JP2019142986A - 反射材用ポリエステル樹脂組成物および反射材 - Google Patents
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Abstract
【課題】成形時の流動性や反射率の経時安定性などを顕著に低下させることなく、機械的特性(靱性)に優れ、かつ耐候性に優れた反射材を付与しうる反射材用ポリエステル樹脂組成物を提供すること。【解決手段】示差走査熱量計(DSC)で測定される融点(Tm)もしくはガラス転移温度(Tg)が250℃以上であるポリエステル樹脂(A)30質量部以上80質量部以下と、白色顔料(B)5質量部以上50質量部以下と、示差走査熱量計(DSC)で測定される融点(Tm)が80℃以上300℃以下である金属不活性化剤(C)0.1質量部以上2.0質量部以下と、無機充填材(D)1質量部以上50質量部以下と、を含む(ただし、(A)、(B)、(C)および(D)の合計は100質量部である)、反射材用ポリエステル樹脂組成物。【選択図】なし
Description
本発明は、反射材用ポリエステル樹脂組成物および反射材に関する。
発光ダイオード(LED)や有機ELなどの光源は、低電力や高寿命などの特徴を活かして、照明やディスプレイのバックライトとして幅広く使用されている。これらの光源からの光を効率的に利用するために、反射材が種々の局面で利用されている。一方で、電子機器の小型化がめざましく、中でも、携帯電話やノートパソコンに代表される携帯機器の軽薄短小化は顕著であり、反射材へ求められる性能も多様化しつつある。
具体的には、反射材には、使用環境下において安定して高い反射率を示すことが求められるほか、高い機械的強度や耐熱性を有することも求められる。例えば、LEDパッケージは、基板上に設けられた、LEDを搭載するための空間を有するハウジング部(反射材)と、上記空間に搭載されたLEDと、LEDを封止する封止部材とを有する。このようなLEDパッケージは、プリント配線基板などに表面実装される(リフローはんだ工程)。リフローはんだ工程では、LEDパッケージは250℃を超える高温環境に晒されることから、そのような高温にも耐える耐熱性を有することも求められる。
また、近年では、製品へのコストダウン要求から、TVやディスプレイなどの最終製品に搭載されるLEDパッケージ数の低減が図られている。それに伴い、光源の高輝度化が進められた結果、反射材には、より過酷な耐熱環境下でも反射率を維持できることが求められる。
さらに、電子機器製品の薄肉化に対応するため、サイドビュータイプ(実装面に対して平行な方向へ光を照射するタイプ)のLEDパッケージが検討されている。サイドビュータイプのLEDパッケージは、小型かつパッケージ側壁が薄く設計されていることから、LEDパッケージを構成する反射材には、これまで以上に高い靱性、たわみ強度を有することが必要とされている。また、高温・高湿下(湿熱環境下)において、反射材にわずかな収縮が生じ、LEDパッケージにクラックが生じる場合もあることから、反射材には、高い耐湿熱性(耐候性、耐クラック性)を有することも求められている。
これに対し、反射材の材料として、特許文献1には、ポリシクロヘキシレンジメチレンテレフタレート(PCT)と、二酸化チタンと、グリシジルメタクリレート重合体などの高分子強化剤と、酸化防止剤とを含む樹脂組成物が開示されている(特許文献1)。このように、高分子強化剤としてグリシジルメタクリレート重合体を用いることで、反射材の強度や靱性を高めうるとされている。
しかしながら、本発明者らの検討によれば、PCTと高分子強化剤との疎水部同士の相溶や反応が不均一に進行する場合があり、高分子強化剤の分散が十分ではないことから、成形時の流動性や、反射率の経時安定性が低下する可能性があることがわかった。
これに対し、本発明者らは、成形時の流動性や反射率の経時安定性を顕著に低下させることなく、機械的特性(特に靱性)の良好なポリエステル樹脂組成物を得るために、アミノトリアゾール系化合物などの金属不活性化剤を添加することを試みた。しかしながら、得られるポリエステル樹脂組成物は、靱性などの機械的強度が十分でないだけでなく、高温・高湿環境下で長時間光照射したときに短時間でクラックを発生しやすいこと(耐候性が低いこと)が新たにわかった。
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、成形時の流動性や反射率の経時安定性などを顕著に低下させることなく、機械的特性(靱性)に優れ、かつ耐候性に優れた反射材を付与しうる反射材用ポリエステル樹脂組成物を提供することを目的とする。
[1] 示差走査熱量計(DSC)で測定される融点(Tm)もしくはガラス転移温度(Tg)が250℃以上であるポリエステル樹脂(A)30質量部以上80質量部以下と、白色顔料(B)5質量部以上50質量部以下と、示差走査熱量計(DSC)で測定される融点(Tm)が80℃以上300℃以下である金属不活性化剤(C)0.1質量部以上2.0質量部以下と、無機充填材(D)1質量部以上50質量部以下と、を含む(ただし、(A)、(B)、(C)および(D)の合計は100質量部である)、反射材用ポリエステル樹脂組成物。
[2] 前記金属不活性化剤(C)は、ヒドラジド系化合物、トリアゾール系化合物、トリアジン系化合物、アミノカルボキシレート系化合物、およびホスファイト系化合物からなる群より選ばれる1種以上である、[1]に記載の反射材用ポリエステル樹脂組成物。
[3] 前記ポリエステル樹脂(A)は、ジカルボン酸に由来する成分単位(a1)と、ジアルコールに由来する成分単位(a2)とを含み、前記ジカルボン酸に由来する成分単位(a1)は、前記ジカルボン酸に由来する成分単位(a1)の合計100モル%に対して、テレフタル酸に由来する成分単位を30モル%以上100モル%以下と、テレフタル酸以外の芳香族ジカルボン酸に由来する成分単位を0モル%以上70モル%以下とを含み、前記ジアルコールに由来する成分単位(a2)は、炭素原子数4以上20以下の脂環族ジアルコールに由来する成分単位と脂肪族ジアルコールに由来する成分単位の少なくとも一方を含む、[1]または[2]に記載の反射材用ポリエステル樹脂組成物。
[4] 前記ジアルコールに由来する成分単位(a2)は、シクロヘキサン骨格を有する脂環族ジアルコールに由来する成分単位を含む、[3]に記載の反射材用ポリエステル樹脂組成物。
[5] 前記ジアルコールに由来する成分単位(a2)は、前記ジアルコールに由来する成分単位(a2)の合計100モル%に対して、1,4−シクロヘキサンジメタノールに由来する成分単位を30モル%以上100モル%以下と、前記脂肪族ジアルコールに由来する成分単位を0モル%以上70モル%以下とを含む、[3]または[4]に記載の反射材用ポリエステル樹脂組成物。
[6] 前記白色顔料材(B)は、酸化チタンである、[1]〜[5]のいずれかに記載の反射材用ポリエステル樹脂組成物。
[7] [1]〜[6]のいずれかに記載の反射材用ポリエステル樹脂組成物を含む、
反射材。
[8] 発光ダイオード素子用の反射材である、[7]に記載の反射材。
[2] 前記金属不活性化剤(C)は、ヒドラジド系化合物、トリアゾール系化合物、トリアジン系化合物、アミノカルボキシレート系化合物、およびホスファイト系化合物からなる群より選ばれる1種以上である、[1]に記載の反射材用ポリエステル樹脂組成物。
[3] 前記ポリエステル樹脂(A)は、ジカルボン酸に由来する成分単位(a1)と、ジアルコールに由来する成分単位(a2)とを含み、前記ジカルボン酸に由来する成分単位(a1)は、前記ジカルボン酸に由来する成分単位(a1)の合計100モル%に対して、テレフタル酸に由来する成分単位を30モル%以上100モル%以下と、テレフタル酸以外の芳香族ジカルボン酸に由来する成分単位を0モル%以上70モル%以下とを含み、前記ジアルコールに由来する成分単位(a2)は、炭素原子数4以上20以下の脂環族ジアルコールに由来する成分単位と脂肪族ジアルコールに由来する成分単位の少なくとも一方を含む、[1]または[2]に記載の反射材用ポリエステル樹脂組成物。
[4] 前記ジアルコールに由来する成分単位(a2)は、シクロヘキサン骨格を有する脂環族ジアルコールに由来する成分単位を含む、[3]に記載の反射材用ポリエステル樹脂組成物。
[5] 前記ジアルコールに由来する成分単位(a2)は、前記ジアルコールに由来する成分単位(a2)の合計100モル%に対して、1,4−シクロヘキサンジメタノールに由来する成分単位を30モル%以上100モル%以下と、前記脂肪族ジアルコールに由来する成分単位を0モル%以上70モル%以下とを含む、[3]または[4]に記載の反射材用ポリエステル樹脂組成物。
[6] 前記白色顔料材(B)は、酸化チタンである、[1]〜[5]のいずれかに記載の反射材用ポリエステル樹脂組成物。
[7] [1]〜[6]のいずれかに記載の反射材用ポリエステル樹脂組成物を含む、
反射材。
[8] 発光ダイオード素子用の反射材である、[7]に記載の反射材。
本発明によれば、成形時の流動性や反射率の経時安定性などを顕著に低下させることなく、機械的特性(靱性)に優れ、かつ耐候性に優れた反射材を付与しうる反射材用ポリエステル樹脂組成物を提供することができる。
本発明者らは、鋭意検討した結果、融点が250℃以上のポリエステル樹脂(A)に、融点が80℃以上300℃以下の金属不活性化剤(C)(特定の金属不活性化剤)を添加することで、成形時の流動性や反射率の経時的安定性を顕著に損なうことなく、高い機械的強度(特に靱性やたわみ量)と耐候性(高湿高温下で光照射したときの耐クラック性)を有するポリエステル樹脂組成物が得られることを見出した。
この理由は明らかではないが、以下のように推測される。ポリエステル樹脂(A)には、通常、重合触媒などに由来する重金属イオンが残留している。そのようなポリエステル樹脂(A)を溶融成形すると、当該重金属イオンを触媒とするポリエステル樹脂(A)の熱劣化反応(熱分解反応)が進みやすく、得られる成形物の機械的強度や耐候性が低下しやすい。
これに対して、特定の金属不活性化剤(C)は、融点が250℃以上のポリエステル樹脂(A)との相溶性が高い。そのような金属不活性化剤(C)を添加することにより、溶融成形時に、特定の金属不活性化剤(C)をポリエステル樹脂(A)中に均一に分散させやすく、重金属イオンを不活性化させやすくすることができる。それにより、成形時における、当該重金属イオンを触媒とするポリエステル樹脂(A)の熱劣化(熱分解)反応を抑制することができるため、得られる成形物の機械的強度を高め、かつ高湿高温下で一定時間以上光照射されたときに、短時間でのクラック発生を抑制(クラック発生を遅延または抑制)することができる。本発明は、このような知見に基づきなされたものである。
1.反射材用ポリエステル樹脂組成物
本発明の反射材用ポリエステル樹脂組成物は、ポリエステル樹脂(A)と、白色顔料(B)と、金属不活性化剤(C)と、無機充填材(D)とを含む。
本発明の反射材用ポリエステル樹脂組成物は、ポリエステル樹脂(A)と、白色顔料(B)と、金属不活性化剤(C)と、無機充填材(D)とを含む。
1−1.ポリエステル樹脂(A)
ポリエステル樹脂(A)は、ジカルボン酸に由来する成分単位(a1)と、ジアルコールに由来する成分単位(a2)とを含む。
ポリエステル樹脂(A)は、ジカルボン酸に由来する成分単位(a1)と、ジアルコールに由来する成分単位(a2)とを含む。
ジカルボン酸に由来する成分単位(a1)は、テレフタル酸に由来する成分単位を30モル%以上100モル%以下と、テレフタル酸以外の芳香族ジカルボン酸に由来する成分単位を0モル%以上70モル%以下とを含むことが好ましい。ジカルボン酸に由来する成分単位(a1)に含まれるテレフタル酸に由来する成分単位の割合は、より好ましくは40モル%以上100モル%以下であり、さらに好ましくは60モル%以上100モル%以下でありうる。テレフタル酸に由来する成分単位の含有量が高いと、ポリエステル樹脂組成物の耐熱性がより高まる。ジカルボン酸に由来する成分単位(a1)に含まれるテレフタル酸以外の芳香族ジカルボン酸に由来する成分単位の割合は、より好ましくは0モル%以上60モル%以下であり、さらに好ましくは0モル%以上40モル%以下でありうる。ただし、ジカルボン酸に由来する成分単位(a1)の合計量を100モル%とする。
テレフタル酸に由来する成分単位(a1−1)は、テレフタル酸、またはテレフタル酸エステルに由来する成分単位でありうる。テレフタル酸エステルは、好ましくはテレフタル酸の炭素原子数1以上4以下のアルキルエステルであり、その例にはジメチルテレフタレートなどが含まれる。
テレフタル酸以外の芳香族ジカルボン酸に由来する成分単位(a1−2)の例には、イソフタル酸、2−メチルテレフタル酸、ナフタレンジカルボン酸およびこれらの組み合わせに由来する成分単位、ならびにこれらの芳香族ジカルボン酸のエステル(好ましくは芳香族ジカルボン酸の炭素原子数1以上4以下のアルキルエステル)に由来する成分単位が含まれる。
ジカルボン酸に由来する成分単位(a1)は、上記成分単位とともに、少量の、脂肪族ジカルボン酸に由来する成分単位や分子内に3以上のカルボン酸基を有する多価カルボン酸に由来する成分単位をさらに含んでもよい。ジカルボン酸に由来する成分単位(a1)に含まれる脂肪族ジカルボン酸に由来する成分単位と多価カルボン酸に由来する成分単位の割合は、合計で、例えば10モル%以下としうる。
脂肪族ジカルボン酸の炭素原子数は、特に制限されないが、4以上20以下であることが好ましく、6以上12以下であることがより好ましい。脂肪族ジカルボン酸の例には、アジピン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、デカンジカルボン酸、ウンデカンジカルボン酸およびドデカンジカルボン酸が含まれる。中でも、アジピン酸が好ましい。多価カルボン酸の例には、トリメリット酸およびピロメリット酸を含む三塩基酸、ならびに多塩基酸が含まれる。
ジアルコールに由来する成分単位(a2)は、炭素原子数4以上20以下の脂環族ジアルコールに由来する成分単位および/または脂肪族ジアルコールに由来する成分単位を含むことが好ましい。
脂環族ジアルコールに由来する成分単位(a2−1)は、ポリエステル樹脂組成物の耐熱性を高め、かつ吸水性を低減しうる。脂環族ジアルコールの例には、炭素原子数4以上20以下の脂環式炭化水素骨格を有するジアルコール、例えば1,3−シクロペンタンジオール、1,3−シクロペンタンジメタノール、1,4−シクロヘキサンジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、1,4−シクロヘプタンジオールおよび1,4−シクロヘプタンジメタノールが含まれる。中でも、ポリエステル樹脂組成物の耐熱性がより高まり、吸水性がより低減され、かつ入手が容易であるなどの観点からは、シクロヘキサン骨格を有する化合物が好ましく、1,4−シクロヘキサンジメタノールがより好ましい。
脂環族ジアルコールには、シス/トランス構造等の異性体が存在するが、ポリエステル樹脂組成物の耐熱性をより高める観点からは、ポリエステル樹脂(A)は、トランス構造の脂環族ジアルコールに由来する成分単位をより多く含むことが好ましい。したがって、脂環族ジアルコールに由来する成分単位のシス/トランス比は、好ましくは50/50〜0/100であり、さらに好ましくは40/60〜0/100である。
脂肪族ジアルコールに由来する成分単位(a2−2)は、ポリエステル樹脂組成物の溶融流動性をより高める。脂肪族ジアルコールの例には、エチレングリコール、トリメチレングリコール、プロピレングリコール、テトラメチレングリコール、ネオペンチルグリコール、ヘキサメチレングリコールおよびドデカメチレングリコールが含まれる。
ジアルコールに由来する成分単位(a2)は、脂環族ジアルコールに由来する成分単位(a2−1)と脂肪族ジアルコールに由来する成分単位(a2−2)のうち、いずれか一方のみを含んでもよいし、両方を含んでもよい。ジアルコールに由来する成分単位(a2)は、脂環族ジアルコールに由来する成分単位(好ましくはシクロヘキサン骨格を有するジアルコールに由来する成分単位、より好ましくは1,4−シクロヘキサンジメタノールに由来する成分単位)を30モル%以上100モル%以下と、脂肪族ジアルコールに由来する成分単位を0モル%以上70モル%以下とを含むことが好ましい。ジアルコールに由来する成分単位(a2)に含まれる脂環族ジアルコールに由来する成分単位(好ましくはシクロヘキサン骨格を有するジアルコールに由来する成分単位、より好ましくは1,4−シクロヘキサンジメタノールに由来する成分単位)の割合は、より好ましくは50モル%以上100モル%以下であり、さらに好ましくは60モル%以上100モル%以下である。ジアルコールに由来する成分単位(a2)に含まれる脂肪族ジアルコールに由来する成分単位の割合は、より好ましくは0モル%以上50モル%以下であり、さらに好ましくは0モル%以上40モル%以下である。ただし、ジアルコールに由来する成分単位(a2)の合計量を100モル%とする。
ジアルコールに由来する成分単位(a2)は、上記成分単位とともに、少量の、芳香族ジオールに由来する成分単位をさらに含んでもよい。芳香族ジアルコールの例には、ビスフェノール、ハイドロキノンおよび2,2−ビス(4−β−ヒドロキシエトキシフェニル)プロパンが含まれる。ジアルコールに由来する成分単位(a2)に含まれる芳香族ジアルコールに由来する成分単位の割合は、例えば10モル%以下としうる。
ポリエステル樹脂(A)の、示差走査熱量計(DSC)で測定される融点(Tm)もしくはガラス転移温度(Tg)は、それぞれ250℃以上であり、好ましくは270℃であり、より好ましくは280℃である。融点やガラス転移温度が250℃以上であると、例えばリフローはんだ工程などで高温に晒されても、ポリエステル樹脂組成物の成形物の熱による変色や変形などを抑制しうる。ポリエステル樹脂(A)の融点(Tm)もしくはガラス転移温度(Tg)は、好ましくは350℃以下であり、より好ましくは335℃以下である。融点もしくはガラス転移温度が350℃以下であると、溶融成形の際に、ポリエステル樹脂(A)の分解を抑制しやすい。
ポリエステル樹脂(A)の融点は、示差走査熱量計(DSC)により、JIS-K7121に準拠して測定されうる。具体的には、測定装置としてX−DSC7000(SII社製)を準備する。この装置に、ポリエステル樹脂(A)の試料を封入したDSC測定用パンをセットし、窒素雰囲気下で昇温速度10℃/分で320℃まで昇温し、その温度で5分間保持した後、10℃/分の降温測定で30℃まで降温する。そして、昇温時の吸熱ピークのピークトップの温度を「融点」とする。
ポリエステル樹脂(A)の極限粘度[η]は、0.3dl/g以上1.2dl/g以下であることが好ましい。極限粘度が上記範囲にある場合、ポリエステル樹脂組成物の成形時の流動性がよく、機械的強度にも優れる。ポリエステル樹脂(A)の極限粘度は、例えば重縮合反応の進行度合い(重合温度、重合時間)や分子量調整剤(単官能のカルボン酸や単官能のアルコールなど)の添加などにより調整することができる。
ポリエステル樹脂(A)の極限粘度[η]は、以下の手順で測定することができる。
ポリエステル樹脂(A)をフェノールとテトラクロロエタンの50/50質量%の混合溶媒に溶解させて試料溶液とする。得られた試料溶液の流下秒数を、ウベローデ粘度計を用いて25℃±0.05℃の条件下で測定し、下記式に当てはめて極限粘度[η]を算出する。
[η]=ηSP/[C(1+kηSP)]
ポリエステル樹脂(A)をフェノールとテトラクロロエタンの50/50質量%の混合溶媒に溶解させて試料溶液とする。得られた試料溶液の流下秒数を、ウベローデ粘度計を用いて25℃±0.05℃の条件下で測定し、下記式に当てはめて極限粘度[η]を算出する。
[η]=ηSP/[C(1+kηSP)]
上記式において、各代数または変数は、以下を表す。
[η]:極限粘度(dl/g)
ηSP:比粘度
C:試料濃度(g/dl)
k:定数(溶液濃度の異なるサンプル(3点以上)の比粘度を測定し、横軸に溶液濃度、縦軸にηsp/Cをプロットして求めた傾き)
[η]:極限粘度(dl/g)
ηSP:比粘度
C:試料濃度(g/dl)
k:定数(溶液濃度の異なるサンプル(3点以上)の比粘度を測定し、横軸に溶液濃度、縦軸にηsp/Cをプロットして求めた傾き)
ηSPは、以下の式によって求められる。
ηSP=(t−t0)/t0
ηSP=(t−t0)/t0
上記式において、各変数は、以下を表す。
t:試料溶液の流下秒数(秒)
t0:溶媒の流下秒数(秒)
t:試料溶液の流下秒数(秒)
t0:溶媒の流下秒数(秒)
ポリエステル樹脂(A)は、公知の方法、例えばテトラブチルチタネートなどの重金属含有触媒の存在下で、ジカルボン酸成分とジアルコール成分を反応させて製造することができる。ジカルボン酸成分とジアルコール成分との反応は、分子量調整剤の存在下で行ってもよい。それにより、ポリエステル樹脂(A)の極限粘度[η]を上記範囲に調整してもよい。
分子量調整剤の例には、モノカルボン酸およびモノアルコールが含まれる。モノカルボン酸の例には、炭素原子数2〜30の脂肪族モノカルボン酸、芳香族モノカルボン酸および脂環族モノカルボン酸が含まれる。なお、芳香族モノカルボン酸および脂環族モノカルボン酸は、環状構造部分に置換基を有していてもよい。脂肪族モノカルボン酸の例には、酢酸、プロピオン酸、酪酸、吉草酸、カプロン酸、カプリル酸、ラウリン酸、トリデシル酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、オレイン酸およびリノ−ル酸が含まれる。芳香族モノカルボン酸の例には、安息香酸、トルイル酸、ナフタレンカルボン酸、メチルナフタレンカルボン酸およびフェニル酢酸が含まれる。脂環族モノカルボン酸の例には、シクロヘキサンカルボン酸が含まれる。
分子量調整剤の添加量は、ジカルボン酸成分とジアルコール成分とを反応させる際の、ジカルボン酸成分の合計量1モルに対して0モル以上0.07モル以下、好ましくは0モル以上0.05モル以下としうる。
本発明のポリエステル樹脂組成物におけるポリエステル樹脂(A)の含有量は、ポリエステル樹脂(A)、白色顔料(B)、金属不活性化剤(C)および無機充填材(D)の合計を100質量部としたとき、30質量部以上80質量部以下であることが好ましい。ポリエステル樹脂(A)の含有量が30質量部以上であると、成形性を損なうことなく、リフローはんだ工程などに耐えうる耐熱性に優れた反射材用ポリエステル樹脂組成物が得られやすい。ポリエステル樹脂(A)の含有量は、ポリエステル樹脂(A)、白色顔料(B)、金属不活性化剤(C)および無機充填材(D)の合計を100質量部としたとき、40質量部以上70質量部以下であることがより好ましく、50質量部以上60質量部以下であることがさらに好ましい。
1−2.白色顔料(B)
本発明の反射材用ポリエステル樹脂組成物に含まれる白色顔料(B)は、ポリエステル樹脂組成物を白色化し、光反射機能を向上できるものであればよい。ただし、白色顔料(B)は、金属不活性化剤(C)と異なる化合物である。白色顔料(B)の例には、酸化チタン、酸化亜鉛、硫化亜鉛、鉛白、硫酸亜鉛、硫酸バリウム、炭酸カルシウム、酸化アルミナ、酸化ジルコニウム、シリカなどが含まれる。これらの白色顔料(B)は、一種を単独で用いてもよいし、二種以上を併用してもよい。中でも、白色顔料(B)は、成形物の反射率を高める観点では、屈折率が2.0以上4.0以下であるものが好ましく、成形物の反射率や隠蔽性をさらに高めやすい観点では、酸化チタンがより好ましい。
本発明の反射材用ポリエステル樹脂組成物に含まれる白色顔料(B)は、ポリエステル樹脂組成物を白色化し、光反射機能を向上できるものであればよい。ただし、白色顔料(B)は、金属不活性化剤(C)と異なる化合物である。白色顔料(B)の例には、酸化チタン、酸化亜鉛、硫化亜鉛、鉛白、硫酸亜鉛、硫酸バリウム、炭酸カルシウム、酸化アルミナ、酸化ジルコニウム、シリカなどが含まれる。これらの白色顔料(B)は、一種を単独で用いてもよいし、二種以上を併用してもよい。中でも、白色顔料(B)は、成形物の反射率を高める観点では、屈折率が2.0以上4.0以下であるものが好ましく、成形物の反射率や隠蔽性をさらに高めやすい観点では、酸化チタンがより好ましい。
酸化チタンは、ルチル型が好ましい。
白色顔料(B)は、シランカップリング剤またはチタンカップリング剤などで処理されていてもよい。例えば、白色顔料(B)は、ビニルトリエトキシシラン、2−アミノプロピルトリエトキシシラン、および2−グリシドキシプロピルトリエトキシシランを含むシラン系化合物で表面処理されていてもよい。
ポリエステル樹脂組成物の反射率をより均一化させる観点からは、白色顔料(B)は、アスペクト比の小さい、すなわち、球状に近いものが好ましい。
白色顔料(B)の平均粒径は、0.1μm以上0.5μm以下であることが好ましく、0.15μm以上0.3μm以下であることがより好ましい。白色顔料(B)の平均粒径は、透過型電子顕微鏡写真をもとに、画像回折装置(ルーゼックスIIIU)を用いて一次粒子の各粒径区間における粒子量(%)をプロットして分布曲線を求め、得られた分布曲線から体積基準の累積分布曲線を求め、この累積分布曲線における累積度50%のときの値とすることができる。
本発明のポリエステル樹脂組成物における白色顔料(B)の含有量は、ポリエステル樹脂(A)、白色顔料(B)、金属不活性化剤(C)および無機充填材(D)の合計を100質量部としたとき、5質量部以上50質量部以下であることが好ましい。白色顔料(B)の含有量が5質量部以上であると、ポリエステル樹脂組成物の白色度がより高まりやすく、反射率がより高まりやすい。白色顔料(B)の含有量が50質量部以下であると、成形時の流動性や成形性が損なわれにくい。白色顔料(B)の含有量は、ポリエステル樹脂(A)、白色顔料(B)、金属不活性化剤(C)および無機充填材(D)の合計を100質量部としたとき、10質量部以上50質量部以下であることがより好ましく、20質量部以上40質量部以下であることがさらに好ましい。
1−3.金属不活性化剤(C)
金属不活性化剤(C)は、重金属イオンと錯体を形成することにより、重金属イオンを不活性化して、重金属イオンの触媒作用を阻止する化合物であり、いわゆるキレート剤である。すなわち、金属不活性化剤(C)は、ポリエステル樹脂(A)中に(重合触媒として)残存する重金属イオンと錯体を形成することにより、当該重金属イオンを不活性化する。それにより、ポリエステル樹脂組成物の成形時において、ポリエステル樹脂(A)中に残存する重金属イオンを触媒とする、ポリエステル樹脂(A)の熱劣化反応を抑制しやすいため、得られる成形物の機械的強度(靱性やたわみ量)を高めやすく、耐候性も高めやすいと考えられる。
金属不活性化剤(C)は、重金属イオンと錯体を形成することにより、重金属イオンを不活性化して、重金属イオンの触媒作用を阻止する化合物であり、いわゆるキレート剤である。すなわち、金属不活性化剤(C)は、ポリエステル樹脂(A)中に(重合触媒として)残存する重金属イオンと錯体を形成することにより、当該重金属イオンを不活性化する。それにより、ポリエステル樹脂組成物の成形時において、ポリエステル樹脂(A)中に残存する重金属イオンを触媒とする、ポリエステル樹脂(A)の熱劣化反応を抑制しやすいため、得られる成形物の機械的強度(靱性やたわみ量)を高めやすく、耐候性も高めやすいと考えられる。
金属不活性化剤(C)の融点は、80℃以上300℃以下であることが好ましい。金属不活性化剤(C)の融点が上記範囲内であると、ポリエステル樹脂(A)と良好に相溶しやすい。それにより、上記温度範囲の近傍でポリエステル樹脂組成物を溶融混錬することで、ポリエステル樹脂(A)中に金属不活性化剤(C)を均一に分散させやすく、得られる成形物の機械的強度(靱性)および耐候性を高めやすい。また、成形物の変色を均一に抑制しやすく、反射率の低下も抑制しやすい。金属不活性化剤(C)の融点は、80℃以上280℃以下であることがより好ましい。金属不活性化剤(C)の融点は、ポリエステル樹脂(A)の融点(Tm)よりも低いことが好ましく、例えば(Tm−150)℃以上(Tm−50)℃以下としうる。
金属不活性化剤(C)の融点は、前述と同様に、示差走査熱量計(DSC)を用いてJIS-K7121に準拠して測定することができる。具体的には、昇温速度20℃/分で350℃まで昇温し、その温度で5分間保持した後、10℃/分の降温測定で30℃まで降温したときの、昇温時の吸熱ピークのピークトップの温度を「融点」とする以外は前述と同様にして測定することができる。
金属不活性化剤(C)は、融点が上記範囲内であれば特に制限されず、ヒドラジド系化合物、トリアゾール系化合物、トリアジン系化合物、アミノカルボキシレート系化合物、またはホスファイト系化合物などでありうる。
ヒドラジド系化合物は、ヒドラジン系化合物とオキソ酸の反応物であり、例えば−CO−NH−NH−CO−に代表される構造を有する。ヒドラジド系化合物の例には、イソフタル酸ビス(2−フェノキシプロピオニルヒドラジド)(融点204℃)、N,N’−ビス(3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオニル)ヒドラジン(融点224〜229℃)、1,2−ビス[3−(4−ヒドロキシ−3,5−ジ−tert−ブチルフェニル)プロピオニル]ヒドラジン(融点225〜227℃)などが含まれる。
トリアゾール系化合物の例には、1,2,3−ベンゾトリアゾール(融点97〜99℃)、1,2,4-トリアゾール(融点120〜121℃)などが含まれる。
トリアジン系化合物の例には、1,3,5-トリアジン(融点81〜83℃)、N,N’−(6−フェニル−1,3,5−トリアジン−2,4−ジイル)ジプロピオンアミド(融点224℃)、N,N’,N’’−(1,3,5−トリアジン−2,4,6−トリイル)トリプロピオンアミド(融点235℃)などが含まれる。
アミノカルボキシレート系化合物は、アミンとカルボン酸の反応物であり、例えばシュウ酸アミド(−NH−CO−CO−NH−)に代表される構造を有する。アミノカルボキシレート系化合物の例には、2,2′−オキサミドビス[エチル3−(3,5−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート](N,N’−ビス(2−(2−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)エチルカルボニルオキシ)エチル)オキサミド、融点170〜180℃)、シュウ酸アニリド(融点253〜256℃)、N−(2−エチルフェニル)−N’−(2−エトキシフェニル)シュウ酸ジアミド(融点123〜127℃)などが含まれる。
ホスファイト系化合物の例には、トリス(2−tert−ブチル−5−メチル−4−チオ−5’−tert−ブチル−4’−ヒドロキシ−2−メチルフェニル)フェニルホスファイト)(融点155±9℃)、トリス[2−tert−ブチル−4−チオ(2′−メチル−4′−ヒドロキシ−5′−tert−ブチル)フェニル−5−メチル]−フェニルホスファイト(融点106〜124℃)などの硫黄含有ホスファイト化合物が含まれる。
金属不活性化剤(C)の市販品の例には、ADEKA社製アデカスタブCDA−10、BASF社製イルガノックスMD1024(以上、ヒドラジド系化合物)、白石カルシウム社製NAUGARD XL−1(アミノカルボキシレート系化合物)、クラリアント社製Hostanox OSP1(ホスファイト系化合物)などが含まれる。
中でも、重金属イオンと錯体を形成しやすい観点から、−CO−NH−で表される基を1つ以上有する化合物、すなわち、ヒドラジド系化合物およびアミノカルボキシレート系化合物が好ましく、ヒドラジド系化合物がより好ましい。また、酸化防止機能を発現しうる観点から、これらのヒドラジド系化合物およびアミノカルボキシレート系化合物(好ましくはヒドラジド系化合物)は、ヒンダードフェノール構造をさらに有することが好ましい。なお、金属不活性化剤(C)は、一種類であってもよいし、二種類以上を組み合わせてもよい。
本発明の反射材用ポリエステル樹脂組成物における金属不活性化剤(C)の含有量は、ポリエステル樹脂(A)、白色顔料(B)、金属不活性化剤(C)および無機充填材(D)の合計を100質量部としたとき、0.1質量部以上2.0質量部以下であることが好ましい。金属不活性化剤(C)の含有量が0.1質量部以上であると、成形時のポリエステル樹脂(A)の熱劣化を十分に抑制しやすいことから、得られる成形物の機械的強度や耐候性、耐熱性を十分に高めやすく、2.0質量部以下であると、得られる成形物の色相を低下させにくくしうる。金属不活性化剤(C)の含有量は、ポリエステル樹脂(A)、白色顔料(B)、金属不活性化剤(C)および無機充填材(D)の合計を100質量部としたとき、0.3質量部以上1.0質量部以下であることがより好ましい。
金属不活性化剤(C)の含有量は、ポリエステル樹脂(A)を100質量部としたとき、0.1質量部以上5.0質量部以下であることが好ましく、0.2質量部以上3.0質量部以下であることがより好ましい。
1−4.無機充填材(D)
無機充填材(D)は、球状、繊維状または板状の形状を有する、無機化合物の充填材である。ポリエステル樹脂組成物の強度および靱性をより高める観点からは、無機充填材(D)の形状は、繊維状であることが好ましい。
無機充填材(D)は、球状、繊維状または板状の形状を有する、無機化合物の充填材である。ポリエステル樹脂組成物の強度および靱性をより高める観点からは、無機充填材(D)の形状は、繊維状であることが好ましい。
繊維状の無機充填材(D)の例には、ガラス繊維、ワラストナイト、チタン酸カリウムウィスカー、炭酸カルシウムウィスカー、ホウ酸アルミニウムウィスカー、硫酸マグネシウムウィスカー、セピオライト、ゾノトライト、酸化亜鉛ウィスカー、ミルドファイバーおよびカットファイバーなどが含まれる。これらのうちの一種を単独で用いても、二種以上を併用してもよい。中でも、平均繊維径が比較的小さく、成形物(反射材)の表面平滑性を高めやすいことなどから、ワラストナイト、ガラス繊維、チタン酸カリウムウィスカーが好ましく、ワラストナイトまたはガラス繊維がより好ましい。ポリエステル樹脂組成物の光遮蔽効果をより高める観点からは、ワラストナイトが好ましく、ポリエステル樹脂組成物の機械的強度をより高める観点からは、ガラス繊維が好ましい。
繊維状の無機充填材(D)の平均繊維長(l)は、通常、5mm以下であり、繊維状の無機充填材(D)を折れにくくし、かつ樹脂中に微分散させやすくする観点では、4mm以下であることが好ましい。繊維状の無機充填材(D)の平均繊維長(l)は、ポリエステル樹脂組成物の強度をより高める観点では、2μm以上であることが好ましく、8μm以上であることがより好ましい。
繊維状の無機充填材(D)のアスペクト比(平均繊維長(l)/平均繊維径(d))は、5以上2000以下であることが好ましく、30以上600以下であることがより好ましい。アスペクト比が大きいほど、ポリエステル樹脂組成物の強度や剛性がより高まる。
ポリエステル樹脂組成物中の繊維状の無機充填材(D)の平均繊維長(l)と平均繊維径(d)は、以下の方法で測定することができる。
1)ポリエステル樹脂組成物をヘキサフルオロイソプロパノール/クロロホルム溶液(0.1/0.9体積%)に溶解させた後、濾過して得られる濾過物を採取する。
2)得られた濾過物のうち任意の100本の繊維状の無機充填材(D)を走査型電子顕微鏡(SEM)(倍率:50倍)で観察し、それぞれの繊維長および繊維径を計測する。そして、繊維長の平均値を平均繊維長(l)とし、繊維径の平均値を平均繊維径(d)としうる。
1)ポリエステル樹脂組成物をヘキサフルオロイソプロパノール/クロロホルム溶液(0.1/0.9体積%)に溶解させた後、濾過して得られる濾過物を採取する。
2)得られた濾過物のうち任意の100本の繊維状の無機充填材(D)を走査型電子顕微鏡(SEM)(倍率:50倍)で観察し、それぞれの繊維長および繊維径を計測する。そして、繊維長の平均値を平均繊維長(l)とし、繊維径の平均値を平均繊維径(d)としうる。
本発明の反射材用ポリエステル樹脂組成物における無機充填材(D)の含有量は、ポリエステル樹脂(A)、白色顔料(B)、金属不活性化剤(C)および無機充填材(D)の合計を100質量部としたとき、1質量部以上50質量部以下であることが好ましい。無機充填材(D)の含有量が1質量部以上であると、ポリエステル樹脂組成物の耐熱性や強度を高めやすく、50質量部以下であると、ポリエステル樹脂組成物の成形時の流動性や成形性が損なわれにくい。無機充填材(D)の含有量は、ポリエステル樹脂(A)、白色顔料(B)、金属不活性化剤(C)および無機充填材(D)の合計を100質量部としたとき、5質量部以上40質量部以下であることがより好ましく、7質量部以上25質量部以下であることがさらに好ましい。
1−5.その他の成分(E)
本発明の反射材用ポリエステル樹脂組成物は、本発明の効果を損なわない範囲で、用途に応じて、前述の(A)〜(D)成分以外の他の成分、例えば、酸化防止剤(フェノール類、アミン類、イオウ類、有機リン類など)、光安定剤(ベンゾトリアゾール類、トリアジン類、ベンゾフェノン類、ヒンダードアミン類、オギザニリド類など)、耐熱安定剤(ラクトン化合物、ビタミンE類、ハイドロキノン類、ハロゲン化銅、ヨウ素化合物など)、他の重合体(ポリオレフィン類、エチレン・プロピレン共重合体、エチレン・1−ブテン共重合体などのオレフィン共重合体、プロピレン・1−ブテン共重合体などのオレフィン共重合体、ポリスチレン、ポリアミド、ポリカーボネート、ポリアセタール、ポリスルフォン、ポリフェニレンオキシド、フッ素樹脂、シリコーン樹脂、LCPなど)、難燃剤(臭素系、塩素系、リン系、アンチモン系、無機系など)蛍光増白剤、可塑剤、増粘剤、帯電防止剤、離型剤、顔料、結晶核剤、滑剤などの添加剤をさらに含んでもよい。
本発明の反射材用ポリエステル樹脂組成物は、本発明の効果を損なわない範囲で、用途に応じて、前述の(A)〜(D)成分以外の他の成分、例えば、酸化防止剤(フェノール類、アミン類、イオウ類、有機リン類など)、光安定剤(ベンゾトリアゾール類、トリアジン類、ベンゾフェノン類、ヒンダードアミン類、オギザニリド類など)、耐熱安定剤(ラクトン化合物、ビタミンE類、ハイドロキノン類、ハロゲン化銅、ヨウ素化合物など)、他の重合体(ポリオレフィン類、エチレン・プロピレン共重合体、エチレン・1−ブテン共重合体などのオレフィン共重合体、プロピレン・1−ブテン共重合体などのオレフィン共重合体、ポリスチレン、ポリアミド、ポリカーボネート、ポリアセタール、ポリスルフォン、ポリフェニレンオキシド、フッ素樹脂、シリコーン樹脂、LCPなど)、難燃剤(臭素系、塩素系、リン系、アンチモン系、無機系など)蛍光増白剤、可塑剤、増粘剤、帯電防止剤、離型剤、顔料、結晶核剤、滑剤などの添加剤をさらに含んでもよい。
1−5−1.酸化防止剤
中でも、本発明の反射材用ポリエステル樹脂組成物は、酸化防止剤を含むことが好ましい。酸化防止剤の例には、フェノール類(ヒンダードフェノール類を含む)が含まれる。ただし、酸化防止剤は、ヒドラジド構造(−CO−NH−NH−CO−)またはシュウ酸アミド構造(−NH−CO−CO−NH−)を有しないものとする。フェノール類は、フェノール骨格またはヒンダードフェノール骨格を有する化合物である。フェノール類の例には、2,6−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシトルエン(BHT)、ペンタエリスリトールテトラキス[3−(3,5−ジーtert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、オクタドデシルー3−(3,5−ジーtert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート、トリス(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)イソシアヌレートなどが含まれる。市販品の例には、IRGANOX1010、同1076、同1726(以上、BASFジャパン社製)などが含まれる。
中でも、本発明の反射材用ポリエステル樹脂組成物は、酸化防止剤を含むことが好ましい。酸化防止剤の例には、フェノール類(ヒンダードフェノール類を含む)が含まれる。ただし、酸化防止剤は、ヒドラジド構造(−CO−NH−NH−CO−)またはシュウ酸アミド構造(−NH−CO−CO−NH−)を有しないものとする。フェノール類は、フェノール骨格またはヒンダードフェノール骨格を有する化合物である。フェノール類の例には、2,6−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシトルエン(BHT)、ペンタエリスリトールテトラキス[3−(3,5−ジーtert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、オクタドデシルー3−(3,5−ジーtert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート、トリス(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)イソシアヌレートなどが含まれる。市販品の例には、IRGANOX1010、同1076、同1726(以上、BASFジャパン社製)などが含まれる。
酸化防止剤の含有量は、ポリエステル樹脂(A)、白色顔料(B)、金属不活性化剤(C)および無機充填材(D)の合計を100質量部としたとき、2.5質量部以下であることが好ましく、1質量部以下であることがより好ましい。
1−5−2.滑剤
中でも、本発明の反射材用ポリエステル樹脂組成物は、滑剤を含むことが好ましい。滑剤の例には、変性ポリオレフィンワックスが含まれる。変性ポリオレフィンワックスは、ポリオレフィン(例えばエチレン(共)重合体やプロピレン(共)重合体など)の、不飽和カルボン酸(例えば無水マレイン酸)やスチレン類(例えばスチレン)による変性物、又は空気酸化による酸化変性物でありうる。本発明の反射材用樹脂組成物が変性ポリオレフィンワックスをさらに含むことで、成形時の流動性が高められやすく、金型からの離型性も向上しうる。滑剤の例には、ハイワックス800P、1120H(三井化学社製)などが含まれる。
中でも、本発明の反射材用ポリエステル樹脂組成物は、滑剤を含むことが好ましい。滑剤の例には、変性ポリオレフィンワックスが含まれる。変性ポリオレフィンワックスは、ポリオレフィン(例えばエチレン(共)重合体やプロピレン(共)重合体など)の、不飽和カルボン酸(例えば無水マレイン酸)やスチレン類(例えばスチレン)による変性物、又は空気酸化による酸化変性物でありうる。本発明の反射材用樹脂組成物が変性ポリオレフィンワックスをさらに含むことで、成形時の流動性が高められやすく、金型からの離型性も向上しうる。滑剤の例には、ハイワックス800P、1120H(三井化学社製)などが含まれる。
変性ポリオレフィンワックスの含有量は、ポリエステル樹脂(A)、白色顔料(B)、金属不活性化剤(C)、無機充填材(D)の合計100質量部としたとき、0.1質量部以上5質量部以下であることが好ましく、0.1質量部以上3質量部以下であることがより好ましい。変性ポリオレフィンワックスの含有量が上記範囲内であると、ポリエステル樹脂組成物の成形時の流動性を十分に高めやすい。
1−5−3.結晶核剤
中でも、本発明の反射材用ポリエステル樹脂組成物は、結晶核剤を含むことが好ましい。結晶核剤の例には、リン酸2,2−メチレンビス(4,6ジt−ブチルフェニル)ナトリウム、トリス(p−t−ブチル安息香酸)アルミニウム、ステアリン酸塩等の金属塩系化合物;ビス(p−メチルベンジリデン)ソルビトール、ビス(4−エチルベンジリデン)ソルビトール等のソルビトール系化合物;タルク、炭酸カルシウム、ハイドロタルサイト等の無機物等が含まれる。中でも、成形物の結晶化度を高めやすい点から、タルクが好ましい。これらの結晶核剤は、一種類を単独で用いてもよいし、二種類以上を組み合わせて用いてもよい。
中でも、本発明の反射材用ポリエステル樹脂組成物は、結晶核剤を含むことが好ましい。結晶核剤の例には、リン酸2,2−メチレンビス(4,6ジt−ブチルフェニル)ナトリウム、トリス(p−t−ブチル安息香酸)アルミニウム、ステアリン酸塩等の金属塩系化合物;ビス(p−メチルベンジリデン)ソルビトール、ビス(4−エチルベンジリデン)ソルビトール等のソルビトール系化合物;タルク、炭酸カルシウム、ハイドロタルサイト等の無機物等が含まれる。中でも、成形物の結晶化度を高めやすい点から、タルクが好ましい。これらの結晶核剤は、一種類を単独で用いてもよいし、二種類以上を組み合わせて用いてもよい。
本発明の反射材用ポリエステル樹脂組成物における結晶核剤の含有量は、ポリエステル樹脂(A)、白色顔料(B)、金属不活性化剤(C)および無機充填材(D)の合計を100質量部としたとき、0.1質量部以上5質量部以下であることが好ましく、0.1質量部以上3質量部以下であることがより好ましい。結晶核剤の含有量が上記範囲内であると、成形物の結晶化度を十分に高めやすく、十分な機械的強度が得られやすい。
1−6.物性
本発明の反射材用ポリエステル樹脂組成物の、波長450nmの光の反射率は、90%以上であることが好ましく、94%以上であることがより好ましい。反射率は、本発明の反射材用ポリエステル樹脂組成物を成形して得られる成形物を試験片とし、当該試験片の反射率を、コニカミノルタ社製CM3500dを用いて測定することができる。試料片の厚みは、0.5mmとしうる。
本発明の反射材用ポリエステル樹脂組成物の、波長450nmの光の反射率は、90%以上であることが好ましく、94%以上であることがより好ましい。反射率は、本発明の反射材用ポリエステル樹脂組成物を成形して得られる成形物を試験片とし、当該試験片の反射率を、コニカミノルタ社製CM3500dを用いて測定することができる。試料片の厚みは、0.5mmとしうる。
2.反射材用ポリエステル樹脂組成物の製造方法
本発明のポリエステル樹脂組成物は、少なくとも前述の(A)成分、(B)成分、(C)成分および(D)成分を、公知の方法、例えばヘンシェルミキサー、Vブレンダー、リボンブレンダー、またはタンブラーブレンダーで混合する方法、あるいは上記混合の後、さらに一軸押出機、多軸押出機、ニーダーまたはバンバリーミキサーで溶融混練し、上記溶融混練の後に造粒または粉砕する方法により製造することができる。
本発明のポリエステル樹脂組成物は、少なくとも前述の(A)成分、(B)成分、(C)成分および(D)成分を、公知の方法、例えばヘンシェルミキサー、Vブレンダー、リボンブレンダー、またはタンブラーブレンダーで混合する方法、あるいは上記混合の後、さらに一軸押出機、多軸押出機、ニーダーまたはバンバリーミキサーで溶融混練し、上記溶融混練の後に造粒または粉砕する方法により製造することができる。
本発明の反射材用ポリエステル樹脂組成物は、上記各成分を一軸押出機や多軸押出機等で混合後、溶融混練し、造粒あるいは粉砕して得られるペレットなどのコンパウンドであることが好ましい。コンパウンドは、成形用材料として好ましく用いられる。溶融混練は、ポリエステル樹脂(A)の融点より5℃以上30℃以下高い温度で行うことが好ましい。溶融混練温度の下限値は、好ましくは255℃、より好ましくは275℃、さらに好ましくは295℃である。溶融混練温度の上限値は、好ましくは360℃、より好ましくは340℃である。
3.反射材
本発明の反射材は、本発明の反射材用ポリエステル樹脂組成物を成形して得られる成形物である。
本発明の反射材は、本発明の反射材用ポリエステル樹脂組成物を成形して得られる成形物である。
上記成形は、公知の成形方法で行うことができる。公知の成形方法の例には、射出成形、フープ成形を含むインサート成形、溶融成形、押出し成形、インフレーション成形、およびブロー成形などが含まれる。
本発明の反射材は、少なくとも光を反射させる面を有する成形物であり、用途に応じて任意の形状を有しうる。例えば、本発明の反射材は、少なくとも光を反射させる面を有するケーシングやハウジングなどでありうる。光を反射させる面は、平面であってもよいし、曲面(球面を含む)であってもよい。具体的には、光を反射させる面は、箱状、漏斗状、お椀形状、パラボラ形状、円柱状、円錐状、ハニカム状などの形状を有しうる。
本発明の反射材は、有機ELや発光ダイオード(LED)などの各種光源の反射材として用いられる。中でも、発光ダイオード(LED)の反射材として用いられることが好ましく、表面実装に対応した発光ダイオード(LED)の反射材として用いられることがより好ましい。
発光ダイオード(LED)の反射材として本発明の反射材を有するLEDパッケージは、基板と、当該基板上に設けられた、LEDを搭載するための空間を有するハウジング部と、当該空間に搭載されたLEDと、LEDを封止する封止部材とを有しうる。そして、LEDを搭載するための空間を有するハウジング部を、本発明の反射材としうる。このようなLEDパッケージは、1)基板上に反射板を成形してハウジング部を得る工程と;2)ハウジング部内にLEDを配置し、LEDと基板とを電気的に接続する工程と;3)LEDを封止剤で封止する工程とを経て製造されうる。封止工程では、封止剤を、100〜200℃の温度で加熱して、熱硬化させる。さらに、LEDパッケージをプリント基板に実装する際のリフローはんだ工程では、LEDパッケージが、250℃以上もの高温に曝される。
本発明の反射材用ポリエステル樹脂組成物は、成形時のポリエステル樹脂(A)の熱劣化が抑制されている。それにより、得られる反射材は、高い機械的強度(靱性)を有し、かつ高温高湿下で光照射したときの短時間でのクラック発生を抑制(クラック発生を遅延または抑制)することができる。また、上記封止工程やリフローはんだ工程で高温の熱に曝されたり、使用環境下でLEDから発生する熱や光を長時間受けたりしても、変色が少なく、反射率の低下が少ない。そのため、長期間に亘って高い反射率を維持することができる。
このようなLEDパッケージは、例えば電気電子部品、室内照明、屋外照明、自動車照明などに用いることができる。
以下において、実施例を参照して本発明を説明する。実施例によって、本発明の範囲は限定して解釈されない。
1.材料の調製
<ポリエステル樹脂(A)>
(ポリエステル樹脂(A−1)の合成)
ジメチルテレフタレートl06.2質量部と、1,4−シクロヘキサンジメタノール(シス/トランス比:30/70)(東京化成工業社製)94.6質量部とを混合した。当該混合物に、テトラブチルチタネート0.0037質量部を加え、150℃から300℃まで3時間30分かけて昇温し、エステル交換反応をさせた。
エステル交換反応終了時に、1,4−シクロヘキサンジメタノールに溶解した酢酸マグネシウム・四水塩0.066質量部を加え、引き続きテトラブチルチタネート0.1027質量部を導入して重縮合反応を行った。重縮合反応は常圧から1Torrまで85分かけて徐々に減圧し、同時に所定の重合温度300℃まで昇温した。温度と圧力を保持したまま撹拌を続け、所定の撹拌トルクに到達した時点で反応を終了させた。その後、得られた重合体を取り出し、260℃、1Torr以下で3時間固相重合させてポリエステル樹脂(A−1)を得た。
<ポリエステル樹脂(A)>
(ポリエステル樹脂(A−1)の合成)
ジメチルテレフタレートl06.2質量部と、1,4−シクロヘキサンジメタノール(シス/トランス比:30/70)(東京化成工業社製)94.6質量部とを混合した。当該混合物に、テトラブチルチタネート0.0037質量部を加え、150℃から300℃まで3時間30分かけて昇温し、エステル交換反応をさせた。
エステル交換反応終了時に、1,4−シクロヘキサンジメタノールに溶解した酢酸マグネシウム・四水塩0.066質量部を加え、引き続きテトラブチルチタネート0.1027質量部を導入して重縮合反応を行った。重縮合反応は常圧から1Torrまで85分かけて徐々に減圧し、同時に所定の重合温度300℃まで昇温した。温度と圧力を保持したまま撹拌を続け、所定の撹拌トルクに到達した時点で反応を終了させた。その後、得られた重合体を取り出し、260℃、1Torr以下で3時間固相重合させてポリエステル樹脂(A−1)を得た。
得られたポリエステル樹脂(A−1)の極限粘度[η]は0.6dl/gであり、融点は290℃であった。極限粘度[η]と融点は、以下の方法で測定した。
(極限粘度)
得られたポリエステル樹脂(A−1)を、フェノールとテトラクロロエタンの50/50質量%の混合溶媒に溶解して試料溶液とした。得られた試料溶液の流下秒数を、ウベローデ粘度計を用いて25℃±0.05℃の条件下で測定し、下記式に当てはめて極限粘度[η]を算出した。
[η]=ηSP/[C(1+kηSP)]
[η]:極限粘度(dl/g)
ηSP:比粘度
C:試料濃度(g/dl)
t:試料溶液の流下秒数(秒)
t0:溶媒の流下秒数(秒)
k:定数(溶液濃度の異なるサンプル(3点以上)の比粘度を測定し、横軸に溶液濃度、縦軸にηsp/Cをプロットして求めた傾き)
ηSP=(t−t0)/t0
得られたポリエステル樹脂(A−1)を、フェノールとテトラクロロエタンの50/50質量%の混合溶媒に溶解して試料溶液とした。得られた試料溶液の流下秒数を、ウベローデ粘度計を用いて25℃±0.05℃の条件下で測定し、下記式に当てはめて極限粘度[η]を算出した。
[η]=ηSP/[C(1+kηSP)]
[η]:極限粘度(dl/g)
ηSP:比粘度
C:試料濃度(g/dl)
t:試料溶液の流下秒数(秒)
t0:溶媒の流下秒数(秒)
k:定数(溶液濃度の異なるサンプル(3点以上)の比粘度を測定し、横軸に溶液濃度、縦軸にηsp/Cをプロットして求めた傾き)
ηSP=(t−t0)/t0
(融点(Tm))
融点(Tm)は、示差走査熱量計(DSC)により、JIS−K7121に準拠して測定した。具体的には、X−DSC7000(SII社製)に、サンプルを封入したDSC測定用パンをセットし、窒素雰囲気下で昇温速度10℃/分で320℃まで昇温し、その温度で5分間保持した後、10℃/分の降温測定で30℃まで降温した。そして、昇温時の吸熱ピークのピークトップの温度を「融点」とした。
融点(Tm)は、示差走査熱量計(DSC)により、JIS−K7121に準拠して測定した。具体的には、X−DSC7000(SII社製)に、サンプルを封入したDSC測定用パンをセットし、窒素雰囲気下で昇温速度10℃/分で320℃まで昇温し、その温度で5分間保持した後、10℃/分の降温測定で30℃まで降温した。そして、昇温時の吸熱ピークのピークトップの温度を「融点」とした。
<白色顔料(B)>
酸化チタン:粉末状、平均粒径0.21μm
酸化チタンの平均粒径は、以下のようにして測定した。
酸化チタン:粉末状、平均粒径0.21μm
酸化チタンの平均粒径は、以下のようにして測定した。
(平均粒径)
まず、透過型電子顕微鏡写真をもとに、画像回折装置(ルーゼックスIIIU)を用いて一次粒子の各粒径区間における粒子量(%)をプロットして分布曲線を求めた。得られた分布曲線から累積分布曲線を求め、この累積分布曲線における累積度50%のときの値を平均粒径とした。
まず、透過型電子顕微鏡写真をもとに、画像回折装置(ルーゼックスIIIU)を用いて一次粒子の各粒径区間における粒子量(%)をプロットして分布曲線を求めた。得られた分布曲線から累積分布曲線を求め、この累積分布曲線における累積度50%のときの値を平均粒径とした。
<金属不活性化剤(C)>
(C−1):ADEKA社製、アデカスタブCDA−10(N,N’−ビス(3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオニル)ヒドラジン、下記式参照)、融点224〜229℃、分子量553
(C−2):白石カルシウム社製NAUGARD XL−1(N,N’−ビス(2−(2−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)エチルカルボニルオキシ)エチル)オキサミド、下記式参照)、融点170〜180℃、分子量697
(C−3):クラリアントケミカルズ社製Hostanox OSP 1(トリス(2−tert−ブチル−5−メチル−4−チオ−5’−tert−ブチル−4’−ヒドロキシ−2−メチルフェニル)フェニルフォスファイト、下記式参照)、融点155±9℃
(C−1):ADEKA社製、アデカスタブCDA−10(N,N’−ビス(3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオニル)ヒドラジン、下記式参照)、融点224〜229℃、分子量553
<比較用の金属不活性化剤>
(c−1):ADEKA社製、アデカスタブCDA−1(2−ヒドロキシ−N−1H−1,2,4−トリアゾール−3−イル−ベンザミド、下記式参照)、融点315〜325℃、分子量204
(c−1):ADEKA社製、アデカスタブCDA−1(2−ヒドロキシ−N−1H−1,2,4−トリアゾール−3−イル−ベンザミド、下記式参照)、融点315〜325℃、分子量204
金属不活性化剤の融点は、測定条件を以下のように変更した以外は前述と同様の方法で測定した。すなわち、昇温速度20℃/分で350℃まで昇温し、その温度で5分間保持した後、10℃/分の降温測定で30℃まで降温したときの、昇温時の吸熱ピークのピークトップの温度を「融点」とした。
<無機充填材(D)>
ガラス繊維:平均繊維長(l)3mm、平均繊維径(R)6.5μm、アスペクト比(l/R)462、(日本電気硝子社製ECS03T−171DE/P9W、シラン化合物処理品)
ガラス繊維の平均繊維長(l)および平均繊維径(R)は、以下のように測定した。
ガラス繊維:平均繊維長(l)3mm、平均繊維径(R)6.5μm、アスペクト比(l/R)462、(日本電気硝子社製ECS03T−171DE/P9W、シラン化合物処理品)
ガラス繊維の平均繊維長(l)および平均繊維径(R)は、以下のように測定した。
(平均繊維長、平均繊維径)
すなわち、無機充填材(D)のうち任意の100本の繊維長と繊維径を、走査型電子顕微鏡(SEM)を用いて50倍でそれぞれ計測した。そして、得られた繊維長の平均値を平均繊維長とし、得られた繊維径の平均値を平均繊維径とした。アスペクト比は、平均繊維長/平均繊維径とした。
すなわち、無機充填材(D)のうち任意の100本の繊維長と繊維径を、走査型電子顕微鏡(SEM)を用いて50倍でそれぞれ計測した。そして、得られた繊維長の平均値を平均繊維長とし、得られた繊維径の平均値を平均繊維径とした。アスペクト比は、平均繊維長/平均繊維径とした。
<その他成分(E)>
Irganox1010(酸化防止剤):テトラキス[3−(3',5'−ジ−t−ブチル−4'−ヒドロキシフェニル)プロピオン酸]ペンタエリトリトール(BASF社製)
PEP−36(酸化防止剤):ビス(2,6−ジ-t-ブチル−4−メチルフェニル)ペンタエリスリトールージーフォスファイト(株式会社ADEKA製、分子量633、融点234〜240℃)
ハイワックス800P(滑剤):ポリエチレンワックス(三井化学社製、分子量8000、融点127℃、溶融粘度(140℃)8000mPa・s)
ET−5(核剤):タルク(松村産業社製)
Irganox1010(酸化防止剤):テトラキス[3−(3',5'−ジ−t−ブチル−4'−ヒドロキシフェニル)プロピオン酸]ペンタエリトリトール(BASF社製)
PEP−36(酸化防止剤):ビス(2,6−ジ-t-ブチル−4−メチルフェニル)ペンタエリスリトールージーフォスファイト(株式会社ADEKA製、分子量633、融点234〜240℃)
ハイワックス800P(滑剤):ポリエチレンワックス(三井化学社製、分子量8000、融点127℃、溶融粘度(140℃)8000mPa・s)
ET−5(核剤):タルク(松村産業社製)
2.ポリエステル樹脂組成物の作製と評価
<実施例1〜3および比較例1>
表1に示される組成比で、ポリエステル樹脂(A)、白色顔料(B)、金属不活性化剤および無機充填材(D)を、タンブラーブレンダーにて混合した。得られた混合物を、二軸押出機((株)日本製鋼所製 TEX30α)にてシリンダー温度300℃で原料を溶融混錬した後、ストランド状に押出した。押出物を水槽で冷却後、ペレタイザーでストランドを引き取り、カットして、ペレット状のポリエステル樹脂組成物を得た。
<実施例1〜3および比較例1>
表1に示される組成比で、ポリエステル樹脂(A)、白色顔料(B)、金属不活性化剤および無機充填材(D)を、タンブラーブレンダーにて混合した。得られた混合物を、二軸押出機((株)日本製鋼所製 TEX30α)にてシリンダー温度300℃で原料を溶融混錬した後、ストランド状に押出した。押出物を水槽で冷却後、ペレタイザーでストランドを引き取り、カットして、ペレット状のポリエステル樹脂組成物を得た。
得られたポリエステル樹脂組成物の反射特性、成形性、曲げ特性および耐候性を、以下の方法で評価した。
<反射特性>
(初期反射率)
得られたポリエステル樹脂組成物を、下記の成形機を用いて、下記の成形条件で射出成形して、長さ30mm、幅30mm、厚さ0.5mmの試験片を得た。
成形機:住友重機械工業(株)社製、SE50DU
シリンダー温度:ポリエステル樹脂(A)の融点(Tm)+10℃、
金型温度:150℃
(初期反射率)
得られたポリエステル樹脂組成物を、下記の成形機を用いて、下記の成形条件で射出成形して、長さ30mm、幅30mm、厚さ0.5mmの試験片を得た。
成形機:住友重機械工業(株)社製、SE50DU
シリンダー温度:ポリエステル樹脂(A)の融点(Tm)+10℃、
金型温度:150℃
得られた試験片を、ミノルタ(株)CM3500dを用いて、波長領域360nm〜740nmの反射率を求めた。450nmの反射率を代表値として初期反射率とした。
(リフロー試験後の反射率)
初期反射率を測定した試料片を、170℃のオーブンに2時間放置した。次いで、この試料片を、エアーリフローはんだ装置(エイテックテクトロン(株)製AIS−20−82−C)を用いて、試料片の表面温度が260℃となり、かつ20秒保持する温度プロファイルの熱処理(リフローはんだ工程と同様の熱処理)を施した。この試料片を徐冷後、初期反射率と同様の方法で反射率を測定し、リフロー試験後の反射率とした。
初期反射率を測定した試料片を、170℃のオーブンに2時間放置した。次いで、この試料片を、エアーリフローはんだ装置(エイテックテクトロン(株)製AIS−20−82−C)を用いて、試料片の表面温度が260℃となり、かつ20秒保持する温度プロファイルの熱処理(リフローはんだ工程と同様の熱処理)を施した。この試料片を徐冷後、初期反射率と同様の方法で反射率を測定し、リフロー試験後の反射率とした。
(加熱後の反射率)
初期反射率を測定した試験片を、150℃のオーブンに500時間放置した。その後、得られた試料片の反射率を、初期反射率と同様の方法で測定し、加熱後の反射率とした。
初期反射率を測定した試験片を、150℃のオーブンに500時間放置した。その後、得られた試料片の反射率を、初期反射率と同様の方法で測定し、加熱後の反射率とした。
(UV光照射後の反射率)
初期反射率を測定した試験片を、下記の紫外線照射装置に250時間放置した。その後、得られた試料片の反射率を、初期反射率と同様の方法で測定し、紫外線照射後の反射率とした。
紫外線照射装置:ダイプラ・ウィンテス(株) スーパーウィンミニ
出力:16mW/cm2
初期反射率を測定した試験片を、下記の紫外線照射装置に250時間放置した。その後、得られた試料片の反射率を、初期反射率と同様の方法で測定し、紫外線照射後の反射率とした。
紫外線照射装置:ダイプラ・ウィンテス(株) スーパーウィンミニ
出力:16mW/cm2
<成形性>
(流動長)
得られたポリエステル樹脂組成物を、幅10mm、厚み0.5mmのバーフロー金型を用いて、以下の条件で射出成形し、金型内の樹脂の流動長(mm)を測定した。
射出成形機:(株)ソディック プラステック、ツパールTR40S3A
射出設定圧力:2000kg/cm2
シリンダー設定温度:ポリエステル樹脂(A)の融点(Tm)+10℃
金型温度:30℃
(流動長)
得られたポリエステル樹脂組成物を、幅10mm、厚み0.5mmのバーフロー金型を用いて、以下の条件で射出成形し、金型内の樹脂の流動長(mm)を測定した。
射出成形機:(株)ソディック プラステック、ツパールTR40S3A
射出設定圧力:2000kg/cm2
シリンダー設定温度:ポリエステル樹脂(A)の融点(Tm)+10℃
金型温度:30℃
<曲げ特性>
得られたポリエステル樹脂組成物を、下記の成形機を用いて、下記成形条件で射出成形して、長さ64mm、幅6mm、厚さ0.8mmの試験片を得た。
成形機:射出成形機((株)ソディック プラステック、ツパールTR40S3A)
シリンダー温度:300℃
金型温度:150℃
得られたポリエステル樹脂組成物を、下記の成形機を用いて、下記成形条件で射出成形して、長さ64mm、幅6mm、厚さ0.8mmの試験片を得た。
成形機:射出成形機((株)ソディック プラステック、ツパールTR40S3A)
シリンダー温度:300℃
金型温度:150℃
得られた試験片を、温度23℃、窒素雰囲気下に24時間放置した。次いで、温度23℃、湿度50%RHの雰囲気下で、曲げ試験機:NTESCO社製 AB5、スパン26mm、曲げ速度5mm/分で曲げ試験を行い、このときの曲げ強度、曲げ弾性率、靱性およびたわみ量を測定した。
<耐候性>
得られたポリエステル樹脂組成物を、下記の成形機を用いて、下記の成形条件で射出成形して、長さ30mm、幅30mm、厚さ0.5mmの試験片を得た。
成形機:住友重機械工業(株)社製、SE50DU
シリンダー温度:ポリエステル樹脂(A)の融点(Tm)+10℃
金型温度:150℃
得られたポリエステル樹脂組成物を、下記の成形機を用いて、下記の成形条件で射出成形して、長さ30mm、幅30mm、厚さ0.5mmの試験片を得た。
成形機:住友重機械工業(株)社製、SE50DU
シリンダー温度:ポリエステル樹脂(A)の融点(Tm)+10℃
金型温度:150℃
得られた試験片を、下記の環境試験器に下記の条件で静置し、2.5WのLEDライトを試験片表面から0.4mmの位置に置いて照射した。1日毎に試験片表面を光学顕微鏡によりクラックの有無を観察し、クラックが発生するまでに要する日数をカウントした。
環境試験器:エスペック社製 PWL−3KP
環境試験器の条件:85℃、85%RH
光学顕微鏡:オムロン社製 VC4500
光学顕微鏡の条件:500倍
環境試験器:エスペック社製 PWL−3KP
環境試験器の条件:85℃、85%RH
光学顕微鏡:オムロン社製 VC4500
光学顕微鏡の条件:500倍
実施例1〜3および比較例1で得られたポリエステル樹脂組成物の組成および評価結果を、表1に示す。
表1に示されるように、金属不活性化剤(C)を含む実施例1〜3のポリエステル樹脂組成物は、成形性を顕著に損なうことなく、高い靱性を有し、かつ湿熱環境下で光照射したときのクラック発生日が遅いこと、すなわち高い耐候性を有することがわかる。また、実施例1〜3のポリエステル樹脂組成物は、いずれも長期加熱後や長期UV照射後の反射率の低下も少ないことがわかる。
特に、金属不活性化剤(C)として、ヒドラジド系化合物である(C−1)を用いることで、長期加熱後や長期UV照射後の反射率を良好に維持しつつ、クラックをより高度に抑制できることがわかる(実施例1〜3の対比)。
これに対し、金属不活性化剤(C)を含まない代わりに、比較用の金属不活性化剤を含む比較例1のポリエステル樹脂組成物は、靱性が低いだけでなく、短期間でクラックが発生しやすく、耐候性が十分ではないことがわかる。これは、金属不活性化剤(c−1)は融点が高いことから、溶融成形時にポリエステル樹脂(A)と十分に相溶しにくく、それにより、重金属イオンを十分には不活性化させることができなかったためと考えられる。
本発明によれば、成形時の流動性や反射率の経時安定性などを顕著に低下させることなく、機械的特性(靱性)に優れ、かつ耐候性に優れた反射材を付与しうる反射材用ポリエステル樹脂組成物を提供することができる。
Claims (8)
- 示差走査熱量計(DSC)で測定される融点(Tm)もしくはガラス転移温度(Tg)が250℃以上であるポリエステル樹脂(A)30質量部以上80質量部以下と、
白色顔料(B)5質量部以上50質量部以下と、
示差走査熱量計(DSC)で測定される融点(Tm)が80℃以上300℃以下である金属不活性化剤(C)0.1質量部以上2.0質量部以下と、
無機充填材(D)1質量部以上50質量部以下と、
を含む(ただし、(A)、(B)、(C)および(D)の合計は100質量部である)、
反射材用ポリエステル樹脂組成物。 - 前記金属不活性化剤(C)は、ヒドラジド系化合物、トリアゾール系化合物、トリアジン系化合物、アミノカルボキシレート系化合物、およびホスファイト系化合物からなる群より選ばれる1種以上である、
請求項1に記載の反射材用ポリエステル樹脂組成物。 - 前記ポリエステル樹脂(A)は、ジカルボン酸に由来する成分単位(a1)と、ジアルコールに由来する成分単位(a2)とを含み、
前記ジカルボン酸に由来する成分単位(a1)は、前記ジカルボン酸に由来する成分単位(a1)の合計100モル%に対して、テレフタル酸に由来する成分単位を30モル%以上100モル%以下と、テレフタル酸以外の芳香族ジカルボン酸に由来する成分単位を0モル%以上70モル%以下とを含み、
前記ジアルコールに由来する成分単位(a2)は、炭素原子数4以上20以下の脂環族ジアルコールに由来する成分単位と脂肪族ジアルコールに由来する成分単位の少なくとも一方を含む、
請求項1または2に記載の反射材用ポリエステル樹脂組成物。 - 前記ジアルコールに由来する成分単位(a2)は、シクロヘキサン骨格を有する脂環族ジアルコールに由来する成分単位を含む、
請求項3に記載の反射材用ポリエステル樹脂組成物。 - 前記ジアルコールに由来する成分単位(a2)は、前記ジアルコールに由来する成分単位(a2)の合計100モル%に対して、1,4−シクロヘキサンジメタノールに由来する成分単位を30モル%以上100モル%以下と、前記脂肪族ジアルコールに由来する成分単位を0モル%以上70モル%以下とを含む、
請求項3または4に記載の反射材用ポリエステル樹脂組成物。 - 前記白色顔料材(B)は、酸化チタンである、
請求項1〜5のいずれか一項に記載の反射材用ポリエステル樹脂組成物。 - 請求項1〜6のいずれか一項に記載の反射材用ポリエステル樹脂組成物を含む、
反射材。 - 発光ダイオード素子用の反射材である、
請求項7に記載の反射材。
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---|---|---|---|
JP2018025324A JP2019142986A (ja) | 2018-02-15 | 2018-02-15 | 反射材用ポリエステル樹脂組成物および反射材 |
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Cited By (1)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
DE112020003676T5 (de) | 2018-12-14 | 2022-06-09 | Panac Co., Ltd. | Heizgerät, bildgebendes gerät für ein fahrzeug und herstellungsverfahren für ein heizgerät |
-
2018
- 2018-02-15 JP JP2018025324A patent/JP2019142986A/ja active Pending
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Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
DE112020003676T5 (de) | 2018-12-14 | 2022-06-09 | Panac Co., Ltd. | Heizgerät, bildgebendes gerät für ein fahrzeug und herstellungsverfahren für ein heizgerät |
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