<第1の実施形態>
以下、本発明の実施形態に係る画像読取装置及び画像形成装置について、図面を参照しながら説明する。本実施形態に係る画像形成装置は、複写機、ファクシミリ、プリンタ、これらの複合機等から構成可能であり、スキャナ部と、スキャナ部のスキャナユニット(画像読取手段)にシート状の原稿等を給送可能なADFとを有する画像読取装置を備えている。
[画像形成装置]
まず、本実施形態に係る画像形成装置150の概略構成について、図9を参照しながら説明する。図9は、本実施形態に係る画像形成装置150を模式的に示す断面図である。なお、以下では、ユーザーが画像形成装置150に対して各種入力/設定を行う不図示の操作部に臨む位置を画像形成装置150の「手前側」といい、背面側を「奥側」という。つまり、図9は、手前側から見た画像形成装置150の内部構成を示したものである。図9に示す画像形成装置は、後述する第2及び第3の実施形態においても同様に用いられる。なお、各図面において、同一部品及び同一部分には同じ符号を付し、重複した説明は省略する。
図9に示すように、画像形成装置150は、原稿積載トレイ121に積載された原稿Geの画像を読み取り可能な画像読取装置9と、画像読取装置9で読み取られた画像をシートSに形成可能で枠体フレーム等を有する画像形成装置本体150aとを備える。さらに、画像形成装置150は、画像形成装置本体150aに接続された大容量デッキ72を備えている。
画像形成装置本体内には、画像読取装置9で読み取った画像情報に基づいて電子写真方式でシートに画像形成する画像形成部75と、画像形成装置150の各部である画像読取装置9及び画像形成装置本体150a等を制御する制御部130とが設けられている。制御手段としての制御部130は、ROM、RAM及びCPUを有する。上記画像読取装置9は、原稿(シート状原稿)Geの画像を読み取るスキャナ部20と、スキャナ部20に原稿Geを自動給送可能な自動原稿給送装置(ADF)10とを備えている。なお、スキャナ部20及びADF10については、後に詳しく説明する。
画像形成装置本体150a内には、画像形成部75に向けてシートを送り出すシート給送装置としてのデッキ給送部68,69、カセット給送部70,71、大容量デッキ給送部74、及び手差し給送部73が設けられている。画像形成装置150では、各シート給送装置からシートSを、連続して画像形成部75に給送することが可能に構成されている。
画像形成装置本体150aの上部には、固定して設けられた固定読みガラス(原稿台ガラス、ブックプラテン)203(図1参照)を有する原稿台50が配置されている。この原稿台50の上部には、原稿台50の所定位置に原稿を搬送するADF10が配置され、原稿台50の下部に、上記スキャナ部20が配置されている。
画像形成装置150は、画像形成装置本体150aにデッキ収納庫64,65、給紙カセット66,67及び手差し給送部73を備えている。デッキ収納庫64,65、給紙カセット66,67、手差しトレイ204にそれぞれ積載されたシートSは、デッキ給送部68,69、カセット給送部70,71、手差し給送部73によって画像形成部75に給送される。この画像形成装置150では、原稿台50上の原稿の画像がスキャナ部20で読み取られ、そのデータをもとに、書き込みレーザ部53がレーザ光を射出し、一様に帯電された感光ドラム54上を走査することで、感光ドラム54上に静電潜像が形成される。
デッキ給送部68には、デッキ収納庫64に積載・収容されたシートSを送り出すピックアップローラ101と、ピックアップローラ101で送り出されたシートSを分離・給送するフィードローラ82及びリタードローラ83とが配置されている。これら各ローラは、デッキ給送部69、カセット給送部70,71においても同様に設けられている。
手差し給送部73には、手差しトレイ204と、手差しトレイ上のシートSを給送するピックアップローラ97とが配置されている。さらに、手差し給送部73には、給送されたシートを分離・給送するフィードローラ98及びリタードローラ99が配置されている。ピックアップローラ97及びフィードローラ98は、ローラ支持部材100により一体的に連結されている。フィードローラ98の下流には、フィードローラ98とリタードローラ99間の分離ニップ部を通して分離・給送されたシートSを更に下流に搬送する搬送ローラ対76が配置されている。
画像形成部75は、感光ドラム54と、感光ドラム表面に均一な帯電を施すための帯電器55と、帯電器55により帯電された感光ドラム54の表面に形成された静電潜像を現像して、シートSに転写すべきトナー像を形成する現像装置56とを有する。また画像形成部75は、感光ドラム54の表面に現像されたトナー像をシートSに転写する転写帯電器57を有している。画像形成部75は、シートに密着して転写帯電器57と感光ドラム54間を通過して感光ドラム54からトナー像を転写されたシートSを分離する分離帯電器58と、トナー像の転写後、感光ドラム54に残留したトナーを除去するクリーナ63とを有する。
画像形成部75の下流側には、トナー像が転写されたシートSを搬送するベルト搬送部59と、ベルト搬送部59により搬送されるシート上のトナー像を画像として定着する定着装置60とが配置されている。また、定着装置60でトナー像が定着されたシートSを画像形成装置本体150aから排出する排出ローラ対61が配置されている。さらに、画像形成装置本体150aの外側には、排出ローラ対61により排出されたシートSを受け取る排出トレイ62が配置されている。なお、画像形成部75及び定着装置60により、画像読取装置9によって原稿(シート)Geから読み取られた画像情報に基づいてシートSに画像を形成する画像形成手段が構成されている。
各シート給送装置から画像形成部75までシートを搬送する搬送路上には、ローラ対85,87,88,90,91,109,112,123と、シートの先端及び後端を検出するシートパスセンサ116,117,118,119が配置されている。そして、各ローラ対によって給送されたシートSは、レジストレーションローラ対120によって画像形成部75に送られる。レジストレーションローラ対120の近傍には、シート先端を検知するシートセンサ86が配置されている。なお、レジストレーションローラ対120は、画像形成部75のシート搬送方向上流に配置され、シートSを一旦停止させてから画像形成部75にその画像形成動作に合わせて送り込むレジストレーション動作を行う。
上記ローラ対87は、各シート給送装置から送られてきたシートSをレジストレーションローラ対120に送り込むためのレジストレーション前ローラ対である。このレジストレーション前ローラ対87は、レジストレーションローラ対120と大容量デッキ搬送ローラ対93との間に配置され、上記ローラ対93から送られたシートSを上記ローラ対120に向けて搬送する。
レジストレーション前ローラ対87の上流側搬送路には、搬送ローラ対85、シートパスセンサ84、搬送ローラ対88,109、シートパスセンサ116、搬送ローラ対90、シートパスセンサ117がこの順に配置されている。レジストレーション前ローラ対87と搬送ローラ対85間の搬送路からは、デッキ給送部69に連なるシート搬送路が分岐している。このシート搬送路には、下流側から、搬送ローラ対91、搬送ローラ対112、シートパスセンサ118、搬送ローラ対123がこの順に配置されている。搬送ローラ対112と搬送ローラ対123間の搬送路からは、シート反転パスが分岐している。このシート反転パスには、下流側から、シートパスセンサ119、両面搬送ローラ対113,114、正逆方向に回転する反転ローラ115、及びシート反転部92がこの順に配置されている。
大容量デッキ72は、大容量デッキ収納庫(不図示)と、この大容量デッキ収納庫に積載・収容されたシートSを画像形成部75に向けて送り出す大容量デッキ給送部74とを有している。大容量デッキ給送部74には、大容量デッキ収納庫内のシートSを送り出すピックアップローラ95と、この送り出されたシートSを分離・給送する大容量デッキフィードローラ94及びリタードローラ96からなる分離ローラ対とが配置されている。
大容量デッキ72の画像形成装置本体150aとの接続部には、大容量デッキ72側から画像形成装置本体150a側にシートSを送り出す大容量デッキ搬送ローラ対93が配置されている。複写機本体内におけるレジストレーションローラ対120、レジストレーション前ローラ対87以外の他の各ローラは、不図示の駆動モータの駆動力を伝達されることにより回転駆動される。これら各ローラは、対応する各シートパスセンサの検出結果に基づき、制御部130によって回転動作が制御される。
次に、画像形成装置150におけるシート給送時の動作について、例えば手差し給送部73から給送する場合を例に挙げて説明する。
すなわち、シート給送時には、ピックアップローラ97が手差しトレイ204上のシートSをフィードローラ98とリタードローラ99間の分離ニップ部に送る。ここで、シートSは、フィードローラ98に対向して設けられ一定のトルクで搬送方向と反対方向に回転する力を付与されるリタードローラ99によって、最上位のシートのみに分離される。
この最上位のシートSは、搬送ローラ対76によりレジストレーションローラ対120に搬送されて一旦停止され、このローラ対120の再駆動により、現像された感光ドラム上のトナー像にタイミングを合わせて送り出される。このシートSは、転写帯電器57を介してトナー像を転写された後、分離帯電器58により感光ドラム54から分離されてベルト搬送部59で搬送され、定着装置60でトナー像を定着される。その後、シートSは、排出ローラ対61を介して排出トレイ62に排出される。
画像形成装置150では、シート両面への画像形成を行う場合は、画像形成部75で画像形成したシートSをシート反転部92及び反転ローラ115で反転させてシート反転パスに送り込む。そして、両面ローラ対114,113、搬送ローラ対112、搬送ローラ対91、レジストレーション前ローラ対87、レジストレーションローラ対120の経路で、再び画像形成部75に送り込む。
[画像読取装置]
次に、本実施形態に係る、図9に示した画像読取装置9について、図1及び図2を参照して詳細に説明する。なお、図1及び図2は、本実施形態に係る画像読取装置9のADF10を、画像形成装置本体150a側のスキャナ部20に対してヒンジ装置131(図3参照)を介して装着した状態を示している。図1は、本実施形態に係る画像読取装置9を流し読み状態で示す断面図、図2は、画像読取装置9を固定読み状態で示す断面図である。
図1及び図2に示すスキャナ部20は、固定読みガラス203上に積載された原稿Geの画像を読取る固定読み方式と、ADF10にて流し読みガラス(プラテンガラス)201上を搬送される原稿Geを読取る流し読み方式により画像を読取ることができる。画像読取装置本体としてのスキャナ部20は、搬送されてくるシートとしての原稿Geの画像を、透明部材としての流し読みガラス201を介して読み取る第1スキャナユニット(画像読取手段)30aを有する。
第1スキャナユニット30aは、原稿Geの画像面に光を照射する照明310、この照明310により照射された原稿Geからの反射散乱光を結像レンズ304に導くミラー301,302,303、及び電荷結合素子305等を有している。第1スキャナユニット30aは、不図示のタイミングベルトにより不図示のモータに連結されており、図2の矢印X方向に往復移動可能に支持されている。
固定読み方式での原稿読取りでは、固定読みガラス203上に積載された原稿に対して初期待機位置U(図2)で待機している第1スキャナユニット30aを、例えばA4サイズ原稿であれば位置V(図2)まで矢印X方向に一定速度で動作させて画像を読取る。一方、流し読み方式での原稿読取りでは、第1スキャナユニット30aを読取り位置W(図1)に待機させ、ADF10により、第1スキャナユニット30aの読取り部において原稿Geを一定速度で搬送した際の画像を読取る。
シート搬送手段としてのADF10は、スキャナ部20に対して回動可能に支持され、流し読みガラス201に対して開閉可能に支持されている。ADF10は、原稿積載トレイ121、ピックアップローラ101、分離ローラ102、捌きローラ103、搬送ローラ対104,106,108,110、レジストレーションローラ対105、プラテンローラ107,109を有している。さらにADF10は、排出ローラ対111、原稿排出トレイ122、裏面読取りガラス202、及び第2スキャナユニット30b等を有している。
ADF10により流し読み方式で原稿スキャンを行う際、ユーザーは、原稿積載トレイ121上に表面を上向きとして原稿Geを積載する。原稿積載トレイ121には、不図示の原稿サイズ検知センサが取り付けられており、原稿Geの縦横サイズを認識することができる。そして、認識した原稿サイズに応じたシーケンスに従い、原稿Geに対する画像読取りが行われる。
[流し読み時の搬送動作]
次に、図1に示した流し読み状態での搬送動作について説明する。すなわち、図1に示すように、原稿積載トレイ121上に任意の枚数積載された原稿Geは、ピックアップローラ101により給送され、分離ローラ102と捌きローラ103とによるニップ部で1枚ずつ捌かれる。さらに、捌かれた原稿Geは、搬送ローラ対104を介してレジストレーションローラ対105のニップ部まで搬送される。
このニップ部への到達時点では、レジストレーションローラ対105を静止した状態にしておくことで、原稿先端がそのニップ部で停止し、原稿搬送方向の上流側の搬送ローラ対104により原稿後端が所定量押し込まれることで原稿Geに湾曲を生じさせる。その湾曲による原稿Geのコシにより、原稿先端がレジストレーションローラ対105のニップ線にならい、原稿Geが斜め向きで搬送される現象を補正(斜行補正)する。
上記斜行補正の後、原稿Geは、レジストレーションローラ対105により搬送を開始され、搬送ローラ対106を通過し、その表面が流し読みガラス201上で一定の速度で読取られる。原稿表面の読取りの後、原稿裏面も読み取るオペレーションが実行される際には、続けて裏面読取りガラス202上の読み取り位置にて、第2スキャナユニット30bにより原稿裏面に対する読み取りが行われる。読み取り後の原稿Geは、搬送ローラ対110、排出ローラ対111によって原稿排出トレイ122に排出される。
本実施形態では、図3に示すように、ADF10とスキャナ部20は、画像形成装置本体150aの奥側に設けられたヒンジ装置131により連結されている。これにより、ADF10は、ヒンジ装置131における第1回動軸153回りに開閉動作させられる。ヒンジ装置131の内部には、圧縮コイルバネから構成されるヒンジバネ151が内蔵されており、ADF10が開く方向にトルクを付与している。なお、図3における符号154は、第2回動軸を示している。
[ADFの開閉動作]
次に、図3、図4及び図5を参照して、ADF10が画像形成装置本体150a側のスキャナ部20に対して開閉される状態について説明する。なお、図3は、本実施形態に係るADF10をスキャナ部20から開いた状態で示す側面図、図4は、ADF10をスキャナ部20に対して閉じた状態で示す側面図である。また、図5は、本実施形態に係るADF10及びスキャナ部20の一部を拡大して示す斜視図である。
図3〜図5に示すように、ADF10の底部における手前−奥方向には、奥側突き当て部134と、手前側突き当て部135、磁石132とが、奥側からこの順に設けられている。上記突き当て部134,135は、ADF10がスキャナ部20に対し閉じられた際に流し読みガラス上(透明部材上)の突き当て領域(非通紙領域)201a,201bに当接して隙間spを形成するようにADF側(シート搬送手段側)に設けられる。奥側突き当て部(突き当て部)134は、図3における円領域A内並びに図4における円領域D内に示すように、断面矩形状に下方に突出している。手前側突き当て部(突き当て部)135は、図3における円領域B内に示すように、手前側が後退した断面略矩形状にて下方に突出している。
磁石132は、図4における円領域C内に示すように、下方の、金属板等の被吸着板(被吸着部材)133に対して突出している。係止部材としての磁石132と被係止部材としての被吸着板133は、ADF10がスキャナ部20に対して閉じられた際に係止可能に対向するように設けられている。なお、磁石132として、永久磁石や電磁石を用いることが可能である。
奥側突き当て部134は、流し読みガラス201における突き当て領域201aに突き当たるように、ADF10の底面に対して位置決め固定されている。手前側突き当て部135は、流し読みガラス201における突き当て領域201bに突き当たるように、ADF10の底面に対して位置決め固定されている。奥側突き当て部134に対向する突き当て領域201aと、手前側突き当て部135に対向する突き当て領域201bとは、スキャナ部20の上面における手前−奥方向に位置している。
上記突き当て部134,135が流し読みガラス201の突き当て領域201aと突き当て領域201bに対して突き当たっていない場合、ADF10とスキャナ部20間の隙間spを搬送される原稿Geに対し、主走査方向で搬送抵抗差が生じる可能性がある。これにより、次のような問題を生じるおそれがある。
つまり、読取り画像の幾何特性が損なわれたり、読取り時に原稿浮きが生じて画像がぼけたり、原稿搬送時のショックによる色ずれが生じたりする問題のことである。シート通過用の上記隙間spは、奥側突き当て部134と手前側突き当て部135とが流し読みガラス201の突き当て領域201aと突き当て領域201bに夫々当接することによって保証される。この場合、奥側突き当て部134と手前側突き当て部135の内のいずれか一方の当接でも、隙間spの保証は可能である。なお、主走査方向とは、図5の流し読みガラス201の長手方向に沿う方向である。
本実施形態では、これらの問題を回避するために、以下のような構成を備えている。まず、ADF10の底面の前側に磁石132が配置され、スキャナ部20の上面の手前側には、磁石132に対向する被吸着板133が配置されている。
そして、磁石132の吸着面132eと被吸着板133の被吸着面(上面)との距離λ(図4の円領域C参照)は、ADF10の筐体10fが変形していない状態において、「0」ではなく、所定量存するように設定される。ここで、筐体10fが変形していない状態とは、具体的には、以下のような状態を示す。つまり、ヒンジ装置131からヒンジバネ151を外し、磁石132を磁力発生しない材料で同一形状のものに変更し、自重で撓んだ箇所を矯正すれば変形してない状態にすることができる。この場合には、通常、ADF10をスキャナ部20に対して適正な位置で突き当てる、または、軽量であれば撓み量が小さいので省略しても良い。
しかしながら、実際には、ヒンジ装置131による開放方向トルクとADF10の自重、磁石132の吸着力によってADF10の筐体10fが例えば円弧状に変形する。そのため、本実施形態では、少なくとも手前側突き当て部135を流し読みガラス201の突き当て領域201bに確実に当接させることができる(図6)。奥側突き当て部134に関してはADF10の剛性により突き当たらない場合もあるが(図6)、画像読取装置9の種類により奥側突き当て部134と突き当て領域201a間の距離が0〜0.5mm程度であれば、隙間spとしては許容されうる場合もある。
本実施形態は、図16にて後述する比較例における不都合な状態を改善している。まず、図16の比較例では、原稿Geに対する搬送抵抗差が主走査方向(図16の左右方向)に生じて、以下のような問題が生じるおそれがある。即ち、搬送抵抗差により読取り画像の幾何特性が損なわれる問題、読取り時に原稿浮きが生じて画像がぼけるという問題、原稿搬送時のショックによる色ずれが生じる問題等が発生するおそれがある。そこで、図16に示すタイプのADF10をスキャナ部20に対して所定角度の位置で停止状態にしたり、ユーザーがADF10を開放する方向に回動させる際の操作力を軽減したりするために、以下のようにしている。つまり、画像読取装置9の奥側に設けられたヒンジ装置131に、ADF10を開放方向に付勢する付勢手段(図11のヒンジバネ151参照)が設けられている。
図16の構成では、ADF10の筐体10fの奥側端部に開放方向のモーメントMが加わり、重心位置Gに自重Nが作用し、ADF10の前側端部に配置された永久磁石等の磁石132と、スキャナ部側に配置された金属板等の被吸着板133とを吸着させる。これにより、筐体10fは、奥側が持ち上がり方向で、手前側が垂れ方向の円弧状に変形する。そして、ADF10をスキャナ部20側に閉じた時に、上記突き当て部134,135より先に、ADF側の磁石132とスキャナ部側の被吸着板133とが突き当たってしまい、隙間(プラテンギャップ)spの保証(保障)に不都合を生じるおそれがあった。
そこで、筐体10fの変形を防止する対策として、補強部材を設けたり、ヒンジ装置131のバネ力を軽減したりすることが挙げられるが、トルクの大きさは、例えばA3原稿対応の高速画像読取装置では3000N・cm程度になる場合がある。そのトルクに影響されない補強部材を設けるということは、重量がさらに増すことであり、開閉時の操作性が低下するなどのデメリットが発生することになる。また、ヒンジ装置131には、ADF10の重量と略同等の開放方向のトルクを作用できなければ、ユーザーがADF10を開放する際の力が大きくなってしまい、操作性を損なうことになる。
そこで本実施形態では、図6に示すように、手前側突き当て部135が流し読みガラス201の突き当て領域201bに当接してから磁石132が被吸着板133に吸着するように距離λを設定する構成を備えている。ここで、距離λの値は、ADF10の構成、重量、磁石132の吸着力等によって異なる。そして、通常1〜2mm程度以内にて手前側突き当て部135が突き当て領域201bに突き当たることと磁石132と被吸着板133とが吸着できるような剛性に設定することが、画像読取装置9としては性能、操作性、外観の観点で必要である。
図1及び図7(a)に示すように、ADF10の前カバー10g(図3参照)から露出された操作レバー142に、回動軸141を介して磁石132が連結されている。この操作レバー142を同図の下方向から押し上げることで矢印A方向に回動させることで、被吸着板133に吸着している磁石132を同方向に捩る。このように、ADF10には、開閉時に用いられる操作レバー142が支持され、磁石(係止部材)132は、操作レバー142の操作に連動して被吸着板(被係止部材)133から離脱する方向に移動させられる。この場合、ADF10をスキャナ部20から開く際に操作レバー142を操作することで、磁石132と被吸着板133との係止状態を容易に解除できる。これにより、被吸着板133に対する磁石132の吸着状態を、軽い操作力で解除して、ADF10をスキャナ部20から容易に開放させることができる。
操作レバー142の上部には、ADF10の前カバー10gにおける対向部位(不図示)との間に縮めて設けられた圧縮コイルバネ143が配置されている。圧縮コイルバネ143により、図9にて操作レバー142を押し上げて磁石132を捩りながらADF10をスキャナ部20から開放させる際、操作の終了後にユーザーが手を離すと操作レバー142は圧縮コイルバネ143の付勢力で元の位置に復帰させられる。
図7(b)に示すように、磁石132には、調整ネジ132bが挿入される長丸孔状の取付け孔132aが形成され、取付け孔132aの両端部の左右対称な位置には、例えば1mmピッチの刻印132cが設けられている。回動軸141における磁石132の両端部には、磁石132の刻印132cとの高さを調節するための基準となる刻印141aが形成されている。
最初に刻印132cの最も上のラインを回動軸141の刻印141aに合わせた後、図4に示した磁石132の吸着面132eと被吸着板133の被吸着面との距離λを、最小値に対して大きくなる方向へ所定量(2mm程度)調整可能に構成されている。この調整機能によって、構成部品の寸法精度のバラツキから最適な距離λがバラツクことを補正することができる。
本実施形態では、調整機構(調整手段)46を備えている。調整機構46は、ADF10がスキャナ部20に対して閉じられた際に上記突き当て部134,135の少なくとも一方(特に手前側突き当て部135)が突き当て領域201a,201bに対応する側に当接してから、以下のようになるように調整する。つまり調整機構46は、この当接後、磁石132と被吸着板133とが係止可能となるように磁石132と被吸着板133間(係止部材と被係止部材間)の距離λを調整可能にする。
本実施形態では、磁石132が操作レバー142と一体的に設けられた回動軸141に連結され、調整機構46は、磁石132を回動軸141に対して移動させることで被吸着板133に対する磁石132の距離λを調整する構成を備えている。これにより、調整機構46を操作して磁石132を回動軸141に対し移動させることで、被吸着板133に対する磁石132の距離λを簡単に調整することができる。そして、調整機構46は、回動軸141に対する磁石132の移動量を視認可能な刻印(目盛り部)132cを有するので、サービスマンがメンテナンスの際に刻印132cを視認しながら距離λを簡単に調整することができる。本実施形態では、このような調整機構46においてADF10側の磁石132とスキャナ部20側の被吸着板133とを吸着させるだけの簡単な構成により、ADF10をスキャナ部20に対して安定して係止することができる。
ここで、図8は、本実施形態におけるADF10の開閉時のヒンジ回動軸周りのトルク線図である。このトルク線図では、縦軸にトルク(N・cm)をとり、横軸にADF10の開閉角θ(回動角度(゜))をとっている。
ADF10の開閉角θが20°未満の範囲では、ADF10の自重による閉じ方向のトルクがヒンジトルクより小さくなるようにチューニングされている。そのため、ADF10は跳ね上がり、開閉角θが20°以上の範囲においては、グラフに図示していないθが20°以上となった際に発生するヒンジ内の摩擦によるトルクとADF自重トルクとの総和が、ヒンジトルクと釣り合うようにチューニングされている。そのため、外力による支え無しにADF10はその開閉角θを維持して静止することができる。
この構成において、ADF10は自重で閉じることはなく、ユーザーがADF10に閉じ方向の力を加えて磁石132と被吸着板133とを吸着させることで、ADF10を閉じることができる。一方、ADF10を開く際には、操作レバー142を押し上げるように操作するだけで、ADF10を開閉角20°の位置まで開くことができるため、ADF10の重さをユーザーに感じさせることなくADF10を開くことができる。
以上の本実施形態によれば、調整機構46によりスキャナ部20に対しADF10を磁石132で固定する構成において、隙間spを最適に保持して、画像の読取り不良を回避することが可能になる。つまり、ADF10側の突き当て部(奥側突き当て部134、手前側突き当て部135)がスキャナ部20側の流し読みガラス201の突き当て領域201aと突き当て領域201bの少なくとも一方に対して突き当たって隙間spが保証される。これにより、画像不良等の発生を回避することが可能になる。
<第2の実施形態>
次に、本発明の第2の実施形態について、図10〜図13を参照して説明する。図10は、本実施形態に係るADF10に備えられたヒンジ装置131を示す斜視図、図11は、このヒンジ装置131の断面図である。図12は、ADF10におけるヒンジ装置131の高さ調整前の状態を示す概念図、図13は、ADF10におけるヒンジ装置131の高さ調整後の状態を示す概念図である。なお、本実施形態では、第1の実施形態と同一の部材には同一符号を付すと共に、構成、機能が同じものについてはその説明を省略する。
図3に示したヒンジ装置131は、図10及び図11に示すように、C面がスキャナ部20に固定されるベース部材155(図3も参照)と、第1アーム部材156と、D面がADF10のフレーム(不図示)に固定される第2アーム部材157とを有している。ヒンジ装置131は、C面をスキャナ部20に固定されたベース部材155に対しADF10の第1アーム部材156を回動可能に支持する第1回動軸153と、第1アーム部材156に対し第2アーム部材157を回動可能に支持する第2回動軸154を有する。
ヒンジ装置131は、ベース部材155に対してバネ支持軸158で回動可能に支持されたバネ支持板160と、第1アーム部材156にバネ加圧軸159で回動可能に支持された状態でバネ支持板160に連結されたバネ加圧板161とを有している。さらにヒンジ装置131は、バネ支持板160とバネ加圧板161との間に縮めて設けられた、圧縮コイルバネ等から構成されるヒンジバネ151を有している。第2アーム部材157における第1回動軸153の近傍には、第2アーム部材157に設けられたタップ部157Tにネジ込まれて第1アーム部材156の後端部に先端を当接させるヒンジ高さ調整ネジ162が設けられている。
第1アーム部材156は、ベース部材155に回転可能に支持された第1回動軸153を支点として矢印eの方向に回動可能となるように支持されている。第2アーム部材157は、第2回動軸154を支点として矢印fの方向に回動可能となるように支持されている。ヒンジバネ151の固定端側(図中左側)は、ベース部材155に固定されたバネ支持軸158を支点として回動可能に支持されたバネ支持板160に支持されている。また、ヒンジバネ151の他方側端部は、第2アーム部材157に固定されたバネ加圧軸159を支点として回動可能なバネ加圧板161に支持されている。ヒンジ高さ調整ネジ162は、第2アーム部材157のタップ部157Tに進退可能にネジ込まれ、調整後に接着剤により固定される。
以上の構成を備えることにより、ADF10はスキャナ部20に対して開放する方向へ付勢される。つまり、ADF10の開放に際して、ヒンジバネ151が、第1回動軸153を中心とするバネ加圧軸159の回動軌跡と、バネ支持軸158を中心とするバネ加圧軸159の回動軌跡との違いに応じて、付勢する状態を転換する。なお、上記第1アーム部材156、第2アーム部材157及びヒンジ高さ調整ネジ162等により、第1回動軸(回動部)153を支点としたADF(シート搬送手段)10のスキャナ部(画像読取装置本体)20に対する高さを変更可能な変更手段が構成される。
次に、図12及び図13を参照して、ヒンジ高さ調整ネジ162によるADF10の高さ調整について説明する。
即ち、ヒンジ高さ調整ネジ162を緩める(図12上方へ退避させる)と、第2アーム部材157が第2回動軸154を中心として図13の矢印G方向へ回動する。そして、ADF10の支持面(D面)が図13のように持ち上げられ、筐体10fのヒンジ取付け部に矢印G方向のモーメントが与えられる。これにより、ADF10の奥側突き当て部134と手前側突き当て部135の少なくとも一方を、流し読みガラス201の突き当て領域201a,201bの対応する側に確実に突き当てる状態に調整することができる。
本実施形態では、ヒンジ装置(ヒンジ手段)131が、第1回動軸(回動部)153を支点としたADF10のスキャナ部20に対する高さを変更可能なヒンジ高さ調整ネジ162等を有する変更機構(変更手段)80を備えている。変更機構80は、第1回動軸153を支点としたADF10のスキャナ部20に対する高さを変更可能な、ヒンジ高さ調整ネジ162、第2アーム部材157及び第1アーム部材156等から構成される。従って、たとえ筐体10fがより大きく変形した場合であっても、ADF側の奥側突き当て部134と手前側突き当て部135を、スキャナ部側の流し読みガラス201の突き当て領域201a,201bに対し確実に突き当てて隙間spを保証することができる。これにより、画像不良の発生を回避することが可能になる。
なお、本実施形態、並びに前述した第1の実施形態では、ADF10側に磁石132を配置し、スキャナ部20側に被吸着板133を配置したが、この関係は逆であってもよい。つまり、ADF10側に被吸着板133を配置し、スキャナ部20側に磁石132を配置することによっても、同様の効果を得ることが可能である。この場合、図7(a),(b)で説明した磁石132を操作レバー142で回動させる構成は、被吸着板133を操作レバー142で回動させる構成となる。或いは、これに代えて、ADF10側及びスキャナ部20側の双方に、吸着し合う逆極性の磁石をそれぞれ配置することによっても、同様の効果を得ることが可能である。
以上の本実施形態では、スキャナ部20に対してADF10を、第1回動軸153を支点として開閉可能に支持するヒンジ装置(ヒンジ手段)131を備える。そして、このヒンジ装置131は、上記変更機構80を備えている。これにより、調整機構46による距離λの調整に先立ち、奥側突き当て部134と手前側突き当て部135の少なくとも一方を流し読みガラス201の突き当て領域201a,201bに対し確実に突き当たるように変更機構80により調整する。これにより、その後の距離λの調整をより高い精度で実施することが可能になる。なお、本第2の実施形態の構成は、前述した第1の実施形態、及び後述する第3の実施形態においても、同様に用いることができる。
<第3の実施形態>
次に、本発明の第3の実施形態について、図14及び図15を参照して説明する。なお、図14は、本実施形態に係るフック171の操作系を示す斜視図、図15は、このフック171の操作系の位置関係を示す断面図である。なお、本実施形態では、第1及び第2の実施形態と同一の部材には同一符号を付すと共に、構成、機能が同じものについてはその説明を省略する。
本実施形態では、図6及び図7(a),(b)で説明した磁石132に代えて、係止部材としてのフック171を回動軸141に設け、被吸着板133に代えて、被係止部材としての被係止軸(凸部材)172を設けている。即ち、図14と図15のように、前述の突き当て部134,135の少なくとも一方(特に手前側突き当て部135)が突き当て領域201a,201bに対応する側に当接してからフック171が被係止軸172に係合するように距離λを設定する構成を備える。本実施形態においても、距離λの値は、ADF10の構成、重量等によって異なる。そして、通常1〜2mm程度以内にて手前側突き当て部135が突き当て領域201bに突き当たることとフック171の鉤部171eが被係止軸172に係合できる剛性に設定することが、画像読取装置9としては性能、操作性、外観の観点から望ましい。
本実施形態では、係止部材としてのフック171と被係止部材としての被係止軸172は、ADF10がスキャナ部20に対して閉じられた際に係止可能に対向するように設けられている。フック171は、図14及び図15に示すように、ADF10の前カバー10g(図13参照)から露出された操作レバー142に回動軸141を介して連結されている。この操作レバー142を図14の下方向から押し上げて矢印A方向に回動させることにより、被係止軸172に係合しているフック171を同方向に回動させる。これにより、被係止軸172に対するフック171の係合状態を、軽い操作力で解除して、ADF10をスキャナ部20から容易に開放させることができる。なお、被係止軸172は、スキャナ部20におけるフック171に対向する部位にのみ短く設けられた部材であり、軸状ではなく単なる爪状の部材として構成することも可能である。
このように、ADF10には開閉時に用いられる操作レバー142が支持され、フック171は、操作レバー142の操作に連動して被係止軸172から離脱する方向に移動させられる。この場合、ADF10をスキャナ部20から開く際に操作レバー142を操作することで、フック171と被係止軸172との係止状態を容易に解除することができる。
図7(a),(b)で説明した構成と同様に、操作レバー142の上部には、ADF10の前カバー10gとの間に圧縮コイルバネ143が縮めて設けられている。このため、操作レバー142を押し上げてフック171を回動させながらADF10をスキャナ部20から開放させる際、操作の終了後に解放された操作レバー142は元の位置に復帰させられる。
図14及び図15に示すように、フック171の両端部171a,171aには、調整ネジ173がネジ込まれる長丸孔状の取付け孔171bが形成され、取付け孔171bの両端部の左右対称な位置には、例えば1mmピッチの刻印171cが設けられている。回動軸141におけるフック171の両端部には、フック171の刻印171cとの高さを調節するための基準となる刻印141aが形成されている。
本実施形態では、ADF10がスキャナ部20に対して閉じられた際に上記突き当て部134,135の少なくとも一方が突き当て領域201a,201bの対応する側に当接してからフック171と被係止軸172とが係止可能となるようにする。そのため、鉤部171eと被係止軸172の下部との間の距離λを調整可能な調整機構(調整手段)47を備えている。この調整機構47は、フック(係止部材)171に設けられた取付け孔(長孔部)171bと、取付け孔171bを貫通して回動軸(支持部)141にネジ込まれる調整ネジ173とを有している。
以上により、フック側の取付け孔171bを貫通して回動軸141のネジ孔141bにネジ込まれる調整ネジ173を緩めてフック171の回動軸141に対する位置を調整した後、調整ネジ173を締めることで、フック171の距離λを簡単に調整できる。そして、以上の調整機構47を用いて調整して、ADF10側のフック171とスキャナ部20側の被係止軸172とを係合させるだけの簡単な構成により、ADF10をスキャナ部20に対して安定して係止することができる。
なお、本実施形態では、ADF10側にフック171を配置し、スキャナ部20側に被係止軸172を配置したが、この関係を逆にすることも可能である。その場合は、スキャナ部20側において鉤部171eを上向きに且つスキャナ部20の手前側を向くように配置されたフック171に対し、操作レバー142の操作で回動軸141と共に矢印A方向に回動するように被係止軸172を回動軸141に配置する。この場合にも同様の効果を得ることが可能である。
フック171と被係止軸172とは、ADF10の筐体10fが変形してない状態において図14における矢印K方向から見た状態の図15に示すような、第1の実施形態と同じ距離λだけ離れた位置で係合する位置関係になっている。また、フック171の回動軸141に対する取り付け位置は、図7(b)に示した第1の実施形態の磁石132と回動軸141との取り付け方法と同等な不図示の構成によって、距離λを最小値に対して大きくなる方向へ所定量(2mm程度)調整可能にしている。つまり、最初に刻印171cの最も上のラインを回動軸141の刻印141aに合わせた後、図15に示した被係止軸172の鉤部171eと被係止軸172下部との距離λを、最小値に対して大きくなる方向へ所定量(2mm程度)調整可能に構成されている。この調整機能によって、構成部品の寸法精度のバラツキから最適な距離λがバラツクことを補正することができる。
このように、フック171は、操作レバー142と一体的に設けられた回動軸141に連結され、調整機構47は、フック171を回動軸141に対して移動させることで被係止軸172に対するフック171の距離λを調整する。この場合、調整機構(調整手段)47を操作してフック171を回動軸141に対し移動させることで、被係止軸172に対するフック171の距離λを簡単に調整することができる。調整機構47は、回動軸141に対するフック171の移動量を視認可能な刻印(目盛り部)141a,171cを有するので、サービスマンがメンテナンスの際に刻印141a,171cを視認しながらフック171の距離λを簡単に調整することができる。
以上説明した本実施形態でも、ADF10側の奥側突き当て部134、手前側突き当て部135の少なくとも一方がスキャナ部20側の流し読みガラス201に対し確実に突き当たって隙間spが保証されるため、画像不良等の発生を回避することが可能である。なお、上述した距離λの調整は、サービスマンの他にユーザーが行うことも可能である。また、製品の工場出荷前に、組み立てられた製品の個別差を修正するために製造者が行うことも可能である。