JP6465871B2 - 電着のための多段階方法 - Google Patents

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Description

本発明の主題は、反応リンスを化成処理後、電着を金属成分について行なう前に使用する、金属成分の防蝕被覆のための多段階方法である。化成処理は、最初に、Zrおよび/またはTi元素を含有する薄い無機層の堆積を含む。この場合、金属成分を表面活性物質を含有する反応リンスで後処理し、次いで電気浸漬被覆(electro−dip coating)を行なう。
一方、化成処理および引き続きの電気浸漬被覆からなる多段階方法による金属成分の防蝕被覆物は、数十年間行われている方法である。経済的理由から、また、生態学の考察に基づきながら、自動車産業は、技術的によく確立された亜鉛燐酸処理による化成処理を、資源を節約しながら最も等価な可能性の効果がある前処理に置き換える試みを行ってきた。亜鉛燐酸処理と比べて、化成処理用の代替概念は、材料のより低い消費を有する予備処理法を十分に発揮させるためにナノメートル範囲での層厚みを有する非晶質被覆物をもたらすことが多い。
WO07/065645は、化成処理および引き続きの浸漬被覆の方法工程を含む、資源を節約し、および金属基材、例えば鋼および亜鉛鍍金鋼等の防蝕被覆に用いる方法を開示し、リンス工程および/または乾燥工程は化成処理および電気浸漬被覆の間で任意に行われる。この教示によれば、乾燥工程の無い、したがって、湿式フィルムが与えられる金属基材をすぐに電気浸漬被覆することができる「ウェットオンウェット」方法が好ましい。化成処理は、Zrおよび/またはTi元素のフッ素錯体に基づくクロム不含酸性水性組成物を本質的に用いることにより行われる。
次いでWO07/065645にしたがって必然的に得られるような変換層は、亜鉛リン酸処理の結晶質被覆物より低い電気層抵抗を有する傾向があり、数マイクロメートルの層厚みしか生じさせない。しかしながら、高い電気層抵抗は、車体の防蝕被覆物の確立した方法に使用される電気浸漬被覆には有利であるが、高い電気抵抗は、被覆される金属成分中の空洞構造中へ電気浸漬被覆の「クリープ」を著しく改善するからである。電気浸漬被覆における典型的な被覆物挙動は、「均一電着性挙動」として知られているが、これは電気浸漬被覆の電解線密度が低い成分の領域への均一電着性を説明するからである。自動車産業は、均一電着性挙動を最適化しようとしているが、車体の電気的に保護された領域への浸漬被覆のより深い浸透が、車体の外部領域において同一の浸漬被覆厚みにおいて可能となるか、またはより薄い電気浸漬被覆厚みが同一の均一電着性において車体の外部領域に必要となる。したがって、ほとんど等しい均一電着性挙動が電気浸漬被覆により燐酸塩処理型の化成処理に依存する必要がなく得られる程度まで防蝕被覆するための上記方法を最適化する必要がある。
EP1455002A1は、これに関して、Zrおよび/またはTiのフッ素錯体を含有するクロム不含酸性水性組成物による化成処理を開示するが、化成処理後および電気浸漬被覆前に、変換層に於いて水溶性フルオライドの量を減らすために異なった後処理工程が提案され、これにより、成功した電気浸漬被覆後に防蝕を改善する。とりわけ、有効な後処理工程としてアルカリ性水溶液での中間リンスが提案される。しかしながら、この先行技術の焦点は、Zrおよび/またはTiのフッ素錯体を含有するクロム不含酸性水性組成物による化成処理と最適化されたか、または資源がより控えめに見積もられた電気浸漬被覆の必要条件との間のバランスを見いだすことよりも、被覆金属成分の移行下での腐食の改善にある。
WO07/065645によれば、中間リンスは、さらに電気浸漬被覆前に、および化成処理後に、Ni、Sn、Cu、TiおよびZr元素の水溶性化合物を含有する水溶液あるいは水溶性および/または水分散性有機ポリマーを、この目的に用い得る。
WO07/065645 EP1455002A1
本発明の目的は、上記先行技術の観点から、防蝕前処理および引き続きの電気浸漬被覆の既知の方法シーケンスを、一方では、電気浸漬被覆法における被覆材料の節約が達成され、および他方では複雑な形態を有する成分が十分に電気浸漬被覆される程度にまで最適化することである。
この目的は、金属成分の表面の防蝕被覆のための多段階方法により達成され、金属成分の表面は、ジルコニウムおよび/またはチタニウム元素の水溶性化合物を含有する酸性水性組成物との接触により化成処理され、その結果、金属成分の表面上で少なくとも10mg/mのジルコニウムおよび/またはチタニウムの層被覆物が直接生成され、この化成処理は、中間リンス工程および/または乾燥工程を伴ってまたは伴わずに行われ、反応リンスは、金属成分の化成処理表面を、少なくとも1つの表面活性物質を含有する水性組成物と接触させ、および次いでこうして処理した金属成分の表面上で電気浸漬被覆を中間リンス工程および/または乾燥工程を伴ってまたは伴わずに行うことにより行う。
本発明の意味での「化成処理」は、金属表面の任意の湿潤化学的前処理であり、これにより、湿潤化学的前処理からの金属元素は、化成処理金属の本質的に天然の酸化被膜を構成しない表面被覆の分析的に測定可能な成分となる。
本発明の意味での「表面活性物質」は、親水性分子構成成分および親油性分子構成成分から、または1つの親油性分子構成成分および少なくとも1つの親水性分子構成成分から構成された有機化合物であり、表面活性物質の分子量は2000g/molを超えない。
本発明の意味での「電気浸漬被覆」は、被覆物を含有する水性相からの有機被覆物の任意の堆積であり、この堆積は、金属成分に外部電圧源を適用することにより引き起こされる。
本発明の意味での「リンス工程」は、直接先行する湿潤化学処理工程から残存する活性成分をできる限り広範囲に除くことを単に意図され、これらの成分は、成分に付着する湿潤フィルムにおける溶解形態で、他のものによって除去すべき活性成分を置換しながら存在する方法を示す。ここで、活性成分は、液体相を含有し、および活性成分の基本構成成分での成分の金属表面の分析的検知可能な被覆を生じさせる構成成分である。
本発明の意味での「乾燥工程」は、湿潤フィルムを有する金属成分の表面が技術的手段により乾燥されるべきである方法を示す。
ジルコニウムおよび/またはチタニウムの適用層は、脱イオン水(κ<1μScm−1)でリンスし、次いで成分を乾燥した後にX線蛍光分析方法(RFA)による化成処理の直後に決定することができる。
本発明による方法では、防蝕前処理を有し、次いで反応リンスによって後処理された金属成分は、浸漬被覆の下層厚みおよび/または浸漬ディップ被覆層の同一の厚みで改善された均一電着性挙動を示す。したがって、材料の使用が比較的控えめな電気浸漬被覆に於いて運転モードが確保され、空洞型構造を有する複雑な金属成分の電気浸漬被覆が改善される。
反応リンスにおいて、表面活性物質の量は、好ましくは少なくとも20ppm、特に好ましくは少なくとも50ppmである。実際の量が表面活性物質のこれらの好ましい最小量より少ない場合、電気浸漬被覆において他の同一のパラメーターでの均一電着性において著しい減少があり、特定の用途および複雑な形態を有する成分について受け入れられない。表面活性物質が1重量%を超える場合、一般に均一電着性におけるさらなる改良は観察されず、経済的理由のため、本発明の方法の反応リンスは、好ましくは、1重量%以下の表面活性物質を含有する。略称「ppm」は百万分率を意味し、本発明では、各組成物の質量を示し、1ppmは、各組成物1キログラム当たり1mgの各物質の量に相当する。
本発明の方法の反応リンスでの表面活性物質は、イオン界面活性剤、陽イオン界面活性剤、両性イオン界面活性剤およびノニオニクスから選ぶことができるが、反応リンスにおけるノニオニクスの使用は、電気浸漬被覆に於いて浴の構成成分との良好な適合性のためにとりわけ好ましい。適合性とは、電気浸漬被覆浴に於いて沈殿しないことであると理解される。電気浸漬被覆に於いて浴構成成分と表面活性物質との適合性は、反応リンスから電気浸漬被覆への構成成分の幾つかの移動を、特に防蝕被覆物の場合に、完全に防ぐことができないため考慮されるべきである。
更に、ノニオニクスは、反応浴の構成成分として、浸漬ディップ塗の均一電着性挙動について比較的大きい正の影響を有する。ここで、少なくとも8、特に好ましくは少なくとも10、とりわけ好ましくは少なくとも12であるが特に好ましくは18以下、とりわけ好ましくは16以下のHLB(親水性親油性バランス)値を有するノニオニクスは、一般に本発明において好ましい。
HLB値は、その内部分子構造にしたがってノニオニクスの定量分類に使用され、ノニオニクスは、親油基および親水基へ分割される。本発明によるHLB値は、以下の方程式を用いて計算され、任意の規模について0〜20の値を仮定することができる:
HLB=20(1−M/M)
〔式中、
:ノニオニクスの親油基の分子量
M:ノニオニクスの分子量〕
材料に関して、そのようなノニオニクスは、浸漬被覆の均一電着性をさらに改善するため、本発明の反応リンスにおいて好適であり、それらは、アルコキシル化アルキルアルコール、アルコキシル化脂肪族アミンおよび/またはアルキルポリグリコシドから、特に好ましくはアルコキシル化アルキルアルコールおよび/またはアルコキシル化脂肪族アミンから、とりわけ好ましくはアルコキシル化アルキルアルコールから選択される。アルコキシル化アルキルアルコールおよび/またはアルコキシル化脂肪族アミンは好ましくは末端キャップされ、特に好ましくはアルキル基で末端キャップされ、この場合、好ましくは8個以下の炭素原子、特に好ましくは4個以下の炭素原子を含有する。
本発明の方法の反応リンスにおけるノニオニクスとして特に好ましいのは、アルコキシル化アルキルアルコールおよび/またはアルコキシル化脂肪族アミンであり、これは、エトキシル化および/またはプロポキシル化形態で存在し、アルキレンオキシドユニットの総数が好ましくは20以下、特に好ましくは16以下であるが、特に好ましくは少なくとも4、とりわけ好ましくは少なくとも8である。
上記ノニオニクスの脂肪親和性成分に関して、本発明による方法の反応リンスに好適であるノニオニクスは、アルコキシル化アルキルアルコールおよび/またはアルコキシル化脂肪族アミンであり、そのアルキル基は飽和、および好ましくは非分枝状であり、アルキル基中の炭素原子の数は好ましくは6以上、特に好ましくは10以上であるが、好ましくは24以下、特に好ましくは20以下である。
概して、より長い鎖長のノニオニクスは、反応リンスによる均一電着性挙動の改良のために好ましく、本発明の別の好ましい実施態様では、アルコキシル化アルキルアルコールおよび/またはアルコキシル化脂肪族アミン、特に親油性アルキル基が少なくとも10個の炭素原子、特に好ましくは少なくとも12個の炭素原子を有するアルコキシル化アルキルアルコールが好ましく、アルキル基中の最も長い炭素鎖は少なくとも8個の炭素原子から構成され、および12〜16の範囲のHLB値が得られる。
アルコキシル化アルキルアルコールの好ましい代表例は、本発明による方法では以下のものから好ましく選択される:
・4−8倍エトキシル化あるいはプロポキシル化C−C12脂肪アルコール、
・8−16倍エトキシル化C12−C18脂肪アルコール、
・6−14倍プロポキシル化C12−C18脂肪アルコール、
・4−8倍エトキシル化およびプロポキシル化C12−C18脂肪アルコール、
この場合、これらはメチル、ブチルあるいはベンジル末端基キャップ形態で存在し得る。
本発明の方法の反応リンスのために、pHは、酸性反応リンスによってできるだけ化成処理に於いて生じた被覆物についてのピクリング攻撃を最小限にするために、好ましくは4以上、特に好ましくは6以上である。反対に、反応リンスは好ましくは、12を超えるpHを有するべきではなく、特に10以下である。本発明の方法の好ましい実施態様においてノニオニクスを含有する上記反応リンスのために、pHは中性(pH7)〜アルカリ性に調節されるべきであり、再び、pHは好ましくは12以下、特に好ましくは11以下、とりわけ好ましくは10以下であるが好ましくは合計で少なくとも7、とりわけ好ましくは少なくとも8である。ノニオニクスの存在下で、アルカリ性pHの確立は、特にリンス工程がない場合に、特に好ましくは、リンス工程も乾燥工程も化成処理と反応リンスの間に存在しない場合に、引き続きの電気浸漬被覆に於いて均一電着性における限られた改良をもたらす。反応リンスのpHは、好ましくは、化成処理から後リンスへの酸性水性組成物の構成成分の投入が、最適範囲から外れたpHにシフトしないように緩衝系によって調節される。本発明の方法の特に好ましい態様に於いて、したがって、化成処理後および反応リンス前の付加的なリンス工程を省略してもよい。緩衝系の使用は、さらに浴のコントロールを促進するが、これは、pHを安定させる物質の任意の引き続きの投入は、単に適度で、かつ時々であることのみを必要とする。本発明の方法の好ましい実施態様において、反応リンスは、酸の1当量を加える場合に、pHが0.5単位以下毎に、好ましく1.0単位以下毎に好ましくは緩衝液の量を超えずに変化しないが、反応リンスは1.0mScm−1を越える、好ましくは0.5mScm−1を超える電気伝導率を仮定するような量で緩衝系を少なくとも含有する。好ましい緩衝系は、炭酸水素塩緩衝液(例えばNaCO/NaHCO)である。
本発明では、「pH値」は、25℃でヒドロニウムイオンの活性からの負の常用対数を示す。
層を形成する活性成分のさらなる存在は、浸漬被覆の均一電着性に対する反応リンスの正の影響を小さくし、時々、全く生じさせないことを見出した。これは特にそのような活性成分に当てはまり、それは薄い無定形のホスフェート層を形成することができる。本発明の方法の好ましい実施態様では、したがって、反応リンスの水性組成物は、POとして計算した1g/kg未満、特に好ましくは0.1g/kg未満、とりわけ好ましくは0.01g/kg未満の水中に溶解したホスフェートを含有する。
層形成性活性成分は、均一電着性について悪影響を有し、金属表面の変換を通常もたらす特定の金属元素の水溶性化合物をも含む。本発明の方法の別の好適な実施態様では、従って、反応リンスの水性組成物が、各元素を基準に20ppm未満、特に好ましくは10ppm未満、とりわけ好ましくは1ppm未満の第IIIB、IVB、VIB亜族の元素および/またはバナジウム元素の水溶性化合物を含有することが好ましく、好ましくは上記元素を基準に合計20ppm未満のこれらの水溶性化合物が存在する。その状況は、本発明の方法の反応リンスにおいて、対応するシラノールに基づいて計算された0.005g/L未満、特に好ましくは0.002g/L未満、とりわけ好ましくは0.001g/L未満の量で通常存在するシランの存在について類似する。
本発明における「シラン」としては、シラン、シラノール、シロキサン、ポリシロキサンおよびそれらの反応生成物および/または誘導体が挙げられる。反応生成物は、特に縮合生成物および加水分解生成物を水性媒体中に含む。
本発明の方法の浸漬被覆の均一電着性挙動についての別の欠点は、金属成分との接触中の金属相の堆積を引き起こすような反応リンスにおける層形成性活性成分の存在であり得る。従って、本発明の方法の別の好適な実施態様では、反応リンスの水性組成物が、各元素を基準に50ppm未満、好ましくは10ppm未満、特に好ましくは5ppm未満のCo,Ni、Cuおよび/またはSn元素の水溶性化合物を含有することが好ましく、好ましくは上記元素を基準に合計50ppm未満のこれらの水溶性化合物が存在する。
反応リンス前の化成処理は、ジルコニウムおよび/またはチタニウム元素の弗素酸ならびにその塩および加水分解生成物を含有する酸性水性組成物で本発明による好ましい方法に於いて行われる。加水分解生成物としては例えば、中心原子上の弗化物イオンが部分的に水酸化物イオンによって置換された化合物が挙げられる。
意外にも、そのような本発明の方法のための反応リンスは、化成処理においてホスフェート層を生成し、引き続きの電気浸漬被覆に於いて均一電着性における改良に関してはるかに低い効果が生じることが見出された。したがって、本発明によれば、化成処理用の酸性の水性組成物は、POに基づきながら、金属成分上で、少なくとも0.2g/m の層密度でのホスフェート層を形成するような量のホスフェートを含有しない。これを確保するために、化成処理用の酸性の水性組成物は、水中に溶解し、POとして計算したホスフェートを合計1g/kg未満、特に好ましくは合計0.1g/kg未満含有するべきである。
化成処理の酸性水性組成物中の銅イオンの存在は、通常、変換層の形成を促進するための変換浴へ、ジルコニウムおよび/またはチタニウム元素を基準に少量添加され、噴霧法により適用される場合に、本発明の方法の効果に悪影響を有する場合がある。したがって、噴霧により化成処理が行われる方法の化成処理用酸性水性組成物が、合計50ppm未満、特に好ましくは10ppm未満、とりわけ好ましくは1ppmの水中に溶解した銅イオンを含有することが好ましい。概して、変換浴中における各Co、Ni、Cuおよび/またはSn元素を基準にCo、Ni、Cuおよび/またはSn元素の水溶性化合物の総量に対する各ジルコニウムおよび/またはチタニウム元素を基準にジルコニウムおよび/またはチタニウムの水溶性化合物の総量のモル比は、0.6以上、特に好ましくは1.0以上であることが本発明の方法に当てはまる。
更に、反応リンスでの上記存在は本発明による方法に不利であり得ることが既に見出された。従って、反応リンスへのシランの添加の大部分が抑制されるような方法が好ましい。これは特に、化成処理中の酸性組成物がシラン系組成物ではないことによって行われ得る。本発明による好ましい方法では、化成処理中の酸性組成物は、対応するシラノールに基づいて計算された合計0.005g/L未満、特に好ましくは0.002g/L未満、とりわけ好ましくは0.001g/L未満のシランを含有する。
化成処理中の酸性水性組成物の適用の型ならびに反応リンスの反応リンスの型は、従来の適用方法の中で自由に選択することができる。したがって、例えば、本発明の方法の水性組成物は、噴霧法および浸漬法によって金属成分と接触させ得る。
プロセス工学の見地に関して、リンス工程および/または乾燥工程は、反応リンスおよび引き続きの電気浸漬被覆塗の間に挿入してもよい。本発明による方法の利点は、本発明の好ましい変法における反応リンスにおいて存在するノニオニクスが、電気浸漬被覆について悪影響を有さないことであり、電気浸漬被覆前に成分に付着する湿潤フィルム中の表面活性物質を除去する中間リンス工程の必要がない。したがって、本発明の方法の好ましい実施態様において、電気浸漬被覆は反応リンス後に中間リンス無しで金属成分を処理し得る。
さらに、本発明の方法に於いて、反応リンス直後の成分の乾燥または反応リンス後に行うリンス工程直後の成分の乾燥は、以下の電気浸漬被覆に於いて改善された均一電着性挙動のために必要ではなく、この方法を完全に「ウェットオンウェット」(すなわち、任意の乾燥工程なしで)その個々の工程に関して行ってよい。
従って、本発明によれば、40℃を超える温度で乾燥を行う乾燥工程を反応リンス後におよび電気浸漬被覆前に全く行わない場合、好ましくは乾燥工程が全く存在しない場合に好ましい。
防蝕被覆物での金属成分は、本発明の方法において、好ましくはアルミニウム、亜鉛、鉄、スチールおよび/または亜鉛鍍金鋼から選択される。本発明による方法は、特に、スチールおよび/または亜鉛鍍金鋼からなる表面上の浸漬被覆の均一電着性を改善するのに特に適当である。
例となる実施態様:
全ての実験は冷延鋼板(CRS)で行なった。次の基本方法を、下記の全実施例において用いた:
1) アルカリ脱脂:
アルカリ洗浄剤を準備するためにプロセス用水で浴を充填し、3%Ridoline(登録商標) 1574および0.3%Ridosol(登録商標) 1270(それぞれHenkel AG&KGaAから)を加え、リン酸溶液の徐々の添加によりpHを11に調節する。
スプレー圧力:1バール
温度:50〜60℃
処理時間:120秒
2) 脱イオン水リンス:(κ<1μScm−1
スプレー圧力:1バール
温度:室温℃
処理時間:30〜60秒
3) 化成処理
4) 反応リンス
5) 脱イオン水リンス(κ<1μScm−1
スプレー圧力:1バール
温度:室温℃
処理時間:30〜60秒
6) 陰極浸漬被覆(CathoPrime(登録商標)、BASF Coatings AG):
690gの顔料ペーストGV81−0001および1760gの結合剤GY80−0640(それぞれBASF Coatings AGから)を2573gの脱イオン水へ、撹拌しながらに加えることによりバッチを調製した。堆積は、160Vの電圧で合計105秒間30℃の浴温にてポテンショスタットを用いて行った。15秒以内の対応する潜在的傾斜により、この堆積電圧を調節した。180℃で25分間の浸漬被覆物の硬化後、被覆層の各厚みは、層厚み測定器(DUALSCOPE(登録商標) FMP40、Helmut Fischer GmbH)により決定した。
浸漬被覆物の厚みおよび均一電着性についての反応リンスの影響を示すために、2組の金属板を調製し、各組の参考板は、処理工程1〜3、5および6のみ通した。浸漬被覆物の厚みおよび均一電着性についての変更は、板の参考組の対応する値に基づく。
電気浸漬被覆の均一電着性を決定するために、2枚の板をプラスチック枠と接着テープにより組み合わせて装置を形成し、内部金属板表面の間の距離は4mmであった。電気浸漬被覆は、板およびプラスチックのスペーサーに囲まれた内部体積へ、板の2つの内部表面間のより低い開口を通して入り込むことができた。この装置は、上記の攪拌電気浸漬被覆浴へ導入し、カソードとして接続した。外側の板表面に対して、1つのステンレス鋼アノードを10cm離して平行に配置し、アノードに対するカソードの面積比は5:1であった。
実施例B1:
変換浴は270ppmのHZrF、60ppmのZrO(NOおよび300ppmのHNOを含有した。pHは、水性アンモニア性溶液を加えることにより4.5のpHに調節した。化成処理は、40℃、60秒間の浴温にて1バールの圧力での噴霧法により行なった。
反応リンスは、脱イオン水中に750ppmの2,4,7,9−テトラメチル−5−デキン−4,7−ジオールの溶液を用いて60秒間、20℃にて浸漬により行った。
実施例B2:
実施例1に記載の化成処理。
反応リンスは、脱イオン水中に200ppmのブチル末端基キャップされた4−5倍エトキシル化オクタノール(C、4−5EO、ブチル; HLB値14)の溶液を用いて60秒間、20℃にて浸漬により行った。
実施例B3:
実施例1に記載の通りであるが、20℃の浴温での化成処理。
反応リンスは、脱イオン水中に20ppmのブチル末端基キャップされた10倍エトキシル化C12−C18脂肪アルコール(C12−C18、10EO、ブチル; HLB値13.3〜15)の溶液を用いて60秒間、20℃にて1バールの噴霧圧力での噴霧法により行った。
実施例B4:
実施例1に記載の通りであるが、20℃の浴温での化成処理。
反応リンスは、脱イオン水中に100ppmのブチル末端基キャップされた10倍エトキシル化C12−C18脂肪アルコール(C12−C18、10EO、ブチル; HLB値13.3〜15)およびC18脂肪アルコール(C12−C18、10EO、ブチル; HLB値13.3−15)および0.2mol/LのNaCOおよび0.2mol/LのNaHCOからなる緩衝系で60秒間、20℃にて1バールの噴霧圧力での噴霧法により行った。
実施例B5:
実施例1に記載の通りであるが、20℃の浴温での化成処理。
反応リンスは、脱イオン水中に100ppmのブチル末端基キャップされた10倍エトキシル化C12−C18脂肪アルコール(C12−C18、10EO、ブチル; HLB値13.3〜15)の溶液を7.8のpHにて用いて60秒間、20℃にて1バールの噴霧圧力での噴霧法により行った。
実施例B6:
変換浴は340ppmのHZrF、15ppmのCu(NOおよび4ppmのHFを含有した。pHは、アンモニア水溶液を加えることによりpH4.0に調節した。化成処理は、浸漬法に於いて120秒間20℃の浴温で行なった。
反応リンスは、脱イオン水中に1000ppmのブチル末端基キャップされた10倍エトキシル化C12−C18脂肪アルコール(C12−C18、10EO、ブチル; HLB値13.3〜15)の溶液を用いて120秒間、20℃にて浸漬により行った。
実施例B7:
実施例1に記載の通りであるが、20℃の浴温での化成処理。
反応リンスは、脱イオン水中に67ppmのブチル末端基キャップされた10倍エトキシル化C12−C18脂肪アルコール(C12−C18、10EO、ブチル; HLB値13.3〜15)および27ppmのHZrFの溶液を用いて60秒間、20℃にて1バールの噴霧圧力での噴霧法により行った。
比較例VB1:
脱イオン水で浴を充填し、2重量%Duridine 7760(Henkel AG & Co.KGaA)を加え、鉄燐酸塩処理溶液を調製した。pHは、水酸化ナトリウム溶液を加えることによりpH4.5にゆっくり調節した。その後、50℃の温度および1バールのスプレー圧力で110秒間浴からの鉄燐酸塩処理溶液を板に噴霧した。層の鉄ホスフェート重量はPOとして決定した0.5g/mであった。
反応リンスは、脱イオン水中に1000ppmのブチル末端基キャップされた10倍エトキシル化C12−C18脂肪アルコール(C12−C18、10EO、ブチル; HLB値13.3〜15)の溶液を用いて60秒間、20℃にて浸漬により行った。
以下の表1は、上記の典型的な実施態様についての電気浸漬被覆厚みについての値、および均一電着性を集約する。
本発明による各実施例B1−B6について、浸漬ディップ被覆物の厚みは著しく低減され、同時に改善された均一電着性が得られることが見出される(表1)。したがって、一方で電気浸漬被覆における被覆材料についての節約および他方でより複雑な形態を有する成分について電気浸漬被覆を十分に行うことが可能とすることからなる本発明の目的は、完全に達成された。更に、実施例B1によるジェミナルノニオニクスは、均一電着性における改良および電気浸漬被覆の厚みの所望の低減に関して実施例B2−B6の線形両親媒性物質と比較してわずかに劣ることが明らかである。実施例B2およびB4の比較は、より長い鎖長の末端基キャップエトキシル化脂肪アルコール(B4)が最良の結果をもたらし、特に意外にも非常に均一電着性挙動を改善することを示す。ノニオニクスの影響は、比較例VB1によって示されるように、先行する化成処理についてさらに厳密に選択的であり、鉄ホスフェート金属板についての反応リンスは、均一電着性または浸漬被覆物の厚みについての改良をもたらさない。反応リンスの組成物は、活性成分としてノニオニクスを越え、本発明による方法の成功にとって重要な意義を持つ。したがって、実施例B7は、化成処理工程からの活性成分の付加的存在が不利であり、均一電着性挙動においておよび電気浸漬被覆について明らかな悪化さえこれらの活性成分(ここでは:HZrF)のより高い濃度で生じることを示す。したがって、ここでは、反応リンスが実施例B4でのようなアルカリ性緩衝液を有することはさらに有利であり、進行中の被覆物装置で、成分をすくうことによる変換浴構成成分の反応リンスへの移動は、Zrおよび/またはTi元素の化合物の沈殿のみをもたらし、劣った性能をもたらさない。さらに、アルカリ緩衝液を用いた反応リンスにおいて、中性〜わずかにアルカリ性の反応に比べて、被覆物の均一電着性における改良が、実施例B4およびB5の比較によって示されるように観察される。
Figure 0006465871
本発明の好ましい態様は、以下を包含する。
[1]金属成分の表面の防蝕被覆の方法であって、金属成分の表面をジルコニウムおよび/またはチタニウム元素の水溶性化合物を含有する酸性水性組成物と接触させることにより防蝕処理し、これにより、少なくとも10mg/m のジルコニウムおよび/またはチタニウム層塗膜を金属成分の表面上に直接形成し、反応リンスを、前記化成処理後に中間リンス工程および/または乾燥工程を伴いまたは伴わずに行い、前記反応リンスを、金属成分の化成処理表面と少なくとも1つの表面活性物質を含有する水性組成物と接触させることにより行い、次いでこのように処理した金属成分の表面を、中間リンス工程および/または乾燥工程を伴いまたは伴わずに電気浸漬被覆することを特徴とする、方法。
[2]表面活性物質はノニオニクスから選択されることを特徴とする、[1]に記載の方法。
[3]ノニオニクスは、少なくとも8、好ましくは少なくとも10、特に好ましくは少なくとも12であるが好ましくは18以下、特に好ましくは16以下であるHLB値を有することを特徴とする、[2]に記載の方法。
[4]ノニオニクスは、好ましくは末端基キャップされ、特に好ましくはアルキル基で末端基キャップされ、好ましくは8個以下の炭素原子、特に好ましくは4個以下の炭素原子を含有するアルコキシル化アルキルアルコールおよび/またはアルコキシル化脂肪族アミンから選択されることを特徴とする、[2]または[3]に記載の方法。
[5]アルコキシル化アルキルアルコールおよび/または脂肪族アミンは、エトキシル化および/またはプロポキシル化形態で存在し、アルキレンオキシド単位の数は全体で20以下、好ましくは16以下であるが好ましくは少なくとも4、特に好ましくは少なくとも8であることを特徴とする、[4]に記載の方法。
[6]アルコキシル化アルキルアルコールおよび/またはアルコキシル化脂肪族アミンは、飽和、および好ましくは非分枝状であり、アルキル基中の炭素原子の数は6以上、好ましくは10以上であるが24以下、好ましくは20以下であることを特徴とする、[4]または[5]に記載の方法。
[7]反応リンスにおける表面活性物質の量は、20ppmを超え、好ましくは50ppmを超えるが好ましくは1重量%以下であることを特徴とする、[1]〜[6]のいずれかに記載の方法。
[8]反応リンスの水性組成物は、水中に溶解し、およびPO として計算されるホスフェートを1g/kg未満、好ましくは0.1g/kg未満、特に好ましくは0.01g/kg未満含有することを特徴とする、[1]〜[7]のいずれかに記載の方法。
[9]反応リンスの水性組成物は、各元素を基準に20ppm未満、好ましくは10ppm未満、特に好ましくは1ppm未満の第IIIB、IVB、VIB亜族の元素および/またはバナジウム元素の水溶性化合物を含有し、好ましくは、上記元素を基準に合計20ppm未満のこれらの水溶性化合物が存在することを特徴とする、[1]〜[8]のいずれかに記載の方法。
[10]反応リンスの水性組成物は、各元素を基準に50ppm未満、好ましくは10ppm未満、特に好ましくは5ppmのCo、Ni、Cuおよび/またはSn元素の水溶性化合物を含有し、好ましくは、上記元素を基準に合計50ppm未満のこれらの水溶性化合物が存在することを特徴とする、[1]〜[9]のいずれかに記載の方法。
[11]反応リンスの水性組成物は、7以上、好ましくは8以上、特に12以下、特に好ましくは11以下、とりわけ好ましくは10以下のpHを有することを特徴とする、[2]〜[10]のいずれかに記載の方法。
[12]リンス工程を、好ましくはリンス工程も乾燥工程も、化成処理および反応リンスの間に行わないことを特徴とする、[1]〜[11]のいずれかに記載の方法。
[13]化成処理のための酸性水性組成物中のジルコニウムおよび/またはチタニウム元素の水溶性化合物は、ジルコニウムおよび/またはチタニウム元素の弗素酸ならびにその塩から選択されることを特徴とする、[1]〜[12]のいずれかに記載の方法。
[14]化成処理のための酸性水性組成物は、PO を基準に少なくとも0.2g/m の層密度を有する任意のホスフェート層を含有しないことを特徴とする、[1]〜[13]のいずれかに記載の方法。
[15]化成処理のための酸性水性組成物は、各シラノールを基準に計算されるシランを0.005g/L未満、好ましくは0.002g/L未満、特に好ましくは0.001g/L未満含有することを特徴とする、[1]〜[14]のいずれかに記載の方法。
[16]乾燥工程は、反応リンス後および電気浸漬被覆前に行わないことを特徴とする、[1]〜[15]のいずれかに記載の方法。
[17]金属成分はスチールおよび/または亜鉛鍍金鋼の表面を少なくとも部分的に有することを特徴とする、[1]〜[16]のいずれかに記載の方法。

Claims (17)

  1. 金属成分の表面の防蝕被覆の方法であって、金属成分の表面をジルコニウムおよび/またはチタニウム元素の水溶性化合物を含有する酸性水性組成物と接触させることにより化成処理し、これにより、少なくとも10mg/mのジルコニウムおよび/またはチタニウム層密度を金属成分の表面上に直接形成し、反応リンスを、前記化成処理後に中間リンス工程および/または乾燥工程を伴いまたは伴わずに行い、前記反応リンスを、金属成分の化成処理表面と、少なくとも1つの表面活性物質を含有し、8以上10以下のpHを有し、および該表面活性物質として、エトキシル化および/またはプロポキシル化形態で存在し、全体で20以下のアルキレンオキシド単位の数を有するアルコキシル化アルキルアルコールから選択される少なくとも1つのノニオン界面活性剤を含有する水性組成物と接触させることにより行い、次いでこのように処理した金属成分の表面を、中間リンス工程および/または乾燥工程を伴いまたは伴わずに電気浸漬被覆により処理することを特徴とする、方法。
  2. ノニオン界面活性剤は、少なくとも8であるHLB値を有することを特徴とする、請求項1に記載の方法。
  3. アルコキシル化アルキルアルコールは末端基キャップされていることを特徴とする、請求項1または2に記載の方法。
  4. ノニオン界面活性剤はアルコキシル化脂肪族アミンから更に選択されることを特徴とする、請求項1〜3のいずれかに記載の方法。
  5. アルコキシル化アルキルアルコールのアルキレンオキシド単位の数は全体で16以下であることを特徴とする、請求項1〜4のいずれかに記載の方法。
  6. アルコキシル化脂肪族アミンは、エトキシル化および/またはプロポキシル化形態で存在し、アルキレンオキシド単位の数は全体で20以下であることを特徴とする、請求項4または5に記載の方法。
  7. アルコキシル化アルキルアルコール、またはアルコキシル化アルキルアルコールおよびアルコキシル化脂肪族アミンのアルキル基は飽和であり、アルキル基中の炭素原子の数は6以上であるが24以下であることを特徴とする、請求項1〜のいずれかに記載の方法。
  8. 反応リンスにおける表面活性物質の量は20ppmを超えることを特徴とする、請求項1〜のいずれかに記載の方法。
  9. 反応リンスの水性組成物は、水中に溶解し、POとして計算されるホスフェートを1g/kg未満含有することを特徴とする、請求項1〜のいずれかに記載の方法。
  10. 反応リンスの水性組成物は、各元素を基準に20ppm未満の第IIIB、IVB、VIB亜族の元素および/またはバナジウム元素の水溶性化合物を含有することを特徴とする、請求項1〜のいずれかに記載の方法。
  11. 反応リンスの水性組成物は、各元素を基準に50ppm未満のCo、Ni、Cuおよび/またはSn元素の水溶性化合物を含有することを特徴とする、請求項1〜10のいずれかに記載の方法。
  12. リンス工程を化成処理および反応リンスの間に行わないことを特徴とする、請求項1〜11のいずれかに記載の方法。
  13. 化成処理のための酸性水性組成物中のジルコニウムおよび/またはチタニウム元素の水溶性化合物は、ジルコニウムおよび/またはチタニウム元素の弗素酸ならびにその塩から選択されることを特徴とする、請求項1〜12のいずれかに記載の方法。
  14. 化成処理のための酸性水性組成物は、POを基準に少なくとも0.2g/mの層密度を有するホスフェート層を形成するような量のホスフェートを含有しないことを特徴とする、請求項1〜13のいずれかに記載の方法。
  15. 化成処理のための酸性水性組成物は、各シラノールを基準に計算されるシランを0.005g/L未満含有することを特徴とする、請求項1〜14のいずれかに記載の方法。
  16. 乾燥工程は、反応リンス後および電気浸漬被覆前に行わないことを特徴とする、請求項1〜15のいずれかに記載の方法。
  17. 金属成分はスチールおよび/または亜鉛鍍金鋼の表面を少なくとも部分的に有することを特徴とする、請求項1〜16のいずれかに記載の方法。
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