以下、本発明の実施の形態による可変容量型液圧回転機の傾転制御装置を、可変容量型の斜板式油圧ポンプ(特に、斜板を傾転角零の中立位置から一方向と他方向の両方向に傾転駆動可能な両傾転タイプの油圧ポンプ)に適用した場合を例に挙げ、添付図面に従って詳細に説明する。
ここで、図1ないし図11は本発明の第1の実施の形態を示している。図中、1は本実施の形態で採用した可変容量型の斜板式油圧ポンプ(以下、油圧ポンプ1という)で、該油圧ポンプ1は、その外殻を構成するケーシング2を有している。該ケーシング2は、一端側がフロント底部3Aとなった段付筒状のケーシング本体3と、該ケーシング本体3の他端側を閉塞するようにケーシング本体3に設けられたリヤケーシング4とにより構成されている。ケーシング2のリヤケーシング4には、後述の給排通路15A,15B等が形成されている。
ケーシング2のケーシング本体3には、図1に示すようにフロント底部3Aから軸線方向に離間した位置にアクチュエータ取付部3Bが設けられている。該アクチュエータ取付部3Bは、ケーシング本体3の径方向外側へと突出している。アクチュエータ取付部3B内には、後述の傾転アクチュエータ16等が設けられている。ケーシング本体3のアクチュエータ取付部3Bには、例えば略四角形状をなした開口部3Cが後述するレギュレータ21との間に形成されている。この開口部3C内には、後述のフィードバックリンク34が移動可能に挿入されている。
ケーシング2内には回転軸5が回転可能に設けられている。この回転軸5は、軸線方向の一側がケーシング本体3のフロント底部3A内に軸受等を介して回転可能に取付けられ、他側はリヤケーシング4に軸受等を介して回転可能に取付けられている。ケーシング本体3のフロント底部3Aから軸線方向に突出する回転軸5の一側(突出端側)には、例えば建設機械の原動機(後述の図10に示すエンジン52)が動力伝達機構(図示せず)等を介して連結され、回転軸5はエンジン52により回転駆動される。
シリンダブロック6は、ケーシング2内に位置して回転軸5の外周側に設けられている。該シリンダブロック6は、回転軸5の外周側にスプライン結合され、回転軸5と一体に回転駆動される。シリンダブロック6には、その周方向に離間して軸線方向に延びる複数(通常は奇数個)のシリンダ7が穿設されている。シリンダブロック6の各シリンダ7内には、それぞれピストン8が摺動可能に挿嵌されている。該各ピストン8は、シリンダブロック6の回転によってそれぞれのシリンダ7内を往復動し、後述の弁板14側から各シリンダ7内に作動油を吸込みつつ、これを高圧の圧油として吐出させるものである。
この場合、これらのピストン8は、シリンダ7から軸方向に突出(伸長)した下死点位置と、シリンダ7内へと縮小した上死点位置との間で往復動される。シリンダブロック6が1回転する間に、各ピストン8はシリンダ7内を上死点から下死点に向けて摺動変位する吸入行程と、下死点から上死点に向けて摺動変位する吐出行程とを繰返すことになる。
シリンダブロック6の半回転分に相当するピストン8の吸入行程では、後述の給排通路15A,15Bの一方側からシリンダ7内に作動油が吸込まれる。また、シリンダブロック6の残りの半回転分に相当するピストン8の吐出行程では、ピストン8が各シリンダ7内の油液を高圧の圧油として後述の給排通路15A,15Bの他方側から吐出配管(例えば、図10に示す主管路55Aまたは55B)内へと吐出させるものである。
各ピストン8の突出側端部には、それぞれシュー9が揺動可能に設けられている。これらのシュー9は、それぞれピストン8からの押付力(油圧力)で後述する斜板11の平滑面11Aに押圧される。各シュー9は、この状態で回転軸5、シリンダブロック6およびピストン8と一緒に回転することにより、リング状軌跡を描くように平滑面11A上を摺動するものである。
ケーシング本体3のフロント底部3Aには、斜板支持体10が固定して設けられている。この斜板支持体10は、回転軸5の周囲に位置して斜板11の裏面側に配置されている。斜板支持体10には、斜板11を傾転可能に支持する一対の傾転摺動面10Aが凹湾曲面(図示せず)として形成されている。図1に示すように、一対の傾転摺動面10Aは、回転軸5の径方向で互いに離間して配置されている。
斜板11はケーシング2内に傾転可能に設けられている。該斜板11は、ケーシング本体3のフロント底部3A側に斜板支持体10を介して取付けられ、その表面側が摺動面としての平滑面11Aとなっている。また、斜板11には、その中央部に回転軸5が隙間をもって挿通される挿通穴11Bが穿設されている。さらに、斜板11の背面側には、挿通穴11Bを挟んで互いに離間した一対の脚部11Cが設けられ、該各脚部11Cは、斜板支持体10の各傾転摺動面10A上に傾転可能に当接されている。
ここで、斜板11は、斜板支持体10の各傾転摺動面10Aにより各脚部11Cを介して傾転可能に支持され、この状態で後述の傾転アクチュエータ16により傾転駆動される。斜板11は、このときの傾転角に応じて当該油圧ポンプ1の吐出容量を変化させる容量可変部を構成している。傾転アクチュエータ16は、斜板11を傾転角零の位置から一方向と他方向との両方向(図2に示す矢示A,B方向)に傾転し、圧油の吐出方向を反転させるように適宜に切換えることができる。
傾転レバー12は斜板11の側部に一体形成されている。この傾転レバー12は、斜板11の側部から後述のサーボピストン18に向けて延設されている。そして、傾転レバー12の先端側には、突出ピン12Aが一体に設けられ、この突出ピン12Aには、後述のサーボピストン18がスライド板13を介して連結されている。
スライド板13は、後述するサーボピストン18のスライド溝18D内に摺動可能に挿嵌して設けられている。該スライド板13は、略長方形をなす板体(プレート)として形成され、スライド溝18D内でサーボピストン18を横切る方向にスライド(摺動変位)するものである。スライド板13の中心部には、傾転レバー12の突出ピン12Aが回動可能に挿嵌される嵌合穴13Aが穿設されている。即ち、スライド板13は、嵌合穴13A内に傾転レバー12の突出ピン12Aを予め挿嵌した状態で、サーボピストン18のスライド溝18D内に取付けられる。スライド板13は、サーボピストン18の軸方向変位を傾転レバー12を介して斜板11へと伝達し、これにより斜板11は、サーボピストン18に追従して矢示A,B方向に傾転駆動されるものである。
弁板14はリヤケーシング4に固定して設けられている。該弁板14は、シリンダブロック6の端面に摺接する切換弁板を構成している。このため、弁板14には、回転軸5の周囲を眉形状をなして延びる一対の給排ポート14A,14Bが形成されている。これらの給排ポート14A,14Bは、斜板11の傾転方向に応じて吸込ポートと吐出ポートとの何れかに切換えられる。例えば、給排ポート14Aが低圧側の吸込ポートとなったときには、給排ポート14Bが高圧側の吐出ポートとなる。一方、斜板11の傾転方向が反転されたときには、例えば給排ポート14Aが高圧側の吐出ポートとなり、給排ポート14Bが低圧側の吸込ポートとなる。
リヤケーシング4に形成された一対の給排通路15A,15Bは、作動油の吸込みと吐出とを行う通路である。これらの給排通路15A,15Bは、弁板14を介してシリンダ7内へと作動油(圧油)を給排させる。図10に示すように、油圧ポンプ1の給排通路15A,15Bは、後述の油圧モータ56に一対の主管路55A,55Bを介して接続される。ここで、ケーシング2内で回転軸5を回転駆動すると、シリンダブロック6の回転に伴って各シリンダ7内をピストン8が往復動し、これらのピストン8が給排通路15A,15Bの一方側からシリンダ7内に作動油を吸込みつつ、給排通路15A,15Bの他方側に圧油を吐出するものである。
傾転アクチュエータ16は、ケーシング本体3のアクチュエータ取付部3B内に設けられている。該傾転アクチュエータ16は、図1、図2に示すようにシリンダブロック6の径方向外側に位置してケーシング本体3のアクチュエータ取付部3Bに形成された傾転制御シリンダとしてのシリンダ穴17A,17Bと、該シリンダ穴17A,17B内に摺動可能に挿嵌された後述のサーボピストン18とから大略構成されている。傾転アクチュエータ16は、サーボピストン18により斜板11を傾転角零の位置から一方向と他方向との両方向(図2中の矢示A,B方向)に傾転駆動するものである。
サーボピストン18は傾転アクチュエータ16の可動部を構成している。該サーボピストン18は、例えば円柱状または円筒状のピストンとして形成され、軸方向一側の端部18Aと他側の端部18Bとを有している。軸方向一側の端部18Aと他側の端部18Bとは、互いに等しい外径(同一径)を有している。サーボピストン18の軸方向一側の端部18Aは、アクチュエータ取付部3Bのシリンダ穴17A内に摺動可能に挿嵌され、軸方向他側の端部18Bはシリンダ穴17B内に摺動可能に挿嵌されている。
また、サーボピストン18の軸方向(長さ方向)中間には、その径方向(図2中の上,下)で互いに対向する位置にリンク取付溝18Cとスライド溝18Dとが凹設されている。そして、サーボピストン18のリンク取付溝18Cには、後述のフィードバックリンク34が揺動可能に係合して取付けられている。サーボピストン18のスライド溝18Dには、スライド板13の嵌合穴13Aを介して傾転レバー12の突出ピン12Aが取付けられている。
リンク取付溝18Cは、図2、図3に示す如くサーボピストン18の外周側を部分的に切欠くことにより形成された断面コ字形状の切欠き溝からなり、サーボピストン18の外周面のうち、サーボピストン18の軸線を挟んでスライド溝18Dと径方向で対向する位置に配置されている。リンク取付溝18Cは、その平面形状が周方向一側と他側とで対称な形状(例えば、長方形状または一対の等脚台形状)に形成されている。これにより、リンク取付溝18Cには、後述するフィードバックリンク34の先端(自由端)側をサーボピストン18の周方向一側または他側から円滑に取付けることができる。リンク取付溝18Cは、フィードバックリンク34の先端側がリンク取付溝18Cの側壁に干渉したり、引っ掛ったりするのを防ぐ機能も有している。
スライド溝18Dは、サーボピストン18の外周側を径方向の一方側から部分的に切欠くことにより断面コ字形状をなす平行溝として形成されている。スライド溝18D内には、サーボピストン18の軸方向変位を傾転レバー12を介して斜板11に伝えるため、前記スライド板13が摺動可能に挿嵌して取付けられている。スライド溝18Dは、図2に示すようにスライド板13に対応する溝深さを有し、リンク取付溝18Cよりも大なる溝寸法を有している。
ここで、サーボピストン18の軸方向一側の端部18Aは、図2に示す如くシリンダ穴17A内に一方の液圧室19Aを画成し、この液圧室19Aは、蓋板20Aによりシリンダ穴17Aの外側から閉塞されている。また、サーボピストン18の軸方向他側の端部18Bは、シリンダ穴17B内に他方の液圧室19Bを画成し、この液圧室19Bは、蓋板20Bによりシリンダ穴17Bの外側から閉塞されている。
傾転アクチュエータ16は、液圧室19A,19Bに後述の給排管路51A,51Bを介して傾転制御圧が給排されると、このときの傾転制御圧に従ってサーボピストン18をシリンダ穴17A,17Bの軸線方向へと摺動変位させる。また、サーボピストン18の軸方向変位は、前述のスライド板13から傾転レバー12を介して斜板11へと伝達され、これにより斜板11は、サーボピストン18に追従して矢示A,B方向に傾転駆動される。
レギュレータ21は、傾転アクチュエータ16に傾転制御圧を給排するサーボ弁装置である。このレギュレータ21は、図1に示す如くアクチュエータ取付部3Bの側部に着脱可能に設けられたレギュレータケーシング22を有し、該レギュレータケーシング22は、ケーシング本体3のアクチュエータ取付部3Bに設けられた開口部3Cを外側から覆うように配設されている。換言すると、レギュレータケーシング22の内部は、ケーシング本体3のアクチュエータ取付部3Bと開口部3Cを介して連通している。
レギュレータ21は、図3に示すように、レギュレータケーシング22と、後述の制御スリーブ27と、レギュレータケーシング22内に制御スリーブ27を介して相対変位可能に設けられ傾転アクチュエータ16のサーボピストン18に傾転制御圧を給排するスプール28と、傾転アクチュエータ16のサーボピストン18と制御スリーブ27との間に設けられサーボピストン18の変位を制御スリーブ27に伝えるフィードバックリンク34とを含んだ油圧サーボ弁として構成されている。
レギュレータケーシング22は、スプール28の軸方向(左,右方向)に延びる段付筒状のケース本体23と、該ケース本体23の軸方向両側にそれぞれ固定して設けられた枠体としての左,右の側板24A,24Bとを含んで構成されている。ケース本体23内には、図4に示すように、左,右の側板24A,24B間に位置して左,右の筒体取付穴23A,23Bとスリーブ摺動穴23Cとがそれぞれ軸方向に延びる段付穴として形成されている。
左,右の筒体取付穴23A,23Bは、スリーブ摺動穴23Cよりも大径に形成され、その内部には油圧パイロット部を構成する左,右のパイロット筒体25A,25Bが位置調整(変位)可能に挿嵌して設けられている。中間のスリーブ摺動穴23Cは、左,右の筒体取付穴23A,23Bの間でケース本体23内を軸方向に延びている。筒体取付穴23A,23Bは、スリーブ摺動穴23Cと左,右の側板24A,24Bとの間においてケース本体23内を軸方向に延びている。
ケース本体23には、ポンプポート23Dと左,右一対のアクチュエータポート23E,23Fとがスリーブ摺動穴23Cの軸方向に離間して設けられている。また、ケース本体23には、左,右方向に離間してそれぞれ径方向に延びる一対のパイロットポート23G,23Hが形成されている。該パイロットポート23G,23Hは、一方側でパイロット筒体25A,25Bのポート穴25A2,25B2(即ち、後述のパイロット油室32A,32B)に連通し、他方側がパイロット筒体25A,25Bの外部に開口している。パイロットポート23G,23Hの開口側には、後述のパイロット管路50A,50Bが接続されている。
さらに、ケース本体23には、スリーブ摺動穴23C内と筒体取付穴23A,23B内とを連通させるようにドレン通路23J(図3、図4中に点線で示す)が形成されている。このドレン通路23Jは、例えば傾転アクチュエータ16からレギュレータケーシング22(ケース本体23)側に戻されるように排出された作動油(または漏洩油)を後述の作動油タンク47に戻すための通路である。
左,右のパイロット筒体25A,25Bは、ケース本体23の筒体取付穴23A,23Bから左,右の側板24A,24Bを貫通して軸方向外側へと延び、左,右のロックナット26A,26Bを用いて左,右の側板24A,24Bに緩止め状態で固定されている。即ち、パイロット筒体25A,25Bは、筒体取付穴23A,23B内から左,右の側板24A,24Bに螺合して取付けられ、各側板24A,24Bに対する螺合位置を調整した状態で、左,右のロックナット26A,26Bにより抜止め、かつ緩止めして固定される。
また、左,右のパイロット筒体25A,25Bは、その内周側に段付軸穴25A1,25B1を有し、この段付軸穴25A1,25B1は、レギュレータケーシング22の軸方向に延びる段付穴として形成されている。段付軸穴25A1,25B1は、その大径部側が側板24A,24Bの外側でパイロット筒体25A,25Bの外部に開口し、小径部側がケース本体23の筒体取付穴23A,23B内でスリーブ摺動穴23Cと連通する。段付軸穴25A1,25B1の大径部側は、後述の閉塞プラグ31A,31Bにより閉塞されている。段付軸穴25A1,25B1の小径部側は、後述するスプール28の受圧部28A,28Bにより閉塞されている。
左,右のパイロット筒体25A,25Bには、その径方向に延びてケース本体23のパイロットポート23G,23Hと連通するポート穴25A2,25B2が形成されている。該ポート穴25A2,25B2は、段付軸穴25A1,25B1の小径部側または大径部側に対してパイロットポート23G,23Hを連通させ、後述のパイロット管路50A,50Bからパイロット油室32A,32Bにパイロット圧油を流通させる。
制御スリーブ27は、レギュレータケーシング22(ケース本体23)のスリーブ摺動穴23C内に変位可能に挿嵌して設けられている。該制御スリーブ27は、円筒形の筒体として形成され、その内周側がスプール摺動穴27Aとなっている。制御スリーブ27は、その径方向に穿設され軸方向で互いに離間した3組の油孔27B,27C,27Dを有し、各油孔27B,27C,27Dは、スプール摺動穴27Aの周囲を放射状に延びて形成されている。
これらの油孔27B,27C,27Dのうち、その中間(油孔27C,27Dの間)に位置する油孔27Bは、ケース本体23のポンプポート23Dに常時連通し、左,右一対のアクチュエータポート23E,23Fからは離隔(遮断)されている。図3中で最も左側に位置する油孔27Cは、ケース本体23のアクチュエータポート23Eに常時連通し、ポンプポート23Dおよびアクチュエータポート23Fからは離隔されている。最も右側に位置する油孔27Dは、ケース本体23のアクチュエータポート23Fに常時連通し、ポンプポート23Dおよびアクチュエータポート23Eからは離隔されている。
レギュレータ21のスプール28は、軸方向の両端側がパイロット圧の受圧部28A,28Bとなっている。これらの受圧部28A,28Bは、レギュレータケーシング22(パイロット筒体25A,25B)の段付軸穴25A1,25B1内に小径部側から摺動変位可能に挿入されている。この状態で、受圧部28A,28Bは、後述のパイロット管路50A,50Bからパイロット筒体25A,25Bに供給される傾転制御用のパイロット圧を受圧し、このパイロット圧に従って、スプール28はレギュレータケーシング22(ケース本体23)の軸方向に摺動変位される。
スプール28の長さ方向(軸方向)中間部位は、制御スリーブ27のスプール摺動穴27A内に相対変位可能に挿嵌されている。スプール28の外周側には、前記傾転制御圧をサーボピストン18に給排するためのランド28C,28Dが形成されている。これらのランド28C,28Dは、制御スリーブ27の油孔27C,27Dに対応する位置に配置され、そのランド幅は油孔27C,27Dの孔径とほぼ等しく形成されている。
このため、例えば図3、図4に示すように、スプール28が中立位置にあるときには、制御スリーブ27の油孔27C,27Dが、スプール28のランド28C,28Dにより内側のスプール摺動穴27Aに対して遮断される。一方、スプール摺動穴27A内でスプール28が中立位置から軸方向に相対変位したときには(例えば、図11参照)、制御スリーブ27の油孔27C,27Dが、スプール28のランド28C,28Dを介してスプール摺動穴27Aと連通される。これにより、スプール28は、制御スリーブ27を介してポンプポート23Dをアクチュエータポート23Eまたは23Fに対して連通,遮断するものである。
制御スリーブ27は、その中立位置が後述のピン位置調整機構41により調整される。このため、制御スリーブ27が中立位置にあるときには、油圧ポンプ1の斜板11を傾転角零の中立位置に配置することができる。斜板11が傾転角零の中立位置にあるときには、油圧ポンプ1の回転軸5は無負荷で回転され、圧油の吐出量は零となる。即ち、斜板11が傾転角零の中立位置にあるときには、ポンプとして作動されることはない。しかし、傾転アクチュエータ16により、斜板11が傾転角零の中立位置から矢示A方向または矢示B方向に傾転されたときには、例えば図10中の矢示A1,B1方向のいずれかに油圧ポンプ1から主管路55A,55Bに圧油が吐出される。
図4に示すように、スプール28には、受圧部28A,28Bの基端側(軸方向内側部位)にばね受用の環状突起28E,28Fが形成されている。これらの環状突起28E,28Fのうち、一方(左側)の環状突起28Eは、ランド28Cから受圧部28A側(軸方向外側)へと所定寸法離間した位置に配置され、他方(右側)の環状突起28Fは、ランド28Dから受圧部28B側(軸方向外側)へと所定寸法(大きく)離間した位置に配置されている。これらの環状突起28E,28Fは、ばね受板29A,29Bの内周側に接触,離間可能に当接し、ばね受板29A,29Bをスプール28(受圧部28A,28B)の外周側で抜止め状態に保持する。
なお、スプール28は、その軸方向両側に受圧部28A,28Bを一体に形成してもよく、別部材として形成してもよい。例えば受圧部28A,28Bをスプール28の主要部とは別部材として形成する場合は、環状突起28E,28Fの位置で、受圧部28A,28Bをスプール28の軸方向中間部分(例えば、ランド28C,28D等が形成された部分)から分離,当接可能となるように形成してもよい。
スプリング30A,30Bは、スプール28が図3および図4に示す中立位置にセンタリングされるように、ばね受板29A,29Bおよび環状突起28E,28Fを介してスプール28を常時付勢する中立位置付勢ばねである。これらのスプリング30A,30Bは、パイロット筒体25A,25Bとばね受板29A,29Bとの間にプリセット状態で配設され、スプール28を中立位置に向けて付勢する。
スプリング30A,30Bの付勢力は、左,右のパイロット筒体25A,25Bをケース本体23の筒体取付穴23A,23B内で軸方向に移動させること(具体的には、左,右の側板24A,24Bに対するパイロット筒体25A,25Bの螺合位置を変えること)により調整される。レギュレータ21は、後述する左,右のパイロット油室32A,32Bが互いに等しい圧力(例えば、図3に示すようにパイロット管路50A,50B内が共にタンク圧)状態のときに、スプール28が中立位置にセンタリングされるように、スプリング30A,30Bの付勢力をスプール28に作用させる。
閉塞プラグ31A,31Bは、左,右のパイロット筒体25A,25Bの軸方向外側端部(突出端)側に螺合して取付けられている。閉塞プラグ31A,31Bは、段付軸穴25A1,25B1の大径部側を外側から閉塞し、スプール28の受圧部28A,28Bとの間に左,右のパイロット油室32A,32Bを形成している。即ち、左,右のパイロット油室32A,32Bは、パイロット筒体25A,25Bの段付軸穴25A1,25B1内に位置して閉塞プラグ31A,31Bとスプール28の受圧部28A,28Bとの間に画成されている。
パイロット油室32A,32B内には、後述のパイロット管路50A,50Bからパイロットポート23G,23H、ポート穴25A2,25B2を介してパイロット圧が給排される。スプール28の受圧部28A,28Bは、パイロット油室32A,32B内のパイロット圧を受圧し、パイロット油室32A,32B間の圧力差により、スプール28は、前記スプリング30A,30Bの付勢力に抗してレギュレータケーシング22内を軸方向に摺動変位する。
左,右の閉塞プラグ31A,31Bは、パイロット筒体25A,25Bの段付軸穴25A1,25B1に対する螺合位置を必要に応じて変えることができる。スプール28は、レギュレータケーシング22内を軸方向に摺動変位し、受圧部28A,28Bの先端側(軸方向外側端部)が閉塞プラグ31A,31Bに当接した段階でストロークエンドに達する。このため、パイロット筒体25A,25Bに対する閉塞プラグ31A,31Bの螺合位置を変えることにより、スプール28のストロークエンドとなる位置を可変に調整することができ、斜板11の矢示A,B方向における最大傾転位置を調整することが可能となる。
換言すると、レギュレータケーシング22には、スプール28を軸方向にストロークエンドまで変位させるときの最大移動量を可変に調整するため、ケース本体23の軸方向(長さ方向)両側でパイロット筒体25A,25Bに対してそれぞれ螺合した閉塞プラグ31A,31Bからなる最大移動量調整手段が設けられている。
ロックナット33A,33Bは、パイロット筒体25A,25Bから軸方向外側に突出する閉塞プラグ31A,31Bの突出端側に螺合して設けられている。閉塞プラグ31A,31Bは、パイロット筒体25A,25Bに対する螺合位置を調整した状態で、ロックナット33A,33Bによりパイロット筒体25A,25Bに対して緩止め状態で固定される。
フィードバックリンク34はレギュレータ21の制御スリーブ27を、サーボピストン18の動きに追従してフィードバック制御するリンク部材である。該フィードバックリンク34は、図1〜図3に示すようにレギュレータ21の制御スリーブ27とサーボピストン18との間に設けられている。フィードバックリンク34は、斜板11の傾転動作に追従させてレギュレータ21の制御スリーブ27をフィードバック制御するように、スプール28に対して制御スリーブ27を軸方向に相対変位させる。
フィードバックリンク34は、例えば図1に示す如く、その長さ方向一側が係合ピン35を介して制御スリーブ27の外周側に揺動可能に連結されている。フィードバックリンク34の先端側(長さ方向他側)には、サーボピストン18のリンク取付溝18C内に向けて突出し当該リンク取付溝18Cに係合する係合突起34Aが設けられている。フィードバックリンク34の長さ方向中間部には、支点ピン36がリンク板厚方向に貫通して設けられ、フィードバックリンク34は支点ピン36を回動中心として、図10、図11に示す如く左,右方向に揺動される。支点ピン36は、フィードバックリンク34の長さ方向中間部に止め輪(図示せず)等を介して抜止め状態で連結されている。
ここで、支点ピン36は、図4および図5に示すように、レギュレータケーシング22(ケース本体23)にピン位置調整機構41を介して、レギュレータケーシング22の軸方向に変位可能に配設されている。このため、レギュレータケーシング22には、例えばケース本体23と側板24Bとの間に位置して後述の調整スライダ42を変位可能に収容する収容穴37が設けられている。また、例えば右側の側板24Bには、後述の変位調整部材44が回動可能に挿嵌される第1のアクセス孔38と、後述の固定部材45が回動可能に挿嵌される第2のアクセス孔39とが設けられている。ケース本体23には、収容穴37を挟んで第1のアクセス孔38とは反対側で同軸となる位置に有底の軸支穴40が設けられ、この軸支穴40には、変位調整部材44の先端側(後述の円形部44D)が回動可能に挿入されている。
ピン位置調整機構41は、支点ピン36の位置をレギュレータケーシング22(ケース本体23)の軸方向で可変に調整するもので、傾転アクチュエータ16のサーボピストン18と制御スリーブ27との間に位置するフィードバックリンク34の途中部位に支点ピン36を介して連結されている。これにより、ピン位置調整機構41は、制御スリーブ27の位置をスプール28との相対位置として調整するものである。
ピン位置調整機構41は、基端側がケース本体23の収容穴37に変位可能に設けられ、先端側がフィードバックリンク34の途中部位に支点ピン36を介して連結された調整スライダ42と、ケース本体23の収容穴37と調整スライダ42との間に設けられ、ケース本体23の収容穴37(即ち、第1のアクセス孔38)の外部から回動操作されることにより調整スライダ42を収容穴37内でケース本体23の軸方向(図4中の矢示E方向)に変位させる変位調整部材44と、ケース本体23の収容穴37と調整スライダ42との間に設けられ、調整スライダ42を収容穴37内の任意の位置で収容穴37(即ち、第2のアクセス孔39)の外部から固定する固定部材45とを含んで構成されている。
図5〜図7に示す如く、調整スライダ42は、L字状の部材として形成され、その基端側には、例えば二股状をなす腕部42A,42Bが設けられている。これらの腕部42A,42Bの間は、例えば逆U字状をなして細長く延びるスリット43となっている。調整スライダ42の腕部42A,42Bは、スリット43により互いに接近,離間可能に弾性変形することができる。このうち、一方の腕部42Aには、変位調整部材44の雄ねじ部44Aが螺合する変位調整用ねじ穴42A1と、該変位調整用ねじ穴42A1から径方向(例えば、スリット43の長さ方向であり、支点ピン36の軸方向)に離間した位置で、固定部材45の雄ねじ部45Aが螺合する固定用ねじ穴42A2とが形成されている。
他方の腕部42Bには、同様に変位調整部材44の雄ねじ部44Aが螺合する変位調整用ねじ穴42B1と、該変位調整用ねじ穴42B1から径方向(例えば、スリット43の長さ方向)に離間し固定用ねじ穴42A2と同軸となる位置で、固定部材45の雄ねじ部45Aが挿通される固定用挿通穴42B2とが形成されている。固定用挿通穴42B2は、雄ねじ部45Aよりも僅かに大径に形成されている。
また、調整スライダ42の先端側は、ケース本体23の収容穴37からフィードバックリンク34の途中部位に向けて突出するピン支持部42Cとなり、このピン支持部42Cにはピン穴42C1(図7、図8参照)が形成されている。このピン穴42C1内には支点ピン36が取付けられ、これにより、ピン支持部42Cには支点ピン36を介してフィードバックリンク34が回動可能に連結されている。調整スライダ42は、ケース本体23の収容穴37内に移動可能に設けられている。この場合、調整スライダ42は、収容穴37内で必ずしも滑り接触(摺動変位)する必要はなく、収容穴37の周壁と調整スライダ42との間に隙間があってもよい。しかし、収容穴37内で調整スライダ42を摺動変位させる方が、調整スライダ42の動き(位置調整動作)を安定させることができる。
変位調整部材44は、ケース本体23の収容穴37内を軸方向に延びて調整スライダ42の変位調整用ねじ穴42A1,42B1に螺合された雄ねじ部44Aと、該雄ねじ部44Aよりも小径に形成され側板24Bの第1のアクセス孔38内に回動可能に挿嵌された円形の支持軸部44Bと、該支持軸部44Bを回転操作するための操作部44Cとを含んだ雄ねじ部材として形成されている。変位調整部材44のうち、雄ねじ部44Aを挟んで支持軸部44Bとは反対側の端部は円形部44Dとなり、この円形部44Dは、収容穴37に臨んだケース本体23の軸支穴40に回動可能に支承されている。
固定部材45は、側板24Bの第2のアクセス孔39からケース本体23の収容穴37内に挿入され、調整スライダ42の固定用ねじ穴42A2に螺合する雄ねじ部45Aと、該雄ねじ部45Aよりも大径に形成され第2のアクセス孔39内に挿嵌された円形軸部45Bとを含んだ雄ねじ部材として形成されている。円形軸部45Bの端面(側板24Bの外側に位置する端面)には、固定部材45を回動操作する回動操作部としての凹部45Cが形成されている。
ピン位置調整機構41は、支点ピン36の位置をレギュレータケーシング22(ケース本体23)の軸方向で矢示E方向に調整するときに、固定部材45が図6に示すように緩み方向に回転される。この状態で、変位調整部材44を操作部44Cを介して回動操作すると、調整スライダ42の変位調整用ねじ穴42A1,42B1に対する雄ねじ部44Aの螺合位置が変わり、調整スライダ42は、支点ピン36と一緒にレギュレータケーシング22(ケース本体23)の軸方向で矢示E方向に位置調整される。このとき、固定部材45は第2のアクセス孔39に沿って軸方向に移動可能であり、調整スライダ42と一緒に移動される。
このような調整作業が終了したときには、固定部材45を図5に示すように、雄ねじ部45Aが調整スライダ42の固定用ねじ穴42A2に螺合する位置まで締付け方向に回転させる。このため、調整スライダ42の腕部42A,42Bは、スリット43を介して互いに接近するように弾性変形され、変位調整部材44の雄ねじ部44Aは、変位調整用ねじ穴42A1,42B1に対して緩止め(即ち両者の螺合位置が固定)される。これにより、調整スライダ42は、ケース本体23の収容穴37内で固定(位置決め)され、支点ピン36の位置をレギュレータケーシング22(ケース本体23)の軸方向で調整した状態に保持することができる。
ここで、レギュレータケーシング22に対する調整スライダ42(即ち、支点ピン36)の変位は、フィードバックリンク34および係合ピン35を介して制御スリーブ27に伝えられる。これにより、制御スリーブ27は、スプール28に対する相対位置が調整される。そして、スプール28の中立位置では、制御スリーブ27の油孔27C,27Dをスプール28のランド28C,28Dによって内側から遮断した状態(図4参照)に保つことができる。
図3に示すパイロットポンプ46は、作動油タンク47内に貯留された作動油を吸込みつつ、これを傾転制御圧として供給管路48内へと吐出する。供給管路48は、その先端側がレギュレータケーシング22(ケース本体23)のポンプポート23Dに接続され、制御スリーブ27内のスプール28に対して前記傾転制御圧を供給する。
供給管路48の基端側には、例えば2つの制御圧管路48A,48Bが分岐して設けられている。これらの制御圧管路48A,48Bは、2つの傾転操作弁49A,49Bを介して一対のパイロット管路50A,50Bに接続される。一対のパイロット管路50A,50Bは、その先端側がケース本体23のパイロットポート23G,23Hおよびパイロット筒体25A,25Bのポート穴25A2,25B2に接続されている。
傾転操作弁49A,49Bは、例えば電磁比例弁により構成され、常時は戻し位置(f)でパイロット管路50A,50Bを作動油タンク47にタンク管路47A,47Bを介して接続している。傾転操作弁49A,49Bは、オペレータの手動操作等によって戻し位置(f)から切換位置(g)へと切換えられる。このとき、傾転操作弁49A,49Bは、電流値に比例して切換操作されるため、パイロット管路50A,50Bには、制御圧管路48A,48Bからのパイロット圧が可変に圧力制御(調整)された状態で供給される。
傾転制御圧の給排管路51A,51Bは、レギュレータケーシング22(ケース本体23)と傾転アクチュエータ16との間に設けられている。給排管路51Aは、ケース本体23のアクチュエータポート23Eをシリンダ穴17A内の液圧室19Aに接続している。給排管路51Bは、ケース本体23のアクチュエータポート23Fをシリンダ穴17B内の液圧室19Bに接続している。
図10に示すエンジン52は建設機械の原動機を構成している。該エンジン52は、油圧ポンプ1の回転軸5を回転駆動すると共に、チャージポンプ53およびパイロットポンプ46を回転駆動する。作動油タンク47内に貯留された作動油は、チャージポンプ53により吸込まれ、チャージ用管路54内へと圧油となって吐出される。油圧ポンプ1の給排通路15A,15Bは、一対の主管路55A,55Bを介して油圧モータ56に接続されている。
この油圧モータ56は、例えば建設機械の走行用油圧モータを構成している。油圧モータ56は、油圧ポンプ1から図10中の矢示A1方向に圧油が供給されるときに、例えば車両(建設機械)を前進させる方向に回転駆動される。一方、油圧ポンプ1から図10中の矢示B1方向に圧油が供給されるときには、油圧モータ56が車両を後進させる方向に回転駆動される。
一対の主管路55A,55B間には、一対のチェック弁57A,57Bと一対のリリーフ弁58A,58Bとが互いに並列に接続して設けられている。チャージ用管路54の先端側(下流側)には、チャージ用管路54内の圧力を予め決められた設定圧以下に抑えるチャージリリーフ弁59が設けられている。また、チャージ用管路54は、チャージリリーフ弁59よりも上流側となる位置に分岐管路60を有している。
一対のチェック弁57A,57Bと一対のリリーフ弁58A,58Bとは、分岐管路60(チャージ用管路54)に対して対称(並列)となる関係に配置されている。チェック弁57A,57Bは、分岐管路60から主管路55A,55Bに向けて圧油が流通するのを許し、逆向きの流れを阻止する。このため、主管路55Aまたは55B内の圧力が、例えばチャージリリーフ弁59の設定圧よりも低くなるとチェック弁57Aまたは57Bは開弁し、チャージポンプ53からチャージ用管路54、分岐管路60を介して供給される圧油を、該当する主管路55Aまたは55Bに向けて補給する。従って、主管路55A,55B内が圧油の漏洩等により作動油不足(負圧傾向)となるのは防止される。
リリーフ弁58A,58Bは、リリーフ設定圧を越える過剰圧が主管路55A,55B内に発生すると開弁し、このときの過剰圧を分岐管路60側にリリーフさせる。チャージリリーフ弁59は、リリーフ弁58A,58Bよりもリリーフ設定圧が低いため、リリーフ弁58A,58Bからの過剰圧は、チャージリリーフ弁59を介して作動油タンク47側にリリーフされる。
本実施の形態による可変容量型斜板式の油圧ポンプ1は、上述の如き構成を有するもので、次に、その容量可変部(斜板11)を傾転角零の中立位置から一方向と他方向の両方向に傾転駆動する場合のレギュレータ21による容量制御動作について説明する。
まず、油圧ポンプ1の斜板11を、傾転角零の中立位置から図2、図3、図10中の矢示A方向に傾転駆動する場合には、傾転操作弁49A,49Bのうち、一方の傾転操作弁49Aを図3中に示す戻し位置(f)から切換位置(g)に切換え、他方の傾転操作弁49Bは、戻し位置(f)に保持した状態とする。
これにより、パイロットポンプ46による制御圧管路48Aを介したパイロット圧は、傾転操作弁49Aからパイロット管路50Aを介してレギュレータ21のパイロット油室32Aに供給される。このとき、他方の傾転操作弁49Bは戻し位置(f)にあるため、パイロット管路50B内はタンク圧に保たれる。従って、レギュレータ21のパイロット油室32Bも、タンク圧の状態に保たれる。
このため、レギュレータ21のスプール28は、受圧部28Aがパイロット油室32A内のパイロット圧を受圧し、制御スリーブ27のスプール摺動穴27Aに沿って図11中の矢示C方向に変位される。図11中に示す如く、矢示C方向に変位したスプール28は、2つのランド28C,28D間で制御スリーブ27の油孔27Bをスプール摺動穴27Aを介して油孔27Dに連通させる。これにより、レギュレータケーシング22のポンプポート23Dは、制御スリーブ27およびスプール28を介してアクチュエータポート23Fに連通される。
このとき、パイロットポンプ46から供給管路48を介してポンプポート23Dに供給されている傾転制御圧は、制御スリーブ27内のスプール28、アクチュエータポート23Fおよび給排管路51Bを介して傾転アクチュエータ16のシリンダ穴17B(即ち、液圧室19B)内へと供給される。これにより、レギュレータ21は、傾転アクチュエータ16に対する傾転制御圧の給排を下記のように行うことができる。
即ち、傾転アクチュエータ16のサーボピストン18は、液圧室19B内に供給される圧油(傾転制御圧)により図11中の矢示A方向に押動される。これに伴い、傾転アクチュエータ16のシリンダ穴17A(即ち、液圧室19A)からは、給排管路51A、レギュレータケーシング22のアクチュエータポート23Eおよび制御スリーブ27の油孔27C等を介してケース本体23のスリーブ摺動穴23C内へと傾転制御圧(圧油)が排出され、これはドレン通路23J(図11中に点線で示す)等を介して開口部3Cを通過し、ポンプのドレン流量として作動油タンク47に戻される。
また、前記サーボピストン18の変位は、フィードバックリンク34を介してレギュレータ21の制御スリーブ27へと伝えられる。即ち、レギュレータ21は、サーボピストン18の動きがフィードバックリンク34を介して伝えられることにより、制御スリーブ27をスプール28と同方向に摺動変位させるようにフィードバック制御される。即ち、制御スリーブ27は、油孔27C,27Dがスプール28のランド28C,28Dにより内側のスプール摺動穴27Aに対して遮断(閉塞)される位置までフィードバック制御される。
このため、パイロット油室32A内のパイロット圧を、このときの圧力状態に保つことにより、レギュレータ21からの傾転アクチュエータ16に対する傾転制御圧の給排を停止することができ、この状態でサーボピストン18を、例えば図11に示す任意な変位位置に保持することができる。これにより、油圧ポンプ1の斜板11を、図2中の矢示A方向に任意角度だけ傾転させた状態に保持することができる。
次に、制御圧管路48Aからのパイロット圧が、さらに上昇するように傾転操作弁49Aを切換位置(g)に切換えると、パイロット管路50Aからレギュレータ21のパイロット油室32Aに供給されるパイロット圧が昇圧される。これによって、レギュレータ21のスプール28は、制御スリーブ27のスプール摺動穴27Aに沿って図11中の矢示C方向に大きく変位し、例えば一方向のストロークエンドに達する。スプール28が矢示C方向にストロークエンドまで摺動変位すると、スプール28(受圧部28B)の先端側が閉塞プラグ31Bに当接し、これ以上の変位は規制される。
また、傾転アクチュエータ16のサーボピストン18は、図11中の矢示A方向に大きく変位し、傾転アクチュエータ16のシリンダ穴17A側で蓋板20Aに当接(または近接)したときにこれ以上の変位が規制される。即ち、レギュレータ21は、サーボピストン18の動きがフィードバックリンク34を介して伝えられるので、制御スリーブ27がスプール28と同方向(図11中の矢示C方向)に摺動変位し、油孔27C,27Dがスプール28のランド28C,28Dで遮断される。
このため、レギュレータ21からの傾転アクチュエータ16に対する傾転制御圧の給排が停止され、傾転アクチュエータ16のサーボピストン18を、例えば矢示A方向の最大変位位置に保持することができる。これにより、油圧ポンプ1の斜板11を、図2中の矢示A方向に最大角度まで傾転駆動した状態に保持することができる。
このように、油圧ポンプ1の斜板11を傾転角零の中立位置から矢示A方向に傾転駆動するときには、図10に示すエンジン52により回転される油圧ポンプ1から一対の主管路55A,55B内へと矢示A1方向に圧油を供給することができる。このため、走行用の油圧モータ56は、油圧ポンプ1から矢示A1方向に給排される圧油によって、例えば車両(建設機械)を前進させる方向に回転駆動でき、車両の走行速度を、油圧ポンプ1の吐出流量(即ち、斜板11の傾転角)に応じて可変に制御することができる。
一方、油圧ポンプ1の斜板11を、傾転角零の中立位置から図2、図10中の矢示B方向に傾転駆動する場合には、一方の傾転操作弁49Aを戻し位置(f)に保持した状態で、他方の傾転操作弁49Bを図3中の戻し位置(f)から切換位置(g)に切換える。これにより、レギュレータ21のパイロット油室32Bにパイロット圧を供給することができ、パイロット油室32Aはタンク圧の状態に保たれる。
このため、レギュレータ21のスプール28は、受圧部28Bがパイロット油室32B内のパイロット圧を受圧し、制御スリーブ27のスプール摺動穴27Aに沿って矢示D方向に変位される。矢示D方向に変位したスプール28は、2つのランド28C,28D間で制御スリーブ27の油孔27Bをスプール摺動穴27Aを介して油孔27Cに連通させ、レギュレータケーシング22のポンプポート23Dは、制御スリーブ27およびスプール28を介してアクチュエータポート23Eに連通される。
これにより、レギュレータ21から傾転アクチュエータ16に対して傾転制御圧を給排することができ、サーボピストン18を圧油(傾転制御圧)により図3中の矢示B方向に駆動することができる。このとき、サーボピストン18の変位は、フィードバックリンク34を介してレギュレータ21の制御スリーブ27へと伝えられ、制御スリーブ27は、油孔27C,27Dがスプール28のランド28C,28Dによりスプール摺動穴27Aに対して遮断される位置までフィードバック制御される。
このため、パイロット油室32B内のパイロット圧を、このときの圧力状態に保つことにより、レギュレータ21からの傾転アクチュエータ16に対する傾転制御圧の給排を停止することができ、この状態でサーボピストン18を、矢示B方向への任意な変位位置に保持し、油圧ポンプ1の斜板11を矢示B方向に任意角度だけ傾転させた状態に保持することができる。
次に、パイロット圧がさらに上昇するように傾転操作弁49Bを切換位置(g)に切換えると、パイロット管路50Bからレギュレータ21のパイロット油室32Bに供給されるパイロット圧が昇圧される。これによって、レギュレータ21のスプール28は、制御スリーブ27のスプール摺動穴27Aに沿って矢示D方向に大きく変位し、ストロークエンドまで摺動変位すると、スプール28(受圧部28A)の先端側が閉塞プラグ31Aに当接し、これ以上の変位は規制される。
このとき、傾転アクチュエータ16のサーボピストン18は、矢示B方向に大きく変位し、傾転アクチュエータ16のシリンダ穴17B側で蓋板20Bに当接(または近接)したときにこれ以上の変位が規制される。即ち、レギュレータ21は、サーボピストン18の動きがフィードバックリンク34を介して伝えられるので、制御スリーブ27がスプール28と同方向(図3、図4中の矢示D方向)に摺動変位し、油孔27C,27Dがスプール28のランド28C,28Dで遮断される。
このため、レギュレータ21からの傾転アクチュエータ16に対する傾転制御圧の給排が停止され、傾転アクチュエータ16のサーボピストン18を、例えば矢示B方向の最大変位位置に保持することができる。これにより、油圧ポンプ1の斜板11を、図2中の矢示B方向に最大角度まで傾転駆動した状態に保持することができる。
このように、油圧ポンプ1の斜板11を傾転角零の中立位置から矢示B方向に傾転駆動するときには、図10に示すエンジン52により回転される油圧ポンプ1から一対の主管路55A,55B内へと矢示B1方向に圧油を供給することができる。このため、走行用の油圧モータ56は、油圧ポンプ1から矢示B1方向に給排される圧油によって、例えば車両(建設機械)を後進させる方向に回転駆動でき、車両の走行速度を、油圧ポンプ1の吐出流量(即ち、斜板11の傾転角)に応じて可変に制御することができる。
ところで、油圧ポンプ1に代表される可変容量型液圧回転機は、その容量可変部(斜板11)を傾転角零の中立位置から一方向と他方向の両方向に傾転駆動可能な両傾転タイプにおいて、斜板11を傾転角零の中立位置(ニュートラル位置)に保持する調整作業を容易に行い得るようにし、メンテナンス時の作業性を向上できるようにすることが望まれている。
そこで、第1の実施の形態で採用した両傾転タイプの油圧ポンプ1のレギュレータ21は、例えばレギュレータケーシング22にピン位置調整機構41を設けている。このピン位置調整機構41は、傾転アクチュエータ16のサーボピストン18と制御スリーブ27との間に位置するフィードバックリンク34の途中部位)に支点ピン36を介して連結され、支点ピン36の位置をレギュレータケーシング22の軸方向で変位可能に調整する構成としている。
ここで、ピン位置調整機構41は、基端側がケース本体23と側板24Bとの間の収容穴37に変位可能に設けられ先端側がフィードバックリンク34の途中部位に支点ピン36を介して連結された調整スライダ42と、収容穴37と調整スライダ42との間に側板24Bを介して設けられ、収容穴37(即ち、側板24Bの第1のアクセス孔38)の外部から回動操作されることにより調整スライダ42を収容穴37内でケース本体23の軸方向(図4中の矢示E方向)に変位させる変位調整部材44と、収容穴37と調整スライダ42との間に側板24Bを介して設けられ、調整スライダ42を収容穴37内の任意の位置で収容穴37(即ち、第2のアクセス孔39)の外部から固定する固定部材45とを含んで構成されている。
液圧回転機(油圧ポンプ1)の組立時において、例えば図4中に一点鎖線で示すように、フィードバックリンク34が角度γだけ傾いていた場合(即ち、レギュレータ21の中心と油圧ポンプ1のケーシング2の中心がずれて取付けられた場合)に、このままの状態で外部のパイロットポンプ46から圧油を供給すると、傾転操作弁49A,49Bを消磁して戻し位置(f)に戻しても、油圧ポンプ1の斜板11が中立位置から傾いてしまうことがある。
このような場合に、ピン位置調整機構41は、固定部材45を図6に示すように緩み方向に回転した状態で、変位調整部材44を操作部44Cを介して回動操作すると、調整スライダ42の変位調整用ねじ穴42A1,42B1に対する雄ねじ部44Aの螺合位置が変わる。これにより、調整スライダ42は、支点ピン36と一緒にレギュレータケーシング22(ケース本体23)の軸方向で矢示E方向に位置調整される。このため、フィードバックリンク34が前述の如く角度γだけ傾いた状態を補正することができる。
このとき、レギュレータケーシング22に対する調整スライダ42(即ち、支点ピン36)の矢示E方向の変位は、フィードバックリンク34および係合ピン35を介して制御スリーブ27に伝えられる。これによって、制御スリーブ27は、スプール28に対する相対位置が調整される。そして、傾転アクチュエータ16のサーボピストン18は、液圧室19A,19Bから作用する力が平衡となる位置に移動し、サーボピストン18の移動に伴って斜板11が傾転される。
この間、前述の如きピン位置調整機構41の操作は、メカニカルフィードバックレギュレータの指令ソレノイド(即ち、傾転操作弁49A,49B)を消磁して戻し位置(f)に戻した状態で行うことにより、斜板11の傾転角が零度の位置(ニュートラル位置)となるように調整することができる。
次に、ピン位置調整機構41は、支点ピン36の位置を矢示E方向に調整した後に、固定部材45を図5に示すように、雄ねじ部45Aが調整スライダ42の固定用ねじ穴42A2に螺合する位置まで締付け方向に回転させる。これにより、調整スライダ42の腕部42A,42Bは、スリット43を介して互いに接近するように弾性変形され、変位調整部材44の雄ねじ部44Aは、変位調整用ねじ穴42A1,42B1に対して緩止め状態で固定される。この結果、調整スライダ42は、ケース本体23の収容穴37内で位置決めされ、支点ピン36の位置をレギュレータケーシング22の軸方向で調整した状態に保持することができる。
次に、斜板11の中間傾転位置において行う測定点の調整について説明する。即ち、レギュレータ21のスプール28は、スプリング30A,30Bの付勢力に抗してスプール摺動穴27A内を軸方向に変位することにより、レギュレータケーシング22から給排管路51A,51Bを介して傾転アクチュエータ16のシリンダ穴17A,17B(即ち、液圧室19A,19B)内へと供給される2次圧(所謂減圧弁の2次圧)が可変に制御される。
このときの2次圧を決めるスプリング30A,30Bの付勢力は、左,右のパイロット筒体25A,25B間でばね受板29A,29Bを介してスプール28の環状突起28E,28Fに伝えられる。このため、左,右のロックナット26A,26Bを緩めた状態で、ケース本体23の左,右の筒体取付穴23A,23Bおよび側板24A,24Bに対し左,右のパイロット筒体25A,25Bを回転させることにより、スプリング30A,30Bの付勢力を調整することができる。なお、パイロット筒体25A,25Bの軸方向外側の端部には、パイロット筒体25A,25Bを回転操作するための凹溝(図示せず)等が設けられている。
スプリング30A,30Bの付勢力を弱める方向にパイロット筒体25A,25Bを回転させると、スプール28は調整前よりも進む位置(摺動変位量が大きくなる方向)に移動し、制御スリーブ27とスプール28とにより成される開口面積に変化が生じ、サーボピストン18は調整前よりも進んだ位置へ移動する。サーボピストン18とフィードバックリンク34を介して制御スリーブ27もスプール28の位置に追従して移動するようになる。この結果、サーボピストン18に直結している斜板11の傾転角は、調整前よりも傾きが大きくなるように調整される。
逆に、スプリング30A,30Bの付勢力を強める方向にパイロット筒体25A,25Bを回転させると、スプール28は調整前よりも戻された位置(摺動変位量が小さくなる方向)に移動し、サーボピストン18と制御スリーブ27は、スプール28の位置に追従するように動き、その結果、サーボピストン18と直結している斜板11の傾転角は、調整前よりも傾きが小さくなるように調整される。このように測定点において、左,右のパイロット筒体25A,25Bを回してスプリング30A,30Bの付勢力を調整することで、斜板角の調整が適宜に行われる。
そして、このような調整作業後は、左,右のロックナット26A,26Bを締付け方向に回転させ、左,右の側板24A,24Bに対するパイロット筒体25A,25Bの螺合位置を、ロックナット26A,26Bにより緩止めして固定することができる。なお、このレギュレータ21においては、スプール28の軸方向両側に左,右のスプリング30A,30Bを対向させて2本配置する構成としている。このため、左,右のパイロット筒体25A,25Bを個別に回して、スプリング30A,30Bの付勢力を別々に調整することができ、これにより、油圧ポンプ1を非対称特性の閉回路ポンプとすることが可能になる。
次に、斜板11の最大傾転角を調整する作業について説明する。即ち、スプール28のストロークエンドは、左,右の閉塞プラグ31A,31Bをパイロット筒体25A,25Bの外側で回転させることにより調整される。この場合、左,右のロックナット33A,33Bを予め緩め方向に回転させることにより、左,右の閉塞プラグ31A,31Bをパイロット筒体25A,25Bの段付軸穴25A1,25B1に対して回すことで軸方向に進退させることができる。
指令ソレノイド(即ち、傾転操作弁49A,49B)を切換位置(g)に切換えた状態で、斜板11が最大斜板角となるサーボピストン18の位置は、スプール28が軸方向一側または他側に大きく摺動変位して受圧部28A,28Bの先端側が閉塞プラグ31A,31Bに当接した段階で、スプール28が軸方向一側と他側とでそれぞれストロークエンドとなり、このときに斜板11の最大傾転角(正方向と逆方向の最大傾転角)が決まる。
閉塞プラグ31Aまたは31Bを段付軸穴25A1,25B1に対し回転させてスプール28の受圧部28Aまたは28Bを押すと、ストロークエンド位置にあるスプール28は、調整前よりも戻された位置へ直接的に移動する。これにより、サーボピストン18は調整前よりも戻された位置へ移動し、斜板11の最大傾転角は調整前よりも傾きが小さくなる方向に調整される。
逆に、閉塞プラグ31Aまたは31Bを段付軸穴25A1,25B1に対し戻し方向に回して受圧部28Aまたは28Bを引くと、ストロークエンド位置にあるスプール28は、調整前よりも進んだ位置へ移動し、斜板11の最大傾転角は、調整前よりも傾きが大きくなる方向に調整される。
このように、閉塞プラグ31A,31Bを段付軸穴25A1,25B1に対し正方向または逆方向に回し、スプール28のストロークエンドで受圧部28A,28Bと閉塞プラグ31A,31Bとが当接(衝突)する位置を調整する。これにより、斜板11の最大斜板角を適正に調整することができる。そして、最大傾転の調整後は、左,右のパイロット筒体25A,25Bの段付軸穴25A1,25B1に対して螺合した閉塞プラグ31A,31Bを、左,右のロックナット33A,33Bにより固定する。
従って、第1の実施の形態による両傾転タイプの油圧ポンプ1のレギュレータ21は、その外殻をなすレギュレータケーシング22に設けたピン位置調整機構41により、調整スライダ42を支点ピン36と一緒にレギュレータケーシング22(ケース本体23)の軸方向で矢示E方向に位置調整できる。この結果、スプール28の中立位置を制御スリーブ27との相対位置として調整することができ、このときに、制御スリーブ27の油孔27C,27Dがスプール28のランド28C,28Dによって確実に遮断された状態に保持することができる。
このような、ピン位置調整機構41を用いたスプール28の中立位置調整作業は、油圧ポンプ1に代表される可変容量型液圧回転機の出荷時、メンテナンス作業時等に、レギュレータケーシング22側でピン位置調整機構41を手動等で操作することによって行うことができ、両傾転タイプの斜板11を傾転角零の中立位置(ニュートラル位置)に保持する調整作業を容易に、かつ簡略化して行うことができる。
第1の実施の形態による油圧ポンプ1のレギュレータ21は、傾転アクチュエータ16のサーボピストン18に傾転制御圧を給排するためスプール28をレギュレータケーシング22内で軸方向に変位させる電磁式の傾転操作弁49A,49Bを備えている。この傾転操作弁49A,49Bを消磁して戻し位置(f)とし、前記スプール28の変位を停止させた状態で、ピン位置調整機構41は、支点ピン36の位置をレギュレータケーシング22の軸方向で変位可能に調整する。これにより、フィードバックリンク34は、制御スリーブ27をスプール28に対して相対移動させ、斜板11等の容量可変部が傾転角零となる中立位置の調整を行う構成としている。
また、レギュレータ21のレギュレータケーシング22は、ケース本体23の軸方向の両側に油圧パイロット部としてのパイロット筒体25A,25Bを有しており、左,右の閉塞プラグ31A,31B(最大移動量調整手段)は、パイロット筒体25A,25Bに螺合して取付けられている。スプール28は、レギュレータケーシング22内を軸方向(矢示C,D方向)に大きく摺動変位したときに、受圧部28A,28Bの先端側が閉塞プラグ31A,31Bに当接した段階で、ストロークエンドに達する。このため、パイロット筒体25A,25Bに対する閉塞プラグ31A,31Bの螺合位置を変えることにより、スプール28のストロークエンドとなる位置を可変に調整することができ、斜板11の矢示A,B方向における最大傾転位置を調整することが可能となる。
次に、図12および図13は本発明の第2の実施の形態を示している。本実施の形態では、前述した第1の実施の形態と同一の構成要素に同一の符号を付し、その説明を省略するものとする。然るに、第2の実施の形態の特徴は、支点ピン36の位置を矢示E方向で調整するピン位置調整機構71が、ピンガイド73、回動調整部材(偏心調整ロッド74)および固定部材(押えプレート75、座金76およびナット77)により構成されている。
ここで、レギュレータケーシング22のケース本体23には、フィードバックリンク34用の挿通穴70が設けられている。この挿通穴70内には、フィードバックリンク34が係合ピン35と係合突起34A(サーボピストン18のリンク取付溝18C)との間で揺動変位可能に隙間をもって挿入されている。また、ケース本体23には、挿通穴70に対して垂直な方向に延び、後述の偏心調整ロッド74が回動可能に挿嵌される挿嵌穴72が設けられている。この挿嵌穴72には、挿通穴70とは反対側の端部(開口側)に大径の座面穴部72Aが設けられている。
また、ケース本体23には、フィードバックリンク34の挿通穴70を挟んで挿嵌穴72とは反対側の部位にピンガイド73が設けられ、このピンガイド73は、図12に二点鎖線で示すように、矢示E方向に延びる長孔として形成されている。ピンガイド73は、後述の偏心調整ロッド74と共にピン位置調整機構71を構成し、支点ピン36が矢示E方向で位置調整されるのを補償するガイド溝である。長孔状のピンガイド73は、フィードバックリンク34を挟んで偏心調整ロッド74とは反対側となる位置でケース本体23に設けられ、支点ピン36がレギュレータケーシング22の軸方向に変位するのを許す構成となっている。
偏心調整ロッド74は、ピン位置調整機構71の回動調整部材を構成し、基端側がケース本体23の挿嵌穴72内に回動可能に設けられている。偏心調整ロッド74は、その回動中心から偏心した位置で先端側がフィードバックリンク34の途中部位に支点ピン36を介して連結される。即ち、偏心調整ロッド74には、フィードバックリンク34用の挿通穴70に臨む端面側にU字状の切欠き74A(図12参照)が形成され、この切欠き74Aには、支点ピン36が係合するように挿入されている。切欠き74Aの幅寸法は、支点ピン36の外径寸法にほぼ等しく、切欠き74Aとピンガイド73とは、互いに異なる方向(図12の状態では、互いに直交する方向)に延びている。
偏心調整ロッド74には、切欠き74Aとは軸方向の反対側に大径のテーパ部74Bと、ねじ部74Cと、回転操作部74Dとが同軸上に位置して一体に形成されている。偏心調整ロッド74のテーパ部74Bには、押えプレート75が重合わせて設けられ、ねじ部74Cには、座金76を介してナット77が螺着される。押えプレート75、座金76およびナット77は、ピン位置調整機構71の固定部材を構成し、回動調整部材(偏心調整ロッド74)をレギュレータケーシング22のケース本体23に対して任意の位置で固定する。
押えプレート75には、偏心調整ロッド74のテーパ部74Bに対して相補形状をなすテーパ穴75Aが形成され、このテーパ穴75Aは、偏心調整ロッド74のテーパ部74Bに対してナット77により衝合状態(摩擦接触状態)に締結される。このため、偏心調整ロッド74は、ケース本体23の挿嵌穴72に対して廻止め状態で固定され、これにより、支点ピン36の位置がレギュレータケーシング22の軸方向(矢示E方向)で固定される。偏心調整ロッド74は、ねじ部74Cにナット77が締結されるときに、挿嵌穴72内で切欠き74Aの相対位置が変わらないように、回転操作部74Dを外部から廻止め状態に保持するのがよい。
一方、ナット77を緩め方向に回したときには、偏心調整ロッド74のテーパ部74Bと押えプレート75のテーパ穴75Aとの衝合状態(摩擦接触状態)が解除される。このため、偏心調整ロッド74は、回転操作部74Dを外部から回転させることにより、ケース本体23の挿嵌穴72内で一方向または他方向に回転される。偏心調整ロッド74の回転は、切欠き74Aとピンガイド73とにより案内されて支点ピン36の矢示E方向の変位に変換され、フィードバックリンク34と一緒に支点ピン36をレギュレータケーシング22(ケース本体23)の軸方向で矢示E方向に位置調整することができる。
かくして、このように構成される第2の実施の形態でも、ナット77を緩めた状態で、偏心調整ロッド74を回転操作部74Dを介して適宜に回転させることにより、支点ピン36をレギュレータケーシング22(ケース本体23)の軸方向で矢示E方向に位置調整することができ、前記第1の実施の形態とほぼ同様な効果を得ることができる。
そして、支点ピン36の位置調整が終了したときには、偏心調整ロッド74のねじ部74Cに座金76を介してナット77を締結することにより、偏心調整ロッド74のテーパ部74Bに対して押えプレート75のテーパ穴75Aが強く衝合されて摩擦接触状態となり、テーパ部74Bには、押えプレート75が重合わせて設けられ、支点ピン36の位置をレギュレータケーシング22の軸方向で調整した状態に保持することができる。
なお、前記第2の実施の形態では、偏心調整ロッド74をレギュレータケーシング22に対して任意の位置で固定する固定部材を、押えプレート75、座金76およびナット77により構成する場合を例に挙げて説明した。しかし、本発明はこれに限るものではなく、例えばピン、ねじ等の固定部材を用いて回動調整部材を任意の位置で固定できる構成であればよいものである。
また、前記第1の実施の形態においても、ピン位置調整機構41を図5、図6に示す構成としたものには限られない。例えば、調整スライダ42をレギュレータケーシング22の軸方向に移動させ、任意の位置に固定できる構成であればよく、種々の変更が可能である。
一方、前記第1の実施の形態では、ピン位置調整機構41をレギュレータケーシング22に設ける場合を例に挙げて説明した。しかし、本発明はこれに限るものではなく、例えば油圧ポンプ1のケーシング2等、レギュレータケーシング以外の部材にピン位置調整機構を設ける構成としてしてもよい。この点は、第2の実施の形態についても同様である。
また、前記第1の実施の形態では、レギュレータケーシング22を、ケース本体23と左,右の側板24A,24Bとにより、それぞれ別体に形成する場合を例に挙げて説明した。しかし、本発明はこれに限るものではなく、例えばレギュレータケーシングを単一部材として形成してもよい。この点は、第2の実施の形態についても同様である。
さらに、前記各実施の形態では、可変容量型液圧回転機の傾転制御装置として斜板を中立位置から両方向に傾転可能な構成とした斜板式油圧ポンプに適用した場合を例に挙げて説明した。しかし、本発明はこれに限るものではなく、例えば可変容量型の斜板式油圧モータに適用してもよく、可変容量型の斜軸式油圧ポンプまたは油圧モータに適用してもよいものである。