JP6460884B2 - 中空樹脂粒子の製造方法 - Google Patents

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Description

本発明は、中空樹脂粒子の製造方法に関する。更に詳しくは、本発明は、シェルに囲われた1つの中空(コア)を持ち、かつシェルに微細貫通孔を有するコア・シェル型の中空樹脂粒子の製造方法に関する。
粒子内部に中空を有する中空樹脂粒子、言い換えると、シェルで囲われた中空を有する中空樹脂粒子は、中空の存在によりシェルを構成する樹脂の物性とは異なる物性を示す。例えば、中空が空気で満たされることで、中空樹脂粒子の軽量化が可能である。また、中空内で光が乱反射するため、隠蔽性、光沢等の光学特性を持ち、光散乱剤として利用できる。
また、中空を各種の液状や固体状の物質で満たすことで、中空樹脂粒子は物質のマイクロカプセルとして機能させることができる。このようなマイクロカプセルは、医薬品を内包して体内を運搬させるドラッグデリバリーシステムの担体として利用できる。更に、シェルが貫通孔を有することで、中空樹脂粒子に徐放性を付与できる。徐放性を備えた中空樹脂粒子は、例えば、香料を内包した徐放性マイクロカプセルとして利用できる。
シェルに貫通孔を持つ中空樹脂粒子の製造方法としては、例えば特開2006−131738号公報(特許文献1)に記載された方法がある。この方法では、シード粒子に加水分解性を有する重合性官能基を複数有している単量体を吸収させ、次いで単量体を重合させて樹脂粒子を得、アルカリ処理によって上記単量体の重合体を除去することにより樹脂粒子を中空多孔質化させて中空樹脂粒子が得られている。
また、特開2005−232426号公報(特許文献2)では、シード粒子に単量体、有機溶媒、重合開始剤を吸収させ、次いで単量体を重合させることで、開口部を持つ中空樹脂粒子を作製できると記載されている。
特開2006−131738号公報 特開2005−232426号公報
特許文献1の製造方法では,中空の大きさとシェルに形成される孔(シェル孔)の大きさが取り除く単量体の量に依存する。単量体の量を多くした場合、中空が大きくなる反面、シェル孔が大きくなり、単量体の量を少なくした場合、シェル孔は小さくなるが、中空も小さくなる。そのため、内包量とシェル孔の調整が難しく、徐放性の調整が困難であるという課題があった。
特許文献2の製造方法では、中空まで貫通する開口部が単独で存在する。この粒子の開口部は透過型電子顕微鏡で観察できるほど、中空に対して大きいため、内包物の保持ができず、徐放性を有する粒子が得られないという課題があった。
かくして本発明によれば、シェルに囲われた1つの中空を持つ中空樹脂粒子であって、前記中空樹脂粒子が、350℃以上の熱分解開始温度を有し、前記シェルが、10〜50nmの範囲内の直径の微細貫通孔を有し、かつ前記中空樹脂粒子の平均一次粒子径に対して、0.03〜0.25の比の厚さを有する中空樹脂粒子の製造方法であって、
前記多官能性モノマーと、任意に単官能性モノマーと、非反応性溶媒とを含む混合溶液を水溶液に分散し、次いで前記多官能性モノマーと単官能性モノマーとを重合させ、
前記非反応性溶媒を除去することにより中空樹脂粒子を得る方法であり、
前記非反応性溶媒は、100gの水に溶解する量が0.1g以下である疎水性溶媒であり、
前記非反応性溶媒の使用量が、前記多官能性モノマーと単官能性モノマーとの混合物1重量部に対して、0.5〜5重量部の範囲である
ことを特徴とする中空樹脂粒子の製造方法が提供される。
本発明によれば、かかる従来技術の欠点を解消した中空樹脂粒子が提供される。即ち、1つの中空(コア部)の割合(空隙率)が高く、シェルが中空へ通ずる微細な貫通孔を備えることで、徐放性を有する中空樹脂粒子及び上記中空樹脂粒子の製造方法を提供できる。
また、本発明によれば、下記のいずれかの態様を有する場合、徐放性を有する中空樹脂粒子を提供できる。
(1)中空樹脂粒子が、0.05〜10μmの平均一次粒子径を有する。
(2)シェルが、2〜20個のエチレン性不飽和基を有し、かつ30〜100g/molの官能基当量の多官能性モノマーに由来する。
(3)多官能性モノマーが、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレートから選択される。
更に、重合が、ラジカル発生剤としての水溶性の重合開始剤の存在下で行われる場合、より徐放性を有する中空樹脂粒子を生産性よく製造できる。
実施例1の中空樹脂粒子及びその断面の写真である。 実施例1の中空樹脂粒子の微細貫通孔の大きさの測定結果を示す写真である。 比較例1の中空樹脂粒子及びその断面の写真である。 比較例1の中空樹脂粒子の微細貫通孔の大きさの測定結果を示す写真である。
(中空樹脂粒子)
(1)形状
中空樹脂粒子は、シェルに囲われた1つの中空(コア部)を持っている。1つの中空を持っていることで、中空樹脂粒子に占める中空の割合を高くすることができるので、徐放性を中空樹脂粒子に付与できる。なお、中空を満たす媒体は、空気のような気体でもよく、水のような液体でもよい。満たす媒体は、中空樹脂粒子の用途に応じて適宜選択できる。
中空樹脂粒子は、その平均一次粒子径に対して、0.03〜0.25の比の厚さのシェルを有している。この範囲の比は、1つの中空の割合(空隙率)が高いことを示している。比が0.03未満の場合、シェルが薄すぎて、粒子状の形状を保つことが難しくなることがある。比が0.25より大きい場合、中空の割合が低くなり、内包物の保持ができず、徐放性を有さないことがある。好ましい比は0.05〜0.22であり、より好ましい比は0.12〜0.18である。
シェルは、10〜50nmの範囲内の直径の微細貫通孔を有している。この範囲内の微細貫通孔を有していることで、徐放性を中空樹脂粒子に付与できる。直径が10nm未満の場合、内包した物質の放出ができなくなることがあり、徐放性を示さないことがある。直径が50nmより大きい場合、徐放性を調整し難いことがある。好ましい直径は15〜45nmであり、より好ましい直径は20〜40nmである。
また、中空樹脂粒子は、0.05〜10μmの平均粒子径を有していることが好ましい。平均粒子径が0.05μm未満の場合、懸濁重合中にモノマー成分が重合して生じるポリマーと非反応性溶媒との相分離が生じにくくなり,中空樹脂粒子が得難くなることがある。平均粒子径が10μmより大きい場合、微細貫通孔を生じにくくなると共に、塗工剤や樹脂と中空樹脂粒子とを混練した際に、表面の凹凸が大きくなってしまい、平滑性を出すことが難しくなることがある。好ましい平均粒子径は0.1〜5μmであり、より好ましい平均粒子径は0.3〜1μmである。
(2)構成成分
中空樹脂粒子は、350℃以上の熱分解開始温度を有している。この熱分解温度は、シェルを構成する樹脂が示す値である。熱分解開始温度が350℃未満の場合、シェルに微細な貫通孔が生じ難くなることがある。上限は特に限定されず、シェルの微細貫通孔を確保し、中空構造をより確実に維持するには、熱分解開始温度が350℃〜600℃であることが好ましく、400〜600℃であることがより好ましい。
上記熱分解温度を示しさえすれば、シェルを構成する樹脂は特に限定されない。例えば、多官能性モノマーに由来する樹脂が挙げられる。ここでの多官能性モノマーとは、少なくともエチレン不飽和基を2個以上有するモノマーを意味する。多官能性モノマーの中でも、2〜20個のエチレン性不飽和基を有し、かつ30〜100g/molの官能基当量の多官能性モノマーが好ましい。発明者等は、シェルが微小なポリマー粒子の集合体であると推測している。エチレン性不飽和基が20個より多い場合、シェルが硬くなる反面、脆くなるため、シェルが割れて中空構造を維持できなくなることがある。100g/mol以下の場合、ポリマー粒子同士の接着性が低くなり、シェルを形成する一部のポリマー粒子が脱離し、シェルに微細な貫通孔を好適に生じさせ得る。100g/molより大きい場合、シェルに微細な貫通孔が生じ難くなることがある。30g/mol未満の場合、ポリマー粒子同士の接着性が低くなりすぎて、シェルが割れて、中空構造を維持できなくなることがある。
更に過硫酸カリウムや過硫酸アンモニウムなどの開始剤でモノマーを重合した場合、ポリマー粒子が帯電して静電反発が起きるため、シェルに微細貫通孔を生じやすい。
具体的な多官能性モノマーとしては、ジビニルベンゼン、アリル(メタ)アクリレート、(ポリ)エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート等が挙げられる。この内、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレートがより好ましい。
上記多官能性モノマーは、1種を用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
多官能性モノマーに由来する樹脂は、シェルを構成する樹脂100重量部に対して、20〜100重量部の範囲を占めることが好ましい。20重量部未満の場合、シェルを形成する樹脂の架橋密度が低くなり、樹脂同士が融着しやすくなるため、シェルに微細貫通孔が生じ難くなることがある。より好ましい占有量は40〜100重量部であり、更に好ましい占有量は60〜100重量部である。
多官能性モノマーに由来する樹脂以外にシェルに含みうる樹脂としては、単官能性モノマーに由来する樹脂が挙げられる。ここでの単官能性モノマーとは、1個のエチレン性不飽和基を有するモノマーを意味する。
具体的な単官能性モノマーとしては、スチレンや(メタ)アクリルアミド、また(メタ)アクリル酸、及び(メタ)アクリル酸と炭素数1〜25のアルコールとのエステル等が挙げられる。具体的には、スチレン、n−ブトキシメチル(メタ)アクリルアミド、イソブトキシメチル(メタ)アクリルアミド、n−ペンチルオキシメチル(メタ)アクリルアミド、(メタ)アクリル酸、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、ターシャリーブチル(メタ)アクリレート、ペンチル(メタ)アクリレート、(シクロ)ヘキシル(メタ)アクリレート、ヘプチル(メタ)アクリレート、(イソ)オクチル(メタ)アクリレート、ノニル(メタ)アクリレート、(イソ)デシル(メタ)アクリレート、ノルボルニル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、アダマンチル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、テトラデシル(メタ)アクリレート、(イソ)ステアリル(メタ)アクリレート、メトキシトリエチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシトリプロピレングリコール(メタ)アクリレート、フェノキシエチレングリコール(メタ)アクリレート、フェノキシジエチレングリコール(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシ−3−フェノキシプロピル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、n−ブトキシエチル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
また、単官能性モノマーのホモポリマーのガラス転移点(Tg)が60℃以上であることが好ましい。ガラス転移点が60℃未満であるとシェルを構成する樹脂のTgが低くなり、中空樹脂粒子同士の合着が起きやすくなる。
例えば、ホモポリマーのガラス転移点が60℃以上である単官能性モノマーとしては、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、ターシャリーブチル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、アダマンチル(メタ)アクリレートが挙げられる。更に、より好ましくは、メチル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレートが挙げられる。
上記単官能性モノマーは、1種を用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
(3)他の構成成分
本発明の効果を阻害しない範囲で、中空樹脂粒子には、必要に応じて、顔料粒子(顔料)、染料、安定剤、紫外線吸収剤、消泡剤、増粘剤、熱安定剤、レベリング剤、滑剤、帯電防止剤等の他の添加物を含んでいてもよい。
顔料粒子としては、当該技術分野で用いられる顔料粒子であれば特に限定されない。例えば、雲母状酸化鉄、鉄黒等の酸化鉄系顔料;鉛丹、黄鉛等の酸化鉛系顔料;チタンホワイト(ルチル型酸化チタン)、チタンイエロー、チタンブラック等の酸化チタン系顔料;酸化コバルト;亜鉛黄のような酸化亜鉛系顔料;モリブデン赤、モリブデンホワイト等の酸化モリブデン系顔料等の粒子が挙げられる。顔料粒子は、1種のみ使用してもよく、2種以上併用してもよい。
(4)中空樹脂粒子の用途
中空樹脂粒子は、塗料、紙、情報記録紙、光拡散フィルム(光学シート)等に用いられるコーティング剤(塗布用組成物)の添加剤、光拡散板、導光板等の成形体形成用のマスターペレットの添加剤、化粧品の添加剤、ドラッグデリバリーシステム(DDS)の担体として有用である。中でも、中空樹脂粒子は良好な徐放性を有する観点から、化粧品の添加剤、DDSの担体としての使用が好適である。
(中空樹脂粒子の製造方法)
中空樹脂粒子は、特に限定されないが、例えば、多官能性モノマーと非反応性溶媒とを含む混合溶液を水溶液に分散する分散工程と、次いで多官能性モノマーを重合させる重合工程とを経ることにより得ることができる。混合溶液には、単官能性モノマーが含まれていてもよい。得られた中空樹脂粒子から、必要に応じて、非反応性溶媒を除去してもよい。
特許文献1に記載された製造方法では、シード粒子を作製した後、シード粒子に加水分解性を有する重合性官能基を複数有している単量体を吸収させ重合を行い、その後、アルカリ処理によって重合体を除去することによりシード粒子を中空多孔質化するといった煩雑な工程を経て中空樹脂粒子を得ている。これに対し、本発明の製造方法では、一つの重合工程のみで簡便に微細貫通孔を有する中空樹脂粒子を作製できる。
(1)分散工程
水溶液中での混合溶液の分散は、水溶液中で混合溶液を液滴状で存在させることができさえすれば、特に限定されず、公知の方法で行い得る。
多官能性モノマー及び単官能性モノマーの使用量は、中空樹脂粒子を構成するそれぞれのモノマー由来の樹脂成分量とほぼ対応している。
混合溶液には、上記モノマー以外に、非反応性有機溶媒が含まれている。非反応性有機溶媒は、特に限定されないが、疎水性溶媒であることが好ましい。ここで、疎水性溶媒とは、100gの水に溶解する量が0.1g以下の溶媒を意味する。具体的な非反応性有機溶媒としては、トルエン、ベンゼン、キシレン、ヘキサン、シクロヘキサン、ドデカン等が挙げられる。更に、混合溶液が、ヘキサンやドデカン等の炭素鎖数13個以下の非反応性溶媒を含む場合、あるいは、石油製品や石油留分の溶解性を表す指標である、アニリン点が60〜90℃の非反応性溶媒を含む場合、非反応性溶媒の一部が油滴内から水相に吐き出され、その際に、シェルに微細な貫通孔を生じやすい。従って、混合溶液には、炭素鎖数13個以下の非反応性溶媒が含まれていることが好ましい。これら疎水性溶媒は、1種を用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
非反応性有機溶媒の使用量は、多官能性モノマー及び単官能性モノマーの混合物1重量部に対して、0.5〜5重量部の範囲とすることができる。含有量が0.5重量部未満の場合、中空を生成しづらくなる。一方、含有量が5重量部より多い場合、シェルが薄くなり、シェル強度が足りずに粒子が割れてしまい、中空構造を保てないことがある。好ましい含有量は、1〜3重量部である。
混合溶液には、重合開始剤が含まれていてもよい。重合開始剤としては、例えば、水溶性重合開始剤として、過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウム、2,2'−アゾビス(2−メチルプロピオンアミジン)ジヒドロクロライド等、油溶性開始剤として、過酸化ラウロイル、過酸化ベンゾイル、オルソクロロ過酸化ベンゾイル、オルソメトキシ過酸化ベンゾイル、3,5,5−トリメチルヘキサノイルパーオキサイド、t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、ジ−t−ブチルパーオキサイド等の有機過酸化物;2,2'−アゾビスイソブチロニトリル、1,1'−アゾビスシクロヘキサンカルボニトリル、2,2'−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)等のアゾ系化合物等が挙げられる。この内、水溶性重合開始剤は、シェルを形成する微小ポリマー粒子が、帯電して静電反発を生じるため、より脱離しやすくなり、シェルに微細貫通孔を生じやすいため好ましい。重合開始剤は、多官能性モノマー及び単官能性モノマーの合計100重量部に対して、0.1〜5重量部の範囲で使用することが好ましい。使用量が0.1重量部未満の場合、重合不足から架橋が進行せず、シェルのポリマーのTgが低下するため、中空樹脂粒子同士の合着が起こり、粒子形状を保てなくなることがある。5重量部より多い場合、シェルを形成するポリマーが低分子量化するため、シェル強度が足りずに異形化し、中空構造を保てなくなることがある。使用量は0.5〜3重量部の範囲がより好ましい。
水溶液は、水性媒体と分散安定剤あるいは界面活性剤を含んでいてもよい。
水性媒体としては、水、水と低級アルコール(メタノール、エタノール等)との混合媒体が挙げられる。
分散安定剤としては、例えば、ポリビニルアルコール、ポリカルボン酸、セルロース類(ヒドロキシエチルセルロース、カルボキシメチルセルロース等)、ポリビニルピロリドン等が挙げられる。またトリポリリン酸ナトリウム等の無機系水溶性高分子化合物も併用できる。分散安定剤の添加量は、水性媒体100重量部に対して、0.01〜10重量部が好ましい。添加量が0.01重量部未満の場合、重合時に分散安定性を保てず、粒子形状を保てなくなることがある。添加量が10重量部より高い時、ポリマーと非反応性溶媒との相分離を抑制してしまうため、中空構造とならず、中実の粒子となることがある。より好ましい添加量は0.05〜3重量部である。
界面活性剤としては、アニオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤、両性イオン性界面活性剤、ノニオン性界面活性剤等の公知の界面活性剤が挙げられる。
アニオン性界面活性剤としては、例えば、アルキル硫酸エステル脂肪酸塩、アルキルベンゼンスルホン酸塩、アルキルナフタレンスルホン酸塩、アルカンスルホン酸塩、アルキルジフェニルエーテルスルホン酸塩、ジアルキルスルホコハク酸塩、モノアルキルスルホコハク酸塩、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテルリン酸塩等の非反応性のアニオン性界面活性剤、ポリオキシエチレン−1−(アリルオキシメチル)アルキルエーテル硫酸エステルアンモニウム塩、ポリオキシエチレンアルキルプロペニルフェニルエーテル硫酸エステルアンモニウム塩、ポリオキシアルキレンアルケニルエーテル硫酸アンモニウム等の反応性のアニオン性界面活性剤等が挙げられる。
カチオン性界面活性剤としては、例えばアルキルトリメチルアンモニウム塩、アルキルトリエチルアンモニウム塩、ジアルキルジメチルアンモニウム塩、ジアルキルジエチルアンモニウム塩、N−ポリオキシアルキレン−N,N,N−トリアルキルアンモニウム塩等のカチオン性界面活性剤等が挙げられる。
両性イオン性界面活性剤としては、例えば、ラウリルジメチルアミンオキサイド、リン酸エステル塩、亜リン酸エステル系界面活性剤等が挙げられる。
ノニオン性界面活性剤としては、例えば、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンアルキルアミン、グリセリン脂肪酸エステル、オキシエチレン−オキシプロピレンブロックポリマー等が挙げられる。
界面活性剤の添加量は、水性媒体100重量部に対して、0.01〜10重量部が好ましい。添加量が0.01重量部未満の場合、重合時に分散安定性を保てず、粒子形状を保てなくなることがある。添加量が10重量部より高い時、ポリマーと非反応性溶媒との相分離を抑制してしまうため、中空構造とならず、中実の粒子となることがある。より好ましい添加量は0.05〜3重量部である。
(2)重合工程
水溶液中でモノマーを重合させることにより中空樹脂粒子が得られる。重合により、液滴中のモノマーは混合溶液から分離しつつシェルを形成し、非反応性有機溶媒は液滴中心部に集まってくる。
(3)その他工程
水溶液中の中空樹脂粒子は、単離してもよく、用途によっては水溶液のままとしてもよい。単離方法としては、例えば、濾別や遠心分離が挙げられる。
中空樹脂粒子中の非反応性有機溶媒は、除去しても、除去しなくてもよい。除去方法としては、非反応性有機溶媒の沸点をT℃とすると、中空樹脂粒子をT±10℃で加熱する方法が挙げられる。加熱は減圧下で行ってもよい。
中空樹脂粒子の中空への徐放性用の物質の挿入は、例えば、次のようにして行うことができる。即ち、徐放性用の物質を溶解あるいは分散させた水溶液を中空樹脂粒子の粉体あるいは中空樹脂粒子を分散させた水溶液に添加する。添加後、静置していても、中空樹脂粒子内の中空部へ一定量の徐放性用の物質は入っていくが、攪拌や超音波照射などによって、中空樹脂粒子と徐放性用の物質の衝突頻度を増やすことで、より短時間で徐放性用の物質を挿入させることができる。
以下、実施例によって本発明を更に具体的に説明するが、本発明はこれらによりなんら制限されるものではない。まず、実施例に使用した各種測定法の詳細を下記する。
<平均粒子径>
動的光散乱法を利用して、樹脂粒子のZ平均粒子径を測定し、測定されたZ平均粒子径を得られた粒子の平均粒子径とする。
すなわち、まず、以下の実施例及び比較例で得られたスラリー状の樹脂粒子をイオン交換水で希釈し、0.1重量%に調整した水分散体にレーザー光を照射し、粒子から散乱される散乱光強度をマイクロ秒単位の時間変化で測定する。そして、検出された樹脂粒子に起因する散乱強度分布を正規分布に当てはめて、平均粒子径を算出するためのキュムラント解析法により樹脂粒子のZ平均粒子径を求める。
このZ平均粒子径の測定は、市販の粒子径測定装置で簡便に実施できる。以下の実施例及び比較例では、粒子径測定装置(マルバーン社製ゼータサイザーナノZS)を使用してZ平均粒子径を測定する。通常、市販の粒子径測定装置は、データ解析ソフトが搭載されており、データ解析ソフトが測定データを自動的に解析することでZ平均粒子径を算出できるようになっている。
<平均一次粒子径に対するシェル厚み>
中空樹脂粒子を、透過型電子顕微鏡(TEM:日立ハイテクノロジーズ社製H−7600)を用いて、加速電圧80kVの条件下、倍率1.5万倍でTEM写真を撮影する。この写真に撮影された任意の100個以上の粒子の一次粒子径及び内径を観察する。この時、粒子の中心を通るように5箇所以上の一次粒子径及び内径を測定、平均することで、平均一次粒子径、平均内径とする。更に、(平均一次粒子径−平均内径)/2の式より、シェルの厚さを求める。また、平均一次粒子径に対するシェル厚みの比は、シェルの厚さ/平均一次粒子径により求める。
<粒子の中空部と形状、潰れの有無>
粒子を乾燥粉体とし、エポキシ樹脂に包埋した後、四酸化ルテニウムにて染色を行う。粒子の超簿切片を作製し、サンプル片とする。乾燥粉体及び超簿切片をTEM観察し、得られた粒子の中空部の有無、形状及び潰れの有無を確認する。
<微細貫通孔の直径>
中空樹脂粒子、平均粒子径10nmのSiO粒子含有分散液(日産化学工業社製IPA−ST)、UV硬化性モノマー、希釈溶媒としてのメチルアルコール、粒子分散剤及び重合開始剤と混合して混合溶液を得る。得られた混合溶液をガラス基板に塗布し、室温・常圧下で乾燥させ、UV重合機で硬化させることで、フィルム片を作製する。
また、平均粒子径50nmのSiO粒子含有分散液(日産化学工業社製IPA−ST−L)を使用すること以外は、上記と同様にしてフィルム片を作製する。
得られたフィルム片をエポキシ樹脂に包埋した後、四酸化ルテニウムにて染色を行う。粒子の超簿切片を作製し、サンプル片とする。TEMを用いてサンプル片の観察を行い、内部へのSiO粒子の侵入度合いから微細貫通孔の大きさを観察する。
中空樹脂粒子100個中において、内部にSiO粒子が侵入している粒子が20個以下の場合、×として対応するSiO粒子の平均粒子径の微細貫通孔は空いていないと判断する。また、内部にSiO粒子が侵入している粒子が80個以上の場合、○として対応するSiO粒子の平均粒子径以上の微細貫通孔が空いていると判断する。
<熱分解開始温度>
中空樹脂粒子の加熱減量は示差熱熱重量同時測定装置 TG/DTA6200型(エスアイアイナノテクノロジー社製)を用いて測定する。サンプリング方法・温度条件に関しては以下のように行った。サンプルは白金製測定容器の底にすきまのないよう試料を約15mg充てんして、窒素ガス流量230mL/minのもとアルミナを基準物質として測定する。温度条件としては、速度10℃/minで30℃から800℃まで昇温した時のTG/DTA曲線を得る。この得られた曲線から装置付属の解析ソフトを用いて、熱分解開始温度を求める。ここでの熱分解開始温度とは、JIS K7120:1987「プラスチックの熱重量測定方法」(8「TG曲線の読み方」)に記載されている質量減少開始温度のことで、該規格より求めた値である。
実施例1
50mlサンプル瓶に、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート(新中村化学社製A−DPH)2.0g、トルエン1.7g、ドデカン0.3gを入れて混合した。得られた混合物を、界面活性剤としてドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム0.02g及び重合開始剤として過硫酸カリウム0.06gが含まれたイオン交換水30gと混合し、超音波ホモジナイザー(BRANSON社製、型式SONIFIER450)にて1時間、水浴下で強制乳化して混合溶液を得た。得られた混合溶液を攪拌しながら70℃で12時間加熱することで重合させてスラリー状の樹脂粒子を得た。得られた樹脂粒子を、ろ過、洗浄及び乾燥することで単離した。
得られた粒子は、平均粒子径が0.35μm、平均一次粒子径に対するシェル厚みの比が0.12(平均一次粒子径0.38μm、シェル厚み0.045μm)であった。
得られた粒子の熱分解開始温度は436℃であった。
乾燥粉体及び超簿切片をTEM観察したところ、図1(a)及び(b)に示すように、粒子は潰れのない真球状であり、1つの中空を有するコア・シェル型の粒子となっていた。図1(a)は乾燥粉体のTEM像であり、粒子内部が中空を有していることが示されている。図1(b)は乾燥粉体をエポキシ樹脂に包埋した後、四酸化ルテニウムにて染色し、これの超簿切片を観察したものである。貫通孔からエポキシ樹脂が内部に侵入するため、粒子内部はエポキシ樹脂で満たされている。なお、図1(b)の粒子のシェルの輪郭がはっきりしていないのは、シェルの微細貫通孔を通過して中空にエポキシ樹脂が存在しているためであると推測される。
また、図2(a)に示すような内部に平均粒子径10nmのSiO粒子の侵入した粒子が92個存在していることから、10nm以上の微細貫通孔を有する粒子であった。更に、平均粒子径50nmのSiO粒子の侵入した粒子が3個とほとんど存在していないことから、50nmより大きな微細貫通孔が存在しない粒子であった。
なお、図2(b)は、平均粒子径50nmのSiO粒子が侵入していない粒子のTEM像である。
実施例2
50mlサンプル瓶に、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート1.5g、メチルメタクリレート0.5g、トルエン3.4g、ドデカン0.6gを入れて混合したこと以外は実施例1と同様にして樹脂粒子を得た。
得られた粒子は、平均粒子径が0.23μm、平均一次粒子径に対するシェル厚みの比が0.06(平均一次粒子径0.27μm、シェル厚み0.016μm)であった。得られた粒子の熱分解開始温度は414℃であった。乾燥粉体及び超簿切片をTEM観察したところ、粒子は潰れのない真球状であり、1つの中空を有するコア・シェル型の粒子となっていた。
また、平均粒子径10nmのSiO粒子の侵入した粒子が86個存在していることから、10nm以上の微細貫通孔を有する粒子であった。更に、平均粒子径50nmのSiO粒子の侵入した粒子が5個とほとんど存在していないことから、50nmより大きな微細貫通孔が存在しない粒子であった。
実施例3
50mlサンプル瓶に、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート1.2g、メチルメタクリレート0.8g、トルエン1.7g、ドデカン0.3gを入れて混合したこと以外は実施例1と同様にして樹脂粒子を得た。
得られた粒子は、平均粒子径が0.40μm、平均一次粒子径に対するシェル厚みの比が0.17(平均一次粒子径0.33μm、シェル厚み0.056μm)であった。得られた粒子の熱分解開始温度は406℃であった。乾燥粉体及び超簿切片をTEM観察したところ、粒子は潰れのない真球状であり、1つの中空を有するコア・シェル型の粒子となっていた。
また、平均粒子径10nmのSiO粒子の侵入した粒子が84個存在していることから、10nm以上の微細貫通孔を有する粒子であった。更に、平均粒子径50nmのSiO粒子の侵入した粒子が10個とほとんど存在していないことから、50nmより大きな微細貫通孔が存在しない粒子であった。
実施例4
ジペンタエリスリトールヘキサアクリレートに代えてトリメチロールプロパントリアクリレート(新中村化学社製A−TMPT)を使用したこと以外は実施例1と同様にして樹脂粒子を得た。
得られた粒子は、平均粒子径が0.38μm、平均一次粒子径に対するシェル厚みの比が0.14(平均一次粒子径0.42μm、シェル厚み0.059μm)であった。得られた粒子の熱分解開始温度は439℃であった。乾燥粉体及び超簿切片をTEM観察したところ、粒子は潰れのない真球状であり、1つの中空を有するコア・シェル型の粒子となっていた。
また、平均粒子径10nmのSiO粒子の侵入した粒子が95個存在していることから、10nm以上の微細貫通孔を有する粒子であった。更に、平均粒子径50nmのSiO粒子の侵入した粒子が3個とほとんど存在していないことから、50nmより大きな微細貫通孔が存在しない粒子であった。
実施例5
過硫酸カリウムに代えて過硫酸アンモニウムを使用したこと以外は実施例1と同様にして樹脂粒子を得た。
得られた粒子は、平均粒子径が0.31μm、平均一次粒子径に対するシェル厚みの比が0.17(平均一次粒子径0.32μm、シェル厚み0.054μm)であった。得られた粒子の熱分解開始温度は427℃であった。乾燥粉体及び超簿切片をTEM観察したところ、粒子は潰れのない真球状であり、1つの中空を有するコア・シェル型の粒子となっていた。
また、平均粒子径10nmのSiO粒子の侵入した粒子が92個存在していることから、10nm以上の微細貫通孔を有する粒子であった。更に、平均粒子径50nmのSiO粒子の侵入した粒子が5個とほとんど存在していないことから、50nmより大きな微細貫通孔が存在しない粒子であった。
実施例6
50mlサンプル瓶に、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート1.0g、イソボルニルメタクリレート1.0g、トルエン1.7g、ドデカン0.3gを入れて混合したこと以外は実施例1と同様にして樹脂粒子を得た。
得られた粒子は、平均粒子径が0.45μm、平均一次粒子径に対するシェル厚みの比が0.15(平均一次粒子径0.41μm、シェル厚み0.062μm)であった。得られた粒子の熱分解開始温度は405℃であった。乾燥粉体及び超簿切片をTEM観察したところ、粒子は潰れのない真球状であり、1つの中空を有するコア・シェル型の粒子となっていた。
また、平均粒子径10nmのSiO粒子の侵入した粒子が96個存在していることから、10nm以上の微細貫通孔を有する粒子であった。更に、平均粒子径50nmのSiO粒子の侵入した粒子が7個とほとんど存在していないことから、50nmより大きな微細貫通孔が存在しない粒子であった。
比較例1
50mlサンプル瓶に、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート0.2g、メチルメタクリレート1.8g、トルエン1.7g、ドデカン0.3gを入れて混合したこと以外は実施例1と同様にして樹脂粒子を得た。
得られた粒子は、平均粒子径が0.40μm、平均一次粒子径に対するシェル厚みの比が0.15(平均一次粒子径0.38μm、シェル厚み0.057μm)であった。得られた粒子の熱分解開始温度は342℃であった。乾燥粉体及び超簿切片をTEM観察したところ、図3(a)及び(b)に示すように、粒子は潰れのない真球状であり、1つの中空を有するコア・シェル型の粒子となっていた。図3(a)は乾燥粉体のTEM像であり、粒子内部が中空を有していることが示されている。図3(b)は乾燥粉体をエポキシ樹脂に包埋した後、四酸化ルテニウムにて染色し、これの超簿切片を観察したものである。実施例1で得られた中空樹脂粒子により作製した超簿切片のTEM観察像図1(b)と比較し、図3(b)では中空部が白く見える像が観察された。これは微細貫通孔が存在せず、エポキシ樹脂が内部に侵入しないため、中空部が空気となっているためであると推測される。
また、内部に平均粒子径10nmのSiO粒子の侵入した粒子が5個とほとんど存在していないことから、10nmより大きな微細貫通孔が存在しない粒子であった。更に、平均粒子径50nmのSiO粒子の侵入した粒子が0個と存在していないことから、50nmより大きな微細貫通孔が存在しない粒子であった。
なお、図4(a)は平均粒子径10nmのSiO粒子が侵入していない粒子のTEM像であり、図4(b)は平均粒子径50nmのSiO粒子が侵入していない粒子のTEM像である。
比較例2
メチルメタクリレートに代えてブチルメタクリレートを使用したこと以外は比較例1と同様にして樹脂粒子を得た。
得られた粒子は、平均粒子径が0.43μm、平均一次粒子径に対するシェル厚みの比が0.22(平均一次粒子径0.41μm、シェル厚み0.090μm)であった。得られた粒子の熱分解開始温度は313℃であった。乾燥粉体及び超簿切片をTEM観察したところ、粒子は潰れており、1つの中空を有するコア・シェル型の粒子となっていた。
また、内部に平均粒子径10nmのSiO粒子の侵入した粒子が3個とほとんど存在していないことから、10nmより大きな微細貫通孔が存在しない粒子であった。更に、平均粒子径50nmのSiO粒子の侵入した粒子が0個と存在していないことから、50nmより大きな微細貫通孔が存在しない粒子であった。
比較例3
50mlサンプル瓶に、メチルメタクリレート2.0g、トルエン1.7g、ドデカン0.3gを入れて混合したこと以外は実施例1と同様にして樹脂粒子を得た。
得られた粒子は、平均一次粒子径が0.54μmであった。得られた粒子の熱分解開始温度は335℃であった。乾燥粉体及び超簿切片をTEM観察したところ、粒子は中実の真球状であった。
以下の表1に、中空樹脂粒子の製造に使用した原料及び物性をまとめて示す。
<徐放性評価>
実施例1と比較例1で得られた中空樹脂粒子の粉体を用いて徐放性の評価を次のようにして行った。まず、中空樹脂粒子の粉体約100mgにイオン交換水約10000mgを加えて、超音波照射(45kHz)を5分間行った。その後、24時間静置することで中空樹脂粒子内にイオン交換水を内包させた。この中空樹脂粒子を含む水溶液を高速遠心分離機(日立工機社製高速冷却遠心機HIMAC CR22GII)を用いて回転速度18,000rpmで30分間遠心分離し、中空樹脂粒子を沈降させた。沈降後、上澄みを除去したものを、イオン交換水を内包した中空樹脂粒子とした。この中空樹脂粒子を温度20±3℃、湿度40±10%で静置し、静置時間に対する重量減少を測定することでイオン交換水が中空樹脂粒子から徐放される様子を観測した。イオン交換水の内包量は静置開始直後の中空樹脂重量から、添加した中空樹脂粒子の粉体重量を引いた値とした。静置開始から一定時間経過後の内包量を、静置開始直後の内包量で割った値を、時間に対するイオン交換水の内包率として求めて、徐放性の評価として用いた。
24時間の測定を行った結果、実施例1で得られた中空樹脂粒子のイオン交換水内包率は22.2%、比較例1で得られた中空樹脂粒子のイオン交換水内包率は33.0%であった。これは実施例1で得られた中空樹脂粒子のシェルには10〜50nmの範囲内の微細貫通孔があるため、微細貫通孔が存在しない比較例1で得られた中空樹脂粒子に比べて速く内包物の徐放ができたことを示唆しており、シェルに微細貫通孔を持つことで徐放性の向上ができたと推測できる。
上記表及び図から、実施例の中空樹脂粒子は、10〜50nmの微細貫通孔をシェルに有しており、そのため優れた徐放性を有していることが分かる。

Claims (5)

  1. シェルに囲われた1つの中空を持つ中空樹脂粒子であって、前記中空樹脂粒子が、350℃以上の熱分解開始温度を有し、前記シェルが、10〜50nmの範囲内の直径の微細貫通孔を有し、かつ前記中空樹脂粒子の平均一次粒子径に対して、0.03〜0.25の比の厚さを有する中空樹脂粒子の製造方法であって、
    前記多官能性モノマーと、任意に単官能性モノマーと、非反応性溶媒とを含む混合溶液を水溶液に分散し、次いで前記多官能性モノマーと単官能性モノマーとを重合させ、
    前記非反応性溶媒を除去することにより中空樹脂粒子を得る方法であり、
    前記非反応性溶媒は、100gの水に溶解する量が0.1g以下である疎水性溶媒であり、
    前記非反応性溶媒の使用量が、前記多官能性モノマーと単官能性モノマーとの混合物1重量部に対して、0.5〜5重量部の範囲である
    ことを特徴とする中空樹脂粒子の製造方法。
  2. 前記中空樹脂粒子が、0.05〜10μmの平均一次粒子径を有する請求項1に記載の中空樹脂粒子の製造方法
  3. 前記シェルが、2〜20個のエチレン性不飽和基を有し、かつ30〜100g/molの官能基当量の多官能性モノマーに由来する請求項1又は2に記載の中空樹脂粒子の製造方法
  4. 前記多官能性モノマーが、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレートから選択される請求項3に記載の中空樹脂粒子の製造方法
  5. 前記重合が、ラジカル発生剤としての水溶性の重合開始剤の存在下で行われる請求項1〜4のいずれか1つに記載の中空樹脂粒子の製造方法。
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