JP6454639B2 - 反射材用ポリエステル樹脂組成物およびそれを含む反射板 - Google Patents

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Description

本発明は、反射材用ポリエステル樹脂組成物およびそれを含む反射板に関する。
発光ダイオード(以下、LEDと言う)や有機ELなどの光源は、低電力や高寿命といった特長を活かして、照明ならびにディスプレイのバックライトとして幅広く使用されており、今後の利用が拡大する傾向にある。それらの光源からの光を効率的に利用するため、反射板が種々の局面で利用されている。一方で、電子機器の小型化がめざましく、中でも携帯電話やノートパソコンに代表される携帯機器の軽薄短小化は顕著であり、反射板へ求められる要求性能も変化しつつある。
つまり、反射板には、使用環境下において安定して高い反射率を示すことが求められるほか、機械的強度、耐熱性(プリント配線基板などへの表面実装(リフローはんだ工程等)も行われることから、250℃を超える環境に対する耐熱性)なども要求される。
さらに近年では、製品へのコストダウン要求から、TVやディスプレイなどの最終製品に搭載されるLEDパッケージ数の低減が図られている。それに伴い、光源の高輝度化が進められた結果、反射板に、より過酷な耐熱環境下での反射率低下抑制が求められている。
さらに、電子機器製品の薄肉化に対応するため、サイドビュー(実装面に対して平行な方向へ光を照射する)タイプのLEDパッケージが開発されている。サイドビュータイプのLEDパッケージは、小型かつパッケージ側壁が薄く設計されていることから、反射材にはこれまで以上に高い強度特性が求められる。また成形品のわずかな熱収縮により、パッケージにクラックが生じる場合もあることから、材料には低い収縮性も求められる。
反射板にはポリアミド材料が用いられる例が多い。しかし、ポリアミド材料は、末端アミノ基や、アミド結合由来による変色が起きる、即ち反射率の低下を引き起こす場合がある。そこで、反射板のベースポリマーの改良によって、反射率の低下を抑制する技術が開示されている。例えば、ポリアミド樹脂に代えて耐熱ポリエステルを用いる試みがなされている(特許文献1)。
特表2009−507990号公報
特許文献1では、反射材を構成する樹脂組成物のベースポリマーを、ポリアミドから耐熱ポリエステルへ変更している。しかし、ベースポリマーの変更によって、反射材の機械強度の低下が問題となることがあった。そこで、耐熱ポリエステルに、グリシジルメタクリレート重合体を組み合わせて、反射材の強度や靱性を高めることが検討されている。
ところが、本発明者らの検討によれば、耐熱ポリエステルとグリシジルメタクリレート重合体とを含む組成物は、靱性等の機械強度バランスに優れる一方で、反射率の経時安定性や樹脂組成物としての溶融流動性の面で問題があることが分かった。そのため、さらなる改善が求められている。
そこで、本発明は、反射材用ポリエステル樹脂組成物であって、特に優れた機械強度と耐熱性を有しつつ、LEDの製造工程(反射材にLED素子を作りこむ工程)およびリフローはんだ工程のような加熱環境下にさらされても、高い反射率を維持し、かつ収縮率の変化が小さい反射板を得ることができる組成物を提供する。また、該樹脂組成物を含む反射板を提供する。
本発明者らはこのような状況に鑑みて鋭意検討した結果、高い融点もしくはガラス転移温度を有する熱可塑性樹脂と、特定の構造を有する無機充填材と、白色顔料と、特定の構造を有するオレフィン重合体と、を含む組成物が、耐熱性、機械強度、成形性、反射率の経時安定性を高いレベルで併せ持つことを見出し、本発明を完成した。
すなわち本発明の第1は、以下に示す反射材用ポリエステル樹脂組成物に関する。
[1] 示差走査熱量計(DSC)で測定した融点(Tm)もしくはガラス転移温度(Tg)が250℃以上であるポリエステル樹脂(A)30〜80質量%と、繊維断面の短径が3〜8μmであるガラス繊維(B)10〜35質量%と、白色顔料(C)5〜50質量%と、ヘテロ原子を含む官能基構造単位0.2〜1.8質量%を含むオレフィン重合体(D)0.3〜1.5質量%と、を含む反射材用ポリエステル樹脂組成物(ただし、(A)、(B)、(C)、および(D)の合計は100質量%である)。
[2] ポリエステル樹脂(A)が、テレフタル酸から誘導されるジカルボン酸成分単位30〜100モル%、テレフタル酸以外の芳香族ジカルボン酸成分単位0〜70モル%を含むジカルボン酸成分単位(a−1)と、炭素原子数4〜20の脂環族ジアルコール成分単位(a−3)および/または脂肪族ジアルコール成分単位(a−4)と、を含むポリエステル樹脂(A−1)である、[1]に記載の反射材用ポリエステル樹脂組成物。
[3] 前記脂環族ジアルコール成分単位(a−3)が、シクロヘキサン骨格を有する、[2]に記載の反射材用ポリエステル樹脂組成物。
[4] ガラス繊維(B)の繊維断面の短径と長径との比(異形比)が、3〜8である、[1]〜[3]のいずれかに記載の反射材用ポリエステル樹脂組成物。
[5] オレフィン重合体(D)の官能基構造単位が、カルボン酸、エステル、エーテル、アルデヒド、ケトンから選ばれる官能基を含む、[1]〜[4]のいずれかに記載の反射材用ポリエステル樹脂組成物。
[6] オレフィン重合体(D)の官能基構造単位が、無水マレイン酸構造単位を含む、[5]に記載の反射材用ポリエステル樹脂組成物。
[7] オレフィン重合体(D)が、ポリオレフィン由来の骨格部分を含み、前記ポリオレフィン由来の骨格部分がエチレンと炭素数3以上のオレフィンとの共重合体である、[1]〜[6]のいずれかに記載の反射材用ポリエステル樹脂組成物。
[8] さらにリンを含む酸化防止剤(E)を含む、[1]〜[7]のいずれかに記載の反射材用ポリエステル樹脂組成物。
[9] リンを含む酸化防止剤(E)を、ポリエステル樹脂(A)、ガラス繊維(B)、白色顔料(C)及びオレフィン重合体(D)の合計100質量部に対して0〜10質量部含む、[8]に記載の反射材用ポリエステル樹脂組成物。
本発明の第2は、以下に示す反射板に関する。
[10] 前記[1]に記載の反射材用ポリエステル樹脂組成物を含む反射板。
[11] 発光ダイオード素子用の反射板である、[10]に記載の反射板。
本発明の反射材用ポリエステル樹脂組成物は、反射材料の原料として好適に用いられ、かつ高温でも安定である。よって、本発明の反射材用ポリエステル樹脂組成物を成形、好ましくはインサート成形をすることで、反射率、耐熱性、機械的特性に優れる反射板が得られる。
本発明の樹脂組成物に含まれるガラス繊維(B)の断面形状を表す模式図である。 本発明の樹脂組成物に含まれるガラス繊維の繊維断面を電子顕微鏡により観察した写真である。 本発明の樹脂組成物の成形物に含まれるガラス繊維の繊維断面を電子顕微鏡により観察した写真である。
1.反射材用ポリエステル樹脂組成物について
本発明の反射材用ポリエステル樹脂組成物は、ポリエステル樹脂(A)と、ガラス繊維(B)と、白色顔料(C)と、オレフィン重合体(D)と、を含有する。
1−1.ポリエステル樹脂(A)について
反射材用ポリエステル樹脂組成物に含有されるポリエステル樹脂(A)は、少なくとも芳香族ジカルボン酸由来の成分単位と、環状骨格を有するジアルコール由来の成分単位とを含むことが好ましい。
環状骨格を有するジアルコール由来の成分単位の例には、脂環族ジアルコール由来の成分単位や芳香族ジアルコール由来の成分単位が含まれるが、耐熱性や成形性の観点から、ポリエステル樹脂(A)は、好ましくは脂環族ジアルコール由来の成分単位を含む。
ポリエステル樹脂(A)は特に、特定のジカルボン酸成分単位(a−1)と、脂環族ジアルコール成分単位(a−3)および/または脂肪族ジアルコール成分単位(a−4)とを含むポリエステル樹脂(A1)であることが好ましい。
ポリエステル樹脂(A1)における特定のジカルボン酸成分単位(a−1)は、テレフタル酸成分単位30〜100モル%と、テレフタル酸以外の芳香族ジカルボン酸成分単位0〜70モル%とを含むことが好ましい。ジカルボン酸成分単位(a−1)中の各ジカルボン酸成分単位の合計量は100モル%である。
ここで、テレフタル酸以外の芳香族ジカルボン酸成分単位の好ましい例には、イソフタル酸、2−メチルテレフタル酸、ナフタレンジカルボン酸およびこれらの組み合わせが含まれる。
ジカルボン酸成分単位(a−1)が含むテレフタル酸成分単位の量は、より好ましくは40〜100モル%であり、さらに好ましくは40〜80モル%である。ジカルボン酸成分単位(a−1)が含むテレフタル酸以外の芳香族ジカルボン酸成分単位の量は、より好ましくは0〜60モル%であり、例えば20〜60モル%でありうる。
ここで、ポリエステル樹脂(A1)は、ジカルボン酸成分単位(a−1)として、本発明の効果を損なわない範囲で、上記の構成単位とともに、少量の脂肪族ジカルボン酸成分単位をさらに含んでもよい。ジカルボン酸成分単位(a−1)が含む脂肪族ジカルボン酸成分単位の量は、10モル%以下であることが好ましい。
脂肪族ジカルボン酸成分単位が含む炭素原子数は、特に制限されないが、脂肪族ジカルボン酸成分単位が含む炭素原子数は4〜20であることが好ましく、より好ましくは6〜12である。脂肪族ジカルボン酸成分単位を誘導するために用いられる脂肪族ジカルボン酸の例としては、アジピン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、デカンジカルボン酸、ウンデカンジカルボン酸、ドデカンジカルボン酸などが挙げられ、好ましくはアジピン酸であり得る。
また、ポリエステル樹脂(A1)は、ジカルボン酸成分単位(a−1)としてさらに、例えば10モル%以下の多価カルボン酸成分単位をさらに含んでもよい。このような多価カルボン酸成分単位の具体例には、トリメリット酸およびピロメリット酸等のような三塩基酸および多塩基酸を挙げることができる。
ポリエステル樹脂(A1)には、シクロヘキサンジカルボン酸などの脂環族ジカルボン酸から誘導される成分単位をさらに含むこともできる。
ポリエステル樹脂(A1)における脂環族ジアルコール成分単位(a−3)は、炭素数4〜20の脂環式炭化水素骨格を有するジアルコール由来の成分単位を含むことが好ましい。脂環式炭化水素骨格を有するジアルコールとしては、1,3−シクロペンタンジオール、1,3−シクロペンタンジメタノール、1,4−シクロヘキサンジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、1,4−シクロヘプタンジオール、1,4−シクロヘプタンジメタノールなどの脂環族ジアルコールが挙げられる。なかでも、耐熱性や吸水性、入手容易性などの観点から、シクロヘキサン骨格を有するジアルコール由来の成分単位が好ましく、シクロヘキサンジメタノール由来の成分単位がさらに好ましい。
脂環族ジアルコールには、シス/トランス構造などの異性体が存在するが、耐熱性の観点ではトランス構造のほうが好ましい。したがって、シス/トランス比は、好ましくは50/50〜0/100であり、さらに好ましくは、40/60〜0/100である。
ポリエステル樹脂(A1)は、前記脂環族ジアルコール成分単位(a−3)のほかに、樹脂としての溶融流動性を高める目的などで、脂肪族ジアルコールから誘導される脂肪族ジアルコール成分単位(a−4)を含んでもよい。脂肪族ジアルコールは、例えばエチレングリコール、トリメチレングリコール、プロピレングリコール、テトラメチレングリコール、ネオペンチルグリコール、ヘキサメチレングリコール、ドデカメチレングリコール等でありうる。
ポリエステル樹脂(A1)は、前記脂環族ジアルコール成分単位(a−3)の他に、必要に応じて芳香族ジアルコール成分単位(a−2)をさらに含んでもよい。芳香族ジアルコールとしては、ビスフェノール、ハイドロキノン、2,2−ビス(4−β−ヒドロキシエトキシフェニル)プロパン類などの芳香族ジオール等が挙げられる。
ポリエステル樹脂(A)の、示差走査熱量計(DSC)で測定される融点(Tm)もしくはガラス転移温度(Tg)は250℃以上である。融点(Tm)もしくはガラス転移温度(Tg)の好ましい下限値は、270℃であり、さらに好ましくは290℃である。一方、融点(Tm)もしくはガラス転移温度(Tg)の好ましい上限値としては350℃を例示でき、さらに好ましくは335℃である。前記融点やガラス転移温度が250℃以上であると、リフローはんだ時の反射板(樹脂組成物の成形体)の変形が抑制される。上限温度は原則的には制限されないが、融点もしくはガラス転移温度が350℃以下であると、溶融成形に際してポリエステル樹脂の分解が抑制されるため好ましい。
例えば、ポリエステル樹脂(A)の融点(Tm)もしくはガラス転移温度(Tg)は、270℃〜350℃の範囲内であり、好ましくは290〜335℃の範囲内である。
ポリエステル樹脂(A)の極限粘度[η]は0.3〜1.0dl/gであることが好ましい。極限粘度がこのような範囲にある場合、反射材用ポリエステル樹脂組成物の成形時の流動性が優れる。ポリエステル樹脂(A)の極限粘度は、ポリエステル樹脂(A)の分子量を調整するなどして調整され得る。ポリエステル樹脂の分子量の調整方法は、重縮合反応の進行度合いや単官能のカルボン酸や単官能のアルコールなどを適量加える等の公知の方法を採用することができる。
上記極限粘度は、ポリエステル樹脂(A)をフェノールとテトラクロロエタンの50/50質量%の混合溶媒に溶解し、ウベローデ粘度計を使用し、25℃±0.05℃の条件下で試料溶液の流下秒数を測定し、以下の算式で算出される値である。
[η]=ηSP/[C(1+kηSP)]
[η]:極限粘度(dl/g)
ηSP:比粘度
C:試料濃度(g/dl)
t:試料溶液の流下秒数(秒)
t0:溶媒の流下秒数(秒)
k:定数(溶液濃度の異なるサンプル(3点以上)の比粘度を測定し、横軸に溶液濃度、縦軸にηsp/Cをプロットして求めた傾き)
ηSP=(t−t0)/t0
本発明の反射材用ポリエステル樹脂組成物は、必要に応じて、物性の異なる複数種のポリエステル樹脂(A)を含んでもよい。
[ポリエステル樹脂(A)の調製方法]
ポリエステル樹脂(A)は、例えば反応系内に分子量調整剤等を配合して、ジカルボン酸成分単位(a−1)と脂環族ジアルコール成分単位(a−3)とを反応させて得られる。上述のように、反応系内に分子量調整剤を配合することで、ポリエステル樹脂(A)の極限粘度を調整し得る。
分子量調整剤として、モノカルボン酸およびモノアルコールを使用することができる。上記モノカルボン酸の例には、炭素原子数2〜30の脂肪族モノカルボン酸、芳香族モノカルボン酸および脂環族モノカルボン酸が含まれる。なお、芳香族モノカルボン酸および脂環族モノカルボン酸は、環状構造部分に置換基を有していてもよい。脂肪族モノカルボン酸の例には、酢酸、プロピオン酸、酪酸、吉草酸、カプロン酸、カプリル酸、ラウリン酸、トリデシル酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、オレイン酸およびリノ−ル酸などが含まれる。また、芳香族モノカルボン酸の例には、安息香酸、トルイル酸、ナフタレンカルボン酸、メチルナフタレンカルボン酸およびフェニル酢酸などが含まれ、脂環族モノカルボン酸の例には、シクロヘキサンカルボン酸が含まれる。
このような分子量調整剤は、上述のジカルボン酸成分単位(a−1)と脂環族ジアルコール成分単位(a−3)との反応の反応系におけるジカルボン酸成分単位(a−1)の合計量1モルに対して、通常は、0〜0.07モル、好ましくは0〜0.05モルの量で使用される。
1−2.ガラス繊維(B)について
本発明の反射材用ポリエステル樹脂組成物に含まれるガラス繊維(B)は、得られる成形体に強度、剛性および靭性などを付与する。特に、ガラス繊維(B)が細いほど、成形体である反射材に十分な機械物性、特に薄肉曲げ強度を付与することができる。また、成形体である反射材の収縮を抑制することができる。
ここで、ガラス繊維(B)の断面形状は特に制限されず、真円形、長円形、まゆ形、長方形等、いずれの形状でもありうる。ガラス繊維(B)の断面とは、ガラス繊維の長さ方向と垂直方向に、繊維を切断したときの断面とする。ポリエステル樹脂組成物の流動性や、得られる成形体の低反り性等の観点からガラス繊維(B)の断面形状は、まゆ形または長円形であることが好ましい。図1にガラス繊維の断面形状の例を示す。図1(a)は、真円形の断面形状、図1(b)はまゆ形の断面形状、図1(c)は、略長方形の断面形状を示す。
反射材用ポリエステル樹脂組成物に含まれるガラス繊維(B)の断面の短径は、3μm〜8μmであることが好ましい。短径が8μm以下であると、成形体である反射材に十分な機械物性を付与することができる。また、短径が3μm以上であると、ガラス繊維自体の強度が確保され、反射材用ポリエステル樹脂組成物の樹脂成形プロセス中にガラス繊維(B)が折れにくくなる。
ここで、ガラス繊維(B)の断面の長径及び短径は、以下のように求められる。ガラス繊維(B)を含む反射材用ポリエステル樹脂組成物や、ガラス繊維(B)を含む成形体から、樹脂成分を溶媒によって溶解して除去するか、または組成物や成形体を焼成することにより、ガラス繊維(B)を分離する。分離されたガラス繊維(B)を光学顕微鏡または電子顕微鏡を用いて、ガラス繊維(B)の断面形状を観察する。
そして、上記光学顕微鏡等で観察されるガラス繊維(B)の断面の外周のうち、任意の1点を選択し、当該点に外接する外接線を引く。そして、当該外接線と平行な外接線を引き、これらの外接線同士の距離を測定する。ガラス繊維(B)の断面の外周全てについて当該作業を行い、2つの外接線同士の最短距離を最小径(短径(R)ともいう)、最長距離を最大径(長径(R)ともいう)とする。
ここで、反射材用ポリエステル樹脂組成物に含まれるガラス繊維(B)の繊維断面の異形比は3〜8であることが好ましく、3〜5であることがより好ましい。異形比とは、ガラス繊維断面の長径(R)と短径(R)との比(R/R)である。ガラス繊維(B)の繊維断面の異形比が3以上であると、成形体である反射材の収縮が効果的に抑制されるため好ましい。ガラス繊維(B)の繊維断面の異形比が8以下であると、樹脂組成物を二軸押出し機などで造粒するときの安定性がよくなり好ましい。
また、ガラス繊維(B)の断面形状(短径)や異形比は、反射材用ポリエステル樹脂組成物の成形時の熱等によって変化しないことが好ましい。つまり成形体においても上記範囲であることが好ましい。具体的には、繊維断面の短径が3μm〜8μmであることが好ましく、異形比は3〜8であることが好ましく、3〜5であることがより好ましい。成形体において、ガラス繊維(B)の短径が過剰に小さいと、成形体の剛性が不足する。
反射材用ポリエステル樹脂組成物の成形体に含まれるガラス繊維(B)の長径及び短径は、例えば、成型体の一部をビーム加工にて切り出し、走査型電子顕微鏡(日立社製S−4800)を用いて観察することにより測定される。なお、上記短径や異形比の測定方法の一例として、例えば樹脂組成物を射出成形し、厚み0.5mm、幅30mm×長さ30mmの成形体を観察すること等により、測定する方法が挙げられる。
ここで、反射材用ポリエステル樹脂組成物に含まれるガラス繊維(B)の平均長さは、通常は0.1〜20mm、好ましくは0.3〜6mmの範囲内である。0.1mm以上であれば、成形体に十分な機械物性が付与することができるので好ましい。
本発明の反射材用ポリエステル樹脂組成物は、成形によって反射材とされるが、反射材用ポリエステル樹脂組成物が、成形用材料としてコンパウンド化されていることがある。コンパウンド化は、通常、樹脂組成物を混練押し出しすることにより行う。ところが、ガラス繊維を含有する樹脂組成物を混練押し出しすると、ガラス繊維が折れてしまうことがある。特に、本発明の反射材用ポリエステル樹脂組成物が含むガラス繊維(B)は、繊維断面の短径が3μm〜8μmである。すなわち、繊維断面の短径が比較的小さいガラス繊維(B)を含有する。そのため、樹脂組成物のコンパウンド化において、ガラス繊維(B)が折れやすいという恐れがあった。ガラス繊維(B)が折れてしまうと、成形体である反射材の機械的強度が十分に高まらない。
これに対して本発明の反射材用ポリエステル樹脂組成物は、後述するように、オレフィン重合体(D)の含有量を調整することで、ガラス繊維(B)の折れを抑制している。つまり、オレフィン重合体(D)は高粘度であるため、組成物中に多量に含まれると、反射材用ポリエステル樹脂組成物の粘度が高まり、ガラス繊維(B)が折れやすくなる。一方で、少量のオレフィン重合体(D)を配合することで、オレフィン重合体(D)がクッション材(保護材)として作用して、ガラス繊維(B)の折れが抑制されると考えられる。
ガラス繊維(B)は、シランカップリング剤またはチタンカップリング剤などで処理されていてもよい。たとえばガラス繊維(B)は、ビニルトリエトキシシラン、2−アミノプロピルトリエトキシシラン、2−グリシドキシプロピルトリエトキシシランなどのシラン系化合物で表面処理されていてもよい。
ガラス繊維(B)には、公知のガラス繊維の製造方法により製造され、樹脂との密着性、均一分散性の向上のため集束剤が塗布されていてもよい。集束剤の好ましい例には、アクリル系、アクリル/マレイン酸変成系、エポキシ系、ウレタン系、ウレタン/マレイン酸変性系、ウレタン/エポキシ変性系の化合物が含まれる。集束剤は一種単独で用いてもよく、組み合わせて用いてもよい。
さらに、ガラス繊維(B)は、表面処理剤と集束剤とを併用して処理されていてもよい。表面処理剤と集束剤との併用により本発明の組成物中の繊維状充填材と、組成物中の他の成分との結合性が向上し、外観および強度特性が向上する。
ガラス繊維(B)は、反射材用ポリエステル樹脂組成物中に均一に分散されていることが好ましく、また成形体である反射材にも均一に分散されていることが好ましい。反射材用ポリエステル樹脂組成物中にガラス繊維(B)が均一に分散されていると造粒性が高まり、成形体の機械的特性も向上する。
1−3.白色顔料(C)について
本発明の反射材用ポリエステル樹脂組成物が含む白色顔料(C)は、ポリエステル樹脂(A)などと併用して樹脂組成物を白色化し、光反射機能を向上できるものであればよい。具体的には、酸化チタン、酸化亜鉛、硫化亜鉛、鉛白、硫酸亜鉛、硫酸バリウム、炭酸カルシウム、酸化アルミナなどが挙げられる。反射材用ポリエステル樹脂組成物は、これらの白色顔料を、一種のみ含んでもよく、二種以上を含んでもよい。また、これらの白色顔料は、シランカップリング剤あるいはチタンカップリング剤などで処理されたものでもありうる。例えば、白色顔料は、ビニルトリエトキシシラン、2−アミノプロピルトリエトキシシラン、2−グリシドキシプロピルトリエトキシシランなどのシラン系化合物で表面処理されていてもよい。
白色顔料(C)は、特に酸化チタンが好ましい。反射材用ポリエステル樹脂組成物が酸化チタンを含むと、得られる成形体の反射率や隠蔽性といった光学特性が向上する。酸化チタンは、ルチル型が好ましい。酸化チタンの粒子径は、0.1〜0.5μmであることが好ましく、より好ましくは0.15〜0.3μmである。
白色顔料(C)は、反射率を均一化させるためなどの理由で、アスペクト比の小さい、すなわち球状に近いものが好ましい。
1−4.オレフィン重合体(D)について
本発明の反射材用ポリエステル樹脂組成物が含むオレフィン重合体(D)は、ポリオレフィン単位と、官能基構造単位とを有するオレフィン重合体である。官能基構造単位が有する官能基の例には、ヘテロ原子を含む官能基や、芳香族炭化水素基などが含まれる。好ましくは、オレフィン重合体(D)は、ポリオレフィン単位と、ヘテロ原子を含む官能基を含む構造単位(官能基構造単位)とを有する熱可塑性樹脂である。
ヘテロ原子は、酸素であることが好ましく、ヘテロ原子を含む官能基は炭素、水素、酸素を含むことが好ましい。当該ヘテロ原子を含む官能基として、具体的には、エステル基、エーテル基、カルボン酸基(無水カルボン酸基を含む)、アルデヒド基、ケトン基を挙げることができる。
オレフィン重合体(D)には、オレフィン重合体(D)100質量%に対して、0.2〜1.8質量%の官能基構造単位が含まれる。オレフィン重合体(D)に含まれる官能基構造単位の含有率は、更に好ましくは0.2〜1.2質量%である。官能基構造単位が少な過ぎると、後述する樹脂組成物の靱性の改善効果が低い場合がある。これは、オレフィン重合体(D)とポリエステル樹脂(A)との相互作用が弱すぎ、オレフィン重合体(D)が凝集し易くなるためであると推察される。
一方、官能基構造単位が多過ぎると、ポリエステル樹脂(A)との相互作用が強くなり過ぎて溶融流動性が低下し、結果として成形性の低下を起こすことがある。また、この多過ぎる官能基が、熱や光による変性などを受けて着色を引き起し、結果として反射率の経時安定性が低下することがある。その他、官能基構造単位を多数オレフィン重合体に導入する場合、未反応の官能基含有化合物が残存しやすい傾向があり、これらの未反応化合物が、前記の変性による問題(着色など)を加速させる場合もある。
オレフィン重合体(D)に含まれる官能基構造単位の含有率は、オレフィン重合体と官能基含有機化合物とをラジカル開始剤などの存在下に反応させる際の仕込み比や、13C NMR測定やH NMR測定などの公知の手段で、特定される。具体的なNMR測定条件としては、以下の様な条件を例示できる。
H NMR測定の場合、日本電子(株)製ECX400型核磁気共鳴装置を用い、溶媒は重水素化オルトジクロロベンゼンとし、試料濃度は20mg/0.6mL、測定温度は120℃、観測核はH(400MHz)、シーケンスはシングルパルス、パルス幅は5.12μ秒(45°パルス)、繰り返し時間は7.0秒、積算回数は500回以上とする条件でありうる。基準のケミカルシフトは、テトラメチルシランの水素を0ppmとするが、例えば、重水素化オルトジクロロベンゼンの残存水素由来のピークを7.10ppmとしてケミカルシフトの基準値とすることでも同様の結果が得られる。なお官能基含有化合物由来のHなどのピークは、常法によりアサインされる。
一方、13C NMR測定の場合、測定装置は日本電子(株)製ECP500型核磁気共鳴装置を用い、溶媒としてオルトジクロロベンゼン/重ベンゼン(80/20容量%)混合溶媒、測定温度は120℃、観測核は13C(125MHz)、シングルパルスプロトンデカップリング、45°パルス、繰り返し時間は5.5秒、積算回数は1万回以上、27.50ppmをケミカルシフトの基準値とする条件でありうる。各種シグナルのアサインは常法を基にして行い、シグナル強度の積算値を基に定量することができる。
他の簡便な官能基構造単位の含有率として、官能基含有率の異なる重合体を前記のNMR測定で官能基含有率を決定しておき、これらの重合体の赤外分光(IR)測定を行い、特定のピークの強度比を基に検量線を作成し、この結果を基にして官能基構造単位の含有率を決定することもできる。この方法は、前述のNMR測定に比して簡便ではあるが、基本的にはベース樹脂や官能基の種類により、それぞれ対応する検量線を作成する必要がある。このような理由から、この方法は、例えば商用プラントでの樹脂生産における工程管理等に好ましく用いられる方法である。
一方、オレフィン重合体(D)の骨格部分は、ポリオレフィン由来の構造であることが好ましく、エチレン系重合体、プロピレン系重合体、ブテン系重合体やこれらのオレフィンの共重合体等、公知のオレフィン重合体骨格が好ましい例として挙げられる。特に好ましいオレフィン重合体骨格は、エチレンと炭素数3以上のオレフィンとの共重合体である。
オレフィン重合体(D)は、例えば、対応する公知のオレフィン重合体と対応する官能基を有する化合物とを、特定の比率で反応させることによって得ることができる。オレフィン重合体として好ましい例の一つがエチレン・α−オレフィン共重合体である。以下、オレフィン重合体としてエチレン・α−オレフィン共重合体を用いる場合について記載する。
(官能基を有する化合物と反応させる前の)前記エチレン・α−オレフィン共重合体とは、エチレンと他のオレフィン、例えばプロピレン、1−ブテン、1−ヘキセン、4−メチル−1−ペンテン、1−オクテン、1−デセン等の炭素数3〜10のα−オレフィンとの共重合体である。前記エチレン・α−オレフィン共重合体の具体例には、エチレン・プロピレン共重合体、エチレン・1−ブテン共重合体、エチレン・1−ヘキセン共重合体、エチレン・1−オクテン共重合体、エチレン・4−メチル−1−ペンテン共重合体等が含まれる。これらのうちでは、エチレン・プロピレン共重合体、エチレン・1−ブテン共重合体、エチレン・1−ヘキセン共重合体、エチレン・1−オクテン共重合体が好ましい。
前記エチレン・α−オレフィン共重合体における、エチレンから導かれる構造単位は70〜99.5モル%、好ましくは80〜99モル%であり、α−オレフィンから導かれる構造単位は0.5〜30モル%、好ましくは1〜20モル%であるのが望ましい。
前記エチレン・α−オレフィン共重合体は、ASTM D1238による190℃、2.16kg荷重におけるメルトフローレート(MFR)が、0.01〜20g/10分、好ましくは0.05〜20g/10分であるものが好ましい。
前記エチレン・α−オレフィン共重合体の製造方法は特に限定されず、例えばチタン(Ti)やバナジウム(V)系、クロム系(Cr)系、またはジルコニウム(Zr)系などの遷移金属触媒を用いて、公知の方法で調製することができる。より具体的には、V系化合物と有機アルミニウム化合物から構成されるチーグラー系触媒やメタロセン系触媒の存在下に、エチレンと1種以上の炭素数3〜10のα−オレフィンとを共重合させることによって製造する方法を例示することができる。特に、メタロセン系触媒を用いて製造する方法が好適である。
オレフィン重合体と反応させる官能基含有化合物の好ましい例には、不飽和カルボン酸またはその誘導体が含まれる。具体的には、アクリル酸、メタクリル酸、α−エチルアクリル酸、マレイン酸、フマール酸、イタコン酸、シトラコン酸、テトラヒドロフタル酸、メチルテトラヒドロフタル酸、エンドシス−ビシクロ〔2,2,1〕ヘプトー5−エン−2,3−ジカルボン酸(ナジック酸〔商標〕)等の不飽和カルボン酸、およびこれらの酸ハライド、アミド、イミド、酸無水物、エステル等の誘導体などがあげられる。これらの中では、不飽和ジカルボン酸もしくはその酸無水物が好適であり、特にマレイン酸、ナジック酸(商標)、またはこれらの酸無水物が好適である。
官能基含有化合物の特に好ましい例として、無水マレイン酸を挙げることができる。無水マレイン酸は、前述のオレフィン重合体との反応性が比較的高く、それ自身が重合等による大きな構造変化が少なく、基本構造として安定な傾向がある。このため、安定した品質のオレフィン重合体(D)を得られるなどの様々な優位点がある。
前記エチレン・α−オレフィン共重合体を用いてオレフィン重合体(D)を得る方法の一例として、前記エチレン・α−オレフィン共重合体を、官能基構造単位に対応する官能基含有化合物で、所謂グラフト変性する方法が挙げられる。
前記エチレン・α−オレフィン共重合体のグラフト変性は、公知の方法で行うことができる。例えば、前記エチレン・α−オレフィン共重合体を有機溶媒に溶解し、次いで得られた溶液に不飽和カルボン酸またはその誘導体およびラジカル開始剤などを加え、通常60〜350℃、好ましくは80〜190℃の温度で、0.5〜15時間、好ましくは1〜10時間反応させる方法を例示することが出来る。
上記有機溶媒は、エチレン・α−オレフィン共重合体を溶解することができる有機溶媒であれば特に制限されない。このような有機溶媒としては、ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素系溶媒;ペンタン、ヘキサン、ヘプタン等の脂肪族炭化水素系溶媒などが挙げられる。
他のグラフト変性方法としては、押出機などを使用し、好ましくは溶媒を併用せずに、エチレン・α−オレフィン共重合体と、不飽和カルボン酸もしくはその誘導体とを反応させる方法が挙げられる。この場合の反応条件は、反応温度が、通常、エチレン・α−オレフィン共重合体の融点以上、具体的には100〜350℃とすることができる。反応時間は、通常、0.5〜10分間とすることができる。
前記不飽和カルボン酸などの官能基含有化合物を、効率よくグラフト共重合させるために、ラジカル開始剤の存在下に反応を実施することが好ましい。
ラジカル開始剤の例には、有機ペルオキシド、有機ペルエステル、例えばベンゾイルペルオキシド、ジクロルベンゾイルペルオキシド、ジクミルペルオキシド、ジ−t−ブチルペルオキシド、2,5−ジメチル−2,5−ジ(ペルオキシドベンゾエート)ヘキシン−3,1,4−ビス(t−ブチルペルオキシイソプロピル)ベンゼン、ラウロイルペルオキシド、t−ブチルペルアセテート、2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルペルオキシ)ヘキシン−3,2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルペルオキシ)ヘキサン、t−ブチルペルベンゾエート、t−ブチルペルフェニルアセテート、t−ブチルペルイソブチレート、t−ブチルペル−sec−オクトエート、t−ブチルペルピバレート、クミルペルピバレートおよびt−ブチルペルジエチルアセテート;アゾ化合物、例えばアゾビスイソブチロニトリル、ジメチルアゾイソブチレートなどが用いられる。これらの中では、ジクミルペルオキシド、ジ−t−ブチルペルオキシド、2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルペルオキシ)ヘキシン−3,2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルペルオキシ)ヘキサン、1,4−ビス(t−ブチルペルオキシイソプロピル)ベンゼンなどのジアルキルペルオキシドなどが含まれる。ラジカル開始剤は、変性前のエチレン・α−オレフィン共重合体100質量部に対して、通常0.001〜1質量部の割合で用いられる。
変性エチレン・α−オレフィン共重合体の好ましい密度は、0.80〜0.95g/cm、より好ましくは0.85〜0.90g/cmである。
さらに、変性エチレン・α−オレフィン共重合体の135℃デカリン(デカヒドロナフタレン)溶液中で測定した極限粘度〔η〕が、好ましくは1.5〜4.5dl/g、より好ましくは1.6〜3dl/gである。[η]が上記の範囲内であれば、本発明の樹脂組成物の靱性と溶融流動性とを高いレベルで両立することが出来る。
オレフィン重合体(D)の135℃、デカリン中の[η]は、常法に基づき、以下の様にして測定される。サンプル20mgをデカリン15mlに溶解し、ウベローデ粘度計を用い、135℃雰囲気にて比粘度(ηsp)を測定する。このデカリン溶液に更にデカリン5mlを加えて希釈後、同様の比粘度測定を行う。この希釈操作と粘度測定を更に2度繰り返した測定結果を基に、濃度(:C)をゼロに外挿したときの「ηsp/C」値を極限粘度[η]とする。
1−5.その他の添加剤について
本発明の反射材用ポリエステル樹脂組成物は、発明の効果を損なわない範囲で、用途に応じて、任意の添加剤、例えば、酸化防止剤(フェノール類、アミン類、イオウ類、リン類等)、耐熱安定剤(ラクトン化合物、ビタミンE類、ハイドロキノン類、ハロゲン化銅、ヨウ素化合物等)、光安定剤(ベンゾトリアゾール類、トリアジン類、ベンゾフェノン類、ベンゾエート類、ヒンダードアミン類、オギザニリド類等)、他の重合体(ポリオレフィン類、エチレン・プロピレン共重合体、エチレン・1−ブテン共重合体等のオレフィン共重合体、プロピレン・1−ブテン共重合体等のオレフィン共重合体、ポリスチレン、ポリアミド、ポリカーボネート、ポリアセタール、ポリスルフォン、ポリフェニレンオキシド、フッ素樹脂、シリコーン樹脂、LCP等)、難燃剤(臭素系、塩素系、リン系、アンチモン系、無機系等)蛍光増白剤、可塑剤、増粘剤、帯電防止剤、離型剤、顔料、結晶核剤、種々公知の配合剤などを含んでもよい。
特に、本発明の反射材用ポリエステル樹脂組成物は、リンを含む酸化防止剤を含んでもよい。リンを含む酸化防止剤は、P(OR)構造を有する酸化防止剤であることが好ましい。ここで、Rはアルキル基、アルキレン基、アリール基、アリーレン基などであり、3個のRは同一でも異なっていてもよく、2個のRが環構造を形成していてもよい。リンを含む酸化防止剤の例には、トリフェニルホスファイト、ジフェニルデシルホスファイト、フェニルジイソデシルホスファイト、トリ(ノニルフェニル)ホスファイト、ビス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、ビス(2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイトなどが含まれる。リンを含む酸化防止剤が含まれると、高温雰囲気下(特に、リフロー工程のように250℃を超える条件下)において、ポリエステルの分解反応が抑制される。その結果、組成物の変色が抑制される等の効果が得られる。
これら添加剤は、その成分の種類によって異なるが、ポリエステル樹脂(A)とオレフィン重合体(D)との合計100質量%に対して0〜10質量%であることが好ましく、より好ましくは0〜5質量%であり、さらに好ましくは0〜1質量%である。
本発明の樹脂組成物を他の成分と組み合わせて使用する場合、前記添加剤の選択が重要になる場合がある。例えば、組合せ使用する他の成分が触媒などを含む場合、前記添加剤に触媒毒になる成分や元素が含まれている化合物は避けることが好ましい。避けた方が好ましい添加剤としては、例えば、硫黄などを含む化合物等が挙げられる。
1−6.無機充填材について
本発明の反射材用ポリエステル樹脂組成物は、ガラス繊維(B)以外の無機充填材を含んでもよい。無機充填材は、公知の無機充填材等でありうる。具体的には、繊維状、粉状、粒状、板状、針状、クロス状、マット状等の高いアスペクト比を有する形状の種々の無機補強材であることが好ましい。具体的には、ガラス繊維(B)以外のガラス繊維、カルボニル構造を有する無機化合物(例えば、炭酸カルシウムなどの炭酸塩のウィスカーなど)、ハイドロタルサイト、チタン酸カリウム等のチタン酸塩、ワラストナイト、ゾノトライトなどが挙げられる。
無機充填材の平均長さは例えば10μm〜10mm、好ましくは10μm〜5mm、さらに好ましくは10〜100μm、特に好ましくは10〜50μmの範囲にあり、アスペクト比(L平均繊維長/D平均繊維径)は、例えば1〜500、好ましくは1〜350、さらに好ましくは1〜100、特に好ましくは5から70の範囲にある。このような範囲にある無機充填材を使用すると、強度の向上や線膨張係数の低下などの面で好ましい。
無機充填材は、異なる長さや異なるアスペクト比を有する二種以上の無機充填材を組み合わせて用いてもよい。
長さやアスペクト比が大きな無機充填材として、具体的には、前述のガラス繊維、ワラストナイト(珪酸カルシウム)等の珪酸塩、チタン酸カリウムウィスカーなどのチタン酸塩等を挙げることができる。これらの中でもガラス繊維が好ましい。
このような長さやアスペクト比の大きな無機充填材の好ましい長さ(繊維長さ)の下限値は15μmであり、好ましくは30μmであり、より好ましくは50μmである。一方、好ましい上限値は10mmであり、より好ましくは8mm、さらに好ましくは6mm、特に好ましくは5mmである。特にガラス繊維の場合、好ましい下限値は500μmであり、より好ましくは700μm、さらに好ましくは1mmである。
このような長さやアスペクト比の大きな無機充填材のアスペクト比の好ましい下限値は20であり、より好ましくは50、さらに好ましくは90である。一方、好ましい上限値は500であり、より好ましくは400、さらに好ましくは350である。
長さやアスペクト比が相対的に小さい無機充填材の例としては、カルボニル基を有する無機充填材(BW)が好ましい例として挙げられ、具体的には炭酸カルシウムなどの炭酸塩のウィスカーを挙げることが出来る。
前記カルボニル基を有する無機充填材のアスペクト比は、好ましくは1〜300、より好ましくは5〜200、更に好ましくは10〜150である。
これらの無機充填材を組み合わせるとベースポリマーへの無機充填材の分散性が改良され、またベースポリマーと無機充填材との親和性が向上することにより、耐熱性、機械強度などを向上させるだけでなく、白色顔料(C)の分散性を向上させることがあると考えられる。
1−7.反射材用ポリエステル樹脂組成物の組成について
本発明の反射材用ポリエステル樹脂組成物は、ポリエステル樹脂(A)、ガラス繊維(B)、白色顔料(C)およびオレフィン重合体(D)の総量(100質量%)に対してポリエステル樹脂(A)が30〜80質量%、好ましくは30〜70質量%、より好ましくは40〜60質量%の割合で含むことが好ましい。ポリエステル樹脂(A)の含有率が前記の範囲にあると、成形性を損なうことなく、はんだリフロー工程に耐え得る耐熱性に優れた反射材用ポリエステル樹脂組成物を得ることができる。
本発明の反射材用ポリエステル樹脂組成物は、ポリエステル樹脂(A)、ガラス繊維(B)、白色顔料(C)およびオレフィン重合体(D)の総量(100質量%)中に、ガラス繊維(B)を10〜35質量%、好ましくは10〜30質量%、特に好ましくは10〜25質量%の割合で含むことが好ましい。ガラス繊維(B)を10質量%以上含むと、射出成形時やはんだリフロー工程で成形体が変形することがなく、また、反射率の経時安定性に優れる傾向がある。また、ガラス繊維(B)を35質量%以下含むと、成形性および外観が良好な成形品を得ることができる。
本発明の反射材用ポリエステル樹脂組成物には、ポリエステル樹脂(A)、ガラス繊維(B)、白色顔料(C)およびオレフィン重合体(D)の総量(100質量%)中に白色顔料(C)を5〜50質量%、好ましくは10〜50質量%、より好ましくは10〜40質量%の割合で含まれることが好ましい。白色顔料(C)の量が5質量%以上であると、反射率等の十分な光の反射特性を得ることができる。また50質量%以下であれば、成形性を損なうことがなく好ましい。
本発明の反射材用ポリエステル樹脂組成物は、ポリエステル樹脂(A)、ガラス繊維(B)、白色顔料(C)およびオレフィン重合体(D)の総量(100質量%)中にオレフィン重合体(D)を0.3〜1.5質量%、好ましくは0.5〜1.3質量%、特に好ましくは0.5〜1.1質量%の割合で含むことが好ましい。
オレフィン重合体(D)の含有割合が1.5質量%以下であると、反射材用ポリエステル樹脂組成物中に均一に分散され、粘度の偏りがない組成物が得られる。そのため、ガラス繊維(B)の折れが抑制でき、かつ成形体である反射材に高い耐熱性や、反射率の経時安定性を損なうことなく高い靱性を付与することができる。また、オレフィン重合体(D)の含有割合が0.3質量%以上であると、オレフィン重合体(D)がガラス繊維(B)の保護材(クッション材)として機能して、ガラス繊維(B)の折れを抑制することができる。そして、成形体である反射材に、靱性と耐熱性に加えて、高い反射率を経時安定的に発現させ易い傾向がある。
2.反射材用ポリエステル樹脂組成物の製造方法について
本発明の反射材用ポリエステル樹脂組成物は、上記の各成分を、公知の方法、例えばヘンシェルミキサー、Vブレンダー、リボンブレンダー、タンブラーブレンダーなどで混合する方法、あるいは混合後さらに一軸押出機、多軸押出機、ニーダー、バンバリーミキサーなどで溶融混練後、造粒あるいは粉砕する方法により製造することができる。
3.反射材用ポリエステル樹脂組成物の用途について
本発明の反射板は、上述の反射材用ポリエステル樹脂組成物を任意の形状に成形した成形体である。反射材用ポリエステル樹脂組成物は、流動性、成形性に優れる。本発明の反射板は、機械強度が高く、耐熱性に優れ、反射率が高く、経時的な反射率低下が少ないことから、種々の用途の反射板に好適である。特に半導体レーザーや発光ダイオード等の光源からの光線を反射する反射板に好適である。
反射板とは、少なくとも光を放射する方向の面が開放された、または開放されていないケーシングやハウジング一般を包括する。より具体的には、箱状または函状の形状を有するもの、漏斗状の形状を有するもの、お椀状の形状を有するもの、パラボラ状の形状を有するもの、円柱状の形状を有するもの、円錐状の形状を有するもの、ハニカム状の形状を有するものなど、光を反射する面(平面、球面、曲面等の面)を有する三次元形状の成形体一般をも包含する。
本発明の反射材用ポリエステル樹脂組成物を用いて得られる反射板は、耐熱性、反射率の経時安定性に優れ、更には靱性にも優れているので、薄肉形状でも十分な強度を持ち得る可能性が高いと考えられる。そのため、LED素子などの軽量化、小型化に寄与することが期待される。
本発明の反射板の用途として、特に好ましくは発光ダイオード素子用の反射板が挙げられる。本発明の発光ダイオード(LED)素子用反射板は、上述の反射材用ポリエステル樹脂組成物を、射出成形、特にフープ成形等の金属のインサート成形、溶融成形、押出し成形、インフレーション成形、ブロー成形等の加熱成形により、所望の形状に賦形することで得られる。そして、該反射板に、LED素子とその他の部品を組み込み、封止用樹脂により封止、接合、接着等して、発光ダイオード素子を得ることができる。
また、本発明の反射材用ポリエステル樹脂組成物および反射板は、LED用途のみならず、その他の光線を反射する用途にも適応することができる。具体的な例としては、各種電気電子部品、室内照明、天井照明、屋外照明、自動車照明、表示機器、ヘッドライト等の発光装置用の反射板として使用できる。
以下において、実施例を参照して本発明を説明する。実施例によって、本発明の範囲は限定して解釈されない。
各実施例及び比較例では、以下の成分を用いた。
(1)ポリエステル樹脂(A):以下の方法で調製したポリエステル樹脂(A)を用いた。
(2)ガラス繊維(B)
・ガラス繊維(B1):長さ3mm、繊維断面の短径6μmの真円形、アスペクト比(平均繊維長/平均繊維径)500(日本電気硝子(株)製ECS03T−790DE)
・ガラス繊維(B2):長さ3mm、繊維断面の短径7μm、繊維断面の長径28μm、異形比4(長径/短径)、アスペクト比(平均繊維長/平均繊維径)430(日東紡績(株)製CSG 3PA−830、シラン化合物処理品)
・ガラス繊維(B3):長さ3mm、繊維断面の短径9μmの真円形、アスペクト比300(平均繊維長/平均繊維径)(セントラル硝子(株)製ECS03−615、シラン化合物処理品)
(3)白色顔料(C):酸化チタン(粉末状、平均粒径0.21μm)
(4)オレフィン重合体(D):下の方法で調製したオレフィン重合体(D1)〜(D3)、もしくはエチレン・1−ブテン共重合体(D’)を用いた。
(5)酸化防止剤(E):アデカスタブPEP−36(アデカ(株))
(ポリエステル樹脂(A)の調製方法)
ジメチルテレフタレートl06.2部と、1,4−シクロヘキサンジメタノール(シス/トランス比:30/70)94.6部との混合物に、テトラブチルチタネート0.0037部を加え、150℃から300℃まで3時間30分かけて昇温し、エステル交換反応をさせた。
前記エステル交換反応終了時に、1,4−シクロヘキサンジメタノールに溶解した酢酸マグネシウム・四水塩0.066部を加え、引き続きテトラブチルチタネート0.1027部を導入して重縮合反応を行った。重縮合反応は常圧から1Torrまで85分かけて徐々に減圧し、同時に所定の重合温度300℃まで昇温した。温度と圧力を保持したまま撹拌を続け、所定の撹拌トルクに到達した時点で反応を終了させた。生成した重合体を取り出した。
さらに、得られた重合体を260℃、1Torr以下で3時間固相重合を行なった。得られた重合体(ポリエステル樹脂(A))の[η]は0.6dl/g、融点は290℃であった。
(オレフィン重合体(D1)の調製方法)
[触媒溶液の調製]
十分に窒素置換したガラス製フラスコに、ビス(1,3−ジメチルシクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロリドを0.63mg入れ、更にメチルアミノキサンのトルエン溶液(Al;0.13ミリモル/リットル)1.57ml、およびトルエン2.43mlを添加することにより触媒溶液を得た。
[エチレン−1−ブテン共重合体(D')の調製]
充分に窒素置換した内容積2リットルのステンレス製オートクレーブにヘキサン912mlおよび1−ブテン320mlを導入し、系内の温度を80℃に昇温した。トリイソブチルアルミニウム0.9ミリモル、および上記で調製した触媒溶液2.0ml(Zrとして0.0005ミリモル)を加え、さらにエチレンを圧入することにより重合を開始した。エチレンを連続的に供給することにより全圧を8.0kg/cm−Gに保ち、80℃で30分間重合を行った。
少量のエタノールを系中に導入して重合を停止させた後、未反応のエチレンをパージした。得られた溶液を大過剰のメタノール中に投入することにより白色固体を析出させた。この白色固体を濾過により回収し、減圧下で一晩乾燥し、白色固体(エチレン・1−ブテン共重合体(D'))を得た。
密度=0.862g/cm
MFR(ASTM D1238規格、190℃:2160g荷重)=0.5g/10分
1−ブテン構造単位含有率:4モル%
エチレン・1−ブテン共重合体(D')の密度は、以下のようにして測定した。190℃に設定した神藤金属工業社製油圧式熱プレス機を用い、100kg/cmの圧力で0.5mm厚のシートを成形した(スペーサー形状:240×240×0.5mm厚の板に45×45×0.5mm、9個取り)。成形したシートを、20℃に設定した別の神藤金属工業社製油圧式熱プレス機を用い、100kg/cmの圧力で圧縮および冷却して、測定用試料を作成した。熱板は5mm厚のSUS板を用いた。プレスシートを120℃で1時間熱処理し、1時間かけて直線的に室温まで徐冷したのち、密度勾配管で密度を測定した。
[変性エチレン・1−ブテン共重合体の調製]
エチレン・1−ブテン共重合体(D')100質量部に、無水マレイン酸0.6質量部と過酸化物[パーヘキシン25B、日本油脂(株)製、商標]0.02質量部とを混合し、得られた混合物を230℃に設定した1軸押出機で溶融グラフト変性することによって下記の物性を有する変性エチレン・1−ブテン共重合体(オレフィン重合体(D1))を得た。
オレフィン重合体(D1)の無水マレイン酸グラフト変性量(官能基構造単位量)は0.55質量%であった。また135℃デカリン溶液中で測定した極限粘度[η]は1.98dl/gであった。
無水マレイン酸グラフト変性量は、以下のように、H NMR測定に基づいて行った。日本電子(株)製ECX400型核磁気共鳴装置を用い、溶媒は重水素化オルトジクロロベンゼンとし、試料濃度20mg/0.6mL、測定温度は120℃、観測核はH(400MHz)、シーケンスはシングルパルス、パルス幅は5.12μ秒(45°パルス)、繰り返し時間は7.0秒、積算回数は500回以上とする条件である。基準のケミカルシフトは、重水素化オルトジクロロベンゼンの残存水素由来のピークを7.10ppmとした。官能基含有化合物由来のHなどのピークは、常法によりアサインした。
(オレフィン重合体(D2)の調製)
エチレン・1−ブテン共重合体(D’)と反応させる無水マレイン酸量を変更した以外は、オレフィン重合体(D1)と同様の方法により、変性エチレン・1−ブテン共重合体(オレフィン重合体(D2))を得た。変性エチレン・1−ブテン共重合体(オレフィン重合体(D2))の無水マレイン酸グラフト変性量(官能基構造単位量)は0.98質量%であった。また135℃デカリン溶液中で測定した極限粘度[η]は2.00dl/gであった。
(オレフィン重合体(D3)の調製)
エチレン・1−ブテン共重合体(D’)と反応させる無水マレイン酸量を変更した以外は、オレフィン重合体(D1)と同様の方法により、変性エチレン・1−ブテン共重合体(オレフィン重合体(D3))を得た。変性エチレン・1−ブテン共重合体(オレフィン重合体(D3))の無水マレイン酸グラフト変性量(官能基構造単位量)は1.91質量%であった。また135℃デカリン溶液中で測定した極限粘度[η]は1.84dl/gであった。
[実施例1]
ポリエステル樹脂(A)、ガラス繊維(B1)、白色顔料(C)、オレフィン重合体(D)、酸化防止剤(E)を、表1に示す組成比率でタンブラーブレンダーを用いて混合した。混合物を、二軸押出機((株)日本製鋼所製TEX30α)にてシリンダー温度300℃で原料を溶融混錬した後、ストランド状に押出した。押し出し物を水槽で冷却後、ペレタイザーでストランドを引き取り、カットすることでペレット状組成物を得た。すなわち、良好なコンパウンド性を示すことを確認した。
[実施例2〜8]および[比較例1〜8]
表1に示す組成比率とした以外は、実施例1と同様にしてポリエステル樹脂を調製した。
各実施例および各比較例で得られたポリエステル樹脂組成物について、以下の各物性を評価した。それらの結果を表2に示した。
[薄肉曲げ試験]
樹脂組成物を、下記の射出成形機を用いて下記の成形条件で成形し、長さ64mm、幅6mm、厚さ0.8mmの試験片を調製した。試験片を、温度23℃、窒素雰囲気下で24時間放置した。次いで、温度23℃、相対湿度50%の雰囲気下で曲げ試験機:NTESCO社製AB5、スパン26mm、曲げ速度5mm/分で曲げ試験を行い、強度、弾性率、たわみ量を測定した。
成形機:(株)ソディック プラステック、ツパールTR40S3A
成形機シリンダー温度:融点(Tm)+10℃
金型温度:150℃
[反射率:初期]
樹脂組成物を、下記の成形機を用いて、下記の成形条件で射出成形して長さ30mm、幅30mm、厚さ0.5mmの試験片を調製した。得られた試験片を、ミノルタ(株)CM3500dを用いて、波長領域360nmから740nmの反射率を求めた。450nmの反射率を代表値として初期反射率を評価した。
成形機: 住友重機械工業(株)社製、SE50DU
シリンダー温度:融点(Tm)+10℃
金型温度:150℃
[反射率:加熱後]
初期反射率を測定したサンプルを、150℃のオーブンに336時間放置した。このサンプルを初期反射率と同様の方法で反射率を測定し、加熱後反射率とした。
[流動性]
幅10mm、厚み0.5mmのバーフロー金型を使用して以下の条件で樹脂組成物を射出し、金型内の樹脂の流動長(mm)を測定した。
射出成形機:(株)ソディック プラステック、ツパールTR40S3A
射出設定圧力:2000kg/cm
シリンダー設定温度:融点(Tm)+10℃
金型温度:30℃
[成形収縮率]
樹脂組成物を、住友重機械工業製SE50型成形機を用いて射出成形して、295℃の温度でMD方向長さ50mm、TD方向長さ30mm、厚さが0.6mmの試験片を調製した。金型の温度は150℃とした。
用いた金型は、MD方向の間隔が40mmとなる一対の平行線、TD方向の間隔が20mmとなる一対の平行線形状の凹部が形成されている物を用いた。
上記の試験片に形成された線状部の、MD方向間距離、TD方向間距離を測定し、金型で設定された線間隔を基準とした収縮の割合を求めた。
[樹脂組成物及び成形体中のガラス繊維(B)の異形比測定方法]
樹脂組成物の調製に用いるガラス繊維(B)の断面を、走査型電子顕微鏡(日立社製S−4800)にて観察し、ガラス繊維(B)の異形比を算出した。
一方、当該樹脂組成物を射出成形して、厚み0.5mmの成形体(大きさ30mm×30mm)を得た。当該成形体の一部をアルゴンイオンビーム加工にて切り出し、走査型電子顕微鏡(日立社製S−4800)にて観察し、成形体中のガラス繊維(B)の異形比を算出した。
比較例1のポリエステル樹脂組成物は、ガラス繊維の含有量が少なすぎるために、薄肉曲げ強度が低く、かつ収縮率が高かった。また、比較例2のポリエステル樹脂組成物は、ガラス繊維の含有量が多すぎるために、薄肉曲げ強度が低く、反射率が低い。また、流動性が低く、成形しにくいことが示唆される。
比較例3および4のポリエステル樹脂組成物は、変性エチレン・1−ブテン共重合体を含有しない。そのため、薄肉曲げ強度が低く、収縮率が高かった。
比較例5および6のポリエステル樹脂組成物は、ガラス繊維(B3)の繊維断面の短径が9μmであるために、薄肉曲げ強度が低く、収縮率が高かった。ガラス繊維の短径が大きい場合、ポリエステル樹脂との接触面積が小さくなることで補強効果が薄れ、その一方で、射出成形時には強い配向がかかってしまうために、収縮率が高くなってしまう傾向にある。
比較例7のポリエステル樹脂組成物は、オレフィン重合体(D1)の含有量が多すぎるために、薄肉曲げ強度が低かった。さらに、比較例8のポリエステル樹脂組成物は、オレフィン重合体(D1)の官能基構造単位量が多すぎるため、熱や光による変性などを受けて着色を引き起しやすく、結果として反射率が低下した。
これに対して実施例1〜8のポリエステル樹脂組成物は、所定のガラス繊維と、オレフィン重合体とを含有するので、薄肉曲げ強度が高く、収縮率も低い。しかも、初期反射率および加熱後反射率とも高い。特に、異形比の高いガラス繊維(B2)を含む実施例4〜6のポリエステル樹脂組成物の収縮率は低かった。
実施例5の樹脂組成物中のガラス繊維(B)の断面形状を走査型電子顕微鏡(日立社製 S−3700N)にて観測した結果を図2に示し;当該樹脂組成物の成形体(射出成形品)のガラス繊維(B)の断面形状を走査型電子顕微鏡(日立社製 S−3700N)にて観測した結果を図3に示す。図2及び図3より、射出成形品のガラス繊維(B)は射出成形後も射出成形前の繊維断面と同様の短径を維持していることが示される。したがって、本発明の反射材用ポリエステル樹脂では、オレフィン重合体(D)がクッション材(保護材)として作用して、ガラス繊維(B)の折れが抑制されると考えられる。
本発明の反射材用ポリエステル樹脂組成物は反射板に成形されることができ、高反射率を有しつつ、高強度と低収縮率とを有する反射板を提供する。

Claims (11)

  1. 示差走査熱量計(DSC)で測定した融点(Tm)が250℃以上であるポリエステル樹脂(A)30〜80質量%と、
    繊維断面の短径が3〜8μmであるガラス繊維(B)10〜35質量%と、
    白色顔料(C)5〜50質量%と、
    ヘテロ原子を含む官能基構造単位0.2〜1.8質量%を含むオレフィン重合体(D)0.3〜1.5質量%と、
    を含む反射材用ポリエステル樹脂組成物(ただし、(A)、(B)、(C)、および(D)の合計は100質量%である)。
  2. ポリエステル樹脂(A)が、
    テレフタル酸から誘導されるジカルボン酸成分単位30〜100モル%、テレフタル酸以外の芳香族ジカルボン酸成分単位0〜70モル%を含むジカルボン酸成分単位(a−1)と、
    炭素原子数4〜20の脂環族ジアルコール成分単位(a−3)および/または脂肪族ジアルコール成分単位(a−4)と、を含むポリエステル樹脂(A−1)である、請求項1に記載の反射材用ポリエステル樹脂組成物。
  3. 前記脂環族ジアルコール成分単位(a−3)が、シクロヘキサン骨格を有する、請求項2に記載の反射材用ポリエステル樹脂組成物。
  4. ガラス繊維(B)の繊維断面の長径短径との比(異形比)が、3〜8である、請求項1に記載の反射材用ポリエステル樹脂組成物。
  5. オレフィン重合体(D)の官能基構造単位が、カルボン酸、エステル、エーテル、アルデヒド、ケトンから選ばれる官能基を含む、請求項1に記載の反射材用ポリエステル樹脂組成物。
  6. オレフィン重合体(D)の官能基構造単位が、無水マレイン酸構造単位を含む、請求項5に記載の反射材用ポリエステル樹脂組成物。
  7. オレフィン重合体(D)が、ポリオレフィン由来の骨格部分を含み、前記ポリオレフィン由来の骨格部分がエチレンと炭素数3以上のオレフィンとの共重合体である、請求項1に記載の反射材用ポリエステル樹脂組成物。
  8. さらにリンを含む酸化防止剤(E)を含む、請求項1に記載の反射材用ポリエステル樹脂組成物。
  9. リンを含む酸化防止剤(E)を、ポリエステル樹脂(A)、ガラス繊維(B)、白色顔料(C)及びオレフィン重合体(D)の合計100質量部に対して0〜10質量部含む、請求項8に記載の反射材用ポリエステル樹脂組成物。
  10. 請求項1に記載の反射材用ポリエステル樹脂組成物を含む反射板。
  11. 発光ダイオード素子用の反射板である、請求項10に記載の反射板。
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