以下、本発明の実施の形態による可変容量型液圧回転機のレギュレータを、可変容量型の斜板式油圧ポンプ(特に、斜板を傾転角零の中立位置から一方向と他方向の両方向に傾転駆動可能な両傾転タイプの油圧ポンプ)に適用した場合を例に挙げ、添付図面に従って詳細に説明する。
ここで、図1ないし図12は本発明の第1の実施の形態を示している。図中、1は本実施の形態で採用した可変容量型の斜板式油圧ポンプ(以下、油圧ポンプ1という)で、該油圧ポンプ1は、その外殻を構成するケーシング2を有している。該ケーシング2は、一端側がフロント底部3Aとなった段付筒状のケーシング本体3と、該ケーシング本体3の他端側を閉塞するようにケーシング本体3に設けられたリヤケーシング4とにより構成されている。ケーシング2のリヤケーシング4には、後述の給排通路15A,15B等が形成されている。
ケーシング2のケーシング本体3には、図1に示すようにフロント底部3Aから軸線方向に離間した位置にアクチュエータ取付部3Bが設けられている。該アクチュエータ取付部3Bは、ケーシング本体3の径方向外側へと突出している。アクチュエータ取付部3B内には、後述の傾転アクチュエータ16等が設けられている。ケーシング本体3のアクチュエータ取付部3Bには、例えば略四角形状をなした開口部3Cが後述するレギュレータ21との間に形成されている。該開口部3C内には、後述するフィードバックリンク31が枢軸ピン33を介して回動可能に取付けられている。
ケーシング2内には回転軸5が回転可能に設けられている。該回転軸5は、軸線方向の一側がケーシング本体3のフロント底部3A内に軸受等を介して回転可能に取付けられ、他側はリヤケーシング4に軸受等を介して回転可能に取付けられている。ケーシング本体3のフロント底部3Aから軸線方向に突出する回転軸5の一側(突出端側)には、例えば建設機械の原動機(後述の図9に示すエンジン52)が動力伝達機構(図示せず)等を介して連結され、回転軸5はエンジン52により回転駆動される。
シリンダブロック6は、ケーシング2内に位置して回転軸5の外周側に設けられている。該シリンダブロック6は、回転軸5の外周側にスプライン結合され、回転軸5と一体に回転駆動される。シリンダブロック6には、その周方向に離間して軸線方向に延びる複数(通常は奇数個)のシリンダ7が穿設されている。シリンダブロック6の各シリンダ7内には、それぞれピストン8が摺動可能に挿嵌されている。該各ピストン8は、シリンダブロック6の回転によってそれぞれのシリンダ7内を往復動し、後述の弁板14側から各シリンダ7内に作動油を吸込みつつ、これを高圧の圧油として吐出させるものである。
この場合、これらのピストン8は、シリンダ7から軸方向に突出(伸長)した下死点位置と、シリンダ7内へと縮小した上死点位置との間で往復動される。シリンダブロック6が1回転する間に、各ピストン8はシリンダ7内を上死点から下死点に向けて摺動変位する吸入行程と、下死点から上死点に向けて摺動変位する吐出行程とを繰返すことになる。
シリンダブロック6の半回転分に相当するピストン8の吸入行程では、後述の給排通路15A,15Bの一方側からシリンダ7内に作動油が吸込まれる。また、シリンダブロック6の残りの半回転分に相当するピストン8の吐出行程では、ピストン8が各シリンダ7内の油液を高圧の圧油として後述の給排通路15A,15Bの他方側から吐出配管(例えば、図9に示す主管路55Aまたは55B)内へと吐出させるものである。
各ピストン8の突出側端部には、それぞれシュー9が揺動可能に設けられている。これらのシュー9は、それぞれピストン8からの押付力(油圧力)で後述する斜板11の平滑面11Aに押圧される。各シュー9は、この状態で回転軸5、シリンダブロック6およびピストン8と一緒に回転することにより、リング状軌跡を描くように平滑面11A上を摺動するものである。
ケーシング本体3のフロント底部3Aには、斜板支持体10が固定して設けられている。この斜板支持体10は、回転軸5の周囲に位置して斜板11の裏面側に配置されている。斜板支持体10には、斜板11を傾転可能に支持する一対の傾転摺動面10Aが凹湾曲面(図示せず)として形成されている。図1に示すように、一対の傾転摺動面10Aは、回転軸5の径方向で互いに離間して配置されている。
斜板11はケーシング2内に傾転可能に設けられている。該斜板11は、ケーシング本体3のフロント底部3A側に斜板支持体10を介して取付けられ、その表面側が摺動面としての平滑面11Aとなっている。また、斜板11には、その中央部に回転軸5が隙間をもって挿通される挿通穴11Bが穿設されている。さらに、斜板11の背面側には、一対の脚部11Cが設けられ、該各脚部11Cは、斜板支持体10の各傾転摺動面10A上に傾転可能に当接されている。
ここで、斜板11は、斜板支持体10の各傾転摺動面10Aにより各脚部11Cを介して傾転可能に支持され、この状態で後述の傾転アクチュエータ16により傾転駆動される。斜板11は、このときの傾転角に応じて当該油圧ポンプ1の吐出容量を変化させる容量可変部を構成している。傾転アクチュエータ16は、斜板11を傾転角零の位置から一方向と他方向との両方向(図2に示す矢示A,B方向)に傾転し、圧油の吐出方向を反転させるように適宜に切換えることができる。
傾転レバー12は斜板11の側部に一体形成されている。この傾転レバー12は、斜板11の側部から後述のサーボピストン18に向けて延設されている。そして、傾転レバー12の先端側には、突出ピン12Aが一体に設けられ、この突出ピン12Aには、後述のサーボピストン18がスライド板13を介して連結されている。
スライド板13は、後述するサーボピストン18のスライド溝18D内に摺動可能に挿嵌して設けられている。該スライド板13は、略長方形をなす板体(プレート)として形成され、スライド溝18D内でサーボピストン18を横切る方向にスライド(摺動変位)するものである。スライド板13の中心部には、傾転レバー12の突出ピン12Aが回動可能に挿嵌される貫通穴13Aが穿設されている。即ち、スライド板13は、貫通穴13A内に傾転レバー12の突出ピン12Aを予め挿嵌した状態で、サーボピストン18のスライド溝18D内に取付けられる。スライド板13は、サーボピストン18の軸方向変位を傾転レバー12を介して斜板11へと伝達し、これにより斜板11は、サーボピストン18に追従して矢示A,B方向に傾転駆動されるものである。
弁板14はリヤケーシング4に固定して設けられている。該弁板14は、シリンダブロック6の端面に摺接する切換弁板を構成している。このため、弁板14には、回転軸5の周囲を眉形状をなして延びる一対の給排ポート14A,14Bが形成されている。これらの給排ポート14A,14Bは、斜板11の傾転方向に応じて吸込ポートと吐出ポートとの何れかに切換えられる。例えば、給排ポート14Aが低圧側の吸込ポートとなったときには、給排ポート14Bが高圧側の吐出ポートとなる。一方、斜板11の傾転方向が反転されたときには、例えば給排ポート14Aが高圧側の吐出ポートとなり、給排ポート14Bが低圧側の吸込ポートとなる。
リヤケーシング4に形成された一対の給排通路15A,15Bは、作動油の吸込みと吐出とを行う通路である。これらの給排通路15A,15Bは、弁板14を介してシリンダ7内へと作動油(圧油)を給排させる。図9に示すように、油圧ポンプ1の給排通路15A,15Bは、後述の油圧モータ56に一対の主管路55A,55Bを介して接続される。ここで、ケーシング2内で回転軸5を回転駆動すると、シリンダブロック6の回転に伴って各シリンダ7内をピストン8が往復動し、これらのピストン8が給排通路15A,15Bの一方側からシリンダ7内に作動油を吸込みつつ、給排通路15A,15Bの他方側に圧油を吐出するものである。
傾転アクチュエータ16は、ケーシング本体3のアクチュエータ取付部3B内に設けられている。該傾転アクチュエータ16は、図1、図2に示すようにシリンダブロック6の径方向外側に位置してケーシング本体3のアクチュエータ取付部3Bに形成された傾転制御シリンダとしてのシリンダ穴17A,17Bと、該シリンダ穴17A,17B内に摺動可能に挿嵌された後述のサーボピストン18とから大略構成されている。傾転アクチュエータ16は、サーボピストン18により斜板11を傾転角零の位置から一方向と他方向との両方向(図2中の矢示A,B方向)に傾転駆動するものである。
サーボピストン18は傾転アクチュエータ16の可動部を構成している。該サーボピストン18は、例えば円柱状または円筒状のピストンとして形成され、軸方向一側の端部18Aと他側の端部18Bとを有している。軸方向一側の端部18Aと他側の端部18Bとは、互いに等しい外径(同一径)を有している。サーボピストン18の軸方向一側の端部18Aは、アクチュエータ取付部3Bのシリンダ穴17A内に摺動可能に挿嵌され、軸方向他側の端部18Bはシリンダ穴17B内に摺動可能に挿嵌されている。
また、サーボピストン18の軸方向(長さ方向)中間には、その径方向(図2中の上,下)で互いに対向する位置にリンク取付溝18Cとスライド溝18Dとが凹設されている。サーボピストン18のリンク取付溝18Cには、後述のフィードバックリンク31が揺動可能に係合して取付けられている。サーボピストン18のスライド溝18Dには、スライド板13の貫通穴13Aを介して傾転レバー12の突出ピン12Aが取付けられている。
リンク取付溝18Cは、図2、図3に示す如くサーボピストン18の外周側を部分的に切欠くことにより形成された断面コ字形状の切欠き溝からなり、サーボピストン18の外周面のうち、サーボピストン18の軸線を挟んでスライド溝18Dと径方向で対向する位置に配置されている。リンク取付溝18Cは、その平面形状が周方向一側と他側とで対称な形状(一対の等脚台形状)に形成されている。これにより、リンク取付溝18Cには、後述するフィードバックリンク31の先端(自由端)側をサーボピストン18の周方向一側または他側から円滑に取付けることができる。リンク取付溝18Cは、フィードバックリンク31の先端側がリンク取付溝18Cの側壁に干渉したり、引っ掛ったりするのを防ぐ機能も有している。
スライド溝18Dは、サーボピストン18の外周側を径方向の一方側から部分的に切欠くことにより断面コ字形状をなす平行溝として形成されている。スライド溝18D内には、サーボピストン18の軸方向変位を傾転レバー12を介して斜板11に伝えるため、前記スライド板13が摺動可能に挿嵌して取付けられている。スライド溝18Dは、図2に示すようにスライド板13に対応する溝深さを有し、リンク取付溝18Cよりも大なる溝寸法を有している。
ここで、サーボピストン18の軸方向一側の端部18Aは、図2に示す如くシリンダ穴17A内に一方の液圧室19Aを画成し、この液圧室19Aは、蓋板20Aによりシリンダ穴17Aの外側から閉塞されている。また、サーボピストン18の軸方向他側の端部18Bは、シリンダ穴17B内に他方の液圧室19Bを画成し、この液圧室19Bは、蓋板20Bによりシリンダ穴17Bの外側から閉塞されている。
傾転アクチュエータ16は、液圧室19A,19Bに後述の給排管路51A,51Bを介して傾転制御圧が給排されると、このときの傾転制御圧に従ってサーボピストン18をシリンダ穴17A,17Bの軸線方向に摺動変位させる。また、サーボピストン18の軸方向変位は、後述のスライド板13から傾転レバー12を介して斜板11へと伝達され、これにより斜板11は、サーボピストン18に追従して矢示A,B方向に傾転駆動される。
レギュレータ21は、傾転アクチュエータ16に傾転制御圧を給排するサーボ弁装置である。このレギュレータ21は、図1に示す如くアクチュエータ取付部3Bの側部に着脱可能に設けられたレギュレータケーシング22を有し、該レギュレータケーシング22は、ケーシング本体3のアクチュエータ取付部3Bに設けた開口部3Cを外側から覆っている。
レギュレータ21は、図3に示すように、レギュレータケーシング22と、後述の制御スリーブ27と、レギュレータケーシング22内に制御スリーブ27を介して相対変位可能に設けられ傾転アクチュエータ16のサーボピストン18に傾転制御圧を給排するスプール28と、傾転アクチュエータ16のサーボピストン18と制御スリーブ27との間に設けられサーボピストン18の変位を制御スリーブ27に伝えるフィードバックリンク31とを含んだ油圧サーボ弁として構成されている。
レギュレータケーシング22は、スプール28の軸方向(左,右方向)に延びる段付筒状のケース筒体23と、該ケース筒体23の軸方向両側にそれぞれ固定して設けられた油圧パイロット部を構成する左,右のパイロットケース24,25とを含んで形成されている。レギュレータケーシング22のケース筒体23内には、左,右のパイロットケース24,25間に位置して第1スリーブ摺動穴23Aと第2スリーブ摺動穴23Bとがそれぞれ軸方向に延びて形成されている。
第1スリーブ摺動穴23Aは、第2スリーブ摺動穴23Bとパイロットケース24との間で、ケース筒体23内を軸方向に延びるように配設されている。第2スリーブ摺動穴23Bは、第1スリーブ摺動穴23Aとパイロットケース25との間で、ケース筒体23内を軸方向に延びるように配設されている。第2スリーブ摺動穴23Bは、第1スリーブ摺動穴23Aよりも大径な穴となっている。
ケース筒体23には、第1スリーブ摺動穴23Aの軸方向に離間してポンプポート23Cと左,右一対のアクチュエータポート23D,23Eとが設けられている。また、ケース筒体23には、第1スリーブ摺動穴23A内と第2スリーブ摺動穴23B内とを連通させるようにドレン通路23F(図3中に点線で示す)が形成されている。ドレン通路23Fは、例えば傾転アクチュエータ16からレギュレータケーシング22(ケース筒体23)側に戻されるように排出された作動油(または漏洩油)を後述の作動油タンク47に戻すための通路である。
ケース筒体23には、第2スリーブ摺動穴23Bの位置からケース筒体23の径方向外側へと突出する筒状突出部26が一体に形成されている。該筒状突出部26の内周側は、一方側で第2スリーブ摺動穴23B内に連通し他方側が外部に開口したロッド挿嵌穴26Aとなっている。ここで、筒状突出部26は、後述する位置調整機構35の一部を構成し、後述の締結ナット45と共に調整ロッド43の抜止め、廻止めを行う機能を有している。
図4に示すように筒状突出部26は、その基端側がケース筒体23の外周面から径方向外向きに突出し締結ナット45が螺着される雄ねじ部26Bとなっている。筒状突出部26は、該雄ねじ部26Bよりも小径に形成されたテーパ筒部26Cを有し、このテーパ筒部26Cは、雄ねじ部26Bの突出端側からケース筒体23の径方向外向きに突出し漸次縮径されるテーパ形状をなしている。
筒状突出部26の先端(突出端)側には、テーパ筒部26Cの周方向に間隔をもって形成された複数(例えば、図6に示すように4個)のスリット26Dが設けられている。これらのスリット26Dは、テーパ筒部26Cの縮拡径を許す複数のすり割り溝として形成されている。締結ナット45は、筒状突出部26の雄ねじ部26Bが螺着されることにより筒状突出部26のテーパ筒部26Cを縮径方向に弾性変形させる。
左,右のパイロットケース24,25は段付軸穴24A,25Aを有し、この段付軸穴24A,25Aは、レギュレータケーシング22の軸方向に延びる段付穴として形成されている。段付軸穴24A,25Aは、その大径部側がパイロットケース24,25の外部に開口し、小径部側がケース筒体23の第1スリーブ摺動穴23A,第2スリーブ摺動穴23Bに連通する。段付軸穴24A,25Aの大径部側は、後述の閉塞プラグ29A,29Bにより閉塞されている。段付軸穴24A,25Aの小径部側は、後述するスプール28の受圧部28A,28Bにより閉塞されている。
左,右のパイロットケース24,25には、その径方向に延びるパイロットポート24B,25Bが形成されている。該パイロットポート24B,25Bは、一方側で段付軸穴24A,25Aの小径部側(即ち、後述のパイロット油室30A,30B)に連通し、他方側がパイロットケース24,25の外部に開口している。パイロットポート24B,25Bの開口側には、後述のパイロット管路50A,50Bが接続されている。
制御スリーブ27は、レギュレータケーシング22(ケース筒体23)の第1スリーブ摺動穴23A内に変位可能に挿嵌して設けられている。制御スリーブ27は、円筒形の筒状体として形成され、その内周側がスプール摺動穴27Aとなっている。制御スリーブ27は、その径方向に穿設され軸方向で互いに離間した3組の油孔27B,27C,27Dを有し、各油孔27B,27C,27Dは、スプール摺動穴27Aの周囲を放射状に延びて形成されている。
油孔27B,27C,27Dのうち、その中間(油孔27C,27Dの間)に位置する油孔27Bは、ポンプポート23Cに連通し、左,右一対のアクチュエータポート23D,23Eに対しては遮断されている。図3中で最も左側に位置する油孔27Cは、ケース筒体23のアクチュエータポート23Dに連通し、ポンプポート23Cに対しては遮断されている。最も右側に位置する油孔27Dは、ケース筒体23のアクチュエータポート23Eに連通し、ポンプポート23Cに対しては遮断されている。
レギュレータ21のスプール28は、軸方向の両端側がパイロット圧の受圧部28A,28Bとなり、これらの受圧部28A,28Bは、レギュレータケーシング22(パイロットケース24,25)の段付軸穴24A,25A内に小径部側から摺動可能に挿入されている。この状態で、受圧部28A,28Bは、後述のパイロット管路50A,50Bからパイロットケース24,25に供給される傾転制御用のパイロット圧を受圧し、このパイロット圧に従って、スプール28はレギュレータケーシング22(ケース筒体23)の軸方向に摺動変位される。
スプール28の長さ方向(軸方向)途中部位は、制御スリーブ27のスプール摺動穴27A内に相対変位可能に挿嵌されている。スプール28の外周側には、前記傾転制御圧をサーボピストン18に給排するためのランド28C,28Dが形成されている。これらのランド28C,28Dは、制御スリーブ27の油孔27C,27Dに対応する位置に配置され、そのランド幅は油孔27C,27Dの孔径と等しく形成されている。
このため、例えば図3に示すようにスプール28が中立位置にあるときには、制御スリーブ27の油孔27C,27Dが、スプール28のランド28C,28Dにより内側のスプール摺動穴27Aに対して遮断される。一方、スプール摺動穴27A内でスプール28が中立位置から軸方向に相対変位(例えば、図10参照)したときには、制御スリーブ27の油孔27C,27Dが、スプール28のランド28C,28Dを介してスプール摺動穴27Aと連通される。これにより、スプール28は、制御スリーブ27を介してポンプポート23Cをアクチュエータポート23Dまたは23Eに対して連通,遮断するものである。
スプール28は、その中立位置が後述の位置調整機構35により調整される。このため、スプール28が中立位置にあるときには、油圧ポンプ1の斜板11を傾転角零の中立位置に配置することができる。斜板11が傾転角零の中立位置にあるときには、油圧ポンプ1の回転軸5は無負荷で回転され、圧油の吐出量は零となる。即ち、斜板11が傾転角零の中立位置にあるときには、ポンプとして作動されることはない。しかし、傾転アクチュエータ16により、斜板11を傾転角零の中立位置から矢示A方向または矢示B方向に傾転したときには、例えば図9中の矢示A1,B1方向のいずれかに油圧ポンプ1から主管路55A,55Bに圧油が吐出される。
図4に示すようにスプール28には、後述の調整スリーブ36内に挿通される部位にばね受用の環状突起28Eと、全周にわたるリング溝28Fとが軸方向に所定寸法だけ離間して形成されている。スプール28のリング溝28Fには、後述の止め輪41が着脱可能に装着されている。スプール28の環状突起28Eは、後述のばね受板40に当接し、ばね受板40をスプール28の外周側で抜止め状態に保持する。
閉塞プラグ29A,29Bは、左,右のパイロットケース24,25に外側から螺合して取付けられている。閉塞プラグ29A,29Bは、段付軸穴24A,25Aの大径部側を外側から閉塞し、スプール28の受圧部28A,28Bとの間に左,右のパイロット油室30A,30Bを形成している。即ち、左,右のパイロット油室30A,30Bは、パイロットケース24,25の段付軸穴24A,25A内に位置して閉塞プラグ29A,29Bとスプール28の受圧部28A,28Bとの間に画成されている。
パイロット油室30A,30B内には、後述のパイロット管路50A,50Bからパイロットポート24B,25Bを介してパイロット圧が給排される。スプール28の受圧部28A,28Bは、パイロット油室30A,30B内のパイロット圧を受圧し、パイロット油室30A,30B間の圧力差により、スプール28は、後述するばね37の付勢力に抗してレギュレータケーシング22内を軸方向に摺動変位する。
左,右の閉塞プラグ29A,29Bは、パイロットケース24,25の段付軸穴24A,25Aに対する螺合位置を必要に応じて変えることができる。スプール28は、レギュレータケーシング22内を軸方向に摺動変位し、受圧部28A,28Bの先端側が閉塞プラグ29A,29Bに当接した段階で、図11、図12に示すようにストロークエンドに達する。このため、閉塞プラグ29A,29Bの螺合位置を変えることにより、スプール28のストロークエンドとなる位置を可変に調整することができ、斜板11の矢示A,B方向における最大傾転位置を調整することが可能となる。
フィードバックリンク31はレギュレータ21の制御スリーブ27を、サーボピストン18の動きに追従してフィードバック制御するリンク部材である。該フィードバックリンク31は、図1〜図3に示すようにレギュレータ21の制御スリーブ27とサーボピストン18との間に設けられている。フィードバックリンク31は、斜板11の傾転動作に追従させてレギュレータ21の制御スリーブ27をフィードバック制御するように、スプール28に対して制御スリーブ27を軸方向に相対変位させる。
フィードバックリンク31は、例えば図1に示す如く、その長さ方向一側が係合ピン32を介して制御スリーブ27の外周側に揺動可能に連結されている。フィードバックリンク31の先端側(長さ方向他側)には、サーボピストン18のリンク取付溝18C内に向けて突出し当該リンク取付溝18Cに係合する係合突起31Aが設けられている。フィードバックリンク31の長さ方向中間部には、枢軸ピン33が上,下に貫通して設けられ、フィードバックリンク31は枢軸ピン33を回動中心として、図10〜図12に示す如く左,右方向に揺動される。
ここで、枢軸ピン33は、図1に示すようにケーシング本体3のアクチュエータ取付部3Bに設けた開口部3C内に取付けられている。なお、図3中に示す支持壁34は、前記開口部3Cの周壁に相当するもので、枢軸ピン33を介してフィードバックリンク31を回動(揺動)可能に支持している。この場合の支持壁34は、ケーシング本体3のアクチュエータ取付部3Bの一部を構成している。
位置調整機構35は、スプール28の中立位置を制御スリーブ27との相対位置として調整するものである。位置調整機構35は、制御スリーブ27とは異なる位置でケース筒体23(即ち、第2スリーブ摺動穴23B)内に配置された調整スリーブ36と、調整スリーブ36の変位をスプール28に伝達して制御スリーブ27に対するスプール28の相対位置を変化させる変位伝達部材としてのセンタリング用のばね37と、調整スリーブ36をレギュレータケーシング22(ケース筒体23)の軸方向に変位させる後述の変位調整部材42とを含んで構成されている。
調整スリーブ36は、ケース筒体23の第2スリーブ摺動穴23B内にパイロットケース25側(例えば、図4中の右側)から挿嵌して設けられ、第2スリーブ摺動穴23B内を軸方向に摺動変位可能となっている。調整スリーブ36の内周側には、軸方向の途中部位が環状の段差部36Aとなった段付穴36Bが設けられている。段付穴36Bは、段差部36Aを挟んで軸方向の一側部位(図4中の左側部位)が小径穴となって制御スリーブ27側に向けて開口し、軸方向の他側部位(図4中の右側部位)が大径穴となってパイロットケース25側に向けて開口している。
また、調整スリーブ36の内周側には、段付穴36Bの一側端部(制御スリーブ27と軸方向で対向する端部)から径方向内向き突出する環状突起36Cが形成されている。一方、段付穴36Bの他側端部(パイロットケース25と軸方向で対向する端部)には、その内周側に全周にわたるリング溝36Dが形成され、該リング溝36Dには、止め輪38が着脱可能に装着されている。この止め輪38は、段付穴36B内で大径のばね受板39に当接し、該ばね受板39を抜止め状態に保持する。大径のばね受板39は、段付穴36Bの大径穴側で軸方向に変位可能となっている。調整スリーブ36の環状突起36Cは、段付穴36B内で小径のばね受板40に当接し、該ばね受板40を抜止め状態に保持している。小径のばね受板40は、段付穴36Bの小径穴側で軸方向に変位できるように、その外径がばね受板39よりも小さな径に形成されている。
さらに、調整スリーブ36の外周面には、後述の鋼球44が転動可能に係合する半球形状の係合凹溝36Eが形成されている。後述の調整ロッド43を筒状突出部26のロッド挿嵌穴26A内で、図4中に矢印Eで示す如く回転させると、鋼球44の位置が変わる。このため、調整スリーブ36は、鋼球44が係合した係合凹溝36Eの移動に追従して、ケース筒体23の第2スリーブ摺動穴23B内を軸方向に変位する。このときに、調整スリーブ36は、第2スリーブ摺動穴23B内で回転方向にも僅かに変位するが、実質的な問題はない。
前記ばね受板39,40は、止め輪38,41の組付け前に、ばね37と一緒に調整スリーブ36の段付穴36B内に図4中の矢示D方向で挿入される。このとき、小径のばね受板40は、その外径が段差部36Aの内径よりも僅かに小さく形成され、段付穴36Bの小径穴側へと矢示D方向に奥深く挿入される。大径のばね受板39は、その外径が段差部36Aの内径よりも大きく形成され、段付穴36Bの大径穴側に挿入されるだけで、段差部36Aに当接することにより、矢示D方向へのこれ以上の挿入が規制される。
センタリング用のばね37は、ばね受板39,40間に挟まれた状態で調整スリーブ36の段付穴36B内に挿入される。この段階で、調整スリーブ36のリング溝36Dに止め輪38が装着され、スプール28のリング溝28Fには止め輪41が装着される。このように、止め輪38,41が組付けられたときには、センタリング用のばね37がばね受板39,40の間に弾性変形(縮装)状態で配設され、ばね受板39,40は、ばね37によって互いに離間する方向に付勢されることになる。
このため、スプール28は、図3および図4に示す中立位置にセンタリングされるように、常時ばね37からの付勢力をばね受板39,40および止め輪41等を介して受けることになる。即ち、センタリング用のばね37は、ばね受板39,40を互いに離間する方向に付勢し、これによりスプール28は、常時中立位置に向けてセンタリングされるように付勢される。即ち、レギュレータ21は、左,右のパイロット油室30A,30Bが互いに等しい圧力(例えば、図3に示すようにパイロット管路50A,50B内が共にタンク圧)状態のときに、スプール28が中立位置にセンタリングされるように、ばね37の付勢力をスプール28に作用させる。
例えば、図10、図11に示す如く、スプール28が矢示C方向に摺動変位したときには、図4に示すスプール28の環状突起28Eがばね受板40を介してばね37を矢示C方向に撓み変形させる。これによりスプール28は、中立位置(即ち、矢示D方向)に向けた戻し方向の付勢力をばね37から受ける。一方、図12に示すように、スプール28が矢示D方向に摺動変位したときには、スプール28が止め輪41およびばね受板39(図4参照)を介してばね37を矢示D方向に撓み変形させる。これによりスプール28は、中立位置(即ち、矢示C方向)に向けた戻し方向の付勢力をばね37から受ける。
変位調整部材42は、位置調整機構35の主要部を構成している。変位調整部材42は、調整スリーブ36をレギュレータケーシング22のケース筒体23内で第2スリーブ摺動穴23Bの軸方向に変位させるため、調整ロッド43と鋼球44とにより構成されている。調整ロッド43は、筒状突出部26のロッド挿嵌穴26A内に摺動可能に設けられ、軸方向外側の端面には、図4および図7に示すように、回転操作用の工具係合溝43Aが形成されている。
調整ロッド43の軸方向内側の端面(調整スリーブ36に当接される端面)側には、図8に示すように、例えば寸法eだけ調整ロッド43の軸心から偏心した有底の偏心穴43Bが形成されている。係合部材としての鋼球44は、偏心穴43B内に転動可能に挿入され、この状態で偏心穴43Bから半球形状をなして突出している(図5参照)。鋼球44の突出側は、図4に示す如く、調整スリーブ36の外周面に係合凹溝36Eを介して転動可能に係合する。調整ロッド43の外周側には、偏心穴43Bの位置から所定寸法だけ離間した位置に環状の縮径凹部43Cが形成されている。
変位調整部材42の調整ロッド43は、レギュレータケーシング22(ケース筒体23)の筒状突出部26内に設けられ、第2スリーブ摺動穴23Bの径方向に延びている。調整ロッド43は、筒状突出部26の外部から回動操作用の工具(図示せず)を工具係合溝43Aに係合させた状態で回転されると、前記寸法eの偏心量で鋼球44の位置を変更(調整)することができる。このため、調整スリーブ36は、鋼球44が係合した係合凹溝36Eの移動に伴って、ケース筒体23の第2スリーブ摺動穴23B内を軸方向に変位する。
ここで、レギュレータケーシング22(ケース筒体23)に対する調整スリーブ36の変位は、センタリング用のばね37等を介してスプール28に伝えられ、スプール28は図4中の矢示C,D方向に変位される。これにより、スプール28は、制御スリーブ27に対する相対位置が調整され、スプール28の中立位置では、制御スリーブ27の油孔27C,27Dをスプール28のランド28C,28Dにより内側から遮断した状態に保つことができる。
締結ナット45は、ケース筒体23の筒状突出部26に外側(ケース筒体23の傾方向外側)から螺着される。締結ナット45は、筒状突出部26の雄ねじ部26Bに螺合する雌ねじ部45Aと、筒状突出部26のテーパ筒部26Cに対応して漸次上向きに縮径するように形成されたテーパ状の縮径筒部45Bとにより構成されている。縮径筒部45Bは、その最小径部が上側の開口端となり、雌ねじ部45A側が最大径側の下側開口となっている。締結ナット45は、位置調整機構35の一部を構成し、ケース筒体23の筒状突出部26に対する調整ロッド43の抜止め、廻止めを行うものである。
即ち、締結ナット45は、筒状突出部26の雄ねじ部26Bが螺着されることにより筒状突出部26のテーパ筒部26Cを縮径方向に弾性変形させる。このため、筒状突出部26のテーパ筒部26Cは、調整ロッド43に対する締結力が締結ナット45により付与され、調整ロッド43は筒状突出部26のロッド挿嵌穴26A内で廻止めされると共に、抜止めされることになる。即ち、スプール28は、位置調整機構35により中立位置に調整された状態でロックされるものである。
図3に示すパイロットポンプ46は、作動油タンク47内に貯留された作動油を吸込みつつ、これを傾転制御圧として供給管路48内へと吐出する。供給管路48は、その先端側がレギュレータケーシング22(ケース筒体23)のポンプポート23Cに接続され、制御スリーブ27内のスプール28に対して前記傾転制御圧を供給する。
供給管路48の基端側には、例えば2つの制御圧管路48A,48Bが分岐して設けられている。これらの制御圧管路48A,48Bは、2つの傾転操作弁49A,49Bを介して一対のパイロット管路50A,50Bに接続される。一対のパイロット管路50A,50Bは、その先端側がパイロットケース24,25のパイロットポート24B,25Bに接続されている。
傾転操作弁49A,49Bは、例えば電磁比例弁により構成され、常時は戻し位置(f)でパイロット管路50A,50Bを作動油タンク47にタンク管路47A,47Bを介して接続している。傾転操作弁49A,49Bは、オペレータの手動操作等によって戻し位置(f)から切換位置(g)へと切換えられる。このとき、傾転操作弁49A,49Bは、電流値に比例して切換操作されるため、パイロット管路50A,50Bには、制御圧管路48A,48Bからのパイロット圧が可変に圧力制御(調整)された状態で供給される。
傾転制御圧の給排管路51A,51Bは、レギュレータケーシング22(ケース筒体23)と傾転アクチュエータ16との間に設けられている。給排管路51Aは、ケース筒体23のアクチュエータポート23Dをシリンダ穴17A内の液圧室19Aに接続している。給排管路51Bは、ケース筒体23のアクチュエータポート23Eをシリンダ穴17B内の液圧室19Bに接続している。
図9に示すエンジン52は建設機械の原動機を構成している。該エンジン52は、油圧ポンプ1の回転軸5を回転駆動すると共に、チャージポンプ53およびパイロットポンプ46を回転駆動する。作動油タンク47内に貯留された作動油は、チャージポンプ53により吸込まれ、チャージ用管路54内へと圧油となって吐出される。油圧ポンプ1の給排通路15A,15Bは、一対の主管路55A,55Bを介して油圧モータ56に接続されている。
この油圧モータ56は、例えば建設機械の走行用油圧モータを構成している。油圧モータ56は、油圧ポンプ1から図9中の矢示A1方向に圧油が供給されるときに、例えば車両(建設機械)を前進させる方向に回転駆動される。一方、油圧ポンプ1から図9中の矢示B1方向に圧油が供給されるときには、油圧モータ56が車両を後進させる方向に回転駆動される。
一対の主管路55A,55B間には、一対のチェック弁57A,57Bと一対のリリーフ弁58A,58Bとが互いに並列に接続して設けられている。チャージ用管路54の先端側(下流側)には、チャージ用管路54内の圧力を予め決められた設定圧以下に抑えるチャージリリーフ弁59が設けられている。また、チャージ用管路54は、チャージリリーフ弁59よりも上流側となる位置に分岐管路60を有している。
一対のチェック弁57A,57Bと一対のリリーフ弁58A,58Bとは、分岐管路60(チャージ用管路54)に対して対称(並列)となる関係に配置されている。チェック弁57A,57Bは、分岐管路60から主管路55A,55Bに向けて圧油が流通するのを許し、逆向きの流れを阻止する。このため、主管路55Aまたは55B内の圧力が、例えばチャージリリーフ弁59の設定圧よりも低くなるとチェック弁57Aまたは57Bは開弁し、チャージポンプ53からチャージ用管路54、分岐管路60を介して供給される圧油を、該当する主管路55Aまたは55Bに向けて補給する。従って、主管路55A,55B内が圧油の漏洩等により作動油不足(負圧傾向)となるのは防止される。
リリーフ弁58A,58Bは、リリーフ設定圧を越える過剰圧が主管路55A,55B内に発生すると開弁し、このときの過剰圧を分岐管路60側にリリーフさせる。チャージリリーフ弁59は、リリーフ弁58A,58Bよりもリリーフ設定圧が低いため、リリーフ弁58A,58Bからの過剰圧は、チャージリリーフ弁59を介して作動油タンク47側にリリーフされる。
本実施の形態による可変容量型斜板式の油圧ポンプ1は、上述の如き構成を有するもので、次に、その容量可変部(斜板11)を傾転角零の中立位置から一方向と他方向の両方向に傾転駆動する場合のレギュレータ21による容量制御動作について説明する。
まず、油圧ポンプ1の斜板11を、傾転角零の中立位置から図2、図9中の矢示A方向に傾転駆動する場合には、傾転操作弁49A,49Bのうち、一方の傾転操作弁49Aを図3中に示す戻し位置(f)から切換位置(g)に切換え、他方の傾転操作弁49Bは、戻し位置(f)に保持した状態とする。
これにより、パイロットポンプ46による制御圧管路48Aを介したパイロット圧は、傾転操作弁49Aからパイロット管路50Aを介してレギュレータ21のパイロット油室30Aに供給される。このとき、他方の傾転操作弁49Bは戻し位置(f)にあるため、パイロット管路50B内はタンク圧に保たれる。従って、レギュレータ21のパイロット油室30Bも、タンク圧の状態に保たれる。
このため、レギュレータ21のスプール28は、受圧部28Aがパイロット油室30A内のパイロット圧を受圧し、制御スリーブ27のスプール摺動穴27Aに沿って図10中の矢示C方向に変位される。図10中に示す如く、矢示C方向に変位したスプール28は、2つのランド28C,28D間で制御スリーブ27の油孔27Bをスプール摺動穴27Aを介して油孔27Dに連通させる。これにより、レギュレータケーシング22のポンプポート23Cは、制御スリーブ27およびスプール28を介してアクチュエータポート23Eに連通される。
このとき、パイロットポンプ46から供給管路48を介してポンプポート23Cに供給されている傾転制御圧は、制御スリーブ27内のスプール28、アクチュエータポート23Eおよび給排管路51Bを介して傾転アクチュエータ16のシリンダ穴17B(即ち、液圧室19B)内へと供給される。これにより、レギュレータ21は、傾転アクチュエータ16に対する傾転制御圧の給排を下記のように行うことができる。
即ち、傾転アクチュエータ16のサーボピストン18は、液圧室19B内に供給される圧油(傾転制御圧)により図10中の矢示A方向に押動される。これに伴い、傾転アクチュエータ16のシリンダ穴17A(即ち、液圧室19A)からは、給排管路51A、レギュレータケーシング22のアクチュエータポート23Dおよび制御スリーブ27の油孔27C等を介してケース筒体23のスリーブ摺動穴23A,23B内へと傾転制御圧(圧油)が排出され、これはドレン通路23F(図10中に点線で示す)等を介して作動油タンク47に戻される。
また、前記サーボピストン18の変位は、フィードバックリンク31を介してレギュレータ21の制御スリーブ27へと伝えられる。即ち、レギュレータ21は、サーボピストン18の動きがフィードバックリンク31を介して伝えられることにより、制御スリーブ27をスプール28と同方向に摺動変位させるようにフィードバック制御される。即ち、制御スリーブ27は、油孔27C,27Dがスプール28のランド28C,28Dにより内側のスプール摺動穴27Aに対して遮断(閉塞)される位置までフィードバック制御される。
このため、パイロット油室30A内のパイロット圧を、このときの圧力状態に保つことにより、レギュレータ21からの傾転アクチュエータ16に対する傾転制御圧の給排を停止することができ、この状態でサーボピストン18を、例えば図10に示す任意な変位位置に保持することができる。これにより、油圧ポンプ1の斜板11を、図2中の矢示A方向に任意角度だけ傾転させた状態に保持することができる。
次に、制御圧管路48Aからのパイロット圧が、さらに上昇するように傾転操作弁49Aを切換位置(g)に切換えると、パイロット管路50Aからレギュレータ21のパイロット油室30Aに供給されるパイロット圧が昇圧される。これによって、レギュレータ21のスプール28は、制御スリーブ27のスプール摺動穴27Aに沿って図11中の矢示C方向に大きく変位し、例えば一方向のストロークエンドに達する。図11中に示す如く、スプール28が矢示C方向にストロークエンドまで摺動変位すると、スプール28(受圧部28B)の先端側が閉塞プラグ29Bに当接し、これ以上の変位は規制される。
また、傾転アクチュエータ16のサーボピストン18は、図11中の矢示A方向に大きく変位し、傾転アクチュエータ16のシリンダ穴17A側で蓋板20Aに当接(または近接)したときにこれ以上の変位が規制される。即ち、レギュレータ21は、サーボピストン18の動きがフィードバックリンク31を介して伝えられるので、制御スリーブ27がスプール28と同方向(図11中の矢示C方向)に摺動変位し、油孔27C,27Dがスプール28のランド28C,28Dで遮断される。
このため、レギュレータ21からの傾転アクチュエータ16に対する傾転制御圧の給排が停止され、傾転アクチュエータ16のサーボピストン18を、例えば図11に示す矢示A方向の最大変位位置に保持することができる。これにより、油圧ポンプ1の斜板11を、図2中の矢示A方向に最大角度まで傾転駆動した状態に保持することができる。
このように、油圧ポンプ1の斜板11を傾転角零の中立位置から矢示A方向に傾転駆動するときには、図9に示すエンジン52により回転される油圧ポンプ1から一対の主管路55A,55B内へと矢示A1方向に圧油を供給することができる。このため、走行用の油圧モータ56は、油圧ポンプ1から矢示A1方向に給排される圧油によって、例えば車両(建設機械)を前進させる方向に回転駆動でき、車両の走行速度を、油圧ポンプ1の吐出流量(即ち、斜板11の傾転角)に応じて可変に制御することができる。
一方、油圧ポンプ1の斜板11を、傾転角零の中立位置から図2、図9中の矢示B方向に傾転駆動する場合には、一方の傾転操作弁49Aを戻し位置(f)に保持した状態で、他方の傾転操作弁49Bを図3中の戻し位置(f)から切換位置(g)に切換える。これにより、レギュレータ21のパイロット油室30Bにパイロット圧を供給することができ、パイロット油室30Aはタンク圧の状態に保たれる。
このため、図12に示すように、レギュレータ21のスプール28は、受圧部28Bがパイロット油室30B内のパイロット圧を受圧し、制御スリーブ27のスプール摺動穴27Aに沿って矢示D方向に変位される。矢示D方向に変位したスプール28は、2つのランド28C,28D間で制御スリーブ27の油孔27Bをスプール摺動穴27Aを介して油孔27Cに連通させ、レギュレータケーシング22のポンプポート23Cは、制御スリーブ27およびスプール28を介してアクチュエータポート23Dに連通される。
これにより、レギュレータ21から傾転アクチュエータ16に対して傾転制御圧を給排することができ、サーボピストン18を圧油(傾転制御圧)により図12中の矢示B方向に駆動することができる。このとき、サーボピストン18の変位は、フィードバックリンク31を介してレギュレータ21の制御スリーブ27へと伝えられ、制御スリーブ27は、油孔27C,27Dがスプール28のランド28C,28Dによりスプール摺動穴27Aに対して遮断される位置までフィードバック制御される。
このため、パイロット油室30B内のパイロット圧を、このときの圧力状態に保つことにより、レギュレータ21からの傾転アクチュエータ16に対する傾転制御圧の給排を停止することができ、この状態でサーボピストン18を、矢示B方向への任意な変位位置に保持し、油圧ポンプ1の斜板11を矢示B方向に任意角度だけ傾転させた状態に保持することができる。
次に、パイロット圧がさらに上昇するように傾転操作弁49Bを切換位置(g)に切換えると、パイロット管路50Bからレギュレータ21のパイロット油室30Bに供給されるパイロット圧が昇圧される。これによって、レギュレータ21のスプール28は、制御スリーブ27のスプール摺動穴27Aに沿って図12中の矢示D方向に大きく変位し、ストロークエンドまで摺動変位すると、スプール28(受圧部28A)の先端側が閉塞プラグ29Aに当接し、これ以上の変位は規制される。
このとき、傾転アクチュエータ16のサーボピストン18は、図12中の矢示B方向に大きく変位し、傾転アクチュエータ16のシリンダ穴17B側で蓋板20Bに当接(または近接)したときにこれ以上の変位が規制される。即ち、レギュレータ21は、サーボピストン18の動きがフィードバックリンク31を介して伝えられるので、制御スリーブ27がスプール28と同方向(図12中の矢示D方向)に摺動変位し、油孔27C,27Dがスプール28のランド28C,28Dで遮断される。
このため、レギュレータ21からの傾転アクチュエータ16に対する傾転制御圧の給排が停止され、傾転アクチュエータ16のサーボピストン18を、例えば図12に示す矢示B方向の最大変位位置に保持することができる。これにより、油圧ポンプ1の斜板11を、図2中の矢示B方向に最大角度まで傾転駆動した状態に保持することができる。
このように、油圧ポンプ1の斜板11を傾転角零の中立位置から矢示B方向に傾転駆動するときには、図9に示すエンジン52により回転される油圧ポンプ1から一対の主管路55A,55B内へと矢示B1方向に圧油を供給することができる。このため、走行用の油圧モータ56は、油圧ポンプ1から矢示B1方向に給排される圧油によって、例えば車両(建設機械)を後進させる方向に回転駆動でき、車両の走行速度を、油圧ポンプ1の吐出流量(即ち、斜板11の傾転角)に応じて可変に制御することができる。
ところで、油圧ポンプ1に代表される可変容量型液圧回転機は、その容量可変部(斜板11)を傾転角零の中立位置から一方向と他方向の両方向に傾転駆動可能な両傾転タイプにおいて、斜板11を傾転角零の中立位置(ニュートラル位置)に保持する調整作業を容易に行うことができ、メンテナンス時の作業性を向上できるようにすることが望まれている。
そこで、第1の実施の形態で採用した両傾転タイプの油圧ポンプ1のレギュレータ21は、スプール28の中立位置を制御スリーブ27との相対位置として調整する位置調整機構35を、制御スリーブ27とは異なる位置でレギュレータケーシング22に設ける構成としている。この場合、レギュレータケーシング22は、ケース筒体23の軸方向の両側に油圧パイロット部としてのパイロットケース24,25を有し、該パイロットケース24,25の間にはそれぞれ軸方向に延びて形成された第1スリーブ摺動穴23Aと第2スリーブ摺動穴23Bとを有している。
ここで、位置調整機構35は、レギュレータケーシング22(ケース筒体23)の第2スリーブ摺動穴23B内に摺動変位可能に設けられ、内周側にスプール28が相対変位可能に挿通された調整スリーブ36と、前記ケース筒体23と調整スリーブ36との間に設けられケース筒体23の外部から操作されることにより調整スリーブ36をケース筒体23の軸方向に変位させる変位調整部材42と、スプール28と調整スリーブ36との間に設けられ、調整スリーブ36の変位をスプール28に伝達して制御スリーブ27に対するスプール28の相対位置を変化させる変位伝達部材としてのセンタリング用のばね37とを含んで構成されている。
センタリング用のばね37は、図4に示すように、ばね受板39,40間に挟まれた状態で調整スリーブ36の段付穴36B内に挿入される。調整スリーブ36のリング溝36Dには止め輪38が装着され、スプール28のリング溝28Fには止め輪41が装着される。このように、止め輪38,41を組付けた状態で、センタリング用のばね37は、ばね受板39,40の間に弾性変形(縮装)状態で配設され、段付穴36B内のばね受板39,40を互いに離間する方向に付勢する構成としている。
また、変位調整部材42は、第2スリーブ摺動穴23Bの径方向に延びるケース筒体23の筒状突出部26(ロッド挿嵌穴26A)内に設けられ外部から回動操作される調整ロッド43と、該調整ロッド43の軸心から寸法eだけ偏心した有底の偏心穴43Bの位置で調整スリーブ36の外周面(即ち、半球形状の係合凹溝36E)に係合し調整ロッド43の回動に応じて調整スリーブ36を第2スリーブ摺動穴23B内で軸方向に摺動変位させる係合部材(即ち、鋼球44)とにより構成されている。
このため、筒状突出部26の外部から回動操作用の工具(図示せず)を工具係合溝43Aに係合させた状態で、調整ロッド43を図4中の矢示E方向、または矢示E方向とは逆方向に微調整するように回転させると、前記寸法e(偏心量)の範囲で鋼球44の位置を変更(微調整)することができる。これにより、調整スリーブ36は、鋼球44が係合した係合凹溝36Eの移動に追従して、ケース筒体23の第2スリーブ摺動穴23B内を軸方向に変位する。
ここで、レギュレータケーシング22(ケース筒体23)に対する調整スリーブ36の変位は、センタリング用のばね37等を介してスプール28に伝えられ、スプール28は図4中の矢示C,D方向に変位される。これにより、スプール28は、制御スリーブ27に対する相対位置が調整され、スプール28の中立位置では、制御スリーブ27の油孔27C,27Dをスプール28のランド28C,28Dにより内側から遮断した状態に保つことができる。
このように、スプール28の中立位置を調整した状態では、締結ナット45をケース筒体23の筒状突出部26(雄ねじ部26B)に外側から螺着する。これにより、筒状突出部26のテーパ筒部26Cは縮径方向に弾性変形され、調整ロッド43に対する締結力が締結ナット45により付与される。この結果、ロッド挿嵌穴26A内での調整ロッド43の廻止め、抜止めを行うことができ、位置調整機構35は、スプール28を中立位置(即ち、斜板11の傾転角が零となるニュートラル位置)に調整した状態に保持することができる。
従って、第1の実施の形態による両傾転タイプの油圧ポンプ1のレギュレータ21は、その外殻をなすレギュレータケーシング22に設けた位置調整機構35により、スプール28の中立位置を制御スリーブ27との相対位置として調整することができ、このときに、制御スリーブ27の油孔27C,27Dがスプール28のランド28C,28Dによって確実に遮断された状態に保持することができる。
このような、位置調整機構35を用いたスプールの中立位置調整作業は、油圧ポンプ1に代表される可変容量型液圧回転機のメンテナンス作業時等に、レギュレータケーシング22側で位置調整機構35を手動等で操作することによって行うことができ、両傾転タイプの斜板11を傾転角零の中立位置(ニュートラル位置)に保持する調整作業を容易に、かつ簡略化して行うことができる。
また、レギュレータ21のレギュレータケーシング22は、ケース筒体23の軸方向の両側に油圧パイロット部としてのパイロットケース24,25を有し、左,右の閉塞プラグ29A,29Bは、パイロットケース24,25に外側から螺合して取付けられている。スプール28は、レギュレータケーシング22内を軸方向(矢示C,D方向)に大きく摺動変位したときに、受圧部28A,28Bの先端側が閉塞プラグ29A,29Bに当接した段階で、図11、図12に示すようにストロークエンドに達する。このため、閉塞プラグ29A,29Bの螺合位置を変えることにより、スプール28のストロークエンドとなる位置を可変に調整することができ、斜板11の矢示A,B方向における最大傾転位置を調整することが可能となる。
次に、図13は本発明の第2の実施の形態を示している。本実施の形態では、前述した第1の実施の形態と同一の構成要素に同一の符号を付し、その説明を省略するものとする。然るに、第2の実施の形態の特徴は、スプール28の中立位置を調整する位置調整機構71を、変位伝達部材としてのセンタリング用のばね37と、後述の調整スリーブ73および変位調整部材74とにより構成したことにある。
ここで、レギュレータケーシング22のケース筒体23には、第1の実施の形態で述べた筒状突出部26等が形成されていない。これに替えて、ケース筒体23には、第2スリーブ摺動穴23Bの径方向に延びる複数(例えば、2個)のロッド挿通穴72が穿設されている。これらのロッド挿通穴72は、円形の貫通穴でもよく、非円形の貫通穴であってもよい。後述の楔形ロッド75,76に廻止め機能を付与する上では、ロッド挿通穴72を非円形(例えば、横断面がD字状、楕円または四角)の穴とするのが好ましい。
第2の実施の形態で採用した調整スリーブ73は、第1の実施の形態で述べた調整スリーブ36と同様に、段差部73A、段付穴73B、環状突起73Cおよびリング溝73Dが形成され、リング溝73Dには止め輪38が着脱可能に装着されている。しかし、調整スリーブ73の外周側には、複数(例えば、2個)の楔状凹溝73E,73Fが形成されている点で、前記第1の実施の形態とは相違している。楔状凹溝73E,73Fは、第2の実施の形態で採用した変位調整部材74の一部を後述の如く構成している。楔状凹溝73E,73Fは、図13中に示すように、互いに逆向きに傾斜した楔状をなす略三角形の凹溝として形成されている。
第2の実施の形態で採用した変位調整部材74は、第2スリーブ摺動穴23Bの径方向に延びるようにレギュレータケーシング22(ケース筒体23)のロッド挿通穴72内に変位可能に設けられ、外部から互いに独立して押し引き操作される楔形ロッド75,76と、該楔形ロッド75,76の先端が当接するように調整スリーブ73の外周面に形成された前記楔状凹溝73E,73Fとを含んで構成されている。
楔状凹溝73E,73Fは、楔状をなして互いに逆向きに傾斜しているため、例えば楔形ロッド75の先端(下端側傾斜面)を図13中の矢示H方向へと楔状凹溝73Eに押付けると、調整スリーブ73は第2スリーブ摺動穴23B内で、矢示C方向に摺動変位される。このとき、楔形ロッド76側では、固定部材としてのアイボルト77をナット78に対して予め緩める方向(径方向外向きに抜出す方向)に回転しておくことにより、楔形ロッド76が図13中の矢示J方向に移動するのを許すことができる。第2スリーブ摺動穴23B内での調整スリーブ73の変位は、センタリング用のばね37を介してスプール28へと伝えられ、スプール28も矢示C方向に変位される。
一方、調整スリーブ73を第2スリーブ摺動穴23B内で、センタリング用のばね37、スプール28と一緒に矢示D方向に摺動変位させるときには、例えば楔形ロッド76の先端(下端側傾斜面)を楔状凹溝73Fに矢示H方向へと押付けると、調整スリーブ73が矢示D方向に押動される。このとき、楔形ロッド75側では、アイボルト77をナット78に対して予め緩める方向に回転しておくことにより、楔形ロッド75が矢示J方向に移動するのを許すことができる。
前記ナット78は、ケース筒体23の外周側(即ち、各ロッド挿通穴72の外側開口の周囲)に溶接等の手段を用いて固着されている。各アイボルト77は夫々のナット78に螺合した状態でケース筒体23の外側から回転操作される。これにより、各ロッド挿通穴72内の楔形ロッド75,76は、矢示H,J方向に押し引き操作されるように、ロッド挿通穴72内を摺動変位するのが許されるものである。
調整スリーブ73を第2スリーブ摺動穴23B内で、センタリング用のばね37、スプール28と一緒に矢示C,D方向に摺動変位させ、スプール28を中立位置に調整した段階では、各ロッド挿通穴72内の楔形ロッド75,76が矢示H,J方向に動くことがないようにする。このため、中立位置の調整後には、各アイボルト77の下端面が楔形ロッド75,76の上端面に当接するように、各アイボルト77をナット78に対して回転させ、楔形ロッド75,76の動きを規制するように設定する。
かくして、このように構成される第2の実施の形態でも、スプール28の中立位置を調整する位置調整機構71を、変位伝達部材としてのセンタリング用のばね37と、調整スリーブ73および変位調整部材74とにより構成することができ、前記第1の実施の形態とほぼ同様な効果を得ることができる。
この場合の変位調整部材74は、第2スリーブ摺動穴23Bの径方向に延び記レギュレータケーシング22のケース筒体23に設けられ外部から押し引き操作される楔形ロッド75,76と、該楔形ロッド75,76の先端が当接するように調整スリーブ73の外周面に形成され、楔形ロッド75,76の押し引き操作に応じて調整スリーブ73を第2スリーブ摺動穴23B内で軸方向に摺動変位させる楔状凹溝73E,73Fとにより構成することができる。
なお、前記第2の実施の形態では、各ロッド挿通穴72内に楔形ロッド75,76を固定する固定部材としてアイボルト77を用いる場合を例に挙げて説明した。しかし、本発明はこれに限らず、例えば各ロッド挿通穴72の上部側(ケース筒体23の径方向外側寄りの部位)をねじ穴として形成し、このねじ穴に螺合する固定ボルトを、各ロッド挿通穴72内に楔形ロッド75,76を固定する固定部材として用いる構成としてもよい。
次に、図14は本発明の第3の実施の形態を示している。本実施の形態では、前述した第1の実施の形態と同一の構成要素に同一の符号を付し、その説明を省略するものとする。然るに、第3の実施の形態の特徴は、スプール28の中立位置を調整する位置調整機構81を、変位伝達部材としてのセンタリング用のばね37と、後述の調整スリーブ83および変位調整部材84とにより構成したことにある。
ここで、レギュレータケーシング22のケース筒体23には、第1の実施の形態で述べた筒状突出部26とは異なる形状の筒状突出部82が形成されている。筒状突出部82の内側には、ケース筒体23の径方向に延びて第2スリーブ摺動穴23Bと連通する径方向穴としてのピン挿入穴82Aが穿設されている。このピン挿入穴82Aは、円形の貫通穴でもよく、楕円形または四角形の貫通穴であってもよい。また、筒状突出部82には、後述の位置調整ピン85を挟んで対向する位置に一対のねじ穴82Bが形成されている。これらのねじ穴82Bは、第2スリーブ摺動穴23Bと平行な軸方向に延びている。
第3の実施の形態で採用した調整スリーブ83は、第1の実施の形態で述べた調整スリーブ36と同様に、段差部83A、段付穴83B、環状突起83Cおよびリング溝83Dが形成され、リング溝83Dには止め輪38が着脱可能に装着されている。しかし、調整スリーブ83の外周側には、後述の位置調整ピン85が固定される固定部としての凹溝83Eが形成されている点で、前記第1の実施の形態とは相違している。
第3の実施の形態で採用した変位調整部材84は、第2スリーブ摺動穴23Bの径方向に延びてレギュレータケーシング22に設けられたピン挿入穴82A内に隙間をもって挿入され先端側が調整スリーブ83の凹溝83Eに固定された位置調整ピン85と、後述の調節ねじ87,88とを含んで構成されている。筒状突出部82のピン挿入穴82Aと位置調整ピン85との間には、位置調整を行うための環状隙間86が形成されている。
調節ねじ87,88は、筒状突出部82の各ねじ穴82Bに夫々螺合して設けられている。環状隙間86内で位置調整ピン85を矢示K方向に移動させる場合には、2本の調節ねじ87,88のうち、調節ねじ87を一方のねじ穴82Bから緩める方向に回転させ、位置調整ピン85と調節ねじ87との間に隙間を形成した状態で、調節ねじ88を他方のねじ穴82B内へと螺入方向に回転させる。これにより、調節ねじ88の先端が位置調整ピン85に突き当たった状態で当該位置調整ピン85を矢示K方向に押動することができる。
環状隙間86内で位置調整ピン85を矢示L方向に移動させる場合には、調節ねじ88を他方のねじ穴82Bから緩める方向に回転させ、位置調整ピン85と調節ねじ88との間に隙間を形成した状態で、調節ねじ87を一方のねじ穴82B内へと螺入方向に回転させる。これにより、調節ねじ87の先端が位置調整ピン85に突き当たった状態で当該位置調整ピン85を矢示L方向に押動することができる。
このように、調節ねじ87,88を用いて位置調整ピン85を環状隙間86の範囲内で矢示K,L方向に押動することにより、位置調整ピン85と一緒に調整スリーブ83をケース筒体23内で第2スリーブ摺動穴23Bに沿って矢示C,D方向に摺動変位させる。これにより、調整スリーブ83を第2スリーブ摺動穴23B内でセンタリング用のばね37、スプール28と一緒に矢示C,D方向に摺動変位させ、スプール28の中立位置を適宜に調整することができる。
スプール28の中立位置を調整した段階では、調節ねじ87,88の先端間で位置調整ピン85を挟込むことにより、位置調整ピン85がピン挿入穴82A内で矢示K,L方向に不用意に動くのを規制する。この上で、筒状突出部82の外周側から突出する調節ねじ87,88の突出端側に、緩止めナット89をそれぞれ螺着する。これにより、調節ねじ87,88を各ねじ穴82Bに対して緩止めすることができ、位置調整ピン85をピン挿入穴82A内で固定した状態に保持することができる。
かくして、このように構成される第3の実施の形態でも、スプール28の中立位置を調整する位置調整機構81を、変位伝達部材としてのセンタリング用のばね37と、調整スリーブ83および変位調整部材84とにより構成することができ、前記第1の実施の形態とほぼ同様な効果を得ることができる。
この場合の変位調整部材84は、第2スリーブ摺動穴23Bの径方向に延びてレギュレータケーシング22に設けられた径方向穴(ピン挿入穴82A)内に隙間をもって挿入され先端側が調整スリーブ83に固定された位置調整ピン85と、位置調整ピン85を前記径方向穴内で第2スリーブ摺動穴23Bの軸方向へと移動させるように位置調節する調節ねじ87,88とを含んで構成している。このため、位置調整ピン85と一体に調整スリーブ83の位置調整を行うことができ、中立位置の調整作業を直感的に目視しながら実行することができる。
なお、前記第1の実施の形態では、レギュレータケーシング22を、ケース筒体23と左,右のパイロットケース24,25とにより、それぞれ別体に形成する場合を例に挙げて説明した。しかし、本発明はこれに限るものではなく、例えばレギュレータケーシングを単一部材として形成してもよい。この点は、第2,第3の実施の形態についても同様である。
また、前記各実施の形態では、可変容量型液圧回転機のレギュレータとして斜板を中立位置から両方向に傾転可能な構成とした斜板式油圧ポンプに適用した場合を例に挙げて説明した。しかし、本発明はこれに限るものではなく、例えば可変容量型の斜板式油圧モータに適用してもよく、可変容量型の斜軸式油圧ポンプまたは油圧モータに適用してもよいものである。
以上述べたように、本発明の実施の形態によると、前記位置調整機構は、前記レギュレータケーシング内に摺動変位可能に設けられ、内周側に前記スプールが相対変位可能に挿通された調整スリーブと、前記レギュレータケーシングと該調整スリーブとの間に設けられ、前記レギュレータケーシングの外部から操作されることにより前記調整スリーブを前記レギュレータケーシングの軸方向に変位させる変位調整部材と、前記スプールと調整スリーブとの間に設けられ、前記調整スリーブの変位を前記スプールに伝達して前記制御スリーブに対するスプールの相対位置を変化させる変位伝達部材と、を含んで構成されている。
前記レギュレータケーシングは、軸方向の両側にそれぞれ油圧パイロット部を有し、該各油圧パイロット部の間にはそれぞれ軸方向に延びて形成された第1スリーブ摺動穴と第2スリーブ摺動穴とを有し、前記制御スリーブは、前記レギュレータケーシングの前記第1スリーブ摺動穴内に変位可能に挿嵌して設けられ内周側がスプール摺動穴となった筒状体として形成し、前記スプールは、軸方向の両端が前記レギュレータケーシングの各油圧パイロット部に挿入されて傾転制御用のパイロット圧を受圧し、軸方向の途中部位が前記傾転制御圧をサーボピストンに給排するため前記制御スリーブのスプール摺動穴内に相対変位可能に挿嵌される構成としている。また、前記調整スリーブは、前記レギュレータケーシングの前記第2スリーブ摺動穴内に変位可能に挿嵌して設け、前記変位調整部材は、前記レギュレータケーシングの外部から操作されることにより前記調整スリーブを前記第2スリーブ摺動穴に沿って変位させる構成としている。