JP2019112501A - 反射材用ポリエステル樹脂組成物および反射材 - Google Patents
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Abstract
【課題】成形時の流動性を低下させることなく、機械的強度が高い反射材を付与しうる反射材用ポリエステル樹脂組成物を提供すること。【解決手段】融点(Tm)もしくはガラス転移温度(Tg)が250℃以上であり、かつ極限粘度[η]Aが0.7dl/g以上1.2dl/g以下であるポリエステル樹脂(A)、融点(Tm)もしくはガラス転移温度(Tg)が250℃以上であり、かつ極限粘度[η]Bが0.5dl/g以上0.7dl/g未満であるポリエステル樹脂(B)、白色顔料(C)および無機充填材(D)を含み、前記極限粘度[η]Aと前記極限粘度[η]Bが、式(I)0.1≦[η]A−[η]B≦1.0を満たし、前記ポリエステル樹脂(B)の含有量は、前記ポリエステル樹脂(A)と前記ポリエステル樹脂(B)の合計100質量部に対して70〜99質量部である、反射材用ポリエステル樹脂組成物。【選択図】なし
Description
本発明は、反射材用ポリエステル樹脂組成物および反射材に関する。
発光ダイオード(以下、LEDと略す)や有機ELなどの光源は、低電力や高寿命といった特長を活かして、照明や、ディスプレイのバックライトとして幅広く使用されており、今後も利用が拡大する傾向にある。これらの光源からの光を効率的に利用するため、光源からの光を反射させる反射材が、種々の局面で利用されている。
また、製品へのコストダウンの要求から、テレビやディスプレイなどの最終製品に搭載される光源(LEDパッケージ)の数を低減することが求められている。したがって、光源からの光をより効率的に利用するために、反射材の反射率を高めることが求められている。
このような反射材を構成する樹脂組成物として、PCT(極限粘度[η]0.77dl/g)などの半芳香族ポリエステル樹脂と、酸化チタンなどの白色顔料と、ガラス繊維とを含む樹脂組成物が提案されている(例えば、特許文献1)。当該樹脂組成物から得られる反射材は、高い反射率を有するとされている。
ところで、近年、反射材に対して反射率の更なる向上が要求されており、それに伴い、白色顔料である酸化チタンの含有量を増加させる傾向にある。
しかしながら、特許文献1の樹脂組成物において、酸化チタンの含有量を増加させると、成形時の樹脂組成物の流動性が低下する虞があった。流動性の低下を抑制するために、低極限粘度(低分子量)の半芳香族ポリエステル樹脂を用いると、得られる反射材の機械的強度が低下する虞があった。このように、成形時の流動性を高めることと、機械的強度を高めることとは、トレードオフの関係にあった。
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、成形時の流動性を低下させることなく、機械的強度が高い反射材を付与しうる反射材用ポリエステル樹脂組成物を提供することを目的とする。
[1] 示差走査熱量計(DSC)で測定した融点(Tm)もしくはガラス転移温度(Tg)が250℃以上であり、かつ極限粘度[η]Aが0.7dl/g以上1.2dl/g以下であるポリエステル樹脂(A)と、示差走査熱量計(DSC)で測定した融点(Tm)もしくはガラス転移温度(Tg)が250℃以上であり、かつ極限粘度[η]Bが0.5dl/g以上0.7dl/g未満であるポリエステル樹脂(B)と、白色顔料(C)と、無機充填材(D)とを含み、前記ポリエステル樹脂(A)の極限粘度[η]Aと前記ポリエステル樹脂(B)の極限粘度[η]Bが、下記式(I)の関係を満たし、
式(I) 0.1≦[η]A−[η]B≦0.5
前記ポリエステル樹脂(B)の含有量は、前記ポリエステル樹脂(A)と前記ポリエステル樹脂(B)の合計100質量部に対して70質量部以上99質量部以下である、反射材用ポリエステル樹脂組成物。
[2] 前記ポリエステル樹脂(A)、前記ポリエステル樹脂(B)、前記白色顔料(C)および前記無機充填材(D)の合計100質量部に対して、前記ポリエステル樹脂(A)と前記ポリエステル樹脂(B)の含有量は、40質量部以上85質量部以下であり、前記白色顔料(C)成分の含有量は、10質量部以上50質量部以下であり、前記無機充填材(D)の含有量は、5質量部以上40質量部以下である、[1]に記載の反射材用ポリエステル樹脂組成物。
[3] 前記ポリエステル樹脂(A)および前記ポリエステル樹脂(B)は、ジカルボン酸に由来する成分単位(a1)と、ジオールに由来する成分単位(a2)とを含み、前記ジカルボン酸に由来する成分単位(a1)は、前記ジカルボン酸に由来する成分単位(a1)の合計100モル%に対して、テレフタル酸に由来する成分単位30モル%以上100モル%以下と、テレフタル酸以外の芳香族ジカルボン酸に由来する成分単位0モル%以上70モル%以下とを含み、前記ジオールに由来する成分単位(a2)は、炭素原子数4以上20以下の脂環式ジオールに由来する成分単位と脂肪族ジオールに由来する成分単位の少なくとも一方を含む、[1]または[2]に記載の反射材用ポリエステル樹脂組成物。
[4] 前記脂環式ジオールに由来する成分単位は、シクロヘキサン骨格を有する、[3]に記載の反射材用ポリエステル樹脂組成物。
[5] 前記ジオールに由来する成分単位(a2)は、前記ジオールに由来する成分単位(a2)の合計100モル%に対して、1,4−シクロヘキサンジメタノールに由来する成分単位30モル%以上100モル%以下と、前記脂肪族ジオールに由来する成分単位0モル%以上70モル%以下とを含む、[3]または[4]に記載の反射材用ポリエステル樹脂組成物。
[6] [1]〜[5]のいずれかに記載の反射材用ポリエステル樹脂組成物を含む、反射材。
[7] 発光ダイオード素子用の反射材である、[6]に記載の反射材。
式(I) 0.1≦[η]A−[η]B≦0.5
前記ポリエステル樹脂(B)の含有量は、前記ポリエステル樹脂(A)と前記ポリエステル樹脂(B)の合計100質量部に対して70質量部以上99質量部以下である、反射材用ポリエステル樹脂組成物。
[2] 前記ポリエステル樹脂(A)、前記ポリエステル樹脂(B)、前記白色顔料(C)および前記無機充填材(D)の合計100質量部に対して、前記ポリエステル樹脂(A)と前記ポリエステル樹脂(B)の含有量は、40質量部以上85質量部以下であり、前記白色顔料(C)成分の含有量は、10質量部以上50質量部以下であり、前記無機充填材(D)の含有量は、5質量部以上40質量部以下である、[1]に記載の反射材用ポリエステル樹脂組成物。
[3] 前記ポリエステル樹脂(A)および前記ポリエステル樹脂(B)は、ジカルボン酸に由来する成分単位(a1)と、ジオールに由来する成分単位(a2)とを含み、前記ジカルボン酸に由来する成分単位(a1)は、前記ジカルボン酸に由来する成分単位(a1)の合計100モル%に対して、テレフタル酸に由来する成分単位30モル%以上100モル%以下と、テレフタル酸以外の芳香族ジカルボン酸に由来する成分単位0モル%以上70モル%以下とを含み、前記ジオールに由来する成分単位(a2)は、炭素原子数4以上20以下の脂環式ジオールに由来する成分単位と脂肪族ジオールに由来する成分単位の少なくとも一方を含む、[1]または[2]に記載の反射材用ポリエステル樹脂組成物。
[4] 前記脂環式ジオールに由来する成分単位は、シクロヘキサン骨格を有する、[3]に記載の反射材用ポリエステル樹脂組成物。
[5] 前記ジオールに由来する成分単位(a2)は、前記ジオールに由来する成分単位(a2)の合計100モル%に対して、1,4−シクロヘキサンジメタノールに由来する成分単位30モル%以上100モル%以下と、前記脂肪族ジオールに由来する成分単位0モル%以上70モル%以下とを含む、[3]または[4]に記載の反射材用ポリエステル樹脂組成物。
[6] [1]〜[5]のいずれかに記載の反射材用ポリエステル樹脂組成物を含む、反射材。
[7] 発光ダイオード素子用の反射材である、[6]に記載の反射材。
本発明の成形時の流動性を低下させることなく、機械的強度が高い反射材を付与しうる反射材用ポリエステル樹脂組成物を提供することができる。
1.反射材用ポリエステル樹脂組成物
本発明の反射材用ポリエステル樹脂組成物は、極限粘度が相対的に高いポリエステル樹脂(A)と、極限粘度が相対的に低いポリエステル樹脂(B)と、白色顔料(C)と、無機充填材(D)とを含む。
本発明の反射材用ポリエステル樹脂組成物は、極限粘度が相対的に高いポリエステル樹脂(A)と、極限粘度が相対的に低いポリエステル樹脂(B)と、白色顔料(C)と、無機充填材(D)とを含む。
1−1.ポリエステル樹脂(A)およびポリエステル樹脂(B)について
ポリエステル樹脂(A)は、ポリエステル樹脂(B)よりも極限粘度が高いポリエステル樹脂である。ポリエステル樹脂(A)の極限粘度[η]Aは、0.7dl/g以上1.2dl/g以下であることが好ましく、0.8dl/g以上1.2dl/g以下であることがより好ましい。このように、極限粘度が相対的に高いポリエステル樹脂(A)は、ポリエステル樹脂組成物の機械的強度(強度や靱性)を高めうる。
ポリエステル樹脂(A)は、ポリエステル樹脂(B)よりも極限粘度が高いポリエステル樹脂である。ポリエステル樹脂(A)の極限粘度[η]Aは、0.7dl/g以上1.2dl/g以下であることが好ましく、0.8dl/g以上1.2dl/g以下であることがより好ましい。このように、極限粘度が相対的に高いポリエステル樹脂(A)は、ポリエステル樹脂組成物の機械的強度(強度や靱性)を高めうる。
ポリエステル樹脂(B)は、ポリエステル樹脂(A)よりも極限粘度が低いポリエステル樹脂である。ポリエステル樹脂(B)の極限粘度[η]Bは、0.5dl/g以上0.7dl/g未満であることが好ましく、0.6dl/g以上0.7dl/g以下であることがより好ましい。このように、極限粘度が相対的に低いポリエステル樹脂(B)は、ポリエステル樹脂組成物の流動性や成形性を高めうる。さらに、ポリエステル樹脂組成物の流動性や成形性が高まる結果、成形時に樹脂が受ける余分な応力を少なくして樹脂の熱分解を生じにくくしうることから、反射率も高めやすい。
そして、ポリエステル樹脂(A)とポリエステル樹脂(B)の極限粘度の差([η]A−[η]B)は、下記式(I)を満たすことが好ましい。
式(I):0.1≦[η]A−[η]B≦0.5
式(I):0.1≦[η]A−[η]B≦0.5
このように、本発明の反射材用ポリエステル樹脂組成物は、極限粘度が相対的に高いポリエステル樹脂(A)と、極限粘度が相対的に低いポリエステル樹脂(B)とを含み、かつこれらの極限粘度の差が一定以上に調整されている。それにより、ポリエステル樹脂組成物の成形時の流動性や成形性と、機械的強度(強度や靱性)とを高度に両立することができる。
具体的には、極限粘度の差が0.1以上であると、流動性や成形性を損なわない範囲で、機械的強度(強度や靱性)を高めやすい。極限粘度の差が0.5以下であると、機械的強度を損なわない範囲で、流動性や成形性を高めやすい。それにより、成形時に樹脂が受ける余分な応力を少なくして樹脂の熱分解を生じにくくしうることから、反射率も低下しにくい。ポリエステル樹脂(A)の極限粘度[η]Aとポリエステル樹脂(B)の極限粘度[η]Bとの差([η]A−[η]B)は、下記式(II)を満たすことがより好ましい。
式(II):0.1≦[η]A−[η]B≦0.3
式(II):0.1≦[η]A−[η]B≦0.3
ポリエステル樹脂(A)およびポリエステル樹脂(B)の極限粘度は、以下の手順で測定することができる。
ポリエステル樹脂をフェノールとテトラクロロエタンの50/50質量%の混合溶媒に溶解させて試料溶液とする。得られた試料溶液の流下秒数を、ウベローデ粘度計を用いて25℃±0.05℃の条件下で測定し、下記式に当てはめて極限粘度[η]を算出する。
[η]=ηSP/[C(1+kηSP)]
ポリエステル樹脂をフェノールとテトラクロロエタンの50/50質量%の混合溶媒に溶解させて試料溶液とする。得られた試料溶液の流下秒数を、ウベローデ粘度計を用いて25℃±0.05℃の条件下で測定し、下記式に当てはめて極限粘度[η]を算出する。
[η]=ηSP/[C(1+kηSP)]
上記式において、各代数または変数は、以下を表す。
[η]:極限粘度(dl/g)
ηSP:比粘度
C:試料濃度(g/dl)
k:定数(溶液濃度の異なるサンプル(3点以上)の比粘度を測定し、横軸に溶液濃度、縦軸にηsp/Cをプロットして求めた傾き)
[η]:極限粘度(dl/g)
ηSP:比粘度
C:試料濃度(g/dl)
k:定数(溶液濃度の異なるサンプル(3点以上)の比粘度を測定し、横軸に溶液濃度、縦軸にηsp/Cをプロットして求めた傾き)
ηSPは、以下の式によって求められる。
ηSP=(t−t0)/t0
ηSP=(t−t0)/t0
上記式において、各変数は、以下を表す。
t:試料溶液の流下秒数(秒)
t0:溶媒の流下秒数(秒)
t:試料溶液の流下秒数(秒)
t0:溶媒の流下秒数(秒)
ポリエステル樹脂(A)およびポリエステル樹脂(B)の極限粘度は、後述するモノマーの仕込み比、重縮合反応時の重合温度や重合時間、真空度、分子量調整剤(単官能のカルボン酸または単官能のアルコール)の添加の有無などにより(好ましくは重合時間により)調整することができる。ポリエステル樹脂(A)の極限粘度[η]Aを高めるためには、例えば重合温度は高くし、重合時間は長くすることが好ましい。ポリエステル樹脂(B)の極限粘度[η]Bを低くするためには、例えば重合温度は低くし、重合時間は短くすることが好ましい。
ポリエステル樹脂(A)およびポリエステル樹脂(B)の示差走査熱量計(DSC)で測定される融点(Tm)またはガラス転移温度(Tg)は、それぞれ250℃以上であり、好ましくは270℃であり、より好ましくは280℃である。融点またはガラス転移温度が250℃以上であると、リフローはんだ工程での反射材(ポリエステル樹脂組成物の成形物)の変色や変形等が抑制される。一方、融点(Tm)またはガラス転移温度(Tg)は、好ましくは350℃以下であり、より好ましくは335℃以下である。融点またはガラス転移温度が350℃以下であると、溶融成形に際してポリエステル樹脂(A)やポリエステル樹脂(B)の分解が抑制されるため好ましい。
ポリエステル樹脂(A)およびポリエステル樹脂(B)は、ジカルボン酸に由来する成分単位(a1)と、ジオールに由来する成分単位(a2)とを含む。
ジカルボン酸に由来する成分単位(a1)は、テレフタル酸に由来する成分単位を30モル%以上100モル%以下有し、テレフタル酸以外の芳香族ジカルボン酸に由来する成分単位を0モル%以上70モル%以下有することが好ましい。ジカルボン酸に由来する成分単位(a1)に含まれるテレフタル酸に由来する成分単位の割合は、より好ましくは40モル%以上100モル%以下であり、さらに好ましくは60モル%以上100モル%以下でありうる。テレフタル酸に由来する成分単位の含有量が高いと、ポリエステル樹脂組成物の耐熱性がより高まる。ジカルボン酸に由来する成分単位(a1)に含まれるテレフタル酸以外の芳香族ジカルボン酸に由来する成分単位の割合は、より好ましくは0モル%以上60モル%以下であり、さらに好ましくは0モル%以上40モル%以下でありうる。ただし、ジカルボン酸成分単位(a1)の合計量を100モル%とする。
テレフタル酸に由来する成分単位は、テレフタル酸、またはテレフタル酸エステルに由来する成分単位でありうる。テレフタル酸エステルは、好ましくはテレフタル酸の炭素原子数1以上4以下のアルキルエステルであり、その例にはジメチルテレフタレートなどが含まれる。
テレフタル酸以外の芳香族ジカルボン酸に由来する成分単位の例には、イソフタル酸、2−メチルテレフタル酸、ナフタレンジカルボン酸およびこれらの組み合わせに由来する成分単位、ならびにこれらの芳香族ジカルボン酸のエステル(好ましくは芳香族ジカルボン酸の炭素原子数1以上4以下のアルキルエステル)に由来する成分単位が含まれる。
ジカルボン酸に由来する成分単位(a1)は、上記成分単位とともに、少量の、脂肪族ジカルボン酸に由来する成分単位や分子内に3以上のカルボン酸基を有する多価カルボン酸に由来する成分単位をさらに含んでもよい。ジカルボン酸に由来する成分単位(a1)に含まれる脂肪族ジカルボン酸に由来する成分単位と多価カルボン酸に由来する成分単位の割合は、合計で、例えば10モル%以下としうる。
脂肪族ジカルボン酸に由来する成分単位の炭素原子数は、特に制限されないが、4以上20以下であることが好ましく、6以上12以下であることがより好ましい。脂肪族ジカルボン酸の例には、アジピン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、デカンジカルボン酸、ウンデカンジカルボン酸およびドデカンジカルボン酸が含まれる。中でも、アジピン酸が好ましい。多価カルボン酸に由来する成分単位の例には、トリメリット酸およびピロメリット酸を含む三塩基酸、ならびに多塩基酸が含まれる。
ジオールに由来する成分単位(a2)は、炭素原子数4以上20以下の脂環族ジオールに由来する成分単位および/または脂肪族ジオールアに由来する成分単位を含むことが好ましい。
脂環族ジオールに由来する成分単位は、ポリエステル樹脂組成物の耐熱性を高め、かつ吸水性を低減しうる。脂環族ジオールの例には、炭素原子数4以上20以下の脂環式炭化水素骨格を有するジオール、例えば1,3−シクロペンタンジオール、1,3−シクロペンタンジメタノール、1,4−シクロヘキサンジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、1,4−シクロヘプタンジオールおよび1,4−シクロヘプタンジメタノールが含まれる。中でも、ポリエステル樹脂組成物の耐熱性がより高まり、吸水性がより低減され、かつ入手が容易であるなどの観点からは、シクロヘキサン骨格を有する化合物が好ましく、1,4−シクロヘキサンジメタノールがより好ましい。
脂環族ジオールには、シス/トランス構造等の異性体が存在するが、ポリエステル樹脂組成物の耐熱性をより高める観点からは、ポリエステル樹脂(A)およびポリエステル樹脂(B)は、トランス構造の脂環族ジオールに由来する成分単位をより多く含むことが好ましい。したがって、脂環族ジオールに由来する成分単位のシス/トランス比は、好ましくは50/50〜0/100であり、さらに好ましくは40/60〜0/100である。
脂肪族ジオールに由来する成分単位は、ポリエステル樹脂組成物の溶融流動性をより高める。脂肪族ジオールの例には、エチレングリコール、トリメチレングリコール、プロピレングリコール、テトラメチレングリコール、ネオペンチルグリコール、ヘキサメチレングリコールおよびドデカメチレングリコールが含まれる。
ジオールに由来する成分単位(a2)は、脂環族ジオールに由来する成分単位と脂肪族ジオールに由来する成分単位のうち、いずれか一方のみを含んでもよいし、両方を含んでもよい。ジオールに由来する成分単位(a2)は、脂環族ジオールに由来する成分単位(好ましくはシクロヘキサン骨格を有するジオールに由来する成分単位、より好ましくは1,4−シクロヘキサンジメタノールに由来する成分単位)を30モル%以上100モル%以下含み、脂肪族ジオールに由来する成分単位を0モル%以上70モル%以下含むことが好ましい。ジオールに由来する成分単位(a2)に含まれる脂環族ジオールに由来する成分単位(好ましくはシクロヘキサン骨格を有するジオールに由来する成分単位、より好ましくは1,4−シクロヘキサンジメタノールに由来する成分単位)の割合は、より好ましくは50モル%以上100モル%以下であり、さらに好ましくは60モル%以上100モル%以下である。ジオールに由来する成分単位(a2)に含まれる脂肪族ジオールに由来する成分単位の割合は、より好ましくは0モル%以上50モル%以下であり、さらに好ましくは0モル%以上40モル%以下である。ただし、ジオールに由来する成分単位(a2)の合計量を100モル%とする。
ジオールに由来する成分単位(a2)は、上記成分単位とともに、少量の、芳香族ジオールに由来する成分単位をさらに含んでもよい。芳香族ジオールの例には、ビスフェノール、ハイドロキノンおよび2,2−ビス(4−β−ヒドロキシエトキシフェニル)プロパンが含まれる。ジオールに由来する成分単位(a2)に含まれる芳香族ジオールに由来する成分単位の割合は、例えば10モル%以下としうる。
ポリエステル樹脂(A)およびポリエステル樹脂(B)の組成は、互いに同じであってもよいし、異なっていてもよい。また、ポリエステル樹脂(A)およびポリエステル樹脂(B)は、それぞれ一種類であってもよいし、二種類以上であってもよい。
ポリエステル樹脂(A)およびポリエステル樹脂(B)は、公知の方法で製造してもよいし、市販のものを購入してもよい。ポリエステル樹脂(A)およびポリエステル樹脂(B)は、例えば分子量調整剤の存在下で、ジカルボン酸成分とジオール成分とを反応させて製造してもよい。それにより、ポリエステル樹脂(A)およびポリエステル樹脂(B)の極限粘度[η]Aおよび[η]Bを上記範囲に調整してもよい。
分子量調整剤の例には、モノカルボン酸およびモノアルコールが含まれる。モノカルボン酸の例には、炭素原子数2〜30の脂肪族モノカルボン酸、芳香族モノカルボン酸および脂環族モノカルボン酸が含まれる。なお、芳香族モノカルボン酸および脂環族モノカルボン酸は、環状構造部分に置換基を有していてもよい。脂肪族モノカルボン酸の例には、酢酸、プロピオン酸、酪酸、吉草酸、カプロン酸、カプリル酸、ラウリン酸、トリデシル酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、オレイン酸およびリノ−ル酸が含まれる。芳香族モノカルボン酸の例には、安息香酸、トルイル酸、ナフタレンカルボン酸、メチルナフタレンカルボン酸およびフェニル酢酸が含まれる。脂環族モノカルボン酸の例には、シクロヘキサンカルボン酸が含まれる。
分子量調整剤の添加量は、ジカルボン酸成分とジオール成分とを反応させる際の、ジカルボン酸成分の合計量1モルに対して0モル以上0.07モル以下、好ましくは0モル以上0.05モル以下としうる。
ジカルボン酸成分とジオール成分とを反応(重縮合反応)させる際の重合条件(重合温度、重合時間)は、モノマーの種類やポリエステル樹脂(A)やポリエステル樹脂(B)の極限粘度に応じて、適宜設定されうる。
本発明のポリエステル樹脂組成物における、ポリエステル樹脂(A)とポリエステル樹脂(B)の合計量は、ポリエステル樹脂(A)、ポリエステル樹脂(B)、白色顔料(C)および無機充填材(D)の合計100質量部に対して、40質量部以上85質量部以下であることが好ましく、45質量部以上75質量部以下であることがより好ましく、45質量部以上65質量部以下であることがさらに好ましい。
本発明のポリエステル樹脂組成物におけるポリエステル樹脂(A)の含有量は、ポリエステル樹脂(A)、ポリエステル樹脂(B)、白色顔料(C)および無機充填材(D)の合計100質量部に対して、0.4質量部以上25.5質量部以下であることが好ましく、3質量部以上20質量以下であることがより好ましい。ポリエステル樹脂(A)の含有量が上記範囲であると、ポリエステル樹脂組成物の成形時の流動性や成形性を損なうことなく、機械的強度(強度や靱性)を高めやすい。
本発明のポリエステル樹脂組成物におけるポリエステル樹脂(B)の含有量は、ポリエステル樹脂(A)、ポリエステル樹脂(B)、白色顔料(C)および無機充填材(D)の合計100質量部に対して、28質量部以上84.15質量部以下であることが好ましく、30質量部以上55質量部以下であることがより好ましい。ポリエステル樹脂(B)の含有量が上記範囲であると、ポリエステル樹脂組成物の機械的強度を損なうことなく、成形時の流動性や成形性を高めやすい。また、当該樹脂組成物から得られる反射材の反射率を高めやすい。
本発明のポリエステル樹脂組成物におけるポリエステル樹脂(B)の含有量は、ポリエステル樹脂(A)とポリエステル樹脂(B)の合計100質量部に対して70質量部以上99質量部以下であることが好ましく、70質量部以上90質量部以下であることがより好ましい。ポリエステル樹脂(B)の含有量が上記範囲であると、ポリエステル樹脂組成物の機械的強度を損なうことなく、成形時の流動性や成形性を高めやすい。
1−2.白色顔料(C)
白色顔料(C)は、ポリエステル樹脂組成物を白色化し、光反射機能をより向上させうる。具体的には、白色顔料(C)は、屈折率が2.0以上であることが好ましい。白色顔料(C)の屈折率の上限値は、例えば4.0である。白色顔料(C)の例には、酸化チタン、酸化亜鉛、硫化亜鉛、鉛白、硫酸亜鉛、硫酸バリウム、炭酸カルシウム、および酸化アルミナ等が含まれる。これらの白色顔料(C)は、一種を単独で用いてもよいし、二種以上を併用してもよい。
白色顔料(C)は、ポリエステル樹脂組成物を白色化し、光反射機能をより向上させうる。具体的には、白色顔料(C)は、屈折率が2.0以上であることが好ましい。白色顔料(C)の屈折率の上限値は、例えば4.0である。白色顔料(C)の例には、酸化チタン、酸化亜鉛、硫化亜鉛、鉛白、硫酸亜鉛、硫酸バリウム、炭酸カルシウム、および酸化アルミナ等が含まれる。これらの白色顔料(C)は、一種を単独で用いてもよいし、二種以上を併用してもよい。
ポリエステル樹脂組成物の反射率および隠蔽性をより高める観点から、白色顔料(C)は、酸化チタンであることが好ましい。酸化チタンは、ルチル型が好ましい。
白色顔料(C)は、シランカップリング剤またはチタンカップリング剤などで処理されていてもよい。例えば、白色顔料(C)は、ビニルトリエトキシシラン、2−アミノプロピルトリエトキシシラン、および2−グリシドキシプロピルトリエトキシシランを含むシラン系化合物で表面処理されていてもよい。
ポリエステル樹脂組成物の反射率をより均一化させる観点からは、白色顔料(C)は、アスペクト比の小さい、すなわち、球状に近いものが好ましい。
白色顔料(C)の平均粒径は、0.1μm以上0.5μm以下であることが好ましく、0.15μm以上0.3μm以下であることがより好ましい。白色顔料(C)の平均粒径は、透過型電子顕微鏡写真をもとに、画像回折装置(ルーゼックスIIIU)を用いて一次粒子の各粒径区間における粒子量(質量%)をプロットして分布曲線を求め、得られた分布曲線から累積分布曲線を求め、この累積分布曲線における累積度50%のときの値とすることができる。
本発明のポリエステル樹脂組成物における白色顔料(C)の含有量は、ポリエステル樹脂(A)、ポリエステル樹脂(B)、白色顔料(C)および無機充填材(D)の合計を100質量部としたとき、10質量部以上50質量部以下であることが好ましく、25質量部以上40質量部以下であることがより好ましい。白色顔料(C)の含有量が10質量部以上であると、ポリエステル樹脂組成物の白色度がより高まりやすく、反射率がより高まりやすい。一方で、白色顔料(C)の含有量が50質量部以下であると、成形時の流動性や成形性が損なわれにくい。
本発明のポリエステル樹脂組成物における白色顔料(C)の含有量は、前述の観点から、ポリエステル樹脂(A)とポリエステル樹脂(B)の合計100質量部に対して35質量部以上80質量部以下であることが好ましく、50質量部以上70質量部以下であることがより好ましい。
1−3.無機充填材(D)
無機充填材(D)は、球状、繊維状または板状の形状を有する、無機化合物の充填材である。ポリエステル樹脂組成物の強度および靱性をより高める観点からは、無機充填材(D)の形状は、繊維状であることが好ましい。
無機充填材(D)は、球状、繊維状または板状の形状を有する、無機化合物の充填材である。ポリエステル樹脂組成物の強度および靱性をより高める観点からは、無機充填材(D)の形状は、繊維状であることが好ましい。
繊維状の無機充填材(D)の例には、ガラス繊維、ワラストナイト、チタン酸カリウムウィスカー、炭酸カルシウムウィスカー、ホウ酸アルミニウムウィスカー、硫酸マグネシウムウィスカー、セピオライト、ゾノトライト、酸化亜鉛ウィスカー、ミルドファイバーおよびカットファイバーなどが含まれる。これらのうちの一種を単独で用いても、二種以上を併用してもよい。中でも、平均繊維径が比較的小さく、成形物の表面平滑性を高めやすいことなどから、ワラストナイト、ガラス繊維、チタン酸カリウムウィスカーが好ましく、ワラストナイトまたはガラス繊維がより好ましい。ポリエステル樹脂組成物の光遮蔽効果をより高める観点からは、ワラストナイトが好ましく、ポリエステル樹脂組成物の機械強度をより高める観点からは、ガラス繊維が好ましい。
繊維状の無機充填材(D)の平均繊維長(l)は、通常、5mm以下であり、繊維状の無機充填材(D)を折れにくくし、かつ樹脂中に微分散させやすくする観点では、4mm以下であることが好ましい。繊維状の無機充填材(D)の平均繊維長(l)は、ポリエステル樹脂組成物の強度をより高める観点では、2μm以上であることが好ましく、8μm以上であることがより好ましい。
繊維状の無機充填材(D)を微分散させやすくし、かつ成形体の表面平滑性を高める観点からは、繊維状の無機充填材(D)の平均繊維径(d)は、0.05μm以上30μm以下であることが好ましく、2μm以上10μm以下であることがより好ましい。平均繊維径(d)が一定以下であると、繊維状の無機充填材(D)が成形時などに折れにくくなり、ポリエステル樹脂組成物の強度が高まりやすい。また、平均繊維径(d)が一定以上であると、繊維状の無機充填材(D)が微分散された状態で成形しやすいため、ポリエステル樹脂組成物の表面平滑性が高まりやすく、反射率が高まりやすい。
繊維状の無機充填材(D)のアスペクト比(平均繊維長(l)/平均繊維径(d))は、特に制限されない。アスペクト比が大きいほど、ポリエステル樹脂組成物の強度や剛性がより高まる。
ポリエステル樹脂組成物(例えばペレット等のコンパウンド)中の繊維状の無機充填材(D)の平均繊維長(l)と平均繊維径(d)は、以下の方法で測定することができる。
1)ポリエステル樹脂組成物をヘキサフルオロイソプロパノール/クロロホルム溶液(0.1/0.9体積%)に溶解させた後、濾過して得られる濾過物を採取する。
2)得られた濾過物のうち任意の100本の繊維状の無機充填材(D)を走査型電子顕微鏡(SEM)(倍率:50倍)で観察し、それぞれの繊維長および繊維径を計測する。そして、繊維長の平均値を平均繊維長(l)とし、繊維径の平均値を平均繊維径(d)としうる。
1)ポリエステル樹脂組成物をヘキサフルオロイソプロパノール/クロロホルム溶液(0.1/0.9体積%)に溶解させた後、濾過して得られる濾過物を採取する。
2)得られた濾過物のうち任意の100本の繊維状の無機充填材(D)を走査型電子顕微鏡(SEM)(倍率:50倍)で観察し、それぞれの繊維長および繊維径を計測する。そして、繊維長の平均値を平均繊維長(l)とし、繊維径の平均値を平均繊維径(d)としうる。
本発明のポリエステル樹脂組成物における無機充填材(D)の含有量は、ポリエステル樹脂(A)、ポリエステル樹脂(B)、白色顔料(C)および無機充填材(D)の合計100質量部に対して、5質量部以上40質量部以下であることが好ましい。無機充填材(D)の含有量が5質量部以上であると、ポリエステル樹脂組成物の耐熱性や強度を高めやすく、40質量部以下であると、ポリエステル樹脂組成物の成形時の流動性や成形性が損なわれにくい。無機充填材(D)の含有量は、ポリエステル樹脂(A)、ポリエステル樹脂(B)、白色顔料(C)および無機充填材(D)の合計100質量部に対して5質量部以上30質量部以下であることがより好ましい。
1−4.その他の成分(E)
本発明の反射材用ポリエステル樹脂組成物は、本発明の効果を損なわない範囲で、用途に応じて、前述の(A)〜(D)成分以外の他の成分、例えば、酸化防止剤(フェノール類、アミン類、イオウ類、リン類など)、光安定剤(ベンゾトリアゾール類、トリアジン類、ベンゾフェノン類、ヒンダードアミン類、オギザニリド類等)、耐熱安定剤(ラクトン化合物、ビタミンE類、ハイドロキノン類、ハロゲン化銅、ヨウ素化合物等)、他の重合体(ポリオレフィン類、エチレン・プロピレン共重合体、エチレン・1−ブテン共重合体などのオレフィン共重合体、プロピレン・1−ブテン共重合体などのオレフィン共重合体、ポリスチレン、ポリアミド、ポリカーボネート、ポリアセタール、ポリスルフォン、ポリフェニレンオキシド、フッ素樹脂、シリコーン樹脂、LCP等)、難燃剤(臭素系、塩素系、リン系、アンチモン系、無機系等)蛍光増白剤、可塑剤、増粘剤、帯電防止剤、離型剤、顔料、結晶核剤、滑剤などの添加剤をさらに含んでもよい。他の成分の合計含有量は、反射材用ポリエステル樹脂組成物の全質量に対して10質量%以下、好ましくは5質量%以下としうる。
本発明の反射材用ポリエステル樹脂組成物は、本発明の効果を損なわない範囲で、用途に応じて、前述の(A)〜(D)成分以外の他の成分、例えば、酸化防止剤(フェノール類、アミン類、イオウ類、リン類など)、光安定剤(ベンゾトリアゾール類、トリアジン類、ベンゾフェノン類、ヒンダードアミン類、オギザニリド類等)、耐熱安定剤(ラクトン化合物、ビタミンE類、ハイドロキノン類、ハロゲン化銅、ヨウ素化合物等)、他の重合体(ポリオレフィン類、エチレン・プロピレン共重合体、エチレン・1−ブテン共重合体などのオレフィン共重合体、プロピレン・1−ブテン共重合体などのオレフィン共重合体、ポリスチレン、ポリアミド、ポリカーボネート、ポリアセタール、ポリスルフォン、ポリフェニレンオキシド、フッ素樹脂、シリコーン樹脂、LCP等)、難燃剤(臭素系、塩素系、リン系、アンチモン系、無機系等)蛍光増白剤、可塑剤、増粘剤、帯電防止剤、離型剤、顔料、結晶核剤、滑剤などの添加剤をさらに含んでもよい。他の成分の合計含有量は、反射材用ポリエステル樹脂組成物の全質量に対して10質量%以下、好ましくは5質量%以下としうる。
1−5.物性
本発明の反射材用ポリエステル樹脂組成物の波長450nmの光の反射率は、90%以上であることが好ましく、94%以上であることがより好ましい。反射率は、本発明の反射材用ポリエステル樹脂組成物を成形して得られる試料片の反射率を、コニカミノルタ社製CM3500dを用いて測定することができる。測定時の試料片の厚みは、0.5mmとしうる。
本発明の反射材用ポリエステル樹脂組成物の波長450nmの光の反射率は、90%以上であることが好ましく、94%以上であることがより好ましい。反射率は、本発明の反射材用ポリエステル樹脂組成物を成形して得られる試料片の反射率を、コニカミノルタ社製CM3500dを用いて測定することができる。測定時の試料片の厚みは、0.5mmとしうる。
2.反射材用ポリエステル樹脂組成物の製造方法
本発明のポリエステル樹脂組成物は、少なくとも前述の(A)成分、(B)成分、(C)成分および(D)成分を、公知の方法、例えばヘンシェルミキサー、Vブレンダー、リボンブレンダー、またはタンブラーブレンダーで混合する方法、あるいは上記混合の後、さらに一軸押出機、多軸押出機、ニーダーまたはバンバリーミキサーで溶融混練し、上記溶融混練の後に造粒または粉砕する方法により製造することができる。
本発明のポリエステル樹脂組成物は、少なくとも前述の(A)成分、(B)成分、(C)成分および(D)成分を、公知の方法、例えばヘンシェルミキサー、Vブレンダー、リボンブレンダー、またはタンブラーブレンダーで混合する方法、あるいは上記混合の後、さらに一軸押出機、多軸押出機、ニーダーまたはバンバリーミキサーで溶融混練し、上記溶融混練の後に造粒または粉砕する方法により製造することができる。
溶融混練は、ポリエステル樹脂(A)およびポリエステル樹脂(B)の融点より5〜30℃高い温度で行うことが好ましい。溶融混練の温度の好ましい下限値は、255℃、好ましくは275℃、より好ましくは295℃とすることができ、好ましい上限値は、360℃、より好ましくは340℃とすることができる。
3.反射材
本発明の反射材は、本発明の反射材用ポリエステル樹脂組成物を成形して得られる成形体である。
本発明の反射材は、本発明の反射材用ポリエステル樹脂組成物を成形して得られる成形体である。
上記成形は、公知の成形方法で行うことができる。公知の成形方法の例には、射出成形、フープ成形を含むインサート成形、溶融成形、押出し成形、インフレーション成形、およびブロー成形などが含まれる。
本発明の反射材用ポリエステル樹脂組成物は、成形時に良好な流動性および成形性を示すため、得られる反射材(成形体)は、クラックなどがなく、高い形状精度と、高い機械的強度とを有しうる。
本発明の反射材は、少なくとも光を反射させる面を有する成形体であり、用途に応じて任意の形状を有しうる。例えば、本発明の反射材は、少なくとも光を反射させる面を有するケーシングやハウジングなどでありうる。光を反射させる面は、平面であってもよいし、曲面(球面を含む)であってもよい。具体的には、光を反射させる面は、箱状、漏斗状、お椀形状、パラボラ形状、円柱状、円錐状、ハニカム状などの形状を有しうる。
本発明の反射材は、例えば各種電気電子部品、室内照明、屋外照明、自動車照明などの反射材として用いることができる。具体的には、本発明の反射材は、上記のような各種用途における、有機ELや発光ダイオード(LED)などの各種光源の反射材として用いられる。中でも、発光ダイオード(LED)の反射材として用いられることが好ましく、表面実装に対応した発光ダイオード(LED)の反射材として用いられることがより好ましい。
すなわち、発光ダイオード(LED)の反射材として本発明の反射材を有するLEDパッケージは、基板と、当該基板上に配置された、LEDを搭載するための空間を有するハウジング部と、当該空間に搭載されたLEDと、LEDを封止する封止部材とを有しうる。そして、LEDを搭載するための空間を有するハウジング部を、本発明の反射材としうる。
以下において、実施例を参照して本発明を説明する。実施例によって、本発明の範囲は限定して解釈されない。
1.材料の調製
<ポリエステル樹脂(A)>
ポリエステル樹脂(A−1):SKケミカル、製品名SKYPURA、銘柄名0502、極限粘度[η]A=0.75dl/g、融点290℃(ジメチルテレフタレートと1,4−シクロヘキサンジメタノールの重縮合体)
<ポリエステル樹脂(A)>
ポリエステル樹脂(A−1):SKケミカル、製品名SKYPURA、銘柄名0502、極限粘度[η]A=0.75dl/g、融点290℃(ジメチルテレフタレートと1,4−シクロヘキサンジメタノールの重縮合体)
<ポリエステル樹脂(B)>
ポリエステル樹脂(B−1):SKケミカル、製品名SKYPURA、銘柄名0302、極限粘度[η]B=0.65dl/g、融点290℃(ジメチルテレフタレートと1,4−シクロヘキサンジメタノールの重縮合体)
ポリエステル樹脂(B−1):SKケミカル、製品名SKYPURA、銘柄名0302、極限粘度[η]B=0.65dl/g、融点290℃(ジメチルテレフタレートと1,4−シクロヘキサンジメタノールの重縮合体)
ポリエステル樹脂(A−1)および(B−1)の極限粘度[η]および融点は、以下の方法で測定した。
(極限粘度)
得られたポリエステル樹脂を、フェノールとテトラクロロエタンの50/50質量%の混合溶媒に溶解して試料溶液とした。得られた試料溶液の流下秒数を、ウベローデ粘度計を用いて25℃±0.05℃の条件下で測定し、下記式に当てはめて極限粘度[η]を算出した。
[η]=ηSP/[C(1+kηSP)]
[η]:極限粘度(dl/g)
ηSP:比粘度
C:試料濃度(g/dl)
t:試料溶液の流下秒数(秒)
t0:溶媒の流下秒数(秒)
k:定数(溶液濃度の異なるサンプル(3点以上)の比粘度を測定し、横軸に溶液濃度、縦軸にηsp/Cをプロットして求めた傾き)
ηSP=(t−t0)/t0
得られたポリエステル樹脂を、フェノールとテトラクロロエタンの50/50質量%の混合溶媒に溶解して試料溶液とした。得られた試料溶液の流下秒数を、ウベローデ粘度計を用いて25℃±0.05℃の条件下で測定し、下記式に当てはめて極限粘度[η]を算出した。
[η]=ηSP/[C(1+kηSP)]
[η]:極限粘度(dl/g)
ηSP:比粘度
C:試料濃度(g/dl)
t:試料溶液の流下秒数(秒)
t0:溶媒の流下秒数(秒)
k:定数(溶液濃度の異なるサンプル(3点以上)の比粘度を測定し、横軸に溶液濃度、縦軸にηsp/Cをプロットして求めた傾き)
ηSP=(t−t0)/t0
(融点(Tm))
融点(Tm)は、示差走査熱量計(DSC)により、JIS−K7121に準拠して測定した。具体的には、X−DSC7000(SII社製)に、サンプルを封入したDSC測定用パンをセットし、窒素雰囲気下で昇温速度10℃/分で320℃まで昇温し、その温度で5分間保持した後、10℃/分の降温測定で30℃まで降温した。そして、昇温時の吸熱ピークのピークトップの温度を「融点」とした。
融点(Tm)は、示差走査熱量計(DSC)により、JIS−K7121に準拠して測定した。具体的には、X−DSC7000(SII社製)に、サンプルを封入したDSC測定用パンをセットし、窒素雰囲気下で昇温速度10℃/分で320℃まで昇温し、その温度で5分間保持した後、10℃/分の降温測定で30℃まで降温した。そして、昇温時の吸熱ピークのピークトップの温度を「融点」とした。
<白色顔料(C)>
酸化チタン(粉末状、平均粒径:0.21μm)を用いた。酸化チタンの平均粒径は、以下のように求めた。
酸化チタン(粉末状、平均粒径:0.21μm)を用いた。酸化チタンの平均粒径は、以下のように求めた。
(平均粒径)
まず、透過型電子顕微鏡写真をもとに、画像回折装置(ルーゼックスIIIU)を用いて一次粒子の各粒径区間における粒子量(質量%)をプロットして分布曲線を求めた。得られた分布曲線から累積分布曲線を求め、この累積分布曲線における累積度50%のときの値を平均粒径とした。
まず、透過型電子顕微鏡写真をもとに、画像回折装置(ルーゼックスIIIU)を用いて一次粒子の各粒径区間における粒子量(質量%)をプロットして分布曲線を求めた。得られた分布曲線から累積分布曲線を求め、この累積分布曲線における累積度50%のときの値を平均粒径とした。
<無機充填材(D)>
ガラス繊維(平均繊維長(l)3mm、平均繊維径6.5μm、日本電気硝子(株)製ECS03T−171DE/P9W、シラン化合物処理品)を用いた。
ガラス繊維(平均繊維長(l)3mm、平均繊維径6.5μm、日本電気硝子(株)製ECS03T−171DE/P9W、シラン化合物処理品)を用いた。
2.ポリエステル樹脂組成物の作製と評価
<実施例1〜3および比較例1〜3>
表1に示される組成比で、ポリエステル樹脂(A)、ポリエステル樹脂(B)、白色顔料(C)、および無機充填材(D)をタンブラーブレンダーにて混合した。得られた混合物を、二軸押出機((株)日本製鋼所製 TEX30α)にてシリンダー温度300℃で原料を溶融混錬した後、ストランド状に押出した。押出物を水槽で冷却後、ペレタイザーでストランドを引き取り、カットして、ペレット状のポリエステル樹脂組成物を得た。
<実施例1〜3および比較例1〜3>
表1に示される組成比で、ポリエステル樹脂(A)、ポリエステル樹脂(B)、白色顔料(C)、および無機充填材(D)をタンブラーブレンダーにて混合した。得られた混合物を、二軸押出機((株)日本製鋼所製 TEX30α)にてシリンダー温度300℃で原料を溶融混錬した後、ストランド状に押出した。押出物を水槽で冷却後、ペレタイザーでストランドを引き取り、カットして、ペレット状のポリエステル樹脂組成物を得た。
得られたポリエステル樹脂組成物の、曲げ特性(曲げ強度、弾性率および靱性)、流動長、反射率、成形性および成形品割れを、それぞれ以下の方法で評価した。
(曲げ特性)
得られたペレット状のポリエステル樹脂組成物を、下記の成形機を用いて、下記成形条件で成形し、試験片を得た。試験片は、長さ64mm、幅6mm、厚さ0.8mmとした。
成形機:射出成形機((株)ソディック プラステック、ツパールTR40S3A)
シリンダー温度:300℃
金型温度:150℃
得られた試験片を、温度23℃、窒素雰囲気下に24時間放置した。次いで、温度23℃、湿度50%Rhの雰囲気下で、曲げ試験機:NTESCO社製 AB5、スパン26mm、曲げ速度5mm/分で曲げ試験を行い、このときの強度、弾性率および靱性を測定した。
得られたペレット状のポリエステル樹脂組成物を、下記の成形機を用いて、下記成形条件で成形し、試験片を得た。試験片は、長さ64mm、幅6mm、厚さ0.8mmとした。
成形機:射出成形機((株)ソディック プラステック、ツパールTR40S3A)
シリンダー温度:300℃
金型温度:150℃
得られた試験片を、温度23℃、窒素雰囲気下に24時間放置した。次いで、温度23℃、湿度50%Rhの雰囲気下で、曲げ試験機:NTESCO社製 AB5、スパン26mm、曲げ速度5mm/分で曲げ試験を行い、このときの強度、弾性率および靱性を測定した。
(流動長)
得られたポリエステル樹脂組成物を、幅10mm、厚み0.5mmのバーフロー金型を用いて、以下の条件で射出成形し、金型内のポリエステル樹脂組成物の流動長(mm)を測定した。
射出成形機:ソディック社製、TUPARL TR40S3A
射出設定圧力:2000kg/cm2
シリンダー設定温度:ポリエステル樹脂(A)の融点(Tm)+10℃
金型温度:30℃
得られたポリエステル樹脂組成物を、幅10mm、厚み0.5mmのバーフロー金型を用いて、以下の条件で射出成形し、金型内のポリエステル樹脂組成物の流動長(mm)を測定した。
射出成形機:ソディック社製、TUPARL TR40S3A
射出設定圧力:2000kg/cm2
シリンダー設定温度:ポリエステル樹脂(A)の融点(Tm)+10℃
金型温度:30℃
(反射率)
得られたペレット状のポリエステル樹脂組成物を、以下の成形機を用いて、以下の成形条件で射出成形した。これにより、長さ50mm、幅30mm、厚さ0.7mmの試験片を作製した。得られた試験片について、ミノルタ社製 CM3500dを用いて、波長360nm〜740nmの反射率を求めた。そして、波長450nmの反射率を代表値とした。
成形機:住友重機械工業社製、SE50DU
シリンダー温度:ポリエステル樹脂(A)の融点(Tm)+10℃
金型温度:150℃
得られたペレット状のポリエステル樹脂組成物を、以下の成形機を用いて、以下の成形条件で射出成形した。これにより、長さ50mm、幅30mm、厚さ0.7mmの試験片を作製した。得られた試験片について、ミノルタ社製 CM3500dを用いて、波長360nm〜740nmの反射率を求めた。そして、波長450nmの反射率を代表値とした。
成形機:住友重機械工業社製、SE50DU
シリンダー温度:ポリエステル樹脂(A)の融点(Tm)+10℃
金型温度:150℃
(成形性)
得られたペレット状のポリエステル樹脂組成物を、以下の成形機を用いて、以下の成形条件で射出成形した。これにより、長さ50mm、幅30mm、厚さ0.5mmの試験片を作製した。この際、金型内のキャビティーがポリエステル樹脂組成物で完全に充填され、試験片に欠けがないものを○、金型内のキャビティーがポリエステル樹脂組成物で完全には充填されず、試験片の一部が欠けているものをショートショットと判断した。
成形機:住友重機械工業社製、SE50DU
シリンダー温度:ポリエステル樹脂(A)の融点(Tm)+10℃
金型温度:150℃
得られたペレット状のポリエステル樹脂組成物を、以下の成形機を用いて、以下の成形条件で射出成形した。これにより、長さ50mm、幅30mm、厚さ0.5mmの試験片を作製した。この際、金型内のキャビティーがポリエステル樹脂組成物で完全に充填され、試験片に欠けがないものを○、金型内のキャビティーがポリエステル樹脂組成物で完全には充填されず、試験片の一部が欠けているものをショートショットと判断した。
成形機:住友重機械工業社製、SE50DU
シリンダー温度:ポリエステル樹脂(A)の融点(Tm)+10℃
金型温度:150℃
(成形品割れ)
得られたペレット状のポリエステル樹脂組成物を、以下の成形機を用いて、以下の成形条件で射出成形した。これにより、長さ50mm、幅30mm、厚さ0.5mmの試験片を作製した。試験片を金型から離型する際、試験片にクラックが発生するものを×、クラックが発生しないものを○と判断した。
成形機:住友重機械工業社製、SE50DU
シリンダー温度:ポリエステル樹脂(A)の融点(Tm)+10℃
金型温度:150℃
得られたペレット状のポリエステル樹脂組成物を、以下の成形機を用いて、以下の成形条件で射出成形した。これにより、長さ50mm、幅30mm、厚さ0.5mmの試験片を作製した。試験片を金型から離型する際、試験片にクラックが発生するものを×、クラックが発生しないものを○と判断した。
成形機:住友重機械工業社製、SE50DU
シリンダー温度:ポリエステル樹脂(A)の融点(Tm)+10℃
金型温度:150℃
実施例1〜3および比較例1〜3のポリエステル樹脂組成物の組成と評価結果を表1に示す。
表1に示されるように、極限粘度が相対的に高いポリエステル樹脂(A)と、極限粘度が相対的に低いポリエステル樹脂(B)とを所定の比率で組み合わせた実施例1〜3のポリエステル樹脂組成物は、いずれも酸化チタンを多く含むにも係わらず、良好な流動性と曲げ強度(機械的強度)とを有することがわかる。
これに対して、極限粘度が相対的に高いポリエステル樹脂(A)を含まない比較例1のポリエステル樹脂組成物は、曲げ強度および靱性が低く、機械的強度が低いことがわかる。一方、極限粘度が相対的に低いポリエステル樹脂(B)を含まない比較例3のポリエステル樹脂組成物や、極限粘度が相対的に低いポリエステル樹脂(B)の含有比率が少なすぎる比較例2のポリエステル樹脂組成物は、流動性が低く、ショートショットが生じ、成形性が低いことがわかる。
本発明によれば、成形時の流動性を低下させることなく、機械的強度が高い反射材を付与しうる反射材用ポリエステル樹脂組成物を提供することができる。
Claims (7)
- 示差走査熱量計(DSC)で測定した融点(Tm)もしくはガラス転移温度(Tg)が250℃以上であり、かつ極限粘度[η]Aが0.7dl/g以上1.2dl/g以下であるポリエステル樹脂(A)と、
示差走査熱量計(DSC)で測定した融点(Tm)もしくはガラス転移温度(Tg)が250℃以上であり、かつ極限粘度[η]Bが0.5dl/g以上0.7dl/g未満であるポリエステル樹脂(B)と、
白色顔料(C)と、
無機充填材(D)と
を含み、
前記ポリエステル樹脂(A)の極限粘度[η]Aと前記ポリエステル樹脂(B)の極限粘度[η]Bが、下記式(I)の関係を満たし、
式(I) 0.1≦[η]A−[η]B≦0.5
前記ポリエステル樹脂(B)の含有量は、前記ポリエステル樹脂(A)と前記ポリエステル樹脂(B)の合計100質量部に対して70質量部以上99質量部以下である、
反射材用ポリエステル樹脂組成物。 - 前記ポリエステル樹脂(A)、前記ポリエステル樹脂(B)、前記白色顔料(C)および前記無機充填材(D)の合計100質量部に対して、
前記ポリエステル樹脂(A)と前記ポリエステル樹脂(B)の含有量は、40質量部以上85質量部以下であり、
前記白色顔料(C)成分の含有量は、10質量部以上50質量部以下であり、
前記無機充填材(D)の含有量は、5質量部以上40質量部以下である、
請求項1に記載の反射材用ポリエステル樹脂組成物。 - 前記ポリエステル樹脂(A)および前記ポリエステル樹脂(B)は、ジカルボン酸に由来する成分単位(a1)と、ジオールに由来する成分単位(a2)とを含み、
前記ジカルボン酸に由来する成分単位(a1)は、前記ジカルボン酸に由来する成分単位(a1)の合計100モル%に対して、テレフタル酸に由来する成分単位30モル%以上100モル%以下と、テレフタル酸以外の芳香族ジカルボン酸に由来する成分単位0モル%以上70モル%以下とを含み、
前記ジオールに由来する成分単位(a2)は、炭素原子数4以上20以下の脂環式ジオールに由来する成分単位と脂肪族ジオールに由来する成分単位の少なくとも一方を含む、
請求項1または2に記載の反射材用ポリエステル樹脂組成物。 - 前記脂環式ジオールに由来する成分単位は、シクロヘキサン骨格を有する、
請求項3に記載の反射材用ポリエステル樹脂組成物。 - 前記ジオールに由来する成分単位(a2)は、前記ジオールに由来する成分単位(a2)の合計100モル%に対して、1,4−シクロヘキサンジメタノールに由来する成分単位30モル%以上100モル%以下と、前記脂肪族ジオールに由来する成分単位0モル%以上70モル%以下とを含む、
請求項3または4に記載の反射材用ポリエステル樹脂組成物。 - 請求項1〜5のいずれか一項に記載の反射材用ポリエステル樹脂組成物を含む、
反射材。 - 発光ダイオード素子用の反射材である、
請求項6に記載の反射材。
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