JP6456553B2 - 重合性組成物、重合組成物、並びにその製造及び使用方法 - Google Patents

重合性組成物、重合組成物、並びにその製造及び使用方法 Download PDF

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Description

発明の詳細な説明
[背景]
周囲条件又は穏やかな条件下、特に酸素の存在下で、ポリマー、特に架橋ポリマーを速やかに形成し得る材料及び化学物質が必要とされている。
[概要]
本開示は、周囲又は穏やかな条件下、特に酸素(例えば、O又は過酸素化合物)の存在下で、硬化(すなわち、重合及び/又は架橋)して、粘弾性固体などの固体を形成することができる、チオール含有化合物及びエチレン性不飽和化合物を含む組成物、特に流動性の重合性組成物を提供する。本組成物は、例えば、接着剤、シーラント、封入剤、及びポッティング樹脂の形成に使用することができる。このような組成物は、酸素又は過酸素化合物の存在下で使用して硬化(すなわち、重合及び/又は架橋)を開始できるオルガノボラン−塩基錯体、特にトリアルキルボランを含有する錯体を含む。
酸素(O)制限環境における、又は組成物中への酸素の拡散が制限される場合のチオール−エン組成物の硬化の促進において、過酸素化合物としてのヒドロペルオキシドは、他の有機ペルオキシド(例えば、ジアルキルペルオキシド)よりもはるかに有効であることが発見された。かかるO制限環境の例としては、厚い断面、高充填組成物内、及び不浸透性基材間に配置された組成物が挙げられる。ヒドロペルオキシドの存在は、かかる環境下でチオール−エン組成物が一様に硬化する能力を大きく増強する。
更に、エーテル、チオエーテル、及び/又はジスルフィド基及びそれより多い硫黄結合(例えば、トリスルフィド及びテトラスルフィド)を高い重量%で含有する配合物は、他の類似配合物と比較してゆっくりと硬化し得ることが今回発見された。これは、チオール含有化合物及び/又はエチレン性不飽和化合物の構造が、主に、メチレン(−CH−)、エチレン(−CHCH−)、又はプロピレン(−CHCH(CH)−)単位によって分離された酸素又は硫黄原子であり、これらの化合物が配合物の大部分を形成する場合に当てはまる。
1つの態様では、本開示は、重合性組成物であって、
オルガノボランと塩基との錯体であるオルガノボラン−塩基錯体であって、塩基が、1若しくは複数のアミン基、アミジン基、ヒドロキシド基、アルコキシド基、又はこれらの組み合わせを有する化合物から選択される錯化剤である、オルガノボラン−塩基錯体と、
オルガノボラン−塩基錯体からオルガノボランを少なくとも部分的に遊離させる錯体解離剤と、
チオール基の硫黄原子が炭素に共有結合している(すなわち、C−S結合を介している)チオール基(すなわち、メルカプト基)を複数有する重合性チオール含有化合物を少なくとも1種含む、重合性チオール含有成分と、
ヒドロペルオキシドと、
エチレン性不飽和基を複数有する重合性エチレン性不飽和化合物を少なくとも1種含む、重合性エチレン性不飽和成分と、を含み、
チオール含有化合物とエチレン性不飽和化合物との合計量は、重合性組成物中の全ての重合性材料の少なくとも50重量%を占める、重合性組成物を提供する。
特定の実施形態では、反応(すなわち、重合及び/又は架橋を含む硬化)時、−C−S−C−C−結合(例えば、−CH−S−CH−CH−又は−CHZ−S−CH−CH−結合[式中、Zは有機基である])が形成される。
別の態様では、本開示は、重合性組成物であって、
オルガノボランと塩基との錯体であるオルガノボラン−塩基錯体を含む部分A組成物であって、塩基が、1若しくは複数のアミン基、アミジン基、ヒドロキシド基、アルコキシド基、又はこれらの組み合わせを有する化合物から選択される錯化剤である、部分A組成物と、
オルガノボラン−塩基錯体からオルガノボランを少なくとも部分的に遊離させる錯体解離剤を含む部分B組成物と、を含み、
チオール基の硫黄原子が炭素に共有結合しているチオール基を複数有する重合性チオール含有化合物を少なくとも1種含む、重合性チオール含有成分と、
ヒドロペルオキシドと、
エチレン性不飽和基を複数有する重合性エチレン性不飽和化合物を少なくとも1種含む、重合性エチレン性不飽和成分と、を更に含み、
チオール含有化合物とエチレン性不飽和化合物との合計量は、重合性組成物中の全ての重合性材料の少なくとも50重量%を占める、重合性組成物を提供する。
特定の実施形態では、反応時、−C−S−C−C−結合が形成される。
更に別の態様では、本開示は、
オルガノボランと塩基との錯体であるオルガノボラン−塩基錯体を含む部分A組成物であって、塩基が、1若しくは複数のアミン基、1若しくは複数のアミジン基、1若しくは複数のヒドロキシド基、1若しくは複数のアルコキシド基、又はこれらの組み合わせを有する化合物から選択される錯化剤である、部分A組成物と、
オルガノボラン−塩基錯体からオルガノボランを少なくとも部分的に遊離させる錯体解離剤を含む部分B組成物と、を含む構成成分を組み合わせることによって調製される組成物であって、
ここで、部分A組成物及び部分B組成物のうちの少なくとも1つは、
チオール基の硫黄原子が炭素に共有結合しているチオール基を複数有する重合性チオール含有化合物を少なくとも1種含む、重合性チオール含有成分と、
ヒドロペルオキシドと、
エチレン性不飽和基を複数有する重合性エチレン性不飽和化合物を少なくとも1種含む、重合性エチレン性不飽和成分と、を更に含み、
チオール含有化合物とエチレン性不飽和化合物との合計量は、重合性組成物中の全ての重合性材料の少なくとも50重量%を占める、組成物を提供する。
特定の実施形態では、反応時、−C−S−C−C−結合が形成される。
本開示は、塩基が、1若しくは複数のアミン基、アミジン基、ヒドロキシド基、アルコキシド基、又はこれらの組み合わせを有する化合物から選択される錯化剤であるオルガノボラン−塩基錯体を含む部分A組成物と、オルガノボラン−塩基錯体からオルガノボランを少なくとも部分的に遊離させる錯体解離剤を含む部分B組成物と、を含む構成成分を組み合わせることと、部分Aと部分Bとを反応させる(好ましくは、−C−S−C−C−結合(例えば、−CH−S−CH−CH−又は−CHZ−S−CH−CH−結合[式中、Zは有機基である])を含むポリマーを形成させる)ことと、を含む、組成物の製造方法を更に提供する。
したがって、更に別の態様では、本開示は、組成物の製造方法を提供し、当該方法は、
オルガノボランと塩基との錯体であるオルガノボラン−塩基錯体を含む部分A組成物あって、塩基が、1若しくは複数のアミン基、アミジン基、ヒドロキシド基、アルコキシド基、又はこれらの組み合わせを有する化合物から選択される錯化剤である、部分A組成物と、
オルガノボラン−塩基錯体からオルガノボランを少なくとも部分的に遊離させる錯体解離剤を含む部分B組成物と、を含む構成成分を組み合わせることと、
部分A組成物と部分B組成物とを反応させて、ポリマーを形成することと、を含み、
部分A組成物及び部分B組成物のうちの少なくとも1つは、
チオール基の硫黄原子が炭素に共有結合しているチオール基を複数有する重合性チオール含有化合物を少なくとも1種含む、重合性チオール含有成分と、
ヒドロペルオキシドと、
エチレン性不飽和基を複数有する重合性エチレン性不飽和化合物を少なくとも1種含む、重合性エチレン性不飽和成分と、を更に含み、
チオール含有化合物とエチレン性不飽和化合物との合計量は、組成物中の全ての重合性材料の少なくとも50重量%を占める。
本明細書で使用するとき、用語「有機基」は、炭化水素基(酸素、窒素、硫黄、リン、ハロゲン及び/又はケイ素などの、炭素及び水素以外の任意の元素を含む)を意味する。いくつかの実施形態では、有機基はケイ素を含まない。有機基は、一価、二価、三価、又は任意の他の所望の価数であり得る。有機基の例としては、脂肪族基、環状基、又は脂肪族と環状基との組み合わせ(例えば、アルカリール基及びアラルキル基)が挙げられる。用語「脂肪族基」は、飽和又は不飽和の直鎖又は分枝鎖炭化水素基を意味する。この用語は、例えばアルキル基、アルケニル基、及びアルキニル基などの一価の基、並びにより高い価数の対応する基を包含して使用される。用語「アルキル基」は、飽和直鎖又は分枝鎖炭化水素基、例えば、メチル、エチル、イソプロピル、t−ブチル、ヘプチル、ドデシル、オクタデシル、アミル、及び2−エチルヘキシルなどを意味する。用語「アルケニル基」は、1又は複数の炭素−炭素二重結合を有する、芳香族基以外の不飽和直鎖又は分枝鎖炭化水素基、例えばビニル基を意味する。用語「アルキニル基」は、1又は複数の炭素−炭素三重結合を有する、不飽和直鎖又は分枝鎖炭化水素基、例えばエチニル基を意味する。用語「環状基」は、環式脂肪族(すなわち、脂環式)基、芳香族基、又は複素環式基(例えば、酸素含有基、窒素含有基、又は硫黄含有基)として分類される閉環炭化水素基を意味する。用語「環式脂肪族基」は、脂肪族基の特性に似た特性を有する環状炭化水素基を意味する。環式脂肪族基は、シクロアルキル基(すなわち、例えばシクロプロピル、及びシクロブチルなどの環状アルキル基、並びにそれよりも高い価数の対応する基)などの一価基を含む。用語「芳香族基」又は「アリール基」は、単核又は多核芳香族炭化水素基を意味する。用語「複素環式基」は、環内の1又は複数の原子が、炭素以外の元素(例えば、窒素、酸素、及び/又は硫黄)である、閉環炭化水素を意味する。これらの基はいずれも置換されていても非置換であってもよい。置換されている場合、置換基は、ハロゲン、ヒドロキシ、アルコキシ、アルキルアミノ、アルキル、及びニトロなどを含んでもよい。同じであっても異なっていてもよい基は、「独立」したものとして言及される。
用語「含む(comprises)」及びこの変化形は、明細書及び「特許請求の範囲」においてこれらの用語が現れる箇所で、限定的な意味を持たない。かかる用語は、記載の工程若しくは要素、又は工程若しくは要素の群を包含することを意味するが、いかなる他の工程若しくは要素、又は工程若しくは要素の群も排除することを意味しないものと理解されよう。「からなる(consisting of)」とは、その「からなる」という語句に続くあらゆるものを包含し、それらに限定されることを意味する。したがって、用語「からなる」は、列挙された要素が必要又は必須であって、その他の要素が存在し得ないことを示す。「から本質的になる(consisting essentially of)」とは、その語句の後に列挙されるあらゆる要素を含み、その列挙された要素に関して本開示で指定する活性若しくは作用に干渉も寄与もしない他の要素に限定されることを意味する。したがって、用語「から本質的になる」は、列挙された要素は必要又は必須であるが、他の要素は任意選択的であって、列挙された要素の活性又は作用に実質的に影響を及ぼすか否かに応じて存在してもしなくてもよいことを意味する。
「好ましい」及び「好ましくは」という言葉は、一定の状況下で一定の利益を提供できる、本開示の実施形態を指す。しかし、同じ又は他の状況において他の実施形態もまた、好ましい場合もある。更には、1又は複数の好ましい実施形態の記載は、他の実施形態が有用ではないことを示唆するものではなく、本開示の範囲から他の実施形態を排除することを意図するものではない。
本出願において、「1つの(a、an)」、及び「当該(the)」といった語は、1つの実体のみを指すことを意図したものではなく、その説明のために具体的な例が用いられ得る一般的な分類を含む。用語「1つの(a、an)」、及び「当該(the)」は、用語「少なくとも1つの」と互換可能に使用される。
列挙部が後に続く、「〜のうちの少なくとも1つ」及び「〜のうちの少なくとも1つを含む」という表現は、列挙部内の項目のいずれか1つ、及び列挙部内の2つ以上の項目のいずれかの組み合わせを指す。
本明細書で使用するとき、用語「又は」は、内容が明確にそれ以外を指示しない限り、一般的に「及び/又は」を含む通常の意味で使用される。
用語「及び/又は」は、列挙された要素の1つ若しくは全て、又は列挙された要素のうちいずれか2つ以上の組み合わせを意味する。
また、本明細書では、全ての数字が用語「約(about)」によって修飾され、特定の状況では、用語「正確に」によって修飾されると仮定する。本明細書で使用するとき、測定した量との関連において、用語「約(about)」は、測定を行い、測定の目的及び使用される測定機器の精度に見合う水準の注意を払う当業者によって予測されるような測定量の変動を指す。同様にして、本明細書で使用するとき、測定した量との関連において、用語「約(approximately)」は、測定を行い、測定の目的及び使用される測定機器の精度に見合う水準の注意を払う当業者によって予測されるような測定量の変動を指す。
本明細書ではまた、端点による数値範囲の列挙には、その範囲内に包含される全ての数及び端点が包含される(例えば、1〜5には、1、1.5、2、2.75、3、3.80、4、及び5が包含される)。
ある基が本明細書に記載のある式中に2回以上存在するとき、各基は、具体的記載の有無にかかわらず、「独立に」選択される。例えば、式中に2つ以上のR基が存在するとき、各R基は独立に選択される。更に、これらの基に含まれる下位基も独立に選択される。
本明細書で使用するとき、用語「室温」は、19℃〜25℃の温度を指し、しばしば21℃の温度を指す。
本明細書で使用するとき、用語「チオール基」は−SH基(すなわち、メルカプト基)を指す。
本開示の特徴及び利点は、[詳細な説明]及び添付された「特許請求の範囲」を考慮することで、更に理解される。
[詳細な説明]
本開示の組成物は、重合性組成物の硬化(重合及び/又は架橋)を開始させて粘弾性固体を含む固体を形成することができる、オルガノボラン−塩基錯体、特にトリアルキルボランを含有する錯体と、錯体解離剤と、ヒドロペルオキシドとを含む。
具体的には、本開示は、重合性組成物であって、塩基が1若しくは複数のアミン基、アミジン基、ヒドロキシド基、アルコキシド基、又はこれらの組み合わせを有する化合物から選択される錯化剤であるオルガノボラン−塩基錯体と、オルガノボラン−塩基錯体からオルガノボランを少なくとも部分的に遊離させる錯体解離剤と、ヒドロペルオキシドと、チオール基の硫黄原子が炭素に共有結合しているチオール基(すなわち、メルカプト基)を複数有する少なくとも1種の重合性チオール含有化合物と、エチレン性不飽和基を複数有する少なくとも1種の重合性エチレン性不飽和化合物と、を含む重合性組成物を提供する。例えば、チオール含有化合物及びエチレン性不飽和化合物は、ポリジオルガノシロキサンであってもよい。
硬化反応は、チオール−エン反応又は炭素−炭素不飽和へもチオール基の付加を伴い、炭素−炭素不飽和のそれぞれの部位に付加する硫黄及び水素は同じチオール基に由来する必要はなく、水素はチオール基を含有する化合物に加え、その他の化合物に由来してもよい。オルガノボラン−塩基錯体、特にトリアルキルボラン−塩基錯体は、重合及び/又は架橋反応の開始に使用される。
オルガノボラン、特にトリアルキルボランは、酸素又は過酸素化合物の存在下で、重合反応及び/又は架橋反応の開始に使用される。錯体解離剤が塩基と反応すると、オルガノボラン−塩基錯体からオルガノボランが遊離する。酸素の存在下では、トリアルキルボランは、酸素と反応し、続いてフラグメンテーションによってフリーラジカル種を生成し、その一部がチオールとエチレン性不飽和基との付加反応を開始する。本発明の化合物は、反応を起こして、ポリマー材料、典型的には、架橋ポリマー材料をもたらす。形成されるポリマーは、炭化水素ベース又はシリコーンベースとなり得る。特定の実施形態では、反応時に形成されるポリマーは、−C−S−C−C−結合(例えば、−CH−S−CH−CH−又は−CHZ−S−CH−CH−結合[式中、Zは有機基である])を含む。
特定の状況又は用途において、特に、厚い断面、高充填組成物、及び不透過性基材の間などの、Oが制限され得る又は組成物中へのOの拡散が制約され得る場合、硬化の速度を増大するため、又は特定の時間内での硬化度を増大するために、過酸素化合物が必要となる場合がある。更に、エーテル基、チオエーテル基、及び/又はジスルフィド基及びそれ以上の硫黄結合(例えば、トリスルフィド及びテトラスルフィド)を高い重量%で含有する組成物は、ゆっくりと硬化する場合があり、硬化の速度を増大するため、又は特定の時間で硬化度を増大するために、過酸素化合物が必要となる場合がある。これは、チオール含有化合物及び/又はエチレン性不飽和化合物の構造が、主に、メチレン(−CH−)単位、エチレン(−CHCH−)単位、又はプロピレン(−CHCH(CH)−)単位によって分離された酸素又は硫黄原子であり、かつこれらの化合物が組成物の大部分を形成する場合に当てはまる。特定の実施形態では、組成物のチオール含有化合物及びエチレン性不飽和化合物中の脂肪族エーテル、脂肪族チオエーテル、及び脂肪族ジスルフィド基及びそれより多い硫黄結合中の酸素原子と硫黄原子とを合わせた量は、組成物中のチオール含有化合物及びエチレン性不飽和化合物の総重量に基づいて、少なくとも15重量%、少なくとも20重量%、少なくとも25重量%、又は少なくとも30重量%である。ヒドロペルオキシドは、上記の状況又は用途において、高速硬化又は短い硬化時間を提供するのに特に有効である。ヒドロペルオキシドは、熱分解してフリーラジカル種を生成し、それがチオール−エン反応を開始する、従来の熱的フリーラジカル開始剤として使用されているのではないことに注意が必要である。例えば、好ましいヒドロペルオキシドは、有機ヒドロペルオキシドである。好ましい有機ヒドロペルオキシドとしては、例えば、tert−ブチルヒドロペルオキシドなどの第三級有機ヒドロペルオキシド(すなわち、ヒドロペルオキシ基(−OOH)が第三級炭素原子に結合している)が挙げられる。これらのヒドロペルオキシドは、典型的には、当初量のヒドロペルオキシドを10時間で50%低減させるために、125℃を超えて加熱しなければならない。したがって、熱分解は、周囲条件、すなわち、室温での高速硬化に適さない。特定の反応経路に束縛されるものではないが、ヒドロペルオキシドは、オルガノボラン−塩基錯体及び/又はその遊離構成成分と反応又は相互作用して、チオール−エン反応又は重合を開始するフリーラジカル種の生成を促進すると考えられる。
特定の実施形態では、チオール含有化合物とエチレン性不飽和化合物との総量は、組成物中の全ての重合性材料の少なくとも50重量%を占める。特定の実施形態では、チオール基の量及びエチレン性不飽和基の量は、0.25:1.0〜4.0:1.0、又は0.33:1.0〜3.0:1.0、又は0.5:1.0〜2.0:1.0、又は0.75:1.0〜1.33:1.0、又は0.80:1.0〜1.25:1.0(チオール基:エチレン性不飽和基)のモル比範囲にある。特定の実施形態では、例えば、1,2−ポリブタジエン又は不飽和ポリエステルのようなエチレン性不飽和繰り返し単位を含有する高分子量ポリマーの架橋が望ましい場合、チオール基の量及びエチレン性不飽和基の量は、0.005:1.0〜0.20:1.0(チオール基:エチレン性不飽和基)のモル範囲に存在してもよい。
本開示の組成物は、典型的には、少なくとも2種の部分を含み(すなわち、当該組成物は多液型重合性組成物である)、好ましくは2種の部分を含む。本開示による少なくとも2液型の組成物は、部分Aと部分Bとを含む。部分A及び部分Bは、個々には良好な安定性を有するが、配合すると安定性が失われ、硬化が始まる。
部分A組成物は、オルガノボラン−塩基錯体を含む。部分Bは、オルガノボラン−塩基錯体用の錯体解離剤を含む。重合性組成物(すなわち、部分A組成物及び/又は部分B組成物及び/又はその他の部分)は、チオール基の硫黄原子が炭素に共有結合しているチオール基を複数有する重合性チオール含有化合物を少なくとも1種含むチオール含有成分と、エチレン性不飽和基を複数有する重合性エチレン性不飽和化合物を少なくとも1種含むエチレン性不飽和成分と、ヒドロペルオキシドと、を更に含む。すなわち、チオール含有成分は、部分A、部分B、並びに/又は部分A及び部分Bとは異なる別の部分中に存在し、エチレン性不飽和成分は、部分A、部分B、並びに/又は部分A及び部分Bとは異なる別の部分中に存在し、ヒドロペルオキシドは、部分A、部分B、並びに/又は部分A及び部分Bとは異なる別の部分中に存在する。特定の実施形態では、チオール含有化合物及びエチレン性不飽和化合物は、別々の異なる化合物である。特定の実施形態では、1つの化合物が、チオール基及びエチレン性不飽和基の両方を有してもよい。
オルガノボラン−塩基錯体
オルガノボラン−塩基錯体は、塩基と反応する化合物(例えば、酸など)で塩基を錯体解離したときに遊離するオルガノボランの潜在的形態である。遊離オルガノボランは、例えば、接着剤、シーラント、封入剤、及びポッティング樹脂として有用となり得るポリマーを形成するために重合性モノマーのフリーラジカル重合を開始させることができる開始剤である。
オルガノボラン−塩基錯体のオルガノボラン部分は、次式(式I):
B(R)(R)(R) (I)
[式中、R、R、及びRは有機基である(典型的には、30個以下、又は20個以下、又は10個以下の原子を有する)]のものである。式Iの特定の実施形態において、Rは、1〜10個の炭素原子、又は1〜6個の炭素原子、又は1〜5個の炭素原子、又は1〜4個の炭素原子、又は2〜4個の炭素原子、又は3〜4個の炭素原子を有するアルキル基を表す。
式Iの特定の実施形態において、R及びRは、独立して(すなわち、同じでも異なっていてもよく)、1〜10個の炭素原子(又は1〜6個の炭素原子、又は1〜5個の炭素原子、又は1〜4個の炭素原子、又は2〜4個の炭素原子、又は3〜4個の炭素原子)を有するアルキル基、3〜10個の炭素原子を有するシクロアルキル基、6〜12個の炭素原子を有するアリール基(例えば、フェニル)、又は1〜10個の炭素原子(又は1〜6個の炭素原子、又は1〜5個の炭素原子、又は1〜4個の炭素原子、又は2〜4個の炭素原子、又は3〜4個の炭素原子)を有するアルキル基、若しくは3〜10個の炭素原子を有するシクロアルキル基で置換された6〜12個の炭素原子を有するアリール基(例えば、フェニル)を表す。R基、R基、及びR基のうちの任意の2つは、任意に環の一部であってもよい(例えば、2つの基が組み合わさって環を形成することができる)。
オルガノボラン開始剤は、塩基性錯化剤(すなわち、オルガノボランと錯化する塩基)で錯化されて、安定したオルガノボラン−塩基錯体を形成する。オルガノボラン−塩基錯体は、式(式II):
Figure 0006456553

[式中、Cxは、1若しくは複数のアミン基、1若しくは複数のアミジン基、1若しくは複数のヒドロキシド基、1若しくは複数のアルコキシド基、又はこれらの組み合わせを有する化合物から選択される錯化剤を表し、vは正の数である]で表すことができる。vの値は、周囲条件下でオルガノボラン−塩基錯体が安定となるように選択される。例えば、オルガノボラン−塩基錯体が、密栓容器内で、約20℃〜22℃かつその他の点では周囲条件下で保管される(すなわち、容器は真空又は不活性雰囲気下ではなく周囲空気環境下で密栓される)場合、錯体は少なくとも2週間開始剤としての有用性を保持する。好ましくは、錯体はこのような条件下で数カ月間、最長1年間又はそれ以上にわたって容易に保管され得る。特定の実施形態において、vの値は、典型的には、少なくとも0.1、又は少なくとも0.3、又は少なくとも0.5、又は少なくとも0.8、又は少なくとも0.9であり、しばしば最大で4、又は最大で3、又は最大で2、又は最大で1.5、又は最大で1.2である。いくつかの実施形態において、vは、0.1〜4の範囲、又は0.5〜2の範囲、又は0.8〜1.2の範囲、若しくは0.9〜1.1の範囲、又は1である。
式IIの特定の実施形態において、Rは、1〜10個の炭素原子、又は1〜6個の炭素原子、又は1〜5個の炭素原子、又は1〜4個の炭素原子、又は2〜4個の炭素原子、又は3〜4個の炭素原子を有するアルキル基を表す。
式IIの特定の実施形態において、R及びRは、独立して(すなわち、同じでも異なっていてもよく)、1〜10個の炭素原子(又は1〜6個の炭素原子、又は1〜5個の炭素原子、又は1〜4個の炭素原子、又は2〜4個の炭素原子、又は3〜4個の炭素原子)を有するアルキル基、3〜10個の炭素原子を有するシクロアルキル基、6〜12個の炭素原子を有するアリール基(例えば、フェニル)、又は1〜10個の炭素原子(又は1〜6個の炭素原子、又は1〜5個の炭素原子、又は1〜4個の炭素原子、又は2〜4個の炭素原子、又は3〜4個の炭素原子)を有するアルキル基、若しくは3〜10個の炭素原子を有するシクロアルキル基で置換された6〜12個の炭素原子を有するアリール基(例えば、フェニル)を表す。R基、R基、及びR基のうちの任意の2つは、任意に環の一部であってもよい(例えば、2つの基が組み合わさって環を形成することができる)。
本明細書では、式I及び式IIにおいて、アルキル基は直鎖又は分枝鎖であってもよい。
特定の実施形態において、R、R、及びRのうちの2つの基によって形成される環、又はR、R、及びRのうちの2つの基によって形成される環は、式I又は式II中のホウ素原子により架橋されてもよい。
式IIの特定の実施形態において、Rは、1〜10個の炭素原子を有するアルキル基を表し、R及びRは、独立して、1〜10個の炭素原子を有するアルキル基又は6〜12個の炭素原子を有するアリール基を表し、Cxは、1若しくは複数のアミン基、アミジン基、ヒドロキシド基、アルコキシド基、又はこれらの組み合わせを有する化合物から選択される錯化剤を表し、vは、0.1〜4の範囲、0.5〜2の範囲、0.8〜1.2の範囲、若しくは0.9〜1.1の範囲、又は1などの正の数である。
特定の実施形態では、オルガノボラン−塩基錯体はチオール基を含まない。
オルガノボラン−塩基錯体の好ましいオルガノボランには、トリメチルボラン、トリエチルボラン、トリ−n−プロピルボラン、トリ−イソプロピルボラン、トリ−n−ブチルボラン、トリ−イソブチルボラン、及びトリ−sec−ブチルボランがある。
有用な塩基性錯化剤(Cx)としては、例えば、アミン、アミジン、ヒドロキシド、及び/又はアルコキシドが挙げられる。周囲条件下におけるオルガノボラン−塩基錯体の安定性を確保するのに十分な錯化剤が提供される。錯化剤が不十分であると、自然発火傾向を持つ材料である遊離オルガノボランが残り得る。実際には、周囲条件における錯体の安定性を確保するため、錯化剤として働く化合物は過剰にされることが多く、すなわち、この化合物の一部は組成物中で遊離しており、又は錯化されていない。塩基性錯化剤の過剰量は、周囲条件下における錯体の安定性を確保しつつ、重合性組成物の硬化速度及び硬化組成物の機械的特性などの所望の性能をなおも実現するように選択される。例えば、オルガノボランに対して最大100%モル過剰、又は最大50%モル過剰、又は最大30%モル過剰の塩基性錯化剤が存在してもよい。しばしば、オルガノボランに対し10〜30%モル過剰の塩基性錯化剤が存在する。
有用な塩基性錯化剤としては、例えば、アミン化合物、アミジン化合物、ヒドロキシド、アルコキシド、又はこれらの組み合わせが挙げられる。アミン化合物は、第一級アミン基及び/又は第二級アミン基を有する。アミジン化合物は、アミジン基を有する。ヒドロキシド及びアルコキシドは、それぞれ、以下の式VIIIに示すような、ヒドロキシド基及びアルコキシド基を有する塩である。
アミン錯化剤(Cx)は、異なるアミンのブレンドを含む1又は複数の第一級又は第二級アミン基を有する多種多様な材料によって提供され得る。アミン錯化剤は、アミン基を1つ有する化合物であってもよいし、ポリアミン(すなわち、2又は3つ以上の第一級、第二級、又は第三級アミン基などの複数のアミン(すなわち、アミノ)基を有する材料)であってもよい。好適なポリアミンは、少なくとも1つのアミン基を第一級及び/又は第二級アミン基として有する。
一実施形態では、アミン錯化剤は、次式(式III):
Figure 0006456553

[式中、R及びRは、水素及び有機基、好ましくは1〜10個の炭素原子を有するアルキル基、アルキルシクロアルキル基(すなわち、シクロアルキルで置換されたアルキル又はアルキルで置換されたシクロアルキル)、アミン基がアリール構造に直接結合していないアルキルアリール(すなわち、アリールで置換されたアルキル)基、及びポリオキシアルキレン基からなる群から独立して選択される]で表される第一級又は第二級モノアミンであってもよい。有機基は、置換基、特にヒドロキシル又はアルコキシ置換基を含んでもよい。あるいは、R及びRは、これらが結合している窒素原子と共に結合して4〜7員複素環を形成してもよい。複素環は、R及びRに結合した窒素原子に加え、酸素、硫黄、又は窒素などの追加のヘテロ原子を含み得る。いくつかの実施形態において、式(III)の錯化剤は第一級アミンである(すなわち、R又はRのうちの1つは水素であるが、両方ではない)。式(III)のアミンの具体例としては、アンモニア、エチルアミン、ブチルアミン、ヘキシルアミン、オクチルアミン、ベンジルアミン、ピペリジン、ピロリジン、3−メトキシプロピルアミン、及びポリオキシアルキレンモノアミン(例えば、Huntsman Corp.(Salt Lake City,UT)によりJEFFAMINEの商品名で市販されているもの)が挙げられる。具体的な例としては、JEFFAMINE M715及びJEFFAMINE M2005ポリオキシアルキレンモノアミンが挙げられる。
別の実施形態では、アミンは、次式(式IV):
Figure 0006456553

[式中、R及びRは上記に定義のものであり、Rは、二価有機基、好ましくは二価アルキレン基、シクロアルキレン基、アルキレン−アリーレン−アルキレン基、又はアルキレン−複素環−アルキレン基である]で表されるものなどのポリアミンであってもよい。アルキレンは、アルカンの二価基を指し、典型的には1〜10個の炭素原子を有する。アリーレンは、芳香族基の二価基を指し、しばしば6〜12個の炭素原子を有する。アリーレン基の例としては、フェニレン及びジフェニレンが挙げられる。二価有機基Rとしては、任意に、式−NR−の基、オキシ基、カルボニル基、又は2つのアルキレン基の間のこれらの組み合わせを挙げることができる。基Rは、典型的には、水素又はアルキル基である。好ましくは、式(IV)の化合物は少なくとも1種の第一級アミン基を有する。これらのポリアミンの例は、ジメチルアミノプロピルアミン、及びアミノプロピルモルホリンである。
更に他の好適なポリアミンはアルカンジアミンであり、これは分枝鎖であっても直鎖であってもよく、次式(式V):
Figure 0006456553

[式中、xは、1以上、より好ましくは2〜12の整数であり、各R10は、独立して、水素又はアルキル基である]を有する。アルカンジアミンの例としては、1,2−エタンジアミン、1,3−プロパンジアミン、1,5−ペンタンジアミン、1,6−ヘキサンジアミン、1,12−ドデカンジアミン、2−メチル−1,5−ペンタンジアミン、及び3−メチル−1,5−ペンタンジアミンが挙げられる。
更に他のアミン錯化剤は、3つ以上のアミン基を有する様々なアルカンポリアミン、例えば、トリエチレンテトラアミン若しくはジエチレントリアミンなど、又は複素環基を有する化合物、例えば、4−(ジメチルアミノ)ピリジンなどである。
その他の有用なポリアミンとしては、ポリオキシアルキレンポリアミンも挙げられる。好適なポリオキシアルキレンポリアミンは、例えば、米国特許第5,621,143号(Pocius)に報告されている。好ましいポリオキシアルキレンポリアミンは、次式(式VI及び式VII):
NR11O(R12O)(R13O)(R12O)11NH (VI)
(すなわち、ポリオキシアルキレンジアミン)、又は
[HNR11O(R12O)14 (VII)
[式中、R11、R12、及びR13は、1〜10個の炭素原子を有するアルキレン基(すなわち、アルキレンはアルカンの二価基である)を表し、これらは同じでも異なっていてもよい]で表すことができる。特定の実施形態において、R11は、エチレン、n−プロピレン、イソプロピレン、n−ブチレン、又はイソブチレンなどの、2〜4個の炭素原子を有するアルキレン基である。特定の実施形態において、R12及びR13は、エチレン、n−プロピレン、又はイソプロピレンなどの、2〜3個の炭素原子を有するアルキレン基である。R14基は、z価の有機基(例えば、ポリオキシアルキレンポリアミンを調製するために使用されたポリオールの残基)であり、好ましくは、1〜18個の炭素原子を有する。R14基は、分枝鎖又は直鎖であってもよく、置換又は非置換であってもよい(ただし、置換基は好ましくはオキシアルキル化反応に干渉してはならない)。wの値は、典型的には1以上であり、特定の実施形態では、1〜50、又は1〜20である。u及びyの値は、典型的には、いずれも0以上である。zの値は、典型的には、2以上であり、又は特定の実施形態では、3若しくは4である(それぞれ、ポリオキシアルキレントリアミン及びポリオキシアルキレンテトラアミンを提供する)。w、u、y、及びzの値は、取り扱い及び混合が簡便になることから、得られる錯体が室温で液体であるように選択されることが好ましい。
通常、ポリオキシアルキレンポリアミンは、それ自体液体である。ポリオキシアルキレンポリアミンの場合、5000g/モル未満の分子量を用いてもよいが、1000g/モル以下の分子量がより好ましく、140〜1000g/モルの分子量が最も好ましい。ポリオキシアルキレンポリアミンの例としては、限定するものではないが、ポリ(エチレンオキシド)ジアミン、ポリ(プロピレンオキシド)ジアミン、ポリ(プロピレンオキシド)トリアミン、ジエチレングリコールジプロピルアミン、トリエチレングリコールジプロピルアミン、ポリ(テトラメチレンオキシド)ジアミン、ポリ(エチレンオキシド−co−プロピレンオキシド)ジアミン、及びポリ(エチレンオキシド−co−プロピレンオキシド)トリアミンが挙げられる。好適な市販のポリオキシアルキレンポリアミンの例としては、Huntsman CorporationによりJEFFAMINEの商品名で市販されているもの、例えば、D−、ED−、及びEDR−シリーズのジアミン(例えば、D−400、D−2000、D−5000、ED−600、ED−900、ED−2001、及びEDR−148)、及びT−シリーズのトリアミン(例えば、T−403)、並びにDixie Chemical Co.(Pasadena,TX)から市販されているDCA−221が挙げられる。
米国特許第5,616,796号(Pocius et al.)に報告されているように、ポリアミンは、ジ第一級アミン−末端物質(すなわち、2つの末端基が第一級アミン基である)と、第一級アミンと反応性である少なくとも2つの基を含有する1又は複数の物質と、の縮合反応生成物も含み得る。
特定の実施形態では、アミンはアジリジンでもよい。ただし、アジリジンには安定性の問題が存在し得ることから、この化合物は好ましくはない。
好適なヒドロキシド及び/又はアルコキシド錯化剤(Cx)は、例えば、米国特許第6,486,090号(Moren)に報告されている。好ましいヒドロキシド及び/又はアルコキシド錯化剤は、次式(式VIII):
(R15(−)(m+) (VIII)
[式中、
15は、水素又は有機基(例えば、アルキル基)から独立して選択され、
(m+)は、電荷m+の対イオン(例えば、ナトリウム、カリウム、テトラアルキルアンモニウム、又はこれらの組み合わせ)を表し、
nは、1〜6又は1〜4又は1〜3などの、ゼロより大きい整数であり、
mは、1〜6又は1〜4又は1〜3などの、ゼロより大きい整数である]で表すことができる。好ましくは、変数nとmとは等しい。
「アミジン」は、少なくとも1つのN=C−N単位をその構造中に有する化合物である。例示的なアミジン錯化剤(Cx)は、米国特許第6,410,667号(Moren)に報告されている。その他のアミジン錯化剤としては、例えば、N,N,N’,N’−テトラメチルグアニジン、1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデカ−7−エン、1,5−ジアザビシクロ[4.3.0]ノナ−5−エン、2−メチルイミダゾール、及び2−メチルイミダゾリンが挙げられる。
オルガノボラン−塩基錯体は、例えば、米国特許第5,616,796号(Pocius et al.)、同第5,621,143号(Pocius)、同第6,252,023号(Moren)、同第6,410,667号(Moren)、及び同第6,486,090号(Moren)に記載のものなどの公知の手法を使用して容易に調製できる。
オルガノボラン−アミン錯体は、BASF及びAkzoNobelなどの供給元から入手できる。TEB−DAP(トリエチルボラン−1,3−ジアミノプロパン(又は1,3−プロパンジアミン)錯体)、TnBB−MOPA(トリ−n−ブチルボラン−3−メトキシプロピルアミン)錯体、TEB−DETA(トリエチルボラン−ジエチレントリアミン)錯体、TnBB−DAP(トリ−n−ブチルボラン−1,3−ジアミノプロパン錯体)、及びTsBB−DAP(トリ−sec−ブチルボラン−1,3−ジアミノプロパン)は、全てBASF(Ludwigshafen,Germany)から市販されている。TEB−HMDA(トリエチルボラン−ヘキサメチレンジアミン(又は1,6−ヘキサンジアミン若しくは1,6−ジアミノヘキサン)錯体)は、AkzoNobel(Amsterdam,The Netherlands)から入手できる。
オルガノボラン−塩基錯体は概ね有効量で用いられ、この有効量とは、反応(すなわちち、重合及び/又は架橋による硬化)を容易に生じさせて、所望の最終用途に十分な高い分子量のポリマーを得るのに十分に多い量である。オルガノボランの生成量が少なすぎる場合、反応が不完全となり得る。一方でこの量が多すぎると、反応が急速に進みすぎて有効に混合できず、得られる組成物を使用できないことになり得る。有用な反応速度は、典型的には組成物を基材に適用する方法に少なくとも一部依存する。したがって、反応速度がより速い場合には、組成物をハンドアプリケータで塗布したり、又は組成物を手で混合したりするのでなく、産業用の高速自動アプリケータを使用することによって対応することができる。
これらのパラメーターのうち、オルガノボラン−塩基錯体の有効量は、好ましくは、少なくとも0.003重量パーセントのホウ素、又は少なくとも0.008重量パーセントのホウ素、又は少なくとも0.01重量パーセントのホウ素を提供する量である。オルガノボラン−塩基錯体の有効量は、好ましくは最大で1.5重量%のホウ素、又は最大で0.5重量%のホウ素、又は最大で0.3重量%のホウ素を提供する量である。組成物中のホウ素の重量%は、重合性材料の総重量に基づく。
言い換えれば、オルガノボラン−塩基錯体の有効量は、少なくとも0.1重量%、又は少なくとも0.5重量%である。オルガノボラン−塩基錯体の有効量は、最大で10重量%、又は最大で5重量%、又は最大で3重量%である。組成物中のホウ素の重量%は、重合性材料の総重量に基づく。
錯体解離剤
本明細書で使用するとき、用語「錯体解離剤」は、錯化剤からオルガノボランを少なくとも部分的に遊離させる(すなわち、少なくとも一部のオルガノボランをその錯化剤から遊離させる)ことにより、組成物の重合性材料の反応(重合及び/又は架橋による硬化)を開始させることができる化合物を指す。錯体解離剤は、「活性剤」又は「遊離促進物質」とも称される場合があり、これらの用語は、本明細書では同意語的に使用される。錯体解離剤の選択は、典型的には、使用される特定のオルガノボラン−塩基錯体に依存する。
穏和な温度下で塩基又はオルガノボラン−塩基錯体と易反応性の化合物が、特に有効な錯体解離剤である。このような化合物としては、鉱酸、ルイス酸、カルボン酸、酸無水物、酸塩化物、塩化スルホニル、ホスホン酸、イソシアネート、アルデヒド、1,3−ジカルボニル化合物、アクリレート、及びエポキシを挙げることができる。
特定の実施形態では、錯体解離剤は、シリカ、二酸化チタン、アルミナ、炭酸カルシウム、及びカーボンブラックなどの固体粒子に付着されてもよい。
特定の実施形態では、オルガノボランがアミンで錯化された場合、好適な錯体解離剤は、アミン反応性化合物である。アミン反応性化合物は、アミンと反応することによってオルガノボランを遊離させ、それによりアミンとの化学的付着からオルガノボランを取り外す。アミン反応性化合物を提供するために、異なる物質の組み合わせを含む幅広く様々な物質を使用してよい。周囲条件下で簡単に使用及び硬化することができる接着剤などの組成物を提供するために、室温以下でアミンとの反応生成物を容易に形成することができる物質が、望ましいアミン反応性化合物である。
有用なアミン反応性化合物の一般的な分類としては、鉱酸(例えば、塩酸、硫酸、リン酸、及びケイ酸)、ルイス酸(例えば、SnCl又はTiCl)、カルボン酸、酸無水物(すなわち、同じ酸素原子に結合した2つのアシル基を有する有機化合物)、酸塩化物、塩化スルホニル、ホスホン酸、ホスフィン酸、イソシアネート、アルデヒド、1,3−ジカルボニル化合物、アクリレート、及びエポキシが挙げられる。酸、酸無水物、酸塩化物、塩化スルホニル、及びイソシアネートなど、穏和な温度でアミンと易反応性の化合物が、特に有効な錯体解離剤である。チオール基は、これらの化合物のいくつかとの反応性もあることから、反応性成分を別々にして2液型組成物の異なる部分にすることに注意する必要がある。
しばしば、チオール基の濃度は塩基性錯化剤中の第一級又は第二級アミンの濃度よりも高いことから、組成物を適切に硬化させるには錯体解離剤を適切に選択することが望まれる。加えて、多くの鉱酸などの強酸は、反応前又は反応後に重合性組成物の成分を分解し得るとともに、また組成物が接触し得る基材も分解し又は腐食させ得る。多くのルイス酸はチオール基に対し非常に反応性が高く、チオール又は水(水分)と反応して、分解又は腐食をもたらし得る強酸を発生させる。これらの点を鑑みると、カルボン酸、酸無水物、アルデヒド、イソシアネート、ホスホン酸、及び1,3−ジカルボニル化合物、例えば、バルビツール酸、ジメドン及びその誘導体が、より融通が効き、好ましい錯体解離剤である。
有用なカルボン酸としては、一般式R19−COH[式中、R19は、水素又は一価有機基を表す]を有するものが挙げられる。好ましくは、R19は、1〜20個(好ましくは1〜8個)の炭素原子を有する脂肪族基、又は6〜10個(好ましくは6〜8個)の炭素原子を有するアリール基である。脂肪族基は直鎖を含んでもよく、又は脂肪族基は分枝状でもよく、また飽和であっても不飽和であってもよい。アリール基は、アルキル基、アルコキシ基、又はハロゲン基などの置換基を含有してもよい。この種の好適な酸としては、アクリル酸、メタクリル酸、酢酸、ノナン酸、安息香酸、及びp−メトキシ安息香酸が挙げられる。
有用なカルボン酸としてはまた、一般式R20−COH[式中、R20は、直鎖又は分枝鎖、飽和又は不飽和の、9〜36個の炭素原子、好ましくは11〜24個の炭素原子、より好ましくは15〜24個の炭素原子の脂肪族基であり得る]を有するものも挙げられる。
アミン反応性化合物として有用な更に他のカルボン酸としては、ジカルボン酸及びカルボン酸エステルが挙げられる。かかる化合物は、次式(式IX):
Figure 0006456553

[式中、
21は、水素、一価有機基(典型的には、18個以下、又は8個以下の原子を有する)、又は多価有機基(典型的には、30個以下、又は10個以下の原子を有する)であり、
22は、多価(すなわち、(q+2)価)有機基(典型的には、8個以下、又は4個以下の原子を有する)であり、
23は、水素又は一価有機基(典型的には、18個以下、又は8個以下の原子を有する)であり、
qは、0、1、又は2であり、pの値は、1以上、好ましくは1〜4、より好ましくは1又は2である]で表すことができる。
いくつかの実施形態では、カルボン酸は、式(式X):
Figure 0006456553

[式中、
21は、上記に定義のものであり、rは1以上、好ましくは1〜4、より好ましくは1又は2であり、
24は、単結合又は二価有機基(好ましくは1〜40個の炭素原子を有し、より好ましくは1〜10個の炭素原子又は1〜6個の炭素原子を有する)である]で表すことができる。有機基は、しばしばアルキレン又はアルケン−ジイル(アルケンの二価基)又はアリーレンである。
21が水素であり、かつrが1であるとき、得られる式(X)の化合物はジカルボン酸である。いくつかの実施形態において、R21はアルキルであり、かつrは1に等しい。他の実施形態において、R21はアルキレンであり、かつrは2に等しい。有用なジカルボン酸としては、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、マレイン酸、フマル酸、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、及びダイマー酸が挙げられる。
その他の有用な単官能性又は多官能性カルボン酸には、チオエステル基又はアミド基を含有するもの、及びチオール−エン反応により反応するもの、例えばチオグリコール酸、3−メルカプトプロパン酸、及び上記の(メタ)アクリル酸がある。
多官能性チオール及びエチレン性不飽和化合物がポリジオルガノキシロキサンであるとき、信越化学工業株式会社のX−22−3710(シリコーン鎖の末端の1つにカルボン酸基を有する)及びX−22−162C(2つの末端の両方にカルボン酸基を有する)などの、カルボン酸基を含有するポリジオルガノシロキサンも有用である。
水又は水分と反応して容易にカルボン酸を生成する化合物、すなわち、水によって容易に加水分解されてカルボン酸を形成する、ビニルトリアセトキシシラン及び(メタ)アクリルオキシプロピルトリアセトキシシランなどの化合物も有用である。
錯体解離剤として機能し得るアミン反応性化合物として、少なくとも1つの無水物基を有する物質も好ましく、かかる物質は好ましくは次式(式XI及び式XIII)のうちの1つで表される:
Figure 0006456553

Figure 0006456553
25及びR26は、独立して脂肪族、環式脂肪族、又は芳香族であり得る有機基である。好ましい脂肪族基及び環式脂肪族基は、1〜17個の炭素原子、より好ましくは2〜9個の炭素原子を含む。脂肪族基及び環式脂肪族基は、飽和又は不飽和であってもよい。好ましい芳香族基は、フェニルを含み、任意に炭素原子1〜4個の脂肪族基で置換されている。
27は、無水物基と共に環状構造を完成させて、例えば、5員環又は6員環を形成する、二価有機基である。R27は、脂肪族、環式脂肪族、芳香族、又はこれらの組み合わせであってもよい。脂肪族基及び環式脂肪族基は、飽和又は不飽和であることができる。好ましくは、R27は、2〜20個、より好ましくは2〜12個の炭素原子を有する脂肪族基である。R27基はまた、酸素又は窒素などのヘテロ原子を含有してもよく、ただし、いかなるヘテロ原子も無水物官能基に隣接しないものとする。R27基はまた、環式脂肪族又は芳香族縮合環構造(いずれも任意に脂肪族基によって置換されていてもよい)の一部であってもよい。R27は、1又は複数のカルボン酸基で置換されていてもよく、そのうちの任意の2つは、隣接する炭素(すなわち、共有結合している炭素)上にあるとき、環化して別の無水物基を形成し得る。
式(XI)の好適な無水物は、プロピオン酸無水物、メタクリル酸無水物、ヘキサン酸無水物、デカン酸無水物、ラウリン酸無水物、及び安息香酸無水物である。式(XII)の好適な無水物には、マレイン酸無水物、コハク酸無水物、メチルコハク酸無水物、2−オクテン−1−イルコハク酸無水物、2−ドデセン−1−イルコハク酸無水物、ドデセニルコハク酸無水物(異性体混合物)、シクロヘキサンジカルボン酸無水物、cis−5−ノルボルネン−エンド−2,3−ジカルボン酸無水物、メチル−5−ノルボルネン−2,3−ジカルボン酸無水物、フタル酸無水物、トリメリト酸無水物、及びピロメリト酸無水物がある。例えばマレイン酸無水物の場合のように、無水物官能性アミン反応性化合物中にエチレン性不飽和基が存在する場合、このエチレン性不飽和基は、他のチオール含有成分又はエチレン性不飽和成分と反応し得る。
少なくとも1つの無水物基を有する他の有用なアミン反応性化合物は、マレイン酸無水物のコポリマー、例えば、マレイン酸無水物とスチレンとのコポリマー、マレイン酸無水物とエチレン又はα−オレフィンとのコポリマー、及びマレイン酸無水物と(メタ)アクリレートとのコポリマーなどである。また、ポリマーに無水マレイン酸がグラフトして、例えば無水コハク酸官能性ポリマーを形成しているポリマー材料も好適である。多官能性チオール化合物及びエチレン性不飽和化合物がポリジオルガノシロキサンである場合、Gelest,Inc.のコハク酸無水物末端ポリジメチルシロキサンDMS−Z21のような、無水物を含有するポリジオルガノシロキサンも有用である。
錯体解離剤として機能するアミン反応性化合物として有用な好適なアルデヒドとしては、次式(式XIII):
Figure 0006456553

[式中、R28は、例えば、1〜10個の炭素原子(いくつかの実施形態では、1〜4個の炭素原子)を有するアルキル基、又は6〜10個の炭素原子(いくつかの実施形態では、6〜8個の炭素原子)を有するアリール基などの一価有機基である]で表されるものを挙げることができる。この式において、アルキル基は、直鎖であっても分枝鎖であってもよく、またハロゲン、ヒドロキシ、及びアルコキシなどの置換基を含有してもよい。アリール基は、ハロゲン、ヒドロキシ、アルコキシ、アルキル、及びニトロなどの置換基を含有してもよい。1つの好ましいR28基は、アリールである。この種類の例示的な化合物には、ベンズアルデヒド、o−、m−、及びp−ニトロベンズアルデヒド、2,4−ジクロロベンズアルデヒド、p−トリルアルデヒド、並びに3−メトキシ−4−ヒドロキシベンズアルデヒドが挙げられる。アセタール及びジアルデヒドなどのブロックされたアルデヒドも使用されてよい。
その他の好適な錯体解離剤としては、1,3−ジカルボニル化合物(例えば、β−ケトン)、例えば、米国特許第6,849,569号(Moren)に記載のものが挙げられる。1,3−ジカルボニル化合物の錯体解離剤の例としては、メチルアセトアセテート、エチルアセトアセテート、t−ブチルアセトアセテート、2−メタクリロイルオキシエチル=アセトアセテート、ジエチレングリコール=ビス(アセトアセテート)、ポリカプロラクトン=トリス(アセトアセテート)、ポリプロピレングリコール=ビス(アセトアセテート)、ポリ(スチレン−co−アリルアセトアセテート)、N,N−ジメチルアセトアセトアミド、N−メチルアセトアセトアミド、アセトアセトアニリド、エチレンビス(アセトアセトアミド)、ポリプロピレングリコールビス(アセトアセトアミド)、アセトアセトアミド、及びアセトアセトニトリルが挙げられる。好ましい1,3−ジカルボニル化合物は、ジメドン、バルビツール酸及びその誘導体(例えば、1,3−ジメチルバルビツール酸、1−フェニル−5−ベンジルバルビツール酸、及び1−エチル−5−シクロヘキシルバルビツール酸)である。
好適なイソシアネート錯体解離剤の例としては、限定するものではないが、イソホロンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、メチレンジフェニルジイソシアネート、トルエンジイソシアネート、及びこれらのプレポリマーなどの、多官能性イソシアネートが挙げられる。加えて、2−イソシアナトエチルメタクリレートは、単独であれ、例えば他の(メタ)アクリレートとのコポリマーであれ、好適な錯体解離剤である。
好適なホスホン酸錯体解離剤の例としては、ビニルホスホン酸、フェニルホスホン酸、メチルホスホン酸、及びオクタデシルホスホン酸が挙げられる。
オルガノボラン−アミン錯体を解離する能力を有する好ましい化合物としては、例えば、カルボン酸、酸無水物、アルデヒド、イソシアネート、ホスホン酸、又は1,3−ジカルボニルが挙げられる。
オルガノボランがアミジン、アルコキシド、又はヒドロキシドに錯体化されている場合、好適な錯体解離剤は、アミン錯化剤について上記したものと同じである。オルガノボランが、プロトン性であるアルコキシド、ヒドロキシド、又はアミジンに錯体化されている場合、すなわち、窒素原子のうちの少なくとも1個が水素で置換されている場合、好ましい錯体解離剤としては、例えば、カルボン酸、酸無水物、イソシアネート、ホスホン酸、又は1,3−ジカルボニルが挙げられる。オルガノボランが、非プロトン性であるアミジンに錯体化されている(すなわち、水素で置換されている窒素原子は存在しない)場合、好ましい錯体解離剤としては、例えば、カルボン酸、酸無水物、ホスホン酸、又は1,3−ジカルボニルが挙げられる。
錯体解離剤は、典型的には有効量(すなわち、開始剤をその錯化剤から遊離させることによって反応(すなわち、重合及び/又は架橋による硬化)を促進するのに有効であるが、最終的な組成物の所望の特性に実質的に悪影響を及ぼすことのない量)で使用される。当業者が認識するとおり、錯体解離剤が多すぎることは、反応が速く進みすぎる原因となり得る。しかしながら、錯体解離剤の使用が少なすぎると、反応速度が遅くなりすぎる場合があり、得られるポリマーの分子量が特定の用途に不十分なものとなり得る。減速させなければ反応速度が速すぎる場合、錯体解離剤の量の低減が減速に役立ち得る。したがって、これらのパラメーターの中で、錯体解離剤は、典型的には、錯化剤(複数可)中のアミン基、アミジン基、ヒドロキシド基、又はアルコキシド基に対する、錯体解離剤(複数可)中のアミン−、アミジン−、ヒドロキシド−、又はアルコキシド−反応性基のモル比が、0.5:1.0〜10.0:1.0の範囲となるような量で提供される。より良好な性能のためには、好ましくは、錯化剤(複数可)中のアミン基、アミジン基、ヒドロキシド基、又はアルコキシド基に対する、錯体解離剤(複数可)中のアミン−、アミジン−、ヒドロキシド−、又はアルコキシド−反応性基の比は、0.5:1.0〜4.0:1.0の範囲、好ましくは約1.0:1.0である。
ヒドロペルオキシド
本開示による重合性組成物は、少なくとも1種のヒドロペルオキシドを含む。多液型組成物において、ヒドロペルオキシドは、部分A、部分B、又は任意の他の部分中に存在し得る。いくつかの実施形態において、ヒドロペルオキシドは、オルガノボラン−塩基錯体と同じ部分中に存在しない。好適なヒドロペルオキシドの例としては、過酸化水素及び有機ヒドロペルオキシド(例えば、ヒドロカルビルヒドロペルオキシド)が挙げられる。
有機ペルオキシドは、一般的に、比較的厚いコーティング(例えば、0.25mm超、又は0.50mm超、又は1.00mm超のコーティング厚)を必要とする用途において硬化時間を短縮するための有用な添加剤となり得るが、意外にも、ヒドロペルオキシド(例えば、有機ヒドロペルオキシド)は、硬化速度の増大において、例えば、ジアルキルペルオキシドのような他のペルオキシドよりもはるかに有効である。2種以上のヒドロペルオキシドの組み合わせ(例えば、過酸化水素及び/又は有機ヒドロペルオキシド(複数可))も使用してもよい。
いくつかの好ましい実施形態では、ヒドロペルオキシドは、第三級ヒドロペルオキシド、すなわち、ヒドロペルオキシ基(−OOH)が第三級炭素原子に結合した有機ヒドロペルオキシドである。いくつかの実施形態では、有機ヒドロペルオキシドは、第三級ヒドロカルビル(環状、分枝状、及び/若しくは線状アルキル基、並びに/又はアリール基を含む)ヒドロペルオキシドを含み、好ましくは4〜15個の炭素原子を有する。
例示的な有機ヒドロペルオキシドとしては、Akzo Nobel NV(Amsterdam,The Netherlands)からTRIGONOXの商品名で入手できる第三級ヒドロペルオキシド(例えば、イソプロピルクミルヒドロペルオキシド、クミルヒドロペルオキシド、tert−ブチルヒドロペルオキシド、tert−アミルヒドロペルオキシド、及び1,1,3,3−テトラメチルブチルヒドロペルオキシド)が挙げられる。その他のヒドロペルオキシドとしては、trans−5−フェニル−4−ペンテニルヒドロペルオキシド、アルカンヒドロペルオキシド(例えば、プロパンヒドロペルオキシド、n−オクタンヒドロペルオキシド、イソヘキサンヒドロペルオキシド、イソペンタンヒドロペルオキシド、シクロヘキサンヒドロペルオキシド、シクロペンタンヒドロペルオキシド、メチルシクロヘキサンヒドロペルオキシド、デカリンヒドロペルオキシド、及びテトラリンヒドロペルオキシド)、トルエンヒドロペルオキシド、ジフェニルメチルヒドロペルオキシド、トリフェニルメチルヒドロペルオキシド、トリナフチルメチルヒドロペルオキシド、シメンヒドロペルオキシド、及びフェニルエチルヒドロペルオキシドが挙げられる。
典型的には、ヒドロペルオキシドは、本開示の組成物に、少なくとも有効量(すなわち、意図する用途に適した時間枠内で十分な硬化度を提供する)で存在するが、他の量も使用してよい。例えば、2液型システムでは、ヒドロペルオキシドの量は、混合したときに希釈された濃度が所望の濃度になるように、1つの部分の方が多くてもよい。いくつかの実施形態では、オルガノボランによって提供されるホウ素原子に対するヒドロペルオキシドによって提供されるヒドロペルオキシ基(−OOH)のモル比は、約0.2〜1.0であり、いくつかの実施形態では0.4〜0.8である。
重合性エチレン性不飽和化合物
重合性エチレン性不飽和化合物としては、複数のエチレン性不飽和基を含む化合物(例えば、モノマー、オリゴマー、重合性ポリマー)が好適である。このような化合物は、多くの場合「多官能性」とも称される。
分子内及び末端エチレン性不飽和基を含む、多くの種類のエチレン性不飽和基が適している。しかし、芳香族性、例えば、ベンゼン環に関連する不飽和は適していない。アルケニル基及びアルキニル基が有用である。1,3−ジエン、フマル酸エステル、及びマレイン酸エステルの場合のように、これらの基は、その他の炭素−炭素、炭素−酸素、又は炭素−窒素不飽和と非共役でも共役でもよい。
概して、ビニル基、アリル基、及びエチニル基などの末端エチレン性不飽和基は、より反応性であり、したがって周囲条件下において、比較的速やかな硬化が所望されるときに好ましい(ただし、高反応性であるノルボルネン、及び反応が穏やかなマレイミドも好ましい)。好ましいエチレン性不飽和化合物としては、ビニル、アリル、エチニル、ノルボルネニル、及びマレイミドが挙げられる。ビニルとしては、限定するものではないが、ビニルエーテル、ビニルシリコーン(すなわち、ケイ素と共有結合したビニル基を有するポリジオルガノシロキサン)、N−ビニルアミド、ビニル脂肪族(例えば、1,9−デカジエン)、ビニル芳香族(例えば、ジビニルベンゼン)、ビニルエステル、(メタ)アクリレート、及び(メタ)アクリルアミドが挙げられる。アリルとしては、限定するものではないが、アリルエーテル、アリルエステル、アリルカルバメート、アリルアミン、アリルアミド(アリルイミド、アリルイソシアヌレート、及びアリル尿素を含む)、アリルシアヌレート、及びアリルトリアジンが挙げられる。
多官能性エチレン性不飽和化合物の例としては、ビニルエーテル、ビニルシリコーン、ビニル脂肪族、(メタ)アクリレート、アリルエーテル、アリルエステル、及びアリルアミド(アリルイソシアヌレート)が挙げられる。
好適な多官能性アリルエーテルとしては、トリメチロールプロパンジアリルエーテル、ペンタエリスリトールテトラアリルエーテル(アリルペンタエリスリトールとも呼ばれる)、ジペンタエリスリトールヘキサアリルエーテル、トリメチロールプロパントリアリルエーテル、エチレングリコールジアリルエーテル、及びジエチレングリコールジアリルエーテルが挙げられる。
好適な多官能性アリルアミド(すなわち、N−アリルアミド)としては、N,N’−ジアリルタルトルアミド、1,3−ジアリル尿素、及びトリアリルイソシアヌレート、並びにアリルアミンとジカルボン酸又はその酸塩化物から合成されたN,N’−ジアリルアミド、及びジアリルアミンとカルボン酸又はその酸塩化物から合成されたN,N−ジアリルアミドが挙げられる。好ましい多官能性アリルアミドは、トリアリルイソシアヌレートである。
好適なエチレン性不飽和化合物としては、多官能(メタ)アクリレートモノマーが挙げられる。本明細書で使用するとき、用語「(メタ)アクリレート」及び「(メタ)アクリル」並びにこれらの複数形は、指定された化合物のアクリレート種及び/又はメタクリレート種を含むことを意味する。例えば、用語「エチル(メタ)アクリレート」は、エチルアクリレート及び/又はエチルメタクリレートを含むことを意味する。好適な(メタ)アクリル酸誘導体は、例えば、多価アルコールの(メタ)アクリル酸エステルである。
好適なジ(メタ)アクリレートとしては、1,3−ブチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,4−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールモノアクリレートモノメタクリレート、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、アルコキシ化脂肪族ジ(メタ)アクリレート、アルコキシ化シクロヘキサンジメタノールジ(メタ)アクリレート、アルコキシ化ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、アルコキシ化ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、カプロラクトン変性ネオペンチルグリコールヒドロキシピバレートジ(メタ)アクリレート、シクロヘキサンジメタノールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、エトキシ化(10)ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、エトキシ化(3)ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、エトキシ化(30)ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、エトキシ化(4)ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、エトキシ化(4)ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、ヒドロキシピバルアルデヒド変性トリメチロールプロパンジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコール(200)ジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコール(400)ジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコール(600)ジ(メタ)アクリレート、プロポキシ化ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリシクロデカンジメタノールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、及びトリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレートが挙げられる。
好適なトリ(メタ)アクリレートとしては、グリセロールトリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、エトキシ化トリ(メタ)アクリレート(例えば、エトキシ化(3)トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、エトキシ化(6)トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、エトキシ化(9)トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、エトキシ化(15)トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、エトキシ化(20)トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート)、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、プロポキシ化トリ(メタ)アクリレート(例えば、プロポキシ化(3)グリセリルトリ(メタ)アクリレート、プロポキシ化(5.5)グリセリルトリ(メタ)アクリレート、プロポキシ化(3)トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、プロポキシ化(6)トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート)、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、及びトリス(2−ヒドロキシエチル)イソシアヌレートトリ(メタ)アクリレート(これはトリス(2−(メタ)アクリロイルオキシエチル)イソシアヌレートとも称される)が挙げられる。
好適な高級官能性(メタ)アクリル化合物としては、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、エトキシ化(4)ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、及びカプロラクトン変性ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレートが挙げられる。
好適なオリゴマー重合性(メタ)アクリル化合物としては、ウレタン(メタ)アクリレート、ポリエステル(メタ)アクリレート、ポリブタジエン(水素化ポリブタジエンを含む)(メタ)アクリレート、及びエポキシ(メタ)アクリレートが挙げられる。
好適な(メタ)アクリレートとしては、例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、ポリエチレングリコール、トリメチロールプロパン、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、テトラプロピレングリコール、ペンタプロピレングリコール、及びポリプロピレングリコールなどの多価アルコールの(メタ)アクリル酸エステル、エトキシ化又はプロポキシ化ジフェニロールプロパン、及びヒドロキシ末端ポリウレタンなどの(メタ)アクリル酸エステルが挙げられる。
好適なエチレン性不飽和化合物としては、多官能性(メタ)アクリルアミドモノマーが挙げられる。本明細書で使用するとき、用語「(メタ)アクリルアミド」及びその複数形は、指定された化合物のアクリルアミド種及び/又はメタクリルアミド種を含むことを意味する。
好適な多官能性(メタ)アクリルアミドとしては、1,4−ビス((メタ)アクリロイル)ピペラジン、ビス−(メタ)アクリルアミド(N,N’−メチレンジ(メタ)アクリルアミドとも称される)、N,N’−(1,2−ジヒドロキシエチレン)ビス(メタ)アクリルアミド、並びに(メタ)アクリル酸又はその酸塩化物と1,3−ジアミノプロパン、N,N’−ジメチル−1,3−ジアミノプロパン、1,4−ジアミノブタン、ポリアミドアミン、及びポリオキシアルキレンポリアミンなどの第一級及び/又は第二級アミンとの反応により形成され得る多官能性(メタ)アクリルアミドが挙げられる。
好適な多官能性ビニルエーテルとしては、1,4−シクロヘキサンジメタノールジビニルエーテル、ジエチレングリコールジビニルエーテル、トリエチレングリコールジビニルエーテル、ポリ(エチレングリコール)ジビニルエーテル、及びブタンジオールジビニルエーテルが挙げられる。
好適な多官能性ビニルポリジオルガノシロキサン(ビニルシリコーンとも呼ばれる)としては、ビニル末端ポリジメチルシロキサン、例えば、Gelest,Inc.のDMS−V21、DMS−V22、DMS−V31、DMS−V35、及びDMS−V42、ビニル末端ジフェニルシロキサン−ジメチルシロキサンコポリマー、例えば、Gelest,Inc.のPDV−0325、PDV−0331、PDV−0525、PDV−1625、PDV−1631、及びPDV−1635、並びにポリマー鎖の末端ではなくポリマー鎖に沿った内部のケイ素原子に結合しているビニル基を含有し、トリメチルシロキシ末端ビニルメチルシロキサン−ジメチルシロキサンコポリマーとも呼ばれるポリジメチルシロキサン、例えば、Gelest,Inc.のVDT−131、VDT−153、VDT−431、VDT−731、及びVDT−954、並びに分子内及び分子末端の両方にビニル基を含有しており、ビニル末端ビニルメチルシロキサン−ジメチルシロキサンコポリマーとも呼ばれるポリジメチルシロキサン、例えば、Gelest,Inc.のVDV−0131が挙げられる。
好適な多官能性ビニル脂肪族としては、1,9−デカジエン、及び1,2,4−トリビニルシクロヘキサン、及びポリブタジエンが挙げられ、その1,3−ブタジエンの一部は1,2−付加により組み込まれている。
好適な多官能性アリルエステルとしては、ジアリルスクシネート、ジアリルアジペート、ジアリルイソフタレート、ジアリルフタレート、及びトリアリルトリメリテートが挙げられる。
好適なノルボルネンとしては、2,5−ノルボルナジエン、5−ビニル−2−ノルボルネン、5−エチリデン−2−ノルボルネン、5−メチレン−2−ノルボルネン、ジシクロペンタジエン、エチレン、プロピレン、及びジエンモノマーのターポリマー(ジエンモノマーは、2,5−ノルボルナジエン、5−ビニル−2−ノルボルネン、5−エチリデン−2−ノルボルネン、5−メチレン−2−ノルボルネン、又はジシクロペンタジエンである)、並びに(ビシクロヘプテニル)エチル末端ポリジメチルシロキサン、例えば、Gelest,Inc.のDMS−NB25及びDMS−NB32などが挙げられる。
好適な多官能性マレイミドとしては、マレイン酸無水物と、1,4−ジアミノブタン、1,6−ジアミノヘキサン、4,4’−メチレンジアニリン、4,4’−オキシジアニリン、フェニレンジアミン、及びポリアミドアミンなどの脂肪族又は芳香族第一級アミンとの反応によって合成されるビスマレイミドが挙げられる。
重合性エチレン性不飽和化合物の様々な組み合わせが用いられ得る。好ましい組み合わせとしては、混和性混合物が挙げられる。しかし、ビニルシリコーン及び(ビシクロヘプテニル)エチル末端ポリジメチルシロキサンは、本明細書に記載の他の化合物と混和性でない場合があることに留意されたい。更に、エチレン性不飽和化合物がポリジオルガノシロキサンであるとき、典型的には、チオール含有化合物もポリジオルガノシロキサンである。
チオール含有化合物
好適な重合性チオール含有化合物は、チオール基の硫黄原子が炭素原子と共有結合(すなわち、C−S結合)している複数のチオール基(−SH基はメルカプト基とも呼ばれる)を含む化合物[例えば、モノマー、オリゴマー、重合性ポリマー(すなわち、プレポリマー)]である。このような化合物は、多くの場合「多官能性」チオール又はポリチオールと呼ばれる。
好適なポリチオールの例としては、ポリチオールの脂肪族モノマー(エタンジチオール、ヘキサメチレンジチオール、デカメチレンジチオール、及びトリレン−2,4−ジチオールなど)、芳香族モノマーポリチオール(ベンゼン−1,2−ジチオール、ベンゼン−1,3−ジチオール、ベンゼン−1,4−ジチオールなど)、及びいくつかのポリマーポリチオール、例えば、チオール末端エチルシクロヘキシルジメルカプタンポリマーなどが挙げられる。
その他の有用なポリチオールは、米国特許第6,605,687号(Gross et al.)に記載されており、ジメルカプトジエチルスルフィド、1,6−ヘキサンジチオール、1,8−ジメルカプト−3,6−ジチアオクタン、プロパン−1,2,3−トリチオール、1,2−ビス[(2−メルカプトエチル)チオ]−3−メルカプトプロパン、テトラキス(7−メルカプト−2,5−ジチアヘプチル)メタン、及びトリチオシアヌル酸を含む。
本開示に有用な好ましいポリチオールとしては、チオール含有カルボン酸又はその誘導体によるポリオールのエステル化により形成されるポリチオールが挙げられる。チオール含有カルボン酸又はその誘導体によるポリオールのエステル化により形成されるポリチオールの例としては、チオグリコール酸又は3−メルカプトプロピオン酸と数種のポリオールとをエステル化反応させることでそれぞれ形成されるメルカプトアセテート又はメルカプトプロピオネートが挙げられる。
臭気強度が比較的低いことから好ましいポリチオール化合物の例としては、限定するものではないが、チオグリコール酸(HS−CHCOOH)、α−メルカプトプロピオン酸(HS−CH(CH)−COOH)及びβ−メルカプトプロピオン酸(3−メルカプトプロピオン酸(HS−CHCHCOOH)とも呼ばれる))と、ジオール(例えば、グリコール)、トリオール、テトラオール、ペンタオール、及びヘキサオールなどのポリヒドロキシ化合物(ポリオール)とのエステルが挙げられる。このようなポリチオールの具体例としては、限定するものではないが、エチレングリコールビス(チオグリコレート)、エチレングリコールビス(β−メルカプトプロピオネート)、トリメチロールプロパントリス(チオグリコレート)、トリメチロールプロパントリス(β−メルカプトプロピオネート)及びエトキシ化トリメチロールプロパントリス(β−メルカプトプロピオネート)、ペンタエリスリトールテトラキス(チオグリコレート)、ペンタエリスリトールテトラキス(β−メルカプトプロピオネート)、並びにトリス(ヒドロキシエチル)イソシアヌレートトリス(β−メルカプトプロピオネート)が挙げられる。
好適な材料は、商品名THIOCURE PETMP(ペンタエリスリトールテトラ−3−メルカプトプロピオネート)、TMPMP(トリメチロールプロパントリ(3−メルカプトプロピオネート)、ETTMP(エトキシル化−トリメチロールプロパントリ−3−メルカプトプロピオネート)、例えば、ETTMP 1300及びETTMP 700、GDMPグリコールジ(3−メルカプトプロピオネート)、TMPMA(トリメチロールプロパントリメルカプトアセテート)、TEMPIC(トリス[2−(3−メルカプトプロピオニルオキシ)エチル])、及びPPGMP(プロピレングリコール3−メルカプトプロピオネート)でBruno Bock Chemische Fabrik GmbH&Co.(KG)から市販されている。ポリマーポリチオールの具体的な例は、ポリプロピレン−エーテルグリコール(例えば、PLURACOL P201(Wyandotte Chemical Corp.))及びβ−メルカプトプロピオン酸からエステル化により調製される、ポリプロピレンエーテルグリコールビス(β−メルカプトプロピオネート)である。
炭素−炭素二重結合への硫化水素(HS)(又はその等価物)の付加により、その他の有用なポリチオールを形成できる。例えば、HS(又はその等価物)と反応したジペンテン及びトリグリセリドである。具体例としては、Chevron Phillips Chemical Co.LLPから商品名POLYMERCAPTAN 358(メルカプタン化大豆油)、及びPOLYMERCAPTAN 805C(メルカプタン化ヒマシ油)で入手できるジペンテンジメルカプタン及びそれらのポリチオールが挙げられる。少なくともいくつかの用途において、好ましいポリチオールはPOLYMERCAPTAN 358及び805Cであり、これらのポリチオールは、その大部分が再生可能資源、すなわち、トリグリセリド、大豆油、及びヒマシ油から生成されており、かつ多くのチオールと比較して相対的に臭気が少ないことから好ましい。有用なトリグリセリドは、不飽和部分、すなわち、炭素−炭素二重結合を1分子当たり平均して少なくとも2つの部位に有しており、十分な部位が変換されることで、1分子当たり平均して少なくとも2つのチオールが得られる。大豆油の場合、これには炭素−炭素二重結合のうち約42%以上が変換されることが必要であり、ヒマシ油の場合、これには炭素−炭素二重結合のうち約66%以上が変換されることが必要である。典型的には、高変換率であると好ましく、POLYMERCAPTAN 358及び805Cでは、それぞれ約60%超及び95%超の変換率を得ることができる。
その他の有用なポリチオールは、HS(又はその等価物)によるエポキシドの開環反応により形成できる。この種類の好ましいポリチオールとしては、Chevron Phillips Chemical Co.LLPから商品名POLYMERCAPTAN 407で入手できるもの(メルカプトヒドロキシ大豆油)、及び以前はBASF,Inc.(現在はGabriel Performance Products(Ashtabula,OH))から、CAPCURE、特にCAPCURE 3−800で入手できるもの(メルカプト末端基を有するポリオキシアルキレントリオールで、構造R[O(CO)−CH−CH(OH)−CHSH][式中、Rは1〜12個の炭素原子を有する脂肪族炭化水素基を表し、nは1〜25の整数である]を有するもの)、及びCAPCURE 3−800と等価である、Gabriel Performance ProductsからのGPM−800が挙げられる。
この種類のその他の有用なポリチオールとしては、HS(又はその等価物)と、ビスフェノールAエポキシ樹脂、ビスフェノールFエポキシ樹脂、及びノボラックエポキシ樹脂のグリシジルエーテルとの反応から誘導されるものが挙げられる。この種類の好ましいポリチオールはQX11で、これはビスフェノールAエポキシ樹脂から誘導され、ジャパンエポキシレジン(JER)から商品名EPOMATEで入手できる。その他の好適なポリチオールとしては、JERから商品名EPOMATE QX10及びQX20で市販のものが挙げられる。
その他の有用なポリチオールは、商品名チオコールLP−2、LP−3、LP−12、LP−31、LP−32、LP−33、LP−977、及びLP−980で東レ・ファインケミカル株式会社から市販のものなどの、チオール基含有ポリスルフィドである。
更に他の有用なポリチオールとしては、2015年2月13日に出願された米国特許仮出願第62/116,019号(DeMoss et al.)、発明の名称「Cold Tolerant Sealants and Components Thereof」、及び当該出願に含まれる参考文献に記載されているものなどのポリチオエーテルオリゴマー及びポリマーが挙げられる。
エチレン性不飽和化合物がポリジオルガノシロキサンであるとき、別の種類のポリチオールのチオール含有シリコーンが好ましい。メチル基のうちのいくつかがメルカプトアルキル基で置き換えられているポリジメチルシロキサンが好ましい。具体例としては、商品名SMS−022及びSMS−042(Gelest Inc.)、並びにKF−2001及びKF−2004(信越化学工業株式会社(東京、日本)で入手でき、ポリマー鎖内、すなわちポリマー鎖の末端以外のケイ素原子がメルカプトアルキル基で置換されているものが挙げられる。別の好ましいシリコーンは、両末端のケイ素原子がメルカプトアルキル基で置換されている、信越化学工業株式会社のX−22−167Bである。
重合性チオール含有化合物の様々な組み合わせを使用できる。好ましい組み合わせとしては、混和性混合物が挙げられる。しかしながら、チオール含有シリコーンが、本明細書に列挙されている他のチオール含有化合物と混和性ではない場合があることに留意されたい。
チオール含有シリコーン(すなわち、ポリジオルガノシロキサン)は、これらの化合物との混和性を欠くことに加え、価格が高いことから、多くのエチレン性不飽和化合物と組み合わせる(又は混合する)のに適さない場合があることに留意されたい。しかしながら、エチレン性不飽和化合物もシリコーン(すなわち、ポリジオルガノシロキサン)である場合、これらのエチレン性不飽和ポリジオルガノシロキサンと混和性であり、非シリコーンポリチオールとエチレン性不飽和基を含有するそれらのシリコーンとの混和性は有しないことから、チオール含有ポリジオルガノシロキサンが好ましい。
チオール含有化合物の例としては、チオール含有カルボン酸又はその誘導体によるポリオールのエステル化から調製されるもの、HS(又はその等価物)によるエポキシドの開環反応から調製されるもの、炭素−炭素二重結合へのHS(又はその等価物)の付加から調製されるもの、ポリスルフィド、ポリチオエーテル、及びポリジオルガノシロキサンが挙げられる。具体的には、これには、エチレングリコール及びトリメチロールプロパンの3−メルカプトプロピオネート(β−メルカプトプロピオネートとも呼ばれる)(前者は、現在Bruno Bochの一部であるEvans Chemetricsから、後者はSigma−Aldrichから)、POLYMERCAPTAN 805C(メルカプタン化ヒマシ油)、CAPCURE 3−800(メルカプト末端基を有するポリオキシアルキレントリオールで、構造R[O(CO)−CH−CH(OH)−CHSH][式中、Rは、1〜12個の炭素原子を有する脂肪族炭化水素基を表し、nは1〜25の整数である])、チオコールLP−3ポリスルフィド、並びにGELEST SMS−022及びSMS−042(メチル基のうちのいくつかがメルカプトアルキル基で置き換えられているポリジメチルシロキサン)が含まれる。
特定の実施形態では、チオール含有化合物の重量パーセント(重量%)は、チオール含有化合物及びエチレン性不飽和化合物の総重量のうちの少なくとも1重量%、又は少なくとも10重量%、又は少なくとも20重量%、又は少なくと30も重量%、又は少なくとも40重量%である。特定の実施形態では、チオール含有化合物の重量パーセントは、チオール含有化合物及びエチレン性不飽和化合物の総重量の最大99重量%、又は最大90重量%、又は最大80重量%、又は最大70重量%、又は最大60重量%である。特定の実施形態では、エチレン性不飽和化合物の重量パーセントは、チオール含有化合物及びエチレン性不飽和化合物の総重量のうちの少なくとも1重量%、又は少なくとも10重量%、又は少なくとも20重量%、又は少なくとも30重量%、又は少なくとも40重量%である。特定の実施形態では、エチレン性不飽和化合物の重量パーセントは、チオール含有化合物及びエチレン性不飽和化合物の総重量の最大99重量%、又は最大90重量%、又は最大80重量%、又は最大70重量%、又は最大60重量%である。
特定の実施形態では、チオール含有化合物に由来するチオール基の量及びエチレン性不飽和化合物に由来するエチレン性不飽和基の量は、0.25:1.0〜4.0:1.0、又は0.33:1.0〜3.0:1.0、又は0.5:1.0〜2.0:1.0、又は0.75:1.0〜1.33:1.0、又は0.80:1.0〜1.25:1.0(チオール基:エチレン性不飽和基)のモル比範囲に存在する。いくつかの特定の実施形態では、モル比は、好ましくは0.5:1.0〜2.0:1.0である。特定の実施形態では、例えば、1,2−ポリブタジエン又は不飽和ポリエステルのようなエチレン性不飽和繰り返し単位を含有する高分子量ポリマーの架橋が望ましい場合、チオール基の量及びエチレン性不飽和基の量は、0.005:1.0〜0.20:1.0(チオール基:エチレン性不飽和基)のモル範囲に存在してもよい。
任意の添加剤
本開示による組成物(多液型又は単一のいずれかにかかわらず)は、その他の任意の添加剤を含むことができる。これらの任意の添加剤は、例えば、部分A、部分B、又はその他の任意の部分中に存在することができる。ヒドロペルオキシド以外の過酸素化合物は、硬化特性(すなわち、硬化度対時間)を調節又はカスタマイズするために有用なとなり得る。有用な過酸素化合物の例は、約90℃以上の温度で10時間の半減期を有する、有機ヒドロペルオキシド以外の有機ペルオキシド、例えば、1,1−ジ(tert−ブチルペルオキシ)シクロヘキサン、tert−アミルペルオキシ2−エチルヘキシルカーボネート(2−ethylhexy carbonate)、tert−アミルペルオキシアセテート、2,2−ジ(tert−ブチルペルオキシ)ブタン、tert−ブチルペルオキシイソプロピルカーボネート、ジクミルペルオキシド、tert−ブチルペルオキシ−3,5,5−トリメチルヘキサノエート、2,5−ジメチル−2,5−ジ(tert−ブチルペルオキシ)ヘキサン、ジ−tert−ブチルペルオキシド、2,5−ジメチル−2,5−ジ(tert−ブチルペルオキシ)ヘキシン−3、及びtert−ブチルクミルペルオキシドである。特定の実施形態では、本開示による種々の組成物は、ヒドロペルオキシド(例えば、有機ヒドロペルオキシド及び/又は過酸化水素)以外の過酸素化合物を含まない。
別の特に有用な添加剤は、中分子量(例えば、40,000g/モル)のポリブチルメタクリレートなどの増粘剤であり、これは一般的に、重合性モノマーの総重量に基づいて最大50重量パーセントの量で組み込まれてもよい。増粘剤は、得られる組成物が塗布し易い粘性のシロップ様稠度となるように粘度を増大させるために用いられ得る。
更に別の特に有用な添加剤は、エラストマー材料である。これらの材料は、それで作製された組成物の破壊靭性を改善することができ、これは、例えば、降伏強さが高い硬い材料(例えば、可撓性高分子基材などの他の材料ほど容易にはエネルギーを機械的に吸収しない金属基材)を接合するときに有利であり得る。かかる添加剤は、概ね、組成物の総重量に基づいて最大50重量パーセントの量で組み込まれ得る。
コアシェルポリマーもまた、組成物の延展特性及び流動特性を改良するため添加することができる。このような特性の向上は、組成物をシリンジタイプのアプリケータから分注したときの望ましくない「糸引き」、又は垂直面への塗布後のサグ若しくはスランプが生じる傾向が低下することによって現れ得る。したがって、耐サグ−スランプ性の改善を得るには、組成物の総重量に対して20重量パーセントを超えるコアシェルポリマー添加剤の使用が望ましいこともある。コアシェルポリマーはまた、それで作製された組成物の破壊靭性も改善することができ、これは、例えば、降伏強さが高い硬い材料(例えば、可撓性高分子基材などの他の材料ほど容易にはエネルギーを機械的に吸収しない金属基材)を接合するときに有利であり得る。
ヒドロキノンモノメチルエーテル、2,6−ジ−(tert−ブチル−1,2−ジヒドロキシベンゼン、2,6−ジ−(tert−ブチル)−4−メチル−フェノール、ピロ没食子酸、及びトリス(N−ニトロソ−N−フェニルヒドロキシルアミン)アルミニウム塩などの少量の阻害物質を、例えば、重合性モノマーの保存中の反応防止又は分解低減のために、重合性組成物に使用してもよい。阻害物質は、硬化速度又はそれを用いて調製されたポリマーの最終的な特性に実質的に影響を与えない量で添加されてもよい。したがって、阻害物質は、概ね、重合性組成物中の重合性モノマーの総重量に基づいて100〜30,000百万分率(ppm)の量で有用である。
他の可能な添加剤としては、紫外線吸収剤及び光安定剤、難燃剤、可塑剤、接着促進剤、非反応性希釈剤、非反応性着色剤、粘着付与剤、充填剤(例えば、カーボンブラック、中空ガラス/セラミックビーズ、シリカ、二酸化チタン、炭酸カルシウム、中実ガラス/セラミック球、導電性及び/又は熱伝導性粒子、例えば、金属粒子、グラファイト、アルミナ三水和物(水酸化アルミニウムとも呼ばれる)、アルミナ、窒化ホウ素、及び炭化ケイ素、ガラス/セラミック繊維、炭素繊維、帯電防止化合物、及びチョーク)などが挙げられる。様々な任意の添加剤は任意の量で用いられるが、概ね、硬化プロセス又はそれで作製されたポリマーの所望の特性に著しく悪影響を及ぼすことのない量で用いられる。
配合
本開示による多液型組成物は、少なくとも部分A組成物(部分A)及び部分B組成物(部分B)として提供され、これらの部分は組成物の使用前(例えば、組成物を基材に適用する前)に混合される。このようにして、部分Aと部分Bとが組み合わされるまで、オルガノボランの活性化を遅延させることができる。
より具体的には、本開示の組成物は、少なくとも2種の部分、すなわち、オルガノボラン−塩基錯体を含む部分A組成物と錯体解離剤を含む部分B組成物とを含む、多液型重合性組成物である。これらの2種の部分は、反応が所望されるまで別々に保たれる。重合性成分は、部分A、部分B、又は部分A及び部分Bと異なる別の部分中に存在することができる。重合性エチレン性不飽和成分及びチオール含有成分は、部分A、部分B、又は部分A及び部分Bとは異なる別の部分に別々に存在することも、一緒に存在することもできる。ヒドロキシドは、部分A、部分B、又は部分A及び部分Bとは異なる別の部分中に存在することができる。様々な組み合わせを想定することができる。
部分Aがオルガノボラン−塩基錯体を含み、部分Bが錯体解離剤を含む2液型組成物に関しては、次の重合性エチレン性不飽和成分及びチオール含有成分の組み合わせを作ることができる:
(1)重合性チオール含有成分及びエチレン性不飽和成分が部分A中にのみ存在する、
(2)重合性チオール含有成分及びエチレン性不飽和成分が部分B中にのみ存在する、
(3)重合性チオール含有成分の全てが部分A中に存在し、重合性エチレン性不飽和成分の全てが部分B中に存在する、
(4)重合性エチレン性不飽和成分の全てが部分A中に存在し、重合性チオール含有成分の全てが部分B中に存在する、
(5)部分A及び部分Bのそれぞれが、重合性チオール含有成分の一部と重合性エチレン性不飽和成分の一部とを含む、
(6)部分Aが重合性チオール含有成分の一部と重合性エチレン性不飽和成分の全てとを含み、部分Bが重合性チオール含有成分の一部を含む、
(7)部分Aが重合性チオール含有成分の全てと重合性エチレン性不飽和成分の一部とを含み、部分Bが重合性エチレン性不飽和成分の一部を含む、
(8)部分Aが重合性チオール含有成分の一部を含み、部分Bが重合性チオール含有成分の一部と重合性エチレン性不飽和成分の全てを含む、及び
(9)部分Aが重合性エチレン性不飽和成分の一部を含み、部分Bが重合性エチレン性不飽和成分の一部と重合性チオール含有成分の全てとを含む。
特定の状況では、成分の安定性に関係することから、様々な組み合わせを決定する際には、オルガノボラン−塩基錯体又は錯体解離剤と、重合性成分との間の相溶性を考慮する必要がある。更には、重合性成分(すなわち、多官能性チオール含有化合物及び多官能性エチレン性不飽和化合物)の相溶性を考慮する必要もある。
2液型組成物は、長い貯蔵寿命と同様に、コストを考慮したときに好ましい。
2液型組成物を使用する場合、オルガノボラン−塩基錯体を錯体解離剤とは別にすることに加え、他の構成成分との組み合わせの安定性を考慮する必要がある。例えば、好ましい安定な組み合わせとしては、オルガノボラン−塩基錯体と、ビニルエーテル、ビニル脂肪族、アリルエーテル又はアリルアミドとの組み合わせ、及びポリチオールと、カルボン酸、酸無水物、1,3−ジカルボニル、イソシアネート、アルデヒド又はホスホン酸から選択される錯体解離剤との組み合わせが挙げられる。より好ましい組み合わせとしては、オルガノボラン−塩基錯体と、ビニルエーテル、ビニル脂肪族、アリルエーテル、又はアリルアミドとの組み合わせ、及びポリチオールと、カルボン酸、酸無水物、1,3−ジカルボニル、又はホスホン酸から選択される錯体解離剤との組み合わせが挙げられる。貯蔵寿命を長くするため、オルガノボラン−塩基錯体は、好ましくは、アクリレート、メタクリレート、アクリルアミド、メタクリルアミド、又はアリルエステルと同じ部分中にない。いくつかの実施形態では、ヒドロペルオキシドは、オルガノボラン−塩基錯体とは異なる部分中に存在する。貯蔵寿命を長くするため、ヒドロペルオキシドは、好ましくはオルガノボラン−塩基錯体とは異なる部分中に存在する。
方法
本開示に記載されるもののような多液型組成物が、商用及び産業用環境で最も容易に使用されるには、様々な部分を組み合わせる割合を、都合のよい整数とするべきである。これにより、従来の市販のディスペンサーを用いた組成物の適用が容易になる。このようなディスペンサーは米国特許第4,538,920号(Drake)及び同第5,082,147号(Jacobs)に示されており、ConProTec,Inc.(Salem,New Hampshire)からMIXPACという商品名で入手可能であり、デュアルシリンジ型アプリケータと説明されることがある。
典型的には、2液型組成物について、かかるディスペンサーは、各管が組成物の2種の部分のうちの一方を受容することが意図されている、隣り合わせに配設された一対の管状収容部を使用する。各管に対して1つずつの2つのプランジャは、同時に前進して(例えば、手で、又は手動で作動させるラチェット機構により)、管の内容物を、2種の部分のブレンドを促進する静的ミキサーも収容する場合がある共通の中空の細長い混合チャンバ内に排出する。ブレンドされた組成物は混合チャンバから、典型的には基材上に押し出される。管が空になったら、新しい管と交換し、適用プロセスを継続することができる。
組成物の部分の配合比は管の直径によって制御される。各プランジャは、直径が一定である管内に受容されるようにサイズ設定され、プランジャは同一速度で管内に進められる。単一のディスペンサーは多くの場合に種々の異なる組成物での使用が意図され、プランジャは、組成物の部分を好都合な混合比で吐出させるようなサイズである。2液型組成物の場合、ある程度一般的な混合比は1:1、1:2、1:4、及び1:10(体積:体積)である。
組成物の部分が半端な混合比(例えば、3.5:100)で配合される場合、最終利用者は、おそらく組成物の部分を手で計量することになる。したがって、商業及び産業上の利用性を最善とするため、及び現在入手可能である分注機器で容易に使用するために、組成物の部分、特に2種の部分は、例えば1:1、1:2、1:4、及び1:10などの一般的な整数の混合割合で組み合わせることができるようにすべきである。
部分の配合後は、組成物は、好ましくは組成物の可使時間以内の期間中に使用しなければならない。部分、例えば部分Aと部分Bとが組み合わされると、穏和条件下、好ましくは周囲条件下で反応が起こる。この文脈で、「穏和条件」とは、0℃〜50℃、10℃〜50℃、19℃〜50℃、又は19℃〜40℃、又は19℃〜30℃、又は19℃〜25℃を含む。周囲条件とは、室温を含む。所望であれば、反応を促進するため、熱を加えてもよい。
部分、例えば部分Aと部分Bとが組み合わされると、数時間、多くの場合は数分のうちに反応が起こる。例えば、組成物の硬化時間は、典型的には周囲条件下で数秒〜12時間の範囲であり得る。所望する場合、高温での後硬化も使用されてよい。比較的速い反応(重合及び/又は架橋)は12時間以内に起こり得るが、特定の実施形態はそれほど急速には硬化しない。かかる組成物は、そのような高速硬化を必要としない状況において有用である。
本開示の選択される実施形態
実施形態1.重合性組成物であって、
オルガノボランと塩基との錯体であるオルガノボラン−塩基錯体であって、塩基は、1若しくは複数のアミン基、アミジン基、ヒドロキシド基、アルコキシド基、又はこれらの組み合わせを有する化合物から選択される錯化剤である、オルガノボラン−塩基錯体と、
オルガノボラン−塩基錯体からオルガノボランを少なくとも部分的に遊離させる錯体解離剤と、
チオール基の硫黄原子が炭素に共有結合しているチオール基を複数有する重合性チオール含有化合物を少なくとも1種含む、重合性チオール含有成分と、
ヒドロペルオキシドと、
エチレン性不飽和基を複数有する重合性エチレン性不飽和化合物を少なくとも1種含む、重合性エチレン性不飽和成分と、を含み、
チオール含有化合物とエチレン性不飽和化合物との合計量は、重合性組成物中の全ての重合性材料の少なくとも50重量%を占める、重合性組成物。
実施形態2.ヒドロペルオキシドが有機ヒドロペルオキシドである、実施形態1に記載の重合性組成物。
実施形態3.反応時、−C−S−C−C−結合が形成される、実施形態1又は2に記載の重合性組成物。
実施形態4.重合性エチレン性不飽和基を有するいかなるチオール含有化合物も含まない、実施形態1〜3のいずれか1つに記載の重合性組成物。
実施形態5.オルガノボラン−塩基錯体がチオール基を含まない、実施形態1〜4のいずれか1つに記載の重合性組成物。
実施形態6.オルガノボランが、式 B(R)(R)(R)[式中、
は、1〜10個の炭素原子を有するアルキル基を表し、
及びRは、独立して、
1〜10個の炭素原子を有するアルキル基、
3〜10個の炭素原子を有するシクロアルキル基、
6〜12個の炭素原子を有するアリール基、又は
1〜10個の炭素原子を有するアルキル基若しくは3〜10個の炭素原子を有するシクロアルキル基で置換されたアリール基を表すか、
、R、及びRのうちのいずれか2つが一緒になって3〜7個の炭素原子を有する二価アルキレン基を形成する]で表される、実施形態1〜5のいずれか1つに記載の重合性組成物。
実施形態7.塩基が、少なくとも1つの第一級又は第二級アミン基を含むアミンである、実施形態1〜6のいずれか1つに記載の重合性組成物。
実施形態8.錯体解離剤が、カルボン酸、酸無水物、アルデヒド、イソシアネート、ホスホン酸、又は1,3−ジカルボニル化合物のうちの少なくとも1つを含む、実施形態1〜7のいずれか1つに記載の重合性組成物。
実施形態9.多液型重合性組成物である、実施形態1〜8のいずれか1つに記載の重合性組成物。
実施形態10.多液型重合性組成物が、
オルガノボラン−塩基錯体を含む部分A組成物と、
錯体解離剤を含む部分B組成物と、を含み、
チオール含有化合物が、部分A組成物、部分B組成物、又は部分A組成物及び部分B組成物とは異なる別の部分中に存在し、
ヒドロペルオキシドが、部分A組成物、部分B組成物、又は部分A組成物及び部分B組成物とは異なる別の部分中に存在し、かつ
重合性エチレン性不飽和化合物が、部分A組成物、部分B組成物、又は部分A組成物及び部分B組成物とは異なる別の部分中に存在する、実施形態9に記載の重合性組成物。
実施形態11.チオール含有成分が、HSによるエポキシドの開環反応から調製されるもの、炭素−炭素二重結合へのHSの付加から調製されるもの、ポリスルフィド、ポリチオエーテル、メチル基のいくつかがメルカプトアルキル基で置き換えられているポリジメチルシロキサン、及びチオール含有カルボン酸又はその誘導体によるポリオールのエステル化により調製されるものから選択される重合性チオール含有化合物を少なくとも1種含む、実施形態1〜10のいずれか1つに記載の重合性組成物。
実施形態12.重合性エチレン性不飽和化合物が、多官能ビニルエーテル、ビニルシリコーン、ビニル脂肪族、(メタ)アクリレート、アリルエーテル、アリルエステル、及びアリルアミドから選択される、実施形態1〜11のいずれか1つに記載の重合性組成物。
実施形態13.重合性チオール含有成分中のチオール基の量及び重合性エチレン性不飽和成分中の重合性エチレン性不飽和基の量が、0.25:1.0〜4.0:1.0のモル比範囲にある、実施形態1〜12のいずれか1つに記載の重合性組成物。
実施形態14.ホウ素原子に対するヒドロペルオキシ基のモル比が0.2〜1.0である、実施形態1〜13のいずれか1つに記載の重合性組成物。
実施形態15.重合性組成物であって、
オルガノボランと塩基との錯体であるオルガノボラン−塩基錯体を含む部分A組成物であって、塩基は、1若しくは複数のアミン基、アミジン基、ヒドロキシド基、アルコキシド基、又はこれらの組み合わせを有する化合物から選択される錯化剤である、部分A組成物と、
オルガノボラン−塩基錯体からオルガノボランを少なくとも部分的に遊離させる錯体解離剤を含む部分B組成物と、を含み、
チオール基の硫黄原子が炭素に共有結合しているチオール基を複数有する重合性チオール含有化合物を少なくとも1種含む、重合性チオール含有成分と、
ヒドロペルオキシドと、
エチレン性不飽和基を複数有する重合性エチレン性不飽和化合物を少なくとも1種含む、重合性エチレン性不飽和成分と、を更に含み、
チオール含有化合物とエチレン性不飽和化合物との合計量は、重合性組成物中の全ての重合性材料の少なくとも50重量%を占める、重合性組成物。
実施形態16.ヒドロペルオキシドが有機ヒドロペルオキシドである、実施形態15に記載の重合性組成物。
実施形態17.ヒドロペルオキシドが部分B組成物中に存在する、実施形態15又は16に記載の重合性組成物。
実施形態18.反応時、−C−S−C−C−結合が形成される、実施形態15〜17のいずれか1つに記載の重合性組成物。
実施形態19.オルガノボランが、式 B(R)(R)(R)[式中、
は、1〜10個の炭素原子を有するアルキル基を表し、
及びRは、独立して、
1〜10個の炭素原子を有するアルキル基、
3〜10個の炭素原子を有するシクロアルキル基、
6〜12個の炭素原子を有するアリール基、又は
1〜10個の炭素原子を有するアルキル基若しくは3〜10個の炭素原子を有するシクロアルキル基で置換されたアリール基を表すか、
、R、及びRのうちのいずれか2つが一緒になって3〜7個の炭素原子を有する二価アルキレン基を形成する]で表される、実施形態15〜18のいずれか1つに記載の重合性組成物。
実施形態20.塩基が、少なくとも1つの第一級又は第二級アミン基を含むアミンである、実施形態15〜19のいずれか1つに記載の重合性組成物。
実施形態21.オルガノボランと塩基との錯体であるオルガノボラン−塩基錯体を含む部分A組成物であって、塩基は、1若しくは複数のアミン基、1若しくは複数のアミジン基、1若しくは複数のヒドロキシド基、1若しくは複数のアルコキシド基、又はこれらの組み合わせを有する化合物から選択される錯化剤である、部分A組成物と、
オルガノボラン−塩基錯体からオルガノボランを少なくとも部分的に遊離させる錯体解離剤を含む部分B組成物と、
を含む構成成分を組み合わせることによって調製される組成物であって、
部分A組成物及び部分B組成物のうちの少なくとも1つは、
チオール基の硫黄原子が炭素に共有結合しているチオール基を複数有する重合性チオール含有化合物を少なくとも1種含む、重合性チオール含有成分と、
ヒドロペルオキシドと、
エチレン性不飽和基を複数有する重合性エチレン性不飽和化合物を少なくとも1種含む、重合性エチレン性不飽和成分と、を更に含み、
チオール含有化合物とエチレン性不飽和化合物との合計量は、重合性組成物中の全ての重合性材料の少なくとも50重量%を占める、組成物。
実施形態22.ヒドロペルオキシドが有機ヒドロペルオキシドである、実施形態21に記載の組成物。
実施形態23.オルガノボランが、式 B(R)(R)(R)[式中、
は、1〜10個の炭素原子を有するアルキル基を表し、
及びRは、独立して、
1〜10個の炭素原子を有するアルキル基、
3〜10個の炭素原子を有するシクロアルキル基、
6〜12個の炭素原子を有するアリール基、又は
1〜10個の炭素原子を有するアルキル基若しくは3〜10個の炭素原子を有するシクロアルキル基で置換されたアリール基を表すか、
、R、及びRのうちのいずれか2つが一緒になって3〜7個の炭素原子を有する二価アルキレン基を形成する]で表される、実施形態21又は22に記載の組成物。
実施形態24.塩基が、少なくとも1つの第一級又は第二級アミン基を含むアミンである、実施形態21〜23のいずれか1つに記載の組成物。
実施形態25.組成物の製造方法であって、
オルガノボランと塩基との錯体であるオルガノボラン−塩基錯体を含む部分A組成物であって、塩基は、1若しくは複数のアミン基、アミジン基、ヒドロキシド基、アルコキシド基、又はこれらの組み合わせを有する化合物から選択される錯化剤である、部分A組成物と、オルガノボラン−塩基錯体からオルガノボランを少なくとも部分的に遊離させる錯体解離剤を含む部分B組成物と、を含む構成成分を組み合わせることと、
部分A組成物と部分B組成物とを反応させて、ポリマーを形成することと、を含み、
部分A組成物及び部分B組成物のうちの少なくとも1つは、
チオール基の硫黄原子が炭素に共有結合しているチオール基を複数有する重合性チオール含有化合物を少なくとも1種含む、重合性チオール含有成分と、
ヒドロペルオキシドと、
エチレン性不飽和基を複数有する重合性エチレン性不飽和化合物を少なくとも1種含む、重合性エチレン性不飽和成分と、を更に含み、
チオール含有化合物とエチレン性不飽和化合物との合計量は、組成物中の全ての重合性材料の少なくとも50重量%を占める、製造方法。
実施形態26.ヒドロペルオキシドが有機ヒドロペルオキシドである、実施形態25に記載の方法。
本開示の目的及び利点は、以下の非限定的な実施例によって更に例示されるが、これらの実施例で引用される特定の材料及びそれらの量、並びに他の条件及び詳細は、本開示を不当に限定するものとして解釈されるべきではない。
特に指示のない限り、実施例及び本明細書の残りの部分における全ての部、割合、比率などは、重量による。
4,13−ジチア−7,10−ジオキサ−2,15−ジメチルヘキサデシル−1,15−ジエン(DMDO−CMPジエン)の調製
撹拌機、温度計、水冷式冷却器、及び等圧滴下漏斗を取り付けた500mL4つ口丸底フラスコに、206.54gの20%水酸化ナトリウム水溶液(1.033モル)を加えた。これに、94.08gの1,8−ジメルカプト−3,6−ジオキサオクタン(DMDO、0.51モル、Arkema,Inc.(King of Prussia,Pennsylvania)から入手)を撹拌下で滴加し、次いで混合物を約21℃まで放冷した。3−クロロ−2−メチル−1−プロペン(CMP、96.4g、1.065モル)を激しい撹拌下で滴加下し、撹拌を更に2時間続けた。次に、混合物を21℃で約16時間保持した後、150gの透明な層をデカントした。NMR分析により、デカントした層が、下記の構造のDMDO−CMPジエンであることを確認した。
Figure 0006456553
ポリチオエーテルCMPDPの調製
エア駆動撹拌機、温度計、及び滴下漏斗を備えた100mL丸底フラスコに、36.68g(0.20モル)のDMDO及び4.17g(0.0127モル)のビスフェノールFジグリシジルエーテル(EPALLOY 8220としてEmerald Performance Materials,LLC(Cuyahoga Falls,Ohio)から入手)を加えた。この混合物に、Air Products&Chemicals,Inc.(Allentown,Pennsylvania)からDABCOとして入手したトリエチレンジアミンを0.02g加えた。系に窒素を吹き込んだ後、混合し、60〜70℃で1.5時間加熱した。23.92g(0.082モル)のDMDO−CMPジエン、続いて約0.01gのVAZO 52を加えた。連続撹拌しながら、更に0.13gの2,2’−アゾビス(2,4−ジメチル−ペンタンニトリル)(VAZO 52としてE.I.du DuPont de Nemours and Companyから入手)を添加し、混合物を60℃で更に4.5時間維持した。次いで、1,2,4−トリビニルシクロヘキサン(0.81g、0.005モル、BASF Corp.(Florham Park,New Jersey)から入手)を、0.02gのVAZO 52と共に添加し、60℃で更に1.5時間維持した。次いで、トリエチレングリコールジビニルエーテル(14.44g、0.07モル、Ashland Specialty Ingredients(Wilmington,Delawar)からのRAPI−CURE DVE−3)を、15分かけてフラスコに滴加し、温度を約70℃に維持した。追加のVAZO 52を、約0.01gずつ約16時間かけて添加し、合計約0.4gとした。温度を100℃に上昇させ、材料を約10分間脱気した。得られたポリチオエーテルは、約3200g/モルの分子量を有し、チオールの理論官能基数は2.2個であった。
実施例で使用した更なる材料を表1(以下)に列挙する。
Figure 0006456553
実施例で使用したペルオキシドを表2(以下)に列挙する。
Figure 0006456553
実施例1〜2及び比較例CEA〜CEE
実施例1〜2及び比較例CEA〜CEEは、ペルオキシドの有無、及びペルオキシドの同一性を除いて、同じ2液型チオール−エン組成物を使用した。部分Aは、ジエチレングリコールジビニルエーテル(DEGDVE)、トリエチレングリコールジビニルエーテル(TEGDVE)、及びトリ−n−ブチルボラン:3−メトキシプロピルアミン錯体(TnBB−MOPA)を含んだ。部分Bは、CMPDP、GPM−800、ドデセニル無水物(DDSA)、及び任意にペルオキシドを含んだ。存在する場合、添加したペルオキシドの量は、TnBB−MOPA1モル当たり約0.75モルの−O−O−基に相当した。
部分Aの構成成分を、ガラス製バイアル瓶に秤量し、混合して、液体混合物を得た。部分Bの構成成分を、室温で、max10 DACプラスチック製混合カップに秤量した。max10混合カップの内側の円筒形空洞の寸法は、直径約26mm×高さ27mmであった。カップに蓋をして、内容物を、遠心分離ミキサー(FlackTek Inc.(Landrum,SC)からのSpeedMixer、型式DAC 150.1 FVZ−K)を用いて2000rpmで1分間混合して、粘稠な流動性液体を得た。部分Bの構成成分の重量を、表3に記す。実施例2の場合、記載しているペルオキシドの重量は、ノナン溶媒を除いたt−ブチルペルオキシドの概重量である。このペルオキシドを、ノナン溶液として配合物に添加した(すなわち、Sigma−Aldrichから受け取った状態で使用した)。次いで、部分Bが入ったmax10混合カップに部分Aを秤量した(室温にて)。混合カップに移した部分Aの重量は、表3に記載の個々の構成成分の量を与えるようなものであった。最初に部分Aとしてガラス製バイアル瓶に秤量した実際の量は、部分Bに送達される量を約10%上回るものであった。部分Aを部分Bに添加した後、組成物を直ちにSpeedMixer DAC 150.1 FVZ−Kを用いて2000rpmで1分間混合し、その後内容物を観察した。カップの内容物は、平準化すると、カップの底部を約1.0cmの深さまで満たしていた。
Figure 0006456553
実施例1及び2の場合、部分Aと部分Bとを合わせて混合してから5分以内に、カップの内容物が一様な中実材料へと硬化した。比較例A〜Eは、5分以内に一様な中実材料へと硬化しなかった。比較例Bは粘稠液体であり、比較例A、C、D、及びEはスキン(すなわち、薄いエラストマー性中実フィルム又は層)を組成物のトップ面に形成し、粘稠液体がその下にあった。19時間後、比較例A〜Eは、まだ一様な中実材料へと硬化していなかった。全てが、トップ面上にスキン層を有し、その厚さは5分の標識と比べて増大していた場合もあるが、組成物の大部分は粘稠な液体様の材料であった。
比較例F(CEF)
比較例Fは、オルガノボラン−アミン錯体(TnBB−MOPA)が最初に組成物中に存在せず、少なくとも2個のエチレン性不飽和基を有する化合物(DEGDVE、TEGDVE)が存在しなかった点を除いて、実施例1と同様であった。これは、実施例1(及び実施例2)で観察された急速で一様な硬化が、チオールの酸化的カップリングによりジスルフィド結合が形成した結果ではなく、多官能エチレン性不飽和化合物及びチオール−エン反応による硬化を必要とすることを実証するために実施した。
CMPDP、GPM−800、ドデセニル無水物(DDSA)、及びクメンヒドロペルオキシドを、max10 DACプラスチック製混合カップに秤量し(室温にて)、遠心分離ミキサー(SpeedMixer、型式DAC 150.1 FVZ−K)を用いて2000rpmで1分間混合した後、内容物を観察した。最初は、内容物は粘稠な液体であり、約2時間は粘稠な液体のままであった。2時間の時点で、TnBB−MOPAをカップに秤量し、遠心分離ミキサーを用いて2000rpmで1分間混合した。TnBB−MOPAの添加の12日後まで内容物を定期的に点検した。内容物は粘稠な液体のままであり、トップ面にスキン層は形成されなかった。構成成分の重量を、表4に記す。
Figure 0006456553
比較例G(CEG)
比較例Gは、オルガノボラン−アミン錯体(TnBB−MOPA)が組成物中に存在せず、3−メトキシプロピルアミン(MOPA)を部分Aに添加した点を除いて、実施例1と同様であり、同じ手順に従って例を調製した。これは、実施例1(及び実施例2)で観察された急速で一様な硬化が、遊離アミン、すなわち、3−メトキシプロピルアミンと、クメンヒドロペルオキシドとの間の予想外の酸化還元反応から発生する可能性のあるラジカル種による開始の結果ではないことを実証するために実施した。部分A(液体であった)と部分Bとを合わせ、max10 DACプラスチック製混合カップ内で混合した後、内容物を観察した。最初は、内容物は粘稠な液体であった。2日後まで内容物を定期的に点検した。内容物は粘稠な液体のままであり、トップ面にスキン層は形成されなかった。構成成分の重量を、表5に記す。
Figure 0006456553
実施例3〜4及び比較例CEH〜CEL
実施例3〜4及び比較例CEH〜CELは、ペルオキシドの有無、及びペルオキシドの同一性を除いて、同じ2液型チオール−エン組成物を使用した。部分Aは、ジエチレングリコールジビニルエーテル(DEGDVE)、及びトリ−n−ブチルボラン:3−メトキシプロピルアミン錯体(TnBB−MOPA)を含んだ。部分Bは、LP−3、GPM−800、ドデセニル無水物(DDSA)、及び任意にペルオキシドを含んだ。存在する場合、添加したペルオキシドの量は、TnBB−MOPA1モル当たり約0.75モルの−O−O−基に相当した。
部分Aの構成成分を、ガラス製バイアル瓶に秤量し、混合して、液体混合物を得た。部分Bの構成成分を、max10 DACプラスチック製混合カップに秤量し(室温にて)、遠心分離ミキサー(FlackTek Inc.(Landrum,SC USA)からのSpeedMixer、型式DAC 150.1 FVZ−K)を用いて2000rpmで1分間混合して、粘稠な流動性液体を得た。部分Bの構成成分の重量を、表5に記す。実施例10の場合、記載しているペルオキシドの重量は、ノナン溶媒を除いたt−ブチルペルオキシドの概重量である。このペルオキシドは、ノナン溶液として配合物に添加した(すなわち、Sigma−Aldrichから受け取った状態で使用した)。次いで、部分Bが入ったmax10混合カップに部分Aを秤量した(室温にて)。混合カップに移した部分Aの重量は、表6に記載の個々の構成成分の量を与えるようなものであった。最初に部分Aとしてガラス製バイアル瓶に秤量した実際の量は、部分Bに送達される量を約10%上回るものであった。部分Aを部分Bに添加した後、組成物を直ちにSpeedMixer DAC 150.1 FVZ−Kを用いて2000rpmで1分間混合し、その後内容物を観察した。カップの内容物は、平準化すると、カップの底部を約1.0cmmの深さまで満たしていた。
Figure 0006456553
実施例3及び4の場合、部分Aと部分Bとを合わせて混合してから2分以内に、カップの内容物が、一様な中実材料へと硬化した。比較例CEH〜CELは、全て粘稠な液体のままであり、2分以内に一様な中実材料へと硬化しなかった。55分後、比較例CEH〜CELは全て、スキン(すなわち、薄いエラストマー性中実フィルム又は層)を組成物のトップ面に形成し、その下は粘稠液体であった。2日後、比較例CEH〜CELは、まだ一様な中実材料へと硬化していなかった。全てが、トップ面上にスキン層を有し、その厚さは55分の標識と比べて増大している場合もあったが、組成物の大部分は粘稠な液体であった。
実施例5及び比較例M
実施例5及び比較例Mは、ペルオキシドが実施例5ではクメンヒドロペルオキシドであり、比較例Mでは2,5−ジ(t−ブチルペルオキシ)−2,5−ジメチル−3−ヘキシンであった点を除いて、同じ2液型チオール−エン組成物を使用した。部分Aはアリルペンタエリスリトール(APE)、及びトリ−n−ブチルボラン:3−メトキシプロピルアミン錯体(TnBB−MOPA)を含んだ。部分Bは、GPM−800、ノナン酸、及びペルオキシドを含んだ。添加したペルオキシドの量は、TnBB−MOPA1モル当たり約0.745モルの−O−O−基に相当した。
部分Aの構成成分を、ガラス製バイアル瓶に秤量し、混合して、液体混合物を得た。部分Bの構成成分を、max10 DACプラスチック製混合カップに秤量し(室温にて)、遠心分離ミキサー(SpeedMixer、型式DAC 150.1 FVZ−K)を用いて2000rpmで1分間混合して、液体を得た。部分Bの構成成分の重量を、表6に記す。次いで、部分Bが入ったmax10混合カップに部分Aを秤量した(室温にて)。混合カップに移した部分Aの重量は、表7に記載の個々の構成成分の量を与えるようなものであった。最初に部分Aとしてガラス製バイアル瓶に秤量した実際の量は、部分Bに送達される量を約10%上回るものであった。部分Aを部分Bに添加した後、組成物を直ちにSpeedMixer DAC 150.1 FVZ−Kを用いて2000rpmで1分間混合し、その後内容物を観察した。カップの内容物は、平準化すると、カップの底部を約1.0cmmの深さまで満たしていた。
Figure 0006456553
実施例5の場合、部分Aと部分Bとを合わせて混合してから4分後に、組成物のトップ面上にスキン層が形成され、その下は粘稠な液体であった。その後、更に1分で、カップの内容物全体がゲル化した。4時間後、内容物は固まって全体がゴム様材料になった。比較例CEMでは、12〜22分後にスキン層が形成され、流動性液体がその下にあった。2日後、スキン層は厚さがおよそ1mmまで増し、流動性の粘稠な液体がその下にあった。
上記の特許出願において引用された全ての参考文献、特許文献又は特許出願は、一貫した形でその全文が参照により本明細書に組み込まれる。組み込まれた参照文献の部分と本出願の部分との間に不一致又は矛盾がある場合は、前述の説明の情報が優先されるものとする。前述の説明は、特許請求されている開示を当業者が実施することを可能にするために示されており、請求項及びその全ての等価物によって規定される本開示の範囲を限定するものとして解釈されるべきではない。

Claims (24)

  1. 重合性組成物であって、
    オルガノボランと塩基との錯体であるオルガノボラン−塩基錯体であって、前記塩基は、1若しくは複数のアミン基、アミジン基、ヒドロキシド基、アルコキシド基、又はこれらの組み合わせを有する化合物から選択される錯化剤である、オルガノボラン−塩基錯体と、
    前記オルガノボラン−塩基錯体から前記オルガノボランを少なくとも部分的に遊離させる錯体解離剤と、
    チオール基の硫黄原子が炭素に共有結合しているチオール基を複数有する重合性チオール含有化合物を少なくとも1種含む、重合性チオール含有成分と、
    ヒドロペルオキシドと、
    エチレン性不飽和基を複数有する重合性エチレン性不飽和化合物を少なくとも1種含む、重合性エチレン性不飽和成分と、を含み、
    前記チオール含有化合物と前記エチレン性不飽和化合物との合計量は、前記重合性組成物中の全ての重合性材料の少なくとも50重量%を占める、重合性組成物。
  2. 前記ヒドロペルオキシドが有機ヒドロペルオキシドである、請求項1に記載の重合性組成物。
  3. 重合性エチレン性不飽和基を有するいかなるチオール含有化合物も含まない、請求項1又は2に記載の重合性組成物。
  4. 前記オルガノボラン−塩基錯体がチオール基を含まない、請求項1〜のいずれか一項に記載の重合性組成物。
  5. 前記オルガノボランが、式 B(R)(R)(R)[式中、
    は、1〜10個の炭素原子を有するアルキル基を表し、
    及びRは、独立して、
    1〜10個の炭素原子を有するアルキル基、
    3〜10個の炭素原子を有するシクロアルキル基、
    6〜12個の炭素原子を有するアリール基、又は
    1〜10個の炭素原子を有するアルキル基若しくは3〜10個の炭素原子を有するシクロアルキル基で置換されたアリール基を表すか、
    、R、及びRのうちのいずれか2つが一緒になって3〜7個の炭素原子を有する二価アルキレン基を形成する]で表される、請求項1〜のいずれか一項に記載の重合性組成物。
  6. 前記塩基が、少なくとも1つの第一級又は第二級アミン基を含むアミンである、請求項1〜のいずれか一項に記載の重合性組成物。
  7. 前記錯体解離剤が、カルボン酸、酸無水物、アルデヒド、イソシアネート、ホスホン酸、又は1,3−ジカルボニル化合物のうちの少なくとも1つを含む、請求項1〜のいずれか一項に記載の重合性組成物。
  8. 多液型重合性組成物である、請求項1〜のいずれか一項に記載の重合性組成物。
  9. 前記多液型重合性組成物が、
    前記オルガノボラン−塩基錯体を含む部分A組成物と、
    前記錯体解離剤を含む部分B組成物と、を含み、
    前記チオール含有化合物が、前記部分A組成物、前記部分B組成物、又は前記部分A組成物及び前記部分B組成物とは異なる別の部分中に存在し、
    前記ヒドロペルオキシドが、前記部分A組成物、前記部分B組成物、又は前記部分A組成物及び前記部分B組成物とは異なる別の部分中に存在し、かつ
    前記重合性エチレン性不飽和化合物が、前記部分A組成物、前記部分B組成物、又は前記部分A組成物及び前記部分B組成物とは異なる別の部分中に存在する、請求項に記載の重合性組成物。
  10. 前記チオール含有成分が、HSによるエポキシドの開環反応から調製されるもの、炭素−炭素二重結合へのHSの付加から調製されるもの、メチル基のいくつかがメルカプトアルキル基で置き換えられているポリジメチルシロキサン、及びチオール含有カルボン酸又はその誘導体によるポリオールのエステル化により調製されるものから選択される重合性チオール含有化合物を少なくとも1種含む、請求項1〜のいずれか一項に記載の重合性組成物。
  11. 前記重合性エチレン性不飽和化合物が、多官能ビニルエーテル、ビニルシリコーン、ビニル脂肪族、(メタ)アクリレート、アリルエーテル、アリルエステル、及びアリルアミドから選択される、請求項1〜10のいずれか一項に記載の重合性組成物。
  12. 前記重合性チオール含有成分中の前記チオール基の量及び前記重合性エチレン性不飽和成分中の前記重合性エチレン性不飽和基の量が、0.25:1.0〜4.0:1.0のモル比範囲にある、請求項1〜11のいずれか一項に記載の重合性組成物。
  13. ホウ素原子に対するヒドロペルオキシ基のモル比が0.2〜1.0である、請求項1〜12のいずれか一項に記載の重合性組成物。
  14. 重合性組成物であって、
    オルガノボランと塩基との錯体であるオルガノボラン−塩基錯体を含む部分A組成物であって、前記塩基は、1若しくは複数のアミン基、アミジン基、ヒドロキシド基、アルコキシド基、又はこれらの組み合わせを有する化合物から選択される錯化剤である、部分A組成物と、
    前記オルガノボラン−塩基錯体から前記オルガノボランを少なくとも部分的に遊離させる錯体解離剤を含む部分B組成物と、を含み、
    チオール基の硫黄原子が炭素に共有結合しているチオール基を複数有する重合性チオール含有化合物を少なくとも1種含む、重合性チオール含有成分と、
    ヒドロペルオキシドと、
    エチレン性不飽和基を複数有する重合性エチレン性不飽和化合物を少なくとも1種含む、重合性エチレン性不飽和成分と、を更に含み、
    前記チオール含有化合物と前記エチレン性不飽和化合物との合計量は、前記重合性組成物中の全ての重合性材料の少なくとも50重量%を占める、重合性組成物。
  15. 前記ヒドロペルオキシドが有機ヒドロペルオキシドである、請求項14に記載の重合性組成物。
  16. 前記ヒドロペルオキシドが前記部分B組成物中に存在する、請求項14又は15に記載の重合性組成物。
  17. 前記オルガノボランが、式 B(R)(R)(R)[式中、
    は、1〜10個の炭素原子を有するアルキル基を表し、
    及びRは、独立して、
    1〜10個の炭素原子を有するアルキル基、
    3〜10個の炭素原子を有するシクロアルキル基、
    6〜12個の炭素原子を有するアリール基、又は
    1〜10個の炭素原子を有するアルキル基若しくは3〜10個の炭素原子を有するシクロアルキル基で置換されたアリール基を表すか、
    、R、及びRのうちのいずれか2つが一緒になって3〜7個の炭素原子を有する二価アルキレン基を形成する]で表される、請求項1416のいずれか一項に記載の重合性組成物。
  18. 前記塩基が、少なくとも1つの第一級又は第二級アミン基を含むアミンである、請求項1417のいずれか一項に記載の重合性組成物。
  19. オルガノボランと塩基との錯体であるオルガノボラン−塩基錯体を含む部分A組成物であって、前記塩基は、1若しくは複数のアミン基、1若しくは複数のアミジン基、1若しくは複数のヒドロキシド基、1若しくは複数のアルコキシド基、又はこれらの組み合わせを有する化合物から選択される錯化剤である、部分A組成物と、
    前記オルガノボラン−塩基錯体から前記オルガノボランを少なくとも部分的に遊離させる錯体解離剤を含む部分B組成物と、
    を含む構成成分を組み合わせることによって調製される組成物であって、
    前記部分A組成物及び前記部分B組成物のうちの少なくとも1つは、
    チオール基の硫黄原子が炭素に共有結合しているチオール基を複数有する重合性チオール含有化合物を少なくとも1種含む、重合性チオール含有成分と、
    ヒドロペルオキシドと、
    エチレン性不飽和基を複数有する重合性エチレン性不飽和化合物を少なくとも1種含む、重合性エチレン性不飽和成分と、を更に含み、
    前記チオール含有化合物と前記エチレン性不飽和化合物との合計量は、前記重合性組成物中の全ての重合性材料の少なくとも50重量%を占める、組成物。
  20. 前記ヒドロペルオキシドが有機ヒドロペルオキシドである、請求項19に記載の組成物。
  21. 前記オルガノボランが、式 B(R)(R)(R)[式中、
    は、1〜10個の炭素原子を有するアルキル基を表し、
    及びRは、独立して、
    1〜10個の炭素原子を有するアルキル基、
    3〜10個の炭素原子を有するシクロアルキル基、
    6〜12個の炭素原子を有するアリール基、又は
    1〜10個の炭素原子を有するアルキル基若しくは3〜10個の炭素原子を有するシクロアルキル基で置換されたアリール基を表すか、
    、R、及びRのうちのいずれか2つが一緒になって3〜7個の炭素原子を有する二価アルキレン基を形成する]で表される、請求項19又は20に記載の組成物。
  22. 前記塩基が、少なくとも1つの第一級又は第二級アミン基を含むアミンである、請求項1921のいずれか一項に記載の組成物。
  23. 組成物の製造方法であって、
    オルガノボランと塩基との錯体であるオルガノボラン−塩基錯体を含む部分A組成物であって、前記塩基は、1若しくは複数のアミン基、アミジン基、ヒドロキシド基、アルコキシド基、又はこれらの組み合わせを有する化合物から選択される錯化剤である、部分A組成物と、前記オルガノボラン−塩基錯体から前記オルガノボランを少なくとも部分的に遊離させる錯体解離剤を含む部分B組成物と、を含む構成成分を組み合わせることと、
    前記部分A組成物と前記部分B組成物とを反応させて、ポリマーを形成することと、を含み、
    前記部分A組成物及び前記部分B組成物のうちの少なくとも1つは、
    チオール基の硫黄原子が炭素に共有結合しているチオール基を複数有する重合性チオール含有化合物を少なくとも1種含む、重合性チオール含有成分と、
    ヒドロペルオキシドと、
    エチレン性不飽和基を複数有する重合性エチレン性不飽和化合物を少なくとも1種含む、重合性エチレン性不飽和成分と、を更に含み、
    前記チオール含有化合物と前記エチレン性不飽和化合物との合計量は、前記組成物中の全ての重合性材料の少なくとも50重量%を占める、製造方法。
  24. 前記ヒドロペルオキシドが有機ヒドロペルオキシドである、請求項23に記載の方法。
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