造する工程で使用する剥離フィルム、およびセラミックグリーンシートの製造方法に関するものである。
従来より、積層セラミックコンデンサや多層セラミック基板といった積層セラミック製品を製造するには、セラミックグリーンシートを成形し、得られたセラミックグリーンシートを複数枚積層して焼成することが行われている。セラミックグリーンシートは、チタン酸バリウムや酸化チタンなどのセラミック材料を含有するセラミックスラリーを剥離フィルム上に塗工することにより成形される。
近年、電子機器の小型化及び高性能化に伴い、積層セラミックコンデンサや多層セラミック基板の小型化及び多層化が進み、セラミックグリーンシートの薄膜化が進んでいる。セラミックグリーンシートが薄膜化して、その乾燥後の厚みが、例えば1μm以下となると、セラミックスラリーを塗工し乾燥させたときに、剥離フィルムにおける剥離剤層の表面状態に起因して、セラミックグリーンシートにピンホールや厚みむら等の欠陥が発生し易くなる。
このような問題に対し、特許文献1に開示される剥離フィルムでは、剥離フィルムにおけるセラミックスラリーおよびセラミックグリーンシートと接する面(以下「剥離面」という場合がある。)の平滑性を高めて、セラミックグリーンシートにピンホールや厚みむら等の欠陥が発生することを抑制している。
ところで、上記のようなセラミックグリーンシートに用いられる剥離フィルムは、一般にロール状に巻かれた状態で保管、輸送され、セラミックスラリーが塗工される際に巻き出される。さらに、剥離フィルムの剥離面上にセラミックグリーンシートが成形された後、剥離フィルムはその状態のままロール状に巻かれ、保管、輸送される。そのため、ロール状に巻かれた状態において、セラミックグリーンシートの一方の面は剥離面と接し、他方の面は剥離フィルムにおける剥離面とは反対側の面(以下「裏面」という場合がある。)と接することになる。ここで、剥離フィルムの裏面の平滑性が低い場合、その粗い表面形状がセラミックグリーンシートに転写してしまい、セラミックグリーンシートが部分的に薄くなるといった欠陥が生じてしまう。このような欠陥は、当該セラミックグリーンシートを使用して製造された積層セラミック製品において短絡の発生をもたらし得る。
この問題を解消するため、特許文献2には、裏面の平滑性を高めた剥離フィルムが開示されている。この剥離フィルムによれば、剥離フィルムをセラミックグリーンシートが成形された状態で巻き取った際における、剥離フィルムの裏面と接触することに起因する、セラミックグリーンシートにおけるピンホール、厚みムラ、傷等の発生を効果的に抑制することができる。
特開2002−121075号公報 国際公開第2013/146295号
しかしながら、剥離フィルムの剥離面および裏面の両方の平滑性を高くしてしまうと、剥離フィルムのみを巻き取る際、剥離フィルム同士の滑りが悪くなり、巻きズレや不均一な空気の挟み込みが発生し易い。これらは、剥離フィルムの変形をもたらし、これを用いて製造されるセラミックグリーンシートの精度も低下する。さらに、剥離フィルム同士が強く密着するため、剥離フィルムを巻き取って保管したときに、ブロッキングが生じ易い。
本発明は、このような実状に鑑みてなされたものであり、巻き取りによる変形およびブロッキングの発生が抑制され、且つ、欠陥の発生が抑制されたセラミックグリーンシートを製造することが可能なセラミックグリーンシート製造工程用剥離フィルムを提供することを目的とする。
上記目的を達成するために、第1に本発明は、長尺の基材と、前記基材の片面側に設けられた剥離剤層とを備えたセラミックグリーンシート製造工程用剥離フィルムであって、前記剥離フィルムが、平面視において、幅方向中央部の領域にセラミックグリーンシート成形部を有し、且つ、幅方向両側部の領域に凸部を1つずつ有し、前記凸部の高さが、前記セラミックグリーンシート成形部に位置する前記剥離剤層の前記基材とは反対側の面の高さを基準として0.1〜3μmであり、前記セラミックグリーンシート成形部に位置する前記剥離剤層の前記基材とは反対側の面の算術平均粗さRaおよび最大突起高さRpが、それぞれ8nm未満および50nm未満であり、前記基材における前記剥離剤層とは反対側の面の算術平均粗さRaおよび最大突起高さRpが、それぞれ10nm未満および100nm未満であることを特徴とするセラミックグリーンシート製造工程用剥離フィルムを提供する(発明1)。
上記発明(発明1)によれば、剥離フィルムが、幅方向両側部に凸部を1つずつ有することで、剥離フィルムを巻き取ったときに、重なり合う剥離フィルム同士の間に間隙が形成される。これにより、剥離フィルムの変形およびブロッキングの発生が抑制される。また、剥離面の平滑性が高いことで、成形したセラミックグリーンシートにおけるピンホールや厚みむら等の欠陥の発生が抑制される。さらに、裏面の平滑性が高いことで、セラミックグリーンシートが裏面と接触することに起因するダメージが低減される。また、剥離フィルムをセラミックグリーンシートとともに巻き取った状態で保管する場合に、剥離フィルムが凸部を有することで、セラミックグリーンシートにかかる圧力が緩和され、剥離フィルムの形状の転写や、擦れによる傷等の発生が効果的に防止される。これらにより、欠陥の発生が抑制されたセラミックグリーンシートを製造することができる。
上記発明(発明1)において、前記剥離フィルムは、前記基材と前記剥離剤層との間であって前記基材の幅方向両側部に1つずつ設けられた樹脂層を備え、もって、前記凸部の位置に、前記樹脂層と前記剥離剤層とを含むことが好ましい(発明2)。
上記発明(発明1)において、前記剥離フィルムは、前記剥離剤層における前記基材とは反対側の面であって前記剥離剤層の幅方向両側部に1つずつ設けられた樹脂層を備え、もって、前記凸部の位置に、前記樹脂層と前記剥離剤層とを含むことが好ましい(発明3)。
上記発明(発明1〜3)において、前記凸部の幅方向の長さは、5〜50mmであることが好ましい(発明4)。
上記発明(発明1〜4)において、前記セラミックグリーンシート成形部の幅方向の長さは、100〜500mmであることが好ましい(発明5)。
第2に本発明は、前記セラミックグリーンシート製造工程用剥離フィルム(発明1〜5)の前記セラミックグリーンシート成形部にセラミックスラリーを塗工し、乾燥させる工程を含むことを特徴とするセラミックグリーンシート製造方法を提供する(発明6)。
上記発明(発明6)においては、前記凸部の高さの値以下の厚さを有するセラミックグリーンシートを形成することが好ましい(発明7)。
本発明に係るセラミックグリーンシート製造工程用剥離フィルムによれば、巻き取りによる変形およびブロッキングの発生が抑制され、且つ、欠陥の発生が抑制されたセラミックグリーンシートを製造することが可能となる。
本発明の一実施形態に係るセラミックグリーンシート製造工程用剥離フィルムの断面図である。 本発明の別の実施形態に係るセラミックグリーンシート製造工程用剥離フィルムの断面図である。 本発明の一実施形態に係るセラミックグリーンシート製造工程用剥離フィルムを巻き取った際に、当該剥離フィルムが三層重なった状態を示す断面図である。 本発明の一実施形態に係るセラミックグリーンシート製造工程用剥離フィルムを、剥離面上に成形したセラミックグリーンシートとともに巻き取った際に、当該剥離フィルムが三層重なった状態を示す断面図である。 本発明の一実施形態に係るセラミックグリーンシート製造工程用剥離フィルムの製造途中の状態を示す斜視図である。
以下、本発明の実施形態について説明する。
〔セラミックグリーンシート製造工程用剥離フィルム〕
本実施形態に係るセラミックグリーンシート製造工程用剥離フィルム(以下単に「剥離フィルム」という場合がある。)は、長尺の基材と、当該基材の片面側に設けられた剥離剤層とを備える。そして、剥離フィルムは、平面視において、幅方向中央部の領域にセラミックグリーンシート成形部を有し、且つ、幅方向両側部の領域に凸部を1つずつ有する。
図1には、剥離フィルムの具体的な例として、第1の実施形態に係るセラミックグリーンシート製造工程用剥離フィルム1A(以下単に「剥離フィルム1A」という場合がある。)が示される。剥離フィルム1Aは、長尺の基材11と、基材11の一方の面(図1では上面)に積層された剥離剤層12Aと、基材11と剥離剤層12Aとの間であって基材11の幅方向両側部(図1では横方向両端部)に1つずつ設けられた樹脂層13Aとを備えて構成される。
図1に示されるように、剥離フィルム1Aでは、基材11の両端部のみに樹脂層13Aが積層され、さらに剥離剤層12Aが、樹脂層13Aおよび基材11の上に積層されている。これにより、基材11上に剥離剤層12Aのみが積層された中央部に対して、基材11上に樹脂層13Aおよび剥離剤層12Aが積層された両端部が隆起している。平面視において、剥離フィルム1Aの隆起した両端部の領域が前述した凸部(符号14)に該当し、凸部14に挟まれた中央部の領域がセラミックグリーンシート成形部(符号15)に該当する。すなわち、セラミックグリーンシート成形部15の位置の層構成には基材11および剥離剤層12Aが含まれ、凸部14の位置の層構成には基材11、樹脂層13Aおよび剥離剤層12Aが含まれる。なお、剥離フィルム1Aを使用してセラミックグリーンシートを製造する場合、セラミックスラリーは、セラミックグリーンシート成形部15に塗工することが好ましい。
剥離フィルム1Aにおいて、凸部14の高さは、セラミックグリーンシート成形部15に位置する剥離剤層12Aの基材11とは反対側の面の高さを基準として0.1〜3μmである。また、セラミックグリーンシート成形部15に位置する剥離剤層12Aの基材11とは反対側の面の算術平均粗さRaおよび最大突起高さRpは、それぞれ8nm未満および50nm未満である。さらに、基材11における剥離剤層12Aとは反対側の面の算術平均粗さRaおよび最大突起高さRpは、それぞれ10nm未満および100nm未満である。
剥離フィルム1Aでは、上記の通り、凸部14の高さがセラミックグリーンシート成形部15に位置する剥離剤層12Aの基材11とは反対側の面の高さに対して0.1〜3μm高くなっている。剥離フィルム1Aを巻き取ったとき、図3に示されるように、剥離フィルム1Aは、剥離面と裏面とが向き合った状態で重なる。このとき、剥離フィルム1Aが凸部14を有することにより、剥離面と、その上に重なった剥離フィルム1Aの裏面との間に間隙Gが形成され、当該間隙Gから空気が抜け易いため、巻きズレや不均一な空気の挟み込みが生じ難い。そのため、巻き取りが容易となり、剥離フィルムの変形も生じ難い。また、剥離フィルム1Aを巻き取った状態で保管する場合においても、剥離フィルム1A同士の接触面積が小さいため、剥離面および裏面の平滑性が高い場合であってもブロッキングが生じ難い。
さらに、剥離フィルム1Aを使用してセラミックグリーンシートを製造する場合、上記の通り剥離面の平滑性が高いことにより、当該剥離面に成形したセラミックグリーンシートにおけるピンホールや厚みむら等の欠陥の発生が抑制される。また、剥離フィルム1Aを、成形したセラミックグリーンシートとともに巻き取る場合、図4に示されるように、成形されたセラミックグリーンシート(符号2)の一方の面(図4では上面)と、剥離フィルム1Aの裏面とが接触するものの、上記の通り裏面の平滑性が高いことにより、セラミックグリーンシートが裏面と接触することに起因するダメージが低減される。さらに、剥離フィルム1Aをセラミックグリーンシートとともに巻き取った状態で保管する場合であっても、凸部14の存在によってセラミックグリーンシートにかかる圧力が緩和されるため、剥離フィルム1Aの剥離面および裏面の形状の転写や、擦れによる傷等の発生が効果的に防止される。これらの結果として、欠陥の発生が抑制されたセラミックグリーンシートを製造することができる。
1.剥離フィルムの物性等
剥離フィルム1Aにおいて、セラミックグリーンシート成形部15に位置する剥離剤層12Aの基材11とは反対側の面、すなわち剥離面の算術平均粗さRaは、8nm未満であり、5nm未満であることが好ましく、特に3nm未満であることが好ましい。なお、剥離面の算術平均粗さRaの下限値は特に限定されないものの、例えば1nm以上である。また、剥離面の最大突起高さRpは、50nm未満であり、40nm未満であることが好ましく、特に30nm未満であることが好ましい。なお、剥離面の最大突起高さRpの下限値は特に限定されないものの、例えば5nm以上である。剥離面における算術平均粗さRaが8nm以上であるか、または最大突起高さRpが50nm以上である場合、剥離面に成形したセラミックグリーンシートにおいて、ピンホールや厚みムラ等の欠陥が発生し易くなる。なお、本明細書における算術平均粗さRaおよび最大突起高さRpの測定方法は、後述する試験例に示すとおりである。
剥離フィルム1Aにおいて、基材11における剥離剤層12Aとは反対側の面、すなわち裏面の算術平均粗さRaは、10nm未満であり、8nm未満であることが好ましく、特に5nm未満であることが好ましい。なお、裏面の算術平均粗さRaの下限値は特に限定されないものの、例えば3nm以上である。また、裏面の最大突起高さRpは、100nm未満であり、70nm未満であることが好ましく、特に40nm未満であることが好ましい。なお、裏面の最大突起高さRpの下限値は特に限定されないものの、例えば10nm以上である。裏面における算術平均粗さRaが10nm以上であるか、または最大突起高さRpが100nmである場合、剥離フィルム1Aをセラミックグリーンシートとともに巻き取った際に、セラミックグリーンシートにおける剥離フィルム1Aの裏面と接触する面に、当該裏面の形状が転写され、セラミックグリーンシートが部分的に薄くなる等といった欠陥が生じてしまう。
剥離フィルム1Aにおいて、凸部14の高さは、セラミックグリーンシート成形部15に位置する剥離剤層12Aの基材11とは反対側の面、すなわち剥離面の高さを基準として0.1〜3μmであり、0.3〜2μmであることが好ましく、特に0.5〜1μmであることが好ましい。ここで、凸部14の高さとは、図1に示される剥離フィルム1Aでは、hで示される長さを意味する。凸部14の高さが0.1μm未満である場合、剥離フィルム1Aを巻き取った場合に、剥離面と裏面とが接触し、空気の抜けが悪くなり、巻きズレや不均一な空気の挟み込みが発生し易い。特に、剥離フィルム1Aでは、前述の通り剥離面および裏面の平滑性が高いため、これらが接触した場合の空気の抜けは非常に悪い。そのため、剥離フィルム1Aの正常な巻き取りが困難となり、巻き取りによって剥離フィルムの変形が生じてしまう。また、剥離フィルム1Aを巻き取って保管する間に、ブロッキングが生じてしまう。一方、凸部14の高さが3μmを超える場合、剥離フィルム1Aを巻き取った際の体積が不必要に大きくなる。
なお、凸部14の高さは、成形するセラミックグリーンシートの厚さに応じて0.1〜3μmの範囲で適宜設定することができる。特に、当該高さは、成形するセラミックグリーンシートの厚さの値と同じであるか、当該厚さよりもわずかに小さいことが好ましい。これにより、剥離フィルム1Aをセラミックグリーンシートとともに巻き取ったときにおける、セラミックグリーンシートと剥離フィルム1Aの裏面との接触の圧力が低下し、当該接触に起因したセラミックグリーンシートの損傷を低減することができる。
剥離フィルム1Aにおいて、凸部14の幅方向の長さは、5〜50mmであることが好ましく、特に8〜40mmであることが好ましく、さらには10〜30mmであることが好ましい。ここで、凸部14の幅方向の長さとは、図1に示される剥離フィルム1Aでは、w1で示される長さを意味する。凸部14の幅方向の長さが5mm以上であることで、剥離フィルム1Aを巻き取る際の巻き崩れを抑制することができる。また、凸部14の幅方向の長さが50mm以下であることで、剥離フィルム1Aを巻き取った際に、空気が抜け易くなり、空気の挟み込みが生じ難くなる。
剥離フィルム1Aにおいて、セラミックグリーンシート成形部15の幅方向の長さは、100〜500mmであることが好ましく、特に120〜400mmであることが好ましく、さらには150〜300mmであることが好ましい。ここで、セラミックグリーンシート成形部15の幅方向の長さとは、図1に示される剥離フィルム1Aでは、w2で示される長さを意味する。セラミックグリーンシート成形部15の幅方向の長さが100mm以上であることで、一般的な大きさを有したセラミックグリーンシートを成形することが可能となる。また、セラミックグリーンシート成形部15の幅方向の長さが500mm以下であることで、剥離フィルム1Aを巻き取った際における、剥離面に対する裏面の垂れ下がりを効果的に抑制することができ、剥離面と裏面との接触の程度を低減することができる。
2.剥離剤層
剥離フィルム1Aは剥離剤層12Aを備えることで、剥離面に成形されたセラミックグリーンシートから剥離フィルム1Aを剥離する際の剥離力を適度に低下させることができる。
剥離剤層12Aを構成する剥離剤としては、剥離フィルム1Aにおける前述した形状を形成でき、さらに前述の物性を達成できるものであれば、特に制限はない。このような剥離剤としては、例えば、シリコーン系剥離剤、フッ素系剥離剤、アクリル系剥離剤、アルキド系剥離剤、長鎖アルキル基系剥離剤、熱可塑性樹脂系剥離剤等を使用することができる。また、剥離剤層12Aを構成する剥離剤としては、活性エネルギー線硬化型または熱硬化型の剥離剤を使用することが好ましい。これらの剥離剤は、1種を単独で使用してもよく、または2種以上を組み合わせて使用してもよい。
シリコーン系剥離剤としては、付加反応型、縮合反応型、紫外線硬化型、電子線硬化型等のものがある。これらの中でも付加反応型シリコーン系剥離剤が、反応性が高く生産性に優れるとともに、剥離力の継時的変化が小さい、硬化収縮が無い等の効果に優れるため特に好ましい。
付加反応型シリコーン系剥離剤としては、例えば、アルケニル基を含有するポリオルガノシロキサン化合物よりなる主剤、ヒドロシリル基を含有するポリオルガノシロキサン化合物よりなる架橋剤、および付加反応を促進する触媒を含む樹脂組成物が挙げられる。主剤や架橋剤を構成するポリオルガノシロキサン化合物の主骨格は、例えば、ポリジメチルシロキサンやジメチルシロキサン−メチルフェニルシロキサン共重合体などが用いられる。主剤のポリオルガノシロキサンに用いられるアルケニル基としては、ビニル基、アリル基、プロペニル基、ヘキセニル基等の炭素数2〜10のアルケニル基が挙げられる。ポリオルガノシロキサンにおける上記アルケニル基の位置は、分子末端であってもよいし側鎖であってもよく、1分子に2個以上のアルケニル基を備えたポリオルガノシロキサンが主剤として好ましい。
上記架橋剤に用いられるポリオルガノシロキサンとしては、具体的には、ジメチルハイドロジェンシロキシ基末端封鎖ジメチルシロキサン−メチルハイドロジェンシロキサン共重合体、トリメチルシロキシ基末端封鎖ジメチルシロキサン−メチルハイドロジェンシロキサン共重合体、トリメチルシロキシ基末端封鎖メチルハイドロジェンポリシロキサン、ポリ(ハイドロジェンシルセスキオキサン)等が挙げられる。
また、上記触媒としては、微粒子状白金、炭素粉末担体上に吸着された微粒子状白金、塩化白金酸、アルコール変性塩化白金酸、塩化白金酸のオレフィン錯体、パラジウム、ロジウム等の白金属系化合物等が挙げられる。
更に、付加反応型シリコーン系剥離剤は、所望により、付加反応抑制剤、剥離調整剤、密着向上剤などを含有してもよい。
アクリル系剥離剤としては、例えば、長鎖アルキル基含有アクリル重合体や、長鎖アルキル変性アクリル樹脂、シリコーン変性アクリル樹脂等のアクリル重合体変性樹脂が用いられる。長鎖アルキル基含有アクリル重合体としては、炭素数が12〜30のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸エステルと炭素数が1〜12のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸エステルとの共重合体が好ましい。また、長鎖アルキル基含有アクリル重合体または変性前のアクリル重合体は、重量平均分子量30万以上であるものが好ましい。アクリル系剥離剤に用いられるアクリル重合体は1種を単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。なお、本明細書において、(メタ)アクリル酸エステルとは、アクリル酸エステル及びメタクリル酸エステルの両方を意味する。他の類似用語も同様である。また、「重合体」には「共重合体」の概念も含まれるものとする。さらに、本明細書における重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)法により測定した標準ポリスチレン換算の値である。
また、これらのアクリル重合体やアクリル重合体変性樹脂は、架橋剤により架橋されていることが好ましい。このような架橋剤としては特に制限はなく、従来アクリル系樹脂において架橋剤として慣用されているものの中から、任意のものを適宜選択して用いることができる。このような架橋剤としては、例えばポリイソシアネート化合物、エポキシ樹脂、メラミン樹脂、尿素樹脂、ジアルデヒド類、メチロールポリマー、アジリジン系化合物、金属キレート化合物、金属アルコキシド、金属塩などが挙げられるが、ポリイソシアネート化合物が好ましく用いられる。この架橋剤は1種を単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
アルキド系剥離剤としては、一般に架橋構造を有するアルキド樹脂が用いられる。架橋構造を有するアルキド樹脂の形成は、例えばアルキド樹脂、架橋剤および所望により硬化触媒を含む熱硬化性樹脂組成物からなる層を加熱硬化させる方法を用いることができる。
アルキド樹脂は、多価アルコールと多塩基酸との縮合反応によって得られる樹脂であり、アルキド系剥離剤に用いられるアルキド樹脂としては、二塩基酸と二価アルコールとの縮合物、当該縮合物を不乾性油脂肪酸で変性したものである不転化性アルキド樹脂、及び二塩基酸と三価以上のアルコールとの縮合物である転化性アルキド樹脂が好ましく挙げられる。
アルキド樹脂に用いられる多価アルコールとしては、例えばエチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、プロピレングリコール、トリメチレングリコール、テトラメチレングリコール、ネオペンチルグリコールなどの二価アルコール、グリセリン、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパンなどの三価アルコール、ジグリセリン、トリグリセリン、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール、マンニット、ソルビットなどの四価以上の多価アルコールを挙げることができる。
また、上記多塩基酸としては、例えば無水フタル酸、テレフタル酸、イソフタル酸、無水トリメット酸などの芳香族多塩基酸、コハク酸、アジピン酸、セバシン酸などの脂肪族飽和多塩基酸、マレイン酸、無水マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、無水シトラコン酸などの脂肪族不飽和多塩基酸、シクロペンタジエン−無水マレイン酸付加物、テルペン−無水マレイン酸付加物、ロジン−無水マレイン酸付加物などのディールズ・アルダー反応による多塩基酸などを挙げることができる。
一方、上記変性に使用される不乾性油脂肪酸(変性剤)としては、例えばオクチル酸、ラウリン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、オレイン酸、リノール酸、リノレイン酸、エレオステアリン酸、リシノレイン酸、脱水リシノレイン酸、あるいはヤシ油、アマニ油、キリ油、ヒマシ油、脱水ヒマシ油、大豆油、サフラワー油及びこれらの脂肪酸などを用いることができる。
上述した多価アルコール、多塩基酸および変性剤は、それぞれ1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。また、アルキド樹脂は1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
さらに、上記架橋剤は1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。また、架橋剤によるアルキド樹脂の架橋を促進させるために、上記硬化触媒として、p−トルエンスルホン酸やメタンスルホン酸などの有機系の酸性触媒を適宜用いてもよい。
長鎖アルキル基含有化合物としては、例えば、ポリビニルアルコール系重合体に炭素数8〜30の長鎖アルキルイソシアネートを反応させて得られたポリビニルカーバメートや、ポリエチレンイミンに炭素数8〜30の長鎖アルキルイソシアネートを反応させて得られたアルキル尿素誘導体などが用いられる。
オレフィン系樹脂としては、結晶性オレフィン系樹脂が用いられる。この結晶性オレフィン系樹脂としては、ポリエチレンや結晶性ポリプロピレン系樹脂などが好適である。ポリエチレンとしては、高密度ポリエチレン、低密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレンなどが挙げられる。結晶性ポリプロピレン系樹脂としては、アイソタクチック構造またはシンジオタクチック構造を有するプロピレン単独重合体や、プロピレン−α−オレフィン共重合体などが挙げられる。これらの結晶性オレフィン系樹脂は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
また、活性エネルギー線硬化型の剥離剤としては、多官能(メタ)アクリレートを主剤とし剥離調整剤を含有する組成物の硬化物が好ましく用いられる。多官能の(メタ)アクリレートとしては、多価アルコール類の(メタ)アクリルエステルが好ましく、特に、三官能以上の(メタ)アクリレートモノマーが好ましい。三官能以上であることで、剥離剤層12Aの硬化性が優れたものとなる。具体的には、例えば、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート等を使用することができる。また、多官能(メタ)アクリレートとしては、ウレタン(メタ)アクリレート、ポリエステル(メタ)アクリレートまたはエポキシ(メタ)アクリレート等のアクリレートオリゴマーが用いられてもよい。これらの多官能(メタ)アクリレートは、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
上記剥離調整剤は、多官能(メタ)アクリレートよりなる主剤に剥離性を付与する目的で用いられる。剥離調整剤としては、シリコーン系化合物が好ましく、上記主剤の官能基と結合可能な反応性官能基を有するポリジメチルシロキサンが特に好ましい。剥離調整剤がこのような反応性官能基を有していると、活性エネルギー線による硬化反応で、剥離調整剤が主剤の架橋構造に組み込まれ、シリコーン移行性を抑制することができる。
活性エネルギー線硬化型の剥離剤は、さらに光重合開始剤を添加することが望ましい。光重合開始剤としては特に制限は無く、紫外線や電子線の照射によりラジカルを発生するもので慣用されているものの中から、任意のものを適宜選択して用いることができる。光重合開始剤としては、例えばベンゾイン類、ベンゾフェノン類、アセトフェノン類、α−ヒドロキシケトン類、α−アミノケン類、α−ジケトン、α−ジケトンジアルキルアセタール類、アントラキノン類、チオキサントン類、α−アミノアルキルフェノン系等が挙げられる。
剥離剤層12Aを構成する材料として、上記剥離剤に加えて、帯電防止剤、染料、顔料その他の添加剤を使用していてもよい。
剥離剤層12Aの厚さは、特に限定されないが、0.01〜2μmであることが好ましく、特に0.03〜1μmであることがより好ましい。剥離剤層12Aの厚さが0.01μm以上であることで、剥離剤層12Aとしての機能を十分に発揮させることができる。一方、剥離剤層12Aの厚さが2μm以下であることで、剥離フィルム1Aを巻き取る際の巻き取り不良およびブロッキングの発生をより低減することができる。
3.樹脂層
剥離フィルム1Aは、基材11の両側部に樹脂層13Aを1つずつ備える。剥離フィルム1Aに樹脂層13Aを設けることで、凸部14を容易に形成することができる。
樹脂層13Aを構成する材料としては、剥離フィルム1Aにおける前述した形状を形成でき、さらに前述の物性を達成できるものであれば、特に制限はない。この材料として、剥離剤層12Aを構成する材料として前述したものを使用してもよい。しかしながら、樹脂層13Aと基材11との間および樹脂層13Aと剥離剤層12Aとの間における剥離を抑制するために、より高い密着性が得られる材料を使用することが好ましい。
樹脂層13Aを構成する材料は、硬化性の材料であってもよいし、非硬化性の材料であってもよい。硬化性の材料としては、例えば、活性エネルギー線硬化性の材料であってもよいし、熱硬化性の材料であってもよい。非硬化性の材料としては、例えば、熱可塑性樹脂を使用することができる。上記の中でも、所望の厚さの樹脂層13Aを容易に形成できる観点から、活性エネルギー線硬化性の材料を使用することが好ましい。活性エネルギー線硬化性の材料としては、通常ハードコート層の材料として使用されているものが好ましく、具体的には、多官能(メタ)アクリレートを含有することが好ましい。多官能(メタ)アクリレートは、活性エネルギー線の照射により架橋して硬化し且つ速乾性に優れるため、所定の硬度が得られ易く、剥離フィルム1Aを巻き取ったときに、樹脂層13Aが巻圧で潰れるおそれがない。
多官能(メタ)アクリレートとしては、例えば、1,4−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ヒドロキシピバリン酸ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニルジ(メタ)アクリレート、カプロラクトン変性ジシクロペンテニルジ(メタ)アクリレート、エチレンオキシド変性リン酸ジ(メタ)アクリレート、アリル化シクロヘキシルジ(メタ)アクリレート、イソシアヌレートジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、プロピオン酸変性ジペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、プロピレンオキシド変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリス(アクリロキシエチル)イソシアヌレート、プロピオン酸変性ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、カプロラクトン変性ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート等が挙げられる。これらは、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。上記の中でも、特に、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、またはペンタエリスリトールトリアクリレートを使用することが好ましい。
なお、樹脂層13を構成する材料は、光重合開始剤、架橋剤、反応抑制剤、密着向上剤等を含有してもよい。
樹脂層13Aの厚さは、凸部14の高さを考慮して設定することが好ましい。剥離フィルム1Aでは、図1に示されるように、凸部14の位置の層構成とセラミックグリーンシート15の位置の層構成との違いは、樹脂層13Aの有無にある。そのため、凸部14の高さは、樹脂層13Aの厚さとほぼ同等となる。したがって、樹脂層13Aの厚さは、0.1〜3μmであることが好ましく、特に0.3〜2μmであることが好ましく、さらには0.5〜1μmであることが好ましい。
樹脂層13Aの幅は、凸部14の幅方向の長さを考慮して設定することが好ましい。図1に示されるように、凸部14は、樹脂層13Aとその上に積層された剥離剤層12Aとから形成される。そのため、樹脂層13Aの幅は、凸部14の幅方向の長さを決定する主な要因となる。例えば、当該幅は、5〜50mmであることが好ましく、特に8〜40mmであることが好ましく、さらには10〜30mmであることが好ましい。
4.基材
剥離フィルム1Aの基材11の材料としては、剥離剤層12Aおよび樹脂層13Aを積層することができ、さらに、剥離フィルム1Aの裏面における上述した平滑性を達成できるものであれば特に限定されない。かかる材料としては、例えば、ポリエチレンテレフタレートやポリエチレンナフタレート等のポリエステル、ポリプロピレンやポリメチルペンテン等のポリオレフィン、ポリカーボネート、ポリ酢酸ビニルなどのプラスチックからなるフィルムが挙げられ、単層であってもよいし、同種又は異種の2層以上の多層であってもよい。これらの中でもポリエステルフィルムが好ましく、特にポリエチレンテレフタレートフィルムが好ましく、さらには二軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムが好ましい。ポリエチレンテレフタレートフィルムは、加工時、使用時等において、埃等が発生しにくいため、例えば、埃等によるセラミックスラリー塗工不良等を効果的に防止することができる。さらに、ポリエチレンテレフタレートフィルムに帯電防止処理を行うことで、有機溶剤を使用するセラミックスラリーを塗工する際の静電気による発火を防止したり、塗工不良等を防止する効果を高めることができる。
さらに、上述した材料に対してフィラーなどを含有させてもよい。フィラーとしては、シリカ、酸化チタン、炭酸カルシウム、カオリン、酸化アルミニウム等が挙げられる。これらのフィラーは、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。このようなフィラーを含むことにより、基材11の機械的強度を向上させることができるとともに、剥離フィルム1Aの裏面における滑り性が向上し、ブロッキングをより抑制することができる。
また、この基材11においては、その表面に設けられる剥離剤層12Aまたは樹脂層13Aとの密着性を向上させる目的で、所望により片面又は両面に、酸化法や凹凸化法などによる表面処理、あるいはプライマー処理を施すことができる。上記酸化法としては、例えばコロナ放電処理、プラズマ放電処理、クロム酸化処理(湿式)、火炎処理、熱風処理、オゾン、紫外線照射処理などが挙げられ、また、凹凸化法としては、例えばサンドブラスト法、溶射処理法などが挙げられる。これらの表面処理法は、基材フィルムの種類に応じて適宜選ばれるが、一般にコロナ放電処理法が効果及び操作性の面から好ましく用いられる。
基材11の厚さは、10〜300μmであることが好ましく、特に15〜200μmであることが好ましく、さらには20〜125μmであることが好ましい。
5.セラミックグリーンシート製造工程用剥離フィルムの製造方法
剥離フィルム1Aは、例えば次のように製造することができる。すなわち、基材11の一方の面の両端部に、樹脂層13Aを構成する材料および所望により有機溶剤を含有する塗工液を塗工した後、乾燥および硬化させることで樹脂層13Aを形成する。基材11としては、長尺のものを使用することが好ましい。さらに、剥離剤層12Aを構成する材料および所望により有機溶剤を含有する塗工液を、基材11における樹脂層13Aを形成した面に塗工する。このとき、当該塗工液は、樹脂層13A上にも塗工する。当該塗工液を乾燥および硬化させることで剥離剤層12Aを形成する。以上によって、剥離フィルム1Aが得られる。
上記有機溶剤としては特に制限はなく、様々なものを用いることができる。例えばトルエン、ヘキサン、ヘプタン等の炭化水素化合物をはじめ、イソプロピルアルコール、イソブチルアルコール、アセトン、酢酸エチル、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン及びこれらの混合物等が用いられる。特に、メチルエチルケトンとイソプロピルアルコールとの混合液を使用することが好ましい。
塗工方法としては、例えば、グラビアコート法、バーコート法、スプレーコート法、ナイフコート法、ロールコート法、ダイコート法などが使用できる。特に、樹脂層13Aを形成する場合には、パターンコート可能な塗工方法が用いられる。例えば、グラビアコート法においては樹脂層13A(凸部14)の形状に対応したパターンを有するグラビア版を用いることによりパターンコートが行える。また、ダイコート法においては、基材11に対応した幅から、樹脂層13A(凸部14)の幅、数および位置に合わせた形状の吐出口を変換することにより、パターンコートが行える。
樹脂層13Aまたは剥離剤層12Aを構成する材料が熱硬化型のものである場合、当該材料を、例えば50〜150℃の温度で10秒〜3分間加熱して、硬化させることにより、樹脂層13Aまたは剥離剤層12Aを形成することができる。一方、当該材料が活性エネルギー線硬化型のものである場合、当該材料に対して、活性エネルギー線を照射して硬化させることで、樹脂層13Aまたは剥離剤層12Aを形成することができる。活性エネルギー線としては、例えば、赤外線、可視光線、紫外線、X線といった電磁波、電子線、イオンビーム、中性子線、α線といった粒子線が挙げられる。これらの中でも活性エネルギー線としては、樹脂層13Aまたは剥離剤層12Aを容易かつ確実に形成できる観点から紫外線が好ましい。活性エネルギー線が紫外線である場合、その照射量は、積算光量が50〜1000mJ/cmであることが好ましく、特に100〜500mJ/cmであることが好ましい。一方、活性エネルギー線が電子線である場合、電子線の照射量は、0.1〜50kGy程度が好ましい。
前述のように剥離フィルム1Aを1つずつ製造する代わりに、複数の剥離フィルム1Aを同時に製造してもよい。図5には、そのような製造方法の途中の状態が示される。当該方法では、図5に示されるように、まず、十分な横幅を有する基材11上に複数の樹脂層13Aを等間隔に積層し、さらにそれらの上に剥離剤層12Aを積層した積層体を得る。その後、当該積層体を、樹脂層13Aの幅方向中心線を通る位置(破線a)で切断することで、複数個の剥離フィルム1Aを得ることができる。この方法によれば、剥離フィルム1Aを効率良く製造することができる。通常、1000〜1500mmの横幅を有する基材11上に、4〜5本の樹脂層13Aを形成し、その上から剥離剤層12Aを積層した後、樹脂層13Aの幅方向中心線を通る位置で切断することで、約300mmの横幅を有する剥離フィルム1Aを3〜5つ製造することができる。図5に示される製造方法では、基材11上に4本の樹脂層13Aが積層されており、破線aの位置で切断することで3つの剥離フィルム1Aが得られる。
6.セラミックグリーンシート製造工程用剥離フィルムのその他の例
本実施形態に係る剥離フィルムは、図1に示される剥離フィルム1Aに限定されず、例えば、図2に示すような第2の実施形態に係るセラミックグリーンシート製造工程用剥離フィルム1B(以下単に「剥離フィルム1B」という場合がある。)であってもよい。剥離フィルム1Bは、基材11と、基材11の一方の面(図2では上面)に積層された剥離剤層12Bと、剥離剤層12Bにおける基材11とは反対側の面であって剥離剤層12Bの幅方向両側部(図2では横方向両端部)に1つずつ設けられた樹脂層13Bとを備えて構成される。剥離フィルム1Bでは、セラミックグリーンシート成形部15の位置の層構成は、基材11および剥離剤層12Bからなり、凸部14の位置の層構成は、基材11、樹脂層13Bおよび剥離剤層12Bの順の構成からなる。
剥離フィルム1Bにおける、剥離面および裏面の平滑性といった物性、ならびに、凸部14の高さ、凸部14の幅、およびセラミックグリーンシート成形部15の幅といった寸法は、剥離フィルム1Aについて前述した物性および寸法と同様である。特に、剥離フィルム1Bでは、樹脂層13Bの厚さおよび幅が、ほぼそのまま凸部14の高さおよび幅となるため、凸部14を意図した寸法に、より正確に成形することができる。
また、剥離フィルム1Bの基材11、剥離層12Bおよび樹脂層13Bを構成するための材料は、それぞれ剥離フィルム1Aについて前述した基材11、剥離層12Aおよび樹脂層13Aを構成する材料と同様のものを使用できる。
なお、剥離フィルム1Bでは、剥離剤層12Bが発揮する剥離性によって、樹脂層13Bが剥離剤層12Bから剥離し易い場合があり、かかる観点からは、剥離フィルム1Bよりも、剥離フィルム1Aの方が好ましい。
剥離フィルム1Bは、前述の剥離フィルム1Aの製造方法に倣って製造することができる。ただし、剥離フィルム1Bでは、樹脂層13Bが剥離剤層12Bの上に積層されているため、剥離フィルム1Aの製造方法において、これらの積層順を変更する必要がある。すなわち、基材11の一方の面に、剥離剤層12Bを構成する材料を含有する塗工液を塗工した後、乾燥および硬化させることで剥離剤層12Bを形成する。さらに、剥離剤層12Bにおける基材11とは反対側の面の両端部に、樹脂層13Bを構成する材料を含有する塗工液を塗工した後、当該塗工液を乾燥および硬化させることで樹脂層13Bを形成する。以上によって、剥離フィルム1Bが得られる。
図1に示される剥離フィルム1Aおよび図2に示される剥離フィルム1B以外の、剥離フィルムの例としては、基材上の幅方向両側部に樹脂層が1つずつ設けられ、且つ、基材上の当該樹脂層間に剥離剤層が設けられた構成が挙げられる(この例を便宜的に「剥離フィルム1C」という。)。この構成では、樹脂層の厚さが剥離剤層の厚さよりも大きく、凸部14の位置する層構成は基材および樹脂層からなり、セラミックグリーンシート成形部15の位置する層構成は基材および剥離剤層からなる。
剥離フィルム1A,1B,1Cにおいて、樹脂層は、必ずしも基材または剥離剤層の幅方向両端部に設ける必要はない。セラミックグリーンシート成形部15が確保される限り、剥離フィルム(基材)の両側部において幅方向端部から所定の間隔をあけた位置に樹脂層を設けてもよい。剥離フィルムの側部に樹脂層を設けない場合、端部と樹脂層との距離は20mm以下が好ましく、15mm以下が特に好ましい。
さらに、剥離フィルム1A,1B,1Cでは、基材の一方の面または両方の面に、帯電を防止する機能を有する帯電防止層を設けてもよい。また、基材における剥離剤層側の面に、剥離剤層との密着性を向上させるための層を設けてもよい。さらに、基材と剥離剤層との間、基材と樹脂層との間または樹脂層と剥離剤層との間には、帯電防止層といったその他の層を設けてもよい。
〔グリーンシートの製造方法〕
本実施形態に係る剥離フィルム1A,1B,1Cは、セラミックグリーンシートを製造するために使用することができる。具体的には、セラミックグリーンシート成形部15に対し、チタン酸バリウムや酸化チタンなどのセラミック材料を含有するセラミックスラリーを塗工した後、当該セラミックスラリーを乾燥させることでセラミックグリーンシートを得ることができる。塗工は、例えば、スロットダイ塗工方式やドクターブレード方式等を用いて行うことができる。セラミックスラリーにはバインダー成分を含有させることができ、その例としては、ブチラール系樹脂、アクリル系樹脂等が挙げられる。また、セラミックスラリーを調製するための溶媒の例としては、有機溶媒、水系溶媒等が挙げられる。
セラミックスラリーは、凸部14には塗工しないことが好ましい。セラミックスラリーをセラミックグリーンシート成形部15だけでなく、凸部14にも塗工してしまうと、剥離フィルムをセラミックグリーンシートごと巻き取った際に、巻き取りの圧力によって、凸部14上のセラミックグリーンシートが剥離フィルムに密着してしまい、セラミックグリーンシートの剥がれの原因になることがある。また、密着した部分が剥がれた後に、それがセラミックグリーンシートの他の部分に貼り付き、セラミックグリーンシートの変形の原因となることがある。さらに、密着した部分に起因して発塵し、セラミック積層体の品質を低下させることがある。
製造するセラミックグリーンシートの厚さは、凸部14の高さの値以下であることが好ましい。当該厚さが凸部14の高さの値よりも大きくならないことにより、剥離フィルムをセラミックグリーンシートとともに巻き取った際に、セラミックグリーンシートと剥離フィルムの裏面とが接触する圧力を低下させることができ、これにより、当該接触に起因したセラミックグリーンシートの損傷を抑制することができる。
セラミックスラリーをセラミックグリーンシート成形部15に塗工する際、セラミックスラリーを塗工する位置と凸部14との間隔を0.1〜5mmあけることが好ましく、特に0.3〜3mmあけることが好ましく、さらには0.5〜2mmあけることが好ましい。0.1mm以上間隔をあけることにより、成形されたセラミックグリーンシートと凸部14の側面とが接触することが防止され、これにより、セラミックグリーンシートから剥離フィルム1A,1B,1Cを剥離する際に、そのような接触に起因した剥離不良を回避することができる。
本実施形態に係る剥離フィルム1A,1B,1Cでは、セラミックグリーンシート成形部15に位置する剥離剤層12の基材11とは反対側の面が高い平滑性を有しており、この面にセラミックスラリーを塗工することにより、ピンホールや厚みむら等の欠陥の発生が抑制される。また、剥離フィルムをセラミックグリーンシートとともに巻き取る際に、剥離フィルムの裏面の平滑性が高いことにより、セラミックグリーンシートに裏面が接触することによるダメージが低減される。さらに、剥離フィルム1A,1B,1Cをセラミックグリーンシートとともに巻き取った状態で保管する場合であっても、凸部14の存在によってセラミックグリーンシートにかかる圧力が緩和されるため、剥離フィルム1A,1B,1Cの剥離面および裏面の形状の転写や、擦れによる傷等の発生が効果的に防止される(図4参照)。これらの結果として、欠陥の発生が抑制されたセラミックグリーンシートを製造することができる。
以上説明した実施形態は、本発明の理解を容易にするために記載されたものであって、本発明を限定するために記載されたものではない。したがって、上記実施形態に開示された各要素は、本発明の技術的範囲に属する全ての設計変更や均等物をも含む趣旨である。
以下、実施例等により本発明をさらに具体的に説明するが、本発明の範囲はこれらの実施例等に限定されるものではない。
〔実施例1〕
活性エネルギー線硬化性化合物としてのジペンタエリスリトールヘキサアクリレート(固形分100質量%)95質量部と、α−アミノアルキルフェノン系光重合開始剤(BASF社製,商品名:IRGACURE907,2-メチル−1[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モリフォリノプロパン−1−オン,固形分100質量%)5質量部とを、イソプロピルアルコールとメチルエチルケトンとを質量比3:1で混合した溶剤にて混合して、固形分20質量%の樹脂層形成用塗布液を得た。
得られた樹脂層形成用塗布液を、基材としての二軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルム(幅:320mm,長さ:3000m,厚さ:38μm,第1面の算術平均粗さRa:28nm,第1面の最大突起高さRp:541nm,第2面の算術平均粗さRa:7nm,第2面の最大突起高さRp:74nm)の第1面における両側部に、グラビアコート法にてフィルム両端部からそれぞれ10mmの無塗布部を設けるように塗工した。次いで、80℃で1分間乾燥させ、さらに紫外線を照射することで(積算光量:250mJ/cm)、厚さ1.3μmおよび幅20mmの樹脂層を形成した。これにより、基材の第1面の両側部に樹脂層が設けられた中間積層体を得た。
次に、活性エネルギー線硬化性化合物としてのジペンタエリスリトールヘキサアクリレート(固形分100質量%)94質量部と、ポリオルガノシロキサンとしてのアクリル変性ポリジメチルシロキサン(信越化学工業社製,商品名:X−22−164A,固形分100質量%)1質量部と、α−アミノアルキルフェノン系光重合開始剤(BASF社製,商品名:IRGACURE907,2-メチル−1[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モリフォリノプロパン−1−オン,固形分100質量%)5質量部とを、イソプロピルアルコールとメチルエチルケトンとを質量比3:1で混合した溶剤にて混合して、固形分20質量%の剥離剤層形成用塗布液を得た。
得られた剥離剤層形成用塗布液を、上記中間積層体における、樹脂層が設けられた側のフィルム両端部からそれぞれ5mmの幅に無塗布部を設けるようにオンロール方式のダイコーターにて塗工した。次いで、80℃で1分間乾燥させ、さらに紫外線を照射することで(積算光量:250mJ/cm)、厚さ1μmの剥離剤層を形成した。これにより、両端部に樹脂層のない剥離フィルムを得た。続いて、裁断機により、当該剥離フィルムの左右の両端をそれぞれ15mmカットし、図1で示される断面(剥離フィルムの幅:290mm,セラミックグリーンシート成形部の幅:260mm,樹脂層の幅:各15mm)を有する剥離フィルムを得た。
〔実施例2〕
樹脂層形成用塗布液および剥離剤層形成用塗布液に含まれる活性エネルギー線硬化性化合物を、ペンタエリスリトールテトラアクリレート(新中村化学工業社製,商品名:A-TMMT,固形分100質量%)に変更した以外は、実施例1と同様にして剥離フィルムを得た。
〔実施例3〕
基材を、二軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルム(幅:320mm,長さ:3000m,厚さ:31μm,第1面の算術平均粗さRa:18nm,第1面の最大突起高さRp:202nm,第2面の算術平均粗さRa:3nm,第2面の最大突起高さRp:29nm)に変更した以外は、実施例1と同様にして剥離フィルムを得た。
〔実施例4〕
基材を、二軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルム(幅:320mm,長さ:3000m,厚さ:50μm,第1面の算術平均粗さRa:4nm,第1面の最大突起高さRp:40nm,第2面の算術平均粗さRa:3nm,第2面の最大突起高さRp:23nm)に変更した以外は、実施例1と同様にして剥離フィルムを得た。
〔比較例1〕
樹脂層を設けないこと以外は、実施例1と同様にして剥離フィルムを得た。
〔比較例2〕
基材を、二軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルム(幅:320mm,長さ:3000m,厚さ:31μm,第1面の算術平均粗さRa:21nm,第1面の最大突起高さRp:509nm,第2面の算術平均粗さRa:21nm,第2面の最大突起高さRp:509nm)に変更した以外は、実施例1と同様にして剥離フィルムを得た。
〔比較例3〕
基材を、二軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルム(幅:320mm,長さ:3000m,厚さ:31μm、第1面の算術平均粗さRa:18nm,第1面の最大突起高さRp:264nm,第2面の算術平均粗さRa:18nm,第2面の最大突起高さRp:264nm)に変更した以外は、実施例1と同様にして剥離フィルムを得た。
〔試験例1〕(表面粗さの測定)
ガラス板に両面テープを貼付し、実施例および比較例で得られた剥離フィルムを、測定する側の面の反対面がガラス板側となるように上記両面テープを介してガラス板に固定した。その剥離フィルムの剥離面および裏面について、算術平均粗さ(Ra;nm)および最大突起高さ(Rp;nm)を、光干渉式表面形状観察装置(ブルカー・エイエックスエス社製,製品名:WYKO−1100)を使用し、PSIモードにて50倍率で観察し、得られた91.2×119.8μmの範囲における表面形状画像に基づいて測定した。結果を表1に示す。
〔試験例2〕(ハンドリング性評価)
実施例および比較例で得られた剥離フィルムをロール状にする際のハンドリング性について評価した。具体的には、ロール状にする際の空気抜けの良さ、および剥離フィルムの巻きズレの生じ難さについて、以下の判断基準により評価した。結果を表1に示す。
A…剥離フィルムをロール状にするときの空気抜けが良く、剥離フィルムの巻きズレおよびシワを防止できた
B…剥離フィルムをロール状に巻いたときの空気の抜けが若干悪く、巻きズレが若干生じるものシワは発生せず支障はなかった
C…剥離フィルムをロール状に巻いたときの空気の抜けが悪く、巻きズレおよびシワが顕著に生じた
〔試験例3〕(ブロッキング性評価)
実施例及び比較例で得られた剥離フィルム(幅320mm,長さ3000m)をロール状に巻き上げた。この剥離フィルムロールを40℃、湿度50%以下の環境下に30日間保管し、剥離フィルムロールそのままの状態での外観を目視にて観察し、以下の判断基準によりブロッキング性を評価した。結果を表1に示す。
A…ロール状に巻き上げたときから変化がなかった(ブロッキング無し)
B…部分的にフィルム同士の密着に起因する色目の変化が見られた(ブロッキング傾向にあるものの使用可能)
C…広範な領域にわたってフィルム同士の密着に起因する色目の変化が見られた(ブロッキング有り)
なお、上記評価Cのように表裏の密着によるブロッキングが発生してロールの広範な領域にわたって色目が変化した場合、正常に巻き出すことができない場合がある。
〔試験例4〕(剥離面による欠陥評価)
トルエンおよびエタノールの混合溶剤(質量比60:40)にて、ポリビニルブチラール樹脂(積水化学社製,製品名:エスレックB・K BL−S,粉末状)を固形分濃度20質量%に溶解し、ポリビニルブチラール樹脂溶液を得た。得られたポリビニルブチラール樹脂溶液を、実施例および比較例で得られた剥離フィルムの剥離面にオフロール方式のダイコーターにて塗布した。このとき、凸部との間隔を1.5mmあけて塗布した。その後、塗布した樹脂溶液を80℃で1分間乾燥させて厚さ3μmのポリビニルブチラール樹脂層を成形した。そして、そのポリビニルブチラール樹脂層の表面にポリエステル粘着テープを貼付した。
次いで、剥離フィルムをポリビニルブチラール樹脂層から剥離し、ポリビニルブチラール樹脂層をポリエステル粘着テープに転写した。その後、当該ポリビニルブチラール樹脂層の剥離面と接触していた面における凹みの数を数えた。具体的には、光干渉式表面形状観察装置(ブルカー・エイエックスエス社製,製品名:WYKO―1100)を使用して、PSIモードにて50倍率で観察し、得られた91.2×119.8μmの範囲における表面形状画像に基づいて、深さ150nm以上の凹みの数を数えた。
上記凹みの数に基づいて、以下の判断基準により、剥離面によるポリビニルブチラール樹脂層の欠陥評価を行った。結果を表1に示す。
A…凹みの数が0個
B…凹みの数が1〜5個
C…凹みの数が6個以上
なお、上記評価Cの凹みが存在するセラミックグリーンシートでコンデンサを製造した場合、得られるコンデンサは、耐電圧低下によるショートが発生し易いものとなる。
〔試験例5〕(裏面による欠陥評価)
トルエン及びエタノールの混合溶剤(質量比60:40)にて、ポリビニルブチラール樹脂(積水化学社製,製品名:エスレックB・K BL−S,粉末状)を固形分濃度20質量%に溶解し、ポリビニルブチラール樹脂溶液を得た。得られたポリビニルブチラール樹脂溶液を、実施例および比較例で得られた剥離フィルムの長さ1000mの範囲において、オフロール方式のダイコーターを用いて剥離面に塗布し、80℃で1分間乾燥させて厚さ2μmのポリビニルブチラール樹脂層を成形した。成形後、剥離フィルムをポリビニルブチラール樹脂層とともに巻き上げた。
その後、当該剥離フィルムを巻き出し、100mm×100mmに裁断した。この裁断したサンプルについて、ポリビニルブチラール樹脂層における剥離フィルムの裏面と接触していた面の、深さ150nm以上の凹みの数、および巻き取り時に生じた深さ150nm以上の傷等の損傷部の数を数えた。具体的には、光干渉式表面形状観察装置(ブルカー・エイエックスエス社製,背品名:WYKO―1100)を使用して、PSIモードにて50倍率で観察し、得られた91.2×119.8μmの範囲における表面形状画像に基づいて、凹みの数および損傷部の数を数えた。
上記凹みの数および損傷部の数に基づいて、以下の判断基準により、裏面によるポリビニルブチラール樹脂層の欠陥評価を行った。但し、試験例3(ブロッキング性評価)において評価がCとなった例については、本試験を行わなかった。結果を表1に示す。
A…凹みの数および損傷部の数の合計が0個
B…凹みの数および損傷部の数の合計が1〜3個
C…凹みの数および損傷部の数の合計が4個以上
なお、上記評価Cの凹みが存在するセラミックグリーンシートでコンデンサを製造した場合、得られるコンデンサは、耐電圧低下によるショートが発生し易いものとなる。
Figure 0006468924
表1から明らかなように、実施例で得られた剥離フィルムは、巻き取りの際のハンドリング性に優れ、巻き取った状態で保管した場合にブロックキングが殆ど生じなかった。さらに、実施例で得られた剥離フィルムを用いることで、欠陥のないセラミックグリーンシートを製造することができることがわかる。
一方、樹脂層を有さない比較例1の剥離フィルムは、巻き取り時のハンドリング性が悪く、さらに、巻き取って保管した際にブロッキングが生じた。また、裏面の平滑性が低い比較例2および3の剥離フィルムを用いてセラミックグリーンシートを製造すると、当該セラミックグリーンシート上に剥離フィルムの裏面に起因した欠陥が発生することがわかる。
本発明のセラミックグリーンシート製造工程用剥離フィルムは、特に薄膜のセラミックグリーンシートを欠陥なく成形するのに好適である。
1A,1B…セラミックグリーンシート製造工程用剥離フィルム
11…基材
12A,12B…剥離剤層
13A,13B…樹脂層
14…凸部
15…セラミックグリーンシート成形部
2…セラミックグリーンシート
G…間隙

Claims (5)

  1. 長尺の基材と、前記基材の片面側に設けられた剥離剤層とを備えたセラミックグリーンシート製造工程用剥離フィルムであって、
    前記剥離フィルムが、平面視において、幅方向中央部の領域にセラミックグリーンシート成形部を有し、且つ、幅方向両側部の領域に凸部を1つずつ有し、
    前記剥離フィルムが、前記基材と前記剥離剤層との間であって前記基材の幅方向両側部に1つずつ設けられた樹脂層を備え、もって、前記凸部の位置に、前記樹脂層と前記剥離剤層とを含み、
    前記凸部の高さが、前記セラミックグリーンシート成形部に位置する前記剥離剤層の前記基材とは反対側の面の高さを基準として0.1〜3μmであり、
    前記セラミックグリーンシート成形部に位置する前記剥離剤層の前記基材とは反対側の面の算術平均粗さRaおよび最大突起高さRpが、それぞれ8nm未満および50nm未満であり、
    前記基材における前記剥離剤層とは反対側の面の算術平均粗さRaおよび最大突起高さRpが、それぞれ10nm未満および100nm未満である
    ことを特徴とするセラミックグリーンシート製造工程用剥離フィルム。
  2. 前記凸部の幅方向の長さは、5〜50mmであることを特徴とする請求項1に記載のセラミックグリーンシート製造工程用剥離フィルム。
  3. 前記セラミックグリーンシート成形部の幅方向の長さは、100〜500mmであることを特徴とする請求項1または2に記載のセラミックグリーンシート製造工程用剥離フィルム。
  4. 請求項1〜の何れか一項に記載のセラミックグリーンシート製造工程用剥離フィルムの前記セラミックグリーンシート成形部にセラミックスラリーを塗工し、乾燥させる工程を含むことを特徴とするセラミックグリーンシート製造方法。
  5. 前記凸部の高さの値以下の厚さを有するセラミックグリーンシートを形成することを特徴とする請求項に記載のセラミックグリーンシート製造方法。
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