JP6461037B2 - 微生物を有する洗浄剤及び微生物を使用する洗浄方法 - Google Patents
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Description
上記の対象物に付着した埃は、振払や吸引によってある程度除去する事ができる。しかし、建物の天井、壁、床、外壁や彫刻の表面に生育する黴は、対象物の表面に浸透したり、根をはっているため、振払や吸引によって除去することは困難である。このような建物や美術品に生育する黴としては、グルゴ酸発酵菌で酸化、中性化することで建材の劣化の原因となるA.niger(アスペルギルス・ニガー)、日本国内に特に多く樹脂やボードに害を及ぼすA.Versicolor(アスペルギルス・バージカラー)、建材・住環境・食品等衣食住のすべてを汚染するpenicillium(ペニシリウム)、輸入木材・畳・ボード・ベニヤ板等に繁殖するEurotium(ユーロチウム、日本名:カワキコウジカビ)、建材・工業製品等の損耗原因となる好浸透圧黴のA.restrictus(アスペルギルス・レステリクタス)、浴室や湿度の高い箇所の塩化ビニル樹脂等に繁殖し建材の損耗事故の原因となるAureobasidium(アウレオバジリウム、日本名:黒色酵母様菌)、アフラトキシンを産生し人・動植物に対し毒性を有するFusarim(フザリウム、日本名:赤カビ)、木材・塗料・樹脂の劣化や腐朽やアレルゲンの原因ともなり紫外線・加熱に高い抵抗性を有するCladosporium(クラドスポリウム、日本名:クロカビ)、湿地の土壌中に多く、毒物アフラトキシンの前駆物質といわれるChaetomium(チャイトミウム、日本名:ケマタカビ属)、日本国内に多い木材腐朽菌Trichoderma(トリコデルマ)等が知られている。
又、近年の気候変動により、日本国内における高温多湿化は顕著になり、黴の成育状況、被害状況に大きな変化が現れている。そのようなことから、埃や黴が原因のアレルギー、シックハウス、真菌症といった問題は益々深刻度合いを増している。
しかし、次亜塩素酸ソーダのような塩素系漂白剤、ハイドロサルファイト等の漂白剤を主成分とするものは、黴色素の漂白力と黴の除去性能は優れているものの、酸性の洗浄剤と混合した場合に人体に有毒な塩素ガスが発生したり、塩素臭が強すぎる等の欠点を有している。特にトイレ等の床や壁等に付着している尿素等が前記の洗浄剤と化学反応をおこし、トリハロメタン(発ガン性物質)が発生することが知られている。又、ハロゲン等の漂白剤は、汚れや黴色素を漂白するのみで、黴自体を消滅させることはできなかった。
又、過酸化水素水を主成分とする酸素系漂白剤を主成分とするものは、酸素系漂白剤単体では十分に黴の除去・予防を行うことができなかった。そのため他の漂白活性化剤等と併用して使用する必要があった(例えば、特許文献2)。又、酸素系漂白剤も汚れや黴自体を一時的に漂白するだけで、黴の発生を防止することはできなった。それどころか、生分解率の低い洗浄剤では、かえって黴の増殖を促す環境を作ってしまうという欠点があった。
本発明者は、上記のような様々な問題点に鑑みて、枯草菌を使用した洗浄剤を発明した(特許文献6参照)。この特許発明に係る洗浄剤によってビニルクロス等の建材の表面に発生する黴の除去を図ることができた。
しかし、上記特許発明に係る洗浄剤は、木材やセメント材等で形成されている壁や天井に発生した黴の除去及び予防に対しては万全な効果を発揮するものではないことが分かった。そこで本発明者は、木材から製造された彫刻、文化財や、檜風呂に付着した黴について、研究を続けた結果、従来の洗浄剤は、このような対象物の表面の奥にある黴の根にまで届いていないことを突き止めた。0.75μm程度である微小な黴菌が、木材やセメント材の奥の方へ入り込んで根を作っていることも判明した。
また美術品や文化財の場合は、高圧洗浄が困難である。高圧洗浄を使用せずに手洗いで洗浄し、微生物の活性による分解能や抗菌力を活用して、汚れ、黴、苔、藻、錆、エフロレッセンスを除去し、併せて美観を維持する方法の開発が望まれている。
そこで本発明は、幅広い菌種に対して抗黴効果を有する生理活性物質である洗浄剤の提供を目的とする。特に胞子を形成する微生物に対する顕著な抗黴効果を有する洗浄剤の提供を目的とする。
また本発明は、洗浄剤の主成分となる菌の過度な増殖を抑制し、微生物が産生する酵素、抗菌活性物質のみを使用した洗浄剤を提供することを目的とする。
また本発明は、錆又はカルシウムスケールを分解する洗浄剤を提供することを目的とする。 さらに本発明は、洗浄対象物にとって不要なもののみ分解消滅させ、有効かつ清潔な状態に復元し、残存させると共に、使用する菌の活性、安全性、有効性を継続的に調節することにより、人体や生態系といった地球環境へ有効かつ安全に作用する洗浄方法を提供することを目的とする。
(1)培養された微生物を付着させることにより汚染対象を浄化する手法に使用される洗浄剤において、少なくとも、芽胞状態の枯草菌、デスルフォビブリオ属菌、シュードモナス属菌(Pseudomonas)に属する微生物菌体、からなる液状又は半流動状の物質を洗剤とすることを特徴とする微生物を有する洗浄剤である。
ここで芽胞状態の枯草菌とは、好気性、グラム陽性桿菌、地球環境中の常在菌)の代謝産物である分割酵素である(標準枯草菌IFO13719に対する比較としてプロテアーゼ50.1倍、アミラーゼ8.2倍、セルラーゼ13.6倍の分解能を有する。)。ここでセルラーゼはセルロースを分解する酵素で、一般的(標準的)なセルラーゼは中性又は酸性でなければ活性しにが、本発明に使用される枯草菌はアルカリ性(石鹸水基材)において活性化する特徴を有している。
また本発明で使用されるシュードモナス属菌(好気性、グラム陰性桿菌、地球環境中の常在菌)の代謝産物の分解酵素(特有のタンパク分解酵素である。化体そうになった硫酸塩や硝酸塩を分解消滅させる酵素である。)である。
ここで本発明で使用されるマグネトスピリラム属菌(好気性、グラム陰性、湖沼や海の常在菌)であって、磁性細菌でマグネトソームを細胞に取り込ませることで水中や物質中の金属や錆を容易に処理できる細菌である。
(3)前記洗浄剤が、更に芽胞状態の枯草菌より抽出精製された抗菌活性物質HM−3000、プロテウス属菌から抽出精製されたバクテリオシンを含有することを特徴とする上記(1)又は(2)に記載された微生物を有する洗浄剤である。
一般的に、抗生物質には2つの種類があることが知られている。アオカビから精製するペニシリンの如く、あらゆる菌を区別なく死滅させる殺菌性抗生物質と、自己にとって不要な細菌のみを死滅させたり、増殖中の菌の発育速度を抑制するために産生される静菌性抗生物質が知られている。本発明に使用される芽胞状態の枯草菌より抽出精製された抗菌活性物質HM−3000、プロテウス属菌から抽出精製されたバクテリオシンは、静菌性抗生物質に該当するため、タンパク質の合成を抑制するだけで、全ての細菌を死滅させるものではなく、耐生菌の出現が発生し難い。又、本発明に使用される抗菌活性物質HM−3000とバクテリオシンは、既存のイツリンよりは発育阻止の種類と範囲が広く(MICが低い)、かつ黴や細菌に対する抗菌力を有する点にも特徴が認められる。
本発明に係る洗浄剤は、上記(1)乃至(3)のいずれか一に記載された洗浄剤と、複合石鹸水に充足と枯草菌(芽胞)を配合した洗剤に添加して使用しても良い。ただし、湿潤性のある材料には使用することはない。
(5)汚染物を浄化する方法において、生分解性を有する複合石鹸水と、少なくとも芽胞状態の枯草菌を混合する工程、前記複合石鹸水と前記枯草菌の混合物を塗布及び/又は噴霧する工程、デスルフォビブリオ属菌を塗布及び/又は噴霧する工程、シュードモナス属菌(Pseudomonas)に属する微生物菌体を塗布及び/又は噴霧する工程、を有することを特徴とするバイオレメディエーション技術による洗浄方法である。
ここでバイオレメディエーション技術とは、自然の生態系が持つ浄化能力を人為的に強化し、微生物が作り出す酵素の力で汚れや臭気等の分解を促進する技術のことである。多大なエネルギーを投下する必要がなく、二次汚染の問題も生じない高環境特性を有する技術である。本発明は、バイオレメディエーション技術の一種であて、洗浄対象物にとって不要なもののみ分解消滅させ、有効かつ清潔な状態に復元し、残存させることができる。
(7)前記洗浄方法において、更にデスルフォビブリオ属菌の芽胞菌を非イオン水に溶解させ、汚染物の付着した洗浄対象物に塗布する工程を有することを特徴とする上記(5)又は(6)に記載されたバイオレメディエーション技術による洗浄方法である。
本発明に係る洗浄方法は、デスルフォビブリオ属菌の芽胞菌を非イオン水に溶解させ、特殊な工法で洗浄対象物に塗布することもある。
また本発明は、発生している埃及び黴を除去するだけでなく、耐性菌の発現を長期にわたって予防することにより黴の発生を予防する効果を奏する。
また本発明は、洗浄剤の主成分となる菌の過度な増殖を抑制し、微生物が産生する酵素、抗菌活性物質のみを使用した洗浄剤を提供するという効果を奏する。
更に本発明は、洗浄対象物にとって不要なもののみ分解消滅させ、有効かつ清潔な状態に復元し、残存させると共に、使用する菌の活性、安全性、有効性を継続的に調節することにより、人体や生態系といった地球環境へ有効かつ安全に作用する洗浄方法を提供することを目的とする。
下記に記載された物質の定性分析及び定量分析は、HPL+Cによって計測した値を使用している。
本発明に係る洗浄剤は、芽胞状態の枯草菌、デスルフォビブリオ属菌、シュードモナス属菌に属する微生物菌体、マグネトスピリラム属菌、を含有するか、別々の洗剤として塗布される。
芽胞状態の枯草菌を3.0×109/ml未満、又はシュードモナス属菌1.0×109/ml未満とすると、本発明の効果を十分に発揮できない可能性がある。一方、芽胞状態の枯草菌を7.0×109/ml超、又はシュードモナス属菌3.0×109/ml超とするのは、純粋培養による増殖が現在の技術では困難となるからである。特に上限値によっては、純粋培養の方法を工夫することにより、前記の値を超えたものを産生して用いても良い。
また、シュードモナス属菌に属する微生物菌体とは、特にシュードモナス・スタッツェリ(Pseudomonas stutzeri)が好ましく、グラム陰性桿菌で、好気性真正細菌の一属である。シュードモナス・スタッツェリは、公害物質や膠質の固着した汚れを強力に分解する性質を有しているためである。建材に生育する黴を分解する作用を有するものであればいずれの菌株を用いても良いが、本発明者が現在認識している菌株の中では、シュードモナス属NBRC(NITE Biological Resource Center)14165を使用するのが最も好ましい。かかる菌株は、増殖可能であり、安全レベルはハザードレベル1である(ハザードレベル1とは、一般需要者にも取扱い可能なレベルである。)。もちろん本発明は、前記菌株に限定するものではなく、人工合成有機物を処理する能力がある菌株であれば良い。
本発明で使用される芽胞状態の枯草菌より抽出精製された抗菌活性物質HM−3000は、世ぼれの内部又は糸状になった黴等の菌に作用させることにより、菌糸又は菌体を変形・膨潤させ、細胞破裂を起こさせると考えられる。又、細菌に対しても同様の作用が働くと考えられる。すなわち、汚れ(油脂、タンパク質等)の表面に接すると、タンパク質や脂質を変形させ、親水性が表出し、汚れが除去される等の作用が確認されるため、本発明者は、HM−3000に界面活性作用があることを見出している。
本発明で使用されるHM−3000は、静菌性抗菌材であるため、他の細菌の全てを死滅させることを目的としない点に特徴を有する。基本的には、病原細菌(常在菌以外)の細胞箇所の細胞壁合成を阻害する物質である。一般的な殺菌剤は、pH10以下でなければ殺菌効果が表出しないが、本発明者は、HM−3000はpHに関係なく抗菌性を有することを見出した。
本発明の実施形態1で使用される複合石鹸水を以下の方法で製造した。
石鹸水 64〜68%(石鹸濃度34%)
トリエアノールアミン(TEA) 0.14%
アミソールCDE 1〜4%
ポリエチレングリコール(PEG)0.1〜1%
重曹 0.003%
水 残量
上記において石鹸濃度は石鹸水の濃度は、下記式によって算出される。
γs=γsw+γwCOSθ
(γs,γw,γswは、それぞれ固体、水及び固体/水間の表(界)面張力であり、θは接触角である。)
次にシュードモナス属菌の代謝産物(分解酵素)を10〜20ユニット(力価)まで水道水で稀釈した後、得られた稀釈液を前記花崗岩に塗布した。
しばらく放置した後に、デスルフォビブリオ(芽胞)106〜108を粉末状にして使用時に精製水に添加し、直ちに花崗岩に塗布した。その後、表面の目地をブラシでこすり、浮いた汚れをウエスタオルで拭き取った。
ここで必要に応じてマグネトスピリラム属菌を添加した洗剤を塗布しても良い。自然環境下で風雨に曝された外壁には、硝酸性窒素、アンモニア性窒素、リン酸イオン等が付着している。更に金属類に腐食をもたらす一酸化炭素、硫黄酸化物(亜硫酸ガス)、窒素酸化物、炭化水素、鉛化合物、硫酸ミスト、有機塩素化合物、過酸化物、重金属等も付着している可能性がある。このような磁性細菌におけるマグネトソームを細胞に取り込ませることで、黴や藻類の栄養素となり得る金属類や錆を除去することが可能となる。
上記洗浄方法を実施したところ、8mmの深目地においても汚れ除去が可能であることが判明した。又、表面の汚れ、黴、藻、苔、及びエフロレッセンスが除去されて、既存外壁面の美観が回復した。又、壁面の明度を測定した結果も極めて良好であった。
上記洗浄方法を実施した花崗岩を、5年間定置観測を行った。そしてバイオテクノロジーの評価を行った結果、黴、藻の再発生はほとんど見られず、深刻な環境汚染も見られないことが分かった。
また上記の洗浄方法は、高圧洗浄ができない室内、美術品及び文化財においても有用である。又、高環境性を有するため、汚染水の流出が問題となる場所に対応することも可能である。特に高圧洗浄による水粗いとの比較においては、再塗装の剥離、浮きの防止に有効である。
外壁として50年以上風雨に曝された花崗岩の一部に高圧洗浄による洗浄を施した。かかる工法は、約1500kgf/cm2で石表面に吹き付けて行うものであった。水の使用量は毎分5リットル程度、施工可能高さは約100mであった。その結果、石の表面の汚れは、ほぼ除去できたが、石の表面が荒れてしまい、復元は不可能となった。
このような高圧洗浄による洗浄は、洗剤として酵素系中性洗剤と希塩酸が使用されている(1kgf/cm2=98.0665MPa)。
そのため、ブラシをかけた部分が白っぽくなったり、ノズルの移動に伴う筋状のムラが発生した。また洗浄後に赤錆の発生が目視で確認された。
またレンガに発生するエフロレッセンスは、材料中の塩類(可溶性塩類)や材料の変調及び外部からの供給によって発生する。エフロレッセンスに硫酸ナトリウム等が含まれた場合は、32℃前後で10水塩が産生され、体積は無水塩の4〜5倍になるため、石材やタイル等の表面を砂状に破壊する。建築工法によるエフロレッセンスを防止するための基本的な方法は、CaSO4(硫酸カルシウム)の流出や産生を断つことであるが、いずれも有効な方法とはいえない。又、エフロレッセンスが発生した時の建築学的な対処方法としては、清水で洗い落とすことと、弾性研磨剤を使用して機械的に除去する方法が挙げられるが、本願の出願時点では、いずれも有効な方法とは言えない。
例えば、酵素系漂白剤、アルカリ性のリムーバー、塩素系漂白剤、ブリーチイング、スピリッツ(中性)、ライスパウダーペースト工法、ドライクリーニング工法等が挙げられる。 他にトリクレンを米粉と攪拌し石材の上に厚さ約1mmで湿布し約20分毎に取り替える方法がある。またコンクリートに付着した木アクの除去としてジクロロメタンを使用する等も知られている。しかし、トリクレンは劇毒物で発ガン性物質で肝機能障害を起こす危険性がある。又、ジクロロメタンは胆管ガンの原因物質として見られており、米国では発ガン物質として特定されている。
洗浄対象物を木材として、本発明に係る洗浄方法を実施した。
木材を水拭きした後に上記実施例1で製造された複合石鹸水及び枯草菌(芽胞)106と同様の洗浄剤を製造し、木材の表面に塗布した。
次にシュードモナス属菌を木材の表面に塗布した。この際、水に3〜5%添加した。
次にデスルフォビブリオ属菌を木材の表面に塗布した。この際、水に1〜2%添加した。ここで必要に応じてマグネトスピリラム属菌を添加することができる。このような磁性細菌におけるマグネトソームを細胞に取り込ませることで、黴や藻類の栄養素となり得る金属類や錆を除去することが可能となる。
更に、HM−3000を木材の表面に塗布した。この際、水に0.001〜0.003%添加した。
木材を分解する菌類は、原核菌(細菌)と真核菌類(黴、酵母)に分類できる。実施例2に係る洗浄方法は、真核菌類による腐朽、木材腐朽菌による軟腐朽の他、木材変色菌による木材の汚染や着色及び変色を洗浄の対象とする。
本実施例による洗浄方法を実施した結果、美観を回復するのみではなく、木材の内部に侵入した菌類をバイオクリネス洗剤で抗菌、不活性化し、木材を長く美しく存続させることができた。
従来の木材の洗浄方法である、いわゆるアク洗い洗浄を実施した。過酸化水素水(85%)、亜塩酸ナトリウム(23%)、アルカリ剤及びフッ化水素(残部)を洗剤として使用した。 上記の洗剤はいずれも劇毒物であり、木材が漂白されて元の風合いを失うのみならず、地球環境にも害を与える危険がある。
すなわち、木材の劣化、軟腐、汚染変色は菌類によるもので、菌に対する抗菌力がない洗剤では木材の復元はできない。木材の腐朽は、セルロース、リグニン、ヘミセルロースの成分が菌によって食傷されるために起こる。本発明者は、腐朽の原因菌として、アクチノミセス属、シュードモナス属、フザリウム属及びケトミウム属であり、木材のリグニンを分解するのは白色腐朽菌に限定されることを見出している。木材が腐朽することによって、腐朽菌が蓚酸を産生し鉄(釘)等も腐食させた。
実施例1で製造した複合石鹸水に、実施例1と同様に芽胞状態の枯草菌を添加した洗剤に、シュードモナス属菌に属する微生物菌体を1〜3%添加した。このようにして得られた洗剤を稀釈倍率0.1〜0.5にて稀釈して洗剤を製造した。ここで必要に応じてマグネトスピリラム属菌を添加することができる。
かかる洗剤で化学繊維を洗浄した後、菌活性物質HM−3000を噴霧した後、リンス洗浄を実施した。
かかる洗浄方法を実施した結果、化学繊維に付着した汚れや、シミが除去された。化学繊維に付着した汚れやシミの原因は、細菌、黴、硫酸還元菌、藻類、人の垢、フケ等の汚れ、そして温度・湿度・害虫等による腐敗、変敗、腐朽が引き起こされ、付着した微生物の分解力による破壊と考えられる。本発明に係る洗浄剤は、化学繊維における汚れ及びシミを、定期的に洗浄することによって、抗菌と微生物同士の拮抗作用を促進し、餌(栄養素)を分解、消滅させ、良好な環境を作り出し、戦場対象物を保存する作用を有する。
このような洗浄剤は、化学繊維のみならず天然繊維の洗浄にも利用できる。具体的な洗浄対象物としては、カーペット、布張り家具、布クロス(布張り壁、天井)、皮革、絵画、彫刻、工芸品、考古資料、史跡、古墳、遺跡等における化学繊維及び天然繊維の洗浄が挙げられる。
従来における化学繊維及び天然繊維の洗浄方法としては、ベンジン、ミネラルターベン、アルコール、トリクロールエタン、テンピン油、高級アルコール洗浄、アンモニア水、炭酸ソーダ、蓚酸、過マンガン酸カリ、ロガリット、ハイドロサルファイト、二酸化塩素、次亜鉛素酸ナトリウム、過酸化水素水、塩素系漂白剤、パラフォルムアルデヒド(燻蒸剤)、プロティナーゼ等を使用した洗浄方法が知られていた。
例えば、1982年に行われた国宝「高松塚古墳」の修復は、アルコールで拭く、パラフォルムアルデヒドによる燻蒸が行われた。その結果、黴及び殺菌が滅殺したが、2001年頃から黴が大発生した。この原因は、微生物を殺菌したまま放置することにより、その残渣が繊維に付着し、新たに着床する黴や細菌の栄養素となり、微生物が更に増えることが原因と見られている。
Claims (3)
- 汚染物を浄化する方法において、生分解性を有する複合石鹸水と、少なくとも芽胞状態の枯草菌を混合する工程、前記複合石鹸水と前記枯草菌の混合物を塗布及び/又は噴霧する工程、デスルフォビブリオ属菌を塗布及び/又は噴霧する工程、シュードモナス属菌(Pseudomonas)に属する微生物菌体を塗布及び/又は噴霧する工程、を有することを特徴とするバイオレメディエーション技術による洗浄方法。
- 前記洗浄方法に、更にマグネトスピリラム属菌を含有する液状又は半流動状の物質を塗布及び/又は噴霧する工程を有することを特徴とする請求項1に記載されたバイオレメディエーション技術による洗浄方法。
- 前記洗浄方法において、更にデスルフォビブリオ属菌の芽胞菌を非イオン水に溶解させ、汚染物の付着した洗浄対象物に塗布する工程を有することを特徴とする請求項1又は2に記載されたバイオレメディエーション技術による洗浄方法。
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