JP6459601B2 - Niスパッタリングターゲット - Google Patents
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Description
ここで、上述のNi膜は、例えば特許文献1,2に記載されたNiスパッタリングターゲットを用いたスパッタ法によって成膜される。
ここで、スパッタ時においてスパッタガス原子の混入を防止するためには、スパッタガスのガス圧を低く設定することが効果的である。しかしながら、スパッタガスのガス圧を低く設定した場合には、放電が発生しにくくなり、スパッタができなくなるといった問題があった。
また、前記スパッタ面の表面粗さが、算術平均粗さRaで1.00μm以上6.30μm以下の範囲内とされるとともに、前記スパッタ面の平均結晶粒径が50μm以上250μm以下の範囲内とされているので、スパッタガス圧が低い場合でも二次電子が放出されやすくなり、低いガス圧でも放電が立ち易くなる。
なお、本発明においては、厚さ方向の複数の測定点(例えば8点以上)でビッカース硬さを測定し、これらの測定値から算出される標準偏差を「厚さ方向におけるビッカース硬さのばらつき」とした。
本実施形態であるNiスパッタリングターゲットは、例えばパワー半導体の裏面におけるはんだ付け用の電極としてNi膜を成膜する際に用いられるものである。
さらに、本実施形態であるNiスパッタリングターゲットにおいては、スパッタ面の平均結晶粒径が50μm以上250μm以下の範囲内とされている。
Niの結晶構造は、面心立方格子(fcc)であることから、主面として{111}面、{200}面、{220}面が存在する。スパッタ面において{220}面に配向することで放電が立ち易くなる。この理由は明らかではないが、可能性の一つとして結晶面により放電開始に必要な二次電子の放出のし易さが異なっていることが考えられる。
以上のことから、本実施形態では、スパッタ面において{220}面が多く存在するように、スパッタ面における{220}面の配向度R{220}を、{111}面の配向度R{111}及び{200}面の配向度R{200}よりも大きくなるように設定している。
なお、具体的な数値としては、スパッタ面における{220}面の配向度R{220}は、0.34以上であることが好ましく、0.46以上であることがさらに好ましい。
Niスパッタリングターゲットを用いてスパッタを行う際にスパッタガス圧を低く設定した場合には、二次電子の放出が抑えられ、放電が立ち難くなる。
ここで、スパッタ面の表面粗さが、算術平均粗さRaで1.00μm以上に設定した場合には、スパッタ面に凹凸が形成され、スパッタ面から突出する凸部において電子が集中するため、二次電子の放出が促進され、放電が発生しやすくなる。一方、スパッタ面の表面粗さが、算術平均粗さRaで6.30μmを超える場合には、異常放電が発生しやすくなり、安定してスパッタを行うことができないおそれがある。
本実施形態であるNiスパッタリングターゲットにおいて、スパッタ面の平均結晶粒径が50μm未満である場合には、二次電子の放出が抑えられて放電が起こりにくくなるおそれがある。一方、スパッタ面の平均結晶粒径が250μmを超える場合には、異常放電が発生しやすくなり、安定してスパッタを行うことができないおそれがある。
以上のことから、本実施形態では、スパッタ面の平均結晶粒径を50μm以上250μm以下の範囲内に設定している。なお、放電をさらに促進するためには、スパッタ面の平均結晶粒径を70μm以上とすることが好ましく、90μm以上とすることがさらに好ましい。また、異常放電の発生を確実に抑制するためには、スパッタ面の平均結晶粒径を 200μm以下とすることが好ましく、150μm以下とすることがさらに好ましい。
本実施形態であるNiスパッタリングターゲットにおいては、長時間使用することでスパッタ面が消耗していくことから、使用時間を通して安定した成膜特性、とりわけ安定した成膜レートを得るためには、厚さ方向において組織的に均一であることが好ましい。金属の硬さは結晶粒径や結晶欠陥、歪など金属組織の性状を総合的に表す指標と考えられることから、ターゲット断面のビッカース硬さの測定値が厚さ方向でばらついていると、成膜レートが経時的に変化するおそれがある。
そこで、本実施形態であるNiスパッタリングターゲットにおいては、厚さ方向におけるビッカース硬さのばらつきを2.0以下に規定している。なお、本実施形態においては、ターゲットの厚さ方向中央部と、ターゲットの表層部と、を含む厚さ方向の複数の測定点(例えば8点以上)でビッカース硬さを測定し、これらの測定値から標準偏差を算出し、この標準偏差を「厚さ方向におけるビッカース硬さのばらつき」とした。
次に、本実施形態であるNiスパッタリングターゲットの製造方法の一例について説明する。
まず、Ni原料を準備する。このNi原料としては、例えば純度99.9mass%以上、あるいは、純度99.99mass%以上の高純度Niを用いることが好ましい。
このNi原料を真空溶解して鋳造してインゴットを得る(溶解鋳造工程S01)。
次に、得られたインゴットを、800℃以上1300℃以下の温度条件で熱間鍛造する(熱間鍛造工程S02)。
さらに、得られた熱間鍛造材を、800℃以上1300℃以下の温度条件で熱間圧延する(熱間圧延工程S03)。
冷間圧延工程S04の後、得られた冷間圧延材に対して熱処理を行う(熱処理工程S05)。この熱処理工程S05においては、保持温度を550℃以上850℃以下、保持時間を1時間以上3時間以下とすることが好ましい。
次に、熱処理工程S05後に、水冷又は強制空冷を行う(冷却工程S06)。この冷却工程S06においては、50℃までの冷却速度を1000℃/min以上とすることが好ましい。
次に、得られた圧延材に対して機械加工を行う(機械加工工程S07)。この機械加工工程S07においては、まず圧延材を所定のサイズに切断する(切断工程S71)。その後、旋盤を用いて表面の粗加工を行う(粗加工工程S72)。そして、スパッタ面となる表面に対して平面研削盤を用いて仕上加工を行う(仕上げ加工工程S73)。なお、この仕上加工工程S73において、スパッタ面の表面粗さが調整されることになる。
よって、本実施形態であるNiスパッタリングターゲットにおいては、スパッタガス圧を低く設定した場合であっても放電が立ち易く、スパッタを安定して行うことが可能となる。
例えば、本実施形態では、パワー半導体の裏面におけるはんだ付け用の電極を構成するNi膜を成膜する際に用いられるものとして説明したが、これに限定されることはなく、他の用途においてNi膜を成膜する際に用いてもよい。
さらに、Niスパッタリングターゲットの製造方法は、本実施形態に限定されることはなく、他の製造方法を適用してもよい。
以下に、本発明の有効性を確認するために行った確認実験の結果について説明する。
溶解原料として純度が99.9mass%以上の純Niを準備し、この溶解原料を真空溶解(1.33Pa以下)して鋳造し、インゴットを得た。
このインゴットを1180℃で熱間鍛造し、さらに1180℃で熱間圧延を行い、板厚11mmの熱間圧延材を得た。
得られた板材を切断して直径125mmの円板状にし、旋盤による粗加工、平面研削盤による仕上加工を行った。なお、仕上加工条件を変更することによって、スパッタ面の表面粗さを調整した。
各種測定条件、スパッタ試験条件を以下に示す。
Niスパッタリングターゲットから20mm□の測定試料を切り出し、この測定試料の表面(スパッタ面に相当する面)を鏡面研磨した。
次いで、株式会社リガク製のX線回折装置であるRINT−ULTIMAIIIを用いて、上述の測定試料の表面(スパッタ面)における2θ−θの回折測定を行った。
このとき、Cuを陽極に用いた管球を用い、2θを0.05°刻みのステップスキャンとして、1ステップあたり2秒のX線を照射して回折測定を行った。また、X線回折測定は、測定試料を回転させながら行った。
表面粗さ測定装置として「Mitutoyo Surf Test SV−3000」を用いて粗さ曲線を測定し、算術平均粗さRa(JIS B0601−2001)を測定した。測定時の基準長さ、評価長さについてはJIS B0633−2001に基づき決定した。評価結果を表1に示す。
Niスパッタリングターゲットから20mm□の観察試料を切り出し、この観察試料の表面(スパッタ面に相当する面)を鏡面研磨した。
そして、EBSD測定装置(日立ハイテクノロジーズ社製SU−70,EDAX/TSL社製(現 AMETEK社) OIM Data Collection ver.5.31)と、解析ソフト(EDAX/TSL社製(現 AMETEK社)OIM Data Analysis ver.5.31)によって、電子線の加速電圧15kV、測定間隔5.0μmステップで2.8mm2以上の測定面積で、各結晶粒の方位差の解析を行った。解析ソフトOIMにより各測定点のCI値を計算し、平均結晶粒径の解析からはCI値が0.1以下のものは除外した。結晶粒界に関しては、二次元断面観察の結果、隣り合う2つの結晶間の配向方位差が15°以上となる測定点間を結晶粒界として結晶粒界マップを作成した。
観察視野全体に存在する全ての粒子の外周の長さを算出した。この値からこれと同じ外周を有する円の直径(円相当径)を算出した。この全粒子の円相当径の平均値を平均粒径とした。
スパッタリングターゲットの中心部から20mm×20mmの試料片を切り出して樹脂埋めし、そのターゲット材の断面にあたる面を鏡面研磨した。この研磨試料において、図3に示すように、厚さ中心から厚さ方向に0.375mm間隔で8点でビッカース硬さを測定した。ビッカース硬さの測定には、ビッカース硬度計(MVK−G3)を用いて、SPEEDダイヤル:3、荷重:100gの条件で測定した。測定されたビッカース硬さの標準偏差(ばらつき)を表1に示す。
スパッタ装置に、無酸素銅製バッキングプレートにInはんだにより接合した上述のNiスパッタリングターゲットを取り付け、7×10−4Paまで排気した後、直流電力800W、スパッタガス圧(アルゴンガス圧)0.2Paの条件で、スパッタを行った。そして、スパッタガス圧(アルゴンガス圧)0.2Paの低スパッタガス圧条件において放電が立つか否かを評価した。放電したものを「○」、放電しなかったものを「×」とした。評価結果を表1に示す。
上記と同様にNiターゲットを直流電力800W、スパッタガス圧(アルゴンガス圧)0.2Paの条件にて連続的に5時間放電し、直流電源に付属した異常放電カウント機能を用いて5時間内に発生した異常放電の回数を計測した。その結果を表1に示す。
比較例2〜4においては、熱間圧延を行って製造されたことから、{220}面の配向度R{220}が、{111}面の配向度R{111}又は{200}面の配向度R{200}よりも小さく、スパッタ面において{220}面が十分に配向していなかった。このため、0.2Paの低スパッタガス圧条件では放電が立たず、スパッタを行うことができなかった。
比較例5においては、スパッタ面の平均結晶粒径が本発明の範囲を下回っており、0.2Paの低スパッタガス圧条件では放電が立たず、スパッタを行うことができなかった。
比較例6においては、スパッタ面の表面粗さ(算術平均粗さRa)が本発明の範囲を超えており、異常放電回数が多く、安定してスパッタを行うことができなかった。
比較例7においては、スパッタ面の平均結晶粒径が本発明の範囲を超えており、異常放電回数が多く、安定してスパッタを行うことができなかった。
以上のことから、本発明例によれば、スパッタガス圧が低い場合であっても安定しスパッタを行うことが可能であることが確認された。
次に、本発明例1〜6のNiターゲットを用いて、厚さ方向のビッカース硬さのばらつきと、スパッタ状態の経時変化について、以下のように評価した。
上記と同様にNiターゲットを直流電力800W、スパッタガス圧(アルゴンガス圧)0.2Pa、ターゲット−基板間距離70mmの条件にて連続的に5時間放電し、1時間おきに成膜レートを測定した。測定結果を図4に示す。
以上のことから、ターゲットの厚さ方向における硬さばらつきを小さく抑えることで、成膜レートの経時変化を抑制できることが確認された。
Claims (1)
- Niスパッタリングターゲットであって、
スパッタ面における{111}面からのX線回折強度をI{111}、{200}面からのX線回折強度をI{200}、{220}面からのX線回折強度をI{220}、かつ、ランダム配向した標準試料における{111}面からのX線回折強度をIS{111}、{200}面からのX線回折強度をIS{200}、{220}面からのX線回折強度をIS{220}とした場合に、下記の式で算出される{220}面の配向度R{220}が、{111}面の配向度R{111}及び{200}面の配向度R{200}よりも大きくされており、
前記スパッタ面の平均結晶粒径が50μm以上250μm以下の範囲内とされており、
厚さ方向におけるビッカース硬さのばらつきが2.0以下であることを特徴とするNiスパッタリングターゲット。
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