(本発明に至った知見)
実施の形態を説明する前に、本発明者が鋭意検討の結果に本発明に至った知見について、比較例に係る蓄電装置を用いて説明する。
まず、比較例に係る蓄電装置の構成について説明する。
比較例に係る蓄電装置は、例えば、複数の蓄電素子を備え、各蓄電素子において、容器本体と蓋体とは、溶接の一部(例えば、溶接の開始部分と溶接の終了部分)が重なるように溶接されている。
本発明者は、このような蓄電装置に関し、次のような問題が生じることを見出した。
すなわち、蓄電素子の外装体の側面は、溶接回数が多いほど外方へ突出しやすいことを見出した。つまり、当該側面は、溶接回数が多い領域において局所的に突出することを見出した。この局所的に突出する厚みは、複数の蓄電素子を配列した場合に、蓄電素子の間に無駄なスペースを生じさせる虞がある。このような無駄なスペースは、複数の蓄電素子が配列された蓄電装置の寸法管理を困難にする虞がある。よって、複数の蓄電素子を組み立てる蓄電装置の組み付けが困難になるという問題がある。
また、このような無駄なスペースは、複数の蓄電素子を組み立てる際にガタつきを発生させる虞があるので、複数の蓄電素子を組み立てる蓄電装置の組み付けが困難になるという問題がある。
また、蓄電素子の外装体の側面が局所的に突出していることにより、蓄電装置の組み付けの際に蓄電素子同士が押圧された場合、当該局所的に突出した側面が他の蓄電素子と干渉しないように一の蓄電素子が他の蓄電素子に対して上下方向に動いてしまう虞がある。よって、一の蓄電素子と他の蓄電素子との位置ズレが発生する虞があるので、蓄電装置の組み付けが一層困難になるという問題がある。
さらに、当該位置ズレが発生した場合には、隣り合う蓄電素子を電気的に接続するバスバーの取り付け時の不良発生の原因になるという問題がある。なお、位置ズレの発生を考慮してバスバーを設計することも可能であるが、その場合にはバスバーの設計に過剰な公差が要求される。さらに、このような過剰な公差を有するバスバーを用いて組みつけられた蓄電装置においてガタつきが発生する虞がある。
また、蓄電素子が、外装体として、容器と当該容器の表面に配置された絶縁シートとを備える場合には、外装体の側面が局所的に突出していることにより、当該絶縁シートに破損が生じる場合がある。また、蓄電素子間に絶縁シートが配置された場合にも、外装体の側面が局所的に突出していることにより、当該絶縁シートに破損が生じる場合がある。このような場合には、隣り合う蓄電素子の間の絶縁性の確保が困難になるという問題がある。
また、外装体の側面のうち局所的に突出した突出部を削り取った場合には、蓄電装置の耐圧の確保が困難になるだけでなく、削り取った際に発生した削りカスが蓄電素子の内部に侵入することにより当該蓄電装置に不具合が発生する虞がある。
そこで、本発明者は、組み付けが容易にでき、ガタつきの発生を抑制でき、かつ、絶縁性を確保することができる蓄電装置を創作するに至った。
以下、図面を参照しながら、本発明の実施の形態に係る蓄電装置について説明する。なお、以下で説明する実施の形態は、いずれも本発明の好ましい一具体例を示すものである。以下の実施の形態で示される数値、形状、材料、構成要素、構成要素の配置位置及び接続形態などは、一例であり、本発明を限定する主旨ではない。また、以下の実施の形態における構成要素のうち、最上位概念を示す独立請求項に記載されていない構成要素については、任意の構成要素として説明される。
(実施の形態)
まず、本発明の実施の形態に係る蓄電モジュール10の構成について、説明する。
図1は、本発明の実施の形態に係る蓄電モジュール10の外観を示す斜視図である。なお、同図は、モジュールケース200を透視してモジュールケース200内方を示した図となっている。
なお、同図では、Z軸方向を上下方向(設置状態での重力の作用する方向)として示しており、以下ではZ軸方向を上下方向として説明するが、使用態様によってはZ軸方向が上下方向にならない場合も考えられるため、Z軸方向は上下方向となることには限定されない。以下の図においても、同様である。
なお、以下において、例えば、X軸方向プラス側とは、X軸の矢印方向側を示しており、X軸方向マイナス側とは、X軸方向プラス側とは反対側を示す。Y軸方向やZ軸方向についても同様である。
蓄電モジュール10は、外部からの電気を充電し、また外部へ電気を放電することができる蓄電装置(電池モジュール)である。これらの図に示すように、蓄電モジュール10は、複数の蓄電素子100(本実施の形態では、5つの蓄電素子100)と、当該複数の蓄電素子100を収容するモジュールケース200とを備えている。
なお、蓄電モジュール10は、隣り合う蓄電素子100同士を電気的に接続するバスバーや、複数の蓄電素子100の充電状態や放電状態を監視するための制御基板なども有しているが、これらの図示は省略し、詳細な説明も省略する。
蓄電素子100は、電気を充電し、また、電気を放電することのできる二次電池であり、より具体的には、リチウムイオン二次電池などの非水電解質二次電池である。本実施の形態では、5個の矩形状の蓄電素子100が直列に配置されている。
なお、蓄電素子100の個数は5個に限定されず、他の複数個数であってもよい。また、蓄電素子100の形状も特に限定されない。また、蓄電素子100は、非水電解質二次電池には限定されず、非水電解質二次電池以外の二次電池であってもよいし、キャパシタであってもよい。この蓄電素子100の構成の詳細な説明については、後述する。
モジュールケース200は、複数の蓄電素子100を収容するケースを構成する矩形状の部材である。モジュールケース200は、複数の蓄電素子100を所定の位置に配置し、複数の蓄電素子100を衝撃などから保護する。
具体的には、モジュールケース200は、複数の蓄電素子100を載置する載置部材と、複数の蓄電素子100の両側方に配置され当該複数の蓄電素子100を締結するための2つの締結部材と、当該2つの締結部材を接続する接続部材とを有している。これにより、モジュールケース200内に複数の蓄電素子100が収容される。
なお、モジュールケース200は、上記の構成には限定されず、箱型の本体部分と蓋部分とを有しており、複数の蓄電素子100が収容される構成であってもかまわない。また、モジュールケース200の底面部分や側面部分に、複数の蓄電素子100を冷却(水冷却または空気冷却)するための冷却シートや冷却板などを備えていてもよい。また、モジュールケース200には、外部からの電気を充電し、また外部へ電気を放電するための外部電極端子が設けられているが、図示及び詳細な説明は省略する。
次に、蓄電素子100について、詳細に説明する。
図2は、本発明の実施の形態に係る蓄電素子100の外観を示す斜視図である。また、図3は、本発明の実施の形態に係る蓄電素子100の容器110の容器本体111を分離して蓄電素子100が備える各構成要素を示す斜視図である。なお、同図では、蓄電素子100の容器110の絶縁層140は省略して図示している。
これらの図に示すように、蓄電素子100は、容器110と、正極端子120と、負極端子130とを備えている。また、容器110は、容器本体111と、蓋体112と、絶縁層140とを有しており、容器110内方には、電極体113と、正極集電体114と、負極集電体115とが配置されている。
なお、容器110の内部には電解液などの液体が封入されているが、当該液体の図示は省略する。また、蓋体112などには容器110内方の圧力を開放する安全弁が配置されていてもよい。
容器110は、金属からなる矩形筒状で底を備え開口部111aが形成された容器本体111と、容器本体111の開口部111aを閉塞する金属製の蓋体112とを有している。また、容器110は、電極体113等を内部に収容後、蓋体112と容器本体111とが溶接されることにより、内部を密封することができるものとなっている。この溶接により、蓋体112と容器本体111との境界部分には溶接部150が形成されている。なお、容器本体111と蓋体112との溶接の詳細な説明については、後述する。
また、容器110の外面には、容器110と併せて蓄電素子100の外装体160を構成する絶縁層140が形成されている。言い換えると、外装体160は、容器110と、容器110を覆うように配置される絶縁層140とを備える。
絶縁層140は、容器110の外面に形成された絶縁性を有する絶縁層である。具体的には、絶縁層140は、容器本体111と蓋体112とが溶接された後に、容器本体111の4側面、底面、及び、蓋体112の外周部分に絶縁塗装が施された絶縁コート層である。つまり、絶縁層140は、容器本体111の4側面、底面、及び、蓋体112の外周部分を覆うように、当該4側面、底面、及び、蓋体112の外周部分に絶縁塗料を塗布することで形成された絶縁層である。
この絶縁層140の材質は、蓄電素子100に必要な絶縁性を確保できるものであれば特に限定されないが、例えば、エポキシ樹脂、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレン、カプトン、テフロン(登録商標)、シリコン、ポリイソプレン、及び、ポリ塩化ビニルなどの絶縁性のポリマーを例示することができる。
ここで、絶縁層140の側面の一部は、当該側面の他部よりも外方へ突出している。具体的には、絶縁層140は、容器本体111と蓋体112との溶接により形成された溶接部150が設けられた溶接領域のうち他の領域より溶接された回数が多い多重溶接領域100aにおいて、外方へ突出している。すなわち、蓄電素子100の外装体160の側面には、溶接部150が形成された溶接領域のうち他の領域より溶接された回数が多い多重溶接領域100aが形成されている。これは、溶接部150が、溶接された回数が多いほど外方へ突出しやすくなるためである。例えば、本実施の形態では、多重溶接領域100aにおける溶接回数が2回、それ以外の溶接領域における溶接回数が1回となっている。
この多重溶接領域100aは、他の蓄電素子100の外装体160と対向する位置とは異なる位置に配置されている。つまり、多重溶接領域100aは、他の蓄電素子100の外装体160と当接しないように配置されている。この多重溶接領域100aの配置の詳細については、後述する。
電極体113は、正極と負極とセパレータとを備え、電気を蓄えることができる発電要素である。具体的には、電極体113は、正極と負極との間にセパレータが挟み込まれるように層状に配置されたものを全体が長円形状となるように巻回されて形成された巻回型の電極体である。なお、電極体113の形状は円形状または楕円形状でもよい。
正極は、アルミニウムまたはアルミニウム合金などからなる長尺帯状の導電性の正極集電箔の表面に、正極活物質層が形成された電極板である。なお、正極活物質層に用いられる正極活物質としては、リチウムイオンを吸蔵放出可能な正極活物質であれば、適宜公知の材料を使用できる。例えば、正極活物質として、LiMPO4、LiMSiO4、LiMBO3(MはFe、Ni、Mn、Co等から選択される1種又は2種以上の遷移金属元素)等のポリアニオン化合物、チタン酸リチウム、マンガン酸リチウム等のスピネル化合物、LiMO2(MはFe、Ni、Mn、Co等から選択される1種又は2種以上の遷移金属元素)等のリチウム遷移金属酸化物等を用いることができる。
負極は、銅または銅合金などからなる長尺帯状の導電性の負極集電箔の表面に、負極活物質層が形成された電極板である。なお、負極活物質層に用いられる負極活物質としては、リチウムイオンを吸蔵放出可能な負極活物質であれば、適宜公知の材料を使用できる。例えば、負極活物質として、リチウム金属、リチウム合金(リチウム−アルミニウム、リチウム−鉛、リチウム−錫、リチウム−アルミニウム−錫、リチウム−ガリウム、及びウッド合金等のリチウム金属含有合金)の他、リチウムを吸蔵・放出可能な合金、炭素材料(例えば黒鉛、難黒鉛化炭素、易黒鉛化炭素、低温焼成炭素、非晶質カーボン等)、金属酸化物、リチウム金属酸化物(Li4Ti5O12等)、ポリリン酸化合物などが挙げられる。
正極端子120は、正極集電体114を介して、電極体113の正極に電気的に接続された電極端子であり、負極端子130は、負極集電体115を介して、電極体113の負極に電気的に接続された電極端子である。
つまり、正極端子120及び負極端子130は、電極体113に蓄えられている電気を蓄電素子100の外部空間に導出し、また、電極体113に電気を蓄えるために蓄電素子100の内部空間に電気を導入するための金属製の電極端子である。また、正極端子120及び負極端子130は、電極体113の上方に配置された蓋体112に取り付けられている。
正極集電体114は、電極体113の正極と容器110の側壁との間に配置され、正極端子120と電極体113の正極とに電気的に接続される導電性と剛性とを備えた部材である。なお、正極集電体114は、当該正極の正極集電箔と同様、アルミニウムまたはアルミニウム合金などを主成分とする金属で形成されている。
負極集電体115は、電極体113の負極と容器110の側壁との間に配置され、負極端子130と電極体113の負極とに電気的に接続される導電性と剛性とを備えた部材である。なお、負極集電体115は、当該負極の負極集電箔と同様、銅または銅合金などを主成分とする金属で形成されている。
次に、多重溶接領域100aにおける蓄電素子100の構成について、詳細に説明する。
図4は、本発明の実施の形態に係る蓄電素子100を多重溶接領域100aにおいて上下方向に切断した場合の構成を示す断面図である。具体的には、同図は、蓄電素子100をXZ平面で切断した場合の容器本体111、蓋体112、溶接部150及び絶縁層140の構成を示す断面図であり、電極体113などの容器110の内部の構成要素については、図示を省略している。
同図に示すように、多重溶接領域100aにおける絶縁層140の側面は、当該多重溶接領域100a以外における絶縁層140の側面よりも外方へ突出している。つまり、絶縁層140は、多重溶接領域100aにおいて外方へ突出する突出部140aを有する。これは、絶縁層140によって覆われている溶接部150の側面が、当該多重溶接領域100aにおいて、他の領域よりも外方へ突出していることによる。すなわち、溶接部150が、多重溶接領域100aにおいて外方へ突出する突出部150aを有することによる。
具体的には、上述したように、絶縁層140は、容器本体111と蓋体112とが溶接された後に施された絶縁塗装により形成されている。よって、絶縁層140の膜厚は略同一に形成されている。その結果、溶接部150のうち突出部150a上に位置する絶縁層140が他の絶縁層140よりも外方へ突出するので、多重溶接領域100aにおいて突出部140aが形成される。すなわち、多重溶接領域100aにおける外装体160の側面は、多重溶接領域100a以外の他の領域における当該外装体160の側面よりも外方へ突出するように形成されている。
ここで、多重溶接領域100aにおいて、溶接部150の突出部150a、及び、絶縁層140の突出部140aが形成される様子を、容器本体111と蓋体112とを溶接する溶接工程について説明しながら、図5及び図6を用いて述べる。
図5は、本発明の実施の形態に係る容器本体111と蓋体112との溶接工程を示す斜視図である。また、図6は、溶接工程、及び、当該溶接工程後に絶縁層140が形成された状態において多重溶接領域100aで上下方向に切断した場合の、蓄電素子100の構成を示す断面図である。なお、同図では、電極体113などの容器110の内部の構成要素については、図示を省略している。
まず、容器本体111の内方に電極体113等を収容して、容器本体111の開口部111aを閉塞するように蓋体112を配置する。
次に、図5の(a)に示すように、容器本体111と蓋体112との境界部分のうち短側面の溶接開始位置Psに対してレーザ光線Lの照射を開始する。これにより、図6の(a)及び(b)に示すように、容器本体111と蓋体112との境界部分に溶接部150が形成され、溶接開始位置Psにおいて容器本体111と蓋体112とが溶接される。その後、容器本体111と蓋体112との境界部分に沿ってレーザ光線Lの照射位置を移動させつつ、引き続きレーザ光線Lの照射を行うことにより、当該境界部分に順次溶接部150が形成されるとともに当該境界部分が順次溶接される。
次に、溶接を開始した短側面における当該境界部分の端部までレーザ光線Lが移動すると、図5の(a)及び(b)に示すように、当該短側面に隣接する長側面における当該境界部分に対して、レーザ光線Lの照射を行う。その後、レーザ光線Lの照射位置を移動させつつ、図5の(c)に示すように、他の短側面及び他の長側面における当該境界部分に対してもレーザ光線Lの照射を行うことにより、当該境界部分に順次溶接部150が形成されるとともに当該境界部分が順次溶接される。最後に、図5の(d)に示すように、溶接を開始した短側面(溶接開始位置Psを含む側面)に戻り、当該短側面における当該境界部分に対して、レーザ光線Lの照射を行うことにより、当該境界部分に順次溶接部150が形成されるとともに当該境界部分が順次溶接される。
このように、溶接工程では、容器本体111及び蓋体112を平面視した状態(Z軸方向プラス側から見た状態)において、容器本体111及び蓋体112を囲むようにレーザ光線Lを照射することにより、容器本体111と蓋体112とが溶接される。なお、このようなレーザ光線Lの照射は、レーザ光線Lを出射するレーザ装置を移動させることにより行ってもよいし、容器本体111及び蓋体112を移動及び回転させることにより行ってもよい。
ここで、図5の(d)に示すように、溶接開始位置Psを含む短側面における当該境界部分に対するレーザ光線Lの照射は、溶接の開始部分と終了部分とが重なるように、溶接終了位置Peまで行われる。これは、容器本体111と蓋体112との境界部分を全周に亘って確実に溶接することにより、容器110内部に収容された電解液等の漏れを確実に防止するためである。その結果、容器本体111と蓋体112との境界部分に対する溶接回数は、溶接の開始部分及び終了部分である多重溶接領域100aでは2回となり、多重溶接領域100a以外の領域では1回となる。
溶接部150は、当該溶接部150の形成時に溶接された回数が多いほど、外方へ突出する。つまり、多重溶接領域100aにおける溶接部150は、多重溶接領域100a以外の溶接部150よりも外方へ突出する。すなわち、図6の(c)に示すような2回の溶接によって形成された溶接部150(多重溶接領域100aにおける溶接部150)は、図6の(b)に示すような1回の溶接によって形成された溶接部150(多重溶接領域100a以外の溶接部150)よりも外方へ突出する。
なお、図6の(b)では、溶接部150に突出部が形成されていないように図示されている。つまり、1回の溶接により形成された溶接部150は外方へ突出しないように図示されているが、1回の溶接により形成された溶接部150であっても、容器本体111の側面よりも外方へ突出する場合もある。しかし、この場合であっても、突出部150aが突出する厚みは、1回の溶接により形成された溶接部150よりも、2回の溶接により形成された溶接部150が大きくなる。
すなわち、溶接部150は、溶接された回数が多いほど外方へ突出しやすい。したがって、多重溶接領域100aにおける絶縁層140の側面は、多重溶接領域100a以外の領域、かつ、溶接部150が形成された領域における絶縁層140の側面よりも外方へ突出している。つまり、多重溶接領域100aにおける外装体160の側面は、溶接部150が形成された溶接領域のうち他の領域における当該側面よりも、外方へ突出している。
なお、絶縁層140は、高硬度であることなどから絶縁塗装によって形成されるのが好ましいが、例えば、図7に示すような絶縁シートなどであってもかまわない。図7は、絶縁層140として絶縁シートを用いた場合の、容器110と絶縁層140とを分離して示す分解斜視図である。
同図に示す絶縁層140は、袋状の絶縁シートであり、容器本体111の4側面を覆うように配置されている。絶縁層140は、例えばポリエチレンテレフタレート(PET)のような樹脂材料などで形成された熱収縮チューブであり、熱が加えられることにより、容器本体111の側面に密着される。なお、絶縁層140は、袋状の熱収縮チューブには限定されず、例えばポリプロピレン(PP)またはポリエチレン(PE)などからなる長尺状の絶縁シートを容器本体111に巻きつけたり、接着したりすることで、配置されることにしてもよい。このように絶縁層140が絶縁シートであっても、絶縁塗装により形成された場合と同様に、突出部150a上において外方へ突出する突出部140aが形成される。
以上、本実施の形態に係る蓄電モジュール10が備える各蓄電素子100について、詳細に説明した。つまり、各蓄電素子100の外装体160の側面は、溶接部150が形成された溶接領域のうち他の領域より溶接された回数が多い多重溶接領域100aを有することについて、説明した。また、当該多重溶接領域100aにおける蓄電素子100の外装体160の側面は、当該多重溶接領域100a以外の溶接領域における外装体160の側面よりも外方へ突出していることについても、説明した。
次に、このような蓄電素子100を複数個備える本実施の形態に係る蓄電モジュール10における、これら蓄電素子100の配置、及び、それによって当該蓄電モジュール10が奏する効果について、図8を用いて説明する。図8は、本発明の実施の形態に係る蓄電モジュール10が奏する効果について説明するための当該蓄電モジュール10の斜視図である。なお、同図では、蓄電モジュール10のモジュールケース200については図示を省略している。
同図に示すように、蓄電モジュール10を構成する複数の蓄電素子100のうち隣り合う一の蓄電素子100と他の蓄電素子100とは、外装体160の側面同士が当接するように配置されている。具体的には、本実施の形態において、多重溶接領域100aは、一の蓄電素子100の外装体160の短側面に配置され、当該一の蓄電素子100と他の蓄電素子100とは、外装体160の長側面同士が当接するように配置されている。
ここで、上述したように、当該一の蓄電素子100の外装体160の側面には、溶接部150が形成された溶接領域のうち他の溶接領域より溶接された回数が多い(本実施の形態では2回)多重溶接領域100aが形成されている。また、当該多重溶接領域100aは、当該一の蓄電素子100に隣り合う他の蓄電素子100の外装体と当接する位置とは異なる位置に配置されている。つまり、一の蓄電素子100の外装体160の側面は、多重溶接領域100aにおいて、当該一の蓄電素子100に隣り合う蓄電素子100と当接しないように配置されている。言い換えると、一の蓄電素子100の外装体160の側面のうち局所的に突出している多重溶接領域100aは、当該一の蓄電素子100に隣り合う蓄電素子100と当接しないように配置されている。
これにより、本実施の形態に係る蓄電モジュール10では、一の蓄電素子100と当該一の蓄電素子100に隣り合う他の蓄電素子100との間に生じる無駄なスペースを抑制することができる。よって、蓄電モジュール10の寸法管理が容易となり、蓄電モジュール10の組み付けが容易にできる。
また、このような無駄なスペースを抑制することができるので、複数の蓄電素子100を組み立てる際のガタつきを抑制できる。よって、蓄電モジュール10の組み付けが一層容易にできる。
また、一の蓄電素子100の多重溶接領域100aが、当該一の蓄電素子100に隣り合う他の蓄電素子100の外装体160と当接しない位置に配置されていることにより、蓄電モジュール10の組み付けの際に蓄電素子100同士が押圧された場合であっても、一の蓄電素子100が隣り合う他の蓄電素子100に対して上下方向(Z軸方向)に動きにくくなる。よって、一の蓄電素子100と隣り合う他の蓄電素子100との位置ズレの発生を抑制できるので、蓄電モジュール10の組み付けが一層容易にできる。
また、当該位置ズレの発生を抑制できることにより、隣り合う蓄電素子100を電気的に接続するバスバーの取り付け時の不良発生も抑制できる。さらに、位置ズレの発生を考慮したバスバーの設計が不要となるので、バスバーの設計に過剰な公差をもたせることが不要となる。よって、適切な公差を有するバスバーを用いて蓄電モジュール10を組み付けることができるので、蓄電モジュール10におけるガタつきの発生を抑制できる。
また、一の蓄電素子100の多重溶接領域100aが当該一の蓄電素子100に隣り合う他の蓄電素子100の外装体と当接しない位置に配置されていることにより、一の蓄電素子100が、外装体160として、容器110と図7に示したような絶縁シートとを備える場合であっても、当該絶縁シートの破損を生じにくくできる。よって、隣り合う蓄電素子100の間の絶縁性を確保することができる。
また、一の蓄電素子100の多重溶接領域100aを削り取る必要がないので、蓄電モジュール10の耐圧を確保することができる。さらに、当該多重溶接領域100aを削り取ることにより発生する削りカスを抑制できるので、当該削りカスが一の蓄電素子100の内部に侵入することによる生じ得る蓄電モジュール10の不具合を抑制できる。
また、一の蓄電素子100の多重溶接領域100aが当該一の蓄電素子100に隣り合う他の蓄電素子100の外装体と当接しない位置に配置されていることにより、蓄電素子100の歩留まりを向上させることができる。
具体的には、一の蓄電素子100の外装体160の側面が多重溶接領域100aにおいて他の蓄電素子100の外装体160と当接する場合には、この多重溶接領域100aにおいて外装体160が突出する厚みが原因となって、当該一の蓄電素子100は、蓄電モジュール10の蓄電素子100に要求される寸法規定に適合しない虞がある。つまり、この場合、当該一の蓄電素子100は、寸法規定を満たさないために不良とされる虞がある。これに対し、本実施の形態に係る蓄電モジュール10によれば、一の蓄電素子100の外装体160の側面が多重溶接領域100aにおいて他の蓄電素子100の外装体160と当接しないので、当該一の蓄電素子100は、上記の寸法規定に適合しやすくなる。つまり、上記の場合に不良と判定される蓄電素子100であっても、良品とすることが可能となる。よって、蓄電素子100の歩留まりを向上させることができる。
さらに、一の蓄電素子100の多重溶接領域100aが当該一の蓄電素子100に隣り合う他の蓄電素子100の外装体と当接しない位置に配置されていることにより、蓄電モジュール10の省スペース化を図りつつ、蓄電モジュール10の組み付けを容易にできる。
具体的には、一の蓄電素子100の外装体160の側面が多重溶接領域100aにおいて他の蓄電素子100の外装体160と当接する場合には、蓄電モジュールの組み付け時に、多重溶接領域100aにおける外装体160が突出する厚みが原因となって、ガタつき及び位置ズレが発生する虞がある。このようなガタつき及び位置ズレの発生を抑制するために、隣り合う蓄電素子100の間にスペーサを配置する構成が考えられるが、その場合には蓄電モジュールのサイズが大きくなる虞がある。これに対し、本実施の形態に係る蓄電モジュール10によれば、一の蓄電素子100の外装体160の側面が多重溶接領域100aにおいて他の蓄電素子100の外装体160と当接しないので、当該蓄電モジュール10の組み付け時に発生するガタつき及び位置ズレを抑制できる。すなわち、蓄電モジュール10の省スペース化を図りつつ、蓄電モジュール10の組み付けを容易にできる。
以上説明したように、本発明の実施の形態に係る蓄電モジュール10では、一の蓄電素子100の多重溶接領域100aを当該一の蓄電素子100に隣り合う他の蓄電素子100の外装体160と当接しない位置に配置する。これにより、蓄電モジュール10の寸法管理が容易となり、蓄電モジュール10の組み付けが容易にできる。すなわち、本発明の実施の形態に係る蓄電モジュール10によれば、一の蓄電素子100の耐圧を確保しつつ、当該蓄電モジュール10の組み付けが容易にできる。
また、容器110を覆うように配置される絶縁層140を備えることで、一の蓄電素子100の容器110と、他の蓄電素子100の外装体160との絶縁性を確保することができる。
また、多重溶接領域100aが一の蓄電素子100の外装体160の短側面に配置され、一の蓄電素子100と隣り合う他の蓄電素子100とは、外装体160の長側面同士が当接するように配置されることで、省スペース化を図りつつ、蓄電モジュール10の組み付けが容易にできる。
(変形例1)
次に、上記実施の形態の変形例1について、説明する。本変形例に係る蓄電モジュールは上記実施の形態に係る蓄電モジュール10とほぼ同じであるが、多重溶接領域が一の蓄電素子の外装体の長側面に配置され、当該一の蓄電素子が隣り合う他の蓄電素子に対してずれて配置されている点が異なる。
図9は、本発明の実施の形態の変形例1に係る蓄電素子100Bの構成を示す斜視図である。
同図に示すように、本変形例において、多重溶接領域100bは、蓄電素子100Bの外装体の長側面に配置されている。つまり、本変形例に係る容器本体111と蓋体112との溶接工程において、レーザ光線Lによる溶接は、容器本体111と蓋体112との境界部分のうち長側面に位置する当該境界部分から開始され、他の面に位置する当該境界部分に対して順次行われた後に、開始時と同一の長側面に位置する当該境界部分に対して行われている。
ここで、上記溶接は、上述した実施の形態に係る溶接と同様に、当該溶接の開始部分と終了部分とが重複するように行われている。よって、本変形例に係る蓄電素子100Bの外装体の側面は、長側面に配置された多重溶接領域100bにおいて、外方へ突出している。つまり、蓄電素子100Bの外装体の長側面は、多重溶接領域100bにおいて、外方へ突出している。
この多重溶接領域100bは、他の蓄電素子100Bの外装体と対向する位置とは異なる位置に配置されている。つまり、多重溶接領域100bは、他の蓄電素子100Bの外装体と当接しないように配置されている。
次に、このような蓄電素子100Bを複数個備える本変形例に係る蓄電モジュールの構成、及び、この蓄電モジュールが奏する効果について説明する。図10は、本発明の実施の形態の変形例1に係る蓄電モジュール10Bの外観を示す斜視図である。なお、同図は、モジュールケース200Bを透視してモジュールケース200B内方を示した図となっている。図11は、本発明の実施の形態の変形例1に係る蓄電モジュール10Bが奏する効果について説明するための当該蓄電モジュール10Bの斜視図である。なお、同図では、蓄電モジュール10Bのモジュールケース200Bについては図示を省略している。
これらの図に示すように、本変形例に係る蓄電モジュール10Bにおいて、一の蓄電素子100Bは、長側面における多重溶接領域100bと異なる領域が他の蓄電素子100Bの外装体の長側面と当接するように、蓄電素子100Bに対してずれて配置されている。具体的には、一の蓄電素子100Bは、隣り合う他の蓄電素子100Bに対してX軸方向にずれて配置されている。より具体的には、これら複数の蓄電素子100Bは、当該複数の蓄電素子100Bの並び順に対して順にずれて配置されている。つまり、複数の蓄電素子100Bは、X軸方向において同一の向き(X軸方向プラス側)に順にずれて配置されている。
以上のように、本発明の実施の形態の変形例1に係る蓄電モジュール10Bによれば、上記実施の形態と同様に一の蓄電素子100Bの多重溶接領域100bを他の蓄電素子100Bの外装体と対向しない位置に配置することにより、上記実施の形態と同様の効果を奏することができる。
また、一の蓄電素子100Bが他の蓄電素子100Bに対してずれて配置されることで、多重溶接領域が長側面に配置されている場合であっても蓄電モジュール10Bの組み付けが容易にできる。
なお、本変形例では、複数の蓄電素子100BがX軸方向において同一の向き(X軸方向プラス側)に順にずれて配置されていたが、これら複数の蓄電素子100Bは、当該複数の蓄電素子100Bの並び順に対して交互にずれて(X軸方向プラス側とマイナス側)配置されていてもよい。
このように、複数の蓄電素子100Bが並び順に対して交互にずれて配置されることで、本変形例に示すように並び順に対して順にずれて配置された場合と比較して、多重溶接領域100bが長側面に配置されている場合であっても、省スペース化を図りつつ、蓄電モジュールの組み付けが容易にできる。具体的には、隣り合う蓄電素子100Bのずれ方向(X軸方向)において、蓄電モジュールの省スペース化を図ることができる。
(変形例2)
次に、上記実施の形態の変形例2について、説明する。本変形例に係る蓄電モジュールは、上記実施の形態の変形例1に係る蓄電モジュール10Bと同様に複数の蓄電素子100Bを有するが、隣り合う一の蓄電素子100Bと他の蓄電素子100Bとが、外装体の短側面同士が当接するように配置されている点が異なる。
図12は、本発明の実施の形態の変形例2に係る蓄電モジュール10Cの外観を示す斜視図である。なお、同図は、モジュールケース200Cを透視してモジュールケース200C内方を示した図となっている。
同図に示すように、本変形例に係る蓄電モジュール10Cにおいて、多重溶接領域100bは、一の蓄電素子100Bの外装体の長側面に配置され、一の蓄電素子100Bと他の蓄電素子100Bとは、外装体の短側面同士が対向するように配置されている。
ここで、この多重溶接領域100bは、他の蓄電素子100の外装体と対向する位置とは異なる位置に配置されている。つまり、多重溶接領域100bは、他の蓄電素子100Bの外装体と当接しないように配置されている。
以上のように、本発明の実施の形態の変形例2に係る蓄電モジュール10Cによれば、上記実施の形態と同様に、一の蓄電素子100Bの多重溶接領域100bを他の蓄電素子100Bの外装体と対向しない位置に配置することにより、上記実施の形態と同様の効果を奏することができる。
また、多重溶接領域100bが一の蓄電素子100Bの外装体の長側面に配置され、外装体の短側面同士が対向するように配置されることで、省スペース化を図りつつ、蓄電モジュールの組み付けが容易にできる。さらに、平面視形状(Z軸方向プラス側から見た形状)を細長い形状にすることができるので、細長いスペースに配置することができる。
なお、図13に示すように、蓄電モジュールが備える複数の蓄電素子100Bは、当該複数の蓄電素子100Bの並び順に対して上下方向(Z軸方向)に順にずれて配置されていてもよい。図13は、本発明の実施の形態の変形例2の他の態様に係る蓄電モジュールの外観を示す斜視図である。なお、同図では、蓄電モジュールのモジュールケースについては図示を省略している。また、各蓄電素子100Bは、実施の形態の変形例1に係る蓄電素子100Bと同様の構成を有しているため、詳細な説明は省略する。
このような構成によっても、上記実施の形態と同様の効果を奏することができる。また、このような構成によって、実施の形態の変形例1に係る蓄電モジュール10Bと比較して、X軸方向において、蓄電モジュールの省スペース化を図ることができる。
また、図14に示すように、一の蓄電素子100Bは、隣り合う他の蓄電素子100Bに対して上下反転(Z軸方向プラス側とマイナス側に反転)して配置されていてもよい。図14は、本発明の実施の形態の変形例2のさらに他の態様に係る蓄電モジュールの外観を示す斜視図である。なお、同図では、蓄電モジュールのモジュールケースについては図示を省略している。また、各蓄電素子100Bは、実施の形態の変形例1に係る蓄電素子100Bと同様の構成を有しているため、詳細な説明は省略する。
このような構成によっても、上記実施の形態と同様の効果を奏することができる。また、このような構成によって、一の蓄電素子100Bが隣り合う他の蓄電素子100Bに対して上下反転せずに配置されている場合と比較して、上下方向において、蓄電モジュールの省スペース化を図ることができる。
(変形例3)
次に、上記実施の形態の変形例3について、説明する。本変形例に係る蓄電モジュールは、上記実施の形態に係る蓄電モジュール10とほぼ同じであるが、多重溶接領域が一の蓄電素子の外装体の側面の角部に配置されている点が異なる。
図15は、本発明の実施の形態の変形例3に係る蓄電素子100Dの構成を示す斜視図である。
同図に示すように、本変形例において、多重溶接領域100dは、蓄電素子100Dの外装体160の側面の角部に配置されている。例えば、多重溶接領域100dは、各角部に配置されている。つまり、本変形例に係る容器本体111と蓋体112との溶接工程において、一の側面に対するレーザ光線Lによる溶接は、例えば、容器本体111と蓋体112との境界部分のうち当該一の側面の一方の角部に位置する当該境界部分から開始され、当該一の側面の他方の角部で終了される。このような溶接を各側面に対して行うことにより、図15に示すように、各角部に多重溶接領域100dが形成される。
なお、本変形例では、多重溶接領域100dは、側面の各角部に配置されているとした。つまり、各蓄電素子100における隣り合う側面によって形成される各角部に配置されているとした。しかしながら、多重溶接領域100dの配置はこれに限らず、多重溶接領域100dは複数の角部のうち少なくとも1つの角部に配置されていればよい。
ここで、上記溶接は、上記実施の形態に係る溶接と同様に、開始部分と終了部分とが重複するように行われる。すなわち、溶接工程において、各角部における容器本体111と蓋体112との境界部分は、当該角部を挟んで隣り合う2つの側面(隣り合う長側面及び短側面)の各々に対するレーザ光線の照射によって溶接される。よって、本変形例に係る蓄電素子100Dの外装体160の側面は、側面の角部に位置する多重溶接領域100dにおいて、外方へ突出している。
図16は、本発明の実施の形態の変形例3に係る蓄電モジュール10Dの構成を示す断面図である。具体的には、図16の(a)は、各蓄電素子100Dの容器本体111と蓋体112との境界部分において水平方向に切断した(XY平面で切断した)場合の蓄電モジュール10Dの構成を示す断面図であり、図16の(b)は、図16の(a)に示されたX部を拡大して示す断面図である。なお、これらの図において、蓄電モジュール10Dのモジュールケース、電極体113などの容器110の内部の構成要素については、図示を省略している。
同図に示すように、多重溶接領域100dは、各蓄電素子100Dの外装体160の側面の角部に配置されている。すなわち、多重溶接領域100dは、他の蓄電素子100Dの外装体160と対向する位置とは異なる位置に配置されている。つまり、多重溶接領域100dは、他の蓄電素子100Dの外装体160と当接しないように配置されている。これにより、蓄電モジュール10Dは、外装体160の長側面同士が当接するように配置されている場合であっても、当該蓄電モジュール10Dの組み付けが容易にできる。
具体的には、当該角部において外装体160が突出した箇所は、当該角部を挟んで隣り合う長側面を含む平面L1と短側面を含む平面L2とで囲まれる。すなわち、各蓄電素子100Dの外装体160の側面は、多重溶接領域100dにおいて、当該外装体160の長側面を含む平面L1、及び、当該外装体160の短側面を含む平面L2よりも外方へ突出することがない。
よって、複数の蓄電素子100Dのうち一の蓄電素子100Dと他の蓄電素子100Dとが長側面同士で当接するように配置された場合、多重溶接領域100dにおいて外装体160が突出する厚みによって一の蓄電素子100Dと他の蓄電素子100Dとの間に無駄なスペースが生じる虞がなくなる。よって、蓄電モジュール10Dの組み付けが容易にできる。
なお、本変形例では、複数の蓄電素子100Dは、長側面同士で当接するように配置されているが、短側面同士で当接する、又は、長側面と短側面とが当接するように配置されていてもよい。このように配置された場合であっても、上述したように、角部において外装体160が突出した箇所が、当該角部を挟んで隣り合う長側面を含む平面L1及び短側面を含む平面L2で囲まれているので、一の蓄電素子100Dと他の蓄電素子100Dとの間に無駄なスペースが生じる虞がなくなる。よって、外装体160のいずれの側面同士が当接する場合であっても、蓄電モジュール10Dの組み付けが容易にできる。
以上のように、本発明の実施の形態の変形例3に係る蓄電モジュール10Dによれば、上記実施の形態と同様に、一の蓄電素子100Dの多重溶接領域100dを他の蓄電素子100Dの外装体160と対向しない位置に配置することにより、上記実施の形態と同様の効果を奏することができる。すなわち、多重溶接領域100dが蓄電素子100Dの外装体160の側面の角部に配置されていることにより、上記実施の形態と同様の効果を奏することができる。
また、多重溶接領域100dが外装体160の側面の角部に配置されることで、外装体160の長側面同士が対向するように配置されている場合、及び、外装体160の短側面同士が対向するように配置されている場合など、いずれの側面同士が当接する場合であっても、蓄電モジュール10Dの組み付けが容易にできる。
次に、本発明の実施の形態の変形例3に係る蓄電素子100Dの製造方法について、説明する。図17は、本発明の実施の形態の変形例3に係る容器本体111と蓋体112との溶接工程を示す平面図である。
ここで、本変形例における溶接工程で用いられるレーザ装置500の一例について、説明する。
レーザ装置500は、例えば、レーザ光線を出射するレーザ光源と、レーザ光源で発生したレーザ光線を反射する走査ミラーと、走査ミラーを回転駆動するモータとを備え、当該レーザ装置500から出射するレーザ光線Lを高速に走査する。例えば、走査ミラーは、Z軸に平行な回転軸を有し、レーザ光源から出射されたレーザ光線を反射する。これにより、走査ミラーで反射されたレーザ光線はX軸方向に高速に走査される。
なお、レーザ装置500は、さらに、X軸に平行な回転軸を有する走査ミラーと、当該走査ミラーを回転駆動するモータとを備えることにより、出射するレーザ光線LのZ軸方向の変位を調整可能であってもよい。
以下、このようなレーザ装置500を用いた容器本体111と蓋体112との溶接工程について、具体的に説明する。
まず、図17の(a)に示すように、レーザ装置500は、容器本体111と蓋体112との境界部分のうち、平面視(Z軸方向プラス側から見た状態)において角部Aから当該角部Aに隣接する角部Bまで照射位置を移動させつつ、レーザ光線Lを照射する。これにより、角部A及び角部Bを含む面abの当該境界部分が溶接される。
このとき、レーザ装置500は、走査ミラーを回転させることにより、レーザ光線Lの照射位置を高速(例えば1000mm/sec)に移動させることができる。よって、このような走査ミラーを用いてレーザ光線Lを走査する溶接工程は、レーザ装置又は溶接対象を移動させることによりレーザ光線Lの照射位置を移動させる溶接工程と比較して、溶接工程に要する時間を削減できる。
面abを溶接した後、容器本体111と蓋体112とを平面視において右に90°回転させた後に、レーザ装置500は、図17の(b)に示すように、当該境界部分のうち、角部Bから当該角部Bに隣接する角部Cまで照射位置を移動させつつ、レーザ光線Lを照射する。これにより、角部B及び角部Cを含む面bcの当該境界部分が溶接される。
その後、同様に、容器本体111と蓋体112とを平面視において右に90°回転させてレーザ光線Lを照射する工程を、図17の(c)及び(b)に示すように2回繰り返す。これにより、角部C及び角部Dを含む面cd、及び、角部D及び角部Aを含む面daの当該境界部分が溶接される。
以上のような溶接工程により、容器本体111と蓋体112とは、角部A〜Dの各々において2回溶接される。つまり、本変形例に係る蓄電素子100Dは、各角部A〜Dに多重溶接領域100dが形成される。
また、走査ミラーを回転させることによりレーザ光線Lの照射位置を移動させるので、溶接工程に要する時間を削減できる。
なお、上記の溶接工程において、溶接速度は実質的に一定であってもよい。これにより、溶接品質を均一化することができる。
また、各面(面ab、面bc、面cd、面da)および各角部A〜Dにおいて、レーザ光線Lの焦点距離を一定にしてもよい。これにより、角部A〜Dにおける溶接品質の低下を抑制することができる。
また、面ab、面bc、面cd及び面daのうち、複数の面を同時に溶接してもよい。これにより、溶接工程に要する時間を一層削減できる。
(変形例4)
次に、上記実施の形態の変形例4について、説明する。図18は、本発明の実施の形態の変形例4に係る蓄電モジュールの外観を示す斜視図である。同図に示すように、本変形例に係る蓄電モジュールは、複数の蓄電素子100Eの各々が容器110を覆う絶縁層を有していない。すなわち、各蓄電素子100Eは、当該蓄電素子100Eの外装体として、容器110を有し、絶縁層を有していない。なお、同図では、蓄電モジュールのモジュールケースについては図示を省略している。また、同図に示す各蓄電素子100Eは、絶縁層140を有していない場合の実施の形態に係る蓄電素子100と同様の構成であるので、詳細な説明は省略する。
このような蓄電モジュールは、同図に示すように、一の蓄電素子100Eと隣り合う他の蓄電素子100Eとの絶縁性を確保するために、当該一の蓄電素子100Eと他の蓄電素子100Eとの間に、絶縁性を有する絶縁シート440を備えている。これにより、各蓄電素子100Eの容器110が絶縁層で覆われていない場合であっても、蓄電素子100E間の絶縁性を確保することができる。つまり、一の蓄電素子100Eと隣り合う他の蓄電素子100Eとは、絶縁シート440を介して容器110の側面同士が対向するように配置されている。
ここで、蓄電素子100Eの容器110の側面には、溶接部150が形成された溶接領域のうち他の領域より溶接された回数が多い多重溶接領域100eが形成されている。この多重溶接領域100eは、隣り合う他の蓄電素子100Eの容器110と対向する位置とは異なる位置に配置されている。
このような構成によっても、一の蓄電素子100Eの容器110の側面が、多重溶接領域100eにおいて他の蓄電素子100Eの容器110と対向しないことにより、上記実施の形態及びその変形例と同様の効果を奏することができる。また、多重溶接領域100eにおいて他の蓄電素子100Eの容器110と対向しないことにより、蓄電モジュールの組み付けの際に蓄電素子同士が押圧された場合であっても、絶縁シート440に破損が生じにくくなるので、蓄電素子100E間の絶縁性を確保できる。
具体的には、一の蓄電素子100Eの容器110の側面が、多重溶接領域100eにおいて他の蓄電素子100Eの容器110と対向している場合には、多重溶接領域100eにおいて局所的に突出した容器110の側面によって、絶縁シート440には局所的に大きい圧力がかかる。よって、当該局所的にかかる大きい圧力によって、絶縁シート440に破損が生じる虞がある。これに対して、一の蓄電素子100Eの容器110の側面が、多重溶接領域100eにおいて他の蓄電素子100Eの容器110と対向しないことにより、当該局所的にかかる大きい圧力の発生を抑制できる。よって、絶縁シート440に破損が生じにくくなるので、蓄電素子100E間の絶縁性を確保できる。
(変形例5)
次に、上記実施の形態の変形例5について、説明する。本変形例に係る蓄電モジュールは、上記実施の形態に係る蓄電モジュール10と比較して、容器本体111と蓋体112とが貫通溶接によって溶接されている点が異なる。すなわち、上記実施の形態及びその変形例では、溶接工程において、蓄電素子の側方から当該蓄電素子の容器本体と蓋体との境界部分に対してレーザ光線を照射したが、図19に示すように、蓄電素子の上方からレーザ光線を照射してもよい。図19は、本発明の実施の形態の変形例5に係る蓄電モジュールにおける、溶接工程、及び、当該溶接工程後に絶縁層140が形成された状態において、多重溶接領域で上下方向に切断した場合の蓄電素子の構成を示す断面図である。
図19の(a)及び(b)に示すように、上方(Z軸方向プラス側)からレーザ光線Lが照射されることにより、貫通溶接によって、容器本体111と蓋体112との境界部分に溶接部150Aが形成される。
その後、溶接の開始部分と終了部分とが重なるように、当該境界部分にレーザ光線Lが再度照射される。これにより、図19の(c)に示すように、溶接部150Aに溶接だれが生じる。その結果、溶接部150Aには、図6の(c)と同様に、外方へ突出する突出部150aが形成される。
その後、図19の(d)に示すように絶縁層140が形成されることにより、図6の(d)と同様、絶縁層140には、突出部150a上において外方へ突出する突出部140aが形成される。
つまり、レーザ光線Lを上方から照射した場合であっても、レーザ光線Lを側方から照射した場合と同様に、溶接部150Aの突出部150a、及び、絶縁層140の突出部140aが形成される。すなわち、レーザ光線Lを上方から照射した場合であっても、蓄電素子の外装体の側面は、溶接部150Aが形成された溶接領域のうち他の領域より溶接された回数が多い領域(多重溶接領域)において、外方へ突出する。
したがって、上方からレーザ光線Lを照射することにより溶接された容器を備える蓄電モジュールにおいても、一の蓄電素子の多重溶接領域が隣り合う蓄電素子の外装体と対向しないように配置することで、上記実施の形態及びその変形例と同様の効果を奏することができる。
(他の変形例)
以上、本発明の実施の形態及びその変形例に係る蓄電モジュールについて説明したが、本発明は、上記実施の形態及びその変形例に限定されるものではない。つまり、今回開示された実施の形態及びその変形例は全ての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内での全ての変更が含まれることが意図される。
また、上記実施の形態及びその変形例では、溶接部が形成された溶接領域のうち、多重溶接領域における溶接回数が2回、当該溶接領域のうち他の領域における溶接回数が1回として説明したが、溶接回数はこれに限らず、多重溶接領域における溶接回数が他の領域における溶接回数よりも多ければよい。例えば、多重溶接領域における溶接回数が3回、他の領域における溶接回数が2回であってもよい。
また、上記実施の形態及びその変形例では、多重溶接領域は、溶接の開始部分と終了部分とが重複する領域として説明したが、これに限らず、溶接が重複する領域であればよい。例えば、多重溶接領域は、1回目の溶接の開始部分と、2回目の溶接の開始部分とが重なる領域であってもよい。
また、上記実施の形態及びその変形例では、溶接終了位置は、既に溶接部が形成された位置であったが、これに限らない。例えば、溶接終了位置は蓋体と容器本体との境界部分とは異なる位置であってもよく、溶接は、当該溶接の終了部分において、蓋体と容器本体との境界部分から逸れていくように行われてもよい。同様に、溶接開始位置は蓋体と容器本体との境界部分とは異なる位置であってもよく、溶接は、当該溶接の開始部分において、蓋体と容器本体との境界部分へ漸近するように行われてもよい。ここで、溶接の開始直後及び終了直前では、レーザ光線による入熱が不安定になる場合があるので溶接不良が発生する虞がある。そこで、溶接の開始位置及び終了位置を蓋体と容器本体との境界部分とは異なる位置にすることで、蓋体と容器本体との溶接不良を低減することができる。
また、上記実施の形態及びその変形例では、複数の蓄電素子の各々において、当該蓄電素子の側面が、多重溶接領域では他の蓄電素子と当接しない、として説明した。このような構成は、蓄電モジュールの組み付けが容易にできることなどから好ましいが、例えば、複数の蓄電素子のうち1つの蓄電素子において、当該蓄電素子の側面が、多重溶接領域において他の蓄電素子と当接していてもよい。つまり、複数の蓄電素子のうち少なくとも1つの蓄電素子において、当該蓄電素子に隣り合う他の蓄電素子に当接する側面が、多重溶接領域において当該他の蓄電素子と当接していなければよい。このような構成によっても、各蓄電素子において、当該蓄電素子に隣り合う他の蓄電素子に当接する側面が、多重溶接領域において当該他の蓄電素子と当接している場合と比較して、蓄電モジュールの組み付けが容易にできる。
また、上記実施の形態及び上記変形例を任意に組み合わせて構築される形態も、本発明の範囲内に含まれる。例えば、上記実施の形態の変形例4に、上記実施の形態の変形例1〜3を適用した構成などでも構わない。